JP2022152214A - 内燃機関用のスパークプラグ及びこれを備えた内燃機関 - Google Patents

内燃機関用のスパークプラグ及びこれを備えた内燃機関 Download PDF

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Abstract

【課題】着火性を向上させることができる内燃機関のスパークプラグ及びこれを備えた内燃機関を提供すること。【解決手段】内燃機関用のスパークプラグ1において、プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。プラグカバー5には、副燃焼室50と外部とを連通させる噴孔51が形成されている。ハウジング2の外周には、呼び径がM14以下であるネジ部21が形成されている。プラグ軸方向Zにおける絶縁碍子3の先端から副燃焼室50の先端までの距離をAとする。ハウジング2の内周面22によって外周側を覆われた副燃焼室50の一部の最大径と、プラグカバー5の内周面52によって外周側を覆われた副燃焼室50の一部の最大径とのうち、小さい方の最大径をBとする。このとき、スパークプラグ1は、下記式(1)を満たす。A/B≧1.1 ・・・(1)【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関用のスパークプラグ及びこれを備えた内燃機関に関する。
例えば、特許文献1に開示されているように、先端に副燃焼室を備えた内燃機関用のスパークプラグが知られている。特許文献1に記載のスパークプラグは、絶縁碍子の副燃焼室に面する外周面の表面積に対する、ハウジング及びプラグカバーの副燃焼室に面する内壁面の合計表面積の比率を規定することにより、副燃焼室内における火炎の冷却損失を抑制しようとしている。
特開2020-184435号公報
しかしながら、特許文献1に記載のスパークプラグは、副燃焼室内における初期火炎の成長については考慮されていない。つまり、副燃焼室内における初期火炎の燃焼空間を確保することにより、初期火炎の冷却損失を抑制することについては、考慮されていない。それゆえ、特許文献1に記載のスパークプラグは、着火性向上の観点から、改善の余地がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及びこれを備えた内燃機関を提供しようとするものである。
本発明の第1の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、
上記ハウジングの外周には、呼び径がM14以下であるネジ部(21)が形成されており、
上記接地電極は、上記ハウジング又は上記プラグカバーに固定された固定端部(62)から上記副燃焼室内に突出しており、
上記放電ギャップは、上記中心電極の先端部と上記接地電極の基端面(61)とが、互いに対向することにより形成されており、
上記副燃焼室の外周側は、少なくとも上記ハウジングの内周面(22)と上記プラグカバーの内周面(52)とによって覆われており、
プラグ軸方向(Z)における上記絶縁碍子の先端から上記副燃焼室の先端までの距離をAとし、
上記ハウジングの内周面によって外周側を覆われた上記副燃焼室の一部の最大径(Bh)と、上記プラグカバーの内周面によって外周側を覆われた上記副燃焼室の一部の最大径(Bc)とのうち、小さい方の最大径をBとしたとき、下記式(1)を満たす、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
A/B≧1.1 ・・・(1)
本発明の第2の態様は、上記内燃機関用のスパークプラグを備えた内燃機関(10)であって、
該内燃機関の排気再循環率をx%としたとき、下記式(3)を満たす、内燃機関にある。
A/B≧0.0027x-0.1412x+2.5378x-12.861 ・・・(3)
上記スパークプラグは、上記式(1)を満たす。それゆえ、放電によって形成された初期火炎が副燃焼室内にて成長する際、冷却損失を受けにくい。それゆえ、副燃焼室内の燃焼を促進しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
上記内燃機関は、上記式(3)を満たす。それゆえ、排気再循環率が高い場合であっても、初期火炎を形成しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
以上のごとく、上記態様によれば、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及びこれを備えた内燃機関を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
実施形態1における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、図2のI-I線矢視断面相当図。 図1のII-II線矢視断面相当図。 実施形態1における、各部位の寸法を示す断面図。 実施形態1における、内燃機関の断面図。 実施形態1における、内燃機関を先端側から見た図。 実験例1における、COVと主燃焼期間との関係を示すグラフ。 実験例2における、A/Bの値と、火炎ジェットの速度との関係を示すグラフ。 実験例2における、主燃焼期間と火炎ジェットの速度との関係を示すグラフ。 実験例3における、EGR率と、火炎ジェットの速度が131m/sとなるA/Bの値との関係を示すグラフ。 実験例4における、A/Bの値と、放電の長さとの関係を示すグラフ。 実験例5における、A/Bの値と、副燃焼室内の熱発生率との関係を示すグラフ。 実施形態2における、スパークプラグのプラグ軸方向に沿った断面図。 実施形態2における、プラグ軸方向における放電ギャップから噴孔までの距離を示す断面図。 実施形態3における、スパークプラグの先端部のプラグ軸方向に直交する断面図であって、図15のXIV-XIV線矢視断面相当図。 図14のXV-XV線矢視断面相当図。 実施形態3における、圧縮行程において副燃焼室に形成されたスワール流の向きを説明する断面説明図。 実施形態4における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグ及びこれを備えた内燃機関に係る実施形態について、図1~図5を参照して説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、図1、図2に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、プラグカバー5と、を有する。
中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側に突出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。プラグカバー5には、副燃焼室50と外部とを連通させる噴孔51が形成されている。ハウジング2の外周には、呼び径がM14以下であるネジ部21が形成されている。
接地電極6は、ハウジング2又はプラグカバー5に固定された固定端部62から副燃焼室50内に突出している。放電ギャップGは、中心電極4の先端部と接地電極6の基端面61とが、互いに対向することにより形成されている。
副燃焼室50の外周側は、少なくともハウジング2の内周面22とプラグカバー5の内周面52とによって覆われている。
図3に示すごとく、プラグ軸方向Zにおける絶縁碍子3の先端から副燃焼室50の先端までの距離をAとする。また、ハウジング2の内周面22によって外周側を覆われた副燃焼室50の一部の最大径Bhと、プラグカバー5の内周面52によって外周側を覆われた副燃焼室50の一部の最大径Bcとのうち、小さい方の最大径をBとする。このとき、スパークプラグ1は、下記式(1)を満たす。
A/B≧1.1 ・・・(1)
A/Bの値は、例えば、2.6以上とすることができる。また、A/Bの値は、例えば、3.2以上とすることができる。
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車等の内燃機関における着火手段として用いることができる。スパークプラグ1は、図4に示すごとく、ハウジング2のネジ部21を、シリンダヘッド71のプラグホール711の雌ネジ部に螺合して、内燃機関10に取り付けられる。スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられた状態において、ハウジング2は、内燃機関10のシリンダヘッド71と熱的に接触している。そして、スパークプラグ1の軸方向Zの一端を、内燃機関10の主燃焼室101に配置する。スパークプラグ1の軸方向Zにおいて、主燃焼室101に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、スパークプラグ1の軸方向Zを、適宜、プラグ軸方向Z、或いは単に、Z方向ともいう。なお、プラグ中心軸Cは、スパークプラグ1の中心軸Cを意味するものとする。また、図1に示すごとく、プラグ中心軸Cは、本形態において、中心電極4の中心軸でもある。
プラグカバー5は、ハウジング2の先端部に溶接等によって接合されている。プラグカバー5は、ハウジング2と熱的に接触している。図4に示すごとく、スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられた状態において、プラグカバー5は、副燃焼室50を主燃焼室101と区画している。また、噴孔51は、副燃焼室50と主燃焼室101とを連通させている。
また、副燃焼室50は、図1に示すごとく、絶縁碍子3から先端側に突出した中心電極4の周辺における、ハウジング2の先端部の内周側の空間を含む。また、副燃焼室50は、後述するポケット部501をも含む。
また、本形態において、プラグカバー5は、周壁部53と底壁部54と角部55とを有する。周壁部53は、副燃焼室50の外周側の一部を覆う略円筒形状の部分である。底壁部54は、副燃焼室50の先端側を覆う部分である。角部55は、周壁部53の先端と底壁部54の外周とを曲面状に繋ぐ部分である。本形態において、噴孔51は、角部55に形成されている。
本形態において、プラグカバー5には、図2に示すごとく、4つの噴孔51が形成されている。噴孔51は、図1に示すごとく、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、Z方向に対して傾斜して開口している。また、噴孔51は、Z方向におけるプラグカバー5の基端とプラグカバー5の先端との中間位置よりも、先端側に形成されている。なお、プラグ径方向とは、プラグ中心軸Cに直交する平面上において、プラグ中心軸Cを中心とする円の半径方向を意味する。
本形態においては、図3に示すごとく、Z方向における放電ギャップGから噴孔51までの距離D1は、最大径Bの1/2の長さ以上である。また、本形態において、放電ギャップGは、ハウジング2の先端よりも先端側に形成されている。
また、ハウジング2の先端は、絶縁碍子3の先端よりも先端側に位置している。プラグカバー5の基端は、絶縁碍子3の先端よりも先端側に位置している。また、本形態において、ハウジング2の外周に形成されたネジ部21の呼び径は、M12である。
本形態においては、ハウジング2の内周面22によって外周側を覆われた副燃焼室50の一部のうち、絶縁碍子3の先端よりも先端側の部分の最大径が、最大径Bhとなっている。また、本形態においては、最大径Bhが最大径Bとなっている。本形態において、最大径Bは、6.4mm以上である。
また、絶縁碍子3は、先端側へ向かうほど縮径するテーパ状先端部31を有する。絶縁碍子3は、その外周面の一部においてハウジング2の内周面22の一部に係止されている。この係止部よりも先端側の絶縁碍子3の部分が、テーパ状先端部31となっている。このテーパ状先端部31の外周面とハウジング2の内周面22との間に、環状のポケット部501が形成されている。
図3に示すごとく、Z方向におけるポケット部501の長さをD2とする。本形態において、距離Aは、長さD2以上である。距離Aは、例えば、7.1mm以上とすることができる。
また、Z方向における絶縁碍子3の先端から中心電極4の先端までの距離D3は、例えば、3.6~17.6mmとすることができる。
次に、上記スパークプラグ1を備えた内燃機関10について説明する。
本形態の内燃機関10は、図4に示すごとく、シリンダ70内を往復運動するピストン74を備える。主燃焼室101は、ピストン74の往復運動によって、容積変化する。内燃機関10のシリンダヘッド71には、吸気ポート721及び排気ポート731が形成されており、それぞれ吸気弁72又は排気弁73が備えられている。そして、シリンダヘッド71における吸気ポート721と排気ポート731との間に、スパークプラグ1が取り付けられる。詳細には、スパークプラグ1は、図5に示すごとく、シリンダヘッド71における、2つの吸気ポート721と2つの排気ポート731とに囲まれた位置に配設されている。
内燃機関10においては、ピストン74の往復運動に伴って、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程が順次繰り返される。内燃機関10の吸気行程において、2つの吸気ポート721からガスが主燃焼室101内に導入され、排気行程において、2つの排気ポート731から主燃焼室101内のガスが排出される。
また、内燃機関10は、排気再循環機構(図示略)を備える。具体的には、内燃機関10は、主燃焼室101から排出された燃焼後の排気ガスの一部を排気経路から取り出し、当該排気ガスの一部を、吸気経路を介して再び主燃焼室101に再循環させるように構成されている。
また、スパークプラグ1を備えた内燃機関10は、内燃機関10の排気再循環率(以下において、EGR率という。)をx%としたとき、下記式(3)を満たす。
A/B≧0.0027x-0.1412x+2.5378x-12.861 ・・・(3)
次に、本形態の作用効果を説明する。
上記スパークプラグ1は、上記式(1)を満たす。それゆえ、放電によって形成された初期火炎が副燃焼室50内にて成長する際、冷却損失を受けにくい。それゆえ、副燃焼室50内の燃焼を促進しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
本形態のスパークプラグ1は、放電ギャップGに放電を生じさせることにより、副燃焼室50内の混合気を着火させ、火炎を形成する。ここで、放電によって生じた初期火炎が成長する際、ハウジング2及びプラグカバー5による冷却損失を抑制することにより、副燃焼室50内の燃焼を促進させることができる。具体的には、絶縁碍子3の先端よりも先端側に形成された副燃焼室50の一部、すなわちポケット部501を除いた副燃焼室50の容積を大きくすることにより、初期火炎のハウジング2及びプラグカバー5による冷却損失を抑制することができる。ここで、本形態のスパークプラグ1は、上記式(1)を満たす。それゆえ、ポケット部501を除いた副燃焼室50の容積は大きくなりやすい。それゆえ、副燃焼室50内における初期火炎の燃焼空間を確保しやすい。それゆえ、初期火炎が副燃焼室50内にて成長する際、冷却損失を受けにくい。それゆえ、副燃焼室50内の燃焼を促進しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
また、スパークプラグ1は、上記式(1)を満たすことにより、噴孔51の形成位置を、放電ギャップGから離れた位置としやすい。つまり、スパークプラグ1は、距離D1(図3参照)を長くしやすい。それゆえ、噴孔51から充分離れた位置から火炎が広がり、充分に内圧が高い状態で、火炎ジェットが噴孔51から主燃焼室101に噴出することが期待できる。それゆえ、主燃焼室101の着火性を向上させることができる。その結果、内燃機関の高負荷時のノック抑制、低負荷時もしくは中負荷時におけるEGR率の向上が期待でき、内燃機関10の出力向上、燃費向上が期待できる。
また、スパークプラグ1は、上記式(1)を満たすことにより、放電ギャップGに生じた放電が伸長するための空間を確保することができる。それゆえ、噴孔51を介して副燃焼室50に導入された気流によって、放電は伸長しやすい。その結果、副燃焼室50内における着火性を向上させることができる。
また、スパークプラグ1は、上記式(1)を満たすことにより、副燃焼室50の容積を大きくすることができる。それゆえ、圧縮行程等において、噴孔51を介して副燃焼室50に導入されるガスの量を多くすることができる。それゆえ、噴孔51を介して副燃焼室50に導入された気流を強くすることができる。それゆえ、放電ギャップGに流入する気流を強くすることができる。それゆえ、放電ギャップGに生じた放電は伸長しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
また、最大径B(図3参照)は、6.4mm以上である。それゆえ、副燃焼室50内における初期火炎の燃焼空間を確実に確保しやすい。それゆえ、初期火炎が副燃焼室50内にて成長する際、冷却損失を確実に受けにくい。それゆえ、副燃焼室50内の燃焼を確実に促進しやすい。その結果、着火性を確実に向上させることができる。
本形態の内燃機関10は、上記式(3)を満たす。それゆえ、EGR率が高い場合であっても、初期火炎を形成しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
一般に、EGR率が高くなるほど、着火性は低くなりやすい。そのため、着火性を確保するためには、EGR率が高くなるほど、A/Bの値を大きくする必要がある。つまり、A/Bの値を大きくすることにより、副燃焼室50の容積を大きくさせる。これにより、副燃焼室50内の気流を強くさせ、放電を伸長させやすくする必要がある。ここで、本形態の内燃機関10は、上記式(3)を満たす。それゆえ、EGR率の高さに応じた、A/Bの値とすることができる。それゆえ、EGR率が高い場合であっても、初期火炎を形成しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
また、噴孔51は、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、Z方向に対して傾斜して開口している。それゆえ、初期火炎は、噴孔51を介して副燃焼室50に導入された気流によって、副燃焼室50の、より基端側に運ばれやすい。それゆえ、噴孔51から充分離れた位置から火炎が広がりやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
以上のごとく、本形態によれば、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ1及びこれを備えた内燃機関10を提供することができる。
(実験例1)
本例では、図6のグラフに示すごとく、基本構造を実施形態1と同様とする内燃機関につき、燃焼変動率(以下、COVという。)と質量燃焼割合(以下、MFBという。)との関係を、CAE(Computer aided Engineeringの略)により解析した。一般に、EGR率が上昇するほど、COVの値が大きくなりやすい。そのため、本例では、内燃機関のEGR率を変更することによりCOVの値を変更させた。そして、それぞれのCOVの値のときの、MFBが10%から50%になるまでの期間(以下、適宜、主燃焼期間という。)を求めた。
図6のグラフにおいては、それぞれの解析結果をプロットすると共に、これらの解析結果における近似直線を示した。また、本例においては、COVが5%以下となる場合を、主燃焼室の燃焼が安定であるとする基準としている。そこで、本例の解析結果から、当該基準を満たす主燃焼期間を求めた。
図6のグラフより、COVの値が大きくなるほど、主燃焼期間が長くなることが分かる。また、図6のグラフに示す近似直線より、COVが5%以下となるときの主燃焼期間は、13.3°CA(クランク角の略)以下と推測された。つまり、主燃焼期間が13.3°CA以下となることにより、主燃焼室の燃焼が安定すると推測される。そして、後述する実験例2においては、主燃焼期間が13.3°CA以下となる場合を、主燃焼室の燃焼が安定であるとする基準とした。
(実験例2)
本例では、図7のグラフに示すごとく、基本構造を実施形態1と同様としつつ、A/Bの値が互いに異なる複数のスパークプラグを用いて、A/Bの値と、噴孔を介して主燃焼室に噴出する火炎ジェットの速度との関係を解析した。試験条件は、スパークプラグを設置した内燃機関の回転数を1200rpmとし、EGR率を10~25%とした。その他の解析条件は、実験例1と同様である。
図7のグラフより、A/Bの値が大きくなるほど、火炎ジェットの速度が速くなることが分かる。また、EGR率が高いほど、火炎ジェットの速度が遅くなることが分かる。本例の解析結果より、EGR率が高い場合であっても、A/Bの値を大きくすることによって、火炎ジェットの速度を所定の速度以上とすることができると考えられる。
また、本例では、図8のグラフに示すごとく、主燃焼期間と火炎ジェットの速度との関係も解析した。つまり、図7のグラフにプロットした、それぞれの火炎ジェットの速度のときの、主燃焼期間を求めた。なお、図8のグラフには、一部の解析結果のみプロットした。また、図8のグラフには、プロットを省略した解析結果を含む、すべての解析結果における近似直線を示した。
図8のグラフより、火炎ジェットの速度が速くなるほど、主燃焼期間が短くなることが分かる。また、図8のグラフに示す近似直線より、主燃焼期間が13.3°CA以下となるときの火炎ジェットの速度は、131m/s以上と推測された。つまり、上述の実験例1の結果と併せて考えると、火炎ジェットの速度を131m/s以上とすることにより、主燃焼室の燃焼が安定すると推測される。
また、図7のグラフに示すごとく、EGR率が10%のとき、火炎ジェットの速度が131m/sとなるA/Bの値は1.1であった。また、EGR率が25%のとき、火炎ジェットの速度が131m/sとなるA/Bの値は4.8であった。したがって、内燃機関のEGR率が10%のとき、主燃焼室の燃焼が安定するA/Bの値は、1.1以上と推測される。また、内燃機関のEGR率が25%のとき、主燃焼室の燃焼が安定するA/Bの値は、4.8以上と推測される。
(実験例3)
本例では、図9のグラフに示すごとく、基本構造を実施形態1と同様としつつ、A/Bの値が互いに異なる複数のスパークプラグを用いて、それぞれのEGR率における、火炎ジェットの速度が131m/sとなるA/Bの値を求めた。その他の解析条件は、実験例2と同様である。
図9のグラフには、それぞれの解析結果をプロットすると共に、これらの解析結果における近似曲線を示した。本解析結果より、EGR率が高くなるほど、火炎ジェットの速度が131m/sとなるA/Bの値が大きくなることが分かる。また、図9のグラフに示す近似曲線の式は、EGR率をx%としたとき、下記式(4)となる。そして、下記式(4)の「=」を「≧」に置き換えた式が、上記式(3)となる。つまり、図9のグラフにおいて、下記式(4)の近似曲線から上側の領域が、上記式(3)が示す領域となる。
A/B=0.0027x-0.1412x+2.5378x-12.861 ・・・(4)
(実験例4)
本例では、図10のグラフに示すごとく、基本構造を実施形態1と同様としつつ、A/Bの値が互いに異なる複数のスパークプラグを用いて、A/Bの値と放電の長さとの関係を解析した。本例では、A/Bの値が、それぞれ0.9、1.1、2.6、3.2、4.8であるスパークプラグを用いた。そして、それぞれのスパークプラグを内燃機関に設置し、クランク角が325°CAのタイミングにて放電ギャップに放電を発生させた。その他の解析条件は、実験例2と同様である。
図10のグラフに示すごとく、A/Bの値が大きくなるほど、放電の長さが長くなることが分かる。また、A/Bの値が大きくなるほど、より早く放電が伸長することが分かる。ここで、A/Bの値が大きいほど、副燃焼室の容積は大きくなりやすい。そして、副燃焼室の容積が大きくなるほど、副燃焼室内の気流は強くなりやすく、放電ギャップを通過する気流も強くなりやすいと考えられる。それゆえ、A/Bの値が大きいほど、放電は、より長く伸長したと共に、より早く伸長したと考えられる。そのため、A/Bの値が大きいほど、着火性を向上させることができると考えられる。
(実験例5)
本例では、図11のグラフに示すごとく、基本構造を実施形態1と同様としつつ、A/Bの値が互いに異なる複数のスパークプラグを用いて、A/Bの値と、副燃焼室内の熱発生率との関係を解析した。その他の解析条件は、実験例4と同様である。なお、熱発生率とは、単位時間あたりの熱発生量を示す。
図11のグラフに示すごとく、A/Bの値が大きくなるほど、副燃焼室内の熱発生率は、高くなると共に、早く上昇することが分かる。これは、A/Bの値が大きくなるほど、初期火炎が副燃焼室内にて成長する際、冷却損失を受けにくくなったためと考えられる。また、実験例4にて説明したように、A/Bの値が大きくなるほど、放電は、より長く伸長しやすいと共に、より早く伸長しやすい。また、A/Bの値が大きくなるほど、副燃焼室内の混合気量が多くなりやすい。そのため、A/Bの値が大きくなるほど、副燃焼室内の熱発生率が高くなったと共に、より早く熱発生率が上昇したと考えられる。
(実施形態2)
本形態は、図12、図13に示すごとく、実施形態1に対し、A/Bの値を変更した形態である。
すなわち、本形態のスパークプラグ1は、下記式(2)を満たす。
A/B≧4.8 ・・・(2)
本形態においては、図12、図13に示すごとく、Z方向における放電ギャップGから噴孔51までの距離D1は、最大径Bh及び最大径Bcよりも長い。また、距離D1は、ハウジング2のネジ部21の呼び径よりも長い。距離D1は、例えば、最大径Bの4倍以上の長さとすることができる。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
スパークプラグ1は、上記式(2)を満たす。それゆえ、放電によって形成された初期火炎が副燃焼室50内にて成長する際、冷却損失を一層受けにくい。それゆえ、副燃焼室50内の燃焼を一層促進しやすい。その結果、着火性を一層向上させることができる。
また、スパークプラグ1は、上記式(2)を満たすことにより、噴孔51の形成位置を、放電ギャップGから一層離れた位置としやすい。それゆえ、副燃焼室50の内圧が一層高い状態で、火炎ジェットが噴孔51から主燃焼室101に噴出することが期待できる。それゆえ、主燃焼室101の着火性を一層向上させることができる。
また、上記式(2)を満たすことにより、副燃焼室50の容積は一層大きくなりやすい。それゆえ、放電ギャップGを通過する気流が一層強くなりやすい。それゆえ、放電ギャップGに生じた放電は一層伸長しやすい。その結果、着火性を一層向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
(実施形態3)
本形態は、図14~図16に示すごとく、副燃焼室50にスワール流が生じるように構成された形態である。
すなわち、本形態において、噴孔51は、噴孔51を介して副燃焼室50に気流が導入されることによって副燃焼室50にスワール流が生じるように形成されている。
具体的には、図14に示すごとく、Z方向から見たとき、噴孔51とプラグ中心軸Cとを通過するプラグ径方向に延びる仮想直線VLに対して、噴孔51の中心軸の延長線51Lは鋭角の角度をもって傾斜している。複数の噴孔51は、Z方向から見たとき、各噴孔51における仮想直線VLに対する噴孔51の中心軸の延長線51Lの傾斜方向が、プラグ周方向における同じ側となっている。なお、プラグ周方向とは、スパークプラグ1の中心軸Cに直交する平面上において当該中心軸Cを中心とする円周方向をいうものとする。
このような噴孔51の形成態様により、図16の破線矢印AFに示すごとく、噴孔51を介して副燃焼室50に導入された気流によって、副燃焼室50にスワール流が形成される。本形態の場合、スワール流AFは、プラグ中心軸Cの周りに、図16における反時計回りの螺旋状に生じる。
その他は、実施形態1と同様である。
噴孔51は、噴孔51を介して副燃焼室50に気流が導入されることによって副燃焼室50にスワール流が生じるように形成されている。それゆえ、放電によって生じた初期火炎は、スワール流によって、副燃焼室50内に広がりやすい。それゆえ、副燃焼室50内の燃焼が一層促進されやすい。その結果、副燃焼室50の着火性を一層向上させることができる。
また、複数の噴孔51は、Z方向から見たとき、各噴孔51における仮想直線VLに対する噴孔51の中心軸の延長線51Lの傾斜方向が、プラグ周方向における同じ側となっている。それゆえ、それぞれの噴孔51を介して副燃焼室50内に導入された気流同士は、互いに衝突しにくい。それゆえ、放電ギャップGを通過する気流は強くなりやすい。それゆえ、放電ギャップGに生じた放電は一層伸長しやすい。その結果、着火性を一層向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
(実施形態4)
本形態は、図17に示すごとく、実施形態1に対し、プラグカバー5の形状を変更した形態である。
本形態において、プラグカバー5は、図17に示すごとく、周壁部53と、凸曲面部56とを有する。凸曲面部56は、先端側に向かって突出した凸曲面形状を呈している。噴孔51は、凸曲面部56に形成されている。
その他は、実施形態1と同様である。
プラグカバー5は凸曲面部56を有する。それゆえ、距離Aを長くしやすい。それゆえ、副燃焼室50内における初期火炎の燃焼空間を一層確保しやすい。それゆえ、初期火炎が副燃焼室50内にて成長する際、冷却損失を一層受けにくい。それゆえ、副燃焼室50内の燃焼を一層促進しやすい。その結果、着火性を一層向上させることができる。
また、噴孔51は、凸曲面部56に形成されている。それゆえ、噴孔51の形成位置を、放電ギャップGから、より離れた位置としやすい。それゆえ、噴孔51から一層離れた位置から火炎が広がり、内圧が一層高い状態で、火炎ジェットが噴孔51から主燃焼室101に噴出することが期待できる。それゆえ、主燃焼室101の着火性を一層向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
上記実施形態1~4において、最大径Bhと最大径Bcとは、互いに異なる大きさとなっている。ただし、最大径Bhと最大径Bcとは、互いに同じ大きさとすることができる。この場合、最大径Bは、最大径Bh又は最大径Bcとなる。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
1…スパークプラグ、2…ハウジング、21…ネジ部、22…ハウジングの内周面、3…絶縁碍子、4…中心電極、5…プラグカバー、50…副燃焼室、51…噴孔、52…プラグカバーの内周面、6…接地電極、61…基端面、62…固定端部、G…放電ギャップ、Z…プラグ軸方向

Claims (4)

  1. 筒状の絶縁碍子(3)と、
    該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
    上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
    上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
    上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
    上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、
    上記ハウジングの外周には、呼び径がM14以下であるネジ部(21)が形成されており、
    上記接地電極は、上記ハウジング又は上記プラグカバーに固定された固定端部(62)から上記副燃焼室内に突出しており、
    上記放電ギャップは、上記中心電極の先端部と上記接地電極の基端面(61)とが、互いに対向することにより形成されており、
    上記副燃焼室の外周側は、少なくとも上記ハウジングの内周面(22)と上記プラグカバーの内周面(52)とによって覆われており、
    プラグ軸方向(Z)における上記絶縁碍子の先端から上記副燃焼室の先端までの距離をAとし、
    上記ハウジングの内周面によって外周側を覆われた上記副燃焼室の一部の最大径(Bh)と、上記プラグカバーの内周面によって外周側を覆われた上記副燃焼室の一部の最大径(Bc)とのうち、小さい方の最大径をBとしたとき、下記式(1)を満たす、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
    A/B≧1.1 ・・・(1)
  2. 上記最大径Bは、6.4mm以上である、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
  3. 下記式(2)を満たす、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
    A/B≧4.8 ・・・(2)
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグを備えた内燃機関(10)であって、
    該内燃機関の排気再循環率をx%としたとき、下記式(3)を満たす、内燃機関。
    A/B≧0.0027x-0.1412x+2.5378x-12.861 ・・・(3)
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