以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体製造装置用部材を有する半導体製造装置を例示する断面図である。
図1に表した半導体製造装置100は、チャンバ110と、半導体製造装置用部材120と、静電チャック160と、を備える。静電チャック160は、チャンバ110の内部における下部に設けられている。ウェーハ210等の被吸着物は、静電チャック160の上に載置される。この例では、半導体製造装置用部材120は、チャンバ110の内部における上部に設けられている。例えば、半導体製造装置用部材120は、チャンバ110の内部において静電チャック160及びウェーハ210の直上に位置する、チャンバ110の天板部材である。
チャンバ110は、プラズマが生成される空間(領域191)を形成する内壁111を有する。半導体製造装置用部材120の表面のセラミック層20(図2参照)は、内壁111の少なくとも一部を構成する。この例では、内壁111は、静電チャック160が配置される下側内壁111bと、下側内壁111bより上に配置される上側内壁111uと、を有する。上側内壁111uの少なくとも一部に、半導体製造装置用部材120のセラミック層20が設けられる。
半導体製造装置100では、高周波電力が供給され、図1に表した矢印A1のように例えばハロゲン系ガスなどの原料ガスがチャンバ110の内部に導入される。すると、チャンバ110の内部に導入された原料ガスは、静電チャック160と半導体製造装置用部材120との間の領域191においてプラズマ化する。
ここで、チャンバ110の内壁がプラズマにより腐食されるとパーティクル221が発生する場合がある。このパーティクル221がウェーハ210に付着すると、製造された半導体デバイスに不具合が発生する場合がある。すると、半導体デバイスの歩留まりおよび生産性が低下する場合がある。そのため、半導体製造装置用部材120には、耐プラズマ性が要求される。
なお、実施形態に係る半導体製造装置用部材は、チャンバ内の上部以外の位置に配置される部材であってもよい。また、半導体製造装置用部材が用いられる半導体製造装置は、図1の例に限られず、アニール、エッチング、スパッタリング、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの処理を行う任意の半導体製造装置(半導体処理装置)を含む。
実施形態に係る半導体製造装置用部材は、半導体製造装置内の各種部材、とりわけ腐食性の高密度プラズマ雰囲気に暴露される環境において用いられる部材として好適に用いることができる。具体的には、チャンバ壁、シャワープレート、ライナー、シールド、ウィンドウ、エッジリング、フォーカスリング、等が挙げられる。
図2は、第1実施形態に係る半導体製造装置用部材の一部を例示する断面図である。
図2は、図1に表した領域R近傍を拡大して示している。
半導体製造装置用部材120は、基材10と、セラミック層20と、を含む。基材10は、第1面11と、第1面11とは反対側の第2面12と、を有する。第1面11は、図1に示したチャンバ110の内側を向く面であり、第2面12は、チャンバ110の外側を向く面である。基材10には、少なくとも1つの孔13が設けられている。孔13は、第1面11から第2面12にかけて、基材10を貫通している。
この例では、基材10は、例えば板状(円板状)である。第1面11及び第2面12は、それぞれ、例えば平面である。ただし、第1面11及び第2面12は、曲面であってもよい。また、基材10の中央には、1つの孔13が設けられている。例えば、孔13には、プラズマの原料ガスを噴射するインジェクタなどの部材が配置される。プラズマの原料ガスは、孔13を通って、チャンバ110の内部に導入される。ただし、孔13は、チャンバ110内にプラズマ生成用の原料ガスを供給する孔でなくてもよく、基材10を貫通する任意の孔でよい。また、孔13は、基材10の中央でなくてもよいし、複数設けられてもよい。
第1面11から第2面12に向かう方向をZ方向(第1方向)とする。Z方向に垂直な1つの方向をX方向とし、Z方向及びX方向と垂直な方向をY方向とする。例えば、第1面11及び第2面12は、Z方向に対して垂直であり、X-Y平面に沿って延びている。
孔13(孔の内周面13s)は、第1孔部13aと、第2孔部13bと、第3孔部13cと、を有する。孔13は、Z方向に沿ってみたときに、例えば円形である。内周面13sは、孔13を規定する基材10の内周表面である。内周面13sは、孔13の内側を向き、X-Y平面と交差する。
第1孔部13aは、内周面13sのうち第1面11の近傍に位置し、第1面11と隣接する領域である。第1孔部13aは、第1面11と連続している。第1孔部13aは、Z方向において第1面11と第2面12との間に位置する。第1孔部13aは、第1面11に対して平行ではなく、第1面11及びZ方向と交差する傾斜面である。第1孔部13aは、Z方向に平行に延びる面であってもよい。この例では、図2のようなZ方向に平行な断面において、第1孔部13aは直線状である。ただし、Z方向に平行な断面において、第1孔部13aは、直線状でなくてもよく、例えば湾曲していてもよい。Z方向に沿ってみたときに(すなわちX-Y平面に投影したときに)、第1孔部13aは、例えば第1面11に囲まれた環状である。
この例では、Z方向に平行な断面において、第1面11と第1孔部13aとが接する境界14は、角になっている。但し、第1面11と第1孔部13aとは、滑らかに接続されていてもよい。言い換えれば、図2の断面において、境界14は丸められて湾曲し、曲率を有していてもよい。
第2孔部13bは、Z方向において、第1孔部13aと第2面12との間に位置する。言い換えれば、第2孔部13bのZ方向における位置は、第1孔部13aのZ方向における位置と、第2面12のZ方向における位置と、の間である。例えば、第2孔部13bは、内周面13sのうち第2面12の近傍に位置し、第2面12と隣接する領域である。第2孔部13bは、第2面12と連続していてもよい。第2孔部13bは、Z方向に延びており、例えばZ方向に対して平行である。第2孔部13bは、例えば第2面12に略垂直な垂直面を構成している。Z方向に沿って見たときに、第2孔部13bは、例えば第1孔部13aの内側に位置する環状である。
第3孔部13cは、Z方向において、第1孔部13aと第2孔部13bとの間に位置する。言い換えれば、第3孔部13cのZ方向における位置は、第1孔部13aのZ方向における位置と、第2孔部13bのZ方向における位置と、の間である。第3孔部13cは、内周面13sのうち第1孔部13aと連続した領域である。第3孔部13cは、第1面11に対して平行ではなく、第1面11及びZ方向と交差する傾斜面である。第3孔部13cは、Z方向に延びる面であってもよい。この例では、Z方向に平行な断面において、第3孔部13cは直線状である。ただし、Z方向に平行な断面において、第3孔部13cは、直線状でなくてもよく、例えば湾曲していてもよい。Z方向に沿ってみたときに、第3孔部13cは、例えば、第1孔部13aに囲まれ第1孔部13aと接する環状であり、第3孔部13cの内側に第2孔部13bが位置する。第3孔部13cと第2孔部13bとは連続していてもよい。
この例では、Z方向に平行な断面において、第1孔部13aが延びる方向と第3孔部13cが延びる方向とは同一直線上である。言い換えれば、第3孔部13cとZ方向とのなす角θ1は、第1孔部13aとZ方向とのなす角θ2と同じである。ただし、角θ1と角θ2とは異なっていてもよい。
また、この例では、Z方向に平行な断面において、第2孔部13bと第3孔部13cとが接する境界17は、角になっている。但し、第2孔部13bと第3孔部13cとは、滑らかに接続されていてもよい。言い換えれば、図2の断面において、境界17は丸められて湾曲し、曲率を有していてもよい。
また、孔13(孔の内周面13s)は、傾斜面13acを有する。傾斜面13acは、例えば第1孔部13aと第3孔部13cとを含む面である。傾斜面13acは、第1面11と連続し、第1面11及びZ方向に対して傾斜している。傾斜面13acは、垂直面(第2孔部13b)と連続し、第1面11と第2孔部13bとを接続する。この例において、第1孔部13aと第3孔部13cとによって形成された傾斜面13acは、Z方向に対して平行な断面において直線状である。ただし、傾斜面13acは湾曲していてもよい。
第1面11と傾斜面13acとのなす角θαは、第2孔部13b(垂直面)と傾斜面13acとのなす角θβよりも大きい。例えば、角θαは、第1面11と第1孔部13aとのなす角であり、角θβは、第2孔部13bと第3孔部13cとのなす角である。
セラミック層20のプラズマ腐食耐性は、基材10のプラズマ腐食耐性よりも高い。セラミック層20は、基材10の上に設けられる。より具体的には、セラミック層20は、図2に示したように、第1部分21と第2部分22とを含む。第1部分21は、第1面11上に設けられ、第1面11と接している。第1部分21は、第1面11の略全体に設けられている。第2部分22は、第1孔部13a上に設けられ、第1孔部13aと接している。第1部分21の表面21s及び第2部分の表面22sは、チャンバ110内のプラズマと直接接する。つまり、表面21sは、第1部分21の第1面11と接する面とは反対側の面であり、チャンバ110内に露出するように設けられている。表面22sは、第2部分22の第1孔部13aと接する面とは反対側の面であり、チャンバ110内に露出するように設けられている。第1面11は、第1部分21に覆われているため、プラズマと直接接しないようになっている。また、第1孔部13aは、第2部分22に覆われているため、プラズマと直接接しないようになっている。つまり、第1面11および第1孔部13aはセラミック層20で被覆されており、セラミック層20がプラズマに曝されるように構成されている。表面21sは、例えばX-Y平面に平行な平面である。表面21sは、曲面であってもよい。表面22sは、表面21s及びZ方向と交差する傾斜面である。表面21sはZ方向に延びる面であってもよい。
セラミック層20は、第2面12上、第2孔部13b上及び第3孔部13c上には設けられない。言い換えれば、この例においては、孔13の内周面13sのうち、セラミック層20が設けられた領域が第1孔部13aであり、セラミック層20が設けられていない領域が第2孔部13b及び第3孔部13cである。第3孔部13cは、第2部分22の端部と接している。第2孔部13b及び第3孔部13cは、チャンバ110内のプラズマに露出しており、プラズマと直接接する。第2孔部13b、第3孔部13cはセラミック層20で被覆されていない。
第1部分21の表面21sの算術平均高さSaは、第2部分22の表面22sの算術平均高さSaよりも小さい。なお、算術平均高さSa(面粗さ)は、後述する方法によって評価できる。例えば、第1部分21の表面粗さ(表面21sの粗さ)は、第2部分22の表面粗さ(表面22sの粗さ)よりも小さい。
上述したように、パーティクルを低減させるために、プラズマと接触する半導体製造装置用部材には、耐プラズマ性が求められる。そこで、従来、半導体製造装置用部材の表面を耐プラズマ性に優れた被膜(層)でコーティングする方法が用いられている。しかし、半導体製造装置用部材(例えば天板部材)の大部分を占める非孔部を、耐プラズマ性の高い被膜(例えばY2O3等)でコーティングした場合であっても、昨今では、パーティクルの低減の要求を十分に満たせない恐れがある。そのため、例えば、孔からのパーティクルの制御も求められている。孔からのパーティクルとしては、例えば、孔に設けられた被膜の一部が脱離することで発生するパーティクルや、孔に配置された部材(例えばインジェクタ)からのパーティクルなどが考えられる。
これに対して、実施形態においては、基材10の第1面11及び第1孔部13aにセラミック層20が設けられ、第1面11上の第1部分21の表面21sの算術平均高さSaが、第1孔部13a上の第2部分22の表面22sの算術平均高さSaよりも小さい。これにより、パーティクルの発生または影響を低減することができる。
例えば、腐食性プラズマと接する第1部分21の表面21sの算術平均高さSa(面粗さ)が比較的小さいことで、第1部分21からのパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。すなわち、例えば、第1部分は平滑な構造を有しており、第1部分21における凹凸を基点としたクラックやパーティクルの発生を抑制できる。例えば、第1部分21がプラズマにより腐食され、その一部が、セラミック層20から脱離してパーティクルとなることを抑制できる。
また、第1孔部13a上の第2部分22の表面22sの算術平均高さSa(面粗さ)が、比較的大きいことで、孔13からのパーティクルの発生または影響を抑制することができる。例えば、第2部分22は第1孔部13a上に設けられているため、第2部分22においては、第1部分21よりも電界の影響が大きい場合があると考えられる。つまり、第1面11上に設けられた第1部分21がプラズマに曝されるときに、第1孔部13a上の第2部分22は、孔13の端部付近であるため、第1部分21よりも電界が集中しやすい場合がある。電界が集中する部分においては、電界強度が大きく、プラズマが集中することでプラズマによるダメージが大きくなる。ダメージを受けた部分がセラミック層20から脱離してパーティクルが発生する恐れがある。これに対して、実施形態においては、第2部分22の表面22sの算術平均高さSaが比較的大きいことで、第2部分22の表面積が大きくなり、電界の集中を緩和することができる。
また、孔13の端部付近(出口付近)に設けられた第2部分22の表面22sの算術平均高さSaが比較的大きいことにより、孔13から発生したパーティクルを第2部分22で捕集することができ、パーティクルの影響をより効果的に抑制することができる。
また、プラズマ生成用ガスが孔13を通過する場合においては、ガスの噴射によって孔周辺の温度が変化する。そのため、第2部分22における熱応力が、第1部分21における熱応力よりも高くなる恐れがある。熱応力に起因して、第2部分22においてクラックやパーティクルが発生する恐れがある。これに対して、第2部分22の表面22sの算術平均高さSaが比較的大きいことで、第2部分22の表面積が大きくなり、第2部分22の熱分散(放熱)効果を高めることができる。これにより、第2部分22におけるクラックやパーティクルの発生を抑制することができる。
例えば、第2部分22の表面粗さは、第1部分の表面粗さの2倍以上10倍以下、より好ましくは5倍以下であることが望ましい。第2部分22の表面22sの算術平均高さSaは、第1部分21の表面21sの算術平均高さSaの2倍以上10倍以下、より好ましくは5倍以下であることが望ましい。第2部分22の表面22sの算術平均高さSaは、例えば0.5マイクロメートル(μm)未満である、また、例えば0.005μm以上である。第1部分21の表面21sの算術平均高さSaは、例えば0.1μm未満である、また、例えば0.001μm以上である。このような構成によれば、パーティクルの発生又は影響をより確実に低減することができる。
例えば、第3孔部13cの表面粗さは、第1部分21の表面粗さよりも大きく、第2部分22の表面粗さよりも大きい。例えば、第3孔部13cの算術平均高さSaは、第1部分21の表面21sの算術平均高さSaよりも大きく、第2部分22の表面22sの算術平均高さSaよりも大きい。
既に述べたように、この例において、第3孔部13c上には、セラミック層20が設けられておらず、孔13の内壁が露出している。つまり、第3孔部13cは、セラミック層20と孔13の内壁との境界部分であり、プラズマと接する基材端部である。このような基材端部(第3孔部13c)の算術平均高さSa(面粗さ)を比較的大きくすることで、基材端部の表面積が大きくなり基材端部における電界の集中を緩和することができる。これにより、例えば、基材端部における電界集中によるプラズマのダメージを抑制し、基材端部からのパーティクルの発生を抑制することができる。
例えば、第3孔部13cの表面粗さは、第1部分21の表面粗さの2倍よりも大きいことが望ましい。第3孔部13cの表面粗さは、第1部分21の表面粗さの10倍以下とすることも好ましい。第3孔部13cの算術平均高さSaは、第1部分21の表面21sの算術平均高さSaの2倍よりも大きいことが望ましい。第3孔部13cの算術平均高さSaは、第1部分21の表面21sの算術平均高さSaの10倍以下とすることも好ましい。このような構成によれば、パーティクルの発生又は影響をより確実に低減することができる。
また、第3孔部13cの表面粗さは、第1部分21の表面粗さよりも大きく、第2部分22の表面粗さよりも小さくてもよい。例えば、第3孔部13cの算術平均高さSaは、第1部分21の表面21sの算術平均高さSaよりも大きく、第2部分22の表面22sの算術平均高さSaよりも小さくてもよい。
第3孔部13cにおいては、プラズマと基材10とが直接接するため、基材10からのパーティクルが発生しやすい場合がある。これに対して、実施形態においては、第3孔部13cが、第1孔部13a、第2孔部13bに比べて、第1面11、第2面12から遠い位置に配置されている。さらに、第3孔部13cの算術平均高さSaが、第2部分22の表面の算術平均高さSaよりも小さい場合には、第3孔部13cからのパーティクルの発生をより低減させることができる。すなわち、例えば、第3孔部13cにおける凹凸を基点としたクラックやパーティクルの発生を抑制できる。第3孔部13cの一部が、基材10から脱離してパーティクルとなることを抑制できる。
前述したように、基材10がプラズマと接することで腐食されると、基材10から微細なパーティクルが発生し、製造される半導体デバイスの歩留まりが低下する恐れがある。そこで基材10のうちプラズマと接する面を、基材10よりも高いプラズマ腐食耐性を備えたセラミック層で被覆する。基材10に設けられる孔13は、例えば基材10の第1、2面に対して垂直な垂直面を有するが、プラズマの一部は、孔13内部に回り込んで孔13の内壁を腐食させ、孔13からのパーティクルが発生することがある。そこで、孔13の内壁(例えば垂直面)にも、プラズマ腐食耐性の高いセラミック層を設ける方法が考えられる。しかし、例えば孔13の内部のセラミック層は比較的脆弱な可能性があり、脆弱なセラミック層がプラズマに腐食されるとパーティクルが発生する。また、第1面11と第2孔部13bとの間の傾斜面(第1孔部13a及び第3孔部13c)には、プラズマ集中が起きやすいことがある。
これに対して、実施形態においては、第1孔部13aと第3孔部13cとによって形成される傾斜面13acのうち、プラズマと接する第1部分21に比較的近い第1孔部13aにセラミック層20の第2部分22が設けられる。これにより、第1孔部13aからのパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。一方、傾斜面13acのうち、第1部分21から比較的遠い第3孔部13cは、プラズマと接する。すなわち、第1孔部13aに比べて第1部分21から遠くプラズマ腐食リスクが比較的低い第3孔部13cはセラミック層20で被覆されておらず、第3孔部13cにおいて基材10がプラズマと直接接する。これにより、性状の劣るセラミック層が第3孔部13cに形成されて、そのセラミック層からパーティクルが発生することを効果的に抑制することができる。
また、傾斜面13acがZ方向に平行な断面において湾曲していると、傾斜面13acまたは傾斜面13ac上のセラミック層20に電界が集中し、パーティクルが発生することがある。これに対して、傾斜面13acがZ方向に平行な断面において直線状である場合には、傾斜面13acまたは傾斜面13ac上のセラミック層20における電界集中をより緩和することができる。
また、例えば、セラミック層20において、第2部分22は、第1部分21よりも薄い。すなわち、第2部分22の厚さT22は、第1部分21の厚さT21よりも小さい。プラズマに暴露されやすい第1部分21が第2部分22よりも厚いことにより、第1面11からのパーティクルの発生をより抑制することができる。一方、第1部分21よりもプラズマに暴露されにくい第2部分22が比較的薄いことにより、例えば、第2部分22におけるセラミック層20の崩壊が抑制され、パーティクルの発生をより抑制することができる。例えば、第2部分における膜厚を薄くすることで、膜中の歪や内部応力が緩和され、膜の崩壊を抑制できる。
なお、セラミック層20の厚さは、基材10の表面からセラミック層20の表面までの距離である。具体的には、セラミック層20の厚さ(厚さT11及びT22)は、次のようにして求める。図2のようにZ方向に平行に半導体製造装置用部材120を切断し、その破断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて観察することで、セラミック層20の厚さを求める。例えば、第1部分21の厚さT21は、第1面11から表面21sまでの、第1面11に対して垂直な方向に沿った長さである。例えば、第2部分22の厚さT22は、第1孔部13aから表面22sまでの、第1孔部13aに対して垂直な方向に沿った長さである。SEMには例えば、HITACHI製S-5500を用い、SEM観察条件を、倍率5000倍、加速電圧15kVとしてもよい。断面画像において厚さにばらつきがある場合には、複数箇所で測定を行い、その平均値を算出する。第2部分22の厚さT22を第1部分21の厚さT21よりも小さくする方法は、例えば製膜時間を異ならせる(第2部分の製膜時間を第1部分の製膜時間よりも短くする)、研磨量を異ならせる(第2部分の研磨量を第1部分の研磨量よりも多くする)等、公知の方法が利用できる。
また、第1面11と傾斜面13acとが形成するエッジ部(境界14)は、プラズマ照射面(表面21s)の近くに位置する。そのため、このエッジ部付近(エッジ部上のセラミック層20)にはプラズマが集中しやすい場合がある。これに対して、実施形態においては、第1面11と傾斜面13acとのなす角θαは、傾斜面13acと垂直面(第2孔部13b)とのなす角θβよりも大きい。角θαが比較的大きいことにより、第1面11と傾斜面13acとが形成するエッジ部付近へのプラズマ集中を緩和し、パーティクルの発生を抑制することができる。一方、角θβが大きい場合には、プラズマが孔13の内部により侵入しやすくなる。これに対して、角θβが比較的小さいことにより、プラズマが孔13の内部に侵入することを効果的に抑制することができる。
また、角θαが角θβよりも大きい場合、第2孔部13bのZ方向の長さを長くしやすい。例えば後述する図6(a)に示す長さLnは、図6(b)に示す長さLnよりも長い。また、例えば、図2において、基材10の厚さ(第1面11及び第2面12のZ方向における位置)及び孔13の径(境界14及び境界17のX方向における位置)を変えずに、傾斜面13acが直線状のまま、角θαをさらに大きくすると、境界17の位置が下方に下がり、第2孔部13bがZ方向において長くなる。孔13からチャンバ内に流入するプラズマの原料ガスの流れ(方向性)は、例えば第2孔部13bによって規制されるため、第2孔部13bが長いことにより、原料ガスの流れを安定させやすい。また、第2孔部13bにインジェクタ等のユニットを固定する場合、第2孔部13bが長いことにより、ユニットを取り付けやすく、ユニットがプラズマに曝されることを抑制できる。
境界14及び境界17は、面取りされていることが好ましい。これにより、境界14上のセラミック層20や、境界17におけるプラズマ集中をより緩和することができる。
角θαは、例えば、150°以上180°以下であり、好ましくは160°以上180°以下である。これにより、第1面11と傾斜面13acとが形成するエッジ部付近へのプラズマ集中をより緩和し、パーティクルの発生をより抑制することができる。
角θβは、例えば90°より大きく120°以下であり、好ましくは90°より大きく105°以下である。これにより、プラズマが孔内部に侵入することをより効果的に抑制することができる。
例えば、第2部分22の緻密度は、第1部分21の緻密度よりも高い。また、例えば、第2部分22の硬度は、第1部分21の硬度よりも高い。
半導体製造装置用部材のメンテナンスやハンドリング時においては、孔13(及び後述する貫通孔313)付近は、別の部材(例えばピンなどの治具や、スポンジ状の洗浄パッド)と物理的に接触する場合がある。このような物理的接触によって、孔13(及び貫通孔313)付近に摩耗、損傷または剥離が生じ、パーティクルが発生する恐れがある。例えば、半導体製造装置用部材のハンドリング時においては、孔13に位置決めピンなどの治具が挿入されることがある。孔13に設けられた第2部分22は、第1部分21に比べて、このような治具と物理的に接触する可能性が高い。また、例えば、半導体製造装置用部材のメンテナンス時において、第1面11側の表面洗浄が行われ、第1部分21及び第2部分22は、洗浄パッドなどの部材と接触する場合がある。このとき、孔13の形状に起因して、孔13に設けられた第2部分22に洗浄パッドから加えられる力は、第1面11上の第1部分21に洗浄パッドから加えられる力よりも大きくなることがある。洗浄パッドと半導体製造装置用部材との接触面積は一般に、傾斜面に位置する第2部分22において平面部に位置する第1部分21よりも小さくなる。したがって、洗浄パッドに加わる力が一定の場合、第2部分22では接触面積が小さい分、単位面積当たりの受ける力が大きくなる。
これに対して、第2部分22の緻密度が比較的高いことにより、半導体製造装置用部材のメンテナンスまたはハンドリング時における物理的な接触によって、第2部分22に損傷や剥離が生じることを抑制できる。したがって、パーティクルが発生することをより抑制することができる。また、第2部分22の硬度が比較的高いことにより、半導体製造装置用部材のメンテナンスまたはハンドリング時における物理的な接触によって、第2部分22に損傷や剥離が生じることを抑制できる。したがって、パーティクルが発生することをより抑制することができる。
図3(a)~図3(c)は、第1実施形態に係る別の半導体製造装置用部材の一部を例示する断面図である。
図3(a)~図3(c)に表した半導体製造装置用部材120a~120cは、孔13の形状において、図1及び図2に関して説明した半導体製造装置用部材120と異なる。これ以外については、半導体製造装置用部材120a~120cは、半導体製造装置用部材120と同様である。
図3(a)に表した半導体製造装置用部材120aにおいては、Z方向に平行な断面において、第1孔部13a及び第3孔部13cは、それぞれ直線状である。図3(a)では、Z方向に平行な断面において、第1孔部13aが延びる方向と第3孔部13cが延びる方向とは同一直線上ではなく、非平行である。例えば、第3孔部13cとZ方向とのなす角θ1は、第1孔部13aとZ方向とのなす角θ2よりも小さい。
半導体製造装置用部材120aにおいては、Z方向に平行な断面において、第1孔部13aと第3孔部13cとが接する境界15は、角になっている。但し、図3(a)の断面において、境界15は丸められて湾曲し、曲率を有していてもよい。
図3(b)に表した半導体製造装置用部材120bにおいては、Z方向に平行な断面において、第3孔部13cは直線状であり、第1孔部13aは屈曲している。例えば、第1孔部13aは、第1面11と接する第1領域16aと、第3孔部13cと接する第2領域16bと、を有する。図3(b)の断面において、第1領域16a及び第2領域16bは、それぞれ直線状である。第1領域16a及び第2領域16bは、湾曲していてもよい。
図3(b)の例において、第1領域16aが延びる方向と第2領域16bが延びる方向とは同一直線上ではなく、非平行である。例えば、第2領域16bとZ方向とのなす角θ3は、第1領域16aとZ方向とのなす角θ4よりも小さい。また、図3(b)の例では、第2領域16bが延びる方向と第3孔部13cが延びる方向とは同一直線上である。
半導体製造装置用部材120bにおいては、Z方向に平行な断面において、第1領域16aと第2領域16bとが接する境界16cは、角になっている。但し、図3(b)の断面において、境界16cは丸められて湾曲し、曲率を有していてもよい。
図3(c)に表した半導体製造装置用部材120cにおいては、第1孔部13aは、第1領域16a、第2領域16bを有しており、その境界16cは角になっている。また、第1孔部13aと第3孔部13cとの境界15は角になっている。境界15及び境界16cは、丸められて湾曲し、曲率を有していてもよい。以上説明したように、孔13の断面形状は、適宜、屈曲または湾曲したものでよい。
算術平均高さSaの評価にあたっては、レーザ顕微鏡を用いて評価対象の表面の算術平均高さSa(Arithmetical mean height of the surface)を調べる。この算術平均高さSaは、三次元表面性状に関する国際規格ISO025178(JISB0681)に規定されている。
レーザ顕微鏡としては、「VK-X1000/KEYENCE製」を使用する。対物レンズの倍率は、1000倍とする。S-フィルターは、2.5μmまたは0.8μmとし、L-フィルターは0.5mmに設定する。
算術平均高さとは、2次元の算術平均粗さRaを3次元に拡張したものであり、3次元粗さパラメータ(3次元高さ方向パラメータ)である。具体的には、算術平均高さSaは、表面形状曲面と平均面とで囲まれた部分の体積を測定面積で割ったものである。平均面をxy面、縦方向をz軸とし、測定された表面形状曲線をz(x、y)とすると、算術平均高さSaは、次式で定義される。ここで、式(1)の中の「A」は、測定面積である。
セラミック層20の緻密度は、膜を構成する粒子間の(ナノレベルの)隙間の大小を示す。セラミック層20の緻密度(第1部分21、第2部分22、および後述する第3部分23などの緻密度)は、例えば特許第6597922号公報に記載された方法によって算出される輝度Saによって評価できる。実施形態において緻密度が高いことは、輝度Saが小さいことに対応する。
また、実施形態において、セラミック層20や基材10の表面硬度(第1部分21、第2部分22、後述する第1孔領域313aおよび第3孔領域313cなどの硬度)は、ISO14577に規定された方法によって評価できる。具体的には、評価対象の表面に対して極微小押し込み硬さ試験(ナノインデンテーション)による硬度測定を行う。圧子はバーコビッチ圧子、押し込み深さは200nmの固定値とし、インデンテーション硬さ(押し込み硬さ)HITを測定する。評価対象の表面におけるHITの測定箇所として傷や凹みを除外した表面を選択する。より好ましくは評価対象の表面は研磨を施した平滑面とする。測定点数は少なくとも25点以上とする。測定した25点以上のHITの平均値を実施形態における硬度とする。その他の試験方法及び分析方法、試験装置の性能を検証するための手順、標準参考試料に求められる条件については、ISO14577に準拠する。
実施形態において、プラズマ腐食耐性が高いことは、基準耐プラズマ性試験後の表面の算術平均高さSaが小さいことに対応する。基準耐プラズマ性試験は例えば以下のようにして実施される。セラミック層または基材などの評価対象の表面にプラズマを照射する。プラズマエッチング装置として、誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング装置(Muc-21 Rv-Aps-Se/住友精密工業製)を使用する。プラズマエッチングの条件は、電源出力としてICP出力を1500W、バイアス出力を750W、プロセスガスとしてCHF3ガス100ccmとO2ガス10ccmの混合ガス、圧力を0.5Pa、プラズマエッチング時間を1時間とする。プラズマ照射後の評価対象の表面の状態をレーザ顕微鏡により撮影する。具体的には、レーザ顕微鏡「OLS4500/オリンパス製」を使用し、対物レンズは、MPLAPON100xLEXT(開口数0.95、作動距離0.35mm、集光スポット径0.52μm、測定領域128×128μm)を用い、倍率を100倍とする。うねり成分除去のλcフィルターは25μmに設定する。測定は、任意の3箇所で行い、その平均値を算術平均高さSaとする。その他、三次元表面性状国際規格ISO25178を適宜参照する。本発明の1つの態様として、「基準耐プラズマ性試験」後のセラミック層又は基材の表面の算術平均高さSaは、0.060以下が好ましく、より好ましくは0.030以下である。
図4(a)~図4(c)を参照して、本願明細書における角θα及び角θβの算出方法について説明する。
図4(a)~図4(c)は、第1実施形態に係る基材の一部を例示する断面図である。
図4(a)に示した基材10aは、図2に関して説明した基材10と同様である。第1面11は、X-Y平面に沿って延びている。第2孔部13bは、Z方向に沿って延びている。この例では、第1面11と第2孔部13bとを接続する傾斜面13acは、Z方向に平行な断面において、直線状である。Z方向に平行な断面において、傾斜面13acは、第1面11の端部e1から第2孔部13bの端部e2まで直線状に延びている。端部e1は、第1面11が傾斜面13acと接する点であり、端部e2は、第2孔部13bが傾斜面13acと接する点である。
Z方向に平行な断面において、傾斜面13acのうち第1面11と連続する部分P1が直線状の場合は、角θαは、第1面11と部分P1との間の角度である。Z方向に平行な断面において、傾斜面13acのうち第2孔部13bと連続する部分P2が直線状の場合は、角θβは、第2孔部13bと部分P2との間の角度である。図4(a)の例においては、角θαは、第1面11と、端部e1と端部e2とを繋ぐ線分と、によって形成される角度であり、角θβは、第2孔部13bと、端部e1と端部e2とを繋ぐ線分と、によって形成される角度である。なお、角θα及び角θβは、基材10の内側の角度であり、180°以下となる。
図4(b)及び図4(c)に示したように、Z方向に平行な断面において部分P1、P2が湾曲している場合、角θα及び角θβは以下のようにして算出する。
図4(b)に示した基材10bは、傾斜面13acの形状において基材10aと異なる。基材10bにおいては、Z方向に平行な断面において、傾斜面13acのうち、第1面11と連続する部分P1が曲線状となっており、部分P1と連続する部分は直線状となっている。この場合、角θαは、図4(b)に示すように、第1面11と線分L1とによって形成される角度である。線分L1は、端部e1と端部e4とを結ぶ線分であり、端部e4は、傾斜面13acのうち部分P1と連続する直線状部分の端点である。また、基材10bにおいては、Z方向に平行な断面において、傾斜面13acのうち、第2孔部13bと連続する部分P2が曲線状となっており、部分P2と連続する部分は直線状となっている。この場合、角θβは、図4(b)に示すように、第2孔部13bと線分L2とによって形成される角度である。線分L2は、端部e2と端部e3とを結ぶ線分であり、端部e3は、傾斜面13acのうち部分P2と連続する直線状部分の端点である。なお、この例では、傾斜面13acのうち、部分P1と部分P2との間が直線状の部分P3となっており、部分P3の端部e3は部分P3が部分P1と接する点であり、部分P3の端部e4は部分P3が部分P2と接する点である。
図4(c)に示した基材10cは、傾斜面13acの形状において基材10aと異なる。基材10cにおいては、傾斜面13acは、Z方向に平行な断面において、曲線となっている。この場合、角θαは、図4(c)に示すように、第1面11と、端部e1と端部e2とを結ぶ線分L3と、によって形成される角度である。また、この場合、角θβは、図4(c)に示すように、第2孔部13bと、線分L3と、によって形成される角度である。
基材10は、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、およびそれらの組合せのいずれであってもよい。基材10は、好ましくは金属またはセラミックスである。金属には、表面に陽極酸化処理(アルマイト処理)を施したアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いることができる。セラミックスには、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウムなどを用いることができる。
セラミック層20は、例えば多結晶セラミックスを含む。セラミック層20は、セラミックスを主成分とする層である。セラミック層20は、例えば、希土類元素の酸化物、希土類元素のフッ化物および希土類元素の酸フッ化物からなる群から選択される少なくとも一種を含む。希土類元素として、例えば、Y、Sc、Yb、Ce、Pr、Eu、La、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびLuからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。より具体的には、セラミック層20は、イットリウムの酸化物(Y2O3、YαOβ(非化学量論的組成))、イットリウムオキシフッ化物(YOF、Y5O4F7,Y6O5F8,Y7O6F9およびY17O14F23)、(YO0.826F0.17)F1.174、YF3、Er2O3、Gd2O3、Nd2O3、Y3Al5O12、Y4Al2O9、Y2O3-ZrO2、Er3Al5O12、Gd3Al5O12、Er4Al2O9、ErAlO3、Gd4Al2O9、GdAlO3、Nd3Al5O12、Nd4Al2O9およびNdAlO3からなる群から選択される少なくとも一種を含む。セラミック層20は、Fe、Cr、Zn、およびCuからなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい。
例えば、セラミック層20は、フッ素及び酸素の少なくともいずれかと、イットリウムとを含む。セラミック層20は、例えば、酸化イットリウム(Y2O3)、フッ化イットリウム(YF3)又はオキシフッ化イットリウム(YOF)を主成分とする。
本明細書において「主成分」とは、当該成分を50%超、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは100%含むことをいう。ここでいう「%」は、例えば、質量%である。
あるいは、セラミック層20は、酸化物、フッ化物、オキシフッ化物以外であってもよい。具体的には、Cl元素やBr元素を含む化合物(塩化物、臭化物)が挙げられる。
半導体製造装置用部材120において、セラミック層20は多結晶セラミックスのみから構成されてもよく、多結晶セラミックスとアモルファスセラミックスとを含むものであってもよい。
セラミック層20において、多結晶セラミックスの平均結晶子サイズは3nm以上50nm以下である。好ましくはその上限は30nmであり、より好ましくは20nm、さらに好ましくは15nmである。またその好ましい下限は5nmである。
「平均結晶子サイズ」は以下の方法で求めることができる。
まず、倍率40万倍以上で透過型電子顕微鏡(TEM)画像を撮影する。この画像において結晶子15個の円形近似による直径の平均値より算出した値を平均結晶子サイズとする。このとき、FIB加工時のサンプル厚みを30nm程度に十分薄くすれば、より明確に結晶子を判別することができる。撮影倍率は、例えば40万倍以上200万倍以下の範囲で適宜選択することができる。
実施形態に係る半導体製造装置用部材の製造手順においては、まず、孔13が設けられた基材10を用意する。そして、基材10の形状を適宜な手段により整える。例えば、基材10には、ブラスト、物理的研磨、ケミカルメカニカルポリッシング、ラッピング及び化学的研磨の少なくともいずれかが施される。これにより、第1面11や孔13(第1孔部13a、第2孔部13b及び第3孔部13c)の算術平均高さSa(面粗さ)や形状を制御することができる。
その後、基材10上に、セラミック層20を形成する。セラミック層20を形成した後に、仕上げの研磨を行う。研磨には、ブラスト、物理的研磨、ケミカルメカニカルポリッシング、ラッピング及び化学的研磨の少なくともいずれかを用いることができる。これにより、例えばセラミック層20(第1部分21の表面21s及び第2部分22の表面22s)、第2孔部13b及び第3孔部13cの算術平均高さSaや形状を制御することができる。
なお、基材10上にセラミック層20を形成する方法は、例えば溶射、CVD、ALD(Atomic Layer Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)、または、エアロゾルデポジション法などの方法を用いることができる。
基材10上にセラミック層20を形成するとき、例えばエアロゾルデポジション法、溶射、CVD、またはPVDを用いる場合は、第3孔部13cとなる部分にテープなどのマスクを設けた上でセラミック層20となる膜を成膜してもよい。成膜後にマスクを取り除くことで、セラミック層20が設けられずに露出した第2孔部13b及び第3孔部13cが形成される。または、マスクを施さずに成膜した後、研磨などによって膜の一部を取り除くことで、露出した第2孔部13b及び第3孔部13cを形成してもよい。
セラミック層20の形成方法によっては、孔13の内周面13sである第3孔部13cには、第1面11に比べてセラミック層20が形成されにくい場合がある。すなわち、例えば、PVD、溶射、エアロゾルデポジション法など、第1面11側から原料粒子を基材10に供給して(例えば衝突させて)セラミック層を形成する方法の場合、第3孔部13cは、第1面11から離れており第1面11に対して傾斜しているため、第3孔部13cに原料粒子が到達しにくいなど、平面とは異なる状態で第3孔部13cに到達する場合がある。このような場合に、仮に第3孔部13cにセラミック層20が形成されると、第3孔部13c上に形成されたセラミック層20の品質(例えば緻密度、硬度など)は、第1面11上に形成されたセラミック層20の品質よりも低くなることがある。品質が低く脆弱なセラミック層20の一部は、基材からより脱離しやすくなり、パーティクルの発生源となる恐れがある。第3孔部13cにはセラミック層20を設けないことで、むしろパーティクルの発生を低減させることができる。
第3孔部13cのように、孔13の内壁(垂直面)にはセラミック層が形成しにくいことがある。孔13の内部にセラミック層を設けた場合、孔13の内部のセラミック層の性状(例えば緻密度や膜厚)は、基材の第1面上に設けられたセラミック層の性状に比べて劣る場合があり、孔13の内部の脆弱なセラミック層がプラズマに腐食されるとパーティクルが発生する。また、例えば、性状の劣るセラミック層の機械的性質(例えば外力に対する強度、硬度または靱性など)は、基材の機械的性質よりも劣る。そのため、半導体製造装置用部材のハンドリングやメンテナンス時の物理的衝撃や接触によりパーティクルが生じる恐れがある。
例えば、PVD、溶射、またはエアロゾルデポジション法などによって、セラミック層20を形成する場合、垂直な第2孔部13bには膜が形成されにくいため、第2孔部13bが長いことにより、孔内部への成膜を抑制することができる。
なお、エアロゾルデポジション法においては、材料となる微粒子を基材に衝突させて、衝突の衝撃によって微粒子を基材上で接合させ、層状構造物を形成する。一方、エアロゾルデポジション法においては、材料となる微粒子が衝突する基材の表面が粗いと、微粒子が基材上で接合・集積しにくくなり、層状構造物が形成されにくくなる。実施形態においては、第3孔部13cの算術平均高さSaが比較的大きいことにより、エアロゾルデポジション法によって第3孔部13c上に脆弱なセラミック層が形成されることをより確実に抑制することができる。したがって、パーティクルの発生を抑制することができる。
このように、エアロゾルデポジション法を用いる場合には、例えば第3孔部13cの算術平均高さSaを制御することで、第3孔部13c上にセラミック層が形成されることを抑制できる。エアロゾルデポジション法を用いた場合には、成膜前のマスキングなどの工程を省略してもよいため、半導体製造装置用部材を製造しやすい。
「エアロゾルデポジション法」は、脆性材料を含む微粒子をガス中に分散させた「エアロゾル」をノズルから基材に向けて噴射し、金属、ガラス、セラミックス、プラスチックなどの基材に微粒子を衝突させ、この衝突の衝撃により脆性材料微粒子に変形や破砕を起させしめてこれらを接合させ、基材上に微粒子の構成材料からなる層状構造物(膜状構造物ともいう)をダイレクトに形成させる方法である。
この例では、例えばイットリア等の耐パーティクル性に優れたセラミック材料の微粒子とガスとの混合物であるエアロゾルを、基材10に向けて噴射し、層状構造物(セラミック層20)を形成する。
エアロゾルデポジション法によれば、特に加熱手段や冷却手段などを必要とせず、常温で層状構造物の形成が可能であり、焼成体と同等以上の機械的強度を有する層状構造物を得ることができる。また、微粒子を衝突させる条件や微粒子の形状、組成などを制御することにより、層状構造物の密度や微構造、機械強度、電気特性などを多様に変化させることが可能である。
なお、本願明細書において「多結晶」とは、結晶粒子が接合・集積してなる構造体をいう。結晶粒子は、実質的にひとつで結晶を構成する。結晶粒子の径は、通常5ナノメートル(nm)以上である。但し、微粒子が破砕されずに構造物中に取り込まれる場合には、結晶粒子は、多結晶である。
また、本願明細書において「微粒子」とは、一次粒子が緻密質粒子である場合には、粒度分布測定や走査型電子顕微鏡などにより同定される平均粒径が5マイクロメータ(μm)以下のものをいう。一次粒子が衝撃によって破砕されやすい多孔質粒子である場合には、平均粒径が50μm以下のものをいう。
また、本願明細書において「エアロゾル」とは、ヘリウム、窒素、アルゴン、酸素、乾燥空気、これらを含む混合ガスなどのガス中に前述の微粒子を分散させた固気混合相体を指し、一部「凝集体」を含む場合もあるが、実質的には微粒子が単独で分散している状態をいう。エアロゾルのガス圧力と温度は任意であるが、ガス中の微粒子の濃度は、ガス圧を1気圧、温度を摂氏20度に換算した場合に、吐出口から噴射される時点において0.0003mL/L~5mL/Lの範囲内であることが層状構造物の形成にとって望ましい。
エアロゾルデポジションのプロセスは、通常は常温で実施され、微粒子材料の融点より十分に低い温度、すなわち摂氏数100度以下で層状構造物の形成が可能であるところにひとつの特徴がある。
なお、本願明細書において「常温」とは、セラミックスの焼結温度に対して著しく低い温度で、実質的には0~100℃の環境をいい、20℃±10℃前後の室温がより一般的である。
層状構造物の原料となる粉体を構成する微粒子は、セラミックスや半導体などの脆性材料を主体とし、同一材質の微粒子を単独であるいは粒径の異なる微粒子を混合させて用いることができるほか、異種の脆性材料微粒子を混合させたり、複合させたりして用いることが可能である。また、金属材料や有機物材料などの微粒子を脆性材料微粒子に混合したり、脆性材料微粒子の表面にコーティングしたりして用いることも可能である。これらの場合でも、層状構造物の形成の主となるものは、脆性材料である。
この手法によって形成される複合構造物において、結晶性の脆性材料微粒子を原料として用いる場合、複合構造物の層状構造物の部分は、その結晶粒子サイズが原料微粒子のそれに比べて小さい多結晶体であり、その結晶は実質的に結晶配向性がない場合が多い。また、脆性材料結晶同士の界面には、ガラス層からなる粒界層が実質的に存在しない。また多くの場合、複合構造物の層状構造物部分は、基材(この例において基材10)の表面に食い込む「アンカー層」を形成する。このアンカー層が形成されている層状構造物は、基材に対して極めて高い強度で強固に付着して形成される。
エアロゾルデポジション法により形成される層状構造物は、微粒子同士が圧力によりパッキングされ物理的な付着で形態を保っている状態のいわゆる「圧粉体」とは明らかに異なり、十分な強度を保有している。
エアロゾルデポジション法において、飛来してきた脆性材料微粒子が基材の上で破砕・変形を起していることは、原料として用いる脆性材料微粒子と、形成された脆性材料構造物の結晶子(結晶粒子)サイズとをX線回折法などで測定することにより確認できる。すなわち、エアロゾルデポジション法で形成された層状構造物の結晶子サイズは、原料微粒子の結晶子サイズよりも小さい。微粒子が破砕や変形をすることで形成される「ずれ面」や「破面」には、もともとの微粒子の内部に存在し別の原子と結合していた原子が剥き出しの状態となった「新生面」が形成される。表面エネルギーが高く活性なこの新生面が、隣接した脆性材料微粒子の表面や同じく隣接した脆性材料の新生面あるいは基材の表面と接合することにより層状構造物が形成されるものと考えられる。
また、エアロゾル中の微粒子の表面に水酸基がほどよく存在する場合は、微粒子の衝突時に微粒子同士や微粒子と構造物との間に生じる局部のずれ応力などにより、メカノケミカルな酸塩基脱水反応が起き、これら同士が接合するということも考えられる。外部からの連続した機械的衝撃力の付加は、これらの現象を継続的に発生させ、微粒子の変形、破砕などの繰り返しにより接合の進展、緻密化が行われ、脆性材料からなる層状構造物が成長するものと考えられる。
例えば、セラミック層20がエアロゾルデポジション法により形成された場合、セラミック層20は、セラミック焼成体や溶射膜などと比較すると構成する結晶子サイズが小さく緻密な微構造を有する。これにより、実施形態に係る半導体製造装置用部材120の耐パーティクル性は、焼成体や溶射膜の耐パーティクル性よりも高い。また、実施形態に係る半導体製造装置用部材120がパーティクルの発生源になる確率は、焼成体や溶射膜などがパーティクルの発生源になる確率よりも低い。
本発明による半導体製造装置用部材120を、例えばエアロゾルデポジション法で製造する場合、それに用いる装置の一例について説明する。エアロゾルデポジション法に用いる装置は、チャンバと、エアロゾル供給部と、ガス供給部と、排気部と、配管と、により構成される。チャンバの内部には、例えば、基材10を配置するステージと、駆動部と、ノズルと、が配置される。駆動部によりステージに配置された基材10とノズルとの位置を相対的に変えることができる。このとき、ノズルと基材10との間の距離を一定にしてもよいし、可変にしてもよい。この例では、駆動部はステージを駆動させる態様を示しているが、駆動部がノズルを駆動させてもよい。駆動方向は例えば、XYZθ方向である。
エアロゾル供給部は、配管によりガス供給部と接続される。エアロゾル供給部では、原料微粒子とガスとが混合されたエアロゾルを、配管を介してノズルに供給する。装置は、原料微粒子を供給する粉体供給部をさらに備える。粉体供給部はエアロゾル供給部内に配置されてもよいし、エアロゾル供給部とは別に配置されてもよい。また、エアロゾル供給部とは別に、原料微粒子とガスとを混合するエアロゾル形成部を備えていてもよい。ノズルから噴射される微粒子の量が一定となるように、エアロゾル供給部からの供給量を制御することで、均質な構造物を得ることができる。
ガス供給部は、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、空気などを供給する。供給されるガスが空気の場合、例えば、水分や油分などの不純物が少ない圧縮空気を用いるか、空気から不純物を取り除く空気処理部をさらに設けることが好ましい。
次に、エアロゾルデポジション法に用いる装置の動作の一例について説明する。チャンバ内のステージに基材10を配置した状態で、真空ポンプなどの排気部により、チャンバ内を大気圧以下、具体的には数百Pa程度に減圧する。一方、エアロゾル供給部の内圧をチャンバの内圧よりも高く設定する。エアロゾル供給部の内圧は、例えば、数百~数万Paである。粉体供給部を大気圧としてもよい。チャンバとエアロゾル供給部との差圧などにより、ノズルからの原料粒子の噴射速度が亜音速~超音速(50~500m/s)の領域となるように、エアロゾル中の微粒子を加速させる。噴射速度は、ガス供給部から供給されるガスの流速、ガス種、ノズルの形状、配管の長さや内径、排気部の排気量などにより制御される。例えば、ノズルとして、ラバルノズルなどの超音速ノズルを用いることもできる。ノズルから高速で噴射されたエアロゾル中の微粒子は、基材10に衝突し、粉砕または変形して基材10上に構造物(セラミック層20)として堆積される。基材10とノズルとの相対的な位置を変えることにより、所定面積を有する構造物(セラミック層20)を基材10上に備えた複合構造物(半導体製造装置用部材120)が形成される。
また、ノズルから噴射される前に、微粒子の凝集を解くための解砕部を設けてもよい。解砕部における解砕方法は、任意の方法を選択することができる。例えば、振動、衝突などの機械的解砕、静電気、プラズマ照射、分級、等公知の方法が挙げられる。
(第2実施形態)
図5(a)及び図5(b)は、第2実施形態に係る半導体製造装置用部材の一部を例示する断面図である。
図5(a)に表した半導体製造装置用部材120dには、半導体製造装置用部材120と同様の説明を適用することができる。ただし、第1部分21の表面の算術平均高さSaは、第2部分22の表面の算術平均高さSaよりも小さくなくてもよいし、半導体製造装置用部材120と同様でもよい。また、第3孔部13cの算術平均高さSaは、第1部分21、第2部分22の表面の算術平均高さSaより大きくなくてもよいし、半導体製造装置用部材120と同様でもよい。
図5(a)に表したように、半導体製造装置用部材120dは、複合構造物30を有する。複合構造物とは、基材と、基材表面上に設けられた構造物(例えば層又は膜)と、を備えたものをいう。複合構造物30は、基材10と、セラミック層20と、を含む。この例では、複合構造物30は、基材10とセラミック層20との積層体である。なお、実施形態において、基材10及びセラミック層20のそれぞれは、複数の層を含む積層構造を有していてもよい。
図5(a)に表したように、複合構造物30は、第1主面311と、第1主面311とは反対側の第2主面312と、を有する。例えば、第1主面311は、セラミック層20の第1部分の表面21sであり、第2主面312は、基材10の第2面12である。また、複合構造物30には、少なくとも1つの貫通孔313が設けられている。貫通孔313は、Z方向に延び、基材10とセラミック層20とを貫通している。例えば、1つの貫通孔313が、複合構造物30の中央に設けられる。ただし、貫通孔313は、複合構造物30の中央でなくてもよいし、複数設けられてもよい。
貫通孔313は、Z方向に沿ってみたときに、例えば円形である。貫通孔313(貫通孔の内周面313s)は、第1孔領域313aと、第2孔領域313bと、第3孔領域313cと、を有する。第1孔領域313a、第2孔領域313b及び第3孔領域313cは、それぞれ露出しており、プラズマと接するように設けられている。内周面313sは、貫通孔313を規定する複合構造物30の内周表面である。内周面313sは、貫通孔313の内側を向き、X-Y平面と交差する。
第1孔領域313aは、内周面313sのうち第1主面311の近傍に位置し、第1主面311と隣接する領域である。第1孔領域313aは、第1主面311と連続している。第1孔領域313aは、Z方向において第1主面311と第2主面312との間に位置する。第1孔領域313aは、第1主面311に対して平行ではなく、第1主面311及びZ方向と交差する傾斜面である。第1孔領域313aは、Z方向に平行に延びる面であってもよい。Z方向に平行な断面において、第1孔領域313aは、直線状でもよいし、湾曲していてもよい。Z方向に沿ってみたときに(すなわちX-Y平面に投影したときに)、第1孔領域313aは、例えば第1主面311に囲まれた環状である。
第2孔領域313bは、Z方向において、第1孔領域313aと第2主面312との間に位置する。言い換えれば、第2孔領域313bのZ方向における位置は、第1孔領域313aのZ方向における位置と、第2主面312のZ方向における位置と、の間である。例えば、第2孔領域313bは、内周面313sのうち第2主面312の近傍に位置し、第2主面312と隣接する領域である。第2孔領域313bは、第2主面312と連続していてもよい。第2孔領域313bは、Z方向に延びており、例えばZ方向に対して平行である。第2孔領域313bは、例えば第2主面312に略垂直な垂直面である。Z方向に沿って見たときに、第2孔領域313bは、例えば第1孔領域313aの内側に位置する環状である。
第3孔領域313cは、Z方向において、第1孔領域313aと第2孔領域313bとの間に位置する。言い換えれば、第3孔領域313cのZ方向における位置は、第1孔領域313aのZ方向における位置と、第2孔領域313bのZ方向における位置と、の間である。第3孔領域313cは、内周面313sのうち第1孔領域313aと連続した領域である。第3孔領域313cは、第1面11に対して平行ではなく、第1面11及びZ方向と交差する傾斜面である。第3孔領域313cは、Z方向に延びる面であってもよい。Z方向に平行な断面において、第3孔領域313cは、直線状でもよいし、湾曲していてもよい。Z方向に沿ってみたときに、第3孔領域313cは、例えば、第1孔領域313aに囲まれ第1孔領域313aと接する環状であり、第3孔領域313cの内側に第2孔領域313bが位置する。第3孔領域313cと第2孔領域313bとは連続していてもよい。
図5(a)の例では、貫通孔313の第1孔領域313aは、セラミック層20の第2部分22の表面22sであり、第2孔領域313bは、基材10の孔13の第2孔部13bであり、第3孔領域313cは、基材10の孔13の第3孔部13cである。複合構造物30の貫通孔313の一部は、基材10の孔13の少なくとも一部である。具体的には、貫通孔313の一部は、基材10の孔13の一部を規定する第2孔部13b及び第3孔部13cによって規定されている。
第3孔領域313cの硬度は、第1孔領域313aの硬度よりも高い。例えば、第3孔領域313cは、第1孔領域313aよりも摩耗しにくい。図5(a)の例では、基材10の第3孔部13cの硬度は、セラミック層20の表面22sの硬度よりも高い。例えば、基材10の材料の硬度は、セラミック層20の材料の硬度よりも高い。これにより、第3孔領域313cの硬度を、第1孔領域313aの硬度よりも高くすることができる。具体的には、セラミック層20の第1部分21及び第2部分22の材料には、希土類元素の酸化物、希土類元素のフッ化物および希土類元素の酸フッ化物の少なくともいずれかを用いることができる。希土類元素は、Y、Sc、Yb、Ce、Pr、Eu、La、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびLuからなる群から選択される少なくとも一種である。また、基材10の材料には、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)及び窒化アルミニウム(AlN)の少なくともいずれかを用いることができる。
第3孔領域313cは、第1孔領域313aよりも貫通孔313の内側に位置する。例えば、半導体製造装置用部材のハンドリング時において、貫通孔313に位置決めピンなどの治具が挿入された場合、第3孔領域313cが治具と物理的に接触する可能性は、第1孔領域313aが治具と物理的に接触する可能性よりも高い。また、例えば、半導体製造装置用部材のメンテナンス時において、第1孔領域313aおよび第3孔領域313cが洗浄パッドと接触した場合、角θβが角θαよりも小さいと、第3孔領域313cは、第1孔領域313aよりも摩耗しやすい恐れがある。例えば、角θβが角θαよりも小さい場合、第3孔領域313cと第2孔領域313bとの境界の角部付近は、第1孔領域313aと第1主面311との境界の角部付近よりも力が集中しやすく、摩耗しやすい恐れがある。
これに対して、実施形態においては、第3孔領域313cの硬度が比較的高いことにより、半導体製造装置用部材のメンテナンスまたはハンドリング時における物理的な接触によって、第3孔領域313cにダメージが生じることを抑制できる。これにより、パーティクルが発生することを抑制することができる。
図5(b)に表した半導体製造装置用部材120eは、セラミック層20が第3部分23を有する点において、半導体製造装置用部材120dと異なる。半導体製造装置用部材120eにおいては、第3孔領域313cは、第3部分23の表面23sである。これ以外については、半導体製造装置用部材120eには、半導体製造装置用部材120dと同様の説明を適用できる。
セラミック層20の第3部分23は、第3孔部13c上に設けられ、第3孔部13cと接している。第3部分23は、第2部分22から連続して設けられている。第3部分23の表面23sは、プラズマと直接接する。つまり、表面23sは、第3部分23の第3孔部13cと接する面とは反対側の面であり、チャンバ110内に露出するように設けられている。この例では、第1孔部13a及び第3孔部13cがセラミック層20に覆われており、プラズマと直接接しないようになっている。これにより、基材の孔13の第1孔部13a及び第3孔部13cからのパーティクルの発生を抑制することができる。一方、図5(a)の例のように、第3孔部13cにセラミック層20を設けない場合には、性状の劣るセラミック層20が第3孔部13cに形成されることを抑制することができ、セラミック層20からのパーティクルの発生をより抑制することができる。
図5(b)の例では、貫通孔313の第1孔領域313aは、セラミック層20の第2部分22の表面22sであり、第2孔領域313bは、基材10の孔13の第2孔部13bであり、第3孔領域313cは、セラミック層20の第3部分23の表面23sである。この例でも、複合構造物30の貫通孔313の一部は、基材10の孔13の少なくとも一部である。具体的には、貫通孔313の一部は、基材10の孔13の一部を規定する第2孔部13bによって規定されている。
半導体製造装置用部材120eにおいても、第3孔領域313cの硬度は、第1孔領域313aの硬度よりも高い。すなわち、セラミック層20の第3部分23の表面23sの硬度は、セラミック層20の第2部分22の表面22sの硬度よりも高い。これにより、半導体製造装置用部材のメンテナンスまたはハンドリング時における物理的な接触によって、第3孔領域313cにダメージが生じることを抑制できる。これにより、パーティクルが発生することを抑制することができる。
例えば、第3部分23の材料は、第2部分22の材料と異なり、第3部分23の材料の硬度は、第2部分22の材料の硬度よりも高い。これにより、第3孔領域313cの硬度を第1孔領域313aの硬度よりも高くすることができる。例えば、第3部分23の材料には、希土類元素の酸化物、希土類元素のフッ化物および希土類元素の酸フッ化物の少なくともいずれかを用いることができる。希土類元素は、Y、Sc、Yb、Ce、Pr、Eu、La、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびLuからなる群から選択される少なくとも一種である。第3部分23の組成と第2部分22の組成とを異ならせることにより、第3部分23の硬度と第2部分22の硬度とを異ならせることができる。
テープなどのマスキングを用いることで、第2部分22となる膜及び第3部分23となる膜のそれぞれを、所望の範囲に設けることができる。例えば、第1孔部13aまたは第2部分22上にマスクを設けた状態で、第3孔部13c上に第3部分23となる膜を成膜する。また、例えば、第3孔部13cまたは第3部分23上にマスクを設けた状態で、第1孔部13a上に第2部分22となる膜を成膜する。これにより、第1孔部13a及び第3孔部13c上に別々の膜を形成することができ、第3部分23の材料と第2部分22の材料とを異ならせることができる。これにより、第3部分23の硬度と第2部分22の硬度とを異ならせることができる。マスキングを用いずに、成膜後に膜の一部を研磨などによって取り除くことによって、第1孔部13a及び第3孔部13c上に別々の膜を設けてもよい。
例えば、第3部分23の緻密度は、第2部分22の緻密度よりも高い。これにより、第3孔領域313cの硬度を第1孔領域313aの硬度よりも高くすることができる。例えば、第2部分22及び第3部分23となる1つの膜を成膜した後に、その膜の一部に表面改質処理を施すことで、第2部分22及び第3部分23を形成することができる。表面改質処理の一例としては、膜の表面から所定の深さの範囲にエネルギーを与えて溶融させた後、その範囲を冷却して溶融固化膜を形成する方法が挙げられる。表面改質処理によって形成された溶融固化膜は、表面改質処理が施されていない領域に比べて、空隙が少なく、表面が平坦化された緻密な膜となる。表面改質処理には、選択的に表面を熱溶融できる方法を用いてもよい。具体的には、表面改質処理は、レーザアニール処理またはプラズマジェット処理が挙げられる。例えば、表面改質処理が施された範囲が第3部分23となり、表面改質処理が施されていない範囲が第2部分22となる。
第3部分23の成膜条件と第2部分22の成膜条件とを異ならせてもよい。これにより、第3部分23の緻密度と第2部分22の緻密度とを異ならせる、または、第3部分23の硬度と第2部分22の硬度とを異ならせることができる。この成膜条件は、エアロゾルデポジション法を用いる場合、ガス供給部から供給されるガスの流量、流速またはガス種などが挙げられる。成膜条件は、ノズルから噴出されたエアロゾルが基材に衝突する角度でもよい。
なお、本実施形態においては、必ずしも第1孔部13a及び第3孔部13c上にセラミック層20が設けられなくてもよい。第1孔領域313aは基材10の表面でもよい。基材表面の一部の硬度を、表面処理(例えば被膜または改質処理)などによって、適宜調節してもよい。
図6(a)及び図6(b)は、半導体製造装置用部材の一部を例示する断面図である。 図6(a)、図6(b)は、それぞれ、半導体製造装置用部材の基材10を表す。図6(a)に示した基材10の構成は、図2に関して前述した基材10と同様である。図6(a)の基材10においては、角θαは150°である。
図6(b)に示した基材10においては、角θαは120°である。図6(b)の基材10は、傾斜面13acの形状(長さ及び角度)及び第2孔部13bの長さにおいて、図6(a)の基材10と異なる。これ以外については、図6(b)の基材10の構成は、図6(a)の基材10と同様である。
図6(a)に表した基材10においては、角θαは、角θβよりも大きい。図6(b)に表した基材10においては、角θαは、角θβよりも小さい。図6(a)の基材10の第2孔部13bのZ方向の長さLnは、図6(b)の基材10の第2孔部13bのZ方向の長さLnよりも長い。このように、基材10の厚さを一定とすると、角θαが角θβよりも大きい場合、第2孔部13bのZ方向の長さを長くしやすい。
図6(a)及び図6(b)には、近接円PCを示す。近接円PCは、第1面11と傾斜面13acとが形成するエッジ部(境界14)に近接する。近接円PCは、図6(a)及び図6(b)のようなZ方向に平行な断面において、第1面11と傾斜面13acとに接する円である。図6(a)での近接円PCの中心pのX方向の位置と、境界14のX方向の位置と、の間の距離(距離t2)と、図6(b)での近接円PCの中心pのX方向の位置と、境界14のX方向の位置と、の間の距離(距離t2)とは一致している。つまり、図6(a)及び図6(b)において、境界14同士のX方向における位置を一致させた場合、中心p同士のX方向における位置が一致している。このとき、図6(a)及び図6(b)に示す傾斜の幅tは、一定としている。すなわち、図6(a)の幅tと図6(b)の幅tとは、互いに等しい。図6(a)に示す近接円PCの半径Rを、rとすると、図6(b)に示す近接円PCの半径Rは、0.47rである。
ここで、傾斜の幅tは、所定距離t1と距離t2との和である。図6(a)において、所定距離t1は、境界14から第2孔部13bまでのX方向における距離である。所定距離t1は、一定である。すなわち、図6(a)の所定距離t1と図6(b)の所定距離t1とは、互いに等しい。傾斜の幅tは、近接円PCの中心pと、図6(a)における第2孔部13bと、の間のX方向に沿った距離である。
図7は、半導体製造装置用部材の応力を例示するグラフ図である。
図7は、近接円PCの半径Rと、半導体製造装置用部材に生じる応力Sと、の関係の計算結果を例示する。すなわち、図7は、図2と同様の半導体製造装置用部材において、図6(a)及び図6(b)と同様に基材10の近接円PCの半径Rを変化させたときの、応力Sの変化を示す。より具体的には、基材10において、距離t2(近接円PCの中心pのX方向における位置、境界14のX方向における位置)及び基材10の厚さを一定として、角θαを変化させる。これにより、半径R、第2孔部13bのZ方向の長さ、及び傾斜面13acの形状(長さ及び角度)が変化した場合の、境界14上に形成されたセラミック層20に生じる応力Sを計算する。なお、角θαは90°よりも大きいものとしており、このとき半径R>0.27rである。
応力Sは、第1部分21と第2部分22との接続部(すなわち境界14上に形成されたセラミック層20)に生じる応力(例えば残留応力)の計算結果である。例えば、応力Sの大きさは、境界14上のセラミック層20の表面における電界強度に対応する。
角θαが大きくなると、近接円PCの半径Rが大きくなる。図7に表したように、半径Rが大きくなると、応力Sが小さくなる。例えば、図6(a)のように角θαが150°のときの半径Rをrとし、そのときの応力Sをs程度とする。図6(b)のように角θαが120°の場合には半径Rが0.47rであり、そのときの応力Sは1.7s程度と算出される。すなわち、図6(a)の例においては、図6(b)の例に比べて、応力集中を抑制することができ、1.7倍程度、応力が低減する。つまり、角θαを大きくすることで、応力集中を緩和することができる。角θαは、例えば150°以上、より好ましくは160°以上である。
例えば、傾斜面13acを、Z方向に対して平行な断面において直線状とする。傾斜面13acがZ方向に平行な断面において湾曲していると、傾斜面13acまたは傾斜面13ac上のセラミック層20に電界が集中し、パーティクルが発生することがある。これに対して、傾斜面13acがZ方向に平行な断面において直線状である場合には、傾斜面13acまたは傾斜面13ac上のセラミック層20における電界集中をより緩和することができる。
なお、例えば、半径Rが0.3rの場合に応力Sは2.5s程度であり、半径Rが0.7rの場合に応力Sは1.2s程度である。
図8は、半導体製造装置用部材における耐パーティクル性の評価を例示する表である。 サンプル1~5は、それぞれ、図2に関して説明した半導体製造装置用部材120と同様である。図8に表したように、サンプル1~5においては、第1部分21の算術平均高さSa、第2部分22の算術平均高さSa、及び第3孔部13cの算術平均高さSaの少なくともいずれかを変化させている。サンプル1~5において、算術平均高さSa以外(例えば角θα、角θβ、基材10の厚さなど)は一定である。
サンプル1において、第1部分21の算術平均高さSaは0.03μm、第2部分22の算術平均高さSaは0.06μm、第3孔部13cの算術平均高さSaは0.2μmである。
サンプル2において、第1部分21の算術平均高さSaは0.03μm、第2部分22の算術平均高さSaは0.12μm、第3孔部13cの算術平均高さSaは0.5μmである。
サンプル3において、第1部分21の算術平均高さSaは0.06μm、第2部分22の算術平均高さSaは0.35μm、第3孔部13cの算術平均高さSaは0.3μmである。
サンプル4において、第1部分21の算術平均高さSaは0.08μm、第2部分22の算術平均高さSaは0.81μm、第3孔部13cの算術平均高さSaは0.85μmである。
サンプル5において、第1部分21の算術平均高さSaは0.15μm、第2部分22の算術平均高さSaは0.41μm、第3孔部13cの算術平均高さSaは0.2μmである。
また、図8は、各サンプルにおける、比R21と比R31とを表す。比R21は、第1部分21の算術平均高さSaに対する、第2部分22の算術平均高さSaの割合である。比31は、第1部分21の算術平均高さSaに対する、第3孔部13cの算術平均高さSaの割合である。
また、図8は、各サンプルにおける耐パーティクル性を「◎」「○」または「×」で表す。耐パーティクル性の評価においては、サンプルにプラズマを照射し、プラズマ照射前の算術平均高さSaと、プラズマ照射後の短術平均高さSaとの差を評価する。当該プラズマ照射の条件は、以下である。プラズマエッチング装置として、誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング装置(Muc-21 Rv-Aps-Se/住友精密工業製)を使用する。プラズマエッチングの条件は、電源出力としてICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)の出力を1500Wとし、バイアス出力を750Wとし、プロセスガスとしてCHF3ガス100ccmとO2ガス10ccmとの混合ガスを使用し、圧力を0.5Paとし、プラズマエッチング時間を1時間とする。
「◎」は、第1部分21及び第2部分22及び第3孔部13cのすべてにおいて、プラズマ照射による算術平均高さSaの変化が小さいことを表す。「○」は、第1部分21及び第2部分22及び第3孔部13cのうちの2つ以上において、プラズマ照射による算術平均高さSaの変化が小さいこと表す。「×」は、「◎」及び「○」以外の耐パーティクル性を表す。
既に述べたように、例えば、第2部分22の表面22sの算術平均高さSaは、第1部分21の表面21sの算術平均高さSaの2倍以上10倍以下、より好ましくは5倍以下である。言い換えれば、比R21は、2.0以上10以下、より好ましくは5.0以下である。図8に表したように、比R21が5.8であるサンプル3の耐パーティクル性は、比R21が10.1であるサンプル4の耐パーティクル性よりも高い。比R21が2.0であるサンプル1及び比R21が4.0であるサンプル2の耐パーティクル性は、サンプル3の耐パーティクル性よりも高い。
また、既に述べたように、例えば、第3孔部13cの算術平均高さSaは、第1部分21の表面21sの算術平均高さSaの2倍よりも大きい。言い換えれば、比R31は2.0より大きい。図8に表したように、比R31が6.7であるサンプル1、比R31が16.7であるサンプル2、および比R31が5.0であるサンプル3の耐パーティクル性は、比R31が1.3であるサンプル5の耐パーティクル性よりも高い。
なお、図2~図6(b)に関して説明した半導体製造装置用部材の各断面は、孔13のX-Y平面における中心を通る断面でよい。
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、半導体製造装置用部材、半導体製造装置などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。