JP2022125392A - 全固体二次電池およびその製造方法 - Google Patents

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潤珠 青木
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健太郎 冨田
Kentaro Tomita
智仁 関谷
Tomohito Sekiya
春樹 上剃
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Abstract

【課題】 負荷特性および高温特性に優れた全固体二次電池とその製造方法とを提供する。【解決手段】 本発明の全固体二次電池は、正極、負極、および固体電解質層を有してなり、前記正極は、正極活物質、導電助剤および硫化物系固体電解質を含有する正極合剤の成形体を有しており、前記正極活物質は、表面にNb含有酸化物層を有しており、前記正極活物質の粒度分布が、第一の頻度のピークと第二の頻度のピークとを有し、前記第一の頻度のピークが1~8μmの範囲にあり、かつ前記第二の頻度のピークが15~35μmの範囲にあることを特徴とするものである。【選択図】 図1

Description

本発明は、負荷特性および高温特性に優れた全固体二次電池とその製造方法に関するものである。
近年、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータなどのポータブル電子機器の発達や、電気自動車の実用化などに伴い、小型・軽量で、かつ高容量・高エネルギー密度の二次電池が必要とされるようになってきている。
現在、この要求に応え得るリチウム二次電池、特にリチウムイオン二次電池では、正極活物質にコバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)などのリチウム含有複合酸化物が用いられ、負極活物質に黒鉛などが用いられ、非水電解質として有機溶媒とリチウム塩とを含む有機電解液が用いられている。
そして、リチウムイオン二次電池の適用機器の更なる発達に伴って、リチウムイオン二次電池の更なる長寿命化・高容量化・高エネルギー密度化が求められていると共に、長寿命化・高容量化・高エネルギー密度化したリチウムイオン二次電池の信頼性も高く求められている。
しかし、リチウムイオン二次電池に用いられている有機電解液は、可燃性物質である有機溶媒を含んでいるため、電池に短絡などの異常事態が発生した際に、有機電解液が異常発熱する可能性がある。また、近年のリチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化および有機電解液中の有機溶媒量の増加傾向に伴い、より一層リチウムイオン二次電池の信頼性が求められている。
以上のような状況において、有機溶媒を用いない全固体型のリチウム二次電池(全固体二次電池)が注目されている。全固体二次電池は、従来の有機溶媒系電解質に代えて、有機溶媒を用いない固体電解質の成形体を用いるものであり、固体電解質の異常発熱の虞がなく、高い安全性を備えている。
また、全固体二次電池においては、種々の改良が試みられている。例えば、特許文献1には、相対的に大きい平均粒径を有する正極活物質粉体と、相対的に小さい平均粒径を有する正極活物質粉体との、混合比が2:8~8:2(重量比)の混合物であって、両者の粒径比が0.08~1である正極活物質と無機固体電解質をメカニカルミリング処理することが提案されている。特許文献1によれば、前記の処理によって正極活物質および無機固体電解質が良好に分散し、正極活物質と無機固体電解質のコンタクト面積が増大してリチウムイオン伝導パスを増加させた正極合材が得られ、前記正極合材を用いることにより、高い出力を有する電池が構成できるとしている。また、特許文献1では、平均粒径が5μmである正極活物質と平均粒径が10μmである正極活物質とを混合比7:3(重量比)で混合した混合物を用いるとよいとされており、正極活物質の表面をTiスピネルまたは炭素で表面修飾することの開示もある。
さらに、特許文献2には、第1正極活物質と、第2正極活物質と、硫化物固体電解質とを有する正極合材において、第2正極活物質の平均粒径に対する第1正極活物質の平均粒径の比率を2.0以上4.3以下とする技術が開示されている。特許文献2では、前記の技術によって、プレスにより正極活物質層を形成する時には、第1正極活物質がほとんど塑性変形せずに互いに密着しないため、第1正極活物質の粒子間に生じる空隙に平均粒径の小さい第2正極活物質が入り込みやすくなり、正極活物質と他の構成材料との接点が増加してLiイオン伝導パスおよび電子伝導パスが増加し、電池の体積当たりのエネルギー密度の向上が可能となるとしている。
特許文献2では、第1正極活物質および第2正極活物質の体積比は、具体的には、第1正極活物質の平均粒径(D50)が8μm以上12μm以下、第2正極活物質の平均粒径(D50)が1μm以上3μm以下である場合には、第1正極活物質:第2正極活物質=90:10~70:30の範囲内であることが好ましく、また、第1正極活物質の平均粒径(D50)が6μm以上15μm以下、第2正極活物質の平均粒径(D50)が1μm以上3μm以下である場合には、第1正極活物質:第2正極活物質=80:20~60:40の範囲内であることが好ましいとされている。さらに、特許文献2には、硫化物固体電解質との反応を抑制するために、第1正極活物質および第2正極活物質の表面をLiNbO、LiPO、LiPONなどのLiイオン伝導性酸化物よりなるコート層で被覆することも記載されている。
特開2010-67499号公報 特開2019-106286号公報
ところで、現在、全固体二次電池においては、その適用分野が急速に拡大しており、例えば大きな電流値での放電が求められる用途への適用も考えられることから、これに応え得るように負荷特性を高めることが求められる。
全固体二次電池において、その負荷特性を高めるには、例えば正極合剤の成形体の充填密度を高め、成形体内での空隙をできるだけ存在させないようにしてイオン伝導性を高めることが好ましい。しかし、正極合剤の成形体の充填率を向上させるために成形体の形成時にプレス圧を高めると、正極活物質に割れが生じてしまう。正極活物質に割れが生じると、前記のような正極活物質と固体電解質との反応を抑制するコート層で被覆されていない粒子内部が露出し、その露出部が固体電解質と反応して酸化を引き起こす。このような固体電解質の酸化およびそれに起因する電池特性の低下は、特に電池が高温環境下に置かれた際に生じやすい。
このようなことから、全固体二次電池においては、負荷特性と高温特性とを両立させ得る技術の開発が要請されている。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、負荷特性および高温特性に優れた全固体二次電池とその製造方法とを提供することにある。
本発明の全固体二次電池は、正極、負極、および固体電解質層を有し、前記正極は、正極活物質、導電助剤および硫化物系固体電解質を含有する正極合剤の成形体を有しており、前記正極活物質は、表面にNb含有酸化物層を有しており、前記正極活物質の粒度分布が、第一の頻度のピークと第二の頻度のピークとを有し、前記第一の頻度のピークが1~8μmの範囲にあり、かつ前記第二の頻度のピークが15~35μmの範囲にあることを特徴とするものである。
また、本発明の全固体二次電池の製造方法は、正極、負極、および固体電解質層を有する全固体二次電池を製造するにあたり、正極活物質と、導電助剤と、固体電解質とを混合して正極合剤を調製し、前記正極合剤を成形する工程を経て正極合剤の成形体を有する正極を作製する工程を有し、前記正極活物質として、粒度分布の最頻粒子径が15~35μmである大粒径粒子と、粒度分布の最頻粒子径が1~8μmである小粒径粒子とを使用し、前記固体電解質として、平均粒子径が0.1~5μmの硫化物系固体電解質を使用することを特徴とする。
本発明によれば、負荷特性および高温特性に優れた全固体二次電池とその製造方法とを提供することができる。
本発明の全固体二次電池の一例を模式的に表す断面図である。
本発明の全固体二次電池は、正極、負極、および固体電解質層を有し、正極は、正極活物質、導電助剤および硫化物系固体電解質を含有する正極合剤の成形体を有している。そして、正極活物質は、表面にNb含有酸化物層を有している。
正極合剤の成形体内において、正極活物質と硫化物系固体電解質とが直接接触すると、反応性の高い硫化物系固体電解質が酸化して絶縁体となり、成形体内のイオン伝導性が低下する虞がある。Nb含有酸化物はイオン伝導性を備えているため、正極活物質の表面にこのNb含有酸化物層を形成することで、正極活物質-硫化物系固体電解質間のイオン伝導性を損なうことなく、これらの直接の接触を防止できる。
また、本発明では、正極活物質および硫化物系固体電解質の粒度を調整することで、正極合剤の成形体の形成時に、正極合剤の成形体の形成時における正極活物質の割れ、およびそれに伴う新生面(Nb含有酸化物層で覆われていない新生面)の生成を抑制しながら、その充填性を高めることができるようにした。
本発明の全固体二次電池では、これらの作用によって、正極合剤中の各成分の劣化を抑制し、その負荷特性と高温特性とを高めることを可能としている。
以下に、本発明の全固体二次電池の詳細について説明する。
(正極)
全固体二次電池の正極は、正極活物質、導電助剤および硫化物系固体電解質などを含む正極合剤の成形体を有するものであり、例えば、前記成形体のみからなる正極や、前記成形体と集電体とが一体化してなる構造の正極などが挙げられる。
正極活物質は、従来から知られているリチウムイオン二次電池に用いられている正極活物質、すなわち、Liイオンを吸蔵・放出可能な活物質であれば特に制限はなく、このような正極活物質を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、LiCoO、組成式Li1+o(ただし、-0.05≦o≦0.05であり、MはCoおよびMgと、Ni、Mn、Ti、ZrおよびAlよりなる群から選択される少なくとも1種の元素M1Aとを少なくとも含有する元素群を表す)で表されるリチウムコバルト酸化物、などのコバルト酸リチウム;LiNiO、組成式Li1+p(ただし、-0.05≦p≦0.05であり、MはNiと、Co、Mn、Ti、Zr、MgおよびAlよりなる群から選択される少なくとも1種の元素M2Aとを少なくとも含有する元素群を表す)で表されるリチウムニッケル酸化物などのニッケル酸リチウム;などを用いることが好ましく、前記リチウムコバルト酸化物を用いることがより好ましい。
前記リチウムコバルト酸化物において、Mgおよび元素M1Aは、前記リチウムコバルト酸化物の安定性(高電圧領域での安定性や熱安定性)を高め、Coイオンの溶出を抑制する作用を有している。さらに、元素M1Aは、電池の連続充電特性(電池の充電を継続しても、微小な短絡が発生する時間が非常に長い特性)を高める作用も有している。
前記リチウムコバルト酸化物において、Mgの量は、前記の作用をより有効に発揮させる観点から、Coとの原子比Mg/Coが、0.002以上であることが好ましく、0.005以上であることがより好ましい。また、前記リチウムコバルト酸化物において、元素M1Aの量は、前記の作用をより有効に発揮させる観点から、Coとの原子比M1A/Coが、0.001以上であることが好ましく、0.003以上であることがより好ましい。
ただし、前記リチウムコバルト酸化物中のMgや元素M1Aの量が多すぎると、Coの量が少なくなりすぎて、その作用を十分に確保できない虞がある。よって、前記コバルト酸リチウムにおいて、Mgの量は、Coとの原子比Mg/Coが、0.03以下であることが好ましく、0.015以下であることがより好ましい。また、前記リチウムコバルト酸化物において、元素M1Aの量は、Coとの原子比M1A/Coが、0.03以下であることが好ましく、0.015以下であることがより好ましい。
正極活物質に前記リチウムコバルト酸化物と他の正極活物質とを併用する場合、全正極活物質中の、前記リチウムコバルト酸化物の割合を、60質量%以上とすることが好ましい。なお、正極活物質の全てを前記リチウムコバルト酸化物としてもよいため、全正極活物質中の前記リチウムコバルト酸化物の好適含有量の上限値は、100質量%である。
正極活物質は、その表面に、Nb含有酸化物層を有している。Nb含有酸化物層は、LiNbOなどのLiイオン伝導性を有するNb含有酸化物で構成することができる。
また、Nb含有酸化物層は、LiPO、LiBO、LiSiO、LiGeO、LiTiO、LiZrOなどの酸化物や、これらの酸化物およびNb含有酸化物(LiNbOなど)のうちの複数種からなる複合化合物を、Nb含有酸化物と共に含有していてもよい。
なお、正極活物質と硫化物系固体電解質との反応を良好に抑制する観点から、Nb含有酸化物層の形成量は、Nb含酸化物層を含む正極活物質全体に対する、Nb含有酸化物層に含まれるNbの割合が、0.1質量%以上となるよう調整されることが好ましい。また、Nb含有酸化物の割合が多くなり過ぎて容量が低下するのを防ぐ観点から、Nb含有酸化物層の形成量は、Nb含有酸化物層を含む正極活物質全体に対する、Nb含有酸化物層に含まれるNbの割合が、2.5質量%以下となるよう調整されることが好ましい。
正極活物質の表面にNb含有酸化物層を形成する方法としては、ゾルゲル法、メカノフュージョン法、CVD法、PVD法などが挙げられる。
正極合剤の成形体が含有する正極活物質は、その粒度分布が、第一の頻度のピークと第二の頻度のピークとを有し、前記第一の頻度のピークが1~8μmの範囲にあり、かつ前記第二の頻度のピークが15~35μmの範囲にある。単一の頻度ピークを有する粒度分布の正極活物質を使用した場合、正極合剤の成形体の密度を高めるには、プレス圧を高める必要があり、正極活物質の割れが生じやすい。しかし、正極合剤の成形体中の正極活物質が前記のような粒度分布であり、かつ硫化物系固体電解質が後述する平均粒子径を有する場合には、大粒径粒子の間に小粒径粒子が入り込んで、成形体全体の充填性が向上するため、形成時のプレス圧を過度に大きくすることなく成形体の密度を高めることができる。これにより、正極活物質の割れ(これによるNb含有酸化物層を持たない新生面の形成)を抑制しつつ、正極合剤の成形体のイオン伝導性を高め得ることから、全固体二次電池の負荷特性を向上させつつ、高温特性の低下を抑制できる。
正極合剤の成形体内での正極活物質の粒度分布を前記のように調整するには、成形体を形成するための正極合剤の調製において、正極活物質として、粒度分布の最頻粒子径が15~35μmである大粒径粒子と、粒度分布の最頻粒子径が1~8μmである小粒径粒子とを使用すればよい。
前記大粒径粒子と前記小粒径粒子の割合は、正極活物質の割れを防ぎ、かつ成形体全体の充填性を高めるため、質量比で75:25~95:5の範囲とすることが好ましい。
なお、二次粒子を形成している正極活物質を使用すると、正極合剤の成形体の形成時に二次粒子から一次粒子が脱離することがあるが、この脱離した一次粒子は固体電解質や導電助剤との接触が保たれ難いと推測され、正極活物質の利用率の低下の原因となる虞がある。よって、正極活物質の利用率を高めて、電池の負荷特性をより向上させる観点からは、正極活物質として使用される前記大粒径粒子および前記小粒径粒子のうちの少なくとも一方が一次粒子であることが好ましく、両方が一次粒子であることがより好ましい。
なお、一次粒子からなる正極活物質には、市販品を用いることができる。また、正極活物質中に二次粒子が一部混在しているが、大半が一次粒子からなるものを使用することもできる。
本明細書でいう正極合剤の成形体が含有する正極活物質、および正極合剤の調製に使用する正極活物質(大粒径粒子および小粒径粒子)、および固体電解質の粒度分布は、粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製マイクロトラック粒度分布測定装置「MT3300EXII」など)を用いて測定することができる(後記の実施例に記載の値は、この方法で測定したものである)。粒度分布の最頻粒子径は、粒度の小さい粒子から積分体積を求める場合の、体積基準の頻度が最大となる粒子径であり、平均粒子径は、体積基準の積算分率における50%径の値(D50)である。
正極合剤における正極活物質の含有量は、55~85質量%であることが好ましい。
正極の導電助剤には、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、グラフェン、カーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素材料などを使用することができる。正極合剤における導電助剤の含有量は、1~10質量%であることが好ましい。
炭素材料の中でも、負荷特性を向上させ、また正極合剤の充填性を高めるために、親水性部分を有するカーボン粒子を用いることが好ましい。前記親水性部分を有するカーボン粒子は、親水性部分を10質量%以上の割合で含むことが好ましく、12質量%以上であることが好ましく、一方、導電性が低下するのを防ぐため、前記カーボン粒子における親水性部分の割合は、30質量%以下であることが好ましい。
本明細書でいう前記カーボン粒子における「親水性部分」は、以下の通りである。pH=11のアンモニア水溶液:20mLにカーボン粒子:0.1gを添加して1分間の超音波照射を行い、得られた液を5時間放置して固相部分を沈殿させる。このときに沈殿せずに液相部分(上澄み液)に分散している部分が、「親水性部分」に該当する。
また、前記カーボン粒子全量中での「親水性部分」の割合は、以下の方法によって求められる値である。前記固相部分の沈殿後の前記液から上澄み液を除去し、残りの部分を乾燥させて、乾燥後の固体の重量を測定する。得られた重量を最初に添加したカーボンの重量:0.1gから差し引いた値が、上澄み液中に分散している「親水性部分」の重量となる。そして、「親水性部分」の重量を最初に添加したカーボンの重量:0.1gで除して百分率で表した値が、「親水性部分」のカーボン全量中での割合に該当する。
前記親水性部分を有するカーボン粒子の平均粒子径は、電極合剤の成形性をより高める観点から、一次粒子の平均粒子径が、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、一方、「親水性部分」の割合を高めやすいことから、一次粒子の平均粒子径が、70nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。
リチウムイオン二次電池などの電池の電極において、導電助剤として一般に使用されている黒鉛やカーボンブラック、カーボンナノチューブなどのカーボン粒子は、親水性部分の割合が5質量%以下である。このようなカーボン粒子に酸化処理を施すことにより、ヒドロキシ基やカルボキシ基、エーテル結合などが導入され、また、カーボンの共役二重結合が酸化されて単結合となり、部分的に炭素間結合が切断されることで、親水性部分が生成するため、親水性部分の割合が前記の値を満たすカーボン粒子を得ることができる。
親水性部分の割合が10質量%以上であるカーボン粒子のより具体的な製造方法としては、例えば、空隙を有するカーボン原料(多孔質炭素粉末、ケッチェンブラック、空隙を有するファーネスブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなど)を使用し、これを酸(硝酸、硝酸硫酸混合物、次亜塩素酸水溶液など)で処理した後、遷移金属化合物(遷移金属のハロゲン化物、遷移金属の無機塩、遷移金属の有機塩など)と混合し、この混合物をメカノケミカル反応させ、反応後の生成物を非酸化雰囲気下(窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下など)で加熱し、加熱後の生成物から遷移金属化合物や遷移金属化合物の反応生成物を酸で溶解させるなどして除去し、洗浄および乾燥する方法が挙げられる。
また、前記の空隙を有するカーボン原料を前記の遷移金属化合物と混合し、これを酸化雰囲気下(空気下などの酸素含有雰囲気下)で加熱し、加熱後の生成物から遷移金属化合物や遷移金属化合物の反応生成物を酸で溶解させるなどして除去し、洗浄および乾燥する方法によっても、親水性部分の割合が前記の値を満たすカーボン粒子を得ることができる。
なお、親水性部分の割合が10質量%以上である前記カーボン粒子の製造方法および条件の詳細は、特許文献1(国際公開第2015/133586号)に開示されており、その記載に従って製造すればよい。
導電助剤には、親水性部分の割合が10質量%以上であるカーボン粒子と共に、前記処理がなされていない通常のカーボン粒子、例えば、黒鉛やカーボンブラック、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維(VGCF)などを含有させることができる。特に、導電助剤として、気相成長炭素繊維(VGCF)やカーボンナノチューブなどの繊維状の炭素粒子を共存させることにより、正極合剤の導電性を高め、負荷特性をより向上させることができる。
親水性部分の割合が10質量%以上であるカーボン粒子と、それ以外の導電助剤粒子との混合割合は、質量比で、10:90~90:10とすることが好ましい。
正極の硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS-P、LiS-SiS、LiS-P-GeS、LiS-B系ガラスなどの粒子が挙げられる他、近年、リチウムイオン伝導性が高いものとして注目されているLGPS系のもの(Li10GeP12など)や、アルジロダイト系のもの〔LiPSClなどの、Li7-x+yPS6-xClx+y(ただし、0.05≦y≦0.9、-3.0x+1.8≦y≦-3.0x+5.7)で表されるもの、Li7-aPS6-aClBr(ただし、a=b+c、0<a≦1.8、0.1≦b/c≦10.0)で表されるものなど〕も使用することができる。これらの中でも、特にリチウムイオン伝導性が高く、化学的に安定性の高いアルジロダイト系材料が好ましく用いられる。
硫化物系固体電解質の平均粒子径は、正極活物質の粒度分布を前記のように調整することと相俟って、正極合剤の成形体の充填性を高めて、電池の負荷特性と高温特性とを向上させる観点から、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、また、5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。
正極には、硫化物系固体電解質と共に、その他の固体電解質(水素化物系固体電解質、酸化物系固体電解質など)も使用することができる。ただし、全固体電池用電極における硫化物系固体電解質以外の固体電解質の、固体電解質粒子全量中の割合は、30質量%以下であることが好ましい。なお、正極における固体電解質は、全て硫化物系固体電解質であってもよいため、硫化物系固体電解質以外の固体電解質の固体電解質全量中の割合の下限値は、0質量%である。
水素化物系固体電解質としては、例えば、LiBH、LiBHと下記のアルカリ金属化合物との固溶体(例えば、LiBHとアルカリ金属化合物とのモル比が1:1~20:1のもの)などの粒子が挙げられる。前記固溶体におけるアルカリ金属化合物としては、ハロゲン化リチウム(LiI、LiBr、LiF、LiClなど)、ハロゲン化ルビジウム(RbI、RbBr、RbF、RbClなど)、ハロゲン化セシウム(CsI、CsBr、CsF、CsClなど)、リチウムアミド、ルビジウムアミドおよびセシウムアミドよりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
酸化物系固体電解質としては、例えば、LiLaZr12、LiTi(PO、LiGe(PO、LiLaTiOなどの粒子が挙げられる。
硫化物系固体電解質以外の固体電解質の平均粒子径は、硫化物系固体電解質の平均粒子径と同等程度であることが好ましい。
正極合剤における固体電解質の含有量は、正極合剤の成形体内でのイオン伝導性をより良好に確保する観点から、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。ただし、正極合剤中の固体電解質量が多すぎると、例えば正極活物質の量が少なくなって、電池の容量が低下する虞がある。よって、正極合剤における固体電解質の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。
正極合剤には、樹脂製のバインダは含有させなくてもよく、含有させてもよい。樹脂製のバインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂などが挙げられる。ただし、樹脂製のバインダは正極合剤中において抵抗成分として作用するため、その量はできるだけ少ないことが望ましい。よって、正極合剤においては、樹脂製のバインダを含有させないか、含有させる場合にはその含有量を0.5質量%以下とすることが好ましい。正極合剤における樹脂製のバインダの含有量は0.3質量%以下であることがより好ましく、0質量%である(すなわち、樹脂製のバインダを含有させない)ことがさらに好ましい。
正極に集電体を使用する場合、その集電体としては、アルミニウムやステンレス鋼などの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル、発泡メタル;カーボンシート;などを用いることができる。
正極合剤の成形体は、例えば、正極活物質、導電助剤および固体電解質、さらには必要に応じて添加されるバインダなどを混合して調製した正極合剤を、加圧成形などによって圧縮することで形成することができる。
集電体を有する正極の場合には、前記のような方法で形成した正極合剤の成形体を集電体と圧着するなどして貼り合わせることで製造することができる。
正極合剤の成形体の厚み(集電体を有する正極の場合は、集電体の片面あたりの正極合剤の成形体の厚み。以下、同じ。)は、電池の高容量化の観点から、200μm以上であることが好ましい。なお、電池の負荷特性は、一般に正極や負極を薄くすることで向上しやすいが、本発明によれば、正極合剤の成形体が200μm以上と厚い場合においても、その負荷特性を高めることが可能である。よって、本発明においては、正極合剤の成形体の厚みが例えば200μm以上の場合に、その効果がより顕著となる。また、正極合剤の成形体の厚みは、通常、2000μm以下である。
(負極)
全固体二次電池の負極は、例えば、負極活物質、導電助剤および固体電解質などを含む負極合剤の成形体を有するものであり、前記成形体のみからなる負極や、前記成形体と集電体とが一体化してなる構造の負極などが挙げられる。
負極活物質としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などのリチウムを吸蔵・放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素を含む単体、化合物およびその合金;リチウム含有窒化物またはリチウム含有酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物;リチウム金属;リチウム/アルミニウム合金;も、負極活物質として用いることができる。
これらの中でも、リチウムチタン酸化物を用いることが好ましい。リチウムチタン酸化物としては、下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。
Li[Li1/3-c Ti5/3-d ]O (1)
前記一般式(1)中、Mは、Na、Mg、K、Ca、SrおよびBaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素で、Mは、Al、V、Cr、Fe、Co、Ni、Zn、Ym、Zr、Nb、Mo、TaおよびWよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、0≦c<1/3、0≦d<5/3である。
すなわち、前記一般式(1)で表されるリチウムチタン酸化物においては、Liのサイトの一部が元素Mで置換されていてもよい。ただし、前記一般式(1)において、元素Mの比率を表すcは、1/3未満であることが好ましい。前記一般式(1)で表されるリチウムチタン酸化物において、Liは元素Mで置換されていなくてもよいため、元素Mの比率を表すcは0でもよい。
また、前記一般式(1)で表されるリチウムチタン酸化物において、元素Mはリチウムチタン酸化物の電子伝導性を高めるための成分であり、元素Mの比率を表すdが、0≦d<5/3である場合には、その電子伝導性向上効果を良好に確保することができる。
負極活物質にはリチウムチタン酸化物のみを用いてもよいが、リチウムチタン酸化物と他の負極活物質とを使用する場合、負極活物質全量中のリチウムチタン酸化物以外の負極活物質の割合は、30質量%以下であることが好ましい。
負極合剤における負極活物質の含有量は、40~70質量%であることが好ましい。
負極の導電助剤には、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素材料などを使用することができる。負極合剤における導電助剤の含有量は5~15質量%であることが好ましい。
負極の固体電解質としては、リチウムイオン伝導性を有していれば特に限定されず、例えば、正極に使用し得るものとして先に例示した各種の硫化物系固体電解質、水素化物系固体電解質、酸化物系固体電解質などのうちの1種または2種以上を使用することができる。前記例示の固体電解質の中でも、リチウムイオン伝導性が高く、また、正極合剤の成形性を高める機能を有していることから、硫化物系固体電解質を用いることがより好ましい。
負極合剤における固体電解質の含有量は、30~55質量%であることが好ましい。
負極合剤には、樹脂製のバインダは含有させなくてもよく、含有させてもよい。樹脂製のバインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂などが挙げられる。ただし、樹脂製のバインダは負極合剤中においても抵抗成分として作用するため、その量はできるだけ少ないことが望ましい。よって、負極合剤においては、樹脂製のバインダを含有させないか、含有させる場合にはその含有量を0.5質量%以下とすることが好ましい。負極合剤における樹脂製のバインダの含有量は0.3質量%以下であることがより好ましく、0質量%である(すなわち、樹脂製のバインダを含有させない)ことがさらに好ましい。
負極に集電体を用いる場合、その集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル、発泡メタル;カーボンシート;などを用いることができる。
負極合剤の成形体は、例えば、負極活物質、導電助剤および固体電解質、さらには必要に応じて添加されるバインダなどを混合して調製した負極合剤を、加圧成形などによって圧縮することで形成することができる。
集電体を有する負極の場合には、前記のような方法で形成した負極合剤の成形体を集電体と圧着するなどして貼り合わせることで製造することができる。
負極合剤の成形体の厚み(集電体を有する負極の場合は、集電体の片面あたりの正極合剤の成形体の厚み。以下、同じ。)は、電池の高容量化の観点から、200μm以上であることが好ましい。なお、電池の負荷特性は、一般に正極や負極を薄くすることで向上しやすいが、本発明によれば、負極合剤の成形体が200μm以上と厚い場合においても、その負荷特性を高めることが可能である。よって、本発明においては、負極合剤の成形体の厚みが例えば200μm以上の場合に、その効果がより顕著となる。そして、本発明においては、正極合剤の成形体の厚みが200μm以上であり、かつ負極合剤の成形体の厚みが200μm以上である場合に、その効果が特に顕著となる。また、負極合剤の成形体の厚みは、通常、3000μm以下である。
(固体電解質層)
固体電解質層における固体電解質には、例えば、正極に使用し得るものとして先に例示した各種の硫化物系固体電解質、水素化物系固体電解質、酸化物系固体電解質などのうちの1種または2種以上を使用することができる。ただし、電池特性をより優れたものとするためには、硫化物系固体電解質を含有させることが望ましく、正極、負極および固体電解質層の全てに硫化物系固体電解質を含有させることがより望ましい。
固体電解質層は、樹脂製の不織布などの多孔質体を支持体として有していてもよい。
固体電解質層は、固体電解質を加圧成形などによって圧縮する方法;固体電解質を溶媒に分散させて調製した固体電解質層形成用組成物を基材や正極、負極の上に塗布して乾燥し、必要に応じてプレス処理などの加圧成形を行う方法:などで形成することができる。
固体電解質層形成用組成物に使用する溶媒は、固体電解質を劣化させ難いものを選択することが好ましい。特に、硫化物系固体電解質や水素化物系固体電解質は、微少量の水分によって化学反応を起こすため、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶媒に代表される非極性非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。特に、含有水分量を0.001質量%(10ppm)以下とした超脱水溶媒を使用することがより好ましい。また、三井・デュポンフロロケミカル社製の「バートレル(登録商標)」、日本ゼオン社製の「ゼオローラ(登録商標)」、住友3M社製の「ノベック(登録商標)」などのフッ素系溶媒、並びに、ジクロロメタン、ジエチルエーテルなどの非水系有機溶媒を使用することもできる。
固体電解質層の厚みは、100~300μmであることが好ましい。
(電極体)
正極と負極とは、固体電解質層を介して積層した積層電極体や、さらにこの積層電極体を巻回した巻回電極体の形態で、電池に用いることができる。
なお、電極体を形成するに際しては、正極と負極と固体電解質層とを積層した状態で加圧成形することが、電極体の機械的強度を高める観点から好ましい。
(電池の形態)
本発明の全固体二次電池の一例を模式的に表す断面図を図1に示す。図1に示す電池1は、外装缶40と、封口缶50と、これらの間に介在する樹脂製のガスケット60で形成された外装体内に、正極10、負極20、および正極10と負極20との間に介在する固体電解質層30が封入されている。
封口缶50は、外装缶40の開口部にガスケット60を介して嵌合しており、外装缶40の開口端部が内方に締め付けられ、これによりガスケット60が封口缶50に当接することで、外装缶40の開口部が封口されて素子内部が密閉構造となっている。
外装缶および封口缶にはステンレス鋼製のものなどが使用できる。また、ガスケットの素材には、ポリプロピレン、ナイロンなどを使用できるほか、電池の用途との関係で耐熱性が要求される場合には、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル(PEE)、ポリスルフォン(PSF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの融点が240℃を超える耐熱樹脂を使用することもできる。また、電池が耐熱性を要求される用途に適用される場合、その封口には、ガラスハーメチックシールを利用することもできる。
全固体二次電池の形態は、図1に示すような、外装缶と封口缶とガスケットとで構成された外装体を有するもの、すなわち、一般にコイン形電池やボタン形電池と称される形態のものに限定されず、例えば、樹脂フィルムや金属-樹脂ラミネートフィルムで構成された外装体を有するものや、金属製で有底筒形(円筒形や角筒形)の外装缶と、その開口部を封止する封止構造とを有する外装体を有するものであってもよい。
本発明の全固体二次電池は、従来から知られている二次電池と同様の用途に適用し得るが、有機電解液に代えて固体電解質を有していることから耐熱性に優れており、高温に曝されるような用途に好ましく使用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
実施例1
<親水性部分を有するカーボン粒子の作製>
一次粒子の平均粒子径が40nmで、2nm以下の細孔を有するカーボンブラック:9質量部と、Co(CHCOO)・4HO:99.6質量部と、LiOH・HO:32質量部とを蒸留水中で混合し、1時間攪拌した後、混合液をろ過してカーボンブラックを含む混合物を得た。
次に、前記混合物にLiOH・HO:30質量部を加え、エバポレーターを用い、空気中250℃で30分間加熱して、カーボンブラックにリチウムコバルト化合物が担持された複合体を得た。この複合体を、濃度98%の濃硫酸、濃度70%の濃硝酸及び濃度30%の塩酸の体積比が1:1:1の混合水溶液に投入し、超音波を照射させて複合体中のリチウムコバルト化合物を溶解させ、残った固体をろ過し、水洗し、乾燥させた。
前記混合水溶液によるリチウムコバルト化合物の溶解と、ろ過、水洗及び乾燥の工程を繰り返すことにより、リチウムコバルト化合物を完全に取り除き、10質量%以上の割合で親水性部分を含むカーボン粒子を得た。
得られたカーボン粒子:0.1gをpHが11のアンモニア水溶液20mlに添加し、超音波照射を1分間行なった後、5時間放置して固相部分を沈殿させた。
固相部分の沈殿後、上澄み液を除去して残余部分を乾燥させ、乾燥後の固体の重量を測定し、処理前のカーボン粒子の重量(0.1g)からの減少分を親水性部分の重量とした。処理前のカーボン粒子の重量に対する前記親水性部分の重量の割合を求めたところ、14.5質量%であった。
<正極の作製>
一次粒子で構成され、粒度分布の最頻粒子径が26μmの大粒径粒子:LiCo0.98Al0.01Mg0.01(正極活物質)と、同じく一次粒子で構成され、粒度分布の最頻粒子径が6μmの小粒径粒子:LiCo0.98Al0.01Mg0.01(正極活物質)と、平均粒子径が3μmの硫化物系固体電解質(Li7.0PS5.4Cl1.2)と、カーボンナノチューブ〔昭和電工社製「VGCF」(商品名)〕(導電助剤)と、前記親水性部分を有するカーボン粒子(導電助剤)とを、質量比で59.5:10.5:26.8:2.1:1.1の割合で混合し、よく混練して正極合剤を調製した。なお、前記大粒径粒子と前記小粒径粒子とが混合された正極活物質の粒度分布は、第一の頻度のピークと第二の頻度のピークとを有しており、第一の頻度のピークが6μmであり、かつ、第二の頻度のピークが26μmであった。
次に、前記正極合剤:92mgを粉末成形金型に入れ、プレス機を用いて加圧成形を行い、正極合剤成形体よりなる正極を作製した。なお、正極活物質の前記大粒径粒子および前記小粒径粒子には、いずれも表面にLiNbOからなる層が形成されており、LiNbOを含む正極活物質全体に対する、LiNbOに含まれるNbの割合は、1.5質量%であった。
<固体電解質層の形成>
次に、前記粉末成形金型内の前記正極合剤成形体の上に、平均粒子径が0.7μmの硫化物固体電解質(Li5.4PS4.4Cl0.8Br0.8):16mgを投入し、プレス機を用いて加圧成形を行い、前記正極合剤成形体の上に固体電解質層を形成した。
<負極の作製>
平均粒子径2μmのチタン酸リチウム(LiTi12、負極活物質)と、固体電解質層に使用したものと同じ硫化物固体電解質と、グラフェン(導電助剤)とを、質量比で50:41:9の割合で混合し、よく混練して負極合剤を調製した。次に、前記負極合剤:129mgを前記粉末成形金型内の前記固体電解質層の上に投入し、プレス機を用いて600MPaの面圧で加圧成形を行い、前記固体電解質層の上に負極合剤成形体よりなる負極を形成することにより、正極、固体電解質層および負極が積層された積層体を作製した。
このときの積層体の厚みは2250μmで、正極合剤成形体の厚みは730μm、負極合剤成形体の厚みは1320μm、固体電解質層の厚みは200μmであった。また、前記正極合剤成形体において、正極活物質である大粒径粒子および小粒径粒子は、それぞれ元の形状を保っていたことから、前記正極活物質の粒度分布が、およそ6μmの位置に第一の頻度のピークを有し、かつ、およそ26μmの位置に第二の頻度のピークを有することが確認された。
ステンレス鋼製の封口缶および外装缶を外装体として用い、封口缶および外装缶と前記積層電極体との間に、それぞれ厚みが0.1mmの多孔質カーボンシートが配置されるようにして封止を行うことにより、コイン形全固体二次電池を作製した。
比較例1
粒度分布の最頻粒子径が6μmの小粒径粒子を、粒度分布の最頻粒子径が26μmの大粒径粒子に置き換え、正極合剤中の正極活物質を全て大粒径粒子のみで構成した以外は、実施例1と同様にしてコイン形全固体二次電池を作製した。
比較例2
粒度分布の最頻粒子径が26μmの大粒径粒子を、粒度分布の最頻粒子径が6μmの小粒径粒子に置き換え、正極合剤中の正極活物質を全て小粒径粒子のみで構成した以外は、実施例1と同様にしてコイン形全固体二次電池を作製した。
比較例3
小粒径粒子を、粒度分布の最頻粒子径が6μmの粒子から、最頻粒子径が0.8μmの粒子に変更した以外は、実施例1と同様にしてコイン形全固体二次電池を作製した。
比較例4
大粒径粒子を、粒度分布の最頻粒子径が26μmの粒子から、最頻粒子径が40μmの粒子に変更した以外は、実施例1と同様にしてコイン形全固体二次電池を作製した。
実施例および比較例の全固体二次電池について、下記の各評価を行った。
<負荷特性評価>
作製した実施例および比較例の電池について、0.2Cの電流値で電池電圧が3.1Vになるまで行う定電流充電と、3.1Vの電圧で電流値が0.02Cになるまで行う定電圧充電を組み合わせた定電流-定電圧充電を行い、さらに、0.1Cの電流値で電池電圧が1.2Vになるまで定電流放電を行い、0.1Cでの放電容量を測定した。
次に、前記と同様の定電流-定電圧充電を行い、さらに、0.5Cの電流値で電池電圧が1.2Vになるまで定電流放電を行って、0.5Cでの放電容量を測定した。0.5Cでの放電容量を0.1Cでの放電容量で除した値(%)を求め、それぞれの電池の負荷特性を評価した。
<高温特性評価>
作製した実施例および比較例の電池について、負荷特性評価時と同じ条件で定電流-定電圧充電および0.1Cでの定電流放電を行い、0.1Cでの放電容量(貯蔵前容量)を測定した。続いて、前記と同様の定電流-定電圧充電を行い、さらに、充電状態の各電池を60℃の環境下で50日間貯蔵し、その後に各電池の温度を室温に戻してから、0.1Cの電流値で電池電圧が1.2Vになるまで定電流放電を行った。さらに、放電後の各電池に対し、負荷特性評価時と同じ条件で定電流-定電圧充電および0.1Cでの定電流放電を行い、0.1Cでの放電容量(貯蔵後容量)を測定した。貯蔵前容量に対する貯蔵後容量の割合を容量維持率(%)として求め、各電池の高温特性(貯蔵特性)を評価した。
前記の各評価結果を表1に示す。
Figure 2022125392000002
実施例1の電池の正極合剤の成形体は、粒度分布が第一の頻度のピークと第二の頻度のピークとを有し、前記第一の頻度のピークが1~8μmの範囲にあり、かつ前記第二の頻度のピークが15~35μmの範囲にある正極活物質を用い、かつ平均粒子径が0.1~5μmの硫化物系固体電解質を用いて構成されている。このため、表1に示す通り、形成時のプレス圧を過度に大きくすることなく成形体の充填性を高めることができ、負荷特性に優れ、高温での特性低下を防ぐことができた。
一方、単一の頻度ピークを有する粒度分布の正極活物質を使用した比較例1および比較例2の電池、並びに小粒径粒子の頻度ピークが小さすぎる比較例3の電池や、大粒径粒子の頻度ピークが大きすぎる比較例4の電池では、実施例1の電池に比べて正極合剤の成形体の充填性が低下したため、負荷特性に劣る電池となった。また、小粒径粒子のみを用いた比較例2の電池および小粒径粒子の頻度ピークが小さすぎる比較例3の電池は、正極活物質の比表面積が大きくなり、高温特性が低下した。
1 全固体二次電池
10 正極
20 負極
30 固体電解質層
40 外装缶
50 封口缶
60 ガスケット

Claims (7)

  1. 正極、負極、および固体電解質層を有する全固体二次電池であって、
    前記正極は、正極活物質、導電助剤および硫化物系固体電解質を含有する正極合剤の成形体を有しており、
    前記正極活物質は、表面にNb含有酸化物層を有しており、
    前記正極活物質の粒度分布が、第一の頻度のピークと第二の頻度のピークとを有し、
    前記第一の頻度のピークが1~8μmの範囲にあり、かつ前記第二の頻度のピークが15~35μmの範囲にあることを特徴とする全固体二次電池。
  2. 前記正極活物質がコバルト酸リチウムである請求項1に記載の全固体二次電池。
  3. 前記正極活物質の表面のNb含有酸化物層を含む正極活物質全体に対する、前記Nb含有酸化物層に含まれるNbの割合が、0.1質量%以上2.5質量%以下である請求項1または2に記載の全固体二次電池。
  4. 前記正極合剤における固体電解質の含有量が、15~40質量%である請求項1~3のいずれかに記載の全固体二次電池。
  5. 正極、負極、および固体電解質層を有する全固体二次電池を製造する方法であって、
    正極活物質と、導電助剤と、固体電解質とを混合して正極合剤を調製し、前記正極合剤を成形する工程を経て正極合剤の成形体を有する正極を作製する工程を有し、
    前記正極活物質として、粒度分布の最頻粒子径が15~35μmである大粒径粒子と、粒度分布の最頻粒子径が1~8μmである小粒径粒子とを使用し、
    前記固体電解質として、平均粒子径が0.1~5μmの硫化物系固体電解質を使用することを特徴とする全固体二次電池の製造方法。
  6. 前記大粒径粒子と前記小粒径粒子とを、質量比で75:25~95:5の割合で使用する請求項5に記載の全固体二次電池の製造方法。
  7. 前記大粒径粒子および前記小粒径粒子のうちの少なくとも一方に、一次粒子を使用する請求項5または6に記載の全固体二次電池の製造方法。
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