JP2022133942A - 車両の変速制御方法及び車両の変速制御装置 - Google Patents

車両の変速制御方法及び車両の変速制御装置 Download PDF

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崇 荻野
Takashi Ogino
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潤 長谷川
Jun Hasegawa
幸輝 友田
Koki Tomoda
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Abstract

【課題】変速時にニュートラル位置を経由する変速機を介して駆動モータから駆動輪に動力を伝達する車両で、動力伝達の一時的な遮断により生じ得る不都合を改善する。【解決手段】車両100の変速制御方法は、モータ10と、モータ10及び駆動輪11間での動力伝達を行い変速時にニュートラル位置を経由する変速機16とを備え、変速機16は変速指示に応じて作動するACTR51を備える車両100の制御方法であって、変速機16の変速時にACTR51への変速指示が行われる前に、ACTR51をニュートラル位置側に作動させることを含む。【選択図】図11

Description

本発明は車両の変速制御に関する。
特許文献1には四輪駆動ハイブリッド車両が開示されている。この車両ではモータジェネレータと前輪との間に第2変速機が設けられる。
特開2006-27383号公報
変速機を介して駆動モータから駆動輪への動力伝達を行う場合、変速により駆動モータの最大駆動力や最大回転速度を向上させることができる。このためこの場合は、駆動モータの大型化を抑制できる。ところが、変速機がニュートラル位置を経由して変速が行われる変速機の場合、変速時に動力伝達が一時的に遮断される。このためこの場合は、駆動源が運転領域全域に亘って連続的に動力を発生させ得る駆動モータであるにも関わらず、変速時に動力伝達が一時的に遮断される結果、ドライバに違和感を与えたり走行安定性を低下させたりしてしまうといった不都合が生じる虞がある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、変速時にニュートラル位置を経由する変速機を介して駆動モータから駆動輪に動力を伝達する車両で、動力伝達の一時的な遮断により生じ得る不都合を改善することを目的とする。
本発明のある態様の車両の変速制御方法は、第1駆動モータと、第1駆動モータ及び第1駆動輪での動力伝達を行い変速時にニュートラル位置を経由する第1変速機とを備え、第1変速機は変速指示に応じて作動する第1シフトアクチュエータを備える車両で用いられる。当該方法は第1変速機の変速時に、第1シフトアクチュエータへの変速指示が行われる前に、第1シフトアクチュエータをニュートラル位置側に作動させることを含む。
本発明の別の態様によれば、上記車両の変速制御方法に対応する車両の変速制御装置が提供される。
これらの態様によれば、変速指示が行われる前にシフトアクチュエータを予めニュートラル位置側に作動させることで変速時間を短縮できる。このため、動力伝達の一時的な遮断により生じ得る違和感や走行安定性の低下といった不都合を改善できる。
車両の概略構成図である。 待ちばねなしの場合のシフト機構の外観図である。 カムプレートの周囲を正面から見た図である。 待ちばねなしの場合のシフト機構を模式的に示す図である。 待ちばねありの場合のシフト機構を模式的に示す図である。 車両の制御構成の要部を示す図である。 モータの特性を示す図である。 車両の変速マップの一例を示す図である。 第1の変速制御の第1の例をフローチャートで示す図である。 ドグクラッチの締結力及び解放力の説明図である。 図9に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。 第1の変速制御の第2の例をフローチャートで示す図である。 図12に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。 第2の変速制御の第1の例をフローチャートで示す図である。 図14に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。 第2の変速制御の第2の例をフローチャートで示す図である。 図16に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。 第3の変速制御の第1の例をフローチャートで示す図である。 図18に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。 第3の変速制御の第2の例をフローチャートで示す図である。 図20に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。 第1の変速制御の場合のシフトアクチュエータの作動位置の説明図である。 第2の変速制御の場合のシフトアクチュエータの作動位置の説明図である。 第3の変速制御の場合のシフトアクチュエータの作動位置の説明図である。 第4の変速制御の第1の例をフローチャートで示す図である。 図22に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。 第4の変速制御の第2の例をフローチャートで示す図である。 図24に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。 車両の第1変形例を示す図である。 車両の第2変形例を示す図である。 車両の第3変形例を示す図である。 車両の第4変形例を示す図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は車両100の概略構成図である。車両100は、車両100において相対的に前方の位置(以下、「前輪側」と称する)に配置される前輪駆動システムfds、及び相対的に後方の位置(以下、「後輪側」と称する)に配置される後輪駆動システムrdsを備える。本実施形態では後輪駆動システムrdsは、前輪駆動システムfdsに対し各構成の配置が車両前後方向に反転配置とされた上で、前輪駆動システムfdsと同様に構成される。このため以下では、主に前輪駆動システムfdsを例にして前輪駆動システムfds及び後輪駆動システムrdsについて説明する。後輪駆動システムrdsの構成要素については、フロントであることを示す「f」の代わりにリアであることを示す「r」の識別文字を符号に用いることにより、前輪駆動システムfdsの構成要素と区別する。後輪駆動システムrdsの構成要素の名称についても「フロント」の代わりに「リア」の語を用いて区別することができる。
前輪駆動システムfdsは、フロントモータ10fとフロント駆動輪11fとフロントインバータ14fとフロント変速機16fとを備える。フロントモータ10fは駆動モータであり、フロント駆動輪11f(左フロント駆動輪11fL及び右フロント駆動輪11fR)を駆動する。同様に、駆動モータであるリアモータ10rはリア駆動輪11r(左リア駆動輪11rL及び左リア駆動輪11rR)を駆動する。従って、車両100は四輪駆動車両として構成される。
フロントモータ10fは三相交流モータとして構成され、電源としてのバッテリ15からの電力の供給を受けてフロント駆動力DFfを発生させる。フロントモータ10fが発生させるフロント駆動力DFfはフロント変速機16f及びフロントドライブシャフト21fを介してフロント駆動輪11fに伝達される。フロントモータ10fはさらに、車両100の走行時にフロント駆動輪11fに連れ回されて回転する際に負のフロント駆動力DFfつまり回生駆動力を発生させ、発生させた回生駆動力を交流電力に変換する。
フロントインバータ14fは、バッテリ15からの電力を三相交流に変換するためのスイッチングを行うスイッチング回路を備える。また、フロントインバータ14fはフロントモータ10fの回生駆動力に基づいて得られた交流電力をスイッチングによって直流電力に変換してバッテリ15に供給する。
フロント変速機16fは、フロントモータ10fとフロント駆動輪11fとを結ぶ動力伝達経路に設けられ、フロントモータ10f及びフロント駆動輪11f間での動力伝達を行う。フロント変速機16fは相対的にギア比が低いハイ及び相対的にギア比が高いローの2つのフロント変速段Shfを有する。フロント変速機16fはローギア列22f、ハイギア列24f及びドグクラッチ26fのほか、出力軸32fの動力を左フロント駆動輪11fL及び右フロント駆動輪11fRに分配するファイナルギア30fを備える。
ローギア列22fは、互いに噛み合うドライブギア40f及びドリブンギア41fを備える。ドライブギア40fはフロントモータ10fの入力軸20f上に固定されずに回転可能に設けられる。ドリブンギア41fはフロントモータ10fの出力軸32fに固定される。ローギア列22fではドライブギア40fの歯数に対してドリブンギア41fの歯数が大きく構成される。従って、フロント変速機16fの変速比は、入力軸20fからローギア列22fを介して出力軸32fにフロント駆動力DFfが伝達される場合に1より大きくなり、このときフロント変速段Shfがローになる。
ハイギア列24fは、互いに噛み合うドライブギア42f及びドリブンギア43fを備える。ドライブギア42fは入力軸20f上に固定されず回転可能に設けられる。ドリブンギア43fは出力軸32fに固定される。ハイギア列24fではドライブギア42fの歯数に対してドリブンギア43fの歯数が略等しく或いは小さく構成される。従って、フロント変速機16fの変速比は、入力軸20fからハイギア列24fを介して出力軸32fにフロント駆動力DFfが伝達される場合に略1或いは1より大きくなり、このときフロント変速段Shfがハイになる。
ドグクラッチ26fは変速クラッチであり、スリーブ44fと第1ドグ歯401fと第2ドグ歯421fとを備える噛み合いクラッチにより構成される。スリーブ44fは入力軸20fに固定されたハブ47fに軸方向に摺動可能に設けられ、軸方向にドライブギア40f及びドライブギア42fと隣り合う。スリーブ44fは外周溝441fを有し、外周溝441fには後述するシフトフォーク54(シフトフォーク54f)が係合する。
第1ドグ歯401fはローギア列22fのドライブギア40fに設けられ、第2ドグ歯421fはハイギア列24fのドライブギア42fに設けられる。スリーブ44fは内歯からなるドグ歯442fを有し、軸方向に移動することで外歯からなる第1ドグ歯401f及び第2ドグ歯421fと選択的に噛み合う。
スリーブ44fが第1ドグ歯401fとの締結位置であるロー位置に移動すると、ハブ47fとドライブギア40fとがスリーブ44fによって連結される。結果、ドグクラッチ26fがローギア列22fを介して入力軸20f及び出力軸32f間での動力伝達を行う状態になり、フロント変速段Shfがローになる。
スリーブ44fが第2ドグ歯421fとの締結位置であるハイ位置に移動すると、ハブ47fとドライブギア42fとがスリーブ44fによって連結される。結果、ドグクラッチ26fがハイギア列24fを介して入力軸20f及び出力軸32f間での動力伝達を行う状態になり、フロント変速段Shfがハイになる。
スリーブ44fが第1ドグ歯401f及び第2ドグ歯421fの双方と噛み合わない中立位置であるニュートラル位置に移動すると、ドグクラッチ26fは入力軸20f及び出力軸32f間での動力伝達を遮断する状態、つまりニュートラル状態になる。従って、ニュートラル位置ではフロントモータ10f及びフロント駆動輪11f間での動力伝達が遮断される。
次に、前輪駆動システムfds及び後輪駆動システムrdsについてさらに説明する。以下では、前輪駆動システムfds及び後輪駆動システムrdsに共通する事項に関しては、適宜「f」、「r」の識別文字等を省いて包括的に説明する。例えば、フロント変速機16fとリア変速機16rとを包括的に説明する際には変速機16と称して説明する。変速機16はシフト機構50をさらに備える。
図2はシフト機構50の外観図である。図3はカムプレート53の周囲を正面から見た図である。図4はシフト機構50を模式的に示す図である。図2から図4では、シフト機構50がACTR51からばねを介さずにドグクラッチ26にクラッチ作動力を伝達する待ちばねなしのシフト機構である場合を示す。シフト機構50はドグクラッチ26の締結、解放を行う機構であり、シフトアクチュエータ51からドグクラッチ26にクラッチ作動力を伝達する。シフト機構50(シフト機構50f、シフト機構50r)は、シフトアクチュエータ51のほか、回転ロッド52と、カムプレート53と、シフトフォーク54と、フォークロッド55と、チェック機構56とを有する。以下ではシフトアクチュエータ51を単にACTR51と称す。
ACTR51はモータにより構成され、回転ロッド52に固定されたカムプレート53を回転駆動する。カムプレート53はカム溝531を有する。カム溝531はカムプレート53の回転中心周りに弧状に延伸する。カム溝531にはシフトフォーク54のピン541が係合する。カム溝531はカムプレート53の回転に応じてピン541を案内することにより、ピン541を介してシフトフォーク54を移動させる。シフトフォーク54はスリーブ44の外周溝441と係合する。外周溝441は回転方向に摺動可能にシフトフォーク54と係合する。シフトフォーク54にはフォークロッド55が貫通し、シフトフォーク54はフォークロッド55上を軸方向に摺動可能に設けられる。シフトフォーク54は、ACTR51から回転ロッド52及びカムプレート53を介して伝達されるクラッチ作動力により、フォークロッド55の軸方向に摺動する。スリーブ44はシフトフォーク54から伝達されるクラッチ作動力によりフォークロッド55の軸方向に移動することで、ロー側及びハイ側つまりローギア列22側及びハイギア列24側に移動する。
チェック機構56は変速機16の筐体に設けられる。チェック機構56は筐体に設けられた穴にチェックスリーブ561とチェックスプリング562とを挿入した上で当該穴をチェックプラグ563で封止した構成とされる。チェック機構56は、チェックスプリング562によりチェックスリーブ561をシフトフォーク54の係合部542に向けて付勢する。チェックスリーブ561は、スリーブ44がニュートラル位置に位置する場合に係合部542のV溝状のチェック溝に係合する。チェックスリーブ561は、スリーブ44がドグクラッチ26の締結位置つまりロー位置又はハイ位置に位置する場合に係合部542のチェック溝両側の係合斜面のいずれかに係合する。これにより、チェック機構56が係合状態になり、シフトフォーク54の作動位置が保持される。チェック機構56の係合は、シフトフォーク54に伝達されるクラッチ作動力がチェックスプリング562のばね力に抗してチェックスリーブ561を後退させることにより解除される。
シフト機構50は次に説明する待ちばねありのシフト機構とされてもよい。
図5は待ちばねありの場合のシフト機構50を模式的に示す図である。この場合、シフトフォーク54はフォークロッド55に設けられる軸部543と、スリーブ44と係合する本体部544とに分割される。また、ピン541は軸部543に設けられ、係合部542は本体部544に設けられる。本体部544には円筒状の収容部547が設けられる。収容部547の軸方向両側の本体部544には収容部547よりも縮径された開口部が設けられる。収容部547内には筒状の係合部材545及び係合部材546とばね57とが設けられる。ばね57はACTR51の作動に対しスリーブ44を待機させるための待ちばねであり、係合部材545及び係合部材546間に設けられる。係合部材545、係合部材546及びばね57には軸部543が貫通し、係合部材545及び係合部材546それぞれは軸部543に対して摺動可能に設けられる。係合部材545及び係合部材546それぞれは拡径部と縮径部とを有し、縮径部を収容部547の軸方向外側に向けて配置される。係合部材545及び係合部材546は軸部543に設けられた2つのフランジ間に設けられる。係合部材545及び係合部材546それぞれでは、縮径部が軸部543のフランジに当接する当接部を構成するとともに、拡径部が本体部544の開口部に当接する当接部を構成する。軸部543や本体部544は複数の部材で構成されてよい。
このように構成されたシフト機構50では、次に説明するようにACTR51からばね57を介してドグクラッチ26にクラッチ作動力が伝達される。例えばハイ側でクラッチ締結が行われているドグクラッチ26を解放する場合、ACTR51がロー側へのクラッチ作動力を発生させると、軸部543がロー側に移動し係合部材546をロー側に押す。結果、係合部材545、係合部材546及びばね57がロー側に移動し、係合部材545が本体部544の開口部に当接する。この状態から係合部材545が本体部544をさらにロー側に押すと、チェック機構56が係合している間は本体部544の移動が阻止される。このため、軸部543がロー側に移動することにより、係合部材546を介してばね57が圧縮される。そして、ばね57のばね力によりチェック機構56の係合が解除されると、本体部544がロー側に移動してスリーブ44に当接する。
締結状態のドグクラッチ26には後述するようにモータ10のトルクTQmに応じた締結力Fclが発生する。締結力Fclはドグクラッチ26の解放に対する抵抗力として機能する。このため、締結力Fclによってドグクラッチ26の解放が阻止される間は、スリーブ44のロー側への移動が阻止されるので、本体部544もロー側に移動できなくなる。結果、軸部543がロー側に移動することにより、ばね57がさらに圧縮される。そして、ばね57に蓄えられたクラッチ作動力がドグクラッチ26に伝達されることにより、ACTR51からばね57を介してドグクラッチ26にクラッチ作動力が伝達される。ばね57はスリーブ44のロー側への移動が締結力Fclによって阻止されなくなると、スリーブ44をロー側に移動させる。
図6は車両100の制御構成の要部を示す図である。車両100はコントローラ1をさらに備える。コントローラ1は車両100の変速制御装置であり、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を有して構成される。コントローラ1にはセンサ・スイッチ類2から各種信号が入力される。センサ・スイッチ類2は例えば、アクセルペダルの踏込み量を表すアクセル開度APOを検出するためのアクセル開度センサや、車速VSPを検出するための車速センサや、ACTR51の作動位置を検出するための位置センサや、スリーブ44の作動位置を検出するための位置センサや、モータ10の回転速度Nmを検出するための回転速度センサ等を含む。コントローラ1は入力された信号等に基づき、インバータ14やACTR51を制御するようにプログラムされる。コントローラ1はインバータ14を制御することにより、モータ10を制御する。
図7はモータ10の特性を示す図である。図7では実線がモータ10のトルクTQmを示し、破線がモータ10の出力Pmを示す。図7に示すように、モータ10は等トルク領域R1と等出力領域R2とを有する。等トルク領域R1はモータ10の回転速度Nmに応じてトルクTQmが一定になる領域であり、回転速度Nmが回転速度Nm1より低い領域とされる。等出力領域R2はモータ10の回転速度Nmに応じて出力Pmが一定になる領域であり、回転速度Nmが回転速度Nm1より高く且つ回転速度Nm2より低い領域とされる。等トルク領域R1の範囲内では、回転速度Nmに関わらずトルクQmが最大トルクで一定となり、回転速度Nmを上げることにより出力Pmを高めることができる。このため、等トルク領域R1の範囲内ではロー側の変速段Shで走行することにより駆動力DFの増加を見込むことができ、アップシフトをしなくても加速を行うことができる。等出力領域R2の範囲内では、出力Pmが最大出力で一定となるため、回転速度NmとトルクTmとは反比例の関係となり、回転速度Nmを上げるとトルクTQmが低下する。このため、等出力領域R2の範囲内ではロー側の変速段Shで走行しても、駆動力DFの増加は見込めない。本実施形態ではフロントモータ10f及びリアモータ10rには同一のモータが用いられる。
車両100では変速機16を介したモータ10から駆動輪11への動力伝達が行われる。このため、変速によりモータ10の最大駆動力や最大回転速度を向上させることができ、これによりモータ10の大型化を抑制できる。ところが、変速機16ではニュートラル位置を経由して変速が行われるので、変速時に動力伝達が一時的に遮断される。このため、駆動源が運転領域全域に亘って連続的に動力を発生させ得るモータ10であるにも関わらず、変速時に動力伝達が一時的に遮断される結果、ドライバに違和感を与えたり走行安定性を低下させたりしてしまうといった不都合が生じることが懸念される。
上記に関連し、本実施形態では車両100はフロントモータ10fでフロント駆動輪11fを駆動するとともに、リアモータ10rでリア駆動輪11rを駆動する四輪駆動車両とされる。このため、フロント変速機16fの変速時にはリアモータ10rで駆動力DFを補填することができ、リア変速機16rの変速時にはフロントモータ10fで駆動力DFを補填することができる。つまり、変速中に駆動力DFを補填することが可能なので、これにより違和感が生じることを抑制し得る。
しかしながらこの場合でも、車両100の走行状態によっては要求駆動力DF_REQがモータ10の最大駆動力より絶対値で大きくなり、要求駆動力DF_REQに対してモータ10で補填可能な駆動力DFが不足する場合がある。或いは、車両100が一時的に四輪駆動状態から二輪駆動状態になる結果、車両100の走行安定性が低下し得る。
図8は車両100の変速マップの一例を示す図である。変速マップでは、フロント変速機16fのフロント変速段Shf及びリア変速機16rのリア変速段Shrが車速VSP及び要求駆動力DF_REQに応じて設定される。領域R_LLはフロント変速段Shf及びリア変速段Shrがともにローに設定される領域を示す。領域R_HLはフロント変速段Shfがハイ、リア変速段Shrがローに設定される領域を示す。領域R_HHはフロント変速段Shf及びリア変速段Shrがともにハイに設定される領域を示す。領域R_LLは図示の範囲外で要求駆動力DF_REQ、及び車速VSPが負の領域にも設定される。
限界駆動力DF_LMT1は、フロント変速段Shf及びリア変速段Shrがともにローの場合にフロントモータ10f及びリアモータ10rで最大限発生可能な駆動力DFそれぞれの合計を示す。限界駆動力DF_LMT2は、変速段Shがローの場合の単体のモータ10つまりフロントモータ10f又はリアモータ10rで最大限発生可能な駆動力DFを示す。最大限発生可能な駆動力とは正の場合は最大駆動力を意味し、負の場合は最小駆動力つまり最大回生駆動力を意味する。
従って、要求駆動力DF_REQが正の限界駆動力DF_LMT2より大きい領域R_OVERでは、フロントモータ10f又はリアモータ10rだけでは要求駆動力DF_REQを満たすことができなくなる。つまり、要求駆動力DF_REQに対してモータ10で補填可能な駆動力DFが不足する事態が発生する。
例えば、矢印GS_KDで示す領域R_HLから領域R_LLへのキックダウン変速が行われる場合は、要求駆動力DF_REQが正の限界駆動力DF_LMT2を上回る。結果、キックダウン変速されるフロント変速機16fがニュートラル状態のときに、リアモータ10rだけでは要求駆動力DF_REQを満たすことができなくなる。つまり、リアモータ10rで駆動力DFを補填し切れなくなる。
矢印GS_UP1で示す領域R_LLから領域R_HLへのオートアップシフトが行われる場合は、要求駆動力DF_REQが正の限界駆動力DF_LMT2より大きい状態でフロント変速機16fがアップシフトされる。結果、この際のニュートラル時に、リアモータ10rだけでは要求駆動力DF_REQを満たすことができなくなる。また、矢印GS_UP2で示す領域R_HLから領域R_HHへのオートアップシフトが行われる場合は、アップシフトされるリア変速機16rがニュートラル状態のときに、フロントモータ10fだけでは要求駆動力DF_REQを満たすことができなくなる。
矢印GS_DOWNは、領域R_HHから領域R_HLへの回生減速ダウンシフトが行われる場合を示す。この例では、要求駆動力DF_REQが負の限界駆動力DF_LMT2より絶対値で小さい場合に、リア変速機16rがダウンシフトされる。従ってこの場合は、フロントモータ10fだけでも要求駆動力DF_REQを満たすことができる。しかしながらこの場合は、ダウンシフトされるリア変速機16rがニュートラル状態のときに車両100が二輪駆動状態になる結果、走行安定性が低下し得る。
上記事情に鑑み、本実施形態ではコントローラ1が以下で説明する変速制御を行うようにプログラムされる。コントローラ1は以下で説明する変速制御を行うようにプログラムされることで、制御部を有した構成とされる。
(第1の変速制御)
図9はコントローラ1が行う第1の変速制御の第1の例をフローチャートで示す図である。第1の変速制御はキックダウン変速制御であり、第1の例はシフト機構50が図4を用いて前述した待ちばねなしの場合を示す。図9では、図8で説明した矢印GS_KDで示すキックダウン変速により、フロント変速機16fがダウンシフトされる場合を示す。第1の変速制御はダウンシフトされる変速機16側のモータ10、つまりこの場合はフロントモータ10fが等トルク領域R1で動作している場合に行うことができる。第1の変速制御はリア変速機16rに対して適用することもできる。コントローラ1は本フローチャートに示す処理を繰り返し実行することができる。
ステップS1で、コントローラ1はアクセル開度APOが所定開度APO1以上になったか否かを判定する。所定開度APO1はフロント変速機16fのキックダウン変速実行開度APO_KDより低い開度であり、予め設定される。所定開度APO1は、フロントACTR51fの作動位置がハイ位置からニュートラル位置になるのに要する時間に基づき設定できる。所定開度APO1はさらに、アクセル開度APOの増加度合いが大きい場合ほど小さく設定できる。ステップS1で否定判定であれば処理は一旦終了する。ステップS1で肯定判定であれば処理はステップS2に進む。この場合、コントローラ1はドグクラッチ26fの締結力Fclfが、フロントACTR51fによるドグクラッチ26fの解放力Factrfより大きいか否かを判定する。
図10はドグクラッチ26の締結力Fcl及び解放力Factrの説明図である。図10では、軸方向に沿って見たドグクラッチ26の噛み合い部分を拡大して模式的に示す。モータ10のトルクTQmがスリーブ44からドライブギア40に伝達されている状態でドグクラッチ26を解放する場合、ドライブギア40に設けられた第1ドグ歯401のバックテーパと、スリーブ44のドグ歯442のバックテーパとが当接する。このため、スリーブ44を解放方向に移動しようとすると、ドグ歯442のバックテーパに垂直方向の力が作用する。垂直方向の力はトルクTQmに応じた接線方向の力と軸方向の力とに分解される。結果、軸方向の力が締結力Fclとなってドグクラッチ26の解放を妨げる。従って、締結力Fclが解放力Factrより大きい場合は、ACTR51によりスリーブ44を解放方向に移動させようとしてもドグクラッチ26は解放されない。締結力Fclはドグ歯442のバックテーパ角とトルクTQmとに基づき演算でき、解放力FactrはACTR51のトルクに基づき演算できる。
図9に戻り、ステップS2で否定判定であれば処理は一旦終了し、ステップS2で肯定判定であれば処理はステップS3Aに進む。この場合、コントローラ1はフロントACTR51fの待ち位置への作動を行う。待ち位置はドグクラッチ26に解放待ちを行わせるACTR51の作動位置であり、ACTR51とドグクラッチ26とを結ぶ動力伝達経路の構成部品のガタに応じた作動距離分、締結位置よりニュートラル位置側の位置とされる。ガタは例えばスリーブ44の外周溝441とシフトフォーク54のフォーク部分との間の軸方向の隙間を含む。ステップS3Aでは、待ち位置への作動によりフロントACTR51fがニュートラル位置側に作動される。ステップS3Aでは締結力Fclが解放力Factrより大きいので、変速指示より前にフロントACTR51fを作動させても、ドグクラッチ26が待ち位置への作動という意に反して解放されることはない。
ステップS4で、コントローラ1はアクセル開度APOが予め設定されたキックダウン変速実行開度APO_KD以上になったか否かを判定する。アクセル開度APOがキックダウン変速実行開度APO_KD以上になった場合、キックダウン変速の実行条件が成立したと判断され、キックダウン変速の変速指示が行われる。変速指示はニュートラル位置への変速指示と、その後に行われる締結位置つまりこの場合はロー位置への変速指示とを有し、キックダウン変速の実行条件が成立した際にはニュートラル位置への変速指示が行われる。ステップS4で肯定判定であれば処理はステップS5に進み、コントローラ1は変速を実施する。ステップS5では、フロント変速段Shfをハイからローに変更するキックダウン変速が行われる。キックダウン変速では後述するように、絶対値でのトルクTQmfの低下、ハイ側でのドグクラッチ26fの解放、ドグクラッチ26fの回転同期、ロー側でのドグクラッチ26fの締結、及び絶対値でのトルクTQmfの上昇が行われる。ステップS5の後には処理は一旦終了する。
ステップS4で否定判定の場合、処理はステップS6に進み、コントローラ1はフロントACTR51fを作動させてからの経過時間が所定時間以上か否かを判定する。所定時間はステップS1の肯定判定により実行が想定される変速制御、つまりここではキックダウン変速のタイムアウト時間であり、予め設定される。所定時間は実行が想定される変速制御に応じて異なる値とされてもよく同じ値とされてもよい。ステップS6で否定判定であれば処理はステップS4に戻る。これにより、所定時間が経過するまでの間は引き続きアクセル開度APOがキックダウン変速実行開度APO_KD以上か否かが判定される。
ステップS6で肯定判定であれば処理はステップS7に進み、コントローラ1はフロント変速段Shfをハイに戻すフロントACTR51fの作動を行う。つまりこの場合は、所定時間内にキックダウン変速の実行条件が成立せずにタイムアウトとなったため、フロントACTR51fがニュートラル位置側に作動させる前の元の位置に戻される。ステップS7の後には処理は一旦終了する。
図11は図9に示すフローチャートに対応するタイミングチャートの一例を示す図である。タイミングT1ではアクセルペダルが踏み込まれ、アクセル開度APO及びトルクTQmfが上昇し始める。タイミングT1ではドグクラッチ26がハイ側で締結されているため、フロントモータ10fの回転速度Nmfはハイ側のドライブギア42fの回転速度Nhfと同じになっている。ハイ側のドライブギア42fの回転速度Nhfとロー側のドライブギア40fの回転速度Nlfとはともに、車速VSPに応じた回転速度になっている。
アクセル開度APOはタイミングT2で所定開度APO1に到達する。タイミングT2ではトルクTQmfがゼロより大きく、トルクTQmfに基づく締結力FclfはフロントACTR51fによる解放力Factrfより大きい。このため、タイミングT2では待ち位置へのフロントACTR51fの作動が開始され、作動位置がハイ位置(H)からニュートラル位置(N)側に変化し始める。フロントACTR51fの作動位置はその後次第に変化して待ち位置になり、これによりフロントACTR51f及びスリーブ44f間の動力伝達経路のガタが詰められる。フロントACTR51fの作動位置は変速指示が行われるタイミングT3より前で待ち位置になる。
タイミングT3では、アクセル開度APOがキックダウン変速実行開度APO_KDに到達する。結果、ニュートラル位置への変速指示が行われ、これに応じてキックダウン変速が開始される。キックダウン変速では、まずハイ側で締結されているドグクラッチ26fを解放するために絶対値でのトルクTQmfの低下が行われる。この際、車両100ではトルクTQmrを絶対値で増加することにより、駆動力DFの補填が行われる。但し、前述したようにリアモータ10rだけでは駆動力DFは補填し切れない。トルクTQmfはタイミングT4でゼロになり、このときドグクラッチ26fの解放力Factrfは締結力Fclfより大きい。このため、シフト機構50が待ちばねなしの第1の例では、タイミングT4でトルクTQmfがゼロになると、ハイ側でのドグクラッチ26fの解放が開始され、これによりニュートラル位置へのフロントACTR51fの作動が開始さる。タイミングT4ではすでにガタ詰めが行われている。このため、スリーブ44fの作動位置は、ニュートラル位置へのフロントACTR51fの作動が開始されるタイミングT4でニュートラル位置に向かって変化し始める。
フロントACTR51f及びスリーブ44fの作動位置はタイミングT5でニュートラル位置になる。スリーブ44fの作動位置がニュートラル位置になると、ドグクラッチ26fの解放が完了し、ドグクラッチ26fをロー側で締結するための回転同期が開始される。このため、トルクTQmfが増加し始めるとともに、回転速度Nmfがハイ側のドライブギア42fの回転速度Nhfより上昇し始める。回転同期では、フロントモータ10fの回転速度Nmfにより示されるスリーブ44fの回転速度がロー側のドライブギア40fの回転速度Nlfに合わせられる。回転同期時にはトルクTQmfは予め定められたプロフィールで制御され、タイミングT6でゼロになる。
タイミングT6では、フロントモータ10fの回転速度Nmfがロー側のドライブギア40fの回転速度Nlfに到達し、回転同期が完了する。結果、ロー位置(L)への変速指示が行われ、ロー側でのドグクラッチ26fの締結が開始される。これにより、フロントACTR51fの作動位置がロー位置側に変化し始める。この際、スリーブ44fの作動位置はガタに応じた遅れを有してロー位置側に変化し始める。タイミングT7では、フロントACTR51f及びスリーブ44fの作動位置がロー位置になり、ロー側でのドグクラッチ26の締結が完了する。結果、これに応じて絶対値でのトルクTQmfの上昇が開始され、タイミングT8でトルクTQmfがアクセル開度APOに応じた大きさになると、キックダウン変速が完了する。
破線で示す比較例の場合、フロントACTR51fはタイミングT2ではニュートラル位置側に作動されず、トルクTQmfがゼロになるタイミングT4でニュートラル位置に作動され始める。結果、本実施形態の場合は比較例の場合と比べ、フロントACTR51fの作動がタイミングT4からタイミングT2に前倒しされ、タイミングT3で変速指示が行われる前にガタ詰めが行われる。また比較例では、スリーブ44fの作動位置はフロントACTR51fの作動位置に対し、ガタに応じた遅れを有してタイミングT5からニュートラル位置側に変化し始める。結果、その後の変速動作にも遅れが生じ、キックダウン変速が完了するタイミングがタイミングT8より後のタイミングT9になる。従って、本実施形態の場合は比較例の場合と比べ、変速完了タイミングが早まる分、変速時間が短縮される。このため、フロント変速機16fのキックダウン変速時に要求駆動力DF_REQに対しリアモータ10rで補填可能なリア駆動力DFrが不足しても、ドライバに違和感を与えることが抑制される。
次にコントローラ1が行う第1の変速制御の第2の例について図12を用いて説明する。第2の例はシフト機構50が図5を用いて前述した待ちばねありの場合を示す。図12に示すフローチャートは、ステップS3Aの代わりにステップS3Bが設けられる以外、図9に示すフローチャートと同じである。このため、ステップS3Bについて説明すると、ステップS3Bでコントローラ1は、フロントACTR51fをニュートラル位置に作動させる。つまり、第2の例ではフロントACTR51fをニュートラル位置側に作動させる際に、ニュートラル位置へのフロントACTR51fの作動を行うことで、ガタ詰めが行われる。
図13は図12に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。以下では主に図11に示す第1の例の場合と異なる部分について説明する。第2の例ではタイミングT11でアクセル開度APOが所定開度APO1に到達すると、ニュートラル位置へのフロントACTR51fの作動が開始される。また、タイミングT12で変速指示が行われる前に、ガタ詰めが行われる。そしてその後、ばね57fのばね力の上昇及び絶対値でのトルクTQmfの低下により、解放力Factrfが締結力Fcl及びチェック機構56fの係合力の和を上回ると、チェック機構56fの係合が解除され、スリーブ44fの作動位置がニュートラル位置側に変化し始める。スリーブ44fの作動位置はフロントACTR51fに遅れてタイミングT15でニュートラル位置になる。その後は、タイミングT15及びタイミングT16間で回転同期、タイミングT16及びタイミングT17間でロー側でのドグクラッチ26fの締結が行われ、絶対値でのトルクTQmfの上昇を経てタイミングT18でキックダウン変速が完了する。
破線で示す比較例の場合、フロントACTR51fは変速指示に応じて次のように作動され始める。すなわち、第2の例ではシフト機構50が待ちばねありなので、フロントACTR51fはトルクTQmfがゼロになるタイミングT14を待たずに、変速指示に応じてタイミングT14より前のタイミングT13でニュートラル位置に作動され始める。但し、フロントACTR51fはあくまで変速指示に応じて作動され始める。このため、本実施形態の場合は比較例の場合と比べてフロントACTR51fの作動がタイミングT13からタイミングT11に前倒しされ、これによりタイミングT12で変速指示が行われる前にガタ詰めが行われる。また比較例の場合は、スリーブ44の作動が遅れることにより、その後の変速動作も遅れる結果、タイミングT18より後のタイミングT19でキックダウン変速が完了する。このため、本実施形態の場合は比較例の場合と比べ、変速完了タイミングが早まる分、変速時間が短縮される。結果、第1の例と同様ドライバに違和感を与えることが抑制される。
(第2の変速制御)
図14はコントローラ1が行う第2の変速制御の第1の例をフローチャートで示す図である。第2の変速制御はオートアップシフト制御であり、図14では図8で説明した矢印GS_UP1で示すオートアップシフトにより、フロント変速機16fがアップシフトされる場合を示す。第2の変速制御はオートアップシフトされる変速機16側のモータ10、つまりこの場合はフロントモータ10fが等出力領域R2で動作している場合に行うことができる。第2の変速制御はリア変速機16rに対して適用することもできる。
ステップS11で、コントローラ1は車速VSPが第1所定車速VSP1以上になったか否かを判定する。第1所定車速VSP1はオートアップシフト実行車速VSP_UPより低い車速VSPであり、予め設定される。第1所定車速VSP1は、フロントACTR51fの作動位置がロー位置からニュートラル位置になるのに要する時間に基づき設定できる。第1所定車速VSP1はさらに、加速度が高い場合ほど小さく設定できる。ステップS11で否定判定であれば処理は一旦終了する。ステップS11で肯定判定であれば処理はステップS12に進み、第1の変速制御と同様、締結力Fclfが解放力Factrfより大きいか否かが判定される。また、ステップS12で肯定判定であれば前述した第1の例と同様、ステップS13Aで待ち位置へのフロントACTR51fの作動が行われる。
ステップS14で、コントローラ1は車速VSPがオートアップシフト実行車速VSP_UP以上になったか否かを判定する。オートアップシフト実行車速VSP_UPは図8に示すマップデータで予め設定される。車速VSPがオートアップシフト実行車速VSP_UP以上になった場合、オートアップシフトの実行条件が成立したと判断され、オートアップシフトの変速指示が行われる。ステップS14で肯定判定された際には第1の変速制御と同様、ニュートラル位置への変速指示が行われる。ステップS14で肯定判定であれば処理はステップS15に進み、コントローラ1は変速を実施する。ステップS15では、フロント変速段Shfをローからハイに変更するオートアップシフトが行われる。オートアップシフトでは後述するように、絶対値でのトルクTQmfの低下、ロー側でのドグクラッチ26fの解放、ドグクラッチ26fの回転同期、ハイ側でのドグクラッチ26fの締結、及び絶対値でのトルクTQmfの上昇が行われる。ステップS15の後には処理は一旦終了する。
ステップS14で否定判定の場合、処理はステップS16に進み、第1の変速制御と同様、経過時間が所定時間以上か否かが判定される。ステップS16で否定判定であれば処理はステップS14に戻る。ステップS16で肯定判定の場合、処理はステップS17に進み、コントローラ1はフロント変速段Shfをローに戻すフロントACTR51fの作動を行う。ステップS17の後には処理は一旦終了する。
図15は図14に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。タイミングT21では車速VSPが第1所定車速VSP1以上になり、待ち位置へのフロントACTR51fの作動が開始される。結果、フロントACTR51fの作動位置がニュートラル位置側に変化し始める。フロントACTR51fの作動位置はその後次第に変化して、変速指示が行われるタイミングT22より前で待ち位置になり、これによりガタ詰めが行われる。
タイミングT22では車速VSPがオートアップシフト実行車速VSP_UP以上になる。結果、ニュートラル位置への変速指示が行われ、これに応じてオートアップシフトが開始される。オートアップシフトでは、まずロー側で締結されているドグクラッチ26fを解放するためにトルクTQmfが絶対値で低下され始める。この際、車両100ではトルクTQmrを絶対値で増加することにより、駆動力DFの補填が行われる。但し、前述したようにリアモータ10rだけでは駆動力DFは補填し切れない。ロー側でのドグクラッチ26fの解放はトルクTQmfがゼロになるタイミングT23で開始され、これによりニュートラル位置へのフロントACTR51fの作動が開始される。タイミングT23ではすでにガタ詰めが行われているので、スリーブ44fの作動位置もニュートラル位置に向かって変化し始める。タイミングT24ではロー側でのドグクラッチ26fの解放が完了し、回転同期が開始される。トルクTQmfは回転同期時のプロフィールに応じてマイナス側で制御される。このため、タイミングT24からは回転速度Nmfが低下し始め、スリーブ44fの回転速度がハイ側のドライブギア42fの回転速度Nhfに近づけられる。トルクTQmfはタイミングT25でゼロになる。
タイミングT25では回転同期が完了する。結果、ハイ位置への変速指示が行われ、ハイ側でのドグクラッチ26fの締結が開始される。結果、フロントACTR51fの作動位置がハイ位置側に変化し始める。この際、スリーブ44fの作動位置はガタに応じた遅れを有してハイ位置側に変化し始める。タイミングT26では、フロントACTR51f及びスリーブ44fの作動位置がハイ位置になり、ハイ側でのドグクラッチ26の締結が完了する。結果、これに応じて絶対値でのトルクTQmfの上昇が開始される。トルクTQmfはタイミングT27で元のトルクTQmfつまり変速直前のトルクTQmになり、これによりオートアップシフトが完了する。
破線で示す比較例の場合、フロントACTR51fはタイミングT21ではニュートラル位置側に作動されず、トルクTQmfがゼロになるタイミングT23でニュートラル位置に作動され始める。このため、フロントACTR51fの作動位置はタイミングT23でニュートラル位置に変化し始め、スリーブ44fの作動位置はタイミングT23からガタに応じた遅れを有してニュートラル位置に変化し始める。従って、本実施形態の場合は比較例の場合と比べ、タイミングT23からタイミングT21にフロントACTR51fの作動が前倒しされ、タイミングT23で変速指示が行われる前にガタ詰めが行われる。また、比較例の場合はスリーブ44fの作動が遅れることにより、その後の変速動作も遅れる結果、タイミングT27より後のタイミングT28でオートアップシフトが完了する。従って、本実施形態の場合は比較例の場合と比べ、変速完了タイミングが早まる分、変速時間が短縮される。結果、ドライバに違和感を与えることが抑制される。
次にコントローラ1が行う第2の変速制御の第2の例について図16を用いて説明する。図16に示すフローチャートは、ステップS13Aの代わりにステップS13Bが設けられる以外、図14に示すフローチャートと同じである。また、ステップS13Bでは前述した第2の例と同様、ニュートラル位置へのフロントACTR51fの作動が行われ、これによりガタ詰めが行われる。
図17は図16に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。以下では主に図15に示す第1の例の場合と異なる部分について説明する。第2の例ではタイミングT31で車速VSPが第1所定車速VSP1に到達すると、ニュートラル位置へのフロントACTR51fの作動が開始される。また、タイミングT32で変速指示が行われる前にばね57fのばね力によりガタ詰めが行われ、その後解放力Factrfが締結力Fclfを上回ると、スリーブ44fの作動位置がニュートラル位置側に変化し始める。スリーブ44fの作動位置はフロントACTR51fに遅れてタイミングT34でニュートラル位置になる。その後は、タイミングT34及びタイミングT35間で回転同期、タイミングT35及びタイミングT36間でハイ側でのドグクラッチ26fの締結が行われ、絶対値でのトルクTQmfの上昇を経てタイミングT37でオートアップシフトが完了する。
破線で示す比較例の場合、フロントACTR51fはトルクTQmfがゼロになるタイミングT33より前のタイミングT32で変速指示に応じてニュートラル位置に作動され始める。従って、本実施形態の場合は比較例の場合と比べてフロントACTR51fの作動がタイミングT32からタイミングT31に前倒しされ、これによりタイミングT32で変速指示が行われる前にガタ詰めが行われる。また比較例の場合、スリーブ44fの作動が遅れることにより、その後の変速動作も遅れる結果、タイミングT37より後のタイミングT38でオートアップシフトが完了する。このため、本実施形態の場合は比較例の場合と比べ、変速完了タイミングが早まる分、変速時間が短縮される。結果、第1の例と同様ドライバに違和感を与えることが抑制される。
(第3の変速制御)
図18はコントローラ1が行う第3の変速制御の第1の例をフローチャートで示す図である。第3の変速制御は回生減速ダウンシフト制御であり、図18では図8で説明した矢印GS_DOWNで示す回生減速ダウンシフトにより、リア変速機16rがダウンシフトされる場合を示す。第3の変速制御はフロント変速機16fに対して適用されてもよい。
ステップS21で、コントローラ1は車速VSPが第2所定車速VSP2以下になったか否かを判定する。第2所定車速VSP2は回生減速ダウンシフト実行車速VSP_DOWNより高い車速VSPであり、予め設定される。第2所定車速VSP2は、リアACTR51rの作動位置がハイ位置からニュートラル位置になるのに要する時間に基づき設定できる。第2所定車速VSP2はさらに、減速度が大きい場合ほど高く設定できる。ステップS21で否定判定であれば処理は一旦終了する。ステップS21で肯定判定であれば処理はステップS22に進み、前述の変速制御と同様、締結力Fclrが解放力Factrrより大きいか否かが判定される。また、ステップS22で肯定判定であれば、前述した第1の例と同様、ステップS23Aで待ち位置へのリアACTR51rの作動が行われる。
ステップS24で、コントローラ1は車速VSPが回生減速ダウンシフト実行車速VSP_DOWN以下になったか否かを判定する。回生減速ダウンシフト実行車速VSP_DOWNは図8に示すマップデータで予め設定される。車速VSPが回生減速ダウンシフト実行車速VSP_DOWN以下になった場合、回生減速ダウンシフトの実行条件が成立したと判断され、回生減速ダウンシフトの変速指示が行われる。ステップS24で肯定判定された際には前述の変速制御と同様、ニュートラル位置への変速指示が行われる。ステップS24で肯定判定であれば処理はステップS25に進み、コントローラ1は変速を実施する。ステップS25では、リア変速段Shrをハイからローに変更することにより、回生減速ダウンシフトが行われる。回生減速ダウンシフトでは後述するように、絶対値でのトルクTQmrの低下、ハイ側でのドグクラッチ26rの解放、ドグクラッチ26rの回転同期、ロー側でのドグクラッチ26rの締結、及び絶対値でのトルクTQmrの上昇が行われる。ステップS25の後には処理は一旦終了する。
ステップS24で否定判定の場合、処理はステップS26に進み、前述の変速制御と同様、経過時間が所定時間以上か否かが判定される。ステップS26で否定判定であれば処理はステップS24に戻る。ステップS26で肯定判定の場合、処理はステップS27に進み、コントローラ1はリア変速段Shrをハイに戻すリアACTR51rの作動を行う。これにより、リアACTR51rがニュートラル位置側に作動させる前の元の位置に戻される。ステップS27の後には処理は一旦終了する。
図19は図18に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。タイミングT41では車速VSPが第2所定車速VSP2以下になり、待ち位置へのリアACTR51rの作動が行われる。結果、リアACTR51rの作動位置が変化し始め、その後待ち位置になる。タイミングT42では車速VSPが回生減速ダウンシフト実行車速VSP_DOWN以下になる。結果、ニュートラル位置への変速指示が行われ、これに応じて回生減速ダウンシフトが行われる。回生減速ダウンシフトでは、まずハイ側で締結されているドグクラッチ26rの解放のために、トルクTQmrが絶対値で低下され始める。図8で説明した矢印GS_DOWNで示す回生減速ダウンシフトの場合、トルクTQmr(リアモータ10rの回生トルク)を絶対値で低下させる分、トルクTQmf(フロントモータ10fの回生トルク)を絶対値で増加させて駆動力DFの補填を行うことができる。このためこの場合は、駆動力DF(回生駆動力)は維持される。タイミングT43ではトルクTQmrがゼロになり、ハイ側でのドグクラッチ26rの解放が開始される。結果、リアACTR51rの作動位置がニュートラル位置に向かって変化し始める。タイミングT43ではすでにガタ詰めが行われているので、スリーブ44rの作動位置はタイミングT43でニュートラル位置に向かって変化し始める。タイミングT44ではハイ側でのドグクラッチ26rの解放が完了し、回転同期が開始される。トルクTQmrは回転同期時のプロフィールに応じてプラス側で制御される。このため、タイミングT44からは回転速度Nmrが上昇し始め、これによりスリーブ44rの回転速度がロー側のドライブギア40rの回転速度Nlrに近づけられる。トルクTQmfはタイミングT45でゼロになる。
タイミングT45では回転同期が完了する。結果、ロー位置への変速指示が行われ、ロー側でのドグクラッチ26rの締結が開始される。結果、リアACTR51rの作動位置がロー位置側に変化し始める。スリーブ44rの作動位置はガタに応じた遅れを有してロー位置側に変化し始める。タイミングT46では、リアACTR51r及びスリーブ44rの作動位置がロー位置になり、ロー側でのドグクラッチ26の締結が完了する。結果、これに応じて絶対値でのトルクTQmrの上昇が開始される。トルクTQmrはタイミングT47で元のトルクTQmrつまり変速直前のトルクTQmrになり、これにより回生減速ダウンシフトが完了する。
破線で示す比較例の場合、リアACTR51rはタイミングT41ではニュートラル位置側に作動されず、トルクTQmrがゼロになるタイミングT43でニュートラル位置に作動され始める。このため、リアACTR51rの作動位置はタイミングT43でニュートラル位置に変化し始め、スリーブ44rの作動位置はタイミングT43からガタに応じた遅れを有してニュートラル位置に変化し始める。従って、本実施形態の場合は比較例の場合と比べ、タイミングT43からタイミングT41にリアACTR51rの作動が前倒しされ、変速指示が行われるタイミングT42より前でガタ詰めが行われる。また、比較例の場合はスリーブ44rの作動が遅れることにより、その後の変速動作も遅れる結果、タイミングT47より後のタイミングT48で回生減速ダウンシフトが完了する。従って、本実施形態の場合は比較例の場合と比べ、変速完了タイミングが早まる分、変速時間が短縮される。結果、前後駆動力配分が変わる時間(四輪駆動状態から二輪駆動状態になる時間)を短くでき、これにより走行安定性の低下を抑制できる。
図20はコントローラ1が行う第3の変速制御の第2の例をフローチャートで示す図である。本フローチャートは、ステップS23Aの代わりにステップS23Bが設けられる以外、図18に示すフローチャートと同じである。また、ステップS23Bでは前述した第2の例と同様、ニュートラル位置へのリアACTR51rの作動が行われ、これによりガタ詰めが行われる。
図21は図20に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。以下では主に図19に示す第1の例の場合と異なる部分について説明する。第2の例ではタイミングT51で車速VSPが第2所定車速VSP2に到達すると、ニュートラル位置側へのリアACTR51rの作動が開始される。また、タイミングT52で変速指示が行われる前にばね57rのばね力によりガタ詰めが行われ、その後解放力Factrrが締結力Fclrを上回ると、スリーブ44rの作動位置がニュートラル位置側に変化し始める。スリーブ44rの作動位置はリアACTR51rに遅れてタイミングT54でニュートラル位置になる。その後は、タイミングT54及びタイミングT55間で回転同期、タイミングT55及びタイミングT56間でロー側でのドグクラッチ26rの締結が行われ、絶対値でのトルクTQmfの上昇を経てタイミングT57で回生減速ダウンシフトが完了する。
破線で示す比較例の場合、リアACTR51rは、トルクTQmrがゼロになるタイミングT53より前のタイミングT52で変速指示に応じてニュートラル位置に作動され始める。従って、本実施形態の場合は比較例の場合と比べてリアACTR51rの作動がタイミングT52からタイミングT51に前倒しされ、これによりタイミングT52で変速指示が行われる前にガタ詰めが行われる。また比較例の場合、スリーブ44rの作動が遅れることにより、その後の変速動作も遅れる結果、タイミングT57より後のタイミングT58で回生減速ダウンシフトが完了する。このため、本実施形態の場合は比較例の場合と比べ、変速完了タイミングが早まる分、変速時間が短縮される。結果、前後駆動力配分が変わる時間を短くでき、これにより走行安定性の低下を抑制できる。
上述してきた第1の変速制御から第3の変速制御におけるACTR51の作動位置をまとめると、以下で説明する図22から図24に示すようになる。図22から図24ではシフト機構50が待ちばねありの場合と待ちばねなしの場合とでACTR51の作動位置を比較して示す。
図22に示すように、第1の変速制御ではシフト機構50が待ちばねなしの場合、アクセル開度APOが所定開度APO1まで上昇すると、フロントACTR51fの作動位置がハイ位置から待ち位置に制御される。そして、アクセル開度APOがさらにキックダウン変速実行開度APO_KDまで上昇すると、作動位置が待ち位置からニュートラル位置に制御される。つまりこの場合は、アクセル開度APOがキックダウン変速実行開度APO_KDになる前にフロントACTR51fを待ち位置まで作動させることで、ガタ詰めが行われる。シフト機構50が待ちばねありの場合、アクセル開度APOが所定開度APO1まで上昇すると、作動位置がハイ位置からニュートラル位置に制御される。つまりこの場合は、シフト機構50が待ちばねありなので、フロントACTR51fをニュートラル位置まで作動させることで、ガタ詰めが行われる。
図23に示すように、第2の変速制御ではシフト機構50が待ちばねなしの場合、車速VSPが第1所定車速VSP1まで上昇すると、フロントACTR51fの作動位置がロー位置から待ち位置に制御される。そして、車速VSPがさらにオートアップシフト実行車速VSP_UPまで上昇すると、作動位置が待ち位置からニュートラル位置に制御される。つまりこの場合は、車速VSPがオートアップシフト実行車速VSP_UPになる前にフロントACTR51fを待ち位置まで作動させることで、ガタ詰めが行われる。シフト機構50が待ちばねありの場合、車速VSPが第1所定車速VSP1まで上昇すると作動位置がロー位置からニュートラル位置に制御され、これによりガタ詰めが行われる。
図24に示すように、第3の変速制御ではシフト機構50が待ちばねなしの場合、車速VSPが第2所定車速VSP2まで低下すると、リアACTR51rの作動位置がハイ位置から待ち位置に制御される。そして、車速VSPがさらに回生減速ダウンシフト実行車速VSP_DOWNまで低下すると、作動位置が待ち位置からニュートラル位置に制御される。つまりこの場合は、車速VSPが回生減速ダウンシフト実行車速VSP_DOWNになる前にリアACTR51rを待ち位置まで作動させることで、ガタ詰めが行われる。シフト機構50が待ちばねありの場合、車速VSPが第2所定車速VSP2まで低下すると作動位置がハイ位置からニュートラル位置に制御され、これによりガタ詰めが行われる。
フロントモータ10fは上述したキックダウン変速時及びオートアップシフト時には第1駆動モータに相当し、上述した回生減速ダウンシフト時には第2駆動モータに相当する。リアモータ10rは上述したキックダウン変速時及びオートアップシフト時には第2駆動モータに相当し、上述した回生減速ダウンシフト時には第1駆動モータに相当する。駆動輪11、変速機16、ドグクラッチ26、ACTR51、シフト機構50等についても同様である。
次に本実施形態の主な作用効果について説明する。本実施形態にかかる車両100の変速制御方法は、モータ10(第1駆動モータ)と、モータ10及び駆動輪11(第1駆動輪)間での動力伝達を行い変速時にニュートラル位置を経由する変速機16(第1変速機)とを備え、変速機16は変速指示に応じて作動するACTR51(第1シフトアクチュエータ)を備える車両100の制御方法であって、変速機16の変速時にACTR51への変速指示が行われる前に、ACTR51をニュートラル位置側に作動させることを含む。このような方法によれば、変速指示が行われる前にATCR51を予めニュートラル位置側に作動させることで変速時間を短縮できる。このため、動力伝達の一時的な遮断により生じ得る違和感や走行安定性の低下といった不都合を改善できる。
車両100は、フロントモータ10f(第1駆動モータ)及びフロント変速機16f(第1変速機)と、リアモータ10r(第2駆動モータ)とを備え、フロント変速機16fはフロントACTR51f(第1シフトアクチュエータ)を備える構成とされる。車両100の変速制御方法は、フロント変速機16fの変速時にリアモータ10rで駆動力DFを補填することをさらに含み、フロント変速機16fの変速時に要求駆動力DF_REQがリアモータ10rの最大駆動力(リアモータ10rで最大限発生可能な正の限界駆動力DF_LMT2)より大きい場合に、フロントACTR51fをニュートラル位置側に作動させる。このような方法によれば、四輪駆動車両として構成される車両100において、フロントモータ10f及びリアモータ10rを駆動源とするにも関わらず、駆動力DFの一時的な不足により生じ得る違和感を抑制できる。
フロントモータ10f及びフロント変速機16fを備える車両100では、フロント変速機16fのキックダウン変速を行うことが可能になる。フロント変速機16fのキックダウン変速を行う場合、ダウンシフトが完了するまではフロントモータ10fを用いてアクセル開度APOに応じた駆動力DFを発生させることができない。このため、要求駆動力DF_REQがリアモータ10rの最大駆動力より大きい場合は、駆動力DFの一時的な不足が発生し加速ラグが生じることになる。
本実施形態では、アクセル開度APOがフロント変速機16fのキックダウン変速実行開度APO_KDより低い所定開度APO1以上になると、フロントACTR51fをニュートラル位置側に作動させる。これにより、キックダウン変速の変速時間を短縮できるので、加速ラグを抑制できる。結果、キックダウン変速時の駆動力DFの一時的な不足により生じ得る違和感を抑制できる。
フロントモータ10fの等出力領域R2の範囲内では、フロント変速機16fのキックダウン変速を行っても駆動力DFの増加が見込めない。本実施形態では、フロントモータ10fが等トルク領域R1で動作している場合に、フロントACTR51fをニュートラル位置側に作動させた上でフロント変速機16fのキックダウン変速を行う。これにより、キックダウン変速制御である第1の変速制御を適切に行うことができる。
駆動力DFが一時的に不足する事態は、フロント変速機16fのオートアップシフト時にも発生する。この場合、駆動力DFの一時的な不足により加速が不十分と感じさせる加速ヘジテーションが発生する。本実施形態では、車速VSPがフロント変速機16fのオートアップシフト実行車速VSP_UPより低い第1所定車速VSP1以上になると、フロントACTR51fをニュートラル位置側に作動させる。これにより、オートアップシフトの変速時間を短縮できるので、加速ヘジテーションを抑制できる。結果、駆動力DFの一時的な不足により生じ得る違和感を抑制できる。
フロントモータ10fの等トルク領域R1の範囲内では、フロント変速機16fをオートアップシフトしなくても、フロントモータ10fの回転速度Nmfを上げることにより出力Pmを高めることができる。このため本実施形態では、フロントモータ10fが等出力領域R2で動作している場合に、フロントACTR51fをニュートラル位置側に作動させた上でフロント変速機16fのオートアップシフトを行う。これにより、オートアップシフト制御である第2の変速制御を適切に行うことができる。
車両100は、リアモータ10r(第1駆動モータ)及びリア変速機16r(第1変速機)と、フロントモータ10f(第2駆動モータ)とを備え、リア変速機16rはリアACTR51r(第1シフトアクチュエータ)を備える構成とされる。車両100の変速制御方法は、車速VSPがリア変速機16r(第1変速機)の回生減速ダウンシフト実行車速VSP_DOWNより高い第2所定車速VSP2以下になると、リアACTR51r(第1シフトアクチュエータ)をニュートラル位置側に作動させる。これにより、回生減速ダウンシフトの変速時間を短縮できるので、変速中に車両100が一時的に二輪駆動状態になる時間を短縮できる。結果、走行安定性が一時的に低下することを抑制できる。
本実施形態では、ドグクラッチ26(第1ドグクラッチ)の締結力FclがACTR51(第1シフトアクチュエータ)によるドグクラッチ26の解放力Factrより大きい場合に、ACTR51をニュートラル位置側に作動させる。これにより、変速指示が出る前にACTR51を作動させても、ガタ詰めの意図に反してドグクラッチ26fが解放される事態を防止できる。
ACTR51をニュートラル位置側に作動させた状態では、スリーブ44とシフトフォーク54とが接触した状態になり摩耗が生じ得る。本実施形態では、ACTR51(第1シフトアクチュエータ)を作動させてから所定時間が経過してもACTR51への変速指示がない場合は、ACTR51をニュートラル位置側に作動させる前の元の位置に戻す。つまり、本実施形態では変速指示がない場合のタイムアウト制御を変速制御に盛り込み、タイムアウトした場合にはACTR51を元の位置に戻すので、スリーブ44及びシフトフォーク54の接触部の摩耗を低減できる。
変速機16(第1変速機)は、変速機16の変速クラッチであるドグクラッチ26(第1噛み合いクラッチ)にばね57を介してACTR51(第1シフトアクチュエータ)のクラッチ作動力を伝えるシフト機構50(第1シフト機構)を有した構成、つまり待ちばねありのシフト機構50を有した構成とすることができる。この場合、ACTR51をニュートラル位置側に作動させるにあたり、ACTR51をニュートラル位置まで作動させることでガタ詰めを行うことができ、これによりシフト機構50が待ちばねありの場合の変速機16の変速時間を適切に短縮できる。
変速機16はドグクラッチ26にばね57を含むばねを介さずにACTR51のクラッチ作動力を伝えるシフト機構50を有した構成、つまり待ちばねなしのシフト機構50を有した構成とされてもよい。この場合、ACTR57をニュートラル位置側に作動させるにあたっては、ACTR51とドグクラッチ26とを結ぶ動力伝達経路の構成部品間のガタに応じた待ち位置までACTR51を作動させることで、ガタ詰めを行うことができる。これにより、シフト機構50が待ちばねなしの場合の変速機16の変速時間を適切に短縮できる。
(第2実施形態)
車両100の走行中には、図8に示す変速マップ上の動作点が、要求駆動力DF_REQが負の領域において領域R_HHから領域R_LLに移動することがある。この場合、フロント変速機16f及びリア変速機16rをダウンシフトすることになるが、これらを同時にダウンシフトする場合、これらがともにニュートラル状態になる。この場合、車両100が有する電子制御ブレーキにより駆動輪11の摩擦制動力を発生させることで、要求駆動力DF_REQを満たし得る。しかしながらこの場合は、要求駆動力DF_REQを満たすことはできても、フロント変速機16f及びリア変速機16rがともにニュートラル状態になるので、回生減速を行えなくなる。
このためこの場合は、フロント変速機16f及びリア変速機16rの一方の変速機16を変速させてから他方の変速機16を変速させることが考えられる。しかしながらこの場合は、変速中に動力が一時的に遮断される結果、一時的な二輪駆動状態により走行安定性が低下することが懸念される。このような事情に鑑み、本実施形態ではコントローラ1が次に説明する第4の変速制御をさらに行うように構成される。
(第4の変速制御)
図25はコントローラ1が行う第4の変速制御の第1の例をフローチャートで示す図である。第4の変速制御はフロント変速機16f及びリア変速機16rを変速させる場合の制御であり、第4の変速制御ではフロント変速機16f及びリア変速機16rの一方の変速機16を変速させてから他方の変速機16を変速させる。図25では、フロント変速機16fを変速させてからリア変速機16rを変速させる回生減速ダウンシフトを行う場合を示す。回生減速は駆動力DF及び摩擦制動力のうち摩擦制動力のみで要求駆動力DF_REQを満たす場合以外に行うことができる。
ステップS31で、コントローラ1はフロント変速機16f及びリア変速機16rに共通の変速条件が成立したか否かを判定する。共通の変速条件が成立したか否かは例えば、図8に示す変速マップ上の動作点が、要求駆動力DF_REQが負の領域において領域R_HHから領域R_LLに予め定めた所定時間内に移動したか否かで判定できる。ステップS31で否定判定であれば処理は一旦終了する。
ステップS31で肯定判定の場合、つまり共通の変速条件が成立した場合、先に変速させるフロント変速機16fの変速条件が成立したと判断される。この場合、処理はステップS32に進み、コントローラ1はフロント変速機16fの変速を行う。ステップS32ではフロント変速段Shfをハイからローに変更する回生減速ダウンシフトが行われる。
ステップS33で、コントローラ1はドグクラッチ26fの締結が完了したか否かを判定する。ドグクラッチ26fの締結が完了したか否かはフロントACTR51fの作動位置に基づき判定できる。ステップS33で否定判定であれば処理はステップS33に戻る。ステップS33で肯定判定であれば処理はステップS34Aに進み、前述した第1の例と同様、待ち位置へのリアACTR51rの作動が行われる。結果、リアACTR51r及びスリーブ44r間の動力伝達経路におけるガタが詰められる。
ステップS35で、コントローラ1はフロント変速機16fの変速が完了したか否かを判定する。フロント変速機16fの変速が完了したか否かはトルクTQmfに基づき判定できる。ステップS35で否定判定であれば処理はステップS35に戻る。ステップS35で肯定判定の場合、後に変速させるリア変速機16rの変速条件が成立したと判断される。この場合、処理はステップS36に進み、コントローラ1はリア変速機16rの変速を行う。ステップS36ではリア変速段Shrをハイからローに変更する回生減速ダウンシフトが行われる。そして、リア変速機16rの変速が完了することにより、フロント変速機16f及びリア変速機16rの回生減速ダウンシフトが完了する。
図26は図25に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。合計駆動力DFsumはフロント駆動力DFf及びリア駆動力DFrの和を示し、フロント駆動力DFf及びリア駆動力DFrは合計駆動力DFsumに基づき設定される。この例では、合計駆動力DFsumはフロント駆動力DFf及びリア駆動力DFrに均等に割り当てられ、摩擦制動力には割り当てられない。このため、合計駆動力DFsumは要求駆動力DF_REQに対応する。合計駆動力DFsumは、フロント駆動力DFf及びリア駆動力DFrとともに摩擦制動力に割り当てることも可能である。
タイミングT61では、アクセル開度APOの減少開始に応じて合計駆動力DFsumが減少され始め、タイミングT62ではドライバによるブレーキ操作が開始される。結果、ブレーキペダルの踏込み量に応じた負の要求駆動力DF_REQが発生し、合計駆動力DFsumが負の値になる。タイミングT63では共通の変速条件が成立する。結果、フロント側変速条件つまりフロント変速機16fの変速条件が成立する。このため、タイミングT63ではハイ側でのドグクラッチ26fの噛み合いを解除するために、フロント駆動力DFfがゼロに向かって絶対値で減少され始める。また、これに応じてリア駆動力DFrが絶対値で増加され始め、駆動力DFの補填が行われる。フロント駆動力DFfはタイミングT64でゼロになる。結果、フロント側変速指示つまりフロント変速機16fの変速指示が行われ、ハイ側でのドグクラッチ26fの解放が開始される。このため、フロント側作動位置に示されるように、フロントACTR51fの作動位置がニュートラル位置側に移動し始めるとともに、スリーブ44fの作動位置がガタに応じた遅れを有してニュートラル位置側に移動し始める。その後はスリーブ44fの作動位置がニュートラル位置になるとドグクラッチ26fの回転同期が開始される。また、ドグクラッチ26fの回転同期が完了すると、ロー位置へのフロント側変速指示が行われ、ロー側でのドグクラッチ26fの締結が開始される。このため、フロントACTR51fの作動位置がロー位置側に変化し始めるとともに、スリーブ44fの作動位置がガタに応じた遅れを有してロー位置側に変化し始める。
タイミングT65では、スリーブ44fの作動位置がロー位置になり、ドグクラッチ26fの締結が完了する。タイミングT65ではリア駆動力DFrはゼロではなく、ドグクラッチ26rの締結力Fclrは解放力Factrrより大きい。このため、タイミングT65では待ち位置へのリアACTR51rの作動が開始され、リアACTR51r及びスリーブ44rの作動位置が待ち位置に向かって変化し始める。リアACTR51r及びスリーブ44rの作動位置は、ニュートラル位置へのリア側変速指示つまりリア変速機16rの変速指示が行われるタイミングT67より前に待ち位置になる。
タイミングT65からはフロント駆動力DFfをフロント変速機16f変速前の元のフロント駆動力DFfつまりタイミングT63直前のフロント駆動力DFfに戻す制御がフロントモータ10fで行われる。また、リアモータ10rでもリア駆動力DFrをフロント変速機16f変速前の元のリア駆動力DFrに戻す制御が行われる。フロント駆動力DFf及びリア駆動力DFrはタイミングT66で元の駆動力DFにそれぞれ戻される。結果、フロント変速機16fの変速が完了し、これに基づきリア側変速条件つまりリア変速機16rの変速条件が成立する。このため、タイミングT66からはハイ側でのドグクラッチ26rの噛み合いを解除するために、リア駆動力DFrがゼロに向かって絶対値で減少され始める。また、フロント駆動力DFfが絶対値で増加され始めることで、駆動力DFの補填が行われる。
タイミングT67ではリア駆動力DFrがゼロになり、ニュートラル位置へのリア側変速指示が行われる。このため、リアACTR51r及びスリーブ44rの作動位置が待ち位置からロー位置に向かって変化し始める。その後はドグクラッチ26rの回転同期を経て、タイミングT68でスリーブ44rの作動位置がロー位置になると、ドグクラッチ26rの締結が完了する。また、タイミングT69で駆動力DFがリア変速機16r変速前の元の駆動力DFになると、リア変速機16rの変速が完了する。
符号C1で示す各変化は第1比較例の場合を示す。第1比較例は共通の変速条件に基づきフロント変速機16f及びリア変速機16rを同時に変速する場合を示す。従ってこの場合は、タイミングT63で車速VSPが共通の変速条件が成立すると、フロント変速条件だけでなくリア変速条件も成立し、フロント駆動力DFf及びリア駆動力DFrがともにゼロに向かって絶対値で減少される。また、タイミングT64でフロント駆動力DFf及びリア駆動力DFrがゼロになると、フロント側変速指示だけでなくリア側変速指示も行われる。結果、スリーブ44fの作動位置だけでなくスリーブ44rの作動位置もガタに応じた遅れを有してニュートラル位置に向かって変化し始める。変速はその後、回転同期を経てタイミングT66で完了する。第1比較例では、駆動力DFがゼロになるタイミングT64及びタイミングT65間では、電子制御ブレーキの摩擦制動力で要求駆動力DF_REQを満たすことができる。但しこの場合は、単体のモータ10の回生駆動力で要求駆動力DF_REQを満たすことができるにも関わらず、回生減速を行えなくなる。
本実施形態の場合は、共通の変速条件に基づきフロント変速機16fを変速してからリア変速機16rを変速する。このため、フロント変速機16f及びリア変速機16rがともにニュートラル状態になる事態が回避され、一方の変速機16の変速時に他方の変速機16側のモータ10で回生減速を行うことが可能になる。また本実施形態では、先に変速されるフロント変速機16fのスリーブ44fの作動位置がタイミングT65からロー位置のままとなる。このため、仮にスリーブ44rが待ち位置を越えてニュートラル位置まで作動されてしまったとしても、フロント変速機16f及びリア変速機16rがともにニュートラル状態になることはない。
符号C2で示す各変化は第2比較例の場合を示す。第2比較例は本実施形態と同様、フロント変速機16fを変速してからリア変速機16rを変速する一方、ガタ詰めを行わない場合を示す。従って、第2比較例ではニュートラル位置へのリア側変速指示が行われるタイミングT67でリアACTR51rがハイ位置からニュートラル位置に作動され始め、スリーブ44rの作動位置はリアACTR51rに対しガタに応じた遅れを有してニュートラル位置に変化し始める。結果、その後の変速動作にも遅れが生じ、タイミングT69より後のタイミングT70で変速が完了する。
本実施形態の場合は、タイミングT67でスリーブ44rの作動位置が待ち位置になっている。このため、ガタ詰めを行った分スリーブ44rの作動位置がニュートラル位置になるタイミングが第2比較例より早まる。結果、その後の変速動作も第2比較例より早まり、タイミングT69で変速が完了する。従って、本実施形態の場合は、第2比較例よりもリア変速機16rの変速時間が短くなる分、車両100が一時的に二輪駆動状態になる時間が短くなり、走行安定性の低下が抑制される。
図27はコントローラ1が行う第4の変速制御の第2の例をフローチャートで示す図である。本フローチャートは、ステップS34Aの代わりにステップS34Bが設けられる以外、図25に示すフローチャートと同じである。また、ステップS34Bでは前述した第2の例と同様、ニュートラル位置へのリアACTR51rの作動が行われる。
図28は図27に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。以下では、図26に示すタイミングチャートと異なる部分について主に説明する。第2の例ではタイミングT75でドグクラッチ26fの締結が完了すると、ニュートラル位置へのリアACTR51rの作動が開始される。また、タイミングT77でニュートラル位置へのリア側変速指示が行われる前にばね57rのばね力によりガタ詰めが行われ、その後解放力Factrrが締結力Fclrを上回ると、スリーブ44rの作動位置がニュートラル位置側に変化し始める。
この場合も符号C1で示す第1比較例とは異なり、フロント変速機16fを変速してからリア変速機16rを変速するので、フロント変速機16fの変速時にリアモータ10rで回生減速を行うことが可能になる。また、先に変速されるフロント変速機16fのスリーブ44fがタイミングT75からロー位置のままとなるので、リアACTR51rをニュートラル位置に作動させても、フロント変速機16f及びリア変速機16rがともにニュートラル状態になることはない。またこの場合は、タイミングT77でニュートラル位置へのリア側変速指示が行われる前に、ばね57rのばね力によりガタ詰めが行われる。このため、スリーブ44rの作動位置が第2比較例より早くニュートラル位置になる。結果、その後の変速動作も第2比較例より早まり、第2比較例より早く変速が完了する。従って、第2比較例よりリア変速機16rの変速時間が短くなる分、車両100が一時的に二輪駆動状態になる時間が短くなり、走行安定性の低下が抑制される。
次に本実施形態の主な作用効果について説明する。本実施形態では、車両100はリアモータ10r(第1モータ)及びリア変速機16r(第1変速機)と、フロントモータ10f(第2モータ)及びフロント変速機16f(第2変速機)とを備える構成とされ、リア変速機16rはリアACTR51r(第1シフトアクチュエータ)を備える構成とさる。本実施形態では、リア変速機16r及びフロント変速機16fを回生減速ダウンシフトさせる際には、フロント変速機16fを変速させてからリア変速機16rを変速させるとともに、フロント変速機16fの変速クラッチであるドグクラッチ26f(第2噛み合いクラッチ)の締結が完了したタイミング以後に、リアACTR51rをニュートラル位置側に作動させる。
つまり、本実施形態ではフロント変速機16fを変速させてからリア変速機16rを変速させるので、フロント変速機16f及びリア変速機16rがともにニュートラル状態になることにより回生減速ダウンシフトを行えなくなる事態を回避できる。また、その上でドグクラッチ26fの締結が完了したタイミング以後にリアACTR51rをニュートラル位置側に作動させるので、リア変速機16rの変速時間を短縮できる。結果、車両100が一時的に二輪駆動状態になる時間を短縮でき、走行安定性の低下を抑制できる。
第4の変速制御はオートアップシフトにも適用できる。この場合、図25、図27のステップS31で例えば、図8に示す変速マップ上の動作点が、要求駆動力DF_REQが正の領域において領域R_LLから領域R_HHに予め定めた所定時間内に移動したか否かを判定することで、共通の変速条件が成立したか否かを判定できる。またこの場合は、ステップS32でフロント変速機16fをアップシフトするとともに、ステップS36でリア変速機16rをアップシフトするように変更することができる。この場合、フロント変速機16f及びリア変速機16rがともにニュートラル状態になって駆動力DFが大幅に不足する結果、ドライバに違和感を与えることを抑制でき、また、後に変速される変速機16の変速時間を短縮することで、ドライバに違和感を与えることを抑制できる。
リア変速機16rはリア変速機16rの変速クラッチであるドグクラッチ26r(第1噛み合いクラッチ)にばね57rを介してリアACTR51rのクラッチ作動力を伝えるシフト機構50r(第1シフト機構)を有した構成、つまり待ちばねありのシフト機構50rを有した構成とすることができる。また、リア変速機16rはドグクラッチ26rにばね57を含むばねを介さずにリアACTR51rのクラッチ作動力を伝えるシフト機構50rを有した構成、つまり待ちばねなしのシフト機構50rを有した構成とされてもよい。これらの場合、第1実施形態で前述したのと同様にガタ詰めを行うことで、リア変速機16rの変速時間を適切に短縮できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
上述した実施形態では、車両100がフロントモータ10f及びフロント変速機16fと、リアモータ10r及びリア変速機16rとを備える四輪駆動車両の場合について説明した。しかしながら、図29に示すように車両100はフロントモータ10f及びフロント変速機16fを備える一方、リア変速機16rを含む変速機を介さずにリア駆動輪11rに動力を伝達するリアモータ10rを備える四輪駆動車両とされてもよい。或いは、図30に示すように車両100はリアモータ10r及びリア変速機16rを備える一方、フロント変速機16fを含む変速機を介さずにフロント駆動輪11fに動力を伝達するフロントモータ10fを備える四輪駆動車両とされてもよい。これらの場合でも、第1の変速制御から第3の変速制御の少なくともいずれかにより変速時間を短縮し、動力伝達の一時的な遮断により生じ得る不都合を改善できる。
さらに、図31に示すように車両100はフロントモータ10f及びフロント変速機16fを備える二輪駆動車両つまり前輪駆動車両とされてもよい。或いは、図32に示すように車両100はリアモータ10r及びリア変速機16rを備える二輪駆動車両つまり後輪駆動車両とされてもよい。これらの場合でも、変速機16の変速時にACTR51への変速指示が行われる前に、ACTR51をニュートラル位置側に作動させることで変速時間を短縮できる。従って、動力伝達の一時的な遮断により生じ得る不都合を改善できる。
1 コントローラ(制御部)
26f ドグクラッチ(第1又は第2噛み合いクラッチ)
26r ドグクラッチ(第2又は第1噛み合いクラッチ)
10f フロントモータ(第1又は第2駆動モータ)
10r リアモータ(第2又は第1駆動モータ)
11f フロント駆動輪(第1又は第2駆動輪)
11r リア駆動輪(第2又は第1駆動輪)
16f フロント変速機(第1又は第2変速機)
16r リア変速機(第2又は第1変速機)
50f シフト機構(第1又は第2シフト機構)
50r シフト機構(第2又は第1シフト機構)
51f フロントACTR(第1又は第2シフトアクチュエータ)
51r リアACTR(第2又は第1シフトアクチュエータ)
57 ばね
100 車両

Claims (13)

  1. 第1駆動モータと、前記第1駆動モータ及び第1駆動輪間での動力伝達を行い変速時にニュートラル位置を経由する第1変速機とを備え、前記第1変速機は変速指示に応じて作動する第1シフトアクチュエータを備える車両の変速制御方法であって、
    前記第1変速機の変速時に、前記第1シフトアクチュエータへの前記変速指示が行われる前に、前記第1シフトアクチュエータを前記ニュートラル位置側に作動させること、
    を含むことを特徴とする車両の変速制御方法。
  2. 請求項1に記載の車両の変速制御方法であって、
    前記車両は、第2駆動輪に動力を伝達する第2駆動モータをさらに備え、
    前記第1変速機の変速時に前記第2駆動モータで駆動力を補填することをさらに含み、
    前記第1変速機の変速時に要求駆動力が前記第2駆動モータの最大駆動力より大きい場合に、前記第1シフトアクチュエータを前記ニュートラル位置側に作動させる、
    ことを特徴とする車両の変速制御方法。
  3. 請求項2に記載の車両の変速制御方法であって、
    アクセル開度が前記第1変速機のキックダウン変速実行開度より低い所定開度以上になると、前記第1シフトアクチュエータを前記ニュートラル位置側に作動させる、
    ことを特徴とする車両の変速制御方法。
  4. 請求項3に記載の車両の変速制御方法であって、
    前記第1駆動モータが等トルク領域で動作している場合に、前記第1シフトアクチュエータを前記ニュートラル位置側に作動させた上で前記第1変速機の変速を行う、
    ことを特徴とする車両の変速制御方法。
  5. 請求項2に記載の車両の変速制御方法であって、
    車速が前記第1変速機のオートアップシフト実行車速より低い第1所定車速以上になると、前記第1シフトアクチュエータを前記ニュートラル位置側に作動させる、
    ことを特徴とする車両の変速制御方法。
  6. 請求項5に記載の車両の変速制御方法であって、
    前記第1駆動モータが等出力領域で動作している場合に、前記第1シフトアクチュエータを前記ニュートラル位置側に作動させた上で前記第1変速機の変速を行う
    ことを特徴とする車両の変速制御方法。
  7. 請求項1に記載の車両の変速制御方法であって、
    前記車両は、第2駆動輪に動力を伝達する第2駆動モータをさらに備え、
    車速が前記第1変速機の回生減速ダウンシフト実行車速より高い第2所定車速以下になると、前記第1シフトアクチュエータを前記ニュートラル位置側に作動させる、
    ことを特徴とする車両の変速制御方法。
  8. 請求項1、2又は5に記載の車両の変速制御方法であって、
    前記第1変速機の変速クラッチである第1噛み合いクラッチの締結力が、前記第1シフトアクチュエータによる前記第1噛み合いクラッチの解放力より大きい場合に、前記第1シフトアクチュエータを前記ニュートラル位置側に作動させる、
    ことを特徴とする車両の変速制御方法。
  9. 請求項1、2又は5に記載の車両の変速制御方法であって、
    前記第1シフトアクチュエータを作動させてから所定時間が経過しても、前記第1シフトアクチュエータへの前記変速指示がない場合は、前記第1シフトアクチュエータをニュートラル位置側に作動させる前の元の位置に戻す、
    ことを特徴とする車両の変速制御方法。
  10. 請求項1に記載の車両の変速制御方法であって、
    前記車両は、第2駆動モータと、前記第2駆動モータ及び第2駆動輪間での動力伝達を行い変速時にニュートラル位置を経由する第2変速機とをさらに備え、
    前記第1変速機及び前記第2変速機を変速させる際に、前記第2変速機を変速させてから前記第1変速機を変速させるとともに、前記第2変速機の変速クラッチである第2噛み合いクラッチの締結が完了したタイミング以後に、前記第1変速機の前記第1シフトアクチュエータを前記ニュートラル位置側に作動させる、
    ことを特徴とする車両の変速制御方法。
  11. 請求項1、2、5又は10に記載の車両の変速制御方法であって、
    前記第1変速機は、当該第1変速機の変速クラッチである第1噛み合いクラッチにばねを介して前記第1シフトアクチュエータのクラッチ作動力を伝える第1シフト機構を有し、
    前記第1シフトアクチュエータを前記ニュートラル位置側に作動させるにあたっては、前記第1シフトアクチュエータを前記ニュートラル位置まで作動させる、
    ことを特徴とする車両の変速制御方法。
  12. 請求項1、2、5又は10に記載の車両の変速制御方法であって、
    前記第1変速機は、当該第1変速機の変速クラッチである第1噛み合いクラッチにばねを介さずに前記第1シフトアクチュエータのクラッチ作動力を伝える第1シフト機構を有し、
    前記第1シフトアクチュエータを前記ニュートラル位置側に作動させるにあたっては、前記第1シフトアクチュエータを前記第1シフトアクチュエータと前記第1噛み合いクラッチとを結ぶ動力伝達経路の構成部品間のガタに応じた待ち位置まで作動させる、
    ことを特徴とする車両の変速制御方法。
  13. 第1駆動モータと、前記第1駆動モータ及び第1駆動輪間での動力伝達を行い変速時にニュートラル位置を経由する第1変速機とを備え、前記第1変速機は変速指示に応じて作動する第1シフトアクチュエータを備える車両の変速制御装置であって、
    前記第1変速機の変速時に、前記第1シフトアクチュエータへの前記変速指示が行われる前に、前記第1シフトアクチュエータを前記ニュートラル位置側に作動させる制御部を備える、
    ことを特徴とする車両の変速制御装置。
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