JP2022153110A - 衝撃吸収体 - Google Patents
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Abstract
【課題】座屈挙動をコントロールして性能のばらつきを抑えることの可能な衝撃吸収体を提供する。【解決手段】前後に離間されて対向する前面壁2及び背面壁3と、前面壁及び背面壁をつなぐ側壁4とを備え、前面壁は、前面壁前面側凹状リブ20を備え、背面壁は、背面側凹状リブ30を備え、前面側凹状リブと背面側凹状リブは、その先端部が互いに溶着されており、前面側凹状リブと背面側凹状リブの少なくとも一方に、衝撃を吸収するための座屈の起点となる座屈誘導部22が形成されており、前面側凹状リブと背面側凹状リブの少なくとも一方は、これら前面側凹状リブ及び背面側凹状リブの軸方向に荷重が加わったときに、座屈誘導部により、前面側凹状リブの開口縁24に囲まれる開口部の重心G1と前記背面側凹状リブの開口縁34に囲まれる開口部の重心G2の少なくとも一方が、軸方向と交差する方向に移動する態様で座屈するよう構成される。【選択図】図3
Description
本発明は、衝撃吸収体に関する。
従来、車両構成部材に内設することにより、衝突時等の当該車両の搭乗員に対する衝撃を吸収するための衝撃吸収体がある。例えば、特許文献1には、中空部を有する衝撃吸収体の互いに対向する当接面及び支持面を他方へ向けて窪ませてそれぞれ凹状リブを形成し、各凹状リブの先端部を互いに接合させた構成が開示されている。
ところで、特許文献1に開示されるような凹状リブ同士を接合させる構成の場合、各凹状リブはそれぞれ、衝撃を受けた際に蛇腹状に垂直に潰れる(座屈する)ことで衝撃を吸収するようになっている。しかしながら、蛇腹状に垂直に潰れる(座屈する)場合、凹状リブの座屈挙動が必ずしも一定ではなく、性能にばらつきが生じるおそれがあった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、座屈挙動をコントロールして性能のばらつきを抑えることの可能な衝撃吸収体を提供するものである。
本発明によれば、中空のブロー成形体で構成された衝撃吸収体であって、前記ブロー成形体は、前後に離間されて対向する前面壁及び背面壁と、前記前面壁及び前記背面壁をつなぐ側壁とを備え、前記前面壁は、当該前面壁が凹まされて形成された筒状の前面側凹状リブを備え、前記背面壁は、当該背面壁が凹まされて形成された筒状の背面側凹状リブを備え、前記前面側凹状リブと前記背面側凹状リブとは、その先端部が互いに溶着されており、前記前面側凹状リブと前記背面側凹状リブの少なくとも一方に、衝撃を吸収するための座屈の起点となる座屈誘導部が形成されており、前記前面側凹状リブと前記背面側凹状リブの前記少なくとも一方は、これら前面側凹状リブ及び背面側凹状リブの軸方向に荷重が加わったときに、前記座屈誘導部により、前記前面側凹状リブの開口縁に囲まれる開口部の重心と前記背面側凹状リブの開口縁に囲まれる開口部の重心の少なくとも一方が、前記軸方向と交差する方向に移動する態様で座屈するよう構成される、衝撃吸収体が提供される。
本発明によれば、座屈誘導部の形成された凹状リブがその開口部の重心が軸方向と交差する方向に移動する態様で座屈することで、当該凹状リブが蛇腹状に垂直に潰れることが回避され、座屈挙動をコントロールして性能のばらつきを抑えることが可能となっている。
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記座屈誘導部は、前記前面側凹状リブと前記背面側凹状リブの少なくとも一方の、周方向に不均等な位置に設けられている。
好ましくは、前記前面側凹状リブには前面側座屈誘導部が形成され、前記背面側凹状リブには背面側座屈誘導部が形成されている。
好ましくは、前記前面側座屈誘導部は、前記前面側凹状リブの筒状の周壁のうち前記軸方向と直交する第1方向の位置に設けられ、前記背面側座屈誘導部は、前記背面側凹状リブの周壁のうち前記軸方向と直交し且つ前記第1方向とは90度以上ずれた第2方向の位置に設けられている。
好ましくは、前記前面側座屈誘導部は、当該前面側座屈誘導部が前記第1方向と反対の方向に移動する態様で前記前面側凹状リブを座屈させるよう構成され、前記背面側座屈誘導部は、当該背面側座屈誘導部が前記第2方向と反対の方向に移動する態様で前記背面側凹状リブを座屈させるよう構成される。
好ましくは、前記第1方向と前記第2方向は、180度ずれた方向である。
好ましくは、前記前面側凹状リブ及び前記背面側凹状リブをそれぞれ1つのみ備える。
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
1.衝撃吸収体1の構成
まず、図1~図5Bを参照して、本発明の一本実施形態に係る衝撃吸収体1の構成について説明する。本実施形態に係る衝撃吸収体1は、ドアなどの車両構成部材に内設することによって車両の内部または外部からの衝撃を吸収するための車両用衝撃吸収体である。衝撃吸収体1は、荷重の入力によって変形し、衝撃を吸収する。なお、以下の説明では、荷重(衝撃)が想定される方向、すなわち、衝撃吸収体1が好適に衝撃を吸収する方向を前後方向と規定する。図1では、当該方向は上下方向である。
まず、図1~図5Bを参照して、本発明の一本実施形態に係る衝撃吸収体1の構成について説明する。本実施形態に係る衝撃吸収体1は、ドアなどの車両構成部材に内設することによって車両の内部または外部からの衝撃を吸収するための車両用衝撃吸収体である。衝撃吸収体1は、荷重の入力によって変形し、衝撃を吸収する。なお、以下の説明では、荷重(衝撃)が想定される方向、すなわち、衝撃吸収体1が好適に衝撃を吸収する方向を前後方向と規定する。図1では、当該方向は上下方向である。
衝撃吸収体1は、中空のブロー成形体で構成される。図1に示すように、衝撃吸収体1は、前後方向に離間されて対向する前面壁2及び背面壁3と、前面壁2及び背面壁3をつなぐ側壁4とを備える。なお、図1においては、衝撃吸収体1は略直方体形状であったが、適用する車両構成部材の形状に応じて、任意の形状とすることができる。また、ブロー成形体の厚さは、特に限定されないが、例えば、50mm以上であり、50~200mmが好ましい。
前面壁2は、図2及び図3A、図3Bに示すように、当該前面壁2が凹まされて形成された略円筒状の前面側凹状リブ20を備える。また、背面壁3は、図3A、図3Bに示すように、当該背面壁が凹まされて形成された略円筒状の背面側凹状リブ30を備える。前面側凹状リブ20の周壁21及び背面側凹状リブ30の周壁31は、それぞれ有底且つ先端に向かって先細りとなるテーパ状となっている。また、前面側凹状リブ20と背面側凹状リブ30の先端部(底部)同士は、互いに突き当たった状態で溶着された円盤状の突き当て部5となっている。突き当て部5は、前後方向と垂直に形成されている。なお、本実施形態の衝撃吸収体1は、図1及び図2に示すように、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30をそれぞれ1つのみ備えている。
また、図3A及び図3Bに示すように、本実施形態において、前面側凹状リブ20は後方に向かって延び、背面側凹状リブ30は前方に向かって延びている。つまり、本実施形態において、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30の軸方向は、それぞれ前後方向と一致する。ここで、前面側凹状リブ20の軸方向とは、図3A及び図3Bに示す前面側凹状リブ20の開口縁24(図1及び図2も参照)に囲まれる開口部の重心G1と、突き当て部5の重心G3を結ぶ方向である。また、背面側凹状リブ30の軸方向とは、図3A及び図3Bに示す背面側凹状リブ30の開口縁34に囲まれる開口部の重心G2と、突き当て部5の重心G3を結ぶ方向である。また、これら前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30の軸方向は、円盤状の突き当て部5と垂直な方向であるとも言える。そして、本実施形態において、前面側凹状リブ20の軸(つまり、前面側凹状リブ20を構成する円筒の中心軸)と、背面側凹状リブ30の軸(つまり、背面側凹状リブ30を構成する円筒の中心軸)は一致している。このような向きに配置された前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30により、本実施形態の衝撃吸収体1は、前後方向の荷重に対する強度を向上させている。なお、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30の軸方向を、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30の深さ方向と規定しても良い。
加えて、本実施形態において、前面側凹状リブ20の円筒状の周壁21には、衝撃を吸収するための座屈の起点となる前面側座屈誘導部22が形成されている。また、背面側凹状リブ30の周壁31には、同じく衝撃を吸収するための座屈の起点となる背面側座屈誘導部32が形成されている。
前面側座屈誘導部22は、具体的には、図4に示すように、前面側凹状リブ20の周壁21の一部が前面側凹状リブ20の内側(後述する第2方向)に向かって折れた内折れ部22a(図5Aも参照)と、内折れ部22aの先端から後方(図の下方)に向かって軸方向に延びる起立部22b(図5Bも参照)とを備える。前面側座屈誘導部22は、内折れ部22aと起立部22bとにより、前面側凹状リブ20の内側に向かって突出する段部22cが構成されており、当該段部22cが、衝撃吸収体1が前後方向の荷重を受けたときの座屈の起点となるようになっている。
同様に、背面側座屈誘導部32は、具体的には、背面側凹状リブ30の周壁31の一部が背面側凹状リブ30の内側(後述する第1方向)に向かって折れた内折れ部32aと、内折れ部32aの先端から前方(図の上方)に向かって軸方向に延びる起立部32bとを備える。背面側座屈誘導部32は、内折れ部32aと起立部32bとにより、背面側凹状リブ30の内側に向かって突出する段部32cが構成されており、当該段部32cが、衝撃吸収体1が前後方向の荷重を受けたときの座屈の起点となるようになっている。
また、図2の平面図及び、図5A、図5Bにも示すように、前面側座屈誘導部22は、前面側凹状リブ20の周壁21における周方向の全周のうち、片側の位置(180度以下の位置)に1つのみ設けられている。これは、言い換えると、前面側座屈誘導部22は、前面側凹状リブ20における周方向に不均等な位置に設けられていると言える。また、同様に、背面側座屈誘導部32も、背面側凹状リブ30の周壁31における周方向の全周のうち、片側の位置(180度以下の範囲、周方向に不均等な位置)に1つのみ設けられている。本実施形態において、前面側座屈誘導部22は、前後方向(軸方向)と直交する第1方向の位置に設けられ、背面側座屈誘導部32は、前後方向(軸方向)と直交し、且つ第1方向と180度ずれた第2方向の位置に設けられている。したがって、本実施形態では、前面側座屈誘導部22と背面側座屈誘導部32は、突き当て部5に対して互い違いの位置に設けられることになる(図3A参照)。
2.衝撃吸収体1の製造方法
以上のような構成の衝撃吸収体1は、図6に示すように、分割金型7,8の間に筒状の溶融パリソン9を配置した状態で分割金型7,8を閉じ、溶融パリソン9内部にエアーを吹き込むことによって中空のブロー成形体を成形することで製造される。分割金型7には、前面側凹状リブ20を形成するための凹状リブ形成部70が設けられ、凹状リブ形成部70には、前面側座屈誘導部22を形成する誘導部形成部71が設けられている。また、分割金型8には、背面側凹状リブ30を形成するための凹状リブ形成部80が設けられ、凹状リブ形成部80には、背面側座屈誘導部32を形成する誘導部形成部81が設けられている。ここで、本実施形態では、凹状リブ形成部70,80によって形成される前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30は、それぞれ先端に向かって先細りとなるテーパ状であり、凹状リブ形成部70,80も先端に向かって先細りとなるテーパ状となっている。凹状リブ形成部70,80が先端に向かって先細りとなるテーパ状となっていることで、ブロー成形後の型開きを容易に行うことが可能となっている。また、前面側座屈誘導部22及び背面側座屈誘導部32の起立部22b,32bも内側には傾いていないため(図4参照)、誘導部形成部71,81もアンダーカット形状にはならず、容易に成形を行うことが可能となっている。なお、本実施形態に係る衝撃吸収体1の製造方法においては、分割金型7,8の型開き方向と、衝撃吸収体1の前後方向、言い換えると、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30の軸方向(深さ方向)が一致するようになっている。つまり、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30の軸方向は、衝撃吸収体1の製造時の型開き方向であるともいえる。
以上のような構成の衝撃吸収体1は、図6に示すように、分割金型7,8の間に筒状の溶融パリソン9を配置した状態で分割金型7,8を閉じ、溶融パリソン9内部にエアーを吹き込むことによって中空のブロー成形体を成形することで製造される。分割金型7には、前面側凹状リブ20を形成するための凹状リブ形成部70が設けられ、凹状リブ形成部70には、前面側座屈誘導部22を形成する誘導部形成部71が設けられている。また、分割金型8には、背面側凹状リブ30を形成するための凹状リブ形成部80が設けられ、凹状リブ形成部80には、背面側座屈誘導部32を形成する誘導部形成部81が設けられている。ここで、本実施形態では、凹状リブ形成部70,80によって形成される前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30は、それぞれ先端に向かって先細りとなるテーパ状であり、凹状リブ形成部70,80も先端に向かって先細りとなるテーパ状となっている。凹状リブ形成部70,80が先端に向かって先細りとなるテーパ状となっていることで、ブロー成形後の型開きを容易に行うことが可能となっている。また、前面側座屈誘導部22及び背面側座屈誘導部32の起立部22b,32bも内側には傾いていないため(図4参照)、誘導部形成部71,81もアンダーカット形状にはならず、容易に成形を行うことが可能となっている。なお、本実施形態に係る衝撃吸収体1の製造方法においては、分割金型7,8の型開き方向と、衝撃吸収体1の前後方向、言い換えると、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30の軸方向(深さ方向)が一致するようになっている。つまり、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30の軸方向は、衝撃吸収体1の製造時の型開き方向であるともいえる。
3.作用効果
以上のように、本実施形態の衝撃吸収体1は、前面側凹状リブ20に前面側座屈誘導部22が設けられ、背面側凹状リブ30に背面側座屈誘導部32が設けられている。そして、前面側座屈誘導部22は、前後方向(軸方向)と直交する第1方向の位置に設けられ、背面側座屈誘導部32は、前後方向(軸方向)と直交し、且つ第1方向と180度ずれた第2方向の位置に設けられている。このような構成っていることにより、衝撃吸収体1に前後方向(前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30の軸方向)に荷重が加わった際、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30は、図7に示すように、Z型に横倒れするようになっている。
以上のように、本実施形態の衝撃吸収体1は、前面側凹状リブ20に前面側座屈誘導部22が設けられ、背面側凹状リブ30に背面側座屈誘導部32が設けられている。そして、前面側座屈誘導部22は、前後方向(軸方向)と直交する第1方向の位置に設けられ、背面側座屈誘導部32は、前後方向(軸方向)と直交し、且つ第1方向と180度ずれた第2方向の位置に設けられている。このような構成っていることにより、衝撃吸収体1に前後方向(前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30の軸方向)に荷重が加わった際、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30は、図7に示すように、Z型に横倒れするようになっている。
具体的には、前後方向の荷重が加わった際、前面側凹状リブ20の周壁21の第1方向に設けられた前面側座屈誘導部22は、その段部22cが屈曲することで、前面側座屈誘導部22が第1方向と反対の第2方向に移動する態様で前面側凹状リブ20を座屈させる。また、前後方向の荷重が加わった際、背面側凹状リブ30の周壁31の第2方向に設けられた背面側座屈誘導部32は、その段部32cが屈曲することで、背面側座屈誘導部32が第2方向と反対の第1方向に移動する態様で背面側凹状リブ30を座屈させる。この際、前面側凹状リブ20の開口縁24(図1~図3B参照)に囲まれる開口部の重心G1(図3A及び図3B参照)は、前後方向(軸方向)と交差する方向、具体的には、図3Aの矢印Y1に示す第2方向の成分と後方向の成分とを有する方向に移動する。また、背面側凹状リブ30の開口縁34(図3A及び図3B参照)に囲まれる開口部の重心G2(図3A及び図3B参照)は、前後方向(軸方向)と交差する方向、具体的には、図3Aの矢印Y2に示す第1方向の成分と前方向の成分とを有する方向に移動する。
このような作用により、本実施形態の前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30は、図7に示すように、Z型に横倒れする態様で座屈するようになっている。
そして、本実施形態の衝撃吸収体1は、前後方向の荷重が加わった際に上記のような態様で座屈することで、従来の構成、すなわち、前面側座屈誘導部22及び背面側座屈誘導部32を備えておらず、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30が図8に示すように蛇腹状に垂直に潰れる(座屈する)構成と比較して、座屈挙動を安定させるとともに、衝撃吸収性能を向上させることが可能となっている。
また、本実施形態では、衝撃吸収体1は、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30をそれぞれ1つのみ備えていることで、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30を複数組備える場合と比較して、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30を好適にZ型に横倒れさせることが可能となっている。
4.荷重試験
本発明者は、本実施形態に係る前面側座屈誘導部22及び背面側座屈誘導部32を備えた衝撃吸収体1を実施例とし、従来の衝撃吸収体を比較例として、その前後方向に荷重を加えた際の圧縮歪みと圧縮荷重の関係を調べた。
本発明者は、本実施形態に係る前面側座屈誘導部22及び背面側座屈誘導部32を備えた衝撃吸収体1を実施例とし、従来の衝撃吸収体を比較例として、その前後方向に荷重を加えた際の圧縮歪みと圧縮荷重の関係を調べた。
すると、比較例では、図9の「比較例」のグラフで示すように、圧縮歪みの増大に伴って圧縮荷重が増えた後、一方の凹状リブ(20/30)が蛇腹状に潰れる(図8の中央の図参照)ことで一度圧縮荷重が減少するものの、その後他方の凹状リブ(30/20)が潰れる(図8の右側の図参照)までに圧縮荷重が大きく増加した。また、他方の凹状リブ(30/20)が潰れた後も、圧縮荷重が急激に増加した。これは、比較例にかかる衝撃吸収体では、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30が蛇腹状に潰れてしまうことで、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30が重なった状態となり、それ以上潰れにくくなるためであると考えられる。
一方、本実施形態に係る衝撃吸収体1では、図9の「実施例」のグラフで示すように、比較例と比較して、圧縮歪みが大きくなっても圧縮荷重が抑えられ、その後の圧縮荷重の上昇も抑えられていることがわかった。これは、実施例に係る衝撃吸収体1では、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30が横倒れすることで、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30が圧縮荷重に応じて変形を続けることが可能となっているためであると考えられる。
5.変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
上述した実施形態では、前面側座屈誘導部22及び背面側座屈誘導部32は、図4に示すように、内折れ部22a,32aと起立部22b,32bによって構成されていた。しかしながら、前面側座屈誘導部22及び背面側座屈誘導部32は衝撃を吸収するための座屈の起点となる形状であればよく、このような構成に限定されない。例えば、図10Aに示すように、前面側座屈誘導部22及び背面側座屈誘導部32を、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30の周壁21,31をそれぞれ内側に突出するよう折り曲げることで構成することが可能である。
また、例えば、図10Bに示すように、前面側座屈誘導部22及び背面側座屈誘導部32を、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30の周壁21,31をそれぞれU字状に内側に湾曲させることで構成することも可能である。ただし、この場合は、前面側座屈誘導部22及び背面側座屈誘導部32はアンダーカットとなるため、製造方法がやや複雑となる。
加えて、図10Cに示すように、前面側座屈誘導部22及び背面側座屈誘導部32を、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30の周壁21,31をそれぞれ外側に突出するよう折り曲げることで構成することも可能である。この場合、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30は、上記実施形態の場合とは反対向きに横倒れすることになる。
また、上記実施形態では、図3Aに示すように、前面側座屈誘導部22は、前後方向(軸方向)と直交する第1方向の位置に設けられ、背面側座屈誘導部32は、前後方向(軸方向)と直交し、且つ第1方向と180度ずれた第2方向の位置に設けられていた。しかしながら、図11Aに示すように、前面側座屈誘導部22と背面側座屈誘導部32が、同じ方向の位置に設けられていても良い。この場合であっても、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30が図8に示すように蛇腹状に垂直に潰れることが避けられ、衝撃吸収性能を向上させることが可能となる。ただし、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30を上記実施形態のようにZ型に横倒れさせるためには、前面側座屈誘導部22と背面側座屈誘導部32とは、90度以上ずれた位置に設けることが好適である。
さらに、上記実施形態では、図3Aに示すように、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30がともに座屈誘導部(22,32)を備えていた。しかしながら、図11Bに示すように、前面側凹状リブ20と背面側凹状リブ30の一方のみに座屈誘導部を設ける構成とすることも可能である。
上記実施形態では、図2に示すように、前面側座屈誘導部22は、前面側凹状リブ20の周壁21における周方向の全周のうち、片側の位置(180度以下の範囲)に1つのみ設けられていた。また、背面側座屈誘導部32も同様に、背面側凹状リブ30の周壁31における周方向の全周のうち、片側の位置(180度以下の位置)に1つのみ設けられていた。しかしながら、前面側座屈誘導部22は、前面側凹状リブ20の周壁21における周方向に不均等な位置に設けられていれば、複数箇所に設けられていても良い。また、背面側凹状リブ30も、背面側凹状リブ30の周壁31における周方向に不均等な位置に設けられていれば、複数箇所に設けられていても良い。
上記実施形態では、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30は略円筒状であったが、筒状であれば、円筒状でなくても良い。この場合も、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30の軸方向が、前後方向と一致する。なお、この場合の前面側凹状リブ20の軸方向は、前面側凹状リブ20の開口縁24に囲まれる開口部の重心G1と突き当て部5の重心G3を結ぶ方向と規定できる。また、背面側凹状リブ30の軸方向は、背面側凹状リブ30の開口縁34に囲まれる開口部の重心G2と、突き当て部5の重心G3を結ぶ方向と規定できる(図3A及び図3B参照)。また、これらの軸方向を、筒状の前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30の軸方向(深さ方向)と規定することもできる。
上記実施形態では、衝撃吸収体1が前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30を1つずつ備えていたが、衝撃吸収体1は、前面側凹状リブ20及び背面側凹状リブ30をそれぞれ複数備えていても良い。
1 :衝撃吸収体
2 :前面壁
3 :背面壁
4 :側壁
5 :突き当て部
7 :分割金型
8 :分割金型
9 :溶融パリソン
20 :前面側凹状リブ
21 :周壁
22 :前面側座屈誘導部
22a :内折れ部
22b :起立部
22c :段部
24 :開口縁
30 :背面側凹状リブ
31 :周壁
32 :背面側座屈誘導部
32a :内折れ部
32b :起立部
32c :段部
34 :開口縁
70 :凹状リブ形成部
71 :誘導部形成部
80 :凹状リブ形成部
81 :誘導部形成部
G1~G3 :重心
2 :前面壁
3 :背面壁
4 :側壁
5 :突き当て部
7 :分割金型
8 :分割金型
9 :溶融パリソン
20 :前面側凹状リブ
21 :周壁
22 :前面側座屈誘導部
22a :内折れ部
22b :起立部
22c :段部
24 :開口縁
30 :背面側凹状リブ
31 :周壁
32 :背面側座屈誘導部
32a :内折れ部
32b :起立部
32c :段部
34 :開口縁
70 :凹状リブ形成部
71 :誘導部形成部
80 :凹状リブ形成部
81 :誘導部形成部
G1~G3 :重心
Claims (7)
- 中空のブロー成形体で構成された衝撃吸収体であって、
前記ブロー成形体は、前後に離間されて対向する前面壁及び背面壁と、前記前面壁及び前記背面壁をつなぐ側壁とを備え、
前記前面壁は、当該前面壁が凹まされて形成された筒状の前面側凹状リブを備え、前記背面壁は、当該背面壁が凹まされて形成された筒状の背面側凹状リブを備え、前記前面側凹状リブと前記背面側凹状リブとは、その先端部が互いに溶着されており、
前記前面側凹状リブと前記背面側凹状リブの少なくとも一方に、衝撃を吸収するための座屈の起点となる座屈誘導部が形成されており、
前記前面側凹状リブと前記背面側凹状リブの前記少なくとも一方は、これら前面側凹状リブ及び背面側凹状リブの軸方向に荷重が加わったときに、前記座屈誘導部により、前記前面側凹状リブの開口縁に囲まれる開口部の重心と前記背面側凹状リブの開口縁に囲まれる開口部の重心の少なくとも一方が、前記軸方向と交差する方向に移動する態様で座屈するよう構成される、衝撃吸収体。 - 請求項1に記載の衝撃吸収体であって、
前記座屈誘導部は、前記前面側凹状リブと前記背面側凹状リブの少なくとも一方の、周方向に不均等な位置に設けられている、衝撃吸収体。 - 請求項1又は請求項2に記載の衝撃吸収体であって、
前記前面側凹状リブには前面側座屈誘導部が形成され、前記背面側凹状リブには背面側座屈誘導部が形成されている、衝撃吸収体。 - 請求項3に記載の衝撃吸収体であって、
前記前面側座屈誘導部は、前記前面側凹状リブの筒状の周壁のうち前記軸方向と直交する第1方向の位置に設けられ、
前記背面側座屈誘導部は、前記背面側凹状リブの周壁のうち前記軸方向と直交し且つ前記第1方向とは90度以上ずれた第2方向の位置に設けられている、衝撃吸収体。 - 請求項4に記載の衝撃吸収体であって、
前記前面側座屈誘導部は、当該前面側座屈誘導部が前記第1方向と反対の方向に移動する態様で前記前面側凹状リブを座屈させるよう構成され、
前記背面側座屈誘導部は、当該背面側座屈誘導部が前記第2方向と反対の方向に移動する態様で前記背面側凹状リブを座屈させるよう構成される、衝撃吸収体。 - 請求項5に記載の衝撃吸収体であって、
前記第1方向と前記第2方向は、180度ずれた方向である、衝撃吸収体。 - 請求項1~請求項6のいずれかに記載の衝撃吸収体であって、
前記前面側凹状リブ及び前記背面側凹状リブをそれぞれ1つのみ備える、衝撃吸収体。
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