JP2022160729A - 自動変速機の制御装置、自動変速機の制御方法、車両、及び車両の制御方法 - Google Patents

自動変速機の制御装置、自動変速機の制御方法、車両、及び車両の制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】温度環境に応じて自動変速機への入力トルクを制御するにあたり、運転者が意図しない車両の挙動が発生することを抑制して運転者に与える違和感を低減する。【解決手段】第1検出対象の温度と第2検出対象の温度とに基づいてエンジンからの入力トルクを制御する自動変速機の制御装置は、前記第1検出対象の温度が第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が第2所定温度以下の場合は、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度より高い場合よりも前記入力トルクを大きくし、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が前記第2所定温度より高い場合は、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が前記第2所定温度以下の場合よりも前記入力トルクを小さくするトルク制御を実行する。【選択図】図1

Description

本発明は、自動変速機の制御装置、自動変速機の制御方法、車両、及び車両の制御方法に関する。
トルクコンバータを備えた自動変速機においては、極低温環境下におけるエンジン始動直後等のように作動油が低温の場合に、ロックアップクラッチの引きずりトルクが大きくなる。引きずりトルクの増大はエンジンの負荷を増大させる要因となる。
特許文献1には、引きずりトルクが大きくなり易いエンジン始動後の初回インギヤの際にエンジンの出力トルクを大きくすることで、エンジン回転速度の安定化を図る技術が開示されている。
特開2018-168911号公報
しかしながら、自動変速機の作動油が低温であるとの判断に基づいてエンジンの出力トルク、すなわち自動変速機への入力トルクを大きくすると、ロックアップクラッチの引きずりトルクの増大等による自動変速機のロストルクの増大を入力トルクの増大が上回ることが考えられる。この場合は、運転者が意図しない車両の挙動が発生して運転者に違和感を与えるおそれがある。
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、温度環境に応じて自動変速機への入力トルクを制御するにあたり、運転者が意図しない車両の挙動が発生することを抑制して運転者に与える違和感を低減することを目的とする。
本発明のある態様によれば、第1検出対象の温度と第2検出対象の温度とに基づいてエンジンからの入力トルクを制御する自動変速機の制御装置であって、前記第1検出対象の温度が第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が第2所定温度以下の場合は、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度より高い場合よりも前記入力トルクを大きくし、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が前記第2所定温度より高い場合は、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が前記第2所定温度以下の場合よりも前記入力トルクを小さくするトルク制御を実行する、自動変速機の制御装置が提供される。
また、これに対応する自動変速機の制御方法が提供される。
また、本発明の別の態様によれば、第1検出対象の温度と第2検出対象の温度とに基づいてエンジンから自動変速機への入力トルクを制御する車両であって、前記第1検出対象の温度が第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が第2所定温度以下の場合は、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度より高い場合よりも前記入力トルクを大きくし、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が前記第2所定温度より高い場合は、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が前記第2所定温度以下の場合よりも前記入力トルクを小さくする、車両が提供される。
また、これに対応する車両の制御方法が提供される。
これらの態様では、第1検出対象の温度が第1所定温度以下、且つ、第2検出対象の温度が第2所定温度以下の場合は、第1検出対象の温度が第1所定温度より高い場合よりもエンジンから自動変速機への入力トルクを大きくする。よって、自動変速機のロストルクの増大に抗して入力トルクを大きくすることができ、エンジンストールを防止できる。また、第1検出対象の温度が第1所定温度以下、且つ、第2検出対象の温度が第2所定温度より高い場合は、第1検出対象の温度が第1所定温度以下、且つ、第2検出対象の温度が第2所定温度以下の場合よりも入力トルクを小さくする。すなわち、第1検出対象の温度に基づく入力トルクの増大が、第2検出対象の温度に基づいて抑制される。よって、入力トルクが過大になることを防止できるので、運転者が意図しない車両の挙動が発生することを抑制でき、運転者に与える違和感を低減できる。
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置を備える車両の概略構成図である。 図2は、制御装置の機能ブロック図である。 図3は、制御装置が実行するトルク制御の処理をフローチャートで示す図である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る制御装置としての変速機コントローラ40を備える車両100の概略構成図である。
図1に示すように、車両100は、駆動源としてのエンジン10と、自動変速機20と、エンジンコントローラ30と、変速機コントローラ40と、を備える。
自動変速機20は、トルクコンバータ2と、前後進切替機構3と、バリエータ4と、油圧制御回路5と、オイルポンプ6と、を備える。
車両100においては、エンジン10で発生した回転が、トルクコンバータ2、前後進切替機構3、バリエータ4、歯車組7、ディファレンシャルギヤ装置8を経て駆動輪50に伝達される。
トルクコンバータ2には、ロックアップクラッチ2aが設けられる。ロックアップクラッチ2aが締結されると、トルクコンバータ2の入力要素としての入力軸2bと出力要素としての出力軸2cとが直結し、入力軸2bと出力軸2cとが同速回転する。よって、ロックアップクラッチ2aが締結された状態では、エンジン10の出力軸10aの回転がそのままトルクコンバータ2の出力軸2cから前後進切替機構3に伝達される。
前後進切替機構3は、ダブルピニオン遊星歯車組を主たる構成要素とし、そのサンギヤをトルクコンバータ2を介してエンジン10に結合し、キャリアをバリエータ4の入力軸4d(プライマリプーリ4a)に結合する。前後進切替機構3は更に、ダブルピニオン遊星歯車組のサンギヤ及びキャリア間を直結する前進クラッチ3a、及びリングギヤを固定する後進ブレーキ3bを備え、前進クラッチ3aの締結時にエンジン10からトルクコンバータ2を経由した入力回転をそのままプライマリプーリ4aに伝達し、後進ブレーキ3bの締結時にエンジン10からトルクコンバータ2を経由した入力回転を逆転減速してプライマリプーリ4aへ伝達する。
前進クラッチ3aは、シフター63によりセレクトレンジとして前進(D)レンジが選択されると締結される。また、後進ブレーキ3bは、シフター63によりセレクトレンジとして後進(R)レンジが選択されると締結される。
バリエータ4は、入力軸4dに伝達されたエンジン10の回転を変速して出力軸4eから駆動輪50に伝達する無段変速機構である。バリエータ4は、動力伝達経路においてエンジン10側に設けられたプライマリプーリ4aと、駆動輪50側に設けられたセカンダリプーリ4bと、プライマリプーリ4aとセカンダリプーリ4bとに掛け回された無端状部材としてのベルト4cと、を備える。
バリエータ4では、プライマリプーリ4aに供給される油圧とセカンダリプーリ4bに供給される油圧とが制御されることで、各プーリ4a、4bとベルト4cとの接触半径が変更され、変速比が変更される。
オイルポンプ6は、エンジン10の回転が入力されエンジン10の動力の一部を利用して駆動される機械式のオイルポンプである。オイルポンプ6から吐出された油は、油圧制御回路5に供給される。
油圧制御回路5は、オイルポンプ6から供給された作動油の圧力を調圧してライン圧PLを生成するレギュレータバルブ5a、プライマリプーリ4aに供給されるプライマリ油圧Ppを調整するプライマリソレノイドバルブ5b、セカンダリプーリ4bに供給されるセカンダリ油圧Psを調整するセカンダリソレノイドバルブ5c、ロックアップクラッチ2aに供給される油圧を調整するロックアップソレノイドバルブ5d、前進クラッチ3aに供給される油圧及び後進ブレーキ3bに供給される油圧を調整するセレクトソレノイドバルブ5e、前進クラッチ3a及び後進ブレーキ3bへの油圧の供給経路を切り換えるマニュアルバルブ5f、等を有する。
油圧制御回路5は、変速機コントローラ40からの制御信号に基づき、調整された油圧をトルクコンバータ2、前後進切替機構3、バリエータ4の各部位に供給する。
エンジンコントローラ30は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータで構成される。エンジンコントローラ30は、CPUがROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することで各種の処理を行う。エンジンコントローラ30は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
エンジンコントローラ30は、車両100の各部位の状態を検出する各種センサからの信号に基づきエンジン10の回転速度Ne(以下、エンジン回転速度Neという。)及びエンジントルクTe等を制御する。
エンジンコントローラ30には、第2検出対象としてのエンジン10の冷却水の温度Tw(以下、水温Twという。)を検出する水温センサ72からの信号、エンジン回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ73からの信号、等が入力される。
変速機コントローラ40は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータで構成され、エンジンコントローラ30と通信可能に接続される。変速機コントローラ40は、CPUがROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することで各種の処理を行う。変速機コントローラ40は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。変速機コントローラ40とエンジンコントローラ30とを統合して1つのコントローラとしてもよい。
変速機コントローラ40は、車両100の各部位の状態を検出する各種センサからの信号に基づきロックアップクラッチ2aの締結状態、バリエータ4の変速比、前進クラッチ3a及び後進ブレーキ3bの締結状態等を制御する。
変速機コントローラ40には、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ61からの信号、ブレーキペダルの操作量に対応したブレーキ液圧BRPを検出するブレーキ液圧センサ62からの信号、シフター63の位置を検出するインヒビタスイッチ64からの信号、トルクコンバータ2の出力軸2cの回転速度Nt(以下、タービン回転速度Ntという。)を検出するタービン回転速度センサ65からの信号、バリエータ4の入力軸4d(プライマリプーリ4a)の回転速度Np(以下、プライマリ回転速度Npという。)を検出するプライマリ回転速度センサ66からの信号、バリエータ4の出力軸4e(セカンダリプーリ4b)の回転速度Ns(以下、セカンダリ回転速度Nsという。)を検出するセカンダリ回転速度センサ67からの信号、プライマリプーリ4aに供給されるプライマリ油圧Ppを検出するプライマリ油圧センサ68からの信号、セカンダリプーリ4bに供給されるセカンダリ油圧Psを検出するセカンダリ油圧センサ69からの信号、ライン圧PLを検出するライン圧センサ70からの信号、第1検出対象としての自動変速機20の作動油の温度To(以下、油温Toという。)を検出する油温センサ71からの信号、等が入力される。また、変速機コントローラ40には、エンジンコントローラ30から、水温センサ72からの信号、エンジン回転速度センサ73からの信号、等が入力される。
ところで、車両100においては、極低温環境下におけるエンジン10の始動直後等のように油温Toが低温の場合に、ロックアップクラッチ2aの引きずりトルクの増大等により自動変速機20のロストルク(負荷トルク)が増大する。自動変速機20のロストルクの増大はエンジン10の負荷を増大させる要因となる。極低温環境とは、例えば、外気温が-20~-30[℃]以下の環境である。
そこで、油温Toが低温の場合には、セレクトレンジが停車(P)レンジから前進(D)レンジになったときに、エンジントルクTeを大きくすること、すなわち、自動変速機20への入力トルクを大きくすることで、エンジンストールを防止することが考えられる。
しかしながら、油温Toが低温であるとの判断に基づいて自動変速機20への入力トルクを大きくすると、油温センサ71に異常があった場合は、自動変速機20のロストルクの増大を入力トルクの増大が上回ることが考えられる。この場合は、運転者が意図しない車両100の挙動が発生して運転者に違和感を与えるおそれがある。
このような事情に鑑み、本実施形態の変速機コントローラ40は、温度環境に応じて自動変速機20への入力トルクを制御するにあたり、運転者が意図しない車両100の挙動が発生することを抑制して運転者に与える違和感を低減することができるトルク制御を実行する。
以下、変速機コントローラ40について詳しく説明する。
図2は、変速機コントローラ40の機能ブロック図である。図2は、変速機コントローラ40の各機能を仮想的なユニットとして示したものであり、物理的な存在を意味しない。しかしながら、各機能に対応するマイクロコンピュータやデバイスが物理的に存在してもよい。
図2に示すように、変速機コントローラ40は、入力信号生成部40aと、O/Pロストルク演算部40bと、T/Cロストルク演算部40cと、CVTフリクショントルク演算部40dと、LU引きずりトルク演算部40eと、トルク制限選択部40fと、ロストルク演算部40gと、ロストルク決定部40hと、ロストルク送信部40iと、を有する。
変速機コントローラ40には、タービン回転速度センサ65からの信号、プライマリ回転速度センサ66からの信号、セカンダリ回転速度センサ67からの信号、ライン圧センサ70からの信号、油温センサ71からの信号、水温センサ72からの信号、エンジン回転速度センサ73からの信号、等が入力される。
入力信号生成部40aは、各種センサからの信号に基づいて、タービン回転速度Ntを示す信号、プライマリ回転速度Npを示す信号、セカンダリ回転速度Nsを示す信号、ライン圧PLを示す信号、油温Toを示す信号、水温Twを示す信号、エンジン回転速度Neを示す信号、を生成する。
O/Pロストルク演算部40bは、エンジン回転速度Ne、ライン圧PL、及び油温Toに基づいて、オイルポンプ6のロストルクを演算する。具体的には、O/Pロストルク演算部40bは、実験等により予め設定されたマップ等を参照して、オイルポンプ6のロストルクを求める。
T/Cロストルク演算部40cは、エンジン回転速度Ne、タービン回転速度Nt、及び油温Toに基づいて、トルクコンバータ2のロストルクを演算する。具体的には、T/Cロストルク演算部40cは、実験等により予め設定されたマップ等を参照して、トルクコンバータ2のロストルクを求める。
CVTフリクショントルク演算部40dは、エンジン回転速度Ne、タービン回転速度Nt、プライマリ回転速度Np、セカンダリ回転速度Ns、及び油温Toに基づいて、バリエータ4のフリクショントルクを演算する。具体的には、CVTフリクショントルク演算部40dは、実験等により予め設定されたマップ等を参照して、バリエータ4のフリクショントルクを求める。
LU引きずりトルク演算部40eは、エンジン回転速度Ne、タービン回転速度Nt、及び油温Toに基づいて、ロックアップクラッチ2aの引きずりトルクを演算する。具体的には、LU引きずりトルク演算部40eは、実験等により予め設定されたマップ等を参照して、ロックアップクラッチ2aの引きずりトルクを求める。
トルク制限選択部40fは、油温To及び水温Twに基づいて、第1制限値と、第1制限値よりも大きな値である第2制限値と、のいずれか一方を自動変速機20のロストルクの上限値として選択する。具体的には、トルク制限選択部40fは、油温Toが第1所定温度Ts1以下、且つ、水温Twが第2所定温度Ts2以下の場合は、第2制限値を選択し、その他の場合は、第1制限値を選択する。第1所定温度Ts1は、例えば、自動変速機20のロストルクが大きくなる-20[℃]であり、第2所定温度Ts2は、例えば、-30[℃]である。第1制限値及び第2制限値については後で説明する。
ロストルク演算部40gは、O/Pロストルク演算部40bで求めたオイルポンプ6のロストルク、T/Cロストルク演算部40cで求めたトルクコンバータ2のロストルク、CVTフリクショントルク演算部40dで求めたバリエータ4のフリクショントルク、及びLU引きずりトルク演算部40eで求めたロックアップクラッチ2aの引きずりトルクを加算して、自動変速機20のロストルクを求める。
ロストルク決定部40hは、トルク制限選択部40fで選択したロストルクの上限値とロストルク演算部40gで求めた自動変速機20のロストルクの値とのいずれか低いほうを最終的な自動変速機20のロストルク(以下、ロストルク決定値という。)と決定する。
ロストルク送信部40iは、ロストルク決定値をエンジンコントローラ30に送信する。
エンジンコントローラ30は、ロストルク送信部40iから受信したロストルク決定値に基づいてエンジントルクTeを制御する。これにより、低温であることによる自動変速機20のロストルクの増大に抗してエンジン10から自動変速機20への入力トルクを大きくすることができ、エンジンストールを防止できる。
続いて、第1制限値及び第2制限値について説明する。
上述したように、トルク制限選択部40fでは、油温To及び水温Twに基づいて、自動変速機20のロストルクの上限値として第1制限値と第2制限値とのいずれか一方が選択される。
第1制限値は、自動変速機20の作動油の実際の温度RTo(以下、実油温RToという。)が第1所定温度Ts1より高い場合に、第1制限値を上限値として決定されたロストルク決定値に基づいてエンジントルクTeを制御することで、エンジンストールを防止でき、且つ、運転者が意図しない車両100の挙動が発生することを抑制できる値とされる。具体的には、第1制限値は、車両100の諸元や実験結果に基づいて予め設定される。第1制限値は、例えば、40[Nm]である。
第2制限値は、実油温RToが第1所定温度Ts1以下の場合に、第2制限値を上限値として決定されたロストルク決定値に基づいてエンジントルクTeを制御することで、エンジンストールを防止でき、且つ、運転者が意図しない車両100の挙動が発生することを抑制できる値とされる。具体的には、第2制限値は、車両100の諸元や実験結果に基づいて予め設定される。第2制限値は、例えば、60[Nm]である。第2制限値が第1制限値よりも大きな値となるのは、油温Toが低いほど自動変速機20のロストルクが増大するからである。
上述したように、トルク制限選択部40fでは、油温Toが第1所定温度Ts1以下、且つ、水温Twが第2所定温度Ts2以下の場合は、第2制限値が選択され、その他の場合は、第1制限値が選択される。これは、油温センサ71で検出した油温Toが第1所定温度Ts1以下であっても、水温センサ72で検出した水温Twが第2所定温度Ts2より高い場合は、油温センサ71に異常が発生している可能性があるからである。
詳しく説明すると、実油温RToが第1所定温度Ts1より高い場合に第2制限値を用いてロストルク決定値を求めてしまうと、実際の自動変速機20のロストルクを上回る値がロストルク決定値としてエンジンコントローラ30に送信される可能性がある。この場合は、エンジントルクTeが過大となることで実際の自動変速機20のロストルクの増大をエンジン10から自動変速機20への入力トルクの増大が上回り、運転者が意図しない車両100の挙動が発生して運転者に違和感を与えるおそれがある。
そのため、トルク制限選択部40fでは、油温Toが第1所定温度Ts1以下であっても、水温Twが第2所定温度Ts2より高い場合は、第1制限値が選択される。つまり、本実施形態では、油温Toと同じく温度環境に依存して変化するパラメータである水温Twを用いてトルク制御を行うことで、油温センサ71に異常が発生した場合のフェイルセーフを実現している。
なお、本実施形態では、第1検出対象を自動変速機20の作動油としているが、第1検出対象は、例えば、自動変速機20のケース等であってもよい。また、第2検出対象をエンジン10の冷却水としているが、第2検出対象は、例えば、車両100の外気等であってもよい。第1検出対象及び第2検出対象を自動変速機20の作動油及びエンジン10の冷却水とした場合は、温度環境に応じた自動変速機20への入力トルクの制御をより高い精度で実行することができる。
以下では、第1制限値が40[Nm]、第2制限値が60[Nm]、ロストルク演算部40gで求めたロストルクの値が50[Nm]である場合を例として、より具体的に説明する。
油温Toが第1所定温度Ts1以下、且つ、水温Twが第2所定温度Ts2以下の場合は、トルク制限選択部40fは、第2制限値(60[Nm])を選択する。そして、第2制限値(60[Nm])よりもロストルク演算部40gで求めたロストルクの値(50[Nm])のほうが低いので、ロストルク決定部40hは、ロストルク決定値を50[Nm]と決定する。
エンジンコントローラ30は、ロストルク送信部40iから受信したロストルク決定値(50[Nm])に基づいてエンジントルクTeを制御する。これにより、自動変速機20のロストルクの増大に抗してエンジン10から自動変速機20への入力トルクを大きくすることができ、エンジンストールを防止できる。
油温Toが第1所定温度Ts1以下であっても、水温Twが第2所定温度Ts2より高い場合は、トルク制限選択部40fは、第1制限値(40[Nm])を選択する。そして、ロストルク演算部40gで求めたロストルクの値(50[Nm])よりも第1制限値(40[Nm])のほうが低いので、ロストルク決定部40hは、ロストルク決定値を40[Nm]と決定する。
エンジンコントローラ30は、ロストルク送信部40iから受信したロストルク決定値(40[Nm])に基づいてエンジントルクTeを制御する。これにより、油温Toが第1所定温度Ts1以下、且つ、水温Twが第2所定温度Ts2以下の場合よりも、エンジン10から自動変速機20への入力トルクが小さくなる。すなわち、油温Toに基づく入力トルクの増大が、水温Twに基づいて抑制される。これによれば、油温センサ71に異常があったとしても、エンジン10から自動変速機20への入力トルクが過大になることを防止できる。よって、運転者が意図しない車両100の挙動が発生することを抑制でき、運転者に与える違和感を低減できる。
続いて、図3を参照しながら、変速機コントローラ40が実行するトルク制御の処理について説明する。図3は、変速機コントローラ40が実行するトルク制御の処理をフローチャートで示す図である。変速機コントローラ40は、車両100の停車中にセレクトレンジが停車(P)レンジから前進(D)レンジになると、トルク制御を実行する。
ステップS11では、変速機コントローラ40は、油温Toが第1所定温度Ts1より高いか判定する。
変速機コントローラ40は、油温Toが第1所定温度Ts1より高いと判定すると、処理をステップS12に進める。また、変速機コントローラ40は、油温Toが第1所定温度Ts1以下と判定すると、処理をステップS13に進める。
ステップS12では、変速機コントローラ40は、自動変速機20のロストルクの上限値として第1制限値を選択する。
ステップS13では、変速機コントローラ40は、水温Twが第2所定温度Ts2より高いか判定する。
変速機コントローラ40は、水温Twが第2所定温度Ts2より高いと判定すると、処理をステップS12に進める。また、変速機コントローラ40は、水温Twが第2所定温度Ts2以下と判定すると、処理をステップS14に進める。
ステップS14では、変速機コントローラ40は、自動変速機20のロストルクの上限値として第2制限値を選択する。
ステップS15では、変速機コントローラ40は、選択したロストルクの上限値と演算により求めた自動変速機20のロストルクの値とのいずれか低いほうをロストルク決定値と決定する。
ステップS16では、変速機コントローラ40は、ロストルク決定値をエンジンコントローラ30に送信する。
以上のように構成された変速機コントローラ40及び車両100の主な作用効果についてまとめて説明する。
(1)(4)第1検出対象の温度(油温To)と第2検出対象の温度(水温Tw)とに基づいてエンジン10から自動変速機20への入力トルクを制御する変速機コントローラ40は、第1検出対象の温度が第1所定温度Ts1以下、且つ、第2検出対象の温度が第2所定温度Ts2以下の場合は、第1検出対象の温度が第1所定温度Ts1より高い場合よりも入力トルクを大きくし、第1検出対象の温度が第1所定温度Ts1以下、且つ、第2検出対象の温度が第2所定温度Ts2より高い場合は、第1検出対象の温度が第1所定温度Ts1以下、且つ、第2検出対象の温度が第2所定温度Ts2以下の場合よりも入力トルクを小さくするトルク制御を実行する。
(5)(6)第1検出対象の温度(油温To)と第2検出対象の温度(水温Tw)とに基づいてエンジン10から自動変速機20への入力トルクを制御する車両100は、第1検出対象の温度が第1所定温度Ts1以下、且つ、第2検出対象の温度が第2所定温度Ts2以下の場合は、第1検出対象の温度が第1所定温度Ts1より高い場合よりも入力トルクを大きくし、第1検出対象の温度が第1所定温度Ts1以下、且つ、第2検出対象の温度が第2所定温度Ts2より高い場合は、第1検出対象の温度が第1所定温度Ts1以下、且つ、第2検出対象の温度が第2所定温度Ts2以下の場合よりも入力トルクを小さくする。
これらによれば、第1検出対象の温度が第1所定温度Ts1以下、且つ、第2検出対象の温度が第2所定温度Ts2以下の場合は、第1検出対象の温度が第1所定温度Ts1より高い場合よりもエンジン10から自動変速機20への入力トルクを大きくする。よって、自動変速機20のロストルクの増大に抗して入力トルクを大きくすることができ、エンジンストールを防止できる。また、第1検出対象の温度が第1所定温度Ts1以下、且つ、第2検出対象の温度が第2所定温度Ts2より高い場合は、第1検出対象の温度が第1所定温度Ts1以下、且つ、第2検出対象の温度が第2所定温度Ts2以下の場合よりも入力トルクを小さくする。すなわち、第1検出対象の温度に基づく入力トルクの増大が、第2検出対象の温度に基づいて抑制される。よって、入力トルクが過大になることを防止できるので、運転者が意図しない車両100の挙動が発生することを抑制でき、運転者に与える違和感を低減できる。
(2)第1検出対象は自動変速機20の作動油であり、第2検出対象はエンジン10の冷却水である。
これによれば、温度環境に応じた自動変速機20への入力トルクの制御をより高い精度で実行することができる。
(3)変速機コントローラ40は、車両100の停車中に自動変速機20のセレクトレンジが停車(P)レンジから前進(D)レンジになると、トルク制御を実行する。
これによれば、セレクトレンジが停車(P)レンジから前進(D)レンジになったときに、エンジンストールを防止できるとともに、運転者が意図しない車両100の挙動が発生することを抑制でき、運転者に与える違和感を低減できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態では、変速機構がバリエータ4である場合について説明した。しかしながら、変速機構は、他の無段変速機構であってもよいし、有段変速機構であってもよい。
また、上記実施形態では、変速機コントローラ40が、車両100の停車中にセレクトレンジが停車(P)レンジから前進(D)レンジになると、トルク制御を実行する場合について説明した。しかしながら、ロストルクを演算してロストルク決定値をエンジンコントローラ30に送信したり、油温To及び水温Twに基づいて、第1制限値と、第1制限値よりも大きな値である第2制限値と、のいずれか一方を自動変速機20のロストルクの上限値として選択したりするのを、常時作動させ、トルク制御を常時実行するようにしてもよい。
100 車両
10 エンジン
20 自動変速機
40 変速機コントローラ(制御装置)

Claims (6)

  1. 第1検出対象の温度と第2検出対象の温度とに基づいてエンジンからの入力トルクを制御する自動変速機の制御装置であって、
    前記第1検出対象の温度が第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が第2所定温度以下の場合は、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度より高い場合よりも前記入力トルクを大きくし、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が前記第2所定温度より高い場合は、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が前記第2所定温度以下の場合よりも前記入力トルクを小さくするトルク制御を実行する、
    自動変速機の制御装置。
  2. 請求項1に記載の自動変速機の制御装置であって、
    前記第1検出対象は前記自動変速機の作動油であり、
    前記第2検出対象は前記エンジンの冷却水である、
    自動変速機の制御装置。
  3. 請求項1又は2に記載の自動変速機の制御装置であって、
    車両の停車中に前記自動変速機のセレクトレンジが停車レンジから前進レンジになると、前記トルク制御を実行する、
    自動変速機の制御装置。
  4. 第1検出対象の温度と第2検出対象の温度とに基づいてエンジンからの入力トルクを制御する自動変速機の制御方法であって、
    前記第1検出対象の温度が第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が第2所定温度以下の場合は、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度より高い場合よりも前記入力トルクを大きくし、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が前記第2所定温度より高い場合は、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が前記第2所定温度以下の場合よりも前記入力トルクを小さくする、
    自動変速機の制御方法。
  5. 第1検出対象の温度と第2検出対象の温度とに基づいてエンジンから自動変速機への入力トルクを制御する車両であって、
    前記第1検出対象の温度が第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が第2所定温度以下の場合は、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度より高い場合よりも前記入力トルクを大きくし、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が前記第2所定温度より高い場合は、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が前記第2所定温度以下の場合よりも前記入力トルクを小さくする、
    車両。
  6. 第1検出対象の温度と第2検出対象の温度とに基づいてエンジンから自動変速機への入力トルクを制御する車両の制御方法であって、
    前記第1検出対象の温度が第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が第2所定温度以下の場合は、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度より高い場合よりも前記入力トルクを大きくし、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が前記第2所定温度より高い場合は、前記第1検出対象の温度が前記第1所定温度以下、且つ、前記第2検出対象の温度が前記第2所定温度以下の場合よりも前記入力トルクを小さくする、
    車両の制御方法。
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