JP2022145508A - NiZn系フェライト - Google Patents

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Abstract

【課題】生産性に優れ、温度に対する複素比透磁率の変化率の増加を抑制可能なNiZn系フェライトを提供する。【解決手段】Fe2O3換算で47.50mol%以上48.60mol%以下のFe、ZnO換算で29.00mol%以上30.11mol%以下のZn、CuO換算で5.50mol%以上6.50mol%以下のCu、NiO換算で14.80mol%以上18.00mol%以下のNiからなり、Fe2O3、ZnO、NiO、CuOの合計量が100mol%であって、Fe、Zn、Ni、Cuの合計量をそれぞれFe2O3、ZnO、NiO、CuO換算で100質量部としたとき、MnがMn3O4換算で0.100質量部以上0.400質量部以下、TiがTiO2換算で0.050質量部以上0.500質量部以下、CaがCaO換算で0.025質量部以下、SiがSiO2換算で0.250質量部以下である、NiZn系フェライトとする。【選択図】図3

Description

本発明は、NiZn系フェライトに関するものである。
近年の自動車では、複数の電子制御装置の間で差動伝送によるデータ通信を行う車載LAN(Local Area Network)による車両制御システムが採用されている。車両制御システムでは様々な電子部品が使用されているが、データ通信におけるノイズの漏洩防止や、外来ノイズが信号の経路に重畳するのを抑制し、車載機器の誤動作を防ぐように、信号の経路にノイズフィルタが使用されている。ノイズフィルタは、フェライトコア(以下磁心と呼ぶ)に導線を巻いたコモンモードチョークコイルが使用される。コモンモードチョークコイルの構成は様々だが、例えば特許文献1に記載されるような、ドラム型のコアと、それを覆う板状のコアを磁心として使用するコモンモードチョークコイルがある。
ノイズフィルタでは、磁心を構成するソフトフェライトの複素比透磁率μと周波数の積で表されるインピーダンスZをノイズの除去に利用する。
一般にソフトフェライトの複素比透磁率μには、磁気共鳴による損失によって周波数が高くなると実数部μ’が低下するスネーク(Snoek)の限界があることが知られている。複素比透磁率μが高いソフトフェライトほど、相対的に低い周波数から実部μ’が低下し始める。実部μ’が低下するに従い、虚部μ”は増加し、ピークを示した後、低下する。このような複素比透磁率μは式1で表され、その実部μ’、虚部μ”の変化に応じて、インピーダンスZは周波数が高くなるに従い指数的に増加し、実部μ’と虚部μ”の低下に伴い減少する挙動を示す。
Figure 2022145508000002
例えば、車載LANとして広く普及する差動伝送によるデータ通信の規格としてCAN(Controller Area Network))が知られている。信号周波数(CANでは、250kHzあるいは500kHz)の高調波が数十MHz帯まで放射ノイズとなる場合があるため、信号経路に使用されるノイズフィルタは、コモンモードノイズを減衰させるように10MHz以上の高周波数帯でインピーダンスが大きいことが求められている。
またノイズフィルタは、高温となる自動車のエンジンルーム内でも使用される。その為、例えば-40℃~+150℃の広い温度範囲で使用可能であるように、ソフトフェライトの磁気転移温度(キュリー温度Tc)は、少なくとも使用される温度を超える150℃超の温度であり、複素比透磁率μの温度依存性が小さいことが要求される場合もある。
このような要求事項に対して、特許文献2ではFe、Zn、Ni、Cu、Tiを含み、Fe-Zn-Ni-Cu結晶の粒界にTiを含む化合物を分散させたノイズフィルタ用のソフトフェライトを開示している。キュリー温度が160℃以上であり、透磁率の温度変化率を-40%以上40%以下に抑えることができて、低温域から高温域にわたる広範囲な温度域において、安定したノイズ除去性能を有する優れたノイズフィルタとすることができると記載されている。
特開2012-89804号公報 特開2011-246343号公報
特許文献2では、結晶粒界にTiを含む化合物を分散させる粒界構造とするのに、Fe、ZnO、NiO、CuO粉末を700℃以上750℃以下の温度で仮焼し、得られた仮焼粉体に、更にTiOを添加して均質に粉砕し、得られた粉砕粉を成形して所定の温度で焼成することが必要である。
ところでソフトフェライトの磁気特性は、素原料に含まれる不可避不純物の量によって影響されることが知られている。本発者はTiを含むNiZn系フェライトの透磁率の温度変化率について、素原料に含まれる不可避不純物であるMn、Ca、Siに着目して検討したところ、MnとSiは温度変化率の絶対値を大きくし、Caは透磁率を低下させることが判明した。このことは特許文献2では開示されていない、Ti、Mn、Ca、Siを含むNiZn系フェライトにおける課題である。
また特許文献2の表2によれば、TiO量が増加するに従いキュリー温度Tcが減少し、高温側の透磁率の温度変化率は増加する傾向があり、更なる改善の余地があった。
そこで本発明は、キュリー温度が高く、温度に対する複素比透磁率の変化率を抑制可能なNiZn系フェライトを提供することを目的とする。
本発明は、Fe換算で47.50mol%以上48.60mol%以下のFe、ZnO換算で29.00mol%以上30.11mol%以下のZn、CuO換算で5.50mol%以上6.50mol%以下のCu、NiO換算で14.80mol%以上18.00mol%以下のNiからなり、Fe、ZnO、NiO、CuOの合計量が100mol%であって、Fe、Zn、Ni、Cuの合計量をそれぞれFe、ZnO、NiO、CuO換算で100質量部としたとき、MnがMn換算で0.100質量部以上0.400質量部以下、TiがTiO換算で0.050質量部以上0.500質量部以下、CaがCaO換算で0.025質量部以下、SiがSiO換算で0.250質量部以下である、NiZn系フェライトである。
本発明においては、TiがTiO換算で0.160質量部以上0.500質量部以下であるのが好ましい。
また本発明においては、MnがMn換算で0.100質量部以上0.350質量部以下、TiがTiO換算で0.160質量部以上0.450質量部以下であるのが好ましい。
本発明によれば、キュリー温度が高く、温度に対する複素比透磁率の変化率を抑制可能なNiZn系フェライトを提供することが出来る。
本発明のNiZn系フェライトが用いられる電子部品の一例を示す等価回路図である。 本発明のNiZn系フェライトが用いられた磁心にコイルと端子を設けた構造を示す斜視図である。 図2に示した電子部品の外観構造を示す斜視図である。
以下、本発明の一実施形態に係るNiZn系フェライトとそれを用いた磁心、ノイズフィルタについて具体的に説明する。特に断りがなければ一つの実施形態に関する説明は他の実施形態にも適用される。また下記説明は限定的ではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更及び追加を施しても良く、適宜変更可能である。
図3はノイズフィルタの外観斜視図であり、本発明のNiZn系フェライトは、例えばその磁心に用いられる。ノイズフィルタ10は、ドラム型のコア(第1磁心)21と板状のコア(第2磁心)22と、第1磁心21に設けられた巻線30と端子31、32を含み、第1磁心21を覆うように第2磁心22が配置され、互いが接着固定された閉磁路構造に構成されている。
図2は図3のノイズフィルタ10から第2磁心22を除いて示した斜視図である。第1磁心21は軸部(図示せず)と、その端部に第1の鍔部25と第2の鍔部26を有し、第1磁心21の軸部上には2本の導線が螺旋状にバイファイラ巻で巻かれていて、第1導線30aおよび第2導線30bを形成している。第1磁心21の第1の鍔部25には2つの端子31、32が形成されている。また第2の鍔部26には端子33のみが現れているが、第1の鍔部25と同様の2つの端子が形成されていて、鍔部のそれぞれには2つの端子を有している。第1導線30aの一端は第1の端子31と接続し、他端は図示されない第2の端子と接続する。また第2導線30bの一端は第3の端子32と接続し、他端は第4の端子33と接続する。
図1は図3に示したノイズフィルタ(コモンモードチョークコイル)の等価回路図である。図中、ターミナルT1は図3のノイズフィルタにおいて第1の端子31に対応する。またターミナルT2は図示されない第2の端子に対応する。ターミナルT3は第3の端子32に対応し、ターミナルT4は第4の端子33に対応する。
(NiZn系フェライトの組成)
磁心に用いるNiZn系フェライトは、Fe換算で47.50mol%以上48.60mol%以下のFe、ZnO換算で29.00mol%以上30.11mol%以下のZn、CuO換算で5.50mol%以上6.50mol%以下のCu、NiO換算で14.80mol%以上18.00mol%以下のNiからなり、Fe、ZnO、NiO、CuOの合計量が100mol%であって、Fe、Zn、Ni、Cuの合計量をそれぞれFe、ZnO、NiO、CuO換算で100質量部としたとき、MnがMn換算で0.100質量部以上0.400質量部以下、TiがTiO換算で0.050質量部以上0.500質量部以下、CaがCaO換算で0.025質量部以下、SiがSiO換算で0.250質量部以下である組成で表される。この他に、素原料中の不可避的な不純物元素が含まれ得る。
FeはFe換算で47.50mol%以上48.60mol%以下であるのが好ましい。Fe量の増加とともに、後述する複素比透磁率μの変化率Δμminや変化率Δμmaxの絶対値が増加し、48.60mol%超だと所望の変化率Δμmin、Δμmaxが得られない場合がある。ここで所望の変化率Δμmin、Δμmaxとは、変化率Δμmin、Δμmaxの絶対値がそれぞれ45%以下である。また47.50mol%未満だと、温度25℃における複素比透磁率μ25が低下し、所望の複素比透磁率μ25が得られない場合がある。所望の複素比透磁率μ25は900超である。Feは48.50mol%以下とするのが更に好ましい。また47.80mol%以上が更に好ましく、48.00mol%以上が一層好ましい。
ZnはZnO換算で29.00mol%以上30.11mol%以下であるのが好ましい。ZnOが29.00mol%未満では、所望の複素比透磁率μ25が得られない場合がある。30.11mol%超では160℃以上のキュリー温度Tcが得られない場合がある。変化率Δμmaxを低減するのに29.25mol%以上であるのが好ましく、29.90mol%以下であるのが好ましい。
そしてFe及びZnOの含有量は77.00mol%以上78.50mol%以下であるのが好ましい。77.00mol%以上とすることで複素比透磁率μ25を900超とすることが出来る。より好ましくは77.30mol%以上である。また78.40mol%以下であるのが好ましい。
CuはCuO換算で5.50mol%以上6.50mol%以下であるのが好ましい。CuOが5.50mol%未満、あるいは6.50mol%超であると、所望の複素比透磁率μ25が得られない場合がある。CuOの好ましい含有量は5.70mol%以上である。また6.30mol%以下が好ましい。
またNiはNiO換算で14.80mol%以上18.00mol%以下であるのが好ましい。NiO量はFe、ZnO、NiO、CuOの合計100mol%から、Fe、ZnO、CuOの上記成分の合計量を引いた残部である。
不純物元素として、具体的には、B、C、S、Cl、Se、Br、P、Te、I、Li、Na、Mg、Al、K、Ga、Ge、Sr、In、Sn、Sb、Ba、Bi、Sc、V、Cr、Y、Nb、Mo、Pd、Ag、Hf、Ta、Zr、Co、Pb等が挙げられる。本発明においては、いずれもNiZn系フェライトのキュリー温度Tcや温度に対する複素比透磁率の変化率Δμmin、Δμmaxに影響を与えない程度、すなわち所望の性能が得られる範囲であれば含んでいても良い。
Mnは素原料となる酸化鉄に多く含まれるが、NiZn系フェライトに含まれるMnを、Fe、ZnO、NiO、CuO換算でのFe、Zn、Ni、Cuの合計量100質量部に対し、Mn換算で0.100質量部以上0.400質量部以下とするのが好ましい。NiZn系フェライトに含まれるMnの量が増加すると、複素比透磁率の変化率Δμmin、Δμmaxの絶対値が増加するとともに、複素比透磁率は徐々に低下するため、0.400質量部以下であるのが好ましく、更に0.350質量部以下であるのが好ましい。またMnの量を低減するには純度の高い酸化鉄を素原料に使用すれば良いが高価であるため、市場で入手可能な酸化鉄に含まれるMn量を考慮して、0.100質量部以上とするのが好ましい。
Siはその量が増加するほどNiZn系フェライトのキュリー温度Tcや複素比透磁率μを増加させる点で好ましいものの、複素比透磁率の変化率Δμmin、Δμmaxの絶対値もまた増加する為、NiZn系フェライトに含まれるSiを、Fe、ZnO、NiO、CuO換算でのFe、Zn、Ni、Cuの合計量100質量部に対してSiO換算で0.050質量部以下とするのが好ましく、更に好ましくは0.010質量部以下である。Siの下限は、SiO換算で0質量部以上であり、工業的量産では不純物として入って0.001質量部以上になることがある。
Caはその量が増加するほどNiZn系フェライトの複素比透磁率の変化率Δμmin、Δμmaxの絶対値を減少させるが、複素比透磁率も減少するため、NiZn系フェライトに含まれるCaを、Fe、ZnO、NiO、CuO換算でのFe、Zn、Ni、Cuの合計量100質量部に対して、CaO換算で0.025質量部以下とするのが好ましく、0.015質量部以下とするのがより好ましい。Caの下限は、CaO換算で0質量部以上であり、工業的量産では不純物として入って0.001質量部以上になることがある。
Tiはその量が増加するほどNiZn系フェライトの複素比透磁率が増加するが、複素比透磁率の変化率Δμmin、Δμmaxの絶対値が増加するため、NiZn系フェライトに含まれるTiを、Fe、ZnO、NiO、CuO換算でのFe、Zn、Ni、Cuの合計量100質量部に対してTiO換算で0.050質量部以上0.500質量部以下とするのが好ましい。更に好ましい下限は0.160質量部以上であり、上限は0.450質量部以下である。
素原料中に含まれるその他の不純物元素は酸化物換算でそれぞれ数ppmから数十ppm程度を上限とするのが好ましい。またNiZn系フェライトに含まれる他の不可避的不純物は、いずれも0.005質量部以下であるのが好ましい。
Fe、ZnO、NiO、CuOの各成分の定量は、蛍光X線分析及びICP発光分光分析により行うことができる。予め蛍光X線分析により含有元素(Fe、Zn、Ni、Cu、Mn、Zr、Sn、P、S、Bi、Mg、Al、Si、Cl、K、Ca、Ti、V、Cr、Co、Pbなど)の定性分析を行い、次に含有元素を標準サンプルと比較する検量線法により定量する。また不可避不純物は燃焼-赤外線吸収法や原子吸光法等の手段で定量することが出来る。なお、Feの素原料中に多く含まれるMnや、自然界に多く存在し、汚染を生じさせ易いCa、Siを除けば、他の元素は含まれていても微量であるので、Fe、ZnO、NiO、CuOの素原料の検査表に記載された量から、Fe、ZnO、NiO、CuOの組成比率に応じて算出した値を基に、組成比率からNiZn系フェライトに含まれる量を算出しても差し支えない。
(NiZn系フェライトの製造方法)
NiZn系フェライトを構成するFe、Zn、Ni、Cuの各元素の化合物(酸化物)粉末を素原料として用い、それらを所定割合で湿式混合した後、乾燥し、原料粉末とする。原料粉末を700℃以上でかつ焼結温度より低い温度で仮焼きしてスピネル化を進め、仮焼体を得る。
スピネル化が進むに従い仮焼体の粉砕に時間を要するようになるため、焼結温度より低い仮焼温度は具体的には焼結温度に対して100℃以上低いのが好ましい。一方、仮焼温度が700℃未満であると、スピネル化が遅すぎて仮焼に必要な時間が長くなりすぎるため、700℃以上であることが好ましい。仮焼温度は好ましくは850℃以上である。なお、仮焼体の組成が所望の組成と差(ずれ)があった場合に、仮焼体の粉砕の際に、Fe、Zn、Ni、Cuの各元素の化合物を添加して組成調整しても良い。
仮焼体をイオン交換水とともにボールミルに投入し、湿式粉砕してスラリーとする。仮焼体の粉砕は、粉砕粉末の平均粒径(空気透過法で測定)が1.2μm以上2.5μm以下となるまで行うのが好ましく、1.5μm以上2.0μm以下となるまで行うのがより好ましい。粉砕時間は0.1時間以上4.0時間以下が好ましい。0.1時間未満では好ましい粉砕粒径が得られないことがあり、また4.0時間超だと粉砕機の粉砕メディアや容器等の部材の磨耗等による不純物の混入が増加するおそれがある。
スラリーにポリビニルアルコール等のバインダを加え、スプレードライヤーで顆粒化した後、加圧成形して所定形状の成形体を得る。成形体を焼成炉で1000℃以上1200℃以下の温度で焼結して焼結体(NiZn系フェライトの磁心)とする。焼成工程は昇温工程と、保持工程と、降温工程とを有する。焼成工程における雰囲気は、不活性ガス雰囲気でも大気雰囲気でも良い。1000℃以上1200℃以下の温度となる保持工程では、所定の温度範囲に所定時間保持するのが好ましい。
仮焼粉末の平均粉砕粒径が小さいと焼結反応活性が高く、低い温度から緻密化が促進され易いが、一方で焼成炉の設定温度が高いと焼結が過剰となり、粗大な結晶組織が生じて結晶粒径が均一で緻密な焼結体とするのが困難となる。粉砕粉末の平均粒径を1.2μm以上とし、焼成工程での焼結温度を1000℃以上1200℃以下とすることで、焼結体の複素比透磁率μ25や複素比透磁率μの変化率Δμmin、Δμmaxが安定するので好ましい。
得られた焼結体の複素比透磁率μ、焼結体密度ds、平均結晶粒径dは、下記の方法により測定することが出来る。また得られた複素比透磁率μから変化率Δμmax、Δμminを算出することが出来る。
(1)複素比透磁率μ
焼結体を円環状の磁心とし、それに導線を巻回したコイル部品を評価用試料とする。LCRメータ(アジレント・テクノロジー株式会社製の4285A)により、100kHz、1mAの電流でのインダクタンスLと抵抗Rとを測定し、得られたインダクタンスLと抵抗Rから、式2~式4を用いて複素比透磁率μ、その実部μ’、虚部μ”を算出する。
(a)複素比透磁率μの実部μ’
Figure 2022145508000003
(b)複素比透磁率μの虚部μ”
Figure 2022145508000004
(c)複素比透磁率μ
Figure 2022145508000005
なお、円環状の磁心は、磁路と直交する断面が矩形で、内径φ20mm、外径φ30mm、厚み8mmの寸法とした。またAeは磁心の実効断面積(m)、leは磁心の実効磁路長(m)、μは真空の透磁率 [4π×10-7](H/m)、Nは導線の巻き回数、fは周波数(Hz)、Lmは測定インダクタンス(H)、Rmは測定抵抗(Ω)である。導線は線径がφ0.5mmのエニックワイヤー (Ennick wire)を使用し、巻き回数Nは20ターンとした。
(2)複素比透磁率μの変化率Δμmax、Δμmin
複素比透磁率μの測定で使用する評価用試料を恒温槽内の測定治具に接続する。なお、測定治具はLCRメータ(4285A)に接続されており、-40℃から150℃の間で、評価用試料の温度を変化させ、100kHzの周波数で、インダクタンスLと抵抗Rを測定する。温度Tの条件で得られたインダクタンスLと抵抗Rから式2から式4によって複素比透磁率μを算出した。複素比透磁率μは温度Tにおける複素比透磁率μであり、例えば複素比透磁率μ25は温度25℃における複素比透磁率μである。また複素比透磁率μmaxは、-40℃から150℃までの温度にて最も高い複素比透磁率μであり、Tμmaxは複素比透磁率μmaxとなる温度である。また複素比透磁率μminは、-40℃から150℃までの温度にて最も低い複素比透磁率μであり、Tμminは複素比透磁率μminとなる温度である。得られた複素比透磁率μを使って式5から変化率Δμmaxを、式6から変化率Δμminを算出する。
複素比透磁率μの正の側の最大の変化率Δμmaxは式5で算出された絶対値である。
Figure 2022145508000006
複素比透磁率μの負の側の最大の変化率Δμminは式6で算出された絶対値である。
Figure 2022145508000007
(3)キュリー温度Tc
キュリー温度Tcは、同様の試料を用いて、LCRメータを用いてJIS C2560により求めた。
(4)焼結体密度ds
NiZn系フェライトの焼結体の寸法及び重量から体積重量法により密度を算出した。焼結体密度は5.10×10kg/mを閾値とし、閾値超を「良好」と判断した。焼結体密度が小さいと焼結不足が考えられ、機械的強度が劣り、欠けや割れが生じ易い。
(5)平均結晶粒径
NiZn系フェライトの焼結体を焼成温度より低い温度でサーマルエッチングし、その表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(3000倍)を撮った。SEM写真の観察面積は、3000倍で33μm×43μmであった。SEM写真上に長さL1の3本の任意の直線を引き、各直線上に存在する結晶粒の数N1をカウントし、各直線について長さL1を粒子数N1で除した値L1/N1を算出し、L1/N1の値の合計を3で割って、平均結晶粒径とした。なお、サーマルエッチングは結晶粒界が確認できる温度で行えばよく、典型的には焼成温度より50℃から100℃程度低い温度で行うのが好ましい。NiZn系フェライトの焼結体の焼成温度が不明な場合には、低い温度でサーマルエッチングを開始し、少しずつ温度を上げながら結晶粒界が確認できるようになるまで行えばよい。
実施例1~15、及び比較例1~4
表1に示す組成のNiZn系フェライトが得られるように秤量したFe粉末、ZnO粉末、CuO粉末、NiO粉末、Mn粉末、TiO粉末、CaCO粉末、及びSiO粉末の各素原料を使用し、Fe粉末、ZnO粉末、CuO粉末、NiO粉末を湿式混合した後、乾燥し、900℃の温度で1時間仮焼した。得られた各仮焼体を、Mn粉末、CaCO粉末、SiO粉末、イオン交換水とともにボールミルに投入し、アトライターで粉砕してスラリーとした。得られたスラリーの一部を乾燥して空気透過法により平均粉砕粒径を評価した。平均粉砕粒径はいずれも1.7μmから1.9μmの範囲内であった。残りのスラリーにバインダとしてポリビニルアルコールを加え、スプレードライヤーにより乾燥とともに顆粒化し、加圧成形して円環状の各成形体を得た。
各成形体を1100℃の温度、保持時間は2時間で焼結し、外径30mm×内径20mm×厚さ8mmの円環状の各NiZn系フェライト焼結体を得た。焼成雰囲気は大気中である。
各NiZn系フェライト焼結体の密度ds、複素比透磁率μ、キュリー温度Tc、複素比透磁率μの変化率Δμmin、Δμmaxを上記の方法により測定又は算出した。得られた結果を表2示す。なお表2では、Fe、Zn、Ni、Cuを主成分とするのに対して、Mn、CaO、SiOを副成分として示している。
Figure 2022145508000008
Figure 2022145508000009
実施例、比較例ともに、いずれのNiZn系フェライト焼結体も密度dsが5.15×10kg/mを超えて良好であった。また平均結晶粒径は5μm~20μmの範囲内となっていた。
実施例1から15のNiZn系フェライトでは、複素比透磁率が900を超え、複素比透磁率の変化率Δμmin、Δμmaxの絶対値が45%以下であり、キュリー温度Tcが160℃以上であった。TiがTiO換算で0.160質量部以上の実施例では複素比透磁率が一層高められている。また、Mnの上限をMn換算で0.350質量部とし、Tiの上限をTiO換算で0.450質量部とする範囲の実施例では、複素比透磁率の変化率Δμmin、Δμmaxの絶対値が40%以下となった。一方で、比較例1から4では複素比透磁率が低く、また変化率Δμmin、Δμmaxが大きいものがあり、所望の性能が得られなかった。
以上の説明の通り、本発明によれば、キュリー温度Tcが高く、温度に対する複素比透磁率μの変化率Δμmin、Δμmaxが小さいNiZn系フェライトとすることが出来る。
10 電子部品
21 第1磁心
22 第2磁心
30 巻線(導線)
31、32.33 端子

Claims (3)

  1. Fe換算で47.50mol%以上48.60mol%以下のFe、ZnO換算で29.00mol%以上30.11mol%以下のZn、CuO換算で5.50mol%以上6.50mol%以下のCu、NiO換算で14.80mol%以上18.00mol%以下のNiからなり、Fe、ZnO、NiO、CuOの合計量が100mol%であって、Fe、Zn、Ni、Cuの合計量をそれぞれFe、ZnO、NiO、CuO換算で100質量部としたとき、
    MnがMn換算で0.100質量部以上0.400質量部以下、TiがTiO換算で0.050質量部以上0.500質量部以下、CaがCaO換算で0.025質量部以下、SiがSiO換算で0.250質量部以下である、NiZn系フェライト。
  2. 請求項1に記載のNiZn系フェライトであって、
    TiがTiO換算で0.160質量部以上0.500質量部以下である、NiZn系フェライト。
  3. 請求項2に記載のNiZn系フェライトであって、
    MnがMn換算で0.100質量部以上0.350質量部以下、TiがTiO換算で0.160質量部以上0.450質量部以下である、NiZn系フェライト。


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