JP2022166967A - ウレタンプレポリマーの製造方法 - Google Patents

ウレタンプレポリマーの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】貯蔵安定性およびハンドリング性、硬化性に優れる高透明なウレタンプレポリマーを安定的に製造する製造方法、および高透明で強度が高く表面タックが少ないウレタン塗膜の製造方法を提供する。【解決手段】下記の(X)工程、(Y)工程を含む、ウレタンプレポリマー(E)の製造方法。(X)工程;数平均分子量2000以上のポリアルキレンオキシド(A)を含むポリオールとポリイソシアネート(C)を、ポリオールの活性水素基の総量に対するポリイソシアネート(C)のNCO基の比率(NCO/OH比)が1.30~5.00の割合となる量比で混合し、NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)を製造する工程。(Y)工程;芳香族アミン残基を有する数平均分子量2000未満のポリアルキレンオキシド(B)を含むポリオールと(X)工程により製造したウレタンプレポリマー(D)を(X)工程及び(Y)工程で混合するポリオールの活性水素基の総量に対する前記ポリイソシアネート(C)のNCO基の総量(NCO/OH比)が0.10~0.70の割合となる量比で混合し、活性水素基末端のウレタンプレポリマー(E)を製造する工程。【選択図】 なし

Description

本開示は、ウレタンプレポリマーの製造方法に関する。
片末端に不飽和基を有する副生モノオール(以下、不飽和モノオールと記す)を多量に含むポリアルキレンオキシドが、ポリウレタンの原料として用いられている。しかしながら、このポリアルキレンオキシドを用いてポリウレタンを得ようとすると、イソシアネート化合物との反応に伴う硬化(固化)に時間を要して生産性が損なわれるという問題が生じる。
更に、このような不飽和モノオールを多量に含むポリアルキレンオキシドから得られるポリウレタンは、高分子量になりづらく、引張破断伸びが小さく、引張破断強度も小さい。これに対して、不飽和モノオールを多量に含むポリアルキレンオキシドでも、イソシアネート基の平均官能基数が多いイソシアネート化合物と反応させることで高分子量のポリウレタンを得ることができる。しかしながら、この場合、ポリウレタンは直鎖状に高分子量化するのではなく、密な架橋構造を有する架橋体となるので、得られるポリウレタンは引張破断伸びが小さく、引張破断強度が小さくなってしまう。
一方、不飽和モノオールは比較的低分子量なので、不飽和モノオールが多量に含まれた従来のポリアルキレンオキシドを含む組成物は粘度が低く、それらの組成物からポリウレタンを得るために塗工機などで塗工した際には、塗工しやすいという利点がある。
ここで、特許文献1は、不飽和モノオールが少ないポリアルキレンオキシドと芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド、1つの水酸基とエチレンオキシド残基を有するポリアルキレンオキシドを含むウレタン形成性組成物、およびそれを用いたウレタンプレポリマーを含むウレタン形成組成物を用いることで、塗工性と生産性が良好で、引張強度の高いポリウレタンが得られることを開示している。
しかしながら、特許文献1に記載のこれらのポリウレタン形成性組成物、およびそれを用いたウレタンプレポリマーは、相溶化剤として働きやすい低分子量の不飽和モノオールが少ないポリアルキレンオキシドを必須成分とし、触媒活性を有する剛直な芳香族アミンポリオールを用いるため、特に不飽和モノオールが少ないポリアルキレンオキシドとの相溶性の悪化等により溶剤量等の反応条件次第で透明性が悪化しやすく、また粒子状の析出物やゲル状物の付着等が発生して製造の安定性や貯蔵安定性が十分ではない場合があった。
そのため、塗工性と生産性が良好で、剛直な芳香族アミンポリオールを用い強度の高い高透明のポリウレタンの形成に資するウレタンプレポリマーの製造方法であって、不飽和モノオールが少ないポリアルキレンオキシドの使用有無、撹拌や溶剤量等の反応条件によらず安定的に析出物やゲル状物がなく貯蔵安定性およびハンドリング性に優れ、硬化性や透明性が良好なウレタンプレポリマーを安定的に製造できる製造方法、およびそれにより得られる安定的に高透明で強度が高く表面タックが少ないポリウレタンの製造方法が求められていた。
特開2020-158551号公報
貯蔵安定性およびハンドリング性、硬化性に優れる高透明なウレタンプレポリマーを安定的に製造する製造方法、および高透明で強度が高く表面タックが少ないウレタン塗膜の製造方法を提供する。
本発明の各態様は以下に示す[1]~[10]である。
[1]少なくとも、下記の(X)工程、(Y)工程を含む、ウレタンプレポリマー(E)の製造方法。
(X)工程;数平均分子量2000以上のポリアルキレンオキシド(A)を含むポリオールとポリイソシアネート(C)を、ポリオールの活性水素基の総量に対するポリイソシアネート(C)のNCO基の比率(NCO/OH比)が1.30~5.00の割合となる量比で混合し、NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)を製造する工程。
(Y)工程;芳香族アミン残基を有する数平均分子量2000未満のポリアルキレンオキシド(B)を含むポリオールと(X)工程により製造したウレタンプレポリマー(D)を、前記(X)工程及び(Y)工程で混合するポリオールの活性水素基の総量に対する前記ポリイソシアネート(C)のNCO基の総量(NCO/OH比)が0.10~0.70の割合となる量比で混合し、活性水素基末端のウレタンプレポリマー(E)を製造する工程。
[2](Y)工程におけるポリアルキレンオキシド(B)が、炭素数2~10のアルキレンオキシド残基を有し、1分子中に活性水素基を2つ以上有する。[1]に記載のウレタンプレポリマー(E)の製造方法。
[3](Y)工程におけるポリアルキレンオキシド(B)が、4,4’-ジフェニルメタンジアミン残基、2,4-トリレンジアミン残基及び2,6-トリレンジアミン残基からなる群より選ばれる1種類以上の残基を含む、[1]又は[2]に記載のウレタンプレポリマー(E)の製造方法。
[4](X)工程におけるポリイソシアネート(C)が、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート及びこれらの変性体からなる群より選ばれる1種以上を含む、[1]乃至[3]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー(E)の製造方法。
[5](X)工程において、ポリオールとポリイソシアネート(C)の総量100重量部に対して、金属成分を含むウレタン化触媒0.001~0.2重量部を接触する、[1]乃至[4]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー(E)の製造方法。
[6]ウレタンプレポリマー(E)が、25℃条件にて、粘度が1~100Pa・s、且つ、1cm厚みでのHazeが15%以下である、[1]乃至[5]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー(E)の製造方法。
[7](X)工程において、グリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル、トルエン及びメチルエチルケトンからなる群より選ばれる1種以上を含む有機溶剤を、固形分濃度が60~99重量%の範囲となる量比で混合する、[1]乃至[6]のいずれかに記載のウレタンプレポリマー(E)の製造方法。
本発明によれば、高い強度を発現するために必要な剛直な芳香族アミンポリオールを用いても、不飽和モノオールが少ないポリアルキレンオキシドの使用有無や反応条件、溶剤量によらず安定的に析出物やゲル状物がなく、相溶性や透明性が良好で得られるウレタンプレポリマーの製造方法を提供することができる。
以下に本発明を実施するための例示的な態様を詳細に説明する。 本発明の一態様にかかるウレタンプレポリマーの製造方法は、少なくとも、下記の(X)工程、(Y)工程を含む、ウレタンプレポリマー(E)の製造方法である。
(X)工程;数平均分子量2000以上のポリアルキレンオキシド(A)を含むポリオールとポリイソシアネート(C)を、ポリオールの活性水素基の総量に対するポリイソシアネート(C)のNCO基の比率(NCO/OH比)が1.30~5.00の割合となる量比で混合し、NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)を製造する工程。
(Y)工程;芳香族アミン残基を有する数平均分子量2000未満のポリアルキレンオキシド(B)を含むポリオールと(X)工程により製造したウレタンプレポリマー(D)を、前記(X)工程及び(Y)工程で混合するポリオールの活性水素基の総量に対する前記ポリイソシアネート(C)のNCO基の総量(NCO/OH比)が0.10~0.70の割合となる量比で混合し、活性水素基末端のウレタンプレポリマー(E)を製造する工程。

<(X)工程>
(X)工程は、数平均分子量2000以上のポリアルキレンオキシド(A)を含むポリオールとポリイソシアネート(C)を混合する工程であって、ポリアルキレンオキシド(A)を含むポリオールの活性水素基の総量に対するポリイソシアネート(C)のNCO基の比率(NCO/OH比)が1.30~5.00の割合となる量比で混合し、NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)を製造する工程である。
特に限定されないが、必要に応じてその他ポリオールやモノオール、ウレタン化触媒、溶剤、可塑剤、その他の添加剤等を加えて製造してもよい。また得られるウレタンプレポリマーの性状を安定化するため、(X)工程の前工程として、原料の脱水工程や調湿工程などを設け、任意の水分値に設定してもよく、水分値は特に限定されないが、2000ppm以下となっていることが好ましい
(X)工程のウレタンプレポリマー(D)の製造には、原料を均一に分散、反応することができる方法であれば特に限定されるものではなく、従来公知の様々な撹拌方法を用いることができ、例えば、撹拌機を用いて撹拌する方法が挙げられる。撹拌機としては、例えば、汎用撹拌機、自転公転ミキサー、ディスパー分散機、ディゾルバー、ニーダー、ミキサー、ラボプラストミル、プラネタリーミキサー等を挙げることができる。撹拌翼の形状としては特に限定されないが、タービン翼、パドル翼、ファウドラー翼、アンカー翼、フルゾーン翼等のいずれかであることが好ましい。なかでも汎用性および撹拌効率が高いため、より経済的に均一に調製がしやすく、溶剤量等の反応条件によらずウレタンプレポリマーの高分子量成分が生成しにくいことから、アンカー翼であることが好ましい。バッフルの有無は特に限定されないが、均一に分散できゲル化を抑制しやすいため、バッフルとして作用する邪魔板や棒状物、内部コイル等から選ばれる1種以上があることが好ましい。
反応温度としては、特に限定されないが、好ましくは20~130℃の範囲であり、効率的に反応が進行しやすくかつ反応制御が容易でより高透明となりやすいため、更に好ましくは40~90℃の範囲であり、最も好ましくは60~80℃の範囲である。また除熱しやすく反応を制御しやすいため、緩やかに昇温したり、20~60℃の比較的低温で一定時間反応後に所定温度へ昇温してもよく、反応後半に触媒を添加してもよい。外気中の水分の影響を低減するため、窒素等の不活性ガス下で反応を行うことが好ましい。
反応時間としては、触媒量や反応条件により異なるため、特に限定されないが、外気水分等での副反応による白濁が発生しにくく反応の終点も見極めやすいため、10分以上24時間以内であることが好ましく、更に好ましくは30分以上12時間以内であり、最も好ましくは1時間以上6時間以内である。なかでも、性状が安定しやすいことからFT-IRや滴定法を用いてNCO基の減衰を追跡し、減衰が停止するまで反応することが好ましい。
添加方法は、特に限定されないが、反応条件によらず局所反応による白濁やゲル化を抑制しやすいため、ポリアルキレンオキシド(A)を含むポリオールに対してポリイソシアネート(C)を加えて、混合することが好ましく、ポリイソシアネート(C)の添加は一度に全量加えても、除熱等のため分割添加してもよい。また触媒を用いる場合、ポリイソシアネート(C)を反応前に均一に分散するためポリイソシアネート(C)より後に添加することが好ましいが、触媒を均一に分散するためポリイソシアネート(C)より先に添加し混合してもよい。

<ポリアルキレンオキシド(A)を含むポリオール>
(X)工程に用いるポリオールに含まれるポリアルキレンオキシド(A)は、数平均分子量2000以上であることを特徴とする。数平均分子量2000未満の場合、剛直な芳香族アミンポリオールを用いても、本発明の製造方法および常法のいずれの製造方法においても撹拌条件や反応条件、溶剤量によらず析出しにくく相溶性や透明性が良好となりやすいが、得られるポリウレタンが硬くなりすぎて、引張強度が劣るため使用が困難である。(X)工程のポリアルキレンオキシド(A)の好ましい数平均分子量としては、2500以上30000未満であり、更に好ましくは3000以上13000未満であり、最も好ましくは3500以上9000未満である。なお、ポリアルキレンオキシド(A)の数平均分子量は、JIS K-1557-1に記載の方法により算出したポリアルキレンオキシド(A)の水酸基価と、ポリアルキレンオキシド(A)1分子中の水酸基数と、から算出することができる。ポリアルキレンオキシド(A)の水酸基価(mgKOH/g)としては、特に限定されないが、好ましくは3以上250以下であり、更に好ましくは5以上180以下であり、最も好ましくは8以上70以下である。
ポリアルキレンオキシド(A)の25℃における粘度は、特に限定されず、用途により適宜選択されるが、好ましくは100mPa・s以上200000mPa・s以下であり、更に好ましくは200mPa・s以上10000mPa・s以下である。ポリアルキレンオキシド(A)の25℃における粘度が100mPa・s以上200000mPa・s以下であれば、ポリウレタン製品を得るために塗工機などで塗工する際に、塗工しやすくなるので好ましい。ここで、25℃での「粘度」とは、JIS K1557-5 6.2.3項に準拠し、コーン・プレート回転粘度計を用いて、せん断速度0.1(1/s)で測定した値である。
ポリアルキレンオキシド(A)は、炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基を含むことが好ましい。炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基として特に限定されず、例えば、炭素数3~20のアルキレンオキシド残基を挙げることができる。具体的には、プロピレンオキシド残基、1,2-ブチレンオキシド残基、2,3-ブチレンオキシド残基、イソブチレンオキシド残基、ブタジエンモノオキシド残基、ペンテンオキシド残基、スチレンオキシド残基、シクロヘキセンオキシド残基等が挙げられる。これらのアルキレンオキシド残基の中でも、ポリアルキレンオキシド(A)を得るための原料の入手が容易で、得られるポリアルキレンオキシド(A)の工業的価値が高いことから、プロピレンオキシド残基が好ましい。
また、ポリアルキレンオキシド(A)は、炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基として、単一のアルキレンオキシド残基のみを含んでいてもよく、2種類以上のアルキレンオキシド残基を含んでいてもよい。なお、2種以上のアルキレンオキシド残基が含まれる場合は、例えば、1種のアルキレンオキシド残基が連鎖的に繋がったものに、それ以外のアルキレンオキシド残基が連鎖的に繋がったものであってもよく、2種以上のアルキレンオキシド残基がランダムに繋がったものでもよい。さらに、ポリアルキレンオキシド(A)は、炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基を含んでいればよく、これに加えて、炭素数2のエチレンオキシド残基を含んでいてもよい。
また、ポリアルキレンオキシド(A)は1分子中に2つ以上の水酸基を有することが好ましい。ポリアルキレンオキシド(A)は、1分子中に2つ以上の水酸基を有するものであれば、水酸基数は特には限定されないが、1分子中の水酸基数が6以下であることが好ましく、さらに好ましくは1分子中の水酸基数が3以下である。ポリアルキレンオキシド(A)の1分子中の水酸基数が6以下であると、得られるウレタン硬化物の架橋構造が密になり難く、引張破断伸びと引張破断強度が更に大きくなるため、好ましい。
ポリアルキレンオキシド(A)の水酸基の1級比率は、特に限定されないが、0~90%の範囲であることが好ましい。触媒としてトリフルオロボランやトリスペンタフルオロフェニルボラン等のカチオン重合系で合成する場合、アルキレンオキシドとしてエチレンオキシド以外のプロピレンオキシド等を用いても1級比率は高くなりやすく、水酸化カリウム等の塩基系触媒やDMC触媒等の金属系触媒を用いる場合、1級比率は低くなりやすいが、末端構造を含め特に限定されず、いずれも好適に使用することができる。
また、ポリアルキレンオキシド(A)は、ウレタンプレポリマーの製造が容易になることから、常温で液状であることが好ましい。
ポリアルキレンオキシド(A)の不飽和度は、不飽和モノオールが少ないポリアルキレンオキシドの使用有無によらずプレポリマーやウレタン硬化物を高透明化しやすいため特に限定されないが、芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)等の多官能のポリオールの増量や2官能でもポリプロピレンオキシドより剛直な骨格を有するポリオールが多く必要となりやすいため、0.010meq/g以下であることが好ましく、更に好ましくは0.007meq/g以下であり、最も好ましくは0.004meq/g以下である。このような不飽和度の低いポリアルキレンオキシド(A)は、特に限定されないが、イミノフォスファゼニウム塩とルイス酸触媒を用いて活性水素化合物にアルキレンオキシドを付加することで製造することができる。
ポリアルキレンオキシド(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、分子量分布の狭いポリアルキレンオキシドの使用有無によらずプレポリマーやウレタン硬化物を高透明化しやすいため特に限定されないが、プレポリマーの分子量分布が狭くなりやすくハンドリング性がより優れるため、1.059以下であることが好ましく、更に好ましくは1.039以下であり、最も好ましくは1.004~1.029である。
(X)工程において、ポリオールの活性水素基の総量に対するポリイソシアネート(C)のNCO基の比率を調整する等のため、ポリアルキレンオキシド(A)に加えて後述するポリアルキレンオキシド(B)やその他ポリオール、モノオール(AC)を加えてもよい。なかでも、少量のポリアルキレンオキシド(B)を(X)工程で加えることで、遊離(未反応)のポリイソシアネート(C)を低減でき、(Y)工程でのポリアルキレンオキシド(B)とポリイソシアネート(C)の連鎖的な反応を抑制しやすく、得られるウレタンプレポリマー(E)の塗工性が向上するとともにウレタン硬化物が高い透明性を発現しやすいため好ましい。
(X)工程において、ポリオールはポリアルキレンオキシド(A)に加えて、ポリアルキレンオキシド(B)やその他ポリオール、モノオール(AC)を加える場合、多すぎると系中の水酸基量が増加しNCO/OH比が低くなりすぎて、NCO/OH比が1.30を下回ってNCO末端のプレポリマーの形成が困難となる場合やゲル化や増粘しやすく成形性の悪化や得られるプレポリマーやウレタン硬化物の透明性が悪化する場合があるため、ポリアルキレンオキシド(A)100重量部に対してポリアルキレンオキシド(B)やその他ポリオール、モノオール(AC)の総量が30重量部以下の範囲で加えることが好ましい。なかでも、ハンドリング性が良好で、より高い透明性を発現しやすく更に高い強度を発現しやすいため、0.1~20重量部以下の範囲で加えることが好ましく、0.5~15重量部の範囲で加えることが最も好ましい。
その他ポリオール、モノオール(AC)としては、プレポリマーの透明性や諸物性を損なわないものを適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、マンニッヒポリオール、シュークローズポリオール、脂肪族ジアミンポリオール、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、フッ素化ポリオール、シリコーン含有ポリオール、リン系ポリオール等の市販されているポリオール類、ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールモノアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールモノフェニルエーテル、シリコーン含有モノオール等のモノオール類、シクロヘキサンジメタノール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等の低分子量有機化合物等が挙げられる。
なかでも、塗工機などで塗工する際の塗工性が特に優れるために、ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールモノアルケニルエーテル及びポリオキシアルキレングリコールモノフェニルエーテルからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、なかでも塗工性に優れやすく、高い透明性を維持しつつ、得られるウレタンの汚染性が低くタック性が低くなりやすいことから、数平均分子量250以上1300以下のポリオキシエチレングリコールモノメチルエーテルを加えることが好ましい。
反応性基を有するシリコーン成分(モノオールやポリオール、ポリアミン)や反応性基を有するフッ素成分等は用いないことが好ましいが、用いる場合は(X)工程にて添加することで分子鎖に取り込まれやすく汚染性の悪化が少なくなりやすいことから好ましい。
<ポリイソシアネート(C)>
(X)工程に用いるポリイソシアネート(C)は、イソシアネート基の平均官能基数が2.0以上であることが好ましいが、特に限定されるものではない。ポリイソシアネート(C)としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、および、これらとポリアルキレンオキシドとが反応することで得られる変性イソシアネート、ならびに、これらの2種以上の混合物が挙げられる。更に、これらのイソシアネートにウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基又はオキサゾリドン基を含む変性物やポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等の縮合体が挙げられる。これらのイソシアネートは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
これらの中でも、生産性に優れ、高透明で着色の少ないウレタン形成性組成物を得やすいために、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート及びこれらの変性体からなる群より選ばれる1種類以上が好ましい。1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、脂肪族イソシアネート含有のプレポリマー、脂環式イソシアネートの含有プレポリマー、または、これらのイソシアネートのウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基もしくはオキサゾリドン基含有変性物がより好ましい。
なかでも、反応性が高く、生産性が良好であり得られるウレタンプレポリマーの粘度の経時での上昇が少なく貯蔵安定性に優れるため、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートやこれらの変性体を含むことが好ましい。また、反応性が異なる1級NCO基と2級NCO基を有し、連鎖反応による高分子量化を抑制しやすく塗工性の悪化や高粘調化の抑制が容易でありNCO/OH比を2.50以下の低めに設定しやすくウレタンプレポリマーおよびそれを用いて得られるウレタン硬化物の透明性がより顕著に良好となりやすいため、イソホロンジイソシアネートを含むことも好ましい。したがって、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートやこれらの変性体、イソホロンジイソシアネートから選ばれるいずれか1種以上を含むことが好ましい。

<(X)工程の原料混合比率>
(X)工程では、ポリアルキレンオキシド(A)を含むポリオールの活性水素基の総量に対するポリイソシアネート(C)のNCO基の比率(NCO/OH比)が1.30~5.00の割合となる量比で混合することを特徴とする。
ポリアルキレンオキシド(A)を含むポリオールの活性水素基の総量に対するポリイソシアネート(C)のNCO基の比率(NCO/OH比)が1.30未満では、NCO/OH比が1.00に近くなって高分子量化するため塗工性が悪くゲル化や高粘調化の抑制が困難であるか、NCO/OH比が1.00を下回って水酸基末端となって(Y)工程にてポリアルキレンオキシド(B)と反応せず且つ未反応のポリアルキレンオキシド(A)が残存して相溶性が悪化し、安定的に高い透明性のプレポリマー、ウレタン硬化物を得られない。
また、NCO/OH比が5.00を超えると(X)工程で得られる中間体中に遊離(未反応)のポリイソシアネート(C)が増加するため、(Y)工程にて加えるポリアルキレンオキシド(B)と連鎖的に反応して不溶性の成分やゲル分を形成、析出しやすいため安定的に使用することが困難であるとともに、得られるウレタン硬化物も透明性が悪化しやすい。
したがって、(X)工程では、NCO/OH比が1.30~5.00の割合となる量比で混合することで、塗工性の悪化やプレポリマーおよび得られるウレタン硬化物の透明性の悪化を抑制することができる。
なかでも、ポリアルキレンオキシド(A)とポリイソシアネート(C)がモル比で1:2で反応した構造を主として生成しやすくなって、連鎖的に反応した高分子量の中間体や遊離(未反応)のポリイソシアネート(C)を含みにくく、続く(Y)工程で相溶性が低く多官能の芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)を用いても得られるプレポリマーおよびウレタン硬化物の透明性が顕著に良好となりやすいため、(X)工程ではNCO/OH比が1.60~4.40の割合となる量比で混合することが好ましく、更に好ましくは1.90~3.60の範囲である。
なかでも、ポリイソシアネート(C)としてヘキサメチレンジイソシアネートやその誘導体などのNCO基の反応性に差がないポリイソシアネート(C)を用いる場合、(X)工程でのNCO/OH比が2.20~3.60の範囲、ポリイソシアネート(C)としてイソホロンジイソシアネートを用いる場合、(X)工程でのNCO/OH比が2.00~3.10の範囲であると、ゲル化や高粘度化を抑制しつつ透明性が良好となりやすいため最も好ましい。

<(X)工程でのその他原料>
(X)工程において、必要に応じてウレタン化触媒、溶剤、可塑剤、レベリング剤、その他の添加剤を加えてもよい。なかでも、効率的にNCO末端のウレタンプレポリマーを形成しやすく、かつ副反応が少なく、より高透明のウレタンプレポリマーおよびウレタン硬化物を得られやすいため、ポリオールとポリイソシアネートの総量100重量部に対して、金属成分を含むウレタン化触媒0.001~0.2重量部を接触することでNCO末端のウレタンプレポリマー(E)を製造することが好ましく、さらに好ましくは金属成分を含むウレタン化触媒が0.003~0.1重量部であり、最も好ましくは0.005~0.05重量部の範囲である。
金属成分を含むウレタン化触媒としては、金属成分を含みウレタン化活性を示す化合物であれば特に限定されないが、Fe、Sn、Zr、Ti、Alのいずれか一つ以上の金属を含む有機金属化合物であることが好ましい。なかでも、入手が容易であり触媒活性の温度依存性が低いSn触媒、ならびに反応性を調整しやすいFeキレート触媒、Zrキレート触媒、Tiキレート触媒、Alキレート触媒等の金属キレート触媒の1種または2種以上であると、効率的にNCO末端のウレタンプレポリマーを形成しやすいため更に好ましく、最も好ましくはFeキレート触媒を単独で使用することである。
Sn触媒としては、特に限定されないが、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジバーサテート、ジブチルスズビス(アセチルアセトネート)等が挙げられる。
Feキレート触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリスアセチルアセトネート鉄等、Zrキレート触媒としては、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート等、Tiキレート触媒としては、チタンアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート等、Alキレート触媒としては、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
(X)工程において、特に限定されないが、有機溶剤を固形分濃度が60~99重量%の範囲となる量比で混合することが好ましく、更に好ましくは70~97重量%の範囲であり、最も好ましくは85~95重量%の範囲である。
溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトン、ベンゼン、ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ジメチルホルミアミド、グリコールエーテル系溶剤等が挙げられる。溶解性、有機溶媒の沸点等の点から、グリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル、トルエン及びメチルエチルケトンからなる群より選ばれる1種以上を含む有機溶媒が好ましい。
なかでも、乾燥硬化時に系中に留まり相溶性を保持する期間が長くなって反応硬化させる際に発生しやすい硬化収縮を安定的に抑制し良好な成形性でシワのない良好な外観のウレタンを形成しやすいため、sp値が8.0以上のグリコールエーテル系溶媒を含むことが好ましく、例えばジエチレングリコールジエチルエーテル(sp値8.2、沸点189℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(sp値8.4、沸点216℃)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(sp値8.1、沸点176℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(sp値8.1、沸点162℃)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(sp値8.5、沸点275℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(sp値8.7、沸点146℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート(sp値9.0、沸点145℃)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート(sp値8.9、沸点188℃)、メトキシブチルアセタート(sp値8.7、沸点171℃)、トリアセチン(sp値10.2、沸点260℃)、等が挙げられ、なかでもジエチレングリコールジエチルエーテル(sp値8.2、沸点189℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(sp値8.4、沸点216℃)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート(sp値8.9、沸点188℃)の何れか1種以上を含むことが最も好ましい。

<(Y)工程>
(Y)工程は、芳香族アミン残基を有する数平均分子量2000未満のポリアルキレンオキシド(B)を含むポリオールと、(X)工程により製造したウレタンプレポリマー(D)を、(X)工程及び(Y)工程で混合するポリオールの活性水素基の総量に対する前記ポリイソシアネート(C)のNCO基の総量(NCO/OH比)が0.10~0.70の割合となる量比で混合し、活性水素基末端のウレタンプレポリマー(E)を製造する工程である。
特に限定されないが、必要に応じてその他ポリオールやモノオール、ウレタン化触媒、溶剤、可塑剤、レベリング剤、その他の添加剤等を加えて製造してもよい。また(X)工程で加えた添加剤等をそのまま残存し含んでいてもよい。また得られるウレタンプレポリマーの粘度や透明性等の性状を安定化するため、(Y)工程に用いるポリアルキレンオキシド(B)などの原料の脱水工程や調湿工程などを設け、任意の水分値に設定してもよく、水分値が2000ppm以下となっていることが好ましいが、操作が煩雑となるため、用途等に応じて選択することができる。
(Y)工程のウレタンプレポリマー(E)の調製には、原料を均一に分散、反応することができる方法であれば特に限定されるものではなく、(X)工程のウレタンプレポリマー(D)の調製と同様の好ましい撹拌方法や攪拌機、撹拌翼、バッフル形状、反応温度、窒素等の反応雰囲気、反応条件を好適に採用することができる。
(Y)工程のポリアルキレンオキシド(B)の混合方法は、特に限定されないが、ポリアルキレンオキシド(B)に含まれる芳香族アミン構造に由来する触媒活性により急激な反応が発生しやすいため、(X)工程により製造したウレタンプレポリマー(D)の反応容器へポリアルキレンオキシド(B)を加えることが好ましい。なかでも、溶剤量等の反応条件によらず(Y)工程にて局所反応によるゲル状物の生成が起こりにくく安定的に高透明でゲル状物が少ないウレタンプレポリマー(E)を得やすいため、(X)工程により製造したウレタンプレポリマー(D)を35℃以上70℃以下へ冷却し加えることが好ましく、更に好ましくは55℃以下へ冷却し添加することである。
またポリアルキレンオキシド(B)の粘度が低減して迅速に添加しやすく、局所反応を抑制しやすいため、ポリアルキレンオキシド(B)は、事前に30℃以上へ加温することが好ましく、45℃以上へ加温し加えることがより好ましく、加える際も撹拌しながら添加することが好ましい。
また、特に限定されないが、経時での外気中の水分との反応による白濁やゲル状物の生成を抑制でき、より安定的に高透明でウレタンプレポリマー製造しやすいため、(X)工程を終了後、48時間以内に(Y)工程へ進むことが好ましく、更に好ましくは24時間以内である。
反応時間としては、触媒量や反応温度、撹拌条件等の反応条件により異なるため、特に限定されないが、得られるウレタンプレポリマー(E)の経時での粘度上昇が発生しにくく貯蔵安定性に優れやすいため、FT-IRや滴定法を用いてNCO基の消失を確認し、その後30分以上反応を継続することが好ましい。特に2級NCO基を有するポリイソシアネート(C)を用いる場合、経時での粘度上昇が発生しやすいため、NCO基の消失を確認し、その後1時間以上反応を継続することが好ましい。
このような反応時間としては、1時間以上24時間以内であり、好ましくは1.5時間以上12時間以内であり、最も好ましくは2時間以上8時間以内である。

<ポリアルキレンオキシド(B)を含むポリオール>
(Y)工程に用いるポリオールに含まれるポリアルキレンオキシド(B)は、芳香族アミン残基を有するポリオールである。ポリアルキレンオキシド(B)に、芳香族アミン残基を有さない場合、得られるポリウレタンの硬度や引張強度が低く、使用が困難である。なかでも良好な流動性を発現して成形性に優れやすく、また硬度や引張強度が高くなってウレタン物性に優れやすいため炭素数2~10のアルキレンオキシド残基を有し、1分子中に活性水素基を2つ以上有するポリオールが好ましく、芳香族アミンに1種のアルキレンオキシドが連鎖的に繋がったもの、芳香族アミンに複数のアルキレンオキシドが連鎖的に繋がったものやランダムで繋がったもの、何れでもよい。
なかでも、工業的にアルキレンオキシドの入手がしやすく、合成が簡便となりやすいため、芳香族アミンにプロピレンオキシドのみが連鎖的に繋がったもの、芳香族アミンにエチレンオキシドのみが連鎖的に繋がったもの、芳香族アミンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドが連鎖的に繋がったものまたはランダムで繋がったものであることが好ましく、更に好ましくは低温から高温まで結晶化しにくく流動性に特に優れやすいことから炭素数3のアルキレンオキシド残基であるプロピレンオキシド残基を有することが好ましく、最も好ましくはポリアルキレンオキシド(B)に含まれるアルキレンオキシド残基のうち40重量%以上がプロピレンオキシド残基であることが好ましい。
ポリアルキレンオキシド(B)は1分子中に2つ以上の水酸基を有することが好ましく、更に好ましくは1分子中の水酸基数が3以上15未満であり、最も好ましくは4以上6未満である。
1分子中に芳香族アミン残基を含有するポリアルキレンオキシド(B)の1分子中の水酸基数が3以上15未満であると、得られるウレタン硬化物の架橋構造が均一になり易く、引張破断強度が更に大きくなるため、好ましい。
(Y)工程に用いられるポリアルキレンオキシド(B)の数平均分子量は2000未満であることを特徴とする。数平均分子量2000以上の場合、芳香族アミン残基の含有量が低下しやすく強度が低下するため使用が困難であり、反応性が低下して未反応ポリアルキレンオキシド(B)が多く残存しやすいため、安定的に高い透明性を発現することが困難である。
なかでも、特に限定されず、用途により適宜選択されるが、その他工程や硬化反応時等に揮発による組成の不安定化が起こりにくく、かつ芳香族アミン残基の含有量が高く安定的に高い強度を発現しやすいため、200以上1800未満であることが好ましく、さらに好ましくは400以上1300未満であり、最も好ましくは450以上1000未満である。
なお、ポリアルキレンオキシド(B)の数平均分子量は、JIS K-1557-1に記載の方法により算出したポリアルキレンオキシド(B)の水酸基価と、ポリオール(A2)1分子中の水酸基数と、から算出することができる。また市販品の場合、公称の官能基数、水酸基価を用いることができる。
ポリアルキレンオキシド(B)の、芳香族アミン残基の構造は特には限定されないが、好ましくは1分子中の芳香環数が1以上20以下の芳香族アミン残基であり、さらに好ましくは芳香環数が1以上3以下の芳香族アミン残基である。ポリアルキレンオキシド(B)に芳香族アミン残基を含まない場合、引張破断強度が不足しやすく、強度の向上に炭素数6以上の環状の糖残基を含むポリオールやポリエステルポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリアルキレンオキシド(A)より比較的剛直なポリオールが必要となるが、これらは塗工性の悪化や白濁を抑制しにくく、得られるウレタン硬化物の脆性やタックが高いものとなるため使用が困難である。
ポリアルキレンオキシド(B)中の芳香族アミン残基の含有量は特に限定されないが、高い強度を発現しやすいため7重量%以上であることが好ましく、更に好ましくはより高い透明性と高い強度を両立しやすいことから、10重量%以上50重量%以下の範囲であり、最も好ましくは13重量%以上30重量%以下の範囲である。当該含有量はNMR法または得られるウレタンのコリッシュ分解による解析等により算出できるが、水酸基価より算出したポリアルキレンオキシドの分子量と公称の開始剤構造より計算してもよい。
このような芳香族アミン残基としては、例えば、アニリン残基、2,4-トリレンジアミン残基、2,6-トリレンジアミン残基、2,2’-ジフェニルメタンジアミン残基、2,4’-ジフェニルメタンジアミン残基、4,4’-ジフェニルメタンジアミン残基、ポリフェニレンポリアミン残基、1,5-ナフタレンジアミン残基、トリジンジアミン残基、キシリレンジアミン残基、1,3-フェニレンジアミン残基、1,4-フェニレンジアミン残基、ならびに、これらの2種以上の混合残基などが挙げられ、好ましくは原料の入手が容易であり良好な硬化性、引張破断強度を発現しやすい4,4’-ジフェニルメタンジアミン残基、2,4-トリレンジアミン残基及び2,6-トリレンジアミン残基からなる群より選ばれる1種種以上の残基である。
ポリアルキレンオキシド(B)は、一般にトリレンジアミンやジフェニルメタンジアミンなどの芳香族アミンを開始剤としてアルキレンオキシドを開環重合することにより得られるが、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエタノールアミン、ジエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール等の芳香族アミン残基を含まない低粘度の活性水素化合物を開始剤に併用して合成されることがあり、上記残基を有する成分を含んでいてもよい。
例えば、通常、トリレンジアミン開始ポリオールの水酸基数は4、アニリン開始ポリオールの水酸基数は2であるが、トリレンジアミン残基又はアニリン残基を含まない開始剤の併用やアルキレンオキシドが付加しなかったアミノ基の残存等により水酸基数が低下することがある。
市販の芳香族アミン残基を含むポリアルキレンオキシド(B)としては、ハンツマン製JEFFOLAD-310(公称官能基数3.2、水酸基価310)、JEFFOLAD-500(公称官能基数3.2、水酸基価360)、東邦化学工業製トーホーポリオールAB-250(公称官能基数2.0、水酸基価440)、東邦化学工業社製AR-2589(公称官能基数4.0、水酸基価360)、東邦化学工業社製AR-750(公称官能基数4.0、水酸基価300)などが挙げられ、好適に使用できる。
ポリアルキレンオキシド(B)に加えて、その他剛直なポリオールを2種類以上組み合わせて用いてもよく、特に限定されない。例えば、炭素数6以上の糖残基を含有するポリオールと芳香族アミン残基を有するポリオールの組み合わせなどが挙げられる。
(Y)工程において、最終的なポリオールの活性水素基の総量に対するポリイソシアネート(C)のNCO基の比率を調整や所望の引張強度や塗工性、溶液粘度を得るための組成に調整する等のため、ポリアルキレンオキシド(B)に加えて少量のその他ポリオール、モノオールを加えてもよい。
(Y)工程においてポリアルキレンオキシド(B)に加えて、その他ポリオール、モノオール(BC)を加える場合、未反応成分の残存量が少なくなってより良好な成形性や耐汚染性を発現しやすく、得られるプレポリマーやウレタン硬化物の透明性もより良好となりやすいため、ポリアルキレンオキシド(B)100重量部に対してその他ポリオール、モノオールの総量が15重量部以下の範囲で加えることが好ましく、高分子量であると相溶性が悪くなってより透明性を悪化しやすいため数平均分子量は2000未満であることが好ましい。
その他ポリオール、モノオール(BC)としては、プレポリマーの透明性や諸物性を損なわないものを適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、マンニッヒポリオール、シュークローズポリオール、ソルビトールポリオール、脂肪族アミンポリオール、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、フッ素化ポリオール、シリコーン含有ポリオール、リン系ポリオール等の市販されているポリオール類、ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールモノアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールモノフェニルエーテル、シリコーン含有モノオール等のモノオール類、シクロヘキサンジメタノール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の低分子量有機化合物等が挙げられる。
ポリアルキレンオキシド(B)に加えて、その他ポリオール、モノオール(BC)を加える場合、比較的相溶性が良好で高い透明性を発現しやすく、強度が高くなりやすいことから、シュークローズポリオールまたはポリテトラメチレングリコールを含むことが好ましく、その場合、高粘度化しにくくハンドリング性に優れることから、0.1~20重量部以下の範囲で加えることが好ましい。なかでも、より高い強度を発現しやすくなるため、シュークローズポリオールを0.5~15重量部の範囲で加えることが更に好ましく、最も好ましくは、1~10重量部の範囲で加えることである。
また、反応性基を有するシリコーン成分(モノオールやポリオール、ポリアミン)や反応性基を有するフッ素成分等は残存し汚染しやすいことから用いないことが好ましいが、特に限定されない。

<(Y)工程の原料混合比率>
(Y)工程では、前記ポリアルキレンオキシド(A)とポリアルキレンオキシド(B)を含む活性水素基の総量に対する前記ポリイソシアネート(C)のNCO基の総量(NCO/OH比)が0.10~0.70の割合となる量比で混合し、活性水素基末端のウレタンプレポリマー(E)を製造することを特徴とする。
即ち、(X)工程にてポリオールとイソシアネート(C)のNCO基の比率(NCO/OH比)が1.30~5.00でNCO末端プレポリマーを形成後、(X)工程を含む全工程で用いる原料の活性水素基の総量に対する全工程のポリイソシアネート基の総量(全NCO/全OH比)が0.10~0.70の割合となるようにポリアルキレンオキシド(B)を含む各原料を混合することを特徴とする。
全工程のポリオールの活性水素基の総量に対するポリイソシアネート(C)のNCO基の比率(全NCO/全OH比)が0.70超では、NCO/OH比が1.00に近くなって高分子量化するため塗工性が悪くゲル化や高粘調化の抑制が困難であるか、NCO/OH比が1.00を超えてNCO基末端となって保存安定性が悪化するため使用が困難である。
また、NCO/OH比が0.10を下回ると得られるウレタンプレポリマー(E)の分子量が低く、低粘度化し塗工性に劣るとともに未反応のポリアルキレンオキシド(B)が多く残存するため、高透明のウレタンプレポリマー(E)やそれを用いて得られる高透明のウレタン硬化物を安定的に製造することが困難である。
したがって、(Y)工程では、全工程で加える原料のNCO/OH比が0.10~0.70の割合となる量比で混合することで、塗工性の悪化やプレポリマーおよび得られるウレタン硬化物の透明性悪化を抑制することができる。
なかでも、適度な粘度を有し、未反応のポリアルキレンオキシド(B)の残存量が少なくなって得られるプレポリマーおよびウレタン硬化物をより高透明で製造が可能となり、ポリアルキレンオキシド(B)を多く導入可能となって強度や低タック性をより顕著に発現しやすいため、(Y)工程では最終のNCO/OH比が0.15~0.60の割合となる量比で混合することが好ましく、更に好ましくは0.20~0.50の範囲である。
なかでも、ポリイソシアネート(C)としてヘキサメチレンジイソシアネートやその誘導体などのNCO基の反応性に差がないポリイソシアネート(C)を用いる場合、(Y)工程での最終のNCO/OH比が0.20~0.40の範囲、ポリイソシアネート(C)としてイソホロンジイソシアネートを用いる場合、(Y)工程での最終のNCO/OH比が0.20~0.49の範囲であると、ゲル化や高粘度化を抑制しつつ透明性が良好となりやすいため最も好ましい。
(X)工程に用いるポリアルキレンオキシド(A)に対する重量比率(ポリアルキレンオキシド(A)/ポリアルキレンオキシド(B))が10/90~90/10の範囲であることが好ましく、更に好ましくは安定的に透明性を発現しつつより高強度となりやすいため25/75~80/20の範囲であり、最も好ましくは40/60~75/25の範囲である。
(X)工程にポリアルキレンオキシド(B)を加える場合の、(Y)工程でのポリアルキレンオキシド(B)の添加量の(X)工程に加えるポリアルキレンオキシド(B)に対する重量比率((Y)工程で加えるポリアルキレンオキシド(B)/(X)工程で加えるポリアルキレンオキシド(B))が70/30~99.9/0.1の範囲であることが好ましく、更に好ましくは80/10~99/1の範囲であり、最も好ましくは90/10~97/3の範囲である。

<(Y)工程でのその他原料>
(Y)工程において、必要に応じてその他ポリオールやモノオール、ウレタン化触媒、溶剤、可塑剤、レベリング剤、反応遅延剤、その他の添加剤等を加えて製造してもよい。また(X)工程で加えた添加剤等がそのまま残存し含んでいてもよい。
(Y)工程で含むことが好ましいその他原料としては、特に限定されないが、(X)工程で含むことが好ましいその他原料と同様の原料や使用量が挙げられ、好適に適用することができる。
なかでも、(X)工程で事前に添加してもよく特に限定されないが、ウレタンプレポリマー(E)の経時での粘度の上昇を抑制しやすく貯蔵安定性に優れ、適度な粘度に調整しつつハンドリング性や硬化性を向上しやすくなることから(Y)工程でウレタン化触媒や溶剤を追加することが好ましい。
(Y)工程において、有機溶剤を固形分濃度が70~99重量%の範囲となる量比で混合することが好ましく、更に好ましくは80~97重量%の範囲であり、最も好ましくは85~95重量%の範囲である。金属成分を含むウレタン化触媒は、ウレタンプレポリマー(D)100重量部に対して0.001~0.2重量部を接触することで活性水素基末端のウレタンプレポリマー(E)を製造することが好ましく、さらに好ましくは金属成分を含むウレタン化触媒が0.003~0.1重量部であり、最も好ましくは0.005~0.05重量部の範囲である。

<ウレタンプレポリマー(E)>
少なくとも(X)工程、(Y)工程を含む本製造方法により得られるウレタンプレポリマー(E)は、ゲル状物の生成や高粘調化、白濁がしにくいため、特に限定されないが、25℃条件にて、粘度が1~100Pa・s、且つ液外観が透明(1cm厚みでのHazeが15%以下)であることが好ましく、このようなウレタンプレポリマー(E)を効率的に容易に製造できるものである。
なかでも、本製造方法により得られるウレタンプレポリマー(E)の好ましい性状としては、後工程で添加剤を混合しやすく、架橋剤の混合や塗工などのハンドリング性により優れウレタン硬化物が安定的に高透明になりやすいことから、25℃条件にて、粘度が3~50Pa・sの範囲であり、さらに好ましくは5~30Pa・sの範囲である。粘度が高い場合、溶剤や添加剤を加えて粘度を低減調整してもよく、また粘度が低い場合、濃縮等により増粘調整してもよい。
本製造方法により得られるウレタンプレポリマー(E)の透明性は特に限定されないが、透明であることが好ましく、本製造方法ではそのような性状で得られやすい。なかでも1cm厚みでのHazeが15%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましい。
本製造方法により得られるウレタンプレポリマー(E)の分子量は、特に限定されないが、ハンドリング性がより良好となりやすいことからゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量が2500以上500000以下の範囲であることが好ましく、5000以上200000以下の範囲であることが更に好ましく、10000以上100000以下の範囲であることが好ましい。

<後工程>
(Y)工程にて、ウレタンプレポリマー(E)を形成後、必要に応じて後工程を加えてもよい。後工程としては、特に限定されないが、必要に応じて濃縮や溶剤添加による粘度調整を行い、鎖延長剤、帯電防止剤、可塑剤、反応遅延剤、レベリング剤、その他の添加剤を添加し混合してもよく、更に濾過工程を経ることが好ましい。
鎖延長剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、分子量1000以下の低分子量ポリアルキレングリコール等のグリコール類;エチレンジアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、ピペラジン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の多価アミンが挙げられる。なかでも、ウレタンウレアを形成し、良好な物性のウレタンを得やすいため多価アミンが好ましい。
帯電防止剤としては、特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩やイオン液体等が挙げられ、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド等のリチウム塩や4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ホスホニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
可塑剤としては、特に限定されるものではないが、脂肪酸エステルや脂環式エステル、ポリエーテルエステル等が挙げられ、例えばエポキシ化脂肪酸エステル、ミリスチン酸エステル、ポリアルキレングリコールの末端エステル変性化合物等が挙げられる。
反応遅延剤としては、特に限定されず、例えば、ウレタン化触媒の活性を抑制する効果のある添加剤(酸遅延剤、キレート化合物等)、反応時に主剤分子量が高くなりにくくなる添加剤(増粘抑制剤等)、イソシアネートやポリオール・プレポリマーの反応性を低減する添加剤(酸遅延剤、安定剤等)等種々の遅延剤を用いることができ、そのような遅延剤を組み合わせて用いることが好ましい。
なかでも、反応遅延剤として、酸遅延剤、キレート化合物、増粘抑制剤、安定剤のいずれか1種または2種以上を用いることが好ましく、更に好ましくは酸遅延剤、キレート化合物、増粘抑制剤、安定剤のいずれか2~4種を併用する事が好ましく、最も好ましくは酸遅延剤、キレート化合物、増粘抑制剤のそれぞれ1種以上を含む3~4種を全て併用する事である。また上記酸遅延剤、キレート化合物、増粘抑制剤のそれぞれは1種に限らず、それぞれ2種以上を併用することができ好ましい。
なかでも、ポリアルキレンオキシド(B)のアミン構造に由来する触媒活性を抑制しやすくなり、可使時間が延長するとともに乾燥、エージング、塗工時の急激なゲル化を抑制しやすくなり、安定的にシワを抑制して成形性が良くなりやすいため酸遅延剤を含むことが好ましく、特に限定されないがpKa5.0以下の酸を含むことが好ましい。
そのようなpKa5.0以下の酸としては、塩酸、硝酸、リン酸やエチルアシッドホスフェートや2-エチルヘキシルアシッドホスフェート等の炭素数2~20の酸性リン酸エステル等のリン系酸遅延剤などが挙げられ、なかでも、反応性と物性のバランスが良好となりやすいためリン系酸遅延剤を用いることが好ましい。酸遅延剤を用いるときの含有量としては、プレポリマー(E)100重量部に対して0.001~1重量部の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.005~0.1重量部の範囲である。また、酸遅延剤を用いるときのウレタンプレポリマー(E)のpHとしては硬化性が高くなりやすく低腐食性の良好な液性となりやすいためpH4~9の範囲となる量であることが好ましい。ウレタンプレポリマー(E)のpHは、水とIPAを重量比5:3で混合した液に固形分7質量%で分散し、pH計にて測定した値を指す。
キレート化合物としては、触媒活性を調整して架橋剤混合後の増粘を抑制しやすく、また成形性も良好となりやすいため、ケトエノール互変異性化合物、トリアゾール誘導体の1種また2種以上を含むことが好ましく、さらに好ましくはキレート化合物としてケトエノール互変異性化合物、トリアゾール誘導体のそれぞれを1種以上(計2種以上)用いることが好ましい。
ケトエノール互変異性化合物としては、特に限定されないが、より触媒活性を調整して成形性が良好となりやすいため、アセト酢酸エチル又はアセチルアセトンのいずれか1種以上であることが好ましい。そのようなケトエノール互変異性化合物を含む場合、その含有量は、より成形性が良くなりやすいため金属成分を含むウレタン化触媒に対するモル比率(ケトエノール互変異性化合物/金属触媒)が10倍以上であることが好ましく、更に好ましくは50倍~5000倍の範囲であり、ウレタンプレポリマー(E)100重量部に対して、0.01~20重量部の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.5~10重量部の範囲である。
トリアゾール誘導体としては、特に限定されないが、硬化収縮の抑制効果が高く、良好な塗膜外観のウレタンを形成しやすいため、フェノール性水酸基を有するベンゾトリアゾール誘導体であることが好ましく、更に好ましくはウレタンの透明性が高くなりやすいため室温液状で分子量300~700の範囲であってフェノール性水酸基を含むアリール基がベンゾトリアゾールに直結しているフェノール性水酸基を有するベンゾトリアゾール誘導体であることが好ましく、上記化合物としては、特に限定されないが、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(BASF製チヌビン571)、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロピオン酸の炭素数7~9のアルキルエステル)(BASF製チヌビン99-2、チヌビン384-2)などが挙げられる。トリアゾール誘導体を用いる場合の含有量としてはウレタンプレポリマー(E)100重量部に対して、0.1~3重量部の範囲であることが好ましく、なかでも、より高透明で良好な塗膜外観を形成しやすいため、0.2~2重量部の範囲であることが更に好ましく、最も好ましくは0.3~1.5重量部の範囲である。
キレート化合物として、ケトエノール互変異性化合物とトリアゾール誘導体を併用する場合の混合重量の比率としては、得られるウレタンのシワを抑制しかつ成形性が良好となりやすいためトリアゾール誘導体に対するケトエノール互変異性化合物の重量比率(ケトエノール互変異性化合物/トリアゾール誘導体)が0.5以上50以下であることが好ましく、2以上20以下であることが更に好ましい。
増粘抑制剤としては、特に限定されないが、反応時に増粘に係る分子量や架橋度の増加を遅延する化合物や反応に伴う分子量増大時にも増粘を抑制する化合物等が挙げられる。
例えばイソシアネート架橋剤と反応性を有して主剤プレポリマー(E)とイソシアネート架橋剤(I)との反応と併行/または優先して反応が進行することで分子量の増大を遅延する化合物、分子量増大に伴う親和性の向上や構造変化等で系の粘度の増加度を抑制/または低減する化合物などが挙げられる。
なかでも、増粘抑制剤はプレポリマー(E)より低分子量であって、イソシアネート架橋剤(I)と反応性を有する活性水素基を有する化合物であることが好ましく、このような増粘抑制剤を含むことで主剤プレポリマー(E)とイソシアネート架橋剤(I)との反応と併行/または優先して反応が進行して、プレポリマー同士の架橋を抑制して増粘を抑制しやすい。
このような増粘抑制剤としては、主剤より優先して反応が進行しやすく、プレポリマー同士の架橋を抑制して増粘を抑制しやすいため、活性水素基の反応性が高くなりやすい分子量1000以下の化合物であることが好ましい。なかでも、分子量が低すぎると活性水素基の反応性が高くなりすぎて早期に反応消費し増粘抑制できる期間が短くなって反応遅延効果が低くなる場合や乾燥工程で一部/または全部除去され物性が安定しない場合があり、分子量が高すぎると反応時に増粘しやすく活性水素基の反応性も低下して主剤同士の反応がしやすくなり増粘抑制効果が小さくなる場合があるため、分子量が60~700の範囲であることが好ましく、更に好ましくは90~300の範囲であり、最も好ましくは100~160の範囲である。またこのような増粘抑制剤としては反応時に架橋度が低下しにくく引張強度が低下しにくいため1分子内に2~8個の水酸基やアミノ基、チオール基等の活性水素基を有することが好ましい。なかでも、活性水素基が多すぎると増粘抑制剤とイソシアネート架橋剤の反応時に架橋度が上昇しやすく、増粘抑制効果が小さくなりやすいため、1分子内に2~4個の水酸基やアミノ基、チオール基等の活性水素基を有することが好ましく、更に好ましくは1分子内に2~3個の水酸基を有することであり、最も好ましくは適度な反応性を有し増粘抑制効果が顕著に高くなりやすいため1分子内に2個の1級水酸基を有するジオールである。増粘抑制剤を用いる場合の含有量としては、ウレタンプレポリマー(E)100重量部に対して0.1~3重量部の範囲であることが好ましく、なかでも、より高透明で良好な物性のウレタンを形成しやすいため、ウレタンプレポリマー(E)100重量部に対して、0.2~2重量部の範囲であることが更に好ましく、最も好ましくは0.3~1.5重量部の範囲である。また増粘抑制剤に活性水素基を有する場合、ウレタン物性を維持しつつ増粘抑制効果が高くなりやすいためウレタンプレポリマー(E)の活性水素基100モル%に対して3~30モル%の範囲となる用増粘抑制剤を添加することが好ましく、更に好ましくは5~20モル%の範囲で添加することが好ましい。
安定剤としては、特に限定されないが、イソシアネートやポリオール・プレポリマーの反応性を抑制する化合物が挙げられ、例えばフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。また本態様では安定剤としてトリアゾール誘導体は含まない。このような酸化防止剤を1000ppm以上、好ましくは3000ppm以上、最も好ましくは5000ppm~20000ppmの範囲に増量して用いることで、イソシアネートやポリオール・プレポリマーを安定化して反応性を低減し、増粘を抑制しやすいため好ましい。なかでも、入手が容易でありウレタンとの相溶性が良好なBHTや分子量1000以下のヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックスシリーズ等)を用いることが好ましい。またイルガノックス1135、イルガノックス1726など、室温液状であれば得られるウレタンの透明性が高くなりやすいため好ましいが、BHTやイルガノックス1076、イルガノックス1010など相溶性が高い構造であれば、プレポリマーに均一に分散・ウレタン形成時に透明性を悪化しにくいため好適に使用できる。
安定剤を用いる場合の含有量としては、ウレタンプレポリマー(E)100重量部に対して、0.1~3重量部の範囲であることが好ましく、なかでも、より高透明で良好な物性のウレタンを形成しやすいため、安定剤の含有量は0.2~2.5重量部の範囲であることが更に好ましく、最も好ましくは0.5~2重量部の範囲である。
これらの添加剤の混合工程は、揮発による重量の増減が少ないため室温で行ってもよく、また溶解性・混合性を高めるため加温して行ってもよい。また混合の方法も特に限定されない。また必要に応じて行う濃縮工程では、窒素等でのバブリングや加温、減圧など、所定の濃度に調整できる方法であれば特に限定されない。
後工程として含まれることが好ましい濾過工程としては、高い生産性と貯蔵安定性を両立しやすく、高い透明性となりやすいことから、メッシュを通して濾過抜出しする工程であることが好ましい。メッシュを通して濾過抜出しする工程を経ることで、異物を除去しつつ同時に抜き出すことが可能となり、高い生産性で製造することができる。なかでも高生産性と高透明性を安定的に発現しやすいことから、150~1000μmの目開きの金属製のメッシュを通して濾過抜出しする工程であることが好ましく、さらに好ましくはゲージ圧0.01~3MPaの加圧下で行うことである。また抜き出しと同時に所定の容器にパッキングする工程を加えてもよく、生産性が高いため好ましい。
後工程を行う場合に得られるウレタンプレポリマー(E)を含む組成物は、ハンドリング性に優れやすくなることから、固形分濃度が60~99重量%の範囲となる量比で混合することが好ましく、更に好ましくは70~97重量%の範囲であり、最も好ましくは85~95重量%の範囲である。また、架橋剤の混合や塗工などのハンドリング性により優れウレタン硬化物が安定的に高透明になりやすいことから、25℃条件にて、粘度が3~50Pa・sの範囲であり、さらに好ましくは5~30Pa・sの範囲である。
本製造方法により得られるウレタンプレポリマー(E)を含む組成物の透明性は特に限定されないが、透明であることが好ましく、本製造方法ではそのような性状で得られやすい。なかでも1cm厚みでのHazeが15%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましい。

<ウレタン硬化物、ウレタン塗膜の製造方法>
本製造方法により得られるウレタンプレポリマー(E)は、種々の方法によって反応させ、硬化(固化)することでウレタン硬化物を製造することができる。ウレタン硬化物の製造方法としては特に限定されないが、例えば、ウレタンプレポリマー(E)またはウレタンプレポリマー(E)を含む組成物を、必要に応じて、ウレタン化触媒、溶剤、酸化防止剤、光安定化剤、鎖延長剤、架橋剤、その他添加剤等の存在下、常温または150℃以下の高温でウレタン化反応、ウレア化反応、必要に応じて乾燥を進めることによって製造することができる。
ここで、塗工機等で塗工する際の塗工性が顕著に優れることから、均一な厚みのウレタン塗膜を得られるため、特に限定されないが、塗膜を形成し硬化することが好ましい。また、PETフィルムやCOPフィルム等のベース基材に前記ウレタン硬化物の塗膜を種々の方法により形成、必要に応じて離型PETや離型紙等の別基材との貼り合わせや成形することで当該ウレタン塗膜を基材上に有するポリウレタンシートを形成できる。
なかでも、本製造方法により得られるウレタンプレポリマー(E)と添加剤、イソシアネート架橋剤を混合する工程、10~500μmの厚みで基材へ塗工する工程、70~160℃で30秒~10分の条件で乾燥・硬化する工程、を経ることで、高透明でタックの少ないウレタン塗膜を高い生産性で製造することができるため好ましい。さらに好ましくは、硬化性に優れ、薄膜から高厚みまで均一な厚みで高透明の塗膜が得られやすいことから30μm以上の厚みで塗工する工程を含むことが好ましく、30~200μmの範囲で塗工する工程を含むことが好ましい。
また、本製造方法により得られるウレタンプレポリマー(E)は芳香族アミン残基を末端に有することから顕著に初期硬化性が高く、高温でも流動しにくく厚みムラが少なく迅速に硬化することから100~150℃で1分~8分の範囲で乾燥・硬化することが好ましく、さらに好ましくはよりウレタン塗膜の生産性に優れやすいため120~145℃で2分~6分の範囲で乾燥・硬化することである。
ウレタン硬化物、ウレタン塗膜の用途は、特に限定されるものでなく、通常のポリウレタンが使用される何れの用途にも使用できるが、機械物性や粘・接着特性などが要求される用途に特に好適に使用できる。具体的には、建築・土木用シーリング材、建築用弾性接着剤等の接着剤、ガムテープや表面保護フィルム、光学用に代表される各種粘着剤、塗料、エラストマー、塗膜防水材、床材、可塑剤、軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム等の用途が例示され、好適に使用できる。
その中でも、ポリウレタンに対して、機械物性や粘・接着特性の要求が強く、施工性や塗工性が求められることから、シーリング材、塗料、粘着剤、接着剤として用いることが特に好ましい。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例により限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で使用した原料、及び評価方法は以下に示すとおりである。
(原料1)実施例及び比較例に用いたポリアルキレンオキシド(A)、またはその他ポリオール、モノオール(AC)
実施例及び比較例に用いたポリアルキレンオキシド、またはその他ポリオール、モノオール(AC)の性状は、以下の方法で求めた。
<ポリアルキレンオキシドの不飽和度>
ポリアルキレンオキシドの不飽和度は、高分子論文集1993,50,2,121-126に記載のNMR法に準拠し、スキャン回数800回で測定した。
NMR測定については重クロロホルムを用い、測定装置はJEOL400MHzNMR ECZSを用いて行った。
<ポリアルキレンオキシドの水酸基価と数平均分子量>
ポリアルキレンオキシドの水酸基価は、JIS-K1557-1に記載の方法に準拠して測定した。また、ポリアルキレンオキシドの水酸基価とポリアルキレンオキシド1分子中の水酸基数から、ポリアルキレンオキシドの数平均分子量を算出した。
<ポリアルキレンオキシドの分子量分布(Mw/Mn)>
ポリアルキレンオキシドの分子量分布(Mw/Mn)については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて、以下の手順で測定した。
ポリアルキレンオキシド10mgとテトラヒドロフラン(THF)10mlをサンプル瓶に入れ、1日静置することでポリアルキレンオキシドをTHFに溶解させ、PTFEカードリッジフィルター(0.5μm)でろ過することで、GPC測定用のサンプルを作製した。
GPC測定については、展開溶媒にTHFを用い、カラム温度40℃で測定し、分子量既知の東ソー社製標準ポリスチレン8点を用いた3次近似曲線を検量線として、分子量分布(Mw/Mn)の解析を行った。測定装置には東ソー製HLC-8320GPC、解析には東ソー製HLC-8320GPC-ECOSEC-WorkStationを用いた。
<ポリアルキレンオキシドの粘度>
ポリアルキレンオキシドの粘度は、JIS K-1557-5に記載の方法に準拠して求めた。具体的には、コーン・プレート回転粘度計を用いて、温度25℃、せん断速度0.1(1/s)で測定し、測定装置には、Anton-Paar社製MCR-300を用いた。

(原料1-1)実施例、比較例に用いたポリアルキレンオキシド(A)
ポリアルキレンオキシド(A1)は、イミノ基含有ホスファゼニウム塩(以下、IPZ触媒と記す)とトリイソプロポキシアルミニウムを併用し、脱水・脱溶媒を十分に行い、2官能で、分子量が400のポリオキシプロピレングリコールに、十分に脱水を施したプロピレンオキシドを付加することで得た。(A1)は、アルキレンオキシド基としてプロピレンオキシド基のみを有し、1分子中に2つの水酸基を有するポリオキシプロピレングリコール(ジオール)である。
ポリアルキレンオキシド(A2)は、(A1)と同様にIPZ触媒とトリイソプロポキシアルミニウムを併用し、アルキレンオキシド基としてプロピレンオキシド基を付加後、系中の残ったプロピレンオキシドを除去後にブロック的にエチレンオキシドを付加したものであり、1級の水酸基を含む不飽和度の低いジオールである。
ポリアルキレンオキシド(A4)は、開始剤として3官能で分子量600のポリオキシプロピレントリオールを用い、(A2)と同様にIPZ触媒とトリイソプロポキシアルミニウムを併用し、アルキレンオキシド基としてプロピレンオキシド基を付加後、系中の残ったプロピレンオキシドを除去後ブロック的にエチレンオキシドを付加したものであり、1級の水酸基を含み不飽和度の低いポリオキシアルキレントリオールである。
ポリアルキレンオキシド(A3)は、常法によりプロピレンオキシドのみを付加して合成したポリプロピレングリコールである、三洋化成工業社製サンニックスPP-3000を使用した。
(A1)~(A4)の性状を表1に示すが、(A1)、(A2)、(A4)は、不飽和モノオール量が極めて少なく(不飽和度が極めて低く)、分子量分布が狭いものであり、(A3)は不飽和度や分子量分布が一般的なポリアルキレンオキシドである。
なお、実施例に用いたポリアルキレンオキシド(A1)から(A4)は、いずれも、加熱・真空脱水した後に使用した。また、IPZ触媒を用いて作製したポリアルキレンオキシドについては、アルミを含め触媒を除去した上で使用した。

(原料1-2)実施例、比較例に用いたその他ポリオール、モノオール(AC)
モノオール(AC1)は、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルで、片末端にメチル基を有し1分子中に1つの水酸基とエチレンオキシド基からなるモノオールである。
ポリオール(AC2)は、分子量が1000の2官能ポリプロピレングリコールであって、分子量2000以上のポリアルキレンオキシド(A)より分子量が低いものである。
ポリオール(AC3)は、分子量が2100の2官能ポリオキシテトラメチレングリコールであって、アルキレンオキシド残基を有さない分子量2000以上のポリオールである
Figure 2022166967000001

(原料2)ポリアルキレンオキシド(B)、ポリオール(BC)
(原料2-1)実施例に用いたポリアルキレンオキシド(B1)、(B2)、(B3)
ポリアルキレンオキシド(B1)は、市販されているトリレンジアミン系ポリプロピレングリコールであり、公称官能基数は4.0、水酸基価356mgKOH/g、25℃での粘度9500mPa・sの東邦化学工業製トーホーポリオールAR-2589を使用した。本性状より計算される分子量は630であり、芳香族アミン残基含有率は19%である。
ポリアルキレンオキシド(B2)は、市販されているトリレンジアミン系ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコール共重合体であり、公称官能基数は4.0、水酸基価413mgKOH/g、25℃での粘度15000mPa・sの三洋化成工業製サンニックスHM-551を使用した。本性状より計算される分子量は540であり、芳香族アミン残基含有率は22%である。
ポリアルキレンオキシド(B3)は、市販されているトリレンジアミン/グリコール併用開始系ポリアルキレンオキシドであり、公称官能基数は3.2、水酸基価310mgKOH/g、25℃での粘度2200mPa・sのハンツマン製JEFFOLAD-310を使用した。本性状より計算される、開始剤モル比は芳香族アミン/グリコール=6/4、分子量は580であり、芳香族アミン残基含有率は12%である。
(原料2-1)実施例、比較例に用いたポリオール(BC1)、(BC2)、(BC3)
ポリオール(BC1)は、市販されている分子量600の3官能のポリプロピレントリオールである、三洋化成工業社製サンニックスGP600を使用した。
ポリオール(BC2)は、市販されている分子量1000の2官能ポリオキシテトラメチレングリコールである、保土谷化学製PTG1000SNを使用した。
ポリオール(BC3)は、公称官能基数8.0、分子量1190のシュークローズ系ポリオールである、東邦化学工業社製O-855Wを使用した。
ポリオール(BC1)は、芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B1)と同等分子量で芳香族アミン残基を有さないポリアルキレンオキシドであり、ポリオール(BC2)はアルキレンオキシド残基を有さず比較的剛直なポリオキシテトラメチレン残基を有するポリオールであり、ポリオール(BC3)は剛直な芳香族アミン残基に代わって剛直で高官能基数で環状の糖構造を有するシュークローズ残基を含むポリアルキレンオキシドである。

(原料3)実施例及び比較例に用いたイソシアネート化合物(C)、(F)
実施例及び比較例では、イソシアネート化合物(C)、(F)として、以下の3種類を用いた。
イソシアネート化合物(C1):イソホロンジイソシアネート(IPDI)である。(C1)はイソシアネート基として1級NCO基と2級NCO基を有するジイソシアネートである。
イソシアネート化合物(C2):1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)である。(C2)はイソシアネート基として1級NCO基のみを有するジイソシアネートである。
イソシアネート化合物(F1):1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系の変性イソシアネートである東ソー(株)製のコロネートHXLVで、(F1)におけるイソシアネート基の平均官能基数は3.2である。

(原料4)ウレタン化触媒
実施例及び比較例では、添加剤として、ウレタン化触媒を添加した。ウレタン化触媒は、トリスアセチルアセトナト鉄(略称:Fe(acac)3)である、日本化学産業製ナーセム鉄を用いた。本触媒は作業性を良好とするため5%溶液のマスターバッチとして添加した。表中では溶剤を含まない添加量を記載した。
(原料5)溶剤
実施例及び比較例において、溶剤には、富士フイルム和光純薬(株)製の酢酸エチル(略称酢エチ)、または富士フイルム和光純薬(株)製のメチルエチルケトン(略称MEK)、東邦化学工業製トリエチレングリコールジメチルエーテル(略称TEGDM)を用いた。

(ウレタンプレポリマー(D)、ウレタンプレポリマー(E)の製造方法)
1Lの4つ口ナスフラスコに、ウレタンプレポリマー(D)の原料であるポリアルキレンオキシド(A)、必要に応じて加えるポリアルキレンオキシド(B)やモノオール(AC)を投入。ガラス製擦り付き三方コックを2つ、バッフルとして作用する熱電対温度計をさし、中央口に翼径9cmのアンカー翼を装着した撹拌棒を真空攪拌装置付きのメカニカルスターラーにセットした。その後、210rpm、100℃で2時間真空脱水を行い、水分を除去、窒素置換して室温~50℃へ冷却した(脱水工程)。その後、窒素下で210rpmで撹拌しながら、溶剤を用いる系は、溶剤、イソシアネート、触媒マスターバッチの順で添加したのち、310rpmへと撹拌速度を上昇した。反応速度の制御による発熱の制御ならびにゲル状物の生成を抑制するため、必要に応じて内温30℃で30分間保持したのち所定温度へ昇温し、所定温度に到達した時点で反応開始とした。
所定時間反応後、FT-IRによりNCO基が残存し、且つ液性状に変化がみられなくなったまたはその量に変化が見られなくなったことを確認しその30分経過後、(X)工程を終了として、NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)を得た。
(Y)工程にてアミン構造に由来する触媒活性を有し、剛直な芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)が連鎖的に反応し、ゲル状物、フラスコへの付着物が生成することを抑制するため、ウレタンプレポリマー(D)が入った1Lの4つ口ナスフラスコを外部より空冷により内温が55℃以下となるまで冷却し、窒素を軽くフローしつつ310rpmで撹拌しながら、側管より35℃以上に加温したポリアルキレンオキシド(B)等の(Y)工程で加える原料を所定量一気に加えた(1Lスケールでは10分以内)。壁への付着物が流れ均一となるようにフラスコ壁を保温し、目視上均一に撹拌できていることおよび顕著な発熱がないことを確認後、所定温度まで昇温し、(Y)工程の反応開始とした。
所定時間反応後、FT-IRによりNCO基が消失し、且つ液性状に変化がみられなくなったことを確認しその30分経過後、(Y)工程を終了として、活性水素基末端のウレタンプレポリマー(E)を得た。必要に応じて濃縮を行って粘度を調整した。
内温を55℃以下に冷却し、必要に応じて各種添加剤を混合・均一に分散し、200メッシュのSUS金網を通して窒素で微加圧濾過しながら、透明なガラス容器に抜出してパッキングすることでウレタンプレポリマー(E)組成物を得た(添加剤混合工程、濾過・抜出工程)。なお、仕込みの組成比にしたがって、最終の缶効率が50%以上となる重量比で仕込みを行った。

(ウレタンプレポリマーの評価項目)
<液性状>
ウレタンプレポリマーの液性状を以下の基準で評価した。抜出後のフラスコをアセトン100mlで軽く洗浄し、フラスコ壁への溶解性の低い付着物、ゲル状物の有無を確認した。
◎(合格):良好でハンドリング性に特に優れる場合
○(合格):わずかに高粘度であるが、抜出工程等に問題ない場合。
×(不合格):ゲル化やゲル状物の生成、または高粘調体で抜出工程に問題がある場合。
<液の透明性>
ウレタンプレポリマーの透明性を以下の基準で評価した。
◎(合格):目視上透明である場合(液のHazeが5%以下)。
○(合格):目視上わずかに濁りは見えるが、液のHazeが15%以下である場合(ほぼ透明)。
×(不合格):目視上明らかな強い濁りが見える場合、または液のHazeが15%超の場合。
<硬化性>
得られた活性水素基末端のウレタンプレポリマーの水酸基に対して1.1等量のHDIイソシアヌレート架橋剤コロネートHXLVを加えて、80μm以下でPET基材に塗工して、130℃5分で乾燥直後のウレタン硬化物を指触で以下の基準で評価した。
◎(合格):タックが消失しており、より顕著に高い強度、軽剥離性が期待できる場合。
○(合格):タックはわずかであり、顕著に高い強度、軽剥離性が期待できる場合。
×(不合格):タックが大きく硬化不足であり、顕著に高い強度、軽剥離性が期待できない場合。
また、上記硬化性の評価により得られたウレタン硬化物を目視で評価し、シート外観(透明性、収縮有無)を評価した。
ウレタンプレポリマー(E)が上記評価の液性状、液の透明性、硬化性が何れも合格であり、硬化性の評価でシート外観が目視上良好(透明、収縮なし)なものが得られる製造方法を、塗工性と透明性、生産性が良好で、剛直な芳香族アミンポリオールを用い引張強度の高い高透明のポリウレタンの形成に資するウレタンプレポリマーの製造方法であると判断した。

<実施例、比較例>
(実施例1)
ウレタンプレポリマー(D)の製造方法にしたがって、ポリアルキレンオキシド(A1)を65重量部加えて脱水し、イソシアネート化合物(C1)とウレタン化触媒としてトリスアセチルアセトナト鉄0.03重量部を、(A1)に由来する水酸基の量(MOH)と(C1)に由来するイソシアネート基の量(MNCO)が、モル比率で、(C1)のMNCO/(A1)のMOH=2.30の混合比となるように仕込み、70℃一定で3時間反応することでNCO基末端のウレタンプレポリマー(D)を製造した((X)工程)。
ウレタンプレポリマー(E)の製造方法にしたがって、55℃以下への冷却工程を経て、(X)工程で製造したウレタンプレポリマー(D)へポリアルキレンオキシド(B1)35重量部を加えて、ウレタンプレポリマー(D)の製造と同一の反応条件で反応し、最終的なイソシアネート化合物(C)のMNCO/(A1)と(B1)のMOHが0.20となる活性水素基末端のウレタンプレポリマー(E1)を製造((Y)工程)。微加圧で濾過抜きだしを行い、透明なガラス容器にパッキングした(微加圧濾過・抜出工程)。
表2に実施例1の結果を示す。中間体のウレタンプレポリマー(D1)およびウレタンプレポリマー(E1)は何れも高透明で、フラスコ壁やメッシュには付着物やゲル状物はみられない良好な液性状のものであり、適度な粘度と良好なハンドリング性を示し塗工性や高い生産性に期待できるものであった。また本実施例の製造方法で得られたウレタンプレポリマー(E1)は、初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物も顕著に透明であった。
(実施例2~6)
実施例1に対して(X)工程にて溶剤を用い、仕込み量の比率、反応条件を変更して製造したものである。実施例1と同様に(X)工程にてポリアルキレンオキシド(A1)を含む活性水素化合物とイソシアネート(C1)を加えてNCO基末端のウレタンプレポリマー(D)を製造し、(Y)工程にて芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)とを混合して反応し活性水素基末端のウレタンプレポリマー(E1)を製造したものである。表2に実施例2~6の結果を示す。中間体のウレタンプレポリマー(D)およびウレタンプレポリマー(E)は何れも顕著に高透明で、フラスコ壁やメッシュには付着物やゲル状物はみられない良好な液性状のものであり、適度な粘度と良好なハンドリング性を示し塗工性や高い生産性に期待できるものであった。また本実施例の製造方法で得られたウレタンプレポリマー(E)は、初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物も顕著に透明であった。
(実施例7、実施例8)
実施例7は実施例1に対して(X)工程でのイソシアネート化合物のモル比率が4.31と比較的高く遊離のイソシアネートが多めに生成する製造方法であり、実施例8は実施例1に対して(Y)工程での最終的なイソシアネート化合物のモル比率が0.12とポリアルキレンオキシド(B)が比較的多く残存しやすい製造方法である。表2に実施例7~8の結果を示す。何れも1cmを超える高厚みではわずかな濁りはみられるもののほぼ透明で高い透明性を有し、フラスコ壁やメッシュには付着物やゲル状物はみられない良好な液性状のものであり、適度な粘度と良好なハンドリング性を示し塗工性や高い生産性に期待できるものであった。また本実施例の製造方法で得られたウレタンプレポリマー(E)は、初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物も高透明であった。
(実施例9)
実施例1に対して(X)工程でのポリアルキレンオキシド(A)が90重量部と多く、(Y)工程で加える剛直なポリアルキレンオキシド(B)が10重量部と比較的少ない比率で製造したものである。表2に実施例9の結果を示す。中間体のウレタンプレポリマー(D)およびウレタンプレポリマー(E)は何れも顕著に高透明で、フラスコ壁やメッシュには付着物やゲル状物はみられない良好な液性状のものであり、適度な粘度と良好なハンドリング性を示し塗工性や高い生産性に期待できるものであった。また本実施例の製造方法で得られたウレタンプレポリマー(E)は、硬化直後はわずかにタックはあるものの初期硬化性が良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物も顕著に透明であった。
(実施例10)
実施例4に対して(X)工程にて加える高官能基数のポリアルキレンオキシド(B)が多く、(X)工程でのイソシアネート化合物のモル比率が1.90と低めであり、また(Y)工程でのイソシアネート化合物のモル比率が0.57と高めであるため、ウレタンプレポリマー(D)、ウレタンプレポリマー(E)が僅かに高分子量化や高官能基数化しやすい製造方法である。表2に実施例10の結果を示す。中間体のウレタンプレポリマー(D10)およびウレタンプレポリマー(E10)は何れも粘度が高めであったが、良好なハンドリング性を示し塗工性や高い生産性に期待できるものであり、高透明でフラスコ壁やメッシュには付着物やゲル状物はみられない良好な液性状のものであった。また本実施例の製造方法で得られたウレタンプレポリマー(E10)は、初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物も顕著に透明であった。
(実施例11)
実施例6に対して(X)工程にて加える高官能基数のポリアルキレンオキシド(B)が多いため、ウレタンプレポリマー(D)、ウレタンプレポリマー(E)が僅かに高分子量化や高官能基数化しやすい製造方法である。表2に実施例11の結果を示す。中間体のウレタンプレポリマー(D11)およびウレタンプレポリマー(E11)は何れも粘度が高めであったが、良好なハンドリング性を示し塗工性や高い生産性に期待できるものであり、高透明でフラスコ壁やメッシュには付着物やゲル状物はみられない良好な液性状のものであった。また本実施例の製造方法で得られたウレタンプレポリマー(E11)は、初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物も顕著に透明であった。
(実施例12~14)
実施例1~11に対してポリイソシアネート(C)として1級NCO基のみを有するヘキサメチレンジイソシアネートを用い、組成比等を変更して製造したものである。実施例1~11に対して(X)工程で連鎖的に反応してゲル化しやすくポリイソシアネート比率を高めに設定する必要があったが、より高い反応性であり、より生産性に優れるものであった。表2に実施例12~14の結果を示す。中間体のウレタンプレポリマー(D)およびウレタンプレポリマー(E)は何れも高透明で、フラスコ壁やメッシュには付着物やゲル状物はみられない良好な液性状のものであり、適度な粘度と良好なハンドリング性を示し塗工性や高い生産性に期待できるものであった。また本実施例12~14の製造方法で得られたウレタンプレポリマー(E)は、初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物も顕著に透明であった。
(実施例15)
実施例12に対して(X)工程でのイソシアネート化合物のモル比率が4.56と比較的高く遊離のイソシアネートを多く生成する製造方法である。表2に実施例15の結果を示す。何れも1cmを超える高厚みではわずかな濁りはみられるもののほぼ透明で高い透明性を有し、フラスコ壁やメッシュには付着物やゲル状物はみられない良好な液性状のものであり、適度な粘度と良好なハンドリング性を示し塗工性や高い生産性に期待できるものであった。また本実施例の製造方法で得られたウレタンプレポリマー(E)は、初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物も高透明であった。
Figure 2022166967000002

(比較例1)
実施例1に対して、剛直な芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)を加えず製造したものであり、(Y)工程を含まない製造方法で活性水素基末端のウレタンプレポリマー(DC1)を製造したものである。表3に結果を示す。芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)を加えず製造しているため、液性状や透明性は良好であるものの、ウレタンプレポリマー(E)の硬化性が低く、タックが大きいものであり、ウレタン硬化物が高い強度を期待できない使用が困難なウレタンプレポリマー(E)の製造方法であった。
(比較例2)
実施例1に対して、(X)工程にて剛直な芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)を多量に加えて製造したものであり、(Y)工程を含まない製造方法で活性水素基末端のウレタンプレポリマー(DC2)を製造したものである。表3に結果を示す。芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)を(X)工程にて加えて製造し、(Y)工程を経ていない製造方法であるため、(X)工程での原料の相溶性が悪く、本製造例の固形分、反応条件では白濁が見られ、安定的に高透明の活性水素基末端のウレタンプレポリマーの製造が困難であるとともに安定的に高透明のウレタン硬化物の製造が困難な製造方法であった。
(比較例3)
比較例2に対して、(X)工程でポリアルキレンオキシド(B)を減量して水酸基末端のウレタンプレポリマーを形成後、(Y)工程で少量のポリアルキレンオキシド(B)を加える製造方法であって、(X)工程でNCO末端のウレタンプレポリマー(D)を製造しない製造方法である。表3に結果を示す。(X)工程にてNCO基末端のウレタンプレポリマー(D)を製造しない製造方法であるため、(X)工程での原料の相溶性が悪く、反応性も異なることから、本製造例の固形分、反応条件では白濁が見られ、安定的に高透明のウレタンプレポリマー(E)の製造が困難であるとともに安定的に高透明のウレタン硬化物の製造が困難な製造方法であった。
(比較例4)
比較例3に対して更に(X)工程でのポリアルキレンオキシド(B)を減量してNCO基末端のウレタンプレポリマーを形成後、(Y)工程で多くポリアルキレンオキシド(B)を加える製造方法であって、(X)工程でのイソシアネート化合物のモル比率が1.09と低く、高分子量化、高架橋化しやすい製造方法である。表3に結果を示す。(X)工程でのイソシアネート化合物のモル比率が1.30より低いため、(X)工程にてウレタンプレポリマー(D)がゲル化し、(Y)工程で加えたポリアルキレンオキシド(B)とも分離し均一な組成の形成が困難な製造方法であり、ゲル化し流動性もないため使用が困難となる製造方法であった。
(比較例5)
(X)工程でNCO基末端のウレタンプレポリマーを形成後、(Y)工程で多くポリアルキレンオキシド(B)を加える製造方法であって、(X)工程でのイソシアネート化合物のモル比率が6.76と高く遊離のイソシアネートが(Y)工程に多量に残存する製造方法である。表3に結果を示す。(X)工程でのイソシアネート化合物のモル比率が5.00より高いため、(Y)工程で加える剛直な芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)と遊離のポリイソシアネートが連鎖的に反応が進行した影響と考えられる強い濁りが発生し、ウレタンプレポリマー(E)の透明性に劣り、高い透明性のウレタン硬化物の形成が困難となる製造方法であった。
(比較例6)
(X)工程でNCO基末端のウレタンプレポリマーを形成後、(Y)工程で多くポリアルキレンオキシド(B)を加える製造方法であって、(X)工程で分子量2000以上のポリアルキレンオキシド(A)を加えない製造方法である。表3に結果を示す。比較的柔軟な分子量2000以上のポリアルキレンオキシド(A)を加えず、剛直で触媒活性を有する芳香族アミン残基を有し高官能基数のポリアルキレンオキシド(B)を多量に用いるため、ウレタンプレポリマー(E)が透明性に劣り、高い透明性のウレタン硬化物の形成が困難となる製造方法であった。
(比較例7)
比較例4に対して(X)工程でのゲル化を抑制するため、(X)工程でのイソシアネート化合物の添加量を上げモル比率を高めた製造方法である。表3に結果を示す。(X)工程でのイソシアネート化合物の添加量を上げたため(X)工程で得られるウレタンプレポリマー(D)は透明で液性状は良好であるが、(Y)工程でのイソシアネート化合物のモル比率が0.85と高くなるため(Y)工程でゲル化し、使用が困難となる製造方法であった。
(比較例8)
比較例2に対してポリイソシアネート(C)として1級NCO基のみを有するヘキサメチレンジイソシアネートを用い、組成比等を変更して製造したものであり、比較例2と同様に(Y)工程を経ないで活性水素基末端のウレタンプレポリマー(EC8)を製造したものである。表3に結果を示す。芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)を(X)工程にて加えて製造し、(Y)工程を経ていない製造方法であるため、(X)工程での原料の相溶性が悪く、本製造例の固形分、反応条件では白濁が見られ、安定的に高透明の活性水素基末端のウレタンプレポリマーの製造が困難であるとともに安定的に高透明のウレタン硬化物の製造が困難な製造方法であった。
(比較例9)
比較例8に対して(X)工程でのポリアルキレンオキシド(B)を減量してNCO基末端のウレタンプレポリマーを形成後、(Y)工程でポリアルキレンオキシド(B)を加える製造方法であって、(X)工程でのイソシアネート化合物のモル比率が1.09と低く、高分子量化、高架橋化しやすい製造方法である。表3に結果を示す。(X)工程でのイソシアネート化合物のモル比率が1.30より低いため、(X)工程にてウレタンプレポリマー(D)がゲル化し、(Y)工程で加えたポリアルキレンオキシド(B)とも分離し均一な組成の形成が困難な製造方法であり、ゲル化し流動性もないため使用が困難となる製造方法であった。
(比較例10)
(X)工程でNCO基末端のウレタンプレポリマーを形成後、(Y)工程で顕著に多くのポリアルキレンオキシド(B)を加える製造方法であって、(Y)工程でのイソシアネート化合物のモル比率が0.029と顕著に低い製造方法である。表3に結果を示す。(Y)工程で加えるポリアルキレンオキシド(B)が多く、(Y)工程でのイソシアネート化合物のモル比率が0.10未満であるため、相溶性の低い剛直な芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)が多く残存した影響と考えられる濁りが発生。ウレタンプレポリマー(E)が透明性に劣り、高い透明性のウレタン硬化物の形成が困難となる製造方法であった。
Figure 2022166967000003

(実施例16~21)
実施例1に対して、(X)工程で使用するポリアルキレンオキシド(A)、(Y)工程で使用するポリアルキレンオキシド(B)の種類と比率を変更したものである。また実施例16以降、比較例11以降はいずれも反応時間3時間、70℃一定条件で(X)工程、(Y)工程の反応を行い、実施例はすべて各工程の反応完結を確認した。
表4に結果を示す。ポリアルキレンオキシド(A)の分子量や官能基数、ポリアルキレンオキシド(B)の分子量や含まれるアルキレンオキシド残基を変更しても、中間体のウレタンプレポリマー(D)およびウレタンプレポリマー(E)は何れも高透明で、実施例20では、(X)工程後の冷却工程にて冷却が不足し、僅かにフラスコ壁に微量の付着物が生成したが良好に使用可能な範囲であり、その他の実施例もフラスコ壁やメッシュには付着物やゲル状物はみられない良好な液性状のものであり、いずれも適度な粘度と良好なハンドリング性を示し塗工性や高い生産性に期待できるものであった。また本実施例の製造方法で得られたウレタンプレポリマー(E)は、初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物も顕著に透明であった。
(比較例11)
分子量2000以上のポリアルキレンオキシド(A)の代わりに分子量1000のポリアルキレンオキシド(AC2)を用いたものである。表4に結果を示す。ポリアルキレンオキシド(AC2)は分子量が低く水酸基が多いため、(X)工程でのポリイソシアネート(C)のモル比率を2.50に設定するとポリイソシアネート(C)の総量が増加し、(Y)工程でポリアルキレンオキシド(B)を加えてもポリイソシアネート(C)のモル比率を下げることが困難となり(Y)工程でゲル化するため使用が困難となる製造方法であった。
(比較例12)
比較例11に対して(Y)工程でのポリイソシアネート(C)のモル比率を下げ(Y)工程でのゲル化を抑制するため、(X)工程でのポリアルキレンオキシド(AC2)を30重量部まで低減し、(Y)工程でのポリアルキレンオキシド(B)を増量して製造したものである。表4に結果を示す。剛直で触媒活性を有する芳香族アミン残基を有し高官能基数のポリアルキレンオキシド(B)を多量に必要となるため、ウレタンプレポリマー(E)が透明性に劣り、高い透明性のウレタン硬化物の形成が困難となる製造方法であった。
(比較例13)
ポリアルキレンオキシド(A)の代わりにアルキレンオキシド残基を有さないポリオキシテトラメチレングリコールを用いて製造したものである。表4に結果を示す。ポリオキシテトラメチレングリコールはアルキレンオキシド残基を有さず、ポリアルキレンオキシド(B)との相溶性が低いためウレタンプレポリマー(E)の透明性に劣り、ウレタン硬化物の透明性に期待できないものであり、ポリアルキレンオキシド(A)より結晶性が高いためウレタンプレポリマー(D)およびウレタンプレポリマー(E)が増粘しやすく、塗工性やハンドリング性に期待できず使用が困難となる製造方法であった。
(比較例14~17)
芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)の代わりに、比較例14は同等分子量で芳香族アミン残基を有さないポリアルキレンオキシド(BC1)、比較例15はアルキレンオキシド残基を有さず比較的剛直なポリオキシテトラメチレン残基を有するポリオール(BC2)、比較例16、17は剛直な芳香族アミン残基に代わって剛直で高官能基数で環状の糖構造を有するシュークローズ残基を含むポリアルキレンオキシド(BC3)を用いて製造したものである。
比較例14は、剛直な構造を有さないため、ウレタン硬化物の強度に期待できないウレタンプレポリマーであり、また反応性も高くないため(Y)工程で残存した影響と考える濁りが発生し透明性に劣り使用が困難となる製造方法であった。
比較例15は、アルキレンオキシド残基を有さずウレタンプレポリマー(D)と相溶性が低めで使用可能な範囲で僅かに濁りが発生したのみであったが、ウレタンプレポリマー(E)が高粘調化し塗工性やハンドリング性に期待できないものであった。また、芳香族アミン残基と比較してポリオキシテトラメチレン残基が剛直性に劣る影響と考えられる、硬化性の不足があり強度に期待できず、使用が困難となる製造方法であった。
比較例16は、高官能基数で環状の糖構造を有し相溶性の悪いシュークローズ残基を多量に含むため、ウレタンプレポリマー(E)の透明性が悪化し高透明なウレタン硬化物の形成が困難となる製造方法であった。
比較例17では相溶性の悪いシュークローズポリオールを10重量部まで低減することで相溶性が改善し高い透明を発現したが、粘度が高めであり、芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)と比較して触媒活性を有さず10重量部では初期硬化性が不足するため強度の発現に期待できない、使用が困難となる製造方法であった。
Figure 2022166967000004

(実施例22、23、25)
実施例1~21に対して、(X)工程で不飽和度の低いポリアルキレンオキシド(A)の代わりに不飽和度や分子量分布が一般的なポリアルキレンオキシド(A3)を用いてウレタンプレポリマー(E)を製造した。表5に結果を示す。不飽和度や分子量分布が一般的なポリアルキレンオキシド(A3)を用いても、本製造方法を適応することで、(Y)工程で透明性を維持しつつ剛直な芳香族アミン残基を有するポリアルキンオキシド(B)を多く加えることができ、高い硬化性でウレタン硬化物の強度に期待できるウレタンプレポリマー(E)の製造方法であった。
(実施例24、26)
実施例23、25に対して、剛直な芳香族アミン残基を有するポリアルキンオキシド(B)に加えて、更に高官能基数で剛直な環状のシュークローズ構造を有するポリアルキレンオキシド(BC3)を用いることで、高い透明性を維持しつつより高い硬化性で、ウレタン硬化物が更に高い強度が期待できるウレタンプレポリマー(E)の製造方法であった。
(比較例18、19)
不飽和度や分子量分布が一般的なポリアルキレンオキシド(A3)を用いて、(X)工程にて剛直な芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)を多量に加えて製造したものであり、(Y)工程を含まない製造方法で活性水素基末端のウレタンプレポリマー(DC18)、(DC19)を製造したものである。表5に結果を示す。芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)を(X)工程にて加えて製造し、(Y)工程を経ていない製造方法であるため、モノオールを含むポリアルキレンオキシド(A3)を用いても(X)工程での原料の相溶性が悪く、本製造例の固形分、反応条件では白濁が見られ、安定的に高透明の活性水素基末端のウレタンプレポリマーの製造が困難であるとともに安定的に高透明のウレタン硬化物の製造が困難となる製造方法であった。
即ち、実施例22~26、比較例18、19により、不飽和度の低いポリアルキレンオキシド(A1)、(A2)、(A4)の使用有無によらず、不飽和度や分子量分布が一般的なポリアルキレンオキシド(A3)を用いても、(Y)工程にて芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)を加える本製造方法を適応することで高透明性を維持し高い硬化性を発現して高い強度、低タック(軽剥離性)が期待できるウレタンプレポリマー(E)を製造できることが示された。
Figure 2022166967000005

本実施例により得られたウレタンプレポリマー(E)はいずれも溶剤量等の反応条件によらず高透明でゲル状物やフラスコ壁への付着物、沈降成分等が殆ど見られず、いずれの粘度も1~100Pa・sの範囲であり、かつ良好な流動性を示した。また、硬化性評価により得られたウレタン硬化物はいずれも収縮もなく目視上高い透明性で、Hazeが5%以下であった。

<ウレタン硬化物の製造例>
実施例3、12、17、23にて得られたウレタンプレポリマー(E)の固形分100重量部に対して、反応遅延剤としてアセチルアセトン5重量部と酸性リン酸エステル(城北化学工業製JP508)600ppm、トリアゾール安定剤チヌビン99-2を0.8重量部、ジエチレングリコール0.2重量部、可塑剤として2-エチルヘキサン酸ヘキサデシル10重量部、帯電防止剤として1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド1.5重量部、レベリング剤としてDIC製F-571を0.05重量部混合・分散し、架橋剤としてコロネートHXLVを水酸基に対して1.1当量混合して80μm以下でPET基材に塗工して、130℃5分で乾燥することでウレタン塗膜を含むウレタンシートを作製した。いずれの実施例の製造方法で製造したウレタンプレポリマー(E)を含む組成物の粘度も1~100Pa・sの範囲で、かつシート作成後の組成物の残液は24時間経過後も良好な流動性を示した。得られたウレタン硬化物は濡れ性が良好でかつ高強度、高透明であり、シーリング材、塗料、粘着剤、接着剤等に好適に使用できるものであった。
以上、実施例で示したように、本発明におけるウレタンプレポリマーの製造方法は、貯蔵安定性およびハンドリング性、硬化性に優れる高透明なウレタンプレポリマーを安定的に製造でき、本製造方法により得られるウレタンプレポリマーを用いることで高透明で強度が高く表面タックが少ない、軽剥離性のウレタン塗膜の安定的な製造方法を提供できる。
その特徴を活かすことにより、本製造方法により得られるポリウレタンは、シーリング材、塗料、粘着剤、接着剤等に好適に使用できることが示された。

Claims (7)

  1. 少なくとも、下記の(X)工程、(Y)工程を含む、ウレタンプレポリマー(E)の製造方法。
    (X)工程;数平均分子量2000以上のポリアルキレンオキシド(A)を含むポリオールとポリイソシアネート(C)を、ポリオールの活性水素基の総量に対するポリイソシアネート(C)のNCO基の比率(NCO/OH比)が1.30~5.00の割合となる量比で混合し、NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)を製造する工程。
    (Y)工程;芳香族アミン残基を有する数平均分子量2000未満のポリアルキレンオキシド(B)を含むポリオールと(X)工程により製造したウレタンプレポリマー(D)を、(X)工程及び(Y)工程で混合するポリオールの活性水素基の総量に対する前記ポリイソシアネート(C)のNCO基の総量(NCO/OH比)が0.10~0.70の割合となる量比で混合し、活性水素基末端のウレタンプレポリマー(E)を製造する工程。
  2. (Y)工程におけるポリアルキレンオキシド(B)が、炭素数2~10のアルキレンオキシド残基を有し、1分子中に活性水素基を2つ以上有する、請求項1に記載のウレタンプレポリマー(E)の製造方法。
  3. (Y)工程におけるポリアルキレンオキシド(B)が、4,4’-ジフェニルメタンジアミン残基、2,4-トリレンジアミン残基及び2,6-トリレンジアミン残基からなる群より選ばれる1種類以上の残基を含む、請求項1又は請求項2に記載のウレタンプレポリマー(E)の製造方法。
  4. (X)工程におけるポリイソシアネート(C)が、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート及びこれらの変性体からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のウレタンプレポリマー(E)の製造方法。
  5. (X)工程において、ポリオールとポリイソシアネート(C)の総量100重量部に対して、金属成分を含むウレタン化触媒0.001~0.2重量部を接触する、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のウレタンプレポリマー(E)の製造方法。
  6. ウレタンプレポリマー(E)が、25℃条件にて、粘度が1~100Pa・s、且つ、1cm厚みでのHazeが15%以下である、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のウレタンプレポリマー(E)の製造方法。
  7. (X)工程において、グリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル、トルエン及びメチルエチルケトンからなる群より選ばれる1種以上を含む有機溶剤を、固形分濃度が60~99重量%の範囲となる量比で混合する、請求項1乃至請求項6のいすれかに記載のウレタンプレポリマー(E)の製造方法。
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