JP2022112150A - 金属酸化物配合コーティング組成物、及びその用途 - Google Patents

金属酸化物配合コーティング組成物、及びその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】近赤外線遮蔽能等を得るために金属酸化物を配合したコーティング組成物であって、夏場のような高温高湿条件下において硬化した場合であっても塗膜の透明性が良好であり、かつ、良好な乾燥性を得ることができるコーティング組成物およびその用途を提供する。【解決手段】下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分を含有する、コーティング組成物:(a)下記式(I)で表わされるアミノ基を含むシラン化合物R4-n-Si-(OR’)n-(I)(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1~3から選択される整数を表わす。); (b)H3BO3及びB2O3からなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物;(c)金属酸化物粉末;(d)有機溶媒、であって、(d)有機溶媒が、(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒を含有する、上記コーティング組成物。【選択図】 なし

Description

本発明は、金属酸化物配合コーティング組成物及びその用途に関し、より具体的には近赤外線等を有効に遮蔽し得るとともに高温高湿条件下において、塗膜の透明性が良好であり、かつ、良好な乾燥性が得られる金属酸化物配合コーティング組成物、及びその用途に関する。
アルコキシシラン、あるいはこれらの重合体、これらの加水分解物等を含有するシリコーン系組成物は、常温で硬化することができるため、ガラス、セラミックス、プラスチック等の基材へのコーティング剤として使用されているが、高温高湿条件下において白濁することが知られている。
シリコーン系コーティング組成物に、例えば無機系近赤外線遮蔽剤を配合した近赤外線遮蔽コーティング剤が知られているが、塗膜の透明性確保のため高温高湿での硬化を避けることが求められ、その使用形態事実上常温での硬化に限られていた。また、良好な乾燥性を得るために、低沸点の低級アルコールを使用することが一般的であった。(例えば、特許文献1参照。)
特開2008-111048号公報
上述従来技術の限界に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、近赤外線遮蔽能等を得るために金属酸化物を配合したコーティング組成物であって、夏場のような高温高湿条件下において硬化した場合であっても塗膜の透明性が良好であり、かつ、良好な乾燥性を得ることができるコーティング組成物およびその用途を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討の結果、特定の構造を有するアミノ基を有する有機シラン化合物、特定の構造を有するホウ素化合物、及び金属酸化物粉末を組み合わせてなるコーティング組成物において、特定のアルコール系溶媒を使用することで、高温高湿条件下において硬化した場合であっても、塗膜の透明性が良好であり、かつ、良好な乾燥性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
[1]
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分を含有する、コーティング組成物:
(a)下記式(I)で表わされるアミノ基を含むシラン化合物
4-n-Si-(OR’) -(I)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1~3から選択される整数を表わす。);
(b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物;
(c)金属酸化物粉末;
(d)有機溶媒、
であって、(d)有機溶媒が、(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒を含有する、上記コーティング組成物、に関する。
また、下記[2]から[13]は、いずれも本発明の好ましい一態様又は一実施形態である。
[2]
(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒の沸点が、180℃~230℃である、[1]に記載のコーティング組成物。
[3]
(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒の沸点が180℃~200℃である、[1]に記載のコーティング組成物。
[4]
(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒を、全(d)有機溶媒の10~40質量%含有する、[1]から[3]のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
[5]
(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒を、全コーティング組成物中の5~25質量%含有する、[1]から[3]のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
[6]
(d)有機溶媒の少なくとも一部が、グリコールエーテル系溶媒である、[1]から[5]のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
[7]
(c)金属酸化物粉末が、五酸化二アンチモンを含有する、[1]から[6]に記載のコーティング組成物。
[8]
(c)金属酸化物粉末の平均粒径が10~100nmである、[1]から[7]のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
[9]
[1]から[8]のいずれか一項に記載のコーティング組成物を塗布する工程を有する、コーティング層の製造方法。
[10]
波長2000nmにおける光線透過率が5%以下であるコーティング層が形成される、[9]に記載のコーティング層の製造方法。
[11]
可視光透過率が80%以上であるコーティング層が形成される、[9]又は[10]に記載のコーティング層の製造方法。
[12]
濁度が2.0%以下であるコーティング層が形成される、[9]から[11]のいずれか一項に記載のコーティング層の製造方法。
[13]
透明基板上にコーティング層を形成する、[9]から[12]のいずれか一項に記載のコーティング層の製造方法。
本発明によれば、常温から夏場のような高温高湿条件下において硬化した場合であっても、塗膜の透明性が良好であり、かつ、良好な乾燥性が得られる金属酸化物配合コーティング組成物及びその用途を提供することができる。
当該コーティング組成物は、それから得られるコーティング(塗膜)の近赤外線遮蔽機能及び可視光での透明性が良好であり、高温高湿条件下でも良好な塗膜が形成できるので、塗膜形成の環境が制限される用途、例えば夏場や屋外での塗膜形成も求められる建築、建設用途や、塗布した塗膜が高温高湿条件下でも使用される建築物、自動車等の窓材等のコーティングにおいて、特に好適に使用することができる。
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分を含有する、コーティング組成物である。
(a)下記式(I)で表わされるアミノ基を含むシラン化合物
4-n-Si-(OR’) -(I)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1~3から選択される整数を表わす。)
(b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物
(c)金属酸化物粉末
(d)溶媒
すなわち本発明のコーティング組成物は、上記(a)成分(アミノ基を含むシラン化合物)、及び(b)成分(ホウ素化合物)を含有する。本発明のコーティング組成物を硬化させて得られるコーティング層は、通常、これら(a)成分及び(b)成分を反応させ得られる化学構造を、その少なくとも一部に含む化合物を含有する。また、本発明のコーティング組成物は、硬化前においても(a)成分及び(b)成分が一部反応していてもよく、(a)成分及び(b)成分の反応生成物を一部含有していてもよい。
上述の(a)成分(アミノ基を含むシラン化合物)、及び(b)成分(ホウ素化合物)、並びに所望により他の成分、を反応させて得られる化学構造は、多くの場合、高分子構造を形成する。典型的には、(b)ホウ素化合物が、(a)アミノ基を含むシラン化合物中のアミノ基を介して架橋剤として働き、これらの成分を高分子化させて、(a)アミノ基を含むシラン化合物から導かれる構成単位と(b)ホウ素化合物から導かれる構成単位とを有する高分子構造が形成される。このような高分子構造は、(c)金属酸化物粉末を安定的に分散することができるという好ましい性質を有している。
この好ましい実施形態のコーティング組成物は、(a)成分と(b)成分とが、典型的には10~50℃の条件下で、高分子構造を有する反応生成物を形成可能な組み合わせとなっている。すなわち当該反応生成物は、(a)成分から導かれる構成単位、と(b)成分から導かれる構成単位とを有する高分子構造を有するものである。この高分子構造においては、(a)成分から導かれる構成単位と(b)成分から導かれる構成単位との比率が、(a)成分から導かれる構成単位1モルに対して(b)成分から導かれる構成単位0.02モル以上であることが好ましい。
またこの実施形態においては、(a)成分から導かれる構成単位、と(b)成分から導かれる構成単位とを有する高分子構造中に、(c)金属酸化物粉末が安定的に分散した構造となっていることが好ましい。
(a)アミノ基を含むシラン化合物
本発明において用いられる(a)成分は、以下の式で表わされる特定の構造を有する、アミノ基を含むシラン化合物である。
4-n-Si-(OR’)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1~3から選択される整数を表わす。)
ここで、Rはアミノ基含有の有機基を表わすが、たとえば、モノアミノメチル、ジアミノメチル、トリアミノメチル、モノアミノエチル、ジアミノエチル、トリアミノエチル、モノアミノプロピル、ジアミノプロピル、トリアミノプロピル、モノアミノブチル、ジアミノブチル、トリアミノブチル、及びこれらよりも炭素数の多いアルキル基またはアリール基を有する有機基を挙げることができるが、それらに限定されない。γ―アミノプロピルや、アミノエチルアミノプロピルが特に好ましく、γ―アミノプロピルが最も好ましい。
(a)成分中のR’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わす。その中でも、メチル基及びエチル基が好ましい。
(a)成分中のnは1~3から選択される整数を表わす。その中でも、nは2~3であるのが好ましく、nは3であるのが特に好ましい。
したがって、(a)成分としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどが特に好ましい。
(b)ホウ素化合物
本発明において用いられる(b)成分は、HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物である。(b)成分は、好ましくは、HBOである。
本実施形態のコーティング組成物における(a)成分と(b)成分との反応における両成分の使用量は、(a)成分1モルに対して(b)成分0.02モル以上の比率であることが好ましく、より好ましくは、(a)成分1モルに対して(b)成分0.02モル~8モルの比率、更に好ましくは、0.02モル~5モルの比率である。
(a)成分1モルに対し、(b)成分が0.02モル以上であることで、固化に要する時間が過度に長くなったり、充分に固化しなかったりする等の問題を効果的に抑制できる。また、(a)成分1モルに対し(b)成分が8モル以下であることで、(b)成分が(a)成分に溶解せず残ってしまう等の問題を効果的に抑制できる。
(a)アミノ基を含むシラン化合物と(b)ホウ素化合物とを反応させる際の混合条件(温度、混合時間、混合方法など)は、適宜選択することができる。通常の室温条件では、数分から数十分で透明で粘稠な液体となり、固化する。固化する時間や得られる反応生成物の粘度や剛性はホウ素化合物の割合でも異なるため、(c)金属酸化物粉末等のそれ以外の成分や、得るべき反応生成物やコーティングの物性や使用目的に応じて、これらの条件を適宜調節することが好ましい。
前記好ましい態様における(a)成分と(b)成分との反応生成物は、水を添加して加水分解する工程を経ないで(a)成分と(b)成分を反応させて得られる反応生成物であることが好ましい。このとき、水を添加して加水分解する工程を要さないため、ゾルゲル形成等の複雑な工程を要せず、しかも、長時間を要することなく、上記反応生成物を製造することができる。
(c)金属酸化物粉末
本願発明において用いられる(c)成分は、金属酸化物粉末である。(c)成分の金属酸化物粉末は、赤外線遮断材料として機能することを意図して添加され、(c)成分を添加することにより、赤外線、特に近赤外線を効果的に遮断することができる。
本実施形態における(c)成分の金属酸化物粉末としては、金属元素と酸素との化合物(化合物中に金属元素及び酸素以外の元素が存在していてもよい)の粉末であればよく、それ以外の制限はないが、例えば、Au,Ag,Ni,Cu、In、Sn、及びSbから選択される少なくとも1種の金属の酸化物の粉末を挙げることができ、好ましくは、ITO(インジウムスズオキサイド)及びATO(アンチモンスズオキサイド)から成る群から選択される少なくとも1種の酸化物の粉末である。
コーティングが可視光に対して透明であるためには、可視光線に対し、反射及び吸収が十分に小さいことに加え、散乱ができるだけ少ないことが望ましい。したがって、散乱を小さくするためには可視光の波長の1/2、すなわち、平均粒径が200nmよりも小さい超微粒子であることが好ましい。
更に低濁度を実現すること等を考慮すると、(c)金属酸化物粉末の平均粒径は10~100nmであることが好ましく、10~30nmであることが特に好ましい。
コーティング組成物から得られる膜の可視光における透明性は白濁(または濁度であり全透過光に占める散乱光成分の割合)の影響を受けるが、濁度が2%を超えると曇りを感じるため、透明性であるためには、濁度は2%以下とすることが好ましい。そのような2%以下の濁度を達成するには、ITO(インジウムスズオキサイド)やATO(アンチモンスズオキサイド、好ましくは五酸化二アンチモン)の超微粒子などの屈折率が約2の粒子を使用する場合には、平均粒径を100nm以下に分散したものを使用するのが好ましい。ただし、平均粒径を小さくし過ぎた場合、透明性は高くなるものの、近赤外線の遮断性が減少してしまうことがあるので、近赤外線の一定レベルの遮断性を得るためには、当該超微粒子を適切に分散させながらも、分散粒径を10nm以上に保つことが好ましい。したがって、可視光における透明性と近赤外線遮断性とのバランスを考慮して、平均粒径を適切な範囲に調整して利用することが好ましい。
本発明における(c)成分の金属酸化物粉末の使用量は、特に限定されないが、コーティング組成物全体を100質量部として、好ましくは1~30質量部、より好ましくは5~25質量部、より更に好ましくは10~20質量部である。
本発明においては、(c)成分の金属酸化物粉末に加えて、近赤外線吸収色素を併用してもよい。この場合の近赤外線吸収色素は、近赤外線吸収能を有する色素であれば特に限定されないが、例えば、アゾ系、アルミニウム系、アントラキノン系、シアニン系、ジイモニウム系、ジオール金属錯体系、ノスクアリリウム系及びフタロシアニン系の近赤外線吸収色素から選択される少なくとも1種の近赤外線吸収色素を挙げることができる。その中でも、ジイモニウム系及びフタロシアニン系の近赤外線吸収色素が好ましい。このような近赤外線吸収色素としては、[ビス(4-t-ブチル-1,2-ジチオフェノレート)銅-テトラ-n-ブチルアンモニウム](住友精化社製BBT)、1,1,5,5-テトラキス[4-(ジエチルアミノ)フェニル]-1,4-ペンタジエン-3-イリウム-P-トルエンスルホナート(昭和電工社製Karenz IR-T)、フタロシアニン化合物(山本化成社製TKR-2040)などを挙げることができる。
本発明においては、(c)成分の金属酸化物粉末に加えて、酸化亜鉛を含有していてもよい。酸化亜鉛は、紫外線遮蔽材料であり、これを添加することにより、赤外線に加えて紫外線をも有効に遮蔽することができる。
酸化亜鉛の形態には特に限定は無いが、可視光の透過性を維持する観点から、微粒子の形態であることが好ましく、超微粒子の形態であることが特に好ましい。
より具体的には、超微粒子状の酸化亜鉛は、紫外線遮蔽機能を有するものであるが、同時に可視光線に対して透過性が良好であるためには、200nm以下の平均粒子径を有することが好ましい。平均粒子径が200nm以下であることで、紫外線に対しては優れた遮蔽性能を示すと同時に、可視光線に対する十分な透過性を実現することができる。また、アクリル系分散剤や、リン酸エステル系分散剤等で分散させた状態での分散安定性も良好なものとなり、短時間の静置で酸化亜鉛が分離沈降するなどの現象を有効に抑制できる。
(d)有機溶媒
本発明のコーティング組成物においては、塗膜の透明性や、乾燥性等の観点から、特定の有機溶媒(d)を含有する。
より具体的には、本発明において使用する有機溶媒(d)は、炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒(d1)を含有する。本発明においては、有機溶媒(d)中に炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒(d1)を使用することで、高温高湿条件下において硬化を行った場合であっても白濁等が有効に抑制され、透明性に優れた塗膜を形成することができる。
炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒(d1)を使用することで、高温高湿条件下においても白濁等が有効に抑制されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒(d1)を使用することで、塗膜形成の際のゾルゲル反応の速度が適切に制御されること(ゾルゲル反応の速度が過大にならないこと)等と、何らかの関係があるものと推定される。
より具体的には、一般的に高温高湿条件下ではゾルゲル反応速度が速くなる傾向があり、また炭素数が少ない溶媒を用いた場合にゾルゲル反応速度が速くなる傾向があるところ、高温高湿度条件下でまた炭素数が少ない溶媒を使用するとゾルゲル反応速度が過大となることで、(a)成分等のシラン化合物や(b)成分のホウ素化合物の反応で形成されるポリマー粒子が巨大化したり、重縮合反応中の脱水反応が間に合わず水粒子が塗膜に取り込まれたりすること等で、白濁が発生している可能性がある。
これに対して、炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒(d1)を使用すると、ゾルゲル反応速度が遅くなる傾向があり、これにより高温高湿条件においても白濁の原因となる上記現象が抑制され、白濁も抑制されることが推定される。
炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒(d1)は、炭素数7以上という条件、及び1級水酸基を有するという条件を満たす限り特にそれ以外の限定はないが、入手の容易さ、適切な沸点、コーティング組成物中における相溶性等の観点から、炭素数7以上の条件を満たす、1級アルコール、グリコールエーテル等を、好ましく用いることができる。
炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒(d1)の炭素数は、8以上であることが好ましい。
炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒(d1)の炭素数には特に上限はないが、適切な乾燥速度を得る等の観点から12以下であることが好ましい。
また入手の容易さ等の観点から、炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒(d1)の炭素数は偶数であることが好ましく、特に好ましくは8又は10である。
炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒(d1)の好ましい例として、1-ヘプタノール、5-メチル-1-ヘキサノール、4-メチル-1-ヘキサノール、3-メチル-1-ヘキサノール、2-メチル-1-ヘキサノール、2-エチル-1-ペンタノール、1-オクタノール、6-メチル-1-ヘプタノール、5-メチル-1-ヘプタノール、4-メチル-1-ヘプタノール、3-メチル-1-ヘプタノール、2-メチル-1-ヘプタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール等を挙げることができるが、これらには限定されない。2-エチル-1-ヘキサノール、1-オクタノール、1-デカノール、又はジエチレングリコールモノブチルエーテル (C8)を用いることが特に好ましい。
炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒(d1)の沸点にも特に制限はないが、180℃~230℃であることが好ましく、180℃~200℃であることが特に好ましい。
有機溶媒(d1)の沸点が180℃以上であることで、ゾルゲル反応速度を一層適切なものとすることができ、白濁等を一層効果的に抑制することができる。
有機溶媒(d1)の沸点が230℃以下であることで、乾燥速度を一層適切なものとすることができる。
本発明においては、(d)有機溶媒の全てが(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒であってもよく、また(d)有機溶媒の一部が(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒であってもよい。
(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒は一般に高沸点であり、高沸点溶媒が多くなりすぎると乾燥速度が遅くなる場合があるので、(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒と、(d2)(d1)以外の有機溶媒、例えば(d1)よりも炭素数が少なく低沸点の有機溶媒、とを組み合わせて使用することが好ましい。
この場合において、(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒が、全(d)有機溶媒の10%~40質量%を占めることが好ましく、全コーティング組成物中の5%~25質量%を占めることが好ましい。
(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒の量が、全(d)有機溶媒の10質量%以上であること及び/又は全コーティング組成物中の5質量%以上であることで、ゾルゲル反応速度を適切に制御し、白濁等を一層効果的に抑制することができる。
(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒の量が、全(d)有機溶媒の40質量%以下であること及び/又は全コーティング組成物中の25質量%以下であることで、十分な乾燥速度が得られ、コーティング組成物の塗工を一層効率的に行うことができる。
(d2)として用いる(d1)以外の有機溶媒には特に限定はなく、(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒と混合が可能であり、それ以外の各成分、(a)から(c)成分を、溶解又は分散することができる有機溶媒を適宜使用することができる。
一部極性基を有する上記各成分との親和性や、コーティングの被塗工物との親和性との観点からは、(d1)以外の有機溶媒(d2)が、一定の極性を有し水と相溶性を有する、いわゆる水溶性有機溶媒であることが好ましい。
(d2)成分として好ましく用いられる水溶性有機溶媒は、希釈剤として働き、水溶性であれば特に限定されないが、例えばアルコール類を好ましく使用することができる。なかでも炭素数2から6のアルコールを、(d2)成分として用いることが好ましい。
また、(c)金属酸化物粉末を効果的に分散させる等の観点から、メトキシメチルブタノール(MMB)等のグリコールエーテル系溶媒を使用又は併用することもできる。
有機溶媒(d1)及び(d2)は1種類のみを使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、あらかじめ混合溶媒を形成してから使用してもよいし、2種以上の溶媒それぞれに、上記各成分の一部を溶解又は分散させてから、それらを組み合わせてもよい。特に、上記(a)成分と(b)成分との反応を進行させるのに好適な溶媒と、上記(c)成分を分散させるのに好適な溶媒とは異なる場合があるので、そのような場合には後者の態様が好ましい。
(d)有機溶媒の使用量には特に制限はなく、上記(a)成分及び(b)成分をはじめとする各成分間の反応効率や、コーティングの塗工における効率や作業性、得られるコーティングの品質等を考慮しながら適宜設定すればよい。
近赤外線遮蔽コーティング等の一般的な使用形態を前提とすれば、(d)有機溶媒の使用量が、コーティング組成物全体の30~90質量%であることが好ましく、40~75質量%であることがより好ましい。
(e)有機官能基含有シラン化合物
本願発明のコーティング組成物は、好ましくは更に(e)有機官能基含有シラン化合物((a)成分に該当するものを除く)を含有することができる。
したがって、本実施形態のコーティング組成物の反応により形成され得る高分子物質は、上記(a)成分及び(b)成分の反応生成物である高分子構造が、更に(e)有機官能基含有シラン化合物で変性された構造を有していてもよい。
すなわち、前記(a)成分及び(b)成分の反応に際して、あるいは、反応後、有機官能基含有シラン化合物((e)成分)を添加することができる。(e)有機官能基含有シラン化合物、好ましくは金属アルコキシド、を添加することにより、高分子構造を適宜調整したり、得られる反応生成物中の金属塩の含有率を高めるたりすることができ、機械特性、化学特性等をより向上させることができるとともに、(e)成分を用いない場合と同様の粘稠な液体の状態とすることができるので、コーティングの性状、物性を用途に応じて適宜調整することができる。
本願発明においては、(e)有機官能基含有シラン化合物は、アルコキシ基含有シラン化合物(以下、「金属アルコキシド」ともいう。)又は、エポキシ基含有シラン化合物であることが好ましい。良好な基板密着性を実現する観点からは、エポキシ基含有シラン化合物を使用してもよい。
(e)成分として好ましく用いられる金属アルコキシドからは、上記(a)成分に該当する化合物(特定の構造を有する、アミノ基を含むシラン化合物)は除外されるが、それ以外の制限は適用されず、上記(a)成分に該当しない限り、一般に金属アルコキシドに分類される化合物、すなわち少なくとも1の金属原子と、少なくとも1のアルコキシ基を有する化合物を、金属アルコキシドとして使用することができる。
(e)成分として好ましく用いられる金属アルコキシドの金属としては、Siに加えて、Ta、Nb、Ti、Zr、Al、Ge、B、Na、Ga、Ce、V、Ta、P、Sb、などを挙げることができるが、これらに限定されない。好ましくは、アルコキシドの形成の容易さなどから、Si、Ti、Zrであり、また、(e)成分は液体であることが好ましいため、これを実現する観点からSi、Tiが特に好ましい。金属アルコキシドのアルコキシド(アルコキシ基)としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、及びそれ以上の炭素数を有するアルコキシ基を挙げることができる。メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシが好ましく、メトキシ及びエトキシがより好ましい。特に好ましい金属アルコキシドとしては、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランなどを挙げることができる。
金属アルコキシドは多量体であってもよく、例えばテトラエトキシシランの5量体等を好適に使用することができる。単量体と5量体とを組み合わせて使用してもよい。
(e)成分として好ましく用いられるエポキシ基含有シラン化合物にも特に制限はないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等のアルコキシ基を有する化合物が好ましく、エポキシ基はとしては、グリシドキシプロピル基、エポキシシクロヘキシル基等のエポキシ基含有アルキル基の形態で存在することが好ましい。
より具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が特に好ましく使用される。
(e)有機官能基含有シラン化合物の使用量には特に制限はなく、得られるコーティングの用途、所望の特性等に応じて適宜設定することができるが、例えば(a)成分1モルに対して20モル以下の比率で用いることが好ましい。より好ましくは、(a)成分1モルに対して1モル~10モルの比率である。(a)成分1モルに対し、(e)成分が1モル以上とすることで、基板密着性の向上や、(d)成分(又は所望により(c)成分)を安定的に分散させる等の、(e)成分を添加する効果を十分に発現することができる。また、(e)成分を10モル以下とすることで、白濁の発生等を効果的に抑制することができる。
(e)成分がアルコキシ基含有シラン化合物である場合、その含有量は、コーティング組成物全体の質量を基準として、1~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることが特に好ましい。
(g)界面活性剤
本発明のコーティング組成物には、平滑なコーティング層形成のためのレベリング性の向上や基板密着性の向上等を目的として、更に(g)界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤の種類には特に制限はなく、コーティングの塗工形態や、他の成分、とりわけ(d)有機溶媒との親和性などに応じて適宜選択することができる。界面活性剤は、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン界面活性剤のいずれであってもよい。
レベリング性や浸透性向上等の観点から、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アルキルエーテル系界面活性剤等を使用することが特に好ましい。中でも、レベリング性等の観点から、シリコーン系界面活性剤を用いることが好ましい。
好ましいシリコーン系界面活性剤の具体例としては、DOW社製「VORASURF SZ-1919」、ビックケミー・ジャパン社製「BYK-307」等を、好ましいフッ素系界面活性剤の具体例としては、AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロン」シリーズ、DIC株式会社製「メガファック」シリーズ、株式会社ネオス製「フタージェント」シリーズ等を挙げることができる。
(g)界面活性剤の添加量には特に制限はなく、コーティングの塗工形態や硬化後に求められる物性等に応じて適宜設定することができる。
コーティング組成物の一般的な使用形態を前提とすれば、界面活性剤の使用量が、コーティング組成物全体の0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.1~1.0質量%であることが特に好ましい。
合成樹脂
本発明のコーティング組成物は、合成樹脂を更に含むことができる。すなわち、前記(a)成分、及び(b)成分の反応に際して、あるいは、反応後、合成樹脂を添加することができる。合成樹脂を加えることで、得られるコーティングにクラック防止性等を付与することができ、本発明のコーティング組成物から形成されるコーティング層の耐久性を向上させることができる。
本実施形態において使用することができる合成樹脂は、特に限定されないが、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂を挙げることができ、様々な重合度(分子量)を有する合成樹脂を使用することができる。また、ビニルエステル樹脂、エポキシアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなども好ましく使用することができる。その中でも、強度等の樹脂としての特性や、他の成分との反応性、安定性等の観点から、(f)エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
(f)エポキシ樹脂
本発明のコーティング組成物は、各必須成分に加えて、(f)エポキシ樹脂を含有していてもよい。
(f)エポキシ樹脂は、硬化にあたって、上記(a)成分及び(b)成分で構成される高分子構造に取り込まれて高分子構造の一部を構成してもよく、また、該高分子構造を架橋するなどして、(a)成分及び(b)成分の反応生成物の化学構造や物性を変更したりすることができる。本態様のコーティング組成物は、この様に(f)エポキシ樹脂を含有することで、硬化後のコーティングを構成する反応生成物の化学構造や物性に影響を与え、コーティングの反応性や機械的性質等を制御することができる。
本態様において好ましく使用することができる(f)エポキシ樹脂には特に限定はなく、当業界においてエポキシ樹脂に分類される樹脂、すなわち、高分子構造中のエポキシ基で架橋ネットワークを形成することで硬化することが可能な熱硬化性樹脂であればよく、様々な重合度(分子量)を有するエポキシ樹脂を使用することができる。その中でも、ビスフェノールAまたはビスフェノールFのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、及び、ポリグリコール型エポキシ樹脂から成る群から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂などを好ましく使用することができる。
(f)エポキシ樹脂の添加量には特に制限はなく、コーティングの塗工形態や硬化後に求められる物性等に応じて適宜設定することができる。
コーティング組成物の一般的な使用形態を前提とすれば、(f)エポキシ樹脂の使用量は、前記(a)成分1gに対し、0.1~10gであるのが好ましく、0.5~5gであるのが、より好ましい。すなわち、(g)エポキシ樹脂の添加量が過大でなければ、硬度の低下が抑制される傾向があり、逆に過小でなければ、化学的耐久性の維持が容易となる傾向がある。
コーティング層及びその製造方法
本発明のコーティング組成物を、基材上に塗布して硬化させることで、コーティング層を製造することができる。
通常この実施形態のコーティング層の製造方法においては、(c)酸化物粉末の存在下、(d)有機溶媒中において、下記(a)成分、及び(b)成分を反応させる。
(a)下記式(I)で表わされるアミノ基を含むシラン化合物。
4-n-Si-(OR’) -(I)
式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1~3から選択される整数を表わす。
(b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物。
ここで、(d)有機溶媒は、(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒を含有する。
上記工程においては、更に(e)有機官能基含有シラン化合物((a)成分に該当するものを除く。)、(f)エポキシ樹脂等の合成樹脂、(g)界面活性剤等を併用することができる。
ここで、上記(a)から(g)成分の詳細は、本発明のコーティング組成物に関して上記にて説明したものと同様である。
本実施形態のコーティング層の製造方法においては、本発明のコーティング組成物をディッピング、スプレー塗布、ロール塗布、刷毛塗り等の方法で基材の表面に塗布することができる。1回の塗布でコーティング層を形成してもよいし、2回以上の塗布を繰り返すことでコーティング層を形成してもよい。2回以上の塗布を繰り返すことでコーティング層を形成する場合には、塗布後にコーティング組成物を硬化させた後に、更に塗布を行ってもよいし、硬化させないまま塗布を繰り返し、全ての塗布が終了した後に、コーティング組成物を硬化させてもよい。
硬化にあたり加熱は必須ではないが、加熱することにより硬化時間を短縮することができる。
コーティング組成物の塗布量には特に制限は無いが、基材の面積100cmあたり、1g~50gであることが好ましく、2g~40gであることが特に好ましく、5.0g以上であることがとりわけ好ましい。塗布量が基材の面積100cmあたり、1g以上であることで、十分な厚さのコーティング層を形成することができる。
硬化後のコーティング層の厚みには特に限定はなく、コーティングの目的、要求物性、コーティング付き部材の使用態様等に応じて適宜設定することが可能であるが、0.1~20μmであることが好ましく、0.5~10μmであることが特に好ましい。
硬化後のコーティング層は、良好な近赤外線遮蔽能を実現することが可能であり、例えば波長2000nmにおける光線透過率を好ましくは5%以下、より好ましくは4.5%以下とすることができる。
硬化後のコーティング層は、良好な可視光透過率を実現することが可能であり、例えば波長380~780nmについて評価される可視光透過率を好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上とすることができる。
硬化後のコーティング層は、白濁を効果的に抑制することが可能であり、例えば波長380~780nmの可視光について評価される濁度を、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、特に好ましくは0.5%以下とすることができる。
本実施形態においてコーティング層が形成される基材は、特に限定されないが、近赤外線遮蔽能等のコーティングの特質を有効に発揮する観点からは、可視光の透過性が高い透明基材上に形成されることが好ましく、例えばガラス基材、透明プラスチック基材、透明セラミック基材上に形成することが特に好ましいが、これらには限定されない。
本発明のコーティング組成物は、それから得られるコーティングが近赤外線遮蔽機能を有するとともに、白濁等を効果的に抑制することにより可視光での透明性が良好であり、更に高温高湿条件下でも良好な塗膜が形成できるので、塗膜形成の環境が制限される用途、例えば夏場や屋外での塗膜形成も求められる建築、建設用途や、塗布した塗膜が高温高湿条件下でも使用される建築物、自動車等の輸送機械の窓材や、電気電子機器のディスプレイ等の近赤外線遮蔽コーティングにおいて、特に好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例/比較例を参照しながら更に詳細に説明するが、本発明は、これにより何ら限定されるものではない。
以下の実施例/比較例において、物性/特性の評価は下記の方法で行った。
(溶液状態)
各実施例/比較例で得られたコーティング組成物を目視で観察し、液体としての流動性が維持されているか、それともゲルが形成されているか、を評価した。
(試験片作製)
各実施例/比較例で得られたコーティング組成物を、ガラス板にローラで約40g/mの塗布量になるように塗布し、20℃、相対湿度60%で24時間硬化して試験片を作製し、下記の方法にしたがい、塗膜外観、近赤外線透過率、及び可視光線透過率を評価した。また、下記の方法にしたがい硬化の際の指触乾燥時間を評価した。
硬化条件を30℃、相対湿度90%に変更したほかは同様にして試験片を作成し、下記の方法にしたがい、塗膜外観、近赤外線透過率、可視光線透過率、及び濁度を評価した。
(塗膜外観)
上述にて作製した試験片を目視にて観察し、コーティングの外観を以下の基準に従って評価した。
透明:曇りや白濁現象が無く、ガラスの反対側が透けて見える状態。
白濁:曇りや白濁現象が有り、ガラスの反対側が透けて見えない状態。
(近赤外線透過率(%))
上述の方法に従って作製した試験片を用いて、分光光度計で波長2000nmの光線の透過率を測定し、近赤外線透過率(%)とした。
(可視光透過率(%))
上述の方法に従って作製した試験片を用いて、分光光度計で波長380nm~780nmの光線の透過率を測定し、可視光透過率(%)とした。
(指触乾燥時間(分))
上述の方法に従って作製した試験片を用いて、20℃、相対湿度60%の雰囲気下に放置し、試料が指先に付着しなくなるまでに要した時間を測定した。
(濁度)
上述の方法に従って作製した試験片を用い、分光光度計(日立ハイテクサイエンス製、型番:UH5700及びφ60積分球付属装置)で可視光(380~780nm)の濁度を測定した。
以下の実施例/比較例において使用した各成分の詳細は以下のとおりである。
・(a)アミノ基を含むシラン化合物1
γ-アミノプロピルトリエトキシシラン
信越化学工業株式会社製、商品名:KBE-903
・(b)ホウ素化合物1
ホウ酸
・(c)金属酸化物粉末1
ATO(スズ-アンチモン系酸化物)-MMB(メトキシメチルブタノール)分散液
MMB含量:69%
平均粒径:20nm
三菱マテリアル製、商品名:ATO-MMB分散液
・(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する溶媒
2-エチル-1-ヘキサノール(炭素数:8)、1-オクタノール(炭素数:8)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(炭素数:8)、又は1-デカノール(炭素数:10)を、表1に示す量使用した。
・(d2)(d1)以外の有機溶媒
エタノール(炭素数:2)、1-ヘキサノール(炭素数:6)、3-オクタノール(炭素数8)、メトキシメチルブタノール(炭素数:6)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(炭素数:5)、又は酢酸2-ブトキシエチル(炭素数:8)を、表1に示す量使用した。
・(e)有機官能基含有シラン化合物1
テトラエトキシシラン5量体(平均)
コルコート株式会社製、商品名:エチルシリケート40
・(e)有機官能基含有シラン化合物2
テトラエトキシシラン単量体
コルコート株式会社製、商品名 エチルシリケート28
・(f)エポキシ樹脂1
水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂
ナガセケムテックス株式会社製、商品名:EX-252
・(g)界面活性剤1
シリコーン系界面活性剤
DOW社製、商品名:VORASURF SZ-1919
(実施例1)
表1に示す重量比で各成分を混合して実施例1のコーティング組成物を調製した。その際、(b)ホウ素化合物1にシラン化合物((a)アミノ基を含むシラン化合物1、(e)有機官能基含有シラン化合物1、及び(e)有機官能基含有シラン化合物2)を十分に反応させた後、他の成分を添加した。
上記方法にしたがい、得られたコーティング組成物の溶液安定性を評価するとともに、これを用い、上記方法にしたがいコーティング被膜試験片を作製し、その特性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2~7、比較例1~6)
(d)成分としての溶媒の種類及び量を表1に示すとおりに変更したことを除くほか、実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製し、溶液安定性及びコーティングの特性を評価した。
結果を表1に示す。
Figure 2022112150000001
本発明のコーティング組成物は、それから得られるコーティング(塗膜)の近赤外線遮蔽機能及び可視光での透明性が良好であり、高温高湿条件下でも良好な塗膜が形成できるので、塗膜形成の環境が制限される用途、例えば夏場や屋外での塗膜形成も求められる建築、建設用途や、塗布した塗膜が高温高湿条件下でも使用される建築物、自動車等の窓材や電気電子機器のディスプレイ等のコーティングにおいて、特に好適に使用することができ建築、建設、自動車等の輸送機械、電気電子機器等の産業の各分野において、高い利用可能性を有する。

Claims (13)

  1. 下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分を含有する、コーティング組成物:
    (a)下記式(I)で表わされるアミノ基を含むシラン化合物
    4-n-Si-(OR’) -(I)
    (式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1~3から選択される整数を表わす。);
    (b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物;
    (c)金属酸化物粉末;
    (d)有機溶媒、
    であって、(d)有機溶媒が、(d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒を含有する、上記コーティング組成物。
  2. (d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒の沸点が、180℃~230℃である、請求項1に記載のコーティング組成物。
  3. (d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒の沸点が180℃~200℃である、請求項1に記載のコーティング組成物。
  4. (d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒を、全(d)有機溶媒の10~40質量%含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
  5. (d1)炭素数7以上の1級水酸基を有する有機溶媒を、全コーティング組成物中の5~25質量%含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
  6. (d)有機溶媒の少なくとも一部が、グリコールエーテル系溶媒である、請求項1から5のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
  7. (c)金属酸化物粉末が、五酸化二アンチモンを含有する、請求項1から6に記載のコーティング組成物。
  8. (c)金属酸化物粉末の平均粒径が10~100nmである、請求項1から7のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
  9. 請求項1から8のいずれか一項に記載のコーティング組成物を塗布する工程を有する、コーティング層の製造方法。
  10. 波長2000nmにおける光線透過率が5%以下であるコーティング層が形成される、請求項9に記載のコーティング層の製造方法。
  11. 可視光透過率が80%以上であるコーティング層が形成される、請求項9又は10に記載のコーティング層の製造方法。
  12. 濁度が2.0%以下であるコーティング層が形成される、請求項9から11のいずれか一項に記載のコーティング層の製造方法。
  13. 透明基板上にコーティング層を形成する、請求項9から12のいずれか一項に記載のコーティング層の製造方法。
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