JP2022113144A - 撥水皮膜、撥水部材、塗料組成物及び撥水部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】酸性条件又は汚染条件であっても撥水性の高い撥水皮膜、撥水部材、塗料組成物及び撥水部材の製造方法を提供する。【解決手段】撥水皮膜は、アルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を主成分として含む複数の長尺粒子と、複数の長尺粒子の表面を被覆し、撥水樹脂により形成された被覆層とを含む凝集体を備える。凝集体は、複数の長尺粒子が三次元的に凝集している。凝集体の外表面は被覆層によって被覆されている。凝集体は、被覆層によって被覆された複数の長尺粒子の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間を保持している。【選択図】図3
Description
本発明は、撥水皮膜、撥水部材、塗料組成物及び撥水部材の製造方法に関する。
撥水部材は、表面の濡れ性が小さく、表面に付着した水滴を容易にはじくことができる。部材の表面が撥水性を有する場合、水滴が部材の表面から容易に滑り落ちるため、防水性が求められる部材などに適用される。特に、部材の表面と水滴との接触角が150°以上になる現象を超撥水という。部材の表面が平滑である場合には超撥水性を実現することが困難であるため、部材の表面に凹凸を形成することが提案されている。
特許文献1には、硬化性シリコーンゴム成分と、充填材とを含有する組成物を硬化させて得られる部材が開示されている。上記充填材は、核部と、核部から異なる4軸方向に伸びた針状部とを有する立体形状を有し、組成物中における、硬化性シリコーンゴム成分と充填材の含有量の合計に対する充填材の含有量の含有質量比が0.70以上である。非特許文献1では、特許文献1に開示される部材と同様の部材について、超撥水性材料として用いられることが示されている。
「高撥水・高親水性材料の開発動向」,月刊機能材料,シーエムシー出版,2020年6月,Vol.40,No.6
特許文献1の実施例の部材では部材表面と水滴との接触角が150°程度であり、部材が優れた撥水性を有することが確認されている。しかしながら、特許文献1に開示される充填材と同様の立体形状を有し、通常条件下において優れた撥水性を有する部材であっても、酸性条件下に部材が置かれた場合には、充填材成分が変形してしまい、部材の表面の凹凸構造が維持されないおそれがある。また、汚染条件下に部材が置かれた場合には、大気中の微粒子が核部と針状部とを有する立体形状に付着してしまい、部材の表面の凹凸構造が維持されないおそれがある。このような場合、通常条件下で得られたような150°程度の接触角が得られないおそれがある。
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、酸性条件又は汚染条件であっても撥水性の高い撥水皮膜、これを用いた撥水部材、及び、撥水皮膜を形成するための塗料組成物、並びに、撥水部材の製造方法を提供することである。
本発明の第1の態様に係る撥水皮膜は、アルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を主成分として含む複数の長尺粒子と、複数の長尺粒子の表面を被覆し、撥水樹脂により形成された被覆層とを含む凝集体を備える。凝集体は、複数の長尺粒子が三次元的に凝集している。凝集体の外表面は被覆層によって被覆されている。凝集体は、被覆層によって被覆された複数の長尺粒子の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間を保持している。
本発明の第2の態様に係る撥水部材は、基材と、基材の表面を被覆する撥水皮膜とを備える。
本発明の第3の態様に係る塗料組成物は、アルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を主成分として含む複数の長尺粒子と、溶剤と、溶剤に溶解された撥水樹脂とを含有する。
本発明の第4の態様に係る塗料組成物は、コア部と、アルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を主成分として含む複数の長尺粒子がコア部から外表面に向けて放射状に延びた突起部とを含む突起粒子と、溶剤と、溶剤に溶解された撥水樹脂とを含有している。突起粒子では、突起粒子に含まれる複数の長尺粒子及びコア部が、複数の長尺粒子の各々とコア部とによって囲まれる空間を保持して配置されている。
本発明の第5の態様に係る撥水部材の製造方法は、基材の表面に塗料組成物を塗布して撥水皮膜を形成する。撥水皮膜は、複数の長尺粒子と、複数の長尺粒子の表面を被覆し、撥水樹脂により形成された被覆層とを含む凝集体を備える。凝集体は、複数の長尺粒子が三次元的に凝集している。凝集体は、被覆層によって被覆された複数の長尺粒子の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間を保持している。
本発明によれば、酸性条件又は汚染条件であっても撥水性の高い撥水皮膜、これを用いた撥水部材、及び、撥水皮膜を形成するための塗料組成物、並びに、撥水部材の製造方法を提供することができる。
以下、図面を用いて本実施形態に係る撥水皮膜、撥水部材、塗料組成物及び撥水部材の製造方法について詳細に説明する。本開示は以下の実施形態のみに限定されるものではない。また、実施形態における構成要素は、一部又は全部を適宜組み合わせることができる。
[撥水皮膜]
撥水皮膜は、複数の長尺粒子と、複数の長尺粒子の表面を被覆する被覆層とを含む凝集体を備えている。凝集体の外表面は被覆層によって被覆されている。凝集体は、複数の長尺粒子が三次元的に凝集している。凝集体は、被覆層によって被覆された複数の長尺粒子の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間を保持している。被覆層で被覆された複数の長尺粒子間に設けられた空間と、被覆層で被覆された長尺粒子とによって撥水皮膜の表面に凹凸構造が形成され、Cassie-Baxter表面が形成される。そのため、撥水皮膜の表面に水滴を滴下した場合であっても、撥水皮膜表面と水滴との間に空隙が形成され、撥水皮膜と水滴との接触面積が小さくなることから、撥水性の高い撥水皮膜を得ることができる。
撥水皮膜は、複数の長尺粒子と、複数の長尺粒子の表面を被覆する被覆層とを含む凝集体を備えている。凝集体の外表面は被覆層によって被覆されている。凝集体は、複数の長尺粒子が三次元的に凝集している。凝集体は、被覆層によって被覆された複数の長尺粒子の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間を保持している。被覆層で被覆された複数の長尺粒子間に設けられた空間と、被覆層で被覆された長尺粒子とによって撥水皮膜の表面に凹凸構造が形成され、Cassie-Baxter表面が形成される。そのため、撥水皮膜の表面に水滴を滴下した場合であっても、撥水皮膜表面と水滴との間に空隙が形成され、撥水皮膜と水滴との接触面積が小さくなることから、撥水性の高い撥水皮膜を得ることができる。
凝集体は、長尺粒子どうしが凝集した構造を有している。また、撥水皮膜は、複数の長尺粒子が凝集することで形成された凝集体を有している。例えば、長尺粒子を含む凝集体が形成される場合には、基材に対して長尺粒子が直接に凝集することで、基材の表面に複数の長尺粒子が配列した構造を有する凝集体が考えられる。本開示の撥水皮膜は、このような基材に対して長尺粒子が配列した構造を有する凝集体を含んでいてもよいが、長尺粒子どうしが三次元的に凝集することで形成される、長尺粒子からなる立体構造を有する凝集体を少なくとも外表面に有している。そして、基材の表面に、このような長尺粒子どうしが三次元的に凝集した凝集体が存在することで撥水皮膜が形成されている。
凝集体は、凝集体を構成する単位粒子として長尺粒子を含んでなるものである。例えば、長尺粒子を含む凝集体が形成される場合には、長尺粒子と同様の構造をその一部に含み、全体としては非長尺状の単位粒子が凝集した構造を有する凝集体が考えられる。本開示の撥水皮膜は、このような非長尺状の単位粒子からなる構造を有する凝集体を含んでいてもよいが、長尺粒子を単位粒子として凝集することで形成される、長尺粒子からなる凝集体を少なくとも外表面に有していることが好ましい。
凝集体は、複数の長尺粒子によって形成された三次元的に凝集した構造を有している。ここで、三次元的というのは、長尺粒子が直線状(一次元的)、又は平面状(二次元的)のみに凝集するのではなく、互いに直行する3軸によって規定される空間状に広がって凝集する構造を有することをいう。中でも、隣接する長尺粒子が同じ方向に配向しておらず、向きが互いに異なっている状態で凝集することが好ましい。また、凝集体は、複数の長尺粒子が球状に集合して、長尺粒子が表面に向けて突起状に配置された、突起粒子を有することが好ましい。凝集体は、後述するようにコア部を含み、長尺粒子がコア部から外表面に向けて放射状に配列するようにして凝集した突起粒子(コアあり突起粒子)を有していてもよい。また、凝集体は、コア部を含まずに、長尺粒子が内部から外表面に向けて放射状に配列するようにして凝集した突起粒子(コアなし突起粒子)を有していてもよい。また、凝集体は、長尺粒子が三次元的なネットワークを形成した、三次元の網目状構造を有していてもよい。
撥水皮膜は、1つの大きな凝集体であってもよく、複数の長尺粒子を含む1次凝集体が複数集まって形成される2次凝集体であってもよい。また、撥水皮膜は、1つの大きな凝集体が平面的に広がったものであってもよく、1つの大きな凝集体が表面に起伏を有して広がったものであってもよい。また、撥水皮膜は、上記の突起粒子を1次凝集体として、これらが複数集まって形成されていてもよい。このとき、略球状の1次凝集体が複数集まることで、球の一部を欠いた球欠状の1次凝集体が集合して撥水皮膜を形成していてもよい。この場合、被覆層によって被覆された複数の長尺粒子の間に撥水皮膜の外部と連通する空間を、1次凝集体の球冠上に保持することができる。また、撥水皮膜が、突起粒子を1次凝集体として、突起粒子が複数集まった2次凝集体として形成されている場合には、複数の突起粒子の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間を保持することができ、撥水皮膜の表面に凹凸構造が形成される。
凝集体は、長尺粒子が弱凝集したアグロメレート(弱凝集体)であってもよい。複数の粒子によって形成される凝集体又は集合体は、アグロメレート(弱凝集体)、アグリゲート(強凝集体)、フロキュレート(集合体)に分類することができる。本明細書において、アグロメレートとは、粒子同士が結合して形成される複数の粒子の凝集体であって、複数の粒子が三次元的に弱く凝集して、複数の粒子に囲まれて生じる空隙の体積が大きくなるように粒子が粗に凝集したものをいう。また、アグリゲートとは、粒子同士が結合して形成される複数の粒子の凝集体であり、複数の粒子が強く凝集して、複数の粒子に囲まれて生じる空隙の体積が小さくなるように粒子が密に凝集したものをいう。また、フロキュレートとは、粒子を分散させる分散媒を介して形成される複数の粒子の集合体であって、イオン間相互作用、水素結合、双極子相互作用、ファンデルワールス力等の粒子間の相互作用によって複数の粒子が集合したものをいう。本開示の凝集体は、アグロメレートを有することが好ましく、凝集体の表面の構造がアグロメレートからなることがより好ましい。凝集体の凝集態様は、SEMで観察した二次電子像から得られる対象の形状から判別することができる。
長尺粒子によって形成される凝集体がアグロメレートである場合には、隣接する長尺粒子が同じ方向に配向しておらず、向きが互いに異なっている状態で凝集する。また、隣接する長尺粒子同士が点で接触して交差するように接触した状態で凝集する。さらに、被覆層によって被覆された複数の長尺粒子の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間が保持されることになる。そして、撥水樹脂によって被覆された長尺粒子が内部から外表面に向けて放射状に配列するようにして凝集して、表面に突起を有する凝集体を形成することができる。長尺粒子によって形成される凝集体がアグロメレートである場合には、複数の長尺粒子の間に生じる空隙によってCassie-Baxter表面が形成されやすくなり、撥水性が向上しやすくなり、また耐汚染性が向上しやすくなる。
長尺粒子によって形成される凝集体がアグリゲートである場合には、隣接する長尺粒子が同じ方向に配向して、向きが互いに揃った状態で凝集する。また、隣接する長尺粒子同士が辺又は面で接するように接触した状態で凝集する。これにより、撥水樹脂によって被覆された長尺粒子が束状、板状、帯状、面状、又は柱状の凝集体を形成することになる。長尺粒子によって形成される凝集体がアグリゲートである場合には、複数の長尺粒子の間に空隙が生じにくく、Cassie-Baxter表面が形成されにくくなるため、撥水性が向上しにくくなり、また耐汚染性が向上しにくくなる。
撥水皮膜が複数の1次凝集体が集まった2次凝集体である場合には、1次凝集体の平均粒子径は1μm以上75μm以下であることが好ましい。凝集体の平均粒子径が上記範囲内であると、撥水皮膜の表面に複数の1次凝集体によって形成される粗大な凹凸と、複数の長尺粒子によって形成される微細な凹凸とが形成される。そのため、撥水皮膜の表面に複雑な凹凸構造が形成され、撥水皮膜の表面と水滴との接触面積がより小さくなることから、撥水性の高い皮膜を得ることができる。1次凝集体の平均粒子径は、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。また、1次凝集体の平均粒子径は、50μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。なお、本明細書において、1次凝集体の平均粒子径は、SEMの二次電子像で観察した10個~100個の凝集体の粒子径の平均値である。
長尺粒子は、アルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を主成分として含む。長尺粒子は、アルミナを主成分として含んでいてもよく、ベーマイトを主成分として含んでいてもよく、アルミナ及びベーマイトを主成分として含んでいてもよい。アルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方は、酸性雰囲気下であっても溶解しにくいため、酸化亜鉛などを含む無機粒子を用いた場合と比較し、酸性条件であっても撥水皮膜の撥水性の低下を抑制することができる。なお、ここでいう主成分とは、長尺粒子の各々がアルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を50質量%以上含むことを意味する。長尺粒子はアルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を60質量%以上含んでいてもよく、70質量%以上含んでいてもよく、80質量%以上含んでいてもよい。また、長尺粒子はアルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を90質量%以上含んでいてもよく、95質量%以上含んでいてもよく、99質量%以上含んでいてもよい。長尺粒子には、例えば製造原料に由来する酸化マグネシウムなどが含まれていてもよい。撥水皮膜に含まれる無機成分のうち、アルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方の成分の含有量は、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよい。
複数の長尺粒子の各々は、針形状、鱗片形状及び板形状からなる群より選択される少なくとも1種の形状を有していてもよい。長尺粒子がこのような形状を有している場合、複数の長尺粒子間に空間が形成されやすいことから、酸性条件又は汚染条件であっても、撥水性の低下を抑制しやすい。これらの中でも、長尺粒子は針形状の粒子であり、複数の長尺粒子の各々は被覆層を介して互いに結合していることが好ましい。なお、針形状とは、直線状に延びた形状を意味するが、厳密に針の形状をしている必要はない。針形状は針のような形状をしていればよく、例えば厳密な直線でなくてもよい。鱗片形状及び板形状についても同様である。
長尺粒子の平均長径は、1μm以上10μm以下であることが好ましい。平均長径が1μm以上であると、大気中の微粒子が撥水皮膜に付着するような汚染条件であっても、複数の長尺粒子間の空間が微粒子によって閉塞したり、複数の長尺粒子を被覆する被覆層の表面が微粒子で覆われたりするのを抑制することができる。そのため、汚染条件であっても、撥水皮膜の撥水性が低下するのを抑制することができる。平均長径が10μm以下であると、長尺粒子が折れたり曲がったりなどの変形を受けにくいため、耐摩耗性に優れている。平均長径は、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。また、平均長径は、8μm以下であってもよく、6μm以下であってもよい。なお、本明細書において、長径とは、長尺粒子のうち最も径が大きくなる部分の長さを意味する。例えば長尺粒子が針状粒子の場合、長径は針状粒子の長さに相当する。また、例えば長尺粒子が鱗片状粒子又は板状粒子の場合、長径は鱗片状粒子又は板状粒子の平面方向の最も径が大きくなる部分の長さを意味する。また、本明細書において、平均長径は、SEMの二次電子像で観察した10個~100個の長尺粒子の長径の平均値である。具体的には、長径及び短径は、後述する実施例で説明する方法により得る。
長尺粒子の平均短径は、特に限定されないが、0.01μm以上1μm以下である。平均短径が0.01μm以上であると、長尺粒子が折れたり曲がったりなどの変形を受けにくいため、耐摩耗性に優れている。また、平均短径が1μm以下であると、大気中の微粒子が撥水皮膜に付着するような汚染条件であっても、複数の長尺粒子間の空間が微粒子によって閉塞したり、複数の長尺粒子を被覆する被覆層の表面が微粒子で覆われたりするのを抑制することができる。そのため、汚染条件であっても、撥水皮膜の撥水性が低下するのを抑制することができる。平均短径は、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよい。また、平均短径は、0.7μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。なお、本明細書において、短径とは、長尺粒子のうち最も径が小さくなる部分の長さを意味する。例えば長尺粒子が針状粒子の場合、短径は針状粒子の線径に相当する。また、例えば長尺粒子が鱗片状粒子又は板状粒子の場合、短径は鱗片状粒子又は板状粒子の厚さに相当する。また、本明細書において、平均短径は、SEMの二次電子像で観察した10個~100個の長尺粒子の短径の平均値である。
長尺粒子の平均短径に対する平均長径の比(アスペクト比)は、10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましく、25以上であることが特に好ましい。アスペクト比が10以上であると、大気中の微粒子が撥水皮膜に付着するような汚染条件であっても、複数の長尺粒子間の空間が微粒子によって閉塞したり、複数の長尺粒子を被覆する被覆層の表面が微粒子で覆われたりするのを抑制することができる。また、アスペクト比が10以上であると、長尺粒子によって挟まれる空間が広くなりやすく、長尺粒子が樹脂によって被覆された場合に外部と連通する空間を保持しやすくなる。そのため、汚染条件であっても、撥水皮膜の撥水性が低下するのを抑制することができる。アスペクト比の上限は特に限定されないが、例えば100以下であってもよい。アスペクト比が100以下であると、長尺粒子が折れにくいため、耐摩耗性に優れている。アスペクト比は、60以下であってもよく、30以下であってもよい。
被覆層の厚さは、例えば2μm以下である。被覆層の厚さが2μm以下であると、長尺粒子の間に空間が保持されやすくなり、撥水皮膜の表面に多くの空隙が形成される。そのため、大気中の微粒子が撥水皮膜に付着した場合であっても、撥水皮膜と液滴との接触する面積が小さいままであり、撥水皮膜の撥水性を長期間維持することができる。被覆層の厚さの下限は、長尺粒子が被覆されていれば特に限定されないが、例えば0.01μm以上である。被覆層厚さは、撥水皮膜の断面をSEMなどのような顕微鏡で観察して実測することができる。
凝集体の外表面は被覆層によって被覆されている。被覆層は、少なくとも凝集体の表面の一部を被覆していればよいが、凝集体の表面全体を被覆していることが好ましい。被覆層は、凝集体を構成する複数の長尺粒子の各々の表面全体を被覆していてもよく、また、互いに隣接する長尺粒子が接触している部分を被覆せずに、複数の長尺粒子の外表面全体を被覆していてもよい。ただし、被覆層が複数の長尺粒子の頂点間を平面状に結ぶように被覆することで撥水皮膜の表面に凹凸構造が形成されなくなると撥水性が低下する。このため、被覆層は、複数の長尺粒子の間に撥水皮膜の外部と連通する空間を保持するようにして長尺粒子を被覆している。言い換えれば、被覆層は、被覆層によって被覆されている凝集体の外表面が外部に対して露出する箇所を有するように長尺粒子を被覆している。このようにして、被覆層によって被覆された複数の長尺粒子の間の空間は、撥水皮膜の外部に開放されるようになっている。被覆層は、撥水樹脂により形成されている。被覆層が撥水樹脂により形成されていることによって、Cassie-Baxter表面構造との相乗効果により撥水皮膜の撥水性が高くなる。また、撥水樹脂は、長尺粒子を保持して凝集体の構造を維持するバインダーとしても機能する。撥水樹脂は、撥水性を有する樹脂であれば特に限定されないが、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂の少なくともいずれか一方の樹脂を含んでいてもよい。撥水樹脂の中でも、これらの樹脂は撥水性が特に高いため、撥水性の良好な撥水皮膜を得ることができる。
シリコーン樹脂はシロキサン結合した主骨格を持つ3次元網目構造を有するポリマーである。シリコーン樹脂は、例えば、オルガノハロシランやオルガノアルコキシシランを重合させることにより生成することができる。オルガノハロシランとしては、例えば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、トリエチルクロロシランからなる群より選択される少なくとも1種のシランが挙げられる。また、オルガノアルコキシシランとしては、例えば、オルガノモノアルコキシシラン、オルガノジアルコキシシラン及びオルガノトリアルコキシシランからなる群より選択される少なくとも1種のシランが挙げられる。シリコーン樹脂は、ビニルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂及びフッ化シリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも1以上のシリコーン樹脂を含んでいてもよい。シリコーン樹脂の代表例としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が挙げられる。
フッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン(FEP)、エチレン・テトラフルオロエチレン(ETFE)及びエチレン・クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。
撥水樹脂は、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂の少なくともいずれか一方の樹脂に加え、ポリエステルなどのシリコーン樹脂及びフッ素樹脂以外の補助樹脂をさらに含んでいてもよい。すなわち、凝集体の外表面は、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂の少なくともいずれか一方の樹脂に加えて、補助樹脂を含む撥水樹脂により形成された被覆層によって被覆されていてもよい。補助樹脂は、長尺粒子を保持して凝集体の構造を維持するバインダーとして機能する。撥水樹脂に対するシリコーン樹脂及びフッ素樹脂の少なくともいずれか一方の樹脂の含有量は20質量%以上であることが好ましい。撥水樹脂に対するシリコーン樹脂及びフッ素樹脂の少なくともいずれか一方の樹脂の含有量は50質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。また、撥水樹脂は、撥水樹脂に加え、種々の機能を有する添加剤がさらに含まれていてもよい。添加剤の例としては、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃防止剤、顔料及び染料などが挙げられる。これらの添加剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
撥水皮膜に対する長尺粒子の含有量は10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。長尺粒子の含有量が10質量%以上であると、撥水皮膜の剛性が高くなる。また、長尺粒子の含有量が90質量%以下であると、撥水樹脂をより均一に長尺粒子に被覆することができる。長尺粒子の含有量は20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。また、長尺粒子の含有量は80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよい。
撥水皮膜に対する撥水樹脂の含有量は10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。撥水樹脂の含有量が10質量%以上であると、撥水樹脂をより均一に長尺粒子に被覆することができる。また、撥水樹脂の含有量が90質量%以下であると、撥水皮膜の剛性が高くなる。撥水樹脂の含有量は20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。また、撥水樹脂の含有量は80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよい。
長尺粒子の含有量に対する撥水樹脂の含有量の比は0.1以上10以下であることが好ましい。上記比が0.1以上であると、撥水樹脂をより均一に長尺粒子に被覆することができる。また、上記比が10以下であると、撥水皮膜の剛性が高くなる。上記比は0.4以上であってもよく、0.8以上であってもよい。また、上記比は8以下であってもよく、6以下であってもよい。
撥水皮膜に対する長尺粒子及び被覆層の合計含有量は60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよい。
凝集体は、コア部と、複数の長尺粒子がコア部から延びた突起部とを含む突起粒子を有していてもよい。長尺粒子は、コア部から外表面に向けて放射状に延びていてもよく、コア部の外表面に不規則に配向されていてもよい。コア部とは、複数の長尺粒子が強凝集したアグリゲートとなっている部分をいう。長尺粒子は、コア部から直接結合して伸びていてもよく、撥水樹脂で被覆されているコア部から撥水樹脂を介して伸びていてもよい。このときの突起粒子では、突起粒子に含まれる複数の長尺粒子及びコア部が、複数の長尺粒子の各々とコア部とによって囲まれる空間を保持して配置されている。また、凝集体は、コア部を含まず、複数の長尺粒子が球状に集合して内部から外表面に向けて放射状に配列するようにして凝集した突起粒子を有していてもよい。このときの突起粒子では、突起粒子に含まれる複数の長尺粒子が、複数の長尺粒子の各々によって囲まれる空間を保持して配置されている。なお、複数の突起粒子は、被覆層を介して互いに結合していてもよい。撥水皮膜が複数の突起粒子を備えていることで、撥水皮膜にCassie-Baxter表面が形成されるため、上述のように撥水性の高い撥水皮膜を得ることができる。また、複数の長尺粒子はコア部の表面に空間を空けて配置されているため、Cassie-Baxter表面を容易に形成することができる。突起粒子の例としては、例えば、いがぐり状粒子(特開2012-121773公報参照)が挙げられる。いがぐり状粒子(毬栗状粒子)は、針形状の長尺粒子を含んでいる。また、突起粒子の例としては、三次元鱗片状粒子が挙げられる。三次元鱗片状粒子は、長尺粒子として鱗片形状の長尺粒子を含んでいる。
突起粒子の平均粒子径は1μm以上75μm以下であることが好ましい。突起粒子の平均粒子径が上記範囲内であると、撥水皮膜の表面に突起粒子によって形成される粗大な凹凸と、長尺粒子によって形成される微細な凹凸とが形成される。そのため、撥水皮膜の表面に複雑な凹凸構造が形成され、撥水皮膜の表面と水滴との接触面積がより小さくなることから、撥水性の高い皮膜を得ることができる。突起粒子の平均粒子径は、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。また、突起粒子の平均粒子径は、50μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。なお、本明細書において、突起粒子の平均粒子径は、SEMの二次電子像で観察した10個~100個の凝集体の粒子径の平均値である。
コア部は、アルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を主成分として含んでいてもよい。なお、ここでいう主成分とは、コア部がアルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を50質量%以上含むことを意味する。コア部はアルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を60質量%以上含んでいてもよく、70質量%以上含んでいてもよく、80質量%以上含んでいてもよく、85質量%以上含んでいてもよく、90質量%以上含んでいてもよく、93質量%以上含んでいてもよい。コア部には、例えば製造原料に由来する酸化マグネシウムなどが含まれていてもよい。
コア部は1つの大きな粒子によって形成されていてもよく、複数の粒子が集まって形成されていてもよい。また、コア部は長尺粒子を含む複数の粒子が集まって形成されていてもよい。コア部の平均粒子径は特に限定されないが、例えば1μm以上50μm以下である。コア部の平均粒子径は、3μm以上であってもよく、5μm以上であってもよい。また、コア部の平均粒子径は、30μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。なお、本明細書において、コア部の平均粒子径は、突起粒子の断面をSEMの反射電子像で観察した10個~100個の粒子径の平均値である。
突起部の複数の長尺粒子は、コア部と接続され、コア部から外表面に向けて放射状に延びていてもよい。突起粒子の外表面は被覆層で覆われていてもよい。具体的には、コア部の外表面の一部及び突起部に含まれる複数の長尺粒子は被覆層で被覆されていてもよい。ただし、コア部の外表面のうち、コア部と長尺粒子が接続される接続部においては被覆層で被覆されていなくてもよい。突起部の長尺粒子の平均長径、平均短径及びアスペクト比は上述したものと同様であってもよい。
一つの突起粒子が有する複数の突起部に含まれる長尺粒子の合計数量は、例えば10以上であってもよく、20以上であってもよく、50以上であってもよく、100以上であってもよい。突起部に含まれる長尺粒子の合計数量は、被覆層で被覆された複数の長尺粒子が空間を空けて配置されていれば特に限定されず、例えば10000以下であってもよく、5000以下であってもよく、1000以下であってもよい。
突起粒子は、長尺粒子同士が凝集した嵩高いカードハウス構造を有することが好ましい。突起粒子によるカードハウス構造の空隙の容積は、JIS K5101-13-1(2004)の精製あまに油法に準拠して測定した、精製あまに油の吸油量によって反映される。突起粒子の吸油量は、好ましくは90g/100g以上、より好ましくは100g/100g以上、さらに好ましくは200g/100g以上、特に好ましくは250g/100g以上である。突起粒子の吸油量は、好ましくは500g/100g以下、より好ましくは400g/100g以下、さらに好ましくは300g/100以下である。吸油量が上記数値範囲の下限値以上であることで、突起粒子内部に存在する空隙の容積が大きくなる。突起粒子の空隙の容量が大きくなることで、長尺粒子が被覆層によって被覆される際に、突起粒子の内部の空隙にも撥水樹脂を保持することができるようになる。これにより、複数の長尺粒子の頂点間が被覆層によって平面状に結ばれるように被覆されることで突起粒子の表面に凹凸構造が形成されなくってしまう部分を少なくすることができるようになり、Cassie-Baxter表面の形成によって撥水性が向上しやすくなる。また、吸油量が上記数値範囲の上限値以下であることで、突起粒子と撥水樹脂とを混合した際に、突起粒子の内部に含侵した撥水樹脂が、長尺粒子同士の間に存在してバインダーとして働くことで突起粒子の形態を維持しやすくなる。また、突起粒子と撥水樹脂とを混合した際に、突起粒子の表面に存在する撥水樹脂が、突起粒子同士の間に存在してバインダーとして働くことで撥水皮膜の形態を維持するとともに、突起粒子の外表面を覆うことで、撥水皮膜による撥水性を発揮させやすくなる。また、吸油量が上記数値範囲の上限値以下であることで、撥水皮膜を形成するための塗料組成物を作製するために突起粒子と撥水樹脂とを混合した際に、混合物がペースト状の流動性のある状態になることで、塗布する際のハンドリング性が向上しやすくなる。なお、突起粒子の吸油量は、空隙が少ないベーマイト又はアルミナの単一結晶からなる粒子に比べて高く、また長尺粒子同士が凝集した密なカードハウス構造を有する突起粒子に比べても高い傾向にある。
突起粒子を構成する長尺粒子は、BET流動法(1点法)で測定した比表面積が、好ましくは7m2/g以上、より好ましくは10m2/g以上、さらに好ましくは20m2/g以上であり、好ましくは50m2/g以下、より好ましくは40m2/g以下、さらに好ましくは30m2/g以下である。比表面積が上記数値範囲の下限値以上であることで、突起粒子内部に存在する空隙の容積が大きくなる。突起粒子の空隙の容量が大きくなることで、長尺粒子が被覆層によって被覆される際に、突起粒子の内部の空隙にも撥水樹脂を保持することができやすくなる。これにより、複数の長尺粒子の頂点間が被覆層によって平面状に結ばれるように被覆されることで突起粒子の表面に凹凸構造が形成されなくってしまう部分を少なくすることができ、Cassie-Baxter表面の形成によって撥水性が向上しやすくなる。比表面積が上記数値範囲の上限値以下であることで、突起粒子と撥水樹脂とを混合した際に、突起粒子の内部に含侵した撥水樹脂が、長尺粒子同士の間に存在してバインダーとして働くことで突起粒子の形態を維持しやすくなる。また、突起粒子と撥水樹脂とを混合した際に、突起粒子の表面に存在する撥水樹脂が、突起粒子同士の間に存在してバインダーとして働くことで撥水皮膜の形態を維持するとともに、突起粒子の外表面を覆うことで、撥水皮膜による撥水性を発揮させやすくなる。また、比表面積が上記数値範囲の上限値以下であることで、撥水皮膜を形成するための塗料組成物を作製するために、突起粒子と撥水樹脂とを混合した際に、混合物がペースト状の流動性のある状態になることで、塗布する際のハンドリング性が向上しやすくなる。
突起粒子のタップ密度は、好ましくは0.05g/cm3以上、より好ましくは0.1g/cm3以上、さらに好ましくは0.2g/cm3以上、特に好ましくは0.3g/cm3以上であり、好ましくは0.6g/cm3以下、より好ましくは0.5g/cm3以下、さらに好ましくは0.4g/cm3以下である。タップ密度が上記数値範囲の下限値以上であることで、突起粒子が浮遊または飛散しにくくなり、ハンドリング性が向上する。タップ密度が上記数値範囲の上限値以下であることで、突起粒子内部に存在する空隙の容積が大きくなるか、又は突起粒子の表面に長尺粒子によって形成される凹凸構造が多く存在することになり、Cassie-Baxter表面の形成によって撥水性が向上しやすくなる。なお、突起粒子のタップ密度は、ベーマイト又はアルミナの単一結晶からなる粒子のタップ密度より高く、タップ密度が低い鱗片状ベーマイトの単一結晶からなる鱗片状ベーマイト粒子は飛散し易いのに対し、突起粒子は飛散し難く、ハンドリング牲に優れている。
撥水皮膜に対する突起粒子の含有量は10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。突起粒子の含有量が10質量%以上であると、撥水皮膜の剛性が高くなる。また、突起粒子の含有量が90質量%以下であると、撥水樹脂をより均一に突起粒子に被覆することができる。突起粒子の含有量は20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。また、突起粒子の含有量は80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよい。
撥水皮膜に対する撥水樹脂の含有量は10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。撥水樹脂の含有量が10質量%以上であると、撥水樹脂をより均一に突起粒子に被覆することができる。また、撥水樹脂の含有量が90質量%以下であると、撥水皮膜の剛性が高くなる。撥水樹脂の含有量は20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。また、撥水樹脂の含有量は80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよい。
突起粒子の含有量に対する撥水樹脂の含有量の比は0.1以上10以下であることが好ましい。上記比が0.1以上であると、撥水樹脂をより均一に突起粒子に被覆することができる。また、上記比が10以下であると、撥水皮膜の剛性が高くなる。上記比は0.4以上であってもよく、0.8以上であってもよい。また、上記比は8以下であってもよく、6以下であってもよい。
撥水皮膜に対する突起粒子及び被覆層の合計含有量は60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよい。
撥水皮膜の厚さは、10μm以上500μm以下であることが好ましい。撥水皮膜の厚さが10μm以上であると、撥水皮膜が摩耗した場合であっても、撥水性を維持することができる。撥水性の厚さが500μm以下であると、撥水皮膜の形成が容易である。撥水皮膜の厚さは15μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。また、撥水皮膜の厚さは400μm以下であってもよく、300μm以下であってもよい。
<作用効果>
以上説明した通り、本実施形態に係る撥水皮膜は、アルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を主成分として含む複数の長尺粒子と、複数の長尺粒子の表面を被覆し、撥水樹脂により形成された被覆層とを含む凝集体を備えている。凝集体は、複数の長尺粒子が三次元的に凝集している。凝集体の外表面は被覆層によって被覆されている。凝集体は、被覆層によって被覆された複数の長尺粒子の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間を保持している。
以上説明した通り、本実施形態に係る撥水皮膜は、アルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を主成分として含む複数の長尺粒子と、複数の長尺粒子の表面を被覆し、撥水樹脂により形成された被覆層とを含む凝集体を備えている。凝集体は、複数の長尺粒子が三次元的に凝集している。凝集体の外表面は被覆層によって被覆されている。凝集体は、被覆層によって被覆された複数の長尺粒子の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間を保持している。
本実施形態に係る撥水皮膜では、凝集体は、被覆層によって被覆された複数の長尺粒子の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間を保持している。そのため、被覆層で被覆された長尺粒子と上記空間とによって撥水皮膜の表面に凹凸構造が形成され、Cassie-Baxter表面が形成される。そのため、撥水皮膜の表面に水滴を滴下した場合であっても、撥水皮膜表面と水滴との間に空隙が形成され、撥水皮膜と水滴との接触面積が小さくなる。また、凝集体の外表面は被覆層によって被覆されており、被覆層は撥水樹脂により形成されている。そのため、撥水皮膜の表面構造と撥水樹脂との効果により、撥水皮膜の撥水性が高くなる。
また、本実施形態に係る撥水皮膜では、複数の長尺粒子が三次元的に凝集した構造を有している。そのため、長尺粒子どうしの間に空間を保持した状態で凝集している長尺粒子が、さらに他の長尺粒子との間にも空間を保持しながら凝集するようにして、立体的に凝集することができる。また、撥水皮膜は、長尺粒子を単位粒子とする凝集体によって形成されているため、凝集体を高さ方向に積み上げやすくなり、高さ方向に表面積を広げることができる。これにより、長尺粒子どうしが三次元的に凝集した構造が広がるにつれて、被覆層によって被覆された複数の長尺粒子の間に保持される撥水皮膜の外部と連通する空間についても、立体的に拡張することができる。したがって、撥水皮膜の表面にCassie-Baxter表面が形成されやすくなり、撥水皮膜の撥水性が高まりやすくなる。
また、大気中には、主に炭素で構成されたDEP(ディーゼル排気微粒子)等の微粒子が浮遊している。DEPのうち、粒子数が最も多いのはPM0.1と呼ばれる粒子径0.1μm以下の粒子(超微小粒子)であり、近年、健康への影響が懸念されるようになった物質でもある。このような超微小粒子が微細な凹凸構造を有する撥水皮膜の表面に付着すると、Cassie-Baxter表面を形成する空間が超微小粒子で閉塞し、又は、撥水樹脂により形成された被覆層の表面が覆われるなどして、撥水性が低下してしまうおそれがある。しかしながら、本実施形態に係る撥水皮膜では、複数の長尺粒子が用いられている。そのため、超微小粒子が撥水皮膜に付着した場合あっても、超微小粒子が長尺粒子の一部に付着するに止まるか、超微小粒子が長尺粒子の先端から根本にかけて分散して付着するため、長尺粒子間の空間が閉塞されず、Cassie-Baxter表面が維持される。また、超微小粒子が長尺粒子の一部に付着するに止まるか、超微小粒子が長尺粒子の先端から根本にかけて分散して付着するため、複数の長尺粒子を被覆する被覆層の表面が超微小粒子で完全に覆われることが抑制される。そのため、汚染条件であっても、撥水皮膜の撥水性が低下するのを長期間抑制することができる。
また、長尺粒子はアルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を主成分として含んでいる。そのため、アルミナ及びベーマイトは酸性溶液に溶解しにくいことから、撥水皮膜を酸性条件下に置いた場合であっても、長尺粒子が変形しにくい。そのため、撥水皮膜は、酸性条件であっても、Cassie-Baxter表面が長期間にわたって維持される。したがって、本実施形態に係る撥水皮膜は、酸性条件又は汚染条件であっても撥水性が高くなる。
さらに、長尺粒子どうしが三次元的に凝集しており、凝集体は、被覆層によって被覆された複数の長尺粒子の間に撥水皮膜の外部と連通する空間を保持して配置されている。そのため、撥水皮膜の表面が摩耗して削られた場合であっても、撥水皮膜の厚さ方向にわたって空間が存在する。したがって、撥水皮膜の表面が摩耗したとしても、新たなCassie-Baxter表面が現れるため、撥水性が維持されやすくなる。
またさらに、本実施形態に係る撥水皮膜では、突起粒子を1次凝集体として、これらが複数集まった2次凝集体として形成されていてもよい。撥水皮膜は、撥水皮膜の表面に複数の突起粒子によって形成される粗大な凹凸構造を有するとともに、個々の突起粒子の表面に複数の長尺粒子によって形成される微細な凹凸構造を有する、ダブルラフネス構造を備えていてもよい。ここで、表面構造によって発揮される撥水性はラプラス圧によって評価される。ラプラス圧は、表面に存在する突起構造の高さ、突起構造の幅、及び突起構造どうしのピッチ(間隔)の組み合わせによって算出される。特に突起構造どうしのピッチが小さいほどラプラス圧が高くなる傾向にある。また、突起構造が表面に向けて直行する向きに配向されることで、ラプラス圧が高くなる傾向にある。本実施形態に係る撥水皮膜では、撥水皮膜がダブルラフネス構造を備えることで、突起粒子による粗大な凹凸構造の表面に長尺粒子による微細な凹凸構造が形成される。これにより、微細な凹凸構造のみによって表面にランダムに提示される長尺粒子によってラプラス圧が定まる場合(シングルラフネス構造の場合)と比べて、粗大な凹凸構造によって微細な凹凸構造のランダムに提示される長尺粒子のいずれかが、粗大な凹凸構造の表面に向けて直行する方向に配向されることで、ラプラス圧が高まりやすくなる。また、長尺粒子のピッチが粗大な凹凸構造の間隔によって決定されるので、ピッチをより小さく規定しやすく、ラプラス圧が高まりやすくなる。また、本実施形態に係る撥水皮膜では、撥水皮膜がダブルラフネス構造を備えることで、微細な凹凸構造における長尺粒子の高さ、幅、及びピッチ、並びに粗大な凹凸構造における突起粒子による突起構造の高さ、幅、及びピッチの組み合わせのバリエーションによって、複数のラプラス圧が形成される。これにより、水の圧力が低い場合には突起粒子による突起構造によって比較的に低いラプラス圧によって撥水性を示すとともに、水の圧力が高い場合でも長尺粒子同士のピッチがより高いラプラス圧による撥水性を生み出すので、より多様な環境での撥水性が高まりやすくなる。
[撥水部材]
次に、撥水部材について説明する。撥水部材は、基材と、基材の表面を被覆する上記撥水皮膜とを備えている。撥水皮膜は、基材の表面の少なくとも一部を被覆していればよく、基材の一部の表面のみを覆っていてもよく、基材の全表面を覆っていてもよい。
次に、撥水部材について説明する。撥水部材は、基材と、基材の表面を被覆する上記撥水皮膜とを備えている。撥水皮膜は、基材の表面の少なくとも一部を被覆していればよく、基材の一部の表面のみを覆っていてもよく、基材の全表面を覆っていてもよい。
基材の形状は、特に限定されず、目的に応じて選択することができ、例えば、板、球、棒、管、ハニカム、繊維、膜、多角形体又は多孔質体などである。基材の長さ、幅、厚さ及び径などは用途に応じて最適な大きさのものを使用すればよい。また、基材を形成する材料は特に限定されず、基材は、例えば金属、ガラス、樹脂、セラミックス、紙、繊維、木材、セメント、皮革又はこれらの複合体であってもよい。
撥水部材は、撥水性が求められるいずれの部材であってもよい。撥水部材の具体例としては、例えば、建材、車両、車両用部品、衣類、雨具、アンテナ、電線、レーダー、船体などが挙げられる。これらの撥水部材は、水滴及び氷雪の付着防止及び除去促進などに寄与することができる。
[塗料組成物]
塗料組成物は、アルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を主成分として含む複数の長尺粒子と、溶剤と、溶剤に溶解された撥水樹脂とを含有している。または、塗料組成物は、複数の突起粒子と、溶剤と、溶剤に溶解された撥水樹脂とを含有している。突起粒子は、上述したものと同様に、コア部と、長尺粒子がコア部から延びた突起部とを含んでいてもよい。そして、複数の長尺粒子はコア部の表面に互いに空間を空けて配置されていてもよい。また、突起粒子は、コア部を含まずに、複数の長尺粒子が内部から外表面に向けて放射状に配列するようにして凝集していてもよい。このような塗料組成物を用いることによって、上述したような撥水皮膜を形成することができる。なお、長尺粒子、撥水樹脂及び突起粒子は上述したものを使用することができる。
塗料組成物は、アルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を主成分として含む複数の長尺粒子と、溶剤と、溶剤に溶解された撥水樹脂とを含有している。または、塗料組成物は、複数の突起粒子と、溶剤と、溶剤に溶解された撥水樹脂とを含有している。突起粒子は、上述したものと同様に、コア部と、長尺粒子がコア部から延びた突起部とを含んでいてもよい。そして、複数の長尺粒子はコア部の表面に互いに空間を空けて配置されていてもよい。また、突起粒子は、コア部を含まずに、複数の長尺粒子が内部から外表面に向けて放射状に配列するようにして凝集していてもよい。このような塗料組成物を用いることによって、上述したような撥水皮膜を形成することができる。なお、長尺粒子、撥水樹脂及び突起粒子は上述したものを使用することができる。
ここで、毬栗状ベーマイトの製造方法について説明する。毬栗状ベーマイトは、水酸化アルミニウムと、第一添加剤である硫酸マグネシウムと、第二添加剤である第1属元素及び第2属元素の少なくともいずれか一方の水酸化物塩とを、水の存在下、水熱反応させることにより製造することができる。水の添加量は、原料からスラリーが調製可能であれば、特に限定されない。毬栗状ベーマイトの製造方法は、公知の文献(例えば、特開2012-121773公報)を参照することができる。
水酸化アルミニウムの平均粒子径は、1μm以上75μm以下であることが好ましい。平均粒子径が1μm以上であると、針状片が結束しやすい。平均粒子径が75μm以下であると、複数の毬栗状ベーマイトの結晶が結合しにくく、反応時間が長くなりすぎないため、毬栗状ベーマイトが得られやすい。
第一添加剤は毬栗状ベーマイトの針状片を長く延ばすことができる。硫酸マグネシウムは無水物であってもよく、7水和物などのような水和物であってもよいが、経済面及び溶解性の点から7水和物であることが好ましい。硫酸マグネシウムの配合量は、水酸化アルミニウムに対してモル比で10%以上であることが好ましい。硫酸マグネシウムのモル比が10%以上であると、毬栗状ベーマイトが得られない場合がある。硫酸マグネシウムのモル比の上限は特に制限されないが、経済的な観点から、50%以下であることが好ましい。
第二添加剤は、硫酸マグネシウムと共存することで、ベーマイトの形状を毬栗状にするとともに、原料のスラリーを調製する際に原料が沈降することを防ぎ、生産性を高めることができる。第二添加剤は、安価であるため、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の塩を含むことが好ましい。第二添加剤の配合量は硫酸マグネシウムに対してモル比で0.5以上1.2以下であることが好ましい。第二添加剤のモル比が0.5以上であると、反応時間が短く、複数の針状片が結束しやすい。また、モル比が1.2以下である場合、板状ベーマイトが混在するのを抑制し、毬栗状ベーマイトが生成されやすい。
水熱反応はオートクレーブ等の圧力装置内で加圧下、200℃~250℃で行うことが好ましい。反応温度が200℃以上であると、短い反応時間で毬栗状ベーマイトを得ることができる。反応温度は、経済的な観点から、250℃以下であることが好ましい。スラリーは反応時に撹拌してもよく、撹拌しなくてもよい。反応時間は3時間以上24時間以下の範囲が好ましい。反応時間が3時間以上であると、毬栗状ベーマイトが得られやすい。また、反応時間が24時間であると、エネルギー効率に優れている。水熱反応の圧力は、例えば1.5MPa以上4MPa以下であってもよい。
毬栗状アルミナは、毬栗状ベーマイトを焼成することにより得ることができる。焼成条件は毬栗状ベーマイトから毬栗状アルミナを生成することができれば特に限定されない。焼成温度は、例えば500℃以上1700℃以下であってもよい。焼成時間は、例えば1時間以上20時間以下であってもよい。焼成雰囲気は、例えば空気雰囲気下であってもよく、酸素雰囲気下であってもよい。
次いで、本開示の三次元鱗片状ベーマイト(以降、「鱗片状ベーマイト凝集体」とも称する。)の製造方法について説明する。鱗片状ベーマイト凝集体は、原料の水酸化アルミニウムと添加剤と水とを含む水懸濁液を撹拌しながら水熱処理することにより得ることができる。
また、水酸化アルミニウムの水に対する濃度(水に対する水酸化アルミニウムの割合)は、1wt%~20wt%が好ましく、2wt%~17wt%がより好ましい。濃度が1wt%以上であると、ベーマイトの生成量が多く経済的であり、20wt%以下であると合成中に粘度が高くなりにくくなり、撹拌不良を抑制することができるためである。
また、原料の水酸化アルミニウムの粒度は、均一牲の高いことが好ましい。すなわち、水酸化アルミニウムの粒度分布の形状は、正規分布を示すか、正規分布に近い単峰性の分布を示すものが好ましい。水酸化アルミニウムの粒度の均一性が高いほど、嵩高いカードハウス構造(長尺粒子によって形成される微細な凹凸構造)を有する粒度のばらつきの少ない鱗片状ベーマイト凝集体が確実に得られるからである。
さらに、原料の水酸化アルミニウムは、SEM像より測長された一次粒子の平均値が2μm~8μmであり、それが凝集した二次粒子であるものが好ましい。一次粒子の平均値が2μm以上であると鱗片状ベーマイトの結晶同士が凝集したカードハウス構造を形成しやすく、8μm以下であるとカードハウス構造の中心部に凝集体をもろくするような空洞が形成されにくいためである。
鱗片状ベーマイト凝集体の原料の水酸化アルミニウムは、レーザー回折散乱法で測定した平均粒子径(体積基準)が4μm~20μmが好ましく、5μm~15μmがより好ましい。水酸化アルミニウムの平均粒子径が4μm以上であると、鱗片状ベーマイトの結晶同士が凝集した嵩高いカードハウス構造が形成されやすい。また、水酸化アルミニウムの平均粒子径が20μm以下であると、反応中に沈降が起こりにくく、反応生成物で配管が詰まるなど水熱処理装置の毀損が生じにくい。
添加剤は、炭酸ナトリウム又はアルミン酸ナトリウムのいずれか1種が好ましいが、炭酸カリウムを使用することもできる。添加剤の水に対する濃度(水に対する添加剤の割合)は、0.05mol/L~2mol/Lが好ましく、0.1mol/L~1.0mol/Lがより好ましい。0.05mol以上であると鱗片状ベーマイトの粒子の厚みが薄くなって凝集体が嵩高くなり、2mol以下であるとpHが低くなることによって生成したベーマイトが溶解しにくく、回収できる量が多くなるからである。
懸濁液の調製に用いる水は、硬水でも軟水でもよいが、マグネシウムイオンやカルシウムイオンの影響が少ない硬度0mg/L~120g/Lの軟水が好ましい。軟水の硬度は0mg/L~60g/Lであってもよい。
水熱処理の定温は、150℃~250℃が好ましく、160℃~230℃がより好ましい。水熱処理の定温が150℃以上であると、水酸化アルミニウムからベーマイトへの反応が進みやすいためであり、250℃以下であると高圧に耐えうる高価な設備を用いなくてもよくなるためである。
水熱処理の反応時間は、3時間~24時間の範囲が好ましい。反応時間が3時間以上では、十分な量の鱗片状ベーマイト凝集体が得られやすい。また、反応時間が24時間以下であると、エネルギー面で経済的である。
また、定温までの昇温速度は、100℃/hour以下が好ましい。100℃/hour以下であると反応容器内の温度のばらつきが生じにくく、均一な反応が進みやすくなるためである。
水熱処理の圧力は、定温における自然発生圧力が好ましく、加圧装置などを用いて加圧しなくてもよい。すなわち、水懸濁液の加温に伴って生じた圧力下で水熱処理を実施してもよい。
水熱処理における撹拌の羽根先端速度(周速)は、0.4m/sec~4m/secが好ましく、0.5m/sec~3m/secがより好ましい。0.4m/sec以上であると原料の沈降が起こりやすく均一な反応が進みやすくなるためであり、4m/sec以下であると高速撹拌が可能な高価なモータが不要になるためである。
羽根先端速度(周速)は、下記の数式(1)で求めることができる。
V=π×D×N/60 (1)
(V:羽根先端速度(m/s)、π:円周率、D:羽根径(m)、N:回転数(rpm))
羽根先端速度(周速)は、下記の数式(1)で求めることができる。
V=π×D×N/60 (1)
(V:羽根先端速度(m/s)、π:円周率、D:羽根径(m)、N:回転数(rpm))
三次元鱗片状アルミナは、三次元鱗片状ベーマイトを焼成することにより得ることができる。焼成条件は三次元鱗片状ベーマイトから三次元鱗片状アルミナを生成することができれば特に限定されない。焼成温度は、例えば500℃以上1700℃以下であってもよい。焼成時間は、例えば1時間以上20時間以下であってもよい。焼成雰囲気は、例えば空気雰囲気下であってもよく、酸素雰囲気下であってもよい。
塗料組成物中の固形分に対する長尺粒子又は突起粒子の含有量は10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。長尺粒子又は突起粒子の含有量が10質量%以上であると、撥水皮膜の剛性が高くなる。また、長尺粒子又は突起粒子の含有量が90質量%以下であると、撥水樹脂をより均一に長尺粒子又は突起粒子に被覆することができる。長尺粒子又は突起粒子の含有量は20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。また、長尺粒子又は突起粒子の含有量は80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよい。
塗料組成物中の固形分に対する撥水樹脂の含有量は10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。長尺粒子又は突起粒子の含有量が10質量%以上であると、撥水樹脂をより均一に長尺粒子又は突起粒子に被覆することができる。また、長尺粒子又は突起粒子の含有量が90質量%以下であると、撥水皮膜の剛性が高くなる。長尺粒子又は突起粒子の含有量は20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。また、長尺粒子又は突起粒子の含有量は80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよい。
長尺粒子又は突起粒子の含有量に対する撥水樹脂の含有量の比は0.1以上10以下であることが好ましい。上記比が0.1以上であると、撥水樹脂をより均一に長尺粒子又は突起粒子に被覆することができる。また、上記比が10以下であると、撥水皮膜の剛性が高くなる。上記比は0.4以上であってもよく、0.8以上であってもよい。また、上記比は8以下であってもよく、6以下であってもよい。
塗料組成物中の固形分に対する長尺粒子及び撥水樹脂の合計含有量は、60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよい。塗料組成物中の固形分に対する突起粒子及び撥水樹脂の合計含有量は60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよい。
溶剤は、撥水樹脂を溶解し、長尺粒子又は突起粒子の表面に被覆層を形成するために用いられる。溶剤は、撥水樹脂を溶解することができれば特に限定されず、例えば有機溶剤を用いることができる。有機溶剤の例としては、酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチルなどの酢酸エステルが挙げられる。これらの有機溶剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。溶剤の含有量は特に限定されないが、例えば、100質量部の塗料組成物に対して、10質量部~99質量部であってもよい。
[撥水部材の製造方法]
撥水部材の製造方法は、基材の表面に上記塗料組成物を塗布する。すなわち、複数の長尺粒子と、溶剤と、溶剤に溶解された撥水樹脂とを含有する塗料組成物を塗布してもよく、複数の突起粒子と、溶剤と、溶剤に溶解された撥水樹脂とを含有する塗料組成物を塗布してもよい。本開示の撥水部材の製造方法により製造される撥水皮膜は、上述した撥水部材と同様であるため、説明を省略する。基材は上述した材料を使用することができる。
撥水部材の製造方法は、基材の表面に上記塗料組成物を塗布する。すなわち、複数の長尺粒子と、溶剤と、溶剤に溶解された撥水樹脂とを含有する塗料組成物を塗布してもよく、複数の突起粒子と、溶剤と、溶剤に溶解された撥水樹脂とを含有する塗料組成物を塗布してもよい。本開示の撥水部材の製造方法により製造される撥水皮膜は、上述した撥水部材と同様であるため、説明を省略する。基材は上述した材料を使用することができる。
基材の表面に塗料組成物を塗布する方法は特に限定されず、スプレー塗装、ハケ塗装、バーコーティング、スピンコート法、ディッピング法、グラビア印刷、リバースグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、スキージ法などの方法によって塗布することができる。塗料組成物は、基材の表面の少なくとも一部に塗布されればよい。上記の塗布方法の中でも、スプレー塗装は、任意の部分に塗料組成物を容易に塗布することができる。
塗料組成物を基材の表面に塗布した後、必要に応じて乾燥し、塗料組成物中の溶剤を除去してもよい。乾燥条件は、溶剤が除去される条件ならば特に限定されず、必要に応じて加熱してもよい。なお、本実施形態に係る撥水皮膜は複数の空隙を有し、通気性がよいことから、加熱しなくても溶剤を容易に揮発させることができる。
[その他]
撥水皮膜は、凝集体の最表面が、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂の少なくともいずれか一方の撥水樹脂を含む被覆層によって被覆されていてもよい。また、撥水皮膜は、長尺粒子の表面に、補助樹脂を含む層が中間層として形成されて、さらにシリコーン樹脂及びフッ素樹脂の少なくともいずれか一方の撥水樹脂を含む層が最表層として形成されていてもよい。すなわち、長尺粒子と、長尺粒子を被覆する補助樹脂を含む層と、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂の少なくともいずれか一方の撥水樹脂を含む層とがこの順で積層される多層構造を有していてもよい。このような撥水皮膜を製造する場合には、複数の長尺粒子又は複数の突起粒子と、溶剤と、補助樹脂とを含有する塗料組成物を用いることができる。また、撥水樹脂を溶剤に溶解させた塗料組成物を用いることができる。例えば、複数の長尺粒子又は複数の突起粒子と、溶剤と、補助樹脂とを含有する塗料組成物を基材の表面に塗布して乾燥させて、必要に応じて焼き付けを行った後に、撥水樹脂を溶剤に溶解させた塗料組成物を塗布して乾燥させることで撥水部材を製造することができる。
撥水皮膜は、凝集体の最表面が、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂の少なくともいずれか一方の撥水樹脂を含む被覆層によって被覆されていてもよい。また、撥水皮膜は、長尺粒子の表面に、補助樹脂を含む層が中間層として形成されて、さらにシリコーン樹脂及びフッ素樹脂の少なくともいずれか一方の撥水樹脂を含む層が最表層として形成されていてもよい。すなわち、長尺粒子と、長尺粒子を被覆する補助樹脂を含む層と、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂の少なくともいずれか一方の撥水樹脂を含む層とがこの順で積層される多層構造を有していてもよい。このような撥水皮膜を製造する場合には、複数の長尺粒子又は複数の突起粒子と、溶剤と、補助樹脂とを含有する塗料組成物を用いることができる。また、撥水樹脂を溶剤に溶解させた塗料組成物を用いることができる。例えば、複数の長尺粒子又は複数の突起粒子と、溶剤と、補助樹脂とを含有する塗料組成物を基材の表面に塗布して乾燥させて、必要に応じて焼き付けを行った後に、撥水樹脂を溶剤に溶解させた塗料組成物を塗布して乾燥させることで撥水部材を製造することができる。
以下、本実施形態を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
<材料の準備>
無機粒子として以下の製造方法により毬栗状ベーマイト(突起粒子)を準備した。水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、BF083、平均粒径8μm)100g、硫酸マグネシウム94g、水酸化ナトリウム12gを配合した原料に水を500mL加え、オートクレーブを使用して、205℃(昇温時間:2時間)で12時間水熱反応を行った。反応終了後(降圧時間:2時間)、反応生成物をろ過、水洗及び粉砕して、所定の毬栗状ベーマイトを得た。撥水樹脂としてダウ・東レ株式会社製のDOWSIL(登録商標)HC2100(PDMS(ポリジメチルシロキサン))を準備した。溶剤として富士フイルム和光純薬株式会社製の酢酸エチル特級を準備した。
<材料の準備>
無機粒子として以下の製造方法により毬栗状ベーマイト(突起粒子)を準備した。水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、BF083、平均粒径8μm)100g、硫酸マグネシウム94g、水酸化ナトリウム12gを配合した原料に水を500mL加え、オートクレーブを使用して、205℃(昇温時間:2時間)で12時間水熱反応を行った。反応終了後(降圧時間:2時間)、反応生成物をろ過、水洗及び粉砕して、所定の毬栗状ベーマイトを得た。撥水樹脂としてダウ・東レ株式会社製のDOWSIL(登録商標)HC2100(PDMS(ポリジメチルシロキサン))を準備した。溶剤として富士フイルム和光純薬株式会社製の酢酸エチル特級を準備した。
<塗料組成物の作製>
撥水樹脂0.5gを溶剤20mLに添加し、マグネチックスターラーで1分間撹拌して撥水樹脂及び溶剤を均一に混合した。この混合液に無機粒子を0.5g添加し、マグネチックスターラーでさらに10分間撹拌して塗料組成物を作製した。
撥水樹脂0.5gを溶剤20mLに添加し、マグネチックスターラーで1分間撹拌して撥水樹脂及び溶剤を均一に混合した。この混合液に無機粒子を0.5g添加し、マグネチックスターラーでさらに10分間撹拌して塗料組成物を作製した。
<撥水部材の作製>
1mm厚のスライドガラスを基材として準備した。基材の両端にビニールテープを貼り付けて段差を形成した。基材上に滴下した塗料組成物をガラス棒で均一に引き延ばしてスキージ法で塗布し、室温で30分乾燥させた。このようにして基材の表面に撥水皮膜が形成された撥水部材を作製した。
1mm厚のスライドガラスを基材として準備した。基材の両端にビニールテープを貼り付けて段差を形成した。基材上に滴下した塗料組成物をガラス棒で均一に引き延ばしてスキージ法で塗布し、室温で30分乾燥させた。このようにして基材の表面に撥水皮膜が形成された撥水部材を作製した。
[実施例2]
無機粒子として河合石灰工業株式会社製の針状ベーマイト(長尺粒子)であるセラシュール(登録商標)BMIを用いた以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。
無機粒子として河合石灰工業株式会社製の針状ベーマイト(長尺粒子)であるセラシュール(登録商標)BMIを用いた以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。
[実施例3]
無機粒子として毬栗状アルミナ(突起粒子)を用いた以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。毬栗状アルミナは、上記毬栗状ベーマイトを、電気炉を用いて1400℃で5時間焼成して作製した。
無機粒子として毬栗状アルミナ(突起粒子)を用いた以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。毬栗状アルミナは、上記毬栗状ベーマイトを、電気炉を用いて1400℃で5時間焼成して作製した。
[実施例4]
<材料の準備>
無機粒子として上記毬栗状ベーマイト(突起粒子)を準備した。撥水樹脂としてダウ・東レ株式会社製のDOWSIL(登録商標)HC2100(PDMS)及び大日本塗料株式会社製のVニット#500(樹脂固形分質量比52%)(ポリエステル系塗料)を用いた。溶剤として富士フイルム和光純薬株式会社製の酢酸エチル特級を準備した。
<材料の準備>
無機粒子として上記毬栗状ベーマイト(突起粒子)を準備した。撥水樹脂としてダウ・東レ株式会社製のDOWSIL(登録商標)HC2100(PDMS)及び大日本塗料株式会社製のVニット#500(樹脂固形分質量比52%)(ポリエステル系塗料)を用いた。溶剤として富士フイルム和光純薬株式会社製の酢酸エチル特級を準備した。
ポリエステル系塗料0.5gを溶剤10mLに添加し、マグネチックスターラーで1分間撹拌してポリエステル系塗料及び溶剤を均一に混合した。この混合液に無機粒子を0.5g添加し、マグネチックスターラーでさらに10分間撹拌して塗料組成物を作製した。
<撥水部材の作製>
1mm厚のスライドガラスを基材として準備した。基材の両端にビニールテープを貼り付けて段差を形成し、基材上に滴下した塗料組成物をガラス棒で均一に引き延ばして塗布した。塗料組成物を塗布した基材を室温で5分乾燥し、電気炉で230℃に保持し3分間焼き付けた。その後、PDMS0.125gと溶剤10mLとの混合液を霧吹きで吹き付けて、室温で30分乾燥させることで撥水処理した。このようにして基材の表面に撥水皮膜が形成された撥水部材を作製した。
1mm厚のスライドガラスを基材として準備した。基材の両端にビニールテープを貼り付けて段差を形成し、基材上に滴下した塗料組成物をガラス棒で均一に引き延ばして塗布した。塗料組成物を塗布した基材を室温で5分乾燥し、電気炉で230℃に保持し3分間焼き付けた。その後、PDMS0.125gと溶剤10mLとの混合液を霧吹きで吹き付けて、室温で30分乾燥させることで撥水処理した。このようにして基材の表面に撥水皮膜が形成された撥水部材を作製した。
[実施例5]
スキージ法に代えてスプレー法で基材に塗料組成物を塗布した以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。
スキージ法に代えてスプレー法で基材に塗料組成物を塗布した以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。
[実施例6]
無機粒子として以下の製造方法により三次元鱗片状ベーマイト(突起粒子)を準備した。軟水3000gに炭酸ナトリウム((株)トクヤマ製)260gを添加して透明な水溶液になるまで撹拌混合した。この水溶液に水酸化アルミニウム(グレード名:BF083、平均粒子径(レーザー回折・散乱法):10μm、一次粒子の平均値(SEM像より30点測長):6.5μm、日本軽金属(株)製)300gを入れてよく撹拌混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を撹拌型オートクレーブ(容積:5L)へ入れ、180℃で6時間、1.49m/secで撹拌(羽根径:0.142m、回転数:200rpm)しながら水熱処理した。なお、室温(約25℃)から180℃までは2時間で昇温した。水熱処理後のスラリーを脱水、水洗、乾燥して、三次元鱗片状ベーマイトを得た。無機粒子として上記の三次元鱗片状ベーマイトを用い、溶剤を5mLとした以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。
無機粒子として以下の製造方法により三次元鱗片状ベーマイト(突起粒子)を準備した。軟水3000gに炭酸ナトリウム((株)トクヤマ製)260gを添加して透明な水溶液になるまで撹拌混合した。この水溶液に水酸化アルミニウム(グレード名:BF083、平均粒子径(レーザー回折・散乱法):10μm、一次粒子の平均値(SEM像より30点測長):6.5μm、日本軽金属(株)製)300gを入れてよく撹拌混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を撹拌型オートクレーブ(容積:5L)へ入れ、180℃で6時間、1.49m/secで撹拌(羽根径:0.142m、回転数:200rpm)しながら水熱処理した。なお、室温(約25℃)から180℃までは2時間で昇温した。水熱処理後のスラリーを脱水、水洗、乾燥して、三次元鱗片状ベーマイトを得た。無機粒子として上記の三次元鱗片状ベーマイトを用い、溶剤を5mLとした以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。
[実施例7]
無機粒子として以下の製造方法により三次元鱗片状ベーマイト(突起粒子)を準備した。軟水6000gに炭酸ナトリウム((株)トクヤマ製)171gを添加して透明な水溶液になるまで撹拌混合し、そこに水酸化アルミニウム(グレード名:ALH-4E、平均粒子径(レーザー回折・散乱法):4μm、一次粒子の平均値(SEM像より30点測長):2μm、河合石灰工業(株)製)600gを入れてよく撹拌混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を撹拌型オートクレーブ(容積:10L)へ入れ、180℃で6時間、1.65m/secで撹拌(羽根径:0.195m、回転数:162rpm)しながら水熱処理した。なお、180℃までは2時間で昇温した。水熱処理後のスラリーを脱水、水洗、乾燥して、三次元鱗片状ベーマイトを得た。無機粒子として上記の三次元鱗片状ベーマイトを用い、溶剤を5mLとした以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。
無機粒子として以下の製造方法により三次元鱗片状ベーマイト(突起粒子)を準備した。軟水6000gに炭酸ナトリウム((株)トクヤマ製)171gを添加して透明な水溶液になるまで撹拌混合し、そこに水酸化アルミニウム(グレード名:ALH-4E、平均粒子径(レーザー回折・散乱法):4μm、一次粒子の平均値(SEM像より30点測長):2μm、河合石灰工業(株)製)600gを入れてよく撹拌混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を撹拌型オートクレーブ(容積:10L)へ入れ、180℃で6時間、1.65m/secで撹拌(羽根径:0.195m、回転数:162rpm)しながら水熱処理した。なお、180℃までは2時間で昇温した。水熱処理後のスラリーを脱水、水洗、乾燥して、三次元鱗片状ベーマイトを得た。無機粒子として上記の三次元鱗片状ベーマイトを用い、溶剤を5mLとした以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。
[比較例1]
無機粒子として株式会社アムテック製のパナテトラ(登録商標)WZ-0501(テトラポッド状酸化亜鉛)を用いた以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。
無機粒子として株式会社アムテック製のパナテトラ(登録商標)WZ-0501(テトラポッド状酸化亜鉛)を用いた以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。
[比較例2]
無機粒子として東洋アルミニウム株式会社製の球体状又は楕円体状(略球状)アルミニウム粒子(品名:14-0132、平均粒子径(D50):11.2μm)を用いた以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。
無機粒子として東洋アルミニウム株式会社製の球体状又は楕円体状(略球状)アルミニウム粒子(品名:14-0132、平均粒子径(D50):11.2μm)を用いた以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。
[比較例3]
無機粒子として以下の製造方法により三次元鱗片状ベーマイト(突起粒子)を準備した。軟水7000gに炭酸ナトリウム((株)トクヤマ製)238gを添加して透明な水溶液になるまで撹拌混合し、そこに水酸化アルミニウム(グレード名:ALH-8、平均粒子径(レーザー回折・散乱法):8μm、一次粒子の平均値(SEM像より30点測長):6μm、河合石灰工業(株)製)700gを入れてよく撹拌混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を撹拌型オートクレーブ(容積:10L)へ入れ、200℃で8時間、2.04m/secで撹拌(羽根径:0.195m、回転数:200rpm)しながら水熱処理した。なお、200℃までは2時間で昇温した。水熱処理後のスラリーを脱水、水洗、乾燥して、三次元鱗片状ベーマイトを得た。無機粒子として上記の三次元鱗片状ベーマイトを用い、溶剤を5mLとした以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。
無機粒子として以下の製造方法により三次元鱗片状ベーマイト(突起粒子)を準備した。軟水7000gに炭酸ナトリウム((株)トクヤマ製)238gを添加して透明な水溶液になるまで撹拌混合し、そこに水酸化アルミニウム(グレード名:ALH-8、平均粒子径(レーザー回折・散乱法):8μm、一次粒子の平均値(SEM像より30点測長):6μm、河合石灰工業(株)製)700gを入れてよく撹拌混合して懸濁液を調製した。この懸濁液を撹拌型オートクレーブ(容積:10L)へ入れ、200℃で8時間、2.04m/secで撹拌(羽根径:0.195m、回転数:200rpm)しながら水熱処理した。なお、200℃までは2時間で昇温した。水熱処理後のスラリーを脱水、水洗、乾燥して、三次元鱗片状ベーマイトを得た。無機粒子として上記の三次元鱗片状ベーマイトを用い、溶剤を5mLとした以外は実施例1と同様にして撥水部材を作製した。
[評価]
各例で用いた長尺粒子の平均長径、平均短径及びアスペクト比並びに凝集体又は突起粒子の平均粒子径を測定し、これらの結果を表1に示した。各例で得られた撥水皮膜の膜厚を測定し、これらの結果を表2に示した。また、各例で得られた撥水皮膜の塗装直後接触角、耐酸性試験後接触角、及び耐汚染性試験後接触角を評価し、表3に示した。また、各例で用いた突起粒子又は長尺粒子の吸油量、タップ密度、及び比表面積を測定し、これらの結果を表4に示した。これらの測定方法及び評価方法は以下の通りである。
各例で用いた長尺粒子の平均長径、平均短径及びアスペクト比並びに凝集体又は突起粒子の平均粒子径を測定し、これらの結果を表1に示した。各例で得られた撥水皮膜の膜厚を測定し、これらの結果を表2に示した。また、各例で得られた撥水皮膜の塗装直後接触角、耐酸性試験後接触角、及び耐汚染性試験後接触角を評価し、表3に示した。また、各例で用いた突起粒子又は長尺粒子の吸油量、タップ密度、及び比表面積を測定し、これらの結果を表4に示した。これらの測定方法及び評価方法は以下の通りである。
<平均長径、平均短径及びアスペクト比>
凝集体又は突起粒子に含まれる長尺粒子の平均長径及び平均短径を、カールツァイス社製の走査型電子顕微鏡FE-SEM ULTRAplusを用いて測定した。平均長径及び平均短径は、撥水皮膜のSEM画像から長尺粒子10個の長径及び短径の長さを計測し、これらの計測値の平均値をそれぞれ算出することで得た。アスペクト比は、長尺粒子の平均長径を平均短径で除することにより算出した。なお、凝集体に含まれる長尺粒子の長径は、凝集体の中央部、すなわち長尺粒子の根元から、長尺粒子の先端までの長さを計測した。同様に、突起粒子に含まれる長尺粒子の長径は、突起部の長尺部分(長尺粒子)の長さを測定した。また、凝集体に含まれる長尺粒子の短径は、長尺粒子の中間部分の長さを測定した。同様に、突起粒子に含まれる長尺粒子の短径は、突起部の長尺部分の中間部分の長さを測定した。なお、長尺粒子の短径は、通常、撥水皮膜の表面を観察したSEM画像に含まれる長尺粒子の中間部分の幅を採寸することで測定を行うが、長尺粒子には中間部分の幅が最小となる位置関係で観察されるように配向していないものが多数含まれていることを考慮して、長尺粒子の幅が最小となる位置関係で観察されるように配向している長尺粒子の幅を採寸することで測定を行うことができる。
凝集体又は突起粒子に含まれる長尺粒子の平均長径及び平均短径を、カールツァイス社製の走査型電子顕微鏡FE-SEM ULTRAplusを用いて測定した。平均長径及び平均短径は、撥水皮膜のSEM画像から長尺粒子10個の長径及び短径の長さを計測し、これらの計測値の平均値をそれぞれ算出することで得た。アスペクト比は、長尺粒子の平均長径を平均短径で除することにより算出した。なお、凝集体に含まれる長尺粒子の長径は、凝集体の中央部、すなわち長尺粒子の根元から、長尺粒子の先端までの長さを計測した。同様に、突起粒子に含まれる長尺粒子の長径は、突起部の長尺部分(長尺粒子)の長さを測定した。また、凝集体に含まれる長尺粒子の短径は、長尺粒子の中間部分の長さを測定した。同様に、突起粒子に含まれる長尺粒子の短径は、突起部の長尺部分の中間部分の長さを測定した。なお、長尺粒子の短径は、通常、撥水皮膜の表面を観察したSEM画像に含まれる長尺粒子の中間部分の幅を採寸することで測定を行うが、長尺粒子には中間部分の幅が最小となる位置関係で観察されるように配向していないものが多数含まれていることを考慮して、長尺粒子の幅が最小となる位置関係で観察されるように配向している長尺粒子の幅を採寸することで測定を行うことができる。
<凝集体又は突起粒子の平均粒子径>
凝集体又は突起粒子の平均粒子径は、カールツァイス社製の走査型電子顕微鏡FE-SEM ULTRAplusを用いて測定した。凝集体又は突起粒子の平均粒子径は、撥水皮膜のSEM画像から凝集体又は突起粒子10個の粒子径を計測し、これらの計測値の平均値を算出することで得た。なお、凝集体は、針状粒子のような単位粒子の1次凝集体を測定することができる。SEM画像内において、凝集体が粒子状の凹凸に乏しい平面的又は連続的な形状をとるように集合することで、単位粒子の1次凝集体を判別することが困難である場合には、平均粒子径を測定不可「-」とした。
凝集体又は突起粒子の平均粒子径は、カールツァイス社製の走査型電子顕微鏡FE-SEM ULTRAplusを用いて測定した。凝集体又は突起粒子の平均粒子径は、撥水皮膜のSEM画像から凝集体又は突起粒子10個の粒子径を計測し、これらの計測値の平均値を算出することで得た。なお、凝集体は、針状粒子のような単位粒子の1次凝集体を測定することができる。SEM画像内において、凝集体が粒子状の凹凸に乏しい平面的又は連続的な形状をとるように集合することで、単位粒子の1次凝集体を判別することが困難である場合には、平均粒子径を測定不可「-」とした。
<撥水皮膜の膜厚>
株式会社キーエンス製のワンショット3D形状測定機VR-3200を用い、基材の撥水皮膜が形成されていない箇所の表面の高さと、撥水皮膜の箇所の表面の高さとの差を撥水皮膜の膜厚として計測した。
株式会社キーエンス製のワンショット3D形状測定機VR-3200を用い、基材の撥水皮膜が形成されていない箇所の表面の高さと、撥水皮膜の箇所の表面の高さとの差を撥水皮膜の膜厚として計測した。
<塗装直後接触角>
上記のようにして得られた撥水皮膜表面の接触角を協和界面化学株式会社製の固液界面解析装置DropMaster700を用いて測定した。具体的には、撥水皮膜表面に各2.5μLのイオン交換水を、位置を変えて3箇所に滴下し、撥水皮膜表面上に形成された水滴の接触角を測定した。イオン交換水の滴下にはテフロン(登録商標)コート針28Gを使用した。3箇所全ての接触角が150°以上又は着滴しない場合には「○」、1箇所又は2箇所の接触角が150°以上でそれ以外の箇所の接触角が150°未満の場合には「△」、3箇所全ての接触角が150°未満の場合には「×」と評価した。
上記のようにして得られた撥水皮膜表面の接触角を協和界面化学株式会社製の固液界面解析装置DropMaster700を用いて測定した。具体的には、撥水皮膜表面に各2.5μLのイオン交換水を、位置を変えて3箇所に滴下し、撥水皮膜表面上に形成された水滴の接触角を測定した。イオン交換水の滴下にはテフロン(登録商標)コート針28Gを使用した。3箇所全ての接触角が150°以上又は着滴しない場合には「○」、1箇所又は2箇所の接触角が150°以上でそれ以外の箇所の接触角が150°未満の場合には「△」、3箇所全ての接触角が150°未満の場合には「×」と評価した。
<耐酸性試験後接触角>
ガラス製シャーレ内に0.5mol/L塩酸水溶液を20mL入れ、この水溶液中に上記のようにして得られた撥水部材を室温で10分間浸漬させた。その後、撥水部材を水溶液から取り出し、水洗及び乾燥後に上記と同様にして接触角を測定した。3箇所全ての接触角が150°以上又は着滴しない場合には「○」、1箇所又は2箇所の接触角が150°以上でそれ以外の箇所の接触角が150°未満の場合には「△」、3箇所全ての接触角が150°未満の場合には「×」と評価した。
ガラス製シャーレ内に0.5mol/L塩酸水溶液を20mL入れ、この水溶液中に上記のようにして得られた撥水部材を室温で10分間浸漬させた。その後、撥水部材を水溶液から取り出し、水洗及び乾燥後に上記と同様にして接触角を測定した。3箇所全ての接触角が150°以上又は着滴しない場合には「○」、1箇所又は2箇所の接触角が150°以上でそれ以外の箇所の接触角が150°未満の場合には「△」、3箇所全ての接触角が150°未満の場合には「×」と評価した。
<耐汚染性試験後接触角>
DEP等の大気中の超微小粒子の付着による超撥水表面の汚染を再現するため、耐汚染性試験を実施した。具体的には、上記のようにして得られた撥水皮膜の表面に株式会社真空デバイス製のカーボンコーターVC-100を用いてカーボンを蒸着させた。具体的には、替え芯カーボンSLC-30を電極部にセットし、撥水部材をステージ上に静置し、チャンバー内を2Pa程度まで真空引きした後、芯が焼き切れるまで数秒間、電極間に電流を流してカーボンを撥水皮膜の表面に蒸着させた。カーボンを蒸着させると、一次粒子径が数nm程度の炭素の超微小粒子が被蒸着物表面に析出する。カーボンを蒸着させた撥水部材をチャンバーから取り出し、上記と同様にして接触角を測定した。3箇所全ての接触角が145°以上又は着滴しない場合には「○」、1箇所又は2箇所の接触角が145°以上でそれ以外の箇所の接触角が145°未満の場合には「△」、3箇所全ての接触角が145°未満の場合には「×」と評価した。
DEP等の大気中の超微小粒子の付着による超撥水表面の汚染を再現するため、耐汚染性試験を実施した。具体的には、上記のようにして得られた撥水皮膜の表面に株式会社真空デバイス製のカーボンコーターVC-100を用いてカーボンを蒸着させた。具体的には、替え芯カーボンSLC-30を電極部にセットし、撥水部材をステージ上に静置し、チャンバー内を2Pa程度まで真空引きした後、芯が焼き切れるまで数秒間、電極間に電流を流してカーボンを撥水皮膜の表面に蒸着させた。カーボンを蒸着させると、一次粒子径が数nm程度の炭素の超微小粒子が被蒸着物表面に析出する。カーボンを蒸着させた撥水部材をチャンバーから取り出し、上記と同様にして接触角を測定した。3箇所全ての接触角が145°以上又は着滴しない場合には「○」、1箇所又は2箇所の接触角が145°以上でそれ以外の箇所の接触角が145°未満の場合には「△」、3箇所全ての接触角が145°未満の場合には「×」と評価した。
<吸油量>
試薬のあまに油(関東化学(株)製)を用いて、JIS K5101-13-1(2004)の精製あまに油法に準拠して、吸油量を測定した。測定手順は次のとおりである。
〔1〕試料(突起粒子又は長尺粒子)2gを秤量し、ガラス製の測定板の上に置いた。
〔2〕あまに油をスポイトから1回につき4~5滴ずつ徐々に加え、パレットナイフであまに油に試料を練り込んだ。
〔3〕上記〔2〕の操作を繰り返し行い、あまに油および試料の塊ができるところまで滴下を続けた。
〔4〕以後、あまに油を1滴ずつ滴下し、完全に混練するようにして繰り返し、ペーストが柔らかな硬さになったところを終点とした。
〔5〕下記の数式(2)を用いて、吸油量の値を求めた。
吸油量(g/100g)=(終点までに用いたあまに油の重量(g)/試料の重量(g))×100 (2)
試薬のあまに油(関東化学(株)製)を用いて、JIS K5101-13-1(2004)の精製あまに油法に準拠して、吸油量を測定した。測定手順は次のとおりである。
〔1〕試料(突起粒子又は長尺粒子)2gを秤量し、ガラス製の測定板の上に置いた。
〔2〕あまに油をスポイトから1回につき4~5滴ずつ徐々に加え、パレットナイフであまに油に試料を練り込んだ。
〔3〕上記〔2〕の操作を繰り返し行い、あまに油および試料の塊ができるところまで滴下を続けた。
〔4〕以後、あまに油を1滴ずつ滴下し、完全に混練するようにして繰り返し、ペーストが柔らかな硬さになったところを終点とした。
〔5〕下記の数式(2)を用いて、吸油量の値を求めた。
吸油量(g/100g)=(終点までに用いたあまに油の重量(g)/試料の重量(g))×100 (2)
<タップ密度>
10mLのメスシリンダーに試料(突起粒子又は長尺粒子)0.5g又は1gを入れ、一定高さより一定速度で嵩の変化がなくなるまで落下させることによって充填した。充填後の体積の値を読み取り、次の数式(3)を用いてタップ密度の値を算出した。
タップ密度(g/cm3)=試料重量(g)/充填後の体積(cm3) (3)
10mLのメスシリンダーに試料(突起粒子又は長尺粒子)0.5g又は1gを入れ、一定高さより一定速度で嵩の変化がなくなるまで落下させることによって充填した。充填後の体積の値を読み取り、次の数式(3)を用いてタップ密度の値を算出した。
タップ密度(g/cm3)=試料重量(g)/充填後の体積(cm3) (3)
<比表面積>
全自動比表面積測定装置((株)マウンテック製Macsorb(登録商標) HM model-1200)を使用して、150℃で30分の真空加熱排気による前処理を行ってから、液体窒素温度近傍(77K)にてBET流動法(1点法)でBET表面積を測定することで比表面積を得た。
全自動比表面積測定装置((株)マウンテック製Macsorb(登録商標) HM model-1200)を使用して、150℃で30分の真空加熱排気による前処理を行ってから、液体窒素温度近傍(77K)にてBET流動法(1点法)でBET表面積を測定することで比表面積を得た。
表3に示すように、実施例1~実施例7の撥水部材では、塗装直後だけでなく、耐酸性試験後及び耐汚染性試験後であっても水滴が撥水皮膜の表面に着滴せずに接触角150°以上の超撥水性を示した。一方、比較例1の撥水部材では、塗装直後には撥水皮膜の表面に水滴が着滴しなかったものの、耐酸性試験後に着滴して接触角は平均で141°であった。また、比較例1の撥水部材では、耐汚染性試験後に着滴して接触角は145°以上であった。比較例2の撥水部材では、塗装直後であっても接触角が平均で133°であった。比較例3の撥水部材では、塗装直後であっても接触角が平均で144°であった。
次に、実施例及び比較例で用いた長尺粒子をSEMで観察した。図1は、実施例1で用いられ、被覆層で被覆する前の毬栗状ベーマイトをSEMで観察した二次電子像である。図1に示すように、毬栗状ベーマイトは複数の長尺粒子1を備え、複数の長尺粒子1の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間を保持していることが分かる。
図2は、実施例1で用いられ、被覆層で被覆する前の毬栗状ベーマイトの断面をSEMで観察した反射電子像である。図1及び図2から、毬栗状ベーマイト(突起粒子2)を用いた場合には、コア部3と、複数の長尺粒子1がコア部3から延びた突起部4とを含むことが分かる。
図3は、実施例1で用いられ、被覆層で被覆した後の毬栗状ベーマイトをSEMで観察した二次電子像である。図1及び図3から、被覆層の被覆前後で撥水皮膜の表面構造に大きな変化はなく、被覆後の凝集体は、被膜層によって被覆された複数の長尺粒子の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間を保持していることが分かる。そのため、実施例1では、Cassie-Baxter表面の形成により高い撥水性を示すことができたと推定される。
図4は、実施例2で用いられ、被覆層で被覆する前の針状ベーマイトをSEMで観察した二次電子像である。図5は、実施例2で用いられ、被覆層で被覆する前の針状ベーマイトの断面をSEMで観察した反射電子像である。図4に示すように、針状ベーマイトを用いた場合にも、複数の長尺粒子の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間を保持していることが分かる。また、図4及び図5から、針状ベーマイトは、毬栗状ベーマイトのようなコア部が存在しないことが分かる。
図6は、実施例2で用いられ、被覆層で被覆した後の針状ベーマイトをSEMで観察した二次電子像である。図4及び図6から、実施例2の撥水皮膜では、被覆層の被覆前後で撥水皮膜の表面構造に大きな変化はなく、複数の長尺粒子の間に、凝集体が撥水皮膜の外部と連通する空間を保持していることが分かる。そのため、実施例2でも、高い撥水性を示すことができたと推定される。
図7は、実施例6で用いられ、被覆層で被覆する前の三次元鱗片状ベーマイトをSEMで観察した二次電子像である。図8は、実施例6で用いられ、被覆層で被覆する前の三次元鱗片状ベーマイトの断面をSEMで観察した反射電子像である。また、図10は、実施例7で用いられ、被覆層で被覆する前の三次元鱗片状ベーマイトをSEMで観察した二次電子像である。図11は、実施例7で用いられ、被覆層で被覆する前の三次元鱗片状ベーマイトの断面をSEMで観察した反射電子像である。図7及び図10に示すように、三次元鱗片状ベーマイトを用いた実施例6及び実施例7の場合にも、複数の長尺粒子の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間を保持していることが分かる。また、図7及び図8から、実施例6では、三次元鱗片状ベーマイトを用いた場合には、コア部が存在せず、複数の長尺粒子が内部から外表面に向けて配列するようにして凝集していることが分かる。また、実施例6では、鱗片状の長尺粒子が比較的に粗に凝集しており、内部の長尺粒子の間に空隙を有する中空状になっていることが分かる。
図9は、実施例6で用いられ、被覆層で被覆した後の三次元鱗片状ベーマイトをSEMで観察した二次電子像である。図12は、実施例7で用いられ、被覆層で被覆した後の三次元鱗片状ベーマイトをSEMで観察した二次電子像である。図7及び図9、並びに図10及び図12から、実施例6及び実施例7の撥水皮膜でも、被覆後の凝集体は、被膜層によって被覆された複数の長尺粒子の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間を保持していることが分かる。そのため、実施例6及び実施例7でも、高い撥水性を示すことができたと推定される。
図13は、比較例3で用いられ、被覆層で被覆する前の三次元鱗片状ベーマイトをSEMで観察した二次電子像である。図14は、比較例3で用いられ、被覆層で被覆する前の三次元鱗片状ベーマイトの断面をSEMで観察した反射電子像である。図13及び図14に示すように、比較例3の場合には、複数の長尺粒子の間に、撥水皮膜の外部と連通する空間を保持しているものの、実施例6の場合と比べると、撥水皮膜の外部と連通する空間が比較的に小さいことが分かる。これは、比較例3では、アスペクト比が小さく、長尺粒子の短辺に対する長辺の長さが短いため、長尺粒子の間に形成される空間が狭くなっていることに起因すると考えられる。また、比較例3の場合には、鱗片状の長尺粒子が比較的に密に凝集しており、内部が長尺粒子によって詰まった中実状になっていることが分かる。
図15は、比較例3で用いられ、被覆層で被覆した後の三次元鱗片状ベーマイトをSEMで観察した二次電子像である。図13及び図15から、比較例3の撥水皮膜では、被覆後の凝集体は、複数の長尺粒子の頂点間が被覆層によって平面状に結ばれるように被覆されることで、複数の長尺粒子の間に存在する撥水皮膜の外部と連通する空間が外部と連通していなくなっていることが分かる。そのため、比較例3では、撥水性が低下したと推定される。
図16は、実施例1に係る耐酸性試験後の撥水皮膜をSEMで観察した二次電子像である。図17は、比較例1で用いられ、被覆層で被覆した後のテトラポッド状酸化亜鉛をSEMで観察した二次電子像である。図18は、比較例1に係る耐酸性試験後の撥水皮膜をSEMで観察した二次電子像である。図3及び図16から、実施例1に係る撥水皮膜は、耐酸性試験後であっても、長尺粒子と、長尺粒子の間の空間とを有する構造を保持しており、撥水皮膜の表面構造に大きな変化が見られないことが分かる。そのため、耐酸性試験後であっても撥水皮膜に水滴が着滴しなかったと推定される。一方、図17及び図18から、比較例1に係る撥水皮膜は、溶解したテトポッド状の粒子が被膜層の表面を膜状に広がるようにして被覆した構造が出現しており、耐酸性試験後に撥水皮膜の表面の凹凸構造が減少するように変形していることが分かる。テトラポッド状酸化亜鉛が、酸に溶解してしまったことから、撥水皮膜の表面構造が変形したと推定される。そのため、耐酸性試験後の撥水性が低下したと推定される。
図19は、比較例2で用いられ、被覆層で被覆する前のアルミニウム粉をSEMで観察した二次電子像である。図20は、比較例2で用いられ、被覆層で被覆した後のアルミニウム粉をSEMで観察した二次電子像である。図19から、表面の凹凸が乏しい球体状又は楕円体状の形状を有するアルミニウム粉を用いた場合には、長尺粒子を含む凝集体であれば保持されうる空間が形成されていないことが分かる。そのため、超撥水性を示さないことが推定される。また、図20から、比較例2に係る撥水皮膜は、被覆層で被覆した後にも長尺粒子を含む凝集体であれば保持されうる空間が形成されていないことが分かる。
表4に示すように、実施例1,2,4~7では、比較例3に比して吸油量が高い結果が得られた。また、表4に示すように、実施例1,2,4~7では、比較例3に比してタップ密度が低い結果が得られた。また、表4に示すように、実施例1,2,4~7では、比較例3に比して比表面積が高い結果が得られた。これらのパラメータの測定結果から、実施例1,2,4~7では、突起粒子内部に存在する空隙の容積が大きくなるか、又は突起粒子の表面に長尺粒子によって形成される凹凸構造が多く存在することにより、Cassie-Baxter表面の形成によって撥水性が向上していたと推察される。中でも、三次元鱗片状ベーマイトを用いた実施例6と比較例3とを対比すると、中空状の構造を有するともに、長尺粒子の間に撥水皮膜の外部と連通する空間を多く保持している構造がSEMによって確認された実施例6では、中実状の構造を有する比較例3よりも、吸油量、比表面積が増加し、タップ密度が低下して、撥水性が向上したことが裏付けられた。
以上、本実施形態を実施例及び比較例によって説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
1 長尺粒子
2 突起粒子
3 コア部
4 突起部
2 突起粒子
3 コア部
4 突起部
Claims (14)
- アルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を主成分として含む複数の長尺粒子と、前記複数の長尺粒子の表面を被覆し、撥水樹脂により形成された被覆層とを含む凝集体を備える撥水皮膜であって、
前記凝集体は、前記複数の長尺粒子が三次元的に凝集しており、
前記凝集体の外表面は前記被覆層によって被覆されており、
前記凝集体は、前記被覆層によって被覆された前記複数の長尺粒子の間に、前記撥水皮膜の外部と連通する空間を保持している、
ことを特徴とする撥水皮膜。 - 前記複数の長尺粒子は、針形状、鱗片形状及び板形状からなる群より選択される少なくとも1種の形状を有する、請求項1に記載の撥水皮膜。
- 前記複数の長尺粒子は針形状の粒子であり、前記複数の長尺粒子の各々は前記被覆層を介して互いに結合している、請求項1又は2に記載の撥水皮膜。
- 前記凝集体が、コア部と、前記複数の長尺粒子が前記コア部から外表面に向けて放射状に延びた突起部とを含む突起粒子を有し、
前記突起粒子では、前記突起粒子に含まれる前記複数の長尺粒子及び前記コア部が、前記複数の長尺粒子の各々と前記コア部とによって囲まれる前記空間を保持して配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の撥水皮膜。 - 前記凝集体は、前記複数の長尺粒子が球状に集合して内部から外表面に向けて放射状に配列するようにして凝集した突起粒子を有し、
前記突起粒子では、前記突起粒子に含まれる前記複数の長尺粒子が、前記複数の長尺粒子の各々によって囲まれる前記空間を保持して配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の撥水皮膜。 - 前記複数の長尺粒子の平均長径は1μm以上10μm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の撥水皮膜。
- 前記複数の長尺粒子の平均短径に対する平均長径の比は10以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の撥水皮膜。
- 前記撥水樹脂はシリコーン樹脂及びフッ素樹脂の少なくともいずれか一方の樹脂を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の撥水皮膜。
- 前記撥水皮膜の厚さが10μm以上500μm以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の撥水皮膜。
- 基材と、
前記基材の表面を被覆する請求項1~9のいずれか一項に記載の撥水皮膜と、
を備える、
ことを特徴とする撥水部材。 - 前記基材は、金属、ガラス、樹脂、セラミックス、紙又はこれらの複合体である、請求項10に記載の撥水部材。
- アルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を主成分として含む複数の長尺粒子と、
溶剤と、
前記溶剤に溶解された撥水樹脂と、
を含有する、
ことを特徴とする塗料組成物。 - コア部と、アルミナ及びベーマイトの少なくともいずれか一方を主成分として含む複数の長尺粒子が前記コア部から外表面に向けて放射状に延びた突起部とを含む突起粒子と、
溶剤と、
前記溶剤に溶解された撥水樹脂と、
を含有し、
前記突起粒子では、前記突起粒子に含まれる前記複数の長尺粒子及び前記コア部が、前記複数の長尺粒子の各々と前記コア部とによって囲まれる空間を保持して配置されている、
ことを特徴とする塗料組成物。 - 基材の表面に請求項12又は13に記載の塗料組成物を塗布して撥水皮膜を形成する撥水部材の製造方法であって、
前記撥水皮膜は、前記複数の長尺粒子と、前記複数の長尺粒子の表面を被覆し、撥水樹脂により形成された被覆層とを含む凝集体を備え、
前記凝集体は、前記複数の長尺粒子が三次元的に凝集しており、
前記凝集体は、前記被覆層によって被覆された前記複数の長尺粒子の間に、前記撥水皮膜の外部と連通する空間を保持している、
ことを特徴とする撥水部材の製造方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021008734 | 2021-01-22 | ||
JP2021008734 | 2021-01-22 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2022113144A true JP2022113144A (ja) | 2022-08-03 |
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ID=82656990
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022007721A Pending JP2022113144A (ja) | 2021-01-22 | 2022-01-21 | 撥水皮膜、撥水部材、塗料組成物及び撥水部材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2022113144A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7456539B2 (ja) | 2022-06-29 | 2024-03-27 | 東洋紡エムシー株式会社 | 防護材料および防護衣 |
-
2022
- 2022-01-21 JP JP2022007721A patent/JP2022113144A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP7456539B2 (ja) | 2022-06-29 | 2024-03-27 | 東洋紡エムシー株式会社 | 防護材料および防護衣 |
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