JP2022150617A - コンクリート構造物の補強工法および補強構造物 - Google Patents

コンクリート構造物の補強工法および補強構造物 Download PDF

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Abstract

【課題】コンクリート構造物の幅の拡大を抑制した補強工法およびその工法により補強された補強構造物を提供する。【解決手段】コンクリート構造物2の外周に、補強用部材(鋼矢板)3を打設し、補強用部材3の外周側から、補強用部材3とコンクリート構造物2の両方に定着して両者を一体化させる定着部材(鉄筋)4を打ち込み、補強用部材3とコンクリート構造物2との隙間を充填材5で充填する。補強用部材3の外周側から定着部材4を打ち込むため、補強構造物1の余分な拡大を抑えることができる。【選択図】図1

Description

本発明は、橋脚やラーメン高架橋などのコンクリート構造物を補強する工法および補強構造物に関する。
例えば鉄道橋や道路橋の橋脚またはラーメン高架橋等の既設のコンクリート構造物を補強する方法として、従来、シートパイル補強工法が広く採用されている。シートパイル補強工法は、既設構造物の外周を囲むように鋼矢板を打設し、既設構造物と鋼矢板との間に新たに増しフーチングを増設することにより、鋼矢板と既設構造物とを一体化させることで、構造物の抵抗力を向上させ、安定性を高める補強工法である。
従来、フーチングや橋脚躯体、地中梁等のコンクリート構造物と鋼矢板とを一体化させる方法として、コンクリート構造物に打設したあと施工アンカーと鋼矢板に取り付けた鉄筋とを増しフーチング内で定着させる工法が用いられている。また、例えば特許文献1には、増しフーチング内に定着させる鉄筋を鋼矢板に取り付ける方法として、鋼矢板に孔あき鋼板を溶接し、孔あき鋼板の孔に鉄筋を固定する構造が開示されている。
また、特許文献2には、基礎等の構造物と鋼矢板との間に連結材を架設し、連結材の両端を構造物と鋼矢板とに連結し、構造物と鋼矢板との間に充填剤を充填する接合構造が開示されている。
特開2006-57251号公報 特開2007-51485号公報
しかしながら、特許文献1に記載された構造のように、既設のコンクリートと鋼矢板との間からアンカーを取り付ける場合、鋼矢板と既設コンクリートとの間隔を1.2m~1.5m程度確保する必要があり、その間隔が増しフーチングの幅となる。このように既設の橋脚やラーメン高架橋等の周囲に増しフーチングを設ける場合、補強後のフーチング幅が大きくなり過ぎて、用地境界を侵す可能性があり、特に用地が狭い場合には、側方への増設を極力抑えることが望まれている。
一方、フーチング幅の増大を抑えるために増しフーチングを上面に設けると、増しフーチングの上面が地盤面よりも上に突出する可能性がある。特に都市部などにおいては、用地の有効利用のために、地盤面よりも上方に増しフーチングを突出させることは好ましくない。
また、特許文献2に記載された接合構造の場合は、連結材と鋼矢板との接合のために、既設フーチングと鋼矢板との間でボルト締め等の作業が必要であり、手間がかかるうえ、作業を行えるだけのスペースが必要となる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、コンクリート構造物の幅の拡大を抑制した補強工法およびその工法により補強された補強構造物を提供することを目的とする。
上記問題を解決するため、本発明は、コンクリート構造物を補強する工法であって、
前記コンクリート構造物の外周に、補強用部材を打設し、前記補強用部材の外周側から、前記補強用部材と前記コンクリート構造物の両方に定着して両者を一体化させる定着部材を打ち込み、前記補強用部材と前記コンクリート構造物との隙間を充填材で充填することを特徴としている。
前記定着部材が鉄筋であり、前記鉄筋の一方の端部を前記コンクリート構造物に打ち込み、前記鉄筋の他端を前記補強用部材の外周面に定着させてもよい。あるいは、前記定着部材が、前記コンクリート構造物に打ち込むあと施工アンカーと、前記補強用部材の外周面に一端を定着させる鉄筋であり、前記あと施工アンカーと前記鉄筋とを、前記隙間内で重ね合わせてもよい。
前記充填材がコンクリートでもよい。
前記補強用部材の外周側に定着させた前記定着部材を、被覆材で覆うことが好ましい。
前記補強用部材が鋼矢板でもよい。
前記補強用部材は、打設前に予め前記定着部材を挿通させる孔を形成しておくことが好ましい。
また、本発明によれば、上記補強工法により補強されたことを特徴とする補強構造物が提供される。
本発明によれば、補強用部材の外周側から定着部材を打ち込むため、補強用部材とコンクリート構造物との間に定着部材を施工するための広いスペースをあける必要がなく、補強後の構造物の余分な拡大を抑えることができる。したがって、狭い用地であっても施工することができる。
本発明の実施の形態の一例である補強構造物の正面図であり、(a)は橋脚のフーチングを補強した場合、(b)はラーメン高架橋の地中梁を補強した場合である。 図1のA部の拡大断面図であり、(a)は定着部を有する鉄筋を用いた場合、(b)は鉄筋の基端部を溶接した場合、(c)はU字形鉄筋を用いた場合である。 定着部を有する鉄筋の例を示す斜視図である。 図1のA部の異なる実施形態を示す拡大断面図である。 鋼矢板の例を示す断面図であり、(a)はU型鋼矢板、(b)はハット型鋼矢板を示す。 コンクリート構造物と鋼矢板との連結部の例を示す断面図であり、(a)はU型鋼矢板を用いた場合、(b)はハット型鋼矢板を用いた場合を示す。 コンクリート構造物と鋼矢板との連結部の異なる例を示す断面図であり、(a)はU型鋼矢板を用いた場合、(b)はハット型鋼矢板を用いた場合を示す。 コンクリート構造物と鋼矢板との連結部のさらに異なる例を示す断面図であり、(a)はU型鋼矢板を用いた場合、(b)はハット型鋼矢板を用いた場合を示す。 本発明の実施形態にかかる補強工法の施工手順例を説明する図である。
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
本発明は、例えば既設のフーチング、橋脚の躯体、ラーメン高架橋の地中梁等の、主に既設コンクリート構造物を補強する際に適用される。図1は、本発明の実施形態の例である補強構造物1を示すものであり、図1(a)は、補強するコンクリート構造物2が橋脚の既設フーチングの場合、図1(b)は、コンクリート構造物2がラーメン高架橋の地中梁の例である。
図1に示すように、補強を要するコンクリート構造物2の周囲の地盤内に、補強用部材として鋼矢板3が打設されている。鋼矢板3には、定着部材としての鉄筋を挿通するための孔が形成されており、鋼矢板3の外周側から挿入された鉄筋4がコンクリート構造物2内に打ち込まれ、鋼矢板3とコンクリート構造物2とが一体化されている。
図2は、図1のA部の拡大図であり、鉄筋4の鋼矢板3への定着方法の例を示す。図2(a)は、鉄筋4の片端に設けられた定着部11を、鋼矢板3の外周側の表面に当接させた例である。定着部11の形状は限定されず、例えば図3に示すように円形や矩形のプレート状の定着部11a、11bとすることができる。図2(b)は、鉄筋4の片端がL字状に屈曲し、屈曲した端部を鋼矢板3の外周側の表面に沿って当接させた例であり、当接させた鉄筋4の端部は、例えばフレア溶接等によって鋼矢板3に溶接される。図2(c)は、鉄筋4をU字形鉄筋とし、両端部をコンクリート構造物2内に打ち込んだ例である。このような方法により、鉄筋4が既設のコンクリート構造物2および鋼矢板3の両方に定着し、さらに鋼矢板3とコンクリート構造物2との隙間が充填材5で充填されることにより、コンクリート構造物2と鋼矢板3とが一体化される。充填材5としては、コンクリートやモルタル、その他の既存の充填材を用いることができる。また、鋼矢板3とコンクリート構造物2との隙間の間隔を適宜設けて鉄筋かごを配置し、隙間部分の増しフーチングとしての剛性を高めることもできる。
また、図4は、コンクリート構造物2と鋼矢板3との定着方法の異なる例を示すものである。鋼矢板3に形成された孔12を通してコンクリート構造物2にあと施工アンカー6が取り付けられ、鋼矢板3から挿通された鉄筋4とあと施工アンカー6とが、鋼矢板3とコンクリート構造物2との間で重ね合わせられ、これらが定着部材となる。鋼矢板3とコンクリート構造物2との間には、増しフーチングあるいは間詰コンクリートを設けるためのコンクリート7が打設される。本実施形態では、コンクリート構造物2側のあと施工アンカー6と鋼矢板3側の鉄筋4が、それぞれコンクリート7に定着することで、コンクリート構造物2と鋼矢板3とが一体化している。この場合にも、鋼矢板3に定着させる鉄筋4は、図2に示す例と同様、定着部11を設けたもの、一端をL字状に屈曲させたもの、U字形のもの等を用いることができる。鉄筋4の径や本数は、通常の構造計算上、増しフーチングあるいは間詰コンクリート部分に必要な断面を備えていればよい。なお、この場合も既存のコンクリート構造物2と鋼矢板3との間に鉄筋かごを配置し、増しフーチングの剛性を高めることもできるが、その必要が無い場合には、鉄筋かごを配置せず間詰コンクリートのみとし、フーチング幅の拡大を抑制することができる。
図1(a)、(b)において、点線で示したのは、従来の工法を用いた場合の鋼矢板の位置である。前記特許文献1等のように、鋼矢板に孔あき鋼板を溶接し鉄筋を固定する構造の場合、施工のために、増しフーチングの幅が1.2m~1.5m程度必要であった。これに対し、本発明によれば、図2に示す実施形態の場合は、鋼矢板3と既存のコンクリート構造物2との間隔が極めて小さい。また、図4に示す実施形態でも、鉄筋4とあと施工アンカー6との定着長を確保するために0.6m程度の間隔を設ければ十分な補強構造を構築できる。つまり、いずれの場合でも、従来よりも補強構造物1の幅の拡大を抑制することができる。
以上の実施形態において用いられる鋼矢板3の形状は限定されず、市販されている様々な鋼矢板が適用可能である。図5は代表的な鋼矢板の例であり、例えば図5(a)に示すようにウェブ13およびフランジ14を有するU型鋼矢板3aや、図5(b)に示すようにウェブ13、フランジ14、およびアーム15を有するハット型鋼矢板3bが用いられる。
鋼矢板3に対する鉄筋4の定着箇所は、基本的には、図6(a)(U型鋼矢板の場合)、図6(b)(ハット型鋼矢板の場合)に示すように、鋼矢板3a、3bいずれの場合にもウェブ13の位置とするが、ウェブ13だけでは鉄筋量が不足する場合は、フランジ14やアーム15に定着させてもよい。また、腐食環境が厳しい場合は、図6に示すように、防食のために、鋼矢板3a、3bの外側を覆う被覆材8を打設することが好ましい。ただし、図7(a)に示すようにU型鋼矢板3aの窪み部分のウェブ13のみに鉄筋4を定着させる場合や、図7(b)に示すようにハット型鋼矢板3bのウェブ13を窪み部分として鉄筋4を定着させる場合には、被覆材8は、窪み部分の鉄筋4を覆う範囲のみに設けてもよく、この場合には被覆材8によって補強構造物1の幅が広がるのを防ぐことができる。被覆材8は、コンクリートやモルタル、あるいはウレタン系塗装材等、防食効果があるものが用いられる。
図8は、鋼矢板3とコンクリート構造物2との間にコンクリート7を打設して増しフーチングあるいは間詰コンクリートを設ける場合の例を示す。鋼矢板3a、3bに対する鉄筋4の定着箇所および被覆材8は、図6の実施形態と同様である。
以下、本発明の実施形態にかかる補強構造の施工手順の例について、図9を参照して説明する。
先ず、補強を要する橋脚の既設フーチングやラーメン高架橋の地中梁等のコンクリート構造物2の周囲の地盤に、鋼矢板3を打ち込み、鋼矢板3とコンクリート構造物2との隙間21を掘削し、土留めする(図9(a))。鋼矢板3の打ち込みは、一般に行われている圧入工法等によって行われる。鋼矢板3には、鉄筋4やあと施工アンカー6等を挿通するための孔12が、打設前に予め形成されていることが好ましい。
次に、掘削した部分の底部に基礎コンクリート22を打設する(図9(b))。
その後、鋼矢板3の外周側を掘削し、鉄筋4やあと施工アンカー6を打設するためのスペース23を確保する(図9(c))。
次に、鋼矢板3の外周側の孔12から、コンクリート構造物2の削孔を行い、鉄筋4を挿入し定着させる(図9(d))。鉄筋4を間詰コンクリートまたは増しフーチング内に定着させる場合(図4参照)は、コンクリート構造物2を削孔した後、鋼矢板3の外周側の孔12からあと施工アンカー6を取り付け、さらに鉄筋4を挿通してあと施工アンカー6に添わせて配置し、重ね継手を形成する。
その後、コンクリート構造物2と鋼矢板3との隙間に充填材を充填する(図9(e))。間詰コンクリートまたは増しフーチングを設ける場合には、コンクリート構造物2と鋼矢板3との間隔を適宜確保し、コンクリートを打設する。増しフーチングを設ける場合、必要に応じて鉄筋かごを配置してからコンクリートを打設する。
その後、鋼矢板3上端部の不要な部分を切断し、掘削した部分の埋め戻しを行って、補強構造物1が完成する(図9(f))。
以上のように、本発明によれば、鋼矢板3の外周側の孔12から鉄筋4やあと施工アンカー6を挿入するため、鋼矢板3とコンクリート構造物2との間にアンカー等を挿入するためのスペースを設ける必要がない。そのため、鋼矢板3とコンクリート構造物2との間隔を小さくすることが可能となり、補強構造物1の幅拡大を抑制することができる。したがって、用地が狭い場合であっても、既設のコンクリート構造物2の補強を行うことができる。また、高価な孔あき鋼板ジベルが不要となるため、コストを抑制することもできる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では既設のコンクリート構造物に対する補強を例として説明したが、本発明は新設の構造物であっても適用できる。
また、コンクリート構造物2と一体化させる補強用部材は、平坦面を有する部材であることが好ましいが、上記実施形態で述べたような鋼矢板3には限らず、例えば鋼管矢板等であっても同様の補強方法が実施可能である。
本発明は、鉄道橋や道路橋の橋脚のフーチングや、ラーメン高架橋の地中梁等、コンクリート構造物の補強方法として有用である。
1 補強構造物
2 コンクリート構造物
3 鋼矢板
3a U型鋼矢板
3b ハット型鋼矢板
4 鉄筋
5 充填材
6 あと施工アンカー
7 コンクリート
8 被覆材
11 定着部
12 孔
13 ウェブ
14 フランジ
15 アーム

Claims (8)

  1. コンクリート構造物を補強する工法であって、
    前記コンクリート構造物の外周に、補強用部材を打設し、
    前記補強用部材の外周側から、前記補強用部材と前記コンクリート構造物の両方に定着して両者を一体化させる定着部材を打ち込み、
    前記補強用部材と前記コンクリート構造物との隙間を充填材で充填することを特徴とする、コンクリート構造物の補強工法。
  2. 前記定着部材が鉄筋であり、前記鉄筋の一方の端部を前記コンクリート構造物に打ち込み、前記鉄筋の他端を前記補強用部材の外周面に定着させることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート構造物の補強工法。
  3. 前記定着部材が、前記コンクリート構造物に打ち込むあと施工アンカーと、前記補強用部材の外周面に一端を定着させる鉄筋であり、前記あと施工アンカーと前記鉄筋とを、前記隙間内で重ね合わせることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート構造物の補強工法。
  4. 前記充填材がコンクリートであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強工法。
  5. 前記補強用部材の外周側に定着させた前記定着部材を、被覆材で覆うことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強工法。
  6. 前記補強用部材が鋼矢板であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強工法。
  7. 前記補強用部材は、打設前に予め前記定着部材を挿通させる孔を形成しておくことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強工法。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の補強工法により補強されたことを特徴とする、補強構造物。
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