JP2022171558A - 神経障害の予防又は改善剤 - Google Patents

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弘章 本橋
Hiroaki Motohashi
浩二郎 橋爪
Kojiro Hashizume
晃太郎 田村
Kotaro Tamura
慶彦 峯岸
Yoshihiko Minegishi
卓広 蓮村
Takahiro Hasumura
真一 目黒
Shinichi Meguro
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Yayoi Hosoda
英雄 大南
Hideo Ominami
啓太 齊藤
Keita Saito
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Abstract

【課題】神経損傷や加齢に伴う神経機能低下によって生じる神経障害の予防又は改善剤、及び神経障害性疼痛の予防又は改善剤を提供する。【解決手段】イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経障害の予防又は改善剤。【選択図】なし

Description

本発明は、神経障害の予防又は改善剤、及び神経障害性疼痛の予防又は改善剤に関する。
神経組織が損傷を受けると、損傷を受けた神経が支配する効果器に障害が起こる。
神経損傷の代表的な例である脳卒中の患者数は、日本国内で約120万人と非常に多く、社会的損失は甚大である。
脳卒中や交通事故などにより、神経損傷が生じた場合、神経機能を回復するために、リハビリテーションが推奨されている。しかしながら、現状のリハビリテーションによる当該機能の回復効果は、不十分であり、リハビリテーションを行っても障害が残る場合や、社会復帰できない場合が多く報告されている。このように、従来のリハビリテーションによる神経機能回復効果には限界があり、リハビリテーション効果を促進する作用を有する有用な手段が求められている。
また、加齢に伴う筋機能低下においても、神経機能低下の寄与が報告されており(非特許文献1)、超高齢社会の日本において、低下した神経機能を改善させる技術や神経機能の低下を予防する技術の創出は重要である。
また、神経が障害を受けると多くの場合、痛みとして感受される(神経障害性疼痛)。疼痛は、日常生活の不便や不快感、労働意欲の減退を招き、生活の質(Quality of Life)の低下を招く。神経障害性疼痛は、障害を受けた神経が興奮し続け、障害を受けた神経から痛みを伝達する物質が過剰に放出されている状態である。そのため、痛みの原因や病原巣が除去されて疾病が治っても、痛みが長期間続いたり、少しの刺激で強い痛みを感じたり、天気・気候の変化で痛みを感じたり、動かなくとも痛みを感じたりしてしまう。神経障害性疼痛は、しばしば、電気が走るような痛みや強いしびれなどの症状として発現する。
神経障害性疼痛は、カルシウムチャネルを通じてカルシウムが神経細胞内に入ることによって神経細胞が興奮し、神経伝達物質が過剰に放出されることがメカニズムの一つと考えられていることから、その治療・予防にはカルシウムチャネル阻害剤が用いられる場合が多い。また、抗うつ薬や抗てんかん薬が用いられる場合もある。さらに、これらの薬物では痛みが治まらず、日常動作に障害となる場合は、オピオイドのような麻薬系の鎮痛薬も用いられる。
一方、イチジク(Ficus carica L.)は、その果実が食用として広く用いられ、また果実や葉を乾燥したものは、それぞれ無花果、無花果葉と言われ生薬として用いられている。また、イチジクの抽出物には脂肪分解促進作用(特許文献1)や抗インフルエンザウイルス作用(特許文献2)があることも報告されている。
しかしながら、イチジクが神経機能に作用すること、神経障害性疼痛に有効であることは全く知られていない。
特開2009-242432号公報 特開2004-059463号公報
Nutrition 28: 495-503, 2012
本発明は、神経損傷や加齢に伴う神経機能低下によって生じる神経障害の予防又は改善剤、及び神経障害性疼痛の予防又は改善剤を提供することに関する。
本発明者らは、神経機能を向上する素材を探索したところ、イチジク抽出物、及びこれに含まれる特定の成分の組み合わせに、神経損傷や加齢に伴って生じる神経機能低下を改善する効果があり、また神経障害性疼痛に対する緩和作用があることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の1)~20)に係るものである。
1)イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経障害の予防又は改善剤。
2)イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経再生促進剤。
3)イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経損傷後の運動機能回復促進剤。
4)イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経損傷後の筋萎縮抑制剤。
5)イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経障害性疼痛の予防又は改善剤。
6)イチジク抽出物を有効成分とする神経障害の予防又は改善用食品。
7)イチジク抽出物を有効成分とする神経再生促進用食品。
8)イチジク抽出物を有効成分とする神経損傷後の運動機能回復促進用食品。
9)イチジク抽出物を有効成分とする神経損傷後の筋萎縮抑制用食品。
10)イチジク抽出物を有効成分とする神経障害性疼痛の予防又は改善用食品。
11)下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経障害の予防又は改善剤。
12)下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経再生促進剤。
13)下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経損傷後の運動機能回復促進剤。
14)下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経損傷後の筋萎縮抑制剤。
15)下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経障害性疼痛の予防又は改善剤。
16)下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経障害の予防又は改善用食品。
17)下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経再生促進用食品。
18)下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経損傷後の運動機能回復促進用食品。
19)下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経損傷後の筋萎縮抑制用食品。
20)下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経障害性疼痛の予防又は改善用食品。
Figure 2022171558000001
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
本発明によれば、神経障害を予防又は改善するため及び神経障害性疼痛を予防又は改善するための医薬品、医薬部外品、食品又はサプリメントを提供することができる。特に、食品又はサプリメントによる神経機能回復促進や神経障害性疼痛の緩和が可能になるので、高齢者や神経損傷により自宅で介護を受ける患者に対し、QOL改善に資する新たな手段を提供することができる。
坐骨神経挫滅後の神経伝導速度に及ぼすイチジクの作用。* p < 0.05, ** p < 0.01 vs. 対照 by Dunnett test 坐骨神経挫滅後の筋重量に及ぼすイチジクの作用。* p < 0.05, ** p < 0.01 vs. 対照 by Dunnett test 坐骨神経挫滅後の神経再生に及ぼすイチジクの作用。* p < 0.05 vs. 対照 by t test 両坐骨神経挫滅後の運動機能低下に及ぼすイチジクの作用。* p < 0.05 vs. 対照 by Dunnett test 脊髄挫滅後の運動機能低下に及ぼすイチジクの作用。* p < 0.05 vs. 対照 by Dunnett test 脊髄挫滅後の神経再生に及ぼすイチジクの作用。* p < 0.05 vs. 対照 by t test 加齢に伴う運動機能低下に及ぼすイチジクの作用。 加齢に伴う神経機能低下に及ぼすイチジクの作用。 加齢に伴う神経形態の変化に及ぼすイチジクの作用。7a:神経軸索本数、7b:g-ratio。 加齢に伴う神経筋接合部の変性に及ぼすイチジクの作用。8a:神経筋接合部の代表的な染色像、8b:断片化AChRの割合、8c:脱神経NMJの割合。 神経障害性疼痛に対するイチジクの作用。* p <0.05, ** p <0.01 vs. 対照 Mann Whitney U 神経障害性疼痛スクリーニング質問票。 アンケート内容(痛みを感じる場所と強さ)。 アンケート内容(日常生活への影響)。 アンケート内容(痛みの改善状況)。 イチジク摂取による痛みの状態の変化(アンケート結果)。 イチジク摂取による痛みスコアの変化(アンケート結果)。 痛みによる日常生活へのイチジク摂取の影響(アンケート結果)。 イチジク摂取による立ち上がり動作障害の改善効果。 感覚閾値へのイチジク摂取の影響。 神経伝導速度に対するイチジク摂取の影響。 坐骨神経挫滅処置による神経再生モデルに対するイチジク成分の影響。* p<0.05,** p<0.01,*** p<0.001 vs. 対照 by Dunnett test 脊髄挫滅後の運動機能低下に及ぼすイチジク成分組合せの作用。* p<0.05 vs. 対照 by Dunnett test 脊髄挫滅後の運動機能低下に及ぼすイチジク成分単体の作用。 vs. 対照 by Dunnett test
本発明において、「イチジク」は、クワ科イチジク属のFicus carica L.を指す。
抽出に用いられるイチジクの部位は、例えば茎、芽、蕾、木質部、樹皮、地衣体、根、根茎、球茎、塊茎、種子、果実等又はそれらの組み合わせであり得るが、果実を用いるのが好ましく、ドライフルーツを用いるのがより好ましい。
本発明に用いるイチジク抽出物の製造方法は、特に限定はなく上記植物部位を公知の方法で抽出することにより得ることができる。本発明では各種抽出溶媒による溶媒抽出法により製造した抽出物が好ましく用いられる。
抽出のための溶剤には、極性溶剤、非極性溶剤のいずれをも使用することができる。溶剤の具体例としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;及び超臨界二酸化炭素;ピリジン類;油脂、ワックス等その他オイル類等の有機溶剤;並びにこれらの混合物が挙げられる。好適には、水、アルコール類、アルコール類-水混合液が挙げられ、アルコール類-水混合液がより好ましい。アルコール類としては、エタノールが好ましい。
また、アルコール類-水混合液は、任意の割合で混合して使用することができるが、好ましくはアルコール類の割合が50~99.9%の混合液(20℃におけるv/v%)であり、より好ましくは75~99.8%の混合液であり、より更に好ましくは90~99.7%の混合液である。
抽出溶媒の使用量は、十分な抽出効率が得られる条件であれば特に限定されないが、例えば、イチジク乾燥物に対して2~60質量倍が好ましく、更に好ましくは3~30質量倍、最も好ましくは5~15倍である。
抽出条件は、十分な抽出効率が得られる条件であれば特に限定されない。抽出温度は、0℃以上,使用する溶媒の沸点以下で実施することが好ましく、より好ましくは室温であるが、抽出温度が高温になればより短時間で抽出が可能である。抽出期間(時間)は、例えば、40℃以上に加熱して抽出する場合には10分~1日が好ましく、例えば、40~50℃で12~24時間、50~60℃で2~12時間、60~70で10分~2時間が挙げられる。また、40℃以下で抽出する場合には1日~30日が好ましく、より好ましくは7日~21日である。例えば、40~30℃で1~7日、30~20℃で7~21日、20~10℃で21~30日が挙げられる。さらに好ましくは、室温で、7~14日である。
抽出手段は、特に限定されないが、例えば、固液抽出、液液抽出、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、加圧加熱抽出、蒸留,超臨界抽出等の通常の手段を用いることができる。
本発明のイチジク抽出物は、例えば食品や医薬品上許容し得る規格に適合し、本発明の効果を発揮するものであれば粗精製物であってもよい。また、必要に応じて、液液分配、固液分配、活性炭処理、イオン交換樹脂処理、等の公知の技術によって不活性な夾雑物の除去、脱臭、脱色等の処理を施すことができる。
また、さらに公知の分離精製方法を適宜組み合わせて、ある特定成分(画分)の濃度・割合を高めてもよい(例えば、限外濾過膜分離により,分子量10kD以上の画分を除去する等)。精製手段としては、有機溶剤沈殿、遠心分離、限界濾過膜分離、高速液体クロマトグラフやカラムクロマトグラフ等が挙げられる。
本発明において、上記の抽出物はそのまま用いることもできるが、当該抽出物を希釈、濃縮若しくは凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製して用いることもできる。また、凍結乾燥し、用時に、通常抽出に用いられる溶剤、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、水-エタノール混液、水-プロピレングリコール混液、水-1,3-ブチレングリコール混液等の溶剤で溶解・希釈して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
本発明において、下記式(1);
Figure 2022171558000002
で表されるラクトン化合物は2-デオキシ-D-リボノ-1,4-ラクトンであり、
下記式(2):
Figure 2022171558000003
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
で示されるヒドロキシ安息香酸化合物は、バニリン酸(Rがメチル基)又はプロトカテク酸(Rが水素原子)のいずれか一方又は両方を指す。
前記式(2)で示される化合物の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、塩化アンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等のアンモニウム塩等が挙げられる。
前記式(1)で表されるラクトン化合物と前記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩は、イチジク、その他の植物から分離精製して取得できる他、化学合成することも可能である。また、市販品を使用することも可能である。
本発明において、前記式(1)で表されるラクトン化合物と前記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩は、両者を組み合わせて使用(併用)されるが、その態様は限定されない。すなわち、配合剤としてそれぞれの有効量を適当な配合比において一つの剤型に製剤化したものでも、またそれぞれの有効量を含有する薬剤を単独に製剤化したものを同時に又は間隔を空けて別々に使用できるようにしたキットであってもよいが、同時使用が好ましい。
前記式(1)で表されるラクトン化合物と前記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせて配合剤とする場合の配合比率は、素材、用途又は製剤の種類に応じて適宜選択することができるが、概ね、ラクトン化合物とヒドロキシ安息香酸化合物(遊離体換算)の質量比で1:0.0001~10、好ましくは1:0.001~5、さらに好ましくは1:0.01~2である。
後記実施例に示すように、イチジク抽出物は、マウスにおける坐骨神経挫滅処置による運動神経伝導速度の低下、筋重量の減少、及びミエリン面積の減少を抑制する。また、イチジク抽出物は、ゼブラフィッシュにおける脊髄挫滅処置による運動障害を改善し、神経再生を促進する。さらに、イチジク抽出物は、加齢に伴って生じる神経伝導速度の低下及び神経軸索本数の減少、g-ratioの増加、及び神経筋接合部におけるアセチルコリン受容体の断片化や脱神経した神経筋接合部の増加を抑制する。
また、イチジク中に含まれる2-デオキシ-D-リボノ-1,4-ラクトンと、バニリン酸及び/又はプロトカテク酸の併用は、マウスにおける坐骨神経挫滅処置によるミエリン面積の減少を抑制し、ゼブラフィッシュにおける脊髄挫滅処置による運動障害を改善する。
坐骨神経挫滅処置したマウスは神経再生モデルとして知られており(Gaudet et al . Journal of Neuroinflammation 2011, 8:110、Nico L.et al., Arch Phys Med Rehabil,78,70-7(1997)、Takemura et al. PLOS ONE 2012, 7: e44592)、当該モデルにおいて神経伝導速度の回復の促進及びミエリン面積の減少が抑制されたことは、末梢神経の再生が促進されたことを意味する。また、脊髄神経挫滅処置したゼブラフィッシュは中枢神経再生モデルとして知られており(Mayssa H. et el., Science,354,630-634(2016))、当該モデルにおいて運動機能の回復が促進されたことは、中枢神経の再生が促進されたことを意味する。
また、加齢により、神経軸索本数が減少し、ミエリン鞘の薄層化(g-ratio(ミエリン鞘の厚さ)の増加)といった神経の形態異常や神経と筋肉の接合部である神経筋接合部において断片化したアセチルコリン受容体(acetylcholine receptor: AChR):断片化AChRや脱神経した神経筋接合部(neuromuscular junction: NMJ):脱神経NMJが増加することが知られている(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 107: 14863-14868, 2010、Journals of Gerontology: Biological Sciences 70: 1312, 2015)。よって、神経軸索本数の減少、g-ratioの増加及び神経筋接合部における断片化AChRや脱神経NMJの増加を抑制することは、神経の形態異常や変性を抑制することを意味する。
また、神経障害性疼痛モデルとされるSpared nerve injury(SNI)処置したマウスで、von Freyフィラメント試験におけるフィラメントに対する反応率が上昇し、アロディニア(通常では疼痛をもたらさない微小刺激が、疼痛として認識される感覚異常)が誘導されるのに対し、イチジク抽出物を投与した場合には当該フィラメントに対する反応率が有意に低下する。
したがって、本発明のイチジク又はその抽出物、及び前記式(1)で表されるラクトン化合物と前記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせは、神経障害の予防又は改善剤、神経再生促進剤、神経損傷後の運動機能回復促進剤、神経損傷後の筋萎縮抑制剤、又は神経障害性疼痛の予防又は改善剤(「神経障害の予防又は改善剤等」と称する)となり得、また、当該神経障害の予防又は改善剤等を製造するために使用することができる。すなわち、本発明のイチジク又はその抽出物、及び前記式(1)で表されるラクトン化合物と前記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせは、神経障害の予防又は改善、神経再生の促進、神経損傷後の運動機能回復促進、神経損傷後の筋萎縮抑制の促進、又は神経障害性疼痛の予防又は改善のために使用することができる。
ここで、使用は、治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。「非治療的」とは、医療行為を含まない概念、すなわち人間を手術、治療又は診断する方法を含まない概念、より具体的には医師又は医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。
本発明において、「神経障害」とは、神経損傷や加齢等に伴って神経細胞及び髄鞘を形成するシュワン細胞やオリゴデンドロサイトが障害され、神経機能が低下する病態を意味し、具体的には、疼痛、感覚喪失(無感覚を含む)、四肢又は体肢におけるピリピリ感又は灼熱感、知覚異常、筋力低下、筋量低下、運動機能低下、神経筋反射の低下、けいれん、神経筋麻痺、性機能障害等の症状が挙げられる。
ここで、「神経損傷」としては、外傷、打撲傷、圧迫等による、三叉神経、脊髄、神経根等の中枢又は坐骨神経や正中神経等の末梢神経の物理的損傷や出血性若しくは虚血性損傷が主として挙げられ、好ましくは物理的損傷である。
また、加齢に伴う神経機能障害には、例えば運動皮質興奮性の減少や皮質可塑性の変化等の中枢神経の変化や、神経軸索本数の減少やミエリン鞘の薄層化、アセチルコリン受容体の断片化等の末梢神経の変化が挙げられる。
神経障害の「改善」とは、「予防又は治療」を含む意である。神経障害の「予防」とは、神経障害が発症することを防止又は遅延させることを意味し、「治療」とは、神経障害の症状を軽減すること、或いは症状の進行(悪化)を防止又は遅延させることを意味する。
「神経再生」とは、神経における正常発生の過程を少なくとも一部再現すること、すなわち、細胞の増加、分化、成熟等の神経の修復又は神経の発生過程で生じる現象のうち少なくとも一つが再現されること(組織再生)、好ましくは、その結果として、本来の神経の機能が完全又は部分的に回復する現象(機能再生)を意味する。
「神経損傷後の運動機能回復促進」とは、神経損傷に伴い、当該損傷を受けた神経支配領域で発症する運動機能障害(例えば、運動麻痺、筋力低下)を回復することを意味する。
神経損傷は、末梢神経損傷及び中枢神経損傷のいずれであってもよいが、末梢神経損傷であることが好ましい。神経損傷の原因は特に限定されず、外傷、ギプスによる圧迫、電撃傷、椎間板ヘルニア、脳卒中等の種々の原因による神経損傷が適用対象となる。
「神経損傷後の筋萎縮抑制」とは、神経損傷に伴い、当該損傷を受けた神経支配領域で発症する筋量低下の抑制を意味する。
「神経障害性疼痛」とは、体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛を意味する。その症状は、灼熱痛またはチクチク感を感じたり、触覚や低温に過敏になったりすることが挙げられる。また、触覚は非常に敏感になり、軽く触れられただけで痛みを感じることがある(アロディニア、感覚過敏)。また、その症状は、安静にしていても痛みが生じている状態(自発痛)である場合が多い。
神経障害性疼痛の診断は、例えば、以下に示す7つの質問に対して、5段階評価((0点)、少しある(1点)、ある(2点)、強くある(3点)、非常に強くある(4点))で回答し、その合計得点(6点以上で神経障害性疼痛)で判定する方法が知られている(臨整外47:565-574,2012)。
1)針で刺されるような痛みがある
2)電気が走るような痛みがある
3)焼けるようなひりひりする痛みがある
4)しびれの強い痛みがある
5)衣類が擦れたり,冷風に当たったりするだけで痛みが走る
6)痛みの部位の感覚が低下していたり,過敏になっていたりする
7)痛みの部位の皮膚がむくんだり,赤や赤紫に変色したりする
神経障害性疼痛の原因となる主な疾患としては、上述の神経障害又は神経障害を起こし得る疾患が挙げられ、例えば、椎間板ヘルニア、腰痛症、絞扼性ニューロパチー、坐骨神経痛、三叉神経痛、手根管症候群、腰椎すべり症、脊柱管狭窄症、多発性硬化症、ギランバレー症候群、脳卒中後遺症、ヘルニア縫合術後痛、帯状疱疹後神経痛などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、神経障害性疼痛の「改善」とは、「予防又は治療」を含む意である。神経障害性疼痛の「予防」とは、神経障害性疼痛が発症することを防止又は遅延させることを意味し、「治療」とは、神経障害性疼痛を軽減すること、或いは神経障害性疼痛の進行(悪化)を防止又は遅延させることを意味する。
本発明のイチジク又はその抽出物によれば神経障害性疼痛の改善が可能であるが、疼痛が緩和されることによって、疼痛が原因で低下していた運動機能や日常生活動作を回復することが可能となる(図15,16)。ここで、運動機能の低下としては、例えば、立ち上がり動作の障害(スピードの減少、力強さの低下)、歩行機能の低下(歩行速度、ケイデンス(足を振り出す速さ)の低下)等が挙げられ、これらの機能低下を回復すること、或いは当該機能低下の進行を抑制又は遅延させることができる。
本発明の神経障害の予防又は改善剤等は、それ自体、神経障害の予防又は改善効果、神経再生促進効果、神経損傷後の運動機能回復促進効果、神経損傷後の筋萎縮抑制効果、又は神経障害性疼痛の予防又は改善効果を発揮する医薬品、医薬部外品又は食品となり、或いはこれらへ配合するための素材又は製剤となり得る。
なお、上記の食品(「神経損傷又は加齢に起因する神経障害の予防又は改善用食品」、「神経再生促進用食品」、「神経損傷後の運動機能回復促進用食品」、「神経損傷後の筋萎縮抑制用食品」、「神経障害性疼痛の予防又は改善用食品」とも称す)には、一般飲食品のほか、必要に応じてその旨を表示した食品、機能性食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示食品、サプリメントが包含される。
本発明の有効成分を含む上記医薬品(医薬部外品を含む)は、任意の投与形態で投与され得るが、経口投与が好ましい。投与に際しては、有効成分を経口投与、直腸内投与、注射等の投与方法に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬品製剤の形態で投与することができる。
このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、凍結乾燥剤等が挙げられる。これらの製剤は、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、賦形剤等の慣用の添加剤を適宜添加し、製剤上の常套手段により調製することができる。
また、本発明の有効成分を配合した上記食品の形態は、清涼飲料水、茶系飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、炭酸飲料、ゼリー、ウエハース、ビスケット、パン、麺、ソーセージ等の飲食品や栄養食等の各種食品の他、さらには、上述した経口投与製剤と同様の形態(錠剤、カプセル剤、トローチ剤等の固形製剤)の栄養補給用組成物が挙げられる。なかでも、錠剤が好ましい。
種々の形態の食品は、本発明の有効成分を単独で、又は他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて調製することができる。
上記の医薬品(医薬部外品を含む)や食品中のイチジク又はその抽出物の含有量は、その使用形態により異なるが、その乾燥物(例えば、天日で1週間~1.5週間乾燥させた乾燥物)換算で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、且つ好ましくは10質量%以下、より好ましく5質量%以下であり、また好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
上記の医薬品(医薬部外品を含む)や食品中の前記式(1)で表されるラクトン化合物の含有量は、その使用形態により異なるが、好ましくは0.0000001質量%以上、より好ましくは0.000001質量%以上、且つ好ましくは0.01質量%以下、より好ましく0.005質量%以下であり、また好ましくは0.0000001~0.01質量%、より好ましくは0.000001~0.005質量%である。
上記の医薬品(医薬部外品を含む)や食品中の前記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の含有量は、その使用形態により異なるが、当該ヒドロキシ安息香酸化合物遊離体換算で、好ましくは0.00000002質量%以上、より好ましくは0.0000002質量%以上、且つ好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下であり、また好ましくは0.00000002~0.001質量%、より好ましくは0.0000002~0.0005質量%である。
上記の医薬品(医薬部外品を含む)や食品の投与量又は摂取量は、対象者の状態、体重、性別、年齢又はその他の要因に従って変動し得るが、経口投与又は摂取の場合、成人(体重60Kg)1人当たり、イチジクとして、1日あたり乾燥物換算で、好ましくは10g以上、より好ましくは30g以上で、且つ好ましくは50g以下、より好ましくは45g以下である、また、好ましくは10~50g、より好ましくは30~45gである。また、イチジク抽出物としては、1日あたり乾燥物換算で、好ましくは1g以上、より好ましくは4g以上で、且つ好ましくは30g以下、より好ましくは10g以下である、また、好ましくは1~30g、より好ましくは4~10gである。
また、式(1)で表されるラクトン化合物として、1日あたり、好ましくは0.5mg以上、より好ましくは1mg以上で、且つ好ましくは60mg以下、より好ましくは20mg以下である、また、好ましくは0.5~60mg、より好ましくは1~20mgである。
また、式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩としては、1日あたり当該ヒドロキシ安息香酸化合物遊離体換算で、好ましくは0.00005mg以上、より好ましくは0.0005mg以上で、且つ好ましくは5mg以下、より好ましくは4mg以下である、また、好ましくは0.00005~5mg、より好ましくは0.0005~4mgである。
本発明の神経障害の予防又は改善等を摂取又は投与する対象者としては、例えば、神経機能が低下し、神経障害の各種症状(感覚喪失、知覚異常、筋力低下、神経筋反射の低下、けいれん、神経筋麻痺等)を発症したヒト、神経機能の維持・向上を望むヒト、神経障害性疼痛の各種症状(尻、太もも、すね、ふくらはぎ、膝、足首、足指、肘、手指、肩、背中、腰等の灼熱痛またはチクチク感、アロディニア、感覚過敏等)を発症したヒト又は発症する恐れのあるヒトが挙げられる。
上述した実施形態に関し、本発明においてはさらに以下の態様が開示される。
<1>イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経障害の予防又は改善剤。
<2>イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経再生促進剤。
<3>イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経損傷後の運動機能回復促進剤。
<4>イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経損傷後の筋萎縮抑制剤。
<5>イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経障害性疼痛の予防又は改善剤。
<6>イチジク抽出物を有効成分とする神経障害の予防又は改善用食品。
<7>イチジク抽出物を有効成分とする神経再生促進用食品。
<8>イチジク抽出物を有効成分とする神経損傷後の運動機能回復促進用食品。
<9>イチジク抽出物を有効成分とする神経損傷後の筋萎縮抑制用食品。
<10>イチジク抽出物を有効成分とする神経障害性疼痛の予防又は改善用食品。
<11>神経障害の予防又は改善剤を製造するための、イチジク又はその抽出物の使用。
<12>神経再生促進剤を製造するための、イチジク又はその抽出物の使用。
<13>神経損傷後の運動機能回復促進剤を製造するための、イチジク又はその抽出物の使用。
<14>神経損傷後の筋萎縮抑制剤を製造するための、イチジク又はその抽出物の使用。
<15>神経障害性疼痛の予防又は改善剤を製造するための、イチジク又はその抽出物の使用。
<16>神経障害の予防又は改善用食品を製造するための、イチジク抽出物の使用。
<17>神経再生促進用食品を製造するための、イチジク抽出物の使用。
<18>神経損傷後の運動機能回復促進用食品を製造するための、イチジク抽出物の使用。
<19>神経損傷後の筋萎縮抑制用食品を製造するための、イチジク抽出物の使用。
<20>神経障害性疼痛の予防又は改善用食品を製造するための、イチジク抽出物の使用。
<21>神経障害を予防又は改善するための、イチジク又はその抽出物。
<22>神経再生を促進するための、イチジク又はその抽出物。
<23>神経損傷後の運動機能回復を促進するための、イチジク又はその抽出物。
<24>神経損傷後の筋萎縮を抑制するための、イチジク又はその抽出物。
<25>神経障害性疼痛を予防又は改善するための、イチジク又はその抽出物。
<26>神経障害を予防又は改善するための、イチジク抽出物の非治療的使用。
<27>神経再生を促進するための、イチジク抽出物の非治療的使用。
<28>神経損傷後の運動機能回復を促進するための、イチジク抽出物の非治療的使用。
<29>神経損傷後の筋萎縮を抑制するための、イチジク抽出物の非治療的使用。
<30>神経障害性疼痛を予防又は改善するための、イチジク抽出物の非治療的使用。
<31>イチジク又はその抽出物を、必要な対象に摂取又は投与する、神経障害の予防又は改善方法。
<32>イチジク又はその抽出物を、必要な対象に摂取又は投与する、神経再生促進方法。
<33>イチジク又はその抽出物を、必要な対象に摂取又は投与する、神経損傷後の運動機能回復促進方法。
<34>イチジク又はその抽出物を、必要な対象に摂取又は投与する、神経損傷後の筋萎縮抑制方法。
<35>イチジク又はその抽出物を、必要な対象に摂取又は投与する、神経障害性疼痛の予防又は改善方法。
<36><1>、<6>、<11>、<16>、<21>、<26>又は<31>において、神経障害は、好ましくは、中枢若しくは末梢神経の物理的損傷による神経機能の低下、又は加齢に伴う神経機能低下である。
<37><5>、<10>、<15>、<20>、<25>、<30>又は<35>において、神経障害性疼痛は、好ましくは、自発痛、感覚過敏又はアロディニアを含む疼痛である。
<38><1>~<37>において、イチジクは好ましくはイチジクの果実である。
<39><1>~<37>において、抽出物は好ましくはアルコール-水混合液、好ましくは50~99.9V/V%のアルコール-水混合液抽出物である。
<40><1>~<20>における剤又は食品において、イチジク又はその抽出物の含有量は、その乾燥物換算で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、且つ好ましくは10質量%以下、より好ましく5質量%以下であるか、又は0.001~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
<41><1>~<37>において、イチジク又はその抽出物、又はこれを含有する医薬品(医薬部外品を含む)又は食品の投与又は摂取量は、経口投与又は摂取の場合、成人(体重60Kg)1人当たり、イチジクとして、1日あたり乾燥物換算で、好ましくは10g以上、より好ましくは30g以上で、且つ好ましくは50g以下、より好ましくは45g以下であり、また、好ましくは10~50g、より好ましくは30~45gである。また、イチジク抽出物としては、1日あたり乾燥物換算で、好ましくは1g以上、より好ましくは4g以上で、且つ好ましくは30g以下、より好ましくは10g以下であり、また、好ましくは1~30g、より好ましくは4~10gである。
<42>下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経障害の予防又は改善剤。
<43>下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経再生促進剤。
<44>下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経損傷後の運動機能回復促進剤。
<45>下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経損傷後の筋萎縮抑制剤。
<46>下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経障害性疼痛の予防又は改善剤。
<47>下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経障害の予防又は改善用食品。
<48>下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経再生促進用食品。
<49>下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経損傷後の運動機能回復促進用食品。
<50>下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経損傷後の筋萎縮抑制用食品。
<51>下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経障害性疼痛の予防又は改善用食品。
<52>神経障害の予防又は改善剤を製造するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせの使用。
<53>神経再生促進剤を製造するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせの使用。
<54>神経損傷後の運動機能回復促進剤を製造するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせの使用。
<55>神経損傷後の筋萎縮抑制剤を製造するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせの使用。
<56>神経障害性疼痛の予防又は改善剤を製造するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせの使用。
<57>神経障害の予防又は改善用食品を製造するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせの使用。
<58>神経再生促進用食品を製造するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせの使用。
<59>神経損傷後の運動機能回復促進用食品を製造するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせの使用。
<60>神経損傷後の筋萎縮抑制用食品を製造するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせの使用。
<61>神経障害性疼痛の予防又は改善用食品を製造するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせの使用。
<62>神経障害を予防又は改善するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせ。
<63>神経再生を促進するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせ。
<64>神経損傷後の運動機能回復を促進するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせ。
<65>神経損傷後の筋萎縮を抑制するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせ。
<66>神経障害性疼痛を予防又は改善するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせ。
<67>神経障害を予防又は改善するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせの非治療的使用。
<68>神経再生を促進するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせの非治療的使用。
<69>神経損傷後の運動機能回復を促進するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせの非治療的使用。
<70>神経損傷後の筋萎縮を抑制するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせの非治療的使用。
<71>神経障害性疼痛を予防又は改善するための、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の組み合わせの非治療的使用。
<72>下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせて必要な対象に摂取又は投与する、神経障害の予防又は改善方法。
<73>下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせて必要な対象に摂取又は投与する、神経再生促進方法。
<74>下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせて必要な対象に摂取又は投与する、神経損傷後の運動機能回復促進方法。
<75>下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせて必要な対象に摂取又は投与する、神経損傷後の筋萎縮抑制方法。
<76>下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせて必要な対象に摂取又は投与する、神経障害性疼痛の予防又は改善方法。
<77><42>、<47>、<52>、<57>、<62>、<67>又は<72>において、神経障害は、好ましくは、中枢若しくは末梢神経の物理的損傷による神経機能の低下、又は加齢に伴う神経機能低下である。
<78><46>、<51>、<56>、<61>、<66>、<71>又は<76>において、神経障害性疼痛は、好ましくは、自発痛、感覚過敏又はアロディニアを含む疼痛である。
<79><42>~<61>における剤又は食品において、下記式(1)で表されるラクトン化合物の含有量は、好ましくは0.0000001質量%以上、より好ましくは0.000001質量%以上、且つ好ましくは0.01質量%以下、より好ましく0.005質量%以下であり、また好ましくは0.0000001~0.01質量%、より好ましくは0.000001~0.005質量%である。
<80><42>~<61>における剤又は食品において、下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩の含有量は、当該ヒドロキシ安息香酸化合物遊離体換算で、好ましくは0.00000002質量%以上、より好ましくは0.0000002質量%以上、且つ好ましくは0.001質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以下であり、また好ましくは0.00000002~0.001質量%、より好ましくは0.0000002~0.0005質量%である。
<81><42>~<80>において、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩、又はこれを含有する医薬品(医薬部外品を含む)又は食品の投与又は摂取量は、経口投与又は摂取の場合、成人(体重60Kg)1人当たり、下記式(1)で表されるラクトン化合物として、1日あたり、好ましくは0.5mg以上、より好ましくは1mg以上で、且つ好ましくは60mg以下、より好ましくは20mg以下であり、また好ましくは0.5~60mg、より好ましくは1~20mgである。
<41><42>~<80>において、下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩、又はこれを含有する医薬品(医薬部外品を含む)又は食品の投与又は摂取量は、経口投与又は摂取の場合、成人(体重60Kg)1人当たり、下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩としては、1日あたり当該ヒドロキシ安息香酸化合物遊離体換算で、好ましくは0.00005mg以上、より好ましくは0.0005mg以上で、且つ好ましくは5mg以下、より好ましくは4mg以下であり、また好ましくは0.00005~5mg、より好ましくは0.0005~4mgである。
Figure 2022171558000004
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
製造例1 イチジク抽出物の調製
クワ科イチジク〔Ficus carica L.〕のドライフルーツ(天日乾燥果実)500gを、ハサミを用いて1/4大に裁断した後、99.5V/V%(20℃)エタノール5Lを加え、室温、静置下で、8日間浸漬した。その後、ろ過により抽出残渣と分離した後、抽出液を減圧にて濃縮した。さらに、本濃縮物にイオン交換水を加え希釈した後、凍結乾燥した。これにより、イチジク抽出物99gを得た。
実施例1 坐骨神経挫滅処置による神経再生モデルに対するイチジク抽出物の影響
8週齢のC57BL/6Jマウスを1週間予備飼育した後、体重が等しくなるように、偽手術-対照食群(偽手術群)、神経挫滅-対照食群(対照群)、神経挫滅-イチジク食群(イチジク群)の3群に群わけした(各群n=14)。各食餌で7日間、自由摂餌で飼育した後に、右足の坐骨神経挫滅処置を施した。マウス太もも部分を毛刈りし、1cm程度を切開した上で、坐骨神経を露出させた。ピンセットで坐骨神経を10秒間圧迫することで挫滅し、切開部を縫合し、イソジンにて消毒した。偽手術群は、マウス太もも部分を毛刈りし、1cm程度を切開し、坐骨神経を露出させたうえで、切開部を縫合し、イソジンにて消毒した。なお、坐骨神経挫滅後も各食餌を自由摂餌させた。坐骨神経挫滅4週後の脛骨神経の神経伝導速度(motor nerve conduction velocity:MNCV)を筋電図誘発電位検査装置(MEB-9402MB)で測定した。尚、神経伝導速度測定の侵襲による筋重量や神経組織への影響を避けるため、神経伝導速度を測定した個体と筋重量および神経組織を測定した個体に分けて解析した(神経伝導速度測定:各群n=8、筋重量・神経組織測定:各群n=6)。餌組成は表1に示した。「イチジク抽出物」は、製造例1で調製した抽出物を用いた。統計は、Dunnett testを用い、有意水準はP<0.05とした(* p<0.05,** p<0.01)
坐骨神経挫滅4週後にマウスを解剖に供した。腓骨神経を単離し、2.5%グルタールアルデヒドで前固定し(4℃、一晩)、1%オスミウム酸で後固定した(4℃、2時間)。エポン樹脂に包埋後、Semi-thin(1.5um)切片を作製し、0.5%トルイジンブルー染色した。オールインワン蛍光顕微鏡(キーエンス)にて撮像後、ミエリン鞘の面積をハイブリッドセルカウント(キーエンス)により、定量した。定量は、腓骨神経内の全てのミエリン化した神経軸索を対象とした。統計は、t-testを用い、有意水準はP<0.05とした。
Figure 2022171558000005
結果を図1~3に示す。
坐骨神経挫滅処置により、運動神経伝導速度が低下した。イチジク抽出物は坐骨神経挫滅による運動神経伝導速度の低下を有意に抑制した(図1)ことから、イチジクによる神経再生促進作用が認められた。
また、坐骨神経挫滅処置により、筋重量が減少した。イチジク抽出物は坐骨神経挫滅による筋重量の減少を有意に抑制した(図2)。さらに、坐骨神経挫滅処置により、ミエリン面積の減少が認められた。イチジク抽出物は坐骨神経挫滅によるミエリン面積の減少を有意に抑制した(図3)。なお、各食餌摂取による体重の変化は認められなかった(表2)
Figure 2022171558000006
実施例2 両坐骨神経挫滅処置による神経再生モデルに対するイチジク抽出物の影響
8週齢のC57BL/6Jマウスを1週間予備飼育した後、実施例1と同様に、体重が等しくなるように、偽手術-対照食群(偽手術群)、神経挫滅-対照食群(対照群)、神経挫滅-イチジク食群(イチジク群)の3群に群わけした(偽手術群はn=6、その他の群はn=8)。各食餌で7日間、自由摂餌で飼育した後に、両足の坐骨神経挫滅処置を施した。マウス太もも部分を毛刈りし、1cm程度を切開した上で、坐骨神経を露出させた。ピンセットで坐骨神経を10秒間圧迫することで挫滅し、切開部を縫合し、イソジンにて消毒した。偽手術群は、マウス太もも部分を毛刈りし、1cm程度を切開し、坐骨神経を露出させたうえで、切開部を縫合し、イソジンにて消毒した。なお、坐骨神経挫滅後も各食餌を自由摂餌させた。餌組成は前記表1に示した。両足の坐骨神経挫滅4週後に運動機能を測定するために、ハンギングテストを行った。ハンギングテストは、マウスを地上25cmの高さに設置した格子状の金網の中央に載せて、金網をゆっくりと反転させ、落下までの滞在時間を計測した。測定時間は最大600秒とし、600秒を超えたマウスの滞在時間は600秒と記録した。各個体5回測定し、上位2値の平均を算出した。なお、各試行ごとに10分以上の休憩時間を設けた。統計は、Dunnett testを用い、有意水準はP<0.05(* p<0.05)とした。
結果を図4に示す。
対照群と比較して、イチジク群では運動機能低下が有意に抑制した(図4)。
実施例3 脊髄挫滅処置による中枢神経再生モデルに対するイチジク抽出物の影響
12カ月齢のゼブラフィッシュ(Danio rerio)を、体重や最大遊泳速度が均等になるように16匹ずつ群分けした。Shamおよび脊髄神経挫滅(Crush)群は通常の餌としておとひめ(日清丸紅飼料)を、イチジク投与群には同様の餌に水に溶かしたイチジク抽出物を3%混ぜた。その後、凍結乾燥機でフリーズドライ処理を行い、餌に対して20%量のラードでコーティングを行った。イチジク抽出物は、トルコ産ドライイチジクを1cm幅にカットした後、イチジク500g当たり5Lの99.5%のEtOHに室温で1週間浸漬してから吸引ろ過し、濃縮・凍結乾燥して得た。餌は1匹当たり1日10mg(朝9:00と夕16:00に5mgずつ2回)与えた。
脊髄挫滅(Spinal Cord Crush;SCC)処置は魚の背びれの付け根の位置を3mm程度剃刀で切開し、ピンセットで1秒間圧迫することで挫滅した。Sham群では切開のみを行った。術後、傷口からの感染症を防ぐためにメチレンブルー(日動、約6000倍希釈)溶液中で3日間、飼育した。SCC処置の1週間前から餌の投与を開始し、処置21日後まで飼育し、適宜最大遊泳速度および体重の測定を行った。
最大遊泳速度の測定は、流水運動負荷装置(パーソナルタンクPT-70S((株)西日本流体技研)をゼブラフィッシュ試験用に改造したもの)を用いて行った。10分間、1Hzの速度で魚を順化させた後、1分ごとに1Hz加速し、泳げなくなったステージの前時点での流速を最大遊泳速度と定義した(1Hz=4.5cm/sec)。「泳げなくなる」とは、魚が水流に逆らえず、水槽下流側の網に張り付いた状態を指す。統計は、t-testを用い、有意水準はP<0.05とした。
結果を図5に示す。
Crush群と比較して、イチジク抽出物投与(Crush+Fig)群において、最大遊泳速度の回復促進が確認された(エンドポイント時点でSham,Crush,Crush+Figそれぞれn=15,12,10)(図5)。一方で、体重はCrush群とCrush+Fig群の間に有意な差は認められなかった。
実施例4 脊髄挫滅処置による中枢神経再生モデルに対するイチジク抽出物の影響
6-7カ月齢のIsl1-GFPゼブラフィッシュ(Danio rerio)を、体重や最大遊泳速度が均等になるように8匹ずつ群分けした。Isl1-GFPゼブラフィッシュは、後脳の運動神経細胞と感覚神経節細胞および脊髄の2次運動神経細胞で特異的に発現するIsl1とGFP(蛍光物質)が結合しており、脊髄が蛍光を発するトランスジェニックゼブラフィッシュである。
脊髄神経挫滅(Crush)群は通常の餌としておとひめ(日清丸紅飼料)を、イチジク投与群には同様の餌に水に溶かしたイチジク抽出物を3%混ぜた。その後、凍結乾燥機でフリーズドライ処理を行い、餌に対して20%量のラードでコーティングを行った。イチジク抽出物は、トルコ産ドライイチジクを1cm幅にカットした後、イチジク500g当たり5Lの99.5%のEtOHに室温で1週間浸漬してから吸引ろ過し、濃縮・凍結乾燥して得た。餌は1匹当たり1日10mg(朝9:00と夕16:00に5mgずつ2回)与えた。
脊髄挫滅(Spinal Cord Crush;SCC)処置は魚の背びれの付け根の位置を3mm程度剃刀で切開し、ピンセットで1秒間圧迫することで挫滅した。術後、傷口からの感染症を防ぐためにメチレンブルー(日動、約6000倍希釈)溶液中で3日間、飼育した。SCC処置の1週間前から餌の投与を開始し、処置2週間後に解剖を実施した。その後4%PFA溶液に浸漬し、4℃にて固定を行った。OCTコンバウンド(サクラファインテック)で包埋し、-80℃で凍結後、ミクロトーム(Leica)を用いて切片を作成した(50μm)。切片をオールインワン蛍光顕微鏡(キーエンス)にて撮像後、SCC損傷部位の神経の太さを測定して非損傷部と比較し、神経再生率(%)とした。
結果を図6に示す。
Crush群と比較して、イチジク抽出物投与(Crush+Fig)群において、神経再生率の増加が確認された(Crush,Crush+Figそれぞれn=8)(図6)。統計は、t-testを用い、有意水準はP<0.05とした。
実施例5 自然老化による神経機能変化に対するイチジク抽出物の影響
16カ月齢(老齢)及び2.5カ月齢(若齢)のC57BL/6Jマウスを搬入し、個別ケージで飼育した。老齢マウスは18カ月齢時に、体重測定およびロータロッドテストによる運動機能測定、神経伝導速度測定による神経機能測定を行い、初期値に差が出ないように、老齢-対照食群(老齢対照群)、老齢―イチジク食群(老齢イチジク群)、老齢-対照食―運動群(老齢運動群)の3群に群分けした(各群n=10ずつ)。また、若齢マウスは対照食を摂取させた(若齢群)。各食餌で飼育し、運動群は回転かご付きのケージで飼育し、自由運動させた。4カ月後に運動機能を測定するために、ロータロッドテストを行った。ロータロッドテストは、ロータロッド(室町機械株式会社、MK-610A)にマウスを乗せ、初速4rpmから300秒かけて40rpmまで加速し、落下するまでの滞在時間を測定した。3回試行し、平均値を算出した。なお、初期測定時は4日間連続で測定を行い、最終日の平均値を初期値とした。また、4か月後に神経機能を測定するために神経伝導速度を測定した。神経伝導速度は、脛骨神経の神経伝導速度(motor nerve conduction velocity:MNCV)を筋電図誘発電位検査装置(日本光電工業株式会社、MEB-9402MB)で測定した。統計は、老齢対照群に対して、t testを用い、有意水準はP<0.05とした(* p<0.05,** p<0.01)。
6カ月後にマウスを解剖に供した。腓骨神経を単離し、2.5%グルタールアルデヒドで前固定し(4℃、一晩)、1%オスミウム酸で後固定した(4℃、2時間)。エポン樹脂に包埋後、Semi-thin(1.5um)切片を作製し、0.5%トルイジンブルー染色した。オールインワン蛍光顕微鏡(キーエンス)にて撮像後、神経軸索の本数とミエリン鞘の厚さ(g-ratio)を算出した。g-ratioは神経軸索の半径をミエリン鞘の厚さを併せた神経線維の半径で除すことで算出した。1個体あたり100本以上の神経を無作為に選択し、神経軸索半径および神経線維半径を測定した。
また、長趾伸筋を単離し、4%PFA溶液に浸漬し、4℃にて組織を固定した。腱をたよりに筋肉を4分割し、2本の断片を蛍光染色に供した。筋肉の断片は、PBSで洗浄した後、PBSに5%goat serum、3%Bovine serum album、1%Triton X-100を添加したブロッキング溶液中で室温、1時間反応させた。続いて、Synapsin1抗体(Cell Signaling)をブロッキング溶液で400倍に希釈した1次抗体溶液に置換し、4℃で一晩反応させた。PBSに0.05% Tween20を添加した溶液(T-PBS)で3回洗浄した後、Alexa Fluor 594 Anti-rabbit IgG および、Alexa Fluor 488 Conjugated α-bungarotoxin (Invitrogen)をブロッキング溶液でそれぞれ400倍に希釈した2次抗体溶液に置換し、室温にて2時間反応させた。T-PBSにより3回洗浄した後、VECTASHIELD Hard-Set Mounting Medium(Vector laboratories)を用いてスライドグラス上に封入した。共焦点レーザー顕微鏡(LSM880、カールツァイス)にて撮像後、1個体あたり50-100個程度のNMJの形態を評価した。アセチルコリン受容体(AChR)の断片化は、5個もしくはそれ以上に断片化したアセチルコリン受容体群が認められるNMJ、および、丸く異常な形のアセチルコリン受容体群が認められるNMJの割合を算出した。NMJの脱神経は、アセチルコリン受容体群が認められるにも拘らず、神経終末が重ならないNMJの割合を算出した。統計は、Dunnett testを用い、老齢対照群に対する比較を行った。有意水準はP<0.05とした。
餌組成は前記表1に示した。「イチジク抽出物」は、製造例1で調製した抽出物を用いた。
結果を図7に示す。
若齢群と比較して、老齢対照群では運動機能が有意に低下した(図7)。一方、老齢対照群と比較して、老齢イチジク群では、運動機能が有意に向上した。また、老齢運動群と老齢イチジク群では、運動機能に有意な差は認められなかった。以上の結果から、イチジク摂取により、加齢に伴う運動機能低下が抑制されることが明らかとなり、その効果は、運動に匹敵するものであった。
また、若齢群と比較して、老齢対照群では神経機能が有意に低下した(図8)。一方、老齢対照群と比較して、老齢イチジク群では、神経機能が有意に向上した。また、老齢運動群と老齢イチジク群では、神経機能に有意な差は認められなかった。以上の結果から、イチジク摂取により、加齢に伴う神経機能低下が抑制されることが明らかとなり、その効果は、運動に匹敵するものであった。
加齢により腓骨神経の神経軸索本数は減少した。一方で、イチジク抽出物や運動は加齢に伴う神経軸索本数の減少を有意に抑制した(図9a)。また、加齢によりg-ratioが増加した。これは、ミエリン鞘の薄層化を示す。イチジク抽出物は加齢に伴うg-ratioの増加を有意に抑制し、運動と比較しても優れた効果を示す傾向にあった(図9b)。
神経筋接合部の代表的な染色像を図10aに示した。図中の矢印は断片化AChR、矢頭は脱神経NMJを表す。断片化AChRおよび、脱神経NMJのいずれも加齢により出現割合が増加した。イチジク抽出物は断片化AChRには影響しないが、脱神経NMJの増加を有意に抑制した(図10b)。一方で、運動は、断片化AChRの増加を有意に抑制したが、脱神経NMJには影響しなかった(図10c)。
以上の結果から、イチジク抽出物は特に神経軸索に作用することで、加齢に伴う神経筋接合部の変性を防ぎ、身体機能の維持に寄与すると考えられる。
実施例6 神経障害性疼痛モデルに対するイチジク抽出物の影響
19カ月齢のC57BL/6Jマウスを1週間予備飼育した後、体重が等しくなるように、対照食群(対照群)、イチジク食群(イチジク群)の2群に群わけした(各群n=12)。各食餌で7日間、自由摂餌で飼育した後に、左足をSpared nerve injury(SNI)処置した。マウス左足の大腿部を毛刈りし、アルコールとイソジンで消毒した。大腿部を1cmほど切開し、左足の脛骨神経および腓骨神経を8-0絹糸で結紮した。結紮部位よりも遠位の脛骨神経および腓骨神経を2-4mmハサミで切除し、切開部を6-0絹糸で縫合した。なお、SNI処置後も各食餌を自由摂餌させた。SNI2週後にVon Freyテストにより、SNIによるアロディニア(通常では痛みを誘発しない刺激に対し、痛みとして認識される感覚異常の状態)の程度を測定した。Von Freyテストは、0.16gのモノフィラメント(室町機械株式会社、20PC AESTHE)をマウス足裏に3秒間垂直に押し当て、マウスの逃避反応の有無を測定した。各個体10回試行し、反応率を算出した。なお、試行ごとに5分以上の休憩時間を設けた。
餌組成は前記表1に示した。「イチジク抽出物」は、製造例1で調製した抽出物を用いた。
統計は、Mann Whitney Uを用い、有意水準はP<0.05とした(* p<0.05)。
結果を図11に示す。
対照群において、右足と比較して、SNI処置を施した左足ではフィラメントに対する反応率の有意な上昇が認められ、アロディニアの誘導が確認された(図11)。一方、対照群の左足と比較して、イチジク群の左足では、フィラメントに対する反応率の有意な低下が認められた。
以上の結果から、イチジク摂取により、SNIによる神経障害性疼痛の誘導が抑制されることが明らかとなった。
実施例7 神経障害性疼痛者に対するイチジクの影響
(1)対象者
神経障害性疼痛者に対するイチジクの有効性を検討するために、神経障害性疼痛を保持する方を対象とした。神経障害性疼痛の判定基準としては、神経障害性疼痛をスクリーニングするために開発された「神経障害性疼痛スクリーニング質問票」(図12)を用い、既報(臨整外47:565-574,2012)に従い合計スコアが6点以上を神経障害性疼痛とした。また、条件を揃えるために、神経障害性疼痛の部位を下肢(尻、太もも、すね、ふくらはぎ、ひざ、足首、足指)に限定した。すなわち、本試験の対象者は、下肢に神経障害性疼痛を保持する方とした。
(2)方法
試験は非盲検化で行った。ただし、参加者には、どちらの被験品に活性が期待されるかの情報を伝えずに行った。また、測定者は、それぞれの参加者がどちらの被験品を摂取しているか分からない状態で測定を行った。群わけは、年齢や「痛みの期間」および「痛みの程度」に偏りが出ないように2群に分けた。試験期間中(1ヵ月)は、ドライマンゴー(プラセボ)、あるいはドライイチジクを毎日、約40g摂取させた。事前測定および事後測定時(1カ月後)にアンケートおよび運動機能、神経機能を測定した。
(a)アンケート調査
痛みを感じる場所と強さ、日常生活への影響、及び痛みの改善状況についてのアンケートを、事前測定及び事後測定時に行った(図13-1(痛みを感じる場所と強さ)、図13-2(日常生活への影響)は事前・事後測定時に質問した。図14(痛みの改善状況)は事後測定時に質問した)。
(b)神経機能評価
事前測定および事後測定時に下記、神経機能評価を行った。
「神経伝導試験」:神経伝導測定装置(オムロン、HDN‐1000)を用い、うつぶせに寝た状態で測定した。専用のアルコールシート(プレップパッド)でセンサーが当たる部分を拭いた。装置の電極部位に専用ジェルを塗り、電極を踝とアキレス腱の中央に当て、センサー部を腓腹筋の正中線上に当てた。力を抜いた状態でパルス状に微弱電流を流し、神経伝導速度および振幅を測定した。痛みが強い方の足の結果を示した。
「感覚閾値試験」:Neurometer(CPT/C;Neurotron社)を用い、うつぶせの状態で測定した。専用のアルコールシートでセンサーが当たる部分を拭き、測定部位(踝外側部)にセンサーを貼り付けた。知覚できない低強度の電気刺激から開始し、その後、電流刺激を徐々に増加させながら試験参加者が刺激を知覚できた時点の電流強度(知覚閾値)を記録した。測定は、2000Hz(Aβ線維:振動)、250Hz(Aδ線維:触覚)、5Hz(C線維:痛覚、温冷覚、自律神経)の順番に行った。痛みが強い方の足の結果を示した。
(c)運動機能評価
事前測定および事後測定時に下記、運動機能評価を行った。
「立ち上がり動作」:運動機能分析装置(ザリッツBM-220;タニタ)付の体成分分析装置(InBody;インボディ・ジャパン)を用いて体組成及び総合的運動機能(椅子に座った状態で本体に足を乗せ、踏ん張って立ち上がる)を測定した。
(3)統計
2群間の比較はunpaired t testにより、事前測定および事後測定における2群間の比較はtwo-way Repeated-Measures ANOVAにより、統計解析を行った(* p<0.05、** p<0.01)。交互作用があった場合は、事前測定を100としたときのΔ変化率を算出し、unpaired t testにより群間の比較を行った(* p<0.05、** p<0.01)。
アンケートはWilcoxon signed-rank testにより、各群内において事前測定と事後測定のスコアを比較した(# p<0.05、## p<0.01)。
(4)結果
本試験の参加者背景を表3に示した。被験品摂取は、すべての参加者において95%以上の摂取率であった。
Figure 2022171558000007
1)アンケート
事後測定時に行った痛みの状態の変化に関するアンケートにおいて(図14)、“改善した”以上の回答をした割合を比較すると、マンゴー群では44%であったのに対し、イチジク群では、62%であった。さらに、イチジク群では、23%の方が“著明に改善した”と回答した(図15)。
1~3番目に痛みを感じる場所における痛みの強さの平均値を算出した“痛みスコア”を(図13-1の問2)、事前および事後測定においてそれぞれ比較した(図16)。その結果、イチジク摂取群においてのみ、事前測定と比較して“痛みスコア”が有意に減少した。
痛みによる日常生活への影響を検討するために、事前測定および事後測定において、日常生活に関する20項目のアンケートを行い(図13-2)、有意な変化が認められた項目を図17に示した。マンゴー群では、いずれの項目についても、有意な変化は認められなかったが、イチジク群では、20項目中14項目において、有意な改善が認められた。
2)運動機能
イチジク摂取による立ち上がり動作への影響を検討した(表4)。スピード、筋力スコア、総合得点において、摂取の種類と時間経過の間に交互作用が認められた。交互作用が認められた項目について、“事前測定値”を100としたときのΔ変化率を算出し、群間の比較を行った(図18)。マンゴー摂取群と比較して、イチジク摂取群では、スピード、筋力スコア、総合得点において、有意な改善が認められた。
Figure 2022171558000008
3)神経機能
イチジク摂取による神経機能への影響を検討した(表5)。
神経伝導検査の伝導速度、および感覚閾値試験の2000Hzにおいて、摂取の種類と時間経過の間に交互作用が認められた。交互作用が認められた痛覚閾値試験の2000Hzについて、“事前測定値”を100としたときのΔ変化率を算出し、群間の比較を行った(図19)。マンゴー摂取群と比較して、イチジク摂取群では、感覚閾値の有意な低下が認められた。
一方、神経伝導速度については、群間で事前値に有意な差が認められたため、群内の比較を行った(図20)。神経機能における各種測定項目において、交互作用が認められた伝導速度について、測定値を示した。グラフは平均値±標準誤差として示した。
マンゴー群では有意な変化は認められなかったが、イチジク群では事前値と比較して伝導速度が有意に向上した。
Figure 2022171558000009
実施例8 坐骨神経挫滅処置による神経再生モデルに対するイチジク成分の影響
7週齢のC57BL/6Jマウスを1週間予備飼育した後、体重が等しくなるように、対照食群(対照群)、イチジク食群(イチジク群)、混合成分食 等倍量群(混合成分群1)、混合成分食 2倍量群(混合成分群2)の4群に群わけした(各群n=12)。各食餌で7日間、自由摂餌で飼育した後に、右足の坐骨神経挫滅処置を施した。マウス太もも部分を毛刈りし、1cm程度を切開した上で、坐骨神経を露出させた。ピンセットで坐骨神経を10秒間圧迫することで挫滅し、切開部を縫合し、イソジンにて消毒した。偽手術群は、マウス太もも部分を毛刈りし、1cm程度を切開し、坐骨神経を露出させたうえで、切開部を縫合し、イソジンにて消毒した。なお、坐骨神経挫滅後も各食餌を自由摂餌させた。餌組成は表6に示した。
「イチジク抽出物」は、製造例1で調製した抽出物を用いた(実施例9及び10においても同様)。
「混合成分」は、イチジク抽出物中に含まれるプロトカテク酸、p-ヒドロキシ安息香酸、バニリン酸及び2-デオキシ-リボノ-1,4-ラクトンの混合物を指し、各化合物は以下に示す市販品(型番、製造元)を使用した(実施例9及び10においても同様)。
・プロトカテク酸(P6857, LKT Labs, Inc)
・p-ヒドロキシ安息香酸(084-04102, 富士フイルム和光純薬)
・バニリン酸(084-04462, 富士フイルム和光純薬)
・2-デオキシ-リボノ-1,4-ラクトン(QB-2141,富士フイルム和光純薬)
混合成分群における、等倍量とは、各成分がイチジク群に含まれる相当量を指し、2倍量とはその2倍量を指す。
坐骨神経挫滅5週後にマウスを解剖に供した。腓骨神経を単離し、2.5%グルタールアルデヒドで前固定し(4℃、一晩)、1%オスミウム酸で後固定した(4℃、2時間)。エポン樹脂に包埋後、Semi-thin(1.5um)切片を作製し、0.5%トルイジンブルー染色した。オールインワン蛍光顕微鏡(キーエンス)にて撮像後、ミエリン鞘の面積をハイブリッドセルカウント(キーエンス)により、定量した。定量は、腓骨神経内の全てのミエリン化した神経軸索を対象とした(各群n=6-9)。統計は、Dunnett testを用い、有意水準はP<0.05とした(* p<0.05,** p<0.01,*** p<0.001)
Figure 2022171558000010
結果を図21に示す。
イチジク抽出物および混合成分群は坐骨神経挫滅によるミエリン面積の減少を有意に抑制した(図21)。なお、各食餌摂取による体重の変化は認められなかった(表7)
Figure 2022171558000011
実施例9 脊髄挫滅後の運動機能低下に及ぼすイチジク成分組合せの作用
12カ月齢のゼブラフィッシュ(Danio rerio)を、体重や最大遊泳速度が均等になるように24匹ずつ群分けした(偽手術群は6匹)。偽手術群および脊髄神経挫滅(対照群)は通常の餌としておとひめ(日清丸紅飼料)を、プロトカテク酸+ラクトン群、p―ヒドロキシ安息香酸+ラクトン群、バニリン酸+ラクトン群にはそれぞれ50%EtOH(純水とEtOH)に溶解したプロトカテク酸、p-ヒドロキシ安息香酸、バニリン酸、2-デオキシ-リボノ-1,4-ラクトン(以降、「ラクトン」と称する)を0.015%、0.012%、0.012%、0.018%混ぜた。ゼブラフィッシュでは、活性成分が水中に溶出することを考慮し、イチジク抽出物に含まれる含有相当量の5-100倍量を投与した。
その後、凍結乾燥機でフリーズドライ処理を行い、餌に対して20%量のラードでコーティングを行った。餌は1匹当たり1日10mg(朝9:00と夕16:00に5mgずつ2回)与えた。
脊髄挫滅(Spinal Cord Crush;SCC)処置は魚の背びれの付け根の位置を3mm程度剃刀で切開し、ピンセットで1秒間圧迫することで挫滅した。Sham群では切開のみを行った。術後、傷口からの感染症を防ぐためにメチレンブルー(日動、約6000倍希釈)溶液中で3日間、飼育した。SCC処置の1週間前から餌の投与を開始し、処置21日後まで飼育し、適宜最大遊泳速度および体重の測定を行った。
最大遊泳速度の測定は、流水運動負荷装置(パーソナルタンクPT-70S((株)西日本流体技研)をゼブラフィッシュ試験用に改造したもの)を用いて行った。10分間、1Hzの速度で魚を順化させた後、1分ごとに1Hz加速し、泳げなくなったステージの前時点での流速を最大遊泳速度と定義した(1Hz=4.5cm/sec)。「泳げなくなる」とは、魚が水流に逆らえず、水槽下流側の網に張り付いた状態を指す。統計は、Dunnを用い、有意水準はP<0.05とした(* p<0.05)。
結果を図22に示す。
対照群と比較して、プロトカテク酸+ラクトン群、バニリン酸+ラクトン群において、最大遊泳速度の回復促進が確認された(エンドポイント時点で各群それぞれn=6,9,10)(図22)。
実施例10 脊髄挫滅後の運動機能低下に及ぼすイチジク成分単体の作用
6カ月齢のゼブラフィッシュ(Danio rerio)を、体重や最大遊泳速度が均等になるように24匹ずつ群分けした(偽手術群は5匹)。偽手術群および脊髄神経挫滅(対照群)は通常の餌としておとひめ(日清丸紅飼料)を、プロトカテク酸群、バニリン酸群、ラクトン群には同様の餌に50%EtOH(純水とEtOH)に溶かした各成分(プロトカテク酸、バニリン酸、ラクトン)をそれぞれ0.015%、0.012%、0.018%混ぜた。その後、凍結乾燥機でフリーズドライ処理を行い、餌に対して20%量のラードでコーティングを行った。餌は1匹当たり1日10mg(朝9:00と夕16:00に5mgずつ2回)与えた。
脊髄挫滅(Spinal Cord Crush;SCC)処置は魚の背びれの付け根の位置を3mm程度剃刀で切開し、ピンセットで1秒間圧迫することで挫滅した。Sham群では切開のみを行った。術後、傷口からの感染症を防ぐためにメチレンブルー(日動、約6000倍希釈)溶液中で3日間、飼育した。SCC処置の1週間前から餌の投与を開始し、処置21日後まで飼育し、適宜最大遊泳速度および体重の測定を行った。
最大遊泳速度の測定は、流水運動負荷装置(パーソナルタンクPT-70S((株)西日本流体技研)をゼブラフィッシュ試験用に改造したもの)を用いて行った。10分間、1Hzの速度で魚を順化させた後、1分ごとに1Hz加速し、泳げなくなったステージの前時点での流速を最大遊泳速度と定義した(1Hz=4.5cm/sec)。「泳げなくなる」とは、魚が水流に逆らえず、水槽下流側の網に張り付いた状態を指す。統計は、Dunn testを用い、有意水準はP<0.05とした。
結果を図23に示す。
対照群と比較して、各群において最大遊泳速度の回復促進は確認されなかった(エンドポイント時点で各群それぞれn=4,7,7,5,7)(図23)。

Claims (25)

  1. イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経障害の予防又は改善剤。
  2. イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経再生促進剤。
  3. イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経損傷後の運動機能回復促進剤。
  4. イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経損傷後の筋萎縮抑制剤。
  5. イチジク又はその抽出物を有効成分とする神経障害性疼痛の予防又は改善剤。
  6. イチジク抽出物を有効成分とする神経障害の予防又は改善用食品。
  7. イチジク抽出物を有効成分とする神経再生促進用食品。
  8. イチジク抽出物を有効成分とする神経損傷後の運動機能回復促進用食品。
  9. イチジク抽出物を有効成分とする神経損傷後の筋萎縮抑制用食品。
  10. イチジク抽出物を有効成分とする神経障害性疼痛の予防又は改善用食品。
  11. イチジクがイチジクの果実である、請求項1~5のいずれか1項記載の剤又は請求項6~10のいずれか1項記載の食品。
  12. 神経障害が中枢若しくは末梢神経の物理的損傷による神経機能の低下、又は加齢に伴う神経機能低下である、請求項1記載の剤又は請求項6記載の食品。
  13. 神経障害性疼痛が自発痛、感覚過敏又はアロディニアを含む疼痛である、請求項5記載の剤又は請求項10記載の食品。
  14. 下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経障害の予防又は改善剤。
    Figure 2022171558000012
    (式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
  15. 下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経再生促進剤。
    Figure 2022171558000013
    (式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
  16. 下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経損傷後の運動機能回復促進剤。
    Figure 2022171558000014
    (式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
  17. 下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経損傷後の筋萎縮抑制剤。
    Figure 2022171558000015
    (式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
  18. 下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経障害性疼痛の予防又は改善剤。
    Figure 2022171558000016
    (式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
  19. 下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経障害の予防又は改善用食品。
    Figure 2022171558000017
    (式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
  20. 下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経再生促進用食品。
    Figure 2022171558000018
    (式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
  21. 下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経損傷後の運動機能回復促進用食品。
    Figure 2022171558000019
    (式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
  22. 下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経損傷後の筋萎縮抑制用食品。
    Figure 2022171558000020
    (式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
  23. 下記式(1)で表されるラクトン化合物と下記式(2)で示されるヒドロキシ安息香酸化合物又はその塩を組み合わせてなる神経障害性疼痛の予防又は改善用食品。
    Figure 2022171558000021
    (式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
  24. 神経障害が中枢若しくは末梢神経の物理的損傷による神経機能の低下、又は加齢に伴う神経機能低下である、請求項14記載の剤又は請求項19記載の食品。
  25. 神経障害性疼痛が自発痛、感覚過敏又はアロディニアを含む疼痛である、請求項18記載の剤又は請求項23記載の食品。
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