JP2022114318A - 蓄電デバイスの電極の製造方法、蓄電デバイスの電極用の短繊維の製造方法、容器に入った蓄電デバイスの電極用の短繊維、および蓄電デバイスの電極 - Google Patents

蓄電デバイスの電極の製造方法、蓄電デバイスの電極用の短繊維の製造方法、容器に入った蓄電デバイスの電極用の短繊維、および蓄電デバイスの電極 Download PDF

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Abstract

【課題】内部抵抗を低減し、膨張収縮による集電体からの活物質の剥離を防止できる電極の製造方法を提供する。【解決手段】アルミニウム又は銅の金属繊維を得る繊維作成工程と、前記金属繊維又は所定の切断器具によって切断された前記金属繊維を溶媒中に入れると共に、前記溶媒をかき混ぜることによって、前記金属繊維を平均長さが0.8mm以下となるように短くするかき混ぜ工程と、前記かき混ぜ工程によって作られたアルミニウム製又は銅製の短繊維Aと、充電時に電解質イオンが吸着する吸着物質粉又は充放電時に化学反応する活物質粉20と、バインダーBとを含む液状又はゲル状のスラリーを所定形状に成形する成形工程と、前記所定形状に成形された前記スラリーを乾燥させることによって前記短繊維Aを含む電極を形成する乾燥工程とを有する、蓄電デバイスの電極の製造方法である。【選択図】図1

Description

本発明は、蓄電デバイスの電極の製造方法、蓄電デバイスの電極用の短繊維の製造方法、容器に入った蓄電デバイスの電極用の短繊維、および蓄電デバイスの電極に関する。
エネルギー削減や地球温暖化防止を目的に様々な分野でキャパシタや二次電池が使用されており、特に自動車産業においては、電気エネルギーを採用したことにより、これらの性能をさらに向上させるための開発が加速している。
電気二重層キャパシタは、従来、低電圧が印加される電子回路のメモリのバックアップ用として使用されており、二次電池と比較して高い入出力の信頼性を有する。
このため、近年では太陽光や風力などの自然エネルギーによる発電や、建設機械、瞬低用電源、電車の回生用電源などに利用されている。自動車への用途としても検討されてきたが、特性、コストが要求に合わず、近年までこの分野での使用実現に至らなかった。しかし、現在では、電子制御ブレーキシステム用に電気二重層キャパシタが使用され、自動車の電装品のバックアップ電源やアイドリングストップシステムの始動用エネルギー供給、ブレーキ制御、動力アシストなどへの用途が検討されている。
電気二重層キャパシタの構造は、正負の電極部と、電解液と、対向する正負の電極部の短絡を防止するセパレータとから構成される。電極部は、分極性電極(現在は主に活性炭)、活性炭を保持するためのバインダー、導電助剤(主にカーボンの微粒子)を混練したものを、集電体であるアルミニウム箔(厚さ約20μm)上に何層も塗布する事で形成されている。このような電気二重層キャパシタは例えば特許文献1に開示されている。
電気二重層キャパシタの充電は、電解質イオンが溶液内を移動し活性炭の微細孔表面に吸脱着する事で行われる。電気二重層は活性炭粉と電解液が接する界面に形成される。
因みに、通常の活性炭の粒径は、例として約4~8μm、比表面積は、例として1600~2500m/gである。電解液は陽イオン、陰イオン、および溶媒を有し、陽イオンとしてテトラエチルアンモニウム塩、陰イオンとして四フッ化ホウ酸イオンなどが用いられ、溶媒としてプロピレンカーボネートやエチレンカーボネートなどが使用されている。
一方、リチウムイオン二次電池(リチウムイオン電池)は、主に、正極、負極、セパレータから構成されている。一般的に正極は集電体である厚さ20μm程度のアルミニウム箔に活物質粉、通常はコバルト酸リチウムと、添加物である導電助剤と、バインダーとを練り合わせたものを100μm程度の厚さに塗布したものであり、負極は集電体である銅箔に炭素材料を塗布したものであり、これらを例えばポリエチレンなどのセパレータで分離し、電解液に浸すことにより、リチウムイオン電池が構成されている。このようなリチウムイオン電池は例えば特許文献2に開示されている。
充放電は、リチウムイオンが正極と負極との間を移動することで行われ、充電時はリチウムイオンが正極から負極へ移動し、正極のリチウムイオンがなくなるか負極にリチウムイオンが収蔵できなくなったら充電が完了する。放電時はこの逆となる。
一方、LiB(リチウムイオン電池)は近年最も使用されているが、電解液溶媒が含有する電解質塩(通常LiPF)が可燃性の液体で有るため、発火や液漏れなどの危険性がある。更に、この有機系電解液が、正極との界面で陰イオンや様々な異分子の分解を引き起こし、LiBの寿命を短縮するとも言われている。そこで、電解液を固体電解質に置き換えようとする試みが行われており、このような電池は、正極層、負極層、および電解質層が全て固体で構成されるので全固体型電池と呼ばれている。全固体型電池は、本来LiBの構成物質に限られないが、一般にLiBの電解液を固体化する研究が多いため、一般に全固体LiBのことを指すことが多い。
全固体型電池のメリットは、電解質層が難燃性であるため安全であること、電解質層中をリチウムイオンのみが移動するため陰イオンや溶媒分子との副反応が発生しにくく、より長寿命であること、電解質層が液体でないため使用温度範囲が広いこと等が挙げられる。
また、LiBで高容量、高電圧の電池を得ようとする場合、一個のセルを複数個接続しなければならないが、固体電解質層を用いれば、正極層、固体電解質層、負極層の順に重ねるだけで良いため、エネルギー密度の高い電池の製作が可能であるというメリットも有する。
以上のようなデバイスの性能は、すべてイオンや電子のやり取りで行われる。従って、そのデバイスの持つ電気容量や充放電速度、寿命などは、如何にスムーズに電子のやり取りを行うか、若しくは継続して行えるかに依存する。
一方、リチウムイオン電池の電解液を固体化した全固体型電池の充放電は、Li脱挿入によってなされる。
例えば、特許文献3では、単電池間に導電性の弾性体を配して膨張収縮を抑制し、特許文献4では、電池の周りに緩衝層を設け、特許文献5では、空隙率を制御するなど様々な工夫がなされている。
また、金属繊維から成る集電体を用いる電極も知られている。例えば、特許文献6および7が挙げられる。
特開2005-086113号公報 特開2007-123156号公報 特開2008-311173号公報 特開2015-111532号公報 特許第5910737号公報 特許第6209706号公報 特開2018‐106846号公報
(電気二重層キャパシタの課題)
電気二重層キャパシタは、リチウムイオン電池を主とする二次電池に対し、化学反応を伴わず、蓄電時間が短く、電流の放出時間が速い点で異なる。また、エネルギー密度については、リチウム電池が数百Wh/Lに対して、電気二重層キャパシタは数十Wh/Lであり、一桁低い。電気二重層キャパシタが、蓄電用ではなく、電装品のバックアップ電源やアイドリングストップシステムの始動用エネルギー、ブレーキ制御、動力アシストなどで検討されているのは、前記の相違による。
近年、電気二重層キャパシタは、電気自動車、エネルギー発電等の大容量パワーデバイス用として開発が進められているが、高効率に大容量のエネルギーをキャパシタに出し入れするためには、静電容量を増加させ、電極部の内部抵抗を減らさなければならないという課題が存在する。
(リチウムイオン電池の課題)
一方、リチウムイオン電池を主とする二次電池は、比較的エネルギー密度が高く、長時間使用できるので、携帯機器をはじめ様々な分野で使用されている。近年、自動車、重機、エネルギー分野等に利用されるようになり、容量を増やす為に大型化が要求されている。しかし、大型化には、容量の課題を始めとして、充電速度、寿命、信頼性、製造の難しさ等の多くの課題が存在する。例えば、携帯電話で使用される電池の容量は約15Whであるが、ハイブリッド車で使用される電池の容量は数十kWh~百kWhである。両者の差は数千倍であり、それに伴う上記の課題が存在している。
リチウムイオン電池の反応は可逆的な化学反応であり、電極が充放電する際に、活物質が膨張・収縮する。そのため、活物質が集電体から剥離し、充放電特性が劣化する。即ち、常に100%同じ充放電をすることはなく、充放電の能力低下が起こる。ハイブリッド自動車や電気自動車では電池は何年も使用されるので、上記劣化を防ぐために、集電体と活物質の剥離を抑える必要がある。
また、リチウムイオン電池の最大の課題の一つとして内部抵抗がある。内部抵抗とは、リチウムイオンが電池内部の正極と負極で電解質の中を移動する際の抵抗、物質間での電子の授受の抵抗と言える。言い換えると物質間の密着性やその間での電子のやり取りと電解質を流れるリチウムイオンの流れやすさに起因している。
大型化、すなわち容量を大きくすることに関し、集電体に多くの活物質を塗布すると容量が増加するが、リチウムイオンの移動抵抗が大きくなる。このため、活物質層の厚みには限界がある。
活物質層が厚くなるとその内部抵抗により充放電速度が遅くなる。塗布厚を薄くすると内部抵抗は低減され、充放電速度は速くなるが、容量が減少する。その為、活物質を塗布した集電体(電極箔)を何重にも重ねること、活物質を塗布した集電体の面積を広げること等によって、容量の増加が行われている。
充電や放電の速さは、リチウムイオンの発生量にも関係する。一度に多くのイオンが作り出され一度に移動できれば、充電速度や放電速度は速くなる。二次電池の化学反応は電解質と活物質との界面で起こるので、電極と電解質との接触面積を増やすことができれば、充放電速度も改善される。
内部抵抗を減らすために、現在、添加物の改良、導電助剤や活物質の改良、また集電体の上に予めカーボンの微粒子を塗布するなどの工夫が実施されている。また、集電体の形状においても、前述のように出来るだけ薄膜にする改善や、箔に細かい穴等を形成して表面積を大きくする改善が行われている。電気二重層キャパシタにおいても同様に、活性炭や添加剤の改良、集電体と活物質層との接触面積を増やすなどの研究開発が行われている。
(全個体電池の課題)
一方、リチウムイオン電池の電解液を固体化した全固体型電池の充放電は、Li脱挿入によってなされる。この際、ホストである結晶格子が膨張収縮を繰り返す。それによる体積変化が大きいと、活物質、固体電解質、および導電助剤の粒子間の接触が断ち切れ、有効な活物質の量が減少する。全固体型電池の場合、電池容量の10分の1から10分の2程度の電流で充放電を繰り返しても、1モルに近い量のLiが脱挿入することになり、その体積膨張、収縮率は10%近くにも達する。そのため、その膨張収縮を抑える工夫が種々提案されている。
このように、蓄電デバイスにおいては、高容量化の課題を解決するために、内部抵抗を低減し、全固体電池においては膨張収縮による集電体からの活物質の剥離を防止できれば、大きな改善の可能性が生まれる。
そこで、本発明は、蓄電デバイスの製作に於いて、撹拌時に長さ数mm程度の繊維をさらに細かくする方法見出し、それを使用する事で蓄電デバイスの特性を向上できる事も見出した。更に、アトマイズ法による金属粉等と称され、溶湯金属を微細孔から噴霧し製造される粉体状の金属を使用する事でも、蓄電デバイスの向上が可能であることを見出した。
本発明の第1の態様の蓄電デバイスの電極の製造方法は、アルミニウム又は銅の金属繊維を得る繊維作成工程と、前記金属繊維又は所定の切断器具によって切断された前記金属繊維を溶媒中に入れると共に、前記溶媒をかき混ぜることによって、前記金属繊維を平均長さが0.8mm以下となるように短くするかき混ぜ工程と、前記かき混ぜ工程によって作られたアルミニウム製又は銅製の短繊維と、充電時に電解質イオンが吸着する吸着物質粉又は充放電時に化学反応する活物質粉と、バインダーとを含む液状又はゲル状のスラリーを所定形状に成形する成形工程と、前記所定形状に成形された前記スラリーを乾燥させることによって前記短繊維を含む電極を形成する乾燥工程と、を有する。
本発明の第2の態様の蓄電デバイスの電極用の短繊維の製造方法は、アルミニウム又は銅の金属繊維を得る繊維作成工程と、前記金属繊維又は所定の切断器具によって切断された前記金属繊維を溶媒中に入れると共に、前記溶媒をかき混ぜることによって、前記金属繊維を平均長さが0.8mm以下となるように短くするかき混ぜ工程と、前記かき混ぜ工程によって作られたアルミニウム製又は銅製の短繊維を前記溶媒又は他の溶媒中に入れた状態で出荷する出荷工程と、を有する。
本発明の第3の態様の容器に入った蓄電デバイスの電極用の短繊維は、均長さが0.8mm以下であるアルミニウム製又は銅製の短繊維を含有する溶媒と、前記溶媒に対し耐性を有し当該溶媒を収容する容器と、を備える。
本発明の第4の態様の蓄電デバイスの電極は、平均長さが0.8mm以下であるアルミニウム製又は銅製の短繊維と、充電時に電解質イオンが吸着する吸着物質粉又は充放電時に化学反応する活物質粉と、を含む蓄電デバイスの電極であって、前記短繊維の重量比が9.75重量%未満である。
本発明の第5の態様の蓄電デバイスの電極は、均粒径が0.1mm以下である金属粉と、充電時に電解質イオンが吸着する吸着物質粉又は充放電時に化学反応する活物質粉と、を含む蓄電デバイスの電極であって、前記金属粉の重量比が9.75重量%未満である。
本発明の第6の態様の蓄電デバイスの電極は、アルミニウム製又は銅製の繊維と平均粒径が0.1mm以下である金属粉との混合物と、充電時に電解質イオンが吸着する吸着物質粉又は充放電時に化学反応する活物質粉と、を含む蓄電デバイスの電極であって、
前記混合物の重量比が9.75重量%未満である。
本発明は、上記の短繊維、金属粉を使用して電池性能の向上を図ることに貢献する。
本発明の一実施形態に係る電極の断面イメージ図である。 本実施形態の他の電極の断面イメージ図である。 本実施形態の短繊維の電子顕微鏡写真である。 本実施形態の金属紛の電子顕微鏡写真である。 本実施形態のスラリーの製造方法を示す概略図である。 本実施形態の電極を用いた全固体型電池の概略断面図である。 実施例の電極を用いたリチウムイオン電池の特性を示すグラフである。 実施例の電極を用いたリチウムイオン電池のサイクル特性を示すグラフである。 本実施形態の電極を用いたリチウムイオン電池の特性を示すグラフである。 実施例の電極を用いたリチウムイオン電池の特性を示すグラフである。
本発明の一実施形態に係る電極および蓄電デバイスについて図面を参照して以下説明する。なお、蓄電デバイスとして主にリチウムイオン電池を用いて説明する。
図1および図2は、平均線径が50μm以下であるアルミニウム又は銅の短繊維Aが混入された電極(正極又は負極)を示している。なお、短繊維Aの代わりにアルミニウム製、銅製、又は、これらと同等以下の導電性を有する金属から成る金属粉が混入されていてもよい。
なお、図1および図2は本実施形態の構成をわかりやすく示すための図であり、短繊維A、活物質粉20、導電助剤30、カーボン繊維CF等の大きさ、太さ、長さ、配合比等は実際と異なる。
この電極は、図1および図2に示すように、平均線径が50μm以下であるアルミニウム又は銅の短繊維A若しくは平均粒径が0.1mm以下である金属粉と、短繊維A若しくは金属粉と共にバインダーBにより保持されて充放電時に化学反応する活物質粉20とを備え、必要に応じてバインダーBにより保持された導電助剤30を備えている。なお、短繊維Aの代わりに前記金属粉が用いられる場合は、図1および図2において、短繊維Aの代わりに金属粉が存在することになるが、金属粉の形状は短繊維Aの形状と異なるため、金属粉の存在態様は短繊維Aの存在態様と若干異なる場合もある。
[短繊維の成形]
コイル切削法により製作した金属長繊維(アルミニウム又は銅の長繊維、平均線径は50μm以下、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下である)の束を例えば0.1mm~0.3mm厚の一対の紙若しくはプラスチックフィルムによって挟み込み、前記長繊維の束を任意の長さに切断する。つまり、前記長繊維の束をプラスチック、薄い金属箔、紙等のその他の薄い部材等から成る押さえ部材を用いて所定の面に押さえつけた状態で、前記長繊維を切断刃等の切断器具を用いて切断する。所定の面は、本実施形態ではプラスチックフィルムの上面であるが、プラスチック、金属等から成る作業台、箔、紙等の薄い部材の上面であってもよい。好ましくはプラスチックフィルムは厚さが1mm以下である。若しくは、筒状のプラスチック管の中に前記長繊維の束を配置した状態で、前記長繊維の束を任意の長さに切断する。プラスチック管の壁圧は例えば0.1~0.3mmであり、0.5mm以下であることが好ましい。これにより、任意の長さ、例えば1~3mmの金属繊維が作成される。
つまり、前記長繊維の束をプラスチック、金属箔、紙等の薄い部材から成る管状部材の中に配置した状態で、前記長繊維の束を切断する。前記長繊維の束が前記押さえ部材又は前記管状部材と共に切断されてもよい。これにより、長繊維の束の切断を安定して効率的に行うことが可能になる。また、管状部材の中に長繊維の束が比較的密に配置されることが好ましい。押さえ部材又は管状部材を用いずに長繊維の束が切断される場合もあり得る。
ここで、コイル切削法は、アルミニウム又は銅の箔をコイル状に巻き、そのコイルの端面を切削工具で切削することにより長尺金属繊維(金属長繊維)を得る。
なお、本実施形態の上記金属繊維または後述の短繊維Aは、鋼、ステインレス、真鍮等の他の金属が少量混ざる場合もあり得る。
コイル切削法によって製作され前述のように切断され作成された金属繊維は、その断面に、箔の表面であった部分に対応する辺と、切削工具で切断された辺とを有する。そして、表面に対応する辺と切断された辺との間が、角、広いV断面形状、狭いV断面形状、又はV断面形状に近い形状となる。このため、後述の各工程において短繊維AがバインダーB等の中を掻き分けて活物質粉20、他の短繊維A等と接触し易くなることが期待される。または、短繊維Aが他の短繊維A、活物質粉20等に食い込み易くなることが期待される。
このように、コイル切削法とは、コイル状に巻いた金属箔をその端面方向から切削して形状の整った長繊維を製作する方法である。したがって、その繊維の断面は、例えば箔の厚さと切削深さを持った正方形、長方形、若しくは台形のような形状をしており、形状が整っている。このように断面形状および長さが整った短繊維によって電池性能の向上を計る事が可能になる。また、この方法は、箔にできる金属であればどんな種類の金属にも適用できる。
この方法による短繊維の長さは、切断が可能であればどのような短い繊維の製作も可能であるが、時間のロスと難易度、またそれにかかるコスト増が発生する。更に、その微細な繊維を取り扱う際に、粉塵による爆発の危険性も存在する。
ビビリ加工等の他の方法で、アルミニウム、銅等を切削して、上記金属繊維又は短繊維Aを製作することもできる。切削を伴わない溶融吹き出し法等を用いて上記金属繊維を製作することも可能である。
前述の工程によって得られた金属繊維を、以下の電極を形成する際に使用する溶媒(例えばNMP)中に、直径10mmの2個又は複数個のセラミックボールと共に自転公転式撹拌機(攪拌装置)に入れる。そして、例えば自転公転式撹拌機を1000rpmで所定時間(例えば20分程度)回転させ、これにより前記溶媒をかき混ぜると、例えば図3の形状を有する平均長さ約200μmの短繊維Aを得ることができる。溶媒は下記バインダーBを含有するものであってもよく、下記バインダーBおよび下記他の配合物を含有するものであってもよい。金属の種類によって条件は異なるが、図3はアルミニウムの短繊維AのSEM写真である。
なお、短繊維Aの平均長さは、0.8mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましく、0.3mm以下であることが更に好ましい。
また、前記攪拌装置として、上記金属繊維および前記溶媒を内部に収容できる公知の攪拌装置であって、前記内部に配置されたブレード、内容器等の回転体を回転させることによって金属繊維を切断することができる公知の攪拌装置を用いることも可能である。
また、金属繊維が銅製である時は、前記溶媒を入れずに、ブレード等の回転体、セラミックボール等を用いながら、攪拌装置によって銅製の短繊維Aを製作することが可能である。
一方、図4は、アトマイズ法によって形成されたアルミニウムの金属粉のSEM写真である。図4のように、アトマイズ法によって形成された金属粉は形状がいびつである。このため、各粒の粒径は、例えば各粒の最大長さとすることができ、最大長さおよび最小長さの平均値とすることもできる。また、平均粒径は無作為に選択した5つの粒の粒径の平均値とすることができる。アルミニウム以外の金属をアトマイズ法によって粉にすることも可能である。また、アトマイズ法以外の公知の方法によって金属粉を作ることも可能である。図4の金属粉の平均粒径は40μm程度又は50μm程度であると言える。なお、後述の電池性能を出す上で、金属粉の平均粒径は10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、後述のスラリーの塗布装置の目詰まりを防止する上で、金属粉の平均粒径は80μm以下であることが好ましく、より目詰まりを効果的に防止する上で60μm以下であることがより好ましい。金属粉がこれらの粒径範囲内にあると、スラリーS内に金属粉を分散させ易くなることが期待できる。なお、金属粉の平均粒径が0.1mm以下であれば、後述の機能を有する電極を製造可能である。
なお、前述のように形成された短繊維Aを含有する溶媒が収容された容器を販売すると、短繊維Aの酸化を防ぎながら客に引き渡すことが可能となる。この溶媒は、前記攪拌装置に金属繊維と共に入れる溶媒であってもよく、他の溶媒であってもよい。容器に入った溶媒入りの短繊維Aを購入した者は、溶媒と共に、又は、溶媒から取り出した短繊維Aを用いて、例えば後述のように蓄電デバイスの電極を製造することが可能である。容器内の溶媒が前記攪拌装置に金属繊維と共に入れる溶媒である場合、当該溶媒は電極の製造に用いられるものであるため、当該溶媒も用いて蓄電デバイスの電極を製造できる。
[電極の成形]
図1に示される電極を形成する際は、図5に示されるように、短繊維Aを含む溶媒(NMP)中に活物質粉20と、導電助剤30と、バインダーBを添加し、これらを撹拌する事により液状又はゲル状のスラリーSを作成する。当該スラリーSを作成するために、アルミニウム又は銅の短繊維Aと、活物質粉20と、導電助剤30と、希釈したバインダーBとが、混練機等を使用して混錬される。前記攪拌装置を用いた短繊維Aの製作をせずに、上記金属繊維を含む溶媒中に活物質粉20と、バインダーBを添加し、これらを撹拌する事によって、上記金属繊維を切断して前記短繊維Aとすることも可能である。活物質粉20、導電助剤30、およびバインダーBの乾燥時の重量比は、市販の二次電池におけるこれらの重量比程度であれば問題ない。以下、重量比(配合比)は、後述の乾燥工程による乾燥後の電極全体(電極箔を除く)に対する重量比(配合比)のことである。
本実施形態では、バインダーBの配合比は1重量%以上6重量%未満であり、2~3重量%前後が好ましい。短繊維Aの配合比は、1重量%以上8重量%未満が好ましい。短繊維Aが少ないと内部抵抗への効果が少なく、短繊維Aが多いと逆に内部抵抗を上昇させることになる。また、この範囲を超えると目付量(集電箔1cm当りの活物質粉20の重量)の低下を招く。短繊維Aの配合比は、最適には2.0重量%以上5.5重量%以下が好ましい。なお、短繊維Aの配合比は、3.0重量%以上5重量%以下が最も好ましいと考えられるが、その配合比は、目付量やバインダーの量により変わる。例えば、目付量を増加する場合は短繊維Aの量も増加した方が良く、バインダーBの量を減らすにしたがって短繊維Aを増やした方が良い。図2に示される電極を作成する際は、上記にさらにカーボン繊維CFを加えてスラリーSを作成する。カーボン繊維CFを添加する場合、その配合比は1重量%以上2重量%未満が好ましい。カーボン繊維CFが少ないと効果が見えず、カーボン繊維CFが多いとサイクル試験で劣化の原因となる場合がある。
アルミニウム又は銅の短繊維Aは平均長さが1mm未満であり、アトマイズ法により作られたアルミニウム粉の平均粒径も0.1mm以下であるため、スラリーS中において他の配合物と混ざり易い。
続いて、スラリーSを集電箔(アルミニウム箔若しくは銅箔)に所定の厚さで塗布し、例えば、粘度を上げるために前乾燥を行う。低温乾燥に続いて真空乾燥が行われる場合もある。これによりほぼ全ての溶媒(例えばNMP)が気化し、バインダーBを介して固形化した活材となる。これをプレス成型する事で集電箔上に正極又は負極である電極が載ったシートが形成されるが、このシートは電極箔と呼ばれ正極、負極それぞれ正極箔、負極箔と称される。集電箔を使用しない場合は、スラリーSをセパレータに塗布することが可能である。例えば、セパレータの厚さ方向の一方の面に正極となるスラリーSが塗布され、セパレータの厚さ方向の他方の面に負極となるスラリーSが塗布される。セパレータの一方の面のみに正極又は負極となるスラリーSが塗布されてもよい。前記前乾燥は、バインダーBが完全に硬化しない状態まで乾燥させ、これにより電極箔を所定の形状に成形し易くする。
さらに、集電箔又はセパレータへの塗布を行わずに、正極又は負極のスラリーSを所定の型上でシート状に成形することも可能である。この場合、シート状に成形された正極又は負極である電極が電極箔と称される。
これらの短繊維Aや金属粉のアルミニウム又は銅は好ましくは純度が99%以上、より好ましくは純度が99.9%以上である。前述のアルミニウム又は銅の短繊維A若しくは金属粉を用いると、プレス成型時に、短繊維A若しくは金属紛の剛性が比較的低いため、活物質20等に少し押しつぶされ、活物質20が食い込むように変形する。
つまり、前記接触している部分で短繊維Aや金属粉が偏平し、これにより、短繊維Aや金属粉が活物質粉20により密に接触し、電子移動の抵抗低減に繋がる。
一例では、成形された電極箔を真空乾燥等により乾燥させる乾燥工程が行われる。これにより、電極中の水分の除去とバインダーBの硬化が行われ、電極が完成する。
[正極活物質粉]
正極の活物質粉20としては、バインダーB等によって短繊維Aに保持可能なものや、短繊維Aと共に硬化したバインダーBに保持されるものであればよく、サイクル特性に優れたものが好ましい。正極の活物質粉20としては、一般のリチウムイオン電池に使用されるコバルト酸リチウム(LiCoO)やリン酸鉄リチウム(LiFePO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、これを混合した三元系などが挙げられる。なお、二次電池の正極および負極に用いられる公知の活物質を使用することが可能である。
[バインダー]
バインダーBとしては、熱可塑性樹脂や多糖類高分子材料等を用いることが可能である。バインダーBの材質の例は、ポリアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体等である。なお、二次電池や電気二重層キャパシタの電極に用いられる公知のバインダーを用いることが可能である。
[導電助剤]
導電助剤30は、導電性を有する材質であれば良く、電解質や溶媒によって化学変化しない材質であることが好ましい。例としては、黒鉛やカーボンブラックが挙げられる。なお、二次電池や電気二重層キャパシタの電極に用いられる公知の導電助剤を用いることが可能である。
[負極活物質紛]
負極の活物質紛20としては、人造黒鉛や天然黒鉛などが使用される。これらを負極に使用する場合、負極側での動作電位が低いため、アルミニウム短繊維Aや金属粉を使用した場合にLi-Alの反応が起こる。これは、Liの減少を引き起こし、急激に電池の劣化が進む。そのため、アルミニウムの短繊維Aや金属粉は使用できず、銅の短繊維Aや金属粉を使用する必要がある。一方、近年開発され、Li-Alの反応よりも反応電位が高いLTO(チタン酸リチウム)を負極の活物質粉20として使用できる。この場合、負極の活物質紛20として、アルミニウムの短繊維A若しくは金属粉を使用できる。アルミニウムの短繊維A若しくは金属粉を1重量%以上9.75重量%未満、好ましくは8重量%未満、より好ましくは3.0重量%以上5重量%以下用いると、LTO等を負極の活物質粉20として用いた場合に、内部抵抗を大幅に減少できることが分かった。
[他のデバイスの応用]
上記の電極の製造方法および電極は、電気二重層キャパシタ、全固体型電池を含む二次電池、リチウムイオンキャパシタを含むハイブリットキャパシタ等の蓄電デバイスの電極に適用することが可能である。例えば、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの正極および負極を製作する場合は、活物質粉20の代わりに活性炭、導電助剤30、希釈したバインダーBを短繊維A若しくは金属粉と一緒に混練する工程を経て、製作できる。電気二重層キャパシタに活物質粉20の代わりに用いられる物質は、充放電時に電解質イオンが吸着する吸着物質粉であるとも言える。リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタで用いられる周知の活物質粉を用いる事も可能である。全固体型電池の電極は、例えば、固体電解質を、活物質紛20、導電助剤30、希釈したバインダーB、および短繊維A若しくは金属粉と共に混練してスラリーSを作る工程を経て、製作が可能である(図6)。なお、図1、図2等の電極を全固体型電池に用いることも可能である。
なお、図2に示される電極を作成する際は、前記スラリーSとして、活物質粉20と、導電助剤30と、バインダーBに加えて、平均太さが0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下であるカーボン繊維CFを含むスラリーSを用いることも可能である。この場合、図2に示されるように、短繊維A間にカーボン繊維CFが配置され、短繊維A若しくは金属粉と活物質粉20との間の電子のやり取りに相乗効果が期待できる。
カーボン繊維CFは、短繊維A若しくは金属粉、活物質粉20、導電助剤30、および他のカーボン繊維CFに接触する。本実施形態では、平均太さが0.1μm以上0.2μm未満、平均長さが20μm以上200μm未満のカーボン繊維CFを用いる。一例では、カーボン系の導電助剤30の抵抗率は0.1~0.3Ω・cmであるのに対し、カーボン繊維CFの抵抗率は例えば5×10-5Ω・cmである。
例えば、活物質粉20と短繊維A若しくは金属粉とが直接接触していない場合でも、当該活物質粉20と短繊維A若しくは金属粉とがカーボン繊維CFを介して電気的に接続される。また、活物質粉20と短繊維A若しくは金属粉とが直接接触している場合でも、カーボン繊維CFによる接続があることによって、当該活物質粉20と短繊維Aとの間の電気抵抗が更に低減される。
このように、導電性が良いカーボン繊維CFにより、活物質粉20と短繊維A若しくは金属粉との間の電子の移動抵抗を低減することができ、電子が入出力端子に移動する抵抗を小さくする上で有利である。
[コイン型二次電池への適用]
以下、蓄電デバイスへの適用を例示する。蓄電デバイスであるコイン型二次電池への適用については、例えば、特開2018-106846号公報に記載された構造を用いて、特開2018-106846号公報における吹き出し繊維やビビリ加工繊維の代わりに本願の短繊維A若しくは金属粉を使用したコイン型電池を製作する事が可能である。
[積層型二次電池への適用]
正極、負極およびセパレータから成る蓄電部を複数層に積層する二次電池の場合も、前記コイン型二次電池と同様に、前記実施形態の電極構造を正極のみ、負極のみ、および正極と負極の両方に用いることが可能である。
[全個体型電池への適用]
以下、全個体型電池への適用に関し説明する。
以下、全固体型リチウムイオン電池の例を用いて、蓄電デバイス(全固体型電池)を説明する。尚、この実施形態は、全固体型ナトリウムイオン二次電池、全固体型マグネシウムイオン二次電池、固体電解質を用いた空気電池等の全固体型電池、若しくはSi(シリコン)負極を用いた膨張収縮の激しい全固体型リチウムイオン電池に用いることが可能である。
全固体型電池の構造の模式図の例は図6の通りである。全固体型電池は大まかに正極集電体1、正極層2、固体電解質層3、負極層4、負極集電体5を有する。正極層2は前述の正極の電極であり、負極層4は前述の負極の電極に対応している。
(集電箔)
正極集電体1は、一般には金属箔であり、当該金属箔はアルミニウム、複数の金属から成る合金等で形成することができる。負極集電体5には一般的に銅箔が使用されることが多い。負極の活物質粉20がチタン酸リチウムから成る場合は、負極集電体5にアルミニウム箔を使用することが可能である。全固体型電池の場合は、耐電圧性および耐食性の高いSUS(ステインレス鋼)、コバルト基合金等の導電性材料、その他の導電性素材、導電性セラミックス等が使用される場合もある。
(正極層)
正極の活物質粉20の材質は、放電容量を高めるために、リチウムイオンを吸蔵しやすい物質、例えばLiCoPO、LiCoO、LiMnO、LiFePO等が好ましい。必要に応じて、導電助剤30、バインダーB、イオン導電性を高めるための無機固体電解質、高分子電解質等の粉末の固体電解質14が添加されたスラリーSを作り、スラリーSを、焼結や加圧成形を経て正極層2が構成される。本実施形態では、正極層2はアルミニウム、銅等から成る短繊維A若しくは金属粉を含有している。
(負極層)
負極の活物質粉20の材質も、正極層2と同様に放電容量を高めるために、イオンを吸蔵しやすい物質が好ましく、例えばLiFePO、LiTi12、LiFe(PO、SiOx、CuSn、LiTiO等が挙げられる。負極層4は、これらの活物質粉20、導電助剤30、バインダーB、およびイオンの導電性を上げるために無機固体電解質、高分子電解質等の粉末の固体電解質24を混合してスラリーSを作り、スラリーSを焼結や加圧成形することで構成される。本実施形態では、負極層4は、アルミニウム、銅等から成る短繊維A若しくは金属粉を含有している。
全固体型電池の正極層2および負極層4の場合も、短繊維Aの配合比は、1重量%以上9.75%以下であり、1重量%以上8重量%未満が好ましく、最適には3重量%以上6重量%以下である。また、バインダーBの配合比は2重量%以上5重量%未満が好ましい。
(正極層の成形)
先ず、短繊維A若しくは金属粉と、充放電時に化学反応する活物質粉20と、導電助剤30と、バインダーBと、固体電解質14とを含む液状又はゲル状のスラリーSを作成する。当該スラリーSはアルミニウム又は銅の短繊維A若しくは金属粉と、活物質粉20と、導電助剤30と、希釈したバインダーBと、固体電解質14との混合物を混練することにより作成される。充放電が行われる際に、正極の活物質粉20からリチウムイオン等のイオンが電解質中に放出される化学反応や、活物質粉20にリチウムイオン等のイオンが取り込まれる化学反応が起きる。
続いて、スラリーSを集電体に塗布し、又は所定の型等の上に塗布し、これを低温乾燥、真空乾燥させた後、プレスして電極シートを作成する。
スラリーSを塗布した集電体(集電箔)を低温乾燥、真空乾燥させた後、ローラの間にスラリーSを通すことによりスラリーSを加圧し、これによりスラリーSを電極のサイズに応じた所定の厚さに成形する。その後、成形されたスラリーSを切断して所定の形状(大きさ)に成形する。
なお、正極層2における活物質粉20と固体電解質14とを加えたものの配合比は、80重量%以上であることが好ましく、85重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。この中で、活物質粉20の配合比が70重量%以上であることが好ましく、75重量%以上であることがより好ましい。一方、固体電解質14の配合比が10重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましい。正極層2における短繊維Aの配合比は、3重量%以上であることが好ましく、5重量%程度であることがより好ましく、8重量%未満であることが好ましい。その他は導電助剤30、バインダーB、カーボン繊維CF等が占める。
(負極層の成形)
先ず、短繊維Aと、充放電時に化学反応する活物質粉20と、導電助剤30と、バインダーBと、固体電解質24とを含む液状又はゲル状のスラリーSを作成する。当該スラリーSはアルミニウム又は銅の短繊維A若しくは金属粉と、活物質粉20と、導電助剤30と、希釈したバインダーBと、固体電解質24との混合物を混練することにより作成される。
続いて、スラリーSを集電体に塗布し、又は所定の型等の上に塗布し、これを低温乾燥、真空乾燥させた後、プレスして電極シートを作成する。
スラリーSを塗布した集電体(集電箔)を低温乾燥、真空乾燥させた後、ローラの間にスラリーSを通すことによりスラリーSを加圧し、これによりスラリーSを電極のサイズに応じた所定の厚さに成形する。その後、成形されたスラリーSを切断して所定の形状(大きさ)に成形する。
なお、電気二重層を形成する全固体型のキャパシタの場合は、正極又は負極の電極において、活物質粉20の代わりに、充電時に電解質イオンが吸着する吸着物質粉を用いることも可能である。
なお、負極層4における活物質粉20と固体電解質24とを加えたものの配合比は、80重量%以上であることが好ましく、85重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。この中で、活物質粉20の配合比が70重量%以上であることが好ましく、75重量%以上であることがより好ましい。一方、固体電解質24の配合比が10重量%以上であることが好ましく、15重量%以上であることがより好ましい。負極層4における短繊維Aの配合比は、3重量%以上であることが好ましく、5重量%程度であることがより好ましく、8%未満であることが好ましい。その他は導電助剤30、バインダーB、カーボン繊維CF等が占める。
(固体電解質層の成形)
粉末の固体電解質34とバインダーBとを含む混合物を混練することにより液状又はゲル状のスラリーを作成し、乾燥、型内での加圧、ローラを用いた加圧等を行うことによって、所定の厚さを有する固体電解質層3を得る。固体電解質層3は周知の固体電解質層であってもよい。また、固体電解質層3は周知のゲル状の固体電解質層であってもよい。
(蓄電要素の成形)
前述のように作成された正極層2、固体電解質層3、および負極層4を重ね合わせると共に加圧することによって、正極層2と固体電解質層3とを結合すると共に、固体電解質層3と負極層4とを結合する。また、必要に応じて、正極層2に正極集電体1を重ね合わせると共に、負極層4に負極集電体5を重ね合わせる。これにより、正極層2、固体電解質層3、および負極層4から成る蓄電要素BEが形成される。図6のように蓄電要素BEを必要な数だけ重ね合わせることによって、全固体型電池が形成される。
(固体電解質)
固体電解質14,24,34はリチウムイオン電池(LiB)の電解液と同様に、電池全体に存在し、正極層2と負極層4との間のイオンの伝達を行う。固体電解質14,24,34の材質としては、次のような無機固体電解質や高分子固体電解質を用いることができる。
無機固体電解質としては、LiN、LiI、LiN-LiI―LiOH、LiSiO、LiSoO-LiI-LiOH、LiPO-LiSiO、LiSiS等のLi(リチウム)の窒化物やハロゲン化物、ケイ素化物などが使用でき、またナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、化学式Li(POが使用され得る。xは1≦x≦2、yは1≦y≦2であり、MはAl、Ti、Ge、Ga等で構成される物質等が使用できる。またPは、SiやBに置き替えることも可能である。
高分子固体電解質としては、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマーなどを用いることができる。
全固体型電池の電極において、短繊維Aが均一に分散していると、短繊維Aが構造的に電極内の大きな変形等を抑制し、ホストである結晶格子が膨張収縮を繰り返す時に、活物質粉20の他の部材との接触の解除が短繊維Aによって防止される。
[実施例]
以下にリチウムイオン電池の正極に、前述のように1~3mmの長さに切断して製作された上記金属繊維を適用した例を示す。
アルミニウムの上記金属繊維と、活物質粉20(NMC;三元系Li(NiMnCo1-a-b)Oと、導電助剤30(AB;アセチレンブラック)と、溶媒(NMP;ノーマルメチルピロリドン)で希釈されたバインダーB(PVDF;プリフッ化ビニリデン)と、を用いて、前記重量比(乾燥工程後の重量比)で、活物質粉20:導電助剤30:バインダーB:アルミニウムの短繊維Aが87:5:4:4となるように、スラリーSを制作した。そして、当該スラリーSをアルミニウム箔上に塗布して前述のように製作した正極箔と、短繊維A等の金属繊維を入れない負極箔を使用し、電解液に例えばLiPF(六フッ化リン酸リチウム)を使用してリチウムイオン電池を作成した(実施例1)。また、実施例1のリチウムイオン電池において、正極を作る際に前述のスラリーSにカーボン繊維CFを前記重量比で1.5重量%加えたリチウムイオン電池も作成した(実施例2)。カーボン繊維CFを1.5重量%加えることにより、活物質粉20:導電助剤30:バインダーB:アルミニウムの上記金属繊維の重量比は、85.8:4.9:3.9:3.9程度となる。
また、実施例1のリチウムイオン電池において、正極を作る際に前述のスラリーSにアルミニウム又は銅の上記金属繊維を入れないリチウムイオン電池も作成した(比較例1)。上記金属繊維を入れないことにより、活物質粉20:導電助剤30:バインダーBの重量比は、90.6:5.2:4.2程度となる。
実施例1、実施例2、および比較例1の負極箔の制作のために、先ず、活物質粉20(天然球状黒鉛)と、導電助剤30(AB;アセチレンブラック)と、溶媒(NMP;ノーマルメチルピロリドン)で希釈されたバインダーB(PVDF;プリフッ化ビニリデン)と、を用いて、前記重量比で、活物質粉20:導電助剤30:バインダーBが90:5:5となるように、スラリーSを製作した。そして、当該スラリーSを銅箔上に塗布して前述のように負極箔を製作した。
また、市販されている正極箔および負極箔を用いたリチウムイオン電池も製作した(比較例2)。当該正極箔および負極箔は、市販されている正極箔および負極箔の中で、高性能であると言われているものである。なお、比較例2の正極の活物質粉の材質は、実施例1、実施例2、および比較例1の活物質粉20の材質と同じであり、比較例2の負極の活物質粉の材質は、実施例1、実施例2、および比較例1の活物質粉20の材質と同じである。
実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2のリチウムイオン電池を製作するために、正極箔および負極箔を所定の大きさに切断すると共に、正極箔と負極箔との間にポリプロピレンから成るセパレータを挟み、これらをプラスチック材料のラミネートシートから成る電池容器に収容した。電池容器に前記電解液を入れ、電池容器を密封することによって、実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2のリチウムイオン電池が製作された。なお、実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2の正極箔および負極箔の大きさ、セパレータの大きさ、セパレータの厚さ、および電池容器の容量は、実質的に同一である。
なお、アルミニウム箔(集電箔)の厚さを除いた実施例1、実施例2、および比較例1の正極の平均厚さ(正極層の平均厚さ)は約155μmであり、実施例1、実施例2、および比較例1の正極のアルミニウム箔の厚さは約15μmである。アルミニウム箔(集電箔)の厚さを除いた比較例2の正極の平均厚さ(正極層の平均厚さ)は約90μmであり、比較例2の正極のアルミニウム箔の厚さは約15μmである。銅箔(集電箔)の厚さを除いた実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2の負極の平均厚さ(負極層の平均厚さ)は約85μmであり、実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2の負極の銅箔の厚さは約15μmである。
また、市販の5000mAhのリチウムイオン電池を比較例3として用いた。
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、および比較例3のリチウムイオン電池の充放電試験を実施した。
図7は、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、および比較例3の放電特性(レート特性)を示したものである。
アルミニウムの上記金属繊維を混入したものは内部抵抗が低いために、電極の活材層の厚みを通常の2倍から3倍の厚みにすることもできる。活材層とは、短繊維A、活物質粉20、導電助剤30、およびバインダーBを有する層であり、集電箔を含まない層である。前述のように、今回は、実施例1および実施例2の正極は比較例2の約1.7倍の厚みで製作した。図7に示されるように、実施例1の単位面積当たりの放電容量(充電容量)は、比較例2のそれと比較し、放電電流(充電電流)にも依るが、放電電流(充電電流)が2mA/cmの時に約2倍となり、放電電流(充電電流)が3mA/cmの時に約1.75倍となることがわかる。
前述のように、実施例1および実施例2の正極の厚さは比較例2の正極の約1.7倍であるから、図7に示される実施例1および実施例2の電池特性が優れていることがわかる。
なお、図7に示されるように、放電電流(充電電流)が多くなると放電容量(充電容量)は小さくなる傾向がある。これは、二次電池の特性として一般的である。つまり、急速に放電又は充電を行う場合、放電容量又は充電容量は小さくなる。
比較例3の市販のリチウムイオン電池の正極箔は約1800cmのアルミニウム箔に活物質を含む正極が形成されている。5000mAhを1800cmで除すると約2.78mAh/cmとなる。図7に示されるように、比較例3の市販のリチウムイオン電池の公称能力の5000mAhは、放電電流(充電電流)が0.2mA/cmの時に実現されることがわかる。例えば、2mA/cm(0.72C)で比較例3の市販のリチウムイオン電池の充放電を行うと、約3470mAhの最大容量で充放電が繰り返される。一方、同じ電流で市販の正極箔および負極箔を使用した比較例2のリチウムイオン電池では、その容量は約3870mAhとなる。また、実施例1のリチウムイオン電池では、その容量は約7920mAhとなり、高容量で充放電を行うことができる。
実施例1および実施例2が優れていることは、比較例1との比較でも明らかである。つまり、実施例1の単位面積当たりの放電容量(充電容量)は、比較例1のそれと比較し、放電電流(充電電流)が2mA/cmの時に1.2~1.3倍となっており、放電電流(充電電流)が3mA/cmの時にも1.2~1.3倍となっている。なお、前述のように、実施例1、実施例2、および比較例1の正極の厚さは同等である。
本実施形態の電極を用いると、1つの電極の厚さ寸法を大きくすることができる。当該構成によって、電池全体の重量の低減、容積の低減等を行いながら、放電容量(充電容量)の増加を行うことが可能となる。
図8は、実施例1のリチウムイオン電池について、充放電時の電流を2mAh/cmとして測定した電池のサイクル特性を示している。アルミ繊維入りの実施例1のリチウムイオン電池は、初期の段階で放電容量(充電容量)の低下は見られるが、約4.3mAh/cmには落ち着きそうである。
このように、アルミニウム又は銅の上記金属繊維を使用して製作したリチウムイオン電池は、市販の電極箔を用いたリチウムイオン電池と比較して、約2倍の放電容量(充電容量)を持つことが可能となる。比較例1のように、正極又は負極の厚さ寸法を大きくするだけでは、厚さの増加に比例した特性の向上は狙えない。しかし、アルミニウム又は銅の上記金属繊維を用いた本実施形態の正極又は負極は、厚さの増加に比例した特性又はそれ以上の特性を得ることが可能である。通常の電極の厚さである比較例2の正極の90μmに対し、アルミニウム箔の厚さを除いた実施例1および2の正極の厚さは155μmであり、比較例2に対し実施例1および2は1.7倍以上である。つまり、上記のように電極に短繊維Aを入れることにより、電極の厚さを120μm以上、より好ましくは150μm以上、さらに好ましくは200μm以上にしながら、厚さの増加に比例した特性又はそれ以上の特性を得ることができる。
図9に示されるように、アルミニウム又は銅の上記金属繊維を含有する電極を有する電池の内部抵抗は、上記金属繊維を含有しない電極を有する電池の内部抵抗よりも低い。このように上記金属繊維を含有する電極を有する電池の内部抵抗が低減されることが、実施例1および実施例2の特性の向上に繋がっていると考えられる。図9には、実施例3、実施例4、および実施例5の正極を有する電池の内部抵抗と、比較例1の正極を有する電池の内部抵抗が示されている。
実施例3は、実施例1において、正極のアルミニウムの上記金属繊維の重量比を1.22重量%としたものであり、実施例4は、実施例1において、正極のアルミニウム箔の上記金属繊維の重量比を4.88重量%としたものである。また、実施例5は、実施例1において、正極のアルミニウム箔の上記金属繊維の重量比を9.75重量%としたものである。実施例3、実施例4、および実施例5の活物質粉20、導電助剤30、およびバインダーBの重量比は、上記金属繊維の増減に応じて、実施例1のそれらに対して若干変化する。
図7および図9に示されるように、本実施形態のように上記金属繊維を含有する電極を用いると、同じ放電容量(充電容量)であれば、2倍以上の速さで充放電することが可能となる。また、カーボン繊維CFを添加した実施例2が実施例1よりも放電容量(充電容量)が大きくなる。また、図9に示されるように、上記金属繊維が9.75重量%配合された実施例5でも、比較例1に対して内部抵抗がかなり改善される。従って、上記金属繊維の配合比が9.75重量%以下、9.75重量%未満、又は9.5重量%以下であっても、比較例1の通常の電極に対し効果が得られる可能性がある。
このように、上記金属繊維を前述のように配合した電極は、厚さの増加に比例した特性又はそれ以上の特性を得ることが可能である。例えば、複数の正極箔および複数の負極箔を積層して電池を作り、各正極箔および各負極箔に集電体としてアルミニウム箔および銅箔がそれぞれ用いられる場合、同じ容量の電池を作るための必要なアルミニウム箔および銅箔の枚数が少なくなる。これは、電池の省スペース化、電池の軽量化、電池の製造コストの低減等に寄与する。
なお、上記金属繊維を、コイル切削法以外の方法で制作することも可能である。例えば、上記金属繊維は、断面円形のアルミニウム又は銅の柱状部材に切削工具を当てるビビリ振動切削法や、フライス切削法等により成形され得る。
また、溶融したアルミニウム等の金属を微細孔から空間中に吹き出すことによって、上記長さを有する上記金属繊維を作成することも可能である。
[更なる実施例]
以下にリチウムイオン電池の正極に上記短繊維Aを適用した例を示す。
平均長さが0.5mm以下のアルミニウムの短繊維Aと、活物質粉20(NMC;三元系Li(NiaMnbCo1-a-b)Oと、導電助剤30(AB;アセチレンブラック)と、溶媒(NMP;ノーマルメチルピロリドン)で希釈されたバインダーB(PVDF;ポリフッ化ビニリデン)と、を用いて、前記重量比(乾燥工程後の重量比)で、活物質粉20:導電助剤30:バインダーB:アルミニウムの短繊維Aが87:5:4:4となるように、スラリーSを製作した。そして、当該スラリーSを用いてアルミニウム箔上に前述のように製作した正極箔と、短繊維A等の金属繊維を入れない負極箔を使用し、電解液にLiPF(六フッ化リン酸リチウム)を使用してリチウムイオン電池を作成した(実施例6)。
また、実施例6において、短繊維Aを4重量%配合する代わりにアルミニウム製の前記金属粉を4重量%配合した前記スラリーSを製作すると共に、当該スラリーSを用いてアルミニウム箔上に前述のように製作された正極箔を用いたリチウムイオン電池も作成した(実施例7)。
また、実施例6において、短繊維Aを4重量%配合する代わりに、前述のように1~3mmの長さに切断して製作されたアルミニウム製の上記金属繊維を4重量%配合した前記スラリーSを製作すると共に、当該スラリーSを用いてアルミニウム箔上に前述のように製作された正極箔を用いたリチウムイオン電池も作成した(実施例8)。
実施例6~8の負極箔の制作のために、先ず、活物質粉20(天然球状黒鉛)と、導電助剤30(AB;アセチレンブラック)と、溶媒(NMP;ノーマルメチルピロリドン)で希釈されたバインダーB(PVDF;ポリフッ化ビニリデン)と、を用いて、前記重量比で、活物質粉20:導電助剤30:バインダーBが90:5:5となるように、スラリーSを製作した。そして、当該スラリーSを用いて銅箔上に前述のように負極箔を製作した。
実施例6~8のリチウムイオン電池を製作するために、正極箔および負極箔を所定の大きさに切断すると共に、正極箔と負極箔との間にポリプロピレンから成るセパレータを挟み、これらをプラスチック材料から成るラミネートシートから成る電池容器に収容した。電池容器に前記電解液を入れ、電池容器を密封することによって、実施例6~8のリチウムイオン電池が製作された。なお、実施例6~8の正極箔および負極箔の大きさ、セパレータの大きさ、セパレータの厚さ、および電池容器の容量は、実質的に同一である。
なお、アルミニウム箔(集電箔)の厚さを除いた実施例6~8の正極の平均厚さ(正極層の平均厚さ)は約210~220μmであり、実施例6~8の正極のアルミニウム箔の厚さは約15μmである。銅箔(集電箔)の厚さを除いた実施例6~8の負極の平均厚さ(負極層の平均厚さ)は約110~120μmであり、実施例6~8の負極の銅箔の厚さは約15μmである。実施例6~8では、正極が210~220μmとかなり厚いので、負極も厚くした。
図10は、実施例6~8の放電特性(レート特性)を示したものである。
実施例8の正極の配合物および配合比は実施例1の配合物および配合比と同じである。図10のように、実施例8の放電容量(充電容量)に対し実施例6および7の放電容量(充電容量)は同等以上となる。図10では、実施例8に対し実施例6および7の放電容量(充電容量)は0.5mA/cm~12.5mA/cmの範囲で良好である。これは、実施例6の正極中の短繊維Aが実施例8の正極中の金属繊維よりも短いため、前述のスラリーSの製作の際に短繊維Aが分散し易く、これが図10の結果に影響している可能性がある。
さらに、スラリーSを正極箔上に公知の塗布装置を用いて塗布する際に、実施例6のスラリーSは実施例8のスラリーSよりも塗布装置内の詰まりが少ない。これは量産時の大きなメリットであり、実施例7でも同様の効果が出る可能性がある。
例えば、量産においてダイコーターと呼ばれるコーティング厚さに応じたスリット若しくはノズルを通してスラリーSを塗布する量産機において、金属繊維が要因となる詰まりが生じるという問題や金属繊維を活物質20と混練する際に偏る問題が発生する場合があるが、短い短繊維Aはこれらの問題を改善又は解決できる、
図10のように、実施例8の放電容量(充電容量)に対し実施例6および7の放電容量(充電容量)は同等以上であり、同様な特性を有しているので、実施例6および7の正極の短繊維Aおよび金属粉の配合量を実施例3~5のように変更しても、実施例3~5と同様に良好な放電容量および内部抵抗を実現可能である。また、実施例6および7の正極に実施例2と同様にカーボン繊維CFを加えても、実施例2と同様に良好な放電容量および内部抵抗を実現可能である。
実施例1~8において、負極を作る際に、アルミニウムの上記金属繊維又は短繊維Aの代わりに銅の上記金属繊維又は短繊維Aを用いる場合は、アルミニウムに対し銅の比重が3倍以上であることから、銅の金属繊維又は短繊維Aの配合量はアルミニウムのそれの配合量の9.75%よりも多くてもよい。だが、銅の金属繊維又は短繊維AのスラリーSにおける分散のし易さの観点から、銅の金属繊維又は短繊維Aの配合量は12重量%未満であることが好まししく、10重量%未満であることがより好ましい。
なお、短繊維Aの材質が銅の場合、銅はアルミニウムよりも電気抵抗率が低いので、上記と同様の作用効果を達成できる可能性が高い。なお、銅とアルミニウムの比重の差を考慮し、銅の金属繊維又は短繊維Aの前記配合比は1.5又は2重量%以上であることが好ましい。なお、銅の金属繊維又は短繊維Aの前記配合比が1重量%以上であっても上記と同様の効果を奏する場合はある。
なお、アルミニウムの金属粉の代わりに銅等の他の金属から成る金属粉を用いる場合、それら金属の電気抵抗率がアルミニウムと同等又はアルミニウムよりも低ければ、上記と同様の作用効果を達成できるはずである。なお、他の金属とアルミニウムの比重の差を考慮し、他の金属から成る金属粉の前記配合比は1.5又は2重量%以上であることが好ましい。
なお、前記説明から明らかなように、アルミニウムの上記金属繊維と金属粉との混合物、アルミニウムの短繊維Aと金属粉との混合物、銅の上記金属繊維と金属粉との混合物、又は、銅の短繊維Aと金属粉との混合物を、アルミニウム又は銅の上記金属繊維や短繊維Aと同じ配合比で用いて電極を製作することが可能であり、当該電極も上記金属繊維や短繊維Aを用いた場合と同様の効果を奏する。
このように、本実施形態のアルミニウムまたは銅の短繊維Aを使用して製作したリチウムイオン電池は、市販の電極箔を用いたリチウムイオン電池と比較して、電極を厚くしながら優れた放電容量(充電容量)を持つことが可能となる。比較例1のように、正極又は負極の厚さ寸法を大きくするだけでは、厚さの増加に比例した特性の向上は狙えない。しかし、アルミニウム又は銅の短繊維Aを用いた本実施形態の正極又は負極は、厚さの増加に比例した特性又はそれ以上の特性を得ることが可能である。通常の電極の厚さである比較例2の正極の90μmに対し、アルミニウム箔の厚さを除いた実施例1~5の正極の厚さは155μmであり、比較例2に対し実施例1~5は1.7倍以上である。実施例1~5と同等以上の機能を有する実施例6および7の実施例の電極は、上記のように電極に短繊維Aを入れることにより、電極の厚さを120μm以上、より好ましくは150μm以上にしながら、厚さの増加に比例した特性又はそれ以上の特性を得ることができる。
実施例6~8は実施例1~5程には厚さ増加に比例して放電容量(充電容量)は向上していない。実施例6~8では、正極はかなり厚く、これに対する負極の厚みが足らない可能性がある。その他の要因も考えられる。このため、実施例6~8の正極の厚みにおいても、厚さの増加に比例した特性又はそれに近い特性を得ることができる可能性がある。
また、実施例6~8のように正極が厚い場合でも、上記金属繊維、短繊維A、又は金属粉があることによって、スラリーSの乾燥時にスラリーSが集電箔から剥がれない、又は、剥がれ難い。当該現象は、正極内に均一に分散した上記金属繊維、短繊維A、又は金属粉が厚い正極を構造的に支えている等によって起きていると考えられる。
実施例1~8および比較例1の製作において、上記金属繊維、短繊維A、又は金属粉が無い場合は、電極の切断、取付け等の時に、電極の端部等が粉状又は針状に崩れる場合があった。つまり、上記金属繊維、短繊維A、又は金属粉が前述のように電極内に分散することは、電極が粉状又は針状に崩れることの防止にもなる。
また、本実施形態の金属粉を使用して製作したリチウムイオン電池は、短繊維Aを用いる場合と同様に、市販の電極箔を用いたリチウムイオン電池と比較して優れた放電容量(充電容量)を持つことが可能となる。
上記の開示を、以下補足する。
(リチウムイオン電池での態様)
本発明の第1の態様の蓄電デバイスの電極の製造方法は、上記、金属(主にアルミニウム又は銅)の短繊維A若しくは金属粉と、活物質粉20と、導電助剤30と、バインダーBを混練機で混練しスラリーSを作成する工程と、前記スラリーSを所定の金属箔(集電箔)に塗布成形する成形工程と、前記所定形状に成形されたスラリーSを乾燥させ、プレス加工する事でる。短繊維Aによって、塗布工程におけるスリットやノズルへの端繊維Aに起因するスラリーSの目詰まりやの塗布ムラが改善され、リチウムイオン電池の内部抵抗の低下と目付量の増加(厚塗り)を可能とし、最終的にリチウムイオン電池の特性向上を可能とするものである。
上記実施形態では、所定形状に成形したスラリーを乾燥させ、圧延機でプレスすると、アルミニウム又は銅の短繊維A同士が接続されたり、短繊維Aが活物質粉20や導電助剤30に絡みついたり食い込んだりする。
当該構成は、正極又は負極の内部抵抗を大幅に改善でき、市販の正極又は負極の2倍厚、3倍厚等にするために有用である。
(電気二重層キャパシタ、固体型電池での態様)
これらのデバイスにおける態様も同じで、電気二重層キャパシタの場合は活性炭である吸着物質粉、導電助剤30、バインダーBを上記短繊維Aと混ねりしたスラリーSを使用する事となり、全固体電池の場合は、液体電解質の代わりに固体電解質を用いることになる。
1 正極集電体
2 正極層
3 固体電解質層
4 負極層
5 負極集電体
14,24,34 固体電解質
20 活物質粉
30 導電助剤
A 短繊維
B バインダー
S スラリー
CF カーボン繊維

Claims (19)

  1. アルミニウム又は銅の金属繊維を得る繊維作成工程と、
    前記金属繊維又は所定の切断器具によって切断された前記金属繊維を溶媒中に入れると共に、前記溶媒をかき混ぜることによって、前記金属繊維を平均長さが0.8mm以下となるように短くするかき混ぜ工程と、
    前記かき混ぜ工程によって作られたアルミニウム製又は銅製の短繊維と、充電時に電解質イオンが吸着する吸着物質粉又は充放電時に化学反応する活物質粉と、バインダーとを含む液状又はゲル状のスラリーを所定形状に成形する成形工程と、
    前記所定形状に成形された前記スラリーを乾燥させることによって前記短繊維を含む電極を形成する乾燥工程と、を有する蓄電デバイスの電極の製造方法。
  2. 前記繊維作成工程では、アルミニウム製又は銅製の金属箔を巻くことにより形成されるコイルの端面を切削工具で切削することによって前記金属繊維を得る、請求項1に記載の蓄電デバイスの電極の製造方法。
  3. 前記かき混ぜ工程では、前記溶媒中に前記金属繊維の切断を促進するためのボールを入れた状態で、前記溶媒をかき混ぜる、請求項1又は2に記載の蓄電デバイスの電極の製造方法。
  4. 前記かき混ぜ工程では、ブレードを回転させることによって前記溶媒をかき混ぜる、請求項1又は2に記載の蓄電デバイスの電極の製造方法。
  5. 前記かき混ぜ工程の前に、前記金属繊維の束を押さえ部材を用いて所定の面に押さえつけた状態で、又は、前記金属繊維の束を管の中に配置した状態で、前記金属繊維を切断する切断工程をさらに有する、請求項1~4の何れかに記載の蓄電デバイスの電極の製造方法。
  6. 前記切断工程では、前記金属繊維の束を、前記押さえ部材又は前記管と共に切断する、請求項5に記載の蓄電デバイスの電極の製造方法。
  7. 前記スラリーは、前記乾燥工程による乾燥後の前記電極の全体に対する前記短繊維の重量比が9.75重量%未満となるように前記短繊維が混入されている、請求項1~6の何れかに記載の蓄電デバイスの電極の製造方法。
  8. アルミニウム又は銅の金属繊維を得る繊維作成工程と、
    前記金属繊維又は所定の切断器具によって切断された前記金属繊維を溶媒中に入れると共に、前記溶媒をかき混ぜることによって、前記金属繊維を平均長さが0.8mm以下となるように短くするかき混ぜ工程と、
    前記かき混ぜ工程によって作られたアルミニウム製又は銅製の短繊維を前記溶媒又は他の溶媒に入れた状態で出荷する出荷工程と、を有する蓄電デバイスの電極用の短繊維の製造方法。
  9. 前記繊維作成工程では、アルミニウム製又は銅製の金属箔を巻くことにより形成されるコイルの端面を切削工具で切削することによって前記金属繊維を得る、請求項8に記載の蓄電デバイスの電極用の短繊維の製造方法。
  10. 前記かき混ぜ工程では、前記溶媒中に前記金属繊維の切断を促進するためのボールを入れた状態で、前記溶媒をかき混ぜる、請求項8又は9に記載の蓄電デバイスの電極用の短繊維の製造方法。
  11. 前記かき混ぜ工程では、ブレードを回転させることによって前記溶媒をかき混ぜる、請求項8又は9に記載の蓄電デバイスの電極用の短繊維の製造方法。
  12. 前記かき混ぜ工程の前に、前記金属繊維の束を押さえ部材を用いて所定の面に押さえつけた状態で、又は、前記金属繊維の束を管の中に配置した状態で、前記金属繊維を切断する切断工程をさらに有する、請求項8~11の何れかに記載の蓄電デバイスの電極用の短繊維の製造方法。
  13. 前記切断工程では、前記金属繊維の束を、前記押さえ部材又は前記管と共に切断する、請求項12に記載の蓄電デバイスの電極用の短繊維の製造方法。
  14. 平均長さが0.8mm以下であるアルミニウム製又は銅製の短繊維を含有する溶媒と、前記溶媒に対し耐性を有し当該溶媒を収容する容器と、を備える容器に入った蓄電デバイスの電極用の短繊維。
  15. 平均長さが0.8mm以下であるアルミニウム製又は銅製の短繊維と、充電時に電解質イオンが吸着する吸着物質粉又は充放電時に化学反応する活物質粉と、を含む蓄電デバイスの電極であって、
    前記短繊維の重量比が9.75重量%未満である、蓄電デバイスの電極。
  16. 平均粒径が0.1mm以下である金属粉と、充電時に電解質イオンが吸着する吸着物質粉又は充放電時に化学反応する活物質粉と、を含む蓄電デバイスの電極であって、
    前記金属粉の重量比が9.75重量%未満である、蓄電デバイスの電極。
  17. アルミニウム製又は銅製の繊維と平均粒径が0.1mm以下である金属粉との混合物と、充電時に電解質イオンが吸着する吸着物質粉又は充放電時に化学反応する活物質粉と、を含む蓄電デバイスの電極であって、
    前記混合物の重量比が9.75重量%未満である、蓄電デバイスの電極。
  18. 平均太さが0.5μm以下のカーボン繊維をさらに備える、請求項15~17の何れかに記載の蓄電デバイスの電極。
  19. 集電箔を除いた当該電極の平均厚さが120μm以上である、請求項15~18の何れかに記載の蓄電デバイスの電極。
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