JP2022158661A - 水性分散体 - Google Patents

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Daisuke Shibata
能宜 岡田
Yoshinori Okada
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Abstract

【課題】基材との密着性及び耐水性に優れた樹脂層を形成可能な水性分散体を提供する。【解決手段】ポリオレフィン系樹脂(A)が、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂を含む水性分散体であって、該変性ポリオレフィン系樹脂が、さらに芳香環を1個以上有する化合物(C)で変性されているか、及び/又は、芳香環を1個以上有する化合物(C)を含有し、かつ該変性ポリオレフィン系樹脂が、さらに塩基性化合物(E)で変性されているか、及び/又は、塩基性化合物(E)を含有する水性分散体。【選択図】なし

Description

本発明は、水性分散体、該水性分散体から形成された樹脂層を含む積層体、及び、該水性分散体を含む接着剤又はバインダーに関する。
従来、プロピレン単独重合体やプロピレンとα-オレフィンとの共重合体といったポリオレフィン樹脂は、機械的物性、耐熱性、耐薬品性、耐水性などに優れると共に安価であることから、自動車部品や家電製品等の幅広い分野に用いられている。
一般に、ポリオレフィン樹脂からなる基材は、ポリオレフィン樹脂以外の物質との接着性が低く、例えばポリウレタン樹脂等の極性が高い物質の接着や塗装が困難である。そこで、このような物質との接着や塗装を可能とすべく、基材に対して接着性を有する前処理剤(例えば接着剤、バインダー、プライマー等)を予め基材表面に塗工する方法などが採用されている。このような前処理剤としては、酸変性ポリオレフィン等の変性ポリオレフィン系樹脂を含む水性分散体が挙げられる。例えば、特許文献1には、互いに分子量の異なる2種類のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたポリオレフィンを含む水性分散体が記載されている。
国際公開第2020/044920号
しかし、本発明者の検討によれば、変性ポリオレフィン系樹脂を含む水性分散体から形成される樹脂層は、基材との密着性や耐水性が十分でない場合があることがわかった。
従って、本発明の目的は、基材との密着性及び耐水性に優れた樹脂層を形成可能な水性分散体、該水性分散体から形成された樹脂層を含む積層体、及び、該水性分散体を含む接着剤又はバインダーを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂(A)が、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂を含む水性分散体において、該変性ポリオレフィン系樹脂が、さらに芳香環を1個以上有する化合物(C)で変性されているか、及び/又は、芳香環を1個以上有する化合物(C)を含有し、かつさらに塩基性化合物(E)で変性されているか、及び/又は、塩基性化合物(E)を含有すると、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には、以下の好適な態様が含まれる。
[1]ポリオレフィン系樹脂(A)が、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂を含む水性分散体であって、
該変性ポリオレフィン系樹脂は、さらに芳香環を1個以上有する化合物(C)で変性されているか、及び/又は、芳香環を1個以上有する化合物(C)を含有し、かつ
該変性ポリオレフィン系樹脂は、さらに塩基性化合物(E)で変性されているか、及び/又は、塩基性化合物(E)を含有する、水性分散体。
[2]前記変性ポリオレフィン系樹脂は、さらに(メタ)アクリル酸エステル(D)で変性されている、[1]に記載の水性分散体。
[3]ポリオレフィン系樹脂(A)は、エチレン-プロピレン系共重合体及び/又はプロピレン-ブテン系共重合体である、[1]又は[2]に記載の水性分散体。
[4]芳香環を1個以上有する化合物(C)は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを有する化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の水性分散体。
[5]芳香環を1個以上有する化合物(C)は、置換基を含んでいてよいベンゼン環を有する化合物及び/又は置換基を含んでいてよいナフタレン環を有する化合物である、[1]~[4]のいずれかに記載の水性分散体。
[6]塩基性化合物(E)は、芳香環を有さない化合物である、[1]~[5]のいずれかに記載の水性分散体。
[7]塩基性化合物(E)は、芳香環を有さない有機アミン化合物である、[1]~[6]のいずれかに記載の水性分散体。
[8]α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)の変性量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1~20質量部である、[1]~[7]のいずれかに記載の水性分散体。
[9]芳香環を1個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1~70質量部である、[1]~[8]のいずれかに記載の水性分散体。
[10]塩基性化合物(E)の変性量及び/又は含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1~20質量部である、[1]~[9]のいずれかに記載の水性分散体。
[11](メタ)アクリル酸エステル(D)の変性量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1~30質量部である、[2]~[10]のいずれかに記載の水性分散体。
[12]基材と、[1]~[11]のいずれかに記載の水性分散体から形成された樹脂層とを含む、積層体。
[13][1]~[11]のいずれかに記載の水性分散体を含む、接着剤。
[14][1]~[11]のいずれかに記載の水性分散体を含む、バインダー。
本発明の水分散体は、基材に対する密着性及び耐水性に優れた樹脂層を形成できる。そのため、接着剤、バインダー、プライマー等の前処理剤として好適に使用できる。
[水性分散体]
本発明の水性分散体は、ポリオレフィン系樹脂(A)が、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)で変性され、さらに芳香環を1個以上有する化合物(C)で変性されているか、及び/又は、芳香環を1個以上有する化合物(C)を含有し、かつ
さらに塩基性化合物(E)で変性されているか、及び/又は、塩基性化合物(E)を含有する変性ポリオレフィン系樹脂を含むものである。
本発明者は、ポリオレフィン系樹脂(A)が、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂が、さらに芳香環を1個以上有する化合物(C)で変性されているか、及び/又は、芳香環を1個以上有する化合物(C)を含有し、かつさらに塩基性化合物(E)で変性されているか、及び/又は、塩基性化合物(E)を含有すると、意外なことに、水性分散体から形成される樹脂層の基材に対する密着性及び耐水性が向上することを見出した。これは、理由は定かではないが、成分(E)が分散性を高めつつ、芳香環を1個以上有する成分(C)の構造に起因して、基材に対する親和性及び耐水性が高まるためだと推定される。
<変性ポリオレフィン系樹脂>
(ポリオレフィン系樹脂(A))
ポリオレフィン系樹脂(A)(成分(A)ということがある)は、単独重合体又は共重合体であってよい。単独重合体としては、例えばα-オレフィンの単独重合体が挙げられる。
α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい観点から、エチレン、プロピレン及び1-ブテンが好ましい。また、本明細書において、水性分散体から形成される樹脂層(変性ポリオレフィン系樹脂層ということがある)と基材との密着性を、単に「基材との密着性又は基材に対する密着性」ということがあり、ポリオレフィン系樹脂層の耐水性を単に「耐水性」ということがあり、水性分散体の耐起泡性を単に「耐起泡性」ということがある。
共重合体としては、α-オレフィンの共重合体、α-オレフィンと他の単量体との共重合体が挙げられる。他の単量体としては、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物、ポリエン化合物等が挙げられる。α-オレフィンと他の単量体との共重合体において、α-オレフィンと他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせ用いてもよい。共重合体の形態は、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等のいずれであってもよい。これらは過酸化物等で低分子量化、高分子量化したものであってもよい。
環状オレフィンとしては、例えばノルボルネン、5-メチルノルボルネン、5-エチルノルボルネン、5-プロピルノルボルネン、5,6-ジメチルノルボルネン、1-メチルノルボルネン、7-メチルノルボルネン、5,5,6-トリメチルノルボルネン、5-フェニルノルボルネン、5-ベンジルノルボルネン、5-エチリデンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-エチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2,3-ジメチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-ヘキシル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-エチリデン-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,5-ジメチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-シクロへキシル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-イソブチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,2-ジヒドロジシクロペンタジエン、5-メトキシノルボルネン、5,6-ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5-ジメチルアミノノルボルネン、5-シアノノルボルネン、シクロペンテン、3-メチルシクロペンテン、4-メチルシクロペンテン、3,4-ジメチルシクロペンテン、3,5-ジメチルシクロペンテン、シクロへキセン、3-メチルシクロへキセン、4-メチルシクロヘキセン、3,4-ジメチルシクロヘキセン、シクロへプテン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
ビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、p-tert-ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
ポリエン化合物としては、例えば直鎖状又は分枝状の脂肪族共役ポリエン化合物、脂環式共役ポリエン化合物、脂肪族非共役ポリエン化合物、脂環式非共役ポリエン化合物、芳香族非共役ポリエン化合物等が挙げられる。これらは、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基等の置換基を有していてもよい。
脂肪族共役ポリエン化合物としては、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-プロピル-1,3-ブタジエン、2-イソプロピル-1,3-ブタジエン、2-ヘキシル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ヘキサジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、2-メチル-1,3-デカジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-オクタジエン、2,3-ジメチル-1,3-デカジエン等が挙げられる。
脂環式共役ポリエン化合物としては、例えば2-メチル-1,3-シクロペンタジエン、2-メチル-1,3-シクロヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-シクロペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-シクロヘキサジエン等が挙げられる。
脂肪族非共役ポリエン化合物としては、例えば1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、1,8-ノナジエン、1,9-デカジエン、1,13-テトラデカジエン、1,5,9-デカトリエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-エチル-1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,5-ヘキサジエン、3,3-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、3,4-ジメチル-1,5-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘプタジエン、5-エチル-1,4-ヘプタジエン、5-メチル-1,5-ヘプタジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、5-エチル-1,5-ヘプタジエン、3-メチル-1,6-ヘプタジエン、4-メチル-1,6-ヘプタジエン、4,4-ジメチル-1,6-ヘプタジエン、4-エチル-1,6-ヘプタジエン、4-メチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,4-オクタジエン、4-エチル-1,4-オクタジエン、5-エチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,5-オクタジエン、6-メチル-1,5-オクタジエン、5-エチル-1,5-オクタジエン、6-エチル-1,5-オクタジエン、6-メチル-1,6-オクタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、6-エチル-1,6-オクタジエン、6-プロピル-1,6-オクタジエン、6-ブチル-1,6-オクタジエン、4-メチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,4-ノナジエン、4-エチル-1,4-ノナジエン、5-エチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,5-ノナジエン、5-エチル-1,5-ノナジエン、6-エチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,6-ノナジエン、6-エチル-1,6-ノナジエン、7-エチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,7-ノナジエン、8-メチル-1,7-ノナジエン、7-エチル-1,7-ノナジエン、5-メチル-1,4-デカジエン、5-エチル-1,4-デカジエン、5-メチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,5-デカジエン、5-エチル-1,5-デカジエン、6-エチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,6-デカジエン、6-エチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,6-デカジエン、7-エチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,7-デカジエン、7-エチル-1,7-デカジエン、8-エチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,8-デカジエン、9-メチル-1,8-デカジエン、8-エチル-1,8-デカジエン、6-メチル-1,6-ウンデカジエン、9-メチル-1,8-ウンデカジエン、6,10-ジメチル-1,5,9-ウンデカトリエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、13-エチル-9-メチル-1,9,12-ペンタデカトリエン、5,9,13-トリメチル-1,4,8,12-テトラデカジエン、8,14,16-トリメチル-1,7,14-ヘキサデカトリエン、4-エチリデン-12-メチル-1,11-ペンタデカジエン等が挙げられる。
脂環式非共役ポリエン化合物としては、例えばビニルシクロヘキセン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、2,5-ノルボルナジエン、2-メチル-2,5-ノルボルナジエン、2-エチル-2,5-ノルボルナジエン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロペンタン、1,5-ジビニルシクロオクタン、1-アリル-4-ビニルシクロヘキサン、1,4-ジアリルシクロヘキサン、1-アリル-5-ビニルシクロオクタン、1,5-ジアリルシクロオクタン、1-アリル-4-イソプロペニルシクロヘキサン、1-イソプロペニル-4-ビニルシクロヘキサン、1-イソプロペニル-3-ビニルシクロペンタン、メチルテトラヒドロインデン等が挙げられる。
芳香族非共役ポリエン化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ビニルイソプロペニルベンゼン等が挙げられる。
これらの中でも、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい観点から、ポリオレフィン系樹脂(A)は、好ましくはα-オレフィンの共重合体であり、より好ましくはプロピレン以外のα-オレフィンの共重合体とプロピレンとの共重合体であり、さらに好ましくはエチレン-プロピレン系共重合体及び/又はプロピレン-ブテン系共重合体(例えばプロピレン・1-ブテン共重合体)であり、さらにより好ましくはエチレン-プロピレン系共重合体である。なお、本明細書において、共重合体中のエチレンに由来する構成単位を「エチレン単位」と略称することがある。他の構成単位も同様に略称することがある。
本発明の一実施態様において、エチレン-プロピレン系共重合体又はプロピレン-ブテン系共重合体中のプロピレン単位の含有量は、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい観点から、該共重合体を構成する構造単位の合計量に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、さらにより好ましくは75モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは95モル%以下、さらに好ましくは90モル%以下である。なお、プロピレン単位の含有量は、例えば13C―NMRを用いて測定することができ、又は、原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の一実施態様において、ポリオレフィン系樹脂(A)がα-オレフィンと他の単量体との共重合体である場合、他の単量体単位の含有量は、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい観点から、ポリオレフィン系樹脂(A)のモル量に対して、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下であり、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上である。なお、他の単量体単位の含有量は、例えば13C-NMRを用いて測定することができ、又は、原料の仕込み比から算出することもできる。
ポリオレフィン系樹脂(A)は、従来から既知の重合方法、例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合等により製造することが可能であり、それぞれリビング重合的であってよい。また、上記重合方法は、溶液重合、スラリー重合、バルク重合、固相重合、気相重合等いずれの重合形態であってもよい。溶液重合やスラリー重合の場合、溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒、塩化メチレン、四塩化炭素、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メトキシプロパノール、2-エトキシプロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒などが挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、及び脂環式炭化水素系溶媒が好ましく、より好ましくはトルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン及びシクロヘキサンである。これらの溶媒は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B))
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)(成分(B)ということがある)で変性されている。なお、ポリオレフィン系樹脂を変性するために使用される化合物を変性成分と称することがある。例えば、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)は変性成分である。また、変性に使用されることなく、ポリオレフィン系樹脂に含有されている成分を未変性成分と称することがある。
本明細書において、「変性」には、変性成分が、ポリオレフィン系樹脂(A)と、グラフト反応によりグラフト変性した直接変性、並びに、変性成分が、ポリオレフィン系樹脂(A)を変性している変性基に付加している付加変性が含まれる。
α,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸等が挙げられ、これらの中でも、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい観点から、(メタ)アクリル酸、マレイン酸が好ましい。本明細書において、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して(メタ)アクリル酸という。他の記載も同様の意味である。
α,β-不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられ、これらの中でも、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい観点から、無水マレイン酸が好ましい。
α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)の変性量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上、さらにより好ましくは2.0質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)の変性量が上記の下限以上であると、基材に対する密着性及び耐起泡性を高めやすく、また上記の上限以下であると、耐水性を高めやすい。なお、成分(B)の変性量は、例えばアルカリ滴定法もしくはフーリエ変換赤外分光法を用いて測定することができ、又は、原料の仕込み比から算出することもできる。
なお、変性ポリオレフィン系樹脂中のα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)単位は、酸無水物基が保持されたものであっても、開環したものであってもよく、保持されたものと開環したものとの双方であってもよい。また、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、成分(B)は、変性成分として、少なくともポリオレフィン系樹脂の変性に使用されていれば、未変性成分として、変性ポリオレフィン系樹脂に含有されていてもよい。
(芳香環を1個以上有する化合物(C))
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、さらに芳香環を1個以上有する化合物(C)(成分(C)ということがある)で変性されているか、及び/又は、芳香環を1個以上有する化合物(C)を含有する。すなわち、芳香環を1個以上有する化合物(C)は、ポリオレフィン系樹脂を変性するために使用される変性成分であってもよく、変性に使用されることなく、変性ポリオレフィン系樹脂に含有されている未変性成分であってもよく、またその両方であってもよい。
芳香環を1個以上有する化合物(C)は、芳香環を1個以上含んでいれば、特に限定されず、芳香環とは単環式芳香環を示す。そのため、成分(C)のうち、芳香環を1個有する化合物は、単環式芳香環を有する化合物である。単環式芳香環としては、単環式芳香族炭化水素環、好ましくは炭素数6~15の単環式芳香族炭化水素環、例えばベンゼン環等;硫黄原子、窒素原子及び酸素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む単環式芳香族複素環、好ましくは炭素及びヘテロ原子数5~15の単環式芳香族複素環、例えばピリジン環、ジアザベンゼン環、トリアジン環、フラン環、チオフェン環、アゾール環、ジアゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環等が挙げられる。これらの中でも、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい観点から、ベンゼン環が好ましい。
成分(C)のうち、芳香環を2個以上有する化合物としては、例えば、2個以上の単環式芳香環が縮合した縮合多環式芳香環、又は、2個以上の単環式芳香環、2個以上の縮合多環式芳香環、若しくは1個以上の単環式芳香環及び1個以上の縮合多環式芳香環が、互いに単結合、脂肪族基又は脂環式基等を介して結合した環集合芳香環を有する化合物が挙げられる。
縮合多環式芳香環としては、縮合多環式芳香族炭化水素環、好ましくは炭素数10~20の縮合多環式芳香族炭化水素環、例えばナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等;硫黄原子、窒素原子及び酸素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む縮合多環式芳香族複素環、好ましくは炭素及びヘテロ原子数8~20の縮合多環式芳香族複素環、例えばアザナフタレン環、ジアザナフタレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾシロール環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、アクリジン環等が挙げられる。これらの中でも、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい観点から、ナフタレン環が好ましい。
環集合芳香環は、単環式芳香環及び/又は縮合多環式芳香環が単結合、脂肪族基又は脂環式基等を介して結合(又は連結)された環集合芳香環、好ましくは炭素及びヘテロ原子数10~40の環集合芳香環である。環集合芳香環は、複数の単環式芳香環で構成されていてもよく、複数の縮合多環式芳香環で構成されていてもよく、これらの環を組合せて構成されていてもよい。具体的に環集合芳香環としては、例えばビフェニル環、ビピリジン環、フェニルナフチル環、テルフェニル環、テルピリジン環等が挙げられる。これらの中でも、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい観点から、ビフェニル環が好ましい。
芳香環を1個以上有する化合物(C)、好ましくは単環式芳香環、縮合多環式芳香環又は環集合芳香環は、置換基を含んでいてよい。置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル、n-ヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;ヒドロキシル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基及びデシルオキシ基等のアルコキシ基;シクロへキシルオキシ基等のシクロアルコキシ基;チオール基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等のアルキルチオ基;シクロへキシルチオ基等のシクロアルキルチオ基;アセチル等のアシル基;カルボキシル基;ニトロ基;シアノ基;アミノ基;アルキルアミノ基、例えば窒素原子上に炭素数1~10のアルキル基(例えば上記アルキル基)を1つ有するモノアルキルアミノ基、窒素原子上に炭素数1~10のアルキル基(例えば上記アルキル基)を2つ有するジアルキルアミノ基若しくは2つのアルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成している環状アミノ基、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルヘキシルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基等;スクシンイミド基、フタルイミド基等のイミド基;(メタ)アクリロイル基:ビニル基などが挙げられる。これらの置換基は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの置換基は、成分(C)が変性成分として用いられる場合、少なくとも1つの置換基が、ポリオレフィン系樹脂に直接変性し得る置換基、又は、変性ポリオレフィン系樹脂に含まれる変性基、好ましくはカルボン酸及び/又はその誘導体(例えばエステル、酸無水物、酸ハロゲン化物、アミド等)と反応して付加変性し得る置換基であることが好ましい。直接変性し得る置換基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基が挙げられ、付加変性し得る置換基としては、例えばヒドロキシル基、アルコキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基などが挙げられる。これらの中でも、反応性を高めやすく、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を向上しやすい観点から、芳香環を1個以上有する化合物(C)は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを有する化合物であることが好ましく、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを有する化合物であることがより好ましく、アミノ基、メチルアミノ基及びエチルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを有する化合物であることがさらに好ましい。
芳香環を1個以上有する化合物(C)としては、例えば、前記置換基を含んでいてよい単環式芳香環を有する化合物、前記置換基を含んでいてよい縮合多環式芳香環を有する化合物、及び前記置換基を含んでいてよい環集合芳香環を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。本発明の一実施態様では、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい観点から、芳香環を1個以上有する化合物(C)は、前記置換基を含んでいてよい単環式芳香環(好ましくはベンゼン環)を有する化合物及び/又は前記置換基を含んでいてよい縮合多環式芳香環(好ましくはナフタレン環)を有する化合物であることが好ましく、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを含む単環式芳香環(好ましくはベンゼン環)を有する化合物及び/又はヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを含む縮合多環式芳香環(好ましくはナフタレン環)を有する化合物であることがより好ましい。
本発明の好適な実施態様では、芳香環を1個以上有する化合物(C)は、例えば、ベンジルアミン(アミノメチルベンゼン)、アミノエチルベンゼン、アニリン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、フェノール、ベンジルメルカプタン、フェニルエチルメルカプタン(フェネチルメルカプタン)、フェニルメルカプタン、1-ナフチルメチルアミン、2-ナフチルメチルアミン、1-ナフチルエチルアミン、2-ナフチルエチルアミン、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミン、1-メトキシナフタレン、2-メトキシナフタレン、1-エトキシナフタレン、2-エトキシナフタレン、1-ナフトール、2-ナフトール、1-ナフチルメチルチオール、2-ナフチルメチルチオール、1-ナフチルエチルチオール、2-ナフチルエチルチオール、1-ナフチルチオール、2-ナフチルチオール等が挙げられる。これらの中でも、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい観点から、芳香環を1個以上有する化合物(C)は、ベンジルアミン、アミノエチルベンゼン、アニリン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、フェノール、1-ナフチルメチルアミン、2-ナフチルメチルアミン、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミン、1-メトキシナフタレン、2-メトキシナフタレン、1-ナフトール及び2-ナフトールからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。成分(C)は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
芳香環を1個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、さらにより好ましくは2質量部以上、特に好ましくは3質量部以上であり、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下、さらにより好ましくは20質量部以下、特に好ましくは15質量部以下である。芳香環を1個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量が上記の範囲内であると、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい。
本発明の一実施態様では、芳香環を1個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量は、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)1質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、さらにより好ましくは1.5質量部以上であり、好ましくは15質量部以下、より好ましくは13質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。芳香環を1個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量が上記の範囲内であると、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい。
本発明の一実施態様では、芳香環を1個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量は、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)と(メタ)アクリル酸エステル(D)との合計量を1質量部としたときに、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上、さらにより好ましくは0.3質量部以上、特に好ましくは0.4質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。芳香環を1個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量が上記の範囲内であると、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい。
なお、成分(C)の変性量及び/又は含有量は、例えばフーリエ変換赤外分光法もしくは1N―NMRを用いて測定することができ、又は、原料の仕込み比から算出することもできる。成分(C)が部分的に未変性成分を含む場合は、変性量と含有量との割合は、変性ポリオレフィン系樹脂をキシレン等に溶解させ、次いで溶解液をメタノール等に攪拌しながら滴下して変性ポリオレフィン系樹脂を再沈殿させて回収した後、回収したサンプルを真空乾燥する洗浄工程を行った後に、フーリエ変換赤外分光法あるいは1N―NMRにより成分(C)の変性量を測定し、これを洗浄工程前の測定値(成分(C)の変性量と含有量の両方を含む)と比較して求めることができる。
(塩基性化合物(E))
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、さらに塩基性化合物(E)(成分(E)ということがある)で変性されているか、及び/又は、塩基性化合物(E)を含有する。すなわち、塩基性化合物(E)は、ポリオレフィン系樹脂を変性するために使用される変性成分であってもよく、変性に使用されることなく、変性ポリオレフィン系樹脂に含有されている未変性成分であってもよく、またその両方であってもよい。塩基性化合物(E)を変性成分及び/又は未変性成分として含むことにより、分散質の分散性を高められるため、水性分散体(又は水性分散系)を形成又は維持しやすくなる。なお、本明細書において、分散質とは、水性分散体中の溶媒以外の成分を意味する。
塩基性化合物(E)は、例えば水性分散体中に存在するカルボキシル基を中和できる化合物である。本発明の一実施態様にかかる塩基性化合物(E)は、分散質の分散性を高め、耐起泡性や、得られる樹脂層の基材との密着性及び耐水性を向上しやすい観点から、芳香環を有さない化合物であることが好ましい。
また、本発明の一実施態様では、塩基性化合物(E)は、例えば、アンモニア、有機アミン化合物、金属水酸化物等であってよく、分散質の分散性を高め、耐起泡性や、得られる樹脂層の基材との密着性及び耐水性を向上しやすい観点から、好ましくはアンモニア又は有機アミン化合物であり、より好ましくは沸点が200℃以下の有機アミン化合物又は芳香環を有さない有機アミン化合物である。なお、沸点が200℃以下の有機アミン化合物を用いる場合、通常の乾燥によって容易に揮発させることができ、水性分散体を用いて樹脂層を形成する場合に、樹脂層の基材に対する密着性、耐水性及び耐アルカリ性をより高めやすい。
有機アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン(N,N-ジメチルアミノエタノール)、アミノエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、3-メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等が挙げられる。分散質の分散性を高め、耐起泡性や得られる樹脂層の基材との密着性及び耐水性を向上しやすい観点からは、有機アミン化合物は、第3級有機アミン化合物であることが好ましく、N,N-ジメチルエタノールアミンであることがより好ましい。金属水酸化物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
本明細書では、塩基性化合物が芳香環を1個以上有する化合物でもある場合は、成分(C)に分類される。
塩基性化合物(E)の変性量及び/又は含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、さらにより好ましくは2質量部以上、特に好ましくは3質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。塩基性化合物(E)の変性量及び/又は含有量が上記の範囲内であると、分散質の分散性を高め、耐起泡性や、基材との密着性及び耐水性を向上しやすい。
((メタ)アクリル酸エステル(D))
変性ポリオレフィン系樹脂は、さらに(メタ)アクリル酸エステル(D)(成分(D)ということがある)で変性されていてよい。(メタ)アクリル酸エステル(D)で変性されていると、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を向上しやすい。
(メタ)アクリル酸エステル(D)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(2-イソシアナト)エチル(メタ)アクリレート、(ジメチルアミノ)(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル(D)の中でも、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい観点から、アルキル基の炭素数が1~18であるアルキル(メタ)アクリレート及び/又はシクロアルキル基の炭素数が3~18であるシクロアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート及びトリデシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つがより好ましく、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート及びドデシルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1つがさらに好ましく、ブチルアクリレート及び/又は2-エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。成分(D)は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、アルキル基の炭素数が1~18であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、シクロアルキル基の炭素数が3~18であるシクロアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本明細書では、(メタ)アクリル酸エステルが芳香環を1個以上有する化合物でもある場合は、成分(C)に分類される。なお、成分(D)は、変性成分として、少なくともポリオレフィン系樹脂の変性に使用されていれば、未変性成分として、変性ポリオレフィン系樹脂に含有されていてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル(D)の変性量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、さらにより好ましく5質量部以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。(メタ)アクリル酸エステル(D)の変性量が上記の範囲内であると、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすい。
(他の変性成分及び/又は含有成分(K))
変性ポリオレフィン系樹脂は、成分(B)、成分(C)、成分(D)及び成分(E)以外の他の変性成分(K)で変性されていてもよく、成分(C)及び成分(E)以外の他の含有成分(K)を含んでいてもよく、その両方を含んでいてもよい。他の変性成分及び/又は含有成分(K)を成分(K)と称することがある。
他の変性成分及び/又は含有成分(K)としては、例えば成分(B)及び成分(D)以外のα,β-不飽和カルボン酸の誘導体が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば(メタ)アクリル酸アミド、マレイン酸モノアミド、マレイミド等のα,β-不飽和カルボン酸アミド及びイミド等が挙げられる。
他の変性成分及び/又は含有成分(K)の変性量及び/又は含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下であり、通常0質量以上である。
本発明の一実施態様において、本発明における変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mwと表記することがある)は、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは400,000以下、さらにより好ましくは300,000以下、特に好ましくは200,000以下である。変性ポリオレフィン系樹脂のMwが上記の下限以上であると、基材との密着性、耐水性及び耐起泡性を高めやすく、また変性ポリオレフィン系樹脂のMwが上記の上限以下であると、水性分散体の粘度を低減しやすいため、塗工性を高めやすい。Mwは、ポリスチレンを標準とするゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、算出することができ、例えば、実施例に記載の方法により算出できる。
本発明の一実施態様において、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、示差走査熱量測定(DSCと表記することがある)による融解ピーク(単に「融解ピーク」ということがある)が観測される樹脂であることが好ましい。示差走査熱量測定(DSC)による融解ピークが観測されるとは、-100~200℃の温度範囲に、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されることをいう。このような融解ピークが観測される変性ポリオレフィン系樹脂は、優れた耐水性を発現しやすい観点から好ましい。なお、融解ピークは、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の一実施態様において、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂のDSCにより測定される融点は、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下、さらにより好ましくは100℃以下、特に好ましくは90℃以下であり、通常30℃以上である。変性ポリオレフィン系樹脂のDSCにより測定される融点が上記の上限以下であると、基材に接着させる際の熱処理温度を低温化しやすく、プロセスの省エネルギー化が図りやすい。なお、変性ポリオレフィン系樹脂のDSCにより測定される融点は、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
<水性分散体>
本発明の水性分散体は、ポリオレフィン系樹脂(A)が、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)で変性され、さらに芳香環を1個以上有する化合物(C)で変性されているか、及び/又は、芳香環を1個以上有する化合物(C)を含有し、かつさらに塩基性化合物(E)で変性されているか、及び/又は、塩基性化合物(E)を含有する変性ポリオレフィン系樹脂を含む。すなわち、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)を変性成分として含み、芳香環を1個以上有する化合物(C)を変性成分及び/又は未変性成分として含み、塩基性化合物(E)を変性成分及び/又は未変性成分として含む変性ポリオレフィン系樹脂を含むため、水性分散体から形成される樹脂層は、基材に対する優れた密着性と、優れた耐水性とを両立できる。そのため、例えば自動車部品や家電製品等に利用されたときに剥がれ等を有効に抑制できるとともに、水に濡れたとしても白化や表面の光沢の変化等を有効に抑制できる。さらに、本発明の一実施態様では、本発明の水性分散体から形成される樹脂層(又は塗膜)は、さらに優れた耐起泡性も有することができ、起泡に起因する樹脂層の欠陥を防止することもできる。したがって、本発明の水性分散体は、接着剤、プライマー、バインダー等の前処理剤として好適に使用できる。なお、本発明の水性分散体は、変性ポリオレフィン系樹脂を1種又は複数種を含んでいてよい。
本発明の水性分散体は、水を含む。水としては、例えば水道水、イオン交換水等を用いてよい。水性分散体中の水の含有量は、水性分散体の質量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、好ましくは97質量%以下、より好ましくは90質%以下、さらに好ましくは80質量%以下、さらにより好ましくは70質量%以下である。水の含有量が上記の下限以上であると、分散質の分散性を高めやすく、また水の含有量が上記の上限以下であると、水性分散体の塗布性を高めやすい。
本発明の水性分散体は、水以外の溶媒を含むこともできる。水以外の溶媒としては、<ポリオレフィン系樹脂(A)>の項に記載の溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、水以外の溶媒は、好ましくは水に1質量%以上溶解する溶媒であり、より好ましくは水に5質量%以上溶解する溶媒であり、具体的には、好ましくは、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノン、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフラン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メトキシプロパノール、2-エトキシプロパノール、ジアセトンアルコールである。
水性分散体中の水以外の溶媒の比率は、水の質量に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、さらにより好ましくは1質量%以下であり、好ましくは0質量%以上である。なお、本明細書において、水性分散体に含有される溶媒を総称して分散溶媒ということがある。
本発明の水性分散体は、変性ポリオレフィン系樹脂及び分散溶媒以外の他の含有成分(L)(成分(L)ということがある)を含んでいてよい。本明細書において、用語「変性ポリオレフィン系樹脂」は、例えば未変性成分として成分(C)、成分(E)、又は成分(K)を含有する場合を包含する意味であるが、該樹脂が分散された水性分散体中においては、該樹脂に含まれるとされる未変性成分も水性分散体中に存在するため、これらの未変性成分が水性分散体中に含まれるということもできる。
他の含有成分(L)としては、例えば、更なる樹脂(上記変性ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂);乳化剤;増粘剤;分散剤;硬化剤;顔料;粘度調整剤;消泡剤;フェノール系安定剤、フォスファイト系安定剤、アミン系安定剤、アミド系安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、沈降防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤等の安定剤;揺変剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、耐候剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、油剤、染料、硬化剤、架橋剤などの添加剤;ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ウオラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、ガラスフレーク、硫酸バリウム、クレー、カオリン、微粉末シリカ、マイカ、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、セライトなどの無機、有機の充填剤などが挙げられる。他の含有成分(L)は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
他の含有成分(L)の含有量は、特に限定されないが、変性ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0~20質量部、より好ましくは0~10質量部であってよい。
更なる樹脂としては、例えば上記変性ポリオレフィン系樹脂とは異なる種類のポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、AS樹脂等の重合体及び共重合体並びにそれらの変性物等の種々のものが挙げられる。これらは単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
更なる樹脂としては、粘着樹脂又は粘着付与剤としての機能を発揮する樹脂を使用してもよい。このような樹脂としては、例えば、ロジン類、テルペン系樹脂、炭素数5の石油留分を重合した石油系樹脂及びこの水素添加樹脂、炭素数9の石油留分を重合した石油系樹脂及びこの水素添加樹脂、その他の石油系樹脂、クマロン樹脂並びにインデン樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
具体的には、ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン及びこれらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステル、トリエチレングリコールエステル、フェノール変性物及びそのエステル化物などのロジン類;テルペン重合体、テルペンフェノール、β-ピネン重合体、芳香族変性テルペン重合体、α-ピネン重合体、テルペン系水素添加樹脂などのテルペン系樹脂;炭素数5の石油留分を重合した石油系樹脂、炭素数9の石油留分を重合した石油系樹脂及びこれらの水素添加樹脂;マレイン酸変性物並びにフマル酸変性物などの石油系樹脂などが挙げられる。
水性分散体は、乳化剤として、ノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤等の乳化剤を含有していても、実質的に含有していなくてもよく、乳化剤を実質的に含有しなくとも分散性を好適に維持できる。乳化剤を実質的に含有しないとは、乳化剤の含有量が水性分散体に乳化作用を付与するのに必要な有効量未満であることをいう。具体的には、乳化剤の含有量は、変性ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、20質量部未満、15質量部未満又は10質量部未満であってよく、0質量部であってもよい。乳化剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
アニオン性乳化剤の例としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられる。
カチオン性乳化剤の例としては、ドデシルトリメチルアンモニウム塩及びセチルトリメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩、セチルピリジウム塩及びデシルピリジウム塩等のアルキルピリジウム塩、オキシアルキレントリアルキルアンモニウム塩、ジオキシアルキレンジアルキルアンモニウム塩、アリルトリアルキルアンモニウム塩、ジアリルジアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。
ノニオン性乳化剤の例としては、ポリオキシエチレンプロピレンエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられる。
両性乳化剤の例としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
増粘剤は、水性分散体の粘性調整のために使用することができる。増粘剤としては、株式会社ADEKA製;アデカノールUH-140S、UH-420、UH-438、UH-450VF、UH-462、UH-472、UH-526、UH-530、UH-540、UH-541VF、UH-550、UH-752、H-756VF、サンノプコ社製;SNシックナー920、922、924、926、929-S、A-801、A-806、A-812、A-813、A-818、621N、636、601、603、612、613、615、618、621N、630、634、636、4050等が挙げられる。
分散剤は、塗工基材への濡れ性改善のために使用することができる。分散剤としては、株式会社ADEKA社製;アデカコールW-193、W-287、W-288、W-304、BYK社製;BYK-333、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-378、サンノプコ社製;ノプコウェット50、SNウェット366、ノプコ38-C、SNディスパーサンド5468、5034、5027、5040、5020等が挙げられる。
硬化剤としては、イソシアネート系及び/又はカルボジイミド系の硬化剤などが使用でき、例えばイソシアネート系の硬化剤であるジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)及びこれらのオリゴマー又はポリマーが挙げられる。具体的には、住化バイエルウレタン製のスミジュール44V20、スミジュールN3200、N3300、N3400、N3600、N3900、S-304、S-305、XP-2655、XP-2487、XP-2547等が挙げられる。カルボジイミド系の硬化剤としては、カルボジライトシリーズ(日清紡ケミカル株式会社製)が挙げられる。
硬化剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.1~10質量部である。硬化剤は、有機溶剤に溶解させて添加してもよい。
顔料としては、例えば酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、酸化クロム、紺青、ベンガラ、黄鉛、黄色酸化鉄等の無機顔料やアゾ系顔料、アントラセン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、インジゴ系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機顔料等の着色顔料;タルク、炭酸カルシウム、クレイ、カオリン、シリカ、沈降性硫酸バリウム等の体質顔料;導電カーボン、アンチモンドープの酸化スズをコートしたウイスカー等の導電顔料;アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、スズ、酸化アルミニウム等の金属又は合金等の無着色あるいは着色された金属製光輝材等が挙げられる。顔料は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
顔料を用いる場合には、顔料分散剤を併用してもよい。顔料分散剤としては、例えばBASFジャパン社製のジョンクリル等の水性アクリル系樹脂;BYK社製のBYK-190等の酸性ブロック共重合体;スチレン-マレイン酸共重合体;エアプロダクツ社(エアープロダクト社)製のサーフィノールT324等のアセチレンジオール誘導体;イーストマンケミカル社製のCMCAB-641-0.5等の水溶性カルボキシメチルアセテートブチレート等が挙げられる。これらの顔料分散剤を用いることで、顔料の分散が安定した顔料ペーストを調製することができる。
粘度調整剤は、水性分散体の粘度を適正に調整するために添加される剤であり、本発明の水性分散体の性能を著しく低下させない範囲で使用される。粘度調整剤の例としては、特に制限されないが、例えばBYK-420、BYK-425(BYK社製)等が挙げられる。
本発明の一実施態様において、本発明の水性分散体中の分散質の質量は、水性分散体の質量に対して、好ましくは3質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらにより好ましくは25質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
本発明の一実施態様において、水性分散体における分散質の体積基準のメジアン径は、好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、さらにより好ましくは0.3μm以下である。分散質の体積基準のメジアン径が上記の上限以下であると、水性分散体の安定性がよく、基材への塗工性も良好となりやすいため、耐起泡性や得られる樹脂層の基材に対する密着性及び耐水性を高めやすい。水性分散体の分散質のメジアン径の下限は、特に制限されないが、例えば0.001μm以上、好ましくは0.01μm以上である。分散質の体積基準のメジアン径は、体積基準で積算粒子径分布の値が50%に相当する粒子径であり、粒度分布測定装置等により測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の一実施態様では、水性分散体中において、全分散質に占めるメジアン径が2μm以上である分散質の割合(体積基準の積算粒子径分布においてメジアン径が2μm以上である割合)は、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。当該割合が5%以下であると、水性分散体の安定性がよく、基材への塗工性も良好となりやすいため、耐起泡性や得られる樹脂層の基材に対する密着性及び耐水性を高めやすい。
[水性分散体の製造方法]
本発明の水性分散体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、変性ポリオレフィン系樹脂を製造する工程(「樹脂製造工程」と称する)、及び該変性ポリオレフィン系樹脂を水性溶媒中に分散させる工程(「分散工程」と称する)を含む方法が挙げられる。本発明の水性分散体の製造方法において、樹脂製造工程後に分散工程を行ってもよく、樹脂製造工程と分散工程とを同時に行ってもよい。
<樹脂製造工程>
樹脂製造工程は、変性ポリオレフィン系樹脂を製造する工程である。変性ポリオレフィン系樹脂の製造方法は、特に限定されないが、例えば、成分(A)を溶融又は溶媒に溶解させた後、成分(B)、成分(C)、ラジカル開始剤(M)、成分(E)、並びに任意に成分(D)、成分(K)を添加する工程を含む方法が挙げられる。
ラジカル開始剤(M)(成分(M)と称することがある)は、例えば有機過酸化物であり、好ましくは半減期が1時間となる分解温度が50~160℃である有機過酸化物である。分解温度が50℃以上であると変性量が向上する傾向にあり、分解温度が160℃以下であるとポリオレフィン系樹脂の分解が低減される傾向にある。これらの有機過酸化物は、分解してラジカルを発生した後、ポリオレフィン系樹脂からプロトンを引き抜く作用を有することが好ましい。
半減期が1時間となる分解温度が50~160℃である有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物、パーオキシケタール化合物、アルキルパーエステル化合物、パーカーボネート化合物等が挙げられる。かかる有機過酸化物の具体例としては、ジセチル パーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチル パーオキシジカーボネート,ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチル シクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピル パーオキシジカーボネート、t-ブチル パーオキシイソプロピルカーボネート、ジミリスチル パーオキシカーボネート、ジイソプロピルペロキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルネオデカノエート,α―クミル パーオキシ ネオデカノエート,t-ブチル パーオキシ ネオデカノエート、t-ブチルペロキシネオヘプタノエート、1,1ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン,t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート,t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート,t-ブチルパーオキシラウレート,2,5ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン,t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブテン,t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ペロキシード、n-ブチル-4,4-ビス(t-ベルオキシ)バレラート、ジ-t-ブチルペルオキシイソフタレート、ジクミルパーオキサイド、α-α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等が挙げられる。これらの中でも、有機過酸化物は、ジアルキルパーオキサイド化合物、ジアシルパーオキサイド化合物、パーカボネート化合物又はアルキルパーエステル化合物であることが好ましい。
ラジカル開始剤(M)の添加量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.2~5質量部である。ラジカル開始剤(M)の添加量が上記の下限以上であると、ポリオレフィン系樹脂(A)の変性量を高めやすく、またラジカル開始剤(M)の添加量が上記の上限以下であると、未反応のラジカル開始剤の含有量が低減されやすい。
成分(A)を溶融させる方法(方法(1)と称することがある)としては、特に限定されず、例えば、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸又は二軸の押出機等の混練機を用いる方法が挙げられ、連続生産が可能であり、生産性を向上させやすい観点からは、押出機を用いる方法が好ましい。本発明の一実施態様では、押出機を用いて、加熱下で成分(A)を予め溶融混練し、成分(B)、成分(C)、成分(M)、成分(E)並びに、任意に成分(D)及び成分(K)を、押出機の供給口より供給して混練を行う方法が好ましく用いられる。
成分(A)を溶媒に溶解させる方法(方法(2)と称することがある)としては、特に限定されず、例えば、成分(A)を加熱下で溶媒に溶解し、成分(B)、成分(C)、成分(M)、成分(E)並びに、任意に成分(D)及び成分(K)を添加して混合する方法が挙げられる。
溶媒としては、<ポリオレフィン系樹脂(A)>の項に記載の溶媒が挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒が好ましく、芳香族炭化水素系溶媒及び/又はエステル系溶媒がより好ましい。溶媒は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、方法(1)及び(2)では、成分(A)を予め溶融又は溶解した後、成分(A)以外の成分を添加しているが、成分(A)と成分(A)以外の成分とを同時に溶融又は溶解する方法であってもよい。
方法(1)及び(2)において、各成分を添加する順序は、特に限定されず、全て同時に添加してもよく、一部の成分を添加した後、残りの成分を添加してもよく、複数回にわけて順次添加してもよい。本発明の一実施態様では、成分(A)を溶融又は溶解後、成分(B)及び成分(M)を添加し、さらに成分(E)及び成分(C)を添加する方法が好ましい。また、成分(D)を含有する場合、成分(B)、成分(D)及び成分(M)を添加後、成分(E)及び成分(C)を添加する方法が好ましく用いられる。
また、一部の成分によりポリオレフィン系樹脂(A)を変性し、変性樹脂を得た後、該変性樹脂に残りの成分を加えることにより、変性樹脂をさらに変性するか、及び/又は変性樹脂に残りの成分を含有させてもよい。例えば、ポリオレフィン系樹脂(A)を溶融又は溶解後、そこに成分(B)及び成分(M)を加えて、成分(B)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂を得た後、該変性ポリオレフィン系樹脂(x)を溶融又は溶解し、さらに成分(E)及び成分(C)を同時又は順次加えてもよい。かかる場合、成分(E)及び成分(C)はそれぞれ、成分(B)由来の変性基に付加反応するか、及び/又は、変性ポリオレフィン系樹脂に含有し得る。また、かかる実施態様において、成分(B)及び成分(M)と同時に、成分(D)を加えて、成分(B)及び成分(D)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂(x)としてもよい。前記変性ポリオレフィン系樹脂(x)のMw及び融点は、それぞれ、<変性ポリオレフィン系樹脂>の項に記載の変性ポリオレフィン系樹脂のMw及び融点と同様の範囲から選択できる。
変性ポリオレフィン系樹脂の製造方法において、成分(B)及び成分(D)の添加量はそれぞれ、成分(A)に対する成分(B)及び成分(A)に対する成分(D)の上記変性量と同様の範囲から選択できる。また、成分(C)及び成分(E)の添加量はそれぞれ、成分(A)に対する成分(C)又は成分(A)に対する成分(E)の上記変性量及び/又は含有量と同様の範囲から選択できる。
<分散工程>
分散工程は、変性ポリオレフィン系樹脂を水性溶媒中に分散させる工程である。水性溶媒としては、<水性分散体>の項に例示の水、水以外の溶媒が挙げられる。また、水及び水以外の溶媒の添加量は、それぞれ、<水性分散体>の項に記載の水の含有量、水以外の溶媒の比率と同様の範囲から選択できる。
分散させる方法としては、例えば強制乳化法、自己乳化法、転相乳化法などの乳化法を用いてよい。具体的には、反応器において、変性ポリオレフィン系樹脂と、水及び水以外の溶媒との混合物を調製し、次いで混合物から水以外の溶媒を除去することにより水性分散体とする方法(I);混練機に、変性ポリオレフィン系樹脂を溶融する温度以上で溶融させた後に水を添加して水性分散体とする方法(II)などが挙げられる。これらの方法において混合物を調製する際には、必要に応じて加熱及び/又は撹拌を行ってよい。また、加熱は、例えば50~250℃、好ましくは60~200℃で行ってよく、撹拌機の回転数は、例えば50~16000rpm程度の回転数で行ってよい。
方法(I)において、反応器としては、加熱可能な加熱装置と、内容物に対して剪断力等を与えることができる撹拌機とを備えた容器(好ましくは、密閉及び/又は耐圧容器)が用いられる。方法(II)において、混練器としては、例えばロールミル、ニーダー、押出機、インクロール、バンバリーミキサー等が挙げられる。特にスクリューを1本又は2本以上ケーシング内に有する押出機又は多軸押出機を用いてもよい。押出機を用いて乳化する方法としては、変性ポリオレフィン系樹脂、乳化剤を混合し、これを押出機のホッパー又は供給口より連続的に供給し、これを加熱溶融混練し、更に押出機の圧縮ゾーン、計量ゾーン及び脱気ゾーン等に設けられた少なくとも1つの供給口より、水を供給し、スクリューで混練した後、ダイから連続的に押出すことができる。
分散工程では、変性ポリオレフィン系樹脂以外の他の成分を適宜、任意の時点で添加することができる。他の成分としては、例えば成分(L)などが挙げられ、後述の通り、分散工程と樹脂製造工程とを同時に行う場合は、例えば成分(C)、成分(D)、成分(E)などが挙げられる。
本発明の一実施態様では、樹脂製造工程後に、分散工程を行ってよい。この態様では、樹脂製造工程において、分散(又は乳化)させるべき変性ポリオレフィン系樹脂(全ての必要な成分が付与された変性ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂(y)ともいう)を樹脂製造工程で製造した後、変性ポリオレフィン系樹脂(y)を分散工程に供する。
本発明の一実施態様では、樹脂製造工程と、分散工程とを同時に行ってよい。この態様では、例えば、一部の成分が付与された変性ポリオレフィン系樹脂(変性ポリオレフィン系樹脂(x)ともいう)を製造した後、変性ポリオレフィン系樹脂(x)を分散工程に供して、任意の時点で、さらなる成分を添加することにより、全ての必要な成分が付与された変性ポリオレフィン系樹脂(y)を得ることができる。例えば、ポリオレフィン系樹脂(A)が成分(B)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂(x)を製造し、該変性ポリオレフィン系樹脂(x)及び成分(E)を分散溶媒に分散させた後、さらに成分(C)を添加して、成分(B)、成分(C)及び成分(E)が付与された変性ポリオレフィン系樹脂(y)を含む水性分散体を得ることができる。変性ポリオレフィン系樹脂(x)として、成分(B)及び成分(D)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂も好適に使用できる。ここで、付与されたとは、変性成分として変性ポリオレフィン系樹脂に含まれるか、及び/又は未変性成分として変性ポリオレフィン系樹脂、すなわち、水性分散体中に含まれることを意味する。この例の場合、成分(C)及び成分(E)は、変性に使用されていても、水性分散体中に含有させていても、その両方であってもよい。
[積層体及びその製造方法]
本発明は、基材と、本発明の水性分散体から形成された樹脂層(ポリオレフィン系樹脂層又は塗布乾燥物層ともいう)とを含む積層体を包含する。本発明の積層体は、前記水性分散体から形成された樹脂層を含むため、基材と樹脂層との密着性及び耐水性に優れている。積層体に含まれる基材及び変性ポリオレフィン系樹脂層の数は、それぞれ1又は複数であってよい。基材を複数有する場合、各基材の種類は同一又は異なっていてもよい。また、変性ポリオレフィン系樹脂層が複数ある場合、各変性ポリオレフィン系樹脂層の組成は同一又は異なっていてもよい。また、変性ポリオレフィン系樹脂層を構成する変性ポリオレフィン系樹脂は1種又は複数種であってよい。
基材を構成する(又は形成する)材料としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ABS樹脂、EVA樹脂、ゴム、ガラス、紙、木材、織布、編布、不織布、金属(例、鉄、アルミ、銅、ニッケル、銀、金、白金、各種合金)、強化繊維(例、炭素繊維、ガラス繊維、セルロース繊維)、石材等が挙げられる。これらの材料は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明の一実施態様において、基材を構成するポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン(エチレンに由来する構造単位を主成分とするポリオレフィン)、ポリプロピレン(プロピレンに由来する構造単位を主成分とするポリオレフィン)、ポリスチレン(スチレンに由来する構造単位を主成分とするポリオレフィン)等が挙げられる。
基材は、樹脂等に加え、さらに無機フィラー成分や顔料等とを含有する組成物からなるものであってもよい。無機フィラー成分及び顔料の例としては、タルク、マイカ、モンモリロナイト等の板状フィラー;短繊維ガラス繊維、長繊維ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ゾノライト等の繊維状フィラー;チタン酸カリウム、マグネシウムオキシサルフェート、窒化珪素、ホウ酸アルミニウム、塩基性硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、ワラストナイト、炭酸カルシウム、炭化珪素等の針状(ウイスカー)フィラー;沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の粒状フィラー;ガラスバルーンのようなバルン状フィラー等;亜鉛華、チタン白、硫酸マグネシウム等の無機充填剤や顔料が挙げられる。
基材の形状は、特に制限されず、フィルム、シート、板状体等であってよく、また、射出成形、圧縮成形、中空成形、押出成形、回転成形等の公知の成形法により得られる成形体であってもよい。
本発明の一実施態様では、基材の厚みは、基材の種類や数に応じて適宜選択でき、塗工適正の観点から、例えば1~10,000μm、好ましくは5~5,000μmである。また、変性ポリオレフィン系樹脂層の厚みは、組成や用途等に応じて適宜選択でき、例えば0.1~500μm、好ましくは1~300μm、より好ましくは3~200μmである。基材又は変性ポリオレフィン系樹脂層が複数ある場合、上記厚みは1つの基材又は1つの変性ポリオレフィン系樹脂層の厚みを示す。
本発明の積層体は、基材及びポリオレフィン系樹脂層以外の他の層を含んでいてよい。他の層としては、例えば塗料で形成された層(塗料層ということがある)等が挙げられる。本発明の積層体は他の層を1又は複数含んでいてよく、他の層を複数含む場合は、他の層の種類は同一又は異なっていてもよい。他の層(好ましくは塗料層)の厚みは、特に限定されないが、例えば1~500μm、好ましくは50~400μmである。
本発明の積層体を構成する層構成としては、例えば、基材/ポリオレフィン系樹脂層をこの順に有する層構成;第1基材/ポリオレフィン系樹脂層/第2基材をこの順に有する層構成;第1基材/ポリオレフィン系樹脂層/塗料層をこの順に有する層構成などが挙げられる。
本発明の一実施態様にかかる変性ポリオレフィン系樹脂層は、ポリオレフィン樹脂からなる基材のような非極性表面を有する基材との密着性、及び極性表面を有する基材との密着性の両方に優れるため、例えばポリオレフィン樹脂からなる第1基材(非極性表面を有する第1基材)と極性表面を有する第2基材とを互いに接着させるための接着剤(又は接着層)として好適である。つまり、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂層は、互いに同種の材質からなる基材同士を接着する場合でも、異種の材質からなる基材同士を接着する場合でも、優れた接着性を発揮する。したがって、本発明の積層体が第1基材/ポリオレフィン系樹脂層/第2基材をこの順に有する層構成を含む場合、第1基材がポリオレフィン樹脂基材(非極性表面を有する基材)であり、第2基材が極性表面を有する基材である構成を好適に用いることができる。
本発明の一実施態様では、本発明の積層体は、第1基材がポリウレタン樹脂基材であり、第2基材がポリオレフィン樹脂基材である層構成;第1基材がポリウレタン樹脂基材であり、第2基材がポリエステル樹脂基材である層構成;第1基材がポリ(メタ)アクリル樹脂基材であり、第2基材がポリオレフィン樹脂基材である層構成;第1基材がウレタンアクリル樹脂基材であり、第2基材がポリオレフィン樹脂基材である層構成、第1基材がポリウレタン樹脂基材であり、第2基材が金属である層構成などを好適に用いることができる。
本発明の一実施態様では、本発明の積層体は、基材がポリオレフィン樹脂基材であり、第2基材がアクリルウレタン塗料層である層構成などを好適に用いることができる。
本発明の積層体の製造方法は、特に限定されないが、本発明の水性分散体を基材に塗布して、乾燥(又は乾燥及び硬化)することにより塗膜を形成して変性ポリオレフィン系樹脂層を得る工程(a)を含む方法が挙げられる。また、本発明の積層体が2つの基材又は他の層を含む場合、工程(a)に加え、変性ポリオレフィン系樹脂層上に、第2基材又は他の層を積層する工程(b)を含む方法が挙げられる。
工程(a)において、基材に水性分散体を塗布する方法は、慣用の方法を用いることができる。塗布方法としては、例えば、刷毛塗り、エアスプレー法、エアレススプレー法、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング等が挙げられる。
工程(a)において、乾燥温度や乾燥時間は、塗膜が形成可能であるものであれば、特に限定されないが、例えば30℃~160℃、好ましくは35℃~100℃、より好ましくは40℃~80℃であってよく、また乾燥時間は、例えば1分間~1時間、好ましくは3~30分間であってよい。乾燥方法は、例えば慣用の方法を用いることができ、例えばニクロム線、赤外線、高周波等により行うことができる。
工程(b)において、変性ポリオレフィン系樹脂層上に、第2基材を積層する方法としては、第2基材を、ポリオレフィン系樹脂層を介して第1基材に貼り合わせ、熱処理する方法が挙げられる。かかる方法では、貼合させる第2基材にも予め、ポリオレフィン系樹脂層を形成しておいてもよい。
工程(b)において、変性ポリオレフィン系樹脂層上に、塗料層等の他の層を積層する方法としては、変性ポリオレフィン系樹脂層上に、塗料を塗布し、乾燥する方法が挙げられる。塗布方法は、上記に記載の塗布方法が挙げられ、乾燥温度や乾燥時間は、塗料の種類に応じて適宜選択できる。
[接着剤及びバインダー]
本発明は、本発明の水性分散体を含む接着剤又はバインダーを包含する。本発明の接着剤又はバインダーは、前記変性ポリオレフィン系樹脂を含むため、基材に対する優れた密着性、耐水性及び耐起泡性を発現できる。また、本発明の水性分散体は、プライマーとして用いることもできる。接着剤、バインダー又はプライマーは、例えば、エポキシ樹脂の水性分散体、ポリエステルの水性分散体、アクリル樹脂の水性分散体(アクリルディスパージョン)、ウレタン樹脂の水性分散体(ポリウレタンディスパージョン)等をさらに含んでいてもよい。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂、積層体、接着剤及びバインダー(又はプライマー)は、優れた密着性及び耐水性を有するため、自動車、家電、建材など各種工業部品に用いることができ、特に、薄肉化、高機能化、大型化された部品・材料として実用に十分な性能を有している。変性ポリオレフィン系樹脂、積層体、接着剤及びバインダー(又はプライマー)は、例えばバンパー、インストルメントパネル、トリム、ガーニッシュなどの自動車部品、テレビケース、洗濯機槽、冷蔵庫部品、エアコン部品、掃除機部品などの家電機器部品、便座、便座蓋、水タンクなどのトイレタリー部品、浴槽、浴室の壁、天井、排水パンなどの浴室周りの部品などの各種工業部品用成形材料として用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<重量平均分子量>
変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法によって、下記の条件で測定できる。
装置:東ソー社製 HLC-8121GPC/HT
カラム:東ソー社製 TSKgel GMHHR-H(S)HT 2本
温度:145℃
溶媒:o-ジクロロベンゼン
溶出溶媒流速:1.0ml/分
試料濃度:1mg/ml
測定注入量:300μl
分子量標準物質:標準ポリスチレン
検出器:示差屈折
重量平均分子量(Mw)の算出に際しては、標準試料として市販の単分散のポリスチレン標準試料を測定し、標準試料の保持時間と分子量から検量線を作成し算出を行える。
<融点及び結晶融解熱量>
変性ポリオレフィン系樹脂の融点、及び結晶融解熱量が1J/g以上である融解ピークは、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(SII)社製、EXSTAR6000)を用い以下の条件で測定できる。
(i)試料約5mgを室温から30℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、昇温完了後、5分間保持する。
(ii)次いで、200℃から10℃/分の降温速度で-100℃まで降温し、降温完了後、5分間、保持する。
(iii)次いで、-100℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する。このときに結晶の融解ピークが観察される温度を融点とする。
<粒子径>
実施例及び比較例で得られた水性分散体中の分散質のメジアン径(体積基準)は、堀場製作所社製、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA―950を用いて測定した。
<剥離強度(密着性)の評価>
実施例及び比較例で得られた積層体(1)を10mm幅で切り出し、引張試験機(株式会社島津製作所製オートグラフ)を用い、測定温度23℃、引張速度50mm/分、引張角度180度で、基材に対する変性ポリオレフィン系樹脂層の剥離強度(N/10mm)を測定した。
<耐水性の評価>
実施例及び比較例で得られた積層体(2)を40℃の温水中に3日間浸漬させ、塗膜(変性ポリオレフィン系樹脂層)表面が水を吸収して白化していないかを目視で確認した。塗膜表面が白化せず浸漬の前後で光沢に変化がなければ〇、塗膜表面が白化した場合、又は浸漬の前後で光沢に変化があった場合には×とした。
(実施例1)
<変性ポリオレフィン系樹脂(y-1)を含む水性分散体(D-1)の製造>
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた1000mlセパラブルフラスコに、ポリオレフィン系樹脂(a)[エチレン・プロピレン共重合体(エチレン:プロピレン=15モル%:85モル%)]400g、及びプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート68gを入れ、窒素雰囲気下、170℃に保たれた油浴中で溶融を行い、攪拌を行いながら系内が170℃になるように油浴の温度を調整した。系内が溶融した後、攪拌を行い均一な状態としながら、2-エチルヘキシルアクリレート48gと無水マレイン酸24g、パーブチルD4gを添加した。系内を170℃に保ったまま、2時間反応を行った後、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテートなどの低分子の揮発物質を除去した。減圧終了後、反応物を取り出し、冷却することで、変性ポリオレフィン系樹脂(x)を得た。
攪拌機、温度計および還流冷却器を備えた1000mlセパラブルフラスコに、変性ポリオレフィン系樹脂(x)179gを入れ、160℃の油浴中で溶融させた。その後、2-ブタノール27gを入れて溶解混合させ、N,N-ジメチルエタノールアミン11g、イオン交換水53gを加えて混合した後、90℃に保ちながら、イオン交換水を少量ずつ加えた。イオン交換水を369g加えたところで内容物を取り出し、エバポレーターを用いてイオン交換水以外の揮発成分を取り除き、水性分散体(D)を得た。不揮発分は約34%であった。
次いで、水性分散体(D)20gをガラス容器に入れた後、ベンジルアミン0.5gを加えて撹拌し、変性ポリオレフィン系樹脂(y-1)を含む水性分散体(D-1)を得た。水性分散体(D-1)における分散質の体積基準のメジアン径は0.08μmであった。
変性ポリオレフィン系樹脂(y-1)において、ベンジルアミンの変性量及び/又は含有量は、ポリオレフィン系樹脂(a)100質量部に対して10質量部であった。
<積層体(1)の製造>
ポリプロピレン基材(脱脂処理済)に、水性分散体(D-1)を乾燥膜厚で約10μmになるようにワイヤーバーで塗工し、50℃にて5分間加熱して乾燥し、その後、その上にアクリルウレタン塗料「ポリナールNo.800」(大橋化学工業株式会社製)を乾燥膜厚で約100μmとなるようにワイヤーバーで塗工し、80℃で30分間加熱乾燥させて、ポリプロピレン基材、変性ポリオレフィン系樹脂層、及び塗料層(ポリウレタンアクリレートからなる層)をこの順に有する積層体(1)を得た。
<積層体(2)の製造>
ポリプロピレン基材(脱脂処理済)に、水性分散体(D-1)を乾燥膜厚で約10μmになるようにワイヤーバーで塗工し、50℃にて5分間加熱して乾燥し、その後、80℃で30分間加熱乾燥させて、ポリプロピレン基材、及び変性ポリオレフィン系樹脂層をこの順に有する積層体(2)を得た。
(実施例2)
ベンジルアミンの添加量を1.5gに代えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、変性ポリオレフィン系樹脂(y-2)を含む水性分散体(D-2)、積層体(1)及び(2)を得た。水性分散体(D-2)における分散質の体積基準のメジアン径は0.08μmであった。また、ベンジルアミンの変性量及び/又は含有量は、ポリオレフィン系樹脂(a)100質量部に対して30質量部あった。
(実施例3)
ベンジルアミンの添加量を2.5gに代えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、変性ポリオレフィン系樹脂(y-3)を含む水性分散体(D-3)、積層体(1)及び(2)を得た。水性分散体(D-3)における分散質の体積基準のメジアン径は0.08μmであった。また、ベンジルアミンの変性量及び/又は含有量は、ポリオレフィン系樹脂(a)100質量部に対して50質量部あった。
(比較例1)
ベンジルアミンを添加することなく、水性分散体として、水性分散体(D)を用いて、積層体(1)及び(2)を形成したこと以外は、実施例1と同様の方法により、水性分散体(D)、積層体(1)及び(2)を得た。水性分散体(D)における分散質の体積基準のメジアン径は0.08μmであった。
実施例及び比較例で得られた積層体について、上記測定方法に従って、基材に対するポリオレフィン系樹脂層の剥離強度を測定するとともに、耐水性の評価も行った。結果を表1に示す。なお、表1における「剥離強度」は、比較例1で得られた積層体の剥離強度の値を100としたときの相対値であり、値が大きいほど剥離強度に優れ、100を超えていれば、基材に対する密着性に優れている。
Figure 2022158661000001
実施例1~3で得られた積層体は、比較例1で得られた積層体と比べ、剥離強度が高く、かつ耐水性の評価が良好(〇)であることが確認された。これに対して、比較例で得られた積層体は、剥離強度が低く、かつ耐水性の評価が不良(×)であることが確認された。したがって、本発明の水性分散体は、基材との密着性及び耐水性に優れた樹脂層を形成できることがわかった。

Claims (14)

  1. ポリオレフィン系樹脂(A)が、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂を含む水性分散体であって、
    該変性ポリオレフィン系樹脂は、さらに芳香環を1個以上有する化合物(C)で変性されているか、及び/又は、芳香環を1個以上有する化合物(C)を含有し、かつ
    該変性ポリオレフィン系樹脂は、さらに塩基性化合物(E)で変性されているか、及び/又は、塩基性化合物(E)を含有する、水性分散体。
  2. 前記変性ポリオレフィン系樹脂は、さらに(メタ)アクリル酸エステル(D)で変性されている、請求項1に記載の水性分散体。
  3. ポリオレフィン系樹脂(A)は、エチレン-プロピレン系共重合体及び/又はプロピレン-ブテン系共重合体である、請求項1又は2に記載の水性分散体。
  4. 芳香環を1個以上有する化合物(C)は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを有する化合物である、請求項1~3のいずれかに記載の水性分散体。
  5. 芳香環を1個以上有する化合物(C)は、置換基を含んでいてよいベンゼン環を有する化合物及び/又は置換基を含んでいてよいナフタレン環を有する化合物である、請求項1~4のいずれかに記載の水性分散体。
  6. 塩基性化合物(E)は、芳香環を有さない化合物である、請求項1~5のいずれかに記載の水性分散体。
  7. 塩基性化合物(E)は、芳香環を有さない有機アミン化合物である、請求項1~6のいずれかに記載の水性分散体。
  8. α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)の変性量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1~20質量部である、請求項1~7のいずれかに記載の水性分散体。
  9. 芳香環を1個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1~70質量部である、請求項1~8のいずれかに記載の水性分散体。
  10. 塩基性化合物(E)の変性量及び/又は含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1~20質量部である、請求項1~9のいずれかに記載の水性分散体。
  11. (メタ)アクリル酸エステル(D)の変性量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1~30質量部である、請求項2~10のいずれかに記載の水性分散体。
  12. 基材と、請求項1~11のいずれかに記載の水性分散体から形成された樹脂層とを含む、積層体。
  13. 請求項1~11のいずれかに記載の水性分散体を含む、接着剤。
  14. 請求項1~11のいずれかに記載の水性分散体を含む、バインダー。
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