JP2022166565A - 治療計画装置、粒子線治療システム、治療計画生成方法及びコンピュータプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】誤差の影響を考慮して元治療計画と新治療計画との比較を行う。【解決手段】標的に粒子線を照射する粒子線治療システムにおける治療計画装置501は、標的を撮像した計画時X線画像に基づいて粒子線の第一の線量分布を算出し、計画時X線画像よりも後に標的を撮像した事前X線画像に基づいて粒子線の第二の線量分布を算出し、これら第一及び第二の線量分布に関する第一及び第二の線量指標を算出し、これら第一及び第二の線量指標のばらつきを表示させる。【選択図】図1
Description
本発明は、治療計画装置、粒子線治療システム、治療計画生成方法及びコンピュータプログラムに関する。
本発明は治療計画装置に係り、特に、陽子線及び炭素線等の荷電粒子ビームを中心とした放射線を患部に照射して治療する放射線治療システム、及びそれに用いる治療計画装置に関する。
各種放射線を照射することで腫瘍細胞を壊死させることを目的とする放射線治療は、近年広く行われている。用いられる放射線としては最も広く利用されているX線だけでなく、陽子線や炭素線をはじめとする粒子線を使った治療も広がりつつある。
放射線治療は、腫瘍領域にのみ高い線量を付与するため、事前に詳細な治療計画を立てる必要がある。例えば粒子線治療では、治療計画装置により、事前に患部および患部周囲への所望の線量分布が得られるようにエネルギー、照射量、照射位置が決定される。
事前の計画時に患者の体内の様子を確認する手段は、X線CT画像(以下、計画CT画像)が最も一般的である。患部位置の指定、それに基づく体内の線量分布計算もCT画像を用いて行われることが多い。
放射線治療では、1日1回の照射を複数日に渡って繰り返す。従来、治療計画は基本的に最初に立て、毎日同じ照射位置に同じ照射量が照射されていたが、近年、体内の状態変化に合わせて照射位置と照射量を変更することが行われ始めている。治療計画を再計画して照射することは、アダプティブ照射と呼ばれている。
アダプティブ照射の中でも、特に患者がベッドの上に横になったまま、患部領域を撮像し再計画して照射することをオンラインアダプティブ照射と呼ぶ。オンラインアダプティブ照射では、再計画後に事前に計画した元治療計画と再計画による新治療計画を比較して、より好ましい治療計画に基づき放射線を照射することが特許文献1に開示されている。
特許文献1の手法では、線量に基づく指標、例えば標的及び標的周辺の正常臓器への最大線量、最小線量等に基づき、元治療計画または新治療計画を選択する。一方、オンラインアダプティブ治療では、Cone Beam CT(以下、CBCT)による画像に基づき再計画を実施する場合がある。CBCTは構成が簡便な反面、事前の治療計画用に撮像する計画CT画像と比較して、画質が劣る。そのため、治療当日に撮像したCBCT画像に合わせて計画CT画像を変形し、その画像に基づき再計画を実施する手法がある。この手法では、計画CT画像の変形誤差等、事前の治療計画にはない誤差を伴う。元治療計画と新治療計画の比較では、この誤差の影響を考慮した判断をしなければならないという課題がある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたもので、誤差の影響を考慮して元治療計画と新治療計画との比較を行うことが可能な治療計画装置、粒子線治療システム、治療計画生成方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
上記課題を解決すべく、本発明の一つの観点に従う治療計画装置は、標的に粒子線を照射する粒子線治療システムに適用され、標的を撮像した計画時X線画像に基づいて粒子線の第一の線量分布を算出し、計画時X線画像よりも後に標的を撮像した事前X線画像に基づいて粒子線の第二の線量分布を算出し、これら第一及び第二の線量分布に関する第一及び第二の線量指標を算出し、これら第一及び第二の線量指標のばらつきを表示させることを特徴とする。
本発明によれば、誤差の影響を考慮して元治療計画と新治療計画との比較を行うことが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
なお、実施形態を説明する図において、同一の機能を有する箇所には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
同一あるいは同様な機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
実施形態の放射線治療計画装置(以下、単に「治療計画装置」と称する)が適用される粒子線治療システムを、図1~10を参照して説明する。本実施形態では、放射線治療の一種であるスキャニング照射法による陽子線治療の治療計画を立案する治療計画装置について説明するが、散乱体照射法による陽子線治療や、炭素線等を用いる重粒子線治療の治療計画を立案する治療計画装置にも適用可能である。また、X線治療の治療計画装置にも適用可能である。
図1は、実施例に係る治療計画装置が適用される粒子線治療システムを示す概略構成図である。
図1は、粒子線治療システムの全体構成を示す図である。図1において、粒子線治療システムは、荷電粒子ビーム発生装置301、高エネルギービーム輸送系310、回転照射装置311、治療計画プログラム312とメモリ313を搭載した制御装置314、表示装置315、照射野形成装置(照射装置)400、ベッド407、治療計画装置501、データサーバ502を備えている。
荷電粒子ビーム発生装置301は、イオン源302、前段加速器303、粒子ビーム加速装置304から構成される。本実施例は、粒子ビーム加速装置304としてシンクロトロン型の粒子ビーム加速装置を想定したものだが、粒子ビーム加速装置304としてサイクロトロン等、他のどの粒子ビーム加速装置を用いてもよい。シンクロトロン型の粒子ビーム加速装置304は、図1に示すように、その周回軌道上に偏向電磁石305、加速装置306、出射用の高周波印加装置307、出射用デフレクタ308、および4極電磁石(図示せず)を備える。
図1を用いて、粒子ビームが、シンクロトロン型の粒子ビーム加速装置304を利用した荷電粒子ビーム発生装置301から発生し、患者へ向けて出射されるまでの経過を説明する。
イオン源302より供給された粒子は、前段加速器303にて加速され、ビーム加速装置であるシンクロトロンへと送られる。シンクロトロンには加速装置306が設置されており、シンクロトロン内を周回する粒子ビームが加速装置306を通過する周期に同期させて加速装置306に設けられた高周波加速空胴(図示せず)に高周波を印加し、粒子ビームを加速する。このようにして粒子ビームが所定のエネルギーに達するまで加速される。
所定のエネルギー(例えば70~250MeV)まで粒子ビームが加速された後、制御装置314より、出射開始信号が出力されると、高周波電源309からの高周波電力が、高周波印加装置307に設置された高周波印加電極により、シンクロトロン内を周回している粒子ビームに印加され、粒子ビームがシンクロトロンから出射される。
高エネルギービーム輸送系310は、シンクロトロンと照射野形成装置400とを連絡している。シンクロトロンから取り出された粒子ビームは、高エネルギービーム輸送系310を介して回転照射装置311に設置された照射野形成装置400まで導かれる。回転照射装置311は、患者406の任意の方向からビームを照射するためにあって、装置全体が回転することで患者406の設置されたベッド407の周囲どの方向へも回転することができる。
照射野形成装置400は、回転照射装置と共に回転する。照射野形成装置の先端には、X線検出器420、421を備えており、患者406を挟んだ反対側にはX線発生装置422、423を備える。X線発生装置422、423とX線検出器420、421が回転照射装置と共に回転しながら患者406のX線透視画像を取得することで、その透視画像からコーンビームCT画像を再構成することができる。
照射野形成装置400は、最終的に患者406へ照射する粒子ビームの形状を整形する装置である。本実施例が対象とするスキャニング法は、高エネルギービーム輸送系310から輸送された細いビームをそのまま標的へ照射し、これを3次元的に走査することで、最終的に標的のみに高線量領域を形成することができる。
図2は、スキャニング法に対応した照射野形成装置400の構成を示す。
図2を使って、照射野形成装置400内の機器のそれぞれの役割と機能とを簡単に述べる。照射野形成装置400は、上流側から二つの走査電磁石401および402、線量モニタ403、ビーム位置モニタ404を備える。線量モニタ403はモニタを通過した粒子ビームの量を計測する。一方、ビーム位置モニタ404は、粒子ビームが通過した位置を計測することができる。これらのモニタ403、404からの情報により、計画通りの位置に、計画通りの量のビームが照射されていることを、制御装置314が管理することが可能となる。
荷電粒子ビーム発生装置301から高エネルギービーム輸送系310を経て輸送された細い粒子ビームは、走査電磁石401、402によりその進行方向を偏向される。これらの走査電磁石は、ビーム進行方向と垂直な方向に磁力線が生じるように設けられており、例えば図2では、走査電磁石401は走査方向405の方向にビームを偏向させ、走査電磁石402はこれに垂直な方向に偏向させる。この二つの電磁石を利用することで、ビーム進行方向と垂直な面内において任意の位置にビームを移動させることができ、標的406aへのビーム照射が可能となる。
制御装置314は、走査電磁石磁場強度制御装置411を介して、走査電磁石401および402に流す電流の量を制御する。走査電磁石401、402には、走査電磁石用電源410より電流が供給され、電流量に応じた磁場が励起されることでビームの偏向量を自由に設定できる。粒子ビームの偏向量と電流量との関係は、あらかじめテーブルとして制御装置314の中のメモリ313に保持されており、それを参照する。
スキャニング法のビームの走査方式は二通りある。一つは照射位置を停止させた状態のみで粒子線を照射し、照射位置を変更する間は粒子線の照射を停止する離散スキャニング照射である。もう一つは、粒子線の照射を停止することなく連続的に照射位置を変化させる連続スキャニング照射である。本実施形態では、離散スキャニング照射について記述するが、本発明は連続スキャニング照射に対しても適用することができる。
離散スキャニング照射による照射の概念図を図3に示す。
図3は、立方体の標的801を照射する例である。粒子線は、進行方向におけるある位置で停止し、その停止位置にエネルギーの大部分を付与するため、ビームの停止する深さが標的領域内となるようにエネルギーが調整される。図3では、同一エネルギーで照射される面802付近で停止するエネルギーのビームが選ばれている。この面上に、照射位置(スポット)がスポット間隔803で配置されている。
スポットは、照射位置と照射量の組み合わせを表す。一つのスポットで規定量を照射すると、一旦照射を停止して次のスポットへ移動する。移動が完了すると次のスポットの照射を開始し、規定量に達すると照射を停止する。以降、これを繰り返す。
スポット804は、スポット804を照射するビームの軌跡805を通るビームで照射される。標的内に配置された同一エネルギーのスポットを順次照射し終わると、標的内の他の深さ位置を照射するために、ビームを停止させる深さが変更される。ここでは、単純な立方体標的に一定の照射量を照射することを仮定しているが、実際には複雑な形状の線量分布を標的に形成するため、スポット毎の照射量は、それぞれ大きく異なる。
図3の例では、同一エネルギーで照射される面802に相当する領域に主にエネルギーを付与していた。エネルギーを変更することで、例えば図4のような状況となる。
図4では、図3で使用したエネルギーよりも低いエネルギーのビームが照射される。そのため、ビームはより浅い位置で停止する。この面を同一エネルギーで照射される面901で表わす。このエネルギーのビームに対応するスポットの一つであるスポット902は、スポット902を照射するビームの軌跡903を通るビームで照射される。
ビームエネルギーを変化させるもう一つの方法は、照射野形成装置400内に飛程変調体(図示せず)を挿入することである。変化させたいエネルギーに応じて、飛程変調体の厚みを選択する。厚みの選択は、複数の厚みを持つ複数の飛程変調体を用いる方法や、対向する楔形の飛程変調体を用いてもよい。
本実施例では、同一エネルギーで照射される照射位置の集合をレイヤーと呼ぶ。
ビームの停止する深さを変化させるためには、患者406に照射するビームのエネルギーを変化させる。エネルギーを変化させる方法の一つは、粒子ビーム加速装置、すなわち本実施例においてはシンクロトロンの設定を変更することである。粒子はシンクロトロンにおいて設定されたエネルギーになるまで加速されるが、この設定値を変更することで患者406に入射するエネルギーを変更することができる。この場合、シンクロトロンから取り出されるエネルギーが変化するため、高エネルギービーム輸送系310を通過する際のエネルギーも変化し、高エネルギービーム輸送系310の設定変更も必要になる。シンクロトロンの場合、エネルギー変更には1秒程度の時間を要する。
図5は、治療計画装置501の構成を示す。治療計画装置501は、ネットワークによりデータサーバ502、制御装置314と接続される。
治療計画装置501は、図5に示すように、粒子線を照射するためのパラメータを入力するための入力装置602、治療計画を表示する表示装置603、メモリ604、線量分布計算を実施する演算処理装置605(演算装置)、通信装置606を備える。演算処理装置605が、入力装置602、表示装置603、メモリ(記憶装置)604、通信装置606に接続される。
治療計画装置501は、各種情報処理が可能な装置、一例としてコンピュータ等の情報処理装置から構成される。情報処理装置は、演算装置605、記憶装置604及び通信装置607である通信インターフェースを有し、さらに、マウス、キーボード等の入力装置602、ディスプレイ等の表示装置603を有する。
演算装置605は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等である。記憶装置604は、例えばHDD(Hard Disk Drive)などの磁気記憶媒体、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)などの半導体記憶媒体等を有する。また、DVD(Digital Versatile Disk)等の光ディスク及び光ディスクドライブの組み合わせも記憶装置604として用いられる。その他、磁気テープメディアなどの公知の記憶媒体も記憶装置604として用いられる。
記憶装置604には、ファームウェアなどのプログラムが格納されている。治療計画装置501の動作開始時(例えば電源投入時)にファームウェア等のプログラムをこの記憶装置604から読み出して実行し、治療計画装置501の全体制御を行う。また、記憶装置604には、プログラム以外にも、治療計画装置501の各処理に必要なデータ等が格納されている。
あるいは、治療計画装置501を構成する構成要素の一部がLAN(Local Area Network)を介して相互に接続されていてもよいし、インターネット等のWAN(Wide Area Network)を介して相互に接続されていてもよい。
ここから、治療計画装置501を用いた操作の流れを、図6に沿って説明する。
治療に先立ち、治療計画用の画像が撮像される。治療計画用の画像として最も一般的に利用されるのはCT画像である。CT画像は、患者の複数の方向から取得した透視画像から、3次元のデータを再構成する。
CT装置(図示せず)により撮像されたCT画像は、データサーバ502に保存されている。本実施例では、このCT画像を元計画用CT画像(計画時X線画像)と呼ぶ。CT画像は電子密度の情報を保持しており、線量分布の計算では、この電子密度の情報から水等価厚に換算して粒子線の到達深さが計算される。CT画像の画素値と水等価厚の関係は予めテーブルとして提供されている。
治療計画の立案が開始されると(ステップ101)、本治療計画装置501の操作者である技師(または医師)は、入力装置602であるマウス等の機器を用いて、データサーバ502から対象となるCTデータを読み込む。すなわち、治療計画装置501は、入力装置602の操作により、通信装置606に接続されたネットワークを通じて、データサーバ502からCT画像をメモリ604上にコピーする(ステップ102)。
データサーバ502からメモリ604への3次元CT画像の読み込みが完了し、3次元CT画像が表示装置603に表示されると、操作者は表示装置603に表示された3次元CT画像を確認しながら、入力装置602に相当するマウス等の機器を用いて、3次元CT画像のスライス、すなわち2次元CT画像ごとに標的として指定すべき領域を入力する。ここで入力すべき標的領域は、腫瘍細胞が存在する、あるいは存在する可能性があるために十分な量の粒子線を照射すべきと判断された領域である。これを標的領域と呼ぶ。照射線量を極力抑えるべき重要臓器が標的領域の近傍に存在するなど、他に評価、制御を必要とする領域がある場合、操作者はそれら重要臓器等の領域も同様に指定する。他にも、MRIに代表される異なるモダリティの画像上で実行されてもよい(ステップ103)。
すべての3次元CT画像に対して領域の入力が終わると、操作者は入力した領域の登録を指示する。登録することで、操作者が入力した領域は3次元の位置情報としてメモリ604内に保存される(ステップ104)。領域の位置情報はデータサーバ502にも保存可能であり、3次元CT画像を読み込むにあたり過去に入力された情報を3次元CT画像と共に読み込むこともできる。
次に操作者は、登録された標的領域に対して照射すべきビームの位置やエネルギーの情報を含む治療計画(元治療計画)を作成する(ステップ104)。まず、操作者は、照射方向を設定する。本実施形態が適用される粒子線治療システムは、回転照射装置311とベッド407の角度を選択することで、患者の任意の方向からビームの照射を行うことができる。照射方向は一つの標的に対して複数設定することが可能である。通常、標的領域706の中心付近がアイソセンタ(回転照射装置311の回転中心位置)に一致するように位置決めがされる。
他に操作者が決定すべき照射のためのパラメータとしては、ステップ104で登録した領域に照射すべき線量値(処方線量)がある。処方線量は標的に照射すべき線量や、重要臓器が避けるべき最大線量が含まれる。
以上のパラメータが決まった後、操作者の指示に従って治療計画装置501が自動で計算を行う(ステップ106)。以下で、治療計画装置501が行う線量計算に係わる内容の詳細に関して説明する。
ここでは、ロバスト最適化により強度変調陽子線治療と呼ばれる照射方法の治療計画作成を例に説明する。通常の照射では、照射方向毎に標的に一様な線量分布を形成する。そのため、照射量の最適化においても、照射方向毎に照射量を最適化する。一方、強度変調陽子線治療では、標的に十分な線量が照射されるように、全ての照射方向からの照射量を同時に最適化する。強度変調陽子線治療では、照射方向毎に照射量を最適化する通常の場合よりも自由度が高まるため、標的への線量を十分に確保しつつ、照射を避けるべき部位の線量を低減することができる。
治療計画の作成では、患者の位置誤差や粒子線が到達する深さの誤差を考慮する。すなわち、これらの誤差が発生した場合にも標的に十分な線量が照射されるように治療計画を作成する。
誤差を考慮する方法には主に2通りある。ひとつは、想定する誤差の分だけ標的より大きな領域を設定し、その領域に十分な線量が照射されるように照射量を最適化する手法である。照射方向毎に一様な線量分布を形成する通常の照射方法の場合に適した手法である。もうひとつは、誤差が発生した場合の線量分布を実際に計算し、誤差が線量分布に与える影響を最小にするように照射量を最適化するロバスト最適化と呼ばれる手法である。照射方向毎の線量分布が一様ではない強度変調陽子線治療に適した手法である。
初めに、治療計画装置501は、ビーム照射位置を決定する。照射位置は標的領域を覆うように設定される。複数の照射方向(回転照射装置311とベッド407の角度)毎に同じ操作を行う。
全ての照射位置が決定されると、治療計画装置501は照射量の最適化計算を開始する。
最初に、各照射位置の照射量と線量分布の関係を複数のケースに対して計算する。例えば、誤差がない場合、互いに直交する3方向とその逆方向の合計6方向に標的の位置が変化した場合、陽子線の到達位置が深い側と浅い側へ変化した場合の合計9ケースについてである。
次に、各照射位置への照射量が決定される。照射位置ごとの照射量をパラメータとして目標線量からのずれを数値化した目的関数を用いる方法が広く採用されている。目的関数は、合計9ケースの線量のうち、ステップ105で設定された目標の処方線量との差が最も大きいものが小さくなるほど、小さな値となるように定義されている。目標関数が最小となるような照射量を反復計算により探索することで、最適とされる照射量を算出する。反復計算が終了すると、最終的に各照射位置に必要な照射量が定まる。
次に、治療計画装置501は演算処理装置605により、得られた照射位置と照射量を用いて、線量分布(第一の線量分布)を計算する。必要があれば、計算した線量分布結果は、表示装置603に表示される。
操作者は表示された線量分布を評価し、この線量分布が目標とする条件や、目標とする線量分布との一致度を満たしているか否かを判断する(ステップ107、108)。
線量分布を評価した結果、操作者が望ましくない分布であると判断した場合は、ステップ105に戻り、照射パラメータを設定し直す。変更すべきパラメータとしては、照射方向や処方線量がある。望ましい結果が得られた後、治療計画装置は、エネルギー、照射量、照射位置を含むスポットデータをネットワークを通じてデータサーバ502に保存する(ステップ109、ステップ110)。
次に、図7と図8のフローを用いて、制御装置314を用いて再計画を実施して標的に線量分布を形成する手順を説明する。
照射を開始する前に、オペレータは照射対象51をカウチ32の上に乗せ、計画した位置に移動させる。制御装置314はデータサーバ502に登録されたエネルギー、照射位置、照射量の情報を読み出しメモリに登録する。
制御装置314は、ステップ201において、ガントリーを回転させながらX線透視を実施し、コーンビームCT画像(事前X線画像)を取得する。ステップ202において、取得したコーンビーム画像と治療計画時のCT画像を比較して患者の位置を調整する。
ステップ203において制御装置314の治療計画プログラム312が治療計画を再計画し、再計画された計画が目標通りのものであることを評価する。
ステップ203における再計画の詳細を、図8のフロー図に従い説明する。
制御装置314の治療計画プログラム312は、ステップ211において、ステップ201で取得したコーンビームCT画像を読み込み、ステップ212において、照射時の患者体形に合わせて治療計画用の画像を再作成する。事前の治療計画で使用した元計画用CT画像と取得したコーンビームCT画像を比較する。変形レジストレーションを実施することで治療計画時の元計画用CT画像をコーンビームCT画像に合わせて変形する。
事前の治療計画に用いる元計画用CT画像は、患者体内の電子密度を高精度に表しているのに対して、コーンビームCT画像はX線の散乱寄与が大きいため、電子密度を精度良く表すことが困難である。電子密度の精度は、粒子線の到達位置の計算精度に寄与する。そこで、患者体内の電子密度を高精度に計測した元計画用CT画像を、照射当日の患者体内形状を高精度に計測したコーンビームCT画像に合わせて変形することにより、新計画用CT画像を作成する。元計画用CT画像と共に、元計画用CT画像に描かれた輪郭情報も変形される。
新計画用CT画像と変形された輪郭情報を元に治療計画を再作成する。ステップ213において、変形した輪郭情報をもとに標的を覆うようにスポット位置を配置する。複数の照射方向から照射する場合には、照射方向毎に標的を覆うようにスポットを配置する。また、ステップ214において、標的及び標的の回りの臓器に対して線量評価点を設定する。ステップ215において、各線量評価点における目標値を設定する。各線量評価点の目標値は、事前の治療計画であるステップ105と同様に決定することもできるし、事前の治療計画で得られた線量分布をステップ203と同様に変形して決定することもできる。
ステップ216において、スポット位置に照射する照射量と線量評価点における線量値の関係を計算し、各線量評価点における線量値が目標値に近づくように、各スポットの照射量を最適化して調整する。こうして最適化された結果が新治療計画(再治療計画)として登録される。
ステップ204において、操作者は、事前に作成していた元治療計画と、照射直前に作成した新治療計画を比較して、好ましいほうの治療計画を選択する。元治療計画と新治療計画により形成される線量分布をステップ212において作成した計画CT画像を用いて計算する。さらに本実施形態の特徴である誤差を考慮した線量計算を実施する。
誤差は、主に計画CT画像の作成に伴い発生するものである。具体的な誤差を考慮した計算について説明する。
一つ目は、密度の誤差を考慮するものである。計画CT画像から求められる水等価厚を一定の割合で増減させ、その値に基づき線量分布を計算する。水等価厚を増やす場合、粒子線の到達位置が浅い場合を現し、減らす場合、粒子線の到達位置が深い場合を表す。
二つ目は、位置の誤差を考慮するものである。計画CT画像と照射装置の位置関係を複数の方向へ移動させ、その位置に基づき線量分布を計算する。
三つ目は、コーンビームCT画像に合わせてCT画像を変形する非剛体レジストレーションのエラーを考慮するものである。非剛体レジストレーションには、画素値に基づいて変形する手法、臓器の輪郭を基準に変形する手法、それらの両方を考慮する手法がある。また、変形の曲がり易さを表す値や解像度がパラメータとして存在する。これらの手法やパラメータを変更することで、異なった非剛体レジストレーションよる結果を得ることができる。こうして得た複数の非剛体レジストレーションによる計画CT画像のそれぞれに対して、元治療計画と新治療計画の線量分布を計算する。
このように計算した線量分布(第一の線量分布、第二の線量分布)から線量指標(第一の線量指標、第二の線量指標)を計算し、図9に示すようにエラーバーで示すばらつきと共に表示する。図9に示す画面は、治療計画装置501の表示装置603、粒子線治療システムの表示装置315のいずれに表示されても良い。
線量指標は、標的内や正常臓器における最大線量、最小線量、または線量体積ヒストグラム(DVH)で表される値である。また、線量分布から計算される標的内の線量一様度、線量と標的の一致度、腫瘍制御確率(TCP)、正常組織障害確率(NTCP)であってもよい。
治療計画装置501は、複数の誤差ケースで計算された線量分布からこれら線量指標の値を計算し、表示する。図9の例では、計画時の線量指標が参照として示されており、元治療計画と新治療計画による線量指標の値がばらつきと共に表示されている。図9(a)の例では、ばらつきまで含めて新治療計画のほうが良い値を示しているため、新治療計画の採用を促すものである。一方、図9(b)の例では、誤差なしの値としては新治療計画のほうが良いものの、新治療計画のほうがばらつきが大きく、最悪のケースでは旧計画のほうが良い値となっており、元治療計画の採用を促すものである。これらの指標が複数表示され、それらを総合的に考慮して、元治療計画と新治療計画から照射に用いる計画を選択する。
なお、ここでは誤差を付与する手法として多数のケースがあることを示した。全て計算することで、高精度にばらつきを表示することができる。一方、線量分布の計算に時間を要するため、ここで挙げた計算のうち、主要なものを選択して線量分布を計算することも有効である。
事前に作成した元治療計画が好ましい場合、ステップ207において照射を開始する。
一方、照射直前に作成した新治療計画を選択した場合、ステップ205において、その治療計画を検証し、ステップ206において承認すると、照射する治療計画としてメモリに登録し、ステップ207の照射を開始する。
制御装置314はメモリに記録されたエネルギー、照射位置、照射量の情報を元に照射装置内の走査電磁石の励磁電流値を設定する。
オペレータが制御装置314に接続された操作卓にある照射開始ボタンを押すことで一連の照射を開始する。
照射手順について図10を用いて説明する。
ステップ701においてエネルギー番号i=1、スポット番号j=1から照射を開始する。
ステップ702において、制御装置314はシンクロトロンを制御して制御装置から指定されたエネルギーまで陽子線を加速する。陽子線は、ライナックからシンクロトロンに入射され、シンクロトロン内を周回しながら加速装置306により加速される。また、制御装置314はビーム輸送系310を制御し、陽子線が照射装置400へ到達できるように電磁石を励磁する。
ステップ703において、制御装置314は最初の照射位置を照射するためにX軸走査電磁石とY軸走査電磁石をそれぞれ励磁する。ステップ704において、走査電磁石の励磁が完了すると、制御装置314は高周波印加装置307を制御して陽子線に高周波を印加する。高周波を印加された陽子線はビーム輸送系310を経て照射装置400で走査され、最初の照射位置に達する。
陽子線が照射装置を通過した照射量は線量モニタ403により計測されており、その量がスポットに規定された照射量に達すると、制御装置314は高周波印加装置307を停止し、陽子線の出射を停止する。陽子線の出射停止後、次の照射位置を照射するためステップ703へ戻り、制御装置314は走査電磁石401、402の励磁量を変更する。
ステップ705においてj=ns(nsはエネルギーに含まれるスポット数)を満たすとステップ706において制御装置314はシンクロトロンを制御して減速し、ステップ702において次のエネルギーの照射に備える。
ステップ707でi=nr(nrはエネルギー数)に達するとステップ708にて照射を完了する。
本実施例のように線量指標の値と共にばらつきを併記することで、誤差まで考慮して治療計画の選択を判断することができる。ばらつきまで可視化されることで迅速な判断が可能となる。アダプティブ治療では、非剛体レジストレーションによる誤差を考慮して線量分布を評価する必要がある。非剛体レジストレーションの誤差は、事前の治療計画では考慮する必要がなく、アダプティブ治療に特有のものである。普段考慮しない誤差に対して、本発明は可視化することで判断を支援する。
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
一例として、本実施形態では陽子線を例に説明したが、炭素線を照射する場合、X線を照射する場合にも同様に計算が可能である。
また、本実施形態ではコーンビームCTを用いた例を示したが、通常のCT装置を室内に置くInRoomCTと呼ばれる装置のCT画像を用いてもよいし、MRI装置によるMRI画像を用いてもよい。
さらに、本実施例では図7、図8の処理を制御装置314の治療計画プログラム312が行っていたが、制御装置314の外にある治療計画装置501がこの処理を行ってもよい。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
501…治療計画装置 602…入力装置 603…表示装置 604…メモリ 605…データベース 606…演算処理装置 607…通信装置
Claims (11)
- 標的に粒子線を照射する粒子線治療システムに適用される治療計画装置であって、
前記標的を撮像した計画時X線画像に基づいて前記粒子線の第一の線量分布を算出し、
前記計画時X線画像よりも後に前記標的を撮像した事前X線画像に基づいて前記粒子線の第二の線量分布を算出し、
これら第一及び第二の線量分布に関する第一及び第二の線量指標を算出し、これら第一及び第二の線量指標のばらつきを表示させる
ことを特徴とする治療計画装置。 - 前記ばらつきは、前記標的の密度の誤差を付与して前記第一及び第二の線量分布を計算することにより得られることを特徴とする請求項1に記載の治療計画装置。
- 前記ばらつきは、前記計画時X線画像と前記事前X線画像との重ね合わせ誤差を付与して前記第一及び第二の線量分布を計算することにより得られることを特徴とする請求項1に記載の治療計画装置。
- 前記ばらつきは、前記事前X線画像に基づいて前記計画時X線画像を変形させて前記第一及び第二の線量分布を計算することにより得られることを特徴とする請求項1に記載の治療計画装置。
- 前記ばらつきがない場合の前記第一及び第二の線量指標を表示させるとともに、前記第一及び第二の線量指標に対して前記ばらつきをエラーバーとして表示させることを請求項1に記載の特徴とする治療計画装置。
- 前記第一の線量分布に基づいて前記粒子線の照射量を算出して元治療計画を作成し、
前記第二の線量分布に基づいて前記粒子線の照射量を算出して再治療計画を作成し、
前記第一及び第二の線量指標のばらつきを表示させた後に、前記元治療計画または前記再治療計画のいずれを用いて前記粒子線の照射を行うかを選択させる
ことを請求項1に記載の特徴とする治療計画装置。 - 前記事前X線画像は、前記粒子線治療システムによる前記粒子線の照射直前に撮像されたものであることを特徴とする請求項1に記載の治療計画装置。
- 標的に粒子線を照射し、治療計画装置を有する粒子線治療システムであって、
前記治療計画装置は、
前記標的を撮像した計画時X線画像に基づいて前記粒子線の第一の線量分布を算出し、
前記計画時X線画像よりも後に前記標的を撮像した事前X線画像に基づいて前記粒子線の第二の線量分布を算出し、
これら第一及び第二の線量分布に関する第一及び第二の線量指標を算出し、これら第一及び第二の線量指標のばらつきを表示させる
ことを特徴とする粒子線治療システム。 - 前記粒子線治療システムは前記標的にX線を照射することを特徴とする請求項8に記載の粒子線治療システム。
- 標的に粒子線を照射する粒子線治療システムに適用される治療計画装置による治療計画生成方法であって、
前記標的を撮像した計画時X線画像に基づいて前記粒子線の第一の線量分布を算出し、
前記計画時X線画像よりも後に前記標的を撮像した事前X線画像に基づいて前記粒子線の第二の線量分布を算出し、
これら第一及び第二の線量分布に関する第一及び第二の線量指標を算出し、これら第一及び第二の線量指標のばらつきを表示させる
ことを特徴とする治療計画生成方法。 - 標的に粒子線を照射する粒子線治療システムに適用されるコンピュータにより実行されるコンピュータプログラムであって、
前記標的を撮像した計画時X線画像に基づいて前記粒子線の第一の線量分布を算出する機能と、
前記計画時X線画像よりも後に前記標的を撮像した事前X線画像に基づいて前記粒子線の第二の線量分布を算出する機能と、
これら第一及び第二の線量分布に関する第一及び第二の線量指標を算出し、これら第一及び第二の線量指標のばらつきを表示させる機能と
を前記コンピュータに実現させるコンピュータプログラム。
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