JP2022129122A - 画像記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】液体の残量の検出精度を向上させる技術を提供する。【解決手段】記録素子基板からインク液滴を吐出し、記録材への画像形成を行う液体吐出カートリッジユニットであって、画像の記録に用いる液体を貯蔵する液室と、液室内に挿入される第1の電極ピン及び第2の電極ピンを備える液体吐出カートリッジユニットと、第1の電極ピンと第2の電極ピンとの間に電圧を印加する印加手段と、印加手段より電圧がかかる検出抵抗を備え、第1の電極ピンと第2の電極ピンの間の電圧値又は電流値を検知する検知手段を備え、印加手段が第1の電極ピンと第2の電極ピンの間に電圧を印加した時、検知手段が電圧値又は、電流値を検知し、液室内の液体残量を検出する画像記録装置において、液室内の液体量が所定量より少ないか判定する判定閾値、印加電圧値、検出抵抗値のうち、少なくとも1つを電圧の累計印加時間に基づき、逐時設定する画像記録装置。【選択図】図6

Description

本発明は、インク等の液体を記録媒体へ吐出して画像の記録を行う画像記録装置に関する。
従来、紙等の記録媒体に対して画像記録を行う手段として、液体吐出カートリッジユニットを搭載した種々の記録方式が提案されており、例えば熱転写方式、ワイヤードット方式、感熱方式、インクジェット方式などが実用化されている。中でもインクジェット方式はランニングコストが安く、記録音が抑えられる記録方式として注目され、幅広い分野で使用されている。
インクジェット方式は、液体吐出カートリッジユニットが具備する記録素子基板を駆動することにより、記録素子基板の表面にノズル部材により形成されるインク吐出口からインク液滴を吐出する。このインク液滴を紙面上の所望の位置に着弾させることによって画像形成を行う画像記録方式である。
インクジェット方式の多くの場合、記録素子基板を駆動する信号や電源は、液体吐出カートリッジユニットが搭載される画像記録装置から電気接続部を通じて液体吐出カートリッジユニットへ供給される。
画像形成に用いられるインク等の液体の液体吐出カートリッジユニットへの供給形態は種々の構成が見られる。ある代表的な一形態では、液体吐出カートリッジユニットとは別体の、液体収容室を有するインクタンクを液体吐出カートリッジユニットへ直接接続することにより、インクタンク内の液体を液体吐出カートリッジユニットへ供給する。また、画像記録装置内にセットされるインクタンクからインク供給チューブを介して液体吐出カートリッジへ液体を供給するチューブ供給方式も実用化されている。チューブ供給方式の場合、液体吐出カートリッジユニットにはサブタンクが設けられ、インク供給チューブより供給される液体をサブタンク内に一時的に保持し、記録素子基板へと液体供給する構成が一般的である。
上記のいずれの方式にしても、液体供給元から供給される液体は液体吐出カートリッジ内に導かれ、液体吐出カートリッジユニットの筐体内に形成される液体供給流路を通じて、記録素子基板へと導かれる。
画像記録装置には供給元の液体残量を把握する機能が必要とされる。その代表的な目的は次の二点にある。一つ目の目的は、ユーザーに供給元の液体残量が少なくなった際にその旨を表示し、インクタンクの交換や液体注入などを促すことにある。また二つ目の目的は、液体が空となった状態で吐出動作を実行した場合に生じる可能性があるノズル部材の破壊などを抑制するために、分割印字などの印字制御のトリガーにすることにある。
液体残量の検出方法としては、これまで種々の方式が提案されている。液体吐出発数から液体残量を算出するドットカウント方式や、液体収容室に光を照射し、センサで反射光レベルを取得して判定するプリズム方式、液体収容室に電極ピンを挿入し電気応答を得るピン残量検出方式などが提案されてきた。上記のうち、ピン残量検出方式は導入に伴うコストが比較的に安く、かつ検出精度が高いことから、これまで広く実施されてきている。
従来より採用されてきた一般的なピン残量検出方式では、液体収容室内に挿入した2本
の電極ピンに対し、電気信号を印加し液体残量検出を行ってきた。インク等の液体は電気を通す性質のものが大半のため、液体収容室内に液体がある場合(2本の電極ピンが液体と接触している状態)には、電極ピンに電気信号が印加されると、液体を介して電極ピン間に電流が流れる。一方、液体がない場合(2本の電極ピンがインクと非接触の状態)には、電極ピン間に電気経路がない状態となるため、電流は流れない。
このような特性を踏まえ、電極ピン間に電気信号を与え、電気的な応答を得ることでインクの有無を判定する構成が採用されてきた(特許文献1)。
特開2015-223830号公報
しかしながら、特許文献1に記載の構成においては、以下のような問題を生じる可能性がある。
電極ピンの材料には、金属のSUS材などが主に用いられるが、2本の電極ピンの一方を陽極側、他方を陰極側とし、電極ピン間に液体が介在する状態で一方向に電流を流す動作を繰り返すと、電極ピンの表面には金属の酸化・還元反応が生じることがある。すなわち、陽極側の電極ピン表面は酸化が進行し、陰極側の電極ピン表面は還元が進行していく。上記反応が進んでいくと、陽極側の電極ピンが酸化した影響により電気抵抗が増すため、液体がある状態にも関わらず電極ピン間に流れる電流値が減少していってしまう。その場合には、液体がある場合の応答と、液体がない場合の応答の差分が少なくなり、液体残量の検出精度が低下してしまう懸念がある。
液体残量の検出精度が低下すると、あるケースでは、液体がある状態にも関わらずユーザーにインクタンクの交換を促したり、分割印字モードとなり印字速度の低下を招いたりする可能性がある。また別のケースでは、液体がない状態にも関わらず、その旨の表示がされずに空吐印字(液体を吐出しないで印字動作をしている状態)し、ノズル部材の破壊に至ってしまう可能性がある。このように、液体残量の検出精度の低下は、ユーザビリティや信頼性の観点より好ましくない。
本発明の目的は、液体の残量の検出精度を向上させることができる技術を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明の画像記録装置は、
記録素子基板からインク液滴を吐出し、記録材への画像形成を行う液体吐出カートリッジユニットであって、
画像の記録に用いる液体を貯蔵する液室と、
前記液室内に挿入される第1の電極ピン及び第2の電極ピンと、
を備える液体吐出カートリッジユニットと、
前記第1の電極ピンと前記第2の電極ピンとの間に電圧を印加する印加手段と、
前記印加手段により電圧がかかる検出抵抗を備え、前記第1の電極ピンと前記第2の電極ピンとの間の電圧値または電流値を検知する検知手段と、
を備え、
前記印加手段が前記第1の電極ピンと前記第2の電極ピンとの間に電圧を印加したときに、前記検知手段が前記電圧値または前記電流値を検知することで、前記液室内の液体の
残量を検出する検出動作を行うことが可能な画像記録装置において、
前記液室内の液体量が所定量より少なくなっているか否かを判定するための判定閾値、前記印加手段による印加電圧値、もしくは、前記検出抵抗の検出抵抗値のうち、少なくとも1つを、前記電圧の累計印加時間に基づいて、逐時設定することを特徴とする。
本発明によれば、液体の残量の検出精度を向上させることができる。
画像記録装置の模式図 液体吐出カートリッジユニットの構成説明図 インク残量検出システムの回路図 インク残量検出の入力信号および出力信号の例を示す図 第1の電極ピン(陽極側)が酸化後の出力信号の例を示す図 実施例1における電極ピン酸化影響を示す図 実施例2における電極ピン酸化影響を示す図 実施例3における電極ピン酸化影響を示す図 実施例4における電極ピン酸化影響を示す図 実施例4における電極ピン酸化影響を示す図 実施例4における電極ピン酸化影響を示す図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
<実施例1>
図1は、本発明の実施例に係る画像記録装置1および液体吐出カートリッジユニット2の簡易模式図である。図1(a)と図1(b)は液体吐出カートリッジユニット2へのインク供給方式が異なるが、本発明はそれぞれの構成にて実施し得る。
図1(a)はオンキャリッジインクタンク方式の構成である。画像記録に使用される液体としてのインクを収容・貯蔵しているインクタンク3を、インク吐出機能を有する液体吐出カートリッジユニット2に直接接続し、インク供給を行う。なお、インクタンク3は、液体吐出カートリッジユニット2に対して、着脱可能な構造である。一方、図1(b)は、チューブ供給方式の構成であり、画像記録装置内に配置されるインクタンク3からインク供給チューブ4(液体供給チューブ)を介して液体吐出カートリッジユニット2へ液体としてのインクを供給(液体供給)するものである。
図1のいずれの方式においても、液体吐出カートリッジユニット2へのインク供給が途切れる場合の検出動作が必要となる。そして、インク残量検出の主な目的は次の2つにある。第一に、インクタンク3内のインクが空となった旨をユーザーに表示し、インクタンク3の交換、もしくはインクのリフィルを促すために用いられる。第二に、液体吐出カートリッジユニット2にインクがない状態で吐出動作されることを事前に検知し、印字停止や分割印字などの印字制御のトリガーとすることで、空吐時に最悪の場合に生じえるノズル部材の破壊などを抑制するために用いられる。特に、図1(b)に示すようなチューブ供給方式の構成においては、インクタンク3にはインクが残っていても、長期間の放置などによりインク供給チューブ4を透過してインク供給流路内に空気が入り込んでしまう場
合がある。この場合に発生する空吐も検知するために、本実施例では液体吐出カートリッジユニット2内にインク残量を検知する構成を備えている。
図2に、内部にインク残量検出機能を有する液体吐出カートリッジユニット2の詳細構成を示す。図2(a)は、液体吐出カートリッジユニットの斜視図、図2(b)は、液体吐出カートリッジユニットの横断面図である。液体吐出カートリッジユニット2は、ヘッドユニット5とサブタンク6が結合されたユニットである。インクタンク3もしくはインク供給チューブ4より供給されるインクは、インク色数分それぞれ独立してサブタンク6に設けられるジョイント部7より液体吐出カートリッジユニット2内に流入される。サブタンク6にはサブタンク液室8が形成されており、供給されるインクはサブタンク液室8に一時的に保持、貯蔵され、その後ヘッドユニット5の筐体内に形成されるインク供給流路を通じて記録素子基板9へと導かれる。そして、インク供給流路を通ってきたインクのインク液滴が記録素子基板9から吐出され、記録材への画像形成がなされる。
各サブタンク液室8には、液室内のインク有無を検出するため、陽極に相当する第1の電極ピンと陰極に相当する第2の電極ピンの2本の電極ピン10がそれぞれ挿入される。電極ピン10の材料は、コスト面・加工性を踏まえて本実施例ではSUS304とするが、SUS316、SUS384等、その他金属材料であってもよい。挿入される電極ピン10は、サブタンク液室8内に突出する一端とは反対側の端において、電気接続部材11と接点を取り、電気接続部材11を介して画像記録装置1は電気的に接続される。
図3に、電極ピン10によりインク残量を検出するシステム構成を簡易的に示す。残量検出を行う信号は画像記録装置1の入力ポート12より入力される。入力された信号は、残量検出するインク数だけ分岐され、各々検出抵抗13を介して液体吐出カートリッジユニット2の各サブタンク液室8内に設けられる陽極側の電極ピン10aと接続される。また各サブタンク液室8に設けられる陰極側の電極ピン10bは、液体吐出カートリッジユニット2内でショートされ、画像記録装置1のGND端子と接続される。一方、残量検出出力の出力ポート14は、検出抵抗13と陽極側の電極ピン10aの間に接続され、検出を行うインク色数分だけ設けられる。
上述の構成は、すなわち検出抵抗13とインクの電気抵抗Rの分圧比を出力として、画像記録装置1の電流検知部15が検出し、画像記録装置1の動作を制御する制御部17に送信するものである。制御部17は、電圧印加手段として、画像記録装置1が接続された商用電力16を電力供給源とする電源回路を制御し、電気信号として電極ピン10a、10b間に印加させる電圧の大きさ、極性を任意に制御することができる。制御部17は、かかる電源回路に接続された電流検知手段としての電流検知部15が検知する電流値により電極ピン10a、10b間の電圧を取得し、その大きさにより各サブタンク液室8内のインク残量を検出することができる。以上の構成が、本実施例の画像記録装置1における液体残量検出機構をなす。
サブタンク液室8内にインクが存在しない場合、陽極・陰極の電極ピン10間は電気的にはオープンな状態となるため、液体吐出カートリッジユニット2側には電流は流れない。そのため、出力ポート14にて入力信号に近い電圧が検出される。一方、サブタンク液室8内にインクが存在する場合、陽極・陰極の電極ピン10はインクを介して電気的に接続されるため、液体吐出カートリッジユニット2側にも電流が流れることとなる。そのため、出力ポート14で検出される信号は、入力信号に対して低い電圧レベルの出力となる。なお、本発明の実施例においては入力信号に対し電圧値を検出し判定するものとしているが、電流値を検出し判定してもよい。
図4に、上述の出力レベルについて、従来の検出システムの例に示す。従来より採用さ
れてきた残量検出構成においては、入力ポート12より入力される残量検出信号には、図4(a)に示すように、2発の3.3Vの矩形パルスを用いている。出力ポート14側では、2発目のパルスの入力直前の出力「Val(Min)」と、2発目のパルスの立ち下げ直前の出力「Val(Max)」を取得し、残量検出出力(OutputVal)=「Val(Max)-Val(Min)」として検出を行う。
インクがある場合には、図4(b)に示すように残量検出出力は一例では0.2V~0.6V程度と低い出力になるのに対し、インクがない場合には、図4(c)に示すように2.0V~3.3V程度の出力となる。
図4(d)サブタンク液室8内のインク残量(液体量)と残量検出出力の推移について図示する。インクが電極ピン10に接触する水位の中でインクが消費されていくと(水位h(A)→h(B)→h(C))、残量検出出力はa1→b1→c1となだらかな勾配を持って変化していく。そしてインク水位が電極ピン10を離れると、残量検出出力の出力変化の勾配は大きくなる。ただし、インク水位が電極ピン10から離れても、電極ピン10間にメニスカスで残留するインクや泡などにより、デジタル的に推移するのではなく、高い勾配をもって出力が推移する。
インク残量の残量検出においては、インク水位h(C)とh(Emp)の間の出力値、すなわちc1~V_Empの間にインク液体量が所定量より少ないか否かを判断する判定閾値Vthを設ける方法が一般的である。そうすることにより、インク液面が電極ピン10の先端を下回ってから空になるまでの間に残量検出出力の値が判定閾値を超えて、インクを補充する時期を検出することが可能となる。
インク残量に対する残量検出出力の出力値が不変であれば、上述の通りに閾値を設定すれば精度よく検出することは可能である。しかし、電極ピン10にSUS材(SUS304)などの金属材料を用い、インクを介して電極ピン10間に一方向に電流を流す動作を繰り返していくと、電極ピン10の表面には金属の酸化・還元反応が生じることがある。酸化・還元反応とはすなわち、陽極側の電極ピン10a表面は酸化が進行し、陰極側の電極ピン10b表面は還元が進行していく現象である。上記反応が進んでいくと、陽極側の電極ピン10aが酸化した影響により電気抵抗が増すため、インクがある状態にも関わらず電極ピン10間に流れる電流値が減少し、残量検出出力が上昇していってしまう。
上記のような、電極ピン10の酸化・還元反応による残留検出出力への影響を説明するため、図5に、初期=酸化・還元前(ini)状態と電極ピン10酸化・還元後(used)状態の出力の変化を示す。初期(ini)状態では、インク液面がピン先端h(C)~空の状態h(Emp)の間の残量検出出力であるc1~V_Empの間に判定閾値を設定すれば、所望の残量での残量検出が可能であった。それが電圧を印加している時間の累計である累計印加時間が増えるに伴い、陽極側の電極ピン10aに酸化が生じると、残量検出出力の出力値が大幅に上昇してしまう。判定閾値を一定に設定する場合には、実際にインク補充が必要な時期よりも早く、残量検出出力の出力値が判定閾値を超えて、検出されてしまうことがあり得る。この現象は、インクがピンに十分に浸漬された状態で、インク補充の推奨される時期ではないにもかかわらず、残量検出出力の出力値が判定閾値を超えて、検出されてしまうことを示す。早期に残量検出出力の出力値が判定閾値を超えて検出してしまうと、まだ十分にインクが残っているにも関わらず、ユーザーにインクタンク3の交換を促してしまったり、頻繁に印字速度を低下させてしまったりと、弊害を生じることになる。電極ピン10に与えたパルスの回数に応じて判定閾値を変動させることも可能であるが、電極ピン10の個体差により酸化による出力変動分のバラツキを有するため、高い検出精度を得ることが難しくなる。
以上の状況を踏まえ、電極ピン10がパルス印加により酸化・還元してしまった場合、高精度にインク残量を検出するための構成について、図6を用いて説明する。前述の通り、電極ピン10へのパルス印加により電極ピン10が酸化・還元が進行すると、あるインク残量に対して、残量検出出力が「ini」から「used」のように値が増加してしまう。この状況で、インク残量検出出力の判定閾値を初期値「Vth(Ini)」のまま一定とすると、電極ピン10の酸化・還元後の出力「used」では、インク残量がまだ十分にある状態でも判定閾値「Vth(Ini)」を超えて検出してしまう問題を生じる。それを回避するため、本実施例では、図6(a)のように、判定閾値を「Vth(Ini)」→「Vth(used)」のように変化させる構成を採用している。例えば、印加されるパルスの発数や累計印加時間に応じて、想定される残量検出出力の増加分だけ判定閾値「Vth(used)」をオフセットさせる特徴を有することで、電極ピン10の酸化・還元の進行度に応じた適正な判定閾値を設定することが可能となる。すなわち、酸化・還元の影響をキャンセルした高精度な残量検出を実施することができる。
電極ピン10の酸化・還元の進行度はインク種によっても異なるため、残量検出出力の判定閾値のオフセット量はインク種毎にそれぞれ設定することで、より高精度な検出が可能となる。
また、液体吐出カートリッジユニットが初めて使用される時、液室へインクを補充する液体リフィル時など、液室がインクで満たされた状態(所定量以上あるとき)に、最初に残量検出出力を取得してもよい。そうすることで、使用開始時からの残量検出出力の差分値を電極ピン10の酸化影響分として、判定閾値のオフセット量とすることが可能になる。
本実施例において、上述した判定閾値は、入力ポート12からの入力信号の一定の印加回数毎、もしくは一定の期間毎に設定更新が行われる。すなわち、判定閾値の逐次設定更新を行う。そこで、判定閾値の設定更新について、図6(b)を用いて説明する。図6(b)には、残量検出信号の累計印加回数を横軸、電極ピン10の酸化影響による残量検出出力の変化を縦軸に示す。なお、累計印加回数が増えると累計印加時間も同様に増えていく。図6(b)に示すとおり、残量検出出力は、電圧を印加開始後、初期のT1の期間(第1の期間)に大きく増加し、その後のT2の期間(第2の期間)は次第に緩やかな変化に遷移する。これは、電極ピン10の表面が一定量酸化すると、酸化が飽和するためである。このように、電極ピン10の酸化は、T1期間とT2期間で進み方が異なる特性により、判定閾値は累計印加回数に応じて変化させることが有効である。すなわち、上述の判定閾値を変化させる設定更新頻度は、酸化進行期(T1)は高頻度に、酸化安定期(T2)は低頻度に可変としてもよい。例えば、酸化進行期(T1)では0.1E+05パルス毎に、酸化安定期(T2)では1E+05パルス毎というように、残量検出出力の判定閾値を逐時設定更新させるように変化してもよい。
残量を検出する対象であるインクについては、様々な種類のものがあり得るが、画像性能や材料コスト面等を考慮し、本実施例では自己分散型顔料のうち、カルボン酸型自己分散CB(自己分散カーボンブラック)を用いたインクを採用するものとする。上記インクは、入力ポート12からの電圧の印加で、電極ピン10aの酸化現象により残量検出出力の値が顕著に上昇する傾向を有する。その場合に、本発明の実施効果は大きく、インク種を選ばずに残量検出の精度を得ることができる。一方で、その他のインクの場合においても酸化現象は生じるため、本発明の構成を適用することにより、同様に残量検出の精度を向上する効果を得ることができる。
以上の通り、実施例1によれば、電極ピン10の酸化作用の生じやすい金属材料(SUS304、SUS384、SUS316等)や、酸化作用を生じやすいインクを採用した
場合にも、高精度なインク残量検出を実施することができる。
なお、チューブ供給方式のインク供給を行う形態においては、長期放置により空気がチューブを透過して入り込んだり、供給経路内にイレギュラーに空気が内在したりして、吐出に影響が出る場合等があり得る。上記のような、吐出への影響を検知し空吐を抑制するためにも、インク残量検出を高精度に行うことができる本発明の構成は有効である。
本実施例では、液体吐出カートリッジユニット2内のインク残量の検出に適用したが、インクタンク3内や、その他インク供給経路内のインク残量の検出にも適用可能である。特に、インク供給チューブ4やサブタンク6内など、狭空間でインク残量の検出を行う場合には、インク液の液面と電極ピン10先端に距離を設けることができず、より高い検出精度が求められる。すなわち、電極ピン10の酸化により残量検出出力の変動を生じると、インク残量を正確に判断することが困難になってしまうため、本発明を実施することはより有効である。
<実施例2>
図7には、実施例2における構成、残量検出出力を示す。ここでは、実施例1と異なる点のみを説明する。以下の残量検出出力における目的は、実施例1で記述したものと同じく、入力ポート12からの電圧の印加により陽極側の電極ピン10aが酸化した場合に、インク残量の残量検出を高精度に行うことにある。
本実施例では、図7のように検出抵抗13の検出抵抗値を変更する構成としている。残量検出出力の出力値Val[V]は、検出抵抗13とインクの電気抵抗Rの分圧比により検出しているため、検出抵抗13の検出抵抗値を変更することで、インクの電気抵抗Rの変化分に対する残量検出出力を調整することが可能である。これを活用し、電極ピン10の酸化進行に応じて検出抵抗13の検出抵抗値を変更し電極ピン10の検出感度を上げることで、酸化による残量検出出力の変化による影響を抑制することが可能となる。例えば、電極ピン10の酸化進行に応じて、検出抵抗13の検出抵抗値を上げると、抵抗の分圧比により残量検出出力の出力値Val[V]が、下がることになり、陽極側の電極ピン10aの酸化影響分を調整することができる。本実施例においても、図6(b)に示すように、検出抵抗13の検出抵抗値の設定更新頻度は、酸化進行期(T1)は高頻度に、酸化安定期(T2)は低頻度に可変としてもよい。
<実施例3>
図8には、実施例3における構成、残量検出出力を示す。実施例1では、電極ピン10aの酸化進行に従い、判定閾値Vthを変化させる構成を示した。この構成は、電極ピン10の酸化により残量検出出力が変動してしまうことで起こる誤検知に対して、判定閾値Vthを変化させることで抑制している。しかし、一方で、電極ピン10の酸化後には、インクあり時とインクなし時の残量検出出力の出力値の差が少なくなり、残量検出出力の値が判定閾値Vthを超えるかどうか検出することが難しくなっていく。特に、図8における横軸の水位Cから水位0に変化していくときの残量検出出力の出力値の差は、電極ピン10aが酸化後の状態だと少なく、判定閾値Vthを超えるかどうか検出することが難しい。
そのため、対策として、本実施例では図8に示すように判定閾値Vthを可変とするだけでなく、入力ポート12より印加される印加電圧値Vinも電極ピン10の酸化進行に応じて変更可能な構成としている。本構成によれば、電極ピン10の酸化により残量検出出力が上昇した場合にも、印加電圧値Vinを上げることでインクあり時とインクなし時の残量検出出力の出力値の差を拡大できる。これにより、電極ピン10が酸化後であっても高精度な検出を維持することができる。なお、本実施例においても、図6(b)に示す
ように、判定閾値Vthおよび印加電圧値Vinの設定更新頻度は、酸化進行期(T1)は高頻度に、酸化安定期(T2)は低頻度に可変としてもよい。
なお、本実施例においては、判定閾値Vthと印加電圧値Vinを共に変化させているが、判定閾値Vthを変化させず、印加電圧値Vinのみを変化させてもよい。これは、判定閾値Vthを変化させない場合でも、酸化後の電極ピン10のインクあり時とインクなし時の残量検出出力の出力値の差を拡大することにより、高精度な検出を行えるためである。
<実施例4>
図9A、図9B、図9Cには、本発明の実施例4による構成、残量検出出力を示す。図9Aでは、判定閾値Vthを可変とするだけでなく、検出抵抗13の検出抵抗値を変更できる構成を示す。この構成では、電極ピン10の酸化状態に応じて、検出抵抗13の検出抵抗値を変更し、残量検出出力の値を調整するとともに、判定閾値Vthを適正な値に設定可能である。この構成によって、電極ピン10の検出感度の低下を抑制することが可能となり、残量検出出力の値が上昇するのを抑えることで、判定閾値Vthの調整分(オフセット量)も少なく抑えられ、高精度な検出を維持することができる。
次に、図9Bでは、検出抵抗13の検出抵抗値と印加電圧値Vinを変更できる構成を示す。この構成では、検出抵抗13の検出抵抗値を、電極ピン10の酸化進行度合いに応じて調整することと、印加電圧値Vinを上げることで、酸化後の電極ピン10のインクあり時とインクなし時の残量検出出力の値の差を拡大することを行う。これによって、電極ピン10の酸化による残量検出出力の値の変動を抑制し、残量検出出力の値が上昇するのを抑え、かつインク残量を検出しにくい状態においても、残量検出出力の高精度な検出を維持することができる。
図9Cでは、インク種毎に検出抵抗13の検出抵抗値と印加電圧値Vinを変更できる構成を示す。電極ピン10に電圧を印加された時の酸化進行度合いは、インク種によって特性が異なる。そのため、図9Cの構成に示すように、入力ポート12より印加される印加電圧値Vin、および検出抵抗13の検出抵抗値を、インク種毎に個別に設定可能とすると、インク特性によらず高精度な検出を得ることができる。なお、本実施例においても、図6(b)に示すように、判定閾値Vthと印加電圧値Vin、検出抵抗13の検出抵抗値のそれぞれの設定更新頻度は、酸化進行期(T1)は高頻度に、酸化安定期(T2)は低頻度に可変としてもよい。
1:画像記録装置、2:液体吐出カートリッジユニット、3:インクタンク、4:インク供給チューブ、5:ヘッドユニット、6:サブタンク、7:ジョイント部、8:サブタンク液室、9:記録素子基板、10:電極ピン、11:電気接続部材、12:入力ポート

Claims (12)

  1. 記録素子基板からインク液滴を吐出し、記録材への画像形成を行う液体吐出カートリッジユニットであって、
    画像の記録に用いる液体を貯蔵する液室と、
    前記液室内に挿入される第1の電極ピン及び第2の電極ピンと、
    を備える液体吐出カートリッジユニットと、
    前記第1の電極ピンと前記第2の電極ピンとの間に電圧を印加する印加手段と、
    前記印加手段により電圧がかかる検出抵抗を備え、前記第1の電極ピンと前記第2の電極ピンとの間の電圧値または電流値を検知する検知手段と、
    を備え、
    前記印加手段が前記第1の電極ピンと前記第2の電極ピンとの間に電圧を印加したときに、前記検知手段が前記電圧値または前記電流値を検知することで、前記液室内の液体の残量を検出する検出動作を行うことが可能な画像記録装置において、
    前記液室内の液体量が所定量より少なくなっているか否かを判定するための判定閾値、前記印加手段による印加電圧値、もしくは、前記検出抵抗の検出抵抗値のうち、少なくとも1つを、前記電圧の累計印加時間に基づいて、逐時設定することを特徴とする画像記録装置。
  2. 前記電圧の累計印加時間が長くなるほど、前記判定閾値が大きくなるように逐時設定する請求項1に記載の画像記録装置。
  3. 前記電圧の累計印加時間が長くなるほど、前記検出抵抗値が大きくなるように逐時設定する請求項1または2に記載の画像記録装置。
  4. 前記電圧の累計印加時間が長くなるほど、前記印加電圧値が大きくなるように逐時設定する請求項1から3のいずれか1項に記載の画像記録装置。
  5. 最初に設定される前記判定閾値、前記印加電圧値、もしくは前記検出抵抗値は、前記液室内の液体量が所定量より多い状態で前記検知手段により検知される前記電圧値または前記電流値に基づいて設定される請求項1から4のいずれか1項に記載の画像記録装置。
  6. 前記液室内の液体量が所定量より多い状態は、前記液体吐出カートリッジユニットが初めて使用される時、もしくは、前記液室への液体リフィル時のいずれかである請求項5に記載の画像記録装置。
  7. 前記判定閾値、前記印加電圧値、もしくは前記検出抵抗値は、液体の種類に基づいて設定される請求項1から6のいずれか1項に記載の画像記録装置。
  8. 前記判定閾値、前記印加電圧値、もしくは、前記検出抵抗値の設定更新頻度は、前記電圧の累計印加時間に基づいて変化し、前記電圧の印加開始から初期の第1の期間は、高頻度であり、前記第1の期間の後の第2の期間の設定更新頻度は、前記第1の期間の頻度より低頻度である請求項1から7のいずれか1項に記載の画像記録装置。
  9. 前記電極ピンは、SUS304、SUS384、又はSUS316である請求項1から8のいずれか1項に記載の画像記録装置。
  10. 画像の記録に用いる液体を貯蔵するインクタンクと、
    前記インクタンクから前記液室へ液体を供給する液体供給チューブと、
    をさらに備え、
    前記液室は、前記液体供給チューブより供給される液体を一時的に保持し、前記記録素子基板へと液体供給するサブタンクである請求項1から9のいずれか1項に記載の画像記録装置。
  11. 前記液体吐出カートリッジユニットに着脱可能に構成された、画像の記録に用いる液体を貯蔵するインクタンクをさらに備え、
    前記液室は、前記インクタンクから供給される液体を一時的に保持し、前記記録素子基板へと液体供給するサブタンクである請求項1から10のいずれか1項に記載の画像記録装置。
  12. 前記液室内の液体は、自己分散カーボンブラックである請求項1~11のいずれか1項に記載の画像記録装置。
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