JP2022163677A - 演算装置、パラメータ推定方法およびプログラム - Google Patents
演算装置、パラメータ推定方法およびプログラム Download PDFInfo
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Abstract
【課題】吹錬頻度の少ないカテゴリが一部存在する場合であっても、カテゴリごとに異なる脱りんのしやすさの違いを統計モデルのパラメータに適切に反映させて溶鋼中りん濃度の推定精度を向上させる。【解決手段】過去の操業における、吹錬ごとに得られる当該吹錬に関する操業データを収集するデータ収集部と、上記操業データから抽出されたデータを説明変数とし、上記操業データに含まれる溶鋼中りん濃度の実績値から計算される脱りん速度定数を目的変数とする、統計モデルのパラメータを推定する統計モデル構築部とを備え、上記統計モデル構築部は、上記操業データに含まれる少なくとも1つのカテゴリによって吹錬を分類し、上記カテゴリごとの上記統計モデルのパラメータがとりうる値の確率をすべてのカテゴリの間で共有して、上記カテゴリごとに上記統計モデルのパラメータを推定する演算装置が提供される。【選択図】図1
Description
本発明は、演算装置、パラメータ推定方法およびプログラムに関する。
転炉吹錬において吹止め時の溶鋼中成分の制御、特に溶鋼中りん濃度の制御は、鋼の品質管理上、重要である。溶鋼中りん濃度の制御のために、例えば上吹きランス高さ、上吹き酸素流量、底吹きガス流量、ならびに生石灰またはスケールなどの副原料の投入量および投入タイミングなどが操作量として用いられている。これらの操作量は、目標りん濃度、溶銑データおよび過去の操業実績に基づいて作成された基準など、吹錬開始前に得られる情報に基づいて決定されることが多い。
しかしながら、吹錬開始前に得られる情報のみに基づいて操作量を決定した場合、吹止め時の溶鋼中りん濃度のばらつきが大きくなるという問題があった。吹錬操業中に得られる情報も含めた操業データを用いて精度よく溶鋼中りん濃度を逐次推定できれば、吹錬中に目標りん濃度に到達するための追加操作を行うことによって、りん濃度のばらつきを抑制することが可能になる。
吹錬操業中に得られる情報を含めた当該吹錬に関する操業データを用いて溶鋼中りん濃度を逐次推定する技術は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1には、吹錬中に得られる情報を含めた当該吹錬に関する操業データを用いて、吹錬ごとに脱りん速度定数を推定し、推定された脱りん速度定数を用いて吹錬時の溶鋼中りん濃度を推定する技術が記載されている。さらに、特許文献1には、推定された溶鋼中りん濃度と目標溶鋼中りん濃度とを比較し、その比較結果に基づいて操作量を変更することにより溶鋼中りん濃度を制御する技術も記載されている。
上記の特許文献1では推定に用いる統計モデルのパラメータをすべての吹錬について共通にしているが、実際の操業では例えば製造する鋼種によって吹錬終了時の目標温度および成分が異なり、それに応じて脱りんのしやすさも異なる。すなわち、鋼種が異なれば、例えば上吹き酸素流量や副原料投入量などの操作量が同じであっても脱りんの進行度合いに差がある。このような脱りんのしやすさの違いは統計モデルのパラメータに影響を与えると考えられるが、特許文献1ではこの点について考慮されていない。
このような課題に対して、例えば、操業データに含まれるカテゴリである、鋼種分類(一又は複数の鋼種ごとにまとめた分類)に基づき吹錬を分類し、分類されたそれぞれのカテゴリごとに独立して統計モデルのパラメータを決定することが考えられる。しかしながら、この場合は吹錬頻度の少ないカテゴリにおいて、統計モデルのパラメータを決定するために必要な十分な数の学習データが得られなくなるため、パラメータの決定が困難になったり、決定されたパラメータを用いた溶鋼中りん濃度の推定精度が低下したりする可能性がある。また、溶鋼中りん濃度の推定精度を向上させるために、鋼種分類とは別観点(例えば、使用した転炉)で分類されたカテゴリごとに統計モデルのパラメータを推定することも考えられるが、そのような場合においても同様の問題が生じる。
そこで、本発明は、分類されたカテゴリごとに統計モデルのパラメータを推定するにあたり、吹錬頻度の少ないカテゴリが一部存在する場合であっても、カテゴリごとに異なる脱りんのしやすさの違いを統計モデルのパラメータに適切に反映させて溶鋼中りん濃度の推定精度を向上させることが可能な演算装置、パラメータ推定方法およびプログラムを提供することを目的とする。
本発明のある観点によれば、過去の操業における、吹錬ごとに得られる当該吹錬に関する操業データを収集するデータ収集部と、上記操業データから抽出されたデータを説明変数とし、上記操業データに含まれる溶鋼中りん濃度の実績値から計算される脱りん速度定数を目的変数とする、統計モデルのパラメータを推定する統計モデル構築部とを備え、上記統計モデル構築部は、上記操業データに含まれる少なくとも1つのカテゴリによって吹錬を分類し、上記カテゴリごとの上記統計モデルのパラメータがとりうる値の確率をすべてのカテゴリの間で共有して、上記カテゴリごとに上記統計モデルのパラメータを推定する演算装置が提供される。
本発明の別の観点によれば、過去の操業における、吹錬ごとに得られる当該吹錬に関する操業データを収集するステップと、上記操業データから抽出されたデータを説明変数とし、上記操業データに含まれる溶鋼中りん濃度の実績値から計算される脱りん速度定数を目的変数とする、統計モデルのパラメータを推定するステップとを含み、上記パラメータを推定するステップは、上記操業データに含まれる少なくとも1つのカテゴリによって吹錬を分類し、上記カテゴリごとの上記統計モデルのパラメータがとりうる値の確率をすべてのカテゴリの間で共有して、上記カテゴリごとに上記統計モデルのパラメータを推定する推定方法が提供される。
本発明のさらに別の観点によれば、過去の操業における、吹錬ごとに得られる当該吹錬に関する操業データを収集するデータ収集部と、上記操業データから抽出されたデータを説明変数とし、上記操業データに含まれる溶鋼中りん濃度の実績値から計算される脱りん速度定数を目的変数とする、統計モデルのパラメータを推定する統計モデル構築部とを備え、上記統計モデル構築部は、上記操業データに含まれる少なくとも1つのカテゴリによって吹錬を分類し、上記カテゴリごとの上記統計モデルのパラメータがとりうる値の確率をすべてのカテゴリの間で共有して、上記カテゴリごとに上記統計モデルのパラメータを推定する演算装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムが提供される。
上記の構成によれば、操業データに含まれるカテゴリによって吹錬を分類し、カテゴリごとの統計モデルのパラメータを推定するにあたり、上記カテゴリごとの上記統計モデルのパラメータがとりうる値の確率をすべてのカテゴリの間で共有して、上記カテゴリごとに上記統計モデルのパラメータを推定することによって、分類したカテゴリごとに異なる脱りんのしやすさの違いを統計モデルのパラメータに反映させて推定の精度を向上させつつ、サンプル数が不足しているカテゴリが存在していても推定結果の妥当性を維持することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
(溶鋼中りん濃度推定の原理)
吹錬処理中の溶鋼中りん濃度(以下、[P](%)とも表記する)の時間変化は、式(1)の一次反応式で表されると仮定する。ここで、[P]ini(%)は[P]の初期値(吹錬処理前りん濃度)、kP(sec-1)は脱りん速度定数である。式(1)より、吹錬処理の開始からt秒後の[P]は、式(2)で表される。
吹錬処理中の溶鋼中りん濃度(以下、[P](%)とも表記する)の時間変化は、式(1)の一次反応式で表されると仮定する。ここで、[P]ini(%)は[P]の初期値(吹錬処理前りん濃度)、kP(sec-1)は脱りん速度定数である。式(1)より、吹錬処理の開始からt秒後の[P]は、式(2)で表される。
従って、正確な脱りん速度定数kPが得られれば、吹錬開始からt秒後における溶鋼中りん濃度を高精度に推定することができる。ただし、一般に脱りん速度定数kPはすべての吹錬で同一の値ではなく、操業データの違いによって変動すると考えられる。そのため、例えば特開2013-23696号公報に開示されているように、当該吹錬に関する操業データを用いて、脱りん速度定数kPを吹錬ごとに推定する。なお、脱りん速度定数kPの実績値は、吹錬終了後(正しくは吹錬終了時の溶鋼成分判明後)に、式(2)を変形した以下の式(3)にそれぞれ値を代入することによって算出される。ここで、[P]ini(%)には吹錬処理前りん濃度、[P]end(%)には吹錬終了時の溶鋼りん濃度、tend(sec)には吹錬開始から吹錬終了までの間に送酸していた時間を代入する。
吹錬ごとの脱りん速度定数kPの推定のために、脱りん速度定数kPを目的変数、吹錬に関する操業データを説明変数とする統計モデルを構築する。この統計モデルは、様々な統計的手法により適宜構築可能であるが、例えば式(4)のような重回帰式を用いることができる。当該吹錬に関する操業データを説明変数Xi(i=1,2,・・・,M)として式(4)に代入することにより、吹錬毎に異なる脱りん速度定数kPが推定され、当該脱りん速度定数kPを上記の式(2)に適用することにより、当該吹錬における溶鋼中りん濃度を算出することができる。式(4)で脱りん速度定数kPを推定するためのパラメータである回帰係数ai(i=0,1,・・・,M)は、公知の重回帰分析手法によって得られる。例えば、式(3)で求めた過去の操業での脱りん速度定数kPの実績値とその吹錬における操業データである説明変数Xiとを吹錬ごとにまとめた、モデル構築用の学習データを用いることで、回帰係数aiは決定することができる。
しかしながら、例えば製造する製品の鋼種分類、製造に使用する転炉などにより分類され得るカテゴリに関わらずすべてのデータを用いて上記の式(4)の統計モデルを構築すると、カテゴリごとの脱りんのしやすさの違いがパラメータであるaiに反映されず、例えば一部のカテゴリにおいて溶鋼中りん濃度が適切に推定されない。一方、カテゴリごとに吹錬を分割したデータを用いてそれぞれ独立して上記の式(4)の統計モデルを構築すると、吹錬頻度の少ないカテゴリにおいて十分な学習データ数が得られなくなるため、パラメータaiの決定が困難になったり、決定されたパラメータaiを用いた溶鋼中りん濃度の推定精度が低下したりする可能性がある。
そこで、本発明の下記の第1および第2実施形態では、上記のような脱りん速度定数kPを推定するためのパラメータであるaiについて、所定の鋼種分類や炉号などに基づいて分類されたカテゴリc(c=1,2,・・・,C)による違いを階層ベイズモデルを用いて考慮する。この場合、パラメータaiはカテゴリcごとに推定されるが、下記の第1および第2実施形態では過去の操業においてパラメータaiがとりうる値の確率をすべてのカテゴリcで共有してパラメータaiを推定する(すなわち、ある説明変数Xiに関するカテゴリごとのパラメータaiの階層ベイズモデルにおける後述の事前分布は、カテゴリcによらず同一の分布を仮定する)ため、鋼種分類などにより分類されたカテゴリごとの脱りんのしやすさの違いをパラメータaiに反映させつつ、吹錬頻度の少ないカテゴリにおいても統計モデルの妥当性を維持することができる。
(ベイズモデルの説明)
ここで、ベイズモデルは、式(5)に示すベイズの公式に則った統計モデルである。θは推定したい未知の変数、Dは学習データを表す。ベイズの公式は、事後分布P(θ|D)(学習データが与えられた時の未知の変数θが得られる確率)が、事前分布P(θ)と尤度関数P(D|θ)(未知の変数θが与えられた時の学習データが得られる確率)との積に比例することを表す。式(5)の関係性を用いてマルコフ連鎖モンテカルロ法と呼ばれる乱数生成手法により事後分布P(θ|D)に従う乱数を生成させることで、未知変数θを分布として推定する。この際、未知変数θについての知見を事前分布P(θ)としてモデルに組み込むことができる。階層ベイズモデルは、事前分布P(θ)を規定する確率分布の母数に対して、さらに事前分布(超事前分布)を仮定するものである。
ここで、ベイズモデルは、式(5)に示すベイズの公式に則った統計モデルである。θは推定したい未知の変数、Dは学習データを表す。ベイズの公式は、事後分布P(θ|D)(学習データが与えられた時の未知の変数θが得られる確率)が、事前分布P(θ)と尤度関数P(D|θ)(未知の変数θが与えられた時の学習データが得られる確率)との積に比例することを表す。式(5)の関係性を用いてマルコフ連鎖モンテカルロ法と呼ばれる乱数生成手法により事後分布P(θ|D)に従う乱数を生成させることで、未知変数θを分布として推定する。この際、未知変数θについての知見を事前分布P(θ)としてモデルに組み込むことができる。階層ベイズモデルは、事前分布P(θ)を規定する確率分布の母数に対して、さらに事前分布(超事前分布)を仮定するものである。
下記の第1および第2実施形態では、上記の式(5)の尤度関数P(D|θ)を以下の式(6)~式(8)で表現する。式(6)では、脱りん速度定数kPが、ある平均値μ、分散σY
2の正規分布から発生すると仮定する。ここで、平均値μは、式(7)に示すように、従来の式(4)と同様、吹錬に関する操業データである説明変数Xiと、説明変数Xiが脱りん反応速度定数kPへ与える影響度であるパラメータaiとを用いた重回帰式で表現できるとする。パラメータaiは、鋼種分類などにより分類されたカテゴリcによる違いを表現するため、式(8)に示すように、カテゴリcによらない標準値(例えば、全ての鋼種分類で共通のパラメータ)a ̄iと、その標準値a ̄iからのずれに相当するカテゴリcごとの差分値δciとの合計として推定する。ここで、dcはダミー変数であり、今回計算に用いるモデル構築用の学習データにおいて、当該吹錬におけるカテゴリがcであるときに1、それ以外のカテゴリであるときに0をとる変数である。
上記の式(6)~式(8)において、推定対象の未知の変数はσY
2、a ̄i、δciであり、aiは推定されたa ̄i、δciとモデル構築用の学習データに含まれるダミー変数dcによって決まる値であり、μはaiとモデル構築用の学習データに含まれる説明変数Xiによって決まる値である。ベイズモデルにおいて、未知の変数σY
2、a ̄i、δciには事前分布を設定する。未知の変数についての事前知識がない場合は、無情報事前分布または弱情報事前分布を設定する。無情報事前分布は、非常の幅の広い一様分布である。弱情報事前分布は、常識的な範囲を外れない範囲で設定される幅の広い分布である。弱情報事前分布の例として、成人の身長の推定値が1m以上、3m以下である、という事前分布を設定する例が挙げられる。今回、特に言及がない場合は、未知の変数には無情報事前分布、もしくは弱情報事前分布を設定した。ここで設定される分布が、式(5)における事前分布P(θ)にあたる。このように設定された式(5)の右辺に対して、左辺の事後分布P(θ|D)にあたる未知の変数σY
2、a ̄i、δciの同時事後分布に従う乱数を、例えばマルコフ連鎖モンテカルロ法と呼ばれる乱数生成手法を用いて生成することにより、未知の変数を分布として推定する。未知の変数の点推定には、例えば一般的な最大事後確率(MAP)推定を利用することができる。
未知の変数のうち差分値δciについては、確率分布の母数を決められるほどの確定的な事前知識はないが、幅の広い分布(無情報事前分布または弱情報事前分布)にすると、a ̄iよりもδciの絶対値が大きな値をとる可能性があり、その結果、最終的に求められるカテゴリごとのパラメータaiが、カテゴリによって正負が異なるといった不自然な結果になる可能性がある。そのため、今回、差分値δciの事前分布の母数にさらに事前分布を設定する、階層化(階層ベイズモデル)を行うことにする。式(9)に示すように、差分値δciの事前分布には、平均0、分散は新たな未知の変数であるσi
2の正規分布を設定する。この場合、鋼種分類などにより分類されたそれぞれのカテゴリcごとのパラメータaiがとりうる値の確率は、標準値a ̄iを中心にして、全カテゴリにおいて共通の分散σi
2で定義される所定の分布幅に従って分布する値として推定される。これによって、以下で説明するように、鋼種分類などにより分類されたカテゴリごとの脱りんのしやすさの違いを統計モデルに反映させて推定の精度を向上させつつ、カテゴリごとのパラメータの値を妥当な範囲に収め、吹錬頻度が少なく学習データ数が不足しているカテゴリが存在していても推定結果の妥当性を維持することができる。
差分値δciの分散である未知の変数のσi
2は、鋼種分類などにより分類されたカテゴリcごとの差分値δciのばらつき度合いを表現していると解釈できる。分散σi
2に関しても、推定対象として上記の式(5)における事前分布P(θ)にあたる事前分布(超事前分布)を式(10)のように設定することができる。なお、式(10)において、N+は正規分布の正の部分のみの分布を意味する。式(9)に示すように、吹錬に関する操業データである説明変数Xiごとに分散σi
2を設定し、それに伴い事前分布も式(10)のように説明変数Xiの数だけ設定することによって、操業上の知見を差分値δciに反映させることができる。例えば、副原料であるCaOの投入量が脱りん速度定数kPへ与える影響の大きさは、鋼種分類により変化することが考えられるため、分散σiの事前分布の幅のγiには大きな値を設定する。一方、溶銑温度が脱りん速度定数kPへ与える影響の大きさは、鋼種分類によりあまり変化しないと考えられるため、分散σiの事前分布の幅のγiには小さな値を設定する、といった定性的な知見を反映させることができる。
このように鋼種分類などにより分類したカテゴリcごとのパラメータaiを分散σi
2で定義される所定の分布幅に従って分布する値として推定する場合、パラメータaiはその分布幅によって定義された範囲内に存在する確率が高い値として推定される。この場合において、以下で示されるように、パラメータaiのとりうる値の確率が標準値a ̄iの絶対値以下の分布幅に従って分布するように式(10)のγiを設定してもよい。
より具体的には、上記の式(10)において、分散σi
2がパラメータaiの標準値a ̄iの絶対値に対して所定の割合riの範囲に所定の確率で存在するようにγiを設定してもよい(γi=ri×|a ̄i|)。ここで、標準値a ̄iは、事前に一度推定した分布の代表値を使用するか、標準値a ̄iの参考値としてすべての吹錬のデータを対象に(鋼種分類で分割することなく)重回帰分析した際の係数を使用してもよい。
例えば、鋼種分類によるばらつきが大きいことが操業上の知見として知られているパラメータ、具体的には副原料投入量などの説明変数のパラメータaiについては、パラメータaiが標準値a ̄iの絶対値と同じ幅でばらつくようにriを1、または1に近い値に設定してもよい。例えば標準値a ̄iが1、riが1であれば、σi~N+(0,1)となり、σiの値は約70%の確率で0以上1以下の範囲に存在する。従って、差分値δcjは約70%の確率で-1以上+1以下の範囲に存在し、鋼種分類により分類されたカテゴリごとのパラメータaiは70%以上の確率で0以上2以下の範囲に存在する。
上記のように分散σi
2の事前分布を設定することによって、鋼種分類などにより分類されたカテゴリcごとに異なるパラメータaiを許容しつつ、それぞれのカテゴリcの間でパラメータaiの正負が逆転することを防止できる。ここで、本発明者らの知見によれば、鋼種分類などにより分類されたカテゴリcごとに適切なパラメータaiの値は異なるが、あるカテゴリでは正であったパラメータが別のカテゴリでは負になる、すなわち同じ説明変数Xiによる脱りん速度定数kPへの影響がカテゴリによって逆になることはない。従って、上記のようなパラメータaiの分布範囲の設定は、脱りん速度定数kPの推定精度向上に寄与する。なお、推定計算後、カテゴリごとのパラメータの正負が逆転している場合には、riの値を小さく修正して再度推定計算を実行すればよい。
一方、鋼種分類によるばらつきが小さいことが操業上の知見として知られているパラメータ、具体的には溶銑量や溶銑成分、転炉空き時間などの説明変数Xiのパラメータaiについては、パラメータaiが標準値a ̄iに近い範囲でばらつくようにriをより小さい値に設定してもよい。例えば標準値a ̄iが1、riが0.2であれば、σi~N+(0,0.2)となり、σiの値は約70%の確率で0以上0.2以下の範囲に存在する。従って、差分値δcjは約70%の確率で-0.2以上+0.2以下の範囲に存在し、鋼種分類により分類されたカテゴリcごとのパラメータaiは約70%の確率で0.8以上1.2以下の範囲に存在する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る演算装置を含む精錬設備の概略的な構成を示す図である。図示された例において、精錬設備1は、転炉設備10と、計測制御装置20と、演算装置30とを含む。本実施形態において、演算装置30は、転炉吹錬の操業を繰り返しながら当該吹錬に関する操業データを蓄積して統計モデルを構築し、統計モデルが利用可能になった後は統計モデルを用いて操業時に溶鋼中りん濃度を推定し、さらに必要に応じて操業終了後に得られた操業データを用いて統計モデルを更新する。以下、各部についてさらに説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る演算装置を含む精錬設備の概略的な構成を示す図である。図示された例において、精錬設備1は、転炉設備10と、計測制御装置20と、演算装置30とを含む。本実施形態において、演算装置30は、転炉吹錬の操業を繰り返しながら当該吹錬に関する操業データを蓄積して統計モデルを構築し、統計モデルが利用可能になった後は統計モデルを用いて操業時に溶鋼中りん濃度を推定し、さらに必要に応じて操業終了後に得られた操業データを用いて統計モデルを更新する。以下、各部についてさらに説明する。
転炉設備10は、転炉11と、上吹きランス12と、煙道13と、羽口14と、投入装置15とを含む。転炉設備10では、転炉11の炉口から挿入された上吹きランス12が、転炉11内の溶銑111に酸素ガス121を供給する。脱炭処理では、溶銑111内の炭素が酸素ガス121と反応することによってCOガスまたはCO2ガスになり、これらのガスは煙道13を経由して排出される。脱炭処理を経た溶銑111は、溶鋼112として次工程に送られる。また、脱炭処理では、溶銑111内のりんおよびケイ素も酸素ガス121、またはスラグ113に含まれる副原料と反応し、スラグ113中に取り込まれて安定化する。一方、羽口14からは窒素ガスやアルゴンガスなどの底吹きガス141が吹き込まれて溶銑111を攪拌し、上記の反応を促進する。投入装置15は、スラグ113を構成する生石灰または石灰石、および溶銑111に酸素を供給するための鉄鉱石などの酸素含有副原料を含む副原料151を転炉11内に投入する。なお、副原料151が粉体である場合は、上吹きランス12を用いて酸素ガス121とともに吹き込むことも可能である。
計測制御装置20は、転炉設備10における精錬処理に関する各種の計測、および精錬処理の制御を実行する。具体的には、計測制御装置20は、計測系として、サブランス21と、排ガス分析計22と、排ガス流量計23とを含む。サブランス21は、上吹きランス12とともに転炉11の炉口から挿入され、先端に設けられた測定装置を脱炭処理中の所定のタイミングで溶鋼112に浸漬させることによって、炭素濃度を含む溶鋼112の成分濃度(溶鋼中の炭素濃度を溶鋼中炭素濃度と称する)、および溶鋼112の温度(溶鋼温度とも称する)などを測定する。このようなサブランス21を用いた測定を、以下の説明ではサブランス測定ともいう。排ガス分析計22は、煙道13を経由して排出されるガスの成分を分析する。具体的には、排ガス分析計22は、排ガスに含まれるCO、CO2およびO2の濃度(各成分の濃度を排ガス成分濃度と称する)を測定する。一方、排ガス流量計23は、煙道13を経由して排出されるガスの流量(排ガス流量と称する)を測定する。上記のサブランス測定の結果、および排ガス分析計22および排ガス流量計23の測定結果は、演算装置30に送信される。
一方、計測制御装置20は、制御系として、ランス駆動装置24と、酸素供給装置25と、底吹きガス供給装置26と、投入制御装置27とを含む。ランス駆動装置24は、上吹きランス12を上下方向に駆動する。これによって、上吹きランス12の高さ、すなわち転炉11内で酸素ガス121が供給される位置の溶銑111からの距離を調節することができる。酸素供給装置25は、上吹きランス12に酸素ガス121を供給する。吹込み酸素流量、すなわち供給される酸素ガス121の時間あたりの流量は調節可能である。底吹きガス供給装置26は、羽口14に底吹きガス141を供給する。供給される底吹きガス141の流量も調節可能である。投入制御装置27は、投入装置15による副原料151の投入を制御する。具体的には、投入制御装置27は、副原料151の投入のタイミングおよび投入量を制御する。上記のランス駆動装置24、酸素供給装置25、底吹きガス供給装置26、および投入制御装置27の動作は、演算装置30からの制御信号に従って制御可能であってもよい。スラグレベル計28は、転炉11内のスラグ113のレベルを、転炉11の炉口から非接触式で測定する。
演算装置30は、通信部31と、記憶部32と、演算部33と、入出力部34とを含む装置、例えばコンピュータによって実装される。通信部31は、計測制御装置20の各要素と有線または無線で通信する各種の通信装置であり、計測制御装置20において得られた測定結果を受信するとともに、計測制御装置20に制御信号を送信する。通信部31は、計測制御装置20とは異なる外部装置と通信可能であってもよい。
記憶部32は、各種のデータを格納することが可能なストレージである。記憶部32には、吹錬に関する操業データ321、事前分布母数データ322および鋼種分類別パラメータ323が格納される。図2に、操業データ321の例を示す。図示された例において、操業データ321は吹錬ごとに決められるチャージ番号(CHNO)をキーとして、当該吹錬に係る操業データを同一の行に格納していく。操業データ321の中には、サブランス測定や吹錬終了時の成分分析結果を格納する分析実績データ3211、鋼種分類を決める鋼種記号や転炉の炉号等のカテゴリデータ3212が含まれる。なお、図示された例のCHNO=00XXのレコードのように、溶鋼中りん濃度推定の対象になる新たな吹錬については当該吹錬に係り、すでに採取されたデータのみが格納され、その時点で未測定、もしくは分析結果未判明の分析実績データ3211は格納されていない。
一方、事前分布母数データ322および鋼種分類別パラメータ323は、上記のような吹錬単位で整理されたデータとは別に格納される。事前分布母数データ322は、上述した式(10)におけるγiなど、事前分布の母数の値を格納する。鋼種分類別パラメータ323は、統計モデル構築部334によって推定されたパラメータaiであり、鋼種分類などにより分類されたカテゴリcごとに格納される。
演算部33は、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)を含み、ROMまたは記憶部32に格納されるプログラムに従って各種の演算を実行する。演算部33は、プログラムに従って動作することによって、データ収集部331、データ前処理部332、鋼種分類決定部333、統計モデル構築部334、パラメータ選択部335および溶鋼中りん濃度推定部336として機能する。なお、演算部33は、PLC(Programmable Logic Controller)であってもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアにより実現してもよい。以下、演算部33によって実現される各部の機能についてさらに説明する。
データ収集部331は、記憶部32に格納される操業データ321を収集する。具体的には、例えば、吹錬開始前に判明する、鋼種分類を決める鋼種記号や炉号等のカテゴリデータ3212、溶銑の成分値および温度、吹錬終了時の目標成分値および温度は、吹錬開始前に外部装置(図1には示していない)に格納された転炉吹錬データベースから取得され、操業データ321の当該吹錬(CHNO)行の該当項目内に格納される。吹錬開始以降には、計測制御装置20に含まれる計測系の各種装置によって取得されたデータが操業データ321の当該吹錬(CHNO)行の該当項目内に格納される。操業データ321内の分析実績データ3211は、サブランス測定および吹錬終了後の成分分析の結果が判明後、外部装置に格納された転炉吹錬データベースから取得され、操業データ321の当該吹錬(CHNO)行の該当項目内に格納される。データ前処理部332は、上記の操業データ321の前処理を実施する。例えば、データ前処理部332は、吹錬処理の開始から終了までに定周期で取得されたデータを、平均計算したり、累積計算したり、様々な数値処理を行い、操業データ321の当該吹錬(CHNO)行の該当項目として格納する。また、データ前処理部332は、後述するようなデータの正規化の処理を実行してもよい。なお、以下の説明では、データ前処理部332による前処理を経たデータについても操業データ321として扱うが、記憶部32では前処理されていないこれらのデータと前処理を経たデータとが別に格納されていてもよい。
鋼種分類決定部333は、当該吹錬における鋼種分類(上述したカテゴリc)を決定する。具体的には、例えば、鋼種分類決定部333は、カテゴリデータ3212に鋼種記号として記録された文字列を所定のルールに従って鋼種分類に変換し、当該吹錬(CHNO)行の操業データ321の該当列に格納する。ここで、鋼種記号と鋼種分類との対応付けは固定的でなくてもよく、例えば統計モデルが再構築されるときに鋼種分類への変換ルールが変更されてもよい(その場合は、過去の操業データ321の該当列の内容を更新する)。鋼種分類決定部333が鋼種分類を決定することによって、統計モデルの構築時には学習データに含まれる各吹錬をどの鋼種分類として用いるかが特定される。また、鋼種分類決定部333が鋼種分類を決定することによって、溶鋼中りん濃度の推定時には鋼種分類別パラメータ323からどのパラメータを選択するかが特定される。
統計モデル構築部334は、記憶部32に格納された学習データに基づいて統計モデルを構築する。なお、別途言及されない限り、用いられる学習データはデータ前処理部332による前処理を経た過去の蓄積された操業データ321である。統計モデル構築部334は、学習データに含まれる吹錬処理前りん濃度([P]ini)および学習データに含まれる分析実績データ3211の吹錬終了後のりん濃度([P]end)から式(3)に従い脱りん速度定数kPを算出し、さらに学習データに含まれる項目から説明変数Xiを抽出する。さらに、統計モデル構築部334は、例えば後述するような手順で統計モデルのパラメータを推定する。すなわち、本実施形態において統計モデル構築部334は、操業データ321から抽出されたデータを説明変数とし、脱りん速度定数を目的変数とする統計モデルのパラメータを推定する統計モデル構築部である。統計モデル構築部334は、操業データ321に含まれる少なくとも1つのカテゴリデータ3212、具体的には鋼種分類を用いて、カテゴリごとに統計モデルのパラメータを推定する。
ここで、統計モデル構築部334は、記憶部32に格納された事前分布母数データ322に従って未知の変数の事前分布を設定する。推定された鋼種分類ごとのパラメータaiは、鋼種分類別パラメータ323として記憶部32に格納される。なお、本実施形態では、σiにのみ有情報事前分布を設定する例を示しているが、これに限定されず、事前分布を設定可能な情報が事前にある場合は、他の未知の変数に有情報事前分布を設定してもよい。
パラメータ選択部335は、新たな吹錬において溶鋼中りん濃度を推定するときに、新たな吹錬におけるカテゴリデータ3212の鋼種記号から鋼種分類決定部333が決定した鋼種分類に基づいて、記憶部32に格納された鋼種分類別パラメータ323から溶鋼中りん濃度の推定に使用するパラメータaiを選択する。
溶鋼中りん濃度推定部336は、パラメータ選択部335によって選択されたパラメータai、および溶鋼中りん濃度推定の対象になる新たな吹錬の操業データ321から抽出された説明変数Xiを統計モデル、具体的には式(4)の重回帰式に代入することによって、脱りん速度定数kPの推定値を算出する。さらに、溶鋼中りん濃度推定部336は、新たな吹錬の操業データ321に含まれる溶銑111の吹錬処理前りん濃度、および推定された脱りん速度定数kPに基づいて、吹錬処理中の任意の時点の溶鋼中りん濃度を推定する。例えば、説明変数Xiがサブランス測定によって取得されるデータを含む場合、溶鋼中りん濃度推定部336はサブランス測定以降にりん濃度の推定を開始し、吹止め時までの間に所定の周期で溶鋼中りん濃度を推定してもよい。
入出力部34は、例えばディスプレイまたはプリンタなどの出力装置と、キーボード、マウス、またはタッチパネルなどの入力装置とを含む。出力装置は、例えば溶鋼中りん濃度推定部336によって算出された、吹錬処理中の任意の時点における溶鋼中りん濃度の推定値を出力する。入力装置は、例えば演算部33において実行される溶鋼中りん濃度推定の処理の設定を変更する操作入力を取得してもよいし、記憶部32に格納されるデータを追加または修正するための操作入力を取得してもよい。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る溶鋼中りん濃度推定方法の工程を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートでは、統計モデルを構築する処理と、構築された統計モデルを用いて溶鋼中りん濃度を推定する処理を、一連の処理として説明するが、これに限定されず、別々のタイミングで実行してもよい。例えば、統計モデルを構築する処理に関わる後述のステップS101、S105~S108の処理と、溶鋼中りん濃度を推定する処理に関わる後述のステップS102~S104は、別々のタイミングで実行されてもよい。
本フローチャートの処理が開始されると、まず、当該吹錬に関するデータをデータ収集部331が取得し、操業データ321として格納する(ステップS101)。具体的には、例えば吹錬開始前には鋼種分類を決める鋼種記号や炉号等のカテゴリデータ3212、溶銑の成分値および温度、吹錬終了時の目標成分値および温度などを、吹錬中には吹込み酸素流量実績、排ガス成分濃度および排ガス流量などを取得する。これらのデータの取得時に、データ前処理部332はデータの前処理を実施する。本実施形態では、統計モデルの説明変数Xiのデータが揃った時点で、統計モデルを用いた脱りん速度定数kPおよび溶鋼中りん濃度の推定が可能になる。既に統計モデルが構築されて利用可能である場合は(ステップS102のYES)、パラメータ選択部335が操業データ321に含まれるカテゴリデータ3212(具体的には鋼種分類)に基づいて使用するパラメータaiを選択し(ステップS103)、溶鋼中りん濃度推定部336が推定対象の当該吹錬について溶鋼中りん濃度を推定する(ステップS104)。なお、溶鋼中りん濃度の推定結果は、例えば入出力部34に含まれるディスプレイやプリンタを介して出力されてもよい。また、溶鋼中りん濃度推定部336は、例えば統計モデルの説明変数Xiのデータが揃った後の所定のタイミングで1回だけ溶鋼中りん濃度を推定してもよいし、所定の周期で溶鋼中りん濃度の推定を繰り返してもよい。一方、統計モデルが利用可能ではない場合は(ステップS102のNO)、上記のような溶鋼中りん濃度の推定は実施されない。
吹錬終了後、データ収集部331が分析実績データ3211を取得する(ステップS105)。例えば、まだ統計モデルが構築されていないが、既に十分な数の過去の操業データ321が記憶部32に蓄積されている場合(ステップS102でNO、ステップS106でYES)、統計モデル構築のための処理が実行される。この場合、統計モデル構築部334は、蓄積された過去の操業データ321に基づいて後述するような手順で統計モデルを構築し(ステップS107)、推定された鋼種分類ごとのパラメータaiを鋼種分類別パラメータ323として記憶部32に格納する(ステップS108)。
一方、まだ統計モデルが構築されておらず、十分な数の過去の操業データ321も記憶部32に蓄積されていない場合は(ステップS102でNO、ステップS106でもNO)、統計モデル構築のための処理が実行されず、操業データ321の蓄積のみが実行される。また、統計モデルが構築されて利用可能になった後は、溶鋼中りん濃度を推定して吹錬を実施することが可能になるため、統計モデル構築のための処理は実行されなくてもよい(ステップS102でYES、ステップS106でNO)。また、例えば、溶鋼中りん濃度を推定して実施される吹錬が所定の回数繰り返されるなどの所定の条件が満たされた場合(ステップS102でYES、ステップS106でもYES)、新たな吹錬の操業データ321を、過去の操業データ321とともに、または過去の操業データ321に代えて、統計モデルを構築し(ステップS107)、鋼種分類別パラメータ323を更新してもよい(ステップS108)。
図4は、図3に示された例における統計モデル構築の手順を示すフローチャートである。図示された処理は、図3のフローチャートではステップS107に相当し、統計モデル構築部334によって実行される。この処理では、まず、蓄積された操業データ321から、吹錬処理前りん濃度([P]ini)、吹錬終了後のりん濃度([P]end)および吹錬開始から吹錬終了までの間に送酸していた時間(tend)を抽出し、上記の式(3)を用いて脱りん速度定数kPの実績値を算出する(ステップS201)。次に、蓄積された操業データ321を任意の割合でモデル構築用の学習データと評価データとに分割し(ステップS202)、必要に応じて前処理部332における前処理を実行した上で、上記の式(7)に示した統計モデルの説明変数Xiを決定する(ステップS203)。操業データ321から抽出される項目から何を説明変数Xiとして選定するかは、例えばLassoを用いて決定することができる。この場合、Lassoの係数は、上述したγiの値の決定に使用する標準値a ̄iの参考値として利用することができる。さらに、式(9)および式(10)に示された事前分布を設定する(ステップS204)。なお、ステップS202~S204は順不同で、または並行して実行されてもよい。
上記の設定ができた段階で、階層ベイズモデルの最適化を実行する(ステップS205)。具体的には、式(5)の事後分布P(θ|D)に従う乱数を生成させるアルゴリズム(例えばマルコフ連鎖モンテカルロ法)によって、式(6)~式(10)における未知の変数の同時事後分布の近似計算を実行する。未知の変数σY
2、a ̄i、δci、σi
2は、例えば最大事後確率(MAP)推定を用いて点推定される。階層ベイズモデルが最適化されると、点推定された未知の変数a ̄i、δciを用いて算出された鋼種分類ごとのパラメータaiは、図3にステップS108として示されたように鋼種分類別パラメータ323として記憶部32に格納される。
(炉号を追加考慮する例)
上記の鋼種分類の例と同様に、複数の転炉で吹錬が実施される場合は、式(11)として示すように鋼種分類のカテゴリcごと、かつ転炉のカテゴリ(炉号)rごとのパラメータai(c=1,2,・・・,C,r=1,2,・・・,R)を用いて統計モデルを構築してもよい。なお、炉号は吹錬に使用されたそれぞれの転炉を識別するための番号などの名称を意味する。この場合、式(11)に示すようにパラメータaiを炉号r、鋼種分類cによらない標準値a ̄iと、標準値a ̄iからのずれに相当する炉号rごとの差分値δriと、標準値a ̄iからのずれに相当する鋼種分類cごとの差分値δciとの合計として推定する。ここで、drは今回計算に用いるデータセットが炉号rであるときに1、それ以外の時に0をとる変数、dcは今回計算に用いるデータセットが鋼種分類cであるときに1、それ以外の時に0をとる変数である。
上記の鋼種分類の例と同様に、複数の転炉で吹錬が実施される場合は、式(11)として示すように鋼種分類のカテゴリcごと、かつ転炉のカテゴリ(炉号)rごとのパラメータai(c=1,2,・・・,C,r=1,2,・・・,R)を用いて統計モデルを構築してもよい。なお、炉号は吹錬に使用されたそれぞれの転炉を識別するための番号などの名称を意味する。この場合、式(11)に示すようにパラメータaiを炉号r、鋼種分類cによらない標準値a ̄iと、標準値a ̄iからのずれに相当する炉号rごとの差分値δriと、標準値a ̄iからのずれに相当する鋼種分類cごとの差分値δciとの合計として推定する。ここで、drは今回計算に用いるデータセットが炉号rであるときに1、それ以外の時に0をとる変数、dcは今回計算に用いるデータセットが鋼種分類cであるときに1、それ以外の時に0をとる変数である。
式(11)における未知の変数a ̄i、δci、δriには事前知識に基づく事前分布、無情報事前分布または弱情報事前分布を設定することができる。式(12)に示すように差分値δciについては、平均0、分散σi1
2の正規分布を事前分布として設定してもよい。さらに、式(13)に示すように差分値δriについても平均0、分散σi2
2の正規分布を事前分布として設定してもよい。これによって、統計モデルに鋼種分類ごとの脱りんのしやすさの違いや炉ごとの経年劣化や補修状態の違いを反映させて推定の精度を向上させつつ、パラメータaiの値を全体のデータからみて妥当な範囲に収め、鋼種分類ごと、炉号ごとの学習データ数が不足していても推定結果の妥当性を維持することができる。この場合も、未知の変数の同時事後分布に従う乱数を、マルコフ連鎖モンテカルロ法と呼ばれる乱数生成手法を用いて生成することにより、未知の変数を分布として推定することができる。未知の変数の点推定には、例えば一般的な最大事後確率(MAP)推定を用いることができる。
上記では、操業データに含まれる少なくとも1つのカテゴリとして、吹錬処理によって製造される鋼種分類ごと、または鋼種分類および転炉の炉号ごとに統計モデルのパラメータを推定する例について説明したが、鋼種分類に代えて炉号(炉号のみ)ごとに統計モデルのパラメータを推定してもよい。また、鋼種分類、炉号以外のカテゴリごとに統計モデルのパラメータが推定されてもよい。
(データの正規化処理の例)
通常、モデル構築用の学習データに対して、使用する説明変数のスケールを合わせることを目的に、平均0、分散1の正規化(標準化)処理を実施している。標準化後のデータは、処理対象のデータが正規分布に従う場合、[-1,1]の範囲に68%程度、[-3,3]の範囲には99.7%程度のデータが含まれるようになる。しかしながら、例えば使用頻度が低い副原料の投入量のような説明変数の場合、ほとんどの吹錬では当該副原料が投入されず値が0であるのに対して、当該副原料が投入された少数の吹錬では値が0ではなくなる。このような正規分布に従わない分布の説明変数では、標準化後の値が過大になり、他の説明変数との間でスケールが合わせられない場合がある。
通常、モデル構築用の学習データに対して、使用する説明変数のスケールを合わせることを目的に、平均0、分散1の正規化(標準化)処理を実施している。標準化後のデータは、処理対象のデータが正規分布に従う場合、[-1,1]の範囲に68%程度、[-3,3]の範囲には99.7%程度のデータが含まれるようになる。しかしながら、例えば使用頻度が低い副原料の投入量のような説明変数の場合、ほとんどの吹錬では当該副原料が投入されず値が0であるのに対して、当該副原料が投入された少数の吹錬では値が0ではなくなる。このような正規分布に従わない分布の説明変数では、標準化後の値が過大になり、他の説明変数との間でスケールが合わせられない場合がある。
そこで、例えば副原料投入量の説明変数については、例えば以下で説明するような方法で正規化を実施してもよい。以下の式(14)に示される第1の例では、元の値xと最小値min(=0)との差分を、0以外の値の平均値μ’と最小値minとの差分で割って2倍したものから1を引くことによって大部分が[-1,1]の範囲に分布する正規化後の値x’を得る。
あるいは、以下の式(15)に示される第2の例の方法で正規化を実施してもよい。この例において、dは元の値xが0の場合は0、0以外の場合は1になるダミー変数であり、σ’は0以外の値の標準偏差である。この場合も、大部分が[-1,1]の範囲に分布する正規化後の値x’を得ることができる。
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る演算装置を含む精錬設備の概略的な構成を示す図である。図示された例において、精錬設備2は、転炉設備10と、計測制御装置20と、演算装置40とを含む。上記の第1の実施形態との違いとして、演算装置40の演算部43はデータ収集部331、データ前処理部332、鋼種分類決定部333および統計モデル構築部334を含み、パラメータ選択部および溶鋼中りん濃度推定部を含まない。統計モデル構築部334によって決定された統計モデルのパラメータは、入出力部34に含まれるドライバを用いてリムーバブル記録媒体に書き込まれるか、または通信部31を介して外部装置に送信される。外部装置で受信された、またはリムーバブル記録媒体から読み出された統計モデルのパラメータは、上記の第1の実施形態で説明したような溶鋼中りん濃度の推定に利用される。このように、本発明の実施形態に係る演算装置では統計モデルの構築によるパラメータの推定が実行されればよく、推定されたパラメータを用いた溶鋼中りん濃度の推定は必ずしも同じ演算装置によって実行されなくてもよい。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る演算装置を含む精錬設備の概略的な構成を示す図である。図示された例において、精錬設備2は、転炉設備10と、計測制御装置20と、演算装置40とを含む。上記の第1の実施形態との違いとして、演算装置40の演算部43はデータ収集部331、データ前処理部332、鋼種分類決定部333および統計モデル構築部334を含み、パラメータ選択部および溶鋼中りん濃度推定部を含まない。統計モデル構築部334によって決定された統計モデルのパラメータは、入出力部34に含まれるドライバを用いてリムーバブル記録媒体に書き込まれるか、または通信部31を介して外部装置に送信される。外部装置で受信された、またはリムーバブル記録媒体から読み出された統計モデルのパラメータは、上記の第1の実施形態で説明したような溶鋼中りん濃度の推定に利用される。このように、本発明の実施形態に係る演算装置では統計モデルの構築によるパラメータの推定が実行されればよく、推定されたパラメータを用いた溶鋼中りん濃度の推定は必ずしも同じ演算装置によって実行されなくてもよい。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る統計モデル構築方法の工程を概略的に示すフローチャートである。なお、上記で図3を参照して説明した第1の実施形態と同様のステップについては同じ符号を付している。まず、当該吹錬に関するデータをデータ収集部331が取得し、操業データ321として格納する(ステップS101)。具体的には、例えば吹錬開始前には鋼種分類を決める鋼種記号や炉号等のカテゴリデータ3212、溶銑の成分値および温度、吹錬終了時の目標成分値および温度などを、吹錬中には吹込み酸素流量実績、排ガス成分濃度および排ガス流量などを取得する。これらのデータの取得時に、データ前処理部332はデータの前処理を実施する。吹錬終了後、データ収集部331が分析実績データ3211を取得する(ステップS105)。例えば十分な数の操業データ321が蓄積された場合(ステップS106でYES)、統計モデル構築のための処理が実行される。この場合、統計モデル構築部334は、取得された操業データ321に基づいて第1の実施形態で説明したのと同様の手順で統計モデルを構築し(ステップS107)、決定された鋼種分類ごとのパラメータai(鋼種分類別パラメータ323)を入出力部34を介して出力する(ステップS308)。
一方、十分な数の操業データ321が蓄積されていない場合、および一度統計モデルが構築された後、さらに所定の数の操業データ321が収集されるまでの間は(ステップS106でNO)、統計モデル構築のための処理が実行されず、操業データ321の蓄積のみが実行される。例えば、統計モデルの構築後に吹錬が所定の回数繰り返されるなどの所定の条件が満たされた場合(ステップS106でもYES)、新たな吹錬の操業データ321を、過去の操業データ321とともに、または過去の操業データ321に代えて、統計モデルを構築し(ステップS107)、更新された鋼種分類別パラメータ323を出力してもよい(ステップS308)。
(第3の実施形態)
上述したような第1および第2の実施形態では、鋼種分類、使用する転炉などにより分類するカテゴリをより細分化する(以下では細分化されたカテゴリを「区分」と称する)ことで、それぞれの内で目標温度や目標炭素濃度などのばらつきを低減することができる。このようなばらつきの低減は推定精度の改善に寄与するが、その一方でカテゴリを細分化すると推定する未知の変数が(説明変数×区分)の数だけ増大する。学習データ数が同じである場合、未知の変数が多いほど推定は安定しにくく、従って上記のようにカテゴリを細分化しても推定精度が改善しない可能性がある。そこで、本発明者らは、単純にカテゴリを細分化するといった方法以外の方法で推定精度を改善するために、以下のような検討を実施した。
上述したような第1および第2の実施形態では、鋼種分類、使用する転炉などにより分類するカテゴリをより細分化する(以下では細分化されたカテゴリを「区分」と称する)ことで、それぞれの内で目標温度や目標炭素濃度などのばらつきを低減することができる。このようなばらつきの低減は推定精度の改善に寄与するが、その一方でカテゴリを細分化すると推定する未知の変数が(説明変数×区分)の数だけ増大する。学習データ数が同じである場合、未知の変数が多いほど推定は安定しにくく、従って上記のようにカテゴリを細分化しても推定精度が改善しない可能性がある。そこで、本発明者らは、単純にカテゴリを細分化するといった方法以外の方法で推定精度を改善するために、以下のような検討を実施した。
まず、溶鋼などの精錬分野で広く知られた式として、以下で式(16)として示すHealyのりん分配式がある。なお、式(16)において、Lpはりん分配比、(%P)はスラグ中りん濃度、[P]は溶鋼中りん濃度、Tは温度、(%T.Fe),(%CaO)はスラグ中T.Fe,CaO濃度、a,b,c,dは定数である。
ここで、溶鋼中炭素濃度は、スラグ中T.Feや温度との相関があることが知られている。これに基づいて、本発明者らは、以下のi)~iii)を見出した。
i)温度や溶鋼中炭素濃度が異なれば、副原料であるCaOの投入量が同じであっても脱りん量、すなわちスラグへ分配されるりんの量が異なる
ii)投入されたCaOがスラグ中CaO濃度(%CaO)に反映されるには滓化(溶解)が必要だが、温度、溶鋼中炭素濃度によって滓化率が異なる
iii)i),ii)より、溶鋼中りん濃度推定モデルにおいては、温度(および溶鋼中炭素濃度)によって動的に説明変数の寄与度、すなわち統計モデルのパラメータaiが変化する
なお、CaOの投入量は、吹錬における脱りんのための操作量であり、溶鋼中りん濃度推定モデルの説明変数である。
i)温度や溶鋼中炭素濃度が異なれば、副原料であるCaOの投入量が同じであっても脱りん量、すなわちスラグへ分配されるりんの量が異なる
ii)投入されたCaOがスラグ中CaO濃度(%CaO)に反映されるには滓化(溶解)が必要だが、温度、溶鋼中炭素濃度によって滓化率が異なる
iii)i),ii)より、溶鋼中りん濃度推定モデルにおいては、温度(および溶鋼中炭素濃度)によって動的に説明変数の寄与度、すなわち統計モデルのパラメータaiが変化する
なお、CaOの投入量は、吹錬における脱りんのための操作量であり、溶鋼中りん濃度推定モデルの説明変数である。
以上のような検討から、本実施形態では、鋼種分類のような離散的に分類されるカテゴリ(質的データ、カテゴリデータとも称される)ごとに統計モデルのパラメータaiを求めるのではなく、目標温度のような連続値(量的データ)によって吹錬ごとに変化する統計モデルのパラメータaiを算出する。これによって、上述したようにカテゴリを細分化することによって推定精度を改善する効果を、未知の変数の数を増大させることなく実現できると考えられる。なお、ここで用いる量的データは、吹錬の一指標となる連続値であれば、目標温度以外のものであってもよく、用いる量的データによって統計モデルのパラメータaiが決定されるため、用いる量的データのことをパラメータ決定用データとする。
本実施形態では、第1の実施形態で説明された式(5)の尤度関数P(D|θ)を以下の式(6)および式(7)で表現する。式(6)および式(7)は、第1の実施形態で説明されたものと同様である。式(7)に示すように、平均値μは、吹錬に関する操業データである説明変数Xiと、説明変数Xiが脱りん反応速度定数kPへ与える影響度であるパラメータaiとの重回帰式で表現される。
さらに、本実施形態では、式(7)におけるパラメータaiが、式(17)に示されるようにすべての吹錬処理に共通の標準値a ̄i、パラメータ決定用データzj(j=1,・・・,Z)、およびパラメータ決定用データの影響係数bijの積の和で表現できると仮定する。ここで、Zは採用するパラメータ決定用データの数であり、パラメータ決定用データzjには予め正規化処理が実施されているものとする。このようなモデルを仮定すると、例えば目標温度のように吹錬ごとに異なる値を持つパラメータ決定用データにより、吹錬ごとに異なるパラメータaiを持つことになる。すなわち、未知の変数の数を増やすことなく第1および第2の実施形態で説明したカテゴリを無限に細分化した(吹錬ごとに異なるパラメータaiを用意する)ことになり、モデルの精度向上が期待できる。
式(18)に示すように、未知の変数のうち影響係数bijについては、事前分布として平均0、分散σij
2の正規分布を設定することができる。この場合、すべての吹錬においてパラメータaiは、標準値a ̄iを中心に、パラメータ決定用データにσij
2をかけた分布幅(本明細書では「第1の分布幅」ともいう。パラメータ決定用データが複数ある場合はその和)に従って分布させられる。σijに関する確定的な事前情報はないため、式(19)に示すように、推定対象の未知の変数としてさらに平均0、分散vij
2の正規分布を事前分布として仮定する。なお、式(19)において、N+は正規分布の正の部分のみの分布を意味する。
パラメータ決定用データzjの絶対値が小さい平均的な吹錬の場合、式(17)の右辺第2項の値が小さくなるため、パラメータaiは標準値a ̄iに近い値になる。一方、パラメータ決定用データzjの絶対値が大きい特異的な吹錬の場合、式(17)の右辺第2項が大きくなるため、パラメータaiはパラメータ決定用データzjの影響を大きく受けた値となる。
ここで、第1の実施形態で説明したように、吹錬ごとにパラメータaiの正負が異なることは不自然であるため、式(17)は右辺第1項の絶対値が第2項の絶対値よりも大きくなるように構成される。このような構成の第1の例として、パラメータ決定用データzjを予め所定の確率で-1以上1以下の範囲に納まるように正規化してもよい。正規化の例として、最大値が1、最小値が-1になるように数値変換してもよいし、一般的に「標準化」と呼ばれる、平均0、分散1になるように変換する手法で正規化してもよい。数値変換は、後述するデータ前処理部332によって実行される。第2の例として、影響係数bijの分散σij
2は、標準値a ̄iの絶対値に対して所定の割合Rijの範囲に所定の確率で存在するようにvijを設定してもよい。この場合、標準値a ̄iは、事前に一度推定した分布の代表値を使用するか、標準値a ̄iの参考値として事前に重回帰分析した際の係数を使用してもよい。ただし、パラメータ決定用データzjが複数ある場合、右辺第2項の合計の絶対値を右辺第1項の標準値a ̄iの絶対値よりも小さくするために、影響係数bijの分散σij
2は、標準値a ̄iの絶対値以下の値をパラメータ決定用データzjの数で割った分布幅に従って分布させてパラメータaiを推定する。具体的には、vijとして、標準値a ̄iの絶対値と所定の割合Rijの積をパラメータ決定用データの数で割った値(vij=Rij×|a ̄i|÷Z)を後述する事前分布母数データに格納する。
図7は、本発明の第3の実施形態に係る演算装置を含む精錬設備の概略的な構成を示す図である。図示された例において、精錬設備3は、転炉設備10と、計測制御装置20と、演算装置50とを含む。上記の第1の実施形態との違いとして、鋼種分類別パラメータに代えてパラメータ計算用データ526が、演算装置50の記憶部52に格納される。また、演算部53は、パラメータ計算部533を含み、鋼種分類決定部およびパラメータ選択部を含まない。
第1、2実施形態と同様に、事前分布母数データ322およびパラメータ計算用データ526は、操業データ321のような吹錬単位で整理されたデータとは別に格納される。事前分布母数データ322は、上述した式(19)におけるvijなど、事前分布の母数の値を格納する。パラメータ計算用データ526は、式(17)における標準値a ̄iおよび影響係数bijを含む。
統計モデル構築部534は、記憶部32に格納された学習データに基づいて統計モデルを構築する。なお、別途言及されない限り、用いられる学習データはデータ前処理部332による前処理を経た過去の蓄積された操業データ321である。統計モデル構築部534は、第1,2実施形態と同様に式(3)に従い脱りん速度定数kPを算出し、さらに学習データに含まれる項目から説明変数Xiを抽出する。さらに、統計モデル構築部534は、例えば後述するような手順で統計モデルのパラメータを推定する。すなわち、本実施形態において統計モデル構築部534は、操業データ321から抽出されたデータを説明変数とし、脱りん速度定数を目的変数とする統計モデルのパラメータを推定する統計モデル構築部である。統計モデル構築部534は、操業データ321に含まれる少なくとも1つの量的データをパラメータ決定用データとして、具体的には目標温度を用いて、吹錬ごとに統計モデルのパラメータを推定する。なお、パラメータ決定用データは、あらかじめモデル構築者が、操業データ321に含まれる少なくとも1つの量的データから決定しておく。
ここで、統計モデル構築部534は、第1,2実施形態と同様に、記憶部32に格納された事前分布母数データ322に従って未知の変数の事前分布を設定する。推定されたすべての吹錬処理に共通の標準値a ̄iおよびパラメータ決定用データの影響係数bijは、パラメータ計算用データ526として記憶部32に格納される。なお、本実施形態では、σijにのみ有情報事前分布を設定する例を示しているが、これに限定されず、事前分布を設定可能な情報が事前にある場合は、他の未知の変数に有情報事前分布を設定してもよい。
パラメータ計算部533は、新たな吹錬における、溶鋼中りん濃度を推定するのに必要な、パラメータaiを計算する。具体的には、パラメータ計算用データ526に含まれる標準値a ̄iと、影響係数bijと、新たな吹錬における操業データ321に含まれる正規化済みのパラメータ決定用データzjとの積の和(a ̄i+Σbij×zj)を計算することで、当該吹錬におけるパラメータaiを計算し、推定されたパラメータaiを溶鋼中りん濃度推定部336に入力する。
溶鋼中りん濃度推定部336は、パラメータ計算部533によって計算されたパラメータai、および溶鋼中りん濃度推定の対象になる新たな吹錬の操業データ321から抽出された説明変数Xiを統計モデル、具体的には式(4)の重回帰式に代入することによって、脱りん速度定数kPの推定値を算出する。さらに、溶鋼中りん濃度推定部336は、新たな吹錬の操業データ321に含まれる溶銑111の吹錬処理前りん濃度、および推定された脱りん速度定数kPに基づいて、吹錬処理中の任意の時点の溶鋼中りん濃度を推定する。
図8は、本発明の第3の実施形態に係る溶鋼中りん濃度推定方法の工程を概略的に示すフローチャートである。第1実施形態同様、本フローチャートでは、統計モデルを構築する処理と、構築された統計モデルを用いて溶鋼中りん濃度を推定する処理を、一連の処理として説明するが、これに限定されず、別々のタイミングで実行してもよい。例えば、統計モデルを構築する処理に関わる後述のステップS401、S405~S408の処理と、溶鋼中りん濃度を推定する処理に関わる後述のステップS402~S404は、別々のタイミングで実行されてもよい。
本フローチャートの処理が開始されると、まず、当該吹錬に関するデータをデータ収集部331が取得し、操業データ321として格納する(ステップS401)。本実施形態では、統計モデルの説明変数Xiのデータが揃った時点で、統計モデルを用いた脱りん速度定数kPおよび溶鋼中りん濃度の推定が可能になる。既に統計モデルが構築されて利用可能である場合は(ステップS402のYES)、パラメータ計算部533が、パラメータ計算用データ526に含まれる標準値a ̄iと、影響係数bijと、新たな吹錬における操業データ321に含まれる正規化済みのパラメータ決定用データzjとの積の和(a ̄i+Σbij×zj)を計算することで、当該吹錬におけるパラメータaiを算出し(ステップS403)、算出されたパラメータaiを用いて溶鋼中りん濃度推定部336が推定対象の当該吹錬について溶鋼中りん濃度を推定する(ステップS404)。なお、溶鋼中りん濃度の推定結果は、例えば入出力部34に含まれるディスプレイやプリンタを介して出力されてもよい。また、溶鋼中りん濃度推定部336は、例えば統計モデルの説明変数Xiのデータが揃った後の所定のタイミングで1回だけ溶鋼中りん濃度を推定してもよいし、所定の周期で溶鋼中りん濃度の推定を繰り返してもよい。一方、統計モデルが利用可能ではない場合は(ステップS402のNO)、上記のような溶鋼中りん濃度の推定は実施されない。
吹錬終了後、データ収集部331が分析実績データ3211を取得する(ステップS405)。例えば、まだ統計モデルが構築されていないが、既に十分な数の過去の操業データ321が記憶部32に蓄積されている場合(ステップS402でNO、ステップS406でYES)、統計モデル構築のための処理が実行される。この場合、統計モデル構築部534は、蓄積された過去の操業データ321、事前分布母数データ322に基づいて階層ベイズモデルを用いて統計モデルを構築して標準値a ̄iと影響係数bijを算出し(ステップS407)、パラメータ計算用データ526として記憶部32に格納する(ステップS408)。
一方、まだ統計モデルが構築されておらず、十分な数の過去の操業データ321も記憶部32に蓄積されていない場合は(ステップS402でNO、ステップS406でもNO)、統計モデル構築のための処理が実行されず、操業データ321の蓄積のみが実行される。また、統計モデルが構築されて利用可能になった後は、溶鋼中りん濃度を推定して吹錬を実施することが可能になるため、統計モデル構築のための処理は実行されなくてもよい(ステップS402でYES、ステップS406でNO)。または、例えば、溶鋼中りん濃度を推定して実施される吹錬が所定の回数繰り返されるなどの所定の条件が満たされた場合(ステップS402でYES、ステップS406でもYES)、新たな吹錬の操業データ321を、過去の操業データ321とともに、または過去の操業データ321に代えて、統計モデルを構築して標準値a ̄iや影響係数bijを算出し(ステップS407)、パラメータ計算用データ526を更新してもよい(ステップS408)。
上記で説明したような本発明の第3の実施形態によれば、例えば目標温度のような量的データであるパラメータ決定用データを用いて吹錬ごとに変化するパラメータaiを算出することによって、未知の変数の数を増大させずに、カテゴリごとの目標温度や目標炭素濃度のばらつきによる推定精度の低下を防止し、溶鋼中りん濃度の推定精度を向上させることができる。
なお、本実施形態でも、パラメータ決定用データzjとして、カテゴリデータを考慮することが可能である。パラメータ決定用データzjとして目標温度に加えて炉号を考慮する場合、転炉の数(R)より1少ない数のダミー変数を用意し、パラメータ決定用データzjとする。例えば転炉が2号ある場合には、1号炉であるときに1、2号炉であるときに0をとるダミー変数を1つ用意することで、炉号の違いによる影響をパラメータaiに反映させることが可能になる。
図9から図15は本発明の実施例および比較例であるCase0~Case6における吹錬終了時の溶鋼中りん濃度(終点[P])の予測値と実績値との関係を示す散布図であり、図16はこのうちCase1~Case6の二乗平均平方根誤差(RMSE)を示すグラフである。各実施例および比較例では、統計モデルの構築手法を変えた7つの例で脱りん速度定数kPから溶鋼中りん濃度を推定した例が示されている。2121吹錬分の操業データを学習データとして用い、911吹錬分を評価データとして用いた(従って、それぞれの散布図には911吹錬分のデータが示されている)。なお、図9から図15のグラフでは、溶鋼中りん濃度が正規化して示されている。
Case0は、鋼種分類に関わらずパラメータaiを共通にした統計モデルで脱りん速度定数kPを推定した比較例である。Case1は、鋼種分類ごとに学習データを分割し、鋼種分類ごとに独立に構築した統計モデルで脱りん速度定数kPを推定した比較例である。Case2~Case4は、階層ベイズモデルを用いて拡張された統計モデルで脱りん速度定数kPを推定した本発明の実施例である。Case2は、上記で第1の実施形態として説明したように、パラメータaiを標準値と鋼種分類ごとの差分値との合計として推定した例である(鋼種分類は6種類)。Case3は、パラメータaiを標準値と鋼種分類ごとの差分値と炉号ごとの差分値との合計として推定した例である(炉号は2個)。Case4は、さらに副原料投入量の説明変数について上記の式(15)に示す方法で正規化を実施した例である。Case5は、上記で第3の実施形態として説明したように、パラメータaiを標準値と、パラメータ決定用データとして採用した目標温度と影響係数との積の和で表現できるものとして推定した例である。Case6は、第3の実施形態においてパラメータ決定用データとして炉号を追加考慮した例である。
図9に示されたCase0(鋼種分類に関わらず共通のパラメータの統計モデル)のグラフと図10に示されたCase1(鋼種分類ごとに分割された統計モデル)のグラフとを比較すると、Case1のグラフの方が明らかに終点[P]の予測値と実績値との乖離が小さく、推定の精度が向上している。さらに、図16のグラフに示されるように、統計モデルを鋼種分類ごとに分割するのではなく、階層ベイズモデルを用いて拡張した統計モデルを用いるCase2ではRMSEが有意に小さくなってさらなる精度の向上が示され、追加の構成を取り入れたCase3およびCase4ではRMSEがさらに小さくなる。比較例のCase0に対して、実施例のCase4ではRMSEが7.6×10-4%改善した。この結果から、本発明の実施形態として、階層ベイズモデルを用いて統計モデルを拡張することによって、他の手法を用いた場合に比べて推定精度が向上することがわかる。また、炉号を追加した構成や、説明変数の正規化手法を変更した構成も、推定精度の向上に有効であることがわかる。さらに、パラメータaiをパラメータ決定用データと影響係数との積の和で表現できるものとして推定したCase5およびCase6ではRMSEがさらに小さくなっており、量的データであるパラメータ決定用データによって吹錬ごと変化するパラメータを推定する手法が推定精度の向上に有効であることがわかる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1,2,3…精錬設備、10…転炉設備、11…転炉、111…溶銑、112…溶鋼、113…スラグ、12…上吹きランス、121…酸素ガス、13…煙道、14…羽口、141…底吹きガス、15…投入装置、151…副原料、20…計測制御装置、21…サブランス、22…排ガス分析計、23…排ガス流量計、24…ランス駆動装置、25…酸素供給装置、26…底吹きガス供給装置、27…投入制御装置、28…スラグレベル計、30,40…演算装置、31…通信部、32,52…記憶部、33,43,53…演算部、34…入出力部、321…操業データ、322…事前分布母数データ、323…鋼種分類別パラメータ、3211…分析実績データ、3212…カテゴリデータ、526…パラメータ計算用データ、331…データ収集部、332…データ前処理部、333…鋼種分類決定部、533…パラメータ計算部、334,534…統計モデル構築部、335…パラメータ選択部、336…溶鋼中りん濃度推定部。
Claims (18)
- 過去の操業における、吹錬ごとに得られる当該吹錬に関する操業データを収集するデータ収集部と、
前記操業データから抽出されたデータを説明変数とし、前記操業データに含まれる溶鋼中りん濃度の実績値から計算される脱りん速度定数を目的変数とする、統計モデルのパラメータを推定する統計モデル構築部と
を備え、
前記統計モデル構築部は、前記操業データに含まれる少なくとも1つのカテゴリによって吹錬を分類し、前記カテゴリごとの前記統計モデルのパラメータがとりうる値の確率をすべてのカテゴリの間で共有して、前記カテゴリごとに前記統計モデルのパラメータを推定する演算装置。 - 前記少なくとも1つのカテゴリは、前記吹錬処理後の溶鋼を分類する鋼種分類を含む、請求項1に記載の演算装置。
- 前記少なくとも1つのカテゴリは、前記吹錬処理を行う転炉の炉号を含む、請求項1又は2に記載の演算装置。
- 前記統計モデル構築部は、前記カテゴリごとの前記統計モデルのパラメータがとりうる値の確率を、すべてのカテゴリに共通の標準値を中心に、第1の分布幅に従って分布させて前記パラメータを推定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の演算装置。
- 前記統計モデル構築部は、前記第1の分布幅がとりうる値の確率を、前記標準値の絶対値以下の分布幅に従って分布させて前記パラメータを推定する、請求項4に記載の演算装置。
- 前記操業データに含まれる副原料投入量について、0以外の値の平均値を用いて正規化するデータ前処理部をさらに備える、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の演算装置。
- 前記データ収集部は、新たな吹錬における前記操業データを収集し、
前記新たな吹錬における前記カテゴリに基づいて前記統計モデル構築部が推定した前記パラメータの中から使用するパラメータを選択するパラメータ選択部と、
前記選択されたパラメータ、前記新たな吹錬における前記操業データを前記統計モデルに代入して推定される前記脱りん速度定数に基づいて前記吹錬処理中の溶鋼中りん濃度を推定する溶鋼中りん濃度推定部と
をさらに備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の演算装置。 - 過去の操業における、吹錬ごとに得られる当該吹錬に関する操業データを収集するステップと、
前記操業データから抽出されたデータを説明変数とし、前記操業データに含まれる溶鋼中りん濃度の実績値から計算される脱りん速度定数を目的変数とする、統計モデルのパラメータを推定するステップと
を含み、
前記パラメータを推定するステップは、前記操業データに含まれる少なくとも1つのカテゴリによって吹錬を分類し、前記カテゴリごとの前記統計モデルのパラメータがとりうる値の確率をすべてのカテゴリの間で共有して、前記カテゴリごとに前記統計モデルのパラメータを推定する推定方法。 - 過去の操業における、吹錬ごとに得られる当該吹錬に関する操業データを収集するデータ収集部と、
前記操業データから抽出されたデータを説明変数とし、前記操業データに含まれる溶鋼中りん濃度の実績値から計算される脱りん速度定数を目的変数とする、統計モデルのパラメータを推定する統計モデル構築部と
を備え、
前記統計モデル構築部は、前記操業データに含まれる少なくとも1つのカテゴリによって吹錬を分類し、前記カテゴリごとの前記統計モデルのパラメータがとりうる値の確率をすべてのカテゴリの間で共有して、前記カテゴリごとに前記統計モデルのパラメータを推定する演算装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。 - 過去の操業における、吹錬ごとに得られる当該吹錬に関する操業データを収集するデータ収集部と、
前記操業データから抽出されたデータを説明変数とし、前記操業データに含まれる溶鋼中りん濃度の実績値から計算される脱りん速度定数を目的変数とする、統計モデルのパラメータを推定する統計モデル構築部と
を備え、
前記統計モデル構築部は、前記操業データに含まれる少なくとも1つの量的データをパラメータ決定用データとして、前記吹錬ごとの前記統計モデルのパラメータがとりうる値の確率を、前記パラメータ決定用データを用いて全ての吹錬で共通して定義して、前記吹錬ごとの前記統計モデルのパラメータを推定する演算装置。 - 前記パラメータ決定用データは、前記吹錬における吹止め目標温度を含む、請求項10に記載の演算装置。
- 前記パラメータ決定用データは、前記吹錬処理を行う転炉の炉号をさらに含む、請求項11に記載の演算装置。
- 前記パラメータ決定用データに含まれる量的データを、予め所定の確率で-1以上1以下の範囲に納まるように数値変換するデータ前処理部をさらに備える、請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の演算装置。
- 前記統計モデル構築部は、前記吹錬ごとの前記統計モデルのパラメータがとりうる値の確率を、すべての吹錬に共通の標準値を中心に、前記パラメータ決定用データとその影響度に従って決定される分布幅に従って分布させて前記パラメータを推定し、前記標準値と前記影響度の値を決定する、請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の演算装置。
- 前記統計モデル構築部は、前記影響度の分布幅がとりうる値の確率を、前記標準値の絶対値以下の値を前記パラメータ決定用データの数で割った分布幅に従って分布させて前記パラメータを推定し、前記影響度の値を決定する、請求項14に記載の演算装置。
- 前記データ収集部は、新たな吹錬における前記操業データを収集し、
前記新たな吹錬における前記パラメータ決定用データに基づいて、前記統計モデル構築部が決定した前記標準値と前記影響度を用いて、前記統計モデルで使用するパラメータを計算するパラメータ計算部と、
前記計算されたパラメータ、前記新たな吹錬における前記操業データを前記統計モデルに代入して推定される前記脱りん速度定数に基づいて前記吹錬処理中の溶鋼中りん濃度を推定する溶鋼中りん濃度推定部と
をさらに備える、請求項14または請求項15に記載の演算装置。 - 過去の操業における、吹錬ごとに得られる当該吹錬に関する操業データを収集するステップと、
前記操業データから抽出されたデータを説明変数とし、前記操業データに含まれる溶鋼中りん濃度の実績値から計算される脱りん速度定数を目的変数とする、統計モデルのパラメータを推定するステップと
を含み、
前記パラメータを推定するステップは、前記操業データに含まれる少なくとも1つの量的データをパラメータ決定用データとして、前記吹錬ごとの前記統計モデルのパラメータがとりうる値の確率を、前記パラメータ決定用データを用いて全ての吹錬で共通して定義して、前記吹錬ごとの前記統計モデルのパラメータを推定するパラメータ推定方法。 - 過去の操業における、吹錬ごとに得られる当該吹錬に関する操業データを収集するデータ収集部と、
前記操業データから抽出されたデータを説明変数とし、前記操業データに含まれる溶鋼中りん濃度の実績値から計算される脱りん速度定数を目的変数とする、統計モデルのパラメータを推定する統計モデル構築部と
を備え、
前記統計モデル構築部は、前記操業データに含まれる少なくとも1つの量的データをパラメータ決定用データとして、前記吹錬ごとの前記統計モデルのパラメータがとりうる値の確率を、前記パラメータ決定用データを用いて全ての吹錬で共通して定義して、前記吹錬ごとの前記統計モデルのパラメータを推定する演算装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
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