しかしながら、前述の方法には以下のような問題がある。
前述の方法を適用したグラウンドは、同じグラウンド内であっても埋設された透水管44との距離が近いほど水はけが良く、遠いほど水はけが悪くなる。一般的に、透水管44は等間隔に平行に埋設されるので、ライン状に、比較的水はけが良い箇所と比較的水はけが悪い箇所とが交互にでき、水はけに差が生じることとなる。
また、前述の方法は、余剰水を非基盤層42の勾配によって流し、排水するが、このとき、雨水等によって緩くなった非基盤層42の上層の土も徐々に流されてしまう。非基盤層42の上層の土が流された結果、例えば、非基盤層42の勾配が小さくなると、余剰水の排水能力が落ちてしまう。また、非基盤層42の上層の土は、不均一に流されるため、グラウンドの表面が荒れ、凹凸ができることがある。このとき凹んだ部分は、水たまりやクレバスのような深い溝状の水道(みずみち)になり、部分的に水はけが悪くなってしまう。
さらにまた、非基盤層42に含まれる有機物や粘土、シルト(沈泥)は浸透水の浸透と共に、徐々に地中深くに沈下するが、この沈下した有機物や粘土、シルトにより透水管44に目詰まりが起きる。前述の方法を適用したグラウンドは、図18からも分かるように、非基盤層42の上面の高度に差が生じている。水はその性質のより、水平を保ったまま地中に浸透するため、透水管44が目詰まりを起こした状態において、前述の方法を適用したグラウンドは、図19に示すように浸透水が非基盤層42に浸透していく。言い換えれば、前述の方法を適用したグラウンドは、高度が低い部分(外縁部)の方が、高度が高い部分(中央部)よりも水はけが悪い状態となる。
このように、前述の方法を適用したグラウンドは、同じグラウンド内で、水はけに差が生じ、例えば、グラウンドの中央部、又は、外縁部がぬかるんだり、透水管44に沿ってライン状に芝が枯れたり等、グラウンドの土や芝生の状態に差が生じるので好ましくない。
さらにまた、透水管44が目詰まりを起こした状態において、土壌の経時変化によって非基盤層42の浸透能力が劣化すると、非基盤層42が厚い中央部にシルト等が集積層を作ることでさらに水はけが悪化し、中央部も水はけが悪い状態となる。
一般的に、グラウンドの周囲には側溝や仕切りが設けられており、このようなグラウンドは、コンクリート等の水を通さない材料からなる(透水型の構造物も存在するが厚さが50mm~100mmと厚いため詰まりやすく、一度詰まるとほぼメンテナンスができないというデメリットがある。)。そのため、浸透水が透水管44でグラウンドの外に排出されなくなると、浸透水は非基盤層42に蓄積され、グラウンドは、過剰な水分を含んだ状態となる。特に芝生のグラウンドにおいてこの状態は、芝生の根腐れや芝枯れ、非基盤層42中の酸素欠乏により有毒な硫化水素ガスが発生し、芝生の生育を妨げるブラックレイヤーの要因となる。また、芝生以外のグラウンド(土のグラウンド等)においても、グラウンドが乾いた状態にならず使用が困難となる。
本発明は、従来のこのような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的の一は、水はけが良く、水はけに差が生じにくいグラウンド及びグラウンド施工方法を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明の第1の側面に係るグラウンドは、周囲が区画されたグラウンドであって、比較的水が浸透し難く、前記グラウンドの外縁部の一部又は全部に向かって、上面の高度が低くなるような勾配を有する基盤層と、前記基盤層から地表までの層であり、比較的水が浸透し易い非基盤層と、前記非基盤層に掘削されてなり、前記高度が低く設定された外縁部に沿って配される溝部とを備えることができる。
また、本発明の第2の側面に係るグラウンドは、周囲に側溝又は仕切りが設けられるグラウンドであって、比較的水が浸透し難く、前記側溝に向かって、上面の高度が低くなるような勾配を有する基盤層と、前記基盤層から地表までの層であり、比較的水が浸透し易い非基盤層と、前記非基盤層に掘削されてなり、前記側溝に沿って配される溝部と、前記溝部から前記側溝内部へ導水する流路とを備えることができる。
前記構成によれば、非基盤層に浸透した浸透水は、基盤層の勾配に沿って導水され、溝部に排水されるので、図18に示すような、従来の透水管を用いた方法と違い浸透水が排水できなくなることがない。また、基盤層の勾配を大きくすることで、浸透水を排水するスピードを向上させ、ひいては、非基盤層の浸透能力を向上させることができる。これにより、一般的な従来のグラウンドでは、雨水等の約3割を浸透水として処理し、残りの約7割が余剰水として処理していたところ、本発明に係るグラウンドは、浸透水として処理する雨水等の割合を増やし、余剰水として処理する雨水等の割合を減らすことができる。つまり、従来の方法に比べ、非基盤層の勾配を小さくできるので、余剰水と共に非基盤層の上層の土が流亡されるのを抑えることができ、さらに、非基盤層の上面の高度の差が原因で生じる水はけの差を小さくできる。また、従来の方法に比べ、非基盤層の厚さの差が大きくなりにくいので、土壌の経時変化によって非基盤層の浸透能力が劣化した後も、非基盤層が厚い箇所と薄い箇所とで、水はけに差が生じにくい。また、従来の透水管を用いた方法と違い、当然、透水管との距離の違いが原因の水はけの差も生じない。これらにより、複合効果として、現在芝及び土グラウンド施設から排出が環境問題となっている化学肥料・農薬・塩化カルシウム等も非基盤層の床土で一度濾過され、排出の割合が少なくなり当然、環境にも貢献ができる。
さらにまた、本発明の第3の側面に係るグラウンドは、前記非基盤層の勾配を、前記基盤層の勾配よりも小さくできる。前記構成によれば、土壌の経時変化によって非基盤層の浸透能力が劣化したとしても、非基盤層が厚くなる箇所は、溝部の近くとなるため、非基盤層が厚い箇所の水はけが極端に悪化することがなく、水はけに差が生じにくい。
本発明の第4の側面に係るグラウンドは、前記溝部の形状を維持するように該溝部の内部に、前記非基盤層の上面から、少なくとも一部が突出又は表出するように挿着され、側面に複数の透水孔が設けられ、該溝部に流入する水を濾過する筒状ハウジングである濾過構造体を備えることができる。前記構成によれば、浸透水及び余剰水の溝部への排水を阻害することなく、非基盤層に掘削されてなる溝部が、経時変化や外的要因によって崩れるのを防ぐことができる。また、溝部から濾過構造体の一部を突出又は表出させることにより、人や物が溝部に落下することを防止することができる。さらにまた、浸透水が濾過構造体介して外部に排出されため、浸透水及び余剰水に混じる、土砂、芝生の残滓、微生物が側溝や河川へ流れ込むのを防ぎ、芝生の残滓等に残る農薬、肥料によって生じる河川水の汚染が低減されるとともに、濾過構造体に付着した微生物が、水の汚れの原因物質であるチッソやリン等を栄養分として取り込み、分解しながら生き続けることで、排水を浄化することができる。また、仮に、濾過構造体が目詰まりを起こしたとしても、濾過構造体は外縁部に設置されているため設置箇所がわかりやすく、また、設置される濾過構造体の長さが短いのでメンテナンスが容易である。
本発明の第5の側面に係るグラウンドは、前記濾過構造体は、断面が略三角形状で、前記溝部の内部に、一頂点が下側となり、前記頂点と対向する辺が前記非基盤層の上面から突出又は表出するように挿着されることができる。前記構成によれば、濾過構造体は、断面が、溝部への挿着方向に向かって先細りする形状であるので、矩形状にした場合と比べて、溝周囲の土砂から掛かる土圧によって構造体中央部が湾曲する変形を起こし難く、上に引き抜く際の抵抗が少なくなり、溝部から濾過構造体を容易に引き抜くことができる。すなわち、濾過構造体のメンテナンス等、濾過構造体を溝部から引き抜いて行う作業が容易になる。
本発明の第6の側面に係るグラウンドは、前記過構造体は、断面が略三角形状で、少なくとも一辺が膨らみを有するよう形成され、前記溝部の内部に、前記膨らみを有する辺が下側となり、前記膨らみを有する辺と対向する頂点が前記非基盤層の上面から突出又は表出するように挿着されることができる。前記構成によれば、濾過構造体は、断面が、溝部への挿着方向と逆方向に向かって先細りする形状であるので、溝部から突出又は表出する部分が小さくできる。すなわち、突出又は表出する部分が、外的要因で壊れる可能性を下げることができる。
本発明の第7の側面に係るグラウンドは、前記濾過構造体は、前記溝部から取り外すことなく内部を清掃できる清掃手段を有することができる。
本発明の第8の側面に係るグラウンドは、比較的水が浸透し難く、前記グラウンドの外縁部の一部又は全部に向かって、上面の高度が低くなるような勾配を有する基盤層と、前記基盤層から地表までの層であり、比較的水が浸透し易い非基盤層と、前記高度が低く設定された外縁部に沿って配される透水管とを備えることができる。
前記構成によれば、非基盤層に浸透した浸透水は、基盤層の上面の勾配によって透水管に誘導されるので、浸透水を、透水管を介してグラウンド外に早く排水することができる。また、基盤層の勾配を大きくすることで、浸透水を排水するスピードを向上させること、ひいては、非基盤層の浸透能力を向上させることができる。これにより、従来の方法では、雨水等の約3割を浸透水として処理し、残りの約7割が余剰水として処理していたところ、本発明に係るグラウンドは、浸透水として処理する雨水等の割合を増やし、余剰水として処理する雨水等の割合を減らすことができる。つまり、従来の方法に比べ、非基盤層の勾配を小さくできるので、余剰水と共に非基盤層の上層の土が流されるのを抑えることができ、非基盤層の上面の高度の差が原因で生じる水はけの差を小さくできる。また、従来の方法に比べ、非基盤層の厚さの差が大きくなりにくいので、土壌の経時変化によって非基盤層の浸透能力が劣化した後も、非基盤層が厚い箇所と薄い箇所とで、水はけに差が生じにくい。また、仮に、透水管が目詰まりを起こしたとしても、従来の方法と比べ、透水管が外縁部下に埋設されているため埋設箇所がわかりやすく、また、埋設される透水管の長さが短いのでメンテナンスが容易である。
本発明の第9の側面に係るグラウンドは、前記非基盤層の勾配を、前記基盤層の勾配よりも小さくできる。前記構成によれば、土壌の経時変化によって非基盤層の浸透能力が劣化したとしても、非基盤層が厚くなる箇所は、透水管の近くとなるため、非基盤層が厚い箇所の水はけが極端に悪化することがなく、水はけに差が生じにくい。
本発明の第10の側面に係るグラウンド施工方法は、比較的、水が浸透し難い基盤層と、前記基盤層から地表までの層であり、水が浸透し易い非基盤層とを有するグラウンドの施工方法であって、前記グラウンドの外縁部の一部又は全部に向かって高度が低くなる勾配を、前記基盤層の上面、又は、前記非基盤層の上面、或いは、両方の上面の、いずれに形成するか、及び、該勾配の大きさを決定する勾配決定工程と、前記勾配決定工程の決定に基づいて、前記基盤層の上面、又は、前記非基盤層の上面、或いは、両方の上面の、いずれかに勾配を形成する勾配形成工程と、前記勾配形成工程において高度が低く設定された外縁部に沿って、非基盤層に掘削されてなる溝部を設ける溝部形成工程とを備えることができる。前記構成によれば、グラウンドの大きさや、形状、非基板層の透水特性に併せて勾配を形成する層及びその大きさを決定できるので、最も適した態様で、浸透水の排水が可能で、グラウンド内での水はけに差ができにくいグラウンドを施工することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのグラウンド及びグラウンド施工方法を例示するものであって、本発明はそれらを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(第一実施例:グラウンド1)
以下では、本発明を適用した第一実施例に係るグラウンド1を図1~11に基づいて説明する。
グラウンド1は、図1に示すように、平面視における形状が略四角形となるよう区画されたグラウンドであって、図2に示すように、基盤層11、非基盤層12、溝部13及び濾過構造体14とで構成されている。以下で、各要素について説明する。なお、グラウンド1の平面視における形状は、四角形に限定されず、四角形以外の多角形、円形、その他の形状であってもよい。
(基盤層11)
基盤層11は、図2に示すように、非基盤層12の下側に位置する固く締まった土の層であり、非基盤層12よりも水が浸透し難い特性を有する。また、基盤層11は、図4に示す矢印のように、グラウンド1の中心から外側に向かって発散する方向(以下、「発散方向」と称す。)に、上面の高度が下がる勾配を有する。該勾配は、中央部から外縁部に向かって徐々に大きくなるような態様である。これにより、非基盤層12を浸透し、基盤層11の上面に到達した浸透水は、基盤層11の勾配によって流され、濾過構造体14に排水される。
なお、基盤層11は、固く締まった土の層に限定されない。基盤層11は、非基板層12に比べ水が浸透し難いものであればよいので、例えば、非基盤層12のように水が浸透し易い土壌の上面に、コンクリートの層を形成した態様や、防水性のシートを敷き詰めた態様であってもよい。また、基盤層11の勾配の大きさは、特に限定されないが、勾配が大きい程、浸透水を排水するスピード(浸透水の排水能力)が向上し、ひいては、非基盤層の浸透能力が向上する。また、基盤層11の勾配の形状は、図4に示すように、勾配の大きさが滑らかに変化する形状に限定されず、例えば、図5に示すように、勾配の大きさが階段状に変化する形状や、図6に示すように、勾配の大きさが一定の(変化しない)形状であってもよい。さらにまた、基盤層11の勾配の方向は前述の発散方向に限定されず、図7に示すような4方向、図8に示すような2方向、また、図9に示すような1方向に高度が下がる勾配を有するようにしてもよい。以上の通り、基盤層11の勾配は、グラウンド1内の所望の箇所から、外縁部の一部又は全部に向かって、上面の高度が低くなるような態様であれば特に限定されず(前述の勾配の形状、勾配の方向、また、それらの組合せに限定されない。)、適宜、変更可能である。すなわち、基盤層11は、グラウンド1の規模、費用、工期、周囲の環境等に応じて、最適な態様を選択することができる。
(非基盤層12)
非基盤層12は、図2に示すように、床土121の層、荒砂122の層及び砂利123の層とからなる層であり、基盤層11よりも水が浸透し易い特性を有する。また、基盤層11の上側に位置する層であるので、雨水等からなる浸透水は、非基盤層12の下方に、徐々に浸透していき、最終的に基盤層11の上面に到達する。また、非基盤層12は、図4に示す矢印のように、グラウンド1の中心から外側に向かって発散方向(以下、「発散方向」と称す。)に、上面の高度が下がる勾配を有する。これにより、非基盤層12の浸透能力を超えて雨が降り、発生した余剰水は、非基盤層12の勾配によって流され、濾過構造体14に排水される。
なお、非基盤層12は、床土121の層、荒砂122の層及び砂利123の層とからなる必要はない。また、これらの層の厚さも、図2に示すような態様に限定されない。例えば、図3に示すように、各層の厚さが略均一な態様としてもよい。この態様であれば、グランウンド1の中央部と外縁部とで非基盤層12の状態が略同一であるので芝生の状態に差が生じにくくなる。また、各層の厚さの比も図2及び図3に示す態様に限定されない。床土121よりも荒砂122、荒砂122よりも砂利123の方が、粒度が大きく、浸透能力も高いという点を考慮した上で、適宜、変更すればよい。また、非基盤層12の勾配の大きさは、基盤層11と同様に特に限定されないが、勾配が小さい程、余剰水と共に非基盤層の上層の土が流されるのを抑えることができ、逆に、勾配が大きい程、余剰水を排水するスピード(余剰水の排水能力)が向上する。従来の方法では、雨水等の約3割を浸透水として処理し、残りの約7割が余剰水として処理していたところ、グラウンド1は、基盤層11の構成により、浸透水の排水能力を向上させることができるので、浸透水として処理する雨水等の割合を増やし、余剰水として処理する雨水等の割合を減らすことができる。このため、グラウンド1においては、非基盤層12の勾配の大きさを決定する際、余剰水の排水能力を向上させることよりも、余剰水と共に非基盤層の上層の土が流されるのを抑えることを重視する方が好ましい。例えば、図2における床土121及び荒砂122を砂利123に変え、非基盤層12を砂利123のみで構成し、浸透能力を高めれば、浸透水の排水能力も高まるので、非基盤層12に勾配を設けない(雨水等の略全てを浸透水として処理する)態様とすることも可能である。このように、グランウンド1の非基盤層12に勾配を小さくする、又は、勾配を設けない態様にすることで、非基盤層12の上面で水や肥料、農薬等が流亡するのを抑えることができる。
さらにまた、非基盤層12の勾配の形状は、図4に示すように、勾配の大きさが滑らかに変化する形状に限定されず、例えば、図5に示すように、勾配の大きさが階段状に変化する形状や、図6に示すように、勾配の大きさが一定の(変化しない)形状であってもよい。さらにまた、非基盤層12の勾配の方向は前述の発散方向に限定されず、図7に示すような4方向、図8に示すような2方向、また、図9に示すような1方向に高度が下がる勾配を有するようにしてもよい。さらにまた、非基盤層12の勾配の方向は、基盤層11の勾配の方向と必ずしも一致する必要はないが、浸透水及び余剰水を同じ濾過構造体14に排水できるため、非基盤層12の上面の高度が低い位置(余剰水が流れ着く位置)と、基盤層11の上面の高度が低い位置(浸透水が流れ着く位置)とは、一致する方が好ましい。以上の通り、非基盤層12の勾配は、グラウンド1内の所望の箇所から、外縁部の一部又は全部に向かって、上面の高度が低くなるような態様であれば特に限定されず、適宜、変更可能である。すなわち、非基盤層12は、グラウンド1の規模、費用、工期、周囲の環境等に応じて、最適な態様を選択することができる。
(溝部13)
溝部13は、図1及び図2に示すように、非基盤層12に掘削されてなる溝であって、グラウンド1の周囲(平面視における四辺)に設けられる。これより、浸透水及び余剰水は、溝部13に誘導され、排水される。溝部13に排水された水は、濾過構造体14で濾過され、例えば、集水枡CBに集水する形でグラウンド1の外に排水される(その他には、集水枡CBに集水せずにグラウンド1の外に直接排水する方法や、グラウンド1近くの側溝内に排水する方法がある。)。なお、溝部13は前述のグラウンド1の周囲の全てに設けられる態様に限定されず、グラウンド1の周囲のうち、一部に設ける態様であってもよい。ただし、溝部13は、全ての、基盤層11の上面の高度が低い位置(浸透水が流れ着く位置)と、非基盤層12の上面の高度が低い位置(余剰水が流れ着く位置)とに沿って設けられる態様が最も効率良く排水できるため好ましい。また、溝部13の大きさは特に限定されない。
(濾過構造体14)
濾過構造体14は、例えば、高強度合成樹脂や高強度ポリエチレン、腐食しない網状金属等で形成され、図10に示すように、断面が略三角形状で側面に複数の透水孔141を有する筒状ハウジングである。また、濾過構造体14は、図2に示すように、溝部13の内部に、一頂点が下側となり、この頂点と対向する辺が非基盤層14の上面から表出するように挿着される。
このように、濾過構造体14は、透水孔141を備えるため、浸透水及び余剰水が溝部13へ排水されることを阻害することがなくまた、高強度の材料で作られているため、溝部13を内側から支え、経時変化や外的要因によって溝部13が崩れるのを防ぐことができる。また、非基盤層14の上面から表出させた辺が溝部13の蓋として機能するため、人や物が溝部13に落下することを防止することができる。さらにまた、濾過構造体14は、フィルターとしても機能するため、浸透水及び余剰水に混じる、土砂、芝生の残滓、微生物が側溝や河川へ流れ込むのを防ぎ、芝生の残滓等に残る農薬、肥料によって生じる河川水の汚染が低減されるとともに、濾過構造体14に付着した微生物が、水の汚れの原因物質である窒素やリン等を栄養分として取り込み、分解しながら生き続けることで、排水を浄化することができる。さらにまた、濾過構造体14は、断面が、溝部への挿着方向に向かって先細りする形状であるので、矩形状にした場合と比べて、溝周囲の土砂から掛かる土圧によって構造体中央部が湾曲する変形を起こし難く、上に引き抜く際の抵抗が少なくなり、溝部13から濾過構造体14を容易に引き抜くことができる。すなわち、濾過構造体14のメンテナンスや清掃等、濾過構造体14を溝部13から引き抜いて行う作業が容易になる。さらにまた、濾過構造体14は、下水管の洗浄に用いられる既存の洗管ノズル(特許請求の範囲における「清掃手段」の一例に対応する。)等を用いることで、溝部13から濾過構造体14から引き抜くことなく清掃することも可能である。
なお、濾過構造体14は、必ずしも溝部13に挿着する必要はないが、前段に記載の理由から、溝部13に挿着する方が好ましい。また、濾過構造体14は、必ずしも、前述の形状である必要はなく、例えば、矩形状であってもよい。同様に、濾過構造体14は、必ずしも、前述の材料である必要はなく、人の踏圧や、溝部13の側面から掛かる土圧に耐え得る強度を有するものであればよい。さらにまた、濾過構造体14の溝部13への挿着方法も前述のものに限定されず、一部が突出するように挿着してもよいし、例えば、図11に示すように、溝部13の内部に、一辺が下側となり、この辺と対向する頂点が非基盤層14の上面から表出するように挿着してもよい。これにより、濾過構造体14は、断面が、溝部への挿着方向と逆方向に向かって先細りする形状であるので、溝部13から突出又は表出する部分を小さくすることができる。すなわち、突出又は表出する部分に、濾過構造体14の強度を超えた(人の踏圧や、溝部13から掛かる土圧以上の)外力がかかり、濾過構造体14が壊れる可能性を下げることができる。また、濾過構造体14の大きさは特に限定されず、挿着する溝部13に合わせて適宜、変更してもよい。また、逆に、既存の濾過構造体14に合わせて溝部13の大きさを変更してもよい。さらに言えば、既存の濾過構造体14が溝部13よりも小さい場合、複数の濾過構造体を組み合わせることで、適用することも可能である。具体的に、濾過構造体14が溝部13の長さ方向に対して小さい場合は、複数の濾過構造体14を長さ方向に連結することで、溝部13の長さに合わせて挿着すればよい。また、濾過構造体14が溝部13の鉛直方向に対して小さい場合は、図12に示すように、溝部13の鉛直方向に複数の濾過構造体14を積み重ねて挿着すればよい。
(グラウンド1の水はけについて)
本発明を適用した第一実施例に係るグラウンド1は、前述の構成により、グラウンド1内で水はけに差が生じにくいという特徴を有する。この理由について以下で説明する。
まず、比較対象として、従来の水はけを良くするための方法を適用したグラウンド4の水はけについて説明する。グラウンド4は、図18に示すように、基盤層41と非基盤層42とで構成され、非基盤層42の上面に勾配が設けられ、基盤層41の上層に複数の透水管44が埋設されている。この構成により、余剰水は、非基盤層42の勾配によって流され、例えば、周囲を取り囲む側溝GUに排水される。一方、浸透水は、透水管44によって誘導され、グラウンドの外に排水される。これにより、グラウンド4は、自然乾燥のグラウンドに比べ、水はけの良いグラウンドを実現できるが、グラウンド4内で水はけに差が生じてしまう。具体的に、グラウンド4における水はけの差の生じ方には、後述する3つのパターンがある。
1つ目は、透水管44との距離によって水はけに差が生じるパターンである。透水管44が正常に機能している場合、当然、埋設された透水管44からの距離が近いほど水はけが良く、遠いほど水はけが悪くなる。一般的に、透水管44は、図18に示すように等間隔に平行に埋設されるので、ライン状に、比較的水はけが良い箇所と比較的水はけが悪い箇所とが交互にでき、水はけに差が生じる。
2つ目は、グラウンド4の表面に水たまりやクレバスのような深い溝状の水道ができ、水はけに差が生じるパターンである。グラウンド4は、余剰水を非基盤層42の勾配によって流し、排水する態様であるが、このとき、雨水等によって緩くなった非基盤層42の上層の土が流される。土は不均一に流されるため、グラウンドの表面が荒れ、凹凸ができた結果、凹んだ部分が水たまりや水道になることがある。周知のとおり水たまりや水は、これら以外の部分に比べ、乾いた状態になるまでに時間がかかるので、グラウンド4内で水はけに差が生じる。
3つ目は、透水管44が有機物や粘土、シルトにより目詰まりを起こした後、非基盤層42の上面の高度の差により水はけに差が生じるパターンである。透水管44が目詰まりを起こし、正常に機能しなくなると、浸透水を透水管44でグラウンド4の外に誘導できなくなる。このとき、図18からも分かるように、非基盤層42の上面の高度に差が生じており、水はその性質のより、水平を保ったまま地中に浸透するため、透水管44が目詰まりを起こした状態において、前述の方法を適用したグラウンドは、図19に示すように浸透水が非基盤層42に浸透していく。言い換えれば、前述の方法を適用したグラウンドは、高度が低い部分(外縁部)の方が、高度が高い部分(中央部)よりも水はけが悪い状態となり、グラウンド4内では水はけに差が生じる。なお、透水管44が目詰まりを起こした状態において、土壌の経時変化によって非基盤層42の浸透能力が劣化すると、非基盤層42が厚い中央部にシルト等が集積層を作ることでさらに水はけが悪化し、中央部も水はけが悪い状態となる。
つまり、1つ目のパターンはグラウンド4が施工直後(経時変化前)で、グラウンド4の排水機能が正常である場合の水はけの差の生じ方であり、2つ目のパターンと3つ目のパターンとはグラウンド4が経時変化し、グラウンド4の排水機能が正常でなくなった場合の水はけの差の生じ方である。このように、従来の水はけを良くするための方法を適用したグラウンド4は、経時変化の前後に関わらず水はけに差が生じ、ひいてはグラウンドの土や芝生の状態に差が生じるので好ましくない。
これに対して、グラウンド1は、透水管44を用いないので、ライン状に水はけが良い箇所と比較的水はけが悪い箇所とができることはない。また、図2に示すように、基盤層11に勾配を設けること(基盤層11の勾配を大きくすること)により、非基盤層12の勾配を小さくできるので、非基盤層の上面の高度の差が原因で生じる水はけの差を小さくできる。また、前述のとおり、非基盤層12に勾配を設けない態様にもできる。この場合、高度の差が原因で生じる水はけの差を無くすこともでき、また、非基盤層42の上層の土が流されなくなるので、グラウンドの表面が荒れ、水たまりができるのを防ぐことができる。また、図2に示すように、非基盤層12は溝部13に近い程、厚くなる態様である。浸透水の排水能力は、溝部13に近い程、高いので、土壌の経時変化によって非基盤層12の浸透能力が劣化したとしても、非基盤層12が厚い箇所(外縁部)の水はけが極端に悪化することがなく、水はけに差が生じにくい。
以上の通り、グラウンド1は、経時変化の前後を問わず、グラウンド1内での水はけに差が生じにくく、ひいては、グラウンドの土や芝生の状態にも差が生じにくくなるので好適である。
なお、従来のグラウンドは、一般的に、グラウンドの周囲には、側溝や仕切りが設けられており、これらはコンクリート等の水を通さない材料からなる(透水型の構造物も存在するが厚さが50mm~100mmと厚いため詰まりやすく、一度詰まるとほぼメンテナンスができないというデメリットがある。)。このような従来のグラウンドの基盤層に勾配を設けると、浸透水が非基盤層の外縁部に集中し、グラウンドの外縁部の水はけが、非常に悪い状態となる。このため、従来では、グラウンドに比較的大きな勾配を設ける等、グラウンドのデザイン形成をとして必要な場合を除き、基盤層に勾配を設けることは避けられてきた。すなわち、本発明は、水はけの向上と、水はけの差を減らすこという課題を、当業者が通常は適用を考えない「勾配を有する基盤層」を一構成要素とすることで解決したものであり、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(グラウンド1のその他の特徴)
グラウンド1は、前述の水はけに差が生じにくいという特徴の他に沈下した粘土やシルトの影響を受けにくいという特徴を有する。具体的には、グラウンド4には、沈下した粘土やシルトによって、透水管44が目詰まりを起こすと、浸透水を透水管44でグラウンド4の外に誘導できなくなるという欠点があるのに対し、グラウンド1は、浸透水を基盤層11の勾配によって溝部13に誘導する態様であるため、浸透水の誘導という点において沈下した粘土やシルトの影響を受けることはない。
また、グラウンド4において目詰まりを起こした透水管は、グラウンド4から掘り起こされメンテナンスされることがあるが、粘土やシルト自体は沈下したままであるため、すぐに目詰まりが再発する虞があった。すなわち、一度、透水管が目詰まりを起こしたグラウンド4の排水機能を正常に戻すためには、グラウンド全体を改修しなければならなかった。これに対し、グラウンド1は、沈下した粘土やシルトを浸透水と同様に、基盤層11の勾配によって濾過構造体14に誘導することが可能である。誘導された粘土やシルトは、濾過構造体14で濾過され、濾過構造体14のメンテナンスや清掃の際に容易に取り除区ことができる。なお、沈下した粘土やシルトの誘導は、非基盤層12における砂利123の層の割合を大きくすることで、より効率的に行うことが可能である。
さらにまた、グラウンド1は、一定の土壌菌のみが多く蓄積(土壌菌の集中化)することによる土壌の劣化を緩和できるという特徴を有する。具体的にグラウンドには、経年により床土内に古根等の有機物が蓄積し、該有機物に一定の土壌菌がフローラを形成することが知られている。従来のグラウンドにおいて土壌菌は、浸透水と共に地中に移動し、グラウンド内に蓄積され続ける(グラウンド外に排出されない)ため、一定の土壌菌のみが増え続けることでグラウンド内の土壌菌が偏り、その結果、連作障害が起こる。従来ではこのような場合、床土の入れ替え等を行い、土壌を改善する必要があった。これに対してグラウンド1は、基盤層11の勾配による排水と共に、一定量の土壌菌を継続的に排出できるので、グラウンド内に一定の土壌菌のみが多く蓄積されるのを緩和し、ひいては連作障害等の問題が起きるのを防ぐことができる(グラウンドの永続性が保てる。)。
(第二実施例:グラウンド2)
以下では、本発明を適用した第二実施例に係るグラウンド2を図13及び図14に基づいて説明する。グラウンド2は、基盤層21、非基盤層22、溝部23、濾過構造体24及び側溝GUとで構成されており、基盤層21は基盤層11と、非基盤層22は非基盤層12と同一の態様である。また、溝部23は溝部13と、濾過構造体24は濾過構造体14と略同一の態様であって、溝部23は側溝GUへ導水するための流路231を有し、濾過構造体24は溝部23に挿着された際、流路231と当接する位置に穴241を有する。これにより、浸透水及び余剰水は、溝部23、濾過構造体24、穴241、流路231を介して側溝GUに排水される。側溝GUに排水された水は、例えば、集水枡CBに集水する形でグラウンド2の外に排水される。
グラウンド2は、グラウンド1で説明したように、平面視の形状、勾配の大きさ・形状・方向、濾過構造体24の材料等、適宜変更可能である。また、グラウンド2はグラウンド1と同一の効果を有しているので、例えば、グラウンドの施工場所に側溝GUが既存している場合はグラウンド2の態様でグラウンドを施工する(側溝GUが既存していない場合はグラウンド1の態様でグラウンドを施工する。)ようにすれば、既存の側溝GUを利用することができ、好適である。
(第三実施例:グラウンド3)
以下では、本発明を適用した第三実施例に係るグラウンド3を図15及び図16に基づいて説明する。グラウンド3は、基盤層31、非基盤層32、透水管34及び側溝GUとで構成されており、基盤層31は基盤層11と、非基盤層32は非基盤層12と同一の態様である。言い換えれば、グラウンド3は、グラウンド1の溝部13及び濾過構造体14に代えて、基盤層31の上面の高度が低い位置(浸透水が流れ着く位置)の基盤層31の上層に沿って透水管34が埋設される態様である。これにより、浸透水は基盤層31の勾配によって流され、透水管34に排水され、余剰水は非基盤層32の勾配によって流され、側溝GUに排水される。透水管34及び側溝GUに排水された水は、例えば、集水枡CBに集水する形でグラウンド3の外に排水される。
グラウンド3は、グラウンド1で説明したように、平面視の形状、勾配の大きさ・形状・方向等、適宜変更可能である。また、グラウンド3はグラウンド1と同一の効果を有している。
また、従来のグラウンド4において透水管を掘り起こしてメンテナンスする場合、透水管44の埋設箇所が適切に記録されていないと透水管44(特に中央部に埋設される透水管44)の埋設箇所の特定が困難となることがあった。これに対し、グラウンド3は、透水管34は、基盤層31の上面の高度が低い位置、すなわち、グラウンド3の周囲にのみ埋設される(グラウンド3の中央部に透水管34は埋設されない)態様であるから、透水管34の埋設箇所の特定が容易である。さらにまた、前述のメンテナンスにおいて、グラウンドで主に使用される中央部は掘削されないため、メンテナンス後のすぐにグラウンドが使用できるようになる。なお、グラウンド3は前述の構成に限られず、例えば、側溝GUを備えない態様であってもよい。この場合、余剰水を直接排水する手段がなくなるので、基盤層31の勾配を大きくしたり、非基盤層12を砂利123のみで構成したり等の方法により、浸透水の排水能力も高め、余剰水として処理する雨水等を減らす、又は、全ての雨水等を浸透水として処理する態様が好ましい。また、透水管34と濾過構造体14とを併用する態様(例えば、透水管34の上に濾過構造体14を設置する態様)であってもよい。
(グラウンド1~3を含むグラウンドの施工方法)
以下では、グラウンド1~3を含むグラウンドの施工方法について図17のフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップST101で、グラウンドの規模、費用、工期、周囲の環境等に応じて、最適なグラウンドの態様を決定する(特許請求の範囲における「勾配決定工程」の一例に対応する。)。具体的には、(1)基盤層の勾配の態様(要否、大きさ、形状、方向等)、(2)非基盤層の勾配の態様(要否、大きさ、形状、方向等)、(3)溝部の態様(要否、位置、大きさ等)、(4)濾過構造体又は透水管の態様(要否、大きさ、取り付け方法等)を決定する。すなわち、この工程における決定次第で、グラウンド1~3のいずれかを施工することも可能であるし、また、その他の態様のグラウンドを施工することも可能である。なお、(1)~(4)は、各要素の説明で前述した効果や利点・欠点等を考慮して決定するのが好ましい。特に、「グラウンド1の水はけについて」で説明した理由から、基盤層に勾配を設ける場合は、溝部を設ける方がよい。また、この工程における選択事項は、前述のものに限定されない。
次に、ステップST102で、ステップST101の決定に基づいて、基盤層を形成し(特許請求の範囲における「勾配決定工程」の一例に対応する。)、ステップST103で、非基盤層を形成し(特許請求の範囲における「勾配形成工程」の一例に対応する。)、ステップST104で、溝部を形成し(特許請求の範囲における「溝部形成工程」の一例に対応する。)、ステップST105で、濾過構造体を溝部に挿着する、又は、透水管を埋設する。
なお、ステップST104及びステップST105は、ステップST101の決定に応じて、スキップすることもある。
以上説明したように、本発明に係るグラウンド及びグラウンド施工方法は、水はけが良く、非基盤層の浸透能力が劣化の前後を問わず、水はけに差が生じにくいグラウンドを、当業者が通常、考えない方法で実現したものである。