JP2017171953A - 缶蓋用アルミニウム合金塗装板 - Google Patents

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【課題】、薄肉化および高強度化されたアルミニウム合金塗装板を高耐圧形状蓋に適用した場合であっても、優れた耐バックリング割れ性が得られる缶蓋用アルミニウム合金塗装板を提供する。【解決手段】缶蓋用アルミニウム合金塗装板1は、Mg:4.0〜5.5質量%、Mn:0.38〜0.60質量%、Cu:0.05〜0.25質量%、Fe:0.10〜0.50質量%、Si:0.05〜0.30質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金板を基材として、その表面に塗膜を有し、アルミニウム合金板の圧延方向Xと板厚方向Yを含む断面AをSEMで観察したときの、板表面Bから板厚方向Yにかけて板厚の10%の領域Cにおける結晶方位が変化する間隔の平均値が400nm以下であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、飲料缶等の缶蓋用材料である缶蓋用アルミニウム合金塗装板に関する。
従来、特に飲料用の包装容器として、有底円筒状の胴部と蓋部からなる2ピースタイプのアルミニウム缶が広く使用されている。
このようなアルミニウム缶を構成する缶蓋は、次のような工程で製造される(図5参照)。先ず、素材となるアルミニウム合金板(基材)に、耐食性を確保するためのクロメート処理等の化成処理を施す。その後、前記化成処理を施したアルミニウム合金板の片面、或いは両面に塗装および焼付け(以下、適宜、塗装焼付けという)を行い缶蓋用アルミニウム合金塗装板1とする。次に、缶蓋用アルミニウム合金塗装板1を所定の形状にブランキングし(ブランキング工程)、その後、シェル成形を行う(シェル成形工程(フォーム工程およびリフォーム工程))。前記シェル成形された缶蓋用アルミニウム合金塗装板に、缶胴と巻締めするための巻締め部(カール部)2を成形して缶蓋とし(カーリング成形工程)、この缶蓋の巻締め部にラバーを注入するコンパウンドライニングを行う。その後、バブル成形およびボタン成形を施すリベット成形工程、開口部の溝加工を施すスコア加工、凹凸および文字等の加工を施すビード・エンボス成形工程、およびタブ付けを施すステイク成形工程を含めたコンバージョン成形を行う。最後に、缶胴に内容物を充填した後、前記缶胴と前記成形加工が施された缶蓋の巻締めを行い、洗浄および殺菌を行っている。
このような缶蓋用に使用されるアルミニウム合金塗装板には、缶蓋成形工程における割れ、亀裂等の成形不良が生じないことが要求される。また、缶蓋へ成形され、缶胴と巻き締めされたのち、殺菌工程の加熱によって内圧が上昇しても反転(バックリング)しないだけの耐圧強度や、内圧によってスコア加工部が破断(スコア割れ)しないことが要求される。さらに、消費者によって開缶されるまで密封性を保ち、内容液の変質や漏洩を発生させないことが重要である。
近年アルミニウム缶の蓋に対して低コスト化の要求が強く、薄肉化が志向されている。しかしながら、薄肉化に伴って缶蓋の重要な特性の1つである耐圧強度が低下してしまう問題がある。そのため、耐圧強度を確保するための高強度化の材料の開発や、カウンターシンク部3(図5参照)を、曲率半径Rの小さい形状(以下、適宜、小R形状という)とした高耐圧形状の蓋(以下、高耐圧形状蓋と称する)の開発が行われてきた。
例えば特許文献1には、Mg、Mn、Si、Feを所定量含有するアルミニウム合金鋳塊を製造して、均質化処理、熱間圧延(熱間圧延後に焼鈍を施す場合もあり)、冷間圧延(冷間圧延途中に焼鈍を施す場合もあり)、塗装焼付け工程を所定の方法で行う缶エンド用アルミニウム合金板の製造方法が開示されている。そして、この製造方法により、薄肉化してもバルジ圧に優れ、同時に耐圧が維持され、かつ成形性と開口性にも優れるアルミニウム合金板を製造することができるとされている。
また、特許文献2には、Mg、Mn、Si、Cu、Fe、Tiを所定量含有し、かつ(Fe+Mn)/Siが20以下であるアルミニウム鋳塊を製造して、加熱処理、熱間圧延、冷間圧延、塗装焼付け工程を所定の方法で行う缶蓋用アルミニウム硬質板の製造方法が開示されている。そして、この製造方法により、集合組織を制御して強度異方性を下げることにより缶蓋の膨れによる亀裂の発生が少ないアルミニウム合金板を製造することができるとされている。
特開2010−53367号公報 特開2001−152271号公報
しかしながら、特許文献1に記載のような高強度材をアルミニウム缶の蓋に用いると、次のような問題がある。例えば、温度の高い場所に缶を保存しておいた際等に、内圧によってカウンターシンク部が座屈した際に曲げ変形が加わり、さらにその部分が反転することで曲げ戻される。これにより、割れ(バックリング割れ)が生じ、内容物が漏れることがある。そのためバックリング時も割れが生じない材料が求められているが、特許文献1に記載の缶エンド用アルミニウム合金板では、耐圧を維持してバックリング割れを防止しているものの、耐バックリング割れ性のさらなる向上が望まれている。また、特許文献2に記載の缶蓋用アルミニウム硬質板では、板厚が0.26mmと比較的厚いことに加えて、カウンターシンク部等に小R形状を有する高耐圧形状蓋のバックリング割れの改善ができていない。そのため、近年の薄肉化および缶の高耐圧化の要求に答えられていない。
本発明は、前記問題点を鑑みてなされたものであり、薄肉化および高強度化されたアルミニウム合金塗装板を高耐圧形状蓋に適用した場合であっても、優れた耐バックリング割れ性が得られる缶蓋用アルミニウム合金塗装板を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明者らは薄肉化(例えば、0.22mm以下)しても強度を損ねることなく耐バックリング割れ性を向上させる方法を種々検討し、缶蓋用アルミニウム合金塗装板の変形組織を制御する方法を見出した。すなわち、アルミニウム合金板(基材)は、中間焼鈍後の2次冷間圧延において板表層に変形組織が形成され、塗装焼付けによってある程度の焼鈍を受けた後も前記変形組織が残留する。本発明者らは、この板表層の変形組織が微細なほど耐バックリング割れ性が向上することを知見した。そこで、2次冷間圧延を適切な条件で行うことにより、板表層の変形組織を微細に制御する思想に至った。
すなわち、本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板は、Mg:4.0〜5.5質量%、Mn:0.38〜0.60質量%、Cu:0.05〜0.25質量%、Fe:0.10〜0.50質量%、Si:0.05〜0.30質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金板を基材として、その表面に塗膜を有し、前記アルミニウム合金板は、圧延方向と板厚方向を含む断面をSEMで観察したときの、板表面から板厚方向にかけて板厚の10%の領域における結晶方位が変化する間隔の平均値(以下、適宜、結晶方位が変化する間隔の平均値という)が400nm以下であることとする。
このような構成によれば、Mg、Mn、Cuを所定範囲で含有することにより、缶蓋用アルミニウム合金塗装板の強度を高く維持したまま、薄肉化された缶蓋でも耐圧強度を確保することができ、また、高耐圧形状蓋に適用した場合も耐バックリング割れ性を向上させることができる。また、Mn、Fe、Siを所定範囲で含有することにより、開缶性が向上する。さらに、結晶方位が変化する間隔の平均値を所定範囲に限定することで、缶蓋用アルミニウム合金塗装板の強度を高く維持したまま、高耐圧形状蓋に適用した場合も耐バックリング割れ性を向上させることができる。
本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板は、前記結晶方位が変化する間隔の平均値が250nm以下であることが好ましい。
このような構成によれば、耐バックリング割れ性をより向上させることができる。
本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板は、高強度であり、かつ耐バックリング割れ性に優れる。
実施形態に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板の斜視図である。 実施形態に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板の製造方法の流れを示すフローチャートである。 実施例における結晶方位が変化する間隔の平均値の算出方法について説明するための画像である。 実施例における結晶方位が変化する間隔の平均値の算出方法について説明するためのグラフである。 実施例における耐バックリング割れ性の評価試験について説明するための模式図である。 実施例における耐バックリング割れ性の評価試験について説明するための模式図である。 実施例における耐バックリング割れ性の評価試験における引張荷重−変位線図である。 缶蓋の一般的な製造工程を示す模式図である。
以下、本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板を実現するための形態について説明する。但し、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための缶蓋用アルミニウム合金塗装板を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる例示に過ぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板は、Mg、Mn、Cu、Fe、Siを所定量含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金で形成されるアルミニウム合金板(基材)の表面に塗膜を有するものである。
以下、本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板のアルミニウム合金板(基材)に含まれる合金成分の限定理由について説明する。なお、各成分の含有量は、アルミニウム合金板(基材)全体についての含有量である。
(Mg:4.0〜5.5質量%)
Mgは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。Mgの含有量が4.0質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度が不十分であり、缶蓋に成形されたときの耐圧強度が不足する。一方、Mgの含有量が5.5質量%を超える場合、アルミニウム合金板の強度が過剰となり、耐バックリング割れ性が低下する。したがって、Mgの含有量は4.0〜5.5質量%とする。
(Mn:0.38〜0.60質量%)
Mnは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。さらにMnは、アルミニウム合金板中にAl−Fe−Mn系、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成させ、缶蓋に成形されたときのスコア部の引裂き性を高め、開缶性を向上させる効果がある。Mnの含有量が0.38質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度向上の効果や缶蓋に成形させたときの開缶性向上の効果が得られない。一方、Mnの含有量が0.60質量%を超える場合、アルミニウム合金板の強度が過剰となるとともに、アルミニウム合金板中の金属間化合物が大きく、また過剰に形成されるため、耐バックリング割れ性が低下する。したがって、Mnの含有量は0.38〜0.60質量%とする。
(Cu:0.05〜0.25質量%)
Cuは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。Cuの含有量が0.05質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度が不十分であり、缶蓋に成形されたときの耐圧強度が不足する。一方、Cuの含有量が0.25質量%を超える場合、アルミニウム合金板の強度が過剰となり、耐バックリング割れ性が低下する。したがって、Cuの含有量は0.05〜0.25質量%とする。
(Fe:0.10〜0.50質量%)
Feは、アルミニウム合金板中にAl−Fe(−Mn)系、Al−Fe(−Mn)−Si系金属間化合物を形成させ、缶蓋に成形されたときのスコア部の引裂き性を高め、開缶性を向上させる効果がある。Feの含有量が0.10質量%未満の場合、スコア部の引裂き性が低下し、開缶時にスコア脱線や開缶力の増大といった開缶不良が生じ易くなる。一方、Feの含有量が0.50質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の金属間化合物が大きく、また過剰に形成されるため、耐バックリング割れ性が低下する。したがって、Feの含有量は0.10〜0.50質量%とする。
(Si:0.05〜0.30質量%)
Siは、アルミニウム合金板中にMg−Si系、Al−Fe(−Mn)−Si系金属間化合物を形成させ、缶蓋に成形されたときのスコア部の引裂き性を高め、開缶性を向上させる効果がある。Siの含有量が0.05質量%未満の場合、スコア部の引裂き性が低下し、開缶時にスコア脱線や開缶力の増大といった開缶不良が生じ易くなる。一方、Siの含有量が0.30質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の金属間化合物が大きく、過剰に形成されるため、耐バックリング割れ性が低下する。したがってSiの含有量は0.05〜0.30質量%とする。
(残部:Alおよび不可避的不純物)
アルミニウム合金板の残部は、Alおよび不可避的不純物である。不可避的不純物として、例えば、Cr、Zn、Ti、Zr、B等が本発明の効果を妨げない範囲で含有されていてもよい。詳細には、Crが0.3質量%以下、Znが0.3質量%以下、Tiが0.1質量%以下、Zrが0.1質量%以下、Bが0.1質量%以下、その他不純物が0.05質量%以下であれば、本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板の特性に影響しない。なお、Cr、Zn、Ti、Zr、B、その他不純物については、前記した所定の含有量を超えなければ、不可避的不純物として含有される場合だけではなく、積極的に添加される場合であっても、本発明の効果を妨げない。
(組織について)
図1に示すように、本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板1は、アルミニウム合金板(基材)において、圧延方向Xと板厚方向Yを含む断面AをSEMで観察したときの、板表面Bから板厚方向Y(ここでは下方向)にかけて板厚の10%の領域Cにおける結晶方位が変化する間隔の平均値が400nm以下である。なお、圧延方向Xと板厚方向Yを含む断面Aとは、アルミニウム合金板(基材)の側面であり、アルミニウム合金板(基材)の圧延方向Xと板厚方向Yとに平行な面のことである。また、板厚の10%の領域Cは、説明を分かりやすくするため、誇張して図示している。
以下、本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板のアルミニウム合金板(基材)組織の限定理由について説明する。
SEM(走査型電子顕微鏡)によって観察されるチャネリングコントラスト像は、冷間圧延によってアルミニウム合金板中に形成された変形組織について、変形組織を形成する高密度転位壁を境界とした比較的小さな結晶方位差をグレイスケールの画素値の変化(灰色の濃淡)によって可視化したものである。よって、グレイスケールの画素値と板表面から板厚方向にかけての距離でグラフをかいた際の、上下のピークの数を計測し、計測長さで除すことで、結晶方位が変化する間隔、すなわち変形組織の発達程度を測定することができる。圧延方向と板厚方向を含む断面で、SEMを用いて観察した板表面から板厚方向にかけて板厚の10%の領域における結晶方位が変化する間隔の平均値が400nm以下の場合は変形組織が発達しているため、ひずみが分散して耐バックリング割れ性が向上する。一方、結晶方位が変化する間隔の平均値が400nmを超える場合、変形組織が十分に発達していないため、ひずみが集中して耐バックリング割れ性が低下する。したがって、結晶方位が変化する間隔の平均値は400nm以下とする。
結晶方位が変化する間隔の平均値は、好ましくは250nm以下である。結晶方位が変化する間隔の平均値を250nm以下とすることで、耐バックリング割れ性をより向上させることができる。このような組織は、後記する製造方法にて制御される。
結晶方位が変化する間隔の平均値の算出方法の一例について説明する。
アルミニウム合金板を、クロスセクション・ポリッシャー(JEOL製IB−09010CP)を用いて加速電圧6.0kVで4時間加工し、圧延方向と板厚方向を含む断面が観察出来るようにサンプルを作製する。その面において、FE−SEM(JEOL製JSM−7000F型 電界放射型走査電子顕微鏡)を用い、板表面から板厚方向にかけて板厚の10%の領域を、COMPOモードにて加速電圧5kVの条件で撮影し、チャネリングコントラスト像を得て、画像処理によって結晶方位が変化する間隔の平均値を測定する。具体的には、圧延方向と板厚方向を含む断面について、2000倍のSEM写真を4視野撮影し、画像解析ソフト(Image J ver.1.49)を用いて板表面から板厚方向にかけて板厚の10%の領域の画素値を48nm毎に算出し、グレイスケールの画素値と測定長さでグラフをかき、連続する4点間でスムージングを行う。その後、グラフの傾きが正から負、または負から正へと変化する数を計測して、板厚の10%の長さで除した値を1測定ヶ所における結晶方位が変化する間隔とする。それを1視野当たり5ヶ所で行って平均する。そして、4視野の平均値を結晶方位が変化する間隔の平均値として算出する。
なお、ここでのスムージングとは、移動平均フィルタリングのことであり、グレイスケールの画素値の4点の測定点を一箇所ずつ厚み方向にずらしながら、グレイスケールの画素値の連続する4点の平均値を順次算出していくものであり、画素の濃度値の変化を滑らかにする処理である。
(塗膜)
アルミニウム合金板(基材)の表面の塗膜は、従来公知のものであり、例えば、エポキシ系塗料やポリエステル系塗料、塩ビゾル系塗料等を塗装焼付けすることで形成した塗膜が挙げられる。
次に、缶蓋用アルミニウム合金塗装板の製造方法の一例について説明する。
図2に示すように、缶蓋用アルミニウム合金塗装板の製造方法は、第1工程(鋳塊作製工程)S101と、第2工程(均質化熱処理工程)S102と、第3工程(熱間圧延工程)S103と、第4工程(1次冷間圧延工程)S104と、第5工程(中間焼鈍工程)S105と、第6工程(2次冷間圧延工程)S106と、第7工程(塗装焼付け工程)S107と、を含み、この順に行う。
以下、各工程について説明する。
(第1〜3工程:鋳造,均質化熱処理,熱間圧延)
第1工程S101は、前記説明した組成を有する鋳塊を半連続鋳造法にて作製する工程である。第2工程S102は、第1工程で作製されたアルミニウム合金鋳塊に均質化熱処理を施す工程である。第3工程S103は、第2工程で均質化熱処理を施された鋳塊を熱間圧延する工程である。
はじめに、DC鋳造法等の公知の半連続鋳造法によりアルミニウム合金を鋳造し(第1工程)、鋳塊表層の不均一な組織となる領域を面削にて除去した後、均質化熱処理を施す(第2工程)。均質化熱処理の条件は特に限定しないが、好ましくは400〜550℃の温度範囲で1〜10時間保持するとよい。均質化熱処理後、冷却することなく続けて熱間圧延を行い(第3工程)、熱間圧延板を作製する。
(第4工程:1次冷間圧延)
第4工程S104は、第3工程S103で熱間圧延されたアルミニウム合金圧延板を冷間圧延(1次冷間圧延)する工程である。
第4工程S104の冷間圧延では、中間焼鈍工程で確実に完全再結晶組織を得るため、総圧延率を50%以上とすることが好ましい。総圧延率が50%以上であれば、圧延による蓄積歪みが増大して次工程の焼鈍後に変形組織が残留しにくくなり、再結晶組織を得易い。
(第5工程:中間焼鈍)
第5工程S105は、第4工程S104で冷間圧延されたアルミニウム合金圧延板を焼鈍する工程である。
第5工程S105の焼鈍では、前記冷間圧延板の組織を再結晶させるとともに、Cuを固溶させ、塗装焼付け後の缶蓋用アルミニウム合金塗装板の強度を高めることができる。
(第6工程:2次冷間圧延)
第6工程S106は、第5工程S105で焼鈍されたアルミニウム合金圧延板を、冷間圧延(2次冷間圧延)する工程である。第6工程S106は、パス数を3パス以下、ワークロール径をφ600mm以下、2次冷間圧延における総圧延率を50%以上とする条件で冷間圧延を行う。
2次冷間圧延において、ワークロール径をφ600mm以下とし、かつ3パス以下で行うことで、板表層の変形組織が発達する。具体的には、板表層に微細な変形組織が形成されることで、曲げ加工時にせん断帯が多数導入され、ひずみが分散するため曲げ加工性が向上する。
ワークロール径は、板表層の微細な変形組織をより発達させるため、好ましくはφ400mm以下である。また、パス数は、板表層の微細な変形組織をより発達させるため、好ましくは2パス以下である。
なお、パス数およびワークロール径について好ましい条件とすることで、板表層の結晶方位が変化する間隔の平均値が小さくなり、耐バックリング割れ性をより向上させることができる。
また、冷間圧延による加工硬化によりアルミニウム合金板の強度を適度に高めるため、また、結晶方位が変化する間隔の平均値を小さくするため、2次冷間圧延工程における総圧延率は50%以上とする。総圧延率が50%未満の場合、強度が低くなるとともに、結晶方位が変化する間隔の平均値が大きくなるため、耐バックリング割れ性が低下する恐れがある。なお、2次冷間圧延工程における総圧延率を85%超としても結晶方位が変化する間隔の平均値の減少割合が飽和するため、2次冷間圧延工程における総圧延率は85%以下とすることが好ましい。
(第7工程:塗装焼付け)
第7工程S107は、第6工程S106で2次冷間圧延されたアルミニウム合金圧延板(基材)に、塗装焼付け(表面処理)を施す工程である。
具体的には、2次冷間圧延後のアルミニウム合金圧延板に、例えば、クロメート系やジルコニウム系等の化成処理を施した後、塗装焼付けを行い、缶蓋用アルミニウム合金塗装板とする。塗装焼付けは、例えば、エポキシ系塗料やポリエステル系塗料、塩ビゾル系塗料等をアルミニウム合金圧延板(基材)の片面、或いは両面に塗布し、PMT(Peak Metal Temperature/メタル到達温度)を例えば210〜270℃として焼付け処理を行えばよい。
缶蓋用アルミニウム合金塗装板の製造方法は、以上説明したとおりであるが、缶蓋用アルミニウム合金塗装板の製造を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間或いは前後に、他の工程を含めてもよい。例えば、板の表面の異物を除去する異物除去工程や、各工程で発生した不良品を除去する不良品除去工程等を含めてもよい。
以上説明したとおり、本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板によれば、高強度かつ耐バックリング割れ性に優れることから、カウンターシンク部等を小R形状とした高強度かつ高耐圧形状の蓋へ成形された場合でも、バックリング時の割れが生じない缶蓋を得ることができる。そして、本発明の缶蓋用アルミニウム合金塗装板は、缶蓋用として用いることができるが、特に、ビール缶、炭酸を含む清涼飲料缶のような、缶内圧の高い陽圧缶蓋に好適に用いることができる。
以上、本発明を実施するための形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(材料作製)
表1に示すMg、Mn、Cu、Fe、Siの含有量が本発明の範囲内となるアルミニウム合金を半連続鋳造法(DC)にて鋳造し、鋳塊表層を面削してスラブを作製した。このスラブに500℃×5時間の均質化熱処理を施した後、熱間圧延を行って熱間圧延板とした。この熱間圧延板に対し、総圧延率70%の1次冷間圧延を行った後、800℃/minで加熱し、500℃に到達後すぐに100℃まで平均1200℃/minで冷却する焼鈍を施した。その後、表1の条件で2次冷間圧延を行い、板厚0.22mmのアルミニウム合金板(基材)を作製した(No.1〜10)。さらに、Mg、Mn、Cu、Fe、Siの含有量が本発明の範囲外となるアルミニウム合金板(基材)、および2次冷間圧延条件が不適切なアルミニウム合金板(基材)を作製した(No.11〜21)。これらアルミニウム合金板に塗装を模擬した、PMT(Peak Metal Temperature/メタル到達温度)250℃、加熱時間20秒の熱処理を施して以下の算出および試験を行った。
(結晶方位が変化する間隔の平均値)
結晶方位が変化する間隔の平均値の算出方法について、図3A、図3Bを参照して説明する。なお、結晶方位が変化する間隔の平均値は、前記した「本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金塗装板のアルミニウム合金板(基材)組織の限定理由」で説明した原理に基づき求めたものである。
表1の各条件で作製したアルミニウム合金板を、クロスセクション・ポリッシャー(JEOL製IB−09010CP)を用いて加速電圧6.0kVで4時間加工し、圧延方向と板厚方向を含む断面Aが観察出来るようにサンプルを作製した。その面において、FE−SEM(JEOL製JSM−7000F型 電界放射型走査電子顕微鏡)を用い、板表面Bから板厚方向にかけて板厚の10%の領域5を、COMPOモードにて加速電圧5kVの条件で撮影し、チャネリングコントラスト像を得て、画像処理によって結晶方位が変化する間隔の平均値を測定した。具体的には、圧延方向と板厚方向を含む断面Aについて、2000倍のSEM写真を4視野撮影し、画像解析ソフト(Image J ver.1.49)を用いて板表面から板厚方向にかけて板厚の10%の領域(22μm)の画素値を48nm毎に算出し、グレイスケールの画素値と測定長さでグラフをかき、連続する4点間でスムージングを行った。その後、グラフの傾きが正から負、または負から正へと変化する数を計測して、板厚の10%の長さで除した値を1測定ヶ所における結晶方位が変化する間隔とした。それを1視野当たり5ヶ所で行って平均した。そして、4視野の平均値を結晶方位が変化する間隔の平均値として算出し、表1に示した。この結晶方位が変化する間隔の平均値の適正な値は400nm以下である。なお、スムージングについては、前記した結晶方位が変化する間隔の平均値の算出方法の一例で説明したとおりである。また、「板厚の10%の領域5」は、粗大な晶出物(板厚の1%以上)を避けて任意で決めたものである。また、図3A、図3Bは、表1のNo.10のアルミニウム合金板についてのものである。
[評価]
(0.2%耐力)
表1の各条件で作製したアルミニウム合金板を用いて引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS−5号引張試験片を作製した。その後、JIS Z 2241:2011の規定に準じて引張試験を行い、オフセット法により0.2%耐力を求めた。0.2%耐力の適正範囲は300〜355MPaとし、この範囲であれば、薄肉化された高耐圧形状蓋であっても耐圧強度を満足する。したがって、300〜355MPaのものを合格とした。
(耐バックリング割れ性)
バックリング割れは内圧によってカウンターシンクが座屈し、その後の角出しによる曲げ変形、角出し周囲の反転による曲げ戻し変形によって板の表面に亀裂(クラック)が発生し、その亀裂が成長することによって生じる。そのため、耐バックリング割れ性の評価は、曲げ加工を行った後、曲げ戻しながら引っ張る方法で行った。曲げ戻し時の1次ピーク荷重が4.50N以上であるものを合格とした。
サンプルサイズは、厚さ0.22mm×幅15mm×長さ50mmである。図4A、図4B、図4Cを参照し、以下に曲げ条件と曲げ戻し条件を示す。なお、図4A、図4Bにおいて、符号10は試験材、符号20は曲げロール、符号21は曲げ治具(パンチ)、符号Wはロール間距離、符号30は亀裂(クラック)、符号Lは引張荷重である。
曲げ条件:
材料強度試験機(INSTRON製 5965)、クロスヘッド速度:20mm/min、ロール曲げ、ロール間距離W:0.95mm、曲げ治具(パンチ)の曲率半径R:0.2mm。
曲げ戻し引張条件:
材料強度試験機(INSTRON製 5965)、クロスヘッド速度:20mm/min、図4Cの引張荷重−変位線図における1次ピークの荷重で評価。
評価結果を表1に示す。なお、表1において、本発明の要件を満たさないもの、評価基準を満たさないものについては、数値に下線を引いて示す。
表1に示すように、実施例であるNo.1〜10は、本発明の要件を満足するため、全ての評価項目において合格であった。
一方、比較例であるNo.11〜21は、本発明の要件を満たさないため、以下の結果となった。
No.11は、Mg含有量が少ないため、強度が低く、耐バックリング割れ性に劣った。
No.12は、Mg含有量が多いため、強度が高く、耐バックリング割れ性に劣った。
No.13は、Mn含有量が少ないため、強度が低く、耐バックリング割れ性に劣った。
No.14は、Mn含有量が多いため、強度が高く、また、粗大な金属間化合物が多く形成され、耐バックリング割れ性に劣った。
No.15は、Cu含有量が少ないため、強度が低く、耐バックリング割れ性に劣った。
No.16は、Cu含有量が多いため、強度が高く、耐バックリング割れ性に劣った。
No.17は、Fe含有量が多いため、粗大な金属間化合物が多く形成され、耐バックリング割れ性に劣った。
No.18は、Si含有量が多いため、粗大な金属間化合物が多く形成され、耐バックリング割れ性に劣った。
No.19は、2次冷間圧延でのワークロール径が大きいため、結晶方位が変化する間隔の平均値が大きくなり、耐バックリング割れ性に劣った。
No.20は、2次冷間圧延でのパス数が多いため、結晶方位が変化する間隔の平均値が大きくなり、耐バックリング割れ性に劣った。
No.21は、2次冷間圧延での総圧延率が小さいため、強度が低くなり、また、結晶方位が変化する間隔の平均値が大きくなり、耐バックリング割れ性に劣った。
以上、本発明について実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することが可能であることはいうまでもない。
1 缶蓋用アルミニウム合金塗装板
2 巻締め部(カール部)
3 カウンターシンク部
5 板厚の10%の領域
10 試験材(アルミニウム合金板:基材)
20 曲げロール
21 曲げ治具(パンチ)
30 亀裂(クラック)
A 圧延方向と板厚方向を含む断面
B 板表面
C 板厚の10%の領域
L 引張荷重
W ロール間距離
X 圧延方向
Y 板厚方向

Claims (2)

  1. Mg:4.0〜5.5質量%、Mn:0.38〜0.60質量%、Cu:0.05〜0.25質量%、Fe:0.10〜0.50質量%、Si:0.05〜0.30質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金板を基材として、その表面に塗膜を有し、
    前記アルミニウム合金板は、圧延方向と板厚方向を含む断面をSEMで観察したときの、板表面から板厚方向にかけて板厚の10%の領域における結晶方位が変化する間隔の平均値が400nm以下であることを特徴とする缶蓋用アルミニウム合金塗装板。
  2. 前記結晶方位が変化する間隔の平均値が250nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の缶蓋用アルミニウム合金塗装板。
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