JP2022136245A - 計測装置、計測方法、及びプログラム - Google Patents

計測装置、計測方法、及びプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】塗工膜の目付量を非破壊で精度よく計測することができる計測装置、計測方法、及びプログラムを提供する。【解決手段】板状部材の表面に塗工された塗工膜が加熱または冷却されたときの、塗工膜の予め定めた位置での、加熱または冷却が開始された第1時刻における塗工膜の温度の推定値、及び加熱または冷却が開始された直後の第2時刻における塗工膜の温度の実測値のいずれか一方を特定値として取得する取得手段と、特定値を取得した場合に、特定値に応じた時刻の塗工膜の温度と塗工膜の目付量との予め定めた関係を用いて、取得手段で取得された特定値に対応する、塗工膜の予め定めた位置での目付量を求めて出力する出力手段と、を備えた計測装置とする。【選択図】図12

Description

本発明は、計測装置、計測方法、及びプログラムに関する。
特許文献1には、プロセスフローを持つ生産プロセスで生産されるシート材料を検査する装置であって、生産プロセスの少なくとも1つの面を制御するように構成された中央プロセス制御装置と、シート材料に当たる入射放射源と、このシート材料を単一面内で移動させるコンベヤと、入射放射源の所で、またはその下流側で、シート材料の表面の画像を生成できるように、シート材料の表面のすぐ近くに位置付けられた少なくとも1つの赤外線検出器と、中央プロセス制御装置とやり取りして、赤外線検出器から画像を受取って分析し、そのシート材料の物理的特性を決定し、その決定された物理的特性を中央プロセス制御装置に送るように構成されて、中央プロセス制御装置が、その決定された物理的特性に応じて、生産プロセスの少なくとも1つの面を調整するようにしているコンピュータと、を備えることを特徴とする装置が開示されている。
特表2002-502968号公報
本発明の目的は、塗工膜の目付量を非破壊で精度よく計測することができる計測装置、計測方法、及びプログラムを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の計測装置は、板状部材の表面に塗工された塗工膜が加熱または冷却されたときの、前記塗工膜の予め定めた位置での、前記加熱または冷却が開始された第1時刻における前記塗工膜の温度の推定値、及び前記加熱または冷却が開始された直後の第2時刻における前記塗工膜の温度の実測値のいずれか一方を特定値として取得する取得手段と、前記特定値を取得した場合に、前記特定値に応じた時刻の前記塗工膜の温度と前記塗工膜の目付量との予め定めた関係を用いて、前記取得手段で取得された特定値に対応する、前記塗工膜の予め定めた位置での目付量を求めて出力する出力手段と、を備えた計測装置である。
本発明の計測方法は、板状部材の表面に塗工された塗工膜が加熱または冷却されたときの、前記塗工膜の予め定めた位置での、前記加熱または冷却が開始された第1時刻における前記塗工膜の温度の推定値、及び前記加熱または冷却が開始された直後の第2時刻における前記塗工膜の温度の実測値のいずれか一方を特定値として取得し、前記特定値を取得した場合に、前記特定値に応じた時刻の前記塗工膜の温度と前記塗工膜の目付量との予め定めた関係を用いて、取得された特定値に対応する、前記塗工膜の予め定めた位置での目付量を求めて出力する、計測方法である。
本発明のプログラムは、コンピュータを、板状部材の表面に塗工された塗工膜が加熱または冷却されたときの、前記塗工膜の予め定めた位置での、前記加熱または冷却が開始された第1時刻における前記塗工膜の温度の推定値、及び前記加熱または冷却が開始された直後の第2時刻における前記塗工膜の温度の実測値のいずれか一方を特定値として取得する取得手段、前記特定値を取得した場合に、前記特定値に応じた時刻の前記塗工膜の温度と前記塗工膜の目付量との予め定めた関係を用いて、前記取得手段で取得された特定値に対応する、前記塗工膜の予め定めた位置での目付量を求めて出力する出力手段、として機能させるためのプログラムである。
本発明によれば、塗工膜の目付量を非破壊で精度よく計測することができる。
本発明の実施の形態に係る計測装置の構成の一例を示す概略図である。 塗工膜の構成の一例を示す概略図である。 本発明の実施の形態に係る計測装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。 塗工膜の温度の時間変化(計測データ)の一例を示すグラフである。 「準備処理」の流れの一例を示すフローチャートである。 目付量及び密度の組合せが異なる複数の既知塗工膜の一例を示す表である。 (A)から(C)までは複数の既知塗工膜各々の温度の時間変化の一例を示すグラフである。 複数の既知塗工膜について最高温度の一例を示す表である。 複数の既知塗工膜について目付量に対し最高温度をプロットしたグラフである。 複数の既知塗工膜について冷却特性の一例を示す表である。 複数の既知塗工膜について(1/ρwT0)に対し冷却特性をプロットしたグラフである。 「計測処理」の流れの一例を示すフローチャートである。 第2の実施の形態に係る「計測処理」の流れの一例を示すフローチャートである。 目付量及び密度の組合せが異なる複数の既知塗工膜の他の一例を示す表である。 計測データの一例を示すグラフである。 時刻tの温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を表すグラフである。 (A)から(E)までは計測対象の塗工膜から取得された目付量分布の一例を示す画像である。 計測データの一例を示すグラフである。 (A)及び(B)は温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を表すグラフである。 (A)は加熱後0.03秒後の塗工膜の温度分布から得られた目付量分布に重ねて計測点の一例を示す画像である。(B)は各位置について計測された計測データの一例を示すグラフである。 (A)から(F)までは計測対象の塗工膜から取得された目付量分布の一例を示す画像である。 計測データの一例を示すグラフである。 (A)及び(B)は温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を表すグラフである。 (A)及び(B)は計測対象の塗工膜から取得された目付量分布の一例を示す画像である。 計測データの一例を示すグラフである。 (A)及び(B)は温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を表すグラフである。 (A)から(D)までは計測対象の塗工膜から取得された目付量分布の一例を示す画像である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
-第1の実施の形態-
第1の実施の形態では、塗工膜の目付量及び密度の両方を算出する。
<計測装置>
まず、計測装置について説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る計測装置の構成の一例を示す概略図である。計測装置10は、塗工膜12の温度を調整する温度調整部20、塗工膜12の温度を計測する温度計測部30、及び装置全体を制御する制御部40を備えている。温度計測部30が赤外線を利用して塗工膜12の温度を測定する場合、計測装置10は暗室14内に配置される。
図2に示すように、塗工膜12は、板状部材18の表面に塗工されている。塗工膜12は、目付量及び密度が未知である。本実施の形態では、塗工膜12の面内の予め定めた位置での温度を計測し、最終的には、予め定めた位置での塗工膜12の目付量及び密度を非破壊で計測する。
ここで「目付量」とは単位面積当たりの重量であり、「密度」とは単位体積当たりの重量である。例えば、リチウムイオン電池の負極電極シートの、銅箔上に塗工された黒鉛層が、本実施の形態では好適な塗工膜となる。黒鉛層では、黒鉛はバインダ樹脂により保持されている。
温度調整部20は、塗工面側から塗工膜12を加熱または冷却して、塗工膜12の温度を調整する。塗工膜12を加熱する場合は、塗工膜12に対して熱量を付与する。塗工膜12を冷却する場合は、塗工膜12から熱量を奪取する。
加熱方法としては、光を照射する光加熱、熱風による対流加熱、赤外線ヒータなどを用いた輻射加熱、誘導加熱などを用いてもよい。また、冷却方法としては、冷風による対流熱伝達などを用いてもよい。光加熱によれば、他の加熱方法に比べて加熱時間が短縮される。光加熱の一例としては、例えば、フラッシュランプで白色光を照射する方法、赤外線を照射する方法等が挙げられる。
温度計測部30は、非接触で塗工膜12の温度を測定する。非接触で温度を測定する温度計測部30としては、赤外線カメラや放射温度計などの、非接触式温度センサが挙げられる。例えば、赤外線カメラは、被写体の温度に応じて被写体から放出される赤外線量を検知して、単位面積毎(例えば、画素毎)に塗工膜12の温度を計測する。赤外線カメラによれば、塗工膜12の各位置での温度計測が可能である。
予め定めた位置は、1箇所でもよく、複数箇所でもよい。各位置は、塗工膜の面内の単位面積を有する領域である。各位置に対して求められる目付量及び密度の各々は、領域内での目付量及び密度の代表値である。ここで「代表値」とは、平均値、中央値等、領域内で取り得る値を代表する値である。以下では、予め定めた位置を「1箇所」として説明する。
図3は本発明の実施の形態に係る計測装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、計測装置10の制御部40は、各部を制御すると共に各種演算を行うコンピュータとして構成されている。即ち、制御部40は、CPU(中央処理装置; Central Processing Unit)40A、ROM(Read Only Memory)40B、RAM(Random Access Memory)40C、不揮発性のメモリ40D、及び入出力部(I/O)40Eを備えている。
CPU40A、ROM40B、RAM40C、メモリ40D、及びI/O40Eの各々は、バス40Fを介して接続されている。CPU40Aは、例えばROM40Bに記憶されたプログラムを読み出し、RAM40Cをワークエリアとして使用してプログラムを実行する。また、制御部40のI/O40Eには、ディスプレイ等の表示部42、キーボードやマウス等の入力部44、通信部46、記憶部48、温度調整部20、温度計測部30、及び搬送ベルト16が接続されている。
通信部46は、有線又は無線の通信回線を介して外部装置と通信を行うためのインターフェースである。例えば、LAN(Local Area Network)、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ等の外部装置と通信を行うためのインターフェースとして機能する。記憶部48は、ハードディスク等の外部記憶装置である。
本実施の形態では、後述する「計測処理」を実行するためのプログラムが、ROM40Bに記憶されている。また、後述する通り、「準備処理」により取得された「第2関係式」及び「第3関係式」は、記憶部48等の記憶装置に記憶される。
なお、プログラムの記憶領域はROM40Bには限定されない。各種プログラムは、メモリ40Dや記憶部48等の他の記憶装置に記憶されていてもよく、通信部46を介して外部装置から取得してもよい。
また、制御部40には、各種ドライブが接続されていてもよい。各種ドライブは、CD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどのコンピュータで読み取り可能な可搬性の記録媒体からデータを読み込んだり、記録媒体に対してデータを書き込んだりする装置である。各種ドライブを備える場合には、可搬性の記録媒体にプログラムを記録しておいて、これを対応するドライブで読み込んで実行してもよい。
図1に示すように、計測装置10は、塗工膜12を備えた板状部材18を予め定めた計測位置まで搬送する搬送ベルト16を備えている。搬送ベルト16は、制御部40により駆動制御されて、搬送ベルト16上に載せ置かれた板状部材18を、予め定めた計測位置まで搬送する。例えば、板状部材18は、表面に塗工された塗工膜12の塗工面が露出するように、搬送ベルト16上に載せ置かれる。
温度調整部20及び温度計測部30の各々は、予め定めた計測位置に対向するように配置されている。温度調整部20及び温度計測部30の各々は、搬送方向に沿って配置されている。図示した例では、複数の温度調整部20が、温度計測部30を挟んで両側に配置されている。
温度調整部20は、制御部40により制御されて、指示されたタイミングで塗工膜12を加熱または冷却する。温度計測部30は、制御部40により制御されて、指示された期間だけ、塗工膜12の予め定めた位置の温度を計測する。制御部40は、温度計測部30から計測データを取得する。取得された計測データは、RAM40Cや記憶部48等の記憶装置に記憶される。制御部40は、取得した計測データを基に、後述する「計測処理」を実行する。
<計測データ>
ここで、温度計測部により得られる「計測データ」について説明する。
計測データは、塗工膜の温度の時間変化を表すデータである。計測データは、サンプル毎に取得される。図4は計測データの一例を示すグラフである。縦軸は、時刻tのときの塗工膜の温度Tを表す。横軸は、時刻tを表す。時刻t=0に塗工膜の加熱を開始する。例えば、フラッシュランプの照射時刻を0秒とする。
塗工膜の温度Tの計測値は、所定時間毎に取得される。取得された各計測値に対応する各計測点は、○(丸)で表されている。温度の計測は、加熱開始の直前から開始される。加熱直前から塗工膜の温度が周囲の温度Tに収束するまでの期間の計測データが取得される。計測期間は、例えば、加熱直前から加熱後15秒間が経過するまでの期間である。
ここで、塗工膜は空気等の媒体中に置かれている。加熱前の塗工膜の温度は、塗工膜の周囲にある媒体の温度、即ち、周囲の温度Tである。周囲の温度Tは室温であり、図示した例では約0℃である。ここでは、塗工膜の温度は、単位領域内で均一であると仮定する。換言すれば、塗工膜の温度は、単位領域毎に異なるのである。
塗工膜を加熱した場合、塗工膜の温度Tは、瞬時に最高温度Tに到達した後、自然冷却により最高温度Tから周囲の温度Tまで徐々に戻る。「最高温度T」は、時刻t=0のときの塗工膜の温度の推定値である。
1つのサンプルの計測期間については、室温は一定と仮定できる。しかしながら、複数のサンプルの計測期間については、室温は一定とはいえない。そこで、室温変動の影響を避けるために、周囲の温度Tを基準温度とし、最高温度Tと周囲の温度Tとの差を、温度上昇値ΔT(=T-T)とする。
理論的に考察すると、塗工膜の温度Tは、ニュートンの冷却の法則に則り、下記式(1)で表される。下記式(1)が「第1関係式」の一例である。ニュートンの冷却の法則は、物質が周囲の媒質によって冷却される場合に、物質の冷却速度が物質と媒質との温度差に比例するという経験則である。
Figure 2022136245000002

上記式(1)において、tは時刻、Tは塗工膜の最高温度、Tは周囲の温度である。hは熱伝達係数、Aは熱が移動する領域の表面積、Cは熱容量である。熱容量Cは、図2に示す板状部材18と塗工膜12とを一体とした場合の、全体の熱容量である。本実施の形態では、例えば、同じ種類の複数の塗工膜を計測対象とする。熱伝達係数hは(T-T)によって変化するが、塗工膜毎に一定の数値とする。また、表面積Aは塗工膜によらず一定の数値とする。
上記式(1)は、塗工膜の温度Tが、最高温度Tから周囲の温度Tまで、指数関数的に減衰をすることを示している。塗工膜の冷却速度は(hA/C)で表される。本実施の形態では、hを「熱伝達係数」と定義し、(hA/C)を「冷却特性」と定義する。表面積Aの値と熱容量Cの値とが一定である場合、冷却特性(hA/C)は熱伝達係数hに比例する値となる。
計測データを上記式(1)で近似すると、周囲の温度T、最高温度T、冷却特性(hA/C)の各値が求められる。具体的には、上記式(1)の「T」「t」を変数、「T」「T」「hA/C」を定数と仮定する。そして、上記式(1)を表す曲線が、○(丸)で表されている複数の計測点(Tとtの組合せ)に最も近づくように、最小二乗法等を用いて、定数である「T」「T」「hA/C」の各値を定める。
定数「T」「T」「hA/C」を有する曲線を、「近似線」として図4に太線で併記する。なお、計測点の個数は、定数の個数以上になるようにする。例えば、本例の3つの定数を求めるためには、3つ以上の計測値が必要である。
<準備処理>
次に、利用者により実施される「準備処理」について説明する。
図5は「準備処理」の手順の一例を示すフローチャートである。図5に示すように、まず、ステップ100で、目付量w及び密度ρの各々が既知の複数の塗工膜(以下、「既知塗工膜」という。)を用意する。以下では、目付量w及び密度ρが既知の塗工膜を「既知塗工膜」と称して、計測対象となる塗工膜と区別する。
既知塗工膜は、計測対象の塗工膜と、塗工される板状部材の材料及び塗工膜の材料が同じである。また、既知塗工膜と計測対象の塗工膜とは、塗工面積も略同じである。複数の既知塗工膜の各々は、目付量w及び密度ρの組合せが異なる。
次に、ステップ102で、複数の既知塗工膜の各々を加熱し、加熱後に自然冷却したときの温度変化を計測して、複数の既知塗工膜の各々について、複数の計測データを取得する。温度の計測は、既知塗工膜の面内の予め定めた位置で行われる。
既知塗工膜を、予め定めた条件で加熱または冷却して、計測データを取得する。予め定めた条件は、計測対象である塗工膜と同じ条件とする。例えば、フラッシュランプで白色光を照射する場合は、フラッシュランプへの入力電力量を一定にする。既知塗工膜と塗工膜とを、同じ条件で加熱または冷却することで、各膜に付与または各膜から奪取される熱量が略一定となる。
次に、ステップ104で、複数の既知塗工膜の各々について、計測データを上記式(1)で近似して、最高温度Tと周囲の温度Tと冷却特性hA/Cとを取得する。近似計算は、制御部40で行ってもよい。
次に、ステップ106で、温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を表す「第2関係式」を取得する。例えば、後述する式(5)を取得する。後述する通り、式(5)では、温度上昇値ΔTは最高温度Tと同じ値である。次に、ステップ108で、冷却特性(hA/C)と、目付量w及び密度ρの積との関係を表す「第3関係式」を取得する。例えば、後述する式(7)を取得する。なお、「第2関係式」及び「第3関係式」については、準備処理の具体例の中で説明する。
次に、ステップ110で、第2関係式と第3関係式とを、記憶部48等の記憶装置に記憶して、準備処理を終了する。上記の第1関係式は、記憶部48等の記憶装置に予め記憶されている。第2関係式及び第3関係式は、第1関係式と共に、記憶部48等の記憶装置に記憶される。なお、ステップ106とステップ108の順序は入れ替えてもよい。
塗工膜は、面内の位置により冷却速度が異なる。例えば、側面を有し放熱面が広い端部の方が、中央部よりも冷却速度が速い。したがって、複数の既知塗工膜の各々について、温度を計測する位置は、計測対象の塗工膜で計測する「位置」に近いほど、「第2関係式」及び「第3関係式」が正確に求められる。
(準備処理の具体例)
以下、準備処理の具体例について説明する。
図6は目付量及び密度の組合せが異なる複数の既知塗工膜の一例を示す表である。図示した例では、既知塗工膜は、銅箔上に塗工された黒鉛層とする。図示した例では、目付量w及び密度ρの組合せが異なる9種類の既知塗工膜が用意されている。
既知塗工膜の目付量wは、7mg/cm、10mg/cm、及び13mg/cmと3段階で変化する。また、既知塗工膜の密度ρも、プレス強度を3段階で変えることにより、同じ目付量の塗工膜について密度ρが3段階で変化する。プレスなし→プレス弱→プレス強と、プレス強度が高くなるほど、密度ρの値は大きくなり、既知塗工膜の厚さdは薄くなる。
既知塗工膜の目付量wは、塗工量として指示された指示値とする。なお、サンプルを切り出して単位面積当たりの重量(銅箔と黒鉛層の合計)を計測し、単位面積当たりの銅箔の重量を差し引くことで、既知塗工膜(黒鉛層)の目付量wを求めてもよい。この場合は、計測対象の塗工膜で計測する「位置」に近い領域のサンプルを切り出すことで、「第2関係式」及び「第3関係式」が正確に求められる。
既知塗工膜の厚さdは、マイクロメータ等の変位計により測定された測定値である。厚さdは、計測対象となる領域全体の平均値としてもよく、計測対象となる領域の任意の複数点の平均値としてもよい。
密度ρは、目付量wを厚さdで除することで求められる。なお、図示した例では、密度ρの単位は[g/cm]、目付量wの単位は[mg/cm]、及び厚さdの単位は[μm]であるが、単位を揃えて密度ρを算出することは言うまでもない。
図7(A)から図7(C)までは、複数の既知塗工膜各々の計測データを示すグラフである。図7(A)に目付量wが7mg/cmの塗工膜の計測データを示す。図7(B)に目付量wが10mg/cmの塗工膜の計測データを示す。図7(C)に目付量wが13mg/cmの塗工膜の計測データを示す。
7mg/cm→10mg/cm→13mg/cmと目付量wの値が大きくなるほど、最高温度Tは低下し、冷却速度が低下する。また、プレス強度が高く、密度ρが大きいほど、冷却速度が低下する。
上記の通り、計測データを上記式(1)で近似することにより、各計測データについて最高温度T、周囲の温度T、及び冷却特性(hA/C)の各値が求められる。なお、この例では、室温は0℃(T=0)であり、温度上昇値ΔT(=T-T)は最高温度Tと同じ値である。
図8は、図6に示す複数の既知塗工膜について得られた最高温度Tの値を示す表である。図9は、図8に示す最高温度Tを、既知塗工膜の目付量wに対してプロットしたグラフである。目付量7mg/cmに対する計測点を○(丸)で表す。目付量10mg/cmに対する計測点を□(四角)で表す。目付量13mg/cmに対する計測点を◇(ひし形)で表す。図9から分かるように、最高温度Tは、目付量wに相関している。密度ρによる最高温度Tの変化は、目付量wによる最高温度Tの変化に比べるとわずかなものである。
温度上昇値ΔTが目付量wに相関することは理論式からも裏付けられる。例えば、単位面積当たりの熱容量がCの塗工膜の温度上昇値がΔTである場合に、単位面積当たりの熱量Qは下記式(2)で与えられる。
Figure 2022136245000003

銅箔上に塗工された黒鉛層を塗工膜とすると、熱容量Cは、黒鉛層の比熱c、黒鉛層の目付量w、銅箔の熱容量Dより下記式(3)で表される。銅箔の熱容量Dの項を追加することで、黒鉛層の熱容量(cw)と銅箔の熱容量Dとを分離して、黒鉛層だけについて目付量及び密度が求められる。
Figure 2022136245000004

上記式(2)に上記式(3)を代入すると、理論式である下記式(4)が得られる。
Figure 2022136245000005

上述した通り、ここでは室温は0℃であり、温度上昇値ΔT(=T-T)は最高温度Tと同じ値である。図9に示す最高温度Tと目付量wとの関係(計測結果)を、上記式(4)で近似すると、単位面積当たりの熱量Q、黒鉛層の比熱c、及び銅箔の熱容量Dの各々が求められる。具体的には、上記式(4)の「ΔT(=T)」「w」を変数、「Q」「c」「D」を定数と仮定する。そして、上記式(4)を表す曲線が、複数の計測点(Tとwとの組合せ)に最も近づくように、最小二乗法等を用いて、定数である「Q」「c」「D」の値を定める。
図9に示す計測結果を上記式(4)で近似すると、「第2関係式」として下記式(5)が得られる。ここでは、熱量Q、黒鉛層の比熱c、及び銅箔の熱容量Dの各々について正しい値を求める必要はなく、複数の計測点に最も近づくように定数「Q」「c」「D」の各値を定めればよい。また、熱量Q、比熱c、及び熱容量Dの各々が、他の計測で既知である場合は、その値を代入してもよい。
Figure 2022136245000006

計測処理を実行する前に、最高温度Tと目付量wとの関係を表す「第2関係式」を予め取得しておくことで、「計測処理」において、目付量wが未知の塗工膜の最高温度Tから目付量wを計測することが可能となる。なお、上記の「第2関係式」は、温度上昇値ΔT(=T-T)と目付量wとの関係を表す式としてもよい。温度上昇値ΔTは、周囲の温度Tの影響を吸収する。
なお、付与する熱量Q、黒鉛層の比熱c、及び銅箔の熱容量Dの各数値が予め分かっている場合は、理論式である上記式(4)に各々の数値を代入して「第2関係式」を求めてもよい。この場合、上記式(4)での近似は省略することができる。
図10は、図6に示す複数の既知塗工膜について得られた冷却特性(hA/C)の値を示す表である。図11に示すように、冷却特性(hA/C)は、目付量wに対して最高温度Tとは異なる変化を示す。例えば、最高温度Tの変化と異なり、プレスなし、プレス弱、プレス強の順で値が低下している。
上記の通り、最高温度Tは目付量wと相関するので、冷却特性(hA/C)は目付量w以外の要素の影響で変化している。図6に示す複数の塗工膜では、目付量w及び密度ρを変化させているため、冷却特性(hA/C)は密度ρの影響を受けていると考えられる。
図11は、図10に示す冷却特性(hA/C)を、(1/ρwT0)に対してプロットしたグラフである。wT0は、塗工膜の最高温度Tから「第2関係式」を用いて得られた目付量である。目付量7mg/cmに対する計測点を○(丸)で表す。目付量10mg/cmに対する計測点を□(四角)で表す。目付量13mg/cmに対する計測点を◇(ひし形)で表す。図11から分かるように、冷却特性(hA/C)と(1/ρwT0)との関係(計測結果)は、下記式(6)で表される直線で近似できる。「a」「b」は定数である。
Figure 2022136245000007

上記式(6)で表す直線が、複数の計測点((hA/C)と(1/ρwT0との組合せ)に最も近づくように、最小二乗法等を用いて、定数である「a」「b」の値を定める。図11に示す計測結果を上記式(6)で近似すると、「第3関係式」として下記式(7)が得られる。
Figure 2022136245000008

計測処理を実行する前に、冷却特性(hA/C)と目付量wと密度ρとの関係を表す「第3関係式」を予め取得しておくことで、「計測処理」において、密度ρが未知の塗工膜の冷却特性(hA/C)と、最高温度Tから求めた目付量wT0とから、塗工膜の密度ρを計測することが可能となる。
<計測処理>
次に、塗工膜の目付量等を計測する「計測処理」について説明する。
図12は「計測処理」の流れの一例を示すフローチャートである。「計測処理」を実行するためのプログラムは、塗工膜を備えた板状部材が計測位置に配置された状態で、利用者によりプログラムの実行が指示されると、計測装置のCPU40AによりROM40Bから読み出されて実行される。同じ種類の複数の塗工膜について計測を行う場合は、塗工膜毎に「計測処理」を実行する。
まず、ステップ200で、塗工膜の計測データの取得を開始する。計測処理で、計測対象となる「塗工膜」は、目付量w及び密度ρの各々が未知の塗工膜である。温度計測部は、塗工膜の温度の計測を開始する。温度の計測は、塗工膜の面内の予め定めた位置で行われる。制御部は、予め定めた時間毎に、塗工膜の温度の計測値を取得する。
次に、ステップ202で、塗工膜を加熱するように温度調整部に指示する。温度調整部は塗工膜に熱量を一度に付与する。塗工膜の温度は、最高温度まで上昇する。
次に、ステップ204で、塗工膜の温度が収束したか否かを判断する。温度調整部により加熱された塗工膜は、徐々に自然冷却される。塗工膜の温度は、時間をかけて周囲の温度に収束する。
例えば、周囲の温度を0℃として(0℃±3℃)等、周囲の温度を中心に予め定めた温度範囲を決めておいて、塗工膜の温度が予め定めた温度範囲内となった場合に、塗工膜の温度が収束したと判断してもよい。
塗工膜の温度が収束した場合は、ステップ206に進む。続いてステップ206で、塗工膜の計測データの取得を終了する。一方、塗工膜の温度が収束していない場合は、ステップ204で判断を繰り返し行う。
次に、ステップ208で、第1関係式を記憶装置から読み出し、得られた計測データを第1関係式で近似して、最高温度T、周囲の温度T、及び冷却特性(hA/C)の各値を取得する。
次に、ステップ210で、第2関係式を記憶装置から読み出し、第2関係式を用いて、ステップ208で得られた最高温度Tの値から、塗工膜の目付量wT0の値を取得する。なお、上記の「第2関係式」を、温度上昇値ΔT(=T-T)と目付量wとの関係を表す式とした場合は、最高温度T及び周囲の温度Tから得られた温度上昇値ΔTの値から、塗工膜の目付量wT0の値を取得する。
次に、ステップ212で、第3関係式を記憶装置から読み出し、第3関係式を用いて、ステップ208で得られた冷却特性(hA/C)の値とステップ210で得られた目付量wT0の値とから、塗工膜の密度ρの値を取得して、ルーチンを終了する。
第1の実施の形態によれば、加熱後の塗工膜の温度の時間変化から、塗工膜の目付量及び密度を非破壊で計測することができる。後述する実施の形態のように加熱開始から短時間での計測結果を用いることで、目付量の計測精度が向上する。また、理論的な裏付けのあるニュートンの冷却の法則に係る「第1関係式」で近似する場合は、塗工膜の目付量及び密度の値がより確実なものとなる。
また、上記実施の形態では、予め定めた位置(単位面積の領域内)での板状部材及び塗工膜の温度は均一と仮定して、各位置での目付量及び密度を求めたが、板状部材及び塗工膜の少なくとも一方の膜厚が厚く、厚さ方向に温度勾配が発生する場合は、物質内での熱拡散を考慮してもよい。
例えば、加熱時に厚さ方向に温度勾配が発生する場合は、塗工膜の温度が一定になる前に冷却が開始されるため、付与する熱量Q、黒鉛層の比熱c、及び銅箔の熱容量Dの各数値が既知でも、理論式である上記式(4)を適用することが難しくなる。この場合は、理論式を熱拡散が考慮された式に変更するか、上記式(4)で近似して第2関係式を求める。
また、冷却時に温度勾配が発生する場合は、上記式(6)での近似が難しくなる。この場合は、厚さ方向での密度を一定と仮定して、上記式(6)を熱拡散が考慮された式に変更してもよい。
-第2の実施の形態-
第2の実施の形態では、目付量wだけを求める点が、第1の実施の形態とは異なる。また、第2の実施の形態では、目付量wの算出方法(準備処理と計測処理)が、第1の実施の形態とは異なる。準備処理で、加熱直後の特定の時刻tの温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を予め求めておく。
計測処理で、特定の時刻tの塗工膜の温度Tを計測し、予め求めた関係を用いて、計測された温度Tに対応する目付量wを算出する。第1の実施の形態では、時刻t=0の塗工膜の温度Tの推定値から目付量wを算出するが、第2の実施の形態では、特定の時刻tの塗工膜の温度Tの実測値から目付量wを算出する。その他の部分は、第1の実施の形態と同様であるため説明を省略し、相違点のみ説明する。
<準備処理>
第2の実施の形態では、準備処理において、複数の既知塗工膜の各々について、塗工膜を加熱し、時刻tでの温度Tを計測する。準備処理で求める塗工膜の温度Tは、時刻tに計測された実測値でもよく、時刻tの前後の計測値から推定された推定値でもよい。1つの計測値(実測値)を用いるよりも、複数の計測値から推定された推定値とする方が、温度Tの正確な値を求めることができる。
温度Tの推定値を求める場合は、例えば、第1の実施の形態と同様に、ニュートンの冷却の法則に係る「第1関係式」で計測データを近似することにより、各計測データについて最高温度T、周囲の温度T等を求める。計測期間は、第1の実施の形態と同様に、加熱直前から塗工膜の温度が周囲の温度Tに収束するまでの期間としてもよい。例えば、加熱直前から15秒間が経過するまでの期間とする。
なお、後述する通り、加熱直後の特定の期間の計測データを使用して、温度Tの推定値を求めてもよい。また、後述する通り、計測データを直線で近似して、温度Tの推定値を求めてもよい。
第1の実施の形態では、得られた最高温度T、周囲の温度T及び既知の目付量wから、温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を表す「第2関係式」を求める。これに対し、第2の実施の形態では、「特定の時刻t」について、時刻tの温度上昇値ΔT(=T-T)と目付量wとの関係を表す「第4関係式」を求める。
(特定の時刻)
特定の時刻tは、加熱直後の時刻とする。加熱開始から短時間での計測結果を用いて、目付量wの計測精度を向上させる。特定の時刻tは、利用者により少なくとも1つ設定される。例えば、温度計測部による計測間隔を0.01秒(100Hz)とした場合、特定の時刻tは、0.03秒、0.05秒、0.07秒、0.1秒、0.5秒等としてもよい。
塗工膜の温度変化である熱の移動には、(1)塗工膜の表裏面および側面から空気中へ移動する熱伝達と、(2)塗工膜内の温度差による熱伝導とがある。例えば、塗工膜の目付量の分布を計測する場合について考察する。一定の熱量を与えた瞬間の温度上昇値は、目付量が小さい領域の方が、目付量が大きい領域より大きくなる。目付量が小さい領域の方が、熱容量が小さいためである。
このため、加熱した瞬間に塗工膜内に温度差が発生する。その後、上記(1)及び(2)の挙動により塗工膜の温度が低下する。加熱の瞬間には大きかった温度差は、上記(2)により塗工膜内部で熱が移動して小さくなる。したがって、周囲の温度に戻るまでの長時間の計測結果を用いると、温度上昇値ΔT及び目付量wの計測精度が低下する。
一方、非接触で塗工膜の温度を測定する場合、加熱の瞬間の温度は正確に計測できない。例えば、フラッシュランプの照射により加熱を行うと、加熱の瞬間は反射光や散乱光の影響が大きくて、塗工膜の温度を正確に計測できない。このため、特定の時刻t(加熱の直後)に、塗工膜の温度を計測する。
また、時刻tとして大きな値を設定すると、温度上昇値ΔTは、塗工膜の冷却特性の影響を大きく受ける。冷却特性は、塗工膜の厚さや密度で変化するため、同一の目付量でもΔTの値が異なる。このばらつきが許容範囲を超えると、温度上昇値ΔTと目付量wとの関係が定まらない。したがって、特定の時刻tには上限値がある。例えば、特定の時刻tは1秒以内とする。
時刻tは加熱直後であるため、温度上昇値ΔTは、時刻t=0での温度上昇値ΔTと略等しい。したがって、上記式(4)においてΔT≒ΔTとすれば、温度上昇値ΔTが目付量wに相関することは理論式からも裏付けられる。
(準備処理の手順)
図5に示すフローチャートを用いて、第2の実施の形態に係る準備処理の手順について説明する。第2の実施の形態に係る準備処理の手順は、ステップ104までは、図5に示す「準備処理」の手順と同じである。ステップ104で、複数の既知塗工膜の各々について、計測データを上記式(1)で近似して、最高温度Tと周囲の温度Tとを取得する。
第2の実施の形態では、次のステップ106で、上記の「第2関係式」に代えて、時刻tでの温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を表す「第4関係式」を求める。次のステップ108は省略する。次に、ステップ110で、得られた「第4関係式」を記憶装置に記憶して、準備処理を終了する。
「第2関係式」は、例えば、上記式(5)に示すように、時刻とは無関係に温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を表す式である。これに対して、「第4関係式」は、特定の時刻tと関連付けて、時刻tでの温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を表す。特定の時刻tが、0.03秒、0.05秒、0.07秒、0.1秒、0.5秒と複数設定されている場合は、複数の時刻tの各々に対し「第4関係式」が求められる。
<計測処理>
第2の実施の形態では、計測処理において、計測対象の塗工膜を加熱し、時刻tでの塗工膜の温度Tを計測する。時刻tでの塗工膜の温度Tの実測値と、別途計測された周囲の温度Tとから、時刻tの温度上昇値ΔTを求める。また、準備処理で求めた「第4関係式」を用いて、時刻tの温度上昇値ΔTに対応する目付量wを求める。第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは異なり、計測処理では「第1関係式」による近似は行わない。
(計測処理の手順)
次に、塗工膜の目付量等を計測する「計測処理」について説明する。
図13は第2の実施の形態に係る「計測処理」の流れの一例を示すフローチャートである。「計測処理」を実行するためのプログラムは、塗工膜を備えた板状部材が計測位置に配置された状態で、利用者によりプログラムの実行が指示されると、計測装置のCPU40AによりROM40Bから読み出されて実行される。同じ種類の複数の塗工膜について計測を行う場合は、塗工膜毎に「計測処理」を実行する。
まず、ステップ300で、塗工膜の計測データの取得を開始する。計測対象となる「塗工膜」は、目付量w及び密度ρの各々が未知の塗工膜である。温度計測部は、塗工膜の温度の計測を開始する。本実施の形態では、塗工膜の面内の複数位置での温度を計測して、塗工膜の温度分布を取得する。
次に、ステップ302で、塗工膜を加熱するように温度調整部に指示する。温度調整部は塗工膜に熱量を一度に付与する。塗工膜の温度は、最高温度まで上昇する。温度調整部により加熱された塗工膜は、徐々に自然冷却される。次に、ステップ304で、制御部は、設定された時刻tにおける塗工膜の温度分布Tを温度計測部から取得して、計測を終了する。
次に、ステップ306で、時刻tに応じた第4関係式を用いて、ステップ304で得られた時刻tの温度分布Tを、目付量分布に変換する。即ち、塗工膜の面内の各位置について、時刻tの塗工膜の温度T及び周囲の温度Tから、対応する目付量wTmの値を取得して、ルーチンを終了する。
<具体例>
以下、具体例について説明する。
(準備処理)
図14は目付量及び密度の組合せが異なる複数の既知塗工膜の他の一例を示す表である。図示した例では、既知塗工膜は、銅箔上に塗工された黒鉛層とする。図示した例では、目付量w及び密度ρの組合せが異なる9種類の既知塗工膜が用意されている。
既知塗工膜の目付量wは、7.24mg/cm、10.59mg/cm、及び14.11mg/cmと3段階で変化する。また、既知塗工膜の密度ρは、プレスなし→プレス弱→プレス強と3段階で変化する。プレス強度が高くなるほど、既知塗工膜の密度ρは大きくなり、既知塗工膜の厚さdは薄くなる。
図15は計測データの一例を示すグラフである。この計測データは、目付量w=7.24mg/cm、プレスなしの既知塗工膜の計測データである。上記の通り、計測データを上記式(1)で近似することにより、各計測データについて最高温度T、周囲の温度T、及び冷却特性(hA/C)の各値を求めた。定数「T」「T」「hA/C」を有する曲線を、「近似線」として図15に太線で併記する。
近似線は、下記式(8)で表される曲線である。定数α、β、γの値は、最高温度T、周囲の温度T、及び冷却特性(hA/C)の各値から定まる。下記式(8)に示すように、塗工膜の温度Tは時刻tの関数となる。したがって、特定の時刻tに対応する温度Tが求められる。温度T、周囲の温度T、及び既知の目付量wから、時刻tの温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を求める。
Figure 2022136245000009

図16(A)及び(B)は時刻tの温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を表すグラフである。図16(A)は時刻tを0.03秒とした場合の関係であり、図16(B)は時刻tを0.5秒とした場合の関係である。目付量7.24mg/cmに対する計測点を○(丸)で表す。目付量10.59mg/cmに対する計測点を□(四角)で表す。目付量14.11mg/cmに対する計測点を◇(ひし形)で表す。
(計測処理)
目付量w及び密度ρが未知の塗工膜(計測対象)を、既知塗工膜と同じ条件で加熱して、加熱直後の時刻tの塗工膜の温度分布を取得する。準備処理で求めた「第4関係式」を用いて、温度分布を目付量分布に変換する。
図17(A)から(E)までは計測対象の塗工膜から取得された目付量分布の一例を示す画像である。図17(A)は時刻tを0.03秒とした場合の目付量分布である。図17(B)は時刻tを0.05秒とした場合の目付量分布である。図17(C)は時刻tを0.07秒とした場合の目付量分布である。図17(D)は時刻tを0.1秒とした場合の目付量分布である。図17(E)は時刻tを0.5秒とした場合の目付量分布である。白いほど目付量が多く、黒いほど目付量が少ない。
画像中央に横長に存在する部位がサンプルである。画面上下部の黒い場所はサンプルを固定する治具である。サンプルの中央に目付量が少ない領域が存在する。時刻tの値が大きくなるほど、目付量分布が不鮮明になることがわかる。図示した例では、図17(A)に示す時刻t=0.03秒の目付量分布が、最も高分解能で精確である。加熱の瞬間に近い方が、目付量が精度よく求められている。
計測処理を実行する前に、加熱直後の特定の時刻tの温度上昇値ΔTと目付量wとの関係(第4関係式)を予め求めておくことで、計測処理において、目付量wが未知の塗工膜の温度Tから目付量wを計測することが可能となる。
第2の実施の形態によれば、加熱直後の特定の時刻の塗工膜の温度の実測値から、塗工膜の目付量を非破壊で精度よく計測することができる。加熱開始から短時間での計測結果を用いることで、目付量の計測精度が向上する。
なお、塗工膜の密度は、例えば、別途計測された塗工膜の厚さから求める等、他の方法で求めることができる。
-第3の実施の形態-
第3の実施の形態では、目付量wの算出方法(準備処理と計測処理)が、第1及び第2の実施の形態とは異なる。準備処理及び計測処理で計測データを曲線近似するときに、加熱直後の特定の期間(時刻tから時刻tまで)の計測データを使用する。計測期間も時刻tまでとしてもよい。その他の部分は、第1の実施の形態と同様であるため説明を省略し、相違点のみ説明する。
<準備処理>
第3の実施の形態では、準備処理において、複数の既知塗工膜の各々について、塗工膜を加熱し、特定の期間(t-t)の計測データを取得する。
曲線近似に使用する期間が短くなる以外は、第1の実施の形態と同様にする。ニュートンの冷却の法則に係る「第1関係式」で近似することにより、各計測データについて最高温度T、周囲の温度T、及び冷却特性(hA/C)を求める。「最高温度T」は、時刻t=0のときの塗工膜の温度の推定値である。
得られた最高温度T、周囲の温度T及び既知の目付量wから、温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を表す「第2関係式」と、冷却特性(hA/C)と目付量w及び密度ρの積との関係を表す「第3関係式」とを求める。
(特定の期間)
特定の期間(t-t)は、加熱直後の短期間とする。加熱開始から短期間での計測結果を用いて、目付量wの計測精度を向上させる。特定の期間(t-t)は、利用者により少なくとも1つ設定される。時刻t以降の計測データを使用するのは、第1の実施の形態と同様に、加熱の瞬間の温度は正確に計測できないためである。特定の時刻tは、0.03秒等である。
期間末である時刻tは、塗工膜の温度Tが周囲の温度Tに収束する時刻より、早い時刻に設定する。第1の実施の形態では、収束時刻までの計測データを取得している。例えば、収束時刻を加熱開始から15秒後とすると、第3の実施の形態の時刻tは10秒等としてもよい。
例えば、温度計測部による計測間隔を0.01秒(100Hz)とした場合、特定の期間(t-t)は、0.03秒~0.1秒、0.03秒~0.2秒、0.03秒~0.5秒、0.03秒~1秒、0.03秒~2秒、0.03秒~10秒等としてもよい。
<計測処理>
第3の実施の形態では、計測処理において、計測対象の塗工膜を加熱し、準備処理と同様に特定の期間(t-t)の計測データを取得する。曲線近似に使用する期間が短くなる以外は、第1の実施の形態と同様にする。ニュートンの冷却の法則に係る「第1関係式」で近似することにより、各計測データについて最高温度T、周囲の温度T、及び冷却特性(hA/C)を求める。得られた最高温度Tと周囲の温度Tとから、温度上昇値ΔTを求める。
得られた温度上昇値ΔTから「第2関係式」を用いて対応する目付量wT0を求める。また、得られた冷却特性(hA/C)及び目付量wT0から「第3関係式」を用いて対応する密度ρを求める。
<具体例>
以下、具体例について説明する。
(準備処理)
図14に示す9種類の既知塗工膜の各々について、加熱直前から10秒後までの期間の計測データを取得した。図18は計測データの一例を示すグラフである。ここでは、加熱直前から1秒後までの計測データを図示する。この計測データは、目付量w=7.24mg/cm、プレスなしの既知塗工膜の計測データである。
上記の通り、特定の期間(t-t)の計測データを上記式(1)で近似することにより、各計測データについて最高温度T、周囲の温度T、及び冷却特性(hA/C)の各値を求めた。また、最高温度Tと周囲の温度Tとから、温度上昇値ΔTを求めた。定数「T」「T」「hA/C」を有する曲線を、「近似線」として図18に太線で併記する。
図19(A)及び(B)は温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を表すグラフである。図19(A)は特定の期間(t-t)を0.03秒~0.1秒とした場合の関係であり、図19(B)は特定の期間(t-t)を0.03秒~10秒とした場合の関係である。目付量7.24mg/cmに対する計測点を○(丸)で表す。目付量10.59mg/cmに対する計測点を□(四角)で表す。目付量14.11mg/cmに対する計測点を◇(ひし形)で表す。
(計測処理)
目付量w及び密度ρが未知の塗工膜(計測対象)を、既知塗工膜と同じ条件で加熱して、加熱直前から10秒までの期間の計測データを取得した。塗工膜の部位による温度変化の違いの一例を図20に示す。第2の実施形態で使用した塗工膜を計測対象とした。図20(A)は、加熱後0.03秒後の塗工膜の温度分布から得られた目付量分布(図17(A)に参照)に重ねて、一例であるサンプル中央の目付量が少ない領域内の計測点αの位置と、目付量が多い領域内の計測点βの位置とを示す画像である。
図20(B)は各位置について計測された計測データの一例を示すグラフである。縦軸は、時刻tのときの塗工膜の温度Tを表す。横軸は、時刻tを表す。時刻t=0に塗工膜の加熱を開始する。計測点αは目付量が少ないため、加熱時の最高温度Tの値が大きい。
特定の期間(t-t)の計測データから温度上昇値ΔTを求め、得られた温度上昇値ΔTから「第2関係式」を用いて対応する目付量wT0を求めた。また、得られた冷却特性(hA/C)及び目付量wT0から「第3関係式」を用いて対応する密度ρを求めた。
図21(A)から(F)までは計測対象の塗工膜から取得された目付量分布の一例を示す画像である。図21(A)は時刻tを0.1秒とした場合の目付量分布である。図21(B)は時刻tを0.2秒とした場合の目付量分布である。図21(C)は時刻tを0.5秒とした場合の目付量分布である。図21(D)は時刻tを1秒とした場合の目付量分布である。図21(E)は時刻tを2秒とした場合の目付量分布である。図21(F)は時刻tを10秒とした場合の目付量分布である。
時刻tの値が大きくなるほど、目付量分布が不鮮明になることがわかる。図示した例では、図21(A)に示す時刻t=0.1秒の目付量分布が、最も高分解能で精確である。曲線近似に使用する期間が短い方が、目付量が精度よく求められている。
第3の実施の形態によれば、加熱直後の特定の期間の塗工膜の温度の時間変化から、塗工膜の目付量及び密度を非破壊で計測することができる。加熱開始から短時間での計測結果を用いることで、熱伝導による塗工膜内の熱の移動の影響が小さくなり、目付量の計測精度が向上する。
準備処理及び計測処理で計測データを曲線近似するときに、加熱直後の特定の期間(例えば、加熱開始から1秒以内の期間)の計測データを使用することで、収束時刻までの計測データを使用する場合に比べて、目付量を精度よく計測することが可能となる。
-第4の実施の形態-
第4の実施の形態では、加熱直後の特定の期間(t-t)の計測データを使用する点は、第3の実施形態と同じである。第4の実施の形態では、計測データを直線近似する点で、曲線近似する第3の実施の形態とは相違している。また、第4の実施の形態では、原則として目付量wだけを求める点が、第3の実施の形態とは異なる。その他の部分は、第3の実施の形態と同様であるため説明を省略し、相違点のみ説明する。
<準備処理>
第4の実施の形態では、準備処理において、複数の既知塗工膜の各々について、既知塗工膜を加熱し、特定の期間(t-t)の計測データを取得する。特定の期間(t-t)は、例えば、0.03秒から1秒までの短期間とする。
第4の実施の形態では、計測データを下記式(9)で表される直線で近似する。各計測データについて定数E及び定数Fを求め、近似式を取得する。具体的には、下記式(9)の「T」「t」を変数、「E」「F」を定数と仮定する。そして、下記式(9)を表す直線が、計測データの複数の計測点(Tとtの組合せ)に最も近づくように、最小二乗法等を用いて、定数である「E」「F」の各値を定める。
Figure 2022136245000010

得られた近似式にt=0を代入して、最高温度Tを求める。「最高温度T」は、時刻t=0のときの塗工膜の温度の推定値である。得られた最高温度Tと、別途求めた周囲の温度Tとから、温度上昇値ΔTを求める。温度上昇値ΔTと目付量wとの関係は、上記式(4)で表される。直線近似で得られた温度上昇値ΔTの値と、既知の目付量wの値とから、温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を表す「第2関係式」を求める。
<計測処理>
第4の実施の形態では、計測処理において、計測対象の塗工膜を加熱し、特定の期間(t-t)の計測データを取得する。準備処理と同様に、上記式(9)で表される直線で近似し、近似式を求める。
得られた近似式にt=0を代入して、最高温度Tを求める。得られた最高温度Tと、別途求めた周囲の温度Tとから、温度上昇値ΔTを求める。得られた温度上昇値ΔTから「第2関係式」を用いて対応する目付量wT0を求める。
<具体例>
以下、具体例について説明する。
(準備処理)
図14に示す9種類の既知塗工膜の各々について、加熱直前から1秒後までの期間の計測データを取得した。図22は計測データの一例を示すグラフである。この計測データは、目付量w=7.24mg/cm、プレスなしの既知塗工膜の計測データである。
上記の通り、特定の期間(t-t)の計測データを上記式(9)で近似することにより、各計測データについて最高温度T(t=0のときの温度)、温度上昇値ΔTを求めた。定数「E」「F」を有する直線を、「近似線」として図22に太線で併記する。近似に使用する期間が短いと、塗工膜の温度の時間変化は直線に近づくので、直線で近似できる。直線で近似する方が、定数の項数も少なくなり、より短時間で近似計算を行うことができる。
図23(A)及び(B)は温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を表すグラフである。図23(A)は特定の期間(t-t)を0.03秒~0.1秒とした場合の関係であり、図23(B)は特定の期間(t-t)を0.03秒~0.5秒とした場合の関係である。目付量7.24mg/cmに対する計測点を○(丸)で表す。目付量10.59mg/cmに対する計測点を□(四角)で表す。目付量14.11mg/cmに対する計測点を◇(ひし形)で表す。
(計測処理)
目付量w及び密度ρが未知の塗工膜(計測対象)を、既知塗工膜と同じ条件で加熱して、特定の期間(t-t)の計測データを取得した。計測データから温度上昇値ΔTを求め、得られた温度上昇値ΔTから「第2関係式」を用いて対応する目付量wT0を求めた。時刻tを0.03秒とした。
図24(A)及び(B)は計測対象の塗工膜から取得された目付量分布の一例を示す画像である。図24(A)は時刻tを0.1秒とした場合の目付量分布である。図24(B)は時刻tを0.5秒とした場合の目付量分布である。直線近似でも目付量分布は求められる。
時刻tの値が大きくなるほど、目付量分布が不鮮明になることがわかる。図示した例では、図24(A)に示す時刻t=0.1秒の目付量分布の方が、高分解能で精確である。近似に使用する期間が短い方が、目付量が精度よく求められている。
第4の実施の形態によれば、加熱直後の特定の期間の塗工膜の温度の時間変化から、塗工膜の目付量を非破壊で計測することができる。加熱開始から短時間での計測結果を用いることで、目付量の計測精度が向上する。
準備処理及び計測処理で計測データを近似するときに、加熱直後の特定の期間の計測データを使用することで、収束時刻までの計測データを使用する場合に比べて、目付量を精度よく計測することが可能となる。
また、計測データに対し直線近似を行うことで、ニュートンの冷却の法則に係る「第1関係式」等の指数関数で近似する場合に比べて、近似計算の負荷が低減する。
なお、第4の実施の形態では、目付量wだけを求める場合について説明するが、上記式(9)の定数「E」を冷却特性として密度ρを求めてもよい。例えば、計測処理を実行する前に、冷却特性Eと目付量wと密度ρとの関係を予め取得しておく。計測処理において、密度ρが未知の塗工膜の冷却特性Eと、最高温度Tから求めた目付量wT0とから、塗工膜の密度ρを計測する。
-第5の実施の形態-
第5の実施の形態では、計測データを取得するときの計測間隔(サンプリングの間隔)を長くする点で、第4の実施の形態とは相違している。その他の部分は、第4の実施の形態と同様であるため説明を省略し、相違点のみ説明する。
<具体例>
以下、具体例について説明する。
(準備処理)
図14に示す9種類の既知塗工膜の各々について、加熱直前から1秒後までの期間の計測データを取得した。図25は計測データの一例を示すグラフである。この計測データは、目付量w=7.24mg/cm、プレスなしの既知塗工膜の計測データである。第1から第4の実施の形態では、0.01秒間隔(100Hz)の計測間隔で計測値を取得していた。第5の実施の形態では、0.05秒間隔(20Hz)の計測間隔で計測値を取得する。第5の実施の形態では、他の実施の形態に比べて計測点は(1/5)に減少する。
上記の通り、計測データを上記式(9)で近似することにより、各計測データについて最高温度T(t=0のときの温度)、温度上昇値ΔTを求めた。定数「E」「F」を有する直線を、「近似線」として図25に太線で併記する。
図26(A)及び(B)は温度上昇値ΔTと目付量wとの関係を表すグラフである。図26(A)は特定の期間(t-t)を0.05秒~0.15秒とした場合の関係であり、図26(B)は特定の期間(t-t)を0.05秒~1秒とした場合の関係である。目付量7.24mg/cmに対する計測点を○(丸)で表す。目付量10.59mg/cmに対する計測点を□(四角)で表す。目付量14.11mg/cmに対する計測点を◇(ひし形)で表す。
(計測処理)
目付量w及び密度ρが未知の塗工膜(計測対象)を、既知塗工膜と同じ条件で加熱して、特定の期間(t-t)の計測データを取得した。計測データから最高温度Tを求めた。「最高温度T」は、時刻t=0のときの塗工膜の温度の推定値である。最高温度Tと別途得られた周囲の温度Tとから、温度上昇値ΔTを求めた。得られた温度上昇値ΔTから「第2関係式」を用いて対応する目付量wT0を求めた。時刻tを0.05秒とした。
図27(A)から(D)までは計測対象の塗工膜から取得された目付量分布の一例を示す画像である。図27(A)は時刻tを0.15秒とした場合の目付量分布である。図27(B)は時刻tを0.2秒とした場合の目付量分布である。図27(C)は時刻tを0.5秒とした場合の目付量分布である。図27(D)は時刻tを1秒とした場合の目付量分布である。計測間隔を長くしても目付量分布は求められる。
時刻tの値が大きくなるほど、目付量分布が不鮮明になることがわかる。図示した例では、図27(A)に示す時刻t=0.15秒の目付量分布の方が、高分解能で精確である。近似に使用する期間が短い方が、目付量が精度よく求められている。
第5の実施の形態によれば、加熱直後の特定の期間の塗工膜の温度の時間変化から、塗工膜の目付量を非破壊で計測することができる。加熱開始から短時間での計測結果を用いることで、目付量の計測精度が向上する。
準備処理及び計測処理で計測データを近似するときに、加熱直後の特定の期間の計測データを使用することで、収束時刻までの計測データを使用する場合に比べて、目付量を精度よく計測することが可能となる。
また、計測データに対し直線近似を行うことで、ニュートンの冷却の法則に係る「第1関係式」等の指数関数で近似する場合に比べて、近似計算の負荷が低減する。さらに、直線近似を行う場合には、このように計測間隔を長くして計測点を減らしても、目付量を求めることができる。
-変形例-
なお、上記実施の形態で説明した計測装置、計測方法、及びプログラムの構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内においてその構成を変更してもよいことは言うまでもない。
上記実施の形態では、主に、塗工膜に熱量を付与して加熱した後で冷却する場合について説明したが、熱量を奪取する(冷却の)場合は、熱量を付与する場合と逆の温度変化を伴うので、同様の計測方法で目付量及び密度を算出することができる。
最高温度Tは、塗工膜を加熱した場合の「温度到達値」の一例である。塗工膜を冷却する場合は、「温度到達値」は最低温度T01となる。塗工膜の温度Tは、最低温度T01に到達した後、最低温度T01から周囲の温度Tまで徐々に戻る。この場合は、周囲の温度Tを基準温度とし、最低温度T01と周囲の温度Tとの差を、温度下降値ΔT01(=-T01-T)とする。
10 計測装置
12 塗工膜
14 暗室
16 搬送ベルト
18 板状部材
20 温度調整部
30 温度計測部
40 制御部
42 表示部
44 入力部
46 通信部
48 記憶部

Claims (6)

  1. 板状部材の表面に塗工された塗工膜が加熱または冷却されたときの、前記塗工膜の予め定めた位置での、前記加熱または冷却が開始された直後の時刻における前記塗工膜の温度の実測値を特定値として取得する取得手段と、
    前記特定値を取得した場合に、前記特定値に応じた時刻の前記塗工膜の温度と前記塗工膜の目付量との予め定めた関係を用いて、前記取得手段で取得された特定値に対応する、前記塗工膜の予め定めた位置での目付量を求めて出力する出力手段と、
    を備え、
    前記時刻の前記塗工膜の温度と前記塗工膜の目付量との予め定めた関係を求める際に、目付量が既知の塗工膜の温度の時間変化を曲線または直線で近似して、前記時刻の前記塗工膜の温度を求める、
    計測装置。
  2. 前記塗工膜が、銅箔に塗工された黒鉛層である、
    請求項1に記載の計測装置。
  3. 前記予め定めた位置が複数あり、
    前記取得手段は、前記塗工膜の温度分布の時間変化を取得する、
    請求項1または請求項2に記載の計測装置。
  4. 前記塗工膜の温度分布が赤外線カメラから取得される、
    請求項3に記載の計測装置。
  5. 板状部材の表面に塗工された塗工膜が加熱または冷却されたときの、前記塗工膜の予め定めた位置での、前記加熱または冷却が開始された直後の時刻における前記塗工膜の温度の実測値を特定値として取得し、
    前記特定値を取得した場合に、前記特定値に応じた時刻の前記塗工膜の温度と前記塗工膜の目付量との予め定めた関係を用いて、取得された特定値に対応する、前記塗工膜の予め定めた位置での目付量を求めて出力し、
    前記時刻の前記塗工膜の温度と前記塗工膜の目付量との予め定めた関係を求める際に、目付量が既知の塗工膜の温度の時間変化を曲線または直線で近似して、前記時刻の前記塗工膜の温度を求める、
    計測方法。
  6. コンピュータを、
    板状部材の表面に塗工された塗工膜が加熱または冷却されたときの、前記塗工膜の予め定めた位置での、前記加熱または冷却が開始された直後の時刻における前記塗工膜の温度の実測値のいずれか一方を特定値として取得する取得手段、
    前記特定値を取得した場合に、前記特定値に応じた時刻の前記塗工膜の温度と前記塗工膜の目付量との予め定めた関係を用いて、前記取得手段で取得された特定値に対応する、前記塗工膜の予め定めた位置での目付量を求めて出力する出力手段、
    として機能させるためのプログラムであって、
    前記時刻の前記塗工膜の温度と前記塗工膜の目付量との予め定めた関係を求める際に、目付量が既知の塗工膜の温度の時間変化を曲線または直線で近似して、前記時刻の前記塗工膜の温度が求められている、
    プログラム。
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