JP2022117109A - 積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】高温環境下に曝露した後に保護フィルムを剥離しても視認性の低下が抑制される、ポリイミド系フィルム及び保護フィルムを含む積層フィルムを提供すること。【解決手段】ポリイミド系フィルム及び保護フィルムを含む積層フィルムであって、前記ポリイミド系フィルムと前記保護フィルムとの間の剥離力は、0.24N/25.4mm未満である、積層フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリイミド系フィルム及び保護フィルムを含む積層フィルムに関する。
ポリイミド系フィルムは、液晶や有機EL等の表示装置、タッチセンサ、スピーカー、半導体など、種々の用途に用いられている。例えば、タッチセンサ基板材料としては、芳香族ポリイミド系フィルム、又は脂肪族ポリイミド系フィルムなどが知られている(例えば特許文献1及び2)。
特開2005-336243号公報 国際公開第2019/156717号パンフレット
そのようなポリイミド系フィルムは、ポリイミド系フィルムの表面を傷や埃等の異物から保護するために、保護フィルムを備えた積層フィルムとする態様をとることがある。しかし、本発明者らの検討によれば、このような積層フィルムを高温環境下に曝露した後に保護フィルムを剥離すると、ポリイミド系フィルムが白化したり、傷及び/又はしわができ、フィルムの視認性が低下することがあることが分かった。
したがって、本発明の目的は、高温環境下に曝露した後に保護フィルムを剥離しても視認性の低下が抑制される、ポリイミド系フィルム及び保護フィルムを含む積層フィルムを提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリイミド系フィルムと保護フィルムとの剥離力を適切な範囲に調整することによって前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には以下の好適な態様が含まれる。
〔1〕ポリイミド系フィルム及び保護フィルムを含む積層フィルムであって、
前記ポリイミド系フィルムと前記保護フィルムとの間の剥離力は、0.24N/25.4mm未満である、積層フィルム。
〔2〕前記ポリイミド系フィルムの弾性率と前記保護フィルムの弾性率との差は5.0GPa以下である、〔1〕に記載の積層フィルム。
〔3〕前記ポリイミド系フィルムの弾性率は、2.0GPa以上7.0GPa以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の積層フィルム。
〔4〕前記保護フィルムの弾性率は、2.0GPa以上4.0GPa以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の積層フィルム。
〔5〕前記ポリイミド系フィルムは、式(1):
Figure 2022117109000001
[式(1)中、Xは2価の有機基を表し、Yは4価の有機基を表し、*は結合手を表す]
で表される構成単位を有するポリイミド系樹脂を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の積層フィルム。
〔6〕前記式(1)で表される構成単位は、Xとして2価の脂肪族基を含む、〔5〕に記載の積層フィルム。
〔7〕前記式(1)で表される構成単位は、Yとして、式(2):
Figure 2022117109000002
[式(2)中、R~Rは、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を表し、R~Rに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、Vは、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-、-S-、-CO-又は-N(R)-を表し、Rは、水素原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の一価の炭化水素基を表し、*は結合手を表す]
で表される構造を含む、〔5〕又は〔6〕に記載の積層フィルム。
〔8〕前記ポリイミド系樹脂はフッ素原子を含有する、〔5〕~〔7〕のいずれかに記載の積層フィルム。
〔9〕前記保護フィルムはポリエステル系フィルムである、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の積層フィルム。
〔10〕前記ポリイミド系フィルムの膜厚は10μm以上100μm以下である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の積層フィルム。
〔11〕前記保護フィルムの膜厚は10μm以上100μm以下である、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の積層フィルム。
本発明によれば、高温環境下に曝露した後に保護フィルムを剥離しても視認性の低下が抑制される、ポリイミド系フィルム及び保護フィルムを含む積層フィルムを提供することができる。
[積層フィルム]
本発明の積層フィルムはポリイミド系フィルム及び保護フィルムを含み、
前記ポリイミド系フィルムと前記保護フィルムとの間の剥離力は、0.24N/25.4mm未満である。
本発明の積層フィルムにおいて、ポリイミド系フィルムは少なくとも一方の側(片側又は両側)に保護フィルムを有している。保護フィルムはポリイミド系フィルムに隣接していても、他の層を介して積層されていてもよい。なお、ポリイミド系フィルムが他の層、例えば機能層を介して保護フィルムを積層している場合、ポリイミド系フィルムと保護フィルムとが近接しているという。
本発明者らは、ポリイミド系フィルムと保護フィルムとを含む積層フィルムにおいて、ポリイミド系フィルムと保護フィルムとの間の剥離力を、0.24N/25.4mm未満とすることで、高温環境下に曝露した後でも、保護フィルム剥離時のフィルムの視認性の低下が抑制されることを見出した。さらに、視認性の低下が抑制されることに加えて、積層フィルムを高温環境下に曝露した際に起こりやすい、カールも抑制できることを見出した。ここで、フィルムの視認性が低下するとは、積層フィルムから保護フィルムをはがす際に、ポリイミド系フィルムが白化したり、傷及び/又はしわができることを指す。
本発明の積層フィルムに含まれる、前記ポリイミド系フィルムと前記保護フィルムとの間の剥離力は0.24N/25.4mm未満である。剥離力が0.24N/25.4mm未満であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制でき、さらに積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制できる。剥離力が0.24N/25.4mm以上であると、高温環境下に曝露した後の、ポリイミド系フィルムの視認性の低下が抑制できず、カールの抑制も難しいことがある。前記剥離力は、好ましくは0.23N/25.4mm以下、より好ましくは0.22N/25.4mm以下、更に好ましくは0.21N/25.4mm以下であり、好ましくは0.05N/25.4mm以上、より好ましくは0.1N/25.4mm以上である。剥離力が前記上限以下であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下をさらに抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールもさらに抑制しやすい。また、剥離力が前記下限以上であると、ポリイミド系フィルムの視認性の低下をさらに抑制しやすく、又ポリイミド系フィルムと保護フィルムとの密着性が高まり、積層フィルムの機械的強度が高まりやすい。前記剥離力は、ポリイミド系フィルムに含まれる樹脂を構成する構成単位の種類及び構成比、保護フィルムに含まれる樹脂を構成する構成単位の種類及び構成比、後述する粘着層の種類及び量等を適宜調整することにより、前記範囲内に調整することができる。剥離力は、引張試験機を使用して測定することができ、例えば後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。なお本発明において、2つ以上のポリイミド系フィルム及び/又は保護フィルムが含まれる場合、少なくとも1つの隣接又は近接しているポリイミド系フィルムと保護フィルムとの間の剥離力が前記値を満たせばよく、好ましくはすべての隣接又は近接しているポリイミド系フィルムと保護フィルムとの間の剥離力が前記値を満たす。
本発明の積層フィルムに含まれる、ポリイミド系フィルムの弾性率と前記保護フィルムの弾性率との差は、好ましくは5.0GPa以下、より好ましくは4.0GPa以下、更に好ましくは3.0GPa以下、より更に好ましくは2.5GPa以下、特に好ましくは1.5GPa以下、非常に特に好ましくは0.7GPa以下であり、好ましくは0.05GPa以上、より好ましくは0.1GPa以上である。ここで、「弾性率の差」とは、ポリイミド系フィルムの弾性率と保護フィルムの弾性率との差の絶対値を指す。弾性率の差が前記上限以下であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制でき、さらに積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすく、前記下限以上であると、樹脂と保護フィルムの識別が容易となる。弾性率の差は、ポリイミド系フィルムに含まれる樹脂を構成する構成単位の種類及び構成比、保護フィルムに含まれる樹脂を構成する構成単位の種類及び構成比、ポリイミド系フィルム及び保護フィルムの膜厚、ポリイミド系フィルム及び保護フィルムの製造条件等を適宜調整することにより、前記範囲に調整することができる。弾性率は、引張試験機を使用して測定することができ、例えば後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。なお、本発明において2つ以上のポリイミド系フィルム及び/又は保護フィルムが含まれる場合、少なくとも1つの隣接又は近接しているポリイミド系フィルムの弾性率と保護フィルムの弾性率との差が前記値を満たせばよく、好ましくはすべての隣接又は近接しているポリイミド系フィルムの弾性率と保護フィルムの弾性率との差が前記値を満たす。
本発明の積層フィルムは、枚葉状であってもよく、長尺状であってもよい。積層フィルムが枚葉状である場合、長尺状の積層フィルムを裁断することにより得ることができる。積層フィルムが枚葉状である場合、積層フィルムの平面形状は、用途に応じて適宜選択することができるが、例えば方形形状、好ましくは長辺と短辺とを有する方形形状とすることができる。積層フィルムが長辺と短辺とを有する方形形状である場合、長辺の長さは、例えば10~500mmであり、短辺の長さは例えば5~400mmである。
本発明の積層フィルムが長尺状である場合、長尺状フィルムは通常幅50cm以上、より好ましくは100cm以上、特に好ましくは120cm以上である。長さは前記幅に対して、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上であってよい。積層フィルムの長さの上限に特に制限は無く、例えば前記幅の1万倍以下であってよい。
〔ポリイミド系フィルム〕
本発明の積層フィルムに含まれるポリイミド系フィルムの弾性率は、好ましくは2.0GPa以上、より好ましくは2.5GPa以上、更に好ましくは3.0GPa以上であり、好ましくは7.0GPa以下、より好ましくは6.0GPa以下、更に好ましくは5.0GPa以下である。ポリイミド系フィルムの弾性率が前記範囲であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、またポリイミド系フィルムの耐久性が向上しやすい。なお、ポリイミド系フィルムの弾性率は、例えば、ポリイミド系フィルムに含まれる樹脂を構成する構成単位の種類及び構成比、ポリイミド系樹脂の製造条件、ポリイミド系フィルムに含まれる添加剤の種類や量、ポリイミド系フィルムの製造条件を適宜調整することにより、前記範囲内に調整することができる。ポリイミド系フィルムの弾性率は、引張試験機を使用して測定することができ、例えば後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
本発明において、ポリイミド系フィルムの膜厚は、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、更に好ましくは80μm以下である。ポリイミド系フィルムの膜厚が前記範囲内であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制でき、さらに積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。ポリイミド系フィルムの膜厚は、接触式のデジタル厚み計を使用して測定することができ、例えば後述の実施例に記載の方法で測定できる。
本発明の一実施態様において、ポリイミド系フィルムは紫外線カット性に優れている。ポリイミド系フィルムの350nmにおける光透過率は、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、更に好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。350nmの光透過率が前記上限以下であると、紫外線カット性を向上できる。350nmの光透過率の下限は0%以上である。ポリイミド系フィルムの350nmにおける光透過率は、例えばポリイミド系フィルムに含まれる樹脂を構成する構成単位の種類や量、紫外線吸収剤の種類や量等により前記上限以下に調整することができる。350nmの光透過率は、紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定でき、例えば後述の実施例の記載の方法で測定できる。
本発明の一実施態様において、ポリイミド系フィルムは透明性に優れている。ポリイミド系フィルムの500nmにおける光透過率は、好ましくは90.0%以上、より好ましくは90.2%以上、更に好ましくは90.3%以上、特に好ましくは90.4%以上である。500nmの光透過率が前記下限以上であると、表示装置等に適用した場合に視認性を高めやすい。500nmの光透過率の上限は100%である。ポリイミド系フィルムの500nmにおける光透過率は、例えばポリイミド系フィルムに含まれる樹脂を構成する構成単位の種類及び構成比、ポリイミド系フィルムの膜厚等を適宜調整することによって、前記下限以上に調整することができる。500nmの光透過率は、紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の一実施態様において、ポリイミド系フィルムのヘーズは、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.5%以下、更に好ましくは1.0%以下、更により好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.5%以下、特により好ましくは0.3%以下である。ポリイミド系フィルムのヘーズが前記上限以下であると、ポリイミド系フィルムの透明性を向上でき、表示装置等に適用した場合に視認性を高めやすい。ヘーズの下限は通常0%である。ヘーズは、例えばポリイミド系フィルムに含まれる樹脂を構成する構成単位の種類及び構成比、製膜条件(乾燥温度、時間)等を適宜調整することによって、前記上限以下に調整することができる。ヘーズはヘーズメータを用いて測定することができ、例えば後述の実施例に記載の方法で測定できる。
本発明の一実施態様において、ポリイミド系フィルムは、黄色度(YI値)が好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下、更により好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.0以下である。ポリイミド系フィルムの黄色度が前記上限以下であると、ポリイミド系フィルムの無色透明性を向上でき、表示装置等に適用した場合に視認性を高めやすい。黄色度の下限値は0%である。黄色度は例えば、ポリイミド系フィルムに含まれる樹脂を構成する構成単位の種類及び構成比、製膜条件(乾燥温度、時間)等を適宜調整することによって、前記上限以下に調整することができる。黄色度は紫外可視近赤外分光光度計を用いて算出することができ、例えば後述の実施例に記載の方法により算出できる。
なお、350nmの光透過率、500nmの光透過率、ヘーズ及び黄色度はそれぞれ、好ましくは本発明のポリイミド系フィルムの厚み(膜厚)の範囲における光透過率、ヘーズ及び黄色度である。
本発明の好適な実施態様において、ポリイミド系フィルムは、引張強度が好ましくは70MPa以上、より好ましくは80MPa以上、さらに好ましくは85MPa以上、さらにより好ましくは86MPa超、特に好ましくは87MPa以上、特により好ましくは89MPa以上であり、好ましくは200MPa以下、より好ましくは180MPa以下である。引張強度が上記下限以上であると、ポリイミド系フィルムの破損等を抑制しやすく、また引張強度が上記上限以下であると、柔軟性を高めやすい。引張強度は、引張試験機等を用いて、チャック間距離50mm、引張速度20mm/分の条件で測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。なお、引張強度は、ポリイミド系フィルムに含まれる樹脂を構成する構成単位の種類や構成比;ポリイミド系フィルムの溶媒含有量;樹脂の分子量;添加剤の種類や配合量;樹脂の製造条件やモノマーの純度;ポリイミド系フィルムの製造条件を適宜調整すること等により上記範囲内にすることができる。
<ポリイミド系樹脂>
本発明において、ポリイミド系フィルムは、式(1):
Figure 2022117109000003
[式(1)中、Xは2価の有機基を表し、Yは4価の有機基を表し、*は結合手を表す]
で表される構成単位を有するポリイミド系樹脂を含むことが好ましい。ポリイミド系フィルムがこのような樹脂を含むと、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。
式(1)中のXは、それぞれ独立に2価の有機基を表し、好ましくは炭素数2~40の2価の有機基を表す。2価の有機基としては、例えば2価の芳香族基、2価の脂肪族基等が挙げられ、2価の脂肪族基としては、例えば2価の非環式脂肪族基又は2価の環式脂肪族基が挙げられる。これらの中でも、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすいことから、2価の脂肪族基が好ましく、2価の非環式脂肪族基がより好ましい。なお、本明細書において、2価の芳香族基は芳香族基を有する2価の有機基であり、その構造の一部に脂肪族基又はその他の置換基を含んでいてもよい。また、2価の脂肪族基は脂肪族基を有する2価の有機基であり、その構造の一部にその他の置換基を含んでいてもよいが、芳香族基は含まない。
本発明の一実施態様において、式(1)中のXにおける2価の芳香族基又は2価の環式脂肪族基としては、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)及び式(18)で表される基;それらの式(10)~式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が挙げられる。
Figure 2022117109000004
式(10)~式(18)中、
*は結合手を表し、
、V及びVは、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-、-CO-又は-N(Q)-を表す。ここで、Qはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基及びn-デシル基等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子などが挙げられる。
1つの例は、V及びVが単結合、-O-又は-S-であり、かつ、Vが-CH-、-C(CH-、-C(CF-又は-SO-である。VとVとの各環に対する結合位置、及び、VとVとの各環に対する結合位置は、互いに独立に、各環に対して好ましくはメタ位又はパラ位、より好ましくはパラ位である。なお、式(10)~式(18)における環上の水素原子は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基で置換されていてもよい。炭素数1~6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基及びビフェニル基等が挙げられる。これらの2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明の一実施態様において、式(1)中のXにおける2価の非環式脂肪族基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、2-メチル-1,2-プロパンジイル基、2-メチル-1,3-プロパンジイル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基などが挙げられる。2価の非環式脂肪族基中の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、炭素原子はヘテロ原子(例えば酸素原子、窒素原子等)で置換されていてもよい。直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基の炭素数は、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすいことから、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。前記2価の非環式脂肪族基の中でも、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすいことから、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数2~6のアルキレン基が好ましく、テトラメチレン基がより好ましい。
本発明において、ポリイミド系樹脂は、複数種のXを含み得、複数種のXは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。例えば、式(1)中のXとして、2価の非環式脂肪族基と、2価の芳香族基及び/又は2価の環式脂肪族基とを含んでいてもよい。
本発明の一実施態様において、式(1)中のXとして、2価の脂肪族基、好ましくは2価の非環式脂肪族基を含む場合、式(1)中のXが2価の脂肪族基、好ましくは2価の非環式脂肪族基である構成単位の割合は、式(1)で表される構成単位の総モル量に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、好ましくは100モル%以下である。式(1)中のXが2価の脂肪族基、好ましくは2価の非環式脂肪族基である構成単位の割合が前記の範囲であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。該構成単位の割合は、例えばH-NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
式(1)において、Yは、それぞれ独立に4価の有機基を表し、好ましくは炭素数4~40の4価の有機基を表し、より好ましくは環状構造を有する炭素数4~40の4価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基であり、その場合、炭化水素基及びフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。本発明において、ポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。Yとしては、以下の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基;それらの式(20)~式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が挙げられる。
Figure 2022117109000005
式(20)~式(29)中、
*は結合手を表し、
は、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-Ar-、-SO-、-CO-、-O-Ar-O-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH-Ar-、-Ar-C(CH-Ar-又は-Ar-SO-Ar-を表す。Arは、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリーレン基を表し、具体例としてはフェニレン基が挙げられる。
式(20)~式(29)で表される基の中でも、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすいことから、式(26)、式(28)又は式(29)で表される基が好ましく、式(26)で表される基がより好ましい。また、Wは、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすいことから、それぞれ独立に、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-又は-C(CF-であることが好ましく、単結合、-O-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-又は-C(CF-であることがより好ましく、単結合、-C(CH-又は-C(CF-であることが更に好ましい。
本発明の好適な実施態様において、式(1)で表される構成単位は、Yとして、式(2):
Figure 2022117109000006
[式(2)中、R~Rは、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を表し、R~Rに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、Vは、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-、-S-、-CO-又は-N(R)-を表し、Rは、水素原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の一価の炭化水素基を表し、*は結合手を表す]
で表される構造を含む。このような実施態様であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。なお、式(1)で表される構成単位は、Yとして、式(2)で表される構造を1種又は複数種含んでいてもよい。
式(2)において、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を表す。炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基及び炭素数6~12のアリール基としてはそれぞれ、前記に例示の炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基及び炭素数6~12のアリール基が挙げられる。R~Rは、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、ここで、R~Rに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。Vは、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-、-S-、-CO-又は-N(R)-を表し、Rは、水素原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の一価の炭化水素基を表す。ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の一価の炭化水素基としては、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の一価の炭化水素基として前記に例示のものが挙げられる。これらの中でも、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすいことから、Vは、単結合、-O-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-又は-C(CF-であることが好ましく、単結合、-C(CH-又は-C(CF-であることがより好ましく、単結合又は-C(CF-であることが更に好ましい。
本発明の好適な実施態様においては、式(2)は、式(2’):
Figure 2022117109000007
[式(2’)中、*は結合手を表す]
で表される。このような実施態様であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により樹脂の溶媒への溶解性を向上し、ワニスの粘度を低く抑制することができ、ポリイミド系フィルムの加工を容易にすることができる。
本発明の一実施態様において、式(1)中のYとして、式(2)で表される構造を含む場合、式(1)中のYが式(2)で表される構成単位の割合は、式(1)で表される構成単位の総モル量に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、好ましくは100モル%以下である。式(1)中のYが式(2)で表される構成単位の割合が前記の範囲であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。式(1)中のYが式(2)で表される構成単位の割合は、例えばH-NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明において、ポリイミド系樹脂は、式(1)で表される構成単位の他に、式(30)で表される構成単位及び/又は式(31)で表される構成単位を含んでいてもよい。
Figure 2022117109000008
式(30)において、Yは4価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Yとしては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基、それらの式(20)~式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基、並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が挙げられる。本発明の一実施態様において、ポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
式(31)において、Yは3価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Yとしては、前記の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基の結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基、及び3価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が挙げられる。本発明の一実施態様において、ポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
式(30)及び式(31)において、X及びXは、互いに独立に、2価の有機基を表し、好ましくは炭素数2~40の2価の有機基を表す。2価の有機基としては、例えば2価の芳香族基、2価の脂肪族基等が挙げられ、2価の脂肪族基としては、例えば2価の非環式脂肪族基又は2価の環式脂肪族基が挙げられる。X及びXにおける2価の環式脂肪族基又は2価の芳香族基としては、前記の式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)及び式(18)で表される基;それらの式(10)~式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基などが挙げられる。2価の非環式脂肪族基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、2-メチル-1,2-プロパンジイル基、2-メチル-1,3-プロパンジイル基等の炭素数2~10の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基などが挙げられる。
本発明の一実施態様において、ポリイミド系樹脂は、式(1)で表される構成単位、並びに、場合により式(30)で表される構成単位及び式(31)で表される構成単位から選択される少なくとも1つの構成単位からなる。また、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすいという観点から、前記ポリイミド系樹脂において、式(1)で表される構成単位の割合は、ポリイミド系樹脂に含まれる全構成単位、例えば式(1)で表される構成単位、並びに、場合により式(30)で表される構成単位及び式(31)で表される構成単位から選択される少なくとも1つの構成単位の総モル量に基づいて、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上である。なお、ポリイミド系樹脂において、式(1)で表される構成単位の割合の上限は100モル%である。なお、前記割合は、例えば、H-NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。また、本発明におけるポリイミド系樹脂は、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすいことから、好ましくはポリイミド樹脂である。
本発明の好ましい一実施態様において、前記ポリイミド系樹脂は、例えば前記の含ハロゲン原子置換基等によって導入することができる、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子を含有していてもよい。ポリイミド系樹脂がハロゲン原子、好ましくはフッ素原子を含有する場合、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。また、ポリイミド系樹脂が適度に疎水性となりやすく、さらに、ポリイミド系フィルムの柔軟性及び屈曲耐性も高まる傾向にある。ポリイミド系樹脂にフッ素原子を含有させるために好ましい含フッ素置換基としては、例えばフルオロ基及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
本発明の好ましい一実施態様において、ポリイミド系樹脂におけるハロゲン原子の含有量は、それぞれ、ポリイミド系樹脂の質量を基準として、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~40質量%、更に好ましくは5~30質量%である。ハロゲン原子の含有量が前記下限値以上及び前記上限値以下であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。また、合成が容易となる傾向にある。
本発明の好ましい一実施態様において、ポリイミド系樹脂のイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、更に好ましくは95%以上である。高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすいことから、イミド化率が前記の下限以上であることが好ましい。また、イミド化率の上限は100%である。イミド化率は、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値に対する、ポリイミド系樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。なお、ポリイミド系樹脂がトリカルボン酸化合物を含む場合には、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値と、トリカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量との合計に対する、ポリイミド系樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。ポリイミド系樹脂のイミド化率は、例えば後述するジアミン化合物とテトラカルボン酸化合物の種類、イミド化反応時の温度及び時間等を適宜調整することによって、前記下限以上に調整することができる。また、イミド化率は、IR法、NMR法などにより求めることができる。
本発明の好ましい一実施態様において、ポリイミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は好ましくは50,000以上、より好ましくは100,000以上、更に好ましくは120,000以上、特に好ましくは150,000以上、非常に特に好ましくは200,000以上であり、好ましくは800,000以下、より好ましくは700,000以下、さらに好ましくは600,000以下である。重量平均分子量(Mw)が上記の下限以上であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。また、上記の上限以下であると、ポリイミド系フィルムの加工性を向上させやすい。重量平均分子量(Mw)は、例えば後述するジアミン化合物とテトラカルボン酸化合物の種類、反応時の温度及び時間等を適宜調整することによって、前記下限以上及び前記上限以下に調整することができる。重量平均分子量(Mw)は、例えば実施例に記載されているように、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を行い、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
本発明の好ましい一実施態様において、ポリイミド系フィルムに含まれるポリイミド系樹脂の含有量は、ポリイミド系フィルムの質量(100質量%)に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%、特に好ましくは80質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。ポリイミド系フィルムに含まれるポリイミド系樹脂の含有量が前記範囲内であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。
<ポリイミド系樹脂の製造方法>
前記ポリイミド系樹脂は、市販品を用いてもよく、慣用の方法により製造してもよい。ポリイミド系樹脂の製造方法は特に限定されないが、例えば、式(1)で表される構成単位を含むポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物とテトラカルボン酸化合物とを反応させてポリアミック酸を得る工程、及び該ポリアミック酸をイミド化する工程を含む方法により製造できる。なお、テトラカルボン酸化合物の他に、トリカルボン酸化合物を反応させてもよい。
ポリイミド系樹脂の合成に用いられるテトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物;及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。テトラカルボン酸化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。テトラカルボン酸化合物は、二無水物の他、酸クロリド化合物等のテトラカルボン酸化合物類縁体であってもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物及び縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDAと記載することがある)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDAと記載することがある)、1,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。また、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が挙げられ、縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、環式又は非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物であり、その具体例としては、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等のシクロアルカンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物及びこれらの位置異性体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。また、環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物を組合せて用いてもよい。
前記テトラカルボン酸二無水物の中でも、ポリイミド系フィルムの弾性率を前記の範囲に調整しやすく、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすいことから、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、並びにこれらの混合物が好ましく、弾性率を前記の範囲に調整しやすいこと、並びに視認性の低下及びカールを抑制しやすいことに加えて、ポリイミド系フィルムの柔軟性及び屈曲耐性を高めやすいことから4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)がより好ましい。
ポリイミド系樹脂の合成に用いられるジアミン化合物としては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン及びこれらの混合物が挙げられる。なお、本実施態様において「芳香族ジアミン」とは、芳香環を有するジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基又はその他の置換基を含んでいてもよい。この芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環及びフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環である。また「脂肪族ジアミン」とは、脂肪族基を有するジアミンを表し、その構造の一部にその他の置換基を含んでいてもよいが、芳香環は有しない。
脂肪族ジアミンとしては、例えば非環式脂肪族ジアミン、環式脂肪族ジアミン等が挙げられる。非環式脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキンサン、1,2-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、2-メチル-1,2-ジアミノプロパン、2-メチル-1,3-ジアミノプロパン等の炭素数2~10の直鎖状又は分岐鎖状ジアミノアルカン等が挙げられる。環式脂肪族ジアミンとしては、例えば1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミン及び4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
芳香族ジアミンとしては、例えばp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン等の、芳香環を1つ有する芳香族ジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(TFMBということがある)、4,4’-(ヘキサフルオロプロピリデン)ジアニリン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン等の、芳香環を2つ以上有する芳香族ジアミンが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
前記ジアミン化合物の中でも、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすいことから、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン(1,4-DABということがある)、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,2-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、2-メチル-1,2-ジアミノプロパン、2-メチル-1,3-ジアミノプロパン等の炭素数2~10のジアミノアルカンが好ましく、炭素数2~6のジアミノアルカンがより好ましく、1,4-ジアミノブタンが更に好ましい。
なお、前記ポリイミド系樹脂は、ポリイミド系フィルムの各種物性を損なわない範囲で、前記の樹脂合成に用いられるテトラカルボン酸化合物に加えて、他のテトラカルボン酸及びトリカルボン酸並びにそれらの無水物及び誘導体を更に反応させたものであってもよい。
他のテトラカルボン酸としては、前記テトラカルボン酸化合物の無水物の水付加体が挙げられる。
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸の無水物;2,3,6-ナフタレントリカルボン酸-2,3-無水物;フタル酸無水物と安息香酸とが単結合、-O-、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-若しくはフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。
ポリイミド系樹脂の製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物及びトリカルボン酸化合物の使用量は、所望とする樹脂の各構成単位の比率に応じて適宜選択できる。
本発明の好適な実施態様においては、ジアミン化合物の使用量は、テトラカルボン酸化合物1モルに対して、好ましくは0.94モル以上、より好ましくは0.96モル以上、更に好ましくは0.98モル以上、特に好ましくは0.99モル以上であり、好ましくは1.20モル以下、より好ましくは1.10モル以下、更に好ましくは1.05モル以下、特に好ましくは1.02モル以下である。テトラカルボン酸化合物に対するジアミン化合物の使用量が前記の範囲であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。
ジアミン化合物とテトラカルボン酸化合物との反応温度は、特に限定されず、例えば5~200℃であってもよく、反応時間も特に限定されず、例えば30分~72時間程度であってもよい。本発明の好適な実施態様においては、反応温度は、好ましくは5~50℃、より好ましくは5~40℃、更に好ましくは5~25℃であり、反応時間は、好ましくは3~24時間、より好ましくは5~20時間である。このような反応温度及び反応時間であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。
ジアミン化合物とテトラカルボン酸化合物との反応は、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、反応に影響を与えない限り特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;及びそれらの組合せなどが挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、フェノール系溶媒、アミド系溶媒を好適に使用できる。
本発明の好適な実施態様においては、反応に使用する溶媒は、水分量を700ppm以下まで厳密に脱水した溶媒であることが好ましい。このような溶媒を用いると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。
ジアミン化合物とテトラカルボン酸化合物との反応は、必要に応じて、不活性雰囲気(窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等)又は減圧の条件下において行ってもよく、不活性雰囲気(窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等)下、厳密に制御された脱水溶媒中で撹拌しながら行うことが好ましい。このような条件であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。
イミド化工程では、イミド化触媒を用いてイミド化しても、加熱によりイミド化しても、これらを組み合わせてもよい。イミド化工程で使用するイミド化触媒としては、例えばトリプロピルアミン、ジブチルプロピルアミン、エチルジブチルアミン等の脂肪族アミン;N-エチルピペリジン、N-プロピルピペリジン、N-ブチルピロリジン、N-ブチルピペリジン、及びN-プロピルヘキサヒドロアゼピン等の脂環式アミン(単環式);アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びアザビシクロ[3.2.2]ノナン等の脂環式アミン(多環式);並びにピリジン、2-メチルピリジン(2-ピコリン)、3-メチルピリジン(3-ピコリン)、4-メチルピリジン(4-ピコリン)、2-エチルピリジン、3-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、3,4-シクロペンテノピリジン、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリン、及びイソキノリン等の芳香族アミンが挙げられる。また、イミド化反応を促進しやすい観点から、イミド化触媒とともに、酸無水物を用いることが好ましい。酸無水物は、イミド化反応に用いられる慣用の酸無水物等が挙げられ、その具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸等の芳香族酸無水物などが挙げられる。
本発明の一実施態様では、イミド化する場合、反応温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、好ましくは190℃以下、より好ましくは170℃以下、更に好ましくは150℃以下である。イミド化工程の反応時間は、好ましくは30分~24時間、より好ましくは1~12時間である。反応温度及び反応時間が前記の範囲にあると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。
ポリイミド系樹脂は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組合せた分離手段により単離(分離精製)してもよく、好ましい態様では、樹脂を含む反応液に、多量のメタノール等のアルコールを加え、樹脂を析出させ、濃縮、濾過、乾燥等を行うことにより単離することができる。
<ポリイミド系フィルムの製造方法>
本発明において、ポリイミド系フィルムは、特に限定されないが、例えば以下の工程:
(a)ポリイミド系樹脂を含む液(ワニスと称する場合がある)を調製する工程(ワニス調製工程)、
(b)ワニスを基材に塗布して塗膜を形成する工程(塗布工程)、及び
(c)塗布された液(塗膜)を乾燥させて、ポリイミド系フィルムを形成する工程(ポリイミド系フィルム形成工程)
を含む方法によって製造することができる。
ワニス調製工程において、前記ポリイミド系樹脂を溶媒に溶解し、必要に応じて後述の添加剤を添加して撹拌混合することによりワニスを調製する。
ワニスの調製に用いられる溶媒は、前記樹脂を溶解可能であれば特に限定されない。かかる溶媒としては、例えばN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒;γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;及びそれらの組合せが挙げられる。これらの中でも、樹脂の溶解性の観点から、アミド系溶媒、ラクトン系溶媒又はケトン系溶媒が好ましい。これらの溶媒は単独又は二種以上組合せて使用できる。また、ワニスには水、アルコール系溶媒、非環状エステル系溶媒、エーテル系溶媒などが含まれてもよい。
ワニスの固形分濃度は、好ましくは1~30質量%、より好ましくは5~25質量%、更に好ましくは10~20質量%である。なお、本明細書において、ワニスの固形分とは、ワニスから溶媒を除いた成分の合計量を示す。また、ワニスの粘度は、好ましくは5~100Pa・s、より好ましくは10~50Pa・sである。ワニスの粘度が前記の範囲であると、ポリイミド系フィルムを均一化しやすく、膜厚が均一なポリイミド系フィルムが得られやすい。なお、ワニスの粘度は粘度計を用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
塗布工程において、公知の塗布方法により、基材上にワニスを塗布して塗膜を形成する。公知の塗布方法としては、例えばワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法、流涎成形法等が挙げられる。
ポリイミド系フィルム形成工程において、塗膜を乾燥し、基材から剥離することによって、ポリイミド系フィルムを形成することができる。剥離後に更にポリイミド系フィルムを乾燥する乾燥工程を行ってもよい。塗膜の乾燥は、通常50~350℃、好ましくは50~220℃の温度にて行うことができる。好適な実施態様では、段階的に乾燥を行うことが好ましい。高分子量樹脂を含むワニスは高粘度になりやすく、一般的に均一なフィルムを得ることが困難である。膜厚が不均一なワニスからはしわ等が発生しやすく、視認性が劣化したポリイミド系フィルムになる傾向にある。さらに、このようなポリイミド系フィルムに保護フィルムを積層した積層フィルムを高温環境下に曝露後に保護フィルムを剥離すると視認性が低下しやすい傾向がある。そこで、段階的に乾燥を行うことにより、高分子量樹脂を含むワニスを均一に乾燥することができ、視認性に優れたポリイミド系フィルムを得ることができる。本発明のより好適な実施態様では、100~170℃の比較的低温下で加熱した後、185~220℃で加熱することができる。乾燥(又は加熱時間)は、好ましくは5分~5時間、より好ましくは10分~1時間である。このような範囲で段階的に低温から高温に加熱することにより、よりしわ等の発生が抑制された、視認性に優れるポリイミド系フィルムを得ることができ、該ポリイミド系フィルムに保護フィルムを積層した積層フィルムは高温環境下に曝露した後に保護フィルムを剥離しても視認性の低下を抑制しやすい。必要に応じて、不活性雰囲気条件下において塗膜の乾燥を行ってよい。また、ポリイミド系フィルムの乾燥を真空条件下で行うと、フィルム中に微小な気泡が発生、残存することがあり、透明性が低下する要因となるため大気圧下で行うことが好ましい。
基材の例としては、ガラス基板、PETフィルム、PENフィルム、他のポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂フィルム等が挙げられる。中でも、耐熱性に優れる観点から、ガラス、PETフィルム、PENフィルム等が好ましく、更にポリイミド系フィルムとの密着性及びコストの観点から、ガラス基板又はPETフィルムがより好ましい。
必要に応じて、次いでポリイミド系フィルムの片面又は両面に後述する機能層を積層して、機能性を形成する工程を含んでよい。機能層を形成する方法は、当該技術分野で公知の方法で実施することができる。
〔添加剤〕
本発明において、ポリイミド系フィルムは添加剤を含有していても良い。そのような添加剤の例としては、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤、難燃剤、pH調整剤、シリカ分散剤、滑剤、増粘剤、フィラー及びレベリング剤等が挙げられる。添加剤を含有する場合、その含有量は、添加剤の種類に応じて適宜変更できるが、ポリイミド系フィルムの質量に対して、通常は0.001~30質量%、好ましくは0.01~25質量%、より好ましくは0.1~20質量%、更に好ましくは0.5~15質量%であってよい。
本発明の好ましい一実施態様において、ポリイミド系フィルムは、350nmにおける光透過率を低下させるために紫外線吸収剤を含有することが好ましい。ポリイミド系フィルムが紫外線吸収剤を含むと、紫外線領域の光吸収性が低下し、可視光下での視認性を更に良好なものとすることができる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール誘導体(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)、1,3,5-トリフェニルトリアジン誘導体等のトリアジン誘導体(トリアジン系紫外線吸収剤)、ベンゾフェノン誘導体(ベンゾフェノン系紫外線吸収剤)、及びサリシレート誘導体(サリシレート系紫外線吸収剤)が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1つを用いることができる。300~400nm、好ましくは320~360nm付近の紫外線吸収性を有し、可視光域での透過率を低下させることなく、ポリイミド系フィルムの紫外線カット性を向上し得る観点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤からなる群から選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤がより好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、式(I)で表される化合物、住友化学(株)製の商品名:Sumisorb(登録商標) 250(2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド-メトジイル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール)、BASFジャパン(株)製の商品名:Tinuvin(登録商標) 360(2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール])及びTinuvin 213(メチル3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネートとPEG300との反応生成物)が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。式(I)で表される化合物の具体例としては、住友化学(株)製の商品名:Sumisorb 200(2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール)、Sumisorb300(2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)、Sumisorb 340(2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール)、Sumisorb 350(2-(2-ヒドロキシ3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール)、及びBASFジャパン(株)製の商品名:Tinuvin 327(2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)、Tinuvin 571(2-(2H-ベンゾトリアゾ-2-イル)-6-ドデシル-4-メチル-フェノール)及びTinuvin 234(2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール)及びADEKA(株)の製品名:アデカスタブ(登録商標) LA-31(2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール])が挙げられる。紫外線吸収剤は、好ましくは、式(I)で表される化合物及びTinuvin 213(メチル3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネートとPEG300との反応生成物であり、より好ましくは住友化学(株)製の商品名:Sumisorb 200(2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール)、Sumisorb 300(2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)、Sumisorb 340(2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール)、Sumisorb 350(2-(2-ヒドロキシ3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール)、(株)ADEKAの製品名:アデカスタブ LA-31(2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール])及びBASFジャパン(株)製の商品名:Tinuvin 327(2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)及びTinuvin 571(2-(2H-ベンゾトリアゾ-2-イル)-6-ドデシル-4-メチル-フェノール)であり、最も好ましくは住友化学(株)製の商品名:Sumisorb 340(2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール)、Sumisorb350(2-(2-ヒドロキシ3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール)、及び(株)ADEKAの製品名:アデカスタブ LA-31(2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール])である。
Figure 2022117109000009
式(I)中、Xは水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のアルコキシ基であり、RI1及びRI2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であり、RI1又はRI2のうち少なくともいずれか一方は炭素数1~20の炭化水素基である。
における炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基等が挙げられる。
における炭素数1~5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、2-メチル-ブトキシ基、3-メチルブトキシ基、2-エチル-プロポキシ基等が挙げられる。
は、好ましくは水素原子、フッ素原子、塩素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子、フッ素原子又は塩素原子である。
I1及びRI2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であり、RI1及びRI2のうち少なくともいずれか一方は炭化水素基である。RI1及びRI2は、それぞれ炭化水素基である場合、好ましくは炭素数1~12の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1~8の炭化水素基である。具体的にはメチル基、tert-ブチル基、tert-ペンチル基及びtert-オクチル基が例示される。
別の好ましい一態様に係る紫外線吸収剤は、ポリイミド系フィルムにおいて、トリアジン系紫外線吸収剤が用いられる。トリアジン系紫外線吸収剤としては、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。その具体例としては、(株)ADEKAの製品名:アデカスタブ LA-46(2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイロキシ)エトキシ]フェノール)、BASFジャパン(株)製の商品名:Tinuvin 400(2-[4-[2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシプロピル]オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン)、2-[4-[2-ヒドロキシ-3-ジデシロキシプロピル]オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン)、Tinuvin 405(2-[4(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン)、Tinuvin 460(2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチロキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン)、Tinuvin 479(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤)、及びケミプロ化成(株)の製品名:KEMISORB(登録商標) 102(2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(n-オクチロキシ)フェノール)等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。式(II)で表される化合物は、好ましくは、アデカスタブ LA-46(2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイロキシ)エトキシ]フェノール)である。
Figure 2022117109000010
式(II)中、YI1~YI4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数1~20のアルコキシ基であり、好ましくは水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~12のアルコキシ基であり、より好ましくは水素原子である。
式(II)中、RI3は水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、含まれる酸素原子が1つである炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数1~12のアルキルケトオキシ基で置換されている炭素数1~4のアルコキシ基であり、好ましくは1個の酸素原子を含む炭素数1~12のアルコキシ基又は炭素数8~12のアルキルケトオキシ基で置換されている炭素数2~4のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数8~12のアルキルケトオキシ基で置換されている炭素数2~4のアルコキシ基である。
I1~YI4としての炭素数1~20のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-ウンデシル基が挙げられる。炭素数1~20のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-へプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基が挙げられる。
紫外線吸収剤は、300~400nmの光吸収を有するものが好ましく、320~360nmの光吸収を有するものがより好ましく、350nm付近の光吸収を有するものが更に好ましい。
本発明において、ポリイミド系フィルムが紫外線吸収を含有する場合、紫外線吸収剤の含有量は、ポリイミド系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上、特に好ましくは1質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記下限以上であると、ポリイミド系フィルムの紫外線カット性を向上しやすく、紫外線吸収剤の含有量が前記上限以下であると、ポリイミド系フィルムの視認性を高めやすい。
〔保護フィルム〕
本発明の積層フィルムに含まれる保護フィルムの弾性率は、好ましくは2.0GPa以上、より好ましくは2.5GPa以上、更に好ましくは2.8GPa以上であり、好ましくは4.0GPa以下、より好ましくは3.9GPa以下、更に好ましくは3.8GPa以下である。保護フィルムの弾性率が前記範囲内であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。なお、保護フィルムの弾性率は、例えば、保護フィルムに含まれる樹脂を構成する構成単位の種類及び構成比、保護フィルムに含まれる添加剤の種類及び配合量、保護フィルムの製造条件等を適宜調整することにより、前記範囲内に調整することができる。保護フィルムの弾性率は、引張試験機を使用して測定することができ、例えば後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
本発明において、保護フィルムは、ポリイミド系フィルムの表面を一時的に保護するためのフィルムであり、ポリイミド系フィルムの表面を保護できる剥離可能なフィルムである限り特に限定されない。保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系フィルム、アクリル系フィルム等、ジアセチルセルロース等のセルロース系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、メタ(アクリル)系フィルム、ポリスチレン系フィルム等が挙げられ、ポリエステル系フィルムが好ましく、中でも耐熱性や吸湿特性、寸法安定性の観点から、PETフィルムを使用することがより好ましい。積層フィルムが保護フィルムを2つ以上含む場合、各保護フィルムは同一又は異なっていてもよい。
本発明において、保護フィルムの膜厚は、好ましくは10μm以上、より好ましくは25μm以上、更に好ましくは35μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、更に好ましくは80μm以下である。保護フィルムの膜厚が前記下限値以上及び前記上限値以下であると、高温環境下に曝露した後も、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、積層フィルムを高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。保護フィルムの膜厚は、例えば接触式のデジタル厚み計を用いて測定することができ、例えば後述の実施例に記載の方法によって測定できる。
本発明に用いられる保護フィルムは単層であってもよく、または複数の層が積層されたものであってもよい。複数の層が積層された保護フィルムとしては、同一もしくは異なる樹脂からなる層が2層以上積層されたフィルム、又は1つ以上の機能層を有する態様が挙げられる。同一又は異なる樹脂からなる層が2層以上積層された保護フィルムを得る方法としては、例えば共押出法が挙げられる。
本発明の好ましい一実施態様において、前記ポリイミド系フィルム又は保護フィルムは、フィルムの少なくとも一方の面に1つ以上の機能層を有することが好ましい。機能層としては、例えば粘着層、接着層、ハードコート層、プライマー層、ガスバリア層、紫外線吸収層、粘色相調整層、屈折率調整層などが挙げられ、ポリイミド系フィルムと保護フィルムとの間の剥離力を前記値に調整しやすい観点から、粘着層が好ましい。機能層は単独又は二種以上を組合せて使用することができる。
機能層の厚さは、特に限定されるものではなく、その種類に応じて適宜変更することができるが、積層フィルムが厚くなりすぎることを避けるために、通常2~20μmが好ましい。ポリイミド系フィルム又は保護フィルムが機能層を有する場合、前記ポリイミド系フィルム又は保護フィルムの膜厚は機能層の厚さを含めた厚みのことを指す。
ポリイミド系フィルムが片側にのみ機能層を有する場合には、前記ポリイミド系フィルムは、機能層を有していない側又は機能層側のいずれかに保護フィルムを有していてもよく、機能層を有していない側及び機能層側の両方に保護フィルムを有していてもよい。ポリイミド系フィルムが両側に機能層を有する場合には、いずれか一方の機能層側に保護フィルムを有していてもよく、両方の機能層側に保護フィルムを有していてもよい。いずれの場合においても、保護フィルムは機能層を有していなくてもよく、保護フィルムの片側又は両側に機能層を有していてもよい。
本発明の好ましい一実施態様において、積層フィルムの密着性の観点から、保護フィルムはポリイミド系フィルムと隣接する面に、粘着剤を含む粘着層を有することが好ましい。保護フィルムが粘着層を有する場合、粘着層に含まれる粘着剤の種類や量等を適宜調整することによって、ポリイミド系フィルムと保護フィルムとの間の剥離力を調整することができる。
粘着層に含まれる粘着剤としては、例えば感圧式粘着剤、乾燥固化型粘着剤及び化学反応型粘着剤が挙げられる。化学反応型粘着剤としては、例えば、活性エネルギー線硬化型粘着剤が挙げられる。
感圧式粘着剤は、通常、ポリマーを含み、溶媒を含んでいてもよい。ポリマーとしては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、又はポリエーテル等が挙げられる。中でも、アクリル系ポリマーを含むアクリル系の粘着剤は、光学的な透明性に優れ、適度の濡れ性や凝集力を有し、粘着性に優れ、更には耐候性や耐熱性等が高く、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれ等が生じ難いため好ましい。
アクリル系ポリマーとしては、エステル部分のアルキル基がメチル基、エチル基又はブチル基等の炭素数1~20のアルキル基である(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸やヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体が好ましい。
このような共重合体を含む感圧式粘着剤は、粘着性に優れており、積層フィルムから保護フィルムを取り除いた後に、ポリイミド系フィルムに残渣が残りにくいので好ましい。アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、25℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。このようなアクリル系ポリマーの質量平均分子量は、10万以上であることが好ましい。
溶媒としては、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶媒;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルミアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶媒等が挙げられる。感圧式粘着剤は、光拡散剤を含有していてもよい。光拡散剤は、粘着剤に光拡散性を付与する添加剤であり、粘着剤が含むポリマーの屈折率と異なる屈折率を有する微粒子であればよい。光拡散剤としては、無機化合物からなる微粒子、及び有機化合物(ポリマー)からなる微粒子が挙げられる。アクリル系ポリマーを含めて、粘着剤が有効成分として含むポリマーの多くは1.4~1.6程度の屈折率を有するため、その屈折率が1.2~1.8である光拡散剤から適宜選択することが好ましい。粘着剤が有効成分として含むポリマーと光拡散剤との屈折率差は、通常、0.01以上であり、表示装置の明るさと表示性の観点からは、0.01~0.2が好ましい。光拡散剤として用いる微粒子は、球形の微粒子、それも単分散に近い微粒子が好ましく、平均粒径が2~6μmである微粒子がより好ましい。屈折率は、一般的な最小偏角法又はアッベ屈折計によって測定される。
無機化合物からなる微粒子としては、酸化アルミニウム(屈折率1.76)及び酸化ケイ素(屈折率1.45)等が挙げられる。有機化合物(ポリマー)からなる微粒子としては、メラミンビーズ(屈折率1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50~1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)、ポリスチレンビーズ(屈折率1.6)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46)、及びシリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.46)等が挙げられる。光拡散剤の含有量は、通常、ポリマー100質量部に対して、3~30質量部である。
感圧式粘着剤の厚みは、特に制限されないが、通常、1~50μmである。加工性や耐久性等の点から、当該厚さは2~20μmが好ましく、3~15μmがより好ましい。
乾燥固化型粘着剤は、溶媒を含んでいてもよい。乾燥固化型粘着剤としては、水酸基、カルボキシル基又はアミノ基等のプロトン性官能基とエチレン性不飽和基とを有するモノマーの重合体、又は、ウレタン樹脂を主成分として含有し、更に、多価アルデヒド、エポキシ化合物、エポキシ樹脂、メラミン化合物、ジルコニア化合物、及び亜鉛化合物等の架橋剤又は硬化性化合物を含有する組成物等が挙げられる。水酸基、カルボキシル基又はアミノ基等のプロトン性官能基とエチレン性不飽和基とを有するモノマーの重合体としては、エチレン-マレイン酸共重合体、イタコン酸共重合体、アクリル酸共重合体、アクリルアミド共重合体、ポリ酢酸ビニルのケン化物、及び、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、及び、アミノ基変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。水系の粘着剤におけるポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、水100質量部に対して、通常、1~10質量部であり、好ましくは1~5質量部である。
ウレタン樹脂としては、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂等が挙げられる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入された樹脂である。係るアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の粘着剤とすることができる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂を用いる場合は、架橋剤として水溶性のエポキシ化合物を配合することが有効である。
エポキシ樹脂としては、ジエチレントリアミン又はトリエチレンテトラミン等のポリアルキレンポリアミンとアジピン酸等のジカルボン酸との反応で得られるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドエポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂を配合する場合、その添加量は、ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、通常、1~100質量部であり、好ましくは1~50質量部である。
乾燥固化型粘着剤から形成される粘着層の厚さは、通常、1~50μmであり、好ましくは2~20μmであり、更に好ましくは3~15μmである。乾燥固化型粘着剤から形成される粘着層が前記範囲内であると、積層フィルムの柔軟性が損なわれにくい。
活性エネルギー線硬化型粘着剤は、溶媒を含んでいてもよい。活性エネルギー線硬化型粘着剤とは、活性エネルギー線の照射を受けて硬化する粘着剤である。活性エネルギー線硬化型粘着剤としては、エポキシ化合物とカチオン重合開始剤とを含有するカチオン重合性の粘着剤、アクリル系硬化成分とラジカル重合開始剤とを含有するラジカル重合性の粘着剤、エポキシ化合物等のカチオン重合性の硬化成分及びアクリル系化合物等のラジカル重合性の硬化成分の両者を含有し、更にカチオン重合開始剤及びラジカル重合開始剤を含有する粘着剤、及び、これら重合開始剤を含まずに電子ビームを照射することで硬化される粘着剤等が挙げられる。
中でも、アクリル系硬化成分と光ラジカル重合開始剤とを含有するラジカル重合性の活性エネルギー線硬化型粘着剤、エポキシ化合物と光カチオン重合開始剤とを含有するカチオン重合性の活性エネルギー線硬化型粘着剤が好ましい。アクリル系硬化成分としては、メチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸等が挙げられる。エポキシ化合物を含有する活性エネルギー線硬化型粘着剤は、エポキシ化合物以外の化合物を更に含有していてもよい。エポキシ化合物以外の化合物としては、オキセタン化合物やアクリル化合物等が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤としては、上述の光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤が挙げられる。ラジカル重合開始剤並びにカチオン重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化型粘着剤100質量部に対して、通常、0.5~20質量部であり、好ましくは1~15質量部である。
活性エネルギー線硬化型粘着剤には、更に、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤及び消泡剤等が含有されていてもよい。
本明細書において活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線及び電子線等が挙げられ、紫外線及び電子線が好ましい。好ましい照射条件(照射強度、照射時間等)は含まれる化合物及び重合開始剤の種類及び量等によって適宜選択することができる。
〔保護フィルムの製造方法〕
前記保護フィルムは、市販品を用いてもよく、当該技術分野で知られている慣用の方法により製造してもよい。市販品を用いる場合、保護フィルムは予め粘着層を有したものを使用してもよい。慣用の方法により保護フィルムを製造する場合、保護フィルムに含まれる上述の樹脂も、慣用の方法により製造することができる。
本発明において、保護フィルムは添加剤を含有してもよい。添加剤としては、ポリイミド系フィルムが含み得る添加剤と同様のものが挙げられる。保護フィルムが添加剤を含有する場合、その含有量は、添加剤の種類に応じて適宜変更できるが、保護フィルムの質量に対して、通常は0.001~30質量%、好ましくは0.01~25質量%、より好ましくは0.1~20質量%、更に好ましくは0.5~15質量%であってよい。
[積層フィルムの製造方法]
本発明の積層フィルムの製造方法は特に限定されないが、例えばポリイミド系フィルムと保護フィルムとを積層する工程を含む方法等を使用して製造することができる。
本発明において、積層フィルムは、例えば
ポリイミド系フィルムの一方又は両方の面に保護フィルムを積層する工程(積層工程)
を含む方法によって製造することができる。
ポリイミド系フィルム及び保護フィルムはそのまま、又は延伸、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の任意の処理を施したものを使用してもよい。各処理の具体的な方法及び条件は、所望する積層フィルムの用途や特性に応じて、当該技術分野で既知の方法及び条件を適宜選択することができる。
積層工程では、ポリイミド系フィルムの一方又は両方の面に保護フィルムを積層する。ポリイミド系フィルムと保護フィルムとを積層する方法としては、例えば貼合、合紙等が挙げられ、貼合する方法が好ましい。貼合する方法は特に限定されないが、例えばニップロール等で挟んでフィルムを貼合する方法、ラミネーターを使用して貼合する方法等を挙げることができる。また、ロール等で加圧して均一に押し広げる方法等も使用できる。ポリイミド系フィルムの一方又は両方の面に保護フィルムを貼合することによって、積層フィルム同士のブロッキングを防止したり、ポリイミド系フィルムの表面に埃等の異物が付着することを防止することができる。
ラミネーターを使用して貼合する場合、ラミネート温度及び時間は使用するポリイミド系フィルム及び保護フィルムの特性に合わせて適宜選択することができるが、通常室温~100℃で1~60秒貼合してよい。
積層フィルムを長尺状のものとして製造する場合、長尺状のポリイミド系フィルムと長尺状の保護フィルムとを、例えば一対の貼合ロール間に挟むことにより、製造することができる。貼合後の積層フィルムは、ロール状に巻き取ることができる。
このようにして製造された積層フィルムの膜厚は、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以下であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは190μm以下、更に好ましくは180μm以下である。積層フィルムの膜厚が前記下限以上及び前記上限以下であると、取扱性に優れる傾向にある。積層フィルムの膜厚は、例えば厚み計を用いて測定することができる。
積層工程において、例えばポリイミド系フィルム及び/又は保護フィルムが粘着層を有する場合、必要に応じて粘着層に含まれる粘着剤を溶融及び/又は硬化させる工程を含んでも良い。粘着剤を溶融させる方法としては、例えば加熱する方法が挙げられる。ラミネーターを使用する場合、粘着剤の溶融及びその後の積層を一工程で実施することができる。
粘着剤を硬化させる方法としては、例えば乾燥、活性エネルギー線照射等が挙げられる。乾燥させる方法としては、例えば温風機、赤外線ヒーター等による方法を挙げることができる。活性エネルギー線照射の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることができる。
このようにしてできた積層フィルムは、その後任意の加工を行っても良い。例えば積層フィルムを枚葉フィルムとする場合、積層フィルムを所定の寸法及び形状に裁断する加工、裁断時に発生したケバ等を除去するために裁断面を研磨する加工、並びに面内に孔や切込み等を設ける加工等を行うことができ、その方法は当該技術分野で公知の方法を採用できる。
本発明の積層フィルムは、高温環境下に曝露した後に保護フィルムを剥離しても、ポリイミド系フィルムの視認性の低下を抑制しやすく、高温環境下に曝露した際のカールも抑制しやすい。したがって、本発明の積層フィルム及びそれから得られるポリイミド系フィルムは、表示装置、特にタッチセンサ用基板として好適に使用できる。また、表示装置としては、テレビ、スマートフォン、携帯電話、カーナビゲーション、タブレットPC、携帯ゲーム機、電子ペーパー、インジケーター、掲示板、時計、及びスマートウォッチ等のウェアラブルデバイス等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[剥離力]
実施例及び比較例で得られた積層フィルムから1インチ(25.4mm)×100mm幅で試験片を作成し、引張試験機(島津製作所製、AG-IS 1kN)と付属のピール試験用治具を用いて、剥離角度:90度、引張速度10mm/分で実施して、剥離力を測定した。
[弾性率]
実施例及び比較例で得られたポリイミド系フィルム及び保護フィルムの弾性率は、それぞれ市販の引張試験機(島津製作所製、AG-IS 1kN)を用いて実施した。試験片(10mm×100mm角)を標線間距離50mmになるようにつかみ治具にセットし、引張速度10mm/分の条件で引張試験を行い、弾性率の計算ソフトより値を算出した。
[350nm及び500nmの光透過率]
実施例及び比較例で使用したポリイミド系フィルムの、350nm及び500nmにおける光透過率は、日本分光(株)製の紫外可視近赤外分光光度計V-670を用い、200~800nmの光に対する光透過率を測定することで得られた。
[ヘーズの測定]
実施例及び比較例で使用したポリイミド系フィルムのヘーズは、スガ試験機社製の全自動直読ヘーズコンピューターHGM-2DPにより測定した。
[黄色度(YI値)の測定]
実施例及び比較例で使用したポリイミド系フィルムの黄色度(Yellow Index:YI値)は、日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計V-670を用いて測定した。サンプルがない状態でバックグランド測定を行った後、サンプルをサンプルホルダーにセットして、300~800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求めた。YI値を、下記の式に基づいて算出した。
YI=100×(1.2769X-1.0592Z)/Y
[引張強度の測定]
実施例及び比較例で得られたポリイミド系フィルムの引張強度は、精密万能試験機(「オートグラフAG-IS」、(株)島津製作所製)を用いて以下のように測定した。
該ポリイミド系フィルムを幅10mm、長さ100mmにカットし、短冊状の試験片を準備した。次いで、該精密万能試験機を用いて、チャック間距離50mm、引張速度20mm/分の条件で引張試験を行い、ポリイミド系フィルムの引張強度を測定した。
[カールの評価]
実施例及び比較例で得られた積層フィルムを110℃のオーブンで10分間加熱した。その後積層フィルムを実験台に置き、積層フィルムの4角の、実験台の表面に対する屈曲角をそれぞれ測定し、以下の基準で評価した。
Figure 2022117109000011
[視認性の評価]
カールの評価後に、積層フィルムから手で保護フィルムを剥離し、視認性を評価した。視認性の評価は、いずれも目視にて行い、以下の基準で評価した。
Figure 2022117109000012
[膜厚]
実施例及び比較例で得られたポリイミド系フィルム及び保護フィルムの膜厚は、それぞれ接触式のデジタル厚み計(ミツトヨ社製)を用いて3回測定を行い、3回測定した値の平均値をポリイミド系フィルム及び保護フィルムの膜厚とした。
[重量平均分子量(Mw)]
合成したポリイミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPCを用いて、以下の条件により測定した。
(GPC条件)
装置:島津LC-20A
カラム:TSKgel GMHHR-M(ミックスカラム、排除限界分子量:400万)
ガードカラム:TSKgel guardcolumn HHR-H
移動相:N-メチル-2-ピロリジノン(NMP) 10mM LiBr添加
※NMPはHPLC用グレード、LiBrは試薬一級(無水物)を使用
流速:1mL/分
測定時間:20分
カラムオーブン:40℃
検出:UV 275nm
洗浄溶媒:NMP
試料濃度:1mg/mL(20重量%反応マスは移動相で5mg/mLに希釈して分析)
分子量較正:ポリマーラボラトリーズ製 標準ポリスチレン(分子量500~400万の17分子量)
[イミド化率]
合成したポリイミド系樹脂のイミド化率は、NMRを用いて以下の条件により測定した。
(NMR条件)
ポリイミド系樹脂10mgを秤量し、重DMSO 0.75mlを添加後、120℃で20分加熱することで溶解した。溶液をNMR管に移し、ブルカー製AV600装置を用いて、100℃でH NMR測定を実施した。H NMRスペクトルよりイミド基由来のプロトンとアミド基由来のプロトンを帰属し、次式を用いてイミド化率を求めた。
イミド化率 = {イミド基積分比/(イミド基積分比+アミド基積分比)}×100
[粘度]
ワニスの粘度は、E型粘度計(「HBDV-II + P CP」 Brook Field社製)を用いて、ワニス0.6ccを試料として、25℃、回転数3rpmの条件で測定した。
(実施例1)
窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた反応容器に、m-クレゾール(本州化学工業(株)製)178.78kg、1,4-DAB(ThermoFisher社製)7.940kg、及び6FDA(八幸通商(株))40.120kgを加え、次に、イソキノリン(富士フィルム和光純薬(株)製)3.428kgを添加した後、158℃に昇温し、5時間撹拌した後、m-クレゾールを74.49kg加え、得られた反応液を50℃まで冷却した。撹拌しながら、Solmix AP-1(日本アルコール販売(株)製)を118.97kg添加し、更に、Solmix AP-1を356.91kg加えた後、ろ過した。ろ過した沈殿物をSolmix AP-1(70.62kg)で洗浄し、更にSolmix AP-1(141.23kg)で4回懸濁ろ過を行い、沈殿物を乾燥機にて70℃で96時間乾燥させることで、ポリイミド系樹脂を39.97kg得た。製造したポリイミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、252,000であった。イミド化率は99.9%であった。
前述で得られたポリイミド系樹脂を固形分濃度が17質量%となるようにシクロヘキサノンに溶解し、紫外線吸収剤(UVA)として、Sumisorb340を2phr添加してワニスを調製した。前記ワニスの粘度は21.7Pa・sであった。次いで、得られたワニスを、ガラス基材に塗布し、140℃で10分加熱した後、更に200℃で30分間加熱し、ガラス基板から剥離することで、厚さ25μmのポリイミド系フィルムを得た。
前述で得られたポリイミド系フィルムを200m×200mmの大きさに切断し、同じく200m×200mmの大きさに切断した保護フィルム(PETフィルム、以下FD-PFとも称する、藤森工業株式会社製)を重ねた後、ラミネーターを用いて貼り合わせて積層フィルムを製造した。
(実施例2)
実施例1の保護フィルムを、保護フィルム(PETフィルム、以下、FE-PFとも称する)に変更した以外は、同様に積層フィルムを製造した。
(実施例3)
実施例1の保護フィルムを、保護フィルム(PEフィルム、N711(東レフィルム加工社製))に変更した以外は、同様に積層フィルムを製造した。
(比較例1)
実施例1の保護フィルムを、保護フィルム(PETフィルム、NSA33T(株式会社サンエー化研社製))に変更した以外は、同様に積層フィルムを製造した。
実施例及び比較例で得られた積層フィルムについて、使用したポリイミド系フィルム及び保護フィルムの物性、ならびに視認性及びカールの評価結果を表1に示す。
Figure 2022117109000013
表1に示される通り、実施例1~3の積層フィルムを高温環境下に曝露しても、積層フィルムから保護フィルムを剥離した際の、ポリイミド系フィルムの白化や傷及び/又はしわの発生が抑制され、視認性の低下が抑制できた。一方、比較例1の積層フィルムを高温環境下に曝露すると、ポリイミド系フィルムに白化や傷及び/又はしわが発生し、視認性が低下した。

Claims (11)

  1. ポリイミド系フィルム及び保護フィルムを含む積層フィルムであって、
    前記ポリイミド系フィルムと前記保護フィルムとの間の剥離力は、0.24N/25.4mm未満である、積層フィルム。
  2. 前記ポリイミド系フィルムの弾性率と前記保護フィルムの弾性率との差は5.0GPa以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記ポリイミド系フィルムの弾性率は、2.0GPa以上7.0GPa以下である、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  4. 前記保護フィルムの弾性率は、2.0GPa以上4.0GPa以下である、請求項1~3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. 前記ポリイミド系フィルムは、式(1):
    Figure 2022117109000014
    [式(1)中、Xは2価の有機基を表し、Yは4価の有機基を表し、*は結合手を表す]
    で表される構成単位を有するポリイミド系樹脂を含む、請求項1~4のいずれかに記載の積層フィルム。
  6. 前記式(1)で表される構成単位は、Xとして2価の脂肪族基を含む、請求項5に記載の積層フィルム。
  7. 前記式(1)で表される構成単位は、Yとして、式(2):
    Figure 2022117109000015
    [式(2)中、R~Rは、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を表し、R~Rに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、Vは、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-、-S-、-CO-又は-N(R)-を表し、Rは、水素原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の一価の炭化水素基を表し、*は結合手を表す]
    で表される構造を含む、請求項5又は6に記載の積層フィルム。
  8. 前記ポリイミド系樹脂はフッ素原子を含有する、請求項5~7のいずれかに記載の積層フィルム。
  9. 前記保護フィルムはポリエステル系フィルムである、請求項1~8のいずれかに記載の積層フィルム。
  10. 前記ポリイミド系フィルムの膜厚は10μm以上100μm以下である、請求項1~9のいずれかに記載の積層フィルム。
  11. 前記保護フィルムの膜厚は10μm以上100μm以下である、請求項1~10のいずれかに記載の積層フィルム。
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