JP2022159239A - ガラス体 - Google Patents

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Kazuaki Oya
清美 林
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夕希 寺岡
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Abstract

【課題】表面の広い領域に亘って抗菌性能を発現することができる、ガラス体を提供することを目的とする。【解決手段】本発明に係るガラス体は、第1面及び第2面を有する板状の基材と、前記第1面に形成された抗菌膜と、を備え、前記抗菌膜は、前記第1面に形成される保持層と、前記保持層に保持され、抗菌性の金属微粒子を含有する抗菌微粒子と、を備え、前記保持層は、前記金属微粒子と同じ元素の金属イオンを含有している。【選択図】図1

Description

本発明は、ガラス体に関する。
特許文献1には、抗菌性を有する化粧板が開示されている。この化粧板は、基板と、この基板上に積層される表面樹脂層と、表面樹脂層に保持されるAg,Cu等の金属粒子と、備えており、金属粒子によって抗菌性能を発現している。
特開2017-177802号公報
ところで、上記のような金属粒子は間隔をおいて配置されるため、金属粒子が配置されていない箇所では、抗菌性能が発揮されない。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、表面の広い領域に亘って抗菌性能を発現することができる、ガラス体を提供することを目的とする。
項1.第1面及び第2面を有する板状の基材と、
前記第1面に形成された抗菌膜と、
を備え、
前記抗菌膜は、
前記第1面に形成される保持層と、
前記保持層に保持され、抗菌性の金属微粒子を含有する抗菌微粒子と、を備え、
前記保持層は、前記金属微粒子と同じ元素の金属イオンを含有している、ガラス体。
項2.前記保持層は、三次元ネットワーク結合を構成する金属酸化物を含有している、項1に記載のガラス体。
項3.前記金属イオンは、1価または2価の銅イオンである、項1または2に記載にガラス体。
項4.前記金属微粒子は、Cu,Cu2O,CuOの少なくとも1つを主成分としている、項1から3のいずれかに記載にガラス体。
項5.前記保持層は、金属イオンと錯体を形成可能な陰イオンをさらに含む、項1から4のいずれかに記載のガラス体。
項6.前記抗菌微粒子の平均粒径は、0.02μm~10μmである、項1から5のいずれかに記載のガラス体。
項7.前記抗菌微粒子の平均粒径は、前記保持層の厚みよりも大きい、項1から6のいずれかに記載のガラス体。
項8.前記保持層における隣接する前記抗菌微粒子の間隔が、0.5μm以上100μm以下である、項1から7のいずれかに記載のガラス体。
項9.前記抗菌膜の固形成分に対する、前記金属微粒子及び前記金属イオンの合計含有量が、0.1質量%以上25質量%以下である、項1から8のいずれかに記載のガラス体。
項10.前記抗菌膜は、光触媒微粒子をさらに含有している、項1から9のいずれかに記載のガラス体。
項11.ヘイズ率が、2%以下である、項1から10のいずれかに記載のガラス体。
項12.前記保持層の膜厚が、10nm以上500nm以下である、項1から11のいずれかに記載のガラス体。
本発明によれば、表面の広い領域に亘って抗菌性能を発現することができる。
本発明に係るガラス体の一実施形態を示す断面図である。 図1の拡大断面図である。 図1のガラス体における抗菌微粒子の作用を説明する模式図である。 実施例、比較例1,比較例2における所定時間毎の銅イオンの溶出量を測定したグラフである。 実施例の抗菌膜中の銅の分布を示す図である。 比較例1の抗菌膜中の銅の分布を示す図である。 比較例2の抗菌膜中の銅の分布を示す図である。 実施例の抗菌膜の表面性状をSEMで観察した写真である。 図8の写真に写る抗菌微粒子の拡大図である。
以下、本発明に係るガラス体の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係るガラス体は、カメラ、ディスプレイ、キーボード、電子黒板等の被保護部材を保護し、且つこれらの部材を外部から視認可能に構成されている。なお、ディスプレイとは、一般的なデスクトップ用のディスプレイのほか、モバイルPC、タブレットPC、カーナビゲーションなどの車載機器等の種々の機器に用いられるディスプレイが対象となる。その他、このガラス体は、複写機やスキャナーの原稿ガラスとして用いることもできる。この場合の被保護部材は、ガラス体によって覆われる複写機やスキャナー等の電子機器の部品となる。また、上記以外の被保護材を覆うガラス体として用いたり、あるいは仕切り材等を用途とする抗菌パネルとして利用することもできる。
図1はガラス体の断面図である。図1に示すように、本実施形態に係るガラス体10は、第1面及び第2面を有するガラス板1と、このガラス板1の第1面に積層される抗菌膜2と、を備えている。そして、このガラス体10は、上述した被保護部材100を覆うように配置される。このとき、ガラス板1の第2面が被保護部材100と向き合うように配置され、抗菌膜2が外部を向くように配置される。以下、詳細に説明する。
<1.ガラス板>
ガラス板1は、例えば、汎用のソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、無アルカリガラス等その他のガラスにより形成することができる。また、ガラス板1は、フロート法により成形することができる。この製法によると平滑な表面を有するガラス板1を得ることができる。但し、ガラス板10は、主面に凹凸を有していてもよく、例えば型板ガラスであってもよい。型板ガラスは、ロールアウト法と呼ばれる製法により成形することができる。この製法による型板ガラスは、通常、ガラス板の主面に沿った一方向について周期的な凹凸を有する。
フロート法は、溶融スズなどの溶融金属の上に溶融ガラスを連続的に供給し、供給した溶融ガラスを溶融金属の上で流動させることにより帯板状に成形する。このように成形されたガラスをガラスリボンと称する。
ガラスリボンは、下流側に向かうにつれて冷却され、冷却固化された上で溶融金属からローラにより引き上げられる。そして、ローラによって徐冷炉へと搬送され、徐冷された後、切断される。こうして、フロートガラス板が得られる。ここで、フロートガラス板において、溶融金属と接触していた面をボトム面と称し、それとは反対の面をトップ面と称することとする。ボトム面及びトップ面は、未研磨であってよい。なお、ボトム面は、溶融金属と接していたため、溶融金属がスズである場合には、ボトム面に含有される酸化スズの濃度が、トップ面に含有される酸化スズの濃度よりも大きくなる。そして、本実施形態においては、ガラス板1の第1面がボトム面であり、第2面がトップ面となる。
また、ボトム面、つまり第1面は、溶融金属から引き上げられた後、ローラによって搬送されるため、ローラによって、いわゆるマイクロクラックと呼ばれる傷が生じることが知られている。したがって、一般的に、フロートガラス板のボトム面にはトップ面よりも傷が多く生じる。
ガラス板1の厚さは、特に制限されないが、軽量化のためには薄いほうがよい。例えば、0.3~3mmであることが好ましく、0.6~2.5mmである事がさらに好ましい。これは、ガラス板10が薄すぎると、強度が低下するからであり、厚すぎると、ガラス体10を介して視認される被保護部材100に歪みが生じるおそれがある。
ガラス板1は、通常、平板であってよいが、曲板であってもよい。特に、保護すべき被保護部材の表面形状が曲面等の非平面である場合、ガラス板1はそれに適合する非平面形状の主面を有することが好ましい。この場合、ガラス板1は、その全体が一定の曲率を有するように曲げられていてもよく、局部的に曲げられていてもよい。ガラス板1の主面は、例えば複数の平面が曲面で互いに接続されて構成されていてもよい。ガラス板1の曲率半径は、例えば5000mm以下とすることができる。この曲率半径の下限値は、例えば、10mm以上とすることができるが、特に局部的に曲げられている部位ではさらに小さくてもよく、例えば1mm以上とすることができる。
次のような組成のガラス板を用いることもできる。以下では、ガラス板1の成分を示す%表示は特に断らない限り、すべてmol%を意味する。また、本明細書において、「実質的に構成される」とは、列挙された成分の含有率の合計が99.5質量%以上、好ましくは99.9質量%以上、より好ましくは99.95質量%以上を占めることを意味する。「実質的に含有しない」とは、当該成分の含有質が0.1質量%以下、好ましくは0.05質量%以下であることを意味する。
本発明者は、フロート法によるガラス板の製造に適したガラス組成として広く用いられているフロート板ガラスの組成(以下、「狭義のSL」、または単に「SL」と呼ぶことがある)を元に、当業者がフロート法に適したソーダライムシリケートガラス(以下、「広義のSL」と呼ぶことがある)と見做している組成範囲、具体的には、以下のような質量%の範囲内で、T2、T4等の特性をできるだけ狭義のSLに近似させながら、狭義のSLの化学強化特性を向上させることのできる組成物を検討した。
SiO2 65~80%
Al23 0~16%
MgO 0~20%
CaO 0~20%
Na2O 10~20%
2O 0~5%
以下、ガラス板1のガラス組成を構成する各成分について説明する。
(SiO2
SiO2は、ガラス板1を構成する主要成分であり、その含有率が低すぎるとガラスの耐水性などの化学的耐久性および耐熱性が低下する。他方、SiO2の含有率が高すぎると、高温でのガラス板1の粘性が高くなり、溶解および成形が困難になる。したがって、SiO2の含有率は、66~72mol%の範囲が適切であり、67~70mol%が好ましい。
(Al23
Al23はガラス板1の耐水性などの化学的耐久性を向上させ、さらにガラス中のアルカリ金属イオンの移動を容易にすることにより化学強化後の表面圧縮応力を高め、かつ、応力層深さを深くするための成分である。他方、Al23の含有率が高すぎると、ガラス融液の粘度を増加させ、T2、T4を増加させると共にガラス融液の清澄性が悪化し高品質なガラス板を製造することが難しくなる。
したがって、Al23の含有率は、1~12mol%の範囲が適切である。Al23の含有率は10mol%以下が好ましく、2mol%以上が好ましい。
(MgO)
MgOはガラスの溶解性を向上させる必須の成分である。この効果を十分に得る観点から、このガラス板1ではMgOが添加されていることが好ましい。また、MgOの含有率が8mol%を下回ると、化学強化後の表面圧縮応力が低下し、応力層深さが浅くなる傾向にある。一方、適量を越えて含有率を増やすと、化学強化により得られる強化性能が低下し、特に表面圧縮応力層の深さが急激に浅くなる。この悪影響は、アルカリ土類金属酸化物の中でMgOが最も少ないが、このガラス板1においては、MgOの含有率は15mol%以下である。また、MgOの含有率が高いと、T2、T4を増加させると共にガラス融液の清澄性が悪化し高品質なガラス板を製造することが難しくなる。
したがって、このガラス板1においては、MgOの含有率は1~15mol%の範囲であり、8mol%以上、12mol%以下が好ましい。
(CaO)
CaOは、高温での粘性を低下させる効果を有するが、適度な範囲を超えて含有率が高すぎると、ガラス板1が失透しやすくなるとともに、ガラス板1におけるナトリウムイオンの移動が阻害されてしまう。CaOを含有しない場合に化学強化後の表面圧縮応力が低下する傾向にある。一方、8mol%を超えてCaOを含有すると、化学強化後の表面圧縮応力が顕著に低下し、圧縮応力層深さが顕著に浅くなるとともに、ガラス板1が失透しやすくなる。
したがって、CaOの含有率は1~8mol%の範囲が適切である。CaOの含有率は、7mol%以下が好ましく、3mol%以上が好ましい。
(SrO、BaO)
SrO、BaOは、ガラス板1の粘性を大きく低下させ、少量の含有では液相温度TLを低下させる効果がCaOより顕著である。しかし、SrO、BaOは、ごく少量の添加であっても、ガラス板1におけるナトリウムイオンの移動を顕著に妨げ、表面圧縮応力を大きく低下させ、かつ、圧縮応力層の深さがかなり浅くなる。
したがって、このガラス板1においては、SrO、BaOを実質的に含有しないことが好ましい。
(Na2O)
Na2Oは、ナトリウムイオンがカリウムイオンと置換されることにより、表面圧縮応力を大きくし、表面圧縮応力層の深さを深くするための成分である。しかし、適量を超えて含有率を増やすと、化学強化処理でのイオン交換による表面圧縮応力の発生を、化学強化処理中の応力緩和が上回るようになり、結果として表面圧縮応力が低下する傾向にある。
また、Na2Oは溶解性を向上させ、T4、T2を低下させるための成分である一方、Na2Oの含有率が高すぎると、ガラスの耐水性が著しく低下する。ガラス板1においては、Na2Oの含有率が10mol%以上であればT4、T2を低下させる効果が充分に得られ、16mol%を超えると応力緩和による表面圧縮応力の低下が顕著になる。
したがって、本実施形態のガラス板1におけるNa2Oの含有率は、10~16mol%の範囲が適切である。Na2Oの含有率は、12mol%以上が好ましく、15mol%以下がより好ましい。
(K2O)
2Oは、Na2Oと同様、ガラスの溶解性を向上させる成分である。また、K2Oの含有率が低い範囲では、化学強化におけるイオン交換速度が増加し、表面圧縮応力層の深さが深くなる一方で、ガラス板1の液相温度TLを低下させる。したがってK2Oは低い含有率で含有させることが好ましい。
一方、K2Oは、Na2Oと比較して、T4、T2を低下させる効果が小さいが、K2Oの多量の含有はガラス融液の清澄を阻害する。また、K2Oの含有率が高くなるほど化学強化後の表面圧縮応力が低下する。したがって、K2Oの含有率は0~1mol%の範囲が適切である。
(Li2O)
Li2Oは、少量含有されるだけであっても圧縮応力層の深さを著しく低下させる。また、Li2Oを含むガラス物品を硝酸カリウム単独の溶融塩で化学強化処理する場合、Li2Oを含まないガラス物品の場合と比較して、その溶融塩が劣化する速度が著しく速い。具体的には、同じ溶融塩で繰り返し化学強化処理を行なう場合に、より少ない回数でガラス表面に形成される表面圧縮応力が低下する。したがって、本実施形態のガラス板1においては、1mol%以下のLi2Oを含有してもよいが、実質的にLi2Oを含有しない方が好ましい。
(B23
23は、ガラス板1の粘性を下げ、溶解性を改善する成分である。しかし、B23の含有率が高すぎると、ガラス板1が分相しやすくなり、ガラス板1の耐水性が低下する。また、B23とアルカリ金属酸化物とが形成する化合物が揮発してガラス溶解室の耐火物を損傷するおそれが生じる。さらに、B23の含有は化学強化における圧縮応力層の深さを浅くしてしまう。したがって、B23の含有率は0.5mol%以下が適切である。本発明では、B23を実質的に含有しないガラス板1であることがより好ましい。
(Fe23
通常Feは、Fe2+又はFe3+の状態でガラス中に存在し、着色剤として作用する。Fe3+はガラスの紫外線吸収性能を高める成分であり、Fe2+は熱線吸収性能を高める成分である。ガラス板1をディスプレイのカバーガラスとして用いる場合、着色が目立たないことが求められるため、Feの含有率は少ない方が好ましい。しかし、Feは工業原料により不可避的に混入することが多い。したがって、Fe23に換算した酸化鉄の含有率は、ガラス板1全体を100質量%として示して0.15質量%以下とすることがよく、0.1質量%以下であることがより好ましく、更に好ましくは0.02質量%以下である。
(TiO2
TiO2は、ガラス板1の粘性を下げると同時に、化学強化による表面圧縮応力を高める成分であるが、ガラス板1に黄色の着色を与えることがある。したがって、TiO2の含有率は0~0.2質量%が適切である。また、通常用いられる工業原料により不可避的に混入し、ガラス板1において0.05質量%程度含有されることがある。この程度の含有率であれば、ガラスに着色を与えることはないので、本実施形態のガラス板1に含まれてもよい。
(ZrO2
ZrO2は、とくにフロート法でガラス板を製造する際に、ガラスの溶融窯を構成する耐火レンガからガラス板1に混入することがあり、その含有率は0.01質量%程度であることが知られている。一方、ZrO2はガラスの耐水性を向上させ、また、化学強化による表面圧縮応力を高める成分である。しかし、ZrO2の高い含有率は、作業温度T4の上昇や液相温度TLの急激な上昇を引き起こすことがあり、またフロート法によるガラス板の製造においては、析出したZrを含む結晶が製造されたガラス中に異物として残留しやすい。したがって、ZrO2の含有率は0~0.1質量%が適切である。
(SO3
フロート法においては、ボウ硝(Na2SO4)など硫酸塩が清澄剤として汎用される。硫酸塩は溶融ガラス中で分解してガス成分を生じ、これによりガラス融液の脱泡が促進されるが、ガス成分の一部はSO3としてガラス板1中に溶解し残留する。本発明のガラス板1においては、SO3は0~0.3質量%であることが好ましい。
(CeO2
CeO2は清澄剤として使用される。CeO2により溶融ガラス中でO2ガスが生じるので、CeO2は脱泡に寄与する。一方、CeO2が多すぎると、ガラスが黄色に着色してしまう。そのため、CeO2の含有量は、0~0.5質量%が好ましく、0~0.3質量%がより好ましく、0~0.1質量%がさらに好ましい。
(SnO2
フロート法により成形されたガラス板において、成型時にスズ浴に触れた面はスズ浴からスズが拡散し、そのスズがSnO2として存在することが知られている。また、ガラス原料に混合させたSnO2は、脱泡に寄与する。本発明のガラス板1においては、SnO2は0~0.3質量%であることが好ましい。
(その他の成分)
本実施形態によるガラス板1は、上記に列挙した各成分から実質的に構成されていることが好ましい。ただし、本実施形態によるガラス板1は、上記に列記した成分以外の成分を、好ましくは各成分の含有率が0.1質量%未満となる範囲で含有していてもよい。
含有が許容される成分としては、上述のSO3とSnO2以外に溶融ガラスの脱泡を目的として添加される、As25、Sb25、Cl、Fを例示できる。ただし、As25、Sb25、Cl、Fは、環境に対する悪影響が大きいなどの理由から添加しないことが好ましい。また、含有が許容されるまた別の例は、ZnO、P25、GeO2、Ga23、Y23、La23である。工業的に使用される原料に由来する上記以外の成分であっても0.1質量%を超えない範囲であれば許容される。これらの成分は、必要に応じて適宜添加したり、不可避的に混入したりするものであるから、本実施形態のガラス板1は、これらの成分を実質的に含有しないものであっても構わない。
(密度(比重):d)
上記組成より、本実施形態では、ガラス板1の密度を2.53g・cm-3以下、さらには2.51g・cm-3以下、場合によっては2.50g・cm-3以下にまで減少させることができる。
フロート法などでは、ガラス品種間の密度の相違が大きいと、製造するガラス品種を切り換える際に溶融窯の底部に密度が高い方の溶融ガラスが滞留し、品種の切り換えに支障が生じる場合がある。現在、フロート法で量産されているソーダライムガラスの密度は約2.50g・cm-3である。したがって、フロート法による量産を考慮すると、ガラス板1の密度は、上記の値に近いこと、具体的には、2.45~2.55g・cm-3、特に2.47~2.53g・cm-3が好ましく、2.47~2.50g・cm-3がさらに好ましい。
(弾性率:E)
イオン交換を伴う化学強化を行うと、ガラス基板に反りが生じることがある。この反りを抑制するためには、ガラス板1の弾性率は高いことが好ましい。本発明によれば、ガラス板1の弾性率(ヤング率:E)を70GPa以上、さらには72GPa以上にまで増加させることができる。
以下、ガラス板1の化学強化について説明する。
(化学強化の条件と圧縮応力層)
ナトリウムを含むガラス板1を、ナトリウムイオンよりもイオン半径の大きい一価の陽イオン、好ましくはカリウムイオン、を含む溶融塩に接触させ、ガラス板1中のナトリウムイオンを上記の一価の陽イオンによって置換するイオン交換処理を行うことにより、本発明によるガラス板1の化学強化を実施することができる。これによって、表面に圧縮応力が付与された圧縮応力層が形成される。
溶融塩としては、典型的には硝酸カリウムを挙げることができる。硝酸カリウムと硝酸ナトリウムとの混合溶融塩を用いることもできるが、混合溶融塩は濃度管理が難しいため、硝酸カリウム単独の溶融塩が好ましい。
強化ガラス物品における表面圧縮応力と圧縮応力層深さとは、該物品のガラス組成だけではなく、イオン交換処理における溶融塩の温度と処理時間によって制御することができる。
以上のガラス板1は、硝酸カリウム溶融塩と接触させることによって、表面圧縮応力が非常に高く、かつ、圧縮応力層の深さが非常に深い強化ガラス物品を得ることができる。具体的には、表面圧縮応力が700MPa以上かつ圧縮応力層の深さが20μm以上である強化ガラス物品を得ることができ、さらに圧縮応力層の深さが20μm以上かつ表面圧縮応力が750MPa以上である強化ガラス物品を得ることもできる。
<2.抗菌膜>
次に、抗菌膜2について、図2を参照しつつ説明する。図2は抗菌膜の概略を示す拡大断面図である。図2に示すように、抗菌膜2は、ガラス板1の第1面に積層される保持層21と、この保持層21によって保持される抗菌微粒子22と、を備えている。以下、これらについて説明する。
<2-1.保持層>
保持層21は、抗菌微粒子を保持するバインダとしての役割を果たす無機化合物が含有されている。保持層21の無機化合物としては、Siの酸化物である酸化シリコンを含み、酸化シリコンを主成分とすることが好ましい。酸化シリコンを主成分とする保持層21は、膜の屈折率を低下させ、膜の反射率を抑制することに適している。保持層21は、酸化シリコン以外の成分を含んでいてもよく、酸化シリコンを部分的に含む成分を含んでいてもよい。
酸化シリコンを部分的に含む成分は、例えば、ケイ素原子及び酸素原子が交互に接続され、且つ三次元的に広がるシロキサン結合(Si-O-Si)の三次元ネットワーク構造を形成している。また、この部分のケイ素原子又は酸素原子に、両原子以外の原子、官能基その他が結合した成分である。ケイ素原子及び酸素原子以外の原子としては、例えば、窒素原子、炭素原子、水素原子、次段落に記述する金属元素を例示できる。官能基としては、例えば次段落にRとして記述する有機基を例示できる。このような成分は、ケイ素原子及び酸素原子のみから構成されていない点で、厳密には酸化シリコンではない。しかし、保持層21の特性を記述する上では、ケイ素原子及び酸素原子により構成されている酸化シリコン部分も「酸化シリコン」として取り扱うことが適当であり、当該分野の慣用にも一致する。本明細書では、酸化シリコン部分も酸化シリコンとして取り扱うこととする。以上の説明からも明らかなとおり、酸化シリコンにおけるシリコン原子と酸素原子との原子比は化学量論的(1:2)でなくてもよい。
保持層21は、酸化シリコン以外の金属酸化物、具体的にはケイ素以外を含む金属酸化物成分又は金属酸化物部分を含み得る。保持層21が含み得る金属酸化物は、特に制限されないが、例えば、Al、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の酸化物である。保持層21は、酸化物以外の無機化合物成分、例えば、窒化物、炭化物、ハロゲン化物等を含んでいてもよく、有機化合物成分を含んでいてもよい。特に、酸化チタン(TiO2)が含有されていると、後述するように、抗菌性能がさらに良くなる。
酸化シリコン等の金属酸化物は、加水分解可能な有機金属化合物から形成することができる。加水分解可能なシリコン化合物としては、式(1)で示される化合物を挙げることができる。
nSiY4-n (1)
Rは、アルキル基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロイル基及びアクリロイル基から選ばれる少なくとも1種を含む有機基である。Yは、アルコキシ基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種である加水分解可能な有機基、又はハロゲン原子である。ハロゲン原子は、好ましくはClである。nは、0から3までの整数であり、好ましくは0又は1である。
Rとしては、アルキル基、例えば炭素数1~3のアルキル基、特にメチル基が好適である。Yとしては、アルコキシ基、例えば炭素数1~4のアルコキシ基、特にメトキシ基及びエトキシ基が好適である。上記の式で示される化合物を2種以上組み合わせて用いてもよい。このような組み合わせとしては、例えばnが0であるテトラアルコキシシランと、nが1であるモノアルキルトリアルコキシシランとの併用が挙げられる。
式(1)で示される化合物は、加水分解及び重縮合の後、シリコン原子が酸素原子を介して互いに結合したネットワーク構造を形成する。この構造において、Rで示される有機基は、シリコン原子に直接結合された状態で含まれる。
さらに、保持層21には、1価または2価の銅イオンが含有されている。この銅イオンは、後述する抗菌微粒子22に含有される金属微粒子と同じ元素で構成されている。保持層21の固形成分に対する、銅イオンの含有量は、0.1質量%以上質量30%以下であることが好ましく、質量1%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。また、保持層21に銅イオンを取り込むためには、イオン結合した銅化合物(例えば硝酸銅、塩化銅等)の希釈液を添加することができる。これにより、保持層21には、銅イオンと錯体を形成可能な陰イオン(Cl-、NO3―等)が残存することがある。このように、保持層21に、銅イオンと錯体を形成可能な陰イオンが残存すると、保持層21に接する銅微粒子(抗菌微粒子)の部分では保護被膜が破壊されことで、銅微粒子が溶出しやすくなり、表面より保持層2に銅イオンがさらに溶け込みやすくなる。保持層21を調製する際に銅イオンと錯体を形成可能な陰イオン(Cl-、NO3―等)を加えても良い。なお、このような陰イオンが存在しなくても、例えば、膜中あるいは膜外から水が付着するなどして、銅微粒子は保持層2に溶出する。
保持層2には、無機酸化物の少なくとも一部として、無機酸化物微粒子をさらに含んでいる。無機酸化物微粒子は、保持層2内に分散されている。無機酸化物微粒子を構成する無機酸化物は、例えば、Si、Al、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物である。無機酸化物微粒子を複数種含有させることもできる。例えば、平均粒径が相違する複数の無機酸化物微粒子を含有させることができる。平均粒径の大きい無機酸化物微粒子としては、例えば、シリカ微粒子を採用することができる。シリカ微粒子は、例えば、コロイダルシリカを添加することにより抗菌膜2に導入できる。無機酸化物微粒子は、抗菌膜2に加えられた応力を、抗菌膜2を支持するガラス板1に伝達する作用に優れ、硬度も高い。したがって、無機酸化物微粒子の添加は、抗菌膜2の耐摩耗性を向上させる観点から有利である。無機酸化物微粒子は、抗菌膜2を形成するための塗工液に、予め形成した無機酸化物微粒子を添加することにより、抗菌膜2に供給することができる。
無機酸化物微粒子の平均粒径が大きすぎると、抗菌膜2が白濁することがあり、小さすぎると凝集して均一に分散させることが困難となる。この観点から、無機酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径は、特には限定されないが、例えば、50~150nmであることが好ましく、80~130nmであることがさらに好ましい。
なお、ここでは、無機酸化物微粒子の平均粒径を、一次粒子の状態で記述している。この点は後述する光触媒微粒子においても同じである。また、無機酸化物微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡を用いた観察により任意に選択した50個の微粒子の粒径を測定し、その平均値を採用して定めることとする。無機酸化物微粒子は、その含有量が多くなると、抗菌膜2が白濁するおそれがある。無機酸化物微粒子の含有量は、抗菌膜2において、例えば、10~50質量%であることが好ましく、15~45質量%であることが好ましい。
保持層21の厚みDは、例えば、10nm以上500nm以下であることが好ましく、20nm以上200nm以下であることがさらに好ましく、30nm以上80nm以下であることが特に好ましい。厚みDが厚すぎると、ヘイズ率が高くなったり、過度の着色が生じるおそれがある。一方、厚みDが薄すぎると、抗菌微粒子22を保持できず、保持層21から抗菌微粒子が離脱するおそれがある。また、耐久性が低くなるおそれもある。
<2-2.抗菌微粒子>
抗菌微粒子22は、抗菌機能を有する銅微粒子を含有することができる。すなわち、保持層21に拡散する銅イオンと同じ元素で構成された金属微粒子が含有されている。例えば、抗菌微粒子22は、銅微粒子の凝集体とすることができるが、銅微粒子のほか、分散剤や結着剤を含む凝集体とすることができる。あるいは、抗菌微粒子22を、凝集体ではない、銅微粒子とすることができる。但し、以下では説明の便宜のため、特に断りのない限り、「抗菌微粒子」との文言は銅微粒子の凝集体を意味することとする。凝集体を構成する銅微粒子の平均粒径は、例えば、10nm以上500nm以下であることが好ましく、15nm以上100nm以下であることがさらに好ましく、20nm以上80nm以下であることが特に好ましい。また、凝集体である抗菌微粒子22の平均粒径は、例えば、保持層21の最大厚みよりも大きく、例えば、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上5μm以下であることがさらに好ましく、1μm以上4μm以下であることが特に好ましい。これにより、抗菌微粒子22が、保持層21から突出し、抗菌機能を発揮する。なお、抗菌微粒子22が保持層21に覆われることもあるが、覆われていたとしても保持層21の薄いため、抗菌機能が大きく抑制されることはない。
また、保持層21に保持された抗菌微粒子22の間隔Lは、0.5μm以上100μm以下であることが好ましく、2μm70μm以下であることがさらに好ましく、3μm50μm以下であることが特に好ましい。抗菌微粒子22の間隔Lが狭すぎると、ガラス体の可視光透過率が低下するおそれがある。一方、抗菌微粒子22の間隔Lが広すぎると、抗菌微粒子22の数が少ないため、抗菌機能が低減するおそれがある。なお、抗菌微粒子22の平均粒径及び抗菌微粒子22間の間隔の測定方法は、後述する実施例の(2-4)項に記載している。
抗菌膜2に含有される抗菌微粒子の含有量は、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、18質量%以下、及び15質量%以下の順で好ましい。一方、下限値としては、0.1質量%以上、1質量%以上、3質量%以上の順で好ましい。
また、抗菌膜2の固形成分に対する、銅イオンと抗菌微粒子の合計の含有量は、0.1質量%以上25質量%以下とすることができる。
<2-3.抗菌膜の形成方法>
抗菌膜2の形成方法は、特には限定されないが、例えば、以下のように形成することができる。まず、上述したマトリクスを構成する材料、例えば、テトラエトキシシランを酸性条件下で溶液とし、前駆体液を生成する。また、上述した抗菌微粒子22を含む分散液、例えば、銅微粒子分散液をプロピレングリコール等によって希釈し、微粒子分散液を生成する。そして、前駆体液と微粒子分散液とを混合し、抗菌膜用コーティング液を生成する。このコーティング液中の抗菌微粒子22の濃度は、例えば、100~8000ppmであることが好ましく、500~5000ppmであることがさらに好ましい。抗菌微粒子22の濃度が高すぎると、ガラス体10の可視光透過率が低減し、またヘイズ率が高くなるおそれがある。一方、抗菌微粒子22の濃度が低すぎると、抗菌機能が発揮できないおそれがある。
次に、洗浄したガラス板1の第1面に、コーティング液を塗布する。塗布方法は特には限定されないが、例えば、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法などを採用することができる。その後、塗布したコーティング液をオーブンなどで、例えば、溶液中のアルコール分を揮発させるため、所定温度(例えば、80~120℃)で乾燥した後、例えば、加水分解及び有機鎖の分解のため、所定温度(例えば、200~500℃)で焼結させると、抗菌膜2を得ることができる。
<3.ガラス体の光学特性>
上記のように抗菌膜2が形成されたガラス体10の光学特性としては、例えば、可視光透過率が70%以上であることが好ましく、さらに85%以上、特に90%以上であることがさらに好ましい。また、ガラス体10のヘイズ率は、例えば2.0%以下、さらに1.5%以下、特に1.0%以下であることが好ましい。
<4.特徴>
本実施形態に係るガラス体10では、抗菌性能を有する銅が、微粒子(または凝集体)としての形態で保持層21によって保持されているのに加え、銅イオンが保持層21内に拡散されている。したがって、抗菌微粒子22が保持層21の表面で点在しているだけでなく、保持層21の内部に銅イオンが拡散しているため、抗菌膜2の全面に亘って抗菌性能を発現することができる。
また、例えば、抗菌微粒子を設けず、銅イオンのみが保持層に拡散していると、水などの液体が保持層に付着した場合、銅イオンが液体に溶出しやすくなり、抗菌性能が低下するおそれがある。これに対して、本実施形態では、保持層21内の銅イオンに加え、抗菌微粒子22を設けているため、図3に示すように、保持層21内の銅イオンの存在により、抗菌微粒子22の銅微粒子がイオン化し、銅イオンが保持層21内に拡散していく。したがって、保持層21内の銅イオンが銅微粒子によって補充されていくと考えられる。その結果、保持層21内の銅イオンが液体中に溶出したとしても、銅微粒子から銅イオンが保持層21内に補充されるため、抗菌性能の低下を抑制することができる。
また、保持層21に酸化チタンのような光触媒が含有されていると、抗菌膜2に紫外線が照射されたとき、抗菌性能が発現されるため、上述した銅微粒子及び銅イオンによる抗菌性能に加え、抗菌性能がさらに向上する。
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
<5-1>
保持層21の組成は特には限定されず、上述したように、銅イオンが含有され、抗菌微粒子22を保持できるような材料であればよい。また、上記実施形態では、抗菌性能を発現するものとして抗菌微粒子を有する抗菌膜を示したが、これらは抗菌性能のみならず、抗ウイルス性能を発現するものとすることもできる。
<5-2>
上記実施形態では、保持層21に銅イオンが含有され、且つ銅微粒子が保持されているが、抗菌性能を発現するためには銅以外であってもよい。すなわち、保持層21に含有される金属イオンの元素と、保持層21に保持される金属微粒子の元素が同じであればよく、例えば、銀などでもよい。
<5-3>
本発明に係るガラス体は、無色透明のほか、ガラス板1及び抗菌膜2の少なくとも1つに着色することで、有色透明、又は半透明にすることができる。
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例には限定されない。
(1)実施例及び比較例の準備
50mmx50mmのフロートガラス板上に、抗菌膜を積層することで、実施例、比較
例1,2に係るガラス体を形成した。まず、以下の通り、抗菌膜用のコーティング液を作製した。
(実施例)
以下の表1の(1)~(4)を調製し(単位はg、表2~4も同じ)、その混合液を室温で2時間撹拌し、TEOSの加水分解反応により前駆体液を得た。その後、この前駆体液に対し、(5)、(6)、(7)の順で、これらを撹拌しながら混合し、さらに、30分間室温で撹拌することでコーティング液を得た。このコーティング液をスピンコーティングによりガラス板に塗布し、10分の自然乾燥の後、300℃に設定したオーブン内で30分加熱し、抗菌膜を形成した。こうして、実施例1に係るガラス体が完成した。なお、抗菌膜の膜厚は、80~120nmであった。
Figure 2022159239000002
(比較例1)
以下の表2の組成を有する保持層用の前駆体液を調製した。そして、これらの混合溶液を60℃で7時間攪拌し、TEOSの加水分解反応により前駆体液を得た。
Figure 2022159239000003
この前駆体液に対し、以下の表3の組成の抗菌膜用コーティング液を調製した。抗菌微粒子用の銅の分散液は、プロピレングリコールで1%の濃度に希釈したものを用いた。そして、表3の材料を上から下の順に攪拌しながら混合した。そして、この混合溶液を室温で攪拌し、コーティング液を得た。
Figure 2022159239000004
そして、このコーティング液をロールコーティングによりガラス板上により塗布し、10分間の自然乾燥の後、300℃に設定したオーブン内で30分加熱し、抗菌膜を形成した。こうして、比較例1に係るガラス体が完成した。なお、抗菌膜の膜厚は、50~100nmであった。
(比較例2)
比較例2に係るガラス体は、以下のように形成した。まず、以下の表3の組成を有する比較例2用のコーティング液を調製した。(1)~(4)を調製後、混合液を室温で2時間撹拌し、TEOSの加水分解反応により前駆体液を得た。その後、この前駆体液に対し、(5)、(6)、(7)の順に、これらを撹拌しながら混合し、さらに、30分間室温で撹拌し、コーティング液を得た。
Figure 2022159239000005
次に、このコーティング液をスピンコーティングによりガラス板に塗布し、10分の自然乾燥の後、300℃に設定したオーブン内で30分加熱した。こうして、抗菌膜を形成し、比較例2に係るガラス体を得た。この抗菌膜の膜厚は、約100nmであった。このように形成された比較例2の抗菌膜中には、銅イオンが拡散していると考えられる。
以上のように作製された実施例、比較例1,比較例2の抗菌膜の膜組成は以下の通りである。表5中の数値の単位は、質量%である。
Figure 2022159239000006
(2) 評価
実施例、比較例1、比較例2のガラス体に対し、以下の試験を行った。結果は、表5に示すとおりである。
(2-1) 光学特性
ヘイズ率及び可視光透過率を測定した。ヘイズ率は、日本電色工業株式会社製ヘイズメータNDH2000により行った。この際、抗菌膜を入射面とし、試料の3点でヘイズ率を測定し、その平均値をヘイズ率とした。
(2-2) 抗菌試験
抗菌性の評価を、以下の通り、JIS Z2801:2012(フィルム密着法)に基づいて行った(ISO22916に相当)。
・試験細菌:E.Coli(大腸菌 NBRC3972)
・試料形態:上記ガラス体
・作用時間:24時間
・抗菌活性値(R)の算出:R=(Ut-U0)-(At-U0)=Ut-At
U0:ガラス板の接種直後の生菌数の対数値の平均値
Ut:ガラス板の24時間後の生菌数の対数値の平均値
At:ガラス体の24時間後の生菌数の対数値の平均値
・作用条件:温度35℃、湿度90%以上(JIS準拠)
・密着フィルム:40mm×40mmのPPフィルム(JIS基準)
・試験菌液の摂取量:0.2ml
・試験菌液の生菌数:1.1×106
・生菌数測定:ガラス板の菌液接種直後および24時間培養後のガラス体の生菌数を測定
Figure 2022159239000007
上記試験の結果、実施例、比較例1,比較例2に係るガラス体は、十分な光学性能が得られていることが分かった。また、抗菌活性は、いずれも5.0以上であった。2.0以上で抗菌活性があると評価されるため、実施例、比較例1,比較例2に係るガラス体においては十分な抗菌性能が確認できた。
(2-3) 耐久試験
実施例、比較例1,比較例2に係るガラス体を25mlの水に浸漬し、所定時間おきに、その水から1.5mlを抽出し、銅イオンの溶出率を算出した。この溶出率の算出は、次のように行った。まず、パックテスト銅(共立理化学研究所製)で発色させた検水をデジタルパックテスト銅(同上)で測定し、液中に含まれる銅イオン濃度を求めた後、これを元の膜中に含有していた銅に対する重量比に換算した。結果は、以下の図4に示すとおりである。なお、図4の点線は近似曲線である。
図4に示すように、比較例1は、銅微粒子が保持層に保持されているため、銅微粒子の離脱が少なく、よって、銅イオンの溶出率が少ないと考えられる。一方、比較例2では、時間の経過とともに、銅イオンが溶出しているが、所定時間が経過すると、銅イオンの溶出率が収束している。これに対して、実施例では、時間が経過しても、銅イオンが溶出し続けている。
この点、実施例では、抗菌膜に含有される銅微粒子及び銅イオンのいずれも比較例1,2よりも少ないにもかかわらず、銅イオンが溶出し続けている。これは、銅微粒子から保持層内に銅イオンが補充されるため、銅イオンが溶出し続けていると考えられる。特に、実施例では、保持層内に銅イオンと錯体を形成可能な陰イオン(Cl-,NO3-等)が含有されていることにより、銅微粒子がイオン化されやすくなり、これによって、保持層内に銅イオンがさらに補充されやすくなるためと考えられる。したがって、実施例では、保持層内の銅イオンの量の低下が抑制されるため、抗菌性能を長期に亘って維持できると考えられる。
(2-4) 銅の分布
実施例、比較例1,及び比較例2について抗菌膜中の銅の分布を調べた。抗菌膜の表面をSEMで撮影し、その中の所定範囲に対し、銅(銅イオン)のマッピングを施した。マッピングは、EDX(日立ハイテク 電界放射型走査型電子顕微鏡SU8220、検出器はXFlash5060FQ(Bruker))により行った。測定は、加速電圧5kV、試料傾斜は平面から0°の条件で実施した。結果は、図5~図7に示すとおりであり、マッピングを施した画像の黒以外の白及びグレーに着色されている部分が銅を示しているが、実施例及び比較例2を示す図5及び図7によれば、銅が均一に概ね隙間なく分散されていることが分かる。一方、図6に示す比較例1によれば、銅が点在していることが分かる。
図8は、実施例の抗菌膜の表面性状をSEMで観察した写真、図9は、図8の写真に写る抗菌微粒子の拡大図である。図8に写る白色の複数の点が抗菌微粒子を示している(矢印の箇所)。また、図9に示すように、実施例に係る抗菌微粒子は、銅粒子の凝集体であることが分かる。SEM観察結果から抗菌微粒子の粒子径は1~4μmであった。また、抗菌微粒子間の距離は最大50μm、最小5μm、平均25μmであった。
平均粒径は、以下の方法で算出した。まず、倍率が1000倍のSEM画像を異なる視野で3枚取得した。次に、90μmx120μmの範囲において、次の計測を行った。まず、抗菌微粒子の長軸方向の長さと短軸方向の長さを計測し、それらの平均をひとつの抗菌微粒子の粒径とする。そして、同様の計測を任意の抗菌微粒子について1画像につき10点、合計30点行い、それらの平均を平均粒径とした。
抗菌微粒子間の距離は、以下のように算出した。まず、倍率が1000倍のSEM画像を異なる視野で3枚取得した。次に、任意の隣り合う抗菌微粒子の間隔を計測した。同様の計測を任意の10組の抗菌微粒子について1画像につき10点、合計30点行い、それらの平均を抗菌微粒子間の距離とした。
1 ガラス板
2 抗菌膜
21 保持層
22 抗菌微粒子
10 ガラス体
100 被保護部材

Claims (12)

  1. 第1面及び第2面を有する板状の基材と、
    前記第1面に形成された抗菌膜と、
    を備え、
    前記抗菌膜は、
    前記第1面に形成される保持層と、
    前記保持層に保持され、抗菌性の金属微粒子を含有する抗菌微粒子と、を備え、
    前記保持層は、前記金属微粒子と同じ元素の金属イオンを含有している、ガラス体。
  2. 前記保持層は、三次元ネットワーク結合を構成する金属酸化物を含有している、請求項1に記載のガラス体。
  3. 前記金属イオンは、1価または2価の銅イオンである、請求項1または2に記載にガラス体。
  4. 前記金属微粒子は、Cu,Cu2O,CuOの少なくとも1つを主成分としている、請求項1から3のいずれかに記載にガラス体。
  5. 前記保持層は、金属イオンと錯体を形成可能な陰イオンをさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載のガラス体。
  6. 前記抗菌微粒子の平均粒径は、0.02μm~10μmである、請求項1から5のいずれかに記載のガラス体。
  7. 前記抗菌微粒子の平均粒径は、前記保持層の厚みよりも大きい、請求項1から6のいずれかに記載のガラス体。
  8. 前記保持層における隣接する前記抗菌微粒子の間隔が、0.5μm以上100μm以下である、請求項1から7のいずれかに記載のガラス体。
  9. 前記抗菌膜の固形成分に対する、前記金属微粒子及び前記金属イオンの合計含有量が、0.1質量%以上25質量%以下である、請求項1から8のいずれかに記載のガラス体。
  10. 前記抗菌膜は、光触媒微粒子をさらに含有している、請求項1から9のいずれかに記載のガラス体。
  11. ヘイズ率が、2%以下である、請求項1から10のいずれかに記載のガラス体。
  12. 前記保持層の膜厚が、10nm以上500nm以下である、請求項1から11のいずれかに記載のガラス体。
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