JP2022157812A - コンクリート成形物の表層改質工法及びコンクリート表層改質剤 - Google Patents

コンクリート成形物の表層改質工法及びコンクリート表層改質剤 Download PDF

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Takayoshi Hirata
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Abstract

【課題】工程の繁雑化や材工費の増加といった施工面・コスト面の双方を改善でき、かつ、乾燥抑制や水分浸入防止(吸水防止)といった性能をコンクリート表層に付与できるコンクリート表層の改質工法を提供すること。【解決手段】コンクリートの施工に用いる型枠のコンクリートと接する表面にコンクリート表層改質剤を塗布する工程、該型枠内に、コンクリートを打ち込む工程、該打ち込まれたコンクリートを一定期間養生する工程、養生後、脱型し、該コンクリート表層改質剤がコンクリート表面に転写されたコンクリート成形物を得る工程を含み、該コンクリート表層改質剤が、脂肪酸エステル(A)と、シラン化合物、該シラン化合物の加水分解物、該シラン化合物の重縮合物、並びに、該シラン化合物、該加水分解物及び該重縮合物からなる群から選択される少なくとも1種とポリオキシアルキレン化合物との反応生成物から選択される少なくとも1種のアルコキシシラン又はその誘導体(B)とを含有する、コンクリート成形物の表層改質方法。【選択図】図5

Description

本発明は、コンクリート成形物の表層改質工法及び該工法に用いるコンクリート表層改質剤に関する。詳細には、前記コンクリート表層改質剤をコンクリートと接する型枠表面に塗布することで、該表層改質剤がコンクリート成形物表面に転写され、成形物の表面状態を改質することができる、表層改質工法に関する。
硬化コンクリートは水とセメントとの反応よりなる水硬性組成物であり、その硬化過程において硬化体中では水和に伴う水分が消費される一方、表層では暴露環境による乾燥を受け、水分の消失が生じる。一般的には適切な養生等により硬化体中に水分を保持することによって長期にわたり強度が増進するが、硬化体外部への水分逸散はセメント硬化体の強度発現の妨げとなり、さらには初期ひび割れの主要因ともなりうる。また、長期にわたり乾燥を受けたセメント硬化体は、収縮によって部材のひずみが生じ、やがては部材面でのひび割れ発生、漏水等によるコンクリート構造物の劣化を促進し、ひいては構造的欠陥に繋がるおそれがある。乾燥による劣化以外のセメント硬化体の劣化現象としては、例えばアルカリ骨材反応、塩害が挙げられるが、これらの劣化現象は硬化体内部への水分浸入により促進されるものである。このような観点により、コンクリート構造物の劣化防止には、硬化体に対して短期及び長期にわたって乾燥抑制と水分浸入防止(吸水防止)の両方の効果を満足に発揮せしめることが求められる。そしてその解決手段の一つとして、コンクリートの表層部を改質することにより、コンクリート構造物の耐久性を向上させる試みが提案されている。
これまで、硬化コンクリートの表層部を改質して硬化体の耐久性を向上させるとして、(1)コンクリートの水セメント比を低減する、(2)コンクリート表面を十分な湿潤状態にして養生期間を確保する、(3)型枠内に透水シートを設け、打ち込まれたコンクリート表層部の緻密化を図る、(4)型枠を脱枠後にコンクリート表面に塗膜養生剤や含浸剤などを塗布して表層の品質を向上させるといった試みが検討されている。
前述の(1)水セメント比の低減は、温度応力によるひび割れが生じるリスクを高め、またセメント量が増えるためにコンクリートの材料コストが増大するという課題が残る。(2)湿潤状態の維持は脱枠後のコンクリートにおいては難しく、また養生期間の延長は工期の遅れに繋がる。(3)透水シートの設置は作業工程を増加させ、材料費及び施工費の双方を増大させる。そして(4)塗膜養生剤や含浸剤等の塗布には、脱枠後に硬化体周囲に足場を設置する場合や、足場を残置する場合があり、工期の遅れに繋がる。また複数回の塗布が必要となる剤も多く、手間及び費用がかさむこととなる。
このように、従来試みられてきたコンクリート表層の品質改善方法は、工程の繁雑化や材工費の増加といった施工面・コスト面の双方から改善の余地があった。
本発明者等は上記課題について検討を進めた結果、型枠内への透水シートの設置や、脱枠後にコンクリート表面への含浸剤等の塗布といった手段の代わりに、従来、型枠内に塗布されていた離型剤に替えて、離型性を有する表層改質剤を採用することを検討した。すなわちコンクリートと接する型枠表面に該表層改質剤の塗布層を設け、型枠表面と接したコンクリート表層に表層改質剤を転写させ、それにより、コンクリート表層の改質を図る方法を検討した。
そして上記の乾燥抑制や水分浸入防止(吸水防止)といった性能をもたらす表層改質剤について、型枠内への塗布性とコンクリート表層への転写性を有し、コンクリート表層に所望の改質効果を付与できる成分などを種々検討したところ、特定の脂肪酸エステルとアルコキシシラン又はその誘導体との組み合わせが有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明はコンクリート成形物の表層改質工法に関し、詳細には、コンクリートの施工に用いる型枠のコンクリートと接する表面に、コンクリート表層改質剤を塗布する工程、該型枠内に、コンクリートを打ち込む工程、該打ち込まれたコンクリートを一定期間養生する工程、養生後、脱型し、該コンクリート表層改質剤が表面に転写されたコンクリート成形物を得る工程を含み、該コンクリート表層改質剤が脂肪酸エステル(A)とアルコキシシラン又はその誘導体(B)とを含有する、コンクリート成形物の表層改質工法に関する。
上記表層改質工法に用いるコンクリート表層改質剤は、下記一般式(1)で表される脂肪酸エステル(A)と、下記一般式(2)で表されるアルコキシシランを含むシラン化合物、該シラン化合物の加水分解物、該シラン化合物の重縮合物、並びに、該シラン化合物、該加水分解物及び該重縮合物からなる群から選択される少なくとも1種と下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン化合物との反応生成物から選択される少なくとも1種のアルコキシシラン又はその誘導体(B)とを含有する。
CO-O-R (1)
(式中、RCOは炭素原子数12~24の脂肪酸残基を表し、Rは炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)
Si(OR4-m (2)
(式中、Rは、炭素原子数5~20のアルキル基又はアルケニル基を表し、Rは、炭素原子数1~4のアルキル基を表し、mは1~3の整数を表す。)
O-(AO)-H (3)
(式中、Rは炭素原子数が1~18の炭化水素基を表し、AOは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基を表し、nは1~20の整数を表す。)
前記工法において、コンクリート表層改質剤を上記型枠のコンクリートと接する表面に塗布する工程は、組み立てられた型枠のコンクリートと接する面にコンクリート表層改質剤を塗布する段階を含むか、あるいは、型枠のコンクリートと接する面にコンクリート表層改質剤を塗布した後、該型枠を組み立てる段階を含むことができる。
また前記工法において、コンクリート型枠表面におけるコンクリート表層改質剤の塗布量は、例えば10~300g/m、また30~150g/mとすることができる。
前記工法により表層が改質されたコンクリート成形物は、吸水防止性能、表面気泡低減、中性化の抑制、透気性の抑制、塩分浸透抵抗性が付与された表層を有し得る。すなわち、その表層において、前記コンクリート表層改質剤により、いわば浸透抵抗性層が形成されてなるものとすることができる。
また前記工法により、コンクリート表層改質剤が表面に転写されたコンクリート成形物において、例えばJSCE-G 572(浸せきによるコンクリート中の塩化物イオンの見掛けの拡散係数試験方法)に準拠し、塩化ナトリウム5%水溶液に10日間および47日間浸漬した後の深さ方向の浸透深さとして定義される塩分浸透深さ値が、前記コンクリート表層改質剤不使用の場合と同一材齢のコンクリート成形物の同一浸漬期間の塩分浸透深さ値に比べ、30%以上低減されてなるものとすることができる。
また前記工法により、コンクリート表層改質剤がコンクリート表面に転写されたコンクリート成形物において、例えばSWAT(登録商標)法に従い、計測開始から600秒(10分)経過した後の前記成形物の表面吸水速度が、前記コンクリート表層改質剤不使用の場合と同一材齢(例えば材齢28日)のコンクリート成形物の表面吸水速度に比べ、2
5%以上低減されてなるものとすることができる。
また本発明は、型枠のコンクリートと接する面に塗布後、該型枠内に打ち込んだコンクリート表面に転写されるコンクリート表層改質剤も対象とする。該コンクリート表層改質剤は、下記一般式(1)で表される脂肪酸エステル(A)と、下記一般式(2)で表されるアルコキシシランを含むシラン化合物、該シラン化合物の加水分解物、該シラン化合物の重縮合物、並びに、該シラン化合物、該加水分解物及び該重縮合物からなる群から選択される少なくとも1種と下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン化合物との反応生成物から選択される少なくとも1種のアルコキシシラン又はその誘導体(B)とを含有する。
CO-O-R (1)
(式中、RCOは炭素原子数12~24の脂肪酸残基を表し、Rは炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)
Si(OR4-m (2)
(式中、Rは、炭素原子数5~20のアルキル基又はアルケニル基を表し、Rは、炭素原子数1~4のアルキル基を表し、mは1~3の整数を表す。)
O-(AO)-H (3)
(式中、Rは炭素原子数が1~18の炭化水素基を表し、AOは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基を表し、nは1~20の整数を表す。)
前記コンクリート表層改質剤は、さらに消泡剤、抑泡剤、養生剤、撥水剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、防水剤、耐水剤、撥水剤、乳化剤、離型剤、収縮低減剤、表面美観向上剤、撥水剤、コンクリート用塗料、染料、顔料、着色剤、表面補修材、増粘剤(チクソ剤)、膨張材、防錆剤、有機繊維、無機繊維及び有機ポリマーからなる群から選択される少なくとも一種を含有する態様とすることができる。
本発明のコンクリート成形物の表層改質工法によれば、コンクリートと接する型枠表面にコンクリート表層改質剤が塗布されてなるコンクリート型枠内に、コンクリートを打ち込み、養生し、脱型することにより、該コンクリート表層改質剤が表面に転写されたコンクリート成形物を得ることができる。
すなわち、(1)コンクリートの水セメント比を低減する必要がないため、温度応力によるひび割れが生じるリスクの増大を防ぐことができ、コンクリートの材料コストの増大も防ぐことが期待できる。また(2)湿潤状態を維持した養生期間を設けずとも、表層が改質された硬化体を得られ、脱型後の養生の手間の削減や養生期間による工期遅延を防ぐことが期待できる。さらに(3)透水シートの設置といった追加の工程を必要とせず、従来実施されてきた離型剤の型枠塗布と同等の施工で済み、施工費等の増大を抑制できる。そして(4)脱枠後に含浸剤等の薬剤塗布を必要とせずとも表層を改質できるため、脱枠後の足場の設置または残置を不要とし、薬剤塗布にかかる施工費の削減に加え、工期が遅延することもない。
このように本発明によれば、コンクリートの表層改質を行う際、従来法と比べて施工面・コスト面の双方の低減化を図ることができる。
そして本発明のコンクリート表層改質剤は、型枠表面に塗布することで、型枠表面と接したコンクリート表層に該表層改質剤を転写させることができる。そして該表層改質剤は、硬化体(コンクリート成形物)への水分の浸入を抑制でき、コンクリート劣化防止に寄与できる。
図1は、本発明のコンクリート成形物の表層改質工法の手順の一例を示す図である。 図2は、表面吸水試験に使用した吸水試験装置を示す図である。 図3は、表面吸水試験に使用した試験体(1)における表面吸水速度の測定箇所を示す図である。 図4は、表面吸水試験に使用した試験体(2)における表面吸水速度の測定箇所を示す図である。 図5は、表面吸水試験の結果を示す図である。
本発明は、特にコンクリート表層における乾燥抑制や水分浸入防止(吸水防止)といった性能を有する薬剤を、上記性能を付与する所望の箇所に対して直接適用するのではなく、別途設けられた該薬剤の塗布層を所望の箇所に転写させることにより、当該性能をコンクリート表層に十分に付与することを可能とする技術に関するものである。
[コンクリート成形物の表層改質工法]
本発明のコンクリート成形物の表層改質工法は、コンクリートの施工に用いる型枠のコンクリートと接する表面にコンクリート表層改質剤を塗布する工程、該型枠内にコンクリートを打ち込む工程、該打ち込まれたコンクリートを一定期間養生する工程、養生後、脱型し、該コンクリート表層改質剤が表面に転写されたコンクリート成形物を得る工程を含む。
本発明に係るコンクリート成形物の表層改質工法の一実施形態では、従来の型枠工事と同様に、先ず、型枠の組み立てを行う。そして引き続き、型枠のコンクリートと接する面(型枠の内面)に、後述する表層改質剤を塗布する。上記表層改質剤は、スプレーや刷毛塗り、ローラー塗りなど一定の膜厚を確保し得る方法により塗布すればよい。
次に、表層改質剤が塗布された型枠内にコンクリートを打ち込み、一定期間養生する。このとき、表層改質剤がコンクリートの表層に転写され、その後、型枠を取り外すことで、成形物の表層が改質されたコンクリート成形物を得る。
本発明に係るコンクリート成形物の表層改質工法の別の実施形態では、まずコンクリートと接する型枠材(組み立て前の型枠部材)にコンクリート表層改質剤を塗布する。上記表層改質剤は、上述したスプレーや刷毛塗り、ローラー塗りなど一定の膜厚を確保し得る方法を用いて塗布可能である。
そして予め表層改質剤が塗布された型枠材を用いてコンクリート型枠を組み立てる。その後該型枠内にコンクリートを打ち込み、一定期間養生する。その後、型枠を取り外し、成形物の表層が改質されたコンクリート成形物を得る。
本実施形態は、型枠を組み終わった後で表層改質剤を塗布することが困難な開放面積の狭い壁や柱などの型枠に適用することができる。
本発明のコンクリート成形物の表層改質工法において、コンクリート型枠表面におけるコンクリート表層改質剤の塗布量は、例えば10~300g/m、またより好ましい態様において30~150g/mとすることができる。但しコンクリートの材料、配合条件により異なるので本発明の表層改質剤の適用量はこれに限定されるものではない。
図1に、本発明のコンクリート成形物の表層改質工法の手順の一例を示す。
図1に示すように、まず、コンクリートの施工に用いる型枠1のコンクリートと接する表面にコンクリート表層改質剤を塗布し、表層改質剤の塗布層2を形成する(図1(1))。続いて、該型枠内にフレッシュコンクリート3を打ち込む(図1(2))。そして該打ち込まれたコンクリートを一定期間養生する。この間、コンクリートの硬化が進み、この過程において表層改質剤がコンクリートの表面に転写され、コンクリートの表層が改質される(図1(3))。十分に養生した後、脱型し、該コンクリート表層改質剤が表面に
転写され、コンクリート表層に表層改質層(浸透抵抗性層)4が形成されたコンクリート硬化体(コンクリート成形物)5を得る(図1(4))。
本発明のコンクリート成形物の表層改質工法が適用されるコンクリートは、一般コンクリート(普通コンクリート)や高強度コンクリート等、型枠を用いた成形に使用されるコンクリートであれば特に限定されない。
また上記コンクリートを構成する成分は特に限定されず、従来慣用のコンクリート用成分が適用可能であり、セメント、例えば普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、低熱・中庸熱ポルトランドセメント又は高炉セメント等;骨材、すなわち細骨材及び粗骨材;混和材、例えばシリカフューム、炭酸カルシウム粉末、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、膨張材等;及び水を挙げることができる。上記コンクリートは、例えば水/セメント比(質量%)で70~10%の種々の強度を有するコンクリートに適用可能である。
また、打込み方法や養生方法等も、型枠を用いたコンクリート成形に用いられる従来慣用の方法を適用可能である。
該型枠は、木製、金属製、プラスチック製、FRP製、紙製、など従来慣用のコンクリート用型枠であればよく、その材質に限定されるものではない。
[コンクリート表層改質剤]
本発明のコンクリート表層改質剤は、前述したように、コンクリートと接する型枠表面に塗布されてなるものであり、該表層改質剤が塗布されてなる型枠にコンクリートを打ち込むことにより、コンクリート表面に該表層改質剤を転写させて使用する薬剤を指す。
そして転写させたコンクリート成形物の表層において、該表層改質剤により浸透抵抗層が形成され、コンクリート成形物表層内の水分を適度な状態に保ち、過度な水分の出入や空気の出入を防ぐ役割を担う薬剤を指す。
なおこれまでにも、種々の薬剤をコンクリート型枠表面に塗布し、ここにコンクリートを打ち込んだ提案がなされている(特許文献1~特許文献3)。しかし、そもそも型枠の表面に塗布された薬剤がコンクリート表面へ移行(転写)するのか、そして仮に表面に移行したとしてもコンクリート表面の改質に至る十分な量の薬剤が移行するのか、さらには、こうした使用法であっても薬剤は所望の性能をコンクリート表面に付与できるのかなど、検討すべき事項は多い。
<(A)一般式(1)で表される脂肪酸エステル>
本発明の表層改質剤に用いられる(A)脂肪酸エステルは下記一般式(1)で表される脂肪酸エステルである。
CO-O-R (1)
(式中、RCOは炭素原子数12~24の飽和又は不飽和脂肪酸残基を表し、Rは炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)
上記(A)脂肪酸エステルは、一種類の脂肪酸エステルを単独で使用してもよいし、複数種類の混合物を使用してもよい。
該RCOの炭素原子数12~24の飽和又は不飽和脂肪酸残基としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸及びリグノセリン酸等の直鎖又は分岐鎖飽和脂肪酸由来の脂肪酸残基;ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸等の不飽和脂肪酸由来の脂肪酸残基;そしてヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、米ヌカ油脂肪酸、牛脂脂肪酸等の天然油脂由来の脂肪酸混合物由来の
脂肪酸残基などが挙げられる。
上記Rにおいて、炭素原子数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ノニル基又はn-オクチル基である直鎖アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖アルキル基等が挙げられる。
中でもメチル基、n-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基が好ましく、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基が最も好ましい。
(A)脂肪酸エステルは、市販品を使用し得、例えば当栄ケミカル(株)製のTOENOL(登録商標)シリーズ(メチルエステル、ブチルエステル、オクチルエステル等)を挙げることができる。
<(B)アルコキシシラン又はその誘導体>
本発明の表層改質剤には、前記(A)脂肪酸エステルに加え、(B)アルコキシシラン又はその誘導体を含有する。(B)アルコキシシラン又はその誘導体は、下記一般式(2)で表されるアルコキシシランを含むシラン化合物、その加水分解物又はその重縮合物であるか、又は該シラン化合物、該加水分解物及び該重縮合物からなる群から選択される少なくとも1種と、下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン化合物との反応生成物とすることができる。これらは一種以上、二種以上を混合して用いることができる。
《一般式(2)で表されるアルコキシシラン》
Si(OR4-m (2)
式中、Rは、炭素原子数5~20のアルキル基又はアルケニル基を表し、Rは、炭素原子数1~4のアルキル基を表し、mは1~3の整数を表す。
前記式(2)中、Rである炭素原子数5乃至20のアルキル基としては、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基等の直鎖アルキル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、1-ヘプチルデシル基、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖アルキル基等を挙げることができる。また炭素原子数5乃至20のアルケニル基としては、オレイル基、リノレイル基等を挙げることができる。
前記Rである炭素原子数1乃至4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等を挙げることができる。
上記基Rを含むアルコキシシランとしては、例えばn-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン等の前述の基Rとして挙げた基を1つ含むトリアルコキシシラン類;ジ(n-オクチル)トリエトキシシラン等の前述の基Rとして挙げた基を2つ含むジアルコキシシラン類等を用いることができる。
これらのうち、本発明においては入手容易性、取扱性等の観点からn-オクチルトリエトキシシラン及びn-デシルトリエトキシシランの使用が特に好ましい。
上記アルコキシシラン化合物は、基Rを含むアルコキシシラン以外のその他のアルコキシシランを含んでいてもよい。その他アルコキシシランとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類等を用いることができる。
基Rを含むアルコキシシランに加えて、これらその他アルコキシシランを用いる場合、例えば上記アルコキシシラン化合物全量(100モル%)のうち、その他アルコキシシランを0~30モル%の割合にて使用することができる。
アルコキシシラン化合物の加水分解物/重縮合物は、例えば、アルコキシシラン化合物の所定量を水、メタノール、エタノール、酢酸エチル等の水もしくは有機溶媒に溶解し、そのまま加熱あるいは所定量の酸もしくは塩基を添加して部分的に加水分解させることにより調製することができる。通常、重合度は2乃至10が好ましい。
《一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン化合物》
O-(AO)-H (3)
式中、Rは炭素原子数が1~18の炭化水素基を表し、AOは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基を表し、nは1~20の整数を表す。
前記Rである炭素原子数が1乃至18の炭化水素基としては、炭素原子数1乃至30のアルキル基;フェニル基、アルキルフェニル基、アルキルフェニル基で置換されたフェニル基、及びナフチル基等のベンゼン環を有する炭素原子数6乃至18の芳香族基;並びにオレイル基、リノレイル基等の炭素原子数2乃至18のアルケニル基が挙げられ、中でも炭素原子数1乃至30のアルキル基であることが好ましい。
炭素原子数1乃至30のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、1-ヘプチルデシル基、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖アルキル基が挙げられる。これらのうち、炭素原子数1乃至8のアルキル基が好ましく、n-ブチル基、2-エチルヘキシル基がより好ましく、n-ブチル基が最も好ましい。
前記AOは炭素原子数2乃至4のオキシアルキレン基を示し、具体的にはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基が挙げられる。nはアルキレンオキサイドの付加モル数であって、0乃至20の整数を表す。nが2以上の場合、オキシアルキレン基は同一のものであっても異なるものであってもよい。(AO)が2種以上のアルキレンオキシ基から構成される場合は、ブロック付加、ランダム付加のいずれであってもよいが、ブロック付加であることが好ましく、特に水素原子に連結する末端がエチレンオキシ基であることがより好ましい。
前記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン化合物の具体例としては、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピ
レングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。
上記一般式(2)で表されるアルコキシシランを含むシラン化合物、該加水分解物及び該重縮合物からなる群から選択される少なくとも1種と、上記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン化合物との反応生成物は、例えば前記一般式(2)で表される基Rを含むアルコキシシランを少なくとも含むアルコキシシラン化合物、その加水分解物又はその重縮合物と前記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン化合物とを反応容器に仕込み、加熱して生成するアルコールを留去しながらエステル交換反応を行うことにより得ることができる。反応温度は通常50~150℃程度である。また、上記のエステル交換反応に際しては、反応促進のために従来公知の触媒を使用することができる。
なお、前記一般式(2)で表される基Rを含むアルコキシシランを少なくとも含むアルコキシシラン化合物、その加水分解物又はその重縮合物と前記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン化合物の反応比率は、前記アルコキシシラン化合物、その加水分解物又はその重縮合物中のアルコキシ基の1当量に対し、前記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン化合物が0.3~1当量であれば好ましく、0.5~1当量であればより好ましい。
本発明の表層改質剤において、前記(A)脂肪酸エステルと(B)アルコキシシラン又はその誘導体の配合割合は、質量比(合計100)で(A):(B)=5~95:95~5の範囲内で使用でき、例えば20~95:80~5、30~95:70~5、35~90:65~10にて使用することができる。
<その他成分>
本発明のコンクリート表層改質剤において、前記(A)脂肪酸エステルと(B)アルコキシシラン又はその誘導体の他に、コンクリート分野において汎用的に使用される防水剤、耐水剤、撥水剤、消泡剤、乳化剤、養生剤、収縮低減剤を配合、又は併用することができる。例えば、シリコーン、ポリシロキサン、脂肪油、脂肪酸および/またはそのアルキルエステル等の疎水性化合物、パラフィンワックスエマルジョンに代表されるエマルジョン類、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、具体的には炭素原子数1ないし18のアルキル基またはアルケニル基を有し、炭素原子数2ないし4のアルキレンオキシドの平均付加モル数が1ないし50モルのポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル類;炭素原子数1ないし8のアルキレン基またはアルケニル基を有し、炭素原子数2ないし4のアルキレンオキシドの平均付加モル数が1ないし50モルのポリオキシアルキレングリコール類;或いは、炭素原子数1ないし8のアルキル基またはアルケニル基を有し、炭素原子数2ないし4のアルキレンオキシドの平均付加モル数が1~50モルのポリオキシアルキレンジアルキルエーテル類、ポリブテン、ポリイソブチレンなどに代表される炭化水素系高分子化合物などが挙げられる。
また本発明のコンクリート表層改質剤は、消泡剤、抑泡剤、養生剤、撥水剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、離型剤、収縮低減剤、表面美観向上剤、撥水剤、コンクリート用塗料、顔料、染料、着色剤、表面補修材、増粘剤(チキソ剤)、膨張材、防錆剤、有機繊維、無機繊維、有機ポリマー、顔料など、当該分野で使用される種々の添加剤や材料を配合する、或いは組み合わせて使用することができる。
これら種々の添加剤や材料を配合する、或いは組み合わせて使用されるその他の成分・材料等の使用量は、質量比で前記(A)脂肪酸エステルと(B)アルコキシシラン又はその誘導体の総質量:併用されるその他の成分の総質量=50:50~99:1の割合、好ましくは70:30~99:1とすることができる。
次に、実施例に基づいて本発明をより詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<改質剤の製造例>
[脂肪酸エステル]
以下の実施例及び比較例で使用した脂肪酸エステルは、当栄ケミカル(株)製、TOENOL(登録商標)#4100-I(植物脂肪酸i-ブチル(菜種タイプ))である。
[アルコキシシラン誘導体]
(製造例1:アルコキシシラン誘導体(化合物B-1)の製造方法)
撹拌機、温度計、コンデンサー、留出物回収槽および窒素導入管を備え付けた反応容器に、テトラエトキシシラン62.59部、n-オクチルトリエトキシシラン665.61部、水1.08部、p-トルエンスルホン酸1水和物0.63部、および反応溶媒としてエタノール5.54部を添加した。65℃まで1時間かけて昇温し、同温にて1時間撹拌してテトラエトキシシランとn-オクチルトリエトキシシランの加水分解縮合生成物を得た。
上記加水分解縮合生成物に、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル(ポリエチレングリコールの繰り返し単位の平均が3であるもの)を64.56部(シロキサン単位に対するモル比:およそ3モル)添加した。反応容器内を窒素気流下とし、105℃まで1時間かけて昇温し、同温にて8時間撹拌し、生成するエタノールを留出させながら反応させた。反応の終点はエタノールの回収量により判断し、淡黄色液体のアルコキシシラン誘導体(化合物B-1)965部(収率95.6%)を得た。
(製造例2:アルコキシシラン誘導体(化合物B-2)の製造方法)
上記製造例1において、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル(ポリエチレングリコールの繰り返し単位の平均が3であるもの)に代えて、同モル数のポリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(ポリプロピレングリコールの繰り返し単位の平均が3であるもの)を使用した以外は、製造例1と同様の手順を実施し、淡黄色液体のアルコキシシラン誘導体(化合物B-2)を得た。
(製造例3:アルコキシシラン誘導体(化合物B-3)の製造方法)
上記製造例1において、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル(ポリエチレングリコールの繰り返し単位の平均が3であるもの)に代えて、同モル数のポリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(ポリプロピレングリコールの繰り返し単位の平均が2であるもの)を使用した以外は、製造例1と同様の手順を実施し、淡黄色液体のアルコキシシラン誘導体(化合物B-3)を得た。
(製造例4:アルコキシシラン誘導体(化合物B-4)の製造方法)
上記製造例1において、n-オクチルトリエトキシシランに代えて、同モル数のヘキシルトリエトキシシランを使用した以外は、製造例1と同様の手順を実施し、淡黄色液体のアルコキシシラン誘導体(化合物B-4)を得た。
(製造例5:アルコキシシラン誘導体(化合物B-5)の製造方法)
撹拌機、温度計、コンデンサー、留出物回収槽および窒素導入管を備え付けた反応容器に、テトラエトキシシラン22.87部、n-デシルトリエトキシシラン230.89部、水0.40部、p-トルエンスルホン酸1水和物0.23部、および反応溶媒としてエタノール2.02部を添加した。65℃まで1時間かけて昇温し、同温にて1時間撹拌してテトラエトキシシランとn-デシルトリエトキシシランの加水分解縮合生成物を得た。
上記加水分解縮合生成物に、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル(ポリエチレングリコールの繰り返し単位の平均が3であるもの)を28.64部(シロキサン単位に対するモル比:およそ3モル)添加した。反応容器内を窒素気流下とし、105℃まで1時間かけて昇温し、同温にて8時間撹拌し、生成するエタノールを留出させながら反応させた。反応の終点はエタノールの回収量により判断し、淡黄色液体(化合物B-5)を得た。
上記脂肪酸エステル:A-1、アルコキシシラン:n-オクチルトリエトキシシラン、並びに、上記調製したアルコキシシラン誘導体:化合物B-1~B-5を用いて、下記表1に示す例1~例15の表層改質剤を調製した。そして、以下の手順にて製造したフレッシュコンクリートの硬化体に該表層改質剤を適用し、各種性能を評価した。なお参照例として表層改質剤を使用していない硬化体(ブランク)も合わせて評価した。
Figure 2022157812000002
[試験用フレッシュコンクリートの製造(1)]
コンクリートの仕様は呼び強度24MPaの配合とし、スランプ:12±2.5cm、空気量:4.5±1.5%とした。試験用コンクリートの配合を表2に示す。レディーミクストコンクリート工場で製造したコンクリートをアジテータ車で試験体作製場所まで運
搬した。以降の試験に供した。
Figure 2022157812000003
[試験用フレッシュコンクリートの製造(2)]
コンクリートの仕様は、水セメント比50%又は60%の配合とし、スランプ:12±2.5cm、空気量:4.5±1.5%とした。試験用コンクリートの配合を表3に示す。練混ぜ方法は、公称容量60Lの水平二軸強制練りミキサを用いて、1バッチの練混ぜ量は60Lとした。まず、セメントと細骨材および粗骨材をミキサに投入し、10秒間練り混ぜ、水及び混和剤を投入し、60秒間練り混ぜた。180秒間静置したのち、排出し、後述の型枠に打ち込んだ。
Figure 2022157812000004
[試験体(1)及び(2)の製造]
試験体(1)及び(2)は、以下の2種の寸法の合板型枠を用いて製造した
a)角柱:750mm(幅)×750mm(奥行)×500mm(高さ)(試験体(1)用)
b)平板:750mm(幅)×500mm(奥行)×200mm(高さ)(試験体(2)用)
上記2種のコンクリート型枠を組み立て、a)は側面[750mm(幅)×500mm(高さ)]の計4面に、b)は底面[750mm(幅)×500mm×(奥行)]の計1面に、表1に示す例1~例4の表層改質剤をスポンジローラーにより、塗布量70g/mにて塗布した。なお表層改質剤の塗布は、コンクリート打込みの前日までに完了させた。なお対照例として、表層改質剤を塗布しないa)及びb)の型枠を準備した。
続いて、表2に示す前記呼び強度24MPaのフレッシュコンクリートをa)又はb)の型枠内に打ち込んだ。打込みは2層打ちとし、締固めは、直径32mmの棒状バイブレータを用いて、1層ごとに、4隅と中心部の5点を各5秒間振動させ、さらに型枠側面の4面に、壁バイブレータを用いて、1層ごとに4点を5秒間振動させた。2層の打込み完了後、上面を金鏝で仕上げた。上面の乾燥を防ぐべく上面をビニールシートで覆った後、封緘養生を行った。材齢7日にて脱型し、試験体を得、以下の試験に供した。なお、コンクリートの打込み、養生は20℃の室内で行い、脱型後から試験実施までの期間は、温度20℃の室内で気中養生を行った。
[試験体(3)の製造]
試験体(3)は、以下の寸法の鋼製型枠を用いて製造した
c)角柱:400mm(幅)×100mm(奥行)×100mm(高さ)
上記のコンクリート型枠を組み立て、該型枠の側面[側面400mm(幅)×100mm(高さ)]の2面に、表1に示す例3又は例14の表層改質剤をスポンジローラーにより、塗布量50g/mにて塗布した。なお表層改質剤の塗布は、コンクリート打込みの前日までに完了させた。なお対照例として、表層改質剤を塗布しない型枠を準備した。
続いて、表3に示す前記W/C=50%又はW/C=60%のフレッシュコンクリートを該鋼製型枠内に打ち込み、試験体を作製した。コンクリートの締固めは、テーブルバイブレータを用いて、鋼製型枠を載せ、30秒間振動して行った。上面を金鏝で仕上げた。
材齢1日にて脱型し、試験体を得、以下の試験に供した。なお、コンクリートの練混ぜおよび打込み、養生は20℃の室内で行い、脱型後から試験実施までの期間は、温度20℃の室内で気中養生を行った。
[表層品質の指標]
(1)表面吸水速度(SWAT)
表面吸水速度の測定は、表面吸水試験 SWAT(登録商標)(Surface Water Absorption Test)法(特許文献4、非特許文献1等参照)に倣い、前述の手順にて作製した試験体(1)及び試験体(2)の表層改質剤が転写(塗布)された面において、室内 温度20℃、湿度60%の条件で実施した。
本試験に用いた吸水試験装置を図2に示す。吸水試験装置は、コンクリート面に接して吸水させる吸水カップ(外径100mm、厚さ30mm)、該吸水カップに接続され、水頭を作用させつつ吸水量の変化を読み取るシリンダー部(内径8mm、高さ300mm)、これらをコンクリート面に密着させるための固定装置(スタンド、固定フレーム)で構成される。前記スタンドは小型真空ポンプ(図示せず)に接続され、真空ポンプを作動させることでコンクリート面に吸着する。
上記吸水試験装置の前記スタンドに接続された真空ポンプを作動させ、該スタンドを用いて空の吸水カップを、各試験体の後述する所定位置に密着させた。次に吸水カップの水頭300mm(シリンダー部の上縁)まで注水を速やかに行った。
各試験体における表面吸水速度の測定箇所を図3(試験体(1))及び図4(試験体(2))に示す。
図3に示すように、試験体(1)においては、表層改質剤が転写(塗布)された側面(750mm(幅)×500mm(高さ))の下から高さ200mm、左右の両端からそれ
ぞれ250mmの位置(2点)にて、上記表面吸水速度p600(開始10分時点での表面吸水速度)の測定を実施し、2点の平均値を算出した(図3中、Aは上記吸水カップの取付位置の例を示す)。
また図4に示すように、試験体(2)においては、表層改質剤が転写(塗布)された底面(750mm(幅)×500mm(奥行))が前面となるように試験体(2)を転回させた後、下から高さ200mm、左右の両端からそれぞれ250mmの位置A(2点)にて、上記表面吸水速度p600の測定を実施し、2点の平均値を算出した。(図4中、Aは吸水カップの取付位置の例を示す)。
得られた結果を表4及び図5に示す。
(2)表面気泡
鋼板型枠より製造した試験体(3)(材齢1日)について、表層改質剤が転写された面(角柱の側面:400mm(幅)×100mm(高さ))の表面気泡の状態を目視にて観察した。
表層改質剤無塗布の試験体と比べ、気泡が低減した(評価:○)か否かにより、表層改質剤塗布による気泡低減効果を評価した。得られた結果を表5に示す。
(3)塩分浸透深さ
JSCE-G 572(浸せきによるコンクリート中の塩化物イオンの見掛けの拡散係数試験方法)に準拠し、塩化ナトリウム5%水溶液に10日間浸漬した後の深さ方向の浸透深さとして定義される塩分浸透深さの値を求めた。
試験体(3)[400mm(幅)×100mm(奥行)×100mm(高さ)の角柱試験体]の表層改質剤が転写された面以外をシーリングした後、材齢7日経過後に塩化ナトリウム5%水溶液に浸漬した。10日間又は46日間の浸漬後、深さ方向にカッターで切断し、硝酸銀溶液噴霧により浸透部分を変色させ、塩分浸透深さをノギスで測定した(5点の平均)。得られた結果を表5に示す。
Figure 2022157812000005
Figure 2022157812000006
表4及び図5に示すように、表層改質剤不適用の対照例と比べて、例1~例4の表層改質剤の適用により表面吸水速度p600は低くなり、表層改質剤の適用によってコンクリート表層部に吸水防止性能が付与されたことが確認された。
また表5に示すように、例3及び例14の表層改質剤の適用により、塩分浸透深さ値(mm)が小さい結果となり、コンクリート表層部に塩分浸透抵抗性が付与されたことが確認された。
すなわちこれらの結果より、本発明のコンクリート成形物の表層改質工法により、コンクリートと接する型枠表面にコンクリート表層改質剤が塗布されてなるコンクリート型枠内に、コンクリートを打ち込み、養生し、脱型することにより、該コンクリート表層改質剤が表面に転写されたコンクリート成形物を得られたことが確認された。
特許第3129970号公報 特許第4144849号公報 特開2004-314328号公報 特許第5880981号公報
林和彦,細田暁:表面吸水試験によるコンクリート構造物の表層品質の評価方法に関する基礎的研究,土木学会論文集E2,Vol.69,No.1,pp.82-97,2013年3月等
1・・・型枠
2・・・塗布層
3・・・フレッシュコンクリート
4・・・表層改質層
5・・・硬化体

Claims (7)

  1. コンクリートの施工に用いる型枠のコンクリートと接する表面に、コンクリート表層改質剤を塗布する工程、
    該型枠内に、コンクリートを打ち込む工程、
    該打ち込まれたコンクリートを一定期間養生する工程、
    養生後、脱型し、該コンクリート表層改質剤がコンクリート表面に転写されたコンクリート成形物を得る工程を含み、
    該コンクリート表層改質剤が、
    下記一般式(1)で表される脂肪酸エステル(A)と、
    下記一般式(2)で表されるアルコキシシランを含むシラン化合物、該シラン化合物の加水分解物、該シラン化合物の重縮合物、並びに、該シラン化合物、該加水分解物及び該重縮合物からなる群から選択される少なくとも1種と下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン化合物との反応生成物から選択される少なくとも1種のアルコキシシラン又はその誘導体(B)とを含有する、
    コンクリート成形物の表層改質工法。
    CO-O-R (1)
    (式中、RCOは炭素原子数12~24の脂肪酸残基を表し、Rは炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)
    Si(OR4-m (2)
    (式中、Rは、炭素原子数5~20のアルキル基又はアルケニル基を表し、Rは、炭素原子数1~4のアルキル基を表し、mは1~3の整数を表す。)
    O-(AO)-H (3)
    (式中、Rは炭素原子数が1~18の炭化水素基を表し、AOは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基を表し、nは1~20の整数を表す。)
  2. コンクリート表層改質剤を上記型枠のコンクリートと接する表面に塗布する工程は、
    組み立てられた型枠のコンクリートと接する面にコンクリート表層改質剤を塗布する段階を含むか、あるいは、
    型枠のコンクリートと接する面にコンクリート表層改質剤を塗布した後、該型枠を組み立てる段階を含む、
    請求項1に記載の表層改質工法。
  3. コンクリート型枠表面におけるコンクリート表層改質剤の塗布量が10~300g/mである請求項1又は請求項2に記載の表層改質工法。
  4. 前記コンクリート成形物は、吸水防止及び/又は表面気泡の低減及び/又は中性化の抑制及び/又は透気性の抑制及び/又は塩分浸透抵抗性がある表層を有してなる、
    請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の表層改質工法。
  5. 前記コンクリート表層改質剤がコンクリート表面に転写されたコンクリート成形物において、
    該成形物の塩分浸透深さ値が、前記コンクリート表層改質剤を不使用の場合と同一材齢のコンクリート成形物の塩分浸透深さ値に比べ、30%以上低減されてなるか、又は、
    前記成形物の表面吸水速度が、前記コンクリート表層改質剤を不使用の場合と同一材齢のコンクリート成形物の表面吸水速度に比べ、25%以上低減されてなる、
    請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の表層改質工法。
  6. 型枠のコンクリートと接する面に塗布後、該型枠内に打ち込んだコンクリートの表面に転写されるコンクリート表層改質剤であって、
    下記一般式(1)で表される脂肪酸エステル(A)と、
    下記一般式(2)で表されるアルコキシシランを含むシラン化合物、該シラン化合物の加水分解物、該シラン化合物の重縮合物、並びに、該シラン化合物、該加水分解物及び該重縮合物からなる群から選択される少なくとも1種と下記一般式(3)で表されるポリオキシアルキレン化合物との反応生成物から選択される少なくとも1種のアルコキシシラン又はその誘導体(B)とを含有する、
    コンクリート表層改質剤。
    CO-O-R (1)
    (式中、RCOは炭素原子数12~24の脂肪酸残基を表し、Rは炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)
    Si(OR4-m (2)
    (式中、Rは、炭素原子数5~20のアルキル基又はアルケニル基を表し、Rは、炭素原子数1~4のアルキル基を表し、mは1~3の整数を表す。)
    O-(AO)-H (3)
    (式中、Rは炭素原子数が1~18の炭化水素基を表し、AOは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基を表し、nは1~20の整数を表す。)
  7. さらに消泡剤、抑泡剤、養生剤、撥水剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、防水剤、耐水剤、撥水剤、乳化剤、離型剤、収縮低減剤、表面美観向上剤、撥水剤、コンクリート用塗料、染料、顔料、着色剤、表面補修材、増粘剤(チキソ剤)、膨張材、防錆剤、有機繊維、無機繊維及び有機ポリマーからなる群から選択される少なくとも一種を含有する、請求項6に記載のコンクリート表層改質剤。
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