JP2022133319A - 乳化組成物、その製造方法、評価方法及び設計方法、並びに高分子乳化剤 - Google Patents

乳化組成物、その製造方法、評価方法及び設計方法、並びに高分子乳化剤 Download PDF

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Abstract

【課題】乳化安定性に優れながらも、べたつきが少なく、かつ、油相に含まれる油剤本来の感触を発揮する、乳化組成物を提供する。【解決手段】以下の(A)及び(B)の条件を満たすポリビニル系重合体が乳化界面に吸着していることを特徴とする、乳化組成物。(A)水に分散させたときに微粒子を形成する。(B)(i)に示す手法で取得した前記ポリビニル系重合体を含む乳化物の塗布膜の断面画像が、(ii)の条件を満たす。(i)前記ポリビニル系重合体、Calcein及びNileRedを含む水中油型乳化物をスライドガラス上に塗布し、塗布膜を35℃で2時間乾燥させる。乾燥後の塗布膜を共焦点レーザー走査顕微鏡で観察し、塗布膜の厚み方向に複数のZスタック画像を取得し、塗布膜の断面画像を得る。(ii)塗布膜断面の表層の90%以上が、NileRed由来の蛍光を発する相で占められている。【選択図】図2

Description

新規性喪失の例外適用申請有り
本発明はポリビニル系重合体が乳化界面に吸着している乳化組成物に関する。
油相成分と水相成分が乳化剤によって混合されている乳化組成物は、化粧料の剤形として広く用いられている。しかし、一般的な低分子の乳化剤は肌への刺激性やべたつき等の問題を生じることがある。
このような問題を解決するために、近年、高分子の乳化剤を用いた乳化技術が種々提案されている。
特許文献1には、ヒドロキシエチルセルロースを乳化剤とする乳化組成物が開示されている。
また、特許文献2にはアルキル変性カルボキシビニルポリマーを乳化剤とする乳化組成物が開示されている。
特開2011-231049号公報 特開平09-019631号公報
上述したような高分子乳化剤は、肌への刺激が少なく、低濃度で含有されるときにはべたつきが少ない等の利点はあるものの、従来の低分子の乳化剤と比較すると乳化力に劣るものであった。そのため、乳化状態の安定性を確保するためには乳化組成物における高分子乳化剤を高配合し、高粘度にする必要があり、その結果べたつくという課題があった。
また、乳化組成物を塗布すると、その塗布膜の表面の大部分に水相成分ないし乳化剤が露出してしまうため、油相に含まれる油剤の感触が優れるものであってもこれを感じにくいという課題があった。
このような状況に鑑み、乳化安定性に優れながらも、べたつきが少なく、かつ、油相に含まれる油剤本来の感触を発揮する、高分子乳化剤により乳化された新規の乳化組成物を提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明は、以下の(A)及び(B)の条件を満たすポリビニル系重合体が乳化界面に吸着していることを特徴とする、乳化組成物である。
(A)水に分散させたときに微粒子を形成する。
(B)(i)に示す手法で取得した前記ポリビニル系重合体を含む乳化物の塗布膜の断面画像が、(ii)の条件を満たす。
(i)前記ポリビニル系重合体、Calcein及びNileRedを含む水中油型乳化物をスライドガラス上に塗布し、塗布膜を35℃で2時間乾燥させる。乾燥後の塗布膜を共焦点レーザー走査顕微鏡で観察し、塗布膜の厚み方向に複数のZスタック画像を取得し、塗布膜の断面画像を得る。
(ii)塗布膜断面の表層の90%以上が、NileRed由来の蛍光を発する相で占められている。
本発明の好ましい形態では、前記ポリビニル系重合体からなる微粒子が乳化界面に吸着している。
このような乳化組成物は、より乳化安定性と使用感に優れる。
本発明の乳化組成物は、乳化安定性に優れながらも、べたつきにくく、油相に含まれる油剤本来の感触を発揮する。
本発明の好ましい形態では、前記(i)に示す手法で取得した前記ポリビニル系重合体を含む乳化物の塗布膜の断面画像が、さらに(iii)の条件を満たすことを特徴とする。
(iii)Calcein由来の蛍光を発する相が、スライドガラス上に接している。
本発明の好ましい形態では、前記(i)に示す手法で取得した前記ポリビニル系重合体を含む乳化物の塗布膜の断面画像が、さらに(iv)の条件を満たすことを特徴とする。
(iv)Calcein由来の蛍光を発する相が、上下方向に延びる線条構造が並列した形態を示す。
本発明の好ましい形態では、前記ポリビニル系重合体が疎水性側鎖を有することを特徴とする。
疎水性側鎖を有するポリビニル系重合体によれば、よりべたつきにくい乳化組成物を提供することができる。
本発明の好ましい形態では、前記疎水性側鎖が、飽和又は不飽和である、分岐鎖及び/又は環状構造を有していてもよい炭化水素鎖である。
炭化水素鎖を有するポリビニル系重合体が乳化界面に吸着している乳化組成物は、より乳化安定性に優れる。
本発明の好ましい形態では、前記疎水性側鎖が、炭素数6~30の炭化水素基又はアシル基であることを特徴とする。
このような疎水性側鎖を有するポリビニル系重合体によれば、より乳化安定性に優れた乳化組成物を提供することができる。
本発明の好ましい形態では、前記ポリビニル系重合体が電離基を有さないことを特徴とする。
電離基を有さないポリビニル系重合体が乳化界面に吸着している乳化組成物は、べたつきにくいながらも乳化安定性に優れている。
本発明の好ましい形態では、前記ポリビニル系重合体が、以下の一般式(I)、(II)又は(III)で表されるビニル系単量体から誘導される1種又は2種以上の構成単位を含むことを特徴とする。
一般式(I)
Figure 2022133319000002
(一般式(I)において、Aは-O-又は-COO-を表し、Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは炭素数6~30の炭化水素基を表す。)
一般式(II)
Figure 2022133319000003
(一般式(II)において、Aは-O-又は-COO-を表し、Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R,Rは同一でも異なっていてもよく、炭素数6~22のアシル基を表す。Xは三価のアルコールからOH基が脱離した基を表す。)
一般式(III)
Figure 2022133319000004
(一般式(III)において、Aは-O-又は-COO-を表し、Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R、R、Rは同一でも異なっていてもよく、炭素数6~22のアシル基を表す。Yは四価アルコールからOH基が脱離した基を表す。)
本発明の好ましい形態では、前記ポリビニル系重合体が、重合性カルボン酸、下記一般式(VIII)で表されるビニル系単量体、下記一般式(IX)で表されるビニル系単量体、下記一般式(X)で表されるビニル系単量体又は下記一般式(XI)で表されるビニル系単量体から選ばれるビニル系単量体から誘導される1種又は2種以上の構成単位を含むことを特徴とする。
一般式(VIII)
Figure 2022133319000005
(一般式(VIII)中、Bは-O-又は-COO-を表し、R13は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R14は水酸基を有していてもよい炭素数2~4のアルキレン基を表し、R15は水素原子、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数1~14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1~12のアシル基を表す。nは6~40の整数を表す。)
一般式(IX)
Figure 2022133319000006
(一般式(IX)中、BはBは-O-又は-COO-を表し、R16は水素原子またはメチル基をあらわす。)
一般式(X)
Figure 2022133319000007
(一般式(X)中、Dは-CO-又は置換基が無いことを表し、R17は水素原子またはメチル基を、G-O-は還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基を表す。mは2又は3を、lは1~5の整数を表す。)
一般式(XI)
Figure 2022133319000008
(一般式(XI)中R18は水素原子またはメチル基を、R19はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。)
本発明は、上述の乳化組成物の製造方法にも関する。すなわち、本発明の製造方法は、前記ポリビニル系重合体を水相に分散させて、前記ポリビニル系重合体からなる微粒子を形成する水相調製工程と、前記微粒子が分散している水相に油相成分を添加し、攪拌混合する乳化工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、乳化安定性に優れた乳化組成物を製造することができる。
また、乳化組成物が電解質並びに/又は前記(A)及び前記(B)の条件を満たさない高分子を含む場合には、前記水相調製工程において、電解質並びに/又は前記(A)及び前記(B)の条件を満たさない高分子を含まない水相に前記ポリビニル系重合体を分散させて、前記ポリビニル系重合体からなる微粒子を形成した後に、該水相に電解質並びに/又は前記(A)及び前記(B)の条件を満たさない高分子を加えることが好ましい。
このようにポリビニル系重合体を水相中で微粒子化する工程を、電解質並びに/又は前記(A)及び前記(B)の条件を満たさない高分子の非存在下で行うことによって、より乳化安定性や使用感に優れた乳化組成物を製造することができる。
本発明は、上述した本発明の好ましい形態の製造方法により製造された乳化組成物にも関する。かかる形態の乳化組成物は乳化安定性や使用感に優れる。
また、本発明は、高分子が乳化界面に吸着している乳化組成物の評価方法であって、該乳化組成物の乾燥塗布膜の表層の90%以上が油相で占められているときに、該乳化組成物の油相に含まれる油剤の感触に近いと判断することを特徴とする、乳化組成物の評価方法にも関する。
かかる評価方法によれば、官能試験によらずとも乳化組成物の使用感を評価することができる。
本発明の好ましい形態では、前記乾燥塗布膜において、水相が塗布面に接しているときに、さらに該乳化組成物の油相に含まれる油剤の感触に近いと判断することを特徴とする。
本発明は乳化組成物の設計方法にも関する。すなわち、本発明は、乳化作用のある高分子を選択する工程と、
第1選択工程で選択した高分子により乳化された乳化組成物の乾燥塗布膜を観察し、その表層の90%以上が油相で占められているときに、該高分子を高分子乳化剤として選択する第2選択工程と、を有することを特徴とする、乳化組成物の設計方法である。
本発明の乳化組成物の設計方法によれば、油剤の感触に近い乳化組成物を設計することができる。
本発明は、以下の(A)及び(B)の条件を満たすポリビニル系重合体からなる高分子乳化剤にも関する。
(A)水に分散させたときに微粒子を形成する。
(B)(i)に示す手法で取得した前記ポリビニル系重合体を含む乳化物の塗布膜の断面画像が、(ii)の条件を満たす。
(i)前記ポリビニル系重合体、Calcein及びNileRedを含む水中油型乳化物をスライドガラス上に塗布し、塗布膜を35℃で2時間乾燥させる。乾燥後の塗布膜を共焦点レーザー走査顕微鏡で観察し、塗布膜の厚み方向に複数のZスタック画像を取得し、塗布膜の断面画像を得る。
(ii)塗布膜断面の表層の90%以上が、NileRed由来の蛍光を発する相で占められている。
このような条件を満たすポリビニル系重合体乳化剤によれば、乳化安定性に優れ、べたつきも少なく、油相に含まれる油剤本来の感触を発揮する乳化組成物を提供することができる。
本発明によれば、べたつきが少ないながらも、乳化安定性に優れた、高分子乳化剤により乳化された乳化組成物を提供することができる。また、油相に含まれる油剤本来の感触を発揮する乳化組成物を提供することができる。
実施例の乳化組成物中に分散する油滴の乳化界面の電子顕微鏡像を示す。 上段は実施例1の乳化組成物の乾燥塗布膜の断面画像であり、下段はその模式図を表す。 上段は比較例1の乳化組成物の乾燥塗布膜の断面画像であり、下段はその模式図を表す。 上段は比較例2の乳化組成物の乾燥塗布膜の断面画像であり、下段はその模式図を表す。 上段は比較例3の乳化組成物の乾燥塗布膜の断面画像であり、下段はその模式図を表す。 乳化組成物の乾燥塗布膜のMIUとMMUの測定結果を表す図である。
<乳化組成物>
本発明は、後述する(A)及び(B)の条件を満たすポリビニル系重合体が乳化界面に吸着している乳化組成物である。
本発明においては、前記ポリビニル系重合体からなる微粒子(以下、ポリビニル系重合体微粒子ともいう)が乳化界面に吸着していることが好ましい。
ここで、「ポリビニル系重合体からなる微粒子」とは、専ら溶液中で会合することにより形成される微粒子のことをいい、溶液に添加する前から固体粒子状に成型されたものは含まない。
乳化界面に吸着している状態におけるポリビニル系重合体微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは1nm~1000nm、より好ましくは5~500nm、さらに好ましくは10~200nm、さらに好ましくは15~100nm、さらに好ましくは15~50nm、さらに好ましくは20~30nmである。
微粒子形成ポリビニル系重合体は、(A)及び(B)の条件を充足する。以下、それぞれの条件について詳述する。
(A)水に分散させたときに微粒子を形成する。
微粒子形成ポリビニル系重合体は、水に分散させたときに微粒子を形成する。該微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは1nm~1000nm、より好ましくは5~500nm、さらに好ましくは10~200nm、さらに好ましくは15~100nm、さらに好ましくは15~50nm、さらに好ましくは20~30nmである。
なお、水に分散させたときの微粒子の平均粒子径は、Zetasizer Nano-Z ZEN3600、Malvern社(レーザードップラー法)を基本原理とした、動的光散乱測定法を用いて測定することができる。
また、水に分散させたときの微粒子の平均粒子径は、乳化界面に吸着している状態における高分子微粒子の平均粒子径であると推定することができる。
本発明に用いられるポリビニル系重合体は、(A)の条件、すなわち水に分散させたときに微粒子を形成する性質を有するため、本明細書においては特に微粒子形成ポリビニル系重合体ということもある。
(B)(i)に示す手法で取得した前記ポリビニル系重合体を含む乳化物の塗布膜の断面画像が、(ii)の条件を満たす。
この(B)の条件は、乳化組成物を塗布して水分が蒸発した後に、乳化界面から脱離し、解乳化作用を有するという特性をポリビニル系重合体が備えていることを要求する条件である。
ポリビニル系重合体が条件(B)を充足するか否かを判別するためには、(i)に示す手法で乳化物の塗布膜の断面画像を取得する。
すなわち、(i)前記ポリビニル系重合体、Calcein及びNileRedを含む水中油型乳化物をスライドガラス上に塗布し、塗布膜を35℃で2時間乾燥させる。乾燥後の塗布膜を共焦点レーザー走査顕微鏡で観察し、塗布膜の厚み方向に複数のZスタック画像を取得し、塗布膜の断面画像を得る。
(i)において、水中油乳化物を調製する手法は特に限定されない。好ましくは、ポリビニル系重合体を水相に分散させ、微粒子を形成させてから油相を加えて、攪拌混合することにより調製する。
この水中油型乳化物には任意の電解質並びに/又は前記(A)及び前記(B)の条件を満たさない高分子を加えてもよい。その場合には、電解質並びに/又は前記(A)及び前記(B)の条件を満たさない高分子を含まない水相にポリビニル系重合体を分散させ、微粒子を形成させてから、該水相に電解質並びに/又は前記(A)及び前記(B)の条件を満たさない高分子を加えることで水相を調製することが好ましい。
Calcein及びNileRedは、乳化物に配合されると、それぞれ水相及び油相に局在する。水中油型乳化物の調製の際には、Calceinは水相、NileRedは油相にそれぞれ溶解させてから、水相及び油相を混合することが好ましい。
次いで、調製した水中油型乳化物をスライドガラスに塗布する。塗布の方法は特に限定されず、例えばドクターブレード等の塗布具を用いることが好ましい。
塗布後、スライドガラスを35℃環境下に2時間置き、塗布膜を乾燥させる。これにより、水中油型乳化物の連続相であった水相の水分が蒸発する。ポリビニル系重合体の特性によりもたらされる、水分が蒸発した後における水相及び油相の挙動が、本発明において重要である。この水相と油相の挙動を顕微鏡により観察する。
乾燥後の塗布膜は共焦点レーザー走査顕微鏡で観察する。共焦点レーザー走査顕微鏡は、焦点面からのシグナルだけを拾い、それ以外から発生したシグナルを排除する事ができ、試料を焦点面でスキャンして得られた蛍光から、解像度の高い、鮮明な2次元の画像を生成することができる。そして、焦点面を少しずつずらして取り込んだ2次元画像を再構成して(Zスタック)、3次元画像(Zスタック画像)を生成し、それにより試料の断面画像を取得することができるのである。
(i)においては、この共焦点レーザー走査顕微鏡の機能により、乾燥後の塗布膜を共焦点レーザー走査顕微鏡で観察し、塗布膜の厚み方向に複数のZスタック画像を取得し、塗布膜の断面画像を得る。
こうして得られた塗布膜の断面画像において、塗布膜断面の表層がNileRed由来の蛍光を発する相、すなわち油相により90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上が占められていれば、ポリビニル系重合体は条件(ii)を満たしていると判断する。
あくまでも条件(ii)は塗布膜の断面画像に基づき判定されるので、塗布膜の広がり方向の面(XY平面)を見ることで、その表層を観察する必要はない。塗布膜の断面における上底の90%以上にNileRed由来の蛍光を発する相が接しているように観察されれば、ポリビニル系重合体は条件(ii)を満たしていると判断する。
本発明においては、塗布膜の断面画像が(ii)の条件に加えて、さらに(iii)の条件を満たしていることが好ましい。
(iii)Calcein由来の蛍光を発する相が、スライドガラス上に接している。
言い換えれば、塗布膜の断面における下底にNileRed由来の蛍光を発する相が接しているように観察されれば、ポリ重合体は条件(iii)を満たしていると判断する。
さらに、塗布膜の断面画像が(ii)の条件に加えて、(iv)の条件を満たしていることが好ましい。
(iv)Calcein由来の蛍光を発する相が、上下方向に延びる線条構造が並列した形態を示す。
言い換えれば、Calcein由来の蛍光を発する相が、塗布膜の断面において、上下方向に延びる複数の線条模様を形成していれば、ポリビニル系重合体は条件(iv)を満たしていると判断する。
1個の線条の幅は均一である必要はなく、下方から上方に向けて狭幅する棘様の構造であってもよい(図2下段の模式図を参照)。
このとき、断面画像に表れている全ての線条構造のうち、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%以上がスライドガラス、つまり、塗布膜の断面の下底に接していることが好ましい。
微粒子形成ポリビニル系重合体は、さらに以下の(C)の条件を満たしていることが好ましい。
(C)ポリビニル系重合体を0.5質量%の濃度で含む水溶液の25℃、1気圧における粘度が3000mPa・S以下である。
微粒子形成ポリビニル系重合体を0.5質量%の濃度で含む水溶液の粘度は、25℃、1気圧において、より好ましくは2500mPa・S以下、さらに好ましくは2000mPa・S以下である。
また、微粒子形成ポリビニル系重合体は以下の(D)の条件を充足することが好ましい。
(D)微粒子形成ポリビニル系重合体は、0.1質量%~1.0質量%の濃度の水溶液としたときに、濃度依存的な増粘効果を示さない。
特に、上記濃度範囲において、25℃、1気圧における水溶液の粘度が、3000mPa・S以下、より好ましくは2500mPa・S以下、さらに好ましくは2000mPa・S以下となるような微粒子形成ポリビニル系重合体を用いることが好ましい。
このような粘度特性を有する微粒子形成ポリビニル系重合体を含む乳化組成物は、べたつきにくい。
なお、粘度は25℃、1気圧において定法(例えば、B型粘度計(DIGITAL VISMETRON VDA:芝浦システム株式会社製)を用いて測定することができる。
なお、ポリビニル系重合体とは下記基本構造1を有するビニル系単量体を重合して得られる、下記基本構造2を有する重合体のことをいう。
Figure 2022133319000009
基本構造1
Figure 2022133319000010
基本構造2
(a~dの置換基は特に限定されない)
微粒子形成ポリビニル系重合体は、乳化界面に吸着する微粒子を形成し、上記(A)及び(B)の条件を充足すればよく、主鎖骨格の構造は限定されない。
微粒子形成ポリビニル系重合体としては、ポリオレフィン系重合体、ポリアクリル系重合体、ポリアクリルアミド系重合体、ポリスチレン系重合体を好ましく例示することができる。特に、微粒子形成ポリビニル系重合体としてポリアクリル系重合体を好ましく例示することができる。
微粒子形成ポリビニル系重合体は、疎水性側鎖を有することが好ましい。疎水性側鎖としては、炭化水素鎖やパーフルオロアルキル鎖などが例示できるが、炭化水素鎖を好ましく例示することができる。
炭化水素鎖の炭素数の下限は、特に限定されないが、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上である。
また、炭化水素鎖の炭素数の上限も、特に限定されないが、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下である。
炭化水素鎖は、分岐鎖状であっても直鎖状であってもよい。
炭化水素鎖は飽和であっても不飽和であってもよいが、飽和であることが好ましい。
炭化水素鎖として、より具体的には炭素数13~30の分岐状炭化水素基、及び2つ以上の分岐を有する炭素数6~12の炭化水素基を例示することができる。
また、炭化水素鎖は環構造を有していてもよいが、環構造を含まないことがより好ましい。
炭化水素鎖として、より具体的には炭素数13~30の環構造を含まない分岐状炭化水素基、及び環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~12の炭化水素基を例示することができる。
炭素数13~30の環構造を含まない分岐状炭化水素基としては、1-メチルドデカニル基、11-メチルドデカニル基、3-エチルウンデカニル基、3-エチル-4,5,6-トリメチルオクチル基、1-メチルトリデカニル基、1-ヘキシルオクチル基、2-ブチルデカニル基、2-ヘキシルオクチル基、4-エチル-1-イソブチルオクチル基、1-メチルペンタデカニル基、2-ヘキシルデカニル基、2-オクチルデカニル基、2-ヘキシルドデカニル基、16-メチルヘプタデカニル基、9-メチルヘプタデカニル基、7-メチル-2-(3-メチルヘキシル)デカニル基、3,7,11,15-テトラ-メチルヘキサデカニル基、2-オクチルドデカニル基、2-デシルテトラデカニル基、2-ドデシルヘキサデカニル基等を例示することができる。
環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~12の炭化水素基としては2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルペンタニル基、1-イソプロピルブチル基、1-イソプロピル-2-メチルプロピル基、1,1-ジエチルプロピル基、1-エチル-1-イソプロピルプロピル基、2-エチル-4-メチルペンチル基、1-プロピル-2,2-ジメチルプロピル基、1,1、2-トリメチル-ペンチル基、1-イソプロピル-3-メチルブチル基、1,2-ジメチル-1-エチルブチル基、1,3-ジメチル-1-エチルブチル基、1-エチル-1-イソプロピル-プロピル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1-メチル-1-エチルペンチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,4―ジメチルヘキシル基、1-エチル-3―メチルペンチル基、1,5―ジメチルヘキシル基、1-エチル-6-メチルヘプチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、1,2-ジメチル-1-イソプロピルプロピル基、3-メチル-1-(2,2-ジメチルエチル)ブチル基、1-イソプロピルヘキシル基、3.5.5-トリメチルヘキシル基、2-イソプロピル-5-メチルヘキシル基、1,5-ジメチル-1-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2,4,5-トリメチルヘプチル基、2,4,6-トリメチルヘプチル基、3,5-ジメチル-1-(2,2-ジメチルエチル)ヘキシル基等を例示することができる。
また、疎水性側鎖として炭化水素鎖を好ましく例示できることは上述した通りであるが、炭化水素鎖をアシル基の形態で含むポリビニル系重合体も好ましい。
アシル基の炭素数の下限は、特に限定されないが、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上である。
また、アシル基の炭素数の上限も、特に限定されないが、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下、さらに好ましくは22以下である。
アシル基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
アシル基は、環状構造を含んでいてもよいが、環状構造を有していてもよい。
環構造を含まない、分岐を有する炭素数6~22のアシル基としては、2-メチルペンタノイル基、3-メチルペンタノイル基、4-メチルペンタノイル基、2-エチルブタノイル基、2-エチルブタノイル基、2,2-ジメチルブタノイル基、3,3-ジメチルブタノイル基、2-メチルヘキサノイル基、4-メチルヘキサノイル基、5-メチルヘキサノイル基、2,2-ジメチルペンタノイル基、4,4-ジメチルペンタノイル基、2-メチルヘプタノイル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンタノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2,2,3-トリメチルペンタノイル基、2-メチルオクタノイル基、3,3,5-トリメチルヘキサノイル基、2-メチルノナノイル基、4-メチルノナノイル基、8-メチルノナノイル基、4-エチルオクタノイル基、2-エチルオクタノイル基、2-ブチルヘキサノイル基、2-tert-ブチルヘキサノイル基、2,2-ジエチルヘキサノイル基、2,2-ジメチルオクタノイル基、3,7-ジメチルオクタノイル基、ネオデカノイル基、7-メチルデカノイル基、2-メチル-2-エチルオクタノイル基、2-メチルウンデカノイル基、10-メチルウンデカノイル基、2,2ジメチルデカノイル基、2-エチルデカノイル基、2-ブチルオクタノイル基、ジエチルオクタノイル基、2-tert-ブチル-2,2,4-トリメチルペンタノイル基、10-メチルドデカノイル基、3-メチルドデカノイル基、4-メチルドデカノイル基、11-メチルドデカノイル基,10-エチルウンデカノイル基、12-メチルトリデカノイル基、2-ブチルデカノイル基、2-ヘキシルオクタノイル基、2-ブチル-2-エチルオクタノイル基、12-メチルテトラデカノイル基、14-メチルペンタデカノイル基、2-ブチルドデカノイル基、2-ヘキシルデカノイル基、16-メチルヘプタデカノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2-ブチルヘキサデカノイル基、2-ヘキシルドデカノイル基、2,4,10,14-テトラメチルペンタノイル基、18-メチルノナデカノイル基、3,7,11,15-テトラ-メチルヘキサデカノイル基、19-メチルエイコサノイル基等を例示することができる。
また、好ましい形態では、疎水性側鎖として、分岐を有する、炭素数10~22のアシル基、または、2つ以上の分岐を有する炭素数6~9のアシル基を例示することができる。
分岐を有する、炭素数10~22のアシル基、または、2つ以上の分岐を有する炭素数6~9のアシル基は、環状構造を含まないことが好ましい。
環構造を含まない、分岐を有する炭素数10~22のアシル基としては、2-メチルノナノイル基、4-メチルノナノイル基、8-メチルノナノイル基、4-エチルオクタノイル基、2-エチルオクタノイル基、2-ブチルヘキサノイル基、2-tert-ブチルヘキサノイル基、2,2-ジエチルヘキサノイル基)、2,2-ジメチルオクタノイル基、3,7-ジメチルオクタノイル基、ネオデカノイル基)、7-メチルデカノイル基、2-メチル-2-エチルオクタノイル基、2-メチルウンデカノイル基、10-メチルウンデカノイル基、2,2ジメチルデカノイル基、2-エチルデカノイル基、2-ブチルオクタノイル基、ジエチルオクタノイル基、2-tert-ブチル-2,2,4-トリメチルペンタノイル基、10-メチルドデカノイル基、3-メチルドデカノイル基、4-メチルドデカノイル基、11-メチルドデカノイル基,10-エチルウンデカノイル基、12-メチルトリデカノイル基、2-ブチルデカノイル基、2-ヘキシルオクタノイル基、2-ブチル-2-エチルオクタノイル基、12-メチルテトラデカノイル基、14-メチルペンタデカノイル基、2-ブチルドデカノイル基、2-ヘキシルデカノイル基、16-メチルヘプタデカノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2-ブチルヘキサデカノイル基、2-ヘキシルドデカノイル基、2,4,10,14-テトラメチルペンタノイル基、18-メチルノナデカノイル基、3,7,11,15-テトラ-メチルヘキサデカノイル基、19-メチルエイコサノイル基等を例示することができる。
環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~9のアシル基としては、2,2-ジメチルブタノイル基、3,3-ジメチルブタノイル基、2,2-ジメチルペンタノイル基、4,4-ジメチルペンタノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2,2,3-トリメチルペンタノイル基、3,5,5-トリメチルヘキサノイル基等を例示することができる。
微粒子形成ポリビニル系重合体としては、以下の一般式(I)、(II)又は(III)で表されるビニル系単量体から誘導される1種又は2種以上の構成単位(以下、単に、「構成単位I」などと呼ぶこともある)を含むポリビニル系重合体を好ましく例示することができる。
一般式(I)
Figure 2022133319000011
前記一般式(I)において、Aは-O-又は-COO-を表し、Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは炭素数6~30の炭化水素基を表す。
ここで、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基等が例示できる。本発明において、Rは水素原子又はメチル基であることが好ましい。
は、分岐鎖状であっても直鎖状であってもよい。
は、より具体的には炭素数13~30の分岐状炭化水素基、及び2つ以上の分岐を有する炭素数6~12の炭化水素基を例示することができる。
は環構造を有していてもよいが、環構造を含まないことがより好ましい。
の炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよいが、飽和であることが好ましい。
としては炭素数13~30の環構造を含まない分岐状炭化水素基、又は環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~12の炭化水素基が好ましい。
炭素数13~30の環構造を含まない分岐状炭化水素基としては、1-メチルドデカニル基、11-メチルドデカニル基、3-エチルウンデカニル基、3-エチル-4,5,6-トリメチルオクチル基、1-メチルトリデカニル基、1-ヘキシルオクチル基、2-ブチルデカニル基、2-ヘキシルオクチル基、4-エチル-1-イソブチルオクチル基、1-メチルペンタデカニル基、2-ヘキシルデカニル基、2-オクチルデカニル基、2-ヘキシルドデカニル基、16-メチルヘプタデカニル基、9-メチルヘプタデカニル基、7-メチル-2-(3-メチルヘキシル)デカニル基、3,7,11,15-テトラ-メチルヘキサデカニル基、2-オクチルドデカニル基、2-デシルテトラデカニル基、2-ドデシルヘキサデカニル基等を例示することができる。
環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~12の炭化水素基としては2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルペンタニル基、1-イソプロピルブチル基、1-イソプロピル-2-メチルプロピル基、1,1-ジエチルプロピル基、1-エチル-1-イソプロピルプロピル基、2-エチル-4-メチルペンチル基、1-プロピル-2,2-ジメチルプロピル基、1,1、2-トリメチル-ペンチル基、1-イソプロピル-3-メチルブチル基、1,2-ジメチル-1-エチルブチル基、1,3-ジメチル-1-エチルブチル基、1-エチル-1-イソプロピル-プロピル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1-メチル-1-エチルペンチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,4―ジメチルヘキシル基、1-エチル-3―メチルペンチル基、1,5―ジメチルヘキシル基、1-エチル-6-メチルヘプチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、1,2-ジメチル-1-イソプロピルプロピル基、3-メチル-1-(2,2-ジメチルエチル)ブチル基、1-イソプロピルヘキシル基、3.5.5-トリメチルヘキシル基、2-イソプロピル-5-メチルヘキシル基、1,5-ジメチル-1-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2,4,5-トリメチルヘプチル基、2,4,6-トリメチルヘプチル基、3,5-ジメチル-1-(2,2-ジメチルエチル)ヘキシル基等を例示することができる。
一般式(II)
Figure 2022133319000012
一般式(III)
Figure 2022133319000013
前記一般式(II)及び(III)において、Aは-O-又は-COO-を表し、R、Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R,R、R、R、Rは同一でも異なっていてもよく、炭素数6~22のアシル基を表す。Xは三価のアルコールからOH基が脱離した基を表す。Yは四価アルコールからOH基が脱離した基を表す。
ここで、R、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基等が例示できる。本発明において、R、Rは水素原子又はメチル基であることが好ましく、特にメチル基であることが好ましい。
一般式(II)及び(III)のR,R、R、R、Rのアシル基の炭素数は12~22、より好ましくは14~20、さらに好ましくは16~20である。
一般式(II)及び(III)のR,R、R、R、Rのアシル基は分岐鎖状であっても直鎖状であってもよいが、好ましくは分岐鎖状である。
また、一般式(II)及び(III)のR,R、R、R、Rが分岐鎖状のアシル基である場合、主鎖の炭素数は、好ましくは9~21、より好ましくは12~20、さらに好ましくは16~18である。
また、一般式(II)及び(III)のR,R、R、R、Rが分岐鎖状のアシル基である場合、分岐の数は好ましくは1~3、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
さらに、一般式(II)及び(III)のR,R、R、R、Rが分岐鎖状のアシル基である場合において、分岐鎖が結合する主鎖の炭素の位置番号は大きいほど好ましい。具体的には、分岐鎖は主鎖端部の炭素から、好ましくは1~3個目の炭素、より好ましくは1又は2個目の炭素、さらに好ましくは1個目の炭素に結合していることが好ましい。
,R、R、R、Rのアシル基は環状構造を含んでいてもよいが、環状構造を含まないことが好ましい。
,R、R、R、Rのアシル基の炭化水素鎖部分は、飽和であっても不飽和であってもよいが、飽和であることが好ましい。
また、R、R、R、R、Rで表される環構造を含まない、分岐を有する炭素数6~22のアシル基としては、2-メチルペンタノイル基、3-メチルペンタノイル基、4-メチルペンタノイル基、2-エチルブタノイル基、2-エチルブタノイル基、2,2-ジメチルブタノイル基、3,3-ジメチルブタノイル基、2-メチルヘキサノイル基、4-メチルヘキサノイル基、5-メチルヘキサノイル基、2,2-ジメチルペンタノイル基、4,4-ジメチルペンタノイル基、2-メチルヘプタノイル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンタノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2,2,3-トリメチルペンタノイル基、2-メチルオクタノイル基、3,3,5-トリメチルヘキサノイル基、2-メチルノナノイル基、4-メチルノナノイル基、8-メチルノナノイル基、4-エチルオクタノイル基、2-エチルオクタノイル基、2-ブチルヘキサノイル基、2-tert-ブチルヘキサノイル基、2,2-ジエチルヘキサノイル基、2,2-ジメチルオクタノイル基、3,7-ジメチルオクタノイル基、ネオデカノイル基、7-メチルデカノイル基、2-メチル-2-エチルオクタノイル基、2-メチルウンデカノイル基、10-メチルウンデカノイル基、2,2ジメチルデカノイル基、2-エチルデカノイル基、2-ブチルオクタノイル基、ジエチルオクタノイル基、2-tert-ブチル-2,2,4-トリメチルペンタノイル基、10-メチルドデカノイル基、3-メチルドデカノイル基、4-メチルドデカノイル基、11-メチルドデカノイル基,10-エチルウンデカノイル基、12-メチルトリデカノイル基、2-ブチルデカノイル基、2-ヘキシルオクタノイル基、2-ブチル-2-エチルオクタノイル基、12-メチルテトラデカノイル基、14-メチルペンタデカノイル基、2-ブチルドデカノイル基、2-ヘキシルデカノイル基、16-メチルヘプタデカノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2-ブチルヘキサデカノイル基、2-ヘキシルドデカノイル基、2,4,10,14-テトラメチルペンタノイル基、18-メチルノナデカノイル基、3,7,11,15-テトラ-メチルヘキサデカノイル基、19-メチルエイコサノイル基等を例示することができる。
また、本発明の好ましい実施の形態では、一般式(II)及び(III)において、R、R、R、R、Rは同一でも異なっていてもよく、分岐を有する、炭素数10~22のアシル基、または、2つ以上の分岐を有する炭素数6~9のアシル基である。
この場合、環状構造を含んでいてもよいが、環状構造を含まない方が好ましい。
このような、好ましい実施の形態におけるR、R、R、R、Rで表される、環構造を含まない、分岐を有する炭素数10~22のアシル基としては、2-メチルノナノイル基、4-メチルノナノイル基、8-メチルノナノイル基、4-エチルオクタノイル基、2-エチルオクタノイル基、2-ブチルヘキサノイル基、2-tert-ブチルヘキサノイル基、2,2-ジエチルヘキサノイル基)、2,2-ジメチルオクタノイル基、3,7-ジメチルオクタノイル基、ネオデカノイル基)、7-メチルデカノイル基、2-メチル-2-エチルオクタノイル基、2-メチルウンデカノイル基、10-メチルウンデカノイル基、2,2ジメチルデカノイル基、2-エチルデカノイル基、2-ブチルオクタノイル基、ジエチルオクタノイル基、2-tert-ブチル-2,2,4-トリメチルペンタノイル基、10-メチルドデカノイル基、3-メチルドデカノイル基、4-メチルドデカノイル基、11-メチルドデカノイル基,10-エチルウンデカノイル基、12-メチルトリデカノイル基、2-ブチルデカノイル基、2-ヘキシルオクタノイル基、2-ブチル-2-エチルオクタノイル基、12-メチルテトラデカノイル基、14-メチルペンタデカノイル基、2-ブチルドデカノイル基、2-ヘキシルデカノイル基、16-メチルヘプタデカノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2-ブチルヘキサデカノイル基、2-ヘキシルドデカノイル基、2,4,10,14-テトラメチルペンタノイル基、18-メチルノナデカノイル基、3,7,11,15-テトラ-メチルヘキサデカノイル基、19-メチルエイコサノイル基等を例示することができる。
また、好ましい実施の形態におけるR、R、R、R、Rで表される、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~9のアシル基としては、2,2-ジメチルブタノイル基、3,3-ジメチルブタノイル基、2,2-ジメチルペンタノイル基、4,4-ジメチルペンタノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2,2,3-トリメチルペンタノイル基、3,5,5-トリメチルヘキサノイル基等を例示することができる。
一般式(II)においてXで表される、三価アルコールから誘導される基は、三価アルコールから、OH基が離脱した基であれば特に限定されないが、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンからなる群から選択される三価アルコールから、OH基が離脱した基が好適に例示できる。
また、一般式(III)においてYで表される、四価アルコールから誘導される基は、四価アルコールから、OH基が離脱した基であれば特に限定されないが、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、D-トレイトール、L-トレイトールからなる群から選択される四価アルコールから、OH基が離脱した基が好適に例示できる。
本発明においては、構成単位IIを含むポリビニル系重合体を微粒子形成ポリビニル系重合体として用いることが特に好ましい。
微粒子形成ポリビニル系重合体は親水性側鎖を有していることが好ましい。
親水性側鎖としては、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基などの親水性官能基若しくはこれを有する側鎖や、-O-、-NH-、-SO-、-CO-NH-などの結合を繰り返し有する重合性の側鎖などが例示できる。
親水性側鎖としては、下に示す一般式(IV)~(VII)で表される置換基を例示することができる。
一般式(IV)
Figure 2022133319000014
(一般式(IV)中R10は水酸基を有していてもよい炭素数2~4のアルキレン基を表し、R11は水素原子、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数1~14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1~12のアシル基を表す。nは6~40の整数を表す。)
また、R10で表されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、2-ヒドロキシプロピレン基、1-ヒドロキシ-2-メチルエチレン基、2-ヒドロキシ-1-メチルエチレン基などが例示できるが、これらのうち、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、より好ましくはエチレン基である。
また、R11で表される基のうち、炭素数6~10の芳香族基としては、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が例示でき;炭素数1~14の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、オクチル基、2-エチルへキシル基、ラウリル基などが好適に例示でき;炭素数1~12のアシル基としては、フォルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ラウロイル基などが好適に例示できる。これらのうち、R11で表される基として好ましくは炭素数1~14の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1~12のアルキル基である。
さらに、一般式(IV)におけるnは6~40の数値範囲である。
一般式(V)
Figure 2022133319000015
一般式(VI)
Figure 2022133319000016
(一般式(VI)中G-O-は還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基を表す。mは2又は3を、lは1~5の整数を表す。)
一般式(VI)で表される置換基において、G-O-で表される還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基の還元糖としては、具体的には、グルコース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボースなどの単糖、マルトース、ラクトース、セロビオース等の2糖、マルトトリオース等の3糖、マルトオリゴ糖等のオリゴ糖からなる群から選択される一種または二種以上が例示されるが、中でも、グルコース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、マルトース、ラクトースセロビオースからなる群から選択される一種または二種以上が好ましく、グルコースが特に好ましい。
一般式(VII)
Figure 2022133319000017
(一般式(VII)中R12はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。)
一般式(VII)の置換基において、R12で表されるアミノ酸残基のアミノ酸としては、通常知られているアミノ酸であれば、特に限定されず、具体的には、グリシン、アラニン、グルタミン、リジン、アルギニン等が例示される。これらのうちでは、得られる微粒子形成ポリビニル系重合体が、皮膚バリアーの回復効果に優れるので、リジン残基が特に好ましい。
また、R12で表されるポリアミン残基におけるポリアミンとは、同一分子内にアルキル基で置換されていても良いアミノ基を2個以上有するアミンを意味し、具体的には、ジアミン、トリアミン、テトラアミン又はこれらのアミノ基の水素原子がアルキル基で置換されているアミンが例示される。これらのうちでは、得られる微粒子形成ポリビニル系重合体を含有する皮膚外用剤の使用感が特に優れることから、ジアミンが好ましく、特に好ましい具体例として、合成する際の原料の入手の容易さから、エチレンジアミン、1,4-ジアミノ-n-ブタン、1,6-ジアミノ-n-ヘキサン等が挙げられる。
さらに、R12で表されるアミノアルコール残基におけるアミノアルコールとは、同一分子内にアルキル基で置換されていても良いアミノ基及びアルコール性の水酸基を有する化合物を意味する。アミノアルコールとしては、通常知られているものであれば、特に限定はされないが、具体例としては、エタノールアミン、トリエチルアミノエタノール等が例示される。
一般式(VII)で表される置換基の塩としては、特に限定はされないが、具体的には、酸部分を塩基で中和した、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等、また、アミノ基部分を酸で中和した、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、炭酸塩等が例示できる。
一般式(VII)で表される置換基、その塩の具体例としては、以下の構造を有する置換基、その塩が好適に例示できる。
Figure 2022133319000018
Figure 2022133319000019
Figure 2022133319000020
Figure 2022133319000021
Figure 2022133319000022
Figure 2022133319000023
微粒子形成ポリビニル系重合体は、上述したように、乳化界面に吸着する微粒子を形成し、上記(A)及び(B)の条件を充足すればよく、上述した親水性側鎖が結合する主鎖骨格の構造は限定されない。
微粒子形成ポリビニル系重合体は、重合性カルボン酸又はその塩から誘導される構成単位を有していても良い。重合性カルボン酸又はその塩としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等が例示できる。これらの中では、重合性が高いことから、アクリル酸、メタクリル酸及びその塩が特に好ましい。微粒子形成ポリビニル系重合体に重合性のカルボン酸の塩から誘導される構成単位を導入する場合は重合性カルボン酸を予め塩となし、重合反応を行っても良いし、重合反応により、重合性カルボン酸から誘導される構成単位を微粒子形成ポリビニル系重合体に誘導した後、塩基により中和して塩となしてもよい。
また、微粒子形成ポリビニル系重合体としては、以下の一般式(VIII)~(XI)で表されるビニル系単量体から誘導される1種又は2種以上の構成単位を含むポリビニル系重合体を好ましく例示することができる。
一般式(VIII)
Figure 2022133319000024
前記一般式(VIII)中、Bは-O-又は-COO-を表し、R13は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R14は水酸基を有していてもよい炭素数2~4のアルキレン基を表し、R15は水素原子、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数1~14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1~12のアシル基を表す。nは6~40の整数を表す。
前記一般式(VIII)中、Bは-O-又は-COO-を表すが、特に好ましくは-COO-である。つまり、アクリル系単量体の形態とすることが好ましい。
前記一般式(VIII)においてR13で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基が例示できる。本発明において、R13は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
また、R14で表されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、2-ヒドロキシプロピレン基、1-ヒドロキシ-2-メチルエチレン基、2-ヒドロキシ-1-メチルエチレン基などが例示できるが、これらのうち、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、より好ましくはエチレン基である。
また、R15で表される基のうち、炭素数6~10の芳香族基としては、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が例示でき;炭素数1~14の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、オクチル基、2-エチルへキシル基、ラウリル基などが好適に例示でき;炭素数1~12のアシル基としては、フォルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ラウロイル基などが好適に例示できる。これらのうち、R15で表される基として好ましくは炭素数1~14の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1~12のアルキル基である。
さらに、一般式(VIII)におけるnは6~40の数値範囲である。
前記一般式(VIII)で表されるモノマーのうち、R14がプロピレン基であるモノマーとして具体的には、ポリプロピレングリコール(9)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(13)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(9)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(13)モノメタクリレート等が挙げられる。なお、括弧内の数字はnを表す。これらのポリマーの多くは市販品として入手可能である。これら市販品としては、具体的には、商品名「ブレンマー」AP-400、AP-550、AP-800、PP-500、PP-800(いずれも日本油脂(株)製)等が例示できる。
前記一般式(VIII)で表されるモノマーのうち、R14がエチレン基であるモノマーとして具体的には、ポリエチレングリコール(10)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(8)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール(23)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(23)モノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(9)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(9)メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(23)メタクリレート、オレイロキシポリエチレングリコール(18)メタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(18)アクリレート、ラウロイロキシポリエチレングリコール(10)メタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(30)モノメタクリレート等が挙げられる。
上述のアクリル系単量体は、対応するポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールモノエステルとアクリル酸又はメタクリル酸のクロライド又は無水物とのエステル化反応により高収率で得ることができる。また、既に市販品も多数存在するので、かかる市販品を利用することも可能である。このような市販品としては、具体的に、商品名ブレンマー、AE-400、PE-350、AME-400、PME-400、PME-1000、ALE-800、PSE-1300等(いずれも日本油脂(株)製)等が例示できる。
一般式(IX)
Figure 2022133319000025
(一般式(IX)中、BはBは-O-又は-COO-を表し、R16は水素原子またはメチル基をあらわす。)
前記一般式(IX)中、Bは-O-又は-COO-を表すが、特に好ましくは-COO-である。つまり、アクリル系単量体の形態とすることが好ましい。
前記一般式(IX)で表されるアクリル系単量体として具体的には、2-アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(APC)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)が挙げられる。これらのモノマーは、例えば、Polymer Journal, Vol22, No.5 記載の以下の方法により、合成が可能である。
<合成法>
2-ブロモエチルホスホリルジクロリドと2-ヒドロキシエチルメタクリレート又は2-ヒドロキシエチルアクリレートとを反応させ、2-メタクリロイルオキシエチル-2‘-ブロモエチルリン酸又は2-アクリロイルオキシエチル-2‘-ブロモエチルリン酸を得た後、これら化合物とトリエチルアミンをメタノール中で反応させる。
一般式(X)
Figure 2022133319000026
(一般式(X)中、Dは-CO-又は置換基が無いことを表し、R17は水素原子またはメチル基を、G-O-は還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基を表す。mは2又は3を、lは1~5の整数を表す。)
前記一般式(X)中、Dは-CO-又は置換基が無いことを表すが、特に好ましくは-CO-である。つまり、アクリル系単量体の形態とすることが好ましい。
一般式(X)で表される親水性モノマーにおいて、G-O-で表される還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基の還元糖としては、具体的には、グルコース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボースなどの単糖、マルトース、ラクトース、セロビオース等の2糖、マルトトリオース等の3糖、マルトオリゴ糖等のオリゴ糖からなる群から選択される一種または二種以上が例示されるが、中でも、グルコース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、マルトース、ラクトースセロビオースからなる群から選択される一種または二種以上が好ましく、グルコースが特に好ましい。また、一般式(X)で表される単量体としては、グルコシルオキシエチルメタクリレート(以下GEMAと省略する。)またはグルコシルオキシエチルアクリレート(以下GEAと省略する。)が好ましい。
一般式(XI)
Figure 2022133319000027
(一般式(XI)中R18は水素原子またはメチル基を、R19はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。)
前記一般式(XI)中、Dは-CO-又は置換基が無いことを表すが、特に好ましくは-CO-である。つまり、アクリル系単量体の形態とすることが好ましい。
一般式(XI)のモノマーにおいて、R19で表されるアミノ酸残基のアミノ酸としては、通常知られているアミノ酸であれば、特に限定されず、具体的には、グリシン、アラニン、グルタミン、リジン、アルギニン等が例示される。これらのうちでは、得られる微粒子形成ポリビニル系重合体が、皮膚バリアーの回復効果に優れるので、リジン残基が特に好ましい。
また、R19で表されるポリアミン残基におけるポリアミンとは、同一分子内にアルキル基で置換されていても良いアミノ基を2個以上有するアミンを意味し、具体的には、ジアミン、トリアミン、テトラアミン又はこれらのアミノ基の水素原子がアルキル基で置換されているアミンが例示される。これらのうちでは、得られる微粒子形成ポリビニル系重合体を含有する皮膚外用剤の使用感が特に優れることから、ジアミンが好ましく、特に好ましい具体例として、合成する際の原料の入手の容易さから、エチレンジアミン、1,4-ジアミノ-n-ブタン、1,6-ジアミノ-n-ヘキサン等が挙げられる。
さらに、R19で表されるアミノアルコール残基におけるアミノアルコールとは、同一分子内にアルキル基で置換されていても良いアミノ基及びアルコール性の水酸基を有する化合物を意味する。アミノアルコールとしては、通常知られているものであれば、特に限定はされないが、具体例としては、エタノールアミン、トリエチルアミノエタノール等が例示される。
一般式(XI)で表される単量体の塩としては、特に限定はされないが、具体的には、酸部分を塩基で中和した、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等、また、アミノ基部分を酸で中和した、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、炭酸塩等が例示できる。微粒子形成ポリビニル系重合体に一般式(XI)で表される単量体の塩から誘導される構成単位を導入する場合は一般式(XI)で表される単量体を予め塩となし、重合反応を行っても良いし、重合反応により、一般式(XI)で表される単量体から誘導される構成単位を微粒子形成ポリビニル系重合体に誘導した後、中和して塩となしてもよい。
一般式(XI)で表される単量体、その塩の具体例としては、以下の構造を有する化合物、その塩が好適に例示できる。
Figure 2022133319000028
Figure 2022133319000029
Figure 2022133319000030
Figure 2022133319000031
Figure 2022133319000032
Figure 2022133319000033
Figure 2022133319000034
Figure 2022133319000035
Figure 2022133319000036
Figure 2022133319000037
Figure 2022133319000038
一般式(XI)で表される単量体は、例えば、下記に示すように(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライドを用いたエステル化反応、アミド化反応により合成可能である。
Figure 2022133319000039
Figure 2022133319000040
(反応式中R18は水素原子またはメチル基を、R19はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。)
上述の通り、微粒子形成ポリビニル系重合体は親水性側鎖を有していることが好ましいが、電離基を有さないことがより好ましい。
電離基を有さないことにより、べたつきにくい乳化組成物とすることができる。
一般的に疎水性の高い界面活性剤は油中水型の乳化組成物の形成に適しており、反対に親水性の高い界面活性剤は水中油型の乳化組成物の形成に適している。本発明における微粒子形成ポリビニル系重合体についても同様に、疎水性構成単位(疎水性側鎖を有する構成単位)の占める割合が高い場合には油中水型の乳化組成物を形成することに適しており、また、親水性構成単位(親水性側鎖を有する構成単位)の占める割合が高い場合には水中油型の乳化組成物を形成することに適している。
このように、疎水性構成単位及び親水性構成単位の占める割合と比率を適宜調整することによって、形成する乳化組成物の乳化形態を調整することができる。
本発明においては微粒子形成ポリビニル系重合体における、疎水性構成単位の全構成単位に占める割合は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは20~50質量%、30~40質量%である。
微粒子形成ポリビニル系重合体における、疎水性構成単位が占める割合を前記範囲とすることによって、べたつき感がより低減された水中油型の乳化組成物を提供することができる。
本発明においては、微粒子形成ポリビニル系重合体における、親水性構成単位の全構成単位に占める割合は、好ましくは50~99質量%、より好ましくは50~80質量%、60~70質量%である。
微粒子形成ポリビニル系重合体における、親水性構成単位が占める割合を前記範囲とすることによって、べたつき感がより低減された水中油型の乳化組成物を提供することができる。
本発明においては、微粒子形成ポリビニル系重合体を構成する、疎水性構成単位と親水性構成単位の質量比は、好ましくは10:90~50:50、より好ましくは20:80~50:50、さらに好ましくは30:70~40:60である。
また、微粒子形成ポリビニル系重合体を構成する、疎水性構成単位と親水性構成単位のモル比は、好ましくは15:85~62:38、より好ましくは29:71~62:38、さらに好ましくは41:59~52:48、さらに好ましくは27:73~38:62、さらに好ましくは44:56~49:51である。
微粒子形成ポリビニル系重合体における疎水性構成単位及び親水性構成単位の質量比及びモル比を前記範囲とすることによって、水中油型の乳化組成物を形成するのに適した、乳化力に優れた微粒子形成ポリビニル系重合体とすることができる。
本発明においては、微粒子形成ポリビニル系重合体の平均分子量は、好ましくは2000~11000、より好ましくは20000~80000、より好ましくは30000~80000、より好ましくは40000~70000、さらに好ましくは50000~70000、さらに好ましくは57000~66000である。
なお、ここで平均分子量とは、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量のことをいう。
本発明の乳化組成物における水相及び油相の含有量は、微粒子形成ポリビニル系重合体における疎水性構成単位及び親水性構成単位の比率を変更することによって適宜調整することが可能である。
乳化組成物全体における微粒子形成ポリビニル系重合体の含有量は、好ましくは0.1~50質量%、より好ましくは0.5~30質量%である。
微粒子形成ポリビニル系重合体の含有量を前記範囲とすることによって、乳化組成物の乳化安定性をより向上させることができる。
本発明の乳化組成物は、微粒子形成ポリビニル系重合体以外の乳化剤を実質的に含まないことが好ましい。
ここで、「微粒子形成ポリビニル系重合体以外の乳化剤を実質的に含まない」とは、微粒子形成ポリビニル系重合体以外の乳化剤の含有量が、0.3%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0.01%以下、さらに好ましくは0.001%以下であることを言う。また、微粒子形成ポリビニル系重合体以外の乳化剤を含まないことが特に好ましい。
以下、上述した水中油型の乳化組成物を形成することに適した比率で疎水性構成単位と親水性構成単位を含む微粒子形成ポリビニル系重合体を使用した場合における油相及び水相の含有量等について説明する。
なお、本明細書においては油相及び油相成分、並びに水相及び水相成分には、本発明における微粒子形成ポリビニル系重合体は含まれないものとして説明する。
本発明の乳化組成物における油相成分の含有量は、好ましくは0.01~80質量%、より好ましくは0.1~70質量%である。
油相成分の含有量を前記範囲とすることによって、乳化組成物の乳化安定性を向上させることができる。
なお、油相成分とは、油剤及び親油性の成分であり、乳化組成物において油相に含まれる成分のことを言う。
本発明の乳化組成物において、上述の微粒子形成ポリビニル系重合体と油相成分の質量比は、好ましくは1:100~1:0.2、より好ましくは1:70~1:0.3である。
微粒子形成ポリビニル系重合体と油相成分の質量比を前記範囲とすることによって、乳化組成物の乳化安定性を向上させることができる。
本発明の乳化組成物において、油相と水相の質量比は、好ましくは0.1:99.9~70:30、より好ましくは1:99~65~35である。
油相と水相の質量比を前記範囲とすることによって、安定な水中油型の乳化組成物を形成することができる。
油相と水相に含まれる成分は特に限定されない。
油相を構成する油剤としては、例えば、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油等を挙げることができる。
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、メドウフォーム油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が挙げられる。
固体油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
ロウ類としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸等が挙げられる。
高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等が挙げられる。
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸スクロース、オレイン酸スクロース、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、パルミチン酸セチル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサンや、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサンなどの環状ポリシロキサン等が挙げられる。
油剤は1種または2種以上を用いることができる。
本発明の乳化組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常化粧料に配合される任意添加成分を配合してもよい。このような添加成分としては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール等の保湿剤;エタノール等の低級アルコール;ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン等の酸化防止剤;安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、ヘキサクロロフェン等の抗菌剤;パラアミノ安息香酸(以下「PABA」と略記)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAメチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABA2-エチルヘキシルエステル等の安息香酸系紫外線吸収剤;ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-1-メチルプロピル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-3-メチルプロピル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルブチル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-トリス(トリメチルシロキシ)シリル-1-メチルプロピル〕-3,4-ジメトキシシンナメート等のシリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸エチルエステル、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3’ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン等の紫外線吸収剤;アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等の有機酸;ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2およびその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15およびその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のビタミン類;γ-オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸およびその誘導体、トラネキサム酸およびその誘導体〔トラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸の二量体(例えば、塩酸トランス-4-(トランス-アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、等)、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体(例えば、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸4’-ヒドロキシフェニルエステル、等)、トラネキサム酸とゲンチシン酸のエステル体(例えば、2-(トランス-4-アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)-5-ヒドロキシ安息香酸およびその塩、等)、トラネキサム酸のアミド体(例えば、トランス-4-アミノメチルシコロヘキサンカルボン酸メチルアミドおよびその塩、トランス-4-(P-メトキシビンゾイル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、トランス-4-グアニジノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、等)〕、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカルプトーン、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、アルブチン、セファランチン、プラセンタエキス等の各種薬剤;ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラ等の植物の抽出物;色素;多孔質および/または吸水性の粉末(例えば、トウモロコシやバレイショ等から得られるスターチ類、無水ケイ酸、タルク、カオリン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、アルギン酸カルシウム等の粉末);中和剤;防腐剤;香料;顔料等が挙げられる。
本発明の乳化組成物は、低刺激であり、べたつきが少ないことから、乳液、クリーム、美容液、日焼け止め、リキッドファンデーション等の化粧料、皮膚外用剤、医薬部外品や医薬品として使用することが好ましい。
<製造方法>
本発明の乳化組成物は、以下に示す水相調製工程と乳化工程を備える製造方法により製造することが好ましい。
水相調製工程では、微粒子形成ポリビニル系重合体を水相に分散させ、ポリビニル系重合体微粒子を形成させる。このとき、乳化組成物が電解質並びに/又は前記(A)及び前記(B)の条件を満たさない高分子(以下、特定任意成分)を含むものである場合には、特定任意成分の非存在下において水相に微粒子形成ポリビニル系重合体を分散させ、ポリビニル系重合体微粒子を形成してから、この水相に特定任意成分を加えることが好ましい。
水相へ特定任意成分を加える方法については限定されず、例えば固形、粉末状の特定任意成分を水相に添加する形態としてもよいし、特定任意成分の水溶液を水相に添加する形態としてもよい。
特定任意成分のうち、電解質としては有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基及びその塩を例示できる。
有機酸としては、クエン酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、リンゴ酸、シュウ酸、乳酸、ホウ酸、アジピン酸等が挙げられる。
無機酸としては、塩酸、リン酸、硫酸、亜硫酸、硝酸等が挙げられる。
また、これらの酸の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩;アミノメチルプロパノール塩などが挙げられる。より具体的には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、ホウ酸、乳酸、乳酸ナトリウム、リンゴ酸、シュウ酸、アジピン酸等が挙げられる。
有機塩基としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-ジメチルアミノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-1,2-プロパンジオール、及びトリス(ヒドロキシメチルアミノ)メタンなどが挙げられる。
無機塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、メタケイ酸ナトリウム、及びメタケイ酸カリウム等を挙げることができる。
またこれら塩基の塩としては、クエン酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩及び酒石酸塩等の有機酸の塩、塩酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、リン酸水素塩及びリン酸塩などの無機酸の塩などが挙げられる。
特定任意成分のうち、前記条件を満たさない高分子としては、ポリオレフィン系重合体、ポリアクリル系重合体、ポリアクリルアミド系重合体、ポリスチレン系重合体等のポリビニル系重合体が例示できる。
上述した好ましい実施の形態の製造方法により製造された、特定任意成分を含む乳化組成物は、乳化安定性や使用感に特に優れる。
乳化工程では、このようにして調製したポリビニル系重合体微粒子を含む水相に、油相成分を添加し、攪拌混合して水相と油相を乳化する。攪拌混合の手法は特に限定されず常法を用いることができる。
本発明の好ましい実施の形態では、水相調製工程において水相に分散させた微粒子形成ポリビニル系重合体が全てポリビニル系重合体微粒子となってから、油相を添加することが好ましい。
なお、上述した製造方法は、(A)及び(B)の条件を満たすポリビニル系重合体以外の乳化組成物を製造する際にも有用である。
例えば、(A)及び上述した(C)の条件を満たすポリビニル系重合体からなる微粒子が乳化界面に吸着している乳化組成物の製造にも応用できる。
つまり、(A)及び上述した(C)の条件を満たすポリビニル系重合体を含み、かつ、電解質並びに/又は前記(A)及び前記(C)の条件を満たさない高分子を含む乳化組成物の製造に応用できる。
この場合、前記電解質並びに/又は前記条件を満たさないポリビニル系重合体の非存在下において水相に微粒子形成ポリビニル系重合体を分散させ、ポリビニル系重合体微粒子を形成してから、この水相に前記電解質並びに/又は前記条件を満たさないポリビニル系重合体を加えて乳化組成物を製造する。
この製造方法により製造された乳化組成物は、乳化安定性や使用感により優れる。
<乳化組成物の使用感の評価方法>
本発明は、高分子が乳化界面に吸着している乳化組成物の評価方法にも関する。
本発明は、高分子が乳化界面に吸着している乳化組成物であれば特段の制限なく評価対象とすることができる。つまり、乳化界面に吸着している高分子の種類は制限されない。
本発明の評価方法は乳化組成物の乾燥塗布膜の形態を判断指標とすることを特徴とする。すなわち、乳化組成物の乾燥塗布膜の表層の90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上が油相で占められているときに、乳化組成物の油相に含まれる油剤の感触に近いと判断する。
乾燥塗布膜の調製方法は特に限定されないが、スライドガラスや樹脂板等の基板上に乳化組成物を塗布して、25℃~50℃環境下で30分~5時間乾燥、より好ましくは30℃~40℃環境下で1~3時間乾燥させる方法を好ましく例示することができる。
塗布の方法も特に限定されず、例えばドクターブレード等の塗布具を用いて基板に塗布することが好ましい。
乾燥塗布膜の観察方法は特に限定されないが、顕微鏡、特に共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いることが好ましい。なお、共焦点レーザー走査顕微鏡で観察する場合には、基板としてスライドガラス等の透明基板を用いることが好ましい。
共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いる場合には、乾燥塗布膜における水相と油相の態様を観察するために、水相と油相のマーカーとなるような蛍光分子を評価対象である乳化組成物に添加する。
言い換えれば、前記蛍光分子を含有する以外は、評価対象である乳化組成物と同等の組成を有する乳化組成物を調製し、これを観察する。
水相のマーカーとなる蛍光分子としては、乳化組成物において水相に局在する蛍光分子であれば特に制限なく用いることができるが、例えばCalceinを挙げることができる。
油相のマーカーとなる蛍光分子としては、乳化組成物において油相に局在する蛍光分子であれば特に制限なく用いることができるが、例えばNileRedを挙げることができる。
このような蛍光分子を含む乾燥塗布膜を共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて観察して、Zスタック画像を生成し、それにより乾燥塗布膜の断面画像を取得する。こうして得られた乾燥塗布膜の断面画像において、塗布膜断面の表層がNileRed由来の蛍光を発する相、すなわち油相により90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上が占められていれば、乳化組成物はより油剤の感触に近いと判断することができる。
言い換えれば、塗布膜の断面における上底の90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上にNileRed由来の蛍光を発する相が接しているように観察されれば、乳化組成物はより油剤の感触に近いと判断することができる。
また、本発明の好ましい実施の形態では、乾燥塗布膜における水相の態様も判断指標とする。すなわち、乾燥塗布膜において、水相が塗布面に接触している場合には、その乳化組成物はより油剤の感触に近いと判断することができる。
この水相の態様についても共焦点レーザー走査顕微鏡で観察することが好ましい。この場合には、乾燥塗布膜の断面画像において、Calcein由来の蛍光を発する相が、スライドガラス等の透明基板上に接しているときに、その乳化組成物はより油剤の感触に近いと判断することができる。
さらには、乾燥塗布膜において、水相が塗布面から上方に向かって延びる線条構造が並列した形態を示す場合には、評価対象の乳化組成物はより油剤の感触に近いと判断することができる。
この水相の形態についても共焦点レーザー走査顕微鏡で観察することが好ましい。この場合には、乾燥塗布膜の断面画像において、水相がスライドガラス等の透明基板から上方に向かって延びる線条構造が並列した形態を示す場合には、評価対象の乳化組成物はより油剤の感触に近いと判断することができる。
言い換えれば、Calcein由来の蛍光を発する相が、塗布膜の断面において、下底を起点として上に向けて延びる複数の凸状の模様を形成している場合には、評価対象の乳化組成物はより油剤の感触に近いと判断することができる。
このとき、断面画像に表れている全ての線条構造のうち、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%が透明基板、つまり、塗布膜の断面の下底に接していることが好ましい。
また、乳化組成物における乳化界面に高分子からなる微粒子が吸着している場合には、乳化安定性及びべたつきにくさに優れていると評価することもできる。
乳化界面に微粒子が吸着しているか否かは、走査型電子顕微鏡により観察することができる。
<乳化組成物の設計方法>
本発明の乳化組成物の設計方法は、第1選択工程と第2選択工程を有する。
第1選択工程は乳化作用のある高分子を選択する工程である。第1選択工程においては、乳化作用を有することが公知である高分子を選択してもよいし、実際に乳化試験を実施することで乳化作用を有する高分子を選択してもよい。
本発明の乳化組成物の設計方法において、高分子乳化剤の候補とする高分子の種類は特に限定されない。
第2選択工程は、第1選択工程で選択された高分子により乳化された乳化組成物の乾燥塗布膜の形態を判断指標とすることを特徴とする。すなわち、該乳化組成物の乾燥塗布膜の表層の90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上が油相で占められているときに、使用した高分子を高分子乳化剤として選択する。
乳化組成物の乾燥塗布膜を観察する方法の実施の形態については、上述した乳化組成物の使用感の評価方法に関する記載を適用することができる。
本発明の好ましい実施の形態では、さらに第3選択工程を有することが好ましい。
すなわち、本発明の好ましい実施の形態では、選択した高分子を用いて乳化組成物を調製し、該高分子からなる微粒子が乳化界面に吸着していることが確認できた場合に、該高分子をより好ましい高分子乳化剤として選択する第3選択工程を有する。
第3選択工程を備えることによって、より油剤に近い感触を有する乳化組成物を設計することができる。
<高分子乳化剤>
本発明は、上述した(A)及び(B)の条件を満たすポリビニル系重合体からなる高分子乳化剤にも関する。本発明の高分子乳化剤の実施の形態については、本発明の乳化組成物に関する説明における記載を適用することができる。
(1)ポリビニル系重合体1の合成
以下の構造を有する親水性単量体と、疎水性単量体を7:3の質量比で共重合させ、ポリビニル系重合体1を合成した。
親水性単量体
Figure 2022133319000041
疎水性単量体
Figure 2022133319000042
(2)ポリビニル系重合体1の物性評価
(2-1)ポリビニル系重合体1の平均分子量
ポリスチレン換算の重量平均分子量をGPCにより測定したところ、ポリビニル系重合体1の平均分子量は61000であった。
(2-2)ポリビニル系重合体1の水溶液の粘度
ポリビニル系重合体1を0.1質量%、0.5質量%及び1.0質量%で含む水溶液をそれぞれ調製した。この水溶液の粘度をB型粘度計(3号ローター、6rpm、1mim、20℃、1気圧)にて測定したところ、何れも2000mPa・S未満であった。また、ポリビニル系重合体1の濃度依存的な増粘効果は観察されなかった。
(3)乳化組成物の調製
ポリビニル系重合体1を水に分散させた(ポリビニル系重合体1:水=1:89)。この水溶液をレーザードップラー法(Zetasizer Nano-Z ZEN3600、Malvern社)を基本原理とした、動的光散乱測定により測定したところ、平均粒子径20nmの微粒子を形成していることを確認した。
微粒子の形成を確認した後、該水溶液にスクワラン、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、ジメチコン(10cP)の4種の油剤をそれぞれ添加し、攪拌・混合することにより、水中油型である4種類の実施例の乳化組成物(ポリビニル系重合体1:油剤:水=1:10:89)を調製した。なお、比較のために油剤:水=10:89の4種の比較例の水中油型の乳化組成物も調製した。
上で調製した合計8種の乳化組成物について油-水界面張力を懸滴法(ペンダント・ドロップ法)により測定した。その結果を下の表1に示す。
Figure 2022133319000043
表1に示すように、何れの油剤により調製された乳化組成物であっても、ポリビニル系重合体1の添加により油-水界面張力の低下が観察された。
この結果と、水にポリビニル系重合体1を分散させた際の動的光散乱測定の結果も併せて考慮すると、ポリビニル系重合体1は微粒子形態で、ファンデルワールス力により油水界面に吸着していることが示唆された。
(4)乳化組成物の評価1
(4-1)電子顕微鏡による観察
上で調製した乳化組成物のうち、油剤としてスクワランを含む実施例の乳化組成物を走査型電子顕微鏡により観察した。電子顕微鏡像を図1に示す。
図1に示すように、実施例の乳化組成物中に分散する油滴の表面には凹凸が観察された。このことから、微粒子状となったポリビニル系重合体1が、実施例の乳化組成物中に分散する油滴の乳化界面に吸着し、その表面全てを覆っていることを確認した。
(4-2)乳化安定性の評価試験(1)
油剤としてスクワランを含む実施例の乳化組成物を常温で2か月間静置した。その結果、乳化物不安定化の指標となる油滴の合一は観察されなかった。この結果は、実施例の乳化組成物が乳化安定性に優れていることを示している。
(4-3)乳化安定性の評価(2)
油剤としてスクワランを含む実施例の乳化組成物にNaClを2%添加し、その乳化状態を観察したが、不安定化することなく、安定な乳化状態を維持した。この結果は、実施例の乳化組成物が、その乳化界面に吸着しているポリビニル系重合体1からなる微粒子の静電反発ではなく立体反発によって、上記(4-2)に示したような乳化安定性を発揮することを示している。
(5)乳化組成物の評価試験2
(5-1)乳化組成物の調製
表2に示す組成の実施例1の乳化組成物を以下の方法により調製した。まず、ポリビニル系重合体1を純水の一部に分散させ、ポリビニル系重合体1からなる微粒子を形成させた。このポリビニル系重合体1の微粒子の分散液と、残りの水相成分を混合し、水相を調製した。この水相を油相成分と混合攪拌し、水中油型である実施例1の乳化組成物を調製した。
Figure 2022133319000044
表3に示す組成の水中油型である比較例の乳化組成物を調製した。
Figure 2022133319000045
(5-2)乳化組成物の断面の観察
実施例1と比較例の乳化組成物をドクターブレード(0.01inch)を用いてスライドガラスに塗布した。これを35℃環境下で2時間置き、塗布膜を乾燥させた。
こうして得た乾燥塗布膜を共焦点レーザー走査顕微鏡(Carl Zeiss社製)で観察し、Zスタック画像を取得して乾燥塗布膜の断面画像を取得した(図2~5)。
なお、共焦点レーザー走査顕微鏡による観察条件は、以下のとおりである。
Calcein:励起波長488nm、観察波長505~550nm
NileRed:励起波長561nm、観察波長575nm~
図2に示すように、実施例1の乳化組成物の乾燥塗布膜の表層は、NileRed由来の蛍光を発する相で全て占められている。つまり、実施例1の乳化組成物の乾燥塗布膜においては、その表面に油相が多量に露出している。
また、図2に示すように、実施例1の乳化組成物の乾燥塗布膜においては、Calcein由来の蛍光を発する相がスライドガラスに接している。より具体的には、Calcein由来の蛍光を発する相が、上下方向に延びる線条構造が並列した形態を示し、何れの線条構造もスライドガラスに接触している。
つまり、実施例1の乳化組成物の乾燥塗布膜においては、ポリビニル系重合体1を含む水相が塗布面に吸着している。
一方、図3に示すように比較例1の乾燥塗布膜においては、NileRed由来の蛍光を発する相とCalcein由来の蛍光を発する相が互いに入り乱れている。そして、NileRed由来の蛍光を発する相が表層を構成している部分は極めて少なく、ほとんどCalcein由来の蛍光を発する相が表層を構成している。
つまり、比較例2の乳化組成物の乾燥塗布膜では、その厚み方向において水相と油相が入り乱れており、部分的にしか油相が表面に露出していない。
また、図4に示すように、比較例2の乳化組成物の乾燥塗布膜においては、NileRed由来の蛍光を発する相は、全領域に渡ってスライドガラスに接触しており、表層を構成している部分はわずかである。
つまり、比較例2の乳化組成物の乾燥塗布膜では、油相は塗布面に吸着しており、部分的にしか塗布膜の表面に露出していない。
図5に示すように、比較例3の乳化組成物の乾燥塗布膜においては、NileRed由来の蛍光を発する相がスライドガラス側、Calcein由来の蛍光を発する相が表層側にほぼ均一に分離している。
つまり、比較例3の乳化組成物の乾燥塗布膜では、油相は塗布面に吸着しており、ほぼ表面に露出していない。
(5-3)乳化組成物の感触の評価1
実施例及び比較例の乳化組成物の塗布膜の感触を以下の方法により評価した。まず、実施例1と比較例の乳化組成物をドクターブレード(0.01inch)を用いて人工皮革上に塗布した。これを35℃環境下で2時間置き、塗布膜を乾燥させた。
この乾燥塗布膜の感触をMIU(平均摩擦係数)とMMU(平均摩擦係数の均一性)によって定量的に評価した。MIUとMMUは、摩擦計(カトーテック製、KES-SE法)を用いて、以下の測定条件により測定した。
(測定条件)感度:High、静荷重:50g、プローブ移動速度:10mm/sec
このとき、比較対象として、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリルとリンゴ酸ジイソステアリルの2種類の油剤をドクターブレード(0.01inch)を用いて人工皮革上に塗布して形成した塗布膜、並びにコーヒーフィルター、コピー用紙及びシルク生地についても同測定を行った。
縦軸にMMU、横軸にMIUをプロットした図を図6に示す。図6に示すように、油剤であるトリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリルの塗布膜は、比較的シルク生地に近い感触であることが分かった。
一方、比較例1~3の乳化組成物の乾燥塗布膜は、同油剤を油相に含むにも関わらず、シルク生地の感触からは離れた感触を示した(図6)。
しかし、図6に示すように、同じくトリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリルを含む実施例1の乳化組成物の乾燥塗布膜は、シルク生地に非常に近接した感触を発揮する。
この結果は、実施例1の乳化組成物は、油相に含まれる油剤本来の感触を発揮することを示している。
(5-3)乳化組成物の感触の評価2
熟練した評価者4名に実施例1と比較例3の乳化組成物を肌に塗布してもらい、その感触について比較評価させた。
その結果、評価者全員が実施例1の乳化組成物の方がみずみずしさを感じると評価した。また、評価者4名中3名が、実施例1の乳化組成物の方がべたつかず、かつ、シルク生地のような感触感じると評価した。
(6)製造方法の評価
実施例1の乳化組成物と組成は同一であるが、製造方法が異なる乳化組成物を種々製造した。すなわち、電解質、ポリビニル系重合体又はこれら両方の存在下で、水相にポリビニル系重合体1を分散させ水相を調製してから、油相と混合攪拌し、比較例の乳化組成物を調製した。
その結果、同一の組成を有するにも関わらず、実施例1の乳化組成物は、何れの比較例の乳化組成物と比較しても、乳化安定性、塗布膜の感触において優れていた。
(7)まとめ
実施例の乳化組成物は、油相に含まれる油剤本来の感触を発揮する(上記(5-3)参照)。これは、上記(5-2)で示したように、実施例の乳化組成物の乾燥塗布膜においては油相が表面に多量に露出していることによる効果であるといえる。
ところで、従来の高分子乳化剤は、水溶液の形態としたときに高い粘性を示す。そのため、従来の高分子乳化剤による乳化組成物は、高い安定性を実現しようとすると、べたつきが生じるという問題があった。
一方、ポリビニル系重合体1は上記(2-2)に示すように低粘性であり、これにより乳化された本実施例1の乳化組成物も、低粘性であり、べたつきにくいものであった(上記(4-3)参照)。それにも関わらず、本実施例1の乳化組成物は、高い乳化安定性を有していた(上記(4-2)、(4-3)参照)。
また、上記(3)に示す通り、ポリビニル系重合体1は水への分散状態において粒子状態をとっており、かつ、微粒子形態でファンデルワールス力により油水界面に吸着していることが示唆された。上記(4-1)に示す通り、乳化組成物中に分散する油滴の表面には凹凸が観察された結果も併せて考慮すると、実施例1の乳化組成物の乳化界面にはポリビニル系重合体1が微粒子状で吸着していることがわかる。
これらの結果は、本明細書において説明した(A)及び(B)の条件を満たすポリビニル系重合体が乳化界面に吸着している乳化組成物は、べたつきが少ないながらも高い乳化安定性を有し、油相に含まれる油剤本来の感触を発揮することを示している。
本発明は乳化化粧料に応用することができる。


Claims (3)

  1. 高分子が乳化界面に吸着している乳化組成物の評価方法であって、該乳化組成物の乾燥塗布膜の表層の90%以上が油相で占められているときに、該乳化組成物の油相に含まれる油剤の感触に近いと判断することを特徴とする、乳化組成物の使用感の評価方法。
  2. 前記乾燥塗布膜において、水相が塗布面に接しているときに、さらに該乳化組成物の油相に含まれる油剤の感触に近いと判断することを特徴とする、請求項1に記載の乳化組成物の使用感の評価方法。
  3. 乳化作用のある高分子を選択する第1選択工程と、
    第1選択工程で選択した高分子により乳化された乳化組成物の乾燥塗布膜を観察し、その表層の90%以上が油相で占められているときに、該高分子を高分子乳化剤として選択する第2選択工程と、を有することを特徴とする、乳化組成物の設計方法。

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