JP2022117569A - 画像形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、チキソ性の高いインクを用い、ノズル近傍でインクを循環させてインクを吐出させる際に、吐出時のインク粘度変化を抑制することができ、ノズル間の吐出速度を均一にして画質の向上を図ることができる画像形成方法を提供することである。【解決手段】本発明の画像形成方法は、接触式帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニングブレードを、電子写真感光体の周りに設置し、電子写真感光体の表面保護層に、無機微粒子を含有し、電子写真感光体の弾性変形率が、50%以下で、クリーニングブレードの反発弾性率が、30%以下であり、前記トナーを構成するトナー粒子が、滑剤、正帯電性の無機外添剤及び負帯電性の無機外添剤を含有し、前記正帯電性の無機外添剤の質量と、前記負帯電性の無機外添剤の質量とが、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする。式(1):0.28≦正帯電性の無機外添剤の質量/負帯電性の無機外添剤の質量【選択図】なし

Description

本発明は、画像形成方法に関し、特に、帯電ローラー方式における電子写真プロセスにおいて、雨だれの発生を防止することができ、感光体の耐摩耗性向上を図ることができる画像形成方法に関する。
近年、感光体の帯電方式として、高画質化及び装置の小型化に有利で、スコロトロン・コロトロン帯電方式に比べ、オゾンやNOxなどの酸化性ガスの発生量を低減することができる帯電ローラーを使用する近接帯電方式が採用されている。
近接帯電方式による帯電プロセスは、感光体にかかる放電エネルギーが大きいので、感光体の膜強度劣化が大きくなる。その結果、膜減耗が大きくなり、感光体の寿命が短くなる。
従来、帯電ローラーを使用し、感光体の表面保護層にポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂を採用する技術は、よく使用されてきたが、感光体の膜削れが大きいために感光体寿命が短くなるという問題があった。この問題を解決するために、感光体の表面保護層に無機微粒子を入れて感光体ライフを長くするという製品開発に取り組んだが、クリーニング不良により感光体の表面保護層にトナー外添剤成分が付着する雨だれという問題が発生している。
また、別の従来技術として、帯電機構として、スコロトロン帯電を使用し、熱可塑性樹脂からなる表面保護層に無機微粒子を分散した感光体を使用したとき、雨だれの発生を抑制する技術は、例えば特許文献1に開示されており、製品化もされている。
雨だれの発生を抑制する因子のひとつとして、感光体の表面保護層に滑剤が塗布されると、トナーの外添剤が感光体の表面保護層に付着するのを抑制し、雨だれを抑制できることが知られているが、スコロトロン帯電に比較してローラー帯電は、放電エネルギーが大きく、感光体表面に付着している滑剤を分解してしまい、トナー外添剤の付着を促進するため雨だれが発生しやすくなる。
特に、帯電ローラーを使用し、現像機中の現像剤に含有する滑剤を感光体に現像するプロセスでは、感光体へ供給される滑剤量が少ないため、感光体表面に分解されていない滑剤量は非常に少なく、雨だれが発生しやすい。
特開2006-301497号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、帯電ローラー方式における電子写真プロセスにおいて、雨だれの発生を防止することができ、感光体の耐摩耗性向上を図ることができる画像形成方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、感光体の表面保護層に無機微粒子を含有し、感光体の弾性変形率を50%以下とし、かつ、クリーニングブレードの反発弾性率が30%以下とし、さらに、トナーの外添剤として、滑剤、正帯電性の無機外添剤及び負帯電性の無機外添剤を含有し、これら正帯電性の無機外添剤と負帯電性の無機外添剤の質量を特定の関係を満たすことによって、雨だれを防止し感光体の耐摩耗を向上することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.静電荷像現像用トナーを用いる電子写真プロセスによる画像形成方法であって、
接触式帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニングブレードを、電子写真感光体の周りに設置し、
前記電子写真感光体の表面保護層に、無機微粒子を含有し、
前記電子写真感光体の弾性変形率が、50%以下で、
前記クリーニングブレードの反発弾性率が、30%以下であり、
前記静電荷像現像用トナーを構成するトナー粒子が、滑剤、正帯電性の無機外添剤及び負帯電性の無機外添剤を含有し、
前記正帯電性の無機外添剤の質量と、前記負帯電性の無機外添剤の質量とが、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする画像形成方法。
式(1):0.28≦正帯電性の無機外添剤の質量/負帯電性の無機外添剤の質量
2.前記電子写真感光体の前記表面保護層に含有される前記無機微粒子が、シリカ(SiO)粒子であることを特徴とする第1項に記載の画像形成方法。
3.前記電子写真感光体の前記表面保護層に熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする第1項又は第2項に記載の画像形成方法。
4.前記電子写真感光体に対して当接する前記クリーニングブレードのエッジ角が、鈍角に形成されていることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
5.前記正帯電性の無機外添剤が、チタン酸カルシウム粒子であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
6.前記正帯電性の無機外添剤が、チタン酸ストロンチウム粒子であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
7.前記正帯電性の無機外添剤が、サイクリックシラザン及びアルキルアルコキシシランで表面修飾されたシリカ粒子であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
8.前記トナー粒子が、結晶性ポリエステル樹脂及びスチレン・アクリル樹脂を含有することを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
9.前記結晶性ポリエステル樹脂が、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることを特徴とする第8項に記載の画像形成方法。
本発明の上記手段により、感光体の表面にトナーが付着して、クリーニング不良により生じる雨だれを防止することができ、感光体の耐摩耗性向上を図ることができる画像形成方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確になっていないが、以下のように推察している。
帯電ローラー方式では、感光体表面に機能する滑剤が少なく、トナー成分(トナー粒子及び外添剤)が感光体の表面に付着しやすく、雨だれが発生しやすい。
そこで、雨だれの発生を防止するために、クリーニングブレードのニップ部に十分な長さを持ちかつクリーニングブレードの長手方向に均一な無機外添剤からなる静止層を形成し、感光体表面に付着したトナー粒子を効率よく削り取る必要がある。
すなわち、十分な長さを持ちクリーニングブレードの長手方向に均一な静止層を形成するためには、使用するトナーの外添剤として、正帯電の無機外添剤を一定量以上添加することが必要であることが分かった。これは、静止層を構成する大部分の外添剤であるシリカ粒子が凝集すると、静止層の形成を悪くしてしまうが、負帯電のシリカ粒子と正帯電の無機外添剤が吸着することにより、シリカ粒子の凝集が抑制されて静止層の形成状態を良好にすることが発現するためであると推察される。
具体的には図1に示すように、クリーニングブレード119Yのニップ部Nでは、ニップ部Nから離れるにつれて外添剤粒子300の粒径が大きくなるように、外添剤粒子300の塊が静止層Lとして形成され、トナー粒子Tを静止させてクリーニングすると同時に、外添剤粒子300が感光体111Yの表面を研磨する。ニップ部Nには、粒径の小さな外添剤粒子(例えば、小径シリカ粒子301)が最終的には静止層Lを形成するが、正帯電性の無機外添剤粒子303がニップ部Nに存在することで、負帯電性である、大径シリカ粒子302と小径シリカ粒子301が混在した状態での粒径選別が起こりやすくなり、小径シリカ粒子301の凝集が抑制されることで、良くほぐれた小径シリカ粒子301がニップ部Nに集まり、クリーニングブレード119Yの長手方向に均一な静止層Lを形成することができる。
また、大径シリカ粒子302も、正帯電性の無機外添剤粒子303によって凝集が抑制され、クリーニングブレード119Yの長手方向に均一な静止層Lを形成することができる。
以上のようにして、ニップ部Nに十分な長さを持ち、クリーニングブレード119Yの長手方向に均一な外添剤粒子300(小径シリカ粒子301、大径シリカ粒子302及び正帯電性の無機外添剤粒子303)からなる静止層Lが形成されることにより、感光体111Yの表面に付着したトナー粒子Tを効率よく削り取ることができ、その結果、帯電ローラー方式においても雨だれを確実に防止することができると推察される。
また、本発明において、クリーニングブレードの反発弾性率を30%以下とした理由については、ブレード振動が小さいため、雨だれが発生しにくいブレード条件となるためである。
また、感光体の弾性変形率を50%以下とした理由については、本来、感光体の弾性変形率は高い方が、ブレードをすり抜ける外添剤によって感光体の傷がつきにくいため、外添剤付着が起こりにくく、雨だれは発生しにくい。
しかしながら、本発明では、雨だれに不利な弾性変形率がある程度小さい感光体(弾性変形率が50%以下)を使用するときに、ブレード条件(反発弾性率の規定)と、前記したように現像剤の成分(正帯電性の外添剤の添加)を工夫することで、雨だれ発生を抑制することができたものである。
さらに、電子写真感光体の表面保護層に、無機微粒子を含有し、当該無機微粒子は一般に表面硬度が高いことから、感光体の耐摩耗性も向上させることができる。
クリーニングブレードのニップ部におけるトナー粒子と外添剤の状態を示した模式図 本発明に用いられる画像形成装置の構成の一例を示す概略図 本発明に用いられる画像形成装置の要部の構成の一例を示す概略図 本発明に用いられる画像形成装置の帯電手段の構成の一例を示す概略図
本発明の画像形成方法は、静電荷像現像用トナーを用いる電子写真プロセスによる画像形成方法であって、接触式帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニングブレードを、電子写真感光体の周りに設置し、前記電子写真感光体の表面保護層に、無機微粒子を含有し、前記電子写真感光体の弾性変形率が、50%以下で、前記クリーニングブレードの反発弾性率が、30%以下であり、前記静電荷像現像用トナーを構成するトナー粒子が、滑剤、正帯電性の無機外添剤及び負帯電性の無機外添剤を含有し、前記正帯電性の無機外添剤の質量と、前記負帯電性の無機外添剤の質量とが、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする。
式(1):0.28≦正帯電性の無機外添剤の質量/負帯電性の無機外添剤の質量
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記電子写真感光体の前記表面保護層に含有される前記無機微粒子が、シリカ(SiO)粒子であることが、硬度の高いシリカ粒子を分散させることで、感光体の表面硬度が大きくなり、耐摩耗性により優れる点で好ましい。
なお、表面保護層に前記シリカ粒子を含有させない感光体であっても、弾性変形率が小さく、外添剤により傷が付きやすく雨だれが瞬間的に起こりやすくなるが、感光体の表面硬度が小さく、感光体の削れ量が多いため、瞬間的に発生した雨だれも削り取られ、結果的に雨だれは発生しにくくなる。
前記電子写真感光体の前記表面保護層に熱可塑性樹脂を含有することが、感光体の弾性変形率を前記範囲内とすることができる点で好ましい。
前記電子写真感光体に対して当接する前記クリーニングブレードのエッジ角が、鈍角に形成されているので、クリーニング性に優れる点で好ましい。
前記正帯電性の無機外添剤は、チタン酸カルシウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、又は、サイクリックシラザン(Cyclicsilazane)及びアルキルアルコキシシランで表面修飾されたシリカ粒子であることが、負帯電性の無機外添剤の凝集が抑制され、クリーニングブレードの長手方向に均一な静止層を形成しやすい点で好ましい。
前記トナー粒子が、結晶性ポリエステル樹脂及びスチレン・アクリル樹脂を含有することが好ましく、特に、前記結晶性ポリエステル樹脂が、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることが、製造性の点で好ましい。
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[本発明の画像形成方法の概要]
本発明の画像形成方法は、静電荷像現像用トナーを用いる電子写真プロセスによる画像形成方法であって、接触式帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニングブレードを、電子写真感光体の周りに設置し、前記電子写真感光体の表面保護層に、無機微粒子を含有し、前記電子写真感光体の弾性変形率が、50%以下で、前記クリーニングブレードの反発弾性率が、30%以下であり、前記静電荷像現像用トナーを構成するトナー粒子が、滑剤、正帯電性の無機外添剤及び負帯電性の無機外添剤を含有し、前記正帯電性の無機外添剤の質量と、前記負帯電性の無機外添剤の質量とが、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする。
式(1):0.28≦正帯電性の無機外添剤の質量/負帯電性の無機外添剤の質量
本発明に係る電子写真感光体は、弾性変形率が50%以下である。
本発明における弾性変形率は、下記式(I)により算出される値である。
式(I):弾性変形率(%)=We/Wtot
上記式(I)中、「We」は弾性エネルギーを示し、「Wtot」は弾性エネルギーと塑性エネルギーの和を示す。
なお、「We」及び「Wtot」は、下記測定条件にしたがって微小硬度計「H100V」(Fscher社製)により測定されるものである。
(測定条件)
・使用圧子:対面角136°のビッカース四角錘ダイアモンド圧子
・負荷条件:速度6mN/secで有機感光体の表面からビッカース圧子を押しこむ・負荷時間:5sec(最大負荷 30mN)
・保持時間:5sec
・除荷条件:負荷と同じ速度で負荷を除く
前記弾性変形率は、50%以下であり、好ましくは40~50%の範囲内である。
弾性変形率は、電子写真感光体の表面保護層が硬化系(モノマーの硬化反応を使用)であるか、熱可塑性(モノマーの硬化反応を使用せず、樹脂を塗布して乾燥させて成形したもの)であるかに影響する。そのため、弾性変形率を50%以下とするための手段としては、例えば、感光体の表面保護層を構成するモノマー及び熱可塑性樹脂の種類及び含有量等を調整することが挙げられる。
具体的には、前記モノマーとしては、アクリルモノマー等を用いることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂等を用いることが好ましい。また、モノマーや熱可塑性樹脂の表面保護層全体に対する含有量としては、40~80質量%の範囲内であることが好ましい。
また、本発明に係るクリーニングブレードの反発弾性率は30%以下である。
本発明における反発弾性率は、JISK6255のリュプケ式反発弾性試験に準拠して温度23℃で測定した反発弾性率である。
前記反発弾性率は30%以下であり、好ましくは10~25%の範囲内である。
反発弾性率を30%以下とするための手段としては、例えば、クリーニングブレードのブレード部材を構成する樹脂の組成比や架橋状態を調整すること等が挙げられる。
さらに、本発明に係る静電荷像現像用トナーを構成するトナー粒子は、滑剤、正帯電性の無機外添剤及び負帯電性の無機外添剤を含有し、前記正帯電性の無機外添剤の質量と、前記負帯電性の無機外添剤の質量とが、前記式(1)の関係を満たす。
前記式(1)の関係は、下記式(1-1)の関係を満たすことがさらに好ましい。
式(1-1):0.42≦正帯電性の無機外添剤の質量/負帯電性の無機外添剤の質量≦0.7
ここで、正帯電性の無機外添剤の質量は、複数種類の正帯電性の無機外添剤を用いている場合には、複数種類の正帯電性の無機外添剤全体の質量をいう。負帯電性の無機外添剤の質量も同様である。
また、下記表Iに、負帯電性及び正帯電性の無機外添剤の種類と、その帯電性、平均粒径及び表面処理について示す。
Figure 2022117569000001
前記表Iに記載の負帯電性、正帯電性の強弱については、フェライトキャリアの摩擦帯電性を測定し、下記基準で判定した。
<摩擦帯電性の測定方法>
bizhub PRO 1050e(コニカミノルタ社製)に使用されている現像剤中のフェライトキャリアに総質量比で1質量%の外添剤を混合してブローオフ帯電測定器で帯電量を測定し、摩擦帯電性を測定した。
弱負帯電:帯電量の範囲が-10μC/g以下
中負帯電:帯電量の範囲が-10μC/gより大きく30μC/g以下
強負帯電:帯電量範囲が-30μC/gより大きい
弱正帯電:帯電量範囲が10μC/g以下
中正帯電:帯電量範囲が10μC/gより大きく30μC/g以下
強正帯電:帯電量範囲が30μC/gより大きい
したがって、本発明では、前記表Iに示す正帯電性の無機外添剤及び負帯電性の無機外添剤を使用し、かつ、前記式(1)の関係を満たすように添加する。
[画像形成装置]
本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置は、一般的な電子写真方式による画像形成装置であり、少なくとも接触式帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニングブレードが、電子写真感光体(以下、単に「感光体」ともいう。)の周りに設置されている。さらに、露光手段及び定着手段を具備すること好ましい。特に、本発明の画像形成方法は、タンデムプロセスによる画像形成方法であることが好ましいことから、用いられる画像形成装置はタンデム型の画像形成装置であることが好ましい。
図2は、本発明の画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図、図3は、画像形成装置の要部の構成の一例を示す説明用断面図である。
この画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkと、給紙搬送手段150と、定着手段170とを有する。画像形成装置100の本体の上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、鉛直方向に並んで配置されている。画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、回転されるドラム状の感光体111Y、111M、111C、111Bkと、この外周面領域において感光体の回転方向に沿って順次配置された、滑剤供給手段116Y、116M、116C、116Bkと、接触式帯電手段113Y、113M、113C、113Bkと、露光手段115Y、115M、115C、115Bkと、現像手段117Y、117M、117C、117Bkと、一次転写ローラー(一次転写手段)133Y、133M、133C、133Bkと、クリーニングブレード119Y、119M、119C、119Bkと、滑剤除去手段114Y、114M、114C、114Bkとを有する。そして、感光体111Y、111M、111C、111Bk上に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)のトナー画像がそれぞれ形成される構成とされている。画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、感光体111Y、111M、111C、111Bkに形成するトナー画像の色が異なる以外は同様に構成されるため、以下、画像形成ユニット110Yの例で説明する。
また、以下に、電子写真感光体、接触式帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、定着手段及びクリーニングブレードの順に説明する。
<電子写真感光体>
本発明に係る電子写真感光体は、前記したとおり弾性変形率が、50%以下である。
また、本発明に係る感光体は、導電性支持体上に少なくとも表面保護層(以下、「保護層」、「硬化表面層」ともいう。)と感光層を有することが好ましい。
具体的には、導電性支持体上に、電荷発生物質を含有する電荷発生層及び電荷輸送物質を含有する電荷輸送層がこの順に積層されてなる感光層が形成され、この感光層(電荷輸送層)上に最外層として保護層が形成された層構成を有している。また、導電性支持体と感光層との間に中間層を設けることが好ましい。なお、感光層は、電荷発生物質及び電荷輸送物質を含有する単層構造の層構成を有するものであってもよい。以下、このような構成を有する感光体について詳細に説明する。
(導電性支持体)
導電性支持体は、感光層を支持し、かつ導電性を有する部材である。
導電性支持体の好ましい例としては、金属製のドラム又はシート、ラミネートされた金属箔を有するプラスチックフィルム、蒸着された導電性物質の膜を有するプラスチックフィルム、導電性物質、又は導電性物質とバインダー樹脂とからなる塗料を塗布してなる導電層を有する金属部材やプラスチックフィルム、紙等が挙げられる。
上記金属の好ましい例としては、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレス鋼等が挙げられ、上記導電性物質の好ましい例としては、上記金属、酸化インジウム及び酸化スズ等が挙げられる。
(感光層)
感光層は、後述する露光手段により、所期の画像の静電潜像を感光体の表面に形成するための層である。当該感光層は、単層でもよいし、積層された複数の層で構成されていてもよい。感光層の好ましい例としては、電荷輸送物質と、電荷発生物質とを含有する単層、及び電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、電荷発生物質を含有する電荷発生層との積層物等が挙げられる。
(保護層)
保護層は、感光体表面の機械的強度を向上させ、耐傷性や耐摩耗性を向上させるための層である。本発明の画像形成装置においては、保護層が最外層である。
本発明において、感光体の最外層とは、トナーと接触する側の最外部に配置される層を表し、保護層が最外層である。
本発明に係る保護層は、電荷輸送構造を有する化合物(以下、「電荷輸送物質」ともいう。)を含有することが電荷輸送性の点で好ましい。また、保護層は、無機微粒子を含有することが好ましい。
さらに、保護層は、バインダー樹脂と、表面修飾剤によって表面修飾した無機微粒子を含有することが好ましく、バインダー樹脂としては熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
《電荷輸送物質》
電荷輸送物質としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。その例としては、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体等が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン誘導体が好ましい。トリアリールアミン誘導体としては、下記化学式(1)で表されるものが好ましい。
Figure 2022117569000002
上記化学式(1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~7のアルキル基、又は炭素数1~7のアルコキシ基を表す。k,l及びnは、それぞれ独立して、0~5の整数を示し、mは0~4の整数を示す。ただし、k、l、n又はmが2以上である場合においては、複数存在するR、R、R及びRは、互いに同一のものであっても、異なるものであってもよい。これらの中でも、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。また、k、l、n及びmは、それぞれ独立して、0~1の整数であることが好ましい。
上記化学式(1)で表される化合物としては、例えば、特開2015-114454号公報に記載のものを使用でき、また、公知の合成方法、例えば、特開2006-143720号公報で開示されている方法などで合成することができる。
保護層における、電荷輸送物質の含有量は、メモリー性能とクリーニング性能の両立の観点から、バインダー樹脂100質量部に対して、20~80質量部の範囲内が好ましく、30~70質量部の範囲内がより好ましく、40~60質量部の範囲内がさらに好ましい。
(無機微粒子)
本発明に係る保護層に含有される無機微粒子は、保護層の強度向上及び電気特性向上の目的のため保護層に含有され、表面修飾剤(表面処理剤)によって表面修飾(表面処理)されていることが好ましい。
表面修飾剤で表面修飾された無機微粒子は、表面修飾剤由来の化学種(被覆層)及び無機微粒子を含む被覆粒子となると考えられる。なお、表面修飾された無機微粒子は、その表面上の少なくとも一部に表面修飾剤由来の化学種(被覆層)を有していればよい。
本願において、無機微粒子とは金属元素を含有する微粒子をいうが、少なくともその表面が金属酸化物から構成される金属酸化物粒子であることが好ましい。無機微粒子を構成する金属酸化物の例としては、特に制限されないが、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化スズ、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム、銅アルミ酸化物、アンチモンイオンをドープした酸化スズ等が挙げられる。
これら無機微粒子は、単独でも又は2種以上を組み合わせても用いることができる。また、金属酸化物粒子は合成品であってもよいし、市販品であってもよい。
これらの無機微粒子の中でも、アルミナ粒子、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、又は二酸化ケイ素(シリカ)粒子のいずれかであることが、保護層の強度が向上する点で好ましく、特に、シリカ粒子が好ましい。
また、上記した無機微粒子は、金属酸化物からなる芯(コア)と、表面修飾剤からなる外殻(シェル)と、を有する、コア・シェル構造を有する粒子(複合粒子)であることが好ましい。コア・シェル構造を有する複合粒子とすることで、無機微粒子の粒子径を大きくすることが可能となる。コア・シェル構造にするのは、無機微粒子径を大きくする場合で、無機微粒子径を小径とする場合は、コア・シェル構造にする必要はない。
当該複合粒子の芯材(コア)を構成する材料は、特に制限されないが、硫酸バリウム(BaSO)、アルミナ、酸化ケイ素等が挙げられる。これらの中でも、保護層の光透過性を確保する観点から、硫酸バリウムを芯材とした粒子が好ましい。また、当該複合粒子の外殻(シェル)を構成する材料は、上記無機微粒子を構成する金属酸化物の例として挙げたものと同様である。
コア・シェル構造の複合粒子の好ましい例としては、硫酸バリウムからなる芯材と、酸化スズ、アルミナ、酸化チタンのうちのいずれかからなる外殻と、を有する複合粒子が挙げられる。なお、芯材の数平均一次粒径と、外殻の厚さとの比率は、使用する芯材及び外殻の種類、ならびにこれらの組み合わせに応じて、適宜設定すればよい。
表面修飾剤による表面修飾前(未修飾)の無機微粒子の数平均一次粒径は、50~500nmの範囲内であることが好ましく、65~400nmの範囲内であることがより好ましく、80~300nmの範囲内であることがさらに好ましい。無機微粒子の数平均一次粒径が50nm以上であると、無機微粒子による凹凸が適度に付与されるため、クリーニングの際にクリーニングブレードの姿勢が安定し、クリーニング性が向上する。また、無機微粒子の数平均一次粒径が500nm以下であると、凸部が大きすぎてクリーニングブレードに引っかかることがないため、ブレードのスティックスリップの発生に伴うクリーニング性の低下を防止することができる。
なお、本明細書において、無機微粒子の数平均一次粒径は、以下の方法で測定される数平均一次粒径と定義する。
まず、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により撮影された10000倍の拡大写真をスキャナーに取り込む。次いで、得られた写真画像から、凝集粒子を除く300個の粒子像を、ランダムに自動画像処理解析システム ルーゼックス(登録商標)AP ソフトウエアVer.1.32(株式会社ニレコ製)を使用して2値化処理して、当該粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径を算出する。そして、当該粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径の平均値を算出して数平均一次粒径とする。ここで、水平方向フェレ径とは、上記粒子像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さをいう。また、無機微粒子の数平均一次粒径の測定は、表面修飾剤由来の化学種(被覆層)を含まない無機微粒子について行うものとする。
(表面修飾剤)
本発明に係る無機微粒子は表面修飾剤によって表面修飾されている。
表面修飾剤は特に制限されないが、シリコーン構造(シリコーン鎖)を有するシリコーン表面修飾剤、重合性官能基を有する表面修飾剤などが挙げられ、シリコーン鎖を有する表面修飾剤(以下、シリコーン表面修飾剤ともいう。)が好ましい。
シリコーン表面修飾剤としては、特に制限されないが、高分子主鎖の主鎖にシリコーン鎖を有してもよいし、側鎖にシリコーン鎖を有してもよいし、主鎖及び側鎖の両方にシリコーン鎖を有してもよい。
主鎖及び側鎖の両方にシリコーン鎖を有することによって、主鎖及び側鎖の両方にシリコーン鎖を有する表面修飾剤により表面修飾された無機微粒子が、シリコーン鎖をより多く有することから、保護層中での分散性がより高まり、保護層の耐摩耗性がより向上する。
また、前記シリコーン鎖に加えて、さらに反応性官能基を有するものが好ましい。
反応性官能基としては、カルボン酸基、ヒドロキシ基、-Rd-COOH(Rdは、2価の炭化水素基)、アルキルシリル基、ハロゲン化シリル基、及びアルコキシシリル基等の金属酸化物粒子と結合しうる基が挙げられる。これらの中でもカルボン酸基、ヒドロキシ基又はアルコキシシリル基が好ましい。
上記シリコーン表面修飾剤が有する高分子主鎖は、ポリ(メタ)アクリレート主鎖又はシリコーン主鎖であることが好ましく、シリコーン主鎖であることがより好ましい。
側鎖及び主鎖のシリコーン鎖は、ジメチルシロキサン構造を繰り返し単位として有することが好ましく、その繰り返し単位数は3~100個であるものが好ましく、3~50個であるものがより好ましく、3~30個であるものがさらに好ましい。
シリコーン表面修飾剤の重量平均分子量は、特に制限されないが、1000~50000の範囲内であることが好ましい。なお、シリコーン表面修飾剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
シリコーン表面修飾剤は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。また、シリコーン表面修飾剤は、合成品であってもよいし、市販品であってもよい。
ポリ(メタ)アクリレート主鎖の側鎖にシリコーン鎖を有する表面修飾剤の市販品の具体例としては、サイマック(登録商標)US-350(以上、東亞合成株式会社製)、KP-541、KP-574、及びKP-578(以上、信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
また、シリコーン主鎖及び側鎖にシリコーン鎖を有する表面修飾剤(主鎖及び側鎖にシリコーン鎖を有する表面修飾剤)の市販品の具体例としては、KF-9908及びKF-9909(以上、信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
また、主鎖のみにシリコーン鎖を有する表面修飾剤の市販品の具体例としては、KF-9901(信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
・表面修飾剤(シリコーン表面修飾剤)による表面修飾方法
表面修飾剤による表面修飾方法は、特に制限されず、無機微粒子の表面上に表面修飾剤を付着(又は結合)することができる方法であればよい。このような方法としては、一般的に、湿式処理方法と乾式処理方法との二通りに大別されるが、いずれを用いてもよい。
なお、後述する反応性表面修飾後の無機微粒子を表面修飾する場合は、無機微粒子の表面上又は反応性表面修飾剤上に、表面修飾剤が付着(又は結合)する。
湿式処理方法とは、無機微粒子と、表面修飾剤とを溶剤中で分散することによって、表面修飾剤を無機微粒子の表面上に付着(又は結合)させる方法である。
当該方法としては、無機微粒子と、表面修飾剤とを溶剤中で分散させ、得られた分散液を乾燥し溶剤を除去する方法が好ましく、その後さらに加熱処理を行い、表面修飾剤と無機微粒子とを反応させることによって、表面修飾剤を無機微粒子の表面上に付着(又は結
合)させる方法がより好ましい。また、表面修飾剤と無機微粒子とを溶剤中で分散した後、得られた分散液を湿式粉砕することにより、無機微粒子を微細化すると同時に表面修飾を進行させてもよい。
無機微粒子及び表面修飾剤を溶剤中で分散させる手段としては、特に制限されず公知の手段を用いることができ、その例としては、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル等の一般的な分散手段を挙げることができる。
溶剤としては、特に制限されず公知の溶剤を用いることができ、その好ましい例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール(2-ブタノール)、tert-ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶剤や、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらは単独でも又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、メタノール、2-ブタノール、トルエン、及び2-ブタノールとトルエンとの混合溶剤がより好ましい。
分散時間は、特に制限されないが、例えば、1~600分の範囲内であることが好ましく、10~360分の範囲内であることがより好ましく、30~120分の範囲内であることがより好ましい。
溶剤の除去方法としては、特に制限されず公知の方法を用いることができ、その例としては、エバポレーターを用いる方法、室温下で溶剤を揮発させる方法等が挙げられる。
加熱温度としては、特に制限されないが、50~250℃の範囲内であることが好ましく、70~200℃の範囲内であることがより好ましく、90~150℃の範囲内であることがさらに好ましい。また、加熱時間としては、特に制限されないが、1~600分の範囲内であることが好ましく、10~300分の範囲内であることがより好ましく、30~90分の範囲内であることがさらに好ましい。なお、加熱方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
乾式処理方法とは、溶剤を用いず、表面修飾剤と無機微粒子とを混合し混練を行うことによって、表面修飾剤を導電性金属酸化物の表面上に付着(又は結合)させる方法である。当該方法としては、表面修飾剤と、無機微粒子とを混合し混練した後、さらに加熱処理を行い、表面修飾剤と無機微粒子とを反応させることによって、表面修飾剤を無機微粒子の表面上に付着(又は結合)させる方法であってもよい。また、無機微粒子と、表面修飾剤とを混合し混練する際に、これらを乾式粉砕することにより、無機微粒子を微細化すると同時に表面修飾を進行させてもよい。
表面修飾剤の使用量は、処理前の無機微粒子(後述する反応性表面修飾後の無機微粒子を表面修飾する場合は、反応性表面修飾後の無機微粒子)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましい。この範囲であれば、保護層の耐摩耗性及びかぶり抑制効果がより向上する。
また、表面修飾剤の使用量は、表面修飾前の無機微粒子(後述する反応性表面修飾後の無機微粒子を表面修飾する場合は、反応性表面修飾後の無機微粒子)100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。この範囲であると、未反応の表面修飾剤による保護層の膜強度の低下が抑制され、保護層の耐摩耗性が向上する。
未修飾の無機微粒子や反応性表面修飾後の無機微粒子に表面修飾が施されたことは、熱重量・示差熱(TG/DTA)測定、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)による観察、エネルギー分散型X線分光法(EDX)による分析等によって確認することができる。
表面修飾された無機微粒子は、重合性基由来の基を有することが好ましい。表面修飾された無機微粒子が重合性基由来の基を有することにより、保護層の耐摩耗性が向上する。重合性基の種類は、特に制限されないが、ラジカル重合性基が好ましい。重合性基の導入方法としては、特に制限されないが、無機微粒子に対して重合性基を有する表面修飾剤で表面修飾を行う方法が好ましい。
表面修飾された無機微粒子が重合性基を有することや、保護層中の表面修飾された無機微粒子が重合性基由来の基を有することは、熱重量・示差熱(TG/DTA)測定、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)による観察、エネルギー分散型X線分光法(EDX)による分析、質量分析等によって確認することができる。
・重合性基を有する表面修飾剤(反応性表面修飾剤)による表面修飾方法
上述した表面修飾(シリコーン表面修飾)された無機微粒子は、反応性表面修飾剤でさらに表面修飾されることが好ましい。重合性基は、反応性表面修飾によって、無機微粒子の表面に担持され、その結果、表面修飾された無機微粒子は、さらに重合性基を有することとなる。
そして、保護層中で、当該表面修飾された無機微粒子が重合性基を介して重合性モノマーと重合することになり、膜強度がより高い保護層が形成され、保護層の耐摩耗性がさらに向上する。このとき、シリコーン表面修飾粒子は、保護層中で重合性基由来の基を有する構造として存在することとなる。
反応性表面修飾剤は、重合性基及び反応性官能基を有する。重合性基の種類は、特に制限されないが、ラジカル重合性基が好ましい。ここで、ラジカル重合性基は、炭素-炭素二重結合を有するラジカル重合可能な基を表す。ラジカル重合性基の例としては、ビニル基及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられ、これらの中でもメタクリロイル基が好ましい。また、反応性官能基とは、無機微粒子の表面に存在するヒドロキシ基などの極性基への反応性を有する基を表す。反応性官能基の例としては、カルボン酸基、ヒドロキシ基、-R′-COOH(R′は、二価の炭化水素基)、アルキルシリル基、ハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基等が挙げられ、これらの中でもアルキルシリル基、ハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基が好ましい。
反応性表面修飾剤は、ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤が好ましく、その例としては、下記式S-1~S-32で表される化合物等が挙げられる。
S-1: CH=CHSi(CH)(OCH
S-2: CH=CHSi(OCH
S-3: CH=CHSiCl
S-4: CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH
S-5: CH=CHCOO(CHSi(OCH
S-6: CH=CHCOO(CHSi(OC)(OCH
S-7: CH=CHCOO(CHSi(OCH
S-8: CH=CHCOO(CHSi(CH)Cl
S-9: CH=CHCOO(CHSiCl
S-10: CH=CHCOO(CHSi(CH)Cl
S-11: CH=CHCOO(CHSiCl
S-12: CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH

S-13: CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
S-14: CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH
S-15: CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
S-16: CH=C(CH)COO(CHSi(CH)Cl
S-17: CH=C(CH)COO(CHSiCl
S-18: CH=C(CH)COO(CHSi(CH)Cl
S-19: CH=C(CH)COO(CHSiCl
S-20: CH=CHSi(C)(OCH
S-21: CH=C(CH)Si(OCH
S-22: CH=C(CH)Si(OC
S-23: CH=CHSi(OCH
S-24: CH=C(CH)Si(CH)(OCH
S-25: CH=CHSi(CH)Cl
S-26: CH=CHCOOSi(OCH
S-27: CH=CHCOOSi(OC
S-28: CH=C(CH)COOSi(OCH
S-29: CH=C(CH)COOSi(OC
S-30: CH=C(CH)COO(CHSi(OC
S-31: CH=CHCOO(CHSi(CH(OCH
S-32: CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
反応性表面修飾剤は、単独でも又は2種以上を組み合わせても用いることができる。また、反応性表面修飾剤は、合成品であってもよいし市販品であってもよい。市販品の具体例としては、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103(以上、信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
シリコーン表面修飾及び反応性表面修飾の両方を行う場合、反応性表面修飾を行った後にシリコーン表面修飾を行うことが好ましい。この順序で表面修飾を行うことにより、保護層の耐摩耗性がより向上する。この理由は、撥油効果を有するシリコーン鎖によって、反応性表面修飾剤の無機微粒子表面への接触が妨げられることがないため、無機微粒子への重合性基の導入がより効率よく行われるからである。
反応性表面修飾の方法は、特に制限されず、反応性表面修飾剤を用いる以外は、シリコーン表面修飾で説明した方法と同様の方法を採用することができる。また、公知の無機微粒子の表面修飾技術を用いてもよい。
湿式処理方法により反応性表面修飾を用いる場合、溶剤としては、メタノール、エタノール、トルエンが好ましく、メタノール、トルエンがより好ましい。
反応性表面修飾剤の使用量は、反応性表面修飾前の無機微粒子100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることがさらに好ましい。この範囲であると、保護層の耐摩耗性及びかぶり抑制効果がより向上する。また、反応性表面修飾剤の使用量は、修飾前の無機微粒子100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることがさらに好ましい。この範囲であると、粒子表面のヒドロキシ基数に対して反応性表面修飾剤の量が過剰とはならずより適切な範囲となり、未反応の反応性表面修飾剤による保護層の膜強度の低下が抑制され、保護層の耐摩耗性がより向上する。
保護層における無機微粒子の含有量は、本発明の効果を損なうことなく、保護層に耐摩耗性等の耐久性を付与する観点から、バインダー樹脂100質量部に対して5~40質量部の範囲が好ましく、10~30質量部の範囲がより好ましい。
(バインダー樹脂)
保護層に含有されるバインダー樹脂としては、一般的な熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂を使用することができる。
バインダー樹脂として具体的には、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。特に、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が好ましい。中でも、電気特性及び膜強度の点でポリカーボネート樹脂が好ましい。
保護層が含有するバインダー樹脂は、重合性化合物の硬化物であることが好ましい。重合性化合物の硬化物としては、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。保護層は、重合性化合物と電荷輸送物質を含む組成物を硬化して得られる層であることが好ましい。
上記重合性化合物としては、紫外線や電子線等の活性線照射により重合(硬化)して、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂等の、一般に感光体のバインダー樹脂として用いられる樹脂となるモノマーが好適である。特には、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタアクリル系モノマー、ビニルトルエン系モノマー、酢酸ビニル系モノマー、N-ビニルピロリドン系モノマーが好ましい。
中でも、少ない光量又は短い時間での硬化が可能であることから、アクリロイル基(CH=CHCO-)又はメタクリロイル基(CH=CCHCO-)を有するラジカル重合性モノマー又はこれらのオリゴマーが特に好ましい。
ラジカル重合性モノマーとしては、架橋密度の高い高硬度の保護層を形成する観点から、ラジカル重合性基を3個以上有する多官能ラジカル重合性モノマーであることが好ましい。アクリロイル基又はメタクリロイル基を3個以上有する多官能ラジカル重合性モノマーとして、具体的には、下記式M1~M11で構造が示される化合物が挙げられる。なお、下記化合物において、Rはアクリロイル基を表し、R′はメタクリロイル基を表す。
Figure 2022117569000003
これらのラジカル重合性モノマーは、公知であり、また市販品としても入手することができる。ラジカル重合性モノマーとして、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、バインダー樹脂を得るためのラジカル重合性モノマーとして、上記官能基を3個以上有する多官能ラジカル重合性モノマーに加えて、2官能ラジカル重合性モノマー及び単官能ラジカル重合性モノマーを併用してもよい。
上記ラジカル重合性モノマーの重合(硬化)は光重合開始剤を用いて行われる。光重合開始剤としては、アルキルフェノン系化合物、又はフォスフィンオキサイド系化合物が好ましい。特に、α-ヒドロキシアセトフェノン構造、又は、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する化合物が好ましい。
アシルフォスフィンオキサイド構造を有する化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、市販品を用いてもよく、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイドとしてはイルガキュアTPO(商品名、BASF社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドとしてはイルガキュア819(商品名、BASF社製)を使用できる。
光重合開始剤は、ラジカル重合性モノマー100質量部に対して3~15質量部の割合で用いられることが好ましく、より好ましくは、5~10質量部である。なお、バインダー樹脂として、重合性化合物の硬化物を用いる場合、その量は、重合性化合物と重合開始剤の合計量とする。
(他の成分)
保護層形成用のバインダー樹脂の樹脂組成物は、上記成分以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分の例としては、特に制限されないが、潤滑剤等が挙げられる。潤滑剤は、特に制限されず公知のものを用いることができ、その例としては、重合性シリコーン化合物及び重合性パーフルオロポリエーテル化合物等が挙げられる。
[電子写真感光体の製造方法]
本発明に係る電子写真感光体は、特に制限されず公知の電子写真感光体の製造方法によって製造することができる。
中でも、導電性支持体上に形成された感光層の表面に、保護層形成用の樹脂組成物を含む塗布液を塗布する工程と、塗布された保護層形成用の樹脂組成物を乾燥する又は工程と、を含む方法によって製造することが好ましい。
保護層形成用の樹脂組成物は、少なくとも電荷輸送物質と、熱可塑性樹脂と、表面修飾剤によって表面修飾された無機微粒子を含有することが好ましい。保護層形成用の樹脂組成物は、酸化防止剤などの他の成分を含んでもよく、さらに分散媒を含むことができる。
前記分散媒としては、電荷輸送物質、熱可塑性樹脂、前記表面修飾した無機微粒子、さらに必要に応じて添加される酸化防止剤等を溶解又は分散させることができれば、いずれのものでも使用できる。
具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール(sec-ブタノール)、tert-ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ピリジン及びジエチルアミン等が挙げられる。分散媒は、単独でも又は2種以上混合しても用いることができる。
保護層形成用の樹脂組成物の総質量に対する分散媒の含有量は、特に制限されないが、1~99質量%の範囲内であることが好ましく、40~90質量%の範囲内であることがより好ましく、50~80質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
保護層形成用の樹脂組成物中の無機微粒子の含有量は、特に制限されないが、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。この範囲であると、保護層の架橋密度が増加し、機械的強度がより向上し、保護層の耐摩耗性がより向上する。
保護層形成用の樹脂組成物の調製方法も、特に制限はなく、電荷輸送物質、熱可塑性樹脂、表面修飾された無機微粒子、さらに必要に応じて添加される酸化防止剤などの各種添加剤を分散媒に加えて、溶解又は分散するまで撹拌混合すればよい。
本発明に係る保護層は、上記方法で調製した保護層形成用の樹脂組成物を感光層の上に塗布した後、乾燥及び硬化させることにより形成することができる。
上記塗布、乾燥、及び硬化の過程で、熱可塑性樹脂と表面修飾された無機微粒子との間
の反応、表面修飾された無機微粒子同士の反応等が進行し、保護層形成用の樹脂組成物の硬化物を含む保護層が形成される。
保護層形成用の樹脂組成物の塗布方法は、特に制限されず、例えば、浸漬塗布法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー塗布法、円形スライドホッパー塗布法などの公知の方法を用いることができる。
上記塗布液を塗布した後は、自然乾燥又は熱乾燥を行い、塗膜を形成する。
乾燥の条件は、溶媒の種類、膜厚などによって適宜選択できる。乾燥温度は、好ましくは20~180℃であり、より好ましくは80~140℃であり、乾燥時間は、好ましくは1~200分であり、より好ましくは5~100分である。
保護層の厚さは、1~10μmの範囲内であることが好ましく、1.5~5μmの範囲内であることがより好ましい。
なお、保護層が上記組成物を含むことは、熱分解GC-MS、核磁気共鳴(NMR)、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、元素分析などの公知の分析方法によって確認することができる。
<接触式帯電手段>
接触式帯電手段113Yは、感光体111Y表面に対して帯電ローラーにより帯電を行う手段である。この例の帯電手段113Yは、感光体111Yの表面に接触して配設された帯電ローラーと、帯電ローラーに電圧を印加する電源とからなる。
本発明において、接触式帯電手段は、帯電ローラーを感光体の表面に接触した状態で帯電させる接触帯電方式による。
帯電ローラー113Yは、図4に示されるように、芯金113aの表面上に積層された、帯電量を低減させるとともに弾性を付与して感光体111Yに対する均一な密着性を得るための弾性層113bの表面上に、必要に応じて帯電ローラー113Yが全体として高い均一性の電気抵抗を得るための抵抗制御層113cが積層され、当該抵抗制御層113c上に表面層113dが積層されたものが、押圧バネ113eによって感光体111Yの方向に付勢されて感光体111Yの表面に対して所定の押圧力で圧接されて帯電ニップ部が形成された状態とされる構成とされており、感光体111Yの回転に従動して回転される。
芯金113aは、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム及びニッケルなどの金属、又はこれらの金属の表面に、防錆性や耐付傷性を得るために導電性を損なわない範囲においてメッキ処理したものからなり、その外径は例えば3~20mmの範囲内とされる。
弾性層11bは、例えば、ゴムなどの弾性材料中にカーボンブラック、カーボングラファイトなどよりなる導電性微粒子やアルカリ金属塩、アンモニウム塩などよりなる導電性塩微粒子などが添加されたものからなる。
弾性材料の具体例としては、例えば、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンメチレンゴム(EPDM)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)及びクロロプレンゴム(CR)などの合成ゴムや、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂などの樹脂、又は発泡スポンジなどの発泡体などを挙げることができる。弾性の大きさは、プロセス油、可塑剤などを弾性材料中に添加することにより調整することができる。
弾性層11bは、その体積抵抗率が1×10~1×1010Ω・cmの範囲であることが好ましい。また、その層厚は500~5000μmであることが好ましく、より好ましくは500~3000μmの範囲内である。
弾性層11bの体積抵抗率は、JIS K 6911に準拠して測定された値である。
抵抗制御層113cは、帯電ローラー113Yを全体として均一な電気抵抗を有する目的などにより設けられるものであるが、なくてもよい。この抵抗制御層113cは、適度な導電性を有する材料を塗工すること、又は適度な導電性を有するチューブを被覆させることによって設けることができる。
この抵抗制御層113cを構成する具体的な材料としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂;エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム及びアクリロニトリル系ゴムなどのゴム類などの基礎材料中に、カーボンブラック、カーボングラファイトなどよりなる導電性微粒子;導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛、導電性酸化スズなどよりなる導電性金属酸化物微粒子;アルカリ金属塩、アンモニウム塩などよりなる導電性塩微粒子などの導電剤が添加されたものが挙げられる。
抵抗制御層113cは、その体積抵抗率が1×10-2~1×1014Ω・cmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1×10~1×1010Ω・cmである。また、その層厚は0.5~100μmであることが好ましく、より好ましくは1~50μm、さらに好ましくは1~20μmの範囲内である。
抵抗制御層113cの体積抵抗率は、JIS K 6911に準拠して測定された値である。
表面層113dは、弾性層11b中の可塑剤などの得られる帯電ローラーの表面へのブリードアウトを防止する目的や帯電ローラーの表面の滑り性や平滑性を得る目的、又は感光体11Y上にピンホールなどの欠陥があった場合にもリークの発生を防止する目的などにより設けられるものであって、適度な導電性を有する材料を塗工すること、又は適度な導電性を有するチューブを被覆させることによって設けられる。
表面層113dを材料の塗工により設ける場合は、具体的な材料としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂及びシリコーン樹脂などの樹脂、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム及びアクリロニトリル系ゴムなどの基礎材料中に、カーボンブラック、カーボングラファイトなどよりなる導電性微粒子;導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛、導電性酸化スズなどよりなる導電性金属酸化物微粒子などの導電剤が添加されたものが挙げられる。
塗工方法としては、浸漬塗工法、ロール塗工法及びスプレー塗工法などが挙げられる。
また、表面層113dをチューブの被覆により設ける場合は、具体的なチューブとしては、ナイロン12、4フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP);ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系及びポリアミド系などの熱可塑性エラストマーなどに上記の導電剤が添加されたものがチューブ状に成形されたものが挙げられる。このチューブは熱収縮性のものでもよく、非熱収縮性のものでもよい。
表面層113dは、その体積抵抗率が1×10~1×10Ω・cmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1×10~1×10Ω・cmである。また、その層厚は0.5~100μmであることが好ましく、より好ましく1~50μm、さらに好ましくは1~20μmである。
表面層113dの体積抵抗率は、JIS K 6911に準拠して測定された値である。
また、表面層113dは、その表面粗さRzが1~30μmのものが好ましく、より好ましくは2~20μm、さらに好ましくは5~10μmである。
以上のような帯電ローラー113Yにおいては、帯電ローラー113Yの芯金113aに電源S1より帯電バイアス電圧が印加されることにより、感光体111Yの表面が所定の極性の所定の電位に帯電される。ここに、帯電バイアス電圧は、例えば直流電圧のみとしてもよいが、帯電の均一性に優れることから、直流電圧に交流電圧が重畳された振動電圧とすることが好ましい。
帯電バイアス電圧は、例えば-2.5~-1.5kV程度とすることができる。
図4に示した帯電ローラーによる帯電条件の一例を示すと、帯電バイアス電圧を形成する直流電圧が-500V、交流電圧が周波数1000Hz、ピーク間電圧1300Vの正弦波であり、この帯電バイアス電圧が印加されることにより、感光体の表面が-500Vに一様に帯電される。
<露光手段>
露光手段115Yは、帯電手段113Yによって一様な電位を与えられた感光体111Y表面に、画像信号(イエローの画像信号)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段である。露光手段115Yは、感光体111Yの軸方向にアレイ状に発光素子が配列されたLEDと結像素子とから構成されるもの、又はレーザー光学系などが用いられる。
<現像手段>
現像手段(現像機)117Yは、感光体111Y表面にトナーを供給し、感光体111Y表面に形成された静電潜像を現像し、トナー画像を形成する手段である。この例の現像手段117Yは、具体的には、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像ローラー118Y及び感光体111Yとこの現像ローラー118Yとの間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置(図示しない)により構成される。
現像手段117Yは、感光体の回転方向の最下流位置に配置することが、雨だれが最下流位置で発生しやすい点で好ましい。
現像ローラー118Yの回転によって、感光体111Yにトナーを搬送する。そして、現像ローラー118Y上のトナー薄層が、感光体111Yに当接して感光体111Y上の静電潜像を現像する。現像ローラー118Yは、電圧印加装置に接続されている。
そして、この電圧印加装置により、現像ローラー118Yには直流及び/又は交流バイアス電圧が印加される。現像ローラー1118Yに印加する電圧を制御することで、現像電位(現像バイアスともいう。)(Vdc)が所望の値に調整できるように構成されている。現像ローラー118Yと感光体111Yにより担持された静電潜像の電位との間の電位差(現像電位差)によって、現像ローラー118Yと感光体111Yが相互に対向している現像部に電界が形成される。
現像ローラー118Yの回転により現像部に搬送された現像剤中のトナーは、電界から受ける力の作用によって移動し、感光体111Y上の静電潜像に吸着する。感光体111Yに担持されていた静電潜像が顕像化されることによって、感光体111Yの表面には、静電潜像の形状に対応したトナー像が形成される。
<転写手段>
転写手段を構成する一次転写ローラー133Yは、感光体111Y上に形成されたトナー画像を無端ベルト状の中間転写体131に転写する手段である。一次転写ローラー133Yは、中間転写体131と当接して配置されている。
この画像形成装置100においては、感光体111Y、111M、111C、111Bk上に形成されたトナー画像を一次転写ローラー(一次転写手段)133Y、133M、133C、133Bkによって中間転写体131に転写し、中間転写体131上に転写された各トナー画像を二次転写ローラー(二次転写手段)217によって転写材Pに転写する中間転写方式が採用されているが、感光体上に形成されたトナー画像を転写手段によって直接転写材に転写する直接転写方式が採用されてもよい。
<クリーニングブレード>
クリーニングブレード119Yは、感光体111Y表面に残存したトナーを除去する手段である。 本発明に係るクリーニングブレード119Yは、前記したとおり反発弾性率が30%以下である。
当該反発弾性率は、後述するようにクリーニングブレード119Yのブレード部材119bが多層構造の場合には、多層構造におけるクリーニングブレード119Yの反発弾性率をいい、単層構造の場合には、単層構造におけるクリーニングブレード119Yの反発弾性率をいう。
クリーニングブレード119Yは、図3に示すように、支持部材119aと、この支持部材119a上に接着層(図示しない)を介して支持されたブレード部材119bとにより構成される。ブレード部材119bは、その先端が感光体11Y表面との当接部分における当該感光体111Yの回転方向と反対方向(カウンター方向)に向く状態で配置されている。
支持部材110aとしては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、剛体の金属、弾性を有する金属、プラスチック、セラミックなどから製造されたものが挙げられる。中でも、剛体の金属が好ましい。
ブレード部材119bとしては、例えば、ベース層とエッジ層とが積層されてなる多層構造のものを用いることができる。ベース層及びエッジ層は、それぞれポリウレタンにより構成されることが好ましい。ポリウレタンとしては、ポリオール、ポリイソシアネート及び必要に応じて架橋剤を反応させて得られるものなどが挙げられる。なお、多層構造のものに限らず単層構造のものとしてもよい。
また、ブレード部材119bは、一端部において感光体111Yに当接するブレードエッジ角θが鈍角に形成されている。ここで、前記エッジ角とは、図3に示す角度θのように、感光体表面との当接部Cであるゴム材料の先端稜線部分の角度である。これにより、クリーニング性が有利となる。前記エッジ角θは、例えば、90°より大きく130°以下であることが好ましい。
中間転写体131は、複数のローラー137A、137B、137C、137Dにより巻回され、回動可能に支持されている。
中間転写体131上には、当該中間転写体上に残存したトナーを除去するクリーニング手段135が配置されている。
この画像形成装置100において、感光体111Y、現像手段117Y、クリーニングブレード119Yなどは、一体的に結合され、装置本体に着脱自在に構成されたプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)であってもよい。又は、接触式帯電手段113Y、露光手段115Y、現像手段117Y、一次転写ローラー133Y及びクリーニングブレード119Yからなる群から選ばれる一以上の部材と、感光体111Yとが一体的に構成されたプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)であってもよい。
プロセスカートリッジ200は、筐体201と、それに収容された感光体111Y、接触式帯電手段113Y、現像手段117Y、クリーニングブレード119Yと、一次転写ローラー133Yと、を有する。また、装置本体には、プロセスカートリッジ200を装置本体内にガイドする手段として支持レール203L、203Rが設けられている。それにより、プロセスカートリッジ200を装置本体に着脱可能となっている。これらのプロセスカートリッジ200は、装置本体に着脱自在に構成された単一の画像形成ユニットとなりうる。
給紙搬送手段150は、給紙カセット211内の転写材Pを、複数の中間ローラー213A、213B、213C、213D及びレジストローラー215を経て、二次転写ローラー217に搬送可能に設けられている。
定着手段170は、二次転写ローラー217により転写されたカラー画像を定着処理する。排紙ローラー219は、定着処理された転写材Pを挟持して、排紙トレイ221上に載置可能に設けられている。
このように構成された画像形成装置100では、画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkによりトナー画像を形成する。具体的には、まず接触式帯電手段113Y、113M、113C、113Bkにより感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面に放電して負に帯電させる。次いで、露光手段115Y、115M、115C、115Bkで、感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面を画像信号に基づいて露光し、静電潜像を形成する。次いで、現像手段117Y、117M、117C、117Bkで、感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面にトナーを付与して現像し、トナー画像を形成する。
次いで、一次転写ローラー(一次転写手段)133Y、133M、133C、133Bkを、回動する中間転写体131と当接させる。それにより、感光体111Y、111M、111C、111Bk上にそれぞれ形成した各色のトナー画像を、回動する中間転写体131上に逐次転写させて、カラー画像を転写する(一次転写する)。画像形成処理中、一次転写ローラー133Bkは、常時、感光体111Bkに当接する。一方、他の一次転写ローラー133Y、133M、133Cは、カラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体111Y、111M、111Cに当接する。
そして、一次転写ローラー133Y、133M、133C、133Bkと中間転写体131とを分離させた後、感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面に残存したトナーを、クリーニングブレード119Y、119M、119C、119Bkで除去する。次いで、必要に応じて感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面を除電手段(不図示)によって除電した後、接触式帯電手段113Y、113M、113C、113Bkにより負に帯電させる。
一方、給紙カセット211内に収容された転写材P(例えば普通紙、透明シートなどの最終画像を担持する支持体)を、給紙搬送手段150で給紙し、複数の中間ローラー213A、213B、213C、213D、レジストローラー215を経て二次転写ローラー(二次転写手段)217に搬送する。そして、二次転写ローラー217を回動する中間転写体131と当接させて、転写材P上にカラー画像を一括して転写する(二次転写する)。二次転写ローラー217は、転写材P上に二次転写を行うときのみ、中間転写体131と当接する。その後、カラー画像が一括転写された転写材Pを、中間転写体131の曲率が高い部位で分離する。
このようにしてカラー画像が一括して転写された転写材Pを、定着手段170で定着処理した後、排紙ローラー219で挟持して装置外の排紙トレイ221上に載置する。また、カラー画像が一括転写された転写材Pを中間転写体131から分離した後、クリーニング手段135で中間転写体131上の残存トナーを除去する。
[静電荷像現像用トナー]
本発明の画像形成方法に用いられる静電荷像現像用トナーは、トナー母体粒子と、トナー母体粒子表面に付着される外添剤とを備えるトナー粒子を含む。特に外添剤として、滑剤、正帯電性の無機外添剤及び負帯電性の無機外添剤を含有し、前記正帯電性の無機外添剤の質量と、前記負帯電性の無機外添剤の質量とが、下記式(1)の関係を満たす。
式(1):0.28≦正帯電性の無機外添剤の質量/負帯電性の無機外添剤の質量
本明細書において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。「トナー母体粒子」は、少なくとも結着樹脂を含むものであり、その他必要に応じて、着色剤、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
<トナー母体粒子>
本発明に係るトナー母体粒子としては、公知のトナー母体粒子を用いることができる。このようなトナー母体粒子は、具体的には少なくとも結着樹脂及び必要に応じて着色剤を含有するトナー母体粒子よりなるものである。また、このトナー母体粒子には、必要に応じて、さらに離型剤及び荷電制御剤などのほかの成分を含有することもできる。
<結着樹脂>
結着樹脂としては、公知のものを使用でき、例えば、非晶性樹脂や結晶性樹脂を好適に使用できる。特に、後述するスチレン・アクリル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
(非晶性樹脂)
本発明に使用可能な非晶性樹脂は、特に限定されるものではないが、下記のようなビニル樹脂、ポリエステル樹脂のほか、ウレタン樹脂、ウレア樹脂など、公知の非晶性樹脂を好ましく使用できる。
《ビニル樹脂》
非晶性樹脂としてビニル樹脂を用いる場合、ビニル樹脂としては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂、スチレン-ア
クリル酸エステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のビニル樹脂の中でも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン-アクリル酸エステル樹脂(スチレン・アクリル樹脂)が好ましい。
よって、詳細な説明を省略するが、スチレン単量体としてはスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン;(メタ)アクリル酸エステル単量体としてはメチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルを用いると好ましい。これらスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
また、ほかの単量体が重合されていてもよく、その例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
スチレン・アクリル樹脂の製造方法は、特に制限されず、乳化重合法等によって製造することができる。
《ポリエステル樹脂》
非晶性樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークを示さない樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、n-オクテニルコハク酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などの2価以上のカルボン酸などを挙げることができる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-ドデカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオールなどの脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
(結晶性樹脂)
本発明に係るトナー母体粒子は、結晶性樹脂を含有していてもよく、例えば、下記結晶性ポリエステルなどのほか、特開2015-011325号公報の段落0043~0102等に記載の結晶性樹脂を好適に使用できる。特に、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含有することが製造面で好ましい。
《結晶性ポリエステル樹脂》
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分であって、トナーの示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂ユニットをいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、実施例に記載の示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
結晶性ポリエステル樹脂は、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、結晶性ポリエステル樹脂そのものを含有してもよい。又は、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを有するハイブリッド樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂ユニットによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂で、この樹脂を含むトナーが上記のように明確な吸熱ピークを示すものを含有してもよい。
結晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分から生成される。この際、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを構成する多価カルボン酸成分の炭素数C(acid)及び多価アルコール成分の炭素数C(alcohol)からなり、また、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2~3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジカルボン酸成分は、1種のものに限定されるものではなく、2種類以上を混合して用いてもよい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
脂肪族ジカルボン酸とともに用いることのできる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4′-ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、入手容易性及び乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、t-ブチルイソフタル酸を用いることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸の含有量が50構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70構成モル%以上であり、更に好ましくは80構成モル%以上であり、特に好ましくは100構成モル%である。ジカルボン酸成分における脂肪族ジカルボン酸の含有量が50構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの結晶性を十分に確保することができる。
また、ジオール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましく、必要に応じて脂肪族ジオール以外のジオールを含有させてもよい。脂肪族ジオールとしては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジオール成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-ドデカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオールなどが挙げられる。
必要に応じて用いられる脂肪族ジオール以外のジオールとしては、二重結合を有するジオール、スルホン酸基を有するジオールなどが挙げられ、具体的には、二重結合を有するジオールとしては、例えば、2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,6-ジオール、4-ブテン-1,8-ジオールなどが挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成するためのジオール成分としては、脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることが好ましく、より好ましくは70構成モル%以上であり、更に好ましくは80構成モル%以上であり、特に好ましくは100構成モル%である。ジオール成分における脂肪族ジオールの含有量が50構成モル%以上とされることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの結晶性を確保することができて製造されるトナーに優れた低温定着性が得られるとともに最終的に形成される画像に光沢性が得られる。
結晶性ポリエステル樹脂の形成方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより当該樹脂を形成することができる。
上記の多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との使用比率は、ジオール成分のヒドロキシ基[OH]とジカルボン酸成分のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、1.5/1~1/1.5とされることが好ましく、更に好ましくは1.2/1~1/1.2である。
結晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等などを挙げることができる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。さらに、アルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシドなどが挙げられ、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合温度や重合時間は特に限定されるものではなく、重合中には必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
さらに、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを有するハイブリッド樹脂の場合は、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの含有量は、ハイブリッド樹脂の全量に対して50質量%以上98質量%未満であると好ましい。上記範囲とすることにより、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与することができる。なお、ハイブリッド樹脂中の各ユニットの構成成分及び含有割合は、例えばNMR測定、メチル化反応P-GC/MS測定により特定することができる。
ここで、ハイブリッド樹脂は、上記結晶性ポリエステル樹脂ユニットのほかに、以下で詳述するポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットを含む。ハイブリッド樹脂は、上記結晶性ポリエステル樹脂ユニット及びポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットを含むものであれば、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれの形態であってもよいが、グラフト共重合体であると好ましい。グラフト共重合体とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの配向を制御しやすくなり、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与することができる。
さらに、上記観点からは、結晶性ポリエステル樹脂ユニットが、結晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットを主鎖として、グラフト化されていると好ましい。すなわち、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、主鎖としてポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットを有し、側鎖として結晶性ポリエステル樹脂ユニットを有するグラフト共重合体であると好ましい。
上記形態とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの配向をより高めることができ、ハイブリッド樹脂の結晶性を向上させることができる。
なお、ハイブリッド樹脂には、更にスルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの置換基が導入されていてもよい。上記置換基の導入は、結晶性ポリエステル樹脂ユニット中でもよいし、以下で詳説するポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニット中であってもよい。
《ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニット》
ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットは、上記結晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分である。ハイブリッド樹脂中(更には、トナー中)に非晶性樹脂ユニットを含有することは、その構造により、NMR測定、P-GC/MS測定、メチル化反応P-GC/MS測定等から適した分析法を選択し、化学構造を特性することができる。
また、非晶性樹脂ユニットは、当該ユニットと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂に
ついて示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高い第1ガラス転移点(Tg)を有する樹脂ユニットである。
非晶性樹脂ユニットは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、非晶性樹脂ユニットによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、非晶性樹脂ユニットを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂を含むトナーが上記のような非晶性樹脂ユニットを有するものであれば、その樹脂は、非晶性樹脂ユニットを有するハイブリッド樹脂に該当する。
非晶性樹脂ユニットは、結着樹脂に含まれる非晶性樹脂(すなわち、ハイブリッド樹脂以外の樹脂)と同種の樹脂で構成されると好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との親和性がより向上し、ハイブリッド樹脂が非晶性樹脂中に更に取り込まれやすくなり、帯電均一性等がより一層向上する。
ここで、「同種の樹脂」とは、繰り返し単位中に特徴的な化学結合が共通に含まれていることを意味する。また、「特徴的な化学結合」とは、物質・材料研究機構(NIMS)物質・材料データベース(http://polymer.nims.go.jp/PoLyInfo/guide/jp/term_polymer.html)に記載の「ポリマー分類」に従う。すなわち、ポリアクリル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリエステル、ポリハロオレフィン、ポリイミド、ポリイミン、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフェニレン、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリビニル及びその他のポリマーの計22種によって分類されたポリマーを構成する化学結合を「特徴的な化学結合」という。
また、樹脂が共重合体である場合における「同種の樹脂」とは、共重合体を構成する複数のモノマー種の化学構造において、上記化学結合を有するモノマー種を構成単位としている場合、特徴的な化学結合を共通に有する樹脂同士を指す。したがって、樹脂自体の示す特性が互いに異なる場合や、共重合体中を構成するモノマー種のモル成分比が互いに異なる場合であっても、特徴的な化学結合を共通に有していれば同種の樹脂とみなす。
例えば、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)と、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)とは、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有しているため、これらは同種の樹脂である。更に例示すると、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)と、スチレン、ブチルアクリレート、アクリル酸、テレフタル酸及びフマル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)とは、互いに共通する化学結合として、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有している。したがって、これらは同種の樹脂である。
非晶性樹脂ユニットを構成する樹脂成分は特に制限されないが、例えば、ビニル樹脂ユニット、ウレタン樹脂ユニット、ウレア樹脂ユニットなどが挙げられる。中でも、熱可塑性を制御しやすいという理由から、ビニル樹脂ユニットが好ましい。
ビニル樹脂ユニットとしては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂ユニット、スチレン-アクリル酸エステル樹脂ユニット、エチレン・酢酸ビニル樹脂ユニットなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
スチレン・アクリル樹脂ユニットの形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤と
しては、具体的には、以下に示すアゾ系又はジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
アゾ系又はジアゾ系重合開始剤としては、2,2′-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、1,1′-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2′-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-ビス-(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス-(t-ブチルパーオキシ)トリアジン等が挙げられる。
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等が挙げられる。
非晶性樹脂ユニットの含有量は、ハイブリッド樹脂の全量に対して、3質量%以上50質量%以下であると好ましい。さらに、上記含有量は、5質量%以上30質量%以下であるとより好ましい。上記範囲とすることにより、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与することができる。
《ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂)の製造方法》
本発明に係る結着樹脂に含まれるハイブリッド樹脂の製造方法は、上記結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとを分子結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。
ハイブリッド樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
(1)非晶性樹脂ユニットをあらかじめ重合しておき、当該非晶性樹脂ユニットの存在下で結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する重合反応を行ってハイブリッド樹脂を製造する方法
この方法では、先ず、上述した非晶性樹脂ユニットを構成する単量体(好ましくは、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体といったビニル単量体)を付加反応させて非晶性樹脂ユニットを形成する。
次に、非晶性樹脂ユニットの存在下で、多価カルボン酸と多価アルコールとを重合反応させて結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する。このとき、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させると共に、非晶性樹脂ユニットに対し、多価カルボン酸又は多価アルコールを付加反応させることにより、ハイブリッド樹脂が形成される。
上記方法において、結晶性ポリエステル樹脂ユニット又は非晶性樹脂ユニット中に、これらユニットが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。具体的には、非晶性樹脂ユニットの形成時、非晶性樹脂ユニットを構成する単量体の他に、結晶性ポリエステル樹脂ユニットに残存するカルボキシ基[-COOH]又はヒドロキシ基[-OH]と反応可能な部位及び非晶性樹脂ユニットと反応可能な部位を有する化合物も使用する。
すなわち、この化合物が結晶性ポリエステル樹脂ユニット中のカルボキシ基[-COOH]又はヒドロキシ基[-OH]と反応することにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニッ
トは非晶性樹脂ユニットと化学的に結合することができる。
もしくは、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの形成時、多価アルコール又は多価カルボン酸と反応可能であり、かつ、非晶性樹脂ユニットと反応可能な部位を有する化合物を使用してもよい。
上記の方法を用いることにより、非晶性樹脂ユニットに結晶性ポリエステル樹脂ユニットが分子結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド樹脂を形成することができる。
(2)結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド樹脂を製造する方法
この方法では、まず、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させて結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する。また、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する反応系とは別に、上述した非晶性樹脂ユニットを構成する単量体を付加重合させて非晶性樹脂ユニットを形成する。このとき、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。なお、このような反応可能な部位を組み込む方法は、上述の通りであるため、その詳細な説明は省略する。
次に、上記で形成した結晶性ポリエステルユニットと、非晶性樹脂ユニットとを反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが分子結合した構造のハイブリッド樹脂を形成することができる。
また、上記反応可能な部位が結晶性ポリエステル樹脂ユニットおよび非晶性樹脂ユニットに組み込まれていない場合は、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが共存する系を形成しておき、そこへ結晶性ポリエステル樹脂ユニット及び非晶性樹脂ユニットと結合可能な部位を有する化合物を投入する方法を採用してもよい。そして、当該化合物を介して、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが分子結合した構造のハイブリッド樹脂を形成することができる。
(3)結晶性ポリエステル樹脂ユニットをあらかじめ形成しておき、当該結晶性ポリエステル樹脂ユニットの存在下で非晶性樹脂ユニットを形成する重合反応を行ってハイブリッド樹脂を製造する方法
この方法では、まず、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させて重合を行い、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成しておく。次に、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの存在下で、非晶性樹脂ユニットを構成する単量体を重合反応させて非晶性樹脂ユニットを形成する。
このとき、上記(1)と同様に、結晶性ポリエステル樹脂ユニットまたは非晶性樹脂ユニット中に、これらユニットが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。なお、このような反応可能な部位を組み込む方法は、上述の通りであるため、その詳細な説明は省略する。
上記の方法を用いることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットに非晶性樹脂ユニットが分子結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド樹脂を形成することができる。
上記(1)~(3)の形成方法の中でも、(1)の方法は非晶性樹脂鎖に結晶性ポリエステル樹脂鎖をグラフト化した構造のハイブリッド樹脂を形成し易いことや生産工程を簡素化できるため好ましい。(1)の方法は、非晶性樹脂ユニットを予め形成してから結晶性ポリエステル樹脂ユニットを結合させるため、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの配向が均一になりやすい。したがって、本発明で規定するトナーに適したハイブリッド樹脂を確実に形成することができるので好ましい。
<着色剤>
トナー母体粒子を構成しうる着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金、例えばマンガン-銅-アルミニウム、マンガン-銅-スズなどのホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、二酸化クロムなどを用いることができる。
マゼンタ又はレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同6、同7、同15、同16、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同60、同63、同64、同68、同81、同81:4、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同149、同150、同163、同166、同170、同177、同178、同184、同202、同206、同207、同209、同222、同238、同269等が挙げられる。
また、オレンジ又はイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー12、同14、同15、同17、同74、同83、同93、同94、同138、同139、同155、同162、同180、同185、C.I.ソルベントイエロー93等が挙げられる。
さらに、グリーン又はシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同60、同62、同66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
これらの着色剤は必要に応じて単独又は二つ以上を選択併用することも可能である。
着色剤の添加量はトナー母体粒子全体に対して好ましくは1~30質量%、より好ましくは2~20質量%の範囲で、これらの混合物も用いることができる。このような範囲であると画像の色再現性を確保できる。
また、トナー中の着色剤分散径としては、体積平均粒径で、10~1000nm、50~500nmが好ましく、さらには80~300nmが特に好ましい。
<離型剤>
トナー母体粒子を構成する離型剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
離型剤の融点は、好ましくは40~160℃であり、より好ましくは50~120℃である。融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保存性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセット等を起こさずに安定したトナー画像形成が行える。また、トナー母体粒子中の離型剤の含有量は、1~30質量%が好ましく、より好ましくは5~20質量%である。
<荷電制御剤>
また、本発明に係るトナー母体粒子には、必要に応じて荷電制御剤を添加することができる。荷電制御剤としては、種々の公知のものを使用することができる。
荷電制御剤としては、水系媒体中に分散することができる公知の種々の化合物を用いることができ、具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第四級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩又はその金属錯体などが挙げられる。
荷電制御剤の含有割合は、結着樹脂全量に対して0.1~10質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量%の範囲内とされる。
<外添剤>
トナーとしての帯電性能や流動性又はクリーニング性を向上させる観点から、トナー母体粒子の表面に、外添剤として、滑剤、正帯電性の無機外添剤及び負帯電性の無機外添剤が添加されている。
そして、前記正帯電性の無機外添剤の質量と、前記負帯電性の無機外添剤の質量とが前記式(1)の関係を満たす。
前記正帯電性の無機外添剤としては、前記表Iに記載のものが挙げられ、チタン酸カルシウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、又は、サイクリックシラザン(Cyclicsilazane)及びアルキルアルコキシシランで表面修飾されたシリカ粒子などによる無機微粒子を好ましいものとして挙げられる。
前記サイクリックシラザン及びアルキルアルコキシシランで表面修飾されたシリカ粒子は、数平均一次粒径が50~150nmの範囲内であることが好ましい。
前記数平均一次粒径は、前記した感光体の保護層に含有される、無機微粒子の数平均一次粒径と同様の方法で測定される。
前記サイクリックシラザンとしては、下記一般式(1)で表されるような化合物が好ましく用いられる。
Figure 2022117569000004
式中、R、Rは、各々独立に水素原子、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基等)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アリルオキシ基(例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等)を表す。
は、水素原子、-(CH)nCH(ここで、nは0~3の整数を表す。)、-C(O)(CH)nCH(ここで、nは0~3の整数を表す。)、カルバモイル基、アルキル置換カルバモイル基(例えば、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル等)または、-C(O)N((CH)nCH)(CH)mCH3(ここで、n、mは各々0~3の整数を表す。)を表す。
は、((CHa(CHX)b(CYZ)c)(ここで、X、Y及びZは、各々、水素原子、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基等)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アリルオキシ基(例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等)を表す。a、b及びcは、各々0~6の整数を表すが、但し、a+b+cは、2~6の整数を表す。
上記一般式(1)の中でも、最も好ましく用いられるのは、下記構造式で表される化合物C-1である。
Figure 2022117569000005
また、前記アルキルアルコキシシランとしては、例えば、プロピルトリメトキシシラン(Propyltrimethoxysilane)、ヘキシルトリエトキシシラン(Hexyltriethoxysilane)、ヘキシルトリメトキシシラン(Hexyltrimethoxysilane)等が挙げられ、中でも、プロピルトリメトキシシランが好ましく用いられる。
前記サイクリックシラザン及びアルキルアルコキシシランでシリカ粒子を表面修飾する方法は、前記した感光体の保護層に含有される無機微粒子の表面修飾方法と同様に、湿式処理方法と乾式処理方法とのいずれも用いることができる。
前記負帯電性の無機外添剤としては、前記表Iに記載のものが挙げられ、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子などによる無機微粒子を好ましいものとして挙げられ、特に、シリカ粒子が好ましい。
また、負帯電性の無機外添剤は、数平均粒径が80~500nmの範囲内の大径粒子と、10~50nmの範囲内の小径粒子を併用することが好ましい。
また、必要に応じてこれらの無機微粒子は疎水化処理されていてもよい。
その他、有機微粒子をさらに添加してもよく、有機微粒子としては、数平均一次粒径が10~2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機微粒子を使用することができる。
滑剤は、クリーニング性や転写性をさらに向上させるものであって、滑剤としては、例えば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩などの高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。これらの外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
また、本発明で用いられる滑剤の平均粒径は1~5μmの範囲内であることが、雨だれの発生を確実に防止できる点で好ましい。
外添剤の添加量は、トナー母体粒子100質量%に対して0.1~10.0質量%であることが好ましい。
[トナーの製造方法]
本発明に用いられるトナーを製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。トナーを製造する方法には、下記外添剤処理工程が含まれることが好ましい。
(外添剤処理工程)
この工程は、トナー母体粒子表面へ必要に応じて外添剤を添加、混合してトナーを作製する工程である。外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置を使用して添加する方法が挙げられる。外添剤の添加により、トナーの流動性や帯電性が改良され、また、クリーニング性の向上等が実現される。
[現像剤の製造]
以上のようなトナーは、例えばいわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
二成分現像剤を構成するキャリアは特に限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
磁性体としては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子を用いることが好ましい。
キャリア表面被覆用の樹脂組成としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン樹脂、シクロヘキシルメタクリレート-メチルメタクリレート共重合体、スチレン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エステル樹脂又はフッ素樹脂などが用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂など使用することができる。
また、樹脂中に上記磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることも可能で、この樹脂分散型キャリアに被覆層を設けることもできる。
キャリアの体積平均粒径としては15~100μmの範囲内が好ましく、20~60μmの範囲内がより好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
[感光体の作製]
<表面修飾金属酸化物粒子P1の作製>
メタノール 10mLに未修飾金属酸化物粒子(未修飾の無機微粒子)である二酸化ケイ素(SiO、数平均一次粒径100nm)5gを加え、USホモジナイザーを用いて室温で30分間分散させた。
上記で得られた導電性金属酸化物粒子 5gを、2-ブタノール 40gに加え、USホモジナイザーを用いて室温で60分間分散させた。次いで、シリコーン主鎖の側鎖にシリコーン鎖を有する表面修飾剤(KF-9908:信越化学工業株式会社製)0.15gを加えて、さらに、室温で60分間、USホモジナイザーを用いて分散を行った。分散後、溶剤を室温下で揮発させ、120℃で60分間乾燥させることにより、反応性表面修飾剤と、主鎖及び側鎖にシリコーン鎖を有する表面修飾剤で表面修飾が施された表面修飾金属酸化物粒子P1を作製した。
<表面修飾金属酸化物粒子P2の作製>
メタノール 10mLに未修飾金属酸化物粒子であるα-アルミナ(数平均一次粒径300nm、比抵抗1010Ω・cm以上、pH8~9、スミコランダムAA-03:住友化学工業社製)を5g加え、USホモジナイザーを用いて室温で30分間分散させた。
上記で得られた導電性金属酸化物粒子 5gを、2-ブタノール 40gに加え、USホモジナイザーを用いて室温で60分間分散させた。次いで、シリコーン主鎖の側鎖にシリコーン鎖を有する表面修飾剤(KF-9908:信越化学工業株式会社製)0.15gを加えて、さらに、室温で60分間、USホモジナイザーを用いて分散を行った。分散後、溶剤を室温下で揮発させ、120℃で60分間乾燥させることにより、反応性表面修飾剤と、主鎖及び側鎖にシリコーン鎖を有する表面修飾剤で表面修飾が施された表面修飾金属酸化物粒子P2を作製した。
<表面修飾金属酸化物粒子P3の作製>
メタノール 10mLに未修飾金属酸化物粒子である酸化チタン(TiO、数平均一次粒径100nm)5gを加え、USホモジナイザーを用いて室温で30分間分散させた。
上記で得られた導電性金属酸化物粒子 5gを、2-ブタノール 40gに加え、USホモジナイザーを用いて室温で60分間分散させた。次いで、シリコーン主鎖の側鎖にシリコーン鎖を有する表面修飾剤(KF-9908:信越化学工業株式会社製)0.15gを加えて、さらに、室温で60分間、USホモジナイザーを用いて分散を行った。分散後、溶剤を室温下で揮発させ、120℃で60分間乾燥させることにより、反応性表面修飾剤と、主鎖及び側鎖にシリコーン鎖を有する表面修飾剤で表面修飾が施された表面修飾金属酸化物粒子P3を作製した。
<金属酸化物微粒子P4の作製>
金属酸化物微粒子P4として、未修飾金属酸化物粒子である酸化スズ(数平均一次粒径=20nm)を用いた。
[感光体の作製]
<感光体1の作製>
(導電性支持体の準備)
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、導電性支持体を準備した。
(中間層の形成)
下記成分を下記の分量で混合し、分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行い、中間層形成用塗布液を調製した。当該塗布液を浸漬塗布法によって導電性支持体の表面に塗布し、110℃で20分間乾燥し、膜厚2μmの中間層を導電性支持体上に形成した。なお、ポリアミド樹脂としてX1010(ダイセル・エボニック株式会社製)を使用し、酸化チタン粒子としてSMT-500SAS(テイカ株式会社製、数平均一次粒径:0.035μm)を使用した。
ポリアミド樹脂 10質量部
酸化チタン粒子 11質量部
エタノール 200質量部
(電荷発生層の形成)
下記成分を下記分量で混合し、循環式超音波ホモジナイザー(RUS-600TCVP、株式会社日本精機製作所製)を用いて、19.5kHz、600Wにて循環流量40L/時間で0.5時間にわたって分散することにより、電荷発生層形成用塗布液を調製した。得られた塗布液を浸漬塗布法によって中間層の表面に塗布し、風乾することにより、膜厚0.3μmの電荷発生層を中間層上に形成した。
なお、電荷発生物質は、Cu-Kα特性X線回折スペクトル測定で8.3°、24.7°、25.1°、及び26.5°に明確なピークを有するチタニルフタロシアニン、及び(2R,3R)-2,3-ブタンジオールの1:1付加体と、未付加のチタニルフタロシアニンとの混晶を使用した。また、ポリビニルブチラール樹脂としてエスレック(登録商標)BL-1(積水化学工業株式会社製)を使用した。また、混合溶媒として、3-メチル-2-ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(体積比)を使用した。
電荷発生物質 24質量部
ポリビニルブチラール樹脂 12質量部
混合溶媒 400質量部
(電荷輸送層の形成)
下記成分を下記分量で混合した電荷輸送層用の塗布液を、浸漬塗布法によって電荷発生層の表面に塗布し、120℃で70分間乾燥することにより、膜厚24μmの電荷輸送層を電荷発生層上に形成した。
電荷輸送物質(下記CTM-A:4,4′-ジメチル-4″-(α-フェニルスチリル)トリフェニルアミン) 60質量部
ポリカーボネート樹脂(ユーピロン(登録商標)Z300(三菱ガス化学株式会社製、ビスフェノールZ型ポリカーボネート) 100質量部
酸化防止剤(IRGANOX(登録商標)1010(BASFジャパン株式会社製)
4質量部
Figure 2022117569000006
(保護層の形成)
下記成分を下記分量で混合、分散した保護層用の塗布液を、浸漬塗布法によって電荷輸送層の表面に塗布し、120℃で70分間乾燥することにより、膜厚24μmの保護層を電荷輸送層上に形成し、感光体1を作製した。
表面修飾金属酸化物粒子P1(KF-9908で表面修飾されたシリカ粒子)
60質量部
電荷輸送物質(CTM-A) 150質量部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300質量部
酸化防止剤(Irganox1010:日本チバガイギー社製)12質量部
THF(テトラヒドロフラン)(沸点66℃) 2800質量部
シリコーンオイル(KF-54:信越化学社製) 4質量部
酸性分散剤(BYK-P105:BYKケミー社製) 1質量部
<感光体2及び3の作製>
前記感光体1の作製の保護層用の塗布液において、酸性分散剤(BYK-P105)を添加しないで、かつ、前記金属酸化物粒子P1の代わりに、前記金属酸化物粒子P2又はP3を用いた以外は同様にして感光体2及び3を作製した。
<感光体4の作製>
前記感光体1の作製の保護層の形成を下記のとおりに変更した以外は同様にして感光体4を作製した。
(保護層の形成)
前記金属酸化物微粒子P4を85質量部、多官能ラジカル重合性化合物として下記化合物M2を100質量部、溶媒として2-ブタノールを400質量部及びTHFを40質量部、遮光下で混合し、分散機としてサンドミルを用いて5時間分散した。その後、重合開始剤として、下記化学構造式(P)で表される化合物を10質量部加え、遮光下で撹拌して溶解させ、保護層用の塗布液を調製した。
この保護層用の塗布液を電荷輸送層上に円形スライドホッパー塗布装置を用いて塗布して塗膜を形成した。形成された塗膜に対し、メタルハライドランプを用いて紫外線を20秒間照射した。これにより、乾燥後の厚さが3.0μmの保護層を形成し、感光体4を作製した。
Figure 2022117569000007
<感光体5の作製>
前記感光体1の作製の保護層用の塗布液において、表面修飾金属酸化物粒子P1及び酸性分散剤(BYK-P105)を添加しない以外は、同様にして感光体5を作製した。
<感光体6の作製>
前記感光体4の作製において、紫外線照射時間を40秒間に変更した以外は同様にして感光体6を作製した。
なお、得られた感光体の弾性変形率を下記方法によって算出し、下記表に示した。
弾性変形率は、下記式(I)により算出した。
式(I):弾性変形率(%)=We/Wtot
上記式(I)中、「We」は弾性エネルギーを示し、「Wtot」は弾性エネルギーと塑性エネルギーの和を示す。
なお、「We」及び「Wtot」は、下記測定条件にしたがって微小硬度計「H100V」(Fscher社製)により測定されるものである。
(測定条件)
・使用圧子:対面角136°のビッカース四角錘ダイアモンド圧子
・負荷条件:速度6mN/secで有機感光体の表面からビッカース圧子を押しこむ・負荷時間:5sec(最大負荷 30mN)
・保持時間:5sec
・除荷条件:負荷と同じ速度で負荷を除く
[トナーの製造]
<ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c1)の合成>
両反応性モノマーを含む、下記の付加重合系樹脂(スチレン・アクリル樹脂:StAc)ユニットの原料モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
スチレン 34質量部
n-ブチルアクリレート 12質量部
アクリル酸 2質量部
重合開始剤(ジ-t-ブチルパーオキサイド) 7質量部
また、下記の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs)ユニットの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、攪拌器および熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
セバシン酸 369質量部
1,10-デカンジオール 318質量部
次いで、撹拌下で付加重合系樹脂(StAc)の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行ったのち、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。なお、このとき除去されたモノマー量は、上記の樹脂の原料モノマー比に対してごく微量であった。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に、200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることによりハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c1)を得た。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c1)は、その全量に対してCPEs(結晶性ポリエステル樹脂)以外の樹脂(StAc)ユニットを8質量%含み、また、StAcにCPEsがグラフト化した形態の樹脂であった。また、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(c1)の数平均分子量(Mn)は9000、融点(Tc)は76℃であった。
<ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液(C1)の調製>
上記結晶性ポリエステル樹脂(c1)30質量部を溶融させて溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の結晶性ポリエステル樹脂の移送と同時に、当該乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した、濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cmの条件で運転することにより、固形分量が30質量部である結晶性ポリエステル樹脂の微粒子分散液を調製した。このとき、上記結晶性ポリエステル樹脂の微粒子分散液に含まれる粒子は、体積基準のメジアン径が200nmであった。
<非晶性樹脂粒子の水系分散液(X1)の調製>
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、再度液温80℃とし、
スチレン 480質量部
n-ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68.0質量部
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液(x1)を調製した。
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱後、樹脂微粒子の分散液(x1)260質量部と、
スチレン(St) 284質量部
n-ブチルアクリレート(BA) 92質量部
メタクリル酸(MAA) 13質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 1.5質量部
離型剤:ベヘン酸ベヘネート(融点73℃) 190質量部
からなる単量体及び離型剤を90℃にて溶解させた溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液(x2)を調製した。
(第3段重合)
さらに、樹脂微粒子の分散液(x2)にイオン交換水400質量部を添加し、よく混合したのち、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下で、
スチレン(St) 350質量部
n-ブチルアクリレート(BA) 215質量部
アクリル酸(AA) 30質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8質量部
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル樹脂からなる非晶性樹脂微粒子の水系分散液(X1)を調製した。
得られた非晶性樹脂微粒子の水系分散液(X1)について、非晶性樹脂微粒子の体積基準のメジアン径が220nm、ガラス転移温度(Tg)が55℃、重量平均分子量(Mw)が32000であった。
<着色剤粒子の水系分散液(Cy1)の調製>
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら、銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue 15:3)420質量部を徐々に添加した。次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の水系分散液(Cy1)を調製した。
得られた着色剤粒子の水系分散液(Cy1)について、着色剤粒子の体積基準のメジアン径は110nmであった。
<ポリエステルトナー母体粒子1の製造>
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、非晶性樹脂微粒子の水系分散液(X1)288質量部(固形分換算)、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(C1)70質量部(固形分換算)、イオン交換水2000質量部を投入した後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
その後、着色剤粒子の水系分散液(Cy1)30質量部(固形分換算)を投入し、次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター・ベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.0μmになった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナーの平均円形度の測定装置「FPIA-2100」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.945になった時点で2.5℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄したのち、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子1を得た。
<スチレン・アクリルトナー母体粒子2の製造>
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、非晶性樹脂微粒子の水系分散液(X1)288質量部(固形分換算)、イオン交換水2000質量部を投入した後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
その後、着色剤粒子の水系分散液(Cy1)30質量部(固形分換算)を投入し、次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター・ベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.0μmになった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナーの平均円形度の測定装置「FPIA-2100」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.945になった時点で2.5℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄したのち、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー粒子2を得た。
<トナー1の製造>
(外添剤の添加)
前記で得られたトナー母体粒子1を100質量部に、負帯電性の無機外添剤として、疎水性シリカ(数平均一次粒径=12nm、疎水化度=68、表Iに記載の(R805)」)0.6質量部、疎水性シリカ(数平均一次粒径=30nm、疎水化度=64、表Iに記載の(NAX50))0.94質量部及び疎水性酸化チタン(チタニア)(数平均一次粒径=100nm、疎水化度=63、表Iに記載の(TAF520K))0.6質量部、正帯電性の無機外添剤として、チタン酸カルシウム(数平均一次粒径=100nm、表Iに記載の(TC-110))を0.3質量部、滑剤としてステアリン酸亜鉛0.3質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機社製)により回転翼周速35mm/sec、32℃で20分間混合した後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去する外添剤処理を施すことにより、体積平均粒径が6.1μmである、トナー1を得た。
<トナー2~11の製造>
前記トナー1の製造において、トナー母体粒子の種類と、正帯電性の無機外添剤の種類及び添加量を下記表IIに示すとおりに変更した以外は同様にしてトナー2~11を得た。なお、下記表IIにおいて、「疎水性シリカ2種」とは、前記した疎水性シリカ(数平均一次粒径=12nm、疎水化度=68、表Iに記載の(R805)」)、疎水性シリカ(数平均一次粒径=30nm、疎水化度=64、表Iに記載の(NAX50))を表す。
なお、下記表IIにおいて、「チタン酸ストロンチウム」は、数平均一次粒径が80m(表Iに記載の(SW200)である。
また、「正帯電処理シリカ粒子」とは、下記に示すサイクリックシラザンC-1及びプロピルトリメトキシシランで表面修飾された平均粒径100nmのシリカ粒子である。
Figure 2022117569000008
具体的には、ヒュームドシリカ、アエロジル130(日本アエロジル社製)100質量部を150℃で5時間乾燥させた後、常温にもどし、上記構造式で表されるサイクリックシラザンC-1を15質量部、プロピルトリメトキシシラン15質量部を窒素雰囲気下で加え、20分間混合した。その後、85℃、15時間、窒素雰囲気下で撹拌を続け、サイクリックシラザン及びプロピルトリメトキシシランで表面修飾したシリカ粒子(正帯電処理シリカ粒子)を得た。
さらに、トナー10及びトナー11は、2種の正帯電性の無機外添剤を併用しており、これらの添加比率は50:50(0.3質量部:0.3質量部)とした。
[現像剤1~11の製造]
前記で製造した各トナーに対して、それぞれアクリル樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを、トナー濃度が現像剤中において6.5質量%となるように添加して混合することにより、現像剤1~11をそれぞれ製造した。
[クリーニングブレード1の作製]
<ゴム材ゴムシートの作製>
4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリエステルポリオール、短鎖ポリオールを原材料に用い、公知の遠心成型法にて、厚さ2mmのウレタンゴムシートを作製した。
配合比を変更しながら、反発弾性率が29.0%のゴム材ゴムシート(ブレード部材)を作製した。
<エッジ部位の形成>
前記で作製したゴムシートに対し、鉛直方向に対して10°傾けた角度で刃を入れて裁断し、エッジ角90°のエッジ部位を形成した。
<クリーニングブレードの裁断と接着>
さらに、鉛直方向に刃を入れて裁断し、340mm×14.0mmの寸法に裁断した。熱硬化性の接着剤により、接着しろ4mmで板金に加熱接着し、自由長10.0mmのクリーニングブレード1を作製した。
なお、前記反発弾性率については、前記したとおりの測定法により測定した。
[クリーニングブレード2、4及び5の作製]
クリーニングブレード1の作製において、ゴム材ゴムシートの原材料の配合比を変更しながら、反発弾性率が下記表に示すとおりとなるように作製した以外は同様にし、クリーニングブレード2、4及び5を作製した。
[クリーニングブレード3の作製]
クリーニングブレード1の作製と同様に、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリエステルポリオール、短鎖ポリオールを原材料に用いて、配合比の異なる2種の処方液を公知の遠心成型法にて、連続投入して、ベース層(1.5mm)とエッジ層(0.5mm)からなる2層構成の厚さ2mmのゴム材ゴムシート(ブレード部材)を作製した。なお、ベース層とエッジ層の各原材料の配合比を適宜調整して、ゴム材ゴムシートの反発弾性率が26.5%となるように作製した。
[クリーニングブレード6の作製]
クリーニングブレード1の作製において、エッジ角が100°となるようにエッジ部位を形成した以外は同様にして、クリーニングブレード6を作製した。
なお、下記表において、層構成の「単層」とは、感光体へ当接するエッジ層のみからなるもので、「2層」とは、エッジ層とベース層からなるものである。
[評価]
<雨だれ耐性>
前記で得られた感光体、現像剤及びクリーニングブレードを、下記表IIに示す組み合わせで用いて画像形成を行った。
具体的には、評価機としてbizhub C650i(コニカミノルタ社製)を用い、低温・低湿環境(10℃、20%RH;LL環境)でBk位置に前記で作製した各感光体を搭載した。また、前記で作製したクリーニングブレード及び現像剤をそれぞれ設置した。ここで、クリーニングブレードは、感光体に対して当接するエッジ角が、下記表IIに示すとおりとなるように設置した。
そして、A4用紙に5%文字チャートを連続で30kP(30000枚)印刷した後、前記評価機から感光体を取り外し、30mmφ、長さ360mmの感光体1周分(面積換算:33929mm)に発生した雨だれ(付着物)の個数を目視により観察し、下記の基準で評価した。
(基準)
○:雨だれの個数が0~9個(実用上問題なし)
×:雨だれの個数が10個以上(実用上問題あり)
<感光体減耗性>
前記雨だれ耐性の評価方法において、30kP耐久後の感光体の減耗量を以下の方法で確認した。
画像形成試験を開始する前の感光体の積層膜(中間層、電荷発生層、電荷輸送層及び表面保護層からなる積層膜)の初期膜厚(μm)を測定し、また画像形成試験終了後における膜厚(μm)を測定して、画像形成試験前後の感光体の積層膜の膜厚の差ΔT(μm)を算出した。感光体の積層膜の膜厚は、均一膜厚部分(感光体の両端は膜厚が不均一になりやすいので、少なくとも両端3cmは除く)をランダムに10か所測定し、その平均値を感光体の積層膜の膜厚とした。
膜厚測定器には、渦電流方式の膜厚測定器「EDDY560C」(ヘルムート・フィッシャー社製)を用いた。画像形成試験前後の感光体の積層膜の膜厚の差ΔT(μm)を、感光体の100krot(10万回転)あたりに換算して、α値(μm/10万回転)を求め、これを感光体の減耗量とした。得られたα値を用いて、耐摩耗性を以下の基準で評価した。なお、下記表IIにおいて、カッコ内の数値はα値を示す。
(基準)
○:α値が1未満(実用上問題なし)
×:α値が1以上(実用上問題あり)
Figure 2022117569000009
Figure 2022117569000010
上記結果に示されるように、本発明の画像形成方法を用いた実施例では、比較例に比べて、雨だれを防止でき、また、感光体の減耗量を低減できることが分かる。
100 画像形成装置
110Y、110M、110C、110Bk 画像形成ユニット
111Y、111M、111C、111Bk 感光体
113Y、113M、113C、113Bk 接触式帯電手段
113a 芯金
113b 弾性層
113c 抵抗制御層
113d 表面層
113e 押圧バネ
115Y、115M、115C、115Bk 露光手段
117Y、117M、117C、117Bk 現像手段
118Y、118M、118C、118Bk 現像ローラー
119Y、119M、119C、119Bk クリーニングブレード
119a 支持部材
119b ブレード部材
131 中間転写体
133Y、133M、133C、133Bk 一次転写ローラー(転写手段)
135 クリーニング手段
137A、137B、137C、137D ローラー
150 給紙搬送手段
170 定着手段
200 プロセスカートリッジ
201 筐体
203R、203L 支持レール
211 給紙カセット
213A、213B、213C、213D 中間ローラー
215 レジストローラー
217 二次転写ローラー(転写手段)
219 排紙ローラー
221 排紙トレイ
300 外添剤粒子
301 小径シリカ粒子
302 大径シリカ粒子
303 正帯電性の無機外添剤粒子
θ エッジ角
N ニップ部
L 静止層
T トナー粒子

Claims (9)

  1. 静電荷像現像用トナーを用いる電子写真プロセスによる画像形成方法であって、
    接触式帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニングブレードを、電子写真感光体の周りに設置し、
    前記電子写真感光体の表面保護層に、無機微粒子を含有し、
    前記電子写真感光体の弾性変形率が、50%以下で、
    前記クリーニングブレードの反発弾性率が、30%以下であり、
    前記静電荷像現像用トナーを構成するトナー粒子が、滑剤、正帯電性の無機外添剤及び負帯電性の無機外添剤を含有し、
    前記正帯電性の無機外添剤の質量と、前記負帯電性の無機外添剤の質量とが、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする画像形成方法。
    式(1):0.28≦正帯電性の無機外添剤の質量/負帯電性の無機外添剤の質量
  2. 前記電子写真感光体の前記表面保護層に含有される前記無機微粒子が、シリカ(SiO)粒子であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
  3. 前記電子写真感光体の前記表面保護層に熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成方法。
  4. 前記電子写真感光体に対して当接する前記クリーニングブレードのエッジ角が、鈍角に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
  5. 前記正帯電性の無機外添剤が、チタン酸カルシウム粒子であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
  6. 前記正帯電性の無機外添剤が、チタン酸ストロンチウム粒子であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
  7. 前記正帯電性の無機外添剤が、サイクリックシラザン及びアルキルアルコキシシランで表面修飾されたシリカ粒子であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
  8. 前記トナー粒子が、結晶性ポリエステル樹脂及びスチレン・アクリル樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
  9. 前記結晶性ポリエステル樹脂が、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項8に記載の画像形成方法。
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