JP2022161884A - 自動分析装置の測定値の正確性を向上させる方法 - Google Patents

自動分析装置の測定値の正確性を向上させる方法 Download PDF

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Abstract

【課題】自動分析装置を用いた被検物質の測定値の正確性を向上させる方法の提供。【解決手段】自動分析装置を用いて検体中の被検物質を測定する際に、試薬と検体の混合物中にエチレングリコールを共存させることを含む、測定値の正確性を向上させる方法。【選択図】なし

Description

本発明は、自動分析装置で検体を検査する際における、測定値の正確性を向上させる方法に関する。
従来、自動分析装置としては、例えば、血清等のサンプルに所望の試薬を混合して反応させた反応液を分析対象とし、その吸光度を測定することで分析を行う装置が知られている。この種の分析装置は、サンプル及び試薬を反応容器に注入する機構と、反応容器内のサンプル及び試薬を撹拌する機構と、反応中又は反応が終了したサンプルの物性を分析する機構等を備えて構成されている。
自動分析装置において酵素を含有する生化学検査試薬を使用することにより発生する測定誤差を低減するために非イオン性界面活性剤を用いることが報告されていた(特許文献1を参照)。
特開2019-117196号公報
本発明の目的は、自動分析装置を用いた被検物質の測定値の正確性を向上させる方法を提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、試薬にエチレングリコール等を入れることで測定値の誤差を防ぐことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 自動分析装置を用いて検体中の被検物質を測定する際に、試薬と検体の混合物中にエチレングリコールを共存させることを含む、測定値の正確性を向上させる方法。
[2] 前記エチレングリコールを、前記試薬に添加し、該試薬と前記検体を混合する、[1]の方法。
[3] 前記試薬が、第1試薬及び第2試薬から構成される、[1]又は[2]の方法。
[4] 自動分析装置を用いて行う測定が免疫比濁法である、[1]~[3]のいずれかの方法。
[5] 前記エチレングリコールが、前記第1試薬に含有される、[3]又は[4]の方法。
[6] 反応時のエチレングリコール濃度が0.0001重量%~1重量%である、[1]~[5]のいずれかの方法。
[7] 反応時のエチレングリコール濃度が0.06重量%~0.29重量%である、[1]~[5]のいずれかの方法。
本発明の方法により自動分析装置の測定値の正確性を向上させる方法を提供することができる。
自動分析装置を用いた被検物質の測定において、エチレングリコールを存在させた場合の効果を示す図である。図1Aは、エチレングリコールを入れたときの結果であり、図1B~Dは比較例の結果を示す。 自動分析装置を用いた被検物質の測定において、エチレングリコールを存在させた場合の、キャリブレーションに対するリカバリーの結果を示す図である。図2Aは、0~128unitの被検物質を含む標準試料を用いて測定した場合の測定値(吸光度)を示し、図2Bはキャリブレーションに対するリカバリー値を示す。 自動分析装置を用いた被検物質の測定において、エチレングリコール濃度の効果に対する影響を示す図である。
以下、本発明の方法について説明する。なお、本明細書中の「%」は特に断りがない限り重量基準(重量%)を意味する。
本発明は、自動分析装置を用いて行う生体試料等の検体である被検試料中の被検物質の測定法を行う測定法において、測定値の誤差を防ぎ、測定値の正確性を向上させる方法である。
本発明は、自動分析装置による全ての検査に適用可能である。自動分析装置を用いて行う生体試料等の被検試料中の被検物質の測定は、生化学検査も免疫学的検査も含む。生化学検査は、タンパク質、糖質、脂質、電解質、酵素などの化学物質を抗原抗体反応を利用しないで測定する検査をいい、免疫学的検査は、腫瘍マーカー、ウイルスなどの抗原や抗体を測定する検査や抗原抗体反応を利用して血中ホルモンを測定する内分泌検査等を含む。これらのうちでも、免疫学的測定法、特に体液中の病原体や、病原体に対する抗体の検査に好適に利用可能である。
本発明の方法に供される被検試料としては、特に限定されないが、例えば、全血、血清、血漿、尿、唾液等の体液が挙げられる。
被検物質は限定されず、生体試料中に含まれるあらゆる物質が対象となる。例えば、臨床診断に用いられる血液中の生化学検査項目、腫瘍マーカーや肝炎のマーカー等各種疾患のマーカー等が挙げられ、タンパク質、糖、脂質、低分子化合物等が挙げられる。また、測定は物質の濃度だけでなく、酵素等の活性を有する物質の活性も対象となる。各分析対象成分の測定は、公知の方法で行うことができる。
免疫学的測定方法として、例えば、ラテックス凝集免疫比濁法に適用することができる。
免疫比濁法は、ラテックス粒子、ベントナイト、コロジオン、カオリン、固定羊赤血球等などの不溶性担体が利用される。不溶性担体としては、ラテックス粒子が好ましく、ラテックス粒子としては、例えば、ポリスチレンラテックス粒子、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス粒子、ポリビニルトルエンラテックス粒子等を使用することができる。免疫比濁法において、不溶性担体は測定対象が抗原である場合には抗体を感作、すなわち担体表面に抗体を結合させ、測定対象が抗体である場合には、抗原を感作すればよい。
自動分析装置は、免疫測定法に適用可能な生化学検査用自動分析装置であり、連続分注方式によりチューブを介して試薬を反応槽へ分注する機構を採用しているものである。すなわち、装置内又は装置外に試薬を設置する手段を備え、チューブを通って試薬が装置に備えられた反応槽内に連続的に分注される装置である。チューブを通しての試薬の分注は、例えばぺリスタポンプ等のポンプと切替弁との組み合わせにより行われる。このような装置として、市販のものが種々挙げられるが、例えば株式会社日立ハイテクの自動分析装置7180形、自動分析装置7250形、自動分析装置7450形、自動分析装置7350形等が挙げられる。
本発明の方法においては、自動分析装置を用いて被検試料を測定する際に測定系にエチレングリコール又はポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール(ブロックコポリマー)を存在させる。
本発明のエチレングリコールは、広く用いられる2価アルコールの一種である。分子式C2H6O2、構造式HO-CH2-CH2-OH、分子量62.07。IUPAC命名法ではエタン-1,2-ジオール、あるいは1,2-エタンジオールと表される。
ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール(ブロックコポリマー)は、構造式HO-(C2H4O)m-(C3H6O)n-(C2H4O)m-Hで表される。ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール(ブロックコポリマー)として、例えば、プロノン(登録商標)#102、#104、#201、#202B、#204、#208や、ユニルーブ(登録商標)70DP-600B、70DP-950B等(以上、日油株式会社)が挙げられる。
本発明で用いるエチレングリコール等を用いた自動分析装置用試薬の調製方法について、臨床検査の分野で汎用されるラテックス粒子を用いるラテックス凝集法の試薬を例として以下説明する。臨床検査の分野で汎用されるラテックス粒子を用いる試薬は、ラテックス粒子を含有しない試薬(第1試薬)及びラテックス粒子を含有する試薬(第2試薬)の二試薬系で構成されている場合が多い。そしてこの構成を採用する場合、第1試薬は、第2試薬が行う抗原抗体反応に好適な測定環境(例えば、目的成分の希釈や抗原エピトープの露出など)を準備する役割を担っている場合が多い。
本発明で用いるエチレングリコール等は、第1試薬あるいは第2試薬のいずれに添加してもよいが、上述の二試薬の構成の場合には、撹拌棒が最初に試薬に接触し撹拌する際には、持ち込み現象を防ぐことが望ましいので、少なくとも第1試薬に添加するのが好ましい。
第1試薬は、緩衝液を少なくとも含み、被検試料と先に混合される。緩衝液としては、pH5.0~10の適当な緩衝液、例えば、BES、MES、TES、HEPESなどのグッドバッファー、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリス緩衝液等が挙げられる。第1試薬は、他の安定化試薬、保護試薬等を含んでいてもよい。第2試薬は、緩衝液並びに感作粒子若しくは抗血清を少なくとも含む。第2試薬は、他の安定化試薬、保護試薬等を含んでいてもよい。被検試料と第1試薬を混合し、その混合液に第2試薬を添加すればよい。
本発明で用いるエチレングリコール等の濃度は、例えば、ラテックス免疫凝集反応時の終濃度で規定することができる。該濃度としては、0.0001重量%~1重量%が好適であり、好ましくは0.001重量%~0.5重量%、より好ましくは0.01重量%~0.3重量%、さらに好ましくは0.06重量%~0.29重量%、さらに好ましくは0.07重量%~0.25重量%、さらに好ましくは0.07重量%~0.20重量%、さらに好ましくは0.07重量%~0.2重量%、さらに好ましくは0.08重量%~0.15重量%、さらに好ましくは0.08重量%~0.12重量%、特に好ましくは0.09重量%~0.11重量%である。
例えば、検体4μL、第1試薬120μL、第2試薬40μLを用いる場合の第1試薬中のエチレングリコールの含有量は、0.00014~1.4重量%程度である。なお、これらの試薬の他に、希釈液を用いて被検試料を先ず希釈してもよい。
ラテックス凝集法は公知の方法で行うことができる。すなわち、反応液中の感作粒子の濃度は、特に限定されないが、通常、0.01~0.5重量%程度であり、反応は、通常、1℃~56℃、好ましくは37℃で1分間~10分間程度行われる。もっとも、反応条件はこれらに限定されるものではない。また、反応媒体としては、通常、各種緩衝液が用いられる。反応溶液の濁度又は吸光度を反応の開始前と開始後一定時間後測定し、又は、反応の開始前及び開始後経時的に測定し、濁度若しくは吸光度の変化の大きさ(エンドポイント法)又は変化の速度(レート法)に基づき、被検物質の検出又は定量を行う。
本発明の方法では、まず、緩衝液と被検試料を反応させる第1工程を行い、次いで、感作粒子又は抗血清を添加し抗原抗体反応させる第2工程を行えばよい。
感作粒子を用いた免疫比濁法における検出は、適当な反応容器中で被検試料数μL~数十μLに生理食塩水又は適当な緩衝液数十μL~数百μLを添加し混和し、数分間インキュベーションを行い、次いで抗体又は抗原を結合させた感作粒子を数十μL~数百μL添加し、数分間インキュベーションを行う。次いで、適当な測定波長(例えば、570nm)で吸光度を測定することにより、抗原抗体反応により生じた感作粒子の凝集による濁度を測定することができる。また、反応試料数μLに緩衝液に浮遊させた感作粒子溶液数十μL~数百μLを添加してもよい。
この際、あらかじめ、測定対象の濃度がわかっている複数の試料を用いて測定対象濃度と凝集度を関連付けた標準曲線を作成しておくことにより、標準曲線に基づいて被験試料中の測定対象物の濃度を算出することができる。
本発明で用いるエチレングリコール等は、自動分析装置用試薬において、測定系としての所望の測定感度、測定範囲、再現性、あるいは試薬の安定性などが得られることを勘案したうえで、実用的に最適な種類、濃度、試薬の調製方法を選択し適宜利用することができる。
自動分析装置を用いた測定法において、反応時にエチレングリコール等を用いることにより、誤差を減じることができ、正確な測定値を得ることができる。例えば、n=3以上で測定を行った場合でも、ばらつきを小さく抑えることができる。
本発明は、自動分析装置を用いて検体中の被検物質を測定する際に、反応系にエチレングリコール等を存在させて測定する方法であり、該測定における測定値の正確性を向上させる方法である。上記のように、エチレングリコール等は、試薬と検体の混合物中に共存させればよい。好ましくは試薬にエチレングリコール等を添加し、該試薬と検体を混合すればよい。
以下、本発明を実施例に基づき、より具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
(1)試薬
i)本試験用には、ラテックス浮遊液の代わりにDW(蒸留水)を用いた。
ii)BES緩衝液(pH 7.0)にBSAを0.2重量%になるように添加し、第1試薬とした。第1試薬に、各種界面活性剤を添加し、表1に示す試薬A~Cを調製した。比較例として、界面活性剤成分を添加しない、試薬Dを調製した。吸光度の変化を明確にするために、Evance BlueをそれぞれのR1に対して30分の1量添加した。
Figure 2022161884000001
A:2価アルコール(シグマ)、B:「アンヒトール24B」(花王)、C:「プロノン(登録商標)208」(日油)をそれぞれ使用
D:緩衝剤のみ
(2)自動分析装置による測定
自動分析装置は株式会社日立ハイテクの自動分析装置7180形によりエンドポイント法で自動測定を行った。
前述の試薬を用いて、saline sampleの測定をそれぞれ連続7回行った。検体溶液4.0μLに第1試薬120μLを添加し、この混合液を37℃で撹拌混合した。5分間放置後、DWを第2試薬として40μL添加し、更に37℃で撹拌混合した。約5分間の吸光度変化量として測定した。時間と吸光度変化の関係を示すTC(タイムコース)の結果を図1に示す。図1Aは、エチレングリコールを入れたときの結果であり、図1B~Dは比較例の結果を示す。図1の1~7は連続7回行ったそれぞれの測定値を示す。
図1に示すように、エチレングリコール又はプロノン208を用いた場合に、TCは直線的で測定値の差も小さかった。この結果から、エチレングリコールとプロノン208に、連続測定時の吸光度低下を改善する効果があることが示された。
実施例2
(1)試薬
VZV(varicella zoster virus)抗原を用いて、以下の通りに免疫凝集法による測定試薬を調製した。
i)VZV(varicella zoster virus)培養抗原を平均粒径393 nmのポリスチレンラテックス浮遊液1mLに対し0.075 mg担持させてなる感作粒子を、緩衝液(BES、pH 7.0)に0.128重量%となるように懸濁し、ラテックス浮遊液を調製した。
ii)BES緩衝液(pH 7.0)にBSAを0.2重量%になるように添加し、第1試薬とした。第1試薬に、各種界面活性剤を添加し、表2に示す試薬A~Cを調製した。試薬A、Cには感度調製剤としてアルギニンを0.03M添加した。比較例として、界面活性剤成分を添加しない、試薬Cを調製した。
Figure 2022161884000002
A:2価アルコール(シグマ)、B:「プロノン(登録商標)208」(日油)をそれぞれ使用C:緩衝剤のみ
(2)自動分析装置による測定
自動分析装置は株式会社日立ハイテクの自動分析装置7180形によりエンドポイント法で自動測定を行った。
前述の試薬を用いて、キャリブレーションに対するリカバリーの測定を行った。検体溶液4.0μLに第1試薬120μLを添加し、この混合液を37℃で撹拌混合した。5分間放置後、上記で調製したラテックス浮遊液を40μL添加し、更に37℃で撹拌混合した。約5分間の凝集反応を吸光度変化量として測定した。キャリブレーションに対するリカバリーの結果を図2に示す。図2Aは、0~128unitの被検物質を含む標準試料を用いて測定した場合の測定値(吸光度)を示す。この測定値を使用して自動分析装置内でキャリブレーションカーブが作成される。図2Bはキャリブレーションに対するリカバリー値を示す。図2Bの左の「Unit」の値は、図2Aの結果より作成されたキャリブレーションカーブより得られた被検物質含有量を示し、図2Bの「recovery(%)」の値は、本測定より得られた被検物質含有量(Unit)の真の含有量(Unit)に対する比(recovery(%))を示す。
図2より、エチレングリコールを添加することでキャリブレーションに対するリカバリー性能が向上することが示された。また、界面活性剤を添加していない試薬の測定値とエチレングリコールを添加した試薬の測定値に差が少ないことから、エチレングリコールは、測定値低下を防ぎつつ且つ感度に影響を与えないことが示された。
実施例2
(1)試薬
i)本試験用には、ラテックス浮遊液の代わりにDWを用いた。
ii)BES緩衝液(pH 7.0)にBSAを0.2重量%になるように添加し、第1試薬とした。第1試薬に、濃度を振ったエチレングリコールを添加し、表3に記載の試薬A~Cを調製した。吸光度の変化を明確にするために、Evance BlueをそれぞれのR1に対して30分の1量添加した。
Figure 2022161884000003
エチレングリコール:2価アルコール(シグマ)
(2)自動分析装置による測定
自動分析装置は日立ハイテクノロジーズ社7108形日立自動分析装置によりエンドポイント法で自動測定を行った。
前述の試薬を用いて、saline sampleの測定をそれぞれ連続7回行った。検体溶液4.0μLに第1試薬120μLを添加し、この混合液を37℃で撹拌混合した。5分間放置後、DWを40μL添加し、更に37℃で撹拌混合した。約5分間の凝集反応を吸光度変化量として測定した。TCの結果を図3に示す。図3A、B及びCは、それぞれ、上記の実施例、比較例1及び比較例2の結果である。
図3のTCの結果から、エチレングリコール濃度0.1重量%で、TCの揺らぎを最も改善する効果があることが示された。
本発明の方法により、検体中の抗体および抗原を測定することができる。

Claims (8)

  1. 自動分析装置を用いて検体中の被検物質を測定する際に、試薬と検体の混合物中にエチレングリコールを共存させることを含む、測定値の正確性を向上させる方法。
  2. 前記エチレングリコールを、前記試薬に添加し、該試薬と前記検体を混合する、請求項1記載の方法。
  3. 前記試薬が、第1試薬及び第2試薬から構成される、請求項1に記載の方法。
  4. 自動分析装置を用いて行う測定が免疫比濁法である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記エチレングリコールが、前記第1試薬に含有される、請求項3に記載の方法。
  6. 前記エチレングリコールが、前記第1試薬に含有される、請求項4に記載の方法。
  7. 反応時のエチレングリコール濃度が0.0001重量%~1重量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 反応時のエチレングリコール濃度が0.06重量%~0.29重量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
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