JP2022128761A - 扁平マルチフィラメント - Google Patents

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Abstract

【課題】 高次通過性や製織性に優れ、軽やかで柔軟な風合いの織編物を得ることができる糸幅は均一な扁平マルチフィラメントを提供する。【解決手段】 単糸断面に外接する長方形の長辺と短辺の比で表される扁平度が1.5以上、CF値が5~20、糸条の単糸群のなかで最も離れている単糸間の糸幅のCV%(変動係数)が50%以下である扁平マルチフィラメント。【選択図】図2

Description

本発明は、高次通過性や製織性に優れ、軽やかで柔軟な風合いの織編物を得るのに適した扁平マルチフィラメントに関する。
ポリエステルやポリアミドなどからなる合成繊維は、優れた力学特性や寸法安定性を有しているため、衣料用途から非衣料用途まで幅広く利用されている。衣料用途の高度化に伴い、柔らかく、さらっとした心地の良い風合いや製品品位に優れた繊維や織編物が求められている。
このような要求に応えるため、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等に代表される衣料用合成繊維は、一般的に繊維断面形状を扁平糸といった異型断面に変更することによって、糸条の単糸間にミクロで複雑な空隙を形成してランダムで凹凸感のある手触りを実現している。
一方で、扁平糸などの異型断面繊維は繊維表面積の増加を伴い摩擦抵抗が増えるため、製造工程内でガイドとの擦過による毛羽等の欠点が生じやすい。製造工程での通過性改善や巻取り性向上を図るため、交絡処理においてインターレースノズル内で糸条に噴射流体を当て、単糸間同士に絡まりを生じさせている。特にノズル内で糸条に噴射流体を当てる際に、ノズル壁面と糸とが衝突して毛羽やタルミ等の欠点を生じている。
繊維がノズル壁面と衝突する回数を減らすため、噴射流体量を減らすと相反して集束性が不十分となる。集束性が不十分になると単糸がばらけやすくなり、製織時の経糸の捌きが悪くなる。経糸の捌きが悪くなると経糸が切れやすくなり、製品の生産性が大きく低下してしまう。また、織物品位においても単糸がばらけるとスジ状の欠点が生じる。すなわち、扁平糸などの異型断面繊維において、毛羽やタルミといった欠点を生じさせずに、糸条に集束性を与えることが重要な課題となっている。
これらの課題を解決するため、例えば特許文献1では、交絡処理前に水分付与を目的とした給油を行うことで、微細な交絡が付与された仮撚り用複合ポリアミド繊維が提案されている。水分付与を行うと、交絡処理を行う際にフィラメント同士が絡み付き難くなるため、付与された交絡は中程度の結束力で微細となると提案されている。
特許文献2では、交絡処理で糸条が通過する糸道部の断面積を流体噴射孔より糸条導出側で拡大することで、糸条とノズル壁面との衝突ダメージを抑制する提案がされている。糸道部が糸条の導出側で拡大することで効率的に流体を糸進行方向へ排気することができるので、ノズル壁面との衝突回数を減少することができ毛羽やタルミが少ない交絡処理が可能となる。
特開2018-3190号公報 特開2013-227711号公報
特許文献1には、微細な交絡処理のため交絡処理前の水分付与が提案されているものの、扁平糸などの異型断面繊維のマルチフィラメントの場合、均一かつ交絡強度が高い交絡処理を行うことができない。特許文献1の交絡処理には、インターレースノズルの好適な仕様が示しているが流体噴射孔が対向に配置されたノズルであり、噴射圧空の干渉による乱流が起こりやすい。乱流によって糸条の開繊・交絡を繰り返すことができないため、糸が絡みにくい。製品品位に優れた織編物に求められる、糸幅が均一な交絡を得ることはできない。
特に、扁平糸などの異型断面繊維では単糸間の摩擦抵抗が高いため、開繊しにくい上、絡まると強く結束力のある交絡となる。そのため糸が絡み合った領域である交絡部と糸が絡み合っていない領域である開繊部で形態差が生じやすく、開繊部の単糸がばらけやすくなる。また、交絡処理前に水分を多く付与するため、汚れや噴射孔のつまりが発生しやすい。噴射流体の気流乱れや圧力変動の影響が起こり、噴射圧力が糸進行方向と逆に噴射する恐れが高い。ノズルの糸条導入側に逆噴射された気流によって糸条張力が部分的に緩むことが懸念され、緩んだ糸がノズル壁面と擦過することによって毛羽やタルミが発生しやすい。
また、特許文献2には、毛羽やタルミ等の欠点改善のため、糸条へのダメージが少ない交絡処理装置が提案されているものの、扁平糸などの異型断面繊維を製造する場合、均一な交絡処理を行うことは困難である。特許文献2の交絡処理方法には、好適なインターレースノズルの形状が示してあるが、絞り部より糸条導出側で開口するノズルでは、糸挙動領域が広いため噴射流体を当てられた糸条が大小様々なループの開繊を形成しやすく、交絡・開繊頻度にバラツキが生じやすい。
特許文献1,2に記載の方法を適用しただけでは、扁平糸などの異型断面繊維を製造する場合、糸長手方向の交絡斑に起因した欠点が発生しやすく、織物品位に優れた扁平マルチフィラメントを提供できない。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。
(1)次の要件(a)~(c)を満たす扁平マルチフィラメント。
(a)単糸断面に外接する長方形の長辺と短辺の比で表される扁平度が1.5以上
(b)CF値が5~20
(c)糸条の単糸群のなかで、最も離れている単糸間の幅のCV%(変動係数)が50%以下
(2)単糸繊度が0.5~3.5dtexである上記(1)記載の扁平マルチフィラメント。
本発明によれば、単糸のばらけや毛羽、タルミのない微細で均一な交絡を持った扁平マルチフィラメントを提供できる。さらに詳しくは、工程通過性と製品品位に優れた扁平マルチフィラメントを提供できる。
本発明の一実施態様の単糸断面形状の模式図。 糸条の糸幅測定位置を説明する模式図。 本発明の製造方法に好適な交絡処理装置の一例の模擬図。 本発明の一実施態様を示す紡糸設備の概略図。 糸条の糸幅のCV%の測定方法の説明図。 実施例における糸条形態を測定したデータ結果。
以下、本発明の扁平マルチフィラメントについて説明する。
本発明のマルチフィラメントを構成する合成繊維は、高分子ポリマーからなる繊維であり、溶融紡糸や溶液紡糸などで製造した熱可塑性ポリマーからなる繊維を採用することができる。該合成繊維は、1成分のポリマーで構成される単繊維であっても、繊維断面に2成分以上のポリマーが配置された複合繊維であってもよい。
本発明の合成繊維を構成する熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートあるいはその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタンなどの溶融成形可能なポリマーが挙げられる。これらの熱可塑性ポリマーの中でも、ポリエステルやポリアミドに代表される重縮合系ポリマーは、結晶性を有し、比較的高い融点を有しているため、後加工等における熱処理工程及び実使用(洗濯、クリーニングなど)の際に比較的高い温度で加熱された場合でも劣化を起こすことなく好適な例として挙げられる。
熱可塑性ポリマーには、本発明の効果を損なわない範囲で酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
本発明のマルチフィラメントの単糸断面に外接する長方形の長辺(図1a)と短辺(図1b)の比(a/b)である扁平度は1.5以上である。扁平度が1.5以上であると、単糸がかみ合うことなく単糸間にミクロで複雑な空隙を効率的に形成することができる。ミクロな空隙が混在している糸条では、軽やかで柔軟かつ反発感のある風合いを織編物でバランスよく発現できる。また、マルチフィラメントへ入射した光がマルチフィラメント中で複雑に反射することから、マイルドな高級感のある光沢も得ることが可能となる。一方、扁平度が大きくなるにつれて、表面積は増えるため摩擦抵抗が増え、毛羽やタルミの発生リスクが大きくなることから、扁平度は5.0以下であることが好ましい。さらに毛羽やタルミの点から、扁平度は、3.0以下にすることが好ましい。
ここでいう扁平度とは、図1に示す単糸断面形状の模式図のように、繊維軸に対して垂直に切断して撮影された繊維断面画像から、単糸断面の凸部頂点のうち任意の2点を結ぶ最長の線分(長さaとする)と、前記線分に平行な線でかつ最外の頂点を含む接線で構成される外接四角形(隣り合う辺で構成される角の角度は90°)の他の線分(長さbとする)とするとき、a/bを扁平度と定義する。無作為に抽出した5本の単糸について扁平度を測定し、平均値を本発明で言う扁平度とした。
本発明のマルチフィラメントのCF値は5~20である。かかる範囲とすることで、繊維の集束性が均一となり、製織時に単糸ごとにばらけることがない。また、製織時、糸が緩み解けることがないため、織物に単糸のばらけによるスジが発生せず、品位に優れた織編物を得ることができる。一方、CF値が5未満である場合、交絡結束点が少ないため、経糸整経や緯入れによって糸条に張力がかかると単糸同士の絡み合いがほどけて、フィラメントがばらけやすい。絡み合いがほどけ糸条の開繊部の長さが長くなると、織編物に織り込まれた糸条は単糸ごとにバラケやすくなり、近接する単糸同士の干渉によって単糸切れなどが生じ、織編物の破裂強さや引張強さの低下を招く。また、用途の高度化に伴って、CF値は10以上であることが好ましい。総繊度が30dtex以下の高密度薄地織物用途のマルチフィラメントはCF値が15以上であることが好ましい。CF値が大きくなれば、交絡がほどけにくく製織性に優れる。一方、CF値が20を超えると、結束力が強く長い交絡部が得られるが、細くまとまった交絡部と、大小様々なループを有する開繊部で形態差が生じ、製織中に開繊部のループに引っ掛かり、単糸切れや毛羽の発生を起こす。
ここでいうCF値は、JIS L 1013(2010)に記載の方法でエンタングルメントテスター(Rothschild社製のENTANGLEMENT TESTER R-2060)を用いて測定する。具体的には、糸条パッケージから5m/分の速度で解舒された糸条に、一定の張力を掛けた針を糸条間で走行させ、交絡点で張力が規定値(基準張力10g、閾値張力15g)を超える頻度を測定する。150m測定し、距離を交絡判定数で割った値をCF値とする。
本発明のマルチフィラメントは、図2に示す通り、マルチフィラメントの単糸群のなかで最も離れている単糸間の糸幅2のCV%(変動係数)が50%以下である。かかる範囲とすることで、糸条の集束性が均一となり、製織時にガイドや隣り合う糸条と干渉せず、単糸切れを起こさず、優れた製織性を得ることができる。また、交絡部と開繊部で形態差が小さくなるため、ウォータージェットルーム織機にて緯入れを行う際、緯糸に張力がかかっても、交絡が緩み解けにくくなる。織物上で単糸のばらけによるスジ状の欠点が生じにくくなる。さらに用途の高度化に伴い、糸幅のCV%が30%以下であることが好ましい。総繊度が30dtex以下の高密度薄地織物用途のマルチフィラメントは糸幅のCV%が20%以下であることが好ましい。糸幅のCV%が小さくなれば、織物にスジ状の欠点が生じにくく、斑やスジのない優れた織物を得ることができる。
糸幅のCV%が50%を超えると、交絡部と開繊部の形態差が生じているため、製織時の単糸のばらけが生じやすくなる。織編物上に斑やスジ、毛羽が生じやすく品位の低下を招く。また、糸幅のCV%が大きくなると、隣り合う糸条同士の隙間が大きくなり、スジ状の欠点が顕著にみられる。
ここでいう糸幅のCV%(変動係数)とは、マルチフィラメントの単糸群のなかで最も離れている単糸間の幅を測定したときの、糸条幅バラツキをいう。糸条幅のバラツキは、寸法測定器(キーエンス社製超高速・高精度寸法測定器LS-9006)を用いて測定する。具体的には、糸条パッケージから200m/分の速度で解舒された糸条を、一定の張力をかけたまま、糸条に対して光を照射する投光部と、照射された光量を検出する検出部との間を通過させ、単糸群によって遮られた光量変化により、それらひとつひとつの位置情報を測定する。サンプリング周期は4000回/秒以上で、走行距離は30mとする。走行させた糸条の単糸群位置の中から、最も離れている単糸間の幅を測定し、全測定データから平均値を求め、さらに標準偏差を平均値で割った値をCV%とする。CV%の値が低くなると、織編物にした際、隣り合う糸条同士の隙間が均一になる、斑やスジのない織編物が得られる。
本発明のマルチフィラメントの繊度は、特に限定するものではないが、インナーウェア、スポーツウェア、カジュアルウェア等の衣料用途に用いることを考慮すると、15~250dtexであることが好ましい。
本発明のマルチフィラメントのフィラメント数は、微細な交絡を多く有した集束状態にする観点から、多い方が好ましく6本以上であることが好ましい。フィラメント数が多くなることで、単糸間のミクロで複雑な空隙が増え、軽やかで柔軟かつ反発感のある風合いをバランスよく発現できる。また、マルチフィラメントへ入射した光がマルチフィラメント中で複雑に反射することから、マイルドな高級感のある光沢も得ることが可能となる。さらに、フィラメント数に応じて、混ざり合う単糸数が増え、交絡が入りやすくなる。
本発明のマルチフィラメントの単糸繊度は、0.5~3.5dtexの範囲であることが好ましい。単糸繊度が0.5dtex以上とすると、目的の糸断面形成がしやすく、安定的に製糸することができる。また、製織時の取り扱いがしやすく、工程通過性もよい。また、単糸繊度が3.5dtex以下とすることで、インターレースノズル内で単糸が動きやすくなるため、交絡を付与しやすくなり、集束性が向上し、工程通過性および製織性の向上効果が得られる。さらに、かかる単糸繊度範囲とすることで、得られた織物は緻密性を保ちつつ、硬くなりすぎずさらっとした心地の良い風合いを有することができる。
本発明のマルチフィラメントの破断強度は2.0cN/dtex以上であることが好ましい。かかる範囲とすることで、破裂強さや引張強さなどの物性が優れた布帛を得ることができる。総繊度が30dtex以下の高密度薄地織物用途のマルチフィラメントで、より好ましくは2.5cN/dtex以上である。
次いで、本発明の扁平マルチフィラメントの好ましい製造方法を説明する。
本発明の扁平マルチフィラメントの製造方法の特徴は、交絡処理においてインターレースノズルから糸に噴射流体をあてる際、糸走行方向へ流体を噴射することと、インターレースノズル前後で糸道を固定し、高速に旋回する噴射流体を糸条にあてることである。これにより振動数が高く細かな開繊・交絡処理を施すことができる。毛羽やタルミがなく、均一な糸幅を有する扁平マルチフィラメントを得ることが可能となり、織物品位に優れた扁平マルチフィラメントを提供できる。
本発明の扁平マルチフィラメントの交絡処理は、公知のインターレースノズルを用いればよいが、好ましいインターレースノズルを図3に例示する。糸条の走行軸線と、流体噴射孔とがなす角度4が75°~85°であることが好ましい。噴射流体は、通常、走行糸に追従して糸走行方向へ排気されていくが、ノズル内で乱流が発生すると、糸走行方向とは逆のノズルの糸条導入側に逆噴射されるケースがある。逆噴射された流体によって、糸条が弛み、弛んだ糸がノズル壁面にぶつかり、毛羽が発生することがある。そこで、流体噴射孔を、糸条の走行軸線に対して75°~85°の角度に設けることで、糸条の走行方向と順方向に積極的に噴射流体を促すことができる。これにより、ノズルの糸条導入側で糸条の一部単糸が弛むことを防止できる。特に摩擦抵抗が大きい扁平マルチフィラメントでは、弛んだ単糸がノズル壁面と擦過した際、単糸切れが発生しやすいので、好ましい態様である。
また、本発明の扁平マルチフィラメントの交絡処理は、インターレースノズル前後で糸道を固定することが好ましく、ノズル内を走行する糸条の走行軸線と、ノズル前後で固定される糸道の走行軸線とがなす角度5が1~6°であることが好ましい。ノズル内を走行する糸条の走行軸線に対して角度を設けることで、走行糸が交絡処理の前後にあるローラー等から伝播する振動を減衰することができる。1°以上とすることで糸条の揺れを防ぐことができ、6°以下とすることで糸道を固定するガイドとの擦過を少なくすることができる。走行軸線がなす角度によって、走行糸条とガイドとの擦過が低減、ローラーから伝播する振動を減衰でき、糸条とノズル壁面との衝突を回避し、毛羽発生を抑えることが可能となる。その結果、毛羽やタルミのない扁平マルチフィラメントが得られる。
さらに交絡処理において、糸道を固定する距離を短くすることで、ノズル内で開繊した糸条を一定の開繊幅に制御することができる。好ましくは、ノズル前後で糸道を固定する間隔をノズル長の4倍以内にすることで、流体を噴射された糸条の単糸群のなかで最も離れている単糸間の幅がノズル内で大きく広がらず、均一な交絡の糸条が得られる。さらに、ノズル内を通過する糸条に張力がかかることで、振動数が高く、細かな交絡品位に優れた糸条が得られる。
そして、本発明の扁平マルチフィラメントの交絡処理は、ノズル内で走行糸条に細かな開繊・交絡を高い頻度で施すため、ノズルの糸道断面積6は、1mm以下であることが好ましく、糸条の走行軸線方向に10mm以上30mm以下のノズル長7があることが好ましい。糸道断面積を1mm以下にすることで、ノズル内に高回転かつ直径が小さい旋回流が発生するため、開繊・交絡を高い頻度で繰り返すことができる。単糸間の摩擦抵抗が高く、開繊しにくい扁平マルチフィラメントでも、細かく開繊・交絡が繰り返され、細かな交絡品位を得ることができる。ノズル長を10mm以上とすることで、ノズル内で開繊した糸条を一定の開繊幅に制御することができる。また、ノズル長が30mm以下とすることで、ノズル壁面と走行糸の衝突頻度を減らすことができ、扁平マルチフィラメントで発生しやすい毛羽やタルミを抑制することができる。
次いで、インターレースノズルの流体噴射孔の孔径Φdが0.8~1.4mmを用いることが好ましく、噴射流体は0.1~0.4MPaの圧空を用いることが好ましい。かかる範囲とすることで、必要な噴射流体量を確保できるため、微細な交絡を与えることができる。また、流体噴射孔の孔径Φdが1.4mm以下のノズルを用いた上で、噴射流体を0.4MPa以下の圧空とすることで、噴射流量と速度を抑えることができ、さらにノズル壁面と糸条の衝突頻度を減らし、毛羽やタルミ発生リスクを少なくすることができる。
本発明の扁平マルチフィラメントの紡糸方法は、特に限定するものでなく、公知の技術に準ずることができる。図4に示す装置の通り、紡糸口金8から吐出された糸条1は、冷却装置10を経て、給油装置11にて給油を行い、第一ゴデットローラー12及び第二ゴデットローラー13で引き取り、交絡処理装置14にて交絡処理した後、巻取機15で巻き取る。また、例えば、溶融押出し、紡糸口金を用いて、吐出した後、紡糸された未延伸糸を巻取り、延伸機にて延伸する2工程法でもよいし、未延伸糸を一旦巻き取ることなく、引き続き延伸を行う1工程法でも得られる。どちらの工程法でも交絡処理を行う工程において、インターレースノズルから糸に噴射流体をあてる際、糸走行方向へ流体を噴射することと、インターレースノズル前後で糸道を固定した上で、ノズル糸道部で流体を高速で噴射することで、振動数が高く細かな開繊・交絡処理を施すことで、本発明の扁平マルチフィラメントが提供できる。
本発明の扁平マルチフィラメントは、平滑性、耐摩耗性、静電性向上を目的に繊維表面に油剤を付着させることが好ましい。油剤付与方法は、特に限定するものでなく、公知の技術に準ずることができる。例えば、オイリングローラーもしくはガイド給油のいずれの方法でもよい。いずれの方法でも、口金から吐出された糸条が、冷却装置を経て、冷却固化されたのち、給油させることで、製糸工程内にある糸道ガイドとの摩擦を低減し、ガイドやローラー上での糸走行性を安定させることができる。
以下、実施例をもって具体的に説明する。実施例の測定値は、次の方法で測定した。
(1)総繊度(dtex)
糸条を500mかせ取り、かせの質量(g)に20を乗じた値を繊度とした。
(2)破断強度(cN/dtex)及び破断伸度(%)
JIS L 1013(2010)に従い、オリエンテック製テンシロンUCT-100を用いて測定した。
(3)溶融粘度(ポリエステル)
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、東洋精機製キャピログラフ1Bによって、歪速度を段階的に変更して、溶融粘度を測定した。なお、測定温度は紡糸温度と同様にし、窒素雰囲気化で加熱炉にサンプルを投入してから測定開始までを5分とし、せん断速度1216s-1の値をポリマーの溶融粘度として評価した。紡糸温度については、用いるポリマー種のうち、主に高融点や高粘度ポリマーが流動性を示す温度とする。この流動性を示す温度としては、分子量によっても異なるが、そのポリマーの融点~(融点+60℃)の間で設定する。
(4)ポリマーの融点
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、約5mgを秤量し、TAインスツルメント製示差走査熱量計(DSC)Q2000型を用いて、0℃から300℃まで昇温速度16℃/分で昇温後、300℃で5分間保持してDSC測定を行った。昇温過程中に観測された融解ピークより融点を算出した。測定は1試料につき3回行い、その平均値を融点とした。なお、融解ピークが複数観測された場合には、最も高温側の融解ピークトップを融点とした。
(5)硫酸相対粘度(ポリアミド)
試料0.25gを濃度98wt%の硫酸100mlに溶解して濃度1g/lとなるように調整し、オスワルド型粘度計を用いて25℃での流下時間(T1)を測定した。引き続き、濃度98wt%の硫酸のみの流下時間(T2)を測定した。T2に対するT1の比、すなわちT1/T2を硫酸相対粘度とした。
(6)扁平度
繊維軸に対して垂直に切断して撮影された繊維断面画像から、単糸断面の凸部頂点のうち任意の2点を結ぶ最長の線分(長さをaとする)と、前記線分に平行な線でかつ最外の頂点を含む接線で構成される外接四角形(隣り合う辺で構成される角の角度は90°)の他の線分(長さをbとする)とするとき、a/bを扁平度と定義した。無作為に抽出した5本の単糸について扁平度を測定し、平均値を本発明で言う扁平度とした。
(7)CF値
JIS L 1013(2010)に従い、Rothschild社製のENTANGLEMENT TESTER R-2060を用いて測定した。具体的には、繊維パッケージから5m/分の速度で解舒された糸条に、一定の張力を掛けたまま、針を糸条間で走行させ、交絡点で張力が規定値(基準張力10g、閾値張力15g)を超える頻度を測定した。150m測定し、距離を交絡判定数で割った値をCF値とした。
(8)CV%(変動係数)
図5に示す装置の通り、マルチフィラメントの糸条を、パッケージスタンド16から400mmの距離に置かれた張力付与手段17であるアルミナ材質の湯浅糸道工業社製テンサーガイドを通過させ、テンサーガイド出口の張力が0.15cN/dtexになるように調整した。その後、テンサーガイドから50cmの距離にキーエンス社製超高速・高精度寸法測定器18(LS-9006)を置き、その前後を5cm間隔で糸条案内手段であるアルミナ性スリットガイド(スリット幅2mm)を介して糸条を走行させ、糸条送りローラー19を周回させ、走行速度を200m/分に制御しながら糸条を給糸し、測定を実施した。その際、サンプリング周期は16000回/秒、測定距離は30mとした。走行させた糸条の単糸群のなかで、最も離れている単糸間の幅を測定し、備え付けられた演算装置にて、標準偏差を平均値で割った値をCV%(変動係数)とした。
(9)製織性評価
ウォータージェット織機にて、使用するマルチフィラメントの総繊度に応じて目付量を調整し、製織した。製織性は100mあたり、目視にて布帛上に一定方向に通して発生するスジ状の見た目の違いを確認し、そのスジの有無によって次の2段階で評価した。
〇:良好(スジ状の欠点がなし)
×:不良(スジ状の欠点があり)。
(実施例1)
常法によって重合及びチップ化したポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:130Pa・s、融点254℃)を、エクストルダー型押出機によって295℃の温度で溶融後、56dtexとなるよう、ポンプ計量を行い、孔数18個の公知の口金に流入させた。紡糸温度280℃で、口金から吐出された糸条は、冷却装置を経て、冷却固化させたのち、給油装置にて給油させ、1140m/分の速度、60℃の表面温度に設定された第一ゴデットローラー12にて引き取り、一旦巻き取ることなく、連続して4000m/分の速度、150℃の表面温度に設定された第二ゴデットローラー13で熱処理・延伸した。延伸された糸条は、交絡処理装置14のインターレースノズルにて0.3MPaの圧力で交絡処理され、4000m/分の速度に設定されたゴデットローラーにて張力調整し、3970m/分の速度でチーズ状パッケージに巻き取った。インターレースノズルは、糸条の走行軸線と、流体噴射孔とがなす角度が80°、ノズルの糸道断面積が1.0mm、ノズル長を15mm、噴射孔径Φdが1.2mmの仕様のノズルを用いた。また、ノズル前後で糸道を固定するガイドの間隔を40mmとし、ノズル内を走行する糸条の走行軸線と、ノズル前後で固定される糸道の走行軸線とがなす角度を2°とした。
実施例1は、CF値が10.5、糸幅のCV%が41%であった。図6は、単糸間の幅を測定したチャートで、グラフの縦軸には、単糸間の幅(単糸間隔)を、グラフの横軸には測定位置を示している。図6(a)は実施例1の測定結果である。実施例1の糸は、単糸間隔が一定の幅を維持しており、糸幅に斑の小さい交絡となった。よって、操業性も良好で、得られた原糸を製織に供した結果、製織糸切れはなく、製織品位が良好であった。
(比較例1)
交絡処理に用いるインターレースノズルを、糸条の走行軸線と、流体噴射孔とがなす角度が90°で、ノズルの糸道断面積が2.0mm、ノズル長を7mmのインターレースノズルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルマルチフィラメントを得た。図6(b)に示す通り、単糸間隔が広がっている範囲(開繊部)と、単糸間隔が狭い範囲(交絡部)がはっきりと区別され、糸幅に斑のある交絡となった。得られた原糸を製織に供した結果、製織糸切れはなかったが、布帛に斑とスジがみられ、製織品位が実施例1対比劣位であった。
(実施例2)
総繊度を15dtexになるようにした以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルマルチフィラメントを得た。製織の結果、糸切れは1回もなく、非常に良好な製織性であり、得られた布帛に毛羽や緯斑といった欠点はなく、非常に良好な製織品位であった。
(実施例3)
扁平度を2.9になるように口金を変更した以外は、実施例2と同様にして、ポリエステルマルチフィラメントを得た。製織の結果、糸切れは1回もなく、良好な製織性であった。また。得られた布帛に毛羽や緯斑といった欠点はなく、製織品位も良好であった。
(比較例2)
交絡処理において、インターレースノズル内を走行する糸条の走行軸線と、ノズル前後で固定される糸道の走行軸線とがなす角度を0°に変更し、さらに糸条の走行軸線と、流体噴射孔とがなす角度が90°にしたこと以外は、実施例2と同様にして、ポリエステルマルチフィラメントを得た。製織の結果、単糸のばらけによる糸切れが多発し、良好な製織性を得ることができなかった。
(比較例3)
交絡処理において、糸条の走行軸線と、流体噴射孔とがなす角度を90°に変更し、ノズル前後で糸道を固定するガイドの間隔を70mmとしたこと以外は、実施例3と同様にして、ポリエステルマルチフィラメントを得た。結果、巻き取られた原糸に毛羽が発生し、さらに製織時の単糸の糸切れが多発し、良好な製織性を得ることができなかった。
(実施例4)
融点がそれぞれ異なるポリエチレンテレフタレート(鞘ポリマー1:溶融粘度100Pa・s、融点233℃,芯ポリマー2:溶融粘度130Pa・s、融点254℃)を、芯鞘複合繊維の複合構造とすることと、フィラメント数を36本にすること以外は、実施例1と同様に、押出機によって290℃の温度で溶融後、56dtexとなるように、ポンプ計量を行い、孔数36個の公知の口金に流入させた。口金から吐出された糸条は、冷却装置を経て、冷却固化させたのち、給油装置にて給油させ、1500m/分の速度、90℃の表面温度に設定された第一ゴデットローラー12にて引き取り、一旦巻き取ることなく、連続して4000m/分の速度、130℃の表面温度に設定された第二ゴデットローラー13で熱処理・延伸した。延伸された糸条は、交絡処理装置14のインターレースノズルにて0.3MPaの圧力で交絡処理され、4000m/分の速度に設定されたゴデットローラーにて張力調整し、3970m/分の速度でチーズ状パッケージに巻き取った。実施例4は、CF値が16.2、糸幅のCV%が35%で、操業性も良好であった。得られた原糸を製織に供した結果、製織糸切れはなく、製織品位が良好であった。
(比較例4)
交絡処理に用いるインターレースノズルを、糸条の走行軸線と、流体噴射孔とがなす角度が90°のインターレースノズルを用いたこと以外は、実施例4と同様にして、ポリエステルマルチフィラメントを得た。得られた原糸を製織に供した結果、製織糸切れはなかったが、布帛品位に斑とスジがみられ、製織品位が実施例4対比劣位であった。
(実施例5)
硫酸相対粘度2.6、融点215℃のポリアミド(ナイロン6)を使用し、押出機によって270℃の温度で溶融後、33dtexとなるように、ポンプ計量を行い、孔数26個の公知の口金に流入させた。口金から吐出された糸条は、冷却装置を経て、冷却固化させたのち、給油装置にて給油させ、2800m/分の引取ロールにて引き取り、続いて1.4倍に延伸した後に155℃の温度で熱固定し、交絡した後に、巻取速度3500m/分でポリアミドマルチフィラメントを得た。インターレースノズルは実施例1と同様のノズルを使用した。実施例5は、操業性も良好で、得られた原糸を製織に供した結果、製織糸切れはなく、製織品位が良好であった。
(比較例5)
交絡処理に用いるインターレースノズルを、糸道断面積を2.4mm、流体噴射孔の孔径Φdが1.6mmのインターレースノズルを用いたこと以外は、実施例5と同様にして、ポリアミドマルチフィラメントを得た。得られた原糸を製織に供した結果、製織糸切れはなかったが、布帛に斑とスジがみられ、良好な製織品位を得ることができなかった。
Figure 2022128761000002
1:糸条
2:糸幅
3:インターレースノズル
4:流体噴射孔角度
5:ノズル前後の糸走行軸線がなす角度
6:糸道断面積
7:ノズル長
8:紡糸口金
9:加熱体
10:冷却装置
11:給油装置
12:第一ゴデットローラー
13:第二ゴデットローラー
14:交絡処理装置
15:巻取機
16:パッケージスタンド
17:張力付与手段
18:寸法測定器
19:糸条送りローラー
20:糸吸引装置

Claims (2)

  1. 次の要件(a)~(c)を満たす扁平マルチフィラメント。
    (a)単糸断面に外接する長方形の長辺と短辺の比で表される扁平度が1.5以上
    (b)CF値が5~20
    (c)糸条の単糸群のなかで、最も離れている単糸間の幅のCV%(変動係数)が50%以下
  2. 単糸繊度が0.5~3.5dtexである請求項1記載の扁平マルチフィラメント。
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