以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、第1シャープペンシル1の縦断面図である。第1シャープペンシル1は、筒状に形成された軸筒11を有している。軸筒11は、前軸12と、前軸12の後端部に嵌合又は螺合する後軸40と、前軸12の前端部に嵌合又は螺合する口先部材13とを有している。第1シャープペンシル1は、口先部材13の先端に設けられた先端パイプ14から筆記芯が突出するように構成されている。したがって、先端パイプ14及び先端パイプ14から突出した筆記芯の部分が、筆記部を構成する。本明細書では、第1シャープペンシル1の軸線方向において、筆記芯側を「前」側と規定し、筆記芯側とは反対側を「後」側と規定する。
後軸40の後端部には、ノックカバー15が取り付けられ、消去部材としての消しゴム16を覆っている。軸筒11の前端部の内部には、スライダ17が、軸線方向にスライド可能、且つ、中心軸線回りに回転可能に配置されている。先端パイプ14は、スライダ17に取り付けられている。先端パイプ14の後方のスライダ17の内部には、中央に通孔が形成された保持チャック18が配置されている。保持チャック18の通孔は、筆記芯の外周面に摺接し、筆記芯を一時的に保持するように作用する。
さらに、第1シャープペンシル1は、筆記体の先端部である筆記部を軸筒に対して出没させる一般的な出没式のノック式筆記具と同様に、ノック部材50、ノック回転子60及び付勢スプリング19を有している。
スライダ17の後端部には、筆記芯を把持するチャックユニット20及び円筒状に形成された中継部材21が接続されている。チャックユニット20によれば、筆記芯に筆記圧が加わった場合には、筆記芯を把持して筆記芯の後退は阻止され、筆記芯を前方に引き出す力が働いた場合には、筆記芯を抵抗なく前方に引き出すことができる。
チャックユニット20及び中継部材21は、スライダ17と共に軸線方向に一体的に移動可能である。すなわち、第1シャープペンシル1において、筆記芯と共に軸筒11内において前後に移動可能に配置された部材、具体的にはスライダ17及びチャックユニット20等は、全体として筆記体を構成する。中継部材21の後端部は、回転駆動機構22に連結されている。チャックユニット20の後端部の外周面には、芯ケース23の前端部が嵌合している。芯ケース23は、円筒状に形成され、内部には筆記芯が収容される。チャックユニット20は、全体としてユニットケース24に包囲されている。ユニットケース24は、軸筒11内に固定して取り付けられている。チャックユニット20は、ユニットケース24に対して前後動可能に設けられている。
軸筒11の後端部、具体的には後軸40の後端部の内部には、ノック部材50が軸筒11に対して前後動可能に設けられている。ノック部材50は、コイルスプリング25によって後方に付勢されている。ノック部材50の後端部の内部には、消しゴム16が着脱可能に装着されている。ノック部材50の後端部の外周面には、上述したノックカバー15が着脱可能に取り付けられ、消しゴム16を汚れ等から保護している。
ノック部材50又はノックカバー15を前方へ押圧するノック操作をすることによって、芯ケース23が前進する。これにより、チャックユニット20を介して筆記芯も前進し、筆記芯を先端パイプ14から繰り出させるように作用する。ノック操作による押圧を解除すると、コイルスプリング25の付勢力によって、ノック部材50は、後退して元の位置に復帰する。このとき、筆記芯は、スライダ17内に配置された保持チャック18によって保持されるため、チャックユニット20の作用として、筆記芯はチャックユニット20から抵抗なく引き出される。その結果、筆記芯は、先端パイプ14から繰り出されることから、ノック操作を繰り返すごとに、筆記芯を所定量ずつ繰り出すことができる。
図2は、回転駆動機構22の拡大断面図である。回転駆動機構22は、後軸40の内部空間に配置されている。回転駆動機構22は、中継部材21の後端部に接続されている。前軸12の後端面と回転駆動機構22の前端面との間に軸スプリング26が配置され、回転駆動機構22が後方に付勢されている。軸スプリング26の付勢力による回転駆動機構22の後退は、回転駆動機構22の後端面が、後述する後軸40の第1突起部41及び第2突起部42の前端面44に当接することによって規制される。芯ケース23は、中継部材21及び回転駆動機構22の内部を貫通し、回転駆動機構22とは離間している。
回転駆動機構22は、円筒状に形成された回転子30と、円筒状に形成された第1カム形成部材である上カム形成部材31と、円筒状に形成された第2カム形成部材である下カム形成部材32と、円筒状に形成されたシリンダー部材33と、円筒状に形成されたトルクキャンセラー34と、コイル状のクッションスプリング35とを有している。回転駆動機構22は、これら部材が一体となって、ユニット化されている。
回転子30の前端部の内周面には、中継部材21の後端部の外周面が嵌合している。回転子30の前端部近傍は、僅かばかり径の大きいフランジ状に形成された部分を有し、当該部分の後端面には第1カム面30aが形成され、当該部分の前端面には第2カム面30bが形成されている。
上カム形成部材31は、回転子30の第1カム面30aの後方において、回転子30を回動可能に包囲している。下カム形成部材32は、上カム形成部材31の前端部の外周面に嵌合している。回転子30の第1カム面30aに対向する上カム形成部材31の前端面には、第1固定カム面31aが形成されている。回転子30の第2カム面30bに対向する下カム形成部材32の前端部内面には、第2固定カム面32aが形成されている。
上カム形成部材31の後端部の外周面には、円筒状に形成されたシリンダー部材33が嵌合している。シリンダー部材33の後端部には、芯ケース23が挿通できる挿通孔33aが形成されている。シリンダー部材33内には、円筒状に形成されて前後に移動可能なトルクキャンセラー34が配置されている。トルクキャンセラー34の前端部内面とシリンダー部材33の後端部内面との間には、クッションスプリング35が配置されている。クッションスプリング35は、トルクキャンセラー34を介して、回転子30を前方に付勢している。
ここで、中継部材21は、筆記動作に基づく筆記芯の後退及び前進動作(クッション動作)を回転駆動機構22、すなわち回転子30に伝達すると共に、クッション動作によって生ずる回転駆動機構22における回転子30の回転運動を、筆記芯を把持した状態のチャックユニット20に伝達する。したがって、チャックユニット20に保持された筆記芯も回転する。
第1シャープペンシル1で筆記しているとき以外、すなわち、筆記芯に筆記圧が加わっていないとき、回転子30は、トルクキャンセラー34を介したクッションスプリング35の付勢力によって前方に位置している。したがって、回転子30の第2カム面30bは、第2固定カム面32aに当接して噛み合い状態になされる。第1シャープペンシル1で筆記しているとき、すなわち、筆記芯に筆記圧が加わっているとき、チャックユニット20は、クッションスプリング35の付勢力に抗して後退し、これに伴って回転子30も後退する。したがって、回転子30の第1カム面30aは、第1固定カム面31aに当接して噛み合い状態になされる。
図3は、回転駆動機構22の回転子30の回転駆動を説明する模式図であり、図4は、図3に続く回転子30の回転駆動を説明する模式図である。図3及び図4において、回転子30の上側の面である後端面には、周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第1カム面30aが円環状に形成され、回転子30の下側の面である前端面には、同様に周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第2カム面30bが円環状に形成されている。
回転子30の第1カム面30aに対峙する上カム形成部材31の円環状の端面にも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第1固定カム面31aが形成され、回転子30の第2カム面30bに対峙する下カム形成部材32の円環状の端面にも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第2固定カム面32aが形成されている。回転子30に形成された第1カム面30a及び第2カム面30bの各カム面と、上カム形成部材31に形成された第1固定カム面31a及び下カム形成部材32に形成された第2固定カム面32aの各カム面とは、ピッチが互いにほぼ同一となるように形成されている。
図3(A)は、筆記芯に筆記圧が加わっていないときの状態における回転子30、上カム形成部材31及び下カム形成部材32の関係を示している。この状態においては、回転子30に形成された第2カム面30bは、クッションスプリング35の付勢力によって、下カム形成部材32の第2固定カム面32aに対して当接している。このとき、回転子30の第1カム面30aと上カム形成部材31の第1固定カム面31aとが、軸線方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
図3(B)は、第1シャープペンシル1による筆記のために、筆記芯に筆記圧が加わった初期の状態を示している。この状態においては、回転子30は、チャックユニット20の後退に伴ってクッションスプリング35を収縮させて後退する。それによって、回転子30は、上カム形成部材31の第1固定カム面31a側に移動する。
次いで、図3(C)は、筆記芯にさらに筆記圧が加わり、回転子30が上カム形成部材31の第1固定カム面31aに当接して後退した状態を示している。この状態においては、回転子30の第1カム面30aは、上カム形成部材31の第1固定カム面31aに噛み合っている。それによって、回転子30は、第1カム面30aの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する回転駆動を受ける。
なお、図3及び図4における回転子30の中央部に描いた○印は、回転子30の回転移動量を示している。そして図3(C)に示された状態においては、回転子30の第2カム面30bと下カム形成部材32の第2固定カム面32aとが、軸線方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
次いで、図4(D)は、第1シャープペンシル1による筆記が終わり、筆記芯に対する筆記圧が解除された初期の状態を示している。この場合においては、回転子30は、クッションスプリング35の付勢力によって前進する。これにより、回転子30は下カム形成部材32側に移動する。
次いで、図4(E)は、回転子30がクッションスプリング35の付勢力によって上カム形成部材31の第1固定カム面31aに当接して前進した状態を示している。この場合においては、回転子30の第2カム面30bは、下カム形成部材32の第2固定カム面32aに噛み合っている。それによって、回転子30は、第2カム面30bの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する回転駆動を再び受ける。
したがって、回転子30の中央部に描いた○印で示すように、筆記圧を受けた回転子30の軸線方向への往復運動、すなわち前後動に伴って、回転子30は、第1カム面30a及び第2カム面30bの一歯(1ピッチ)に相当する回転駆動を受け、チャックユニット20を介して、これに把持された筆記芯も同様に回転駆動される。したがって、筆記による回転子30の軸線方向への1回の前後動によって回転子30はカムの一歯に対応する回転運動を受け、これを繰り返すことによって、筆記芯は順次回転駆動される。それ故、書き進むにしたがって筆記芯が偏って摩耗するのを防止することができ、描線の太さや描線の濃さが大きく変化することを防止することができる。
なお、クッションスプリング35の付勢力を受けて回転子30を前方に押し出すトルクキャンセラー34は、その前端面と回転子30の後端面との間で滑りを発生させて、回転子30の回転運動がクッションスプリング35に伝達するのを防止している。すなわち、トルクキャンセラー34によって、回転子30の回転運動がクッションスプリング35に伝達されるのを防止し、それによって、回転子30の回転動作を阻害するクッションスプリング35のねじれ戻り(トルク)が発生することを防止している。
以上より、第1シャープペンシル1は、チャックユニット20と回転子30とを有し、チャックユニット20の前後動によって筆記芯の解除及び把持を行うことで、筆記芯を前方に繰り出すことができるように構成され、チャックユニット20が、筆記芯を把持した状態で中心軸線回りに回転可能となるように軸筒11内に保持され、筆記芯が受ける筆記圧によるチャックユニット20の後退動作に伴い回転子30が後退して、回転子30を回転運動させる回転駆動機構22を具備し、回転子30の回転運動がチャックユニット20を介して筆記芯に伝達されるように構成されている。
図5は、第1シャープペンシル1の後軸40の後端部の縦断面図である。図5において、上方が第1シャープペンシル1における前側である。後軸40の内周面には、軸線方向に延在し且つ後端部において互いに連結する4つの第1突起部41及び4つの第2突起部42を有する。第1突起部41及び第2突起部42は、周方向に沿って等間隔で且つ交互に配置されている。
第1突起部41の各々の上面、すなわち後軸40の中心軸線に対向する面には、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜し且つ前方に面したカム面43が設けられている。したがって、第1突起部41において、カム面43の後方はより肉厚、すなわちより高い突起である。他方、第1突起部41において、カム面43の前方はより肉薄、すなわちより低い突起であり、第2突起部42と同一の高さの突起である。第1突起部41及び第2突起部42の前端面44は、回転駆動機構22の後退を規制している。第1突起部41及び第2突起部42の各々は、前後方向に沿って延びる規制面である縦壁面45を有している。第1突起部41及び第2突起部42の各々を連結する部分の前端面には、当接面46が形成されている。カム面43及び縦壁面45は、外カム47を構成する。
図6は、第1シャープペンシル1のノック部材50の斜視図である。図6において、上方が第1シャープペンシル1における前側である。ノック部材50は、両端が開口した筒状の部材である。ノック部材50の前側の外周面には、2つの突起部51が対称位置に設けられている。また、2つの突起部51間には、ノック部材50の前端面から後方に向かって延びるスリット部52が設けられている。突起部51の各々は、ノック操作によって、第1突起部41間を前後に移動するように構成されている。すなわち、2つの突起部51の外面を含むような外接円の径は、後軸40の第1突起部41の上面に接する内接円の径よりも大きく、後軸40の第2突起部42の上面に接する内接円の径よりも小さく設定されている。ノック部材50の前端面にはカム面53が形成されている。カム面53は、対称的に形成された山部54及び谷部55を有する。8つの山部54及び谷部55は、斜面56によって接続されている。
図7は、第1シャープペンシル1のノック回転子60の斜視図である。図7において、上方が第1シャープペンシル1における前側である。ノック回転子60は、両端が開口した筒状の部材である。ノック回転子60は、大径部60aと、大径部60aの後方に形成され且つノック部材50内に挿入されて芯合わせに使用される小径部60bとを有している。大径部60aは小径部60bよりも大きな径を有する。大径部60aの外周面には、周方向に沿って等間隔に配置され且つ前後方向に沿って延びる4つの縦溝61が形成されている。縦溝61の深さは、大径部60aと小径部60bとの半径の差よりは浅い。大径部60aには、4つの縦溝61によって画成された4つの突起部62aからなる内カム62が形成されている。大径部60aの後端面において、内カム62よりも径方向内側には、全周に亘って、ノック部材50のカム面53と相補的に形成されて協働するカム受け面63が形成されている。すなわち、大径部60aには、内カム62及びカム受け面63が一体的に設けられている。
カム受け面63は、鋸刃状に形成されており、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜面64を有する。8つの斜面64において1つおきの斜面64aは、上述した縦溝61によって切り欠かれている。隣接する縦溝61との間の隣接する斜面64は、前後方向に沿って延びる縦壁面65によって接続されている。すなわち、カム受け面63は、4つの縦壁面65を有する。ノック部材50のカム面53とノック回転子60のカム受け面63とは相補的に形成されていることから、縦溝61の部分、及び、斜面64と縦壁面65とによって画成された鋭角の部分には、斜面64とは逆方向に傾斜した斜面64bが設けられている。斜面64bは、ノック部材50のカム面53と協働するのに十分な高さ、すなわち径方向の長さで設けられている。
要するに、大径部60aの径方向内側には、ノック部材50のカム面53と協働するカム受け面63が設けられ、大径部60aの径方向外側には、後軸40の外カム47と協働する内カム62が設けられている。なお、ノック回転子60には、中心軸線に沿って貫通孔66が設けられており、貫通孔66には、芯ケース23が挿入される。
内カム62は、ノック操作によってノック回転子60が中心軸線回りに回転すると、外カム47と係合し又は係合解除する。すなわち、内カム62の突起部62aは、ノック操作によってノック回転子60が中心軸線回りに回転すると、外カム47の第1突起部41と係合し又は外カム47の第1突起部41間に配置される。内カム62の突起部62aが外カム47の第1突起部41間に配置されるとき、外カム47の第1突起部41は内カム62の突起部62a間、すなわち縦溝61内に配置される。
ノック部材50のカム面53及びノック回転子60のカム受け面63は、内カム62が外カム47と係合し又は係合解除するとき、ノック部材50のカム面53の山部54が、周方向において、内カム62のカム受け面63の斜面64上に位置するように構成されている。すなわち、カム面53の斜面56とカム受け面63の斜面64とは、位相がずれて配置される。このため、ノック操作によってカム面53の斜面56がカム受け面63の斜面64を押圧すると、この操作荷重及び付勢スプリング19による付勢力に起因し、ノック回転子60は周方向の分力を受けて中心軸線回りに回転する。一方、ノック部材50は、突起部51が外カム47の縦壁面65に周方向に当接することによって中心軸線回りの回転が規制されている。こうした動作について、図10を参照しながら後述する。
図8は、口先部材13の縦断面図である。口先部材13は、全体としてテーパ状の外形を備えた筒状の部材である。口先部材13には、スライダ17が突出する貫通孔13aが形成されている。貫通孔13aの開口部近傍の口先部材13の内周面には、小径部13bが設けられている。小径部13bの後方にはより大径の大径部13cが設けられている。大径部13cの後方には、先端に向かって内径が小さくなるテーパ面13dが設けられている。テーパ面13dの後方には、雌ねじ部13eが設けられている。
図9は、筆記先端部の拡大図であり、口先部材13が省略されている。前軸12から前方へ突出するユニットケース24の外周面には、口先部材13の雌ねじ部13eと螺合する雄ねじ部24aが設けられている。ユニットケース24から前方へ突出するスライダ17の外周面には、係止部である大径部17aが設けられている。大径部17aの前方には、より小径の小径部17bが設けられている。小径部17bの前方には、テーパ部17cが設けられている。スライダ17の前端面からは先端パイプ14が突出している。
図10は、第1突出機構の動作を説明する模式図であり、第1シャープペンシル1の各カムの関係を示す模式図である。すなわち、図10は、後軸40の外カム47とノック部材50とノック回転子60との位置関係を示す模式図である。より詳細には、外カム47を周方向に展開したものに対して、ノック部材50のカム面53及びノック回転子60のカム受け面63の位置を示したものである。図中、上方が第1シャープペンシル1の前側であり、下方が第1シャープペンシル1の後側である。また、図11は、第1突出機構の動作を説明する縦断面図である。
第1突出機構の動作は、出没式のノック式筆記具の出没機構と同様に、ノック部材50又はノックカバー15を前方へ押圧するノック操作をすることによって行われる。ノック回転子60は、ノック部材50のカム面53とノック回転子60のカム受け面63とのカム機構によって回転力を与えられ、ノック操作毎に図の左から右へ移動する。
図10(A)に示された状態は、図11(A)と同一の状態である。図10(A)に示された状態では、内カム62は外カム47と係合していない。すなわち、内カム62の突起部62aが外カム47の第1突起部41間に配置され、外カム47の第1突起部41は内カム62の突起部62a間、すなわち縦溝61内に配置されている。カム面53及びカム受け面63は、位相がずれて配置されている。
この状態から、付勢スプリング19の付勢力に抗してノック部材50を押圧し、ノック部材50及びノック回転子60を前進させると、図10(B)に示されるように、内カム62のカム受け面63の縦溝61の後端部が、前後方向において外カム47の第1突起部41の前端部を越える。このとき、ノック回転子60のカム受け面63の斜面64と外カム47のカム面43とが一致し、外カム47の第1突起部41の縦壁面65による、ノック回転子60の中心軸線回りの回転の規制は、解除される。
図10(B)に示された状態からノック部材50の押圧を解除すると、ノック部材50及びノック回転子60は、付勢スプリング19の付勢力によって後退する。このとき、ノック回転子60の中心軸線回りの回転は、外カム47の第1突起部41の縦壁面45によって規制されていない。そのため、付勢スプリング19の付勢力によって、ノック回転子60のカム受け面63の斜面64が外カム47のカム面43又はノック部材50のカム面53の斜面56を押圧すると、ノック回転子60は周方向の分力を受けて中心軸線回りに回転する。
ノック回転子60の後退及び回転は、内カム62は外カム47と係合することによって規制される。すなわち、内カム62のカム受け面63の斜面64及び縦壁面65が、外カム47の第1突起部41のカム面43及び縦壁面65と係合することによって、ノック回転子60の後退及び回転が規制され、図10(C)に示された状態となる。
図10(C)に示された状態は、図11(B)と同一の状態である。この状態から、付勢スプリング19の付勢力に抗してノック部材50を押圧し、ノック部材50及びノック回転子60を前進させると、図10(D)に示されるように、内カム62のカム受け面63の縦壁面65の後端部が、前後方向において外カム47の第1突起部41の前端部を越える。このとき、ノック回転子60のカム受け面63の斜面64と外カム47のカム面43とが一致し、外カム47の第1突起部41の縦壁面65による、ノック回転子60の中心軸線回りの回転の規制は、解除される。
図10(D)に示された状態からノック部材50の押圧を解除すると、ノック部材50及びノック回転子60は、付勢スプリング19の付勢力によって後退する。このとき、ノック回転子60の中心軸線回りの回転は、外カム47の第1突起部41の縦壁面65によって規制されていない。そのため、付勢スプリング19の付勢力によって、ノック回転子60のカム受け面63の斜面64が外カム47のカム面43又はノック部材50のカム面53の斜面56を押圧すると、ノック回転子60は周方向の分力を受けて中心軸線回りに回転する。
ノック回転子60は回転しながら後退するため、図10(E)に示されるように、内カム62の突起部62aが外カム47の第1突起部41間に配置され、外カム47の第1突起部41は内カム62の突起部62a間、すなわち縦溝61内に配置される。その結果、外カム47と内カム62との係合は解除される。突起部51が外カム47の縦壁面65に周方向に当接することによって、ノック部材50の中心軸線回りの回転は、常に規制されている。図10(E)に示された状態から、ノック部材50及びノック回転子60はそのまま後退し、再び図10(A)に示された状態となる。
図11(B)に示された状態では、ノック回転子60が前進していることによって、付勢スプリング19がより圧縮される。付勢スプリング19の一端はノック回転子60に当接し、付勢スプリング19の他端は回転駆動機構22の後端面に当接している。したがって、回転駆動機構22は、付勢スプリング19の圧縮によって増加した前方に向かう付勢力と、軸スプリング26の後方に向かう付勢力とのバランスによって、図11(A)に示された状態と比較して距離Dだけ前進している。
回転駆動機構22が前進すると、軸筒11内の各部材間に存在していた微小なクリアランス、例えば、口先部材13、チャックユニット20や中継部材21等の間に存在していたクリアランスがなくなる。その結果、回転子30が回転駆動機構22において相対的に後退した状態となり、図3(C)に示された回転子30の状態となることから、回転子30の回転がロックされる。
ここで、使用者が回転駆動機構のオン(稼働又は有効化)とオフ(停止又は無効化)とを自由に切り替えられるようにする機構の原理について説明する。例えば速記する場合等において、回転駆動機構による筆記芯の前進及び後退が煩わしく感じる場合は、回転駆動機構をオフにすることができることが好ましい。他方、筆記芯の偏摩耗による筆跡の太さの不均一を防止した丁寧な筆記を行う場合、回転駆動機構をオンにすることができることが好ましい。
回転子30は、トルクキャンセラー34を介したクッションスプリング35の付勢力によって前方に付勢されている。したがって、筆記芯に筆記圧が加わっていない状態では、図3(A)に示されるように、回転子30の第2カム面30bが下カム形成部材32の第2固定カム面32aに噛み合っている。第1突出機構によって、筆記芯に筆記圧が加わっていない状態において、図3(C)に示されるように、回転子30の第1カム面30aを上カム形成部材31の第1固定カム面31aに噛み合せるように構成される。その結果、筆記芯に筆記圧が加わったとしても、回転子30が後退し、回転することはない。したがって、第1突出機構によって回転子30の回転がロックされ、回転駆動機構がオフにされる。
要するに、一般的な出没式のノック式筆記具における筆記状態、すなわちノック回転子60が前方に位置する回転ロック状態である、図11(B)に示された状態で、回転駆動機構がオフにされる。他方、一般的な出没式のノック式筆記具における非筆記状態、すなわちノック回転子60が後方に位置する状態である、図11(A)に示された回転ロック解除状態で、回転駆動機構がオンにされる。
第1シャープペンシル1では、使用者は、回転駆動機構22をオン又はオフにする回転ロックノック操作と、筆記芯を繰り出す繰り出しノック操作との2つのノック操作を行うことができる。すなわち、回転駆動機構22をオン又はオフにしたい場合には、図10を参照しながら説明したように、内カム62が、前後方向において外カム47を越えるまでノック部材50、ひいてはノック回転子60を前進させる。他方、筆記芯を繰り出すためのノック操作は、チャックユニット20が作動する程度にノック部材50、ひいてはチャックユニット20を前進させる。すなわち、回転ロックノック操作は、繰り出しノック操作よりも深くノックする必要がある。なお、回転ロックノック操作においても筆記芯の繰り出しを行うことができる。
図12は、筆記部のロック筆記状態を説明する縦断面図である。具体的には、図12(A)は、筆記部の通常の筆記状態を示し、図12(B)は、筆記部の径方向のがたつきが抑制されたロック筆記状態を示している。第1シャープペンシル1では、第1突出機構による回転駆動機構のオフと共に、筆記部の径方向のがたつきが抑制されたロック筆記状態になる。言い換えると、第1シャープペンシル1において、回転ロック状態ではロック筆記状態となる。以下、ロック筆記状態について説明する。なお、筆記部の径方向とは、筆記体の中心軸線に対して直交する方向をいう。
図12(A)は図11(A)に対応し、図12(B)は図11(B)に対応している。図11に示されるように、回転ロックノック操作によって回転駆動機構22が距離Dだけ前進すると、図11及び図12に示されるように、芯ケース23、ひいてはチャックユニット20及びスライダ17等が距離dだけ前進する。スライダ17の前進は、チャックユニット20がユニットケース24の前端面の内面に設けられた規制面24bに当接することよって規制される。
筆記状態を示す図12(A)参照すると、スライダ17の大径部17aと、口先部材13の大径部13cとは、軸線方向において互いに離間している。したがって、筆記状態では、筆記時の筆記部、ひいては筆記体の径方向の移動は、スライダ17の小径部17bが、口先部材13の小径部13bと当接することによって規制される。他方、ロック筆記状態を示す図12(B)を参照すると、スライダ17の大径部17aの一部が、口先部材13の大径部13c内に挿入されている。したがって、筆記状態では、筆記時の筆記部、ひいては筆記体の径方向の移動は、スライダ17の大径部17aが、口先部材13の大径部13cと当接することによって規制される。
そして、図12(B)における口先部材13の大径部13c及びスライダ17の大径部17a間のクリアランスは、図12(A)における口先部材13の小径部13b及びスライダ17の小径部17b間のクリアランスよりも小さくなるように構成されている。したがって、ロック筆記状態における筆記部の径方向における移動可能量が、筆記状態における筆記部の径方向における移動可能量よりも小さくなるように、軸筒11の内面又は筆記体の外面が構成されている。その結果、第1シャープペンシル1によれば、径方向のがたつきを抑制することができ、筆跡が乱れることなく綺麗な文字を安定して筆記することが可能となる。
図12(A)に示された筆記状態で、口先部材13の小径部13bとスライダ17の小径部17bとの間には、例えば、0.06mm~0.08mmのクリアランスが設けられている。他方、図12(B)に示されたロック筆記状態で、口先部材13の大径部13cとスライダ17の大径部17aとの間には、より小さいクリアランス、例えば、0.02mmのクリアランスが設けられている。したがって、図12(A)に示された筆記状態の第1シャープペンシル1で筆記した場合に比べて、図12(B)に示されたロック筆記状態の第1シャープペンシル1で筆記した場合では、筆記部の径方向のがたつきがより抑制される。さらに、微小なクリアランスを設けつつ筆記部の径方向のがたつきを抑制できるので、繰り返しの使用による口先部材13又はスライダ17等の摩耗等の問題も生じない。
なお、ロック筆記状態において、口先部材13の大径部13cとスライダ17の大径部17aとの間のクリアランスが0mmとなるように構成してもよく、スライダ17の大径部17aの外径が口先部材13の大径部13cの内径よりも僅かばかり大きくなるように構成してもよい。
ところで、ロック筆記状態では、上述したように、付勢スプリング19の付勢力によるチャックユニット20の前進はユニットケース24によって規制される。それによってチャックユニット20、具体的に例えば中継部材21は、付勢スプリング19の付勢力によって常に軸方向の圧縮力が付加されている。中継部材21は、例えばポリプロピレン等の樹脂材料で形成されることから、圧縮された状態で長く放置されると、クリープによって変形し、全長が短縮する場合がある。この場合、付勢スプリング19によるチャックユニット20のユニットケース24の規制面24bに対する軸方向の押圧力が低下し、結果として、チャックユニット20が径方向に移動し易くなり、筆記部の径方向のがたつきが増大する可能性がある。こうした場合であっても、第1シャープペンシル1によれば、口先部材13の大径部13cとスライダ17の大径部17aとの当接によって、筆記体の径方向の移動が規制され、筆記部の径方向のがたつきを抑制することができる。
図13は、第2シャープペンシル2の縦断面図である。第2シャープペンシル2は、第1突出機構に代えて第2突出機構を有している点においてのみ、第1シャープペンシル1と異なる。第2シャープペンシル2は、第2突出機構として、第1回転部材80、第1摺動部材90及び付勢スプリング19を有している。
図14は、第2シャープペンシル2の後軸70の後端部の縦断面図である。図14において、上方が第2シャープペンシル2における後側である。後軸70の後部の内周面には、周方向に沿って環状突起部71が設けられている。後述する図17に示されるように、環状突起部71は、全周に亘って設けられていない。例えば、後軸70の内周面において、周方向に沿った一部分、例えば全周のうちの1/4の部分には、環状突起部71に代えて、凹部72が画成される。凹部72には、環状突起部71の両方の端部から僅かに離間して、2つの小突起部73がそれぞれ設けられている。その結果、環状突起部71と小突起部73との間には、2つの係止凹部74が画成される。周方向における環状突起部71の中央には、キー突起部75が設けられ、対向する周方向における凹部72の中央には、同様のキー突起部75が設けられている。2つのキー突起部75は、軸線方向において、環状突起部71と隣接して設けられている。
図15は、第2シャープペンシル2の第1回転部材80の斜視図である。図15において、上方が第2シャープペンシル2における後側である。第1回転部材80は、後軸70に対して中心軸線回りに回転可能に取り付けられる。第1回転部材80は、回転させる際に使用者が把持する筒状の把持部81を有している。把持部81の外周面には、クリップ81aが設けられている。把持部81の前方には、より小径に形成され且つ後軸70内に挿入される挿入部82が設けられている。挿入部82には、前端面から後方に向かって略矩形で且つ対向する2つの切り欠き部83が設けられている。2つの切り欠き部83によって、前方に向かって延びる2つのカムアーム84が画成されている。2つのカムアーム84の前端面には、周方向に沿って同一方向に傾斜したカム面85が設けられている。一方の切り欠き部における挿入部82の前端面の中央部分には、前方に向かって延びる矩形突起部86が画成されている。矩形突起部86の外面には、係止突起部87が設けられている。2つのカムアーム84の各々の外面には、軸線方向において係止突起部87と同じ位置に、周方向に沿って摺動溝88が設けられている。
図16は、第2シャープペンシル2の第1摺動部材90の斜視図である。図16において、上方が第2シャープペンシル2における後側である。第1摺動部材90は、摺動本体部91を有している。摺動本体部91の外周面には、2つのカム突起部92が設けられている。2つのカム突起部92は、軸線方向に沿って延びる2つのキー溝93によってそれぞれ離間している。2つのカム突起部92の後端面には、第1回転部材80のカム面85に対応して同様に傾斜したカム受け面94が設けられている。カム受け面94の各々において、最も前方に位置する部分を始端部94aとし、最も後方に位置する部分を終端部94bと定義する。第1摺動部材90には、中心軸線に沿って貫通孔95が設けられており、貫通孔95には、芯ケース23が挿入される。
軸筒11内において、第1回転部材80は、後軸70の後方から内部に挿入される。このとき、2つのカムアーム84が径方向内方に撓み、摺動溝88内に後軸70の環状突起部71が配置される。第1回転部材80を後軸70に対して中心軸線回りに回転させるとき、摺動溝88がレールの役割を果たし、摺動溝88内で環状突起部71を相対的に移動させることができる。また、後軸70の環状突起部71が第1回転部材80の摺動溝88内に配置されることによって、第1回転部材80が後軸70から外れ難くなる。第1回転部材80の係止突起部87は、凹部72内に配置される。
第1摺動部材90は、後軸70の前方から内部に挿入され、摺動本体部91の後端部が第1回転部材80の前方から内部に挿入される。第1摺動部材90の挿入の際には、後軸70のキー突起部75が第1摺動部材90のキー溝93内に配置されるように、第1回転部材80のカムアーム84が第1摺動部材90のカム受け面94によって案内される。キー突起部75がキー溝93内に配置されることによって、第1摺動部材90は、中心軸線回りに回転することなく、軸筒11内を前後に移動させることができる。第1摺動部材90の摺動本体部91が第1回転部材80の内部に挿入されることによって、2つのカムアーム84は径方向内方に撓むことができなくなる。その結果、第1回転部材80が後軸70から脱落することを防止することができる。
第1摺動部材90は、付勢スプリング19によって後方に付勢されている。付勢スプリング19の一端は、第1摺動部材90の内部に設けられた段差に当接し、付勢スプリング19の他端は、回転駆動機構22の後端面によって支持される。軸スプリング26の付勢力による回転駆動機構22の後退は、回転駆動機構22の後端面が、後軸70のキー突起部の前端面76に当接することによって規制される。
図17は、第2突出機構の動作を説明する横断面図であり、図18は、第2突出機構の動作を説明する縦断面図である。図17は、具体的には、第2シャープペンシル2において、第1回転部材80の係止突起部87を含む横断面である。図17(A)及び図18(A)に示された状態は、回転駆動機構22がオンの回転ロック解除状態であり、さらには、第2シャープペンシル2における通常の筆記状態である。図17(B)及び図18(B)に示された状態は、回転駆動機構22がオフの回転ロック状態であり、さらには、第2シャープペンシル2におけるロック筆記状態である。
図17(A)及び図18(A)に示された状態では、付勢スプリング19による第1摺動部材90の後退は、後述するように、第1回転部材80のカムアーム84が、後軸70のキー突起部75に対して周方向に当接して第1回転部材80の回転が規制された状態で、カムアーム84がカム突起部92と係止することによって規制される。このとき、第1回転部材80のカム面85は、第1摺動部材90のカム受け面94において始端部94aに配置されている。
この状態から、把持部81を把持して第1回転部材80を回転させると、第1回転部材80のカム面85及び第1摺動部材90のカム受け面94が協働することによって、第1回転部材80に加わる回転方向の力が、第1摺動部材90を前進させる力に変換される。すなわち、カム面85及びカム受け面94において、互いに同一方向に傾斜した斜面から軸方向の分力を受け、付勢スプリング19の付勢力に抗して第1摺動部材90は前進する。第1回転部材80のカム面85が、第1摺動部材90のカム受け面94において終端部94bまで移動すると、第1摺動部材90の前進は停止する(図17(B)及び図18(B))。
第1摺動部材90が前進したことによって、付勢スプリング19がより圧縮される。付勢スプリング19の一端は第1摺動部材90に当接し、付勢スプリング19の他端は回転駆動機構22の後端面に当接している。したがって、回転駆動機構22は、付勢スプリング19の圧縮によって増加した前方に向かう付勢力と、軸スプリング26の後方に向かう付勢力とのバランスによって、図18(A)に示された状態と比較して距離Dだけ前進している。
回転駆動機構22が前進すると、軸筒11内の各部材間に存在していた微小なクリアランス、例えば、口先部材13、チャックユニット20や中継部材21等の間に存在していたクリアランスがなくなる。その結果、回転子30が回転駆動機構22において相対的に後退した状態となり、図3(C)に示された回転子30の状態となることから、回転子30の回転がロックされる。
さらに、図12を参照しながら上述したように、回転駆動機構22が距離Dだけ前進すると、芯ケース23、ひいてはチャックユニット20及びスライダ17が距離dだけ前進する(図18)。その結果、第2シャープペンシル2では、第2突出機構による回転駆動機構のオフと共に、筆記部の径方向のがたつきが抑制されたロック筆記状態になる。
回転ロック状態又はロック筆記状態では、第1回転部材80を逆方向に回転させることによって、付勢スプリング19の付勢力を受けて第1摺動部材90が後退する。第1回転部材80のカム面85が、第1摺動部材90のカム受け面94において始端部94aまで移動すると、第1摺動部材90の後退は停止し、回転駆動機構22が回転ロック解除状態となる(図17(A)及び図18(A))。
第1回転部材80の回転は、カムアーム84の側面が後軸70のキー突起部75の側面に当接することによって規制される。すなわち、図17(A)に示されるように、カムアーム84の一方は、キー突起部75の一方に対して周方向において当接している。これに対し、図17(B)に示されるように、カムアーム84の上記一方は、キー突起部75の他方に対して周方向において当接している。各々の場合、すなわちカムアーム84がキー突起部75に当接している場合、第1回転部材80の係止突起部87が、後軸70の係止凹部74内に嵌合している。要するに、係止突起部87は、第1回転部材80の回転に応じて小突起部73を乗り越え、カムアーム84がキー突起部75に当接すると同時に、係止凹部74内に嵌合する。その結果、第1回転部材80を一時的に固定することができ、意図せず回転ロック状態若しくはロック筆記状態、又は、回転ロック解除状態が解除されることが防止される。
係止突起部87が、小突起部73を乗り越えるとき、矩形突起部86が径方向内方に撓むことから、係止突起部87は、係止凹部74内にスナップ式に嵌合する。したがって、使用者は、繰り出しの完了のフィードバックを、クリック音又はクリック感として得られる。小突起部73又は係止突起部87の高さ等を変更することによって、クリック音又はクリック感の程度を自由に設計することができる。
なお、第1回転部材80の回転によって第1摺動部材90を前進又は後退させる第2突出機構と、ノック部材50又はノックカバー15を前方へ押圧するノック操作によって筆記芯を繰り出す出没機構とは、独立して操作可能である。したがって、第2シャープペンシル2では、第2突出機構によって回転駆動機構がオン又はオフにされてもノック操作を行うことができる。
図19は、ボールペン3の筆記状態における縦断面図である。ボールペン3は、筒状に形成された軸筒111を有している。軸筒111は、前軸112と、前軸112の後端部に嵌合又は螺合する後軸170と、後軸170の後端部に設けられた筒状に形成された第2回転部材180とを有している。また、ボールペン3は、軸筒111内に配置され且つ一端に筆記部101を備えた筆記体であるリフィル102と、コイルスプリング103と、スプリング支持部材104と、ノック回転子105と、ノック部材106と、ノックカバー107と、コイルスプリング108と、第2摺動部材190とを有している。
ボールペン3の軸線方向において、筆記部101側を「前」側と規定し、筆記部101とは反対側を「後」側と規定する。ボールペン3では、ノック式の出没機構の操作によって、リフィル102が軸筒111内を前後に移動する。このとき、筆記部101が軸筒111から突出した状態を筆記状態(図19及び後述する図25(B))と称し、筆記部101が軸筒111内に没入した状態を非筆記状態(後述する図25(A))と称する。
図20は、ボールペン3の後軸170の後端部の縦断面図である。図20において、上方がボールペン3における後側である。後軸170の後部の内周面には、周方向に沿って環状突起部171が設けられている。後述する図26に示されるように、環状突起部171は、全周に亘って設けられていない。例えば、後軸170の内周面において、周方向に沿った一部分、例えば全周のうちの1/4の部分には、環状突起部171に代えて、凹部172が画成される。凹部172には、環状突起部171の両方の端部から僅かに離間して、2つの小突起部173がそれぞれ設けられている。その結果、環状突起部171と小突起部173との間には、2つの係止凹部174が画成される。周方向における環状突起部171の中央には、キー突起部175が設けられ、対向する周方向における凹部172の中央には、同様のキー突起部175が設けられている。2つのキー突起部175は、軸線方向において、環状突起部171と隣接して設けられている。
図21は、ボールペン3の第2回転部材180の斜視図である。図21において、上方がボールペン3における後側である。第2回転部材180は、後軸170に対して中心軸線回りに回転可能に取り付けられる。第2回転部材180は、回転させる際に使用者が把持する筒状の把持部181を有している。把持部181の外周面には、クリップ181aが設けられている。把持部181の前方には、より小径に形成され且つ後軸170内に挿入される挿入部182が設けられている。挿入部182には、前端面から後方に向かって略矩形で且つ対向する2つの切り欠き部183が設けられている。2つの切り欠き部183によって、前方に向かって延びる2つのカムアーム184が画成されている。2つのカムアーム184の前端面には、周方向に沿って同一方向に傾斜したカム面185が設けられている。一方の切り欠き部における挿入部182の前端面の中央部分には、前方に向かって延びる矩形突起部186が画成されている。矩形突起部186の外面には、係止突起部187が設けられている。2つのカムアーム184の各々の外面には、軸線方向において係止突起部187と同じ位置に、周方向に沿って摺動溝188が設けられている。
図22は、ボールペン3の第2摺動部材190の側面図であり、図23は、ボールペン3の第2摺動部材190の縦断面図である。図22及び図23において、上方がボールペン3における後側である。第2摺動部材190は、摺動本体部191を有している。摺動本体部191は、筒状の部材である。摺動本体部191の後方には、より小径の小径部192が設けられている。摺動本体部191及び小径部192間の後方に面した段差面には、前方に向かって延びる2つのキー溝193、及び、第2回転部材180のカム面185に対応して同様に傾斜したカム受け面194が設けられている。カム受け面194の各々において、最も前方に位置する部分を始端部194aとし、最も後方に位置する部分を終端部194bと定義する。第2摺動部材190には、中心軸線に沿って貫通孔195が設けられており、貫通孔195には、ノック回転子105及びノック部材106が挿入される。
第2摺動部材190の内面には、軸線方向に延在する4つの突起部196からなる外カム197が形成されている。外カム197は、隣接する突起部196によって、前後方向に延在する4つのガイド溝198が画成されている。突起部196の各々の前端面には、カム面199が設けられている。カム面199は、鋸刃状に形成されており、前後方向に対して垂直な平面に対して周方向に傾斜した斜面199a及び斜面199bと、前後方向に沿って延び且つ斜面199a及び斜面199bを接続する縦壁面199cとを有している。
図24は、ボールペン3の前軸112の拡大縦断面図である。前軸112には、リフィル102が突出する貫通孔112aが形成されている。貫通孔112aの開口部近傍の前軸112の内周面には、小径部112bが設けられている。小径部112bの後方にはより大径の大径部112cが設けられている。
図19を参照すると、軸筒111内において、ノック回転子105は、第2摺動部材190の前方から内部に挿入され、コイルスプリング103によって後方に付勢されている。コイルスプリング103の一端は、第2摺動部材190の前端面に当接し、コイルスプリング103の他端は、スプリング支持部材104によって支持される。スプリング支持部材104は、コイルスプリング103によって前方へ付勢されるが、前軸112の後端面によって前進が規制される。リフィル102は、スプリング支持部材104及びコイルスプリング103を貫通している。リフィル102の後端部がノック回転子105の前方の開口から内部に挿入されて嵌合することによって、リフィル102はノック回転子105に対して一体的に取り付けられている。
ノック回転子105、ノック部材106及び第2摺動部材190の外カム197は、公知のノック式の出没機構を構成し、図10を参照しながら説明した動作と類似の動作を行う。すなわち、ノック回転子105は、第2摺動部材190内に前後方向に移動可能に配置され、ノック部材106は、第2摺動部材190内の後端開口から後方へ突出し且つノック回転子105の後方において前後方向に移動可能に配置されている。ノック部材106の後端にはノックカバー107が嵌合している。ノック操作は、ノックカバー107を介して、ノック部材106を前方に向かって押圧し、所定位置まで前方に移動させることによって行われる。ノック操作によるノック部材106の移動に伴い、ノック回転子105が押圧されて第2摺動部材190内を前方へ移動する。
ノック部材106を上述した所定位置まで移動させた後にノック部材106に加えている力を解放すると、ノック回転子105の外周面に形成されたカム受け面(図示せず)の後端面と第2摺動部材190のカム面199とが係止し、ボールペン3は筆記状態(図19及び図25(B))を維持する。ボールペン3の筆記状態において、再び、ノック操作によってノック部材106を前方に向かって押圧し、所定位置まで前方に移動させると、ノック部材106の移動に伴いノック回転子105が押圧されて第2摺動部材190内を前方へ移動し、ノック回転子105のカム受け面の後端面と第2摺動部材190のカム面199との係止が解除される。その結果、コイルスプリング103の付勢力によってリフィル102が後方へ移動し、ボールペン3は非筆記状態となる(図25(A))。
さらに、ボールペン3では、第3突出機構によって、筆記状態からさらにリフィル102を前進させてロック筆記状態とすることができる。図25は、筆記部のロック筆記状態を説明する縦断面図である。図25(A)は、非筆記状態のボールペン3を示しており、図25(B)は、筆記状態のボールペン3を示しており、図25(C)は、ロック筆記状態のボールペン3を示している。これについて、以下説明する。
軸筒111内において、第2回転部材180は、後軸170の後方から内部に挿入される。このとき、2つのカムアーム184が径方向内方に撓み、摺動溝188内に後軸170の環状突起部171が配置される。第2回転部材180を後軸170に対して中心軸線回りに回転させるとき、摺動溝188がレールの役割を果たし、摺動溝188内で環状突起部171を相対的に移動させることができる。また、後軸170の環状突起部171が第2回転部材180の摺動溝188内に配置されることによって、第2回転部材180が後軸170から外れ難くなる。第2回転部材180の係止突起部187は、凹部172内に配置される。
第2摺動部材190は、後軸170の前方から内部に挿入され、摺動本体部191の後端部が第2回転部材180の前方から内部に挿入される。第2摺動部材190の挿入の際には、後軸170のキー突起部175が第2摺動部材190のキー溝193内に配置されるように、第2回転部材180のカムアーム184が第2摺動部材190のカム受け面194によって案内される。キー突起部175がキー溝193内に配置されることによって、第2摺動部材190は、中心軸線回りに回転することなく、軸筒111内を前後に移動させることができる。第2摺動部材190の摺動本体部191が第2回転部材180の内部に挿入されることによって、2つのカムアーム184は径方向内方に撓むことができなくなる。その結果、第2回転部材180が後軸170から脱落することを防止することができる。
第2摺動部材190は、コイルスプリング108によって後方に付勢されている。コイルスプリング108の一端は、第2摺動部材190の前端面に当接し、コイルスプリング108の他端は、スプリング支持部材104によって支持される。スプリング支持部材104は、上述したコイルスプリング103に加え、コイルスプリング108によって前方へ付勢されるが、前軸112の後端面によって前進が規制されている。
図25(B)に示された筆記状態では、コイルスプリング108による第2摺動部材190の後退は、後述するように、第2回転部材180のカムアーム184が、後軸170のキー突起部175に対して周方向に当接して第2回転部材180の回転が規制された状態で、カムアーム184がカム受け面194と係止することによって規制される。このとき、第2回転部材180のカム面185は、第2摺動部材190のカム受け面194において始端部194aに配置されている。
この状態から、把持部181を把持して第2回転部材180を回転させると、第2回転部材180のカム面185及び第2摺動部材190のカム受け面194が協働することによって、第2回転部材180に加わる回転方向の力が、第2摺動部材190を前進させる力に変換される。すなわち、カム面185及びカム受け面194において、互いに同一方向に傾斜した斜面から軸方向の分力を受け、コイルスプリング108の付勢力に抗して第2摺動部材190は前進する。第2回転部材180のカム面185が、第2摺動部材190のカム受け面194において終端部194bまで移動すると、第2摺動部材190の前進は停止し、ボールペン3はロック筆記状態となる(図25(C))。
他方、ロック筆記状態では、第2回転部材180を逆方向に回転させることによって、コイルスプリング108の付勢力を受けて第2摺動部材190が後退する。第2回転部材180のカム面185が、第2摺動部材190のカム受け面194において始端部194aまで移動すると、第2摺動部材190の後退は停止し、ボールペン3は元の筆記状態となる。
次に、ボールペン3におけるロック筆記状態について説明する。図24及び図25に示されるように、前軸112には、小径部112b及び大径部112cが設けられている。前軸112の小径部112b及び大径部112cは、第1シャープペンシル1における口先部材13の小径部13b及び大径部13cにそれぞれ相当する。さらに、ボールペン3のリフィル102の外周面には、大径部102a及び大径部102aの前方に小径部102bが設けられている。リフィル102の大径部102a及び小径部102bは、スライダ17の大径部17a及び小径部17bにそれぞれ相当する。
ボールペン3は、第3突出機構によって、図25(B)に示された筆記状態から図25(C)に示されたロック筆記状態となると、リフィル102が距離dだけ前進する。その結果、リフィル102の大径部102aが、前軸112の大径部112c内に挿入され、図12を参照しながら上述したように、筆記部の径方向のがたつきが抑制される。
図26は、第3突出機構の動作を説明する横断面図である。具体的には、図26は、ボールペン3において、第2回転部材180の係止突起部187を含む横断面である。図26(A)は、第2回転部材180が一方に回転された筆記状態のボールペン3を示している。他方、図26(B)は、第2回転部材180が他方に回転されたロック筆記状態のボールペン3を示している。
図26(A)に示されるように、カムアーム184の一方は、キー突起部175の一方に対して周方向において当接している。これに対し、図26(B)に示されるように、カムアーム184の上記一方は、キー突起部175の他方に対して周方向において当接している。各々の場合、すなわちカムアーム184がキー突起部175に当接している場合、第2回転部材180の係止突起部187が、後軸170の係止凹部174内に嵌合している。要するに、係止突起部187は、第2回転部材180の回転に応じて小突起部173を乗り越え、カムアーム184がキー突起部175に当接すると同時に、係止凹部174内に嵌合する。その結果、第2回転部材180を一時的に固定することができ、意図せず筆記状態又はロック筆記状態が解除されることが防止される。
係止突起部187が、小突起部173を乗り越えるとき、矩形突起部186が径方向内方に撓むことから、係止突起部187は、係止凹部174内にスナップ式に嵌合する。したがって、使用者は、繰り出しの完了のフィードバックを、クリック音又はクリック感として得られる。小突起部173又は係止突起部187の高さ等を変更することによって、クリック音又はクリック感の程度を自由に設計することができる。
上述した筆記芯を含むチャックユニットやボールペンのリフィル以外、サインペン、マーカーペン等を筆記体としてもよい。また、リフィルには、熱変色性インクを収容して、ノック式筆記具を熱変色性筆記具としてもよい。この場合、消去部材である摩擦体によって擦過した際に生じる摩擦熱によって、筆跡を熱変色可能である。ここで、熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば-5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクを言う。熱変色性インクを用いた熱変色性筆記具では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して消去部としての摩擦体によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
上述したノック式筆記具である第1シャープペンシル1、第2シャープペンシル2及びボールペン3では、軸筒の内面及び筆記体の外面に小径部及び大径部が設けられている。筆記状態では、軸筒の小径部及び大径部と筆記体側の小径部とが、軸線方向において対応するように配置される。そして筆記状態からさらに筆記体を前進させたロック筆記状態では、軸筒の大径部と筆記体の大径部とが、軸線方向において対応するように配置される。それによって、筆記部の径方向のがたつきを抑制することが可能となる。筆記部の径方向のがたつきを抑制するように構成されている限り、すなわちロック筆記状態における筆記部の径方向における移動可能量が、筆記状態における筆記部の径方向における移動可能量よりも小さくなるように構成されている限りにおいて、軸筒の内面及び筆記体の外面を任意に構成しうる。例えば、軸筒の内面及び/又は筆記体外面の小径部及び大径部を、連続したテーパ面で構成してもよく、周方向に沿って等間隔に配置された複数の突起で形成してもよい。筆記部の径方向における移動可能量を、例えば、筆記体の先端である筆記部の移動可能量、又は、筆記体の揺動角、又は、筆記体及び軸筒間の最小クリアランスとしてもよい。