JP2022158768A - 電流検出装置及び該装置の回路部 - Google Patents

電流検出装置及び該装置の回路部 Download PDF

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Abstract

Figure 2022158768000001
【課題】外部磁界の影響を抑制し、周波数特性が高周波領域まで良好なコアレスタイプの電流検出装置を提供する。
【解決手段】電流検出装置は、スリット7により、分流された電流経路5と電流経路6を有し、被測定電流によって電流経路5と電流経路6の周囲に発生する磁束をそれぞれ検出する一対の磁気検出素子11、12を有し、一対の磁気検出素子11、12から得られる検出信号に基づいて被測定電流を検出する。このとき電流経路5と電流経路6は一対の磁気検出素子11、12を結ぶ軸L1に対し非線対称に配置されている
【選択図】図3

Description

本発明は、磁気検出素子を用いた電流検出装置に関する。
従来のモータ駆動用インバータなどに使用される電流検出装置は、三相での電流測定が一般的であり、電流測定対象となる電流路を挟み込むように二つ以上の磁気検出素子を配置し、検出信号を差動演算することで近隣電流路及び、周囲の磁場の影響をキャンセルし、被測定電流を正確に測定することは知られている。
例えば、特許文献1には、電流測定の対象とする1本の長板状の電流路に穿設されたスリットに対し、対称になるように分流された2系統の被測定電流路に、2系統の被測定電流が流れることで発生する磁束密度を、スリット挟んで板厚方向に対称に配置された2個一対の磁気検出素子により検出し、検出信号を差動演算することで、周囲の磁場の影響をキャンセルし、被測定電流の大きさを正確に測定している。
また、特許文献2では、互いに隣り合う複数のクランク上に加工した電流路のうち、少なくとも1つ電流路の両側を挟み込むように2個一対の磁気検出素子が、各磁気検出素子に等しく磁束密度が加わる位置に配置され、各磁気検出素子で得られた検出信号を差動演算している。近隣電流路からの影響受けるが、クランク形状を追加することにより、被測定電流路にある2個一対の磁気検出素子が同じ値の磁束密度を検出するため、差動演算することで、近隣電流路からの影響をキャンセルし、被測定電流の大きさを正確に測定している。
特許6144597 特許4839393 特開2005-283451 図3
図23に特許文献1図2に開示されている構成を示す。長板状(延伸する方向をY方向とする)の電路90のスリット93が設けられた部分では、電路90を流れる電流がスリット93により2分割されることで同一方向に二つの電流経路91、92に分かれて存在している。電流経路91、92及びスリット93の幅方向(X方向)の長さを符号a、b、c、電路の板厚(厚さ方向をZ方向とする)を符号d、二つの磁気検出素子94、95のZ方向の距離を符号e、二つの磁気検出素子94、95を結ぶ線を軸L1、電路90の板厚の中心線を軸L2としている。磁気検出素子94、95は軸L2に対し線対称に配置されており、電路90は軸L1、L2ともに線対称となるように配置されている。二つの磁気検出素子94、95はX方向が感度軸となり、電路90に-Y方向から+Y方向へ電流を通電したとき、電流経路91、92に発生するそれぞれの磁束線96、97の互いに反対方向となるX方向の磁束密度98、99を検出している。
図24には、シミュレーションにより、図23に示す符号a=4mm、b=2mm、c=4mm、d=0.8mm、e=2.5mmとし、100Aの交流電流を通電したときの発生する磁束線からX方向のみを抽出したもの磁束分布を示す。図24(a)が60Hzの交流電流を通電した場合、図24(b)が10kHzの交流電流を通電した場合を示す。図24(a)に示すように60Hzの場合、磁気検出素子94が検出するX方向の磁束密度は3.22mT、磁気検出素子95では-3.22mTとなり、差動演算すると6.44mTとなる。一方図24(b)に示すように、10kHzでは、磁気検出素子94が検出するX方向の磁束密度は2.90mT、磁気検出素子95では-2.90mTとなり、差動演算すると5.80mTとなる。60Hzと10kHzを比較すると、約-10.0%の差異が発生しており、高周波まで精度よく測定することが従来は難しかった。
また特許文献2の構成では、クランク形状に加工した電路(導体)を並べて配置(並んでいる方向をX方向とする)しているため、各導体間のX方向の距離が広がり、かつ、被測定電流路に配置された二つの磁気検出素子に、近隣電流路に電流を流したときに発生する磁束密度を等しく加わるように配置するため、各導体をその延伸方向(Y方向)にずらして配置するため、XY平面の体格が大きくなるため小型化することが従来は難しかった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、測定対象の電流によって発生する磁束に対して、高周波数帯まで精度よく測定でき、近隣電流路及び、周囲の磁場の影響(外部磁界の影響)を抑制しつつ、電流検出装置を小型化することを目的とする。
本発明における電流検出装置においては、被測定電流が流れる方向に延伸し、延伸方向の垂直な方向から貫通スリットが穿設され、貫通スリットにより電流経路が2分割された平板状の電路と、被測定電流によって電路の周囲に発生する磁束をそれぞれ検出する一対の磁気検出素子を備え、2分割された電流経路は、延伸方向に垂直な断面から見て、一対の磁気検出素子を結ぶ軸に対し、非線対称な形状を有し、電路に流れる被測定電流は、貫通スリットにより、2分割された電流経路に同一方向に分流して流れ、一対の磁気検出素子は、2分割された電流経路に流れる電流より発生した磁界を互いに反対方向に貫通するように感磁面がそれぞれ配置され、かつ、電路の延伸方向の垂直な方向から見て、貫通スリット投影面内に配置され、一対の磁気検出素子から得られた検出信号を差動演算する回路部を備えたものである。
本発明によれば、一対の磁気検出素子を結ぶ軸に対し、二つの電流経路が非線対称配置されることにより、外部磁界の影響を抑制しつつ、周波数特性が高周波領域まで良好な電流検出装置を提供できる。
本発明の実施の形態1に係る電流検出装置の斜視図である。 本発明の実施の形態1に係る電流検出装置の回路部の回路ブロック図である。 図1の断面図である。 図3における磁束分布図である。 本発明の実施の形態1に係る電流検出装置における、磁束密度の周波数特性の表とグラフである。 本発明の実施の形態1に係る電流検出装置における、磁束密度の周波数特性の表とグラフである。 本発明の実施の形態1に係る電流検出装置における、磁束密度の周波数特性の表とグラフである。 本発明の実施の形態1に係る電流検出装置における、磁束密度の周波数特性の表とグラフである。 本発明の実施の形態1に係る電流検出装置における、磁束密度の周波数特性の表とグラフである。 本発明の実施の形態1に係る電流検出装置の断面図である。 本発明の実施の形態1に係る電流検出装置における、磁束密度の周波数特性の表とグラフである。 本発明の実施の形態2に係る電流検出装置の斜視図である。 図12の断面図である。 本発明の実施の形態2に係る電流検出装置における、磁束密度の周波数特性の表とグラフである。 本発明の実施の形態3に係る電流検出装置の斜視図である。 図15の断面図である。 本発明の実施の形態3に係る電流検出装置における、磁束密度の周波数特性の表とグラフである。 本発明の実施の形態4に係る電流検出装置の斜視図である。 図18の断面図である。 図19における磁束分布図である。 図18の電路を変形させた斜視図である。 図21の側面図である。 従来例の電路と回路部を示す断面図である。 従来例における磁束分布図である。
実施の形態1.
図1(a)は、本発明の実施の形態1に係る電流検出装置100の外観を示す斜視図であり、図1(b)は、電路1の電流経路5、6、スリット7、回路部8の関係を示す図である。X方向を電路1の幅方向、Z方向を電路1の厚み方向、Y方向を電路1が延伸する方向とする。以降実施の形態1については、各方向を同様に定義する。
電流検出装置100は、例えば銅材もしくはアルミ材からなる電路1が固定された絶縁材料(例えば、PPS:ポリフェニレンサルファイド、PA:ポリアミド、PBT:ポリブチレンテレフタレートなど)からなるケース部2に、回路部8及びコネクタ部4及び抵抗やコンデンサ(図示せず)などが半田付けにより搭載されたプリント基板3がネジ(図示せず)などにより固定されている。Y方向に延伸した長板状の電路1に、延伸方向(Y方向)に垂直な方向(Z方向)から貫通したスリット7が穿設され、スリット7に沿って、Y方向と平行な向きかつ、電路1をZ方向に貫通するように回路部8が配置されている。
このとき、電路1のスリット7が設けられた部分では、電路1を流れる電流がスリット7により2分割されることで同一方向に二つの電流経路5、6が存在している。電路1は片端がIPM(インテリジェントパワーモジュール)などのモータなどを駆動する半導体の出力端に接続され、他の片端は例えばモータの入力端に接続されており、被測定電流となるモータ駆動電流が流れる。
図2は、本発明の実施の形態1に係る電流検出装置100の回路部8の回路構成を示すブロック図である。図2において回路部8は、一対の磁気検出素子11、12、第一の増幅部13、第二の増幅部14、差動演算部15、電源端子16、17、出力端子18、基材19を有する。電流検出装置100は外部からコネクタ部4などのインターフェースを通し、プリント基板3を介して、回路部8の電源端子16、17間に例えば5Vが電源供給され、出力端子18からは差動演算部の出力信号が外部に出力される。
磁気検出素子11、12は、例えばホール素子、MR素子、GMR素子、又はTMR素子等を用いて構成される。MR素子とは、磁気抵抗効果(Magneto Resistive Effect)を利用して磁束を検出する素子である。GMR素子とは、巨大磁気抵抗効果(Giant Magneto Resistive Effect)を利用して磁束を検出する素子である。TMR素子とは、トンネル磁気抵抗効果(Tunnel Magneto Resistance Effect)を利用して磁束を検出する素子である。これ以外にも、磁束を検出してその検出結果に応じた検出信号を出力できるものであれば、任意の素子を磁気検出素子11、12として用いることが可能である。
第一の増幅部13と第二の増幅部14は、磁気検出素子11、12からそれぞれ出力される微小な電圧信号を増幅し、差動演算部15へ出力する。差動演算部15は、第一の増幅部13と第二の増幅部14からそれぞれ出力された電圧信号の差分を求める差動演算を行い、その演算結果を出力端子18へ出力する。
基材19は、例えばシリコン基板やガラスエポキシ基板等を用いて構成され、上述した回路部8の各構成部品を所定の配置でそれぞれ固定するとともに、各構成部品同士を電気的に接続する。基材19に各構成部品が搭載された回路部8は、樹脂によるモールドパッケージ等が施された後、ケース部2に固定された電路1、同様にケース部2に固定され回路部8が搭載されたプリント基板3を介し、それぞれ配置及び固定することができる。そのさい、一対の磁気検出素子11、12は、電路1に対して、相互に対抗する方向に感度を有するような向きでそれぞれ配置される。これらの磁気検出素子は電路1に流れる被測定電流によって発生する磁束を検出し、磁束の検出結果に応じた検出信号を第一の増幅部13と第二の増幅部14へそれぞれ出力する。
図3は、図1(b)に示す電流経路5、6に直交する断面9を矢印10から見た断面図である。電流経路5と電流経路6及びスリット7のX方向の長さを符号a、b、c、電路1の板厚を符号d、回路部8内の二つの磁気検出素子11、12のZ方向の距離を符号e、二つの磁気検出素子11、12を結ぶ線を軸L1、電路1の板厚の中心線を軸L2としている。磁気検出素子11、12は軸L2に対し線対称に配置されており、電路1は軸L2対し線対称となるように配置されているが、軸L1に対しては、非線対称となるように配置されている。例えば符号a=2mm、b=2mm、c=6mm、d=0.8mm、e=2.5mmである。二つの磁気検出素子11、12は、X方向が感度軸となり、電路1に-Y方向から+Y方向へ電流を通電したとき、電流経路5、6に発生するそれぞれの磁束線20、21の互いに反対方向となるX方向の磁束密度22、23を検出している。
また、回路部8の端子16、17、18は、特許文献3(特開2005-283451の図3)の磁気検出部と同様に片側方向に突出している。その突出方向は、軸L1と並行なZ方向である。
このように構成された電流検出装置100においては、電路1の電流経路5、6で2分割された被測定電流により生じる磁束線20、21のX方向の磁束密度を、回路部8内の磁気検出素子11、12で検出し、両者の差分を求めることで被測定電流を測定している。ここでは、電流経路5、6を軸L1に対して非線対称配置とした場合の被測定電流測定の高周波特性をシミュレーションにより確認する。
図4には、シミュレーションにより、図3に示す符号a=2mm、b=2mm、c=6mm、d=0.8mm、e=2.5mmとし、100Aの交流電流を通電したときに発生する磁束線からX方向のみを抽出した磁束分布を示す。また、図24と図4では、符号aを4mmから2mm、符号cを4mmから6mmに変化させ、軸L1に対し、電路1の電流経路5と電流経路6が非線対称となるように配置している。
図4(a)が60Hzの交流電流を通電した場合、図4(b)が10kHzの交流電流を通電した場合を示す。図4(a)に示すように60Hzの場合、磁気検出素子11が検出するX方向の磁束密度は3.06mT、磁気検出素子12では-3.07mTとなり、差動演算すると6.13mTとなる。一方図4(b)に示すように、10kHzでは、磁気検出素子11が検出するX方向の磁束密度は3.15mT、磁気検出素子12では-3.14mTとなり、差動演算すると6.29mTとなる。60Hzと10kHzを比較しても、約2.7%の差異しかなく、電流経路5、6を軸L1に対して非線対称配置とすることで高周波まで精度よく電流測定することができる。
ここではスリット7のX方向の位置を変え、非線対称配置状態が変わった場合の被測定電流測定の高周波特性をシミュレーションにより確認する。
図5は本発明の実施の形態1に係る電流検出装置100において、図3に示す符号a+b+cを10mm、かつ、符号bを2mm固定し、符号a、cを1mmずつ変動させ、電路1に100Aの交流電流(60Hz~100kHz)を通電したさい発生するX方向の磁束密度を、二つの磁気検出素子11、12にて検出し、差動演算した結果の磁束密度の周波数特性の表(図5(a))、及び60Hzを基準とした磁束密度変動率の周波数特性の表とグラフ(図5(b))である。
ここでパターンA1はa=4mm、c=4mmとcとaの比が1、A2はa=3mm、c=5mmとcとaの比が1.7、A3はa=2mm、c=6mmとcとaの比が3、A4はa=1mm、c=7mmとcとaの比が7であり、交流電流の周波数は60Hz、100Hz、300Hz、1kHz、3kHz、10kHz、30kHz、100kHzの8周波数でシミュレーションにより試算した。一般的にモータ駆動用のインバータなどでは、スイッチング周波数を1kHz~20kHzの範囲に設定することが多いため、10kHzで比較すると、図5(b)に示すように、パターンA1では-10%、A2では-7.0%、A3では2.7%、A4では21.5%となり、パターンA1よりも、パターンA2、パタ-ンA3の方が高周波まで精度よく測定できることがわかる。また、パターンA4では、パターンA1よりも高周波の精度が悪くなる。
以上の結果より、軸L1に対し、電流経路5と電流経路6が線対称に配置されたパターンA1よりも、図3で示す軸L1に対し、電流経路5と電流経路6が非線対称に配置されたパターンA2、A3(cとaの比が1.7~3)の方が高周波まで精度よく測定することができる。
以降、多様な電路に対応するため、符号a、b、c、d、eの値を変えて、被測定電流測定の高周波特性をシミュレーションにより確認する。
図6では、本発明の実施の形態1に係る電流検出装置100において、大電流に対応すべく、電流経路5、6から磁気検出素子11、12が受ける熱の影響を避けることを目的に、スリット7のX方向の長さ符号bの距離を2mmから4mmに拡大し符号a+b+cを12mmとし、符号a、cを1mmずつ変動させ、電路1に100Aの交流電流(60Hz~100kHz)を通電したさい発生するX方向の磁束密度を、二つの磁気検出素子11、12にて検出し、差動演算した結果の磁束密度の周波数特性の表(図6(a))、及び60Hzを基準とした磁束密度変動率の周波数特性の表とグラフ(図6(b))である。
ここでパターンB1はa=4mm、c=4mm、B2はa=3mm、c=5mm、B3はa=2mm、c=6mm、B4はa=1mm、c=7mmであり、交流電流の周波数は60Hz、100Hz、300Hz、1kHz、3kHz、10kHz、30kHz、100kHzの8周波数でシミュレーションにより試算した。
上述の通り10kHzで比較すると、図6(b)に示すように、パターンB1では-5.7%、B2では-3.3%、B3では4.6%、B4では20.4%となり、パターンB1よりも、パターンB2、パタ-ンB3の方が高周波まで精度よく測定できることがわかる。また、パターンB4では、パターンB1よりも高周波の精度が悪くなる。
この場合、検出できる磁束密度が図5と比較して小さくなっているが、軸L1に対し、電流経路5と電流経路6が線対称に配置されたパターンB1よりも、図3で示す軸L1に対し、電流経路5と電流経路6が非線対称に配置されたパターンB2、パターンB3(cとaの比が1.7~3)の方が高周波まで精度よく測定することができる。
図7では、本発明の実施の形態1に係る電流検出装置100において、図6よりもさらに大電流に対応することを目的に、電流経路5と電流経路6及びスリット7のX方向の長さ符号a、b、cを図5から2倍(符号a+b+cを20mm、かつ、符号bを4mm固定)とし、符号a、cを2mmずつ変動させ、電路1に100Aの交流電流(60Hz~100kHz)を通電したさい発生するX方向の磁束密度を、二つの磁気検出素子11、12にて検出し、差動演算した結果の磁束密度の周波数特性の表(図7(a))、及び60Hzを基準とした磁束密度変動率の周波数特性の表とグラフ(図7(b))である。
ここでパターンC1はa=8mm、c=8mm、C2はa=6mm、c=10mm、C3はa=4mm、c=12mm、C4はa=2mm、c=14mmであり、交流電流の周波数は60Hz、100Hz、300Hz、1kHz、3kHz、10kHz、30kHz、100kHzの8周波数でシミュレーションにより試算した。
上述の通り10kHzで比較すると、図7(b)に示すように、パターンC1では-10.1%、C2では-7.8%、C3では0.8%、C4では23.0%となり、パターンC1よりも、パターンC2、パタ-ンC3の方が高周波まで精度よく測定できることがわかる。また、パターンC4では、パターンC1よりも高周波の精度が悪くなる。
この場合でも、検出できる磁束密度が図5と比較して小さくなっているが、軸L1に対し、電流経路5と電流経路6が線対称に配置されたパターンC1よりも、図3で示す軸L1に対し、電流経路5と電流経路6が非線対称に配置されたパターンC2、C3(cとaの比が1.7~3)の方が高周波まで精度よく測定することができる。
図8では、本発明の実施の形態1に係る電流検出装置100において、図6、図7同様に大電流に対応することを目的に、符号a+b+cを10mm、かつ、符号bを2mm固定し、電路1の板厚dを0.8mmから2mmとし、符号a、cを1mmずつ変動させ、電路1に100Aの交流電流(60Hz~100kHz)を通電したさい発生するX方向の磁束密度を、二つの磁気検出素子11、12にて検出し、差動演算した結果の磁束密度の周波数特性の表(図8(a))、及び60Hzを基準とした磁束密度変動率の周波数特性の表とグラフ(図8(b))である。
ここでパターンD1はa=4mm、c=4mm、D2はa=3mm、c=5mm、D3はa=2mm、c=6mm、D4はa=1mm、c=7mmであり、交流電流の周波数は60Hz、100Hz、300Hz、1kHz、3kHz、10kHz、30kHz、100kHzの8周波数でシミュレーションにより試算した。
上述の通り10kHzで比較すると、図8(b)に示すように、パターンD1では-15.6%、D2では-12.8%、D3では-1.7%、D4では23.2%となり、パターンD1よりも、パターンD2、パタ-ンD3の方が高周波まで精度よく測定できることがわかる。また、パターンD4では、パターンD1よりも高周波の精度が悪くなる。
この場合でも、検出できる磁束密度が図5と比較して小さくなっているが、図6、図7よりも大きな磁束密度を検出できるため、板幅を広げるよりも板厚dを厚くする方が磁束を確保しながら、発熱対策をすることができる。また、これまで同様軸L1に対し、電流経路5と電流経路6が線対称に配置されたパターンD1よりも、図3で示す軸L1に対し、電流経路5と電流経路6が非線対称に配置されたパターンD2、D3(cとaの比が1.7~3)の方が高周波まで精度よく測定することができる。
図9では、本発明の実施の形態1に係る電流検出装置100において、図6~図8同様に大電流に対応することを目的に、符号a+b+cを10mm、かつ、符号bを2mm固定し、二つの磁気検出素子11、12のZ方向の距離eが電路1の板厚dが大きくなった場合を想定し、図5から符号eを2.5mmから1.5mmに、符号dを0.8mmから2.0mmに変更し、符号a、cを1mmずつ変動させた場合の電路1に100Aの交流電流(60Hz~100kHz)を通電したさい発生するX方向の磁束密度を、二つの磁気検出素子11、12にて検出し、差動演算した結果の磁束密度の周波数特性の表(図9(a))、及び60Hzを基準とした磁束密度変動率の周波数特性の表とグラフ(図9(b))である。
ここでパターンE1はa=4mm、c=4mm、E2はa=3mm、c=5mm、E3はa=2mm、c=6mm、E4はa=1mm、c=7mmであり、交流電流の周波数は60Hz、100Hz、300Hz、1kHz、3kHz、10kHz、30kHz、100kHzの8周波数でシミュレーションにより試算した。
上述の通り10kHzで比較すると、図9(b)に示すように、パターンE1では-16.8%、E2では-14.0%、E3では-2.5%、E4では25.4%となり、パターンE1よりも、パターンE2、パタ-ンE3の方が高周波まで精度よく測定できることがわかる。また、パターンE4では、パターンE1よりも高周波の精度が悪くなる。
この場合でも、図6、図7同様検出できる磁束密度が図5と比較して小さくなっているが、軸L1に対し、電流経路5と電流経路6が線対称に配置されたパターンE1よりも、図3で示す軸L1に対し、電流経路5と電流経路6が非線対称に配置されたパターンE2、E3(cとaの比が1.7~3)の方が高周波まで精度よく測定することができる。
ここでは、組立誤差や構造要件などにより、二つの磁気検出素子11、12の位置が軸L2に対して線対称に配置できない場合について確認する。
図10では、本発明の実施の形態1に係る電流検出装置100において、図5から二つの磁気検出素子11、12をZ方向への変位量(符号f)だけ変位させた位置にある磁気検出素子24、25を示した断面図である。Z方向に符号f変位されることにより軸L2に対して非線対称に配置され、二つの磁気検出素子24、25では変位させる前の磁気検出素子11、12と同様に反対方向の磁束密度を検出するが、検出される磁束密度の大きさは異なる。
図11は本発明の実施の形態1に係る電流検出装置100において、図10に示す符号a+b+cを10mm、かつ、符号bを2mm固定し、符号a、cを1mmずつ変動させ、電路1に100Aの交流電流(60Hz~100kHz)を通電したさい発生するX方向の磁束密度を、二つの磁気検出素子11、12がZ方向へ変位量fが0.5mm変位された位置にある磁気検出素子24、25にて検出し、差動演算した結果の磁束密度の周波数特性の表(図11(a))、及び60Hzを基準とした磁束密度変動率の周波数特性の表とグラフ(図11(b))である。
ここでパターンF1はa=4mm、c=4mm、F2はa=3mm、c=5mm、F3はa=2mm、c=6mm、F4はa=1mm、c=7mmであり、交流電流の周波数は60Hz、100Hz、300Hz、1kHz、3kHz、10kHz、30kHz、100kHzの8周波数でシミュレーションにより試算した。
上述の通り10kHzで比較すると、図11(b)に示すように、パターンF1では-9.7%、F2では-6.8%、F3では2.5%、F4では20.4%となり、パターンF1よりも、パターンF2、パタ-ンF3の方が高周波まで精度よく測定できることがわかる。また、パターンF4では、パターンF1よりも高周波の精度が悪くなる。
この場合でも図6~図9と同様に、検出できる磁束密度が図5と比較して小さくなっているが、軸L1に対し、電流経路5と電流経路6が線対称に配置されたパターンF1よりも、図10で示す軸L1に対し、電流経路5と電流経路6が非線対称に配置されたパターンF2、F3(cとaの比が1.7~3)の方が高周波まで精度よく測定することができる。
以上説明したように軸L1に対し、二つの電流経路が非線対称配置されることにより、電路に流れる電流に応じて磁束を検出したときの周波数特性を向上させることができる。したがってこのような磁気検出素子の配置と、電路構造を電流検出装置に採用することにより、外部磁界の影響を抑制しつつ、周波数特性が高周波領域まで良好な電流検出装置を提供できる。
また、パターン(A2~F2)と(A3~F3)とで、周波数60Hzを基準とした変動率の極性が反転している。今回はa、cの寸法を1mmずつ変動させたが、これらを最適な寸法とすることで、変動率を最小化することができる。
実施の形態2.
図12(a)は、本発明の実施の形態2に係る電流検出装置101の外観を示す斜視図であり、図12(b)は、電路26の電流経路30、31、スリット32、回路部81の関係を示す図である。X方向を電路26の幅方向、Y方向を紙面下から上方向、Z方向をX方向及びY方向と平行な平面に対し垂直な方向とする。以降実施の形態2については、各方向を同様に定義する。電流検出装置101は、例えば銅材もしくはアルミ材からなる電路26が固定された絶縁材料(例えば、PPS:ポリフェニレンサルファイド、PA:ポリアミド、PBT:ポリブチレンテレフタレートなど)からなるケース部27に、回路部81及びコネクタ部29及び抵抗やコンデンサ(図示せず)などが半田付けにより搭載されたプリント基板28がネジ(図示せず)などにより固定されている。
Y方向に延伸した長板状の電路26は、折り曲げ線33に沿って該90度に折り曲げられ、その屈曲部に、スリット32が穿設され、スリット32にY方向と平行な向きで回路部81が配置されている。
このとき、電路26のスリット32が設けられた部分では、電路26を流れる電流がスリット32により2分割されることで同一方向に二つの電流経路30、31が存在している。なお、二つの電流経路30、31は、折り曲げ前を30a、31a、折り曲げ後を30b、31bとする。回路部81は、実施の形態1で説明した回路部8と内部構成は同一であるが、端子16、17、18の突出方向が異なる。その突出方向はY方向であり、図13に示す軸L1と垂直方向である。
図13は、図12(b)に示す電流経路30a、31aに直交する断面34を矢印35から見た断面図である。電流経路30aと電流経路31a及びスリット32のX方向の長さを符号a、b、c、電路26の板厚を符号d、回路部81内の二つの磁気検出素子11、12のZ方向の距離を符号e、二つの磁気検出素子11、12を結ぶ線を軸L1、電路26の板厚の中心線を軸L2としている。磁気検出素子11、12は軸L2に対し線対称に配置されており、電流経路30a、31aは軸L2対し線対称となるように配置されているが、軸L1に対しては、非線対称となるように配置されている。
例えば符号a=2mm、b=2mm、c=6mm、d=0.8mm、e=2.5mmである。二つの磁気検出素子11、12は、X方向が感度軸となり、電路26に-Y方向から-Z方向へ電流を通電したとき、電流経路30a、31aに発生するそれぞれの磁束線36a、37a及び、電流経路30b、31bに発生するそれぞれの磁束線36b、37bの互いに反対方向となるX方向の磁束密度38、39を検出している。
図14は本発明の実施の形態2に係る電流検出装置101において、図13に示す符号a+b+cを10mm、かつ、符号bを2mm固定し、符号a、cを1mmずつ変動させ、電路26に100Aの交流電流(60Hz~100kHz)を通電したさい発生するX方向の磁束密度を、二つの磁気検出素子11、12にて検出し、差動演算した結果の磁束密度の周波数特性の表(図14(a))、及び60Hzを基準とした磁束密度変動率の周波数特性の表とグラフ(図14(b))である。
ここでパターンG1はa=4mm、c=4mm、G2はa=3mm、c=5mm、G3はa=2mm、c=6mm、G4はa=1mm、c=7mmであり、交流電流の周波数は60Hz、100Hz、300Hz、1kHz、3kHz、10kHz、30kHz、100kHzの8周波数でシミュレーションにより試算した。上述の通り10kHzで比較すると、図14(b)に示すように、パターンG1では-8.1%、G2では-5.5%、G3では3.4%、G4では20.5%となり、パターンG1よりも、パターンG2、パタ-ンG3の方が高周波まで精度よく測定できることがわかる。また、パターンG4では、パターンG1よりも高周波の精度が悪くなる。
以上の結果より、軸L1に対し、電流経路30と電流経路31が線対称に配置されたパターンG1よりも、軸L1に対し、電流経路30と電流経路31が非線対称に配置されたパターンG2、G3(cとaの比が1.7~3)の方が高周波まで精度よく測定することができる。
また、符号a、b、c、d、eの条件が同じ図5と比較すると、電路を折り曲げることにより検出する磁束密度を増やすことができる。
実施の形態2では、電路26を-Z方向に90度に曲げた状態だけを説明したが、電路26は端部を+Z方向に90度曲げた状態でも同様の効果がある。
以上説明したように該90度に折り曲げられた電路においても、軸L1に対し、二つの電流経路が非線対称配置されることにより、電路に流れる電流に応じて磁束を検出したときの周波数特性を向上させることができる。したがってこのような磁気検出素子の配置と、電路構造を電流検出装置に採用することにより、外部磁界の影響を抑制しつつ、周波数特性が高周波領域まで良好な電流検出装置を提供できる。
また、回路部81の端子16、17、18の突出方向がY方向であり、XZ面に並行に位置するプリント基板28に容易に半田付けすることができる。
実施の形態3.
図15(a)は、本発明の実施の形態3に係る電流検出装置102の外観を示す斜視図であり、図15(b)は、電路40の電流経路44、45、46、スリット47、回路部81の関係を示す図である。X方向を電路40の幅方向、Y方向を紙面下から上方向、Z方向をX方向及びY方向と平行な平面に対し垂直な方向とする。以降実施の形態3については、各方向を同様に定義する。電流検出装置102は、例えば銅材もしくはアルミ材からなる電路40が固定された絶縁材料(例えば、PPS:ポリフェニレンサルファイド、PA:ポリアミド、PBT:ポリブチレンテレフタレートなど)からなるケース部41に、回路部81及びコネクタ部43及び抵抗やコンデンサ(図示せず)などが半田付けにより搭載されたプリント基板42がネジ(図示せず)などにより固定されている。
Y方向に延伸した長板状の電路40は、折り曲げ線48沿って該90度に折り曲げられ(第一の屈曲部)た後、さらに折り曲げ線49沿って該90度に折り曲げられ(第二の屈曲部)該U字型の形状となる。折り曲げ線48で曲げられた第一の屈曲部に、スリット47が穿設され、スリット47にY方向と平行な向きで回路部81が配置されている。このとき、電路40のスリット47が設けられた部分では、電路40を流れる電流がスリット47により2分割されることで、同一方向に二つの電流経路44、45に分かれて存在している。
なお、二つの電流経路44、45は、折り曲げ線48で折り曲げられる前を44a、45a、折り曲げられた(第一の屈曲部)後を44b、45b、さらに二つの電流経路44、45が合流し、折り曲げ線49で折り曲げられた(第二の屈曲部)後の電流経路を46とする。回路部81は、実施の形態1で説明した回路部8と内部構成は同一であるが、端子16、17、18の突出方向が異なる。その突出方向はY方向であり、図16に示す軸L1と垂直方向である。
図16は、図15(b)に示す電流経路44a、45aに直交する断面50を矢印51から見た断面図である。電流経路44aと電流経路45a及びスリット47のX方向の長さを符号a、b、c、電路40の板厚を符号d、回路部81内の二つの磁気検出素子11、12のZ方向の距離を符号e、二つの磁気検出素子11、12を結ぶ線を軸L1、電路40の板厚の中心線を軸L2としている。磁気検出素子11、12は軸L2に対し線対称に配置されており、電流経路44a、45aは軸L2対し線対称となるように配置されているが、軸L1に対しては、非線対称となるように配置されている。
例えば符号a=2mm、b=2mm、c=6mm、d=0.8mm、e=2.5mmである。二つの磁気検出素子11、12は、X方向が感度軸となり、電路40に矢印51から電流経路46へ電流を通電したとき、電流経路44a、45aに発生するそれぞれの磁束線52a、53a及び、電流経路44b、45bに発生するそれぞれの磁束線52b、53b、電流経路46に発生する磁束線54の互いに反対方向となるX方向の磁束密度55、56を検出している。
図17は本発明の実施の形態3に係る電流検出装置102において、図16に示す符号a+b+cを10mm、かつ、符号bを2mm固定し、符号a、cを1mmずつ変動させ、電路40に100Aの交流電流(60Hz~100kHz)を通電したさい発生するX方向の磁束密度を、二つの磁気検出素子11、12にて検出し、差動演算した結果の磁束密度の周波数特性の表(図17(a))、及び60Hzを基準とした磁束密度変動率の周波数特性の表とグラフ(図17(b))である。
ここでパターンH1はa=4mm、c=4mm、H2はa=3mm、c=5mm、H3はa=2mm、c=6mm、H4はa=1mm、c=7mmであり、交流電流の周波数は60Hz、100Hz、300Hz、1kHz、3kHz、10kHz、30kHz、100kHzの8周波数でシミュレーションにより試算した。上述の通り10kHzで比較すると、図17(b)に示すように、パターンH1では-5.1%、H2では-3.0%、H3では4.0%、H4では18.3%となり、パターンH1よりも、パターンH2、パタ-ンH3の方が高周波まで精度よく測定できることがわかる。また、パターンH4では、パターンH1よりも高周波の精度が悪くなる。
以上の結果より、軸L1に対し、電流経路44と電流経路45が線対称に配置されたパターンH1よりも、軸L1に対し、電流経路44と電流経路45が非線対称に配置されたパターンH2、H3(cとaの比が1.7~3)の方が高周波まで精度よく測定することができる
また、実施の形態2と同様に符号a、b、c、d、eの条件が同じ図5と比較すると、電路をさらに折り曲げることによりさらに検出する磁束密度を増やすことができる。
本実施の形態3では、スリット47は、第一の屈曲部にのみを穿設されており、第二の屈曲部へ穿設されていない。第二の屈曲部へ第一の屈曲部同様のスリット47が穿設されている場合、電流経路46から発生する磁束線54は、電流経路44a、45aから発生する磁束線52a、53aと同様、磁気検出素子12へは、X方向とZ方向で合成された磁束密度が印加される。その結果、X方向の磁束密度のみを検出する磁気検出素子12は、検出する磁束密度が低下する。第二の屈曲部へスリット47を穿設させないことで、磁気検出素子12では、電流経路46から発生する磁束線54がX方向と略並行となり、より多くの磁束密度を検出することができる。
実施の形態3では、電路40を折り曲げ線48沿って-Z方向に該90度に折り曲げられた後、さらに折り曲げ線49沿って-Y方向に該90度に折り曲げられ該U字型の形状とした状態だけを説明したが、電路40を折り曲げ線48に沿ってZ方向に該90度に折り曲げられた後、さらに-Y方向に該90度に折り曲げられ該U字型の形状とした状態でも同様の効果がある。
以上説明したように該90度に折り曲げられた後、さらに該90度に折り曲げ該U字型の形状とした電路においても、軸L1に対し、二つの電流経路が非線対称配置されることにより、電路に流れる電流に応じて磁束を検出したときの周波数特性を向上させることができる。したがってこのような磁気検出素子の配置と、電路構造を電流検出装置に採用することにより、外部磁界の影響を抑制しつつ、周波数特性が高周波領域まで良好な電流検出装置を提供できる。
また、回路部81の端子16、17、18の突出方向がY方向であり、XZ面に並行に位置するプリント基板42に容易に半田付けすることができる。
実施の形態4.
図18(a)は、本発明の実施の形態4に係る電流検出装置103の外観を示す斜視図であり、図18(b)は、3本並んだ電路57と各スリット61、各回路部81の関係を示す図である。X方向を電路57の幅方向、Y方向を紙面下から上方向、Z方向をX方向及びY方向と平行な平面に対し垂直な方向とする。以降実施の形態4については、各方向を同様に定義する。
電流検出装置103は、例えば銅材もしくはアルミ材からなる板厚方向に該U字形状に折り曲げられ、屈曲部へスリット61が穿設され、X方向に並んだ3本の実施の形態3同様の電路57(-X方向から順番に電路57U、57V、57W)が固定された絶縁材料(例えば、PPS:ポリフェニレンサルファイド、PA:ポリアミド、PBT:ポリブチレンテレフタレートなど)からなるケース部58に、各電路57へ穿設されたスリット61U、61V、61Wへ配置された回路部81U、81V、81W及びコネクタ部60及び抵抗やコンデンサ(図示せず)などが半田付けにより搭載されたプリント基板59がネジ(図示せず)などにより固定されている。
各電路57及び各回路部81は実施の形態3で説明したものと同じ構成のため、説明を省略する。なお、電路57U、57V、57Wに流れる電流をU相電流、V相電流、W相電流とする。このように該U字形状で加工され、屈曲部へスリット61U、61V、61Wが穿設された電路57U、57V、57Wと3つの回路部81U、81V、81Wを3つ備えることで、電流検出装置103において、三相の電流を検出することができる。
図18(a)、(b)に示すように電流検出装置103では、X方向に並んだ、互いに隣接する相の回路部81U、81V、81Wと電路57U、57V、57WはZ方向にずれるように配置されている。この点について、図19、20を参照し説明する。
図19は、図18(b)に示す、電路57U、57V、回路部81U、81Vに対し、ZX平面に平行な断面62を矢印63から見た断面図である。電路57Uのスリット61Uが設けられた部分では、電路57Uを流れるU相電流がスリット61Uにより2分割されることで、同一方向に二つの電流経路64、65に分かれて存在している。
二つの電流経路64、65のY軸に平行な電路を電流経路64a、65a、Z方向に平行な電路を電流経路64b、65b、さらに二つの電流経路64、65が合流し、Y方向に平行で、電流経路64a、65aとは反対方向にU相電流が流れる電路を電流経路66とする。
電路57Vのスリット61Vに配置された回路部81Vに搭載された二つの磁気検出素子11V、12Vは、実施の形態3での説明と同様に電路57Vに電流を通電したさい、二つの磁気検出素子11V、12Vは、それぞれ反対方向のX方向の磁束密度70、71を検出している。
電路57Uの電流経路64a、65aの板厚の中心線を軸L3、電路57Uの電流経路66の板厚の中心線を軸L4とし、軸L3と軸L4のZ方向の中心線を中心線L5とする。このとき、隣相である57Vのスリット61Vに配置された磁気検出素子11V、12Vは中心線L5に対して略対称となるように配置されている。ここでは、電路57Uと回路部81Vに搭載されている磁気検出素子11V、12Vとの関係を示したが、電路57Vと回路部81U、81W及び電路57Wと回路部81Vも同様の位置関係になるように配置されている。
電路57Uの電流経路66に-Y方向からU相電流を通電したとき、電路57Uから発生する磁束は、電流経路64a、65aから発生する磁束線67a、67b、電流経路64b、65bから発生する磁束線68a、68b、電流経路66から発生する磁束線69となる。また、磁束線67a、67bが合成された磁束線を磁束線67、磁束線68a、68bが合成された磁束線を磁束線68とする。
このとき電路57UのX方向に隣接し、隣相である電路57Vに配置された磁気検出素子11V、12Vが磁束線67、68、69から受ける影響について説明する。
まずは、磁束線68により磁気検出素子11V、12Vが受ける影響を説明する。
磁束線68の影響により、磁気検出素子11Vでは、X方向の磁束密度が検出され、同様に磁気検出素子12VでもX方向の磁束密度が検出される。このとき、磁気検出素子11V、12Vは、電流経路64b、65bから見たときX方向及びY方向にほぼ等しい位置に配置されている。そのため、Z方向に延伸した電路64b、65bから発生する磁束68により、磁気検出素子11V、12Vでは、同一方向に同等の磁束密度が検出される。そのため、差動演算することにより、磁束線68の影響をキャンセルすることができる。
次に磁束線67、69により磁気検出素子11V、12Vが受ける影響を説明する。磁束線67の影響により、磁気検出素子11Vでは、X方向の磁束密度を検出し、同様に磁気検出素子12VでもX方向の磁束密度を検出する。このとき、磁気検出素子11Vと磁気検出素子12Vでは、電流経路64a、65aの板厚の中心線である軸L3とZ方向の距離が異なるため、軸L3と距離が近い、磁気検出素子12Vで検出される磁束密度の方が磁気検出素子11Vよりも大きくなる。そのため、差動演算したさい、磁束密度の差分だけ影響を受けることになる。
しかしながら、電流経路66から発生する磁束線69の影響により、磁気検出素子11V、12Vでは、磁束線67の影響とは反対に軸L4と距離が近い、磁気検出素子11Vで検出される磁束密度の方が磁気検出素子12Vよりも大きくなる。ここで、中心線L5は、軸L3と軸L4のZ方向の中心線であり、磁気検出素子11V、12Vは中心線L5に対して略対称となるように配置されているため、磁気検出素子11V、12Vでは、磁束線67と磁束線69から受ける影響が合成され、略同一の大きさの磁束密度となる。そのため、差動演算することにより、磁束線67、69の影響をキャンセルすることができる。
図20では、シミュレーションにより電路57Uへ直流100Aを通電したときに発生する磁束線からX方向のみを抽出した磁束分布を示す。
電路57Uへ電流を通電したさい、電路57UのX方向に隣接し、隣相である電路57Vに配置された磁気検出素子11Vが受ける方向の磁束密度は0.83mT、磁気検出素子12Vが受けるX方向の磁束密度は0.83mTとなり、差動演算することで隣相である電路57Uからの影響を受けなくなることがわかる。また、他の隣相の電路と磁気検出素子も同様の結果となる。
また、ここではU字型形状の説明を行ったが、電路端部をさらに-Z方向、+Z方向にそれぞれ該90度曲げた状態でも同様の効果がある。
以上説明したように板厚方向にU字型に加工した複数の電路をずらして配置することにより、隣相からの影響を受けなくすることができる。また、隣相からの影響を受けなくすることができるため、隣相との距離を短くすることができ、電流検出装置を小型化できる。
したがってこのような磁気検出素子の配置と、電路構造を電流検出装置に採用することにより、外部磁界の影響を抑制しつつ、小型で周波数特性が高周波領域まで良好な電流検出装置を提供できる。
図21は、図18(b)の電路57(57U、57V)を変形した電路72(72U、72V)と回路部81(81U、81V)を示す斜視図である。図22は、図21の電路72V周辺をX方向から見た側面図である。
図21において、電路72Vは、-Z方向に延伸し、折り曲げ線73に沿ってY方向に該90度に折り曲げられ(第三の屈曲部)、その後折り曲げ線74に沿って-Z方向に該90度折り曲げられ(第一の屈曲部)た第一のクランプ曲げ部と、さらに折り曲げ線75に沿って-Y方向に該90度に折り曲げられ(第二の屈曲部)、その後折り曲げ線76に沿って-Z方向に該90度に折り曲げられ(第四の屈曲部)た第二のクランプ曲げ部から成る該凸字型の形状となる。折り曲げ線74で曲げられた第一の屈曲部に、スリット77Vが穿設され、スリット77VにY方向と平行な向きで回路部81Vが配置されている。このとき、スリット77Vが穿設された部分では、電路72Vを流れる電流がスリット77Vにより2分割されることで、同一方向に二つの電流経路78V、79Vに分かれて存在している。
なお、二つの電流経路78V、79Vは、電路40と同様に第一の屈曲部(折り曲げ線92での折り曲げ)で折り曲げられた後合流し、第二の屈曲部(折り曲げ線75での折り曲げ)で折り曲げられ電流経路を80Vとなる。
回路部81Vは、実施の形態1で説明した回路部8と内部構成は同一であるが、端子16、17、18の突出方向が異なる。その突出方向はY方向であり、図16に示す軸L1と垂直方向である。以上V相の電路72Vを代表として説明したが、U相の電路72U、も同様である。なお図21では、W相の電路は記載していないが、W相の電路が有る場合も同様である。
電路72においても、電流経路78、79と回路部81との関係が、図16に示す実施の形態3の電路40の電流経路44、45と回路部81との関係と同様であるので、図16の軸L1に対し、二つの電流経路が非線対称配置されることにより、電路に流れる電流に応じて磁束を検出したときの周波数特性を向上させることができる。したがってこのような磁気検出素子の配置と、電路構造を電流検出装置に採用することにより、外部磁界の影響を抑制しつつ、周波数特性が高周波領域まで良好な電流検出装置を提供できる。
また、回路部81の端子16、17、18の突出方向がY方向であり、電路72の幅方向(X方向)と電路72の延伸方向(Z方向)が作るXZ面に並行に位置するプリント基板59に容易に半田付けすることができる。
また、電路72の形状変更により図19に示すの軸L3と軸L4の位置が変化し、回路部81のZ方向の位置が変化しても、回路部81のプリント基板59との半田付け位置を変えることで対応が可能となる。
図22に示す電路72のような該凸型の形状の電路の場合、図1のような平板の電路と異なり、電路の板厚方向(Y方向)に厚みf1を持つ形状となり電流検出装置のY方向の厚さが厚くなる懸念がある。
回路部81を用いた場合は、回路部81の端子16、17、18をZ方向に並べて、その突出方向をY方向とすることで、回路部81のモールドパッケージのY方向寸法f2は、端子の数や大きさの影響を受けることがなく、磁気検出素子11、12配置に必要な寸法(例えば3.5mm)が確保できればよく、電路72のY方向の寸法f1も、回路部81の端子16、17、18の影響を受けることがなく、磁気検出素子11、12を囲むような配置に必要な寸法(例えば5mm)が確保できればよい。
一方従来の回路部8を用いた場合は、端子16、17、18がZ方向に突出するので、回路部8と電路72のY方向寸法は端子の数や大きさの影響を受け大きくなる。回路図8のZ方向に突出する端子16、17、18を半田付けするプリント基板は、XY面に並行に位置することとなり、Y方向の寸法を小さくすると部品実装面積の確保が困難となる。
以上より端子16、17、18の突出方向がY方向である回路部81を用いることによりY方向厚みの小さい電流検出装置を得ることができる。
なお、電路72のスリット77は第一の屈曲部のみに設けたが、第一の屈曲部から第三の屈曲部までつながるように設けてもよい。
また、電路72のスリット77は第三の屈曲部のみに設けてもよく、この場合は回路部81の端子16、17、18は-Y方向に突出させ、電路72の-Y方向に近接する位置にプリント基板59を配置してもよい。
以上説明したように少なくとも一つの屈曲部へスリットが穿設された該凸型形状に折り曲げられた電路と、回路部内に配置された二つの磁気検出素子を結ぶ線に対し、垂直に引き出された端子を有する回路部とを組み合わせることにより、薄型な電流検出装置を提供できる。
したがってこれまで説明したものの組み合わせにより、このような磁気検出素子の配置と端子部を有する回路部と、電路構造を電流検出装置に採用することにより、外部磁界の影響を抑制しつつ、小型で周波数特性が高周波領域まで良好な電流検出装置を提供できる。
1 :電路
2 :ケース部
3 :プリント基板
4 :コネクタ部
5 :電流経路
6 :電流経路
7 :スリット
8 :回路部
9 :断面
10 :矢印
11 :磁気検出素子
12 :磁気検出素子
13 :第一の増幅部
14 :第二の増幅部
15 :差動演算部
16 :電源端子
17 :電源端子
18 :出力端子
19 :基材
20 :磁束線
21 :磁束線
22 :X方向の磁束密度
23 :X方向の磁束密度
24 :磁気検出素子
25 :磁気検出素子
26 :電路
27 :ケース部
28 :プリント基板
29 :コネクタ部
30 :電流経路
31 :電流経路
32 :スリット
33 :折り曲げ線
34 :断面
35 :矢印
36 :磁束線
37 :磁束線
38 :X方向の磁束密度
39 :X方向の磁束密度
40 :電路
41 :ケース部
42 :プリント基板
43 :コネクタ部
44 :電流経路
45 :電流経路
46 :電流経路
47 :スリット
48 :折り曲げ線
49 :折り曲げ線
50 :断面
51 :矢印
52 :磁束線
53 :磁束線
54 :磁束線
55 :X方向の磁束密度
56 :X方向の磁束密度
57 :電路
58 :ケース部
59 :プリント基板
60 :コネクタ部
61 :スリット
62 :断面
63 :矢印
64 :電流経路
65 :電流経路
66 :電流経路
67 :磁束線
68 :磁束線
69 :磁束線
70 :X方向の磁束密度
71 :X方向の磁束密度
72 :電路
73 :折り曲げ線
74 :折り曲げ線
75 :折り曲げ線
76 :折り曲げ線
77 :スリット
78 :電流経路
79 :電流経路
80 :電流経路
81 :回路部
90 :電路
91 :電流経路
92 :電流経路
93 :スリット
94 :磁気検出素子
95 :磁気検出素子
96 :磁束線
97 :磁束線
98 :X方向の磁束密度
99 :X方向の磁束密度
100:電流検出装置
101:電流検出装置
102:電流検出装置
103:電流検出装置

Claims (9)

  1. 被測定電流が流れる方向に延伸し、当該延伸方向の垂直な方向から貫通スリットが穿設され、前記貫通スリットにより電流経路1と電流経路2に分割された平板状の電路と
    前記被測定電流によって前記電路の周囲に発生する磁束をそれぞれ検出する一対の磁気検出素子を備え、
    前記電流経路1と電流経路2は、前記延伸方向に垂直な断面から見て、前記一対の磁気検出素子を結ぶ軸に対し、非線対称な形状を有し、
    前記電路に流れる被測定電流は、前記貫通スリットにより、前記電流経路1と電流経路2に同一方向に分流して流れ、
    前記一対の磁気検出素子は、前記電流経路1と電流経路2に分流した電流より発生した磁界を互いに反対方向に貫通するように感磁面がそれぞれ配置され、かつ、前記電路の当該延伸方向の垂直な方向から見て、貫通スリット投影面内に配置され、前記一対の磁気検出素子から得られた検出信号を差動演算する回路部を備えたことを特徴とする電流検出装置
  2. 前記一対の磁気検出素子の素子間距離よりも、前記平板状の電路の板厚が小さいことを特徴とする請求項1に記載の電流検出装置。
  3. 前記一対の磁気検出素子の素子間距離中央と、前記平板状の電路の板厚の中心線が略一致していることを特徴とする請求項1~2に記載の電流検出装置。
  4. 前記電路は、前記貫通スリットの有る部分で屈曲した第一の屈曲部を有することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の電流検出装置。
  5. 前記電路は、前記貫通スリットの有る部分で屈曲した第一の屈曲部と、前記貫通スリットの無い部分で屈曲した第二の屈曲部を有することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の電流検出装置。
  6. 前記電路を二つ以上有し、
    一つの前記電路の前記一対の磁気検出素子の素子間距離中央位置と、他の隣接する前記電路の前記第一の屈曲部と前記第二の屈曲部との中央位置が略一致し、
    一つの前記電路の前記第一の屈曲部と前記第二の屈曲部との中央位置と、他の隣接する前記電路の前記一対の磁気検出素子の素子間距離中央位置が略一致することを特徴とする
    請求項5に記載の電流検出装置。
  7. 前記電流経路1と前記電流経路2との電路幅比が1.7以上3以下であることを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の電流検出装置。
  8. 前記磁気検出素子は、ホール素子、MR素子、GMR素子、又はTMR素子であることを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の電流検出装置。
  9. 被測定電流が流れる方向に延伸し、当該延伸方向の垂直な方向から貫通スリットが穿設され、前記貫通スリットにより電流経路1と電流経路2に分割された平板状の電路の、前記貫通スリットに挿入され、
    前記電路の延伸方向と前記電路の幅方向が作る面に並行な位置に配置されたプリント基板に半田付けされる端子を備え、
    前記貫通スリットにより、前記電流経路1と電流経路2に同一方向に分流して流れる前記被測定電流によって発生する磁束を互いに反対方向に貫通するように感磁面がそれぞれ配置された一対の磁気検出素子を備え、
    前記一対の磁気検出素子から得られた検出信号を差動演算し
    前記電路は、すくなくとも一つのクランク曲げ部を有し、前記クランク曲げ部の二つの屈曲部のうち少なくとも一つに前記貫通スリットが屈曲して有り、
    前記端子が、前記一対の磁気検出素子の二つの素子を結ぶ軸に対し、略垂直方向に突出することを特徴とする電流検出装置の回路部。
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