JP2022148896A - 車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料カット自然復帰時のしゃくりの発生を抑制した車両の制御装置を提供する。【解決手段】火花点火式のエンジン、変速機、エンジンのトルクを変速機に伝達するロックアップクラッチ付きのトルクコンバータ、及びエンジンにより駆動される補器、を有した車両に適用され、ロックアップクラッチをスリップさせる減速フレックス制御を実行しつつエンジンの燃料カット制御を実行し、燃料カット自然復帰制御の実行の際には、減速フレックス制御を継続しつつ、エンジンの点火時期の遅角制御によるトルクダウン制御を実行する車両の制御装置において、補器の負荷が所定値以上であるか否かを判定する判定部と、判定部により肯定判定された場合には、判定部により否定判定された場合よりも、トルクダウン制御実行中でエンジンのトルクの増大速度が速くなるように、エンジンの点火時期を制御する点火時期制御部と、を備えた車両の制御装置。【選択図】図3

Description

本発明は、車両の制御装置に関する。
車両に搭載されたエンジンの燃料カットの際に、ロックアップクラッチをスリップさせる減速フレックス制御を行う技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
特開2004-347004号公報
減速フレックス制御と燃料カット制御が実行された状態で、エンジンにより駆動される補機の負荷が大きい場合には、燃料カット自然復帰時にしゃくりが発生するおそれがある。
そこで本発明は、燃料カット自然復帰時のしゃくりの発生を抑制した車両の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的は、火花点火式のエンジン、変速機、前記エンジンのトルクを前記変速機に伝達するロックアップクラッチ付きのトルクコンバータ、及び前記エンジンにより駆動される補器、を有した車両に適用され、前記ロックアップクラッチをスリップさせる減速フレックス制御を実行しつつ前記エンジンの燃料カット制御を実行し、燃料カット自然復帰制御の実行の際には、前記減速フレックス制御を継続しつつ、前記エンジンの点火時期の遅角制御によるトルクダウン制御を実行する車両の制御装置において、前記補器の負荷が所定値以上であるか否かを判定する判定部と、前記判定部により肯定判定がなされた場合には、前記判定部により否定判定がなされた場合よりも、前記トルクダウン制御実行中で前記エンジンのトルクの増大速度が速くなるように、前記エンジンの点火時期を制御する点火時期制御部と、を備えた車両の制御装置によって達成できる。
本発明によれば、燃料カット自然復帰時のしゃくりの発生を抑制した車両の制御装置を提供できる。
図1は、エンジンの概略構成図である。 図2は、車両の概略構成図である。 図3は、ECUが実行するF/Cカット自然復帰制御の一例を示したフローチャートである。 図4は、F/Cカット自然復帰時にトルクダウン制御Bが実行される場合のタイミングチャートの一例である。 図5は、F/Cカット自然復帰時にトルクダウン制御Aが実行される場合のタイミングチャートの一例である。
[エンジンの概略構成]
図1は、エンジン20の概略構成図である。エンジン20は、後述する車両1に搭載されており、ガソリンによって駆動する火花点火式の4気筒エンジンであるが、気筒数はこれに限定されない。エンジン20は、ピストン24が収納されたシリンダブロック21上に設置されたシリンダヘッド22内の燃焼室23の内で混合気を燃焼させて、ピストン24を往復動させる。ピストン24の往復動は、クランクシャフト26の回転運動に変換される。
エンジン20のシリンダヘッド22には、吸気ポートを開閉する吸気弁Viと、排気ポートを開閉する排気弁Veとが、気筒ごとに設けられている。シリンダヘッド22の頂部には、燃焼室23内の混合気に点火するための点火プラグ27が気筒ごとに取り付けられている。
各気筒の吸気ポートは気筒毎の枝管を介してサージタンク18に接続されている。サージタンク18の上流側には吸気管10が接続されており、吸気管10の上流端にはエアクリーナ19が設けられている。そして吸気管10には、上流側から順に、吸入空気量を検出するためのエアフローメータ15と、電子制御式のスロットルバルブ13とが設けられている。
また、各気筒の吸気ポートには、燃料を吸気ポート内に噴射する燃料噴射弁12が設置されている。燃料噴射弁12から噴射された燃料は吸入空気と混合されて混合気をなし、この混合気が吸気弁Viの開弁時に燃焼室23に吸入され、ピストン24で圧縮され、点火プラグ27で点火燃焼させられる。尚、吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射弁12の代わりに、気筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁を設けてもよいし、吸気ポート内及び気筒内にそれぞれ燃料を噴射する燃料噴射弁の双方を備えていてもよい。
各気筒の排気ポートは気筒毎の枝管を介して排気管30に接続されている。排気管30には、三元触媒31が設けられている。三元触媒31は、酸素吸蔵能を有し、NOx、HCおよびCOを浄化する。三元触媒31の上流側には、排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサ33が設置されている。
ECU(Electronic Control Unit)50は、後述する車両1に搭載されている。ECU50は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びメモリ等を備える。ECU50は、ROMやメモリに記憶されたプログラムを実行することによりエンジン20を制御する。また、ECU50は、車両1に搭載された各装置を制御する車両1の制御装置であって、後述する燃料カット自然復帰制御を実行する。燃料カット自然復帰制御は、ECU50のCPU、ROM、及びRAMにより機能的に実現される、判定部及び点火時期制御部により実現される。詳しくは後述する。
ECU50には、上述の点火プラグ27、スロットルバルブ13及び燃料噴射弁12等が電気的に接続されている。またECU50には、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ11、スロットルバルブ13のスロットル開度を検出するスロットル開度センサ14、吸入空気量を検出するエアフローメータ15、車両1の速度を検出する車速センサ16、排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ33、クランクシャフト26のクランク角を検出するクランク角センサ25、エンジン20の冷却水の温度を検出する水温センサ29や、その他の各種センサが電気的に接続されている。ECU50は、各種センサの検出値等に基づいて、所望の出力が得られるように、点火プラグ27、スロットルバルブ13、燃料噴射弁12等を制御し、点火時期、吸入空気量、燃料噴射量等を制御する。
[車両の概略構成]
図2は、車両1の概略構成図である。車両1は、上述したエンジン20やECU50に加え、油圧制御装置41、自動変速機42、トルクコンバータ44、デファレンシャルギヤ45、補機用ベルト46、A/C用コンプレッサ47、電磁クラッチ48、発電機49、及び駆動輪6を備える。
自動変速機42は、エンジン20と駆動輪6との動力伝達経路上に配置される。具体的には、自動変速機42は、入力シャフト43aがトルクコンバータ44を介してエンジン20のクランクシャフト26に接続され、出力シャフト43bはデファレンシャルギヤ45を介して左右の駆動輪6に接続されている。自動変速機42は、エンジン20のクランクシャフト26の回転速度を変速して駆動輪6に伝達する。
自動変速機42は、ECU50により制御される油圧制御装置41から供給される油圧の作用によって、複数の係合装置の係合と解放を切り替えることにより、複数のギヤ段のうち何れかのギヤ段を形成する有段式の自動変速機である。
トルクコンバータ44は、エンジン20のクランクシャフト26と一体的に回転するインペラ441、及び自動変速機42の入力シャフト43aと一体的に回転するタービン442を有した流体式伝動装置である。トルクコンバータ44の内部は作動流体(オイル)で満たされている。トルクコンバータ44には、エンジン20から自動変速機42への動力伝達を制御するロックアップクラッチ(以下、LUクラッチと称する)44aが設けられている。LUクラッチ44aは、エンジン20のクランクシャフト26と自動変速機42の入力シャフト43aとの間に設けられた摩擦係合式のクラッチ装置である。LUクラッチ44aは、ECU50により制御される油圧制御装置41から供給される油圧の作用によって、係合状態、スリップ状態、又は解放状態に制御される。LUクラッチ44aが係合状態となると、インペラ441及びタービン442は一体的に回転する。LUクラッチ44aがスリップ状態となると、インペラ441及びタービン442は回転差を有して互いに回転する。LUクラッチ44aが解放状態となると、インペラ441からの動力はタービン442には伝達されない状態となる。
エンジン20のクランクシャフト26の回転は、補機用ベルト46を介して、エアコンディショナ(「A/C」)の冷媒を圧縮するA/C用コンプレッサ47に伝達する。クランクシャフト26とA/C用コンプレッサ47との駆動連結は、電磁クラッチ48によって選択的に断接することで、A/C用コンプレッサ47の作動/停止が切り替えられる。
補機用ベルト46は、発電機49にも掛け渡されており、補機用ベルト46を介してエンジン20からの駆動力が発電機49に伝達されることで発電が行われる。補機用ベルト46には、上述したA/C用コンプレッサ47及び発電機49以外にも図示しない各種補機類が掛け渡されていてもよい。A/C用コンプレッサ47及び発電機49は、エンジン20によって駆動される補機の一例である。
ECU50は、車速センサ16にて検出された車速、及びアクセル開度センサ11にて検出されたアクセル開度に基づいて、エンジン20のトルクや自動変速機42の変速段、LUクラッチ44aの状態を制御する。また、ECU30は、エアコンディショナ制御の一環として、A/C用コンプレッサ47の作動制御を実行する。
[燃料カット制御と減速フレックス制御]
減速中にLUクラッチ44aがスリップ状態になると、駆動輪6からエンジン20側へ動力が伝達され、エンジン20を稼動しなくてもエンジン20の回転速度の低下が抑制される。従って、燃料カット(以下、F/Cカットと称する)制御の実行に際して、LUクラッチ44aをスリップ状態すれば、F/Cカット領域を拡大でき燃費が向上する。本実施例では、アクセル開度センサ11によりアクセル開度がゼロであることが検出されて車両1が減速されると、ECU50は、エンジン20のF/Cカット制御を実行しつつ、LUクラッチ44aをスリップさせる減速フレックス制御を実行する。尚、燃料カット制御及び減速フレックス制御の実行中にエンジン20の回転速度がF/Cカット復帰回転速度R以下であって車速が所定の下限速度以下になると、エンジン20のストールを防止するために、アクセル開度に依らないF/Cカット自然復帰制御が実行され、アイドル運転状態に復帰する。燃料カット制御及び減速フレックス制御の実行中にアクセル開度がゼロよりも大きくなった場合に、F/Cカット強制復帰制御が実行され、アクセル開度に応じた運転状態に復帰する。
[F/Cカット復帰時のトルクダウン制御]
F/Cカット制御及び減速フレックス制御の実行中にF/Cカット自然復帰条件が成立した場合、車両1の減速感を確保するために、減速フレックス制御を継続したままF/Cカット自然復帰制御を実行することが考えられる。この場合、F/Cカット自然復帰制御により、駆動輪6からエンジン20に動力が伝達される被駆動状態から、エンジン20から駆動輪6に動力が伝達される駆動状態に移行する。この被駆動状態から駆動状態に移行する間には、動力伝達系におけるギヤのバックラッシュによりエンジン20の動力が駆動輪6にまで伝達されない不感状態が介在する。ここで、この不感状態からバックラッシュが詰まって駆動状態に移行する際にエンジン20のトルクが急激に増大すると、駆動輪6側のギヤからエンジン20側のギヤへの反力が増大して、クランクシャフト26や入力シャフト43aにねじれが生じ、その揺り返しが発生するおそれがある。この際にクランクシャフト26や入力シャフト43aのねじれや揺り返しが駆動輪6に伝達され、車両1の前後方向での振動である「しゃくり」として発生するおそれがある。この結果、アクセルペダルが操作されていないのにも関わらず車両1の前後Gが変動して、運転者に違和感を与えるおそれがある。
ここで、F/Cカット自然復帰直前でのエンジン20に対する補機の負荷が大きいほど、エンジン20の減速度は大きいため、F/Cカット自然復帰時では被駆動状態から駆動状態へ移行する間の不感状態は長くなる。従って補器の負荷が大きいほど、このようなしゃくりが発生しやすい状況となる。本実施例では、F/Cカット自然復帰時に点火時期の遅角制御によるトルクダウン制御Aを実行することにより、補機の負荷が大きい場合であってもしゃくりの発生を抑制する。
[F/Cカット自然復帰制御]
図3は、ECU50が実行するF/Cカット自然復帰制御の一例を示したフローチャートである。本制御は、イグニッションがオンの間は繰り返し実行される。ECU50は、F/Cカット制御及び減速フレックス制御の実行中でありアクセル開度がゼロであるか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1でNoの場合には、本制御は終了する。例えば、F/Cカット制御及び減速フレックス制御の実行中にアクセルペダルが運転者により踏み込まれた場合には、上述したようにF/Cカット強制復帰制御が実行される。
ステップS1でYesの場合には、ECU50はエンジン20の回転速度がF/Cカットの復帰回転速度R以下であるか否かを判定する(ステップS2)。復帰回転速度Rは、エンジン20がストールしない程度の回転速度に設定されている。ステップS2でNoの場合には、本制御は終了する。即ち、この場合にはF/Cカット制御及び減速フレックス制御が継続される。
ステップS2でYesの場合には、ECU50は補機の負荷が閾値αより大きいか否かを判定する(ステップS3)。ECU50は、補機の負荷を計測した実験データに基づいて、エンジン20の回転速度等の運転状態と補機の作動状態と補機の負荷との関係が規定されたマップを参照して、補機の負荷を算出する。閾値αは、詳しくは後述するが、補器の負荷が閾値α以上の場合に燃料カット自然復帰時、後述するトルクダウン制御Aを実行しないと、しゃくりが発生するおそれがある値に設定されている。ステップS3の処理は、判定部が実行する処理の一例である。
本実施例では、A/C用コンプレッサ47が駆動中である場合には、補機の負荷が閾値αよりも大きいと判定され、A/C用コンプレッサ47が停止中の場合には、補機の負荷が閾値α以下であると判定されるが、これに限定されない。例えば、A/C用コンプレッサ47及び発電機49の双方が駆動中の場合には、補機の負荷が閾値αよりも大きく、A/C用コンプレッサ47及び発電機49の少なくとも一方が停止中の場合には、補機の負荷が閾値α以下であると判定してもよい。
ステップS3でNoの場合、即ち補機の負荷が比較的小さい場合、ECU50は車速が下限車速Vb以下となったか否かを判定する(ステップS4)。下限車速Vbは、補機の負荷が比較的小さい状態でF/Cカット制御及び減速フレックス制御を継続可能な車速の下限値である。下限車速Vbは、例えば20km/hであるがこれに限定されない。ステップS4でNoの場合には、本制御は終了する。
ステップS4でYesの場合、ECU50は、LUクラッチ44aを解放し、詳しくは後述するが点火時期の遅角制御によるトルクダウン制御Bを実行してF/Cカット自然復帰制御を実行する(ステップS5)。即ち、減速フレックス制御を停止してトルクダウン制御Bが実行される。上述したように、補機の負荷が閾値α未満の場合に減速フレックス制御を継続したままF/Cカット自然復帰制御を実行すると、自然復帰時でのエンジン20のトルクが駆動輪6に伝達されて車両1が加速し、運転者に違和感を与えるおそれがあるからである。ステップS5は、点火時期制御部が実行する処理の一例である。その後にECU50は、トルクダウン制御Bを停止して、エンジン20をアイドル運転状態に制御する(ステップS12)。
ステップS3でYesの場合、ECU50は車速が下限車速Va以下であるか否かを判定する(ステップS6)。下限車速Vaは、補機の負荷が比較的大きい状態でF/Cカット制御と減速フレックス制御を継続することが可能な車速の下限値である。下限車速Vaは、下限車速Vbよりも速い速度であり、例えば30km/hであるがこれに限定されない。補機の負荷が大きい場合の方が、補機の負荷が小さい場合よりも、エンジン20に作用する負トルクが大きく車速は短期間で低下しやすいため、下限車速Vaは下限車速Vbよりも速い速度に設定されている。ステップS6でNoの場合には、本制御は終了する。
ステップS6でYesの場合、ECU50はF/Cカット自然復帰の際に減速フレックス制御の継続と後述するトルクダウン制御Aを実行するための実行条件が成立したか否かを判定する(ステップS7)。実行条件は、例えば、アクセル開度がゼロであり、ギヤ段が所定の範囲内にあり、車速が下限車速Vbより大きく、エンジン20の冷却水の温度が暖機完了温度以上であり、油温が減速フレックス制御を継続可能な温度以上であることである。ステップS7でNoの場合には、ECU50は上述したステップS5の処理を実行する。
ステップS7でYesの場合には、ECU50は減速フレックス制御を継続し、点火時期の進角制御によるトルクダウン制御Aを実行してF/Cカット自然復帰制御を実行する(ステップS8)。減速フレックス制御が継続されるため、F/Cカット自然復帰時においても車両1の減速感を継続して確保することができる。ステップS8は、点火時期制御部が実行する処理の一例である。
次にECU50は、上述したステップS7と同様の実行条件が成立しているか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9でYesの場合、減速フレックス制御を継続し、後述する減速感を継続して確保するためのトルク抑制制御を実行する(ステップS10)。その後にECU50は、エンジン20をアイドル運転状態に制御して、エンジン20を正常燃焼状態に復帰させる(ステップS12)
ステップS9でNoの場合、ECU50はLUクラッチ44aを解放して、トルクを徐変増大するように制御する(ステップS11)。その後にECU50は、ステップS12の処理を実行する。
[トルクダウン制御B]
次に、F/Cカット自然復帰時に実行されるトルクダウン制御Bによる点火時期等の推移について説明する。図4は、F/Cカット自然復帰時にトルクダウン制御Bが実行される場合のタイミングチャートの一例である。図4には、吸入空気量、燃料噴射量、車速、エンジン回転速度、エンジンのトルク、及び点火時期(BTDC(Before Top Dead Center))を示している。尚、吸入空気量は、F/Cカット制御中、F/Cカット自然復帰時、F/Cカット自然復帰後の何れの状態においても、アクセル開度がゼロである限り、アイドル運転時での吸入空気量に保たれる。また、点火時期が遅角側であるほどエンジン20のトルクは低下し、点火時期が進角側であるほどエンジン20のトルクは増大する。
F/Cカット制御の実行中は、エンジン20のフリクショントルクや吸気抵抗により、エンジン20のトルクは負トルクとなっている。F/Cカット制御の実行中に、時刻t1でエンジン20の回転速度が復帰回転速度R以下であって車速が下限車速Vb以下になると、F/Cカット自然復帰制御が実行され、LUクラッチ44aが解放されてトルクダウン制御Bが実行される。
トルクダウン制御Bは、燃料噴射量をリッチ空燃比(理論空燃比よりも小さい空燃比)となる噴射量(以下、リッチ噴射量と称する)に制御しつつ、点火時期をBTDCよりも遅角させてエンジン20のトルクを低下させる制御である。トルクダウン制御Bは、時刻t1から後述する時刻t3までの期間に行われる。
時刻t1で、ECU50は燃料噴射量をゼロからリッチ噴射量に制御し、点火時期を遅角側の点火時期P1に制御する。これにより、エンジン20のトルクは、トルクダウン制御Bの開始直前でのトルクT0からトルクT1に増大する。点火時期P1は、ギヤ段に関わらずに、エンジン20の回転速度が遅いほど、遅角側となるように制御される。換言すれば、負トルクであるトルクT1は、ギヤ段に関わらずに、エンジン20の回転速度が遅いほど、ゼロから遠い値に制御される。
時刻t1の後、ECU50は点火時期を点火時期P1から所定の進角速度で進角させる。点火時期が点火時期P2となってエンジン20のトルクがトルクT2となった時刻t2で、ECU50は点火時期を点火時期P2から所定の進角量だけ進角させた点火時期P3に制御する。これにより、エンジン20のトルクはトルクT2からトルクT3にまで増大する。時刻t1から時刻t2までの期間は、エンジン20の回転速度が遅いほど長く設定される。また、時刻t1から時刻t2までの期間では、エンジン20の燃焼状態は不安定な状態にあるが、時刻t2で点火時期が点火時期P2から点火時期P3に制御されることにより、エンジン20の燃焼状態は安定する。
時刻t2の後、ECU50は点火時期を点火時期P3から所定の新角速度で進角させる。点火時期が点火時期P4となってエンジン20のトルクが正トルクであるトルクT4となった時刻t3で、ECU50は燃料噴射量を、空燃比が理論空燃比となる噴射量(以下、ストイキ噴射量と称する)に制御する。
時刻t3の後、ECU50は点火時期を点火時期P4から徐々に進角させて、時刻t4で点火時期をアイドル運転時に要求される点火時期PIに制御する。尚、時刻t1でLUクラッチ44aは解放されるため、時刻t1から車速は略一定に維持され、エンジン20は駆動輪6から受ける動力が低減した状態で燃焼が開始されるため、エンジン20の回転速度は一時的に上昇するが、その後に安定する。
[トルクダウン制御A]
F/Cカット自然復帰時に実行されるトルクダウン制御Aでの点火時期等の推移について説明する。図5は、F/Cカット自然復帰時にトルクダウン制御Aが実行される場合のタイミングチャートの一例である。図5は、図4に対応している。
F/Cカット制御の実行中に、時刻t11でエンジン20の回転速度が復帰回転速度R以下であって車速が下限車速Va以下になると、減速フレックス制御を継続しつつF/Cカット自然復帰制御が実行され、トルクダウン制御Aが実行される。減速フレックス制御が継続されているため、LUクラッチ44aはスリップ状態が維持されている。また、上述したようにトルクダウン制御Aが実行される場合には、補機の負荷が閾値αよりも大きい場合であるため、補機の負荷が閾値α未満の場合よりも、エンジン20の負トルクの大きさは大きい状態となっている。従って、図5に示した時刻t11でのトルクダウン制御Aの開始直前の負トルクであるトルクT10の絶対値は、図4に示した時刻t1でのトルクダウン制御Bの開始直前の負トルクであるトルクT1の絶対値よりも大きい。
トルクダウン制御Aは、トルクダウン制御Bと同様に、燃料噴射量をリッチ噴射量に制御しつつ点火時期をBTDCよりも遅角させてエンジン20のトルクを低下させる制御である。しかしながら、トルクダウン制御Aは、種々の点でトルクダウン制御Bとは異なっている。以下に、トルクダウン制御Bにより制御される点火時期やトルクと対比させながらトルクダウン制御Aについて説明する。
時刻t11で、ECU50は燃料噴射量をゼロからリッチ噴射量に制御し、点火時期を遅角側の点火時期P11に制御する。これによりエンジン20のトルクは、トルクダウン制御Aの開始直前のトルクT10からトルクT11に増大する。ECU50のメモリに、エンジン20の回転速度と点火時期P11との関係を規定したマップが記憶されている。ECU50は、このマップを参照して点火時期を点火時期P1に制御する。このマップでは、点火時期P11を、ギヤ段に関わらずに、エンジン20の回転速度が遅いほど、遅角側となるように規定している。このマップでは、点火時期P11は、トルクダウン制御Bでの点火時期P1よりも遅角側に規定されている。このため、トルクT11は、トルクダウン制御BでのトルクT1よりも小さい。
時刻t11の後、ECU50は点火時期を点火時期P11から所定の進角速度で進角させる。点火時期が点火時期P12となってエンジン20のトルクがトルクT12となった時刻t12で、ECU50は点火時期を点火時期P12から所定の進角量だけ進角させた点火時期P13に制御する。これにより、エンジン20のトルクはトルクT12からトルクT13にまで増大する。
時刻t11から時刻t12までの期間は、エンジン20の回転速度が遅いほど長く制御され、トルクダウン制御Bでの時刻t1から時刻t2までの期間よりも短く設定されている。また、点火時期P11から点火時期P12までの進角速度は、点火時期P1から点火時期P2までの進角速度よりも遅く制御される。換言すれば、トルクT11からトルクT12までのトルクの増大速度は、トルクT1からトルクT2までのトルクの増大速度よりも遅くなるように制御される。尚、図5の例では、時刻t1から時刻t2まで点火時期が点火時期P11から点火時期P12にまで進角されるが、この期間で点火時期を点火時期P11に維持してもよい。
点火時期P12から点火時期P13までの進角量は、トルクダウン制御Bでの点火時期P2から点火時期P3までの進角量よりも大きく制御される。換言すれば、トルクT12からトルクT13までのトルクの増大量は、トルクT2からトルクT3までのトルクの増大量よりも大きい。
時刻t12の後、ECU50は点火時期を点火時期P13から所定の進角速度で進角させる。点火時期がBTDCよりも僅かに遅角側の点火時期P14となってエンジン20のトルクがトルクT14となった時刻t13で、ECU50は燃料噴射量をストイキ噴射量に制御する。即ち、トルクダウン制御Aが停止される。ここで、点火時期P13から点火時期P14までの進角速度は、点火時期P3から点火時期P4までの進角速度よりも遅くなるように制御される。
その後にECU50は、時刻t13から時刻t14まで点火時期を点火時期P14に維持することにより、ステップS10でのトルク抑制制御を実行する。これにより車両1の減速感を維持することができる。ECU50は、時刻t14からECU50は点火時期を徐々に進角させ、時刻t15で点火時期をアイドル運転時に要求される点火時期IPに制御する。
トルクダウン制御Aが実行される時刻t11から時刻t13までの期間は、トルクダウン制御Bが実行される時刻t1から時刻t3までの期間より短く制御される。また、トルクダウン制御Aでの点火時期の初期値に相当する点火時期P11は、トルクダウン制御Bでの点火時期の初期値に相当する点火時期P1よりも遅角側である。また、トルクダウン制御Aでの点火時期P11から点火時期P14までの進角速度は、トルクダウン制御Bでの点火時期P1から点火時期P4までの進角速度よりも大きい。換言すれば、トルクダウン制御AでのトルクT11からトルクT14までのトルクの増大速度は、トルクダウン制御BでのトルクT1からトルクT4までのトルクの増大速度よりも速い。以上のように、トルクダウン制御Aの実行期間はトルクダウン制御Bよりも短く、トルクダウン制御Aのトルクの初期値はトルクダウン制御Bよりも低く、トルクダウン制御Aでのトルクの増大速度はトルクダウン制御Bよりも速い。
例えば、補機の負荷が比較的大きい状態であって、F/Cカット自然復帰時に減速フレックス制御を継続しつつトルクダウン制御Bを実行すると、以下のようにしてしゃくりが発生する可能性がある。この場合、トルクダウン制御Bの開始時には、図5に示したトルクT10と図4に示したトルクダウン制御BによるトルクT1との差が大きい。このため、トルクダウン制御Bの開始直後にエンジン20側から駆動輪6側へ伝達されるトルクが急激に増大し、車両1に振動が生じるおそれがある。また、トルクダウン制御Bは、比較的長い間にわたって実行され、且つトルクの増大速度も比較的遅く、緩やかに増大している。このため、トルクダウン制御Bの実行中に、クランクシャフト26や入力シャフト43aのねじれやその揺り返しが生じやすい状態にある。以上のようにしてしゃくりが発生するおそれがある。
本実施例では、トルクダウン制御Aを実行することにより、以下のようにしてしゃくりの発生を抑制できる。図5に示したように、トルクダウン制御Aの開始時では、トルクT10とトルクT11との差は小さい。このため、トルクダウン制御Aの開始直後であっても、エンジン20側から駆動輪6側へ伝達されるトルクの急激な増大が抑制され、車両1が振動することが抑制される。また、トルクダウン制御Aは比較的短い期間にわたって実行され、且つトルクT11からトルクT14までのトルクの増大速度も比較的速い。このため、トルクダウン制御Aの実行中に、クランクシャフト26や入力シャフト43aにねじりやその揺り返しが生じる前に早期にエンジン20のトルクを増大させて、このようなねじりや揺り返しを抑制することができる。以上のようにしてしゃくりの発生を抑制することができる。
上記実施例では、トルクダウン制御Aの実行中において、トルクの増大速度を段階的に、即ち点火時期を段階的に進角させたが、これに限定されず、徐々に進角させてもよい。
上記実施例では、F/Cカット自然復帰時に補機の負荷が閾値αより大きい場合には減速フレックス制御を継続し、補機の負荷が閾値α未満の場合には減速フレックス制御を停止したがこれに限定されない。例えば、F/Cカット自然復帰時に補機の負荷に関わらずに減速フレックス制御を継続し、トルクダウン制御実行中でのエンジン20のトルクの増大速度、即ち点火時期の進角速度を、補機の負荷が閾値αより大きい場合の方が閾値α未満の場合よりも速くなるように制御してもよい。これにより、しゃくりが発生しやすい補機の負荷が大きい場合に早期にエンジン20のトルクを増大させて上述した不感状態の期間を短くすることができ、これによりしゃくりの発生を抑制できる。
また、F/Cカット自然復帰時に補機の負荷に関わらずに減速フレックス制御を継続し、トルクダウン制御のエンジン20のトルクの初期値を、補機の負荷が閾値αより大きい場合の方が閾値α未満の場合よりも小さくなるように制御してもよい。これにより、トルクダウン制御の開始時での、エンジン20側から駆動輪6側へ伝達されるトルクの急激な増大を抑制することができ、しゃくりの発生を抑制できる。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
1 車両
20 エンジン
42 自動変速機
44 トルクコンバータ
44a ロックアップクラッチ
47 A/C用コンプレッサ(補機)
50 ECU(車両の制御装置)

Claims (1)

  1. 火花点火式のエンジン、変速機、前記エンジンのトルクを前記変速機に伝達するロックアップクラッチ付きのトルクコンバータ、及び前記エンジンにより駆動される補器、を有した車両に適用され、
    前記ロックアップクラッチをスリップさせる減速フレックス制御を実行しつつ前記エンジンの燃料カット制御を実行し、燃料カット自然復帰制御の実行の際には、前記減速フレックス制御を継続しつつ、前記エンジンの点火時期の遅角制御によるトルクダウン制御を実行する車両の制御装置において、
    前記補器の負荷が所定値以上であるか否かを判定する判定部と、
    前記判定部により肯定判定がなされた場合には、前記判定部により否定判定がなされた場合よりも、前記トルクダウン制御実行中で前記エンジンのトルクの増大速度が速くなるように、前記エンジンの点火時期を制御する点火時期制御部と、を備えた車両の制御装置。
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