JP2022114208A - 缶蓋用アルミニウム合金塗装板 - Google Patents

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【課題】薄肉化しても高いリベット成形性を有する缶蓋用アルミニウム合金塗装板を提供する。【解決手段】缶蓋用アルミニウム合金塗装板は、Si:0.05質量%以上0.40質量%以下、Fe:0.05質量%以上0.50質量%以下、Cu:0.01質量%以上0.30質量%以下、Mn:0.10質量%以上0.60質量%以下、Mg:4.0質量%以上6.0質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金板と、樹脂層とを備える。缶蓋用アルミニウム合金塗装板は、圧延面と平行な面において、板厚中心から両厚さ方向にそれぞれ50nm厚の領域の組織が、5万倍の透過型電子顕微鏡により観察される205×10-12m2の領域中に総計45個以上のサブグレインを有する。【選択図】図1

Description

本発明は、缶蓋用アルミニウム合金塗装板に関する。
飲料用の包装容器として、有底円筒状の胴部と蓋部からなる2ピースタイプのアルミニウム缶が広く使用されている。2ピースタイプのアルミニウム缶の缶蓋の成形において最も厳しい成形が実施されるのがリベット成形工程である。この工程で微細な割れやクラックが生じると、内容物の漏洩する危険性が高まってしまうため、従来では成形性に優れる冷間圧延工程の間に中間焼鈍を実施する中間焼鈍材が用いられていた。しかし近年、生産性向上の観点から、中間焼鈍を実施しない工程(以下、直通工程ともいう)で、成形性が向上した冷間圧延材を製造することが求められている。
缶蓋用アルミニウム合金板について、直通工程であっても成形性を確保する技術が開発されている。例えば、特許文献1には、板表面におけるCube方位密度がランダム方位試料の1.5倍以上である集合組織を有し、曲げ加工性に優れた缶蓋用アルミニウム合金板が記載されている。また特許文献2には、固溶Mgの割合を80%以上とし、サブグレイン面積率を10%以上90%以下とした強度と成形性に優れた缶蓋用アルミニウム合金板が記載されている。
特開2017-150043号公報 特開2016-79501号公報
しかしながら、缶蓋材の薄肉化(例えば、板厚0.2mm程度)が進んだ近年の状況では、従来の直通工程化された缶蓋用アルミニウム合金板ではリベット成形時に割れが生じる場合があった。本発明は、薄肉化しても高いリベット成形性を有する缶蓋用アルミニウム合金塗装板を提供することを課題とする。
本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板は、Si:0.05質量%以上0.40質量%以下、Fe:0.05質量%以上0.50質量%以下、Cu:0.01質量%以上0.30質量%以下、Mn:0.10質量%以上0.60質量%以下、Mg:4.0質量%以上6.0質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金板と、樹脂層とを備える。缶蓋用アルミニウム合金塗装板は、圧延面と平行な面において、板厚中心から両厚さ方向にそれぞれ50nm厚の領域の組織が、5万倍の透過型電子顕微鏡により観察される205×10-12の領域中に総計45個以上のサブグレインを有する。
本発明によれば、薄肉化しても高いリベット成形性を有する缶蓋用アルミニウム合金塗装板を提供することができる。
アルミニウム合金板の組織の透過型電子顕微鏡画像の一例である。 限界張出し高さの測定方法を説明する模式断面図である。 限界張出し高さと最終巻き取り温度との関係を示すグラフである。 限界張出し高さとサブグレインの個数との関係を示すグラフである。
以下、本発明の一実施形態に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板について説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具現化するための一例を例示するものであって、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係などは、説明を明確にするために誇張していることがある。本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
缶蓋用アルミニウム合金塗装板
本発明の一実施形態に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板は、アルミニウム合金板と、アルミニウム合金板の片面または両面に設けられる樹脂層とを備える。缶蓋用アルミニウム合金塗装板は、焼付塗装処理をした状態にて、圧延面と平行な面において、板厚中心から両厚さ方向にそれぞれ50nm厚の領域(以下、板厚中心部ということがある。)の組織が、5万倍の透過型電子顕微鏡により観察される205×10-12の領域中に総計45個以上のサブグレインを有する。
缶蓋用アルミニウム合金板合金塗装板は、焼付塗装処理をした状態にて、缶蓋に求められる特性として蓋加工に耐える成形性、飲料充填後の内圧に耐える耐圧強度、正常かつ簡単に開けられるための開缶性を満たす必要がある。本発明の一実施形態に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板においては、冷間圧延後に焼付塗装処理された状態における板厚中心部の組織に含まれるサブグレインの個数を所定値以上に増加させることで、強度を維持したまま、成形性、特にリベット成形性を向上させることができる。
アルミニウム合金組成
缶蓋用アルミニウム合金塗装板を構成するアルミニウム合金板は、例えば、Al-Mg系合金からなる。Al-Mg系合金としては、例えば、一般的なJIS合金、例えば5182等が挙げられる。
アルミニウム合金板は、具体的には、Si:0.05質量%以上0.40質量%以下、Fe:0.05質量%以上0.50質量%以下、Cu:0.01質量%以上0.30質量%以下、Mn:0.10質量%以上0.60質量%以下、Mg:4.0質量%以上6.0質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる。以下、アルミニウム合金板に含まれる各成分の含有量と、含有量の限定の理由について説明する。
(Si:0.05質量%以上0.40質量%以下)
Si含有量が0.05質量%未満では、鋳造時に高純度のアルミニウム地金が必要となりコストが増大する。また、Si含有量が0.40質量%を超えると、鋳造や熱間圧延時に生成される金属間化合物が多数形成され、亀裂の発生や伝播が促進されるため、開缶荷重が低下し意図しない開缶が生じやすくなる。Si含有量は、好ましくは0.30質量%以下であり、より好ましくは0.20質量%以下である。また、Si含有量は、好ましくは0.06質量%以上である。
(Fe:0.05質量%以上0.50質量%以下)
Fe含有量が0.05質量%未満では、鋳造時に高純度のアルミニウム地金が必要となりコストが増大する。一方、Fe含有量が0.50質量%を超えると、Al-Fe-Mn系金属間化合物が多くなり、鋳造や熱間圧延時に生成される金属間化合物が多数形成され、亀裂の発生や伝播が促進されるため、開缶荷重が低下し意図しない開缶が生じやすくなる。Fe含有量は、好ましくは0.10質量%以上であり、より好ましくは0.15質量%以上である。また、Fe含有量は、好ましくは0.40質量%以下であり、より好ましくは0.35質量%以下であり、さらに好ましくは0.30質量%以下である。
(Cu:0.01質量%以上0.30質量%以下)
Cu含有量が0.01質量%未満では強度が不足し、蓋の耐圧強度が不足する。一方、Cu含有量が0.30質量%を超えると強度が過大となり、リベット成形性が低下する。Cu含有量は、好ましくは0.02質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上である。また、Cu含有量は、好ましくは0.25質量%以下であり、より好ましくは0.20質量%以下であり、さらに好ましくは0.15質量%以下である。
(Mn:0.10質量%以上0.60質量%以下)
Mn含有量が0.10質量%未満では強度が不足し、蓋の耐圧強度が不足する。一方、Mn含有量が0.60質量%を超えると、強度が過大となり、またAl-Fe-Mn系金属間化合物が多くなるため、リベット成形性が低下する。Mn含有量は、好ましくは0.20質量%以上である。また、Mn含有量は、好ましくは0.55質量%以下、より好ましくは0.50質量%以下である。
(Mg:4.0質量%以上6.0質量%以下)
Mg含有量が4.0質量%未満では強度が不足し、蓋の耐圧強度が不足する。またアルミニウム合金塗装板の加工硬化能が不足し、リベット成形時にくびれが生じやすい。一方、Mg含有量が6.0質量%を超えると強度が過大となり、リベット成形性が低下する。Mg含有量は、好ましくは4.5質量%以上である。また、Mg含有量は、好ましくは5.5質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以下である。
(Ti:0.1質量%以下)
アルミニウム合金板はTiを含んでいてよい。Tiは鋳塊結晶粒の微細化を目的に、必要に応じて添加される。鋳造時に鋳塊組織を微細化すると、鋳造性が向上して高速鋳造が可能となる。その効果は0.01質量%以上の添加により得られる。一方、Ti含有量が0.1質量%を超えると粗大な化合物が形成され、リベット成形性の低下が生じる。従って、アルミニウム合金中のTi含有量は上記範囲内に制限されてよい。なお、Tiを添加する場合には、例えばTiとBの質量比を5:1とした鋳塊微細化剤(Al-Ti-B)を添加する。ワッフルあるいはロッドの形態で鋳造前の溶湯に添加するため、含有割合に応じたBも必然的に添加される。Ti含有量は、好ましくは0.08質量%以下であり、より好ましくは0.06質量%以下であってよい。
(Cr:0.1質量%以下)
アルミニウム合金板はCrを含んでいてよい。Crは0.1質量%以下の含有量であれば、アルミニウム合金板の材料特性に影響を及ぼさない。Crは不可避不純物であるが、コストダウンを図るため、例えば原料中へのスクラップ(Crを多く含有するスクラップ等)配合率を高くするなど、上記範囲内でCrを積極添加することもできる。Cr含有量は、好ましくは0.05質量%以下であってよい。
前記したTi及びCrは、前記した上限値を超えなければ、アルミニウム合金に1種以上、つまり1種のみが含まれる場合だけでなく、2種以上が含まれていても、当然に本発明の効果を妨げることが抑制される。
(残部:Al及び不可避不純物)
アルミニウム合金板は、Al及び上記合金成分の他に、不可避不純物を含有していてよい。不可避不純物としては、例えば、Zn、Zr、B、V、Na、Ca、Ni、In、Sn、Gaなどが挙げられる。不可避不純物について許容される含有量は、Zrについては、例えば、0.3質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下であってよい。Zr以外の他の元素については、例えば、各0.05質量%以下かつ合計0.15質量%以下であってよい。前記範囲内であれば、不可避不純物として含有した場合に限らず、前記元素を添加する場合であっても、本発明の効果を妨げることが抑制される。
缶蓋用アルミニウム合金塗装板を構成するアルミニウム合金板の板厚は、例えば0.15mm以上0.30mm以下であってよい。
アルミニウム合金板の組織
本発明の一実施形態においては、前記の合金組成とした上で、中間焼鈍を行わずに冷間圧延した後に、焼付塗装処理で熱処理された状態のアルミニウム合金板の組織が、板厚中心部の所定領域にサブグレインを45個以上有している。アルミニウム合金板の組織がサブグレインを所定数以上有する状態とすることで、強度を維持したままリベット成形性を向上できるという従来は解決が困難であった課題を解決することができる。アルミニウム合金板が有するサブグレインは、圧延面と平行な面において、板厚中心部の100nm厚みで、205×10-12を5万倍の透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して計数される。
サブグレインは亜結晶粒とも称され、小さな不定形の粒であり、冷間圧延などにより転位が導入された材料(組織)が、与えられた温度、時間、ひずみのもと、エネルギーの低い構造になろうと回復を進めることによって生じる。
すなわち、缶蓋用アルミニウム合金塗装板の場合、冷間圧延によって導入された転位セル壁、変形帯などの転位密集領域の転位が合体消滅と再配列することにより、シャープな境界をもつサブグレインが生じる。転位密集領域が多数形成されると、新たに移動してきた転位と合体消滅する確率が高くなり、加工硬化指数(n値)が低下するが、サブグレイン組織となることで加工硬化指数(n値)が向上する。加工硬化指数(n値)が向上すると均一変形能が向上するためリベット成形性が向上する。このためサブグレインが多いほどリベット成形性が向上する。
観察されるサブグレインの一例を図1に示す。図1は、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡(TEM)画像の一例である。転位密集領域10からサブグレイン20が形成され、サブグレイン20は、その境界である外縁形状がシャープ(鮮明で明確)な、内部に転位の少ない、小さな1つ1つの不定形の粒として結晶粒の中で識別される。
このように透過型電子顕微鏡の観察視野において、個々のサブグレインの数を数えることができる。なお、所定の観察視野内に存在するサブグレインの数の代わりに、サブグレインの面積率を測定することも考えられるが、その場合はサブグレインのサイズが考慮されないため、粗大なサブグレイン組織である場合でも高いサブグレイン面積率が得られる。粗大なサブグレイン組織は微細なサブグレイン組織に比べ転位密度が低いため、強度が低くなり缶蓋として必要な強度が得られなくなる。
したがって、一実施形態において、サブグレインの大きさは、例えば円相当径として1500nm以下であってよく、好ましくは1000nm以下である。サブグレインの円相当径の下限は例えば50nm以上であってよい。円相当径は、サブグレインの境界長を測定し、境界長と同じ長さを有する円の直径として算出される。
一実施形態において、缶蓋用アルミニウム合金塗装板を構成するアルミニウム合金板の板厚中心部の所定領域におけるサブグレインの個数は、45個以上であってよく、好ましくは60個以上、より好ましくは100個以上である。サブグレインの個数の上限は、例えば600個以下であってよい。
アルミニウム合金板の板厚中心部の所定領域におけるサブグレインの個数が45個未満と少ない場合、アルミニウム合金板が高強度となるが、その一方で、優れたリベット成形性と高強度とを両立することができない場合がある。すなわち、缶蓋用アルミニウム合金塗装板の成形性を保ったまま高強度化できない場合がある。
缶蓋用アルミニウム合金塗装板は、強度と成形性に優れる。缶蓋用アルミニウム合金塗装板の板強度は、例えば、0.2%耐力として、例えば300MPa以上であってよく、好ましくは320MPa以上、より好ましくは330MPa以上、更に好ましくは340MPa以上である。缶蓋用アルミニウム合金塗装板の板強度の上限は0.2%耐力として、例えば390MPa以下である。また、缶蓋用アルミニウム合金塗装板の成形性は、例えば、φ6mmの微小張出試験を行った際の限界張出し高さで評価することができる。φ6mmの微小張出試験による限界張出し高さは、例えば1.65mm以上であってよく、好ましくは1.66mm以上である。また、限界張出し高さの上限は、例えば2.0mm以下程度である。0.2%耐力が300MPa以上であって、限界張出し高さが1.65mm以上であると、充分な強度を維持しつつ、缶蓋の実成形時にも割れ、クラック等を発生させることなくリベット部の成形が可能である。
以上で説明したアルミニウム合金板の組織および特性は、冷間圧延板(冷間圧延後の板)に塗装および塗装焼付け処理を施した後のアルミニウム合金塗装板(プレコート板)の組織および特性である。なお、このような組織および特性は、塗装および塗装焼付け処理を施さずとも、あるいは缶蓋に成形せずとも、冷間圧延板に、塗装焼付け処理を模擬した特定条件での熱処理を施した後の、アルミニウム合金板の組織および特性であってもよい。これらの組織および特性は、塗装焼付処理と熱処理との条件が同じであれば、同じか、あるいは僅差により同じと見なすことができる組織および特性となる。
缶蓋用アルミニウム合金塗装板は、アルミニウム合金板の片面または両面に設けられる樹脂層を備えるプレコート板であってよい。樹脂層は、エポキシ系樹脂、塩ビゾル系樹脂、ポリエステル系樹脂等の有機塗料を塗布した後、熱処理して形成される焼付け樹脂層であってよい。有機塗料が塗布されるアルミニウム合金板は、クロメート系、ジルコン系等の表面処理剤で表面処理または化成処理された表面処理済みアルミニウム合金板であってよい。熱処理の温度は例えば、メタル到達温度(PMT:Peak Metal Temperature)が200℃以上290℃以下程度となる温度であってよい。樹脂層の厚みは、例えば0.5μm以上15μm以下程度であってよい。
缶蓋用アルミニウム合金塗装板は、例えば以下のようにして缶蓋に成形される。缶蓋用アルミニウム合金塗装板は、円板形状にブランキングされた後、得られたブランク材がシェル成形される。成形されたシェルに缶胴と巻締めするための巻締め部が成形される。巻締め部が成形された缶蓋には、巻締め部にラバーを注入するコンパウンドライニングが行われる。そして、缶蓋の中央部を張り出させるバブル成形および張出部を急峻な突起とするボタン成形を施すリベット成形工程、開口部の溝加工を施すスコア加工、凹凸、文字などの加工を施すビード・エンボス成形工程、および、タブ付けを施すステイク成形工程を含むコンバージョン成形が行われて缶蓋に成形される。このように成形された缶蓋は、内容物が充填された有底円筒形状の缶胴に巻締められ、缶蓋により密封されたアルミニウム缶について洗浄や殺菌などが行われる。
製造方法
缶蓋用アルミニウム合金塗装板を構成するアルミニウム合金板の製造方法の一例について説明する。アルミニウム合金板の製造方法は、第1工程である鋳造工程と、第2工程である均質化熱処理工程と、第3工程である熱間圧延工程と、第4工程である冷間圧延工程とを含み、これらの工程をこの順に行うものである。
(第1工程から第3工程:鋳造工程、均質化熱処理工程、熱間圧延工程)
第1工程は、目的の組成を有する鋳塊を半連続鋳造法にて作製する工程である。第2工程は、第1工程で作製されたアルミニウム合金の鋳塊に均質化熱処理を施す工程である。
第1工程では、半連続鋳造法(DC(direct chill)鋳造)によりアルミニウム合金を鋳造して鋳塊を得る。次に、鋳塊表層の不均一な組織となる領域を面削にて除去する工程と均質化熱処理を施す第2工程を行う。この均質化熱処理は、例えば400℃以上600℃以下の範囲で実施され、続く熱間圧延の予備加熱を兼ねる。
第3工程は、第2工程で均質化熱処理を施されたアルミニウム合金の鋳塊を熱間圧延する工程である。熱間圧延により得る熱間圧延板の板厚は、通常、冷間圧延して得られる製品板の板厚から冷間圧延による総圧延率を逆算して設定する。
熱間圧延の終了温度である巻き取り温度は、例えば300℃以上370℃以下であり、好ましくは320℃以上370℃以下である。巻き取り温度が300℃以上であると、熱間圧延板の再結晶率が向上して、塗装焼付後のアルミニウム合金板合金塗装板のリベット成形性がより向上する。一方、巻取り温度が370℃以下であると、板表面に焼付きと呼ばれる表面欠陥が発生することが抑制され、板表面の性状が良化する。
第4工程は、第3工程で熱間圧延された熱間圧延板を冷間圧延する工程である。第4工程では、熱間圧延板を、中間焼鈍を施すことなく冷間圧延して、所定の板厚のアルミニウム合金板に仕上げる。冷間圧延は、熱間圧延板が適切な荷重の範囲で製品板の板厚まで圧延されるように、所定の総圧延率となる複数回のパスを設定して行う。なお、パスとは、一対のワークロール間を板が1回通板して圧延されることをいう。
冷間圧延の総圧延率は、85.0%以上とすることが好ましく、より好ましくは90.0%以上である。冷間圧延の総圧延率が85.0%以上であると、アルミニウム合金板の強度が充分に得られるほか、転位密度が高くなり、焼付塗装処理後のサブグレイン化が促進される。図1に示されるように、転位を導入することにより、筋状の転位がタングル(もつれ、からみ)しやすくなり、林立転位やセル壁やせん断帯などの転位密集領域10が多く形成される。そして、その後の焼付け塗装などの熱処理により、転位密集領域10からサブグレイン20が形成され、本発明で規定する範囲のサブグレイン個数とすることができる。その結果、リベット成形性が向上する傾向がある。
冷間圧延の総圧延率を所定の範囲とすることに加えて、冷間圧延の最終圧延パスとその直前の圧延パスの通板間隔を1.0秒以内、最終圧延パス後の最終巻取り温度を135℃以上とすることが好ましい。上記通板間隔を1.0秒以内とすることで最終圧延パスでの動的回復がより促進され、前記転位密集領域においてサブグレインの形成がより促進され、次工程の塗装焼付時に従来よりも多くのサブグレインが形成されるほか、最終パス入側の材料温度が高く維持されるため、最終圧延パス後の最終巻取り温度を135℃以上にすることが出来る。これにより、巻取り後の転位の静的回復が促進され、加工硬化指数(n値)の向上によるリベット成形性向上が得られる。さらに、冷間圧延の圧延パス数を増加させることなく、圧延速度を向上させることになるため、生産性をより向上させることができる。なお、通板間隔の範囲は、好ましくは0.80秒以内、更に好ましくは0.50秒以内であり、最終巻取り温度の範囲は、好ましくは140℃以上、更に好ましくは150℃以上である。
以上の工程で製造されるアルミニウム合金板には、クロメート系、ジルコン系などの表面処理剤で化成処理が施される。その後、エポキシ系樹脂、塩ビゾル系、ポリエステル系などを含む有機塗料が塗布されて塗膜が形成される。形成された塗膜に対して、PMT(Peak Metal Temperature:メタル到達温度)が200℃以上290℃以下程度で、塗装焼付け処理することで、プレコート板としての缶蓋用アルミニウム合金塗装板が製造される。
以上、本発明の実施形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(供試材の作製)
表1に示す組成からなるアルミニウム合金を半連続鋳造法にて鋳造し、第1工程および第2工程として示した方法で面削、均質化熱処理を行い、冷却すること無く、熱間圧延した。熱間圧延の終了温度を巻取り温度として300℃以上370℃以下とした。そして、得られた熱間圧延板を、中間焼鈍を施すこと無く、表1に示す条件で冷間圧延して板厚0.25mmの冷間圧延板としてアルミニウム合金板を得た。なお、表1に示す組成の残部はAlと不可避不純物である。また、冷延率は、冷間圧延における総圧延率であり、通板間隔は、冷間圧延における最終圧延パスとその直前の圧延パス間の所要時間である。
続いて、得られたアルミニウム合金板に対し、歪み矯正処理及び化成処理を施した後、エポキシ系塗料を塗布し、連続焼付炉により200℃以上290℃以下のPMTで焼付け処理した。なお焼付温度および焼付け時間は、No.1からNo.12のいずれの製造例においても同等とした。
Figure 2022114208000002
製造したアルミニウム合金塗装板を供試材とし、以下の方法でサブグレイン個数、0.2%耐力、および限界張出し高さ(リベット成形性)を測定した。その結果を表1に示す。なお、表1中の「-」は未測定であることを示す。
サブグレインの個数
各供試材の圧延面と平行な面における、各板厚中心部の組織について、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡(TEM)による観察によりサブグレインをカウントして、サブグレインの個数を算出した。
具体的には、前記供試材を機械研磨して、板厚中心から両厚さ方向に0.05mm(厚さ0.1mm)とした後、ツインジェット式電解研磨法にて厚さ100nmの薄膜にし、この薄膜を透過型電子顕微鏡にて、5万倍の倍率で205×10-12の領域を撮影した。撮影視野内で測定したサブグレインの数を合計しサブグレインの個数を算出した。なおサブグレインの個数の測定についてはリベット成形性評価結果を考慮し、本発明の効果を端的に示す供試材を抽出して測定した。なお、サブグレインの個数の上限は特に定めないが、その上限は通常600個程度である。
0.2%耐力の測定
各供試材について、引張方向が圧延方向と平行になるJIS-5号引張試験片を作製し、JISZ2241の規定に準じて引張試験を行い、塗膜厚さを除した板厚を算出し0.2%耐力を求めた。0.2%耐力の適性範囲は300MPa以上であり、この範囲であれば薄肉化した缶蓋であっても蓋の耐圧強度を満足する。なお、0.2%耐力の上限は特に定めないが、その上限は通常390MPa程度である。
限界張出し高さの測定
各供試材から50mm×50mmの試験片を作製し、バブル工程を模擬した張出試験を実施し、限界張出し高さを求めた。張出試験は、図2に示すように、試験片1を上下のダイス2,3の間に挟み、一定のしわ押さえ力で固定し、ポンチ4を試験片1の中央部に対し垂直に押し込んで張出加工を行った。ダイス2,3は穴の内径が6.60mm、肩部半径が0.40mm、ポンチ4は外径が6.00mm、頭部の中央平坦部の直径が1mm、頭部の肩部半径が2.50mmである。この張出試験により、試験片1に割れの発生なしに張出加工が行える張出し高さの限界値(限界張出し高さ)を測定した。試験は同じ供試材で8回実施し、8回の測定の最大と最小の測定結果を除いた6回の結果を平均した値を限界張出し高さとした。限界張出し高さの適正範囲は1.65mm以上とした。限界張出し高さが1.65mm以上であれば、実成形時に十分な高さのボタンを成形することができ、リベット成形性に優れ、ステイク工程によってタブをしっかりと固定することができる。なお、限界張出し高さの上限は特に定めないが、その上限は通常2.0mm程度である。
表1に示すように、アルミニウム合金塗装板の組成が本発明の規定範囲内のNo.1からNo.12は、サブグレインの個数が本発明の規定範囲内にあるから、実施例に該当する。No.1からNo.12のいずれも、冷間圧延の最終パスとその直前のパスの通板間隔が1.0秒以内かつ巻取り温度が135℃以上であり、限界張出し高さ(リベット成形性)も合格値に達している。また図3に示すように限界張出し高さと最終巻取り温度は比例関係にあり、線形近似線の傾きから限界張出し高さが1.65mm以上となる最終巻取り温度は135℃程度となると予想される。また図4に示すように限界張出し高さとサブグレインの個数とは比例関係にあり、線形近似線の傾きから限界張出し高さが1.65mm以上となるサブグレインの個数は約45個以上と予想される。
1 試験片
2 ダイス
3 ダイス
4 ポンチ
10 転位密集領域
20 サブグレイン

Claims (3)

  1. Si:0.05質量%以上0.40質量%以下、Fe:0.05質量%以上0.50質量%以下、Cu:0.01質量%以上0.30質量%以下、Mn:0.10質量%以上0.60質量%以下、Mg:4.0質量%以上6.0質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金板と、樹脂層とを備え、
    圧延面と平行な面において、板厚中心から両厚さ方向にそれぞれ50nm厚の領域の組織が、5万倍の透過型電子顕微鏡により観察される205×10-12の領域中に総計45個以上のサブグレインを有する缶蓋用アルミニウム合金塗装板。
  2. 前記アルミニウム合金板は、Ti含有量が0.1質量%以下である請求項1に記載の缶蓋用アルミニウム合金塗装板。
  3. 前記アルミニウム合金板は、Cr含有量が0.1質量%以下である請求項1又は2に記載の缶蓋用アルミニウム合金塗装板。
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