JP2022159984A - 認知症の予防および/または改善剤 - Google Patents

認知症の予防および/または改善剤 Download PDF

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Masanori Hirose
菜々絵 石田
Nanae Ishida
裕也 山▲崎▼
Yuya Yamazaki
梢 松田
Kozue Matsuda
和也 中川
Kazuya Nakagawa
浩一 滋野
Koichi Shigeno
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Abstract

【課題】 脳血管性認知症などの認知症の予防および/または改善剤を提供すること。【解決手段】 オキアミ由来の組成物を有効成分とする。オキアミ由来の組成物は、リン脂質を例えば3~40重量%の割合で含むことが好ましく、中性脂質を例えば3~40重量%の割合で含むことが好ましく、タンパク質ないしペプチドを例えば40~80重量%の割合で含むことが好ましい。【選択図】 図1

Description

本発明は、脳血管性認知症などの認知症の予防および/または改善剤に関する。
超高齢化社会に直面している我が国において、高齢の認知症患者の急増への対応が急務であることは周知の通りである。現在のところ、65歳以上の高齢者の7人に1人は認知症患者であるとされている。認知症にはいくつかの種類があるが、その一つの脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害に起因し、アルツハイマー型認知症に次いで多く、また、アルツハイマー型認知症と併発することもある認知症である。こうした背景から、脳血管性認知症の予防や改善に有用な成分についての探索が古くから精力的に行われており、例えば特許文献1では、シソ科の多年草植物であるチョロギ(学名:Stachys affinis)が、脳血管性認知症の予防や改善に有用な成分として報告されている。しかしながら、脳血管性認知症の予防や改善に有用な成分の探索は、今なお意義深い状況にある。
特許第6162536号公報
そこで本発明は、脳血管性認知症などの認知症の予防および/または改善剤を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の点に鑑みて鋭意検討を行った結果、海洋生物であるオキアミ(Euphausiacea)由来の組成物が、脳微小血管障害性認知症の予防や改善のために有用であることを見出した。
上記の知見に基づいてなされた本発明の認知症の予防および/または改善剤は、オキアミ由来の組成物を有効成分とする。
また、本発明の認知症の予防および/または改善剤においては、前記オキアミ由来の組成物がリン脂質を3~40重量%の割合で含むことが好ましい。
また、本発明の認知症の予防および/または改善剤においては、前記オキアミ由来の組成物が中性脂質を3~40重量%の割合で含むことが好ましい。
また、本発明の認知症の予防および/または改善剤においては、前記オキアミ由来の組成物がタンパク質ないしペプチドを40~80重量%の割合で含むことが好ましい。
また、本発明の認知症の予防および/または改善剤においては、前記認知症が脳血管性認知症であることが好ましい。
また、本発明の認知症の予防および/または改善剤の製造方法は、水中に懸濁したオキアミの破砕物を、pH3~4の条件下で麹菌由来のプロテアーゼを用いて酵素処理することによって得られるオイル画分を乾燥することで、有効成分とするオキアミ由来の組成物を調製する工程を含む。
また、本発明の認知症の予防および/または改善剤の製造方法においては、前記pHの調整を有機酸および/または炭酸を用いて行うことが好ましい。
また、本発明の認知症の予防および/または改善剤の製造方法においては、前記有機酸がクエン酸であることが好ましい。
本発明によれば、脳血管性認知症などの認知症の予防および/または改善剤を提供することができる。
実施例の実験例1における、Rotarod Testによるオキアミ由来の組成物の脳微小血管障害性認知症に対する作用を示すグラフである。 同、Morris Water Maze Testによるオキアミ由来の組成物の脳微小血管障害性認知症に対する作用を示すグラフである。 実施例の実験例2における、Rotarod Testによるオキアミ由来の組成物の脳微小血管障害性認知症に対する作用を示すグラフである。 同、Morris Water Maze Testによるオキアミ由来の組成物の脳微小血管障害性認知症に対する作用を示すグラフである。
本発明の認知症の予防および/または改善剤は、オキアミ由来の組成物を有効成分とする。
本発明において、オキアミは、養殖魚のエサや釣りのエサなどとして馴染み深いが、特に限定されるものではなく、三陸地方でイサダと呼ばれて食用されているツノナシオキアミ(Euphausia pacifica)や、ナンキョクオキアミ(Euphausia superba)などであってよい。
オキアミ由来の組成物は、リン脂質を含むことが好ましい。認知症の予防効果や改善効果の観点や、組成物の調製の容易性の観点から、オキアミ由来の組成物におけるリン脂質の割合は、3~40重量%が好ましく、4~30重量%がより好ましく、5~20重量%がさらに好ましく、6~15重量%がとりわけ好ましい。
リン脂質は、グリセロリン脂質を含むことが好ましい。グリセロリン脂質は、ジアシル型リン脂質とアルキル型リン脂質(1-アルキルエーテル型リン脂質)の少なくとも一方を含むことが好ましい。ジアシル型リン脂質は、グリセリンのsn-1位とsn-2位に脂肪酸(飽和脂肪酸であってもよいし不飽和脂肪酸であってもよい)がエステル結合するとともにsn-3位にリン酸がエステル結合した物質(ホスファチジン酸)であってもよいし、さらにリン酸に極性基としてアルコール(コリン、エタノールアミン、イノシトール、セリン、グリセリンなど)がエステル結合した物質であってもよい。アルキル型リン脂質は、ジアシル型リン脂質におけるグリセリンのsn-1位に脂肪酸がエステル結合するかわりに炭化水素がエーテル結合する物質であることは、当業者に周知の通りである。認知症の予防効果や改善効果の観点や、組成物の調製の容易性の観点から、オキアミ由来の組成物におけるジアシル型リン脂質の割合は、1~20重量%が好ましく、2~15重量%がより好ましい。アルキル型リン脂質の割合は、0.1~10重量%が好ましく、0.5~5重量%がより好ましい。ジアシル型リン脂質とアルキル型リン脂質の含有比率は、前者1に対して後者0.01~1が好ましく、前者1に対して後者0.05~0.6がより好ましい(重量比)。
なお、リン脂質は、ジアシル型リン脂質とアルキル型リン脂質に加え、アルケニルアシル型リン脂質(プラズマローゲン)、スフィンゴリン脂質、リゾリン脂質などをさらに含んでよい。
オキアミ由来の組成物は、中性脂質を含むことが好ましい。認知症の予防効果や改善効果の観点や、組成物の調製の容易性の観点から、オキアミ由来の組成物における中性脂質の割合は、3~40重量%が好ましく、5~20重量%がより好ましい。
中性脂質は、グリセリンに1つの脂肪酸(飽和脂肪酸であってもよいし不飽和脂肪酸であってもよい)がエステル結合したモノグリセリド、2つの脂肪酸がエステル結合したジグリセリド、3つの脂肪酸がエステル結合したトリグリセリドなどのグリセリン脂肪酸エステルを含んでよい。
オキアミ由来の組成物は、タンパク質ないしペプチドを含むことが好ましい。認知症の予防効果や改善効果の観点や、組成物の調製の容易性の観点から、オキアミ由来の組成物におけるタンパク質ないしペプチドの割合は、40~80重量%が好ましく、45~79重量%がより好ましく、50~78重量%がさらに好ましい。
タンパク質ないしペプチドの分子量は、200~10,000であることが好ましいが、分子量が10,000を上回るタンパク質をさらに含んでよい。
オキアミ由来の組成物は、カロテノイドの一種であるアスタキサンチンを含むことが好ましい。認知症の予防効果や改善効果の観点や、組成物の調製の容易性の観点から、オキアミ由来の組成物におけるアスタキサンチンの割合は、10~1,000ppmが好ましく、30~800ppmがより好ましく、50~600ppmがさらに好ましい。
オキアミ由来の組成物は、リン脂質や中性脂質を構成する脂肪酸として、DHAとEPAの少なくとも一方を含むことが好ましい。認知症の予防効果や改善効果の観点や、組成物の調製の容易性の観点から、オキアミ由来の組成物におけるDHAの割合は、0.1~5重量%が好ましく、0.5~4重量%がより好ましい。EPAの割合は、0.5~10重量%が好ましく、1~5重量%がより好ましい。DHAとEPAの含有比率は、前者1に対して後者0.5~20が好ましく、前者1に対して後者1~10がより好ましい(重量比)。
オキアミ由来の組成物は、水分や、炭水化物や灰分などからなる残部を含むことが好ましい。認知症の予防効果や改善効果の観点や、組成物の調製の容易性の観点から、オキアミ由来の組成物における水分の割合は、0.1~10重量%が好ましく、0.2~8重量%がより好ましい。炭化水素や灰分などからなる残部の割合は、1~20重量%が好ましい。
本発明の認知症の予防および/または改善剤の有効成分とするオキアミ由来の組成物は、例えば特開2019-178127号公報に記載された、水中に懸濁したオキアミの破砕物を、pH3~4の条件下で麹菌由来のプロテアーゼを用いて酵素処理することによって得られるオイル画分を乾燥する方法によって製造することができる。
原料として用いるオキアミは、生のものを用いてもよいし、凍結したもの(例えば無加水や加水の冷凍ブロックであって-50℃以下で保存したもの)を用いてもよい。
オキアミの破砕は、例えば、室温環境下において、-10~-3℃に維持したオキアミを(凍結したオキアミはこの温度域まで解凍してから)、ミートチョッパーを用いて粗く行った後、マスコロイダーを用いてペースト状になるまで行うことが、優れた品質のオキアミ由来の組成物を製造することができる点において好ましい。
こうして得られたオキアミの破砕物を、水中に懸濁し、pH3~4の条件下で麹菌(Aspergillus oryzae)由来のプロテアーゼを用いて酵素処理する。オキアミの破砕物の水中への懸濁は、例えばオキアミの破砕物1重量部に0.3~0.7重量部の水を加えて撹拌することで行えばよい。麹菌由来のプロテアーゼは、麹菌由来の酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼから選択される少なくとも1種であってよく、市販のものでは、これらの混合製剤であるコクラーゼP顆粒(三菱ケミカルフーズ社製)、中性プロテアーゼ製剤であるオリエンターゼOP(エイチビィアイ社製)やスミチームFP(新日本化学工業社製)などを用いることができる。麹菌由来のプロテアーゼは、例えばオキアミの破砕物1重量部に対して0.001~0.03重量部用い、その至適温度でオキアミの破砕物を酵素処理する。麹菌由来のプロテアーゼとしてコクラーゼP顆粒を用いる場合の至適温度は、50~55℃である。処理時間は、例えば30分間~3時間であってよい。麹菌由来のプロテアーゼを用いたオキアミの破砕物の酵素処理を、pH3~4の条件下で行うのは、オキアミの破砕物を酵素処理することによって得られるオイル画分に含まれる脂質が、オキアミ自身が持つ脂質分解酵素によって分解されてしまうことを防ぐためである。なお、pHの調整は、クエン酸、乳酸、酢酸、グルクロン酸、アスコルビン酸などの有機酸や、炭酸を用いて行えばよいが、中でもクエン酸を用いてpHの調整を行うことが、認知症の予防効果や改善効果の観点や、医薬品素材や食品素材などを製造するための安全性の確保の観点から好ましい。クエン酸は、例えばオキアミの破砕物の水懸濁液1重量部に対して0.001~0.03重量部用いればよい。
オキアミの破砕物を酵素処理した後、例えば処理液を70~75℃に加温して10分間~3時間インキュベートすることでプロテアーゼの失活を行ってから、処理液に含まれるオイル画分を回収する。処理液からのオイル画分の回収は、例えば、室温環境下において、脱水型デカンタを用いて処理液を遠心分離することによってオイル画分を含む液分と固形分に分離した後、得られたオイル画分を含む液分を濃縮型デカンタを用いて遠心分離することによってオイル画分と水画分に分離することで行えばよい。
最後に水画分から分離したオイル画分を乾燥することで、目的物であるオキアミ由来の組成物を得る。オイル画分の乾燥は、例えばフリーズドライ法やスプレードライ法や熱風乾燥法などによって行うことができる。目的物であるオキアミ由来の組成物が固形物として得られた場合、顆粒状や粉末状に粉砕してもよい。こうして得られるオキアミ由来の組成物が先に述べた成分を有することは、後に述べる実施例に記載の方法で分析することができる。
本発明の認知症の予防および/または改善剤の有効成分とするオキアミ由来の組成物は、例えば、飲食品(その添加物を含む)に配合して飲食したり、医薬品や医薬部外品として経口服用したりすることができる。その摂取量は、適用対象者の年齢や性別、症状の程度などに基づいて適宜決定することができ、適量を摂取することにより、認知症、とりわけ脳血管性認知症を予防や改善する効果をもたらす。
飲食品は、一般的な飲食品の他、例えば、健康食品、機能性食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品など)、栄養補助食品、特別用途食品(病者用食品、乳児用調製粉乳、妊産婦・授乳婦用粉乳、嚥下困難者用食品など)であってもよい。飲食品の形態としては、即席食品類(即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品など)、飲料類(清涼飲料、野菜飲料、粉末飲料、ドリンク剤など)、スープ類、ゼリー類、小麦粉製品(パン、パスタ、麺、ケーキミックス、パン粉など)、菓子類(クッキー、ビスケット、スナック、クラッカー、和菓子など)、調味料(ソース、トマト加工調味料、風味調味料、液体調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレーの素、シチューの素など)、油脂類(マヨネーズなど)、乳製品(乳飲料、ヨーグルト、クリームなど)、農産加工品(農産缶詰、シリアルなど)、畜産加工品(ハム、ベーコン、ソーセージ、焼き豚など)、冷凍食品、調理食品、総菜類、珍味類などが挙げられる。
医薬品や医薬部外品の形態は、固形の経口投与製剤(錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤など)であってもよいし、液状の経口投与製剤(溶液、懸濁液、乳濁液など)であってもよく、これらは常法に従ってそれぞれの製剤に応じた添加物を用いて調製することができる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
製造参考例1:本発明の認知症の予防および/または改善剤の有効成分とするオキアミ由来の組成物の調製(その1)
三陸地方で漁獲されたイサダ(ツノナシオキアミ)の無加水冷凍ブロック(-50℃保存のもの)10tを-5℃で解凍し、市販のミートチョッパーを用いて粗く破砕した後、市販のマスコロイダーを用いてペースト状になるまで破砕した。得られたオキアミの破砕物10tに5tの純水を加えて撹拌することで調製したオキアミの破砕物の水懸濁液15tに、麹菌由来のプロテアーゼであるコクラーゼP顆粒(三菱ケミカルフーズ社製)50kgを加え、さらにクエン酸150kgを加えることで液のpHを3~4に調整し、50℃で酵素処理した。1時間後、処理液を70℃に加温して30分間インキュベートすることでプロテアーゼの失活を行った。処理液を室温まで冷却してから、市販の脱水型デカンタを用いて処理液を遠心分離することで、オイル画分を含む液分13tを固形分から分離した。次に、得られたオイル画分を含む液分を市販の濃縮型デカンタを用いて遠心分離することで、オイル画分1.7tを水画分から分離した。得られたオイル画分(赤色ないし桃色のオイル状物)をスプレードライした後、得られた固形物を粉砕することで、目的物である茶褐色の粉末状のイサダ由来の組成物374gを得た。
こうして得られたイサダ由来の組成物は、リン脂質を約12重量%の割合で、中性脂質を約10重量%の割合で、タンパク質ないしペプチドを約70重量%の割合で、水分を約2重量%の割合で、炭化水素や灰分などからなる残部を約6重量%の割合で含むものであった。リン脂質の主たる内訳は、ジアシル型リン脂質が約10重量%でアルキル型リン脂質が約2重量%であった(両者の含有比は重量比でおよそ前者1に対して後者0.2)。タンパク質ないしペプチドは、少なくとも200~10,000の分子量を有する画分を含んでいた。また、このイサダ由来の組成物は、アスタキサンチンを約285ppmの割合で含んでおり、リン脂質や中性脂質を構成する脂肪酸として、DHAを約1.6重量%の割合で、EPAを約3.9重量%の割合で含んでいた(両者の含有比は重量比でおよそ前者1に対して後者2.4)。
イサダ由来の組成物の組成は、脂質(リン脂質+中性脂質)についてはBligh-Dyer法にて、タンパク質ないしペプチドについては燃焼法にて、水分については赤外線水分計を用いて、炭化水素や灰分などからなる残部については直接炭化法にて明らかにした。
イサダ由来の組成物に含まれるリン脂質と中性脂質のそれぞれの割合は、Bligh-Dyer法にてイサダ由来の組成物から抽出した脂質を、10mg/mLの濃度になるようにクロロホルムに溶解し、その1μLを分析サンプルとして薄層クロマトグラフィー水素炎イオン化検出器(LSIメディエンス社製イアトロスキャン)に供することで分析した。薄層クロマトグラフィーによるリン脂質と中性脂質の分離は、クロロホルム/メタノール/水(42:24:2.5)で1次展開した後、ヘキサン/ジエチルエーテル(50:30)で2次展開することで行った。
ジアシル型リン脂質とアルキル型リン脂質のそれぞれの割合は、Bligh-Dyer法にてイサダ由来の組成物から抽出した脂質を、0.3mg/mLの濃度になるようにクロロホルム/メタノール(2:1)に溶解し、その30μLを分析サンプルとして高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供することで分析した。HPLCは、装置として日本分光社のHPLC2000シリーズ(Jasco AS 2057-Plus,Jasco Co 2065-Plus,Jasco PU 2089-iPlus)を用い、カラムはLichrospher 100 Diol 250×4mm(5μm)(Agilent社製)を用いた。50℃のカラム温度で、溶出液Aとしてn-ヘキサン/2-プロパノール/酢酸(82:17:1)+0.08%トリエチルアミン、溶出液Bとして2-プロパノール/水/酢酸(85:14:1)+0.08%トリエチルアミンを、溶出液A95%/溶出液B5%(23分間グラジエント)、溶出液A60%/溶出液B40%(4分間グラジエント)、溶出液A15%/溶出液B85%(1分間ホールドの後に4分間グラジエント)、溶出液A95%/溶出液B5%(10分間ホールド)の条件で送液し(流速:1mL/min)、ジアシル型リン脂質とアルキル型リン脂質を分離した。分離したジアシル型リン脂質とアルキル型リン脂質は、Corona荷電化粒子検出器(Thermo社製)を用いて検出した。分析サンプルに含まれるそれぞれ定量は、1-hexadecenoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphocoline(フナコシ社製)を用いて検量線を作成して行った。
タンパク質ないしペプチドの分子量による分画は、イサダ由来の組成物0.3gに、1% Tween20/0.05M Tris-HCl pH6.8を5mL添加し、3分間ホモジナイズした後、9000rpm,4℃,5min遠心し、上清を回収する操作を合計3回行い、得られた抽出液15mLを用いて常法に従って行った。
イサダ由来の組成物に含まれるアスタキサンチンの割合は、Bligh-Dyer法にてイサダ由来の組成物から抽出した脂質を酵素処理することで、エステル型のアスタキサンチンを遊離型のアスタキサンチンに分解し、その30μLを分析サンプルとしてHPLCに供することで分析した。HPLCは、装置としてAgilent社の1220 infinity LCシステムを用い、カラムはShodex Asahipak NH2-50 4E,5.0×4.6×250mm(Shodex社製)を用いた。25℃のカラム温度で、溶出液としてn-ヘキサン/2-プロパノール/メタノール(75:15:15)+トコフェロール5μg/mLを送液し(流速:1mL/min)、UV(紫外可視分光)470nmにて遊離型のアスタキサンチンを検出した。分析サンプルに含まれる遊離型のアスタキサンチンの定量は、アスタキサンチン標品(Dr.Ehrenstorfer社製)を用いて検量線を作成して行った。
イサダ由来の組成物に含まれるDHAとEPAのそれぞれの割合は、Bligh-Dyer法にてイサダ由来の組成物から抽出した脂質をメチルエステル化処理することで、リン脂質や中性脂質を構成するEPAとDHAをメチルエステルに変換した後、n-ヘキサンで希釈し、その1μLを分析サンプルとしてガスクロマトグラフィー(GC)に供することで分析した。GCは、装置としてAgilent社のGCシステム 7890Bを用い、カラムはOmegawaxTM 320(0.32mmI.D.×30mdf=0.25μm)(SUPELCO社製)を用いた。分析サンプルに含まれるメチルエステル化されたEPAとDHAの検出と定量は、水素炎イオン化検出法にて行った。なお、分析時のカラム温度は200℃、注入口温度は240℃、検出器温度も240℃とした。
製造参考例2:本発明の認知症の予防および/または改善剤の有効成分とするオキアミ由来の組成物の調製(その2)
麹菌由来のプロテアーゼとしてコクラーゼP顆粒(三菱ケミカルフーズ社製)のかわりにオリエンターゼOP(エイチビィアイ社製)を用い、クエン酸のかわりに炭酸を用いてpHの調整を行うこと以外は製造参考例1と同様にして、目的物である粉末状のイサダ由来の組成物を得た。
実験例1:オキアミ由来の組成物の脳微小血管障害性認知症に対する作用(その1)
(実験方法)
10週齢の雄のC57BL/6Jマウスに、普通食飼料(オリエンタル酵母工業社製標準飼料MF)に製造参考例1で得たイサダ由来の組成物を0.4重量%の割合で添加した飼料を4週間与えた。その後、マウスに対し、微小コイル(内径:0.18mm)を用いて左側の総頸動脈を狭窄させ、アメロイドコンストリクター(Research Instruments社製)を用いて右側の総頸動脈を緩徐に狭窄させて最終的に閉塞させる左側総頸動脈狭窄・右側総頸動脈緩徐閉塞術(Asymmetric Common Carotid Artery Surgery:ACAS)を施行して脳微小血管障害性認知症モデルとし、さらに4週間飼育した。飼育は、昼夜逆転させた部屋で行い、水は自由摂取とした。ACASを施行した2週後にRotarod Test行い、4週後にMorris Water Maze Testを行なって、協調運動、平衡感覚、筋力、空間参照記憶(長期記憶)を評価した。実験は、岩手医科大学動物実験委員会の許可を受け、岩手医科大学動物実験指針ならびに動物の保護および管理に関する法律に従って実施した。
Rotarod Testは、マウス用ロータロッド(室町機械社製MK-610A)を用いて行った。事前準備としてマウスをロータ(直径30mm)に載せ、装置をスタートさせてロータの回転速度を10rpmで一定にして120秒間歩かせた。次にテストに移り、マウスをロータに載せ、装置をスタートさせてロータの回転速度を初速度5rpmから終速度50rpmまで加速させながら300秒間歩かせた。マウスがロータから落下するか落下せずに300秒間歩き続けた時点でテストを終了した。1匹あたり3回のテストを15分の間隔を空けて行い、テストを終了した後に平均落下潜時を求め、協調運動、平衡感覚、筋力を評価した。
Morris Water Maze Testは、次のようにして行った。円形のプール(直径116cm×高さ55cm)を準備し、深さ30cm程度まで白色の入浴剤(アース製薬社製)を含む水で満たした。水温は20±1℃とし、定期的に確認した。プールの内壁には、マウスが泳ぐ際の目印となるように、北の方角に赤の円形のシールを、東の方角に黄の正三角形のシールを、西の方角に緑の上向き矢印のシールを、南の方角に青の正方形のシールをそれぞれ貼った。また、装置全体を暗幕で覆い、トライアル中はマウスが実験者を見ることができないようにした。プール内を4分割し、その1つの領域の中心に透明で円形のプラットフォーム(直径8cm)を設置した。テストは6日間連続で行い、マウスに1日あたり装置馴致を3回行わせた後に訓練試行を5回行わせた。マウスの水からの逃避行動をカメラ(Logicool社製Logicool HD Webcam C615)で撮影した。テストを行った6日間、プラットフォームを設置する位置は一つの場所に固定し、マウスを入水させる領域(プラットフォームを設置した領域以外の領域)は1回のトライアルごとに変更した。装置馴致では、マウスにプラットフォームの位置を記憶させるために、プラットフォームを水面より1cm高くして設置し、初めにマウスをプラットフォームの上に30秒間載せてから、プール内に放って入水させ、20秒間自由に泳がせてプラットフォームを探索させることを、10秒以上の間隔を空けて3回繰り返した。訓練試行では、マウスがプラットフォームの位置を記憶しているかどうかを確認するために、プラットフォームを水面より1cm低くして設置し、マウスをプール内に放って入水させ、90秒間自由に泳がせて水面下に設置したプラットフォームを探索させることを、5分以上の間隔を空けて5回繰り返した。90秒の間にマウスがプラットフォームに行き着けた場合にはその時間を記録した。行き着けなかった場合には90秒が経過した時点で実験者がマウスを手でプラットフォームまで誘導し、プラットフォームの上に15秒間載せ、105秒をプラットフォームに行き着けた時間とした。マウスがプラットフォームに行き着くまでの平均時間に基づいて、空間参照記憶(長期記憶)を評価した。
(実験結果)
Rotarod Testの結果を図1に、Morris Water Maze Testの結果を図2にそれぞれ示す(図中の検体1+ACAS、**:P<0.01,***:P<0.001)。なお、図1と図2には、普通食飼料だけを4週間与えて飼育した後、ACASを施行し、さらに4週間飼育したマウスについての、ACASを施行した2週後に行ったRotarod Testの結果と4週後に行ったMorris Water Maze Testの結果(図中のMF+ACAS)を示すとともに、普通食飼料だけを4週間与えて飼育した後、ACASを施行せず、さらに4週間飼育したマウスについての、飼育を開始してから6週後に行ったRotarod Testの結果と8週後に行ったMorris Water Maze Testの結果(図中のMF)も示す。図1と図2から明らかなように、Rotarod TestとMorris Water Maze Testのいずれにおいても、製造参考例1で得たイサダ由来の組成物を普通食飼料に添加したことによる脳微小血管障害性認知症に対する有意な改善効果、即ち、前者においてはマウスがロータから落下するまでの時間の有意な延長が認められ、後者においてはマウスがプラットフォームに行き着くまでの時間の有意な短縮が認められた。
製造参考例3:本発明の認知症の予防および/または改善剤の有効成分とするオキアミ由来の組成物の調製(その3)
三陸地方で漁獲されたイサダ(ツノナシオキアミ)の無加水冷凍ブロック(-50℃保存のもの)のかわりに20%加水冷凍ブロック(-50℃保存のもの)を用い、プロテアーゼの失活時間を30分間のかわりに1時間とすること以外は製造参考例1と同様にして、目的物である粉末状のイサダ由来の組成物を得た。得られたイサダ由来の組成物は、リン脂質を約7重量%の割合で、中性脂質を約10重量%の割合で、タンパク質ないしペプチドを約60重量%の割合で、水分を約5重量%の割合で、炭化水素や灰分などからなる残部を約18重量%の割合で含むものであった。
実験例2:オキアミ由来の組成物の脳微小血管障害性認知症に対する作用(その2)
製造参考例3で得たイサダ由来の組成物の脳微小血管障害性認知症に対する作用を、実験例1において採用した10週齢の雄のC57BL/6Jマウスを用いる方法と同じ方法により、Rotarod TestとMorris Water Maze Testに基づいて評価した。Rotarod Testの結果を図3に、Morris Water Maze Testの結果を図4にそれぞれ示す(図中の検体1’+ACAS、:P<0.05,***:P<0.001)。なお、図3と図4には、普通食飼料だけを4週間与えて飼育した後、ACASを施行し、さらに4週間飼育したマウスについての、ACASを施行した2週後に行ったRotarod Testの結果と4週後に行ったMorris Water Maze Testの結果(図中のMF+ACAS)を示すとともに、普通食飼料だけを4週間与えて飼育した後、ACASを施行せず、さらに4週間飼育したマウスについての、飼育を開始してから6週後に行ったRotarod Testの結果と8週後に行ったMorris Water Maze Testの結果(図中のMF)も示す。また、図3と図4には、普通食飼料に製造参考例3で得たイサダ由来の組成物から分離した脂質(リン脂質+中性脂質、重量比は約7:10)を0.067重量%の割合で添加(製造参考例3で得たイサダ由来の組成物を0.4重量%の割合で添加した際の脂質の添加量に相当)した飼料を4週間与えて飼育した後、ACASを施行し、さらに4週間飼育したマウスについての、ACASを施行した2週後に行ったRotarod Testの結果と4週後に行ったMorris Water Maze Testの結果(図中の検体2+ACAS、:P<0.05)も示す。図3と図4から明らかなように、Rotarod TestとMorris Water Maze Testのいずれにおいても、製造参考例3で得たイサダ由来の組成物を普通食飼料に添加したことによる脳微小血管障害性認知症に対する有意な改善効果、即ち、前者においてはマウスがロータから落下するまでの時間の有意な延長が認められ、後者においてはマウスがプラットフォームに行き着くまでの時間の有意な短縮が認められた。一方、製造参考例3で得たイサダ由来の組成物から分離した脂質を普通食飼料に添加した場合、脳微小血管障害性認知症に対する改善傾向が認められたが有意なものではなかった。従って、製造参考例3で得たイサダ由来の組成物が発揮する脳微小血管障害性認知症に対する優れた改善効果には、脂質以外の組成物の構成成分の存在が重要であることが示唆された。
製剤例1:ビスケット
以下の成分組成からなるオキアミ由来の組成物を含むビスケットを自体公知の方法で製造した。
製造参考例1で得たイサダ由来の組成物 1
薄力粉 32
全卵 16
バター 16
砂糖 24
水 10
ベーキングパウダー 1(単位:重量%)
製剤例2:錠剤
以下の成分組成からなるオキアミ由来の組成物を含む錠剤を自体公知の方法で製造した。
製造参考例1で得たイサダ由来の組成物 1
乳糖 80
ステアリン酸マグネシウム 19(単位:重量%)
本発明は、脳血管性認知症などの認知症の予防および/または改善剤を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。

Claims (8)

  1. オキアミ由来の組成物を有効成分とする、認知症の予防および/または改善剤。
  2. オキアミ由来の組成物がリン脂質を3~40重量%の割合で含む、請求項1記載の認知症の予防および/または改善剤。
  3. オキアミ由来の組成物が中性脂質を3~40重量%の割合で含む、請求項1または2記載の認知症の予防および/または改善剤。
  4. オキアミ由来の組成物がタンパク質ないしペプチドを40~80重量%の割合で含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の認知症の予防および/または改善剤。
  5. 認知症が脳血管性認知症である、請求項1ないし4のいずれかに記載の認知症の予防および/または改善剤。
  6. 水中に懸濁したオキアミの破砕物を、pH3~4の条件下で麹菌由来のプロテアーゼを用いて酵素処理することによって得られるオイル画分を乾燥することで、有効成分とするオキアミ由来の組成物を調製する工程を含む、認知症の予防および/または改善剤の製造方法。
  7. pHの調整を有機酸および/または炭酸を用いて行う、請求項6記載の認知症の予防および/または改善剤の製造方法。
  8. 有機酸がクエン酸である、請求項7記載の認知症の予防および/または改善剤の製造方法。
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