JP2022116643A - メタクリル系樹脂組成物および積層体 - Google Patents

メタクリル系樹脂組成物および積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性が高く、熱・温水安定性に優れ、流動性が良好なメタクリル系樹脂組成物、外観品位に優れ、高温高湿下における反りの発生が少なく、表面硬度が高い積層体を提供する。【解決手段】メタクリル酸メチル単位15~83質量%と、α-メチルスチレン単位7~35質量%と、マレイン酸無水物単位(m)0~20質量%と、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、N‐置換若しくは無置換グルタルイミド単位およびN-置換若しくは無置換マレイミド単位からなる群より選ばれる環構造を主鎖に有する少なくとも2つの構造単位(r)10~65質量%と、メタクリル酸メチルに共重合可能なその他のビニル系単量体単位(c)0~20質量%を有してなるメタクリル系共重合体(A)51~99質量%並びにメタクリル樹脂(B)1~49質量%を含有するメタクリル系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、メタクリル系共重合体を含む樹脂組成物、及びメタクリル系樹脂組成物からなる層とポリカーボネートを含む樹脂組成物からなる層とを具備する積層体に関する。
メタクリル樹脂は透明性、耐擦傷性、耐候性などに優れる。一方、ポリカーボネートは耐衝撃性などに優れる。メタクリル樹脂を含有する層と、ポリカーボネートを含有する層を備える積層体は、透明性、耐擦傷性、耐候性、耐衝撃性などに優れ、家屋の壁、家具、家電製品、電子機器、表示装置などの表面部材に用いられる。
上記した積層体は、高温または高湿下に長時間曝されると反りが発生しやすく、使用環境下において問題となる場合がある。かかる問題を解決するためには、メタクリル樹脂の耐熱性を向上させることが有効であり、メタクリル酸メチルとα-メチルスチレンのランダム共重合体が古くから知られている。しかし、α-メチルスチレンは工業的条件でのラジカル重合単独重合性がなく、他モノマーとの共重合性も低く、共重合体の製造が困難であった。例えば特許文献1では、バッチ方式の塊状重合法で合成した共重合体が開示されているが、重合時間が非常に長く、生産性の低いものであった。
該2元共重合体(メタクリル酸メチルとα-メチルスチレンのランダム共重合体)の重合速度を高め、更に優れた耐熱性を有する共重合体を製造する方法として、無水マレイン酸を共重合する方法が知られている。例えば、特許文献2にはメタクリル酸メチルとα-メチルスチレンおよび無水マレイン酸を共重合させる方法を開示している。また、特許文献3にはメタクリル酸メチルとα-メチルスチレンと無水マレイン酸およびスチレンを共重合させる方法を開示している。これらα-メチルスチレン共重合体と無水マレイン酸とを共重合した重合体は重合速度が速く、更に耐熱性も高いが、熱や温水に対し化学変化を起こし分解し易く、成形加工時に著しい制約を受け、また加工品を水または水蒸気に接触させたり、高温高湿下にさらしたりする場合、物性低下を引き起こすという欠点がある。
耐熱分解性を改良し、高温高湿下での物性低下を抑制する方法として、イミド化反応が提案されている。特許文献4には、芳香族ビニル単量体、無水マレイン酸及びこれらと共重合可能なビニル単量体としてメタクリル酸メチルからなる共重合体のイミド化樹脂の製法を開示している。また、特許文献5には、メタクリル酸メチルとスチレンおよび無水マレイン酸の3元共重合体のイミド化樹脂及びその樹脂組成物を開示している。さらに、特許文献6には、メタクリル酸メチル単位と、メタクリル酸単位、アクリル酸単位、マレイン酸無水物単位、N-置換又は無置換マイレミド単位、グルタル酸無水物構造単位、及びグルタルイミド構造単位から選ばれる単位とを有し、ガラス転移温度が110℃以上であるメタクリル樹脂からなる層と、ポリカーボネートからなる層とを備える積層シートが知られている。
いずれの開示例も熱安定性は向上するが、イミド化率が高いために流動性が悪く、吸水し易い。そのため該樹脂を備える積層体は成形性が悪く、高温高湿下における反りが発生することがある。以上のように、耐熱性、流動性、熱・温水安定性、低吸水性をさらに高いレベルでバランスさせる手法に関しては検討の余地があった。
US特許3135723 特公昭45-31953号公報 特公昭61-36764号公報 特公昭60-45642号公報 特開2006-124592号公報 特開2009-248416号
本発明は上記問題点に鑑みて成されたものである。その目的とするところは、耐熱性が高く、熱・温水安定性に優れ、流動性が良好なメタクリル系樹脂組成物及び、メタクリル系樹脂組成物からなる層とポリカーボネートを含む樹脂組成物からなる層とを具備する積層体において、外観品位に優れ、高温高湿下における反りの発生が少なく、表面硬度が高い積層体を提供することである。
前記目的を達成するために検討した結果、以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
〔1〕
メタクリル酸メチル単位15~83質量%と、α-メチルスチレン単位7~35質量%と、マレイン酸無水物単位(m)0~20質量%と、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、N‐置換若しくは無置換グルタルイミド単位およびN-置換若しくは無置換マレイミド単位からなる群より選ばれる環構造を主鎖に有する少なくとも2つの構造単位(r)10~65質量%と、メタクリル酸メチルに共重合可能なその他のビニル系単量体単位(c)0~20質量%を有してなるメタクリル系共重合体(A)51~99質量%並びにメタクリル樹脂(B)1~49質量%を含有するメタクリル系樹脂組成物。
〔2〕
構造単位(r)が式(I)で表されるN-置換若しくは無置換グルタルイミド単位を含む、〔1〕に記載のメタクリル系樹脂組成物。
Figure 2022116643000001
(式(I)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基であり、Rは、水素原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基または芳香環を含む炭素数6~15の有機基である。)
〔3〕
構造単位(r)が式(II)で表されるN-置換若しくは無置換マレイミド単位を含む、〔1〕、〔2〕のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
Figure 2022116643000002
(式(II)中、Rは、水素原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基または芳香環を含む炭素数6~15の有機基である。)
〔4〕
メタクリル系共重合体(A)がマレイン酸無水物単位(m)0.1~3質量%を有してなる、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔5〕
メタクリル酸メチル単位に共重合可能なその他のビニル系単量体単位(c)が、アクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル単量体、及びシアン化ビニル単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種により形成されている、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔6〕
前記メタクリル酸メチル単位に共重合可能なその他のビニル系単量体単位(c)が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、スチレン、及びアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種により形成されている、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔7〕
マレイン酸無水物単位(m)と、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、N-置換若しくは無置換グルタルイミド単位およびN-置換若しくは無置換マレイミド単位からなる群より選ばれる環構造を主鎖に有する少なくとも2つの構造単位(r)との質量比率、{100×(m)/(r)}が0~20%の範囲である、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔8〕
メタクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が140℃以上である、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔9〕
23℃における飽和吸水率と80℃における飽和吸水率との差の絶対値が1.0質量%以下である、〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔10〕
〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物(I)からなる層;と、ポリカーボネートを含有する樹脂組成物(T)からなる層;とを備える積層体。
〔11〕
メタクリル系樹脂組成物(I)と樹脂組成物(T)とのガラス転移温度の差の絶対値が15℃以下かつ、メタクリル系樹脂組成物(I)と樹脂組成物(T)との80℃における飽和吸水率の差の絶対値が4.5%以下である〔10〕に記載の積層体。
〔12〕
メタクリル系樹脂組成物(I)からなる層の厚みが積層体全厚みの2~15%である〔10〕、〔11〕のいずれか1項に記載の積層体。
〔13〕
少なくとも一方の表面に、メタクリル系樹脂組成物(I)からなる層を備える〔10〕~〔12〕のいずれか1項に記載の積層体。
〔14〕
少なくとも一方の表面に、さらに耐擦傷性層を備える〔10〕~〔13〕のいずれか1項に記載の積層体。
本発明によれば、成形可能な流動性を保持したまま、耐熱性が高く、熱・温水安定性に優れるメタクリル系樹脂組成物からなる層を有する積層体を得ることができる。
本発明のメタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系共重合体(A)とメタクリル樹脂(B)とを含有する。メタクリル系樹脂組成物中のメタクリル系共重合体(A)の含有量は51~99質量%であり、55~95質量%であることが好ましく、60~90質量%の範囲であることがより好ましい。本発明のメタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系共重合体(A)の含有量が51質量%以上であることで、耐熱性に優れるものとなる。
(メタクリル系共重合体(A))
本発明に関わるメタクリル系共重合体は、メタクリル酸メチル単位と、α-メチルスチレン単位と、少なくとも2つの構造単位(r)とを、含有する。本発明のメタクリル系共重合体は、さらに、マレイン酸無水物単位(m)と、メタクリル酸メチルに共重合可能なその他のビニル系単量体単位(c)を含んでもよい。メタクリル酸メチルに共重合可能なその他のビニル系単量体単位(c)は、下記式(P)で表されるメタクリル酸アミド単位、下記式(Q)で表される2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単位であってもよい。
Figure 2022116643000003
(式中、R4は水素原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、または芳香環を含む炭素数6~15の有機基であり、好ましくは水素原子、メチル基、n-ブチル基、シクロヘキシル基またはベンジル基であり、より好ましくはメチル基、n-ブチル基、またはシクロヘキシル基である。RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20の有機基、好ましくは水素原子または炭素数1~10の有機基、より好ましくは水素原子または炭素数1~5の有機基である。ここで、有機基は、炭素数1~20であれば、特に限定されず、例えば、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアリール基、-OCOCH基、-CN基等が挙げられる。有機基は酸素原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。Rはメチル基であるのが好ましく、Rは水素原子であるのが好ましい。)
本発明に関わるメタクリル系共重合体は、メタクリル酸メチル単位の割合が、全構造単位に対して、好ましくは15~83質量%、より好ましくは30~80質量%、さらに好ましくは35~75質量%である。メタクリル酸メチル単位の割合がこの範囲よりも少ないと、得られるメタクリル系共重合体の全光線透過率が悪化し、メタクリル酸メチル単位の割合がこの範囲よりも多いと、得られるメタクリル系共重合体の耐熱性は低くなる。
本発明に関わるメタクリル系共重合体は、α-メチルスチレン単位の割合が、全構造単位に対して、好ましくは7~35質量%、より好ましくは8~30質量%、さらに好ましくは11~25質量%である。α-メチルスチレン単位の割合がこの範囲よりも少ないと、得られるメタクリル系共重合体の飽和吸水率が高くなる。また、α-メチルスチレン単位の割合が35質量%を超えるメタクリル系共重合体は、重合性が低く、生産性が低下する。また、後記の隣り合う二つの(メタ)アクリル酸に由来する構造単位の分子内環化によるグルタルイミド化反応を阻害する。
本発明に関わるメタクリル系共重合体は、マレイン酸無水物単位(m)の割合が、全構造単位に対して、好ましくは0~20質量%、より好ましくは0.05~10質量%、さらに好ましくは0.1~3質量%である。マレイン酸無水物単位の割合が20質量%を超えるメタクリル系共重合体は、温水安定性が低下する。
構造単位(r)は、(w)ラクトン環単位、(x)無水グルタル酸単位、(y)N-置換若しくは無置換グルタルイミド単位および(z)N-置換若しくは無置換マレイミド単位からなる群より選ばれる環構造を主鎖に有する少なくとも2つ(好ましくは2つ、3つ又は4つ)の構造単位である。少なくとも2つの構造単位(r)の具体例としては、(w)+(x)、(w)+(y)、(w)+(z)、(x)+(y)、(x)+(z)、(y)+(z)、(w)+(x)+(y)、(w)+(x)+(z)、(w)+(y)+(z)、(x)+(y)+(z)、(w)+(x)+(y)+(z)が挙げられ、(y)+(z)が特に好ましい。少なくとも2つの構造単位(r)は、別の種類の単位(例えば(y)と(z))が含まれていることを意味し、同じ種類の単位{例えば異なるラクトン環単位(w)が2つ((w)+(w))}含まれている場合は、「少なくとも2つの構造単位(r)」には該当しない。
本発明のメタクリル系共重合体は、上記式(P)で表されるメタクリル酸アミド単位、及び/又は、上記式(Q)で表される2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単位を主鎖に含んでいてもよい。
ラクトン環単位は、>CH-O-C(=O)-基を環構造に含む構造単位である。>CH-O-C(=O)-基を環構造に含む構造単位は、環構成元素の数が好ましくは、4~8、より好ましくは5~6、最も好ましくは6である。>CH-O-C(=O)-基を環構造に含む構造単位としては、β-プロピオラクトンジイル構造単位、γ-ブチロラクトンジイル構造単位、δ-バレロラクトンジイル構造単位などのラクトンジイル構造単位を挙げることができる。>CH-O-C(=O)-基を環構造に含む構造単位は、例えば、ヒドロキシ基およびエステル基を有する重合体を、ヒドロキシ基およびエステル基による分子内環化によって得ることができる。なお、式中の「>C」は炭素原子Cに結合手が2つあることを意味する。
例えば、δ-バレロラクトンジイル構造単位としては、式(IV)で表される構造単位を挙げることができる。
Figure 2022116643000004
式(IV)中、R、RおよびR10はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~20の有機基、好ましくは水素原子または炭素数1~10の有機基、より好ましくは水素原子または炭素数1~5の有機基である。ここで、有機基は、炭素数1~20であれば、特に限定されず、例えば、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアリール基、-OCOCH基、-CN基等が挙げられる。有機基は酸素原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。RおよびRはメチル基であるのが好ましく、R10は水素原子であるのが好ましい。
ラクトン環単位は、特開2000-230016号公報、特開2001-151814号公報、特開2002-120326号公報、特開2002-254544号公報、特開2005-146084号公報などに記載の方法、例えば、2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルに由来する構造単位と(メタ)アクリル酸メチルに由来する構造単位との分子内環化などによって、メタクリル系共重合体に含有させることができる。
無水グルタル酸単位は、2,6-ジオキソジヒドロピランジイル構造を有する単位である。2,6-ジオキソジヒドロピランジイル構造を有する単位としては、式(V)で表される構造単位を挙げることができる。
Figure 2022116643000005
式(II)中、R11はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~5のアルキル基であり、メチル基であるのが好ましい。
2,6-ジオキソジヒドロピランジイル構造を有する単位は、特開2007-197703号公報、特開2010-96919号公報などに記載の方法、例えば、隣り合う二つの(メタ)アクリル酸に由来する構造単位の分子内環化、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位と(メタ)アクリル酸メチルに由来する構造単位との分子内環化などによって、メタクリル系共重合体に含有させることができる。
N-置換若しくは無置換グルタルイミド単位は、N-置換若しくは無置換2,6-ジオキソピペリジンジイル構造を有する単位である。
N-置換若しくは無置換2,6-ジオキソピペリジンジイル構造を有する単位としては、式(I)で表される構造単位を挙げることができる。
Figure 2022116643000006
式(I)中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、2つのRがともにメチル基であるのが好ましい。Rは水素原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、または芳香環を含む炭素数6~15の有機基であり、好ましくは水素原子、メチル基、n-ブチル基、シクロヘキシル基またはベンジル基であり、より好ましくはメチル基、n-ブチル基、またはシクロヘキシル基である。
式(I)で表される構造単位は、例えばスキーム(i)で示されるように対応する酸無水物(IIa)とRNHで表されるイミド化剤の反応により生成してもよく、式(III)の部分構造を有する共重合体の分子内環化反応により生成してもよい。分子内環化反応により式(III)で表される構造単位を式(I)で表される構造単位に変換するために加熱することが好ましい。
スキーム(i)
Figure 2022116643000007
(式中、R、Rは前記に定義される通りである 。)
N-置換若しくは無置換グルタルイミド単位は、WO2005/10838A1、特開2010-254742号公報、特開2008-273140号公報、特開2008-274187号公報などに記載の方法、具体的には、隣り合う二つのメタクリル酸メチルに由来する構造単位または無水グルタル酸単位に 、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等などの脂環式炭化水素基含有アミン、尿素、1,3-ジメチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,3-ジプロピル尿素などのイミド化剤を反応させることによって得ることができる。これらの中で、メチルアミンが好ましい。このイミド化反応の際に、メタクリル酸メチル単位の一部が加水分解されてカルボキシル基になることがあり、このカルボキシル基は、エステル化剤で処理するエステル化反応で元のメタクリル酸メチル単位に戻すことが好ましい。エステル化剤としては、本願の効果を発揮できる範囲であれば特に制限はされないが、好適にはジメチルカーボネート、トリメチルアセテートを使用することができる。また、エステル化剤に加えて、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の3級アミンを、触媒として併用することもできる。
N-置換若しくは無置換マレイミド単位は、N-置換若しくは無置換2,5-ピロリジンジオン構造を有する単位である。
N-置換若しくは無置換2,5-ピロリジンジオン構造を有する単位としては、式(II)で表される構造単位を挙げることができる。
Figure 2022116643000008
(式(II)中、Rは、水素原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基または芳香環を含む炭素数6~15の有機基であり、好ましくは水素原子、メチル基、n-ブチル基、シクロヘキシル基またはベンジル基であり、より好ましくはメチル基、n-ブチル基、またはシクロヘキシル基である。)。
式(II)で表される構造単位は、マレイン酸無水物(m)とRNHで表されるイミド化剤の反応により生成される。
N-置換若しくは無置換マレイミド単位は、特公昭61-026924号公報、特公平7-042332号公報、特開平9-100322号公報、特開2001-329021号公報などに記載の方法、具体的には、マレイン酸無水物単位に、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等などの脂環式炭化水素基含有アミン、尿素、1,3-ジメチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,3-ジプロピル尿素などのイミド化剤を反応させることによって得ることができる。これらの中で、メチルアミンが好ましい。
本発明のメタクリル系共重合体は、構造単位(r)の割合が、全構造単位に対して、好ましくは10~65質量%、より好ましくは11~60質量%、さらに好ましくは12~55質量%である。構造単位(r)の含有量が多い程、メタクリル系共重合体は、耐熱分解性が向上するが、溶融粘度が高くなり、成形加工性が低下する傾向となる。
メタクリル酸メチル単位と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(c)(以下、(c)単量体単位と記載する場合がある。)は、アクリル酸エステル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、シアン化ビニル単量体単位、これら以外の単量体単位が挙げられる。メタクリル酸メチル単位と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(c)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
前記(c)単量体単位は、本発明のメタクリル系共重合体に求められる特性に応じて、適宜材料を選択することができるが、熱安定性、流動性、耐薬品性、光学性、他樹脂との相溶性等の特性が特に必要な場合は、アクリル酸エステル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、シアン化ビニル単量体単位からなる群より選ばれる少なくとも一種が好適である。
本発明に関わるメタクリル系共重合体を構成するアクリル酸エステル単量体単位を得るためのアクリル酸エステルは、特に限定されるものではないが、耐熱性、流動性、耐熱安定性、生産性等の観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル等が好ましく、より好ましくはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルであり、生産性の観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルがさらに好ましい。
上記アクリル酸エステル単量体単位は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に関わるメタクリル系共重合体を構成する芳香族ビニル単量体単位を得るための芳香族ビニル単量体は、特に限定されるものではないが、耐熱性、流動性、耐熱安定性、生産性等の観点から、スチレン(St)、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5‐ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、o-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルベンジルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等が好ましく、生産性の観点からスチレンがより好ましい。
上記芳香族ビニル単量体単位は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に関わるメタクリル系共重合体を構成するシアン化ビニル単量体単位を得るためのシアン化ビニル単量体は、特に限定されるものではないが、耐熱性、流動性、耐熱安定性、耐薬品性、生産性等の観点から、アクリロニトリル(AN)、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が好ましく、中でも入手のし易さ、耐薬品性付与の観点から、アクリロニトリルが好ましい。
上記シアン化ビニル単量体単位は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に関わるメタクリル系共重合体を構成するアクリル酸エステル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、シアン化ビニル単量体単位以外の単量体単位をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、式(P)で表されるメタクリル酸アミド単位に対応するモノマー、式(Q)で表される2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単位に対応するモノマーであってもよく、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール類又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー等が挙げられる。
上述した(c)単量体単位を構成する単量体の中でも、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル、スチレン、アクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種が、入手のしやすさの観点から、好ましい。
本発明に関わるメタクリル系共重合体は、メタクリル酸メチル単位と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(c)の割合が、全構造単位に対して、好ましくは0~20質量%、より好ましくは0~15質量%、さらに好ましくは0~10質量%である。メタクリル酸メチル単位と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(c)の割合が20質量%を超えるメタクリル系共重合体は、耐熱性、剛性が低下する。なお、メタクリル酸メチル単位、α‐メチルスチレン単位、マレイン酸無水物単位(m)、構造単位(r)、および単量体単位(c)の割合は、H-NMR、13C-NMRなどによって測定することができる。
本発明に関わるメタクリル系共重合体は、耐熱性、耐温水性の観点から、マレイン酸無水物単位(m)と、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、N-置換若しくは無置換グルタルイミド単位からなる群より選ばれる少なくともひとつの環構造を主鎖に有する構造単位(r)との質量比率、{100×(m)/(r)}が0~20%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0~10質量%である。上記の質量比率の計算式における(r)は、少なくとも2つの構造単位(r)の合計量を意味する。
本発明に関わるメタクリル系共重合体は、重量平均分子量(Mw)が、 好ましくは40000~200000、より好ましくは50000~180000、さらに好ましくは55000~160000である。Mwが40000以上であると、本発明の強度および靭性等が向上する。Mwが200000以下であると、本発明のメタクリル系樹脂組成物の流動性が向上し、成形加工性が向上する。
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定されるクロマトグラムを標準ポリスチレンの分子量に換算して算出される値である。
本発明のメタクリル系共重合体は、酸価が、好ましくは0.01~0.30mmol/g、より好ましくは0.05~0.28mmol/gである。酸価は、メタクリル系共重合体中のカルボン酸単位、カルボン酸無水物単位の含有量に比例する値である。酸価は、例えば、特開2005-23272号公報に記載の方法によって算出することができる。酸価が上記範囲内にあると、耐熱性、機械物性、成形加工性のバランスに優れる。
本発明に関わるメタクリル系共重合体は、ガラス転移温度が、下限として、好ましくは140℃、より好ましくは141℃、さらに好ましくは142℃であり、上限として、特に制限されないが、好ましくは170℃である。
本明細書において、「ガラス転移温度(Tg)」は、JIS K7121に準拠して測定する。具体的には、230℃まで一度昇温し、次いで室温まで冷却し、その後、室温から230℃までを10℃/分で昇温させる条件にてDSC曲線を測定する。2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点を「ガラス転移温度(Tg)」として求める。
本発明に関わるメタクリル系共重合体の飽和吸水率の測定は下記の条件で行うことができる。メタクリル系共重合体をプレス成形により、厚さ1.0mmのシートに成形する。得られたプレス成形シートの中央部から、50mm×50mmの試験片を切り出し、80℃の乾燥機で、16時間以上乾燥する。乾燥後の試験片をデシケーター内で、室温まで冷却した後、0.1mgまで重量を測定し、その重量を初期重量Woとする。23℃の蒸留水に試験片を浸漬し、24h浸漬後,試験片を水から取り出し,表面の水分を清浄で乾いた布又はフィルター紙ですべて拭き取る。水から取り出して 1 分以内に,再度試験片を0.1mgまで量る。試験片を再び浸漬し,24時間後に再び上記と同じ方法で重量を測定する。試験片の重量変化率が、Woの0.02質量%以内になった時の重量を、飽和重量Wsとする。式(2)から23℃における飽和吸水率を算出することができる。また、同様の測定を80℃の蒸留水に試験片を浸漬することで、式(2)から80℃における飽和吸水率を算出することができる。
Figure 2022116643000009
23℃における飽和吸水率は、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下、さらに好ましくは4.0質量%以下である。また、80℃における飽和吸水率は、好ましくは5.5質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは4.5質量%以下である。
本発明に関わるメタクリル系共重合体は、23℃における飽和吸水率と80℃における飽和吸水率との差の絶対値が好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.9質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下である。本発明の樹脂組成物および積層体の寸法変化を抑制することができる。
本発明に関わるメタクリル系共重合体の窒素雰囲気下での1%熱重量減少温度は、好ましくは300℃以上、より好ましくは310℃以上である。1%熱重量減少温度は、熱重量測定装置(TGA)を用いて測定することができる。1%熱重量減少温度は、仕込み重量に対して、重量減少が1%となる温度として求めることができる。
本発明に関わるメタクリル系共重合体は、メタクリル酸メチル(MMA)、α-メチルスチレン(αMSt)、マレイン酸無水物(Mah)、任意成分としてその他のビニル系単量体の共重合体(以下、前駆体ポリマーということがある。)を環構造形成反応させることを含む方法によって得ることができる。
即ち本発明に関わるメタクリル系共重合体の製造方法は、メタクリル酸メチル50~92質量%、α-メチルスチレンおよび30~7質量%、マレイン酸無水物1~20質量%および共重合可能なその他のビニル系単量体0~20質量%を含む単量体混合物と、ラジカル重合開始剤と、必要に応じ連鎖移動剤とを含んでなる反応原料を、槽型反応器に連続的に供給する工程、 槽型反応器内で前記単量体混合物を重合転化率30~60質量%まで塊状重合して反応生成物を得る工程、および反応生成物中の単量体混合物を除去して前駆体ポリマーを得る工程、得られた前駆体ポリマーに環構造形成反応をさせる工程を含み、各工程は公知の技術によって実施することができる。
前駆体ポリマーは、単量体混合物とラジカル重合開始剤と必要に応じて連鎖移動とを含む反応原料から重合されるものであり、単量体混合物はメタクリル酸メチルを単量体混合物の中に50~92質量%、好ましくは55~90質量%含むものである。また、
α-メチルスチレンは、35~7質量%、好ましくは25~10質量%含むものである。マレイン酸無水物は、1~20質量%、好ましくは3~15質量%含むものであり、共重合可能な単量体は0~20質量%、好ましくは0~10質量%含むものである。
共重合可能な単量体としては、特に限定されるものではないが、式(P)で表されるメタクリル酸アミド単位に対応するモノマー、式(Q)で表される2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単位に対応するモノマーであってもよく、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルネニルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル;アクリル酸フェニルなどのアクリル酸アリールエステル;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル;スチレンなど芳香族ビニル単量体;アクリルアミド;メタクリルアミド;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;などの一分子中に重合性アルケニル基を一つだけ有するビニル単量体が挙げられる。
塊状重合においては溶剤を原則使用しないが、反応液の粘度を調整するなどの必要がある場合には、溶剤を単量体混合物に含めることができる。溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトなどのケトン類が好ましい。これらの溶剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。かかる溶剤の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
槽型反応器内の温度、すなわち反応槽内にある液の温度は、好ましくは110~140℃、より好ましくは114~135℃である。温度が140℃よりも高いと、α-メチルスチレンを含む高分子量体が生成しづらく、耐熱性の低下原因となる。温度が110℃よりも低いとポリマー連鎖中にα‐メチルスチレン連鎖が生成し易く、耐熱分解性の低下原因となる。
前駆体ポリマーは、ガラス転移温度が、下限として好ましくは130℃、より好ましくは131℃、さらに好ましくは132℃であり、上限として好ましくは150℃である。ガラス転移温度は、分子量、α-メチルスチレ共重合量、マレイン酸無水物の共重合量などを調節することによって変えることができる。前駆体ポリマーのガラス転移温度が高いほど耐熱性が向上する。ガラス転移温度の高い前駆体ポリマーを用いて得られるメタクリル系共重合体(A)は、構造単位(r)の量が少なくても高い耐熱性を有するので、飽和吸水率の悪化等を引き起し難い。
前駆体ポリマーは、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の総含有量が50~92質量%、α-メチルスチレンに由来する構造単位の総含有量が35~7質量%、マレイン酸無水物に由来する構造単位の総含有量が1~20質量%のものであれば、特に制限されない。重合性、透明性などの観点から、前駆体ポリマーのメタクリル酸メチルに由来する構造単位の総含有量は、好ましくは50質量%以上92質量%以下、より好ましくは55質量%以上91質量%以下、最も好ましくは60質量%以上90質量%以下である。
耐熱性、重合性、吸水率などの観点から、前駆体ポリマーのα-メチルスチレンに由来する構造単位の総含有量は、好ましくは7質量%以上27質量%以下、より好ましくは8質量%以上25質量%以下である。α-メチルスチレンに由来する構造単位がこの範囲よりも少ないと、十分な耐熱性が得られず、この範囲よりも多いと、重合性が著しく低下する。
耐熱性、重合性、熱安定性などの観点から、前駆体ポリマーのマレイン酸無水物に由来する構造単位の総含有量は、好ましくは1質量%以上18質量%以下、より好ましくは2質量%以上15質量%以下である。マレイン酸無水物に由来する構造単位がこの範囲よりも少ないと、十分な耐熱性が得られず、この範囲よりも多いと、黄変が著しい。
前駆体ポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで得られるクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが、好ましくは30000以上200000以下、より好ましくは40000以上180000以下、さらに好ましくは50000以上160000以下である。重量平均分子量Mwがこの範囲よりも小さいと、得られる成形体が脆くなり、この範囲よりも高いと生産性が悪化する。Mwは、前駆体ポリマーの製造の際に使用する重合開始剤や連鎖移動剤(任意成分)の種類、量、添加時期などを調整することによって制御できる。
環構造形成反応は、例えば、押出機を用いて、行うことができる。押出機として例えば単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機などが挙げられる。混合性能の点から、二軸押出機が好ましい。二軸押出機には非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、噛合い型異方向回転式が含まれる。噛合い型同方向回転式は、高速回転が可能であり、混合を効率的に促進できるので好ましい。これらの押出機は、単独で用いても、直列に繋いで用いてもよい。
押出機を用いての環構造形成反応では、例えば、原料である前駆体ポリマーを押出機の原料投入部から投入し、該前駆体ポリマーを溶融させ、シリンダ内に充満させた後、添加ポンプを用いてイミド化剤(任意成分)などを押出機中に注入することにより、押出機中で環構造形成反応を進行させることができる。イミド化剤を用いると、構造単位(r)は、N-置換若しくは無置換グルタルイミド単位およびN-置換若しくは無置換マレイミド単位を含み、必要に応じてラクトン環単位及び/又は無水グルタル酸単位を含んでいてもよい。イミド化剤を用いない場合、構造単位(r)は、ラクトン環単位及び無水グルタル酸単位から構成される。好ましいイミド化剤はR-NH又はR-NH(R、Rは前記に定義される通りである)で表される。RとRは、同一であっても異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。イミド化剤は、メタクリル系共重合体100質量部に対し1.6~30質量部、好ましくは2.0~12質量部使用される。イミド化剤が上記範囲内の使用量であると、メタクリル酸アミド単位の副生を抑制できる。
押出機中の反応ゾーンの樹脂温度は180~300℃の範囲にすることが好ましく、200~290℃の範囲にすることがより好ましい。反応ゾーンの樹脂温度が180℃未満だと環構造形成反応の反応効率の低下、メタクリル酸アミド単位の副生等によりメタクリル系共重合体の耐熱性が低下する傾向となる。反応ゾーンの樹脂温度が300℃を超えると樹脂の分解が著しくなり得られるメタクリル系共重合体からなる成形体および光学フィルムを含むフィルム、積層体などの引張り破断強度等の機械的強度が低下する傾向となる。なお、押出機中の反応ゾーンとは、押出機のシリンダにおいてイミド化剤などの注入位置から樹脂吐出口(ダイス部)までの間の領域をいう。
押出機の反応ゾーン内での反応時間を長くすることにより、環構造形成反応をより進行させることができる。押出機の反応ゾーン内の反応時間は10秒より長くすることが好ましく、さらには30秒より長くすることがより好ましい。10秒以下の反応時間では環構造形成反応がほとんど進行しない可能性がある。
押出機での樹脂圧力は、大気圧~50MPaの範囲内とすることが好ましく、さらには1~30MPaの範囲内とすることがより好ましい。50MPa以上では通常の押出機の機械耐圧の限界を越え、特殊な装置が必要となりコスト的に好ましくない。
大気圧以下に減圧可能なベント孔を有する押出機を使用することが好ましい。このような構成によれば、未反応物、もしくはメタノール等の副生物やモノマー類を除去することができ、本発明の樹脂組成物の耐熱性が向上する傾向となる。
環構造形成反応時にメタクリル系共重合体中にカルボキシ基が副生することがある。このカルボキシ基は、必要に応じてエステル化剤や触媒などによりエステル基に変換してもよい。これにより積層体を製造する際の樹脂の発泡が低減できる。かかるエステル基は、使用するエステル化剤や触媒により異なるが、溶融成形時の樹脂溶融粘度の低減およびエステル化の反応性、エステル化後の樹脂の耐熱性の観点から、メタクリル酸メチル単位を含むことが好ましい。エステル化剤としては、コスト、反応性などの観点から、ジメチルカーボネートが好ましい。
エステル化剤の添加量は、例えば、メタクリル系共重合体の酸価が所望の値になるように設定することができる。
上記エステル化剤に加え、触媒を併用することもできる。触媒の種類は特に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノメチルジエチルアミン、ジメチルモノエチルアミン、ジメチルベンジルアミン等のアミン系化合物が挙げられる。これらの中でもコスト、反応性などの観点からトリエチルアミンが好ましい。
(メタクリル樹脂(B))
本発明のメタクリル系樹脂組成物にはメタクリル樹脂(B)を含む。メタクリル樹脂(B)の含有量は1~49質量%であり、5~45質量%であることが好ましく、10~40質量%の範囲であることがより好ましい。本発明のメタクリル系樹脂組成物は、メタクリル樹脂(B)を含むことで流動性が改良される。
上記メタクリル樹脂(B)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を含む樹脂である。かかるメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」と称する)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸1-メチルシクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸シクロオクチル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-イルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル;メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸アラルキルエステル;などが挙げられ、入手性の観点から、MMA、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、およびメタクリル酸tert-ブチルが好ましく、MMAが最も好ましい。メタクリル酸エステルは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。メタクリル樹脂(B)におけるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましく、メタクリル酸エステルに由来する構造単位のみであってもよい。
メタクリル樹脂(B)は、MMA単独または任意成分である他の単量体を重合することで得られる。かかる重合において、複数種の単量体を用いる場合は、通常、かかる複数種の単量体を混合して単量体混合物を調製した後、重合に供する。重合方法に特に制限はないが、生産性の観点から、塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法、乳化重合法などの方法でラジカル重合することが好ましい。
メタクリル樹脂(B)は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)の下限が、56%以上であることが好ましく、57%以上であることがより好ましく、58%以上であることがさらに好ましい。かかる構造の含有量の下限値が56%以上であることで、本発明のメタクリル系樹脂組成物は耐熱性に優れるものとなる。
ここで、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(以下、単に「シンジオタクティシティ(rr)」と称することがある。)は連続する3つの構造単位の連鎖(3連子、triad)が有する2つの連鎖(2連子、diad)が、ともにラセモ(rrと表記する)である割合である。なお、ポリマー分子中の構造単位の連鎖(2連子、diad)において立体配置が同じものをメソ(meso)、逆のものをラセモ(racemo)と称し、それぞれm、rと表記する。
メタクリル樹脂(B)のシンジオタクティシティ(rr)(%)は、重水素化クロロホルム中、30℃で、H-NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルからテトラメチルシラン(TMS)を0ppmとした際の、0.6~0.95ppmの領域の面積(Y)と0.6~1.35ppmの領域の面積(Z)とを計測し、式:(Y/Z)×100にて算出することができる。
メタクリル樹脂(B)の重量平均分子量(以下、「Mw」と称する)は40,000~500,000が好ましく、60,000~300,000がより好ましく、80,000~200,000がさらに好ましい。かかるMwが40,000以上であることで、本発明のメタクリル系樹脂組成物は、力学強度に優れるものとなり、500,000以下であることで、流動性が良好となる。
メタクリル樹脂(B)のガラス転移温度は、100℃以上であることが好ましく、105℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることがさらに好ましい。かかるガラス転移温度が100℃以上であることで、本発明のメタクリル系樹脂組成物は、耐熱性に優れるものとなる。
メタクリル樹脂(B)の23℃水中における飽和吸水率は、2.5質量%以下であることが好ましく、2.3質量%以下であることがより好ましく、2.1質量%以下であることがさらに好ましい。かかる飽和吸水率が2.5質量%以下であることで、本発明のメタクリル系樹脂組成物は、耐湿性に優れるものとなり、吸湿に起因する積層体の反りが抑制できる。
メタクリル樹脂(B)のメルトフローレート(以下、「MFR」と称する)は1~20g/10分の範囲であることが好ましい。かかるMFRの下限値は1.2g/10分以上であることがより好ましく、1.5g/10分以上であることがさらに好ましい。また、かかるMFRの上限値は15g/10分以下であることがより好ましく、10g/10分以下であることがさらに好ましい。MFRが1~10g/20分の範囲にあると、加熱溶融成形の安定性が良好である。なお、本明細書におけるMFRとは、メルトインデクサーを用いて、温度230℃、3.8kg荷重下で測定した値である。
(メタクリル系樹脂組成物(I))
本発明のメタクリル系樹脂組成物(I)は、メタクリル系共重合体(A)/メタクリル樹脂(B)の質量比が、耐熱性、流動性の観点から99/1~51/49であり、95/5~55/45であることが好ましく、90/10~60/40であることがより好ましい。
本発明のメタクリル系樹脂組成物は、230℃および3.8kg荷重の条件におけるメルトフローレートが、好ましくは0.3g/10分以上、より好ましくは0.5~20g/10分、さらに好ましくは1.0~10g/10分である。
本発明のメタクリル系樹脂組成物は、ガラス転移温度が、好ましくは120~160℃、より好ましくは125~155℃、さらに好ましくは130~150℃である。ガラス転移温度が120℃以下であると耐熱性などが低下する傾向があり、ガラス転移温度が160℃以上であると成形性などが低下する傾向がある。
本発明のメタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系共重合体(A)の飽和吸水率測定と同条件で行った23℃における飽和吸水率が、5.0質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下、さらに好ましくは4.0質量%以下である。また、80℃における飽和吸水率が5.5質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは4.5質量%以下である。
本発明のメタクリル系樹脂組成物は、23℃における飽和吸水率と80℃における飽和吸水率との差の絶対値が好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.9質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下である。本発明の樹脂組成物および積層体の寸法変化を抑制することができる。
本発明のメタクリル系樹脂組成物の窒素雰囲気下での1%熱重量減少温度は、好ましくは300℃以上、より好ましくは310℃以上である。1%熱重量減少温度は、熱重量測定装置(TGA)を用いて測定することができる。1%熱重量減少温度は、仕込み重量に対して、重量減少が1%となる温度として求めることができる。
本発明のメタクリル系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてフィラーを含んでいてもよい。フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。本発明の樹脂組成物に含有し得るフィラーの量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。
本発明のメタクリル系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の重合体を含んでいてもよい。他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリノルボルネンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂などのスチレン系樹脂;メチルメタクリレート-スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;シリコーンゴム;アクリル系多層共重合体エラストマー;メチルメタクリレート重合体ブロック‐アクリル酸n-ブチル重合体ブロックのジブロック共重合体、トリブロック共重合体などのアクリル系熱可塑性エラストマー;SEPS、SEBS、SISなどのスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDMなどのオレフィン系ゴムなどを挙げることができる。本発明の樹脂組成物に含有され得る他の重合体の量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、最も好ましくは0質量%である。
本発明のメタクリル系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、蛍光体などの添加剤を含有していてもよい。
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、その割合は特に制限されないが、リン系酸化防止剤/ヒンダードフェノール系酸化防止剤の質量比で、好ましくは1/5~2/1、より好ましくは1/2~1/1である。
リン系酸化防止剤としては、2,2-メチレンビス(4,6-ジt-ブチルフェニル)オクチルホスファイト(ADEKA社製;商品名:アデカスタブHP-10)、トリス(2,4-ジt-ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名:IRUGAFOS168)、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製;商品名:アデカスタブPEP-36)などが挙げられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名IRGANOX1010)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名IRGANOX1076)などが挙げられる。
熱劣化防止剤は、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できる化合物であり、例えば、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、2,4-ジ-t-アミル-6-(3’,5’-ジ-t-アミル-2’-ヒドロキシ-α-メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)などが挙げられる。
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。紫外線吸収剤は、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる化合物である。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などを挙げることができる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、または波長380~450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤が好ましい。
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物であり、例えば、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類が挙げられる。
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、硬化油などを挙げることができる。
離型剤は、成形品の金型からの離型を容易にする機能を有する化合物であり、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステルなどが挙げられる。グリセリン高級脂肪酸エステルの使用はゲル状異物の原因となる場合があるため、高級アルコール類を使用することが好ましい。
高分子加工助剤は、アクリル系樹脂組成物を成形する際、厚さ精度および薄膜化に効果 を発揮する化合物である。高分子加工助剤は、通常、乳化重合法によって製造することができる。高分子加工助剤は、好ましくは0.05~0.5μmの粒子径を有する重合体粒子である。
該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましいものとして挙げられる。高分子加工助剤は、極限粘度が3~6dl/gであることが好ましい。極限粘度が小さすぎると成形性の改善効果が低い。極限粘度が大きすぎるとアクリル系樹脂組成物の溶融流動性の低下を招きやすい。
帯電防止剤としては、ヘプチルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、ノニルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、セチルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、ジヘプチルスルホン酸ナトリウム、ヘプチルスルホン酸カリウム、オクチルスルホン酸カリウム、ノニルスルホン酸カリウム、デシルスルホン酸カリウム、ドデシルスルホン酸カリウム、セチルスルホン酸カリウム、オクタデシルスルホン酸カリウム、ジヘプチルスルホン酸カリウム、ヘプチルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ノニルスルホン酸リチウム、デシルスルホン酸リチウム、ドデシルスルホン酸リチウム、セチルスルホン酸リチウム、オクタデシルスルホン酸リチウム、ジヘプチルスルホン酸リチウム等のアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の水酸基または結晶水を有する金属水和物、ポリリン酸アミン、リン酸エステル等のリン酸化合物、シリコン化合物等が挙げられ、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェートなどのリン酸エステル系難燃剤が好ましい。
染料・顔料としては、パラレッド、ファイヤーレッド、ピラゾロンレッド、チオインジコレッド、ペリレンレッドなどの赤色有機顔料、としてシアニンブルー、インダンスレンブルーなどの青色有機顔料、シアニングリーン、ナフトールグリーンなどの緑色有機顔料が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
有機色素としては、紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物が好ましく用いられる。
光拡散剤や艶消し剤としては、ガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。
蛍光体としては、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤などを挙げることができる。
これらの添加剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの添加剤は、メタクリル系共重合体(A)、メタクリル樹脂(B)を製造する際の重合反応液に添加してもよいし、製造されたメタクリル系共重合体(A)やメタクリル樹脂(B)に添加してもよいし、本発明のメタクリル系樹脂組成物を調製する際に添加してもよい。本発明のメタクリル系樹脂組成物に含有される添加剤の合計量は、成形体の外観不良を抑制する観点から、メタクリル系樹脂組成物に対して、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
本発明のメタクリル系樹脂組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、メタクリル樹脂(B)の存在下にメタクリル酸メチル等を含む単量体混合物を重合してメタクリル系共重合体(A)を生成させる方法や、メタクリル系共重合体(A)およびメタクリル樹脂(B)を溶融混練する方法を挙げることができる。溶融混練の際に、必要に応じて他の重合体や添加剤を混合してもよいし、メタクリル系共重合体(A)を他の重合体および添加剤と混合した後にメタクリル樹脂(B)と混合してもよいし、メタクリル樹脂(B)を他の重合体および添加剤と混合した後にメタクリル系共重合体(A)と混合してもよいし、その他の方法でもよい。混練は、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合装置または混練装置を使用して行なうことができる。これらのうち、二軸押出機が好ましい。
本発明のメタクリル系樹脂組成物は、保存、運搬、または成形時の利便性を高めるために、ペレットなどの形態にすることができる。
(樹脂組成物(T))
本発明の積層体に用いる樹脂組成物(T)は、ポリカーボネートを含む樹脂組成物である。ポリカーボネートは、好適にはビスフェノールAなどの二価フェノールとカーボネート前駆体とを共重合して得られる。
上記ポリカーボネートのMwは10,000~100,000の範囲が好ましく、20,000~70,000の範囲であることがより好ましい。かかるMwが10,000以上であることで本発明の積層体は耐衝撃性、耐熱性に優れ、100,000以下であることで、ポリカーボネートは成形加工性に優れ、本発明の積層体の生産性を高められる。
上記ポリカーボネートは、本発明の効果を損なわない範囲で、他の重合体を含有していてもよい。かかる他の重合体としては、メタクリル樹脂、前記したメタクリル系樹脂組成物(I)が含有していてもよい他の重合体と同様のものを用いることができる。これら他の重合体は1種を単独で用いても、複数種を併用してもよい。
樹脂組成物(T)におけるこれら他の重合体の含有量は15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
上記樹脂組成物(T)は、必要に応じて各種添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、前記したメタクリル系樹脂組成物(I)が含有していてもよい添加剤と同様のものを用いることができる。これら添加剤の含有量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定でき、ポリカーボネート100質量部に対して、酸化防止剤の含有量は0.01~1質量部、紫外線吸収剤の含有量は0.01~3質量部、光安定剤の含有量は0.01~3質量部、滑剤の含有量は0.01~3質量部、染料・顔料の含有量は0.01~3質量部が好ましい。
本発明に用いられる樹脂組成物(T)は、ガラス転移温度が120~160℃であることが好ましい。また、樹脂組成物(T)は、そのガラス転移温度が、メタクリル系樹脂組成物(I)のガラス転移温度と同程度であることが好ましい。具体的に、樹脂組成物(T)のガラス転移温度とメタクリル系樹脂組成物(I)のガラス転移温度との差の絶対値|ΔTg|は、好ましくは15℃以下、より好ましくは10℃以下である。|ΔTg|が15℃以下であると、積層体の高温高湿下での反りの発生を抑制する効果がより高くなる。
本発明に用いられる樹脂組成物(T)は、80℃水中における飽和吸水率が0.1~1.0質量%であることが好ましい。また、樹脂組成物(T)は、その飽和吸水率が、メタクリル系樹脂組成物(I)の飽和吸水率と同程度であることが好ましい。具体的に、樹脂組成物(T)の飽和吸水率とメタクリル系樹脂組成物(I)の飽和吸水率との差の絶対値|Δ飽和吸水率|は、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下である。両樹脂の飽和吸水率差が4.5質量%以下であると、積層体の高温高湿下での反りの発生を抑制する効果がより高くなる。
本発明に用いられる樹脂組成物(T)のMFRは1~30g/10分の範囲であるのが好ましく、3~20g/10分の範囲であるのがより好ましく、5~10g/10分の範囲であるのがさらに好ましい。MFRが1~30g/10分の範囲にあると、加熱溶融成形の安定性が良好である。
なお、本明細書における樹脂組成物(T)のMFRとは、メルトインデクサーを用いて、温度300℃、1.2kg荷重下の条件で測定したものである。
上記ポリカーボネートは、市販品を用いてもよく、例えば、住化ポリカーボネート社「SDポリカ(登録商標)」、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製「ユーピロン/ノバレックス(登録商標)」、出光興産株式会社製「タフロン(登録商標)」、帝人化成株式会社製「パンライト(登録商標)」などが好適に使用できる。
[積層体]
本発明の積層体は、メタクリル系樹脂組成物(I)からなる層および/または樹脂組成物(T)からなる層を、複数有していてもよい。
本発明の積層体は、メタクリル系樹脂組成物(I)からなる層および樹脂組成物(T)からなる層以外に、他の樹脂からなる層(他の樹脂層)を有していてもよい。かかる他の樹脂層に含まれる樹脂としては、メタクリル系樹脂組成物(I)および樹脂組成物(T)以外の各種熱可塑性樹脂;熱硬化樹脂;エネルギー線硬化樹脂;等が挙げられる。
上記した他の樹脂層として、耐擦傷性層、帯電防止層、防汚層、摩擦低減層、防眩層、反射防止層、粘着層、衝撃強度付与層などが挙げられる。
これら他の樹脂層は1層であっても、複数であってもよい。またこれら他の樹脂層が複数ある場合、互いに同じ樹脂からなっていても、異なる樹脂からなっていてもよい。本発明の積層体において、かかる他の樹脂層の配置順序には特に制限はなく、表面であっても、内層であってもよい。
本発明の積層体の厚さは、優れた外観を維持しつつ生産性よく製造する観点から、0.03~6.0mmの範囲であることが好ましく、0.05~5.0mmであることがより好ましく、0.1~4.0mmの範囲であることがさらに好ましい。
本発明の積層体におけるメタクリル系樹脂組成物(I)からなる層の厚さは0.01~0.6mmの範囲であることが好ましく、0.015~0.5mmの範囲であることがより好ましく、0.02~0.4mmの範囲であることがさらに好ましい。かかる厚さが0.01mm未満であると耐擦傷性及び耐候性が不足する場合がある。また0.4mmを超えると耐衝撃性が不足する場合がある。
本発明の積層体における樹脂組成物(T)からなる層の厚さは0.02~5.4mmの範囲であることが好ましく、0.035~4.5mmの範囲であることがより好ましく、0.08~3.6mmの範囲であることがさらに好ましい。かかる厚さが0.02mm未満であると耐衝撃性が不足する場合がある。また5.4mmを超えると生産性が低下する場合がある。
本発明の積層体におけるメタクリル系樹脂組成物(I)からなる層の厚さは、積層体の厚さに対して、2~15%の範囲であることが好ましく、3~12%の範囲であることがより好ましく、4~10%の範囲であることがさらに好ましい。かかる厚さの比率が2%未満であると擦傷性及び耐候性が不足する場合がある。また15%超であると耐衝撃性が不足する場合がある。
本発明の積層体における樹脂組成物(T)からなる層の厚さは、積層体の厚さに対して、85~98%の範囲であることが好ましく、88~97%の範囲であることがより好ましく、90~96%の範囲であることがさらに好ましい。かかる厚さの比率が85%未満であると耐衝撃性が不足する場合がある。また15%以上であると耐候性が不足する場合がある。
本発明の積層体がメタクリル系樹脂組成物(I)からなる層および樹脂組成物(T)からなる層のみを有する場合、樹脂組成物(I)からなる層を(1)、樹脂組成物(T)からなる層を(2)と表記すると、本発明の積層体の積層順序としては、(1)-(2);(1)-(2)-(1);(2)-(1)-(2);(1)-(2)-(1)-(2)-(1);などが挙げられ、耐擦傷性を高める観点から、(1)-(2);(1)-(2)-(1);(1)-(2)-(1)-(2)-(1);など、少なくとも一方の表面が樹脂組成物(I)からなる層となるように積層されていることが好ましい。
また、本発明の積層体が他の樹脂層を有する場合には、かかる他の樹脂層を(3)と表記した場合、本発明の積層体の積層順序としては、(1)-(2)-(3);(3)-(1)-(2);(3)-(1)-(2)-(3);(3)-(1)-(2)-(1)-(3);(1)-(2)-(3)-(2)-(1);などが挙げられる。
例えば(3)が、耐擦傷性層である場合、かかる本発明の積層体の積層順序は、耐擦傷性層を(3’)と表記すると、(3’)-(1)-(2);(3’)-(1)-(2)-(3’)、(3’)-(1)-(2)-(1)-(3’)など、少なくとも一方の表面が耐擦傷性層となるように積層されていることが好ましい。
また、本発明の積層体が(3)に加えて、さらに(3)とは異なる他の樹脂層を有する場合には、かかる(3)とは異なる他の樹脂層を(4)と表記した場合、本発明の積層体の積層順序としては、(1)-(2)-(3)-(4);(4)-(3)-(1)-(2);(4)-(3)-(1)-(2)-(3);(4)-(1)-(2)-(3);(4)-(3)-(1)-(2)-(3)-(4);(4)-(3)-(1)-(2)-(1)-(3)-(4);などが挙げられる。
例えば(3)が耐擦傷性層であって、(4)が反射防止層である場合、反射防止層を(4’)と表記すると、(4’)-(3’)-(1)-(2);(4’)-(3’)-(1)-(2)-(3’);(4’)-(3’)-(1)-(2)-(3’)-(4’);(4’)-(3’)-(1)-(2)-(1)-(3’)-(4’);などの順に積層されていることが好ましい。
高温高湿下における反りの発生を抑制する観点から、本発明の積層体は厚さ方向に対称となるような積層順序とすることが好ましく、さらに各層の厚さも対称となっていることがより好ましい。
本発明の積層体の全光線透過率は80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率が80%以上であることにより、本発明で得られる積層体は外観品位に優れる。全光線透過率はJIS K7105に準じた方法で測定することができる。
本発明の積層体の製造方法に特に制限はないが、メタクリル系樹脂組成物(I)からなる層と樹脂組成物(T)からなる層との積層は、通常、多層成形によって行うことが好ましい。多層成形としては、多層押出成形、多層ブロー成形、多層プレス成形、多色射出成形、インサート射出成形等の貼合成形法などが挙げられ、生産性の観点から多層押出成形が好ましい。
他の樹脂層をさらに積層する方法としては、メタクリル系樹脂組成物(I)からなる層およびは樹脂組成物(T)からなる層とともに前記した方法で多層成形する方法、あらかじめ作製したメタクリル系樹脂組成物(I)からなる層または樹脂組成物(T)からなる層の表面に流動性の他の樹脂を塗布して乾燥または硬化する方法、あらかじめ作製したメタクリル系樹脂組成物(I)からなる層または樹脂組成物(T)の表面に粘着層を介して貼り合わせる方法等が挙げられる。
多層押出成形の方法は特に限定されず、熱可塑性樹脂の多層積層体の製造に用いられる公知の多層押出成形法を好ましく採用でき、より好適にはフラットなTダイと表面が鏡面仕上げされたポリシングロールを備えた装置によって成形される。
この場合のTダイの方式としては、加熱溶融状態のメタクリル系樹脂組成物(I)および樹脂組成物(T)をTダイ流入前に積層するフィードブロック方式、樹脂組成物(I)および樹脂組成物(T)をTダイ内部で積層されるマルチマニホールド方式などを採用できる。積層体を構成する各層間の界面の平滑性を高める観点から、マルチマニホールド方式が好ましい。
また、この場合のポリシングロールとしては、金属ロールや外周部に金属製薄膜を備えた弾性ロール(以下、金属弾性ロールという場合がある。)などが挙げられる。金属ロールとしては、高剛性であれば特に限定されず、例えば、ドリルドロール、スパイラルロール等が挙げられる。金属ロールの表面状態は、特に限定されず、例えば、鏡面であってもよく、模様や凹凸等があってもよい。 金属弾性ロールは、例えば、略円柱状の回転自在に設けられた軸ロールと、この軸ロールの外周面を覆うように配置され、フィルム状物に接触する円筒形の金属製薄膜と、これら軸ロールおよび金属製薄膜の間に封入された流体とからなり、流体により金属弾性ロールは弾性を示す。軸ロールは、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼等からなる。金属製薄膜は、例えば、ステンレス鋼などからなり、その厚みは2~5mm程度であるのが好ましい。金属製薄膜は、屈曲性や可撓性等を有しているのが好ましく、溶接継ぎ部のないシームレス構造であるのが好ましい。このような金属製薄膜を備えた金属弾性ロールは、耐久性に優れると共に、金属製薄膜を鏡面化すれば通常の鏡面ロールと同様の取り扱いができ、金属製薄膜に模様や凹凸を付与すればその形状を転写できるロールになるので、使い勝手がよい。
メタクリル系樹脂組成物(I)および樹脂組成物(T)は、多層成形前および/又は多層成形時に、フィルターにより溶融濾過することが好ましい。溶融濾過した各樹脂組成物を用いて多層成形することにより、異物やゲルに起因する欠点の少ない積層体が得られる。使用されるフィルターの濾材に特に限定はなく、使用温度、粘度、濾過精度により適宜選択され、例えば耐熱性および耐久性の観点から金属繊維不織布焼結フィルムを複数枚積層して用いることが好ましい。
前記フィルターの濾過精度に特に制限はないが、30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
以下、他の樹脂組成物からなる層の1例として、耐擦傷性層について詳細に説明する。
耐擦傷性層は、本明細書においては、鉛筆引掻き試験による硬度を上昇させるための層であり、JIS-K5600-5-4で規定される鉛筆引掻き試験で「4H」以上の硬度を示す層であることが好ましい。耐擦傷性層はメタクリル系樹脂組成物(I)からなる層の表面に設けることが好ましい。
耐擦傷性層の厚さは2~10μmであることが好ましく、3~8μmであることがより好ましく、4~7μmであることがさらに好ましい。厚さが2μm以上であることで耐擦傷性を保持できる傾向があり、10μm以下であることで積層体の耐衝撃性が優れたものとなる傾向がある。
耐擦傷性層は、通常、モノマー、オリゴマー、樹脂等からなる流動性の硬化性組成物を他の層(例えばメタクリル系樹脂組成物(I)からなる層や樹脂組成物(T)からなる層)の表面に塗布して、硬化させることで形成できる。これらの硬化性組成物は、例えば、熱により硬化する熱硬化性組成物や電子線、放射線、紫外線などのエネルギー線で硬化するエネルギー線硬化性組成物である。
熱硬化性組成物に含まれる硬化性化合物としては、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を含有する組成物が挙げられる。
これら熱硬化性組成物は、必要に応じて、例えば架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤等を含有してもよい。硬化剤としては、通常、イソシアネート、有機スルホン酸等がポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂に用いられ、アミンがエポキシ樹脂に、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、アゾビスイソブチルエステル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル系樹脂に使用される。
エネルギー線硬化性組成物に含まれる硬化性化合物としては、例えば分子中にアクリロイル基、メタアクリロイル基等の重合性不飽和結合、チオール基、またはエポキシ基を有するオリゴマーおよび/またはモノマーが挙げられ、耐擦傷性を高める観点から、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を複数有するオリゴマーおよび/またはモノマーが好ましい。
上記した硬化性組成物の塗布方法としては、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、メニスカスコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法などが挙げられる。
本発明の積層体の用途としては、例えば看板部品やマーキングフィルム;ディスプレイ部品;照明部品;インテリア部品;建築用部品;自動車内外装部材等の輸送機関係部品;電子機器部品;医療機器部品;機器関係部品;液晶保護板、導光板、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、拡散板等の光学関係部品;交通関係部品;その他各種部材などに用いる表面材料等を挙げることができる。
次に実施例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は実施例によって制限されるものではない。
物性等の測定は以下の方法によって実施した。
(重量平均分子量)
製造例で得られた樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPC法(ゲルパーミエイションクロマトグラフィ法)により求めた。測定対象樹脂4mgをテトラヒドロフラン5mlに溶解させて試料溶液を調整した。カラムオーブンの温度を40℃に設定し、溶離液流量0.35ml/分で、試料溶液20μlを装置内に注入して、クロマトグラムを測定した。分子量が400~5,000,000の範囲内にある標準ポリスチレン10点をGPC測定し、保持時間と分子量との関係を示す検量線を作成した。この検量線に基づいて測定対象樹脂のMwを決定した。GPCにより測定されたクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量に相当する値を共重合体の分子量とした。
装置:東ソー社製GPC装置HLC-8320
分離カラム:東ソー社製のTSKguardcolumSuperHZ-HとTSKgelHZM-MとTSKgelSuperHZ4000とを直列に連結
溶離剤:テトラヒドロフラン
溶離剤流量:0.35mL/分
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率(RI)
(前駆体ポリマーの各単位組成)
13C-NMRによりα-メチルスチレン単位のフェニル基、メタクリル酸メチル単位のメトキシ基、マレイン酸無水物単位のカルボニル基のカーボン比を求め、これによって各単位組成を算出した。スチレン単位を含む共重合体はα位の炭素と結合したフェニル基を加えたカーボン比を求め、各単位組成を算出した。
(ガラス転移温度Tg)
製造例で得られた樹脂、実施例、比較例で得られた樹脂組成物を、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量測定装置(島津製作所製、DSC-50(品番))を用いて、250℃まで一度昇温し、次いで室温まで冷却し、その後、室温から200℃までを10℃/分で昇温させる条件にてDSC曲線を測定した。2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度とした。
(イミド化率)
H-NMR(Bruker社製;商品名ULTRA SHIELD 400 PLUS)を用いて、共重合体のH-NMR測定を行い、3.5~3.8ppm付近のメタクリル酸メチルのO-CH基に由来するピークの面積Aと、3.0~3.3ppm付近のグルタルイミド、マレイミドのN-CH基に由来するピークの面積Bより、次式で求めた値をイミド化率(r)とした。
イミド化率(r)(%)={B/(A+B)}×100
(メタクリル系共重合体中のグルタルイミド環化率、マレイミド環化率)
赤外分光光度計を用いて、1685cm-1付近のマレイミドのカルボニルに由来するピークの吸収強度(Im)と、1668cm-1付近のグルタルイミドのカルボニルに由来するピークの吸収強度(Ig)、前記イミド環化率(r)より、次式で求めた値をグルタルイミド環化率(r1)、マレイミド環化率(r2)とした。
グルタルイミド環化率(r1)(%)={Ig/(Ig+Im)}×r
マレイミド環化率(r2)(%)={Im/(Ig+Im)}×r
(メタクリル系共重合体中のマレイン酸無水物量)
赤外分光光度計を用いて、1780cm-1付近のマレイン酸無水物のカルボニルに由来するピークの吸収強度と、1685cm-1付近のマレイミドのカルボニルに由来するピークの吸収強度からマレイン酸無水物のイミド化率(R)を求めた。13C-NMRで求めた前駆体ポリマーのマレイン酸無水物量(M)とイミド化率(R)より、次式で求めた値を樹脂中のマレイン酸無水物量(m)とした。
マレイン酸無水物量(m)=M×(100-Rm)/100
(1%熱重量減少温度)
製造例で得られた樹脂、実施例、比較例で得られた樹脂組成物を熱重量測定装置(島津製作所製、TGA-50)を用いて、窒素雰囲気下、10℃/minで昇温し、1%重量減少した時点での温度を、1%熱重量減少温度とした。
(23℃における飽和吸水率)
製造例で得られた樹脂、実施例、比較例で得られた樹脂組成物を、短辺110mm、長辺150mmの長方形状の金型枠に入れて、230℃、50kg/cmにて、5分間、プレスし、厚さ2mm、短辺110mm、長辺150mmのシートを作製した。得られたシートを一辺50mmの正方形に切り出して作製した試験片を、減圧下(1kPa)で80℃、24時間乾燥した後、温度23℃、相対湿度50%のデシケーター中で放冷した後、すみやかに質量を測定し初期質量とした。次いでかかる試験片を23℃の蒸留水中に浸漬して、経時的に質量を測定し、質量変化が見られなくなった時点における質量(吸水質量)を用いて下記式によって飽和吸水率を算出した。
飽和吸水率(23℃)(%)=[(吸水質量-初期質量)/初期質量]×100
(80℃における飽和吸水率)
浸漬温度を80℃にした以外は、23℃における飽和吸水率測定と同様の方法で測定を実施した。下記式によって飽和吸水率を算出した。
飽和吸水率(80℃)(%)=[(吸水質量-初期質量)/初期質量]×100
(メルトフローレート;MFR)
製造例、実施例および比較例で得られた樹脂をJIS K7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重、10分間の条件で測定した。
(外観)
実施例および比較例の積層体の外観を目視で観察した。流動不良による流れ模様、発泡やゲルブツの有り無しで外観の良否を判断した。
◎:流れ模様がなく、発泡、ゲルブツ発生もなし
×:流れ模様、発泡、ゲルブツ発生あり
(寸法安定性)
実施例および比較例の積層体を押出流れ方向に対して平行な方向が長辺、押出流れ方向に対して垂直な方向が短辺となるように長方形に切り出して、長辺200mm、短辺120mmの試験片を作製した。定盤上に、試験片の両末端部が定盤に接するように(すなわち試験片が上向きの凸状となるように)置き、隙間ゲージを用いて試験片と定盤との隙間の最大値を測定し、初期の反り量とした。
次いで、各試験片を温度100℃に設定した熱風乾燥機内に1時間放置した後、温度85℃、相対湿度85%に設定した環境試験機の中に短辺側をクリップで止めた試験片を吊り下げ、その状態で72時間放置した後、23℃、相対湿度50%環境下で120時間、放冷・調湿した。その結果、すべての試験片は、試験片の長辺に沿って、樹脂組成物(I)からなる層を外側、樹脂組成物(T)からなる層を内側にして弓状の反りを生じた。定盤上に、かかる弓状の反りを生じた試験片の両末端部が定盤に接するように(すなわち試験片が上向きの凸状となるように)置き、隙間ゲージを用いて試験片と定盤との隙間の最大値を測定し、高温高湿下での反り量とした。下記の式から高温高湿下での反り変化量を算出し、その変化量から寸法安定性の良否を判断した。
高温高湿下での反り変化量 = 高温高湿下での反り量 ― 初期の反り量
◎:高温高湿下での反り変化量が2mm以下
○:高温高湿下での反り変化量が2mmより大きいが3mm未満
×:高温高湿下での反り変化量が3mmより大きい
(表面硬度)
実施例および比較例の積層体を押出流れ方向に対して平行な方向が長辺、押出流れ方向に対して垂直な方向が短辺となるように長方形に切り出して、長辺200mm、短辺120mmの試験片を作製した。テーブル移動式鉛筆引掻き試験機(型式P)(東洋精機社製)を用い、試験片の樹脂組成物(I)面側の表面に対して角度45度、荷重500gで鉛筆の芯を押し付けながら引掻き傷の傷跡の有無を確認した。鉛筆の芯の硬度は順に増していき、傷跡を生じた時点よりも1段階軟らかい芯の硬度を鉛筆引掻き硬度とした。
◎:積層体の樹脂組成物(I)面の鉛筆硬度が2H以上
×:積層体の樹脂組成物(I)面の鉛筆硬度がH以下
<各種材料例>
本発明に係る前駆体ポリマー〔S〕、メタクリル樹脂〔B〕およびポリカーボネートについて、下記に示す材料を用いた。
前駆体ポリマー〔S〕:Polyscope社製XIRAN
(Mw=89000、スチレン/無水マレイン酸=77%/23%)、物性は表1に示す。
メタクリル樹脂〔B〕:株式会社クラレ製パラペット
(Mw=64,000、rr比率=49%、MMA共重合比率=94.0%、MA共重合比率=6.0%、Tg=112℃、1%熱重量減少温度=341℃、飽和吸水率(23℃)=2.0質量%、飽和吸水率(80℃)=2.0質量%、MFR=10.5g/10min)
ポリカーボネート:住化ポリカーボネート社製SDポリカ
(Mw=50,000、Tg=150℃、飽和吸水率(23℃)=0.3質量%、飽和吸水率(80℃)=0.5質量%)
(前駆体ポリマー)
本製造例に関わる前駆体ポリマーA-a~A-eは、以下の方法で製造した。
前駆体ポリマーA-a~A-e
撹拌機付オートクレーブに、精製された各種モノマー、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN)およびn-オクチルメルカプタン(n-OM)を表1に記載の割合で仕込み、均一に溶解させて重合原料を得た。
重合原料を、オートクレーブから1.5kg/hrで、重合温度120℃に制御された槽型反応器に連続的に供給し、平均滞留時間2~3.5時間で塊状重合法によって重合反応させ、槽型反応器からアクリル系共重合体を含む液を連続的に排出した。重合転化率は表1に記載の値になった。次いで、反応器から排出された液を230℃に加温し、240℃に制御された二軸押出機に供給した。該二軸押出機において未反応単量体を主成分とする揮発分を分離除去して、アクリル系共重合体をストランドにして押出した。該ストランドをペレタイザーでカットし、前駆体ポリマーを得た。得られた前駆体ポリマーの重量平均分子量Mw、各単位組成の割合、ガラス転移温度Tg、1%熱重量減少温度、飽和吸水率、MFRを測定した。その結果を表1に示す。表1において、以下の略号を用いた。
MMA:メタクリル酸メチル
αMSt:αメチルスチレン
Mah:無水マレイン酸
St:スチレン
(メタクリル系共重合体〔A〕)
製造例1
輸送部、溶融混練部、脱揮部および排出部からなり且つスクリュー回転数100rpmおよび温度230℃に設定された二軸押出機(日本製鋼所社製;商品名TEX30α‐77AW-3V)の輸送部に前駆体ポリマー〔A-a〕を10kg/hrで供給し、ニーディングブロックの設置された溶融混練部においてモノメチルアミンを1.2kg/hrで二軸押出機の添加剤供給口から注入し、前駆体ポリマー〔A-a〕とモノメチルアミンとを反応させた。なお、溶融混練部は、殆どがニーディングディスクから構成され、その両端にシールエレメントが装着されている。37Torr(約5kPa)に設定された脱揮部において、副生成物および過剰のモノメチルアミンを、溶融混練部を通過した溶融樹脂から揮発させ、複数のベントを通して排出した。
二軸押出機の排出部の末端に設けられたダイスからストランドとして押し出された溶融樹脂を、水槽で冷却し、その後、ペレタイザでカットしてペレット状のメタクリル系共重合体〔A-1〕を得た。メタクリル系共重合体〔A-1〕は、イミド環化率(構造単位(r)の割合)が14wt%であり、その比率はグルタルイミド環化率(r1)が13wt%、マレイミド環化率(r2)が1wt%であった。メタクリル系共重合体〔A-1〕の物性を表1に示す。
製造例2
モノメチルアミンの添加量を2.5kg/hrとした以外は、製造例1と同じ方法で、メタクリル系共重合体〔A-2〕を得た。メタクリル系共重合体〔A-2〕のポリマー組成および物性を表1に示す。
製造例3
前駆体ポリマー〔A-a〕の替わりに、前駆体ポリマー〔A-b〕を用いた以外は、製造例1と同じ方法で、メタクリル系共重合体〔A-3〕を得た。メタクリル系共重合体〔A-3〕のポリマー組成および物性を表1に示す。
製造例4
前駆体ポリマー〔A-a〕の替わりに、前駆体ポリマー〔A-c〕を用い、モノメチルアミンの添加量を1.8kg/hrとした以外は、製造例1と同じ方法で、メタクリル系共重合体〔A-4〕を得た。メタクリル系共重合体〔A-4〕のポリマー組成および物性を表1に示す。
製造例5
前駆体ポリマー〔A-a〕の替わりに、前駆体ポリマー〔A-d〕を用い、モノメチルアミンの添加量を0.4kg/hrとした以外は、製造例1と同じ方法で、メタクリル系共重合体〔A-5〕を得た。メタクリル系共重合体〔A-5〕のポリマー組成および物性を表1に示す。
製造例6
前駆体ポリマー〔A-a〕の替わりに、前駆体ポリマー〔A-e〕を用い、モノメチルアミンの添加量を0.9kg/hrとした以外は、製造例1と同じ方法で、メタクリル系共重合体〔A-6〕を得た。メタクリル系共重合体〔A-6〕のポリマー組成および物性を表1に示す。
製造例7
前駆体ポリマー〔A-a〕の替わりに、前駆体ポリマー〔S〕を用いた以外は、製造例1と同じ方法で、スチレン系共重合体〔S-1〕を得た。スチレン系共重合体〔S-1〕のポリマー組成および物性を表1に示す。
製造例8
特開平3-205407号公報の[実施例]の項に記載の製造方法に従って、MMA/αMSt/MAA共重合体のグルタル酸無水物を作製し、MMA/αMSt/MAA/グルタル酸無水物=59/13/7/21質量%の組成を有する重量平均分子量=70000のメタクリル系共重合体〔A-7〕を得た。メタクリル系共重合体〔A-7〕の物性は、Tg=149℃、1%熱重量減少温度=300℃、飽和吸水率(23℃)=4.2質量%、飽和吸水率(80℃)=9.7質量%、MFR=0.4g/10min)であった。
Figure 2022116643000010
実施例1
80質量部のメタクリル系共重合体〔A-1〕と20質量部のメタクリル樹脂〔B〕とを軸径20mmの二軸押出機で250℃にて溶融混練し、押出して、メタクリル系樹脂組成物〔I-1〕を得た。評価結果を表2に示す。
実施例2~6
表2に記載した処方以外は実施例1と同じ方法で、メタクリル系樹脂組成物を得た。評価結果を表2に示す。
比較例1~5
表2に記載した処方以外は実施例1と同じ方法で、メタクリル系樹脂組成物、樹脂組成物を得た。評価結果を表2に示す。
Figure 2022116643000011
実施例7
軸径50mmの単軸押出機にポリカーボネートのペレットを連続的に投入し、シリンダ温度280℃、吐出量30kg/時の条件にて溶融状態で押出した。一方、軸径30mmの単軸押出機にメタクリル系樹脂組成物〔I-1〕のペレットを連続的に投入し、シリンダ温度220℃、吐出量2kg/時の条件にて溶融状態で押出した。かかる溶融状態のポリカーボネートとメタクリル系樹脂組成物〔I-1〕をジャンクションブロックに導入し、250℃に設定したマルチマニホールドダイで積層し、シート状に押出成形し、厚さ60μmのメタクリル系樹脂組成物〔I-1〕からなる層(第一層)と厚さ940μmのポリカーボネートからなる層(第二層)との2層から形成される厚さ1000μmの積層体を製造した。かかる積層体の評価結果を表3に示す。
実施例8~12
表3に記載した第一層組成以外は実施例1と同じ方法で、積層体を得た。評価結果を表3に示す。
比較例6~10
表3に記載した第一層組成以外は実施例1と同じ方法で、積層体を得た。評価結果を表3に示す。
Figure 2022116643000012
表2が示すように、本発明のメタクリル系樹脂組成物(実施例1~6)は、耐熱性、耐温水性に優れるメタクリル系共重合体〔A-1〕~〔A-4〕を用いることで耐湿熱性に優れる。また、耐熱分解性に優れ、メタクリル樹脂〔B〕を添加することで流動性が優れるものとなる。
本発明の積層体(実施例7~12)は、耐湿熱性に優れるメタクリル系樹脂組成物〔I-1〕~〔I-6〕を用いることで、ポリカーボネートを含む樹脂組成物〔T〕とのガラス転移温度差および80℃における飽和吸水率差が小さくなり、寸法安定性に優れる。さらに、該樹脂組成物は耐熱分解性に優れ、鉛筆硬度も高いことから、本発明の積層体は外観品位および表面硬度が優れるものとなる。
これに対して、耐温水性、耐熱分解性が低いメタクリル共重合体〔A-5〕~〔A-7〕、スチレン系共重合体〔S-1〕を用いたメタクリル系樹脂組成物(比較例1~3)、樹脂組成物(比較例4)、メタクリル樹脂〔B〕の比率が高いメタクリル系樹脂組成物(比較例5)は、耐湿熱性、耐熱分解性が悪く、これらのメタクリル系樹脂組成物〔I-7〕~〔I-10〕を用いた積層体(比較例6~8、10)は、外観品位、寸法安定性が悪化する。また、スチレン系共重合体を含む樹脂組成物(I-1)を用いた積層体(比較例9)は、表面硬度が低い。
本発明の積層体は、優れた外観品位を有し、寸法安定性、表面硬度が良好であるという特徴を有し、表示装置のカバーや筐体、車輌の内外装の窓材やカバーなどに用いる上で好適である。

Claims (14)

  1. メタクリル酸メチル単位15~83質量%と、α-メチルスチレン単位7~35質量%と、マレイン酸無水物単位(m)0~20質量%と、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、N‐置換若しくは無置換グルタルイミド単位およびN-置換若しくは無置換マレイミド単位からなる群より選ばれる環構造を主鎖に有する少なくとも2種の構造単位(r)10~65質量%と、メタクリル酸メチルに共重合可能なその他のビニル系単量体単位(c)0~20質量%を有してなるメタクリル系共重合体(A)51~99質量%並びにメタクリル樹脂(B)1~49質量%を含有するメタクリル系樹脂組成物。
  2. 構造単位(r)が式(I)で表されるN-置換若しくは無置換グルタルイミド単位を含む、請求項1に記載のメタクリル系樹脂組成物。
    Figure 2022116643000013
    (式(I)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基であり、Rは、水素原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基または芳香環を含む炭素数6~15の有機基である。)
  3. 構造単位(r)が式(II)で表されるN-置換若しくは無置換マレイミド単位を含む、請求項1、2のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
    Figure 2022116643000014
    (式(II)中、Rは、水素原子、炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基または芳香環を含む炭素数6~15の有機基である。)
  4. メタクリル系共重合体(A)がマレイン酸無水物単位(m)0.1~3質量%を有してなる、請求項1~3のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
  5. メタクリル酸メチル単位に共重合可能なその他のビニル系単量体単位(c)が、アクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル単量体、及びシアン化ビニル単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種により形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
  6. 前記メタクリル酸メチル単位に共重合可能なその他のビニル系単量体単位(c)が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、スチレン、及びアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種により形成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
  7. マレイン酸無水物単位(m)と、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、N-置換若しくは無置換グルタルイミド単位およびN-置換若しくは無置換マレイミド単位からなる群より選ばれる環構造を主鎖に有する少なくとも2つの構造単位(r)との質量比率、{100×(m)/(r)}が0~20%の範囲である、請求項1~6のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
  8. メタクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が140℃以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
  9. 23℃における飽和吸水率と80℃における飽和吸水率との差の絶対値が1.0質量%以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載のメタクリル系樹脂組成物(I)からなる層;と、ポリカーボネートを含有する樹脂組成物(T)からなる層;とを備える積層体。
  11. メタクリル系樹脂組成物(I)と樹脂組成物(T)とのガラス転移温度の差の絶対値が15℃以下かつ、メタクリル系樹脂組成物(I)と樹脂組成物(T)との80℃における飽和吸水率の差の絶対値が4.5%以下である請求項10に記載の積層体。
  12. メタクリル系樹脂組成物(I)からなる層の厚みが積層体全厚みの2~15%である請求項10、11のいずれか1項に記載の積層体。
  13. 少なくとも一方の表面に、メタクリル系樹脂組成物(I)からなる層を備える請求項10~12のいずれか1項に記載の積層体。
  14. 少なくとも一方の表面に、さらに耐擦傷性層を備える請求項10~13のいずれか1項に記載の積層体。
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