JP2022144767A - 燃料電池スタック - Google Patents

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Abstract

Figure 2022144767000001
【課題】冷却媒体中のより多くの気泡をバイパス流路に向かわせることができる、燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】燃料電池スタック10の冷却媒体流路68は、電解質膜電極構造体28aの発電部に重なる部分を含んだ発電部冷却流路70と、セパレータ30、32の外周部に設けられたバイパス流路80と、冷却媒体供給連通孔44aからバイパス流路80を貫通して延び、発電部冷却流路70と連通する主供給流路82と、冷却媒体供給連通孔44aの重力方向の上方からバイパス流路80に向けて延びてバイパス流路80に連通する気泡排出流路90と、を有し、気泡排出流路90は、冷却媒体供給連通孔44aの重力方向の上方に向かって延びる。
【選択図】図3

Description

本発明は、接合された一対のセパレータの内部に冷却媒体流路が設けられた燃料電池スタックに関する。
一般的に、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。燃料電池は、固体高分子電解質膜の一方の面にアノード電極が、前記固体高分子電解質膜の他方の面にカソード電極が、それぞれ配設された電解質膜電極構造体(MEA)を備える。
電解質膜電極構造体は、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持されることにより、発電セル(燃料電池)が構成されている。発電セルは、所定の数だけ積層されることにより、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
燃料電池では、MEAと一方のセパレータとの間に、一方の反応ガス流路として燃料ガス流路が形成され、MEAと他方のセパレータとの間に、他方の反応ガス流路として酸化剤ガス流路が形成されている。また、一方のセパレータと他方のセパレータとの間に冷却媒体を流す冷却媒体流路が形成される。
冷却媒体流路を流れる冷却媒体を通じて燃料電池の発電部で発生する熱を取り除き、MEAの過熱を防いでいる。冷却媒体流路は、厚さが200μm程度と非常に狭いため、冷却媒体に含まれる気泡が冷却媒体流路に残留することがある。気泡が残留すると、冷却媒体流路において局所的な冷却効率が低下し、MEAに局所的な高温部分が発生し、MEAを構成する電解質膜の劣化に繋がるおそれがある。
そこで、特許文献1には、発電部よりも重力方向の上方にバイパス流路を設け気泡を多く含み比重の小さい冷却媒体を上方のバイパス流路に流して発電部への流入を防ぐ技術が記載されている。
特開2019-160560号公報
しかしながら、従来の技術では、一部の気泡が冷却媒体の流れに乗って発電部に回り込んでしまうおそれがあり、発電部への気泡の流入防止の点で改善の余地がある。
そこで、一実施形態は、冷却媒体のより多くの気泡をバイパス流路に向かわせることができる、燃料電池スタックを提供することを目的とする。
以下の開示の一観点は、電解質膜電極構造体と、前記電解質膜電極構造体を挟持する一対のセパレータと、を備えた発電セルを複数積層してなる燃料電池スタックであって、隣接する前記セパレータの膨出部分の間に形成される冷却媒体流路と、前記冷却媒体流路に冷却媒体を供給する冷却媒体供給連通孔と、前記冷却媒体流路の前記冷却媒体を排出する冷却媒体排出連通孔と、を有し、前記冷却媒体流路は、前記電解質膜電極構造体の発電部に重なる部分を含んだ発電部冷却流路と、前記セパレータの外周部に設けられ前記セパレータと前記電解質膜電極構造体との間に形成される反応ガス流路を封止する流路シール部の膨出部分の間に形成された、バイパス流路と、前記冷却媒体供給連通孔の前記発電部冷却流路への対向部分から前記バイパス流路を貫通して前記発電部冷却流路に向けて延び、前記冷却媒体供給連通孔と前記発電部冷却流路とを連通する主供給流路と、
前記冷却媒体供給連通孔の重力方向の上方から前記バイパス流路に向けて延びて前記バイパス流路に連通する気泡排出流路と、を有し、前記気泡排出流路は、前記冷却媒体供給連通孔の重力方向の上方に向かって延びる、燃料電池スタックにある。
上記観点の燃料電池スタックによれば、冷却媒体中の気泡をより多くバイパス流路に向かわせることができる。
実施形態に係る燃料電池スタックの斜視図である。 図1の燃料電池(発電セル)の分解斜視図である。 図1のセパレータの一部拡大平面図である。 冷却媒体供給連通孔における冷却媒体の流体力と気泡の浮力との関係を示すグラフである。 比較例に係るセパレータとその気泡の流れを示す説明図である。 比較例に係るセパレータにおける気泡混在領域を示す説明図である。 実施形態に係るセパレータとその気泡の流れを示す説明図である。 実施形態に係るセパレータとその気泡混在領域を示す説明図である。 比較例及び実施形態に係る、冷却媒体中の空気混入率と、セパレータの流路閉塞率と測定結果を示すグラフである。
以下、燃料電池スタックについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る燃料電池スタック10は、複数の発電セル12(燃料電池)が水平方向(矢印A方向)に積層された積層体14を備える。燃料電池スタック10は、例えば、図示しない燃料電池電気自動車等の燃料電池車両に搭載される。
積層体14の積層方向の一端(矢印A1方向の端)には、ターミナルプレート16a、インシュレータ18a及びエンドプレート20aが外方に向かって、順次、配設される。積層体14の積層方向の他端(矢印A2方向の端)には、ターミナルプレート16b、インシュレータ18b及びエンドプレート20bが外方に向かって、順次、配設される。
エンドプレート20a、20bは、横長(縦長でもよい)の長方形状を有すると共に、各辺間には、連結バー24が配置される。各連結バー24は、両端がエンドプレート20a、20bの内側面に固定されており、複数の積層された発電セル12に積層方向(矢印A方向)の圧縮荷重(締付荷重)を付与する。なお、燃料電池スタック10は、エンドプレート20a、20bを端板とする筐体を備え、当該筐体内に積層体14を収容するように構成してもよい。
発電セル12は、横長の長方形状を有する。発電セル12は、図2に示すように、樹脂枠付きMEA28と、樹脂枠付きMEA28を矢印A方向から挟持する第1セパレータ30及び第2セパレータ32とを有する。第1セパレータ30及び第2セパレータ32は、金属薄板、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属薄板の断面を波形にプレス成形して構成される。
第1セパレータ30と第2セパレータ32とは、所定の接合ラインに沿って互いに接合されて接合セパレータ33を形成する。また、接合セパレータ33には、第1セパレータ30の最外周と第2セパレータ32の最外周とを互いに接合する複数の接合部が接合セパレータ33の外周に沿って間隔を開けて設けられている。接合ラインは、例えばレーザ溶接された線状の部分である。接合ラインは、MIG、TIG、シーム溶接、ロウ付け、カシメ等による接合部であってもよい。
図2において、樹脂枠付きMEA28は、電解質膜電極構造体28a(以下、「MEA28a」という)と、MEA28aの外周部に接合されると共に該外周部を周回する樹脂枠部材34(樹脂枠部、樹脂フィルム)とを備える。MEA28aは、電解質膜36と、電解質膜36の一方の面に設けられたカソード電極38と、電解質膜36の他方の面に設けられたアノード電極40とを有する。
電解質膜36は、例えば、固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)である。固体高分子電解質膜は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である。電解質膜36は、カソード電極38及びアノード電極40に挟持される。電解質膜36は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用することができる。
詳細は図示しないが、カソード電極38は、電解質膜36の一方の面に接合される第1電極触媒層と、当該第1電極触媒層に積層される第1ガス拡散層とを有する。アノード電極40は、電解質膜36の他方の面に接合される第2電極触媒層と、当該第2電極触媒層に積層される第2ガス拡散層とを有する。
樹脂枠付きMEA28の樹脂枠部は、樹脂枠部材34を用いることなく、電解質膜36をカソード電極38及びアノード電極40よりも外方に突出させることにより形成してもよい。この場合、電解質膜36のうちカソード電極38及びアノード電極40よりも外方に突出した部分の両側に枠形状のフィルムを設けてもよい。
各発電セル12の長辺方向の一端縁部(矢印B1方向の端縁部)には、燃料ガス供給連通孔46a、複数(例えば、2つ)の冷却媒体排出連通孔44b、第1酸化剤ガス排出連通孔42b1及び第2酸化剤ガス排出連通孔42b2が設けられる。図1及び図2に示すように、燃料ガス供給連通孔46a、複数の冷却媒体排出連通孔44b、第1酸化剤ガス排出連通孔42b1及び第2酸化剤ガス排出連通孔42b2は、それぞれ、積層体14、インシュレータ18a及びエンドプレート20aを積層方向に貫通している(ターミナルプレート16aを貫通してもよい)。
図2において、燃料ガス供給連通孔46a、複数の冷却媒体排出連通孔44b、第1酸化剤ガス排出連通孔42b1及び第2酸化剤ガス排出連通孔42b2は、矢印C方向(発電セル12の短辺に沿った方向)に配列して設けられる。第1酸化剤ガス排出連通孔42b1及び第2酸化剤ガス排出連通孔42b2のそれぞれは、一方の反応ガスである酸化剤ガス、例えば、空気を矢印A方向に排出する。燃料ガス供給連通孔46aは、他方の反応ガスである燃料ガス、例えば、水素含有ガスを矢印A方向に供給する。冷却媒体排出連通孔44bは、冷却媒体を矢印A方向に排出する。
燃料ガス供給連通孔46aは、上下方向に離間して配置された2つの冷却媒体排出連通孔44bの間に配置されている。第1酸化剤ガス排出連通孔42b1は、上側の冷却媒体排出連通孔44bの上方(矢印C1方向)に配置されている。第2酸化剤ガス排出連通孔42b2は、下側の冷却媒体排出連通孔44bの下方(矢印C2方向)に配置されている。
各発電セル12の長辺方向の他端縁部(矢印B2方向の端縁部)には、酸化剤ガス供給連通孔42a、複数(例えば、2つ)の冷却媒体供給連通孔44a、第1燃料ガス排出連通孔46b1及び第2燃料ガス排出連通孔46b2が設けられる。図1及び図2に示すように、酸化剤ガス供給連通孔42a、複数の冷却媒体供給連通孔44a、第1燃料ガス排出連通孔46b1及び第2燃料ガス排出連通孔46b2は、それぞれ、積層体14、インシュレータ18a及びエンドプレート20aを積層方向に貫通している(ターミナルプレート16aを貫通してもよい)。
図2において、酸化剤ガス供給連通孔42a、複数の冷却媒体供給連通孔44a、第1燃料ガス排出連通孔46b1及び第2燃料ガス排出連通孔46b2は、矢印C方向(発電セル12の短辺に沿った方向)に配列して設けられる。酸化剤ガス供給連通孔42aは、酸化剤ガスを矢印A方向に供給する。第1燃料ガス排出連通孔46b1及び第2燃料ガス排出連通孔46b2のそれぞれは、燃料ガスを矢印A方向に排出する。冷却媒体供給連通孔44aは、冷却媒体を矢印A方向に供給する。
酸化剤ガス供給連通孔42aは、上下方向に離間して配置された2つの冷却媒体供給連通孔44aの間に配置されている。第1燃料ガス排出連通孔46b1は、上側の冷却媒体供給連通孔44aの上方(矢印C1方向)に配置されている。第2燃料ガス排出連通孔46b2は、下側の冷却媒体供給連通孔44aの下方(矢印C2方向)に配置されている。
各発電セル12には、第1ドレン連通孔48a及び第2ドレン連通孔48bが設けられている。図1及び図2に示すように、第1ドレン連通孔48a及び第2ドレン連通孔48bは、それぞれ、積層体14、インシュレータ18a及びエンドプレート20aを積層方向に貫通している(ターミナルプレート16aを貫通してもよい)。
図2において、第1ドレン連通孔48aは、発電セル12の矢印C2方向の端部(下端部)に位置している。第1ドレン連通孔48aは、発電セル12の長手方向の中央よりも発電セル12の一端側(矢印B1方向)にずれて位置している。第1ドレン連通孔48aは、第2酸化剤ガス排出連通孔42b2の下端よりも矢印C2方向(下方)に位置している。
第1ドレン連通孔48aは、インシュレータ18b又はエンドプレート20bに設けられた図示しない連通路を介して第1酸化剤ガス排出連通孔42b1及び第2酸化剤ガス排出連通孔42b2に連通している。すなわち、第1ドレン連通孔48aは、発電セル12の運転時(発電時)に発生した生成水のうち第1酸化剤ガス排出連通孔42b1及び第2酸化剤ガス排出連通孔42b2に導かれたものを外部に排出する。
第2ドレン連通孔48bは、発電セル12の矢印C2方向の端部(下端部)に位置している。第2ドレン連通孔48bは、発電セル12の長手方向の中央よりも発電セル12の他端側(矢印B2方向)にずれて位置している。第2ドレン連通孔48bは、第2燃料ガス排出連通孔46b2の下端よりも矢印C2方向(下方)に位置している。
第2ドレン連通孔48bは、インシュレータ18b又はエンドプレート20bに設けられた図示しない連通路を介して第1燃料ガス排出連通孔46b1及び第2燃料ガス排出連通孔46b2に連通している。すなわち、第2ドレン連通孔48bは、発電セル12の運転時(発電時)に生成した生成水のうち第1燃料ガス排出連通孔46b1及び第2燃料ガス排出連通孔46b2に導かれたものを外部に排出する。
以下の説明では、酸化剤ガス供給連通孔42a、第1酸化剤ガス排出連通孔42b1、第2酸化剤ガス排出連通孔42b2、冷却媒体供給連通孔44a、冷却媒体排出連通孔44b、燃料ガス供給連通孔46a、第1燃料ガス排出連通孔46b1、第2燃料ガス排出連通孔46b2、第1ドレン連通孔48a及び第2ドレン連通孔48bを、単に連通孔50ということがある。
連通孔50の配置、形状及び大きさは、本実施形態に限定されるものではなく、要求される仕様に応じて、適宜設定すればよい。
図2に示すように、発電セル12の第1セパレータ30と、これに隣接する他の発電セル12の第2セパレータ32とが積層されて、溶接やカシメ等の方法で接合されて接合セパレータ33が構成される。
第1セパレータ30の電解質膜電極構造体28aに向き合う面(以下、「表面30b」という。)には、連通孔50の周囲を個別に周回する第1連通孔シール部54と、第1セパレータ30の外周部に沿って設けられた第1流路シール部56と、反応部に燃料ガスを流す流路突起52と、が膨出形成されている。第1セパレータ30と電解質膜電極構造体28aとの間には、燃料ガスが流通する燃料ガス流路64が形成される。燃料ガス流路64は、第1セパレータ30の外周部に設けられた流路シール部によって封止される。
また、第2セパレータ32の電解質膜電極構造体28aに向き合う面(以下、「表面32b」という。)には、連通孔50の周囲を個別に周回する第2連通孔シール部60と、第2セパレータ32の外周部に沿って設けられた第2流路シール部62と、反応部の酸化剤ガスの流動方向に沿って延びた複数の流路突起58とが膨出形成されている。第2セパレータ32と、電解質膜電極構造体28aとの間には、酸化剤ガスを流通させる酸化剤ガス流路が形成される。酸化剤ガス流路は、第2セパレータ32の外周部に設けられた第2連通孔シール部60によって封止される。
接合セパレータ33において、第1セパレータ30の第1連通孔シール部54は第2セパレータ32の第2連通孔シール部60と対向配置され、第1セパレータ30の第1流路シール部56は第2セパレータ32の第2流路シール部62と対向配置される。また、第1セパレータ30の流路突起52と第2セパレータ32の流路突起58とが、互い位に対向配置される。接合セパレータ33において、第1セパレータ30の膨出部分と、第2セパレータ32の膨出部分との間には、冷却媒体が流れる冷却媒体流路68が形成される。
以下、冷却媒体流路68についてさらに説明する。
図3に示すように、第1セパレータ30の第2セパレータ32に対向する面(以下、「内面30a」という。)には、表面30b側の膨出部分に対応する部分が凹んでおり、その一部が冷却媒体流路68を構成する。冷却媒体流路68は、電解質膜36の発電部と重なる位置に設けられた発電部冷却流路70を有している。発電部冷却流路70には、流路突起52の内側に設けられた流路溝74が矢印B方向に延びて複数本設けられている。
隣接する流路溝74の間には、平坦部76が設けられている。平坦部76は対向する第2セパレータ32の平坦部76と当接して流路溝74の側部を閉塞する。流路溝74及び平坦部76により、発電部冷却流路70の発電部対応領域72が構成される。発電部対応領域72の矢印B2方向側の端部には、バッファ部78が設けられている。バッファ部78は凹状に形成される。バッファ部78には、冷却媒体を流路溝74に分配する突起部78aが複数設けられている。バッファ部78は、発電部対応領域72の矢印B1方向側の端部にも設けられている。
冷却媒体流路68は、さらに、バイパス流路80と、周回流路86と、主供給流路82と、気泡排出流路90と、主排出流路88(図2参照)を有する。バイパス流路80は、第1セパレータ30の第1流路シール部56を構成する膨出部分及び第2セパレータ32の第2流路シール部62(図2参照)を構成する膨出部分の間に形成される。図3に示すように、バイパス流路80は、第1セパレータ30(及び第2セパレータ32)の外周部に沿って設けられており、発電部を迂回して配置されている。但し、バイパス流路80の矢印B2側の端部は、連通孔50のうち、反応ガスを通す酸化剤ガス供給連通孔42a、第1燃料ガス排出連通孔46b1、及び第2燃料ガス排出連通孔46b2の外周側を通り、かつ、2つの冷却媒体供給連通孔44aの内周側(発電部側)を通るように配置されている。したがってバイパス流路80の矢印B2側の端部は、2つの冷却媒体供給連通孔44aと他の連通孔50との間を縫うように蛇行している。
また、図2に示すように、バイパス流路80の矢印B1側の端部は、連通孔50のうち、燃料ガス供給連通孔46a、第1酸化剤ガス排出連通孔42b1、第2酸化剤ガス排出連通孔42b2の外周側を通り、かつ、2つの冷却媒体排出連通孔44bの内周側を通るように配置されている。したがって、バイパス流路80の矢印B1側の端部は、2つの冷却媒体排出連通孔44bと他の連通孔50との間を縫うように蛇行している。
図3に示すように、本実施形態では、発電セル12の矢印B2側の端部において、2つの冷却媒体供給連通孔44aが設けられており、各々の冷却媒体供給連通孔44aは、上下方向に並んだ3つの反応ガス用の連通孔50の間に配置されている。そのため、バイパス流路80は、冷却媒体供給連通孔44aに隣接する連通孔50を外側に迂回する連通孔迂回部94を有している。図2に示すように、矢印B1側には、2つの冷却媒体排出連通孔44bが設けられており、冷却媒体排出連通孔44bの近傍にも、上下方向に隣接する反応ガスの連通孔50を迂回する連通孔迂回部94が設けられている。
図3に示すように、周回流路86は、2つの冷却媒体供給連通孔44aの周りを別個に周回して設けられた流路である。周回流路86は、第1セパレータ30の第1連通孔シール部54(図2参照)を構成する膨出部分の内側と、第2セパレータ32の第2連通孔シール部60(図2参照)を構成する膨出部分の内側とに形成された流路である。周回流路86は、図2に示す2つの冷却媒体排出連通孔44bの周りにも設けられている。周回流路86は、バイパス流路80より冷却媒体供給連通孔44a又は冷却媒体排出連通孔44bに近接して配置されている。周回流路86は、主供給流路82及び主排出流路88(図2参照)を通じて発電部冷却流路70及びバイパス流路80に連通する。
図3に示すように、主供給流路82は、冷却媒体供給連通孔44aの発電部への対向部分から、発電部冷却流路70に向けて延びている。主供給流路82は、矢印B方向に延びている。本実施形態では、複数本の主供給流路82が、上下方向に離間して複数設けられており、主供給流路群84を構成する。主供給流路82は、バイパス流路80を矢印B方向に貫通する。主供給流路82は、冷却媒体供給連通孔44aと、バイパス流路80と、発電部冷却流路70とを流体的に連通させる。
図2に示すように、主排出流路88は、冷却媒体排出連通孔44bの発電部に対向する側部から、発電部に向けて延びている。主排出流路88は、複数本設けられている。複数本の主排出流路88により主排出流路群89が構成される。
図3に示すように、気泡排出流路90は、冷却媒体供給連通孔44aの重力方向の上方からバイパス流路80に向けて延び、冷却媒体供給連通孔44aとバイパス流路80とを連通させる。気泡排出流路90は、冷却媒体供給連通孔44aの発電部に対向する側部から離間した部位に設けられており、主供給流路82に対して上方に向けて30°以上傾いている。気泡排出流路90の傾斜角度が重力方向に接近する程、気泡排出流路90の内部の冷却媒体の矢印B1方向の流速vが減少する。また、気泡排出流路90と主供給流路82との距離Lを大きくとることができ、バイパス流路80を通じた気泡の逆流を防止できて好適である。
気泡排出流路90は、冷却媒体供給連通孔44aに対して上方に隣接する連通孔50(第1燃料ガス排出連通孔46b1)に向かって延びておりバイパス流路80の連通孔迂回部94の第1合流部92aにおいてバイパス流路80に合流する。バイパス流路80は、主供給流路82から主排出流路88に向かって冷却媒体が流れるが、第1合流部92aが設けられた連通孔迂回部94は、主供給流路82の冷却媒体の流動方向である矢印B1方向とは逆の矢印B2方向に冷却媒体が流動する部分となっている。気泡は、連通孔迂回部94の流れに乗って排出されるため、発電部冷却流路70への気泡の流入を防止できる。
気泡排出流路90とバイパス流路80とが合流する第1合流部92aと、主供給流路群84の上端の主供給流路82とバイパス流路80とが合流する第2合流部92bとの距離Lは、主供給流路群84に含まれる主供給流路82の間隔よりも広い。
本実施形態において、気泡排出流路90は、冷却媒体供給連通孔44aと周回流路86とを結ぶ第1経路90aと、周回流路86とバイパス流路80とを結ぶ第2経路90bとにより構成される。第2経路90bは、第1経路90aよりも発電部から離れた矢印B2側(外側)に配置されている。
図3に示す例では、気泡排出流路90を上側の冷却媒体供給連通孔44aにのみ設けているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、下側の冷却媒体供給連通孔44aに気泡排出流路90を設けてもよい。
発電部冷却流路70への気泡の流入を防ぐ観点からは、冷却媒体供給連通孔44aから主供給流路82への冷却媒体の流体力(噴流力)が気泡の浮力よりも小さい範囲とする方が、気泡の上方への分離が進む。冷却媒体の流体力は、冷却媒体の密度ρと、主供給流路82の断面積Sと、冷却媒体の流速vの二乗と、の積により求まり、図4に示されるように、流速vの増加にしたがって増大する。流体力が気泡の浮力よりも小さい範囲となるように、主供給流路82で圧損を生じさせるように構成されている。このような圧損を発生させる観点から、主供給流路82は、流体力が冷却媒体の気泡の浮力よりも小さい範囲となるように、断面積Sを小さくすると共に長さを長くとることが好ましい。
本実施形態の燃料電池スタック10は以上のように構成され、以下その作用について説明する。
実施形態の燃料電池スタック10の説明に先立って比較例について説明する。図5に示す比較例に係る接合セパレータ33では、冷却媒体流路68において、気泡排出流路90Aが主供給流路82の近傍に設けられている。比較例に係る気泡排出流路90Aでは、矢印に示すように、バイパス流路80に流入した気泡の一部が主供給流路82側に流れ込んで発電部冷却流路70に入り、流路溝74を気泡が閉塞してしまう。
図6に示すように、比較例の場合、発電部冷却流路70の広い範囲に気泡が入り込んでしまう。
一方、図7に示す本実施形態に係る接合セパレータ33では、気泡排出流路90が上方に隣接する連通孔50に向けて延びており、気泡排出流路90と主供給流路82との距離Lが比較例の場合よりも大きくとられている。さらに、気泡排出流路90は矢印B1方向への流速成分が低くなる向きでバイパス流路80に接続されている。そのため、気泡排出流路90からバイパス流路80に流入した気泡は、バイパス流路80の流れに乗って矢印に示すように、浮力によって上方に向けて流れて行く。また、気泡排出流路90と主供給流路82との距離Lが大きいことと、矢印B1方向の流速が小さいことにより、バイパス流路80における逆流を防止でき、主供給流路82への気泡の流入を抑制できる。
そのため、主供給流路82を通じて発電部冷却流路70に流れ込む冷却媒体の気泡の混入を防ぐことができ、流路溝74の閉塞を防ぐことができる。
図8に示すように、本実施形態によれば、発電部冷却流路70の上端付近の限られた部分に気泡が混在するだけであり、比較例に比べて気泡混在領域が大幅に減少する結果が得られる。
比較例及び本実施形態について、空気を混入させた冷却媒体を流した際の、流路溝74の気泡による閉塞率の測定を行った結果を図9に示す。図示のように、比較例及び実施形態において、冷却媒体中の空気の混入率の増大に伴って、流路閉塞率が増大している。本実施形態によれば、空気混入率が増大した場合であっても、比較例の結果よりも流路閉塞率が抑制される結果が得られた。
本実施形態の燃料電池スタック10は、以下の効果を奏する。
本実施形態は、電解質膜電極構造体28aと、電解質膜電極構造体28aを挟持する一対のセパレータ30、32と、を備えた発電セル12を複数積層してなる燃料電池スタック10であって、隣接するセパレータ30、32の膨出部分の間に形成される冷却媒体流路68と、冷却媒体流路68に冷却媒体を供給する冷却媒体供給連通孔44aと、冷却媒体流路68の冷却媒体を排出する冷却媒体排出連通孔44bと、を有し、冷却媒体流路68は、電解質膜電極構造体28aの発電部に重なる部分を含んだ発電部冷却流路70と、セパレータ30、32の外周部に設けられセパレータ30、32と電解質膜電極構造体28aとの間に形成される反応ガス流路を封止する流路シール部の膨出部分の間に形成された、バイパス流路80と、冷却媒体供給連通孔44aの発電部冷却流路70へ対向部分からバイパス流路80を貫通して発電部冷却流路70に向けて延び、冷却媒体供給連通孔44aと発電部冷却流路70とを連通する主供給流路82と、冷却媒体供給連通孔44aの重力方向の上方からバイパス流路80に向けて延びてバイパス流路80に連通する気泡排出流路90と、を有し、気泡排出流路90は、冷却媒体供給連通孔44aの重力方向の上方に向かって延びる。
上記の構成によれば、気泡排出流路90が上方を向いているため、冷却媒体中の気泡を、その浮力を生かしてバイパス流路80に流すことができる。バイパス流路80は、冷却媒体供給連通孔44aと冷却媒体排出連通孔44bとの圧力差によって、発電部を迂回しつつ気泡が混入した冷却媒体を冷却媒体排出連通孔44bに流すことができる。また、気泡排出流路90が上方の連通孔50に向くため、バイパス流路80に沿った主供給流路82までの距離Lが大きくなるため、気泡排出流路90からバイパス流路80に流れ込んだ冷却媒体の逆流を防ぐことができ、主供給流路82を通じた気泡の混入をより効果的に防止できる。
上記の燃料電池スタック10において、主供給流路82は、複数本設けられて主供給流路群84を構成し、気泡排出流路90とバイパス流路80とが合流する第1合流部92aと、主供給流路群84の上端の主供給流路82とバイパス流路80とが合流する第2合流部92bとの距離Lは、主供給流路群84に含まれる主供給流路82の間隔よりも広く形成されている。この構成によれば、主供給流路82と気泡排出流路90のバイパス流路80に沿った距離Lが大きくなるため、バイパス流路80内を気泡が逆流して主供給流路82側に回り込むことを防止でき、発電部冷却流路70への気泡の混入を抑制できる。
上記の燃料電池スタック10において、気泡排出流路90は主供給流路82の方向に対して重力方向上方に向けて30°以上傾斜してもよい。この構成によれば、気泡の浮力を利用して気泡排出流路90において効率よく気泡が混入した冷却媒体を流すことができる。
上記の燃料電池スタック10において、気泡排出流路90は冷却媒体供給連通孔44aの重力方向の上方に隣接する連通孔50に向かうように延びてもよい。
上記の燃料電池スタック10であって、バイパス流路80は、冷却媒体供給連通孔44aの重力方向上方に隣接する連通孔50を外側に迂回する連通孔迂回部94を有し、気泡排出流路90は、連通孔迂回部94において発電部冷却流路70の冷却媒体の流動方向に逆行する逆行部分に接続されてもよい。この構成によれば、バイパス流路80の気泡の逆流を防止でき、気泡の主供給流路82への混入を防止できる。
上記の燃料電池スタック10において、さらに、バイパス流路80と冷却媒体供給連通孔44aとの間に設けられ、冷却媒体供給連通孔44aを周回する連通孔シール部54、60の膨出部分の間に形成された周回流路86を有し、気泡排出流路90は、冷却媒体供給連通孔44aと周回流路86とを繋ぐ第1経路90aと、周回流路86とバイパス流路80とを繋ぐ第2経路90bとを有し、第2経路90bは、第1経路90aよりも外側(発電部から離れる側)に配置されている。この構成によれば、気泡排出流路90の実質的な傾斜角を鉛直上方に近づけることにより、気泡の浮力を生かして気泡の排出をさらに効率よく行える。また、気泡排出流路90と主供給流路82との距離Lが大きくなるため、逆流による気泡混入を防止できる。
上記の燃料電池スタック10において、主供給流路82の断面積Sは、冷却媒体供給連通孔44aから前記主供給流路82に向けた流体力よりも冷却媒体供給連通孔44aの内部の気泡の浮力の方が大きくなる流速vを維持する範囲に制限されてもよい。ここで、気泡の浮力とは、発電部冷却流路70の流路溝74を閉塞する可能性が有る所定サイズよりも大きい気泡を対象とした浮力である。冷却媒体供給連通孔44aから主供給流路82に向かう流速vは、図4に基づいて、例えば0.17m/秒以下とすることができる。この構成によれば、冷却媒体供給連通孔44aの内部で気泡の分離が進み、気泡排出流路90を通じて効率よく気泡を除去できる。その結果、発電部冷却流路70への気泡の混入を減らすことができる。
上記の燃料電池スタック10において、冷却媒体供給連通孔44aは、重力方向の上下方向に間隔を開けて複数設けられ、少なくとも最上部の冷却媒体供給連通孔44aに気泡排出流路90が設けられてもよい。この構成によれば、気泡の混入が相対的に多くなる最上部の冷却媒体供給連通孔44aについて、気泡の分離及び除去を効率よく行うことができる。
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
10…燃料電池スタック 12…発電セル
28a…電解質膜電極構造体 30、32…セパレータ
44a…冷却媒体供給連通孔 50…連通孔
68…冷却媒体流路 70…発電部冷却流路
80…バイパス流路 82…主供給流路
84…主供給流路群 86…周回流路
90…気泡排出流路 90a…第1経路
90b…第2経路 92a…第1合流部
92b…第2合流部 94…連通孔迂回部

Claims (8)

  1. 電解質膜電極構造体と、前記電解質膜電極構造体を挟持する一対のセパレータと、を備えた発電セルを複数積層してなる燃料電池スタックであって、
    隣接する前記セパレータの膨出部分の間に形成される冷却媒体流路と、
    前記冷却媒体流路に冷却媒体を供給する冷却媒体供給連通孔と、
    前記冷却媒体流路の前記冷却媒体を排出する冷却媒体排出連通孔と、を有し、
    前記冷却媒体流路は、
    前記電解質膜電極構造体の発電部に重なる部分を含んだ発電部冷却流路と、
    前記セパレータの外周部に設けられ前記セパレータと前記電解質膜電極構造体との間に形成される反応ガス流路を封止する流路シール部の膨出部分の間に形成された、バイパス流路と、
    前記冷却媒体供給連通孔の前記発電部冷却流路への対向部分から前記バイパス流路を貫通して前記発電部冷却流路に向けて延び、前記冷却媒体供給連通孔と前記発電部冷却流路とを連通する主供給流路と、
    前記冷却媒体供給連通孔の重力方向の上方から前記バイパス流路に向けて延びて前記バイパス流路に連通する気泡排出流路と、を有し、
    前記気泡排出流路は、前記冷却媒体供給連通孔の重力方向の上方に向かって延びる、燃料電池スタック。
  2. 請求項1記載の燃料電池スタックであって、前記主供給流路は、複数本設けられて主供給流路群を構成し、
    前記気泡排出流路と前記バイパス流路とが合流する第1合流部と、前記主供給流路群の上端の前記主供給流路と前記バイパス流路とが合流する第2合流部との距離は、前記主供給流路群に含まれる前記主供給流路の間隔よりも広い、燃料電池スタック。
  3. 請求項1又は2記載の燃料電池スタックであって、前記気泡排出流路は前記主供給流路の方向に対して重力方向の上方に向けて30°以上傾斜している、燃料電池スタック。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の燃料電池スタックであって、前記気泡排出流路は前記冷却媒体供給連通孔の重力方向の上方に隣接する連通孔に向かって延びる、燃料電池スタック。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の燃料電池スタックであって、
    前記バイパス流路は、前記冷却媒体供給連通孔の重力方向の上方に隣接する連通孔を外側に迂回する連通孔迂回部を有し、
    前記気泡排出流路は、前記連通孔迂回部において前記発電部冷却流路の前記冷却媒体の流動方向に逆行する逆行部分に接続されている、燃料電池スタック。
  6. 請求項5記載の燃料電池スタックであって、さらに、前記バイパス流路と前記冷却媒体供給連通孔との間に設けられ、前記冷却媒体供給連通孔を周回する連通孔シール部の膨出部分の間に形成された周回流路を有し、
    前記気泡排出流路は、前記冷却媒体供給連通孔と前記周回流路とを繋ぐ第1経路と、前記周回流路と前記バイパス流路とを繋ぐ第2経路とを有し、前記第2経路は、前記第1経路よりも外側に配置されている、
    燃料電池スタック。
  7. 請求項2記載の燃料電池スタックであって、前記主供給流路の断面積は、前記冷却媒体供給連通孔から前記主供給流路に向けた流体力よりも前記冷却媒体供給連通孔の内部の気泡の浮力が大きくなる流速を維持する範囲に制限されている、燃料電池スタック。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の燃料電池スタックであって、前記冷却媒体供給連通孔は、重力方向の上下方向に間隔を開けて複数設けられ、少なくとも最上部の前記冷却媒体供給連通孔に前記気泡排出流路が設けられている、燃料電池スタック。
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