JP2022146526A - 核酸抽出方法、及び核酸抽出装置 - Google Patents

核酸抽出方法、及び核酸抽出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】核酸と不純物を確実に分離できる核酸抽出方法を提供する。【解決手段】本発明の核酸抽出方法は、核酸を抽出可能な状態にされた検体を収容するフィルタ付きの容器にアルコール溶液を注入すると共に、前記容器を加圧して、前記フィルタに吸着する核酸以外の不純物を除去し、前記アルコール溶液を前記容器から排出する第一洗浄処理を少なくとも1回行う第一洗浄工程と、前記第一洗浄工程において最後に行われた前記第一洗浄処理で注入された前記アルコール溶液よりも高濃度の高濃度アルコール溶液を前記容器に注入し、前記容器内を該高濃度アルコール溶液に置換して、該高濃度アルコール溶液を排出する置換処理を行う第二洗浄側前処理工程と、前記第二洗浄側前処理工程の後に前記高濃度アルコール溶液を乾燥させる乾燥処理を行う第二洗浄側後処理工程と、前記フィルタに付着した前記核酸を回収する核酸回収工程と、を備える。【選択図】 図9

Description

本発明は、加圧により核酸を抽出する核酸抽出方法、及び核酸抽出装置に関する。
検体から核酸を抽出する核酸抽出方法として、抽出カラムを遠心して核酸を抽出する方法(例えば、特許文献1参照、以下、遠心抽出方法と呼ぶ。)や、抽出カラムを加圧して核酸を抽出する方法(例えば、特許文献2参照、以下、加圧抽出方法と呼ぶ。)などが知られている。
特開2009-131264号公報 特開2015-139398号公報
しかしながら、特許文献1に記載の遠心抽出方法では、遠心分離機が必須となり、装置の大型化・複雑化が避けられない。また、その装置は高価であるため、抽出コスト低減には限界があった。
また、qPCR(quantitative PCR)法にRNA(ribonucleic acid)を適用する場合、逆転写酵素を用いてRNAからDNA(deoxyribonucleic acid)を作成する必要がある。しかしながら、特許文献2に記載の加圧抽出方法により抽出したRNAを含むRNA精製物には、逆転写酵素の働きを阻害する阻害物質が含まれている場合がある。阻害物質として、加圧抽出方法で用いられる洗浄液の塩や界面活性剤が挙げられる。特許文献2に記載の加圧抽出方法で用いられる抽出カラムのフィルタは、吸湿性を有することから、加圧のみでは、塩や界面活性剤を除去することは困難である。
本発明は、斯かる実情に鑑み、核酸から従来よりも多くの不純物を分離できる核酸抽出方法、及び、その核酸抽出方法を実現できる小型で安価な核酸抽出装置を提供しようとするものである。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の核酸抽出方法は、溶解されて核酸を抽出可能な状態の検体を収容するフィルタ付きの容器にアルコール溶液を注入すると共に、前記容器を加圧して、該核酸を前記フィルタに吸着させつつ、前記フィルタに吸着する不純物を除去し、前記アルコール溶液を前記容器から排出する第一洗浄処理を少なくとも1回行う第一洗浄工程と、前記第一洗浄工程において最後に行われた前記第一洗浄処理で注入された前記アルコール溶液のアルコール濃度よりも高濃度の高濃度アルコール溶液を前記容器に注入し、前記容器に残存する前記アルコール溶液を該高濃度アルコール溶液に置換して、該高濃度アルコール溶液を排出する置換処理を少なくとも1回行う第二洗浄側前処理工程と、前記第二洗浄側前処理工程の後に前記高濃度アルコール溶液を乾燥させる乾燥処理を行う第二洗浄側後処理工程と、前記フィルタに付着した前記核酸を回収する核酸回収工程と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の核酸抽出方法において、最後に行われた前記第一洗浄処理で注入された前記アルコール溶液は、75%以下のアルコール濃度を有し、前記高濃度アルコール溶液は、90%以上のアルコール濃度を有することを特徴とする。
また、本発明の核酸抽出方法において、前記アルコール溶液及び前記高濃度アルコール溶液は、エタノール、イソプロパノール及びプロパノールの少なくともいずれかであることを特徴とする。
また、本発明の核酸抽出方法において、前記第一洗浄工程は、第一の濃度の第一のアルコール溶液を前記容器に注入すると共に前記容器を加圧して、前記核酸を前記フィルタに吸着させつつ、前記フィルタに吸着する不純物を除去し、前記第一のアルコール溶液を前記容器から排出する第一前洗浄工程と、前記第一前洗浄工程の後に、前記第一の濃度よりも低い濃度の第二の濃度の第二のアルコール溶液を前記容器に注入すると共に前記容器を加圧して、前記核酸を前記フィルタに吸着させつつ、前記フィルタに吸着する不純物を除去し、前記第二のアルコール溶液を前記容器から排出する第一後洗浄工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明の核酸抽出方法において、前記第一のアルコール溶液には、前記検体において前記核酸を凝集させるための塩が含まれることを特徴とする。
また、本発明の核酸抽出方法において、前記置換処理は、前記高濃度アルコール溶液が前記容器に注入された後に、前記容器を加圧して、前記核酸を前記フィルタに吸着させつつ、前記フィルタに吸着する不純物を除去し、前記高濃度アルコール溶液を前記容器から排出することを特徴とする。
また、本発明の核酸抽出方法は、前記検体を溶解して該検体から前記核酸を抽出可能な状態にする検体溶解工程を、前記第一洗浄工程より前に備え、前記検体溶解工程は、前記検体を溶解させるための溶解処理溶液を前記検体に加えて酵素反応をさせる工程と、エタノール溶液を加えて前記酵素反応を停止させる工程と、前記エタノール溶液と前記検体の混合液を前記容器に注入すると共に前記容器を加圧して、該エタノール溶液を排出する工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の核酸抽出方法は、溶解されて核酸を抽出可能な状態の検体を収容するフィルタ付きの容器にアルコール溶液を注入すると共に、前記容器を加圧して、該核酸を前記フィルタに吸着させつつ、前記フィルタに吸着する不純物を除去し、前記アルコール溶液を前記容器から排出する洗浄処理を複数回行う洗浄工程と、前記フィルタに吸着する前記核酸を回収するための回収用溶液を前記容器に注入すると共に前記容器を加圧して、前記フィルタに付着した前記核酸を回収する核酸回収処理を複数回行う核酸回収工程と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の核酸抽出装置は、検体から核酸を抽出する核酸抽出装置であって、前記検体を含む溶液を収容可能で注入開口及び排出開口を有するフィルタ付きの容器を有し、該フィルタにより前記検体から前記核酸を分離可能な分離部と、前記容器を加圧する加圧部と、前記フィルタから前記核酸を回収する核酸回収部と、アルコール溶液を含む複数の試薬を収容する試薬収容部と、複数の前記試薬のいずれかを前記注入開口から前記容器に分注する分注部と、前記加圧部及び前記分注部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、第一洗浄モード、第二洗浄側前処理モード、及び第二洗浄側後処理モードを有し、前記第一洗浄モードでは、溶解されて前記核酸が抽出可能な状態の前記検体が収容された前記容器に、前記分注部により前記アルコール溶液を注入させると共に、前記加圧部に前記容器を加圧させ、前記核酸を該フィルタに吸着させると共に前記フィルタに吸着する不純物を除去しつつ、前記アルコール溶液を前記容器から排出する第一洗浄処理を少なくとも1回行い、前記第二洗浄側前処理モードでは、前記第一洗浄モードにおいて最後に行われた前記第一洗浄処理で注入された前記アルコール溶液のアルコール濃度よりも高濃度の高濃度アルコール溶液を前記分注部により前記容器に注入して、前記容器に残存する前記アルコール溶液を該高濃度アルコール溶液に置換して排出する置換処理を少なくとも1回行い、前記第二洗浄側後処理モードでは、最後の前記置換処理の後に前記高濃度アルコール溶液を乾燥させる乾燥処理を行うことを特徴とする。
また、本発明の核酸抽出装置において、前記分離部は、複数の前記容器を同じ姿勢で第一配列方向に並列に配列可能な容器保持片が、前記第一配列方向に直交する第二配列方向に列状に複数配置された容器保持部を有し、前記加圧部は、前記容器保持片毎に複数の前記容器を同時に加圧可能に構成され、前記分離部に対して前記加圧部を前記第二配列方向に相対移動させる移動機構と、前記容器の前記注入開口側において前記容器に接近及び離反するよう前記分離部に対して前記加圧部を相対的に昇降させる昇降機構と、を備えることを特徴とする。
本発明の核酸抽出方法によれば、核酸と不純物を確実に分離することができるという優れた効果を奏し得る。また、本発明の核酸抽出装置によれば、上記核酸抽出方法を実行する装置を小型で安価で実現することができる。
本発明の実施形態における核酸抽出装置の斜視図である。 本発明の実施形態における核酸抽出装置の内部平面図である。 本発明の実施形態における核酸抽出装置の核酸抽出部及び分注部の斜視図である。 本発明の実施形態における核酸抽出装置の分離部及び加圧部の概略断面図である。 (A)は、本発明の実施形態における核酸抽出装置の核酸抽出部の平面図である。(B)は、本発明の実施形態における核酸抽出装置の核酸抽出部の側面図である。 (A)は、抽出カラムの真下に廃液用回収容器が位置する場合における本発明の実施形態における核酸抽出装置の核酸抽出部の正面図である。(B)は、本発明の実施形態における核酸抽出装置の回収部の平面図である。 抽出カラムの真下に核酸用回収容器が位置する場合における本発明の実施形態における核酸抽出装置の核酸抽出部の正面図である。 (A),(B)は、抽出カラムの真下に廃液用回収容器が位置する場合における本発明の実施形態における核酸抽出装置の核酸抽出部の動作を時系列に並べた核酸抽出部の正面図である。 (A),(B)は、抽出カラムの真下に核酸用回収容器が位置する場合における本発明の実施形態における核酸抽出装置の核酸抽出部の動作を時系列に並べた核酸抽出部の正面図である。 (A)は、本発明の実施形態における核酸抽出装置の分注部の正面図である。(B)は、本発明の実施形態における核酸抽出装置の分注部の側面図である。(C)は、本発明の実施形態における核酸抽出装置の分注側駆動機構の平面図である。 本発明の実施形態における核酸抽出装置を用いた核酸抽出方法のフローチャートである。 (A)~(G)は、本発明の実施形態における核酸抽出装置の核酸抽出部の動作を時系列に並べた概略図である。 RNA(SARS-Cov-2(RdRp)遺伝子)の抽出検証1において得られた結果を示す表である。 RNA(293T細胞 精製RNAを用いたACTIN遺伝子)の抽出検証2において得られた結果を示す表である。
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1~図12は発明を実施する形態の一例であって、図中、図1,2と同一の符号を付した部分は同一物を表わす。
<全体構成>
本発明の実施形態における核酸抽出装置1は、検体から核酸を抽出するものである。本実施形態における核酸として、RNAが想定されるが、これに限定されるものではなく、DNAであってもよい。核酸抽出装置1は、図1~図3、及び図8に示すように、核酸抽出部2と、核酸回収部3と、分注部4(図3参照)と、分注側駆動機構5(図8参照)と、チップ保持部6と、廃棄チップ回収部7と、試薬収容部8と、検体保持部9と、制御部10と、プライマー処理部11と、操作部12と、表示部13と、上記各部を収容する筐体14と、を備える。
<筐体>
図1を参照して筐体14について説明する。筐体14は、図1に示すように、内部に基台140、及び、基台140上に上記各部を配置させるための内部空間141を有する。そして、筐体14には、図1に示すように、側面側から上記各部を外部に開放可能な開閉シャッター142が設けられる。なお、図1では、開閉シャッター142は閉じられており、内部空間141及び上記各部が外部に対して隠された状態にある。
また、筐体14の上部には、操作部12及び表示部13が配置されている。本実施形態において操作部12は、タッチパネル方式のものであるが、これに限定されるものではなく、操作部12及び表示部13は分離していてもよい。
なお、本実施形態において筐体14の高さ方向は、核酸抽出装置1の上下方向(垂直方向)Aと平行であり、筐体14の奥行方向は、核酸抽出装置1の前後方向Bと平行となり、筐体14の幅方向は、核酸抽出装置1の左右方向Cと平行になるものとして説明する。
<核酸抽出部>
図3~図7Aを参照して核酸抽出部2について以下説明する。核酸抽出部2では、検体から核酸を抽出する処理が行われる。図3に示すように、核酸抽出部2は、分離部20と、加圧部21と、廃液回収部22と、第一昇降機構23と、第二昇降機構24と、加圧側移動機構25と、回収側移動機構26と、を有する。
<分離部>
図4~図6Aを参照して分離部20について以下説明する。図4(A),(B)に示すように、分離部20は、フィルタ201を内蔵するフィルタ201付きの抽出カラム200と、抽出カラム保持部202(図5参照)と、を有する。抽出カラム200は、筒状の容器であり、一方側に注入開口200Aを有し、他方側に排出開口200Bを有する。また、抽出カラム200の注入開口200A周りには、抽出カラム200の外周面を起点として径方向外側に拡張するフランジ200Cが設けられる。
フィルタ201は、抽出カラム200の軸方向において抽出カラム200の内部空間を2分するように配設される。そして、フィルタ201は、例えば、ガラス繊維や荷電樹脂などから成り、フィルタ201への核酸の吸着性を利用して検体から核酸を分離する。すなわち、親水的な性質を持つ核酸は、疎水性の高い溶液中ではフィルタ201に吸着し、疎水的な性質を持つタンパク質や脂質などはそのまま流れ落ち易い状態となる。
抽出カラム保持部202は、図5(A)に示すように、複数の抽出カラム保持片203で構成される。抽出カラム保持片203は、図3、図5(A),(B)及び図6A(A)に示すように、一対の脚部203Aと、一対の脚部203Aの間に架設される架設部203Bと、で構成される。本実施形態において抽出カラム保持片203は、略コの字状に形成される。
架設部203Bは、図6A(A)に示すように、第二昇降機構24(付勢部241)により下方側から支持される。架設部203Bには、上下方向Aに架設部203Bを貫通する穴203Cが架設方向に沿って4つ設けられる。穴203Cに抽出カラム200が挿入されると、抽出カラム200のフランジ200Cが穴203Cの入口開口の周囲(架設部203B)に係合して、注入開口200Aが上側で、排出開口200Bが下側で、且つ抽出カラム200の軸方向が上下方向Aと平行になるような姿勢で抽出カラム200は架設部203Bで保持される。4つの穴203Cそれぞれに抽出カラム200が挿入されると、抽出カラム200は、上記姿勢で並列に配列されて保持される。
各抽出カラム保持片203は、図5(A)に示すように、各抽出カラム保持片203における抽出カラム200の配列方向が相互に平行となるような姿勢で基台140上に配置される。この際、抽出カラム200の配列方向を第一配列方向Dと定義した場合、各抽出カラム保持片203は、図5(A),(B)に示すように、第一配列方向Dに対して直交する第二配列方向Fに沿って基台140上において所定間隔を空けて列状に配置される。この際、隣接する抽出カラム保持片203で保持される各抽出カラム200同士は、第二配列方向Fにおいてそれぞれ対向する。本実施形態では、第一配列方向Dは、核酸抽出装置1の前後方向Bに平行となり、第二配列方向Fは、核酸抽出装置1の左右方向Cに平行となる。
<加圧部>
図4及び図6Aを参照して加圧部21について以下説明する。加圧部21は、抽出カラム200の内部を加圧するものである。図4(A)及び図6A(A)に示すように、本実施形態において加圧部21は、加圧用カラムキャップ210と、カラムキャップ保持部211と、加圧用チューブ212と、加圧用シリンジ(加圧源)213と、圧力センサ214と、を有する。
加圧用カラムキャップ210は、図4(B)に示すように、抽出カラム200を密閉する。カラムキャップ保持部211は、図6A(A)に示すように、複数の加圧用カラムキャップ210を第一配列方向Dに並列に保持する。つまり、カラムキャップ保持部211で保持される複数の加圧用カラムキャップ210のそれぞれは、抽出カラム保持片203で保持された複数の抽出カラム200のそれぞれを密閉するものであり、複数の加圧用カラムキャップ210の配列は、抽出カラム保持片203で保持された複数の抽出カラム200の配列に応じたものになる。
そして、加圧用チューブ212の一端は、図4(A)に示すように、直接又は間接的に加圧用カラムキャップ210に連結され、加圧用チューブ212の他端は、加圧用シリンジ213に連結される。加圧用シリンジ213は、円筒形のシリンジ213Aと可動式のプランジャ213Bからなり、加圧用チューブ212を介して抽出カラム200を加圧する。また、圧力センサ214は、例えば、加圧用チューブ212に取り付けられ、抽出カラム200の圧力(抽出カラム200に加えられる圧力)を測定できるようになっている。
<廃液回収部>
図6Aを参照して廃液回収部22について以下説明する。図6A(A)に示すように、廃液回収部22は、抽出カラム200の排出開口200Bから排出される廃液を回収するものである。廃液回収部22は、図3に示すように、抽出カラム保持片203の架設部203Bの真下に配置される。本実施形態では、廃液回収部22は、図6A(A)に示すように、開口220Aを有する廃液用回収容器220と、廃液用回収容器保持部221とで構成される。
図6A(B)に示すように、廃液用回収容器保持部221は、複数の廃液用回収容器保持片222で構成される。廃液用回収容器保持片222は、廃液用回収容器220を挿入するための穴222Aを有する。廃液用回収容器220の開口220A周りには、廃液用回収容器220の外周面から径方向外側に拡張するフランジ220Bが設けられる。廃液用回収容器220が穴222Aに挿入されると、廃液用回収容器220のフランジ220Bが穴222Aの入口開口の周囲に係合して開口220Aが上側を向いた状態で、廃液用回収容器220は、廃液用回収容器保持片222に保持される。
また、廃液用回収容器保持片222は、廃液用回収容器220が架設部203Bの穴203C(抽出カラム200)の真下に位置した状態で廃液用回収容器220を保持する。架設部203Bで抽出カラム200が保持された場合、廃液用回収容器220の開口220Aと、抽出カラム200の排出開口200Bは、上下方向Aにおいて対向する。そして、各廃液用回収容器保持片222は、穴203C(抽出カラム200が保持される位置)と穴222A(廃液用回収容器220が保持される位置)が上下方向Aにおいて対向するように配置される。
廃液用回収容器保持片222は、抽出カラム保持片203と対となって設けられる。つまり、廃液用回収容器保持片222も抽出カラム保持片203と同様に、第二配列方向Fに沿って基台140上において所定間隔を空けて列状に配置される。
<核酸回収部>
図6Bを参照して核酸回収部3について以下説明する。核酸回収部3は、抽出カラム200の排出開口200Bから排出される核酸(核酸精製溶液)を回収するものである。本実施形態において核酸回収部3は、図6Bに示すように、開口30Aを有する核酸用回収容器30と、核酸用回収容器保持部31と、で構成される。そして、核酸用回収容器保持部31は、複数の核酸用回収容器保持片32で構成される。核酸用回収容器30は、廃液用回収容器220と同様の構成であり、複数の核酸用回収容器保持片32は、廃液用回収容器保持片222と同様の構成である。
そして、核酸用回収容器保持片32と廃液用回収容器保持片222は、図6A(B)に示すように、基台140上において第二配列方向Fに沿って列状に交互に配置される。廃液回収部22、及び核酸回収部3を一纏めに回収部と定義した際、回収側移動機構26により、回収部(廃液回収部22、及び核酸回収部3)に対して抽出カラム保持部202を第二配列方向F(左右方向C)に相対移動させると、図6Bに示すように、全ての抽出カラム保持片203(抽出カラム保持部202)の真下に全ての核酸用回収容器保持片32(核酸回収部3)を同時に位置させることもできるし、図6A(A)に示すように、全ての抽出カラム保持片203(抽出カラム保持部202)の真下に全ての廃液用回収容器保持片222(廃液回収部22)を同時に位置させることもできる。
<第一昇降機構>
図6A、図6B、図7A及び図7Bを参照して第一昇降機構23について以下説明する。第一昇降機構23は、抽出カラム保持片203の上側においてカラムキャップ保持部211を上下方向に昇降させるものである。第一昇降機構23により、カラムキャップ保持部211と共に加圧用カラムキャップ210が下降すると、図7A(A)及び図7B(A)に示すように、抽出カラム保持片203で保持される抽出カラム200に加圧用カラムキャップ210が接近して注入開口200Aを閉じる。
第一昇降機構23は、図6A(A)及び図6Bに示すように、案内部230と、付勢部231と、押圧部232と、を有する。案内部230は、カラムキャップ保持部211を上下方向Aに案内するものである。本実施形態においてカラムキャップ保持部211の第一配列方向Dにおける両端近傍には、上下方向にカラムキャップ保持部211を貫通する穴211Aが1つずつ設けられる。そして、案内部230は、上下方向に延びつつ、一対の穴211Aそれぞれを通過して、カラムキャップ保持部211に係合する一対の棒状体230Aにより構成される。一対の棒状体230Aは、図3に示すように、加圧側移動機構25により左右方向Cに移動可能に設けられる。結果、一対の棒状体230Aが左右方向Cに移動すると、加圧部21も棒状体230Aと一体となって左右方向Cに移動する。
付勢部231は、カラムキャップ保持部211を上下方向に付勢するものである。本実施形態において付勢部231は、図6A(A)及び図6Bに示すように、一対の棒状体230Aの周囲に巻回されつつ、上下方向に延びる一対のコイルばね231Aで構成される。そして、一対のコイルばね231Aは、基端が加圧側移動機構25に当接し、先端は、カラムキャップ保持部211に当接し、カラムキャップ保持部211を下方側から支持する。なお、一対のコイルばね231Aは、両端が固定されていてもいなくてもよい。
押圧部232は、図6A(A)及び図6Bに示すように、カラムキャップ保持部211の上面側に設けられた受け部211Bを介してカラムキャップ保持部211を上下方向の下方側に押圧するものである。受け部211Bは、上下方向Aにおいて押圧部232と対向可能で、押圧部232から下方側に向かう押圧力を受けるための受け面を上方側に有する。本実施形態において押圧部232は、図3に示すように、分注部4と共に上下方向に昇降可能に分注部4に設けられる。
受け部211Bを介して押圧部232がカラムキャップ保持部211を上下方向Aの下方側に押圧していない初期状態では、一対のコイルばね231Aは下方側に押圧力を受けていない。この際、一対のコイルばね231Aは、伸びた状態にあり、図6A(A)及び図6Bに示すように、加圧用カラムキャップ210が抽出カラム200から上方側に離れた位置に位置するようにカラムキャップ保持部211を支持する。
そして、押圧部232が下降すると、一対のコイルばね231Aは縮み、カラムキャップ保持部211は一対のコイルばね231Aから上方側への弾性力を受けつつ、下降する。抽出カラム保持片203には、カラムキャップ保持部211と対向する側の面からカラムキャップ保持部211に向かって立設されたストッパ203Dが設けられる。カラムキャップ保持部211は、図7A(A)に示すように、ストッパ203Dに接触するまで下降する。カラムキャップ保持部211がストッパ203Dに接触した状態において、加圧用カラムキャップ210は、抽出カラム200を密閉する。この状態から押圧部232が上昇すると、一対のコイルばね231Aに対する押圧が解除され、一対のコイルばね231Aの弾性力(復帰力)によりカラムキャップ保持部211は押圧されて上昇して、初期状態に対応する位置に復帰する(図6A(A)及び図6B参照)。
なお、第一昇降機構23は、以上の構成に限定されるものではなく、例えば、カラムキャップ保持部211を上下方向に往復移動可能なモータ及びネジを用いた直動機構、油圧シリンダとピストンを用いた直動機構、ベルト(チェーン)とプーリを用いた直動機構、及びその他の直動機構(昇降機構)のいずれで構成されてもよい。
<第二昇降機構>
図4、図6A、図6B、図7A及び図7Bを参照して第二昇降機構24について以下説明する。第二昇降機構24は、廃液回収部22の上側、且つ加圧部21(カラムキャップ保持部211)の下側の領域において抽出カラム保持片203を上下方向に昇降させるものである。第二昇降機構24により、抽出カラム保持片203と共に抽出カラム200が下降すると、図4(B)及び図7A(B)に示すように、廃液用回収容器保持片222で保持される廃液用回収容器220に抽出カラム200が接近して、抽出カラム200の排出開口200B側が廃液用回収容器220に挿入される。また、抽出カラム保持片203の真下に核酸用回収容器保持片32が位置する場合、抽出カラム保持片203と共に抽出カラム200が下降すると、図4(B)及び図7B(B)に示すように、核酸用回収容器保持片32で保持される核酸用回収容器30に抽出カラム200が接近して、抽出カラム200の排出開口200B側が核酸用回収容器30に挿入される。
第二昇降機構24は、図6A(A)及び図6Bに示すように、案内部240と、付勢部241と、押圧部242と、を有する。案内部240は、抽出カラム保持片203を上下方向に案内するものである。本実施形態において抽出カラム保持片203の第一配列方向Dにおける両端近傍には、上下方向に抽出カラム保持片203(架設部203B)を貫通する穴203Eが1つずつ設けられる。そして、案内部240は、上下方向に延びつつ、一対の穴203Eそれぞれを通過して、抽出カラム保持片203(架設部203B)に係合する一対の棒状体240Aにより構成される。一対の棒状体240Aは、基台140から上下方向Aに立設されたストッパ2Aから上下方向Aに立設するように設けられる。
付勢部241は、抽出カラム保持片203を上下方向に付勢するものである。本実施形態において付勢部241は、一対の棒状体240Aの周囲に巻回されつつ、上下方向に延びる一対のコイルばね241Aで構成される。そして、一対のコイルばね241Aは、基端が基台140から上下方向Aに立設されたストッパ2Aに当接し、先端が抽出カラム保持片203に当接して、抽出カラム保持片203(架設部203B)を下方側から支持する。なお、一対のコイルばね241Aは、両端が固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。
押圧部242は、抽出カラム保持片203(受け部)を上下方向の下方側に押圧するものである。本実施形態において押圧部242は、加圧用カラムキャップ210、カラムキャップ保持部211及び第一昇降機構23で構成される。つまり、第一昇降機構23によりカラムキャップ保持部211が下降すると、加圧用カラムキャップ210が抽出カラム200を介して抽出カラム保持片203を押圧する。この場合、抽出カラム保持片203(受け部)は、第一昇降機構23の受け部211Bと同様の機能を有する。
なお、押圧部242は、抽出カラム保持片203の上面側に設けられたストッパ203D(受け部)を介して抽出カラム保持片203を上下方向の下方側に押圧する態様であってもよい。この場合、ストッパ203D(受け部)は、第一昇降機構23の受け部211Bと同様の機能を有する。
押圧部242が抽出カラム保持片203を上下方向の下方側に押圧していない初期状態では、一対のコイルばね241Aは下方側に押圧力を受けていない。この際、一対のコイルばね241Aは、伸びた状態で抽出カラム保持片203を下方側から支持する。
そして、押圧部242が下降すると、一対のコイルばね241Aは縮み、抽出カラム保持片203は一対のコイルばね241Aから上方側への弾性力を受けつつ、下降する。そして、一対のコイルばね241Aが最も縮んだ状態か、又は、押圧部242の押圧力に対して平衡となる一対のコイルばね241Aの縮みに達する状態になると、抽出カラム保持片203は停止する。この際、図7A(B)に示すように、抽出カラム200の排出開口200B側が廃液用回収容器220に挿入された状態になる。この状態から押圧部242が上昇すると、一対のコイルばね241Aに対する押圧が解除され、一対のコイルばね241Aの弾性力(復帰力)により抽出カラム保持片203は押圧されて上昇して、初期状態に対応する位置に復帰する(図6A(A)及び図6B参照)。
なお、第二昇降機構24は、以上の構成に限定されるものではなく、例えば、抽出カラム保持片203を上下方向に往復移動可能なモータ及びネジを用いた直動機構、油圧シリンダとピストンを用いた直動機構、ベルト(チェーン)とプーリを用いた直動機構、及びその他の直動機構(昇降機構)のいずれで構成されてもよい。
また、第一昇降機構23及び第二昇降機構24は、抽出カラム200の排出開口200B側が廃液用回収容器220に挿入された状態になるように構成されればよく、その意味で、回収部(廃液回収部22、及び核酸回収部3)に対して、抽出カラム保持片203及び加圧部21が相対的に昇降すれば実現できる。つまり、実際には、回収部(廃液回収部22、及び核酸回収部3)が昇降してもよく、そのようなものも本発明の範囲に含まれる。
<加圧側移動機構>
図3を参照して加圧側移動機構25について以下説明する。図3に示すように、加圧側移動機構25は、加圧部21を、各抽出カラム保持片203が配列される第二配列方向F(左右方向C)に相対移動させるものである。加圧側移動機構25は、基台140に設けられた一対の案内レール250と、直動機構251と、で構成される。
一対の案内レール250は、第一配列方向Dにおける抽出カラム保持部202の両外側において第二配列方向F(左右方向C)に延びる、基台140に設けられた溝により構成される。直動機構251は、第一昇降機構23の案内部230に連結される。直動機構251が動作すると、第一昇降機構23の案内部230は、穴211Aへの係合により繋がる加圧部21(カラムキャップ保持部211)と共に、一対の案内レール250に沿って第二配列方向F(左右方向C)に直動する。
そして、直動機構251は、例えば、モータ及びネジを用いた直動機構、油圧シリンダとピストンを用いた直動機構、ベルト(チェーン)とプーリを用いた直動機構等が一例として挙げられるが、これらに限定されるものではなく、その他のものであってもよい。
<回収側移動機構>
図3を参照して回収側移動機構26について以下説明する。回収側移動機構26は、抽出カラム保持部202に対して回収部(廃液回収部22、及び核酸回収部3)を第二配列方向F(左右方向C)に相対移動させるものである。本実施形態において回収側移動機構26は、回収部(廃液回収部22、及び核酸回収部3)を第二配列方向F(左右方向C)に移動させる。なお、回収側移動機構26は、抽出カラム保持部202を第二配列方向F(左右方向C)に移動させてもよい。
本実施形態において回収側移動機構26は、例えば、モータ及びネジを用いた直動機構、油圧シリンダとピストンを用いた直動機構、ベルト(チェーン)とプーリを用いた直動機構、及びその他の直動機構(昇降機構)のいずれかで構成される。
<分注部、分注側移動機構>
分注部4は、試薬収容部8に収容された各試薬を抽出カラム200に分注するものである。分注部4は、図8(A)~(C)に示すように、分注側駆動機構5により筐体14の内部空間141を、上下方向A、前後方向B、及び左右方向Cに移動自在に分注側移動機構にぶら下がっている。
分注部4は、図8(A),(B)に示すように、複数(本実施形態では、8本)の分注シリンダ40と、これらを保持するシリンダ保持部41と、圧力調整部42と、(図示しない)チップ離脱機構と、を有する。分注シリンダ40は、先端にチップを着脱可能に保持可能な構造を有する。なお、チップとは、図8(A),(B)に示すチップ403,404ように、先端側の開口径が小径で、基端側の開口径が大径のチューブ状の部材である。
本実施形態においてシリンダ保持部41は、図8(A),(B)に示すように、左右方向の一方側(左側)に1000μL用の分注シリンダ401を4本保持し、左右方向の一方側(右側)に20μL用の分注シリンダ402を4本保持するが、これは一例であって、分注シリンダの容量について限定はない。1000μL用の分注シリンダ401には、1000μL用のチップ403が取り付けられ、20μL用の分注シリンダ402には20μL用のチップ404が取り付けられる。チップ403,404は、それぞれ分注シリンダ401,402の先端に押し込むことによって装着可能であり、(図示しない)チップ離脱機構により逆方向に引き離すことにより離脱可能に構成される。
そして、圧力調整部42は、分注シリンダ40内の圧力を調整する。つまり、圧力調整部42は、チップを通じて液体の吸引を行う場合、分注シリンダ40内の圧力を減圧し、チップ内の液体を吐出する場合、分注シリンダ40内に対して加圧を行う。
分注側駆動機構5は、筐体14の天井部143(図1参照)に設けられ、図8(C)に示すように、例えば、左右方向Cに延在する左右方向移動レール50と、前後方向Bに延在する前後方向移動レール51と、を有する。分注部4は、例えば、左右方向移動部52により前後方向移動レール51と共に左右方向移動レール50に沿って移動可能に構成される。また、分注部4は、例えば、分注部4に連結された前後方向移動部53と共に前後方向移動レール51に沿って移動可能に構成される。
なお、左右方向移動部52又は前後方向移動部53は、例えば、モータと、そのモータにより駆動するピニオンと、左右方向移動レール50又は前後方向移動レール51に沿って設けられ、ピニオンに係合するラックと、により構成されるものが一例として挙げられる。なお、左右方向移動部52は、左右方向移動レール50に沿って走行可能なら上記以外のどのような構成であってもよい。同様に、前後方向移動部53は、前後方向移動レール51に沿って走行可能なら上記以外のどのような構成であってもよい。
また、分注側駆動機構5は、図8(A)~(C)に示すように、分注部4を上下方向Aに昇降させる分注側昇降機構54を有する。分注側昇降機構54は、例えば、分注部4を上下方向Aに昇降可能なモータ及びネジを用いた直動機構、油圧シリンダとピストンを用いた直動機構、ベルト(チェーン)とプーリを用いた直動機構、及びその他の直動機構(昇降機構)のいずれで構成されてもよい。
<チップ保持部>
チップ保持部6は、図2に示すように、チップを保持するものであり、基台140上に設けられる。チップ保持部6は、上方側からチップを差し込むための穴60を有する。穴60は、図2に示すように、マトリクス状に設けられる。チップは、穴60に差し込まれて起立した状態でチップ保持部6により保持される。図2では、2つのチップ保持部6Aでは、1000μL用のチップ403が複数保持される。また、チップ保持部6Bでは、20μL用のチップ404が複数保持される。
分注部4が分注側駆動機構5により移動されて、分注シリンダ40がチップの真上に位置するように位置決めされ、その状態で分注側昇降機構54により下降すると、分注シリンダ40の先端がチップに押し込まれて、チップが分注シリンダ40に装着される。
<廃棄チップ回収部>
廃棄チップ回収部7は、廃棄されるチップを回収するものであり、図2に示すように、基台140上に設けられる。本実施形態において廃棄チップ回収部7は、上方側に開口を有する容器で構成される。
分注部4が分注側駆動機構5により移動されて、分注シリンダ40が廃棄チップ回収部7の真上に位置するように位置決めされ、その状態で(図示しない)チップ離脱機構によりチップが逆方向に引き離されることによりチップは廃棄チップ回収部7に落下する。これにより、廃棄チップ回収部7で廃棄されるべきチップが回収される。
<試薬収容部>
試薬収容部8は、検体から核酸を抽出する際に用いられる試薬を収容するものであり、図2に示すように、基台140上に設けられる。本実施形態において試薬収容部8は、上方側に開口を有する複数の容器で構成される。複数の容器には、異なる種類の複数の試薬が収容される。
複数の試薬として、例えば、溶解処理溶液、溶解反応停止用アルコール溶液(例えば、エタノール溶液)、核酸沈殿用の第一洗浄液W1、不純物除去用の第二洗浄液W2、不純物除去用の第三洗浄液W3、回収用溶液E等が挙げられる。溶解処理溶液は、検体に反応(酵素反応)すると、検体に含まれる細胞膜等を溶解して核酸を検体から抽出し、その溶液において分散させるものである。溶解反応停止用アルコール溶液は、例えば、溶解処理溶液と検体の間で起こる酵素反応を停止させるためのものであり、例えば、40%以上のアルコール濃度を有するエタノール溶液で構成される。核酸沈殿用の第一洗浄液W1は、主として、核酸を沈殿させるために用いられる溶液であり、アルコール溶液と塩が含まれる。そして、第一洗浄液W1における第一のアルコール溶液は、核酸を沈殿させるために必要な第一の濃度を有する。第一の濃度は、例えば、50%以上の濃度であることが好ましい。塩として、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、酢酸アンモニウム等が挙げられる。
不純物除去用の第二洗浄液W2及び不純物除去用の第三洗浄液W3は、核酸以外の不純物(塩を含む夾雑物質)を除去するための洗浄液であり、アルコール溶液が含まれる。なお、第三洗浄液W3に対応するアルコール溶液は、第二洗浄液W2に対応するアルコール溶液よりもアルコール濃度が高い第三濃度を有する高濃度アルコール溶液で構成される。また、第二洗浄液W2に対応する第二のアルコール溶液の第二の濃度は、核酸沈殿用の第一洗浄液W1に対応する第一のアルコール溶液の第一の濃度よりもアルコール濃度が低いもので構成されることが好ましい。なお、第一洗浄液W1~第三洗浄液W3に対応するアルコール溶液は、例えば、エタノール、又はイソプロパノール、又はプロパノール等の少なくともいずれかで構成される。第二洗浄液W2に対応するアルコール溶液は、例えば、75%以下のアルコール濃度を有するエタノールで構成される。第三洗浄液W3に対応するアルコール溶液は、例えば、90%以上のアルコール濃度を有するエタノールで構成され、特に、99%以上のエタノール溶液で構成されることが好ましい。回収用溶液Eは、洗浄終了後に、核酸を回収するために用いられる溶液であり、純水(蒸留水)、又は純水(蒸留水)とキレート剤の混合溶液で構成される。
分注部4が分注側駆動機構5により移動されて、分注シリンダ40が試薬収容部8のうち、目的とする試薬が収容されたものの真上に位置するように位置決めされ、その状態で分注側昇降機構54により下降すると、分注シリンダ40の先端に装着されたチップが試薬に浸かる。そして、圧力調整部42で分注シリンダ40及びチップ内を減圧すれば、試薬を吸い込んで、分注シリンダ40及びチップ内で試薬を保持することができる。そして、分注部4が分注側駆動機構5により抽出カラム200に移動されて、この試薬が抽出カラム200に注入される。
<検体保持部>
検体保持部9は、核酸を抽出する対象となる検体を保持するものであり、図2に示すように、基台140上に設けられる。本実施形態において検体保持部9は、上方側に開口を有する複数の容器(以下、検体用容器と呼ぶ。)90と、検体用容器90を挿入する穴92を有する検体用容器保持部91と、を有する。作業者は、検体用容器90に対象となる検体、及び検体に対する前処理を行う溶液を入れる。なお、検体及び検体に対する前処理を行う溶液を一纏めに、検体溶液と呼ぶ。
検体用容器保持部91は、撹拌機能と温度調節機能を有している。このため、検体用容器90内の検体溶液を撹拌したり、検体溶液を所定の温度に調整したりすることができる。
分注部4が分注側駆動機構5により移動されて、分注シリンダ40が検体保持部9のうち、目的とする検体が収容された検体用容器90の真上に位置するように位置決めされ、その状態で分注側昇降機構54により下降すると、分注シリンダ40の先端に装着されたチップが検体溶液に浸かる。そして、圧力調整部42でチップ内を減圧すれば、検体溶液を吸い込んで、分注シリンダ40及びチップ内で検体溶液を保持することができる。そして、分注部4が分注側駆動機構5により抽出カラム200に移動されて、この検体溶液が抽出カラム200に注入される。
<プライマー処理部>
プライマー処理部11は、図2に示すように、基台140上に設けられ、プライマー溶液分注用の容器(以下、PCR(polymerase chain reaction)容器という。)を保持するPCR容器保持部110と、複数のプライマー溶液用の容器(以下、プライマー溶液用容器と呼ぶ。)を保持するプライマー保持部111と、を有する。
PCR容器保持部110で保持されるPCR容器は、複数個準備され、これらがマトリクス状に配列される。プライマー保持部111で保持されるプライマー溶液用容器は、複数個準備され、これらがマトリクス状に配列される。PCR容器の数は、プライマー溶液用容器の数に対応しているか、それ以上の数である。プライマー溶液用容器には、核酸精製溶液に混合するためのプライマー溶液が収容される。分注部4により核酸抽出部2にて抽出された核酸(核酸精製溶液)がPCR容器に分注されると共に、各種プライマー溶液が各PCR容器に分注される。
<制御部>
制御部10は、核酸抽出装置1の各部の制御を行う。制御部10は、核酸抽出部2(加圧部21、第一昇降機構23、加圧側移動機構25、回収側移動機構26)の制御を行う。つまり、制御部10は、加圧部21による加圧を制御する。また、制御部10は、第一昇降機構23における押圧部232の昇降に関する制御を行う。また、制御部10は、加圧側移動機構25の移動に関する制御を行う。また、制御部10は、回収側移動機構26の移動に関する制御を行う。
また、制御部10は、分注部4及び分注側駆動機構5の制御を行う。つまり、制御部10は、分注部4における圧力調整部42の加圧及び減圧に関する制御を行う。また、制御部10は、分注側駆動機構5による分注部4の移動及び昇降に関する制御を行う。
そして、制御部10は、全体の処理を司るCPU、作業領域として機能するRAM、プログラムを記憶するROM、データやプログラムを記憶するHDD又はSSD等の記憶媒体、外部のセンサ等との間でデータの送受信を行うインターフェース等を有する(図示しない)計算機により構成される。制御部10が行う各制御は、上記プログラムをCPUが実行することにより実行される。そして、CPUは、例えば、インターフェースを通じて送受信したデータに基づいて処理を行う。
プログラムには、検体溶解モード、第一洗浄モード、第二洗浄側前処理モード、第二洗浄側後処理モード、核酸回収モード及び、プライマー溶液処理モードが含まれる。検体溶解モードでは、検体における細胞の細胞膜等を溶解して検体から核酸を分離し、核酸を抽出可能にする。第一洗浄モードでは、抽出カラム200のフィルタ201に核酸を凝集させつつ、フィルタ201から塩を含む不純物(夾雑物質)を除去する。第二洗浄側前処理モードでは、抽出カラム200のフィルタ201に核酸を残しつつ、フィルタ201から除去しきれなかった塩を含む不純物(夾雑物質)を除去する。第二洗浄側後処理モードでは、フィルタ201に残る溶液を乾燥させる。核酸回収モードでは、フィルタ201に吸着したか核酸を回収する。プライマー溶液処理モードでは、核酸に対してプライマー溶液を加えた混合液を調製する。上記各モードは、以下で説明する<核酸抽出方法>にあるように、CPUにより順に実行される。
<核酸抽出方法>
次に、本実施形態における核酸抽出装置1を用いて検体から核酸を抽出する核酸抽出方法について以下説明する。なお、核酸抽出方法は、核酸抽出装置1を用いないで、作業者が手作業で以下に説明する各工程を行っても実現可能であり、そのようなものも本発明の範囲に含まれる。
まず、チップ保持部6(6A、6B)に十分な量のチップを載置するとともに、新たな抽出カラム200を抽出カラム保持部202(抽出カラム保持片203)に、新たな核酸用回収容器30を核酸用回収容器保持部31に、新たなPCR容器をPCR容器保持部110にセットする。また、試薬収容部8に複数の試薬をセットすると共に、プライマー溶液を入れたプライマー溶液用容器をプライマー保持部111にセットする。そして、準備された検体用容器90に、検体を所定量分注して検体用容器保持部91にセットする。以上が準備処理(ステップS1)である。
準備処理を終えて準備が整うと、次に、核酸抽出装置1の運転を開始するために、作業者が操作部12のスタートボタンを押す。作業者がスタートボタンを押すと、検体溶解モードが開始し、第一処理工程が始まる。第一処理工程では、核酸抽出装置1は、まず、初期化され、加圧部21は、制御部10の制御の下、加圧側移動機構25により図2に示す初期位置に移動される。また、分注部4は、制御部10の制御の下、分注側駆動機構5により初期位置に移動する。分注部4の初期位置は、例えば、分注シリンダ40がチップ保持部6Aで保持された1000μL用のチップの真上に位置するような位置が一例として挙げられる。
次に、分注部4は、制御部10の制御の下、分注側駆動機構5により各分注シリンダ40をチップ保持部6Aに向かって下降させて、各分注シリンダ40の先端を1000μL用のチップ内に挿入して押し込み、各分注シリンダ40の先端に第一番目の1000μL用のチップを装着する。なお、以下においてもチップを装着する処理は登場するが、これを単にチップ装着処理と呼ぶ。
その後、分注部4は、制御部10の制御の下、分注側駆動機構5により試薬収容部8上の所定の位置に移動し、チップを通じて溶解処理溶液を所定量吸引する。なお、溶解処理溶液は、検体に反応(酵素反応)すると、検体における細胞の細胞膜等を溶解して検体から核酸を分離し、その溶解処理溶液においてその核酸を分散させるものである。
更に、分注部4は、制御部10の制御の下、各分注シリンダ40が対応する検体用容器90の真上に位置するように、分注側駆動機構5により検体保持部9に移動する。そして、各分注シリンダ40を下降させて、対応する検体用容器90にそれぞれ溶解処理溶液の全量を吐出する。その後、分注部4は、制御部10の制御の下、分注側駆動機構5により廃棄チップ回収部7に移動し、各分注シリンダ40を下降させて、(図示しない)チップ離脱機構により第一番目のチップを離脱、廃棄した後、初期位置へ移動する。なお、以下においても使用済みのチップを廃棄する処理は登場するが、これを単にチップ廃棄処理と呼ぶ。
つまり、第一処理工程では、準備処理工程で準備された検体用容器90内の検体に、溶解処理溶液を所定量加える。第一処理工程における処理を溶解処理溶液分注処理(ステップS2)と呼ぶ。そして、第一処理工程が終了すると、第二処理工程に移る。なお、第一処理工程は、分注された検体を収容する検体用容器90に作業者が手作業で溶解処理溶液を分注してもよい。同様に、第二処理工程以降における各処理のいずれかを適宜作業者が手作業で行ってもよい。
第二処理工程では、検体用容器90内の検体と溶解処理溶液の混合液を所定時間攪拌する。続く第三処理工程では、検体保持部9によりこれらを所定温度下で所定時間、インキュベート(培養)する(ステップS3)。既述のごとく検体保持部9は、撹拌機能と温度調節機能を有している。これにより、検体における細胞の細胞膜等は溶解されて検体から核酸が分離され、その混合液においてその核酸が分散する。
第四処理工程では、検体と溶解処理溶液の反応を停止させるため、検体用容器90内に溶解反応停止用アルコール溶液(例えば、所定のアルコール濃度を有するエタノール溶液)を加える。具体的に、まず、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ装着処理を行い、各分注シリンダ40の先端に第二番目の1000μL用のチップを装着する。その後、分注部4は、試薬収容部8上に移動して、エタノール溶液を所定量吸引した後に、検体用容器90の上方に移動して検体用容器90に向かって下降し、検体用容器90それぞれに対してエタノール溶液を全量吐出する。そして、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ廃棄処理を行って、第二番目のチップを離脱、廃棄し、初期位置へ移動する。第四処理工程における処理を溶解反応停止用アルコール溶液分注処理(ステップS4)と呼ぶ。
第五処理工程では、検体保持部9により検体用容器90を所定時間間攪拌する(ステップS5)。これにより、検体用容器90内の混合液(検体、溶解処理溶液及び溶解反応停止用アルコール溶液)は十分に混ざり合う。結果、混合液中に検体から分離された核酸が分散した状態で、検体と溶解処理溶液の反応(酵素反応)が停止する。
次に、第六処理工程では、まず、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ装着処理を行い、各分注シリンダ40の先端に第三番目の1000μL用のチップを装着する。そして、分注部4は、制御部10の制御の下、分注側駆動機構5により検体用容器90の上方に移動して検体用容器90に向かって下降し、検体用容器90のそれぞれから核酸が分散した状態の混合液を吸引する。その後、分注部4は、制御部10の制御の下、分注側駆動機構5により各抽出カラム200の上方に移動して各抽出カラム200に向かって下降し、各抽出カラム200それぞれに対して核酸が分散した状態の混合液を全量吐出する。そして、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ廃棄処理を行って、第二番目のチップを離脱、廃棄し、初期位置へ移動する。第六処理工程における処理を混合液カラム移動処理(ステップS6)と呼ぶ。
なお、この状態において、回収側移動機構26は、制御部10の制御の下、図10(A)に示すように、各抽出カラム200の直下に廃液回収部22が位置するように廃液回収部22をスライド移動させる。この際、廃液用回収容器220の開口220Aは、上下方向Aにおいて抽出カラム200の排出開口200Bの真下に位置する。
第七処理工程以降では、抽出カラム200に分注された混合液に対して加圧部21で加圧を行い、混合液に含まれる核酸等をフィルタ201に吸着させつつ、混合液の廃棄を行う。具体的に、第七処理工程では、加圧部21は、制御部10の制御の下、加圧側移動機構25により、混合液を吐出された抽出カラム200を保持する各抽出カラム保持片203(図2の抽出カラム保持部202の左端に位置する抽出カラム保持片203)に移動する。この際、図10(B)に示すように、加圧部21の加圧用カラムキャップ210は、対応する各抽出カラム200の真上に位置する(図6A(A)及び図10(A),(B)参照)。
そして、分注部4は、制御部10の制御の下、分注側駆動機構5によりカラムキャップ保持部211の上面側に設けられた受け部211Bの上方に移動した後に下降する。この際、分注部4と共に下降する押圧部232が受け部211Bを押圧して、第一昇降機構23によりカラムキャップ保持部211を下降させる。これにより加圧用カラムキャップ210が下降し、対応する抽出カラム200に当接して、抽出カラム200を密閉する。(図6A(A)、図7A(A)及び図10(B),(C)参照)。
押圧部232が受け部211Bと共に更に下降すると、第二昇降機構24により、加圧用カラムキャップ210によって抽出カラム200が密閉された状態で、一対のコイルばね241Aが最も縮んだ状態か、又は、押圧部232の押圧力に対して平衡となる一対のコイルばね241Aの縮みに達した状態になるまで抽出カラム保持片203(架設部203B)は下降する(図7A(B)及び図10(D)参照)。この際、抽出カラム200の一部は、図7A(B)及び図10(D)に示すように、廃液用回収容器220の内部に挿入された状態になる。
第八処理工程では、加圧部21は、制御部10の制御の下、加圧用シリンジ213を制御して、密閉された抽出カラム200のそれぞれに所定の空気圧を加え、設定圧閾値を超える圧力まで圧力を増加させて、第一の加圧を行う。その後、加圧部21は、加圧(圧力の増加)を停止するとともに、各抽出カラム200に対して設定圧閾値を超える圧力の印加状態を、所定時間維持する。加圧および所定時間の加圧停止により、各抽出カラム200では、核酸等がフィルタ201に吸着しつつ、廃液が廃液回収部22に排出される。これにより、各抽出カラム200に加えられていた圧力は所定時間内に減圧(自然減圧)し、設定圧閾値を下回る。
制御部10の制御の下、押圧部232が受け部211Bに対する押圧を解除すると、第一昇降機構23の付勢部231の付勢力によりカラムキャップ保持部211と共に各加圧用カラムキャップ210が上昇し、且つ第二昇降機構24の付勢部241の付勢力により抽出カラム保持片203と共に各抽出カラム200が上昇する。抽出カラム保持片203と共に各抽出カラム200が初期位置で停止した後も、カラムキャップ保持部211と共に各加圧用カラムキャップ210は更に上昇し、初期位置に復帰するとともに抽出カラム200の上方が開放される。これにより、各抽出カラム200は大気圧下に開放され、抽出カラム200に印加されていた圧力が減少する。以上の処理を、押圧解除処理と呼ぶ。このように本実施形態では、各抽出カラム200それぞれに対して設定圧閾値を超える圧力まで加圧した後、加圧を停止して各抽出カラム200を、設定圧閾値を超える圧力で所定時間保持し、その後減圧する加減圧サイクルを1回行っているが、これに限定されるものではなく、加減圧サイクルを複数回(ここでは2回)実行してもよい。
なお、本実施形態において、「加圧」とは圧力を増加させている状態をいい、「加圧の停止」とは圧力の増加(変化)を停止する状態をいい、「減圧」とは圧力を減少させている状態をいう。また、本実施形態の「減圧」は、抽出カラム200から溶液が全て排出されて自然に圧力が減少する場合や、抽出カラム200を大気圧下に開放することによって、設定圧閾値を超える圧力から大気圧に戻す(圧力を減少させる)場合を例に説明するが、減圧には、大気圧への開放に代えて(あるいはこれに加えて)吸引することによって設定圧閾値を超える圧力から圧力を減少させる場合も含まれる。
なお、以上の第一~八処理工程を検体溶解工程と呼び、検体溶解工程で行われる処理を、検体溶解処理と呼ぶ。そのうち、特に、第七~八処理工程における処理を加圧処理(ステップS7)と呼ぶ。いずれにしても本実施形態における検体溶解工程では、検体から核酸を分離して、核酸を抽出可能な状態にしており、そのことを作業者が上記とは別の方法で実現したものも検体溶解工程として本発明の範囲に含まれる。
第九処理工程以降では、各抽出カラム200内のフィルタ201の洗浄を行い、フィルタ201から核酸以外の成分を除去する洗浄工程(第一洗浄、第二洗浄)に入る。具体的に第九処理工程では、第一洗浄モードが開始され、まず、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ装着処理を行い、各分注シリンダ40の先端に第四番目の1000μL用のチップを装着する。その後、分注部4は、試薬収容部8上に移動して、第一洗浄液W1を所定量(例えば、500μL)吸引した後、各抽出カラム200(抽出カラム保持片203)の上方に移動して各抽出カラム200に向かって下降し、各抽出カラム200それぞれに対して第一洗浄液W1の全量を吐出する。そして、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ廃棄処理を行って、第四番目のチップを離脱、廃棄し、初期位置へ移動する。
なお、第一洗浄液W1は、上記説明したように、主として、核酸を沈殿させるために用いられるものである。その意味で、第一洗浄液W1は、核酸沈殿用溶液として機能する。第一洗浄液W1には、アルコール溶液(例えば、エタノール溶液)、及び塩が含まれる。抽出カラム200に第一洗浄液W1を加えると、核酸のリン酸部分がアルコール溶液で解離して、核酸が全体として、負電荷を帯びた状態になる。そこに、塩が加わると、核酸のリン酸の対イオンとして一価の陽イオンが核酸分子に近づく。これにより、核酸の負電荷が中和されるので、アルコール溶液中で親水性の高い核酸分子が凝集しやすくなる。結果、アルコール溶液中で核酸が沈殿する。つまり、第九処理工程では、主として、核酸を沈殿させて凝集させる処理(核酸沈殿処理)が行われる。なお、第九処理工程を核酸沈殿工程と呼ぶ。
第十処理工程では、加圧処理を行う。具体的に第十処理工程では、制御部10の制御の下、再び押圧部232によって受け部211Bを押圧して、第一昇降機構23及び第二昇降機構24によりカラムキャップ保持部211及び抽出カラム保持片203を下方に移動させる。この状態では、上記説明したように、加圧用カラムキャップ210によって抽出カラム200が密閉されている。そして、加圧部21は、制御部10の制御の下、加圧用シリンジ213を制御して、密閉された抽出カラム200のそれぞれに所定の空気圧を加えて(圧力を増加させて)、設定圧閾値を超える圧力まで圧力を増加させて、第二の加圧を行う。加圧部21は、設定圧閾値を超えて設定した圧力の印加状態を所定時間維持する(加圧(圧力の増加)を停止する)(図10(B)~(D)参照)。第二の加圧により、第一洗浄液W1を通じてフィルタ201は洗浄されるが、沈殿した核酸はフィルタ201に吸着しつつ、不純物(夾雑物質)の一部は洗浄液と共に廃液回収部22に排出される(図10(D))。
以上が終了すると、制御部10の制御の下、押圧部232が受け部211Bに対する押圧が解除されて、押圧解除処理が行われ、カラムキャップ保持部211(各加圧用カラムキャップ210)及び抽出カラム保持片203(各抽出カラム200)が初期位置に復帰する。その後、制御部10の制御の下、分注側駆動機構5、加圧側移動機構25により、分注部4、加圧部21は、初期位置に復帰する。なお、第九~十処理工程を第一前洗浄工程と呼び、第一前洗浄工程における処理を第一前洗浄処理(ステップS8)と呼ぶ。
第十一処理工程では、まず、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ装着処理を行い、各分注シリンダ40の先端に第五番目の1000μL用のチップを装着する。その後、分注部4は、試薬収容部8上に移動して、第二洗浄液W2を所定量(例えば、500μL)吸引した後、各抽出カラム200(抽出カラム保持片203)の上方に移動して各抽出カラム200に向かって下降し、各抽出カラム200それぞれに対して第二洗浄液W2の全量を吐出する。そして、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ廃棄処理を行って、第五番目のチップを離脱、廃棄し、初期位置へ移動する。
なお、第一前洗浄処理が行われた後、フィルタ201には、凝集した核酸のみならず、第一洗浄液W1に含まれる塩を含む不純物(夾雑物質)も残る。第二洗浄液W2は、フィルタ201に凝集した核酸を残しつつ、塩を含む不純物(夾雑物質)を除去するために用いられるものである。第二洗浄液W2は、例えば、70%程度のアルコール濃度を有するアルコール溶液(例えば、エタノール溶液)で構成される。
第十二処理工程では、制御部10の制御の下、押圧部232及び加圧部21により加圧処理を行って、第三の加圧を行い、各抽出カラム200のフィルタを洗浄する。第三の加圧により第二洗浄液W2を通じてフィルタ201は洗浄され、凝集した核酸はフィルタ201に残しつつ、塩を含む不純物(夾雑物質)と共に洗浄液が廃液回収部22に排出される。これにより、フィルタ201に吸着した塩を含む不純物(夾雑物質)をある程度除去することができる。その後、制御部10の制御の下、押圧部232が受け部211Bに対する押圧が解除されて、押圧解除処理が行われ、カラムキャップ保持部211(各加圧用カラムキャップ210)及び抽出カラム保持片203(各抽出カラム200)が初期位置に復帰する。その後、制御部10の制御の下、分注側駆動機構5、加圧側移動機構25により、分注部4、加圧部21は、初期位置に復帰する。ここで、第一洗浄モードが終了する。なお、第十一~十二処理工程を第一後洗浄工程と呼び、第一後洗浄工程における処理を第一後洗浄処理(ステップS9)と呼ぶ。そして、第一前洗浄工程と第一後洗浄工程を合わせた工程を第一洗浄工程と呼ぶ。
第十三処理工程では、第二洗浄側前処理モードが開始され、まず、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ装着処理を行い、各分注シリンダ40の先端に第六番目の1000μL用のチップを装着する。その後、分注部4は、試薬収容部8上に移動して、第三洗浄液W3を所定量(例えば、500μL)吸引した後、各抽出カラム200(抽出カラム保持片203)の上方に移動して各抽出カラム200に向かって下降し、各抽出カラム200それぞれに対して第三洗浄液W3の全量を吐出する。そして、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ廃棄処理を行って、第六番目のチップを離脱、廃棄し、初期位置へ移動する。
なお、第一後洗浄処理が行われた後、フィルタ201には、凝集した核酸のみならず、塩を含む不純物(夾雑物質)も未だに残る。例えば、第二洗浄液W2がアルコール濃度70%程度のアルコール溶液である場合、第二洗浄液W2にも不純物(夾雑物質)が含まれ、その不純物(夾雑物質)もフィルタ201に残る。フィルタ201に不純物(夾雑物質)が多く残ると、その不純物がRNAをDNAに逆転写する逆転写酵素の働きを阻害する可能性があり、結果、qPCR法による検出ができないことがあるため、フィルタ201からなるべく多くの不純物(夾雑物質)を除去することが好ましい。第三洗浄液W3は、フィルタ201に凝集した核酸を残しつつ、塩を含む不純物(夾雑物質)を更に除去するために用いられるが、特に、第二洗浄液W2におけるアルコール以外の不純物(夾雑物質)を機械的に抽出カラム200(フィルタ201)の外に押し出す意義を有する。
不純物を除去する観点から、第三洗浄液W3には、アルコール溶液以外の余計な不純物(夾雑物質)が含まれていないものが好ましい。その意味で、第三洗浄液W3は、最後に行われた第一洗浄処理で用いられた第二洗浄液W2よりも高濃度の高濃度アルコール溶液で構成されることが好ましい。第二洗浄液W2は、例えば、75%以下の濃度のアルコール溶液(例えば、エタノール溶液)で構成されるが、本実施形態では70%のアルコール溶液で構成されることが想定される。この場合、第三洗浄液W3は、90%以上の濃度のアルコール溶液であることが好ましく、99%以上の濃度のアルコール溶液であることがより好ましく、99.8%のアルコール濃度を有するアルコール溶液が更に好ましい。また、ここで用いられるアルコール溶液として、エタノール溶液が好ましい。
以下で説明する第十四処理工程の加圧処理を経て、最終的にフィルタ201に含まれる
成分が、第三洗浄液W3に起因する成分に置換されることが好ましい。このため、フィルタ201の液体最大吸収量をNとした場合、抽出カラム200に吐出される第三洗浄液W3の量は、2N以上(2回以上置換)が好ましく、5N以上(5回以上置換)がより好ましく、10N以上(10回以上置換)がさらに好ましい。
第十四処理工程では、加圧処理を行う。具体的に第十四処理工程では、制御部10の制御の下、再び押圧部232によって受け部211Bを押圧して、第一昇降機構23及び第二昇降機構24によりカラムキャップ保持部211及び抽出カラム保持片203を下方に移動させる。この状態では、上記説明したように、加圧用カラムキャップ210によって抽出カラム200が密閉されている。そして、加圧部21は、制御部10の制御の下、加圧用シリンジ213を制御して、密閉された抽出カラム200のそれぞれに所定の空気圧を加えて(圧力を増加させて)、設定圧閾値を超える圧力まで圧力を増加させて、第四の加圧を行う。加圧部21は、設定圧閾値を超えて設定した圧力の印加状態を所定時間維持する(加圧(圧力の増加)を停止する)(図10(B)~(D)参照)。第四の加圧により、第三洗浄液W3を通じてフィルタ201は洗浄されるが、沈殿した核酸はフィルタ201に吸着しつつ、不純物(夾雑物質)は洗浄液と共に廃液回収部22に排出される(図10(D))。
以上が終了すると、制御部10の制御の下、押圧部232が受け部211Bに対する押圧が解除されて、押圧解除処理が行われ、カラムキャップ保持部211(各加圧用カラムキャップ210)及び抽出カラム保持片203(各抽出カラム200)が初期位置に復帰する。その後、制御部10の制御の下、分注側駆動機構5、加圧側移動機構25により、分注部4、加圧部21は、初期位置に復帰する。なお、第十三~十四処理工程を第二洗浄側前処理工程と呼び、第二洗浄側前処理工程における処理を置換処理(第二洗浄側前処理:ステップS10)と呼ぶ。本発明において置換処理(第二洗浄側前処理:ステップS10)は、抽出カラム200(フィルタ201)の内部に収容されるものを第三洗浄液W3に置換するという意味で用いている。置換処理(第二洗浄側前処理)は、複数回行われてもよい。ここで、第二洗浄側前処理モード(置換モード)が終了する。
第十五処理工程では、第二洗浄側後処理モードが開始され、各抽出カラム200のフィルタ201を乾燥させる乾燥処理を行う。乾燥処理とは、所定時間放置してフィルタ201に残る第三洗浄液W3を乾燥させるものであってもよいし、別途備えた(図示しない)熱源を用いてフィルタ201に残る第三洗浄液W3を乾燥させるものであってもよい。第二洗浄側前処理工程において置換処理が複数行われる場合、乾燥処理は、第二洗浄側前処理工程の最後の置換処理の後に行われるが、これに限定されるものではなく、置換処理と交互に行われてもよい。乾燥処理によりフィルタ201に残る第三洗浄液W3を揮発させ、フィルタ201から除去することができる。そして、第三洗浄液W3として、不純物の濃度が低く、揮発性の高い高濃度アルコール溶液が用いられるため、置換処理で第三洗浄液W3に起因する不純物をフィルタ201に多く追加しなくて済むと共に、乾燥処理において、第一後洗浄処理で用いられるようなアルコール溶液と比べて乾燥時間が短くて済む。結果、核酸抽出にかかる時間を短くすることができる。更に、特に、第三洗浄液W3を用いれば、qPCR法にRNAを適用する場合、DNAに逆転写することを阻害する阻害物質を従来に比べて低減させることができる。なお、第十五処理工程を第二洗浄側後処理工程(乾燥工程)と呼び、第二洗浄側後処理工程(乾燥工程)における処理を乾燥処理(第二洗浄側後処理:ステップS11)と呼ぶ。乾燥処理(第二洗浄側後処理)は、置換処理(第二洗浄側前処理)毎に行われる。ここで、第二洗浄側後処理モード(乾燥モード)が終了する。
以上において第一前洗浄処理(ステップS8)、第一後洗浄処理(ステップS9)、第二洗浄側前処理(ステップS10)、第二洗浄側後処理(ステップS11)と複数回の洗浄処理を行ったが、第一洗浄処理は、少なくとも一回行えばよい。そして、第一洗浄処理を何回行おうとも、第二洗浄側前処理で用いられる第三洗浄液W3に含まれるアルコール溶液は、最後の第一洗浄処理で用いられた洗浄液としてのアルコール溶液よりも高濃度であればよい。
第十六処理工程では、核酸回収モードが開始され、制御部10の制御の下、図10(D),(E)に示すように、回収側移動機構26により各抽出カラム200の直下に核酸回収部3が位置するように核酸回収部3をスライド移動させる(図6B及び図7B参照。)。この際、核酸用回収容器30の開口30Aは、上下方向Aにおいて抽出カラム200の排出開口200Bの真下に位置する。
第十七処理工程では、まず、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ装着処理を行い、各分注シリンダ40の先端に第七番目の1000μL用のチップを装着する。その後、分注部4は、試薬収容部8上に移動して、回収用溶液E(例えば、純水(蒸留水)とキレート剤の混合溶液)を所定量(例えば、500μL)吸引した後、各抽出カラム200(抽出カラム保持片203)の上方に移動して各抽出カラム200に向かって下降し、各抽出カラム200それぞれに対して回収用溶液Eの全量を吐出する。そして、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ廃棄処理を行って、第七番目のチップを離脱、廃棄し、初期位置へ移動する。
第十八処理工程では、制御部10の制御の下、押圧部232及び加圧部21により加圧処理を行って、第五の加圧を行う。これにより、各抽出カラム200のフィルタ201に吸着していた核酸が回収用溶液Eとともに対応する核酸用回収容器30に排出され、所定量の核酸精製溶液が得られる(図10(G)参照)。その後、制御部10の制御の下、分注側駆動機構5、加圧側移動機構25により、分注部4、加圧部21は、初期位置に復帰する。なお、第十六~十八処理工程を核酸回収工程と呼び、核酸回収工程における処理を核酸回収処理(ステップS12)と呼ぶ。ここで、核酸回収モードが終了する。
なお、核酸回収処理(ステップS12)は、第二洗浄側後処理(ステップS11)及び第二洗浄側前処理(ステップS10)に代わって、又は、追加して、複数回行われてもよい。回収用溶液Eにより、フィルタ201に残存する不純物を除去するためである。このようなものも本発明の範囲に含まれる。
<プライマー溶液分注工程(制御部による自動運転)>
以降の工程では、得られた核酸精製溶液にプライマー溶液を分注する。まず、第十九処理工程では、プライマー溶液処理モードが開始され、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ装着処理を行い、各分注シリンダ40の先端に第八番目の20μL用チップを装着する。その後、分注部4は、核酸用回収容器30上に移動して核酸用回収容器30に向かって下降し、核酸精製溶液を吸引した後、各PCR容器(PCR容器保持部110)の上方に移動して各PCR容器に向かって下降し、各PCR容器それぞれに対して核酸精製溶液の全量を吐出する。そして、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ廃棄処理を行って、第八番目のチップを離脱、廃棄し、初期位置へ移動する。
その後、第二十処理工程では、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ装着処理を行い、各分注シリンダ40の先端に第九番目の20μL用チップを装着する。そして、分注部4は、プライマー保持部111で保持されるプライマー溶液用容器上に移動してプライマー溶液用容器に向かって下降し、プライマー溶液を吸引した後、PCR容器(PCR容器保持部110)の上方に移動してPCR容器に向かって下降し、PCR容器それぞれに対してプライマー溶液の全量を吐出する。そして、分注部4は、制御部10の制御の下、チップ廃棄処理を行って、第九番目のチップを離脱、廃棄し、初期位置へ移動する。以下、異なるプライマー溶液を別のPCR容器に吐出する場合も上記と同様に、チップ装着処理、プライマー溶液吸引処理、プライマー溶液吐出処理、チップ廃棄処理を順に行う。ここで、プライマー溶液処理モードが終了する。
以上のようにして自動運転が終了すると、検体毎の核酸精製溶液に複数のプライマー溶液が分注された混合液が調製される。なお、第十九~二十処理工程をプライマー溶液処理工程と呼び、プライマー溶液処理工程における処理をプライマー溶液処理(ステップS13)と呼ぶ。作業者は、核酸抽出装置1が停止した後、PCR容器を取り出し、リアルタイムPCR工程で核酸を増幅させて、例えば、230nm、260nm、280nmについて吸光度測定を行う。
このように、本実施形態によれば、操作者が、検体毎に用意された検体用容器90に検体を分注した以降は、検体溶液工程からプライマー溶液処理工程までを核酸抽出装置1によって自動連続処理できる。
本実施形態では、以上の操作を自動化することにより、複雑な操作でのミスの回避、
コンタミネーションによるミスの回避、操作者への感染や負担の軽減が可能となり、ひいては判定コストの低減を実現できる。また、検体溶解工程又は第一洗浄工程~核酸回収工程までにおいて、遠心分離機が不要となるので、装置の小型化、低価格化が実現する。さらに、検体溶解工程又は第一洗浄工程~核酸回収工程では、操作も複雑で工程が多く、時間も要するため、自働化が望まれる部分であったが、本実施形態によれば、自動化によって操作時間の短縮、結果の再現性向上を実現できる。
<RNA(SARS-Cov-2(RdRp)遺伝子)の抽出検証1>
本願発明者は、本願発明の核酸抽出装置を用いた2種類の核酸抽出方法と、遠心操作を手動で行った核酸抽出方法(以下、遠心抽出法と呼ぶ。)と、によりリン酸緩衝溶液(PBS)に標的RNA(SARS-Cov-2(RdRp)遺伝子)を添加し、その抽出、精製の可否を検証した。本検証では、QIAmp(Qiagen社)、及びCica gene(関東化学社)の抽出カラムを用いた。本願発明の核酸抽出装置を用いた2種類の核酸抽出方法のうち、一方は、上記説明した本実施形態における核酸抽出方法(以下、第一本願核酸抽出方法と呼ぶ。)であり、他方は、上記説明した本実施形態における核酸抽出方法において、第二洗浄側前処理(ステップS10)及び第二洗浄側後処理(ステップS11)を省いたもの(以下、比較核酸抽出方法と呼ぶ。)である。なお、比較核酸抽出方法は、特開2015-139398号公報に記載されたプロトコルと実質的に同様である。以上の3種類の核酸抽出方法により得られたRNA精製溶液に逆転写酵素を用いてDNA精製溶液を作成し、それぞれのCT値をqPCR法により算定した。その結果を図11の表に示す。
遠心抽出法での陽性検体(PBS +RNA)のCT値は、QIAmpの抽出カラム及びCica geneの抽出カラムに収容された検体間において殆ど差はなく、いずれもCT値は、32程度であった。いずれの抽出カラムに収容された検体においても添加した標的RNAが同様に、検出可能に精製されていることが示された。また、陰性検体(PBS -RNA)では、図11の表に示すように、標的RNAは検出されなかったが、内部標準試料(Internal control)のCT値が約18(17.7、17.6)程度であることから、検体間における汚染(コンタミネーション)は確認されなかった。
比較核酸抽出方法では、2種類の抽出カラムに収容された検体において標的RNA及び内部標準試料は検出されなかった。内部標準試料も検出できなかったことから、精製、抽出工程において回収できなかった、洗浄液等に含まれる、塩、夾雑物質等がRNA精製溶液に残っていることで、反応等が阻害されたなどの要因が考えられる。
第一本願核酸抽出方法では、比較核酸抽出方法に第十四処理工程における第二洗浄側前処理(ステップS10)と、第十五処理工程における第二洗浄側後処理(ステップS11)が加わるが、これにより、QIAmpの抽出カラム及びCica geneの抽出カラムに収容された検体のいずれにおいても、遠心法と近似したCT値結果を得た。また、内部標準試料のCT値が18(17.6、17.7)程度であることから、塩や夾雑物質の除去精製に問題がないことが示された。また、陰性検体(PBS -RNA)での標的RNAの検出もされなかったことから、第一本願核酸抽出方法による検体間汚染は無いことが示された。この結果、第一本願核酸抽出方法では、SARS-Cov-2遺伝子の検体間汚染なく、抽出、精製処理ができ、且つqPCR法による検出が可能であることが示された。このことから、第二洗浄側前処理(ステップS10)と、第十五処理工程における第二洗浄側後処理(ステップS11)によりRNAから塩、夾雑物質等の不純物の多くを除去できたことが証明された。
<RNA(293T細胞 精製RNAを用いたACTIN遺伝子)の抽出検証2>
本願発明者は、本願発明の核酸抽出装置を用いた4種類の核酸抽出方法と、遠心操作を手動で行った核酸抽出方法と、によりリン酸緩衝溶液(PBS)に標的RNA(293T細胞 精製RNAを用いたACTIN遺伝子)を添加し、その抽出、精製の可否を検証した。本願発明の核酸抽出装置を用いた4種類の核酸抽出方法のうち、2種類は、第一本願核酸抽出方法と比較核酸抽出方法である。残りの一方は、本実施形態における核酸抽出方法において、第二洗浄側前処理(ステップS10)及び第二洗浄側後処理(ステップS11)の代わりに、核酸回収処理(ステップS12)を2回行ったもの(以下、第二本願核酸抽出方法と呼ぶ。)であり、残りの他方は、本実施形態における核酸抽出方法において、第二洗浄側前処理(ステップS10)及び第二洗浄側後処理(ステップS11)に追加して、核酸回収処理(ステップS12)を2回行ったもの(以下、第三本願核酸抽出方法と呼ぶ。)である。以上の4種類の核酸抽出方法により得られたRNA精製溶液に逆転写酵素を用いてDNA精製溶液を作成し、それぞれの、RNAの収量を示す「RNA conc.」、RNAの純度を示す「A260/A280」、及びCT値を算定した。
その結果を図12の表に示す。図12の表において、C1(遠心、通常)は、一般的な遠心抽出法における通常の流れでRNAを抽出した際のものを表す。C2(遠心、通常+エタ乾)は、一般的な遠心抽出法に、洗浄処理として本実施形態の第二洗浄側前処理(ステップS10)及び第二洗浄側後処理(ステップS11)と同様の工程を追加してRNAを抽出した際のものを表す。つまり、C2では、追加工程にアルコール濃度が99.8%のエタノール溶液を洗浄液として用い、且つその洗浄液としてのエタノール溶液を乾燥させる工程を加えている。P1-1(加圧、通常)は、比較核酸抽出方法でRNAを抽出した際のものを表す。P1-2(加圧、通常+回収用溶液E50μL)は、第二本願核酸抽出方法であり、核酸回収工程で回収用溶液E(純水)を50μL、2回加えて、RNAを抽出した際のものを表す。P2-1(加圧、通常+エタ乾)は、第一本願核酸抽出方法でRNAの抽出した際のものを表す。P2-2(加圧、通常+エタ乾+回収用溶液E50μL)は、第三本願核酸抽出方法であり、核酸回収工程で2回核酸回収処理を行い、2回目の核酸回収処理で50μLの回収用溶液E(純水)を用いて、RNAを抽出した際のものを表す。PR-1(加圧、通常+エタ乾)は、第一本願核酸抽出方法でRNAの抽出した際のものを表す。PR2-2(加圧、通常+エタ乾+回収用溶液E50μL)は、第三本願核酸抽出方法であり、核酸回収工程で2回核酸回収処理を行い、2回目の核酸回収処理で50μLの回収用溶液E(純水)を用いて、RNAを抽出した際のものを表す。
図12の表に示すP1-1を除くP1-2~PR2-2に対応する各値を見れば明らかなように、第一~三本願核酸抽出方法では、遠心抽出法に対応するC1,C2と比較してRNAの収量が1/7~1/8程度なのにも関わらず、遠心抽出法に対応するC1,C2と同様に、問題なく、qPCR法を適用可能な程度に高い精製度でRNAを抽出できている。つまり、第一~三本願核酸抽出方法のように、比較核酸抽出方法に本実施形態の第二洗浄側前処理(ステップS10)及び第二洗浄側後処理(ステップS11)を加えたり、比較核酸抽出方法における核酸回収処理(ステップS12)を複数回行ったりすることにより、高い精製度でRNAを抽出することが証明された。
尚、本発明の核酸抽出方法、及び核酸抽出装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
1 核酸抽出装置
2 核酸抽出部
3 核酸回収部
4 分注部
5 分注側駆動機構
6,6A,6B チップ保持部
7 廃棄チップ回収部
8 試薬収容部
9 検体保持部
10 制御部
11 プライマー処理部
12 操作部
13 表示部
14 筐体
20 分離部
21 加圧部
22 廃液回収部
23 第一昇降機構
24 第二昇降機構
25 加圧側移動機構
26 回収側移動機構
30 核酸用回収容器
31 核酸用回収容器保持部
32 核酸用回収容器保持片
40 分注シリンダ
41 シリンダ保持部
42 圧力調整部
90 検体用容器
110 PCR容器保持部
111 プライマー保持部
200 抽出カラム
201 フィルタ
202 抽出カラム保持部
203 抽出カラム保持片
210 加圧用カラムキャップ
211 カラムキャップ保持部
212 加圧用チューブ
213 加圧用シリンジ
214 圧力センサ
220 廃液用回収容器
221 廃液用回収容器保持部
222 廃液用回収容器保持片
230,240 案内部
231,241 付勢部
232,242 押圧部

Claims (10)

  1. 溶解されて核酸を抽出可能な状態の検体を収容するフィルタ付きの容器にアルコール溶液を注入すると共に、前記容器を加圧して、該核酸を前記フィルタに吸着させつつ、前記フィルタに吸着する不純物を除去し、前記アルコール溶液を前記容器から排出する第一洗浄処理を少なくとも1回行う第一洗浄工程と、
    前記第一洗浄工程において最後に行われた前記第一洗浄処理で注入された前記アルコール溶液のアルコール濃度よりも高濃度の高濃度アルコール溶液を前記容器に注入し、前記容器に残存する前記アルコール溶液を該高濃度アルコール溶液に置換して、該高濃度アルコール溶液を排出する置換処理を少なくとも1回行う第二洗浄側前処理工程と、
    前記第二洗浄側前処理工程の後に前記高濃度アルコール溶液を乾燥させる乾燥処理を行う第二洗浄側後処理工程と、
    前記フィルタに付着した前記核酸を回収する核酸回収工程と、
    を備えることを特徴とする、
    核酸抽出方法。
  2. 最後に行われた前記第一洗浄処理で注入された前記アルコール溶液は、75%以下のアルコール濃度を有し、
    前記高濃度アルコール溶液は、90%以上のアルコール濃度を有することを特徴とする、
    請求項1に記載の核酸抽出方法。
  3. 前記アルコール溶液及び前記高濃度アルコール溶液は、エタノール、イソプロパノール及びプロパノールの少なくともいずれかであることを特徴とする、
    請求項1又は2に記載の核酸抽出方法。
  4. 前記第一洗浄工程は、
    第一の濃度の第一のアルコール溶液を前記容器に注入すると共に前記容器を加圧して、前記核酸を前記フィルタに吸着させつつ、前記フィルタに吸着する不純物を除去し、前記第一のアルコール溶液を前記容器から排出する第一前洗浄工程と、
    前記第一前洗浄工程の後に、前記第一の濃度よりも低い濃度の第二の濃度の第二のアルコール溶液を前記容器に注入すると共に前記容器を加圧して、前記核酸を前記フィルタに吸着させつつ、前記フィルタに吸着する不純物を除去し、前記第二のアルコール溶液を前記容器から排出する第一後洗浄工程と、
    を有することを特徴とする、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸抽出方法。
  5. 前記第一のアルコール溶液には、前記検体において前記核酸を凝集させるための塩が含まれることを特徴とする、
    請求項4に記載の核酸抽出方法。
  6. 前記置換処理は、前記高濃度アルコール溶液が前記容器に注入された後に、前記容器を加圧して、前記核酸を前記フィルタに吸着させつつ、前記フィルタに吸着する不純物を除去し、前記高濃度アルコール溶液を前記容器から排出することを特徴とする、
    請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸抽出方法。
  7. 前記検体を溶解して該検体から前記核酸を抽出可能な状態にする検体溶解工程を、前記第一洗浄工程より前に備え、
    前記検体溶解工程は、
    前記検体を溶解させるための溶解処理溶液を前記検体に加えて酵素反応をさせる工程と、
    エタノール溶液を加えて前記酵素反応を停止させる工程と、
    前記エタノール溶液と前記検体の混合液を前記容器に注入すると共に前記容器を加圧して、該エタノール溶液を排出する工程と、
    を含むことを特徴とする、
    請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸抽出方法。
  8. 溶解されて核酸を抽出可能な状態の検体を収容するフィルタ付きの容器にアルコール溶液を注入すると共に、前記容器を加圧して、該核酸を前記フィルタに吸着させつつ、前記フィルタに吸着する不純物を除去し、前記アルコール溶液を前記容器から排出する洗浄処理を複数回行う洗浄工程と、
    前記フィルタに吸着する前記核酸を回収するための回収用溶液を前記容器に注入すると共に前記容器を加圧して、前記フィルタに付着した前記核酸を回収する核酸回収処理を複数回行う核酸回収工程と、
    を備えることを特徴とする、
    核酸抽出方法。
  9. 検体から核酸を抽出する核酸抽出装置であって、
    前記検体を含む溶液を収容可能で注入開口及び排出開口を有するフィルタ付きの容器を有し、該フィルタにより前記検体から前記核酸を分離可能な分離部と、
    前記容器を加圧する加圧部と、
    前記フィルタから前記核酸を回収する核酸回収部と、
    アルコール溶液を含む複数の試薬を収容する試薬収容部と、
    複数の前記試薬のいずれかを前記注入開口から前記容器に分注する分注部と、
    前記加圧部及び前記分注部を制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、第一洗浄モード、第二洗浄側前処理モード、及び第二洗浄側後処理モードを有し、
    前記第一洗浄モードでは、溶解されて前記核酸が抽出可能な状態の前記検体が収容された前記容器に、前記分注部により前記アルコール溶液を注入させると共に、前記加圧部に前記容器を加圧させ、前記核酸を該フィルタに吸着させると共に前記フィルタに吸着する不純物を除去しつつ、前記アルコール溶液を前記容器から排出する第一洗浄処理を少なくとも1回行い、
    前記第二洗浄側前処理モードでは、前記第一洗浄モードにおいて最後に行われた前記第一洗浄処理で注入された前記アルコール溶液のアルコール濃度よりも高濃度の高濃度アルコール溶液を前記分注部により前記容器に注入して、前記容器に残存する前記アルコール溶液を該高濃度アルコール溶液に置換して排出する置換処理を少なくとも1回行い、
    前記第二洗浄側後処理モードでは、最後の前記置換処理の後に前記高濃度アルコール溶液を乾燥させる乾燥処理を行うことを特徴とする、
    核酸抽出装置。
  10. 前記分離部は、複数の前記容器を同じ姿勢で第一配列方向に並列に配列可能な容器保持片が、前記第一配列方向に直交する第二配列方向に列状に複数配置された容器保持部を有し、
    前記加圧部は、前記容器保持片毎に複数の前記容器を同時に加圧可能に構成され、
    前記分離部に対して前記加圧部を前記第二配列方向に相対移動させる移動機構と、
    前記容器の前記注入開口側において前記容器に接近及び離反するよう前記分離部に対して前記加圧部を相対的に昇降させる昇降機構と、
    を備えることを特徴とする、
    請求項9に記載の核酸抽出装置。
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