JP2022143432A - テープリール、テープカートリッジおよびテープリールの製造装置 - Google Patents

テープリール、テープカートリッジおよびテープリールの製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】磁気テープの巻き締まりや保管環境に起因するリールハブの変形を抑えることができるテープリールを提供する。【解決手段】本技術の一形態に係るテープリールは、第1のフランジと、第2のフランジと、円筒状のリールハブとを具備する。前記リールハブは、前記第1のフランジと一体的に形成される第1の端部と、前記第2のフランジが接合される第2の端部と、磁気テープが巻装される外周面とを有する。前記リールハブの外周面は、第1の外周領域と、第2の外周領域とを有する。前記第1の外周領域は、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって拡径する。前記第2の外周領域は、前記第1の外周領域から前記第2の端部にわたって拡径し、前記第1の外周領域との境界上に前記ハブ部の径外方に向かって凸なる形状の稜線部を形成する。【選択図】図7

Description

本技術は、円筒状のリールハブを有するテープリール及びこれを備えたテープカートリッジ、並びに、テープリールの製造装置に関する。
コンピュータ等の外部記録媒体として使用されている磁気テープカートリッジには、磁気テープを巻装した単一のテープリールをカートリッジケース内に回転自在に収容したタイプのものが知られている。テープリールは、磁気テープが巻装される円筒状のリールハブと、リールハブの両端にそれぞれ配置された上フランジ及び下フランジとを有する。テープリールとしては、下フランジがリールハブと一体的に形成され、上フランジがリールハブの上端に超音波接合等により固定される形態が一般的である。
近年におけるテープカートリッジの高記録容量化に伴い、磁気テープの薄厚化やテープ長の拡大が進められているため、リールハブに加わる磁気テープの巻き締まり(巻圧)は増加傾向にある。さらに、高温高湿度環境下におけるテープカートリッジの長期保管の影響により、リールハブに加わる巻圧はさらに上昇し、このためリールハブの変形量はますます大きくなる傾向にある。
例えば、リールハブが下フランジと一体成形されるリール構造では、上フランジに固定されるリールハブの上端部が内側に倒れるように変形することで、リールハブの両端部間における外径差が大きくなる。その結果、下フランジに対向する磁気テープの下エッジ部に、上フランジに対向する磁気テープの上エッジよりも長くなるような変形が生じ、これが原因で磁気テープの記録再生特性が悪化するおそれがある。
このような問題を解消するため、例えば下記特許文献1には、記録テープが巻回されるハブと、ハブの両端部に設けられたフランジとを備え、ハブに、その両端部側の径よりも大きい径とされた大径部を形成したテープリールが開示されている。
また、下記特許文献2には、円筒状に形成されたハブに円筒状の補強リングが装着され、ハブの下端部からハブの上端部にかけてハブの外径が大きくなるようにハブの外周面がテーパ形状に形成されたテープリールが開示されている。
特開2008-243294号公報 特開2009-48692号公報
しかしながら、特許文献1に記載の構造では、ハブ外周面の大径部に巻き付けられるテープの中央領域の変形が問題になる場合がある。例えば、高温高湿度の保管環境下においては、テープに加わる収縮応力が大きくなるため、ハブ外周面の大径部に巻き付けられる磁気テープの中央領域がテープエッジ部に比べて過剰に変形し、安定した記録再生特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、特許文献2に記載の構造では、ハブ外周面のテーパ形状が、ハブの下端部から上端部にかけて下フランジに対する傾斜角が徐々に大きくなるように形成されている。このため、リールハブが下フランジと一体成形される場合、リールハブの外周面を成形する金型の抜き勾配を確保することが困難になる等の製造上のデメリットがある。
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、磁気テープの巻き締まりや保管環境に起因するリールハブの変形を抑えることができるテープリール及びこれを備えたテープカートリッジ、並びに、テープリールの製造装置を提供することにある。
本技術の一形態に係るテープリールは、第1のフランジと、第2のフランジと、円筒状のリールハブとを具備する。
前記リールハブは、前記第1のフランジと一体的に形成される第1の端部と、前記第2のフランジが接合される第2の端部と、磁気テープが巻装される外周面とを有する。
前記リールハブの外周面は、第1の外周領域と、第2の外周領域とを有する。
前記第1の外周領域は、前記第1の端部から前記第2の端部に向かって拡径する。
前記第2の外周領域は、前記第1の外周領域から前記第2の端部にわたって拡径し、前記第1の外周領域との境界上に前記ハブ部の径外方に向かって凸なる形状の稜線部を形成する。
本技術の一形態に係るテープカートリッジは、第1のフランジと、第2のフランジと、前記第1のフランジに接続される第1の端部と前記第2のフランジに接続される第2の端部と磁気テープが巻装される外周面とを有する円筒状のリールハブと、を有するテープリールを具備する。
前記リールハブの外周面は、
前記第1の端部から前記第2の端部に向かって拡径する第1の外周領域と、
前記第1の外周領域から前記第2の端部にわたって拡径し、前記第1の外周領域との境界上に前記リールハブの径外方に向かって凸なる形状の稜線部を形成する第2の外周領域と、を有する。
本技術の一形態に係るテープリールの製造装置は、前記リールハブの外周面を成形する第1の金型と、前記リールハブの内周面を成形する第2の金型とを具備する。
前記第1の金型は、前記第1の外周領域を形成するテーパ面で構成された第1成形面と、前記第2の外周領域を形成する円筒面で構成された第2成形面と、を有する。
本技術の一実施形態に係るテープカートリッジ1の全体斜視図であって、Aは上面側から見たときの斜視図、Bは下面側から見たときの斜視図である。 上記テープカートリッジの分解斜視図である。 上記テープカートリッジの分解側断面図である。 本技術の一実施形態に係るテープリールの概略側断面図である。 典型的なテープリールの作用を説明する模式断面図である。 図5に示すテープリールの変形に伴う問題点を説明する磁気テープの要部の模式図である。 本技術の一実施形態に係るテープリールを構成するリール半体の側断面図である。 上記テープリールにおけるリールハブの要部の拡大断面図である。 上記テープリールの作用を説明する模式断面図である。 図7に示すリール半体の製造装置である金型装置の側断面図である。 リールハブ外周面の勾配測定方法を説明する図である。 図10に示す金型装置を用いて成形されたリールハブ外周面の勾配測定結果を示す図である。 図5に示したテープリールのリールハブ外周面の勾配測定結果を示す図である。 磁気テープを側方から見た模式図である。
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本技術の一実施形態に係るテープカートリッジ1の全体斜視図であって、Aは上面(上シェル2)側から見たときの斜視図、Bは下面(下シェル3)側から見たときの斜視図である。図2はテープカートリッジ1の分解斜視図、図3はその分解側断面図である。
[テープカートリッジの全体構成]
本実施形態のテープカートリッジ1は、上シェル2と下シェル3とを複数本のネジ部材により結合して形成されるカートリッジケース4の内部に、磁気テープ22を巻装した単一のテープリール5を回転可能に収納した構成を有している。以下、LTO(Linear Tape Open)規格に準ずる磁気テープカートリッジを例に挙げて、本実施形態のテープカートリッジ1を説明する。
テープリール5は、有底円筒形状のリールハブ6と、リールハブ6の下端部に一体形成された下フランジ7と、リールハブ6の上端部に接合された上フランジ8とを有し、それぞれ合成樹脂材料の射出成形体で形成されている。
テープリール5の下面中央には、テープドライブ装置のリール回転駆動軸と係合するチャッキングギヤ9が環状に形成されており、図1Bに示すように、下シェル3の中央に設けられた開口部10を介して外部へ露出している。このチャッキングギヤ9の内周側には、上記リール回転駆動軸と磁気吸着する環状の金属プレート11がインサート成形によりリールハブ6の底部外面に固着されている。
リールハブ6の内部には、テープカートリッジ1の非使用時におけるテープリール5の回転を抑止するためのリールロック機構が設けられている。リールロック機構は、図3に示すように、リールハブ6の底部60の上面に立設された複数のギヤ形成壁12と、ギヤ形成壁12の上面に形成されたギヤ部12aに噛合する係合歯13aを有するリールロック部材13と、ギヤ形成壁12とリールロック部材13との係合を解除するためのリールロック解除部材14と、上シェル2の内面とリールロック部材13の上面との間に設けられたリールスプリング15とを含む。リールスプリング15は、コイルスプリングであり、リールロック部材13を介してテープリール5を下シェル3側へ付勢する。
ギヤ形成壁12は円弧状を有し、リールハブ6の底部60の上面であって、リールハブ6の軸心のまわりの同一円周上に3カ所等間隔に形成されている。ギヤ形成壁12のギヤ部12aに対向するリールロック部材13の係合歯13aは、リールロック部材13の下面に環状に形成されており、リールスプリング15を受けて常時、ギヤ部12aと係合する方向に付勢されている。リールロック部材13の上面には、嵌合凸部13cが形成されているとともに、上シェル2の内面略中央部には、この嵌合凸部13cに嵌合する嵌合凹部2aが形成されている。
リールロック解除部材14は略三角形状を有し、リールハブ6の底部60とリールロック部材13との間に配置されている。リールロック解除部材14の下面には、その略三角形状の各々の頂点部付近から下方へ向けて計3本の脚14aが突出形成されており、これらの脚は、カートリッジ非使用時、リールハブ6の底部60に形成された挿通孔6aを介してチャッキングギヤ9のギヤ間に位置している。
リールロック解除部材14の各脚14aは、カートリッジ使用時、チャッキングギヤ9に係合するテープドライブ装置のリール回転駆動軸により上方へ押圧されることで、リールロック部材13をリールスプリング15の付勢力に抗してロック解除位置へ移動させる。そして、テープリール5とともにリールロック部材13に対して回転可能に構成される。リールロック解除部材14の上面略中央部には、リールロック部材13の下面略中央部に突出形成された断面円弧状の摺接部13bを支持する支持面14bが設けられている。
カートリッジケース4の一側壁26には、磁気テープ22の一端を外部へ引き出すための引出口27が設けられている。側壁26の内方には、引出口27を開閉するスライドドア29が配置されている。スライドドア29は、テープドライブ装置のテープローディング機構(図示略)との係合によりトーションバネ57の付勢力に抗して引出口27を開放する方向にスライドするように構成される。
磁気テープ22の一端部には、リーダーピン31が固定されている。リーダーピン31は、引出口27の内方側に設けられたピン保持部33に対して着脱可能に構成される。ピン保持部33は、上シェル2の内面及び下シェル3の内面にそれぞれ取り付けられており、リーダーピン31の上端部及び下端部をそれぞれ弾性的に保持することが可能に構成される。
そして、カートリッジケース4の内部には、磁気テープ22に記録された情報の誤消去防止用のセイフティタブ25のほか、磁気テープ22に記録された情報に関する内容を非接触で読み書き可能なカートリッジメモリ54が配置されている。カートリッジメモリ54は、基板上にアンテナコイル、ICチップ等が搭載された非接触通信媒体で構成される。
[テープリール]
続いて、テープリール5の詳細について説明する。
テープリール5は、上述したように、リールハブ6と、第1のフランジとしての下フランジ7と、第2のフランジとしての上フランジ8とを有する。本実施形態において、下フランジ7は、リールハブ6の下端部(第1の端部)と一体的に形成され、上フランジ8は、リールハブ6の上端部(第2の端部)に超音波接合法等により接合される。リールハブ6は概ね円筒形状を有し、その軸方向の高さは、磁気テープ22の幅(12.65mm)よりもやや大きく、約13mm(12.87mm)である。リールハブ6の内径は、約40mm(39.6mm)であり、その径方向に厚み寸法である肉厚は、約2mmである。
リールハブ6および下フランジ7は、PC(ポリカーボネート)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)などの合成樹脂材料を用いて一体成形される。上フランジ8も同様に、PC、ABSなどの合成樹脂材料を用いて成形される。リールハブ6および下フランジ7の成形材料には、強度の向上を目的として、上記合成樹脂材料にガラスフィラー等の無機質フィラーを添加した複合材料が用いられてもよい。ガラスフィラーの重量比は特に限定されず、例えば、ベースとなる合成樹脂材料の重量比で約10%以上30%以下である。本実施形態では、ポリカーボネート樹脂にガラスフィラーを重量比で10%以上20%以下含有する複合材料がリールハブ6の成形用材料として用いられる。
(リールハブの基本構成)
図4は、テープリール5の概略側断面図である。リールハブ6は、下フランジ7と一体的に形成される下端部6aから上フランジ8に接合される上端部6bにわたって厚みが一定な円筒形状を有する。上フランジ8は、中央に設けられた開口部8aの周縁に沿って形成された環状凸部8bをリールハブ6の上端部6bの内周面に嵌合させることで位置決めされる。リールハブ6は、上端部6bの直上にて上フランジ8に超音波接合される。
リールハブ6の外周面6cは、磁気テープ22が巻装される巻き付け面として機能する。外周面6cは、典型的には、平坦な円筒面である。リールハブ6は、磁気テープ22の巻き締まり(巻圧)により、外周面6cが径内方側に向けて押圧される。リールハブ6が下フランジ7と一体成形されるリール構造では、リールハブ6の下端部6a側よりも上端部6b側の剛性が低いため、図5にやや誇張して示すように、磁気テープ22の巻圧は、リールハブ8に対しその上端部6bを径内方側(矢印A参照)に倒し込む押圧力として働く。この押圧力を受けてリールハブ6の上端部6bが径内方側に変形すると、リールハブ6の両端部間における外径差が大きくなり、図6に模式的に示すように、下フランジ7に対向する磁気テープ22の下エッジ部22aが、上フランジ8に対向する磁気テープの上エッジ22bよりも長くなるように変形する場合がある。この場合、下エッジ22aに変形皺Dを発生させ、これが原因で磁気テープ22の下エッジ側の領域とドライブヘッドとの接触が不十分となり、データの安定した読み書きができなくなるおそれがある。
特に近年においては、テープカートリッジの高記録容量化に伴い、磁気テープの薄厚化やテープ長の拡大が進められているため、リールハブに加わる巻圧は増加傾向にある。さらに、高温高湿度環境下におけるテープカートリッジの長期保管の影響により、リールハブに加わる巻圧はさらに上昇し、このためリールハブ6の上端部6bの変形量がますます増加しやすくなる。
本発明者らは、リールハブ6の外周面を平坦な円筒面ではなく、後述するような形状にすることで、磁気テープ22の巻圧によるリールハブ6の上端部6bの変形を抑えられることを見出した。以下、その詳細について説明する。
(リールハブの外周面形状)
図7は、本実施形態のリールハブ6および下フランジ7が一体形成されたリール半体67の側断面図、図8はリールハブ6の要部の拡大断面図である。
図7に示すように、リールハブ6は、下フランジ7(第1のフランジ)と一体的に形成される下端部6a(第1の端部)と、上フランジ8が接合される上端部6b(第2の端部)と、磁気テープ22が巻装される外周面6dと、内周面6eとを有する。
リールハブ6の外周面6dは、図8に拡大して示すように、第1の外周領域6d1と、第2の外周領域6d2とを有する。一方、リールハブ6の内周面6eは、典型的には、平坦な円筒面形状を有する。
第1の外周領域6d1は、リールハブ6の下端部6aから上端部6bに向かって拡径する領域である。第1の外周領域6d1は、リールハブ6の下端部6aから上端部6bに向かって拡径する形態であれば、その形状は特に限定されない。例えば、第1の外周領域6d1は、直線的なテーパ面であってもよいし、湾曲面で形成されてもよい。湾曲面の形状は、リールハブ6の径外方に向かって凸なる形状の膨出面であってもよいし、リールハブ6の径内方に向かって凸なる形状の陥没面であってもよいし、これら膨出面と陥没面とを含む複合曲面であってもよい。つまり、第1の外周領域6d1の表面形状は、リールハブ6の成形条件(成形材料、成形温度、成形金型の表面性状など)に応じて任意に調整可能である。
第2の外周領域6d2は、第1の外周領域6d1からリールハブ6の上端部6bにわたって拡径する領域であり、第1の外周領域6d1との境界上に稜線部6d3を形成する。
第2の外周領域6d2は、稜線部6d3からリールハブ6の上端部6bに向かって拡径する形態であれば、その形状は特に限定されない。例えば、第2の外周領域6d2は、直線的なテーパ面であってもよいし、湾曲面で形成されてもよい。湾曲面の形状は、リールハブ6の径外方に向かって凸なる形状の膨出面であってもよいし、リールハブ6の径内方に向かって凸なる形状の陥没面であってもよいし、これら膨出面と陥没面とを含む複合曲面であってもよい。第1の外周領域6d1と同様に、第2の外周領域6d2の表面形状は、リールハブ6の成形条件(成形材料、成形温度、成形金型の表面性状など)に応じて任意に調整可能である。
稜線部6d3は、リールハブ6の径外方に向かって凸なる形状を有する。つまり、図8に示すように、第1の外周領域6d1のテーパ角(軸心C1に対するリールハブ6の下端部6aの外周縁部P1と稜線部6d3とを結ぶ線分のなす角)をθ1、第2の外周領域6d2のテーパ角(軸心C1に対するリールハブ6の上端部6b外周縁部P2と稜線部6d3とを結ぶ線分のなす角)をθ2とすると、θ1>θ2の関係を満たす。
稜線部6d3は、テーパ角がθ1である第1の外周領域6d1とテーパ角がθ2である第2の外周領域6d2との間を連結する傾斜変曲点に相当する。稜線部6d3の軸心C1方向に沿った断面形状は特に限定されず、第1の外周領域6d1と第2の外周領域6d2との間に形成された角部であってもよいし、それらの間に形成された湾曲面であってもよい。
リールハブ6の外周面6dに第1の外周領域6d1が設けられることで、リールハブ6の下端部6aの半径がその上端部6bの半径よりも小さくなる。つまり、下端部6aの肉厚は、上端部6bの肉厚よりも小さくすることができる。このため、リールハブ6に磁気テープ22の巻圧が作用したとき、あるいは、高温高湿度環境下での長期間にわたる保管時において、リールハブ6の下端部6aと下フランジ7との接続領域を支点とする曲げ応力でリールハブ6がその高さ方向全域にわたって径内方側へ変形しやすくなる。よって、図5に示したようなリールハブ6の上端部6bの径内方側への倒れ込みが抑制され、図9に示すようにリールハブ6の高さ方向の中央部を径内方側に凸なる湾曲形状となるように変形させることができる。これにより、リールハブ6の両端部間における外径差を小さくできるので、磁気テープ22の下エッジ部22aに図6に示したような変形皺の発生を防いで磁気テープ22の安定した記録再生特性を確保することができる。
また、リールハブ6の外周面6dに第2の外周領域6d2が設けられることで、リールハブ6の下端部6aと上端部6bとの間の外径差を一定の範囲内に収めることができる。これにより、リールハブ6への磁気テープ22の巻き取り開始時における磁気テープ22の巻姿の乱れを抑制し、下フランジ7あるいは上フランジ8との干渉による磁気テープ22のエッジ部へのダメージを低減できる。
また、リールハブ6の外周面6dに第2の外周領域6d2が設けられることで、リールハブ6に磁気テープ22の巻圧による変形が生じた際、リールハブ6の第2の外周領域6d2を軸心C1と平行な状態に近づけることができる。これにより、磁気テープ22の巻姿がより安定になり、磁気テープ22のエッジ部へのダメージをより一層低減することが可能となる。
ここで、稜線部6d3は、リールハブ6の高さH(12.87mm)の中心よりもリールハブ6の下端部6a側に位置するのが好ましい。本実施形態では、リールハブ6の下端部6aからの高さH1は、3mm以上5mm以下である。高さH1が3mm未満の場合、上述した本実施形態の作用を効果的に生じさせることができない場合がある。また、高さH1が5mmを超えると、後述するように、リールハブ6の外周面6dを形成する成形用金型の離型性が低下するおそれがある。高さH1を3mm以上5mm以下にすることで、リールハブ6の良好な成形性を確保しつつ、テープカートリッジ1の高温高湿度環境下における長期保管時においてリールハブ6の上端部6bが径内方へ倒れ込むような変形(図5参照)を阻止することができる。
また本実施形態では、図8に示すように、軸心C1を中心とする稜線部6d3の半径と外周縁部P1の半径との差ΔR1は、5μm以上25μm以下である。つまり、稜線部16d3の外径とリールハブ6の下端部6aの外径との差は、10μm以上50μm以下である。これにより、高さH1の位置に稜線部6d3を安定に形成することができる。
さらに、軸心C1を中心とするリールハブ6の下端部6aの半径とリールハブ6の上端部6bの半径との差ΔR2は、15μm以上45μm以下である。つまり、リールハブ6の下端部6aの外径とリールハブ6の上端部6aの外径との差は、30μm以上90μm以下である。これにより、テープカートリッジ1の高温高湿度環境下における長期保管時におけるリールハブ6の上端部6bが径内方へ倒れ込みを効果的に阻止することができる。
なお、高さH1、半径差ΔR1およびΔR2の大きさは上記の例に限られず、リールハブ6の高さ、肉厚、成形用材料の種類等に応じて任意に設定可能である。例えば、成形材料にガラスフィラーを含有する合成樹脂材料が用いられる場合、合成樹脂材料の種類やガラスフィラーの含有量などによってリールハブ6の剛性が変化する。このため、リールハブ6の剛性に応じて、上記各寸法を最適化するのが好ましい。
[リールハブの製造装置]
図10は、図7に示すリール半体67の製造装置である金型装置70の側断面図である。金型装置70は、リールハブ6の外周面6dおよび下フランジ7の内面を成形する第1の金型71と、リールハブ6の内周面6eおよびリールハブ6の内部底面を成形する第2の金型72と、下フランジ7の外面を成形する第3の金型73とを有する。
第1の金型71は、第2の金型72と第3の金型73との間に、成形用材料が充填されるキャビティ70Cを形成する。第1の金型71は、リールハブ6の第1の外周領域6d1を形成する第1成形面711と、リールハブ6の第2の外周領域6d2を形成する第2成形面712と、下フランジ7の内面を形成する第3成形面と、リールハブ6の上端部6bを形成する第4成形面714とを有する。
第1成形面711は、軸心C2に対して角度θ1で傾斜する逆円錐台状のテーパ面である。第2成形面712は、軸心C2に平行な円筒面である。本実施形態において、第1成形面711の高さH2は、3μm以上5μm以下である。軸心C2を中心とする第1成形面711の最小半径(第1成形面711の下端部の半径)と第1成形面711の最大半径(第2成形面712の半径)との差ΔTは、7μm以上15μm以下である。
これにより、図8に示す形状の第1の外周領域6d1を安定に形成することができる。なお、H2が5μm、ΔTが15μmをそれぞれ超える場合、成形後における第1の外周領域6d1の熱収縮を利用した第1の金型71の離型性が損なわれるおそれがある。したがって、これらの値の上限は、使用する成形用材料の種類に応じて適宜調整されるのが好ましい。
リール半体67は、図示しないゲートよりキャビティ70Cに成形用材料(ポリカーボネートとガラスフィラーの複合材料)が射出されることで成形される。これにより、図7に示したような第1の外周領域6d1および第2の外周領域6d2を含む外周面6dを有するリールハブ6を形成することができる。また、成形後における成形用材料の熱収縮により、第2成形面712によって形成される第2の外周領域6d2が、図8に示すテーパ角θ2をもった傾斜面になる。
本発明者らは、図11に示すように、成形後のリールハブ6の外周面6dの勾配を測定した。測定機には、株式会社ミツトヨ製「Mitutoyo Roundtest RA-2100」を用いた。測定の手順は以下のとおりである。
まず、図示しない回転テーブル上の治具(マスターギヤ)にリールハブ6の底部のチャッキングギヤ9(図1B参照)をセットし、リール半体67を回転可能に支持する。リール半体67を停止させた状態で、測定子81(直径1.6mm)をリールハブ6の外周面6dに接触させ、測定子81を上下にトレースして外周面6dの勾配を測定した。なお、測定子81の破損回避を目的として、測定の原点をリールハブ6の下端部6aから1mm上の位置とし、測定長は11mmとした。
測定子81のトレース後、回転テーブルを30°回転させた後、上述と同様の測定を行った。この操作を12回繰り返すことで、リールハブ6の全周方向12箇所の測定を行った。得られた12箇所の測定波形の平均値を勾配波形TR1として図12(図中左側)に示す。
続いて、リール半体67に上フランジ8を接合することでテープリール5を作製した後、このテープリール5に長さ1000mの磁気テープ22を0.55Nの張力で巻き付けてテープカートリッジ1を作製した。このテープカートリッジ1を、加速度試験条件である温度49℃、相対湿度80%に維持された恒温槽に一週間保管した。その後、温度が23℃±2℃、相対湿度が40~60%の常温環境に24時間放置した。そして、このテープカートリッジ1からテープリール5を抜き出し、磁気テープ22を取り除いた後のリールハブ6の外周面の勾配を、上述と同様の方法で測定した。その結果を勾配波形TR2として図12(図中右側)に示す。
成形直後のリールハブ6の外周面6dの勾配波形TR1には、第1の領域6d1および第2の勾配領域6d2の境界部に稜線部6d3(図8参照)に相当する傾斜角の変曲点が確認された(図12の円Aで示す領域参照)。また、リールハブ6の両端部(6a,6b)間の半径の差は約35μmであった。
一方、加速試験後のリールハブ6の外周面6dの勾配波形TR2によれば、リールハブ6の上端部6bの径内方側への倒れ込みが抑えられ、下端部6aと上端部6bとの中間領域が径内方側へ湾曲するように変形している様子が確認された。また、リールハブ6の下端部6aの半径に対する上端部6bの半径の差分は約7μmであった。
なお、リールハブ6の変形に起因する磁気テープ22のエッジ部での変形皺を防止するためには、加速度試験後におけるリールハブ6の半径差は、10μm以下であることが好ましいことが、本発明者らの実験により確認された。
比較例として、第1の外周領域6d1および第2の外周領域6d2を有してない、平坦な円筒面からなる外周面6c(図4参照)を有するリールハブについて、上述と同様な方法でハブ外周面の勾配波形を測定した結果を図13に示す。図13において、左側は、成形直後における外周面6cの勾配波形TR3であり、右側は、上記加速度試験後における外周面6cの勾配波形TR4である。同図に示すように、加速度試験後におけるリールハブの両端部間の半径差は25μm~30μmであった。
[磁気テープの詳細]
続いて、本実施形態に用いられる磁気テープ22の詳細について説明する。
図14は、磁気テープ22を側方から見た模式図である。図14に示すように、磁気テープ22は、長手方向(X軸方向)に長く、幅方向(Y軸方向)に短く、厚さ方向(Z軸方向)に薄いテープ状に構成されている。
磁気テープ22は、長手方向(X軸方向)に長いテープ状の基材41と、基材41の一方の主面上に設けられた下地層(非磁性層)42と、下地層42上に設けられた磁性層43と、基材41の他方の主面上に設けられたバック層44とを含む。なお、バック層44は、必要に応じて設けられればよく、このバック層44は省略されてもよい。磁気テープ22は、垂直記録型の磁気記録媒体であってもよいし、長手記録型の磁気記録媒体であってもよい。
磁気テープ22は長尺のテープ状を有し、記録再生の際には長手方向に走行される。なお、磁性層43の表面が、図示しない記録再生装置が備える磁気ヘッドが走行される表面となる。磁気テープ22は、記録用ヘッドとしてリング型ヘッドを備える記録再生装置で用いられることが好ましい。磁気テープ22は、1500nm以下または1000nm以下のデータトラック幅でデータを記録可能に構成された記録再生装置に用いられることが好ましい。
(基材)
基材41は、下地層42および磁性層43を支持する非磁性支持体である。基材41は、長尺のフィルム状を有する。基材41の平均厚みの上限値は、好ましくは4.2μm以下、より好ましくは3.8μm以下、さらにより好ましくは3.4μm以下である。基材41の平均厚みの上限値が4.2μm以下であると、1データカートリッジ内に記録できる記録容量を一般的な磁気テープよりも高めることができる。基材41の平均厚みの下限値は、好ましくは3μm以上、より好ましくは3.2μm以上である。基材41の平均厚みの下限値が3μm以上であると、基材41の強度低下を抑制することができる。
基材41の平均厚みは以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気テープ22を準備し、それを250mmの長さに切り出し、サンプルを作製する。続いて、サンプルの基材41以外の層(すなわち下地層42、磁性層43およびバック層44)をMEK(メチルエチルケトン)または希塩酸等の溶剤で除去する。次に、測定装置としてMitutoyo社製レーザーホロゲージ(LGH-110C)を用いて、サンプル(基材41)の厚みを5点以上の位置で測定し、それらの測定値を単純に平均(算術平均)して、基材41の平均厚みを算出する。なお、測定位置は、サンプルから無作為に選ばれるものとする。
基材41は、ポリエステルを含む。基材41がポリエステルを含むことで、基材41の長手方向のヤング率を低減することができる。したがって、走行時における磁気テープ22の長手方向のテンションを記録再生装置により調整することで、磁気テープ22の幅を一定またはほぼ一定に保つことができる。
ポリエステルは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレン-p-オキシベンゾエート(PEB)およびポリエチレンビスフェノキシカルボキシレートのうちの少なくとも1種を含む。基材41が2種以上のポリエステルを含む場合、それらの2種以上のポリエステルは混合されていてもよいし、共重合されていてもよいし、積層されていてもよい。ポリエステルの末端および側鎖の少なくとも一方が変性されていてもよい。
基材41にポリエステルが含まれていることは、例えば、次のようにして確認される。まず、基材41の平均厚みの測定方法と同様にして、サンプルの基材41以外の層を除去する。次に、赤外吸収分光法(Infrared Absorption Spectrometry:IR)によりサンプル(基材41)のIRスペクトルを取得する。このIRスペクトルに基づき、基材41にポリエステルが含まれていることを確認することができる。
基材41は、ポリエステル以外に、例えば、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミドおよびポリアミドイミドのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよいし、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリオレフィン類、セルロース誘導体、ビニル系樹脂、およびその他の高分子樹脂のうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。ポリアミドは、芳香族ポリアミド(アラミド)であってもよい。ポリイミドは、芳香族ポリイミドであってもよい。ポリアミドイミドは、芳香族ポリアミドイミドであってもよい。
基材41が、ポリエステル以外の高分子樹脂を含む場合、基材41はポリエステルを主成分とすることが好ましい。ここで、主成分とは、基材41に含まれる高分子樹脂のうち、最も含有量(質量比率)が多い成分を意味する。基材41がポリエステル以外の高分子樹脂を含む場合、ポリエステルと、ポリエステル以外の高分子樹脂は、混合されていてもよいし、共重合されていてもよい。
基材41は、長手方向および幅方向に二軸延伸されていてもよい。基材41に含まれる高分子樹脂は、基材41の幅方向に対して斜め方向に配向されていることが好ましい。
(磁性層)
磁性層43は、信号を磁化パターンにより記録するための記録層である。磁性層43は、垂直記録型の記録層であってもよいし、長手記録型の記録層であってもよい。磁性層43は、例えば、磁性粉、結着剤および潤滑剤を含む。磁性層43が、必要に応じて、帯電防止剤、研磨剤、硬化剤、防錆剤および非磁性補強粒子等のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。磁性層43は、磁性材料の塗布膜で構成される場合に限られず、磁性材料のスパッタ膜や蒸着膜で構成されてもよい。
磁性層43の表面の算術平均粗さRaは、2.0nm以下、好ましくは1.8nm以下、より好ましくは1.6nm以下である。算術平均粗さRaが2.0nm以下であると、スペーシングロスによる出力低下を抑制することができるため、優れた電磁変換特性を得ることができる。磁性層43の表面の算術平均粗さRaの下限値は、好ましくは1.0nm以上、より好ましくは1.2nm以上である。磁性層43の表面の算術平均粗さRaの下限値が1.0nm以上であると、摩擦の増大による走行性の低下を抑制することができる。
算術平均粗さRaは次のようにして求められる。まず、磁性層43の表面をAFM(Atomic Force Microscope)により観察し、40μm×40μmのAFM像を得る。AFMとしてはDigital Instruments社製、Nano Scope IIIa D3100を用い、カンチレバーとしてはシリコン単結晶製のものを用い(注1)、タッピング周波数として、200~400Hzのチューニングにて測定を行う。次に、AFM像を512×512(=262、144)個の測定点に分割し、各測定点にて高さZ(i)(i:測定点番号、i=1~262、144)を測定し、測定した各測定点の高さZ(i)を単純に平均(算術平均)して平均高さ(平均面)Zave(=(Z(1)+Z(2)+・・・+Z(262、144))/262、144)を求める。続いて、各測定点での平均中心線からの偏差Z"(i)(=Z(i)-Zave)を求め、算術平均粗さRa[nm](=(Z"(1)+Z"(2)+・・・+Z"(262、144))/262、144)を算出する。この際には、画像処理として、Flattenorder2、ならびに、planefit order 3 XYによりフィルタリング処理を行ったものをデータとして用いる。
(注1)Nano World社製SPMプローブNCH ノーマルタイプPointProbe L
(カンチレバー長)=125μm
磁性層43の平均厚みtmの上限値は、80nm以下、好ましくは70nm以下、より好ましくは50nm以下である。磁性層43の平均厚みtmの上限値が80nm以下であると、記録ヘッドとしてはリング型ヘッドを用いた場合に、反磁界の影響を軽減できるため、さらに優れた電磁変換特性を得ることができる。
磁性層43の平均厚みtmの下限値は、好ましくは35nm以上である。磁性層43の平均厚みtmの下限値が35nm以上であると、再生ヘッドとしてはMR型ヘッドを用いた場合に、出力を確保できるため、さらに優れた電磁変換特性を得ることができる。
磁性層43の平均厚みtmは以下のようにして求められる。まず、測定対象となる磁気テープ22をFIB法等により加工して薄片化を行う。FIB法を使用する場合には、後述の断面のTEM像を観察する前処理として、保護膜としてカーボン層およびタングステン層を形成する。当該カーボン層は蒸着法により磁気テープ22の磁性層43側の表面およびバック層44側の表面に形成され、そして、当該タングステン層は蒸着法またはスパッタリング法により磁性層43側の表面にさらに形成される。当該薄片化は磁気テープ22の長さ方向(長手方向)に沿って行われる。すなわち、当該薄片化によって、磁気テープ22の長手方向および厚み方向の両方に平行な断面が形成される。
得られた薄片化サンプルの上記断面を、透過型電子顕微鏡(TransmissionElectron Microscope:TEM)により、下記の条件で観察し、TEM像を得る。なお、装置の種類に応じて、倍率および加速電圧は適宜調整されてよい。
装置:TEM(日立製作所製H9000NAR)
加速電圧:300kV
倍率:100、000倍
次に、得られたTEM像を用い、磁気テープ22の長手方向の少なくとも10点以上の位置で磁性層43の厚みを測定する。得られた測定値を単純に平均(算術平均)して得られた平均値を磁性層43の平均厚みtm[nm]とする。なお、上記測定が行われる位置は、試験片から無作為に選ばれるものとする。
(磁性粉)
磁性粉は、複数の磁性粒子を含む。磁性粒子は、例えば、六方晶フェライトを含む粒子(以下「六方晶フェライト粒子」という。)、イプシロン型酸化鉄(ε酸化鉄)を含む粒子(以下「ε酸化鉄粒子」という。)またはCo含有スピネルフェライトを含む粒子(以下「コバルトフェライト粒子」という。)である。磁性粉は、磁気テープ22の厚み方向(垂直方向)に優先的に結晶配向していることが好ましい。
(六方晶フェライト粒子)
六方晶フェライト粒子は、例えば、六角板状等の板状を有する。本明細書において、六角坂状は、ほぼ六角坂状を含むものとする。六方晶フェライトは、好ましくはBa、Sr、PbおよびCaのうちの少なくとも1種、より好ましくはBaおよびSrのうちの少なくとも1種を含む。六方晶フェライトは、具体的には例えばバリウムフェライトまたはストロンチウムフェライトであってもよい。バリウムフェライトは、Ba以外にSr、PbおよびCaのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。ストロンチウムフェライトは、Sr以外にBa、PbおよびCaのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
より具体的には、六方晶フェライトは、一般式MFe1219で表される平均組成を有する。但し、Mは、例えばBa、Sr、PbおよびCaのうちの少なくとも1種の金属、好ましくはBaおよびSrのうちの少なくとも1種の金属である。Mが、Baと、Sr、PbおよびCaからなる群より選ばれる1種以上の金属との組み合わせであってもよい。また、Mが、Srと、Ba、PbおよびCaからなる群より選ばれる1種以上の金属との組み合わせであってもよい。上記一般式においてFeの一部が他の金属元素で置換されていてもよい。
磁性粉が六方晶フェライト粒子粉を含む場合、磁性粉の平均粒子サイズは、好ましくは30nm以下、より好ましくは12nm以上25nm以下、さらにより好ましくは12nm以上22nm以下、特に好ましくは12nm以上19nm以下、最も好ましくは12nm以上16nm以下である。磁性粉の平均粒子サイズが30nm以下であると、高記録密度の磁気テープ22において、さらに優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。一方、磁性粉の平均粒子サイズが12nm以上であると、磁性粉の分散性がより向上し、さらに優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。
磁性粉の平均アスペクト比が、好ましくは1.0以上3.0以下、より好ましくは1.3以上2.8以下、さらにより好ましくは1.6以上2.7以下である。磁性粉の平均アスペクト比が1.0以上2.5以下の範囲内であると、磁性粉の凝集を抑制することができる。また、磁性層43の形成工程において磁性粉を垂直配向させる際に、磁性粉に加わる抵抗を抑制することができる。したがって、磁性粉の垂直配向性を向上することができる。
磁性粉が六方晶フェライト粒子粉を含む場合、磁性粉の平均粒子サイズおよび平均アスペクト比は以下のようにして求められる。まず、測定対象となる磁気テープ22をFIB法等により加工して薄片化を行う。FIB法を使用する場合には、後述の断面のTEM像を観察する前処理として、保護膜としてカーボン層およびタングステン層を形成する。当該カーボン層は蒸着法により磁気テープ22の磁性層43側の表面およびバック層44側の表面に形成され、そして、当該タングステン層は蒸着法またはスパッタリング法により磁性層43側の表面にさらに形成される。当該薄片化は磁気テープ22の長さ方向(長手方向)に沿って行われる。すなわち、当該薄片化によって、磁気テープ22の長手方向および厚み方向の両方に平行な断面が形成される。
得られた薄片サンプルの上記断面を、透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製H-9500)を用いて、加速電圧:200kV、総合倍率500、000倍で磁性層43の厚み方向に対して磁性層43全体が含まれるように断面観察を行い、TEM写真を撮影する。次に、撮影したTEM写真から、観察面の方向に側面を向けており、且つ、粒子の厚みが明らかに確認できる粒子を50個選び出す。その厚みを明らかに確認できる選択された50個の粒子それぞれの最大板厚DAを測定する。このようにして求めた最大板厚DAを単純に平均(算術平均)して平均最大板厚DAaveを求める。続いて、各磁性粉の板径DBを測定する。粒子の板径DBを測定するために、撮影したTEM写真から、粒子の板径が明らかに確認できる粒子を50個選び出す。選択された50個の粒子それぞれの板径DBを測定する。このようにして求めた板径DBを単純平均(算術平均)して平均板径DBaveを求める。平均板径DBaveが、平均粒子サイズである。そして、平均最大板厚DAaveおよび平均板径DBaveから粒子の平均アスペクト比(DBave/DAave)を求める。
磁性粉が六方晶フェライト粒子粉を含む場合、磁性粉の平均粒子体積は、好ましくは3400nm3以下、より好ましくは400nm3以上2600nm3以下、さらにより好ましくは400nm3以上1700nm3以下、特に好ましくは400nm3以上1200nm3以下、最も好ましくは400nm3以上1000nm3以下である。磁性粉の平均粒子体積が3400nm3以下であると、磁性粉の平均粒子サイズを25nm以下とする場合と同様の効果が得られる。一方、磁性粉の平均粒子体積が500nm3以上であると、磁性粉の平均粒子サイズを12nm以上とする場合と同様の効果が得られる。
磁性粉の平均粒子体積は以下のようにして求められる。まず、上記の磁性粉の平均粒子サイズの算出方法に関して述べた通り、平均長軸長DAaveおよび平均板径DBaveを求める。次に、以下の式により、磁性粉の平均体積Vを求める。
Figure 2022143432000002
(ε酸化鉄粒子)
ε酸化鉄粒子は、微粒子でも高保磁力を得ることができる硬磁性粒子である。ε酸化鉄粒子は、球状を有しているか、または立方体状を有している。本明細書において、球状は、ほぼ球状を含むものとする。また、立方体状には、ほぼ立方体状を含むものとする。ε酸化鉄粒子が上記のような形状を有しているため、磁性粒子としてε酸化鉄粒子を用いた場合、磁性粒子として六角板状のバリウムフェライト粒子を用いた場合に比べて、磁気テープ22の厚み方向における粒子同士の接触面積を低減し、粒子同士の凝集を抑制することができる。したがって、磁性粉の分散性を高め、さらに優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。
ε酸化鉄粒子は、コアシェル型構造を有する。具体的には、ε酸化鉄粒子は、コア部と、このコア部の周囲に設けられた2層構造のシェル部とを備える。2層構造のシェル部は、コア部上に設けられた第1シェル部と、第1シェル部上に設けられた第2シェル部とを備える。
コア部は、ε酸化鉄を含む。コア部に含まれるε酸化鉄は、ε-Fe23結晶を主相とするものが好ましく、単相のε-Fe2O3からなるものがより好ましい。
第1シェル部は、コア部の周囲のうちの少なくとも一部を覆っている。具体的には、第1シェル部は、コア部の周囲を部分的に覆っていてもよいし、コア部の周囲全体を覆っていてもよい。コア部と第1シェル部の交換結合を十分なものとし、磁気特性を向上する観点からすると、コア部の表面全体を覆っていることが好ましい。
第1シェル部は、いわゆる軟磁性層であり、例えば、α-Fe、Ni-Fe合金またはFe-Si-Al合金等の軟磁性体を含む。α-Feは、コア部に含まれるε酸化鉄を還元することにより得られるものであってもよい。
第2シェル部は、酸化防止層としての酸化被膜である。第2シェル部は、α酸化鉄、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素を含む。α酸化鉄は、例えばFe34、Fe23およびFeOのうちの少なくとも1種の酸化鉄を含む。第1シェル部がα-Fe(軟磁性体)を含む場合には、α酸化鉄は、第1シェル部に含まれるα-Feを酸化することにより得られるものであってもよい。
ε酸化鉄粒子が、上述のように第1シェル部を有することで、熱安定性を確保するためにコア部単体の保磁力Hcを大きな値に保ちつつ、ε酸化鉄粒子(コアシェル粒子)全体としての保磁力Hcを記録に適した保磁力Hcに調整できる。また、ε酸化鉄粒子が、上述のように第2シェル部を有することで、磁気テープ22の製造工程およびその工程前において、ε酸化鉄粒子が空気中に暴露されて、粒子表面に錆び等が発生することにより、ε酸化鉄粒子の特性が低下することを抑制することができる。したがって、磁気テープ22の特性劣化を抑制することができる。
ε酸化鉄粒子が単層構造のシェル部を有していてもよい。この場合、シェル部は、第1シェル部と同様の構成を有する。但し、ε酸化鉄粒子の特性劣化を抑制する観点からすると、上述したように、ε酸化鉄粒子が2層構造のシェル部を有していることが好ましい。
ε酸化鉄粒子が、上記コアシェル構造に代えて添加剤を含んでいてもよいし、コアシェル構造を有すると共に添加剤を含んでいてもよい。この場合、ε酸化鉄粒子のFeの一部が添加剤で置換される。ε酸化鉄粒子が添加剤を含むことによっても、ε酸化鉄粒子全体としての保磁力Hcを記録に適した保磁力Hcに調整できるため、記録容易性を向上することができる。添加剤は、鉄以外の金属元素、好ましくは3価の金属元素、より好ましくはAl、GaおよびInのうちの少なくとも1種、さらにより好ましくはAlおよびGaのうちの少なくとも1種である。
具体的には、添加剤を含むε酸化鉄は、ε-Fe2-xx3結晶(但し、Mは鉄以外の金属元素、好ましくは3価の金属元素、より好ましくはAl、GaおよびInのうちの少なくとも1種、さらにより好ましくはAlおよびGaのうちの少なくとも1種である。xは、例えば0<x<1である。)である。
磁性粉の平均粒子サイズ(平均最大粒子サイズ)は、例えば22nm以下である。磁性粉の平均粒子サイズ(平均最大粒子サイズ)は、好ましくは20nm以下、より好ましくは8nm以上20nm以下、さらにより好ましくは10nm以上18nm以下、特に好ましくは10nm以上16nm以下、最も好ましくは10nm以上14nm以下である。磁気テープ22では、記録波長の1/2のサイズの領域が実際の磁化領域となる。このため、磁性粉の平均粒子サイズを最短記録波長の半分以下に設定することで、さらに優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。したがって、磁性粉の平均粒子サイズが22nm以下であると、高記録密度の磁気テープ22(例えば44nm以下の最短記録波長で信号を記録可能に構成された磁気テープ22)において、さらに優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。一方、磁性粉の平均粒子サイズが8nm以上であると、磁性粉の分散性がより向上し、さらに優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。
磁性粉の平均アスペクト比が、好ましくは1.0以上3.0以下、より好ましくは1.0以上2.5以下、さらにより好ましくは1.0以上2.1以下、特に好ましくは1.0以上1.8以下である。磁性粉の平均アスペクト比が1.0以上3.0以下の範囲内であると、磁性粉の凝集を抑制することができる。また、磁性層43の形成工程において磁性粉を垂直配向させる際に、磁性粉に加わる抵抗を抑制することができる。したがって、磁性粉の垂直配向性を向上することができる。
磁性粉がε酸化鉄粒子粉を含む場合、磁性粉の平均粒子サイズおよび平均アスペクト比は、以下のようにして求められる。まず、測定対象となる磁気テープ22をFIB(Focused Ion Beam)法等により加工して薄片化を行う。FIB法を使用する場合には、後述の断面のTEM像を観察する前処理として、保護層としてカーボン層およびタングステン層を形成する。当該カーボン層は蒸着法により磁気テープ22の磁性層43側の表面およびバック層44側の表面に形成され、そして、当該タングステン層は蒸着法またはスパッタリング法により磁性層43側の表面にさらに形成される。薄片化は磁気テープ22の長さ方向(長手方向)に沿うかたちで行って行われる。すなわち、当該薄片化によって、磁気テープ22の長手方向および厚み方向の両方に平行な断面が形成される。
得られた薄片サンプルの上記断面を、透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製H-9500)を用いて、加速電圧:200kV、総合倍率500、000倍で磁性層43の厚み方向に対して磁性層43全体が含まれるように断面観察を行い、TEM写真を撮影する。次に、撮影したTEM写真から、粒子の形状を明らかに確認することができる50個の粒子を選び出し、各粒子の長軸長DLと短軸長DSを測定する。ここで、長軸長DLとは、各粒子の輪郭に接するように、あらゆる角度から引いた2本の平行線間の距離のうち最大のもの(いわゆる最大フェレ径)を意味する。一方、短軸長DSとは、粒子の長軸(DL)と直交する方向における粒子の長さのうち最大のものを意味する。続いて、測定した50個の粒子の長軸長DLを単純に平均(算術平均)して平均長軸長DLaveを求める。このようにして求めた平均長軸長DLaveを磁性粉の平均粒子サイズとする。また、測定した50個の粒子の短軸長DSを単純に平均(算術平均)して平均短軸長DSaveを求める。そして、平均長軸長DLaveおよび平均短軸長DSaveから粒子の平均アスペクト比(DLave/DSave)を求める。
磁性粉の平均粒子体積は、好ましくは5600nm3以下、より好ましくは250nm3以上4200nm3以下、さらにより好ましくは600nm3以上3000nm3以下、特に好ましくは600nm3以上2200nm3以下、最も好ましくは600nm3以上1500nm3以下である。一般的に磁気テープ22のノイズは粒子個数の平方根に反比例(すなわち粒子体積の平方根に比例)するため、粒子体積をより小さくすることで、さらに優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。したがって、磁性粉の平均粒子体積が5600nm3以下であると、磁性粉の平均粒子サイズを22nm以下とする場合と同様に、さらに優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。一方、磁性粉の平均粒子体積が250nm3以上であると、磁性粉の平均粒子サイズを8nm以上とする場合と同様の効果が得られる。
ε酸化鉄粒子が球状を有している場合には、磁性粉の平均粒子体積は以下のようにして求められる。まず、上記の磁性粉の平均粒子サイズの算出方法と同様にして、平均長軸長DLaveを求める。次に、以下の式により、磁性粉の平均体積Vを求める。
V=(π/6)×DLave 3
ε酸化鉄粒子が立方体状を有している場合、磁性粉の平均体積は以下のようにして求められる。磁気テープ22をFIB(Focused Ion Beam)法等により加工して薄片化を行う。FIB法を使用する場合には、後述の断面のTEM像を観察する前処理として、保護膜としてカーボン膜およびタングステン薄膜を形成する。当該カーボン膜は蒸着法により磁気テープ22の磁性層43側の表面およびバック層44側の表面に形成され、そして、当該タングステン薄膜は蒸着法またはスパッタリング法により磁性層43側の表面にさらに形成される。当該薄片化は磁気テープ22の長さ方向(長手方向)に沿って行われる。すなわち、当該薄片化によって、磁気テープ22の長手方向および厚み方向の両方に平行な断面が形成される。
得られた薄片サンプルを透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製H-9500)を用いて、加速電圧:200kV、総合倍率500、000倍で磁性層43の厚み方向に対して磁性層43全体が含まれるように断面観察を行い、TEM写真を得る。なお、装置の種類に応じて、倍率および加速電圧は適宜調整されてよい。次に、撮影したTEM写真から粒子の形状が明らかである50個の粒子を選び出し、各粒子の辺の長さDCを測定する。続いて、測定した50個の粒子の辺の長さDCを単純に平均(算術平均)して平均辺長DCaveを求める。次に、平均辺長DCaveを用いて以下の式から磁性粉の平均体積Vave(粒子体積)を求める。
ave=DCave 3
(コバルトフェライト粒子)
コバルトフェライト粒子は、一軸結晶異方性を有することが好ましい。コバルトフェライト粒子が一軸結晶異方性を有することで、磁性粉を磁気テープ22の厚み方向(垂直方向)に優先的に結晶配向させることができる。コバルトフェライト粒子は、例えば、立方体状を有している。本明細書において、立方体状は、ほぼ立方体状を含むものとする。Co含有スピネルフェライトが、Co以外にNi、Mn、Al、CuおよびZnのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
Co含有スピネルフェライトは、例えば以下の式で表される平均組成を有する。
CoxyFe2Z
(但し、式中、Mは、例えば、Ni、Mn、Al、CuおよびZnのうちの少なくとも1種の金属である。xは、0.4≦x≦1.0の範囲内の値である。yは、0≦y≦0.3の範囲内の値である。但し、x、yは(x+y)≦1.0の関係を満たす。zは3≦z≦4の範囲内の値である。Feの一部が他の金属元素で置換されていてもよい。)
磁性粉がコバルトフェライト粒子粉を含む場合、磁性粉の平均粒子サイズは、22nm以下である。磁性粉の平均粒子サイズ(平均最大粒子サイズ)は、好ましくは20nm以下、より好ましくは8nm以上20nm以下、さらにより好ましくは10nm以上18nm以下、特に好ましくは10nm以上16nm以下、最も好ましくは10nm以上14nm以下である。磁性粉の平均粒子サイズが22nm以下であると、高記録密度の磁気テープ22において、さらに優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。一方、磁性粉の平均粒子サイズが8nm以上であると、磁性粉の分散性がより向上し、さらに優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。磁性粉の平均粒子サイズの算出方法は、磁性粉がε酸化鉄粒子粉を含む場合における磁性粉の平均粒子サイズの算出方法と同様である。
磁性粉の平均アスペクト比が、好ましくは1.0以上3.0以下、より好ましくは1.0以上2.5以下、さらにより好ましくは1.0以上2.1以下、特に好ましくは1.0以上1.8以下である。磁性粉の平均アスペクト比が1.0以上3.0以下の範囲内であると、磁性粉の凝集を抑制することができる。また、磁性層43の形成工程において磁性粉を垂直配向させる際に、磁性粉に加わる抵抗を抑制することができる。したがって、磁性粉の垂直配向性を向上することができる。磁性粉の平均アスペクト比の算出方法は、磁性粉がε酸化鉄粒子粉を含む場合における磁性粉の平均アスペクト比の算出方法と同様である。
磁性粉の平均粒子体積は、好ましくは5600nm3以下、より好ましくは250nm3以上4200nm3以下、さらにより好ましくは600nm3以上3000nm3以下、特に好ましくは600nm3以上2200nm3以下、最も好ましくは600nm3以上1500nm3以下である。磁性粉の平均粒子体積が5600nm3以下であると、磁性粉の平均粒子サイズを25nm以下とする場合と同様の効果が得られる。一方、磁性粉の平均粒子体積が500nm3以上であると、磁性粉の平均粒子サイズを8nm以上とする場合と同様の効果が得られる。磁性分の平均粒子体積の算出方法は、ε酸化鉄粒子が立方体状を有している場合の平均粒子体積の算出方法と同様である。
(結着剤)
結着剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル-塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル-アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル-塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル-塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル-塩化ビニル共重合体、メタクリル酸エステル-エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース)、スチレンブタジエン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、合成ゴム等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
上記の全ての結着剤には、磁性粉の分散性を向上させる目的で、-SO3M、-OSO3M、-COOM、P=O(OM)2(但し、式中Mは水素原子またはリチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属を表す)や、-NR1R2、-NR1R2R3+-で表される末端基を有する側鎖型アミン、>NR1R2+-で表される主鎖型アミン(但し、式中R1、R2、R3は水素原子または炭化水素基を表し、X-はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン元素イオン、無機イオンまたは有機イオンを表す。)、さらに-OH、-SH、-CN、エポキシ基等の極性官能基が導入されていてもよい。これら極性官能基の結着剤への導入量は、10-1~10-8モル/gであるのが好ましく、10-2~10-6モル/gであるのがより好ましい。
(潤滑剤)
潤滑剤は、例えば脂肪酸および脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種、好ましくは脂肪酸および脂肪酸エステルの両方を含む。磁性層43が潤滑剤を含むことが、特には磁性層43が脂肪酸および脂肪酸エステルの両方を含むことが、磁気テープ22の走行安定性の向上に貢献する。より特には、磁性層43が潤滑剤を含み且つ細孔を有することによって、良好な走行安定性が達成される。当該走行安定性の向上は、磁気テープ22の磁性層43側表面の動摩擦係数が上記潤滑剤により、磁気テープ22の走行に適した値へ調整されるためと考えられる。
脂肪酸は、好ましくは下記の一般式(1)または(2)により示される化合物であってよい。例えば、脂肪酸として下記の一般式(1)により示される化合物および一般式(2)により示される化合物の一方が含まれていてよく、または両方が含まれていてもよい。
また、脂肪酸エステルは、好ましくは下記一般式(3)または(4)により示される化合物であってよい。例えば、脂肪酸エステルとして下記の一般式(3)により示される化合物および一般式(4)により示される化合物の一方が含まれていてよく、または両方が含まれていてもよい。
潤滑剤が、一般式(1)に示される化合物および一般式(2)に示される化合物のいずれか一方若しくは両方と、一般式(3)に示される化合物および一般式(4)に示される化合物のいずれか一方若しくは両方と、を含むことによって、磁気テープ22を繰り返しの記録または再生による動摩擦係数の増加を抑制することができる。
CH3(CH2kCOOH ・・・(1)
(但し、一般式(1)において、kは14以上22以下の範囲、より好ましくは14以上18以下の範囲から選ばれる整数である。)
CH3(CH2nCH=CH(CH2mCOOH ・・・(2)
(但し、一般式(2)において、nとmとの和は12以上20以下の範囲、より好ましくは14以上18以下の範囲から選ばれる整数である。)
CH3(CH2pCOO(CH2qCH3 ・・・(3)
(但し、一般式(3)において、pは14以上22以下、より好ましくは14以上18以下の範囲から選ばれる整数であり、且つ、qは2以上5以下の範囲、より好ましくは2以上4以下の範囲から選ばれる整数である。)
CH3(CH2rCOO-(CH2sCH(CH32 ・・・(4)
(但し、一般式(4)において、rは14以上22以下の範囲から選ばれる整数であり、sは1以上3以下の範囲から選ばれる整数である。)
(帯電防止剤)
帯電防止剤としては、例えば、カーボンブラック、天然界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられる。
(研磨剤)
研磨剤としては、例えば、α化率90%以上のα-アルミナ、β-アルミナ、γ-アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α-酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカ-バイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、2硫化モリブデン、磁性酸化鉄の原料を脱水、アニール処理した針状α酸化鉄、必要によりそれらをアルミおよび/またはシリカで表面処理したもの等が挙げられる。
(硬化剤)
硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)と活性水素化合物との付加体等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)と活性水素化合物との付加体等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらポリイソシアネートの重量平均分子量は、100~3000の範囲であることが望ましい。
(防錆剤)
防錆剤としては、例えばフェノール類、ナフトール類、キノン類、窒素原子を含む複素環化合物、酸素原子を含む複素環化合物、硫黄原子を含む複素環化合物等が挙げられる。
(非磁性補強粒子)
非磁性補強粒子として、例えば、酸化アルミニウム(α、βまたはγアルミナ)、酸化クロム、酸化珪素、ダイヤモンド、ガーネット、エメリー、窒化ホウ素、チタンカーバイト、炭化珪素、炭化チタン、酸化チタン(ルチル型またはアナターゼ型の酸化チタン)等が挙げられる。
(下地層)
下地層42は、基材41の表面の凹凸を緩和し、磁性層43の表面の凹凸を調整するためのものである。下地層42は、非磁性粉、結着剤および潤滑剤を含む非磁性層である。下地層42は、磁性層43の表面に潤滑剤を供給する。下地層42が、必要に応じて、帯電防止剤、硬化剤および防錆剤等のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。
下地層42の平均厚みは、好ましくは0.3μm以上2.0μm以下、より好ましくは0.5μm以上1.4μm以下である。なお、下地層42の平均厚みは、磁性層43の平均厚みと同様にして求められる。但し、TEM像の倍率は、下地層42の厚みに応じて適宜調整される。下地層42の平均厚みが2.0μm以下であると、外力による磁気テープ22の伸縮性がさらに高くなるため、テンション調整による磁気テープ22の幅の調整がさらに容易となる。
(非磁性粉)
非磁性粉は、例えば無機粒子粉または有機粒子粉の少なくとも1種を含む。また、非磁性粉は、カーボンブラック等の炭素粉を含んでいてもよい。なお、1種の非磁性粉を単独で用いてもよいし、2種以上の非磁性粉を組み合わせて用いてもよい。無機粒子は、例えば、金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物または金属硫化物等を含む。非磁性粉の形状としては、例えば、針状、球状、立方体状、板状等の各種形状が挙げられるが、これらの形状に限定されるものではない。
(結着剤、潤滑剤)
結着剤および潤滑剤は、上述の磁性層43と同様である。
(添加剤)
帯電防止剤、硬化剤および防錆剤はそれぞれ、上述の磁性層43と同様である。
(バック層)
バック層44は、結着剤および非磁性粉を含む。バック層44が、必要に応じて潤滑剤、硬化剤および帯電防止剤等のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。結着剤および非磁性粉は、上述の下地層42と同様である。
非磁性粉の平均粒子サイズは、好ましくは10nm以上150nm以下、より好ましくは15nm以上110nm以下である。非磁性粉の平均粒子サイズは、上記の磁性粉の平均粒子サイズと同様にして求められる。非磁性粉が、2以上の粒度分布を有する非磁性粉を含んでいてもよい。
バック層44の平均厚みの上限値は、好ましくは0.6μm以下である。バック層44の平均厚みの上限値が0.6μm以下であると、磁気テープ22の平均厚みが5.6μm以下である場合でも、下地層42や基材41の厚みを厚く保つことができるので、磁気テープ22の記録再生装置内での走行安定性を保つことができる。バック層44の平均厚みの下限値は特に限定されるものではないが、例えば0.2μm以上である。
バック層44の平均厚みtbは以下のようにして求められる。まず、磁気テープ22の平均厚みtTを測定する。平均厚みtTの測定方法は、以下の「磁気テープの平均厚み」に記載されている通りである。続いて、サンプルのバック層44をMEK(メチルエチルケトン)または希塩酸等の溶剤で除去する。次に、Mitutoyo社製レーザーホロゲージ(LGH-110C)を用いて、サンプルの厚みを5点以上の位置で測定し、それらの測定値を単純に平均(算術平均)して、平均値tB[μm]を算出する。その後、以下の式よりバック層44の平均厚みtb[μm]を求める。なお、測定位置は、サンプルから無作為に選ばれるものとする。
b[μm]=tT[μm]-tB[μm]
バック層44は、多数の突部が設けられた表面を有している。多数の突部は、磁気テープ22をロール状に巻き取った状態において、磁性層43の表面に多数の孔部を形成するためのものである。多数の孔部は、例えば、バック層44の表面から突出された多数の非磁性粒子により構成されている。
(磁気テープの平均厚み)
磁気テープ22の平均厚み(平均全厚)tTの上限値が、5.6μm以下、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.6μm以下、さらにより好ましくは4.4μm以下である。磁気テープ22の平均厚みtTが5.6μm以下であると、1データカートリッジ内に記録できる記録容量を一般的な磁気テープよりも高めることができる。磁気テープ22の平均厚みtTの下限値は特に限定されるものではないが、例えば3.5μm以上である。なお、磁気テープ22の全長は、960m以上である。
磁気テープ22の平均厚みtTは以下のようにして求められる。まず、1/2インチ幅の磁気テープ22を準備し、それを250mmの長さに切り出し、サンプルを作製する。次に、測定装置としてMitutoyo社製レーザーホロゲージ(LGH-110C)を用いて、サンプルの厚みを5点以上の位置で測定し、それらの測定値を単純に平均(算術平均)して、平均値tT[μm]を算出する。なお、測定位置は、サンプルから無作為に選ばれるものとする。
(保磁力Hc)
磁気テープ22の長手方向における磁性層43の保磁力Hc2の上限値が、好ましくは2000Oe以下、より好ましくは1900Oe以下、さらにより好ましくは1800Oe以下である。長手方向における磁性層43の保磁力Hc2が2000Oe以下であると、高記録密度であっても十分な電磁変換特性を有することができる。
磁気テープ22の長手方向に測定した磁性層43の保磁力Hc2の下限値が、好ましくは1000Oe以上である。長手方向に測定した磁性層43の保磁力Hc2が1000Oe以上であると、記録ヘッドからの漏れ磁束による減磁を抑制することができる。
上記の保磁力Hc2は以下のようにして求められる。まず、磁気テープ22が両面テープで3枚重ね合わされた後、φ6.39mmのパンチで打ち抜かれて、測定サンプルが作製される。この際に、磁気テープ22の長手方向(走行方向)が認識できるように、磁性を持たない任意のインクでマーキングを行う。そして、振動試料型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer:VSM)を用いて磁気テープ22の長手方向(走行方向)に対応する測定サンプル(磁気テープ22全体)のM-Hループが測定される。次に、アセトンまたはエタノール等が用いられて塗膜(下地層42、磁性層43およびバック層44等)が払拭され、基材41のみが残される。そして、得られた基材41が両面テープで3枚重ね合わされた後、φ6.39mmのパンチで打ち抜かれて、バックグラウンド補正用のサンプル(以下、単に「補正用サンプル」)が作製される。その後、VSMを用いて基材41の垂直方向(磁気テープ22の垂直方向)に対応する補正用サンプル(基材41)のM-Hループが測定される。
測定サンプル(磁気テープ22の全体)のM-Hループ、補正用サンプル(基材41)のM-Hループの測定においては、東英工業社製の高感度振動試料型磁力計「VSM-P7-15型」が用いられる。測定条件は、測定モード:フルループ、最大磁界:15kOe、磁界ステップ:40bit、Time constant of Locking amp:0.3sec、Waiting time:1sec、MH平均数:20とされる。
測定サンプル(磁気テープ22の全体)のM-Hループおよび補正用サンプル(基材41)のM-Hループが得られた後、測定サンプル(磁気テープ22の全体)のM-Hループから補正用サンプル(基材41)のM-Hループが差し引かれることで、バックグラウンド補正が行われ、バックグラウンド補正後のM-Hループが得られる。このバックグラウンド補正の計算には、「VSM-P7-15型」に付属されている測定・解析プログラムが用いられる。得られたバックグラウンド補正後のM-Hループから保磁力Hc2が求められる。なお、この計算には、「VSM-P7-15型」に付属されている測定・解析プログラムが用いられる。なお、上記のM-Hループの測定はいずれも、25℃にて行われるものとする。また、M-Hループを磁気テープ22の長手方向に測定する際の"反磁界補正"は行わないものとする。
(角形比)
磁気テープ22の垂直方向(厚み方向)における磁性層43の角形比S1が、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらにより好ましくは75%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上である。角形比S1が65%以上であると、磁性粉の垂直配向性が十分に高くなるため、さらに優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。
垂直方向における角形比S1は以下のようにして求められる。まず、磁気テープ22が両面テープで3枚重ね合わされた後、φ6.39mmのパンチで打ち抜かれて、測定サンプルが作製される。この際に、磁気テープ22の長手方向(走行方向)が認識できるように、磁性を持たない任意のインクでマーキングを行う。そして、VSMを用いて磁気テープ22の垂直方向(厚み方向)に対応する測定サンプル(磁気テープ22の全体)のM-Hループが測定される。次に、アセトンまたはエタノール等が用いられて塗膜(下地層42、磁性層43およびバック層44等)が払拭され、基材41のみが残される。そして、得られた基材41が両面テープで3枚重ね合わされた後、φ6.39mmのパンチで打ち抜かれて、バックグラウンド補正用のサンプル(以下、単に「補正用サンプル」)とされる。その後、VSMを用いて基材41の垂直方向(磁気テープ22の垂直方向)に対応する補正用サンプル(基材41)のM-Hループが測定される。
測定サンプル(磁気テープ22の全体)のM-Hループ、補正用サンプル(基材41)のM-Hループの測定においては、東英工業社製の高感度振動試料型磁力計「VSM-P7-15型」が用いられる。測定条件は、測定モード:フルループ、最大磁界:15kOe、磁界ステップ:40bit、Time constant of Locking amp:0.3sec、Waiting time:1sec、MH平均数:20とされる。
測定サンプル(磁気テープ22の全体)のM-Hループおよび補正用サンプル(基材41)のM-Hループが得られた後、測定サンプル(磁気テープ22の全体)のM-Hループから補正用サンプル(基材41)のM-Hループが差し引かれることで、バックグラウンド補正が行われ、バックグラウンド補正後のM-Hループが得られる。このバックグラウンド補正の計算には、「VSM-P7-15型」に付属されている測定・解析プログラムが用いられる。
得られたバックグラウンド補正後のM-Hループの飽和磁化Ms(emu)および残留磁化Mr(emu)が以下の式に代入されて、角形比S1(%)が計算される。なお、上記のM-Hループの測定はいずれも、25℃にて行われるものとする。また、M-Hループを磁気テープ22の垂直方向に測定する際の"反磁界補正"は行わないものとする。なお、この計算には、「VSM-P7-15型」に付属されている測定・解析プログラムが用いられ
る。
角形比S1(%)=(Mr/Ms)×100
磁気テープ22の長手方向(走行方向)における磁性層43の角形比S2が、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、さらにより好ましくは25%以下、特に好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下である。角形比S2が35%以下であると、磁性粉の垂直配向性が十分に高くなるため、さらに優れた電磁変換特性(例えばSNR)を得ることができる。
長手方向における角形比S2は、M-Hループを磁気テープ22および基材41の長手方向(走行方向)に測定すること以外は角形比S1と同様にして求められる。
(バック面の表面粗度Rb)
バック面の表面粗度(バック層44の表面粗度)Rbが、Rb≦6.0[nm]であることが好ましい。バック面の表面粗度Rbが上記範囲であると、さらに優れた電磁変換特性を得ることができる。
[変形例]
以上の実施形態では、LTO規格に準拠したテープカートリッジ用のテープリールを例に挙げて説明したが、LTO以外の規格に準拠したテープカートリッジ用のテープリールおよびこれを備えたテープカートリッジにも本技術は適用可能である。
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1) 第1のフランジと、
第2のフランジと、
前記第1のフランジと一体的に形成される第1の端部と、前記第2のフランジが接合される第2の端部と、磁気テープが巻装される外周面とを有する円筒状のリールハブと
を具備し、
前記リールハブの外周面は、
前記第1の端部から前記第2の端部に向かって拡径する第1の外周領域と、
前記第1の外周領域から前記第2の端部にわたって拡径し、前記第1の外周領域との境界上に前記リールハブの径外方に向かって凸なる形状の稜線部を形成する第2の外周領域と、を有する
テープリール。
(2)上記(1)に記載のテープリールであって、
前記稜線部は、前記リールハブの高さの中心よりも前記第1の端部側に位置する
テープリール。
(3)上記(1)又は(2)に記載のテープリールであって、
前記稜線部の外径と前記第1の端部の外径との差は、10μm以上50μm以下であり、
前記第1の端部の外径と前記第2の端部の外径との差は、30μm以上90μm以下である
テープリール。
(4)上記(3)に記載のテープリールであって、
前記第1のフランジおよび前記リールハブは、合成樹脂材料にガラスフィラーを含有した複合材料の成形体である
テープリール。
(5)上記(4)に記載のテープリールであって、
前記合成樹脂材料はポリカーボネート樹脂であり、前記ガラスフィラーの含有量は前記ポリカーボネート樹脂に対する重量比で10%以上20%以下である
テープリール。
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つに記載のテープリールであって、
前記リールハブの高さは略13mmであり、
前記第1の端部から前記稜線部までの長さは、3mm以上5mm以下である
テープリール。
(7) 第1のフランジと、第2のフランジと、前記第1のフランジに接続される第1の端部と前記第2のフランジに接続される第2の端部と磁気テープが巻装される外周面とを有する円筒状のリールハブと、を有するテープリール
を具備し、
前記リールハブの外周面は、
前記第1の端部から前記第2の端部に向かって拡径する第1の外周領域と、
前記第1の外周領域から前記第2の端部にわたって拡径し、前記第1の外周領域との境界上に前記リールハブの径外方に向かって凸なる形状の稜線部を形成する第2の外周領域と、を有する
テープカートリッジ。
(8)上記(7)に記載のテープカートリッジであって、
前記テープリールに前記磁気テープが巻装された状態で、温度49℃、相対湿度80%の環境中に前記テープカートリッジを1週間保管した後における、前記第1の端部と前記第2の端部の半径差が10μm以下である
テープカートリッジ。
(9)上記(7)又は(8)に記載のテープリールであって、
前記磁気テープは、厚みが5.6μm以下、長さが960m以上である
テープカートリッジ。
(10)上記(1)に記載のリールハブを備えたテープリールの製造装置であって、
前記リールハブの外周面を成形する第1の金型と、
前記リールハブの内周面を成形する第2の金型と
を具備し、
前記第1の金型は、
前記第1の外周領域を形成するテーパ面で構成された第1成形面と、
前記第2の外周領域を形成する円筒面で構成された第2成形面と、を有する
テープリールの製造装置。
1…テープカートリッジ
5…テープリール
6…リールハブ
6a…下端部
6b…上端部
6d…外周面
6d1…第1の外周領域
6d2…第2の外周領域
6d3…稜線部
7…下フランジ
8…上フランジ
22…磁気テープ

Claims (10)

  1. 第1のフランジと、
    第2のフランジと、
    前記第1のフランジと一体的に形成される第1の端部と、前記第2のフランジが接合される第2の端部と、磁気テープが巻装される外周面とを有する円筒状のリールハブと
    を具備し、
    前記リールハブの外周面は、
    前記第1の端部から前記第2の端部に向かって拡径する第1の外周領域と、
    前記第1の外周領域から前記第2の端部にわたって拡径し、前記第1の外周領域との境界上に前記リールハブの径外方に向かって凸なる形状の稜線部を形成する第2の外周領域と、を有する
    テープリール。
  2. 請求項1に記載のテープリールであって、
    前記稜線部は、前記リールハブの高さの中心よりも前記第1の端部側に位置する
    テープリール。
  3. 請求項1に記載のテープリールであって、
    前記稜線部の外径と前記第1の端部の外径との差は、10μm以上50μm以下であり、
    前記第1の端部の外径と前記第2の端部の外径との差は、30μm以上90μm以下である
    テープリール。
  4. 請求項3に記載のテープリールであって、
    前記第1のフランジおよび前記リールハブは、合成樹脂材料にガラスフィラーを含有した複合材料の成形体である
    テープリール。
  5. 請求項4に記載のテープリールであって、
    前記合成樹脂材料はポリカーボネート樹脂であり、前記ガラスフィラーの含有量は前記ポリカーボネート樹脂に対する重量比で10%以上20%以下である
    テープリール。
  6. 請求項1に記載のテープリールであって、
    前記リールハブの高さは略13mmであり、
    前記第1の端部から前記稜線部までの長さは、3mm以上5mm以下である
    テープリール。
  7. 第1のフランジと、第2のフランジと、前記第1のフランジに接続される第1の端部と前記第2のフランジに接続される第2の端部と磁気テープが巻装される外周面とを有する円筒状のリールハブと、を有するテープリール
    を具備し、
    前記リールハブの外周面は、
    前記第1の端部から前記第2の端部に向かって拡径する第1の外周領域と、
    前記第1の外周領域から前記第2の端部にわたって拡径し、前記第1の外周領域との境界上に前記リールハブの径外方に向かって凸なる形状の稜線部を形成する第2の外周領域と、を有する
    テープカートリッジ。
  8. 請求項7に記載のテープカートリッジであって、
    前記テープリールに前記磁気テープが巻装された状態で、温度49℃、相対湿度80%の環境中に前記テープカートリッジを1週間保管した後における、前記第1の端部と前記第2の端部の半径差が10μm以下である
    テープカートリッジ。
  9. 請求項7に記載のテープリールであって、
    前記磁気テープは、厚みが5.6μm以下、長さが960m以上である
    テープカートリッジ。
  10. 請求項1に記載のリールハブを備えたテープリールの製造装置であって、
    前記リールハブの外周面を成形する第1の金型と、
    前記リールハブの内周面を成形する第2の金型と
    を具備し、
    前記第1の金型は、
    前記第1の外周領域を形成するテーパ面で構成された第1成形面と、
    前記第2の外周領域を形成する円筒面で構成された第2成形面と、を有する
    テープリールの製造装置。
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