JP2022104122A - オキシトシン関連シグナル活性化剤 - Google Patents

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秀俊 桑田
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一憲 佐々木
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ファラハナ フェルドウシ
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Abstract

【課題】本発明は、天然物由来成分を有効成分とするオキシトシン関連シグナル活性化剤を提供することを課題とする。またオキシトシン関連シグナル活性化を介した症状又は疾患の治療、改善、抑制、または予防の為の医薬組成物又は食品を提供することを課題とする。【解決手段】ローズマリー又はその抽出物を有効成分とすることにより上記課題を解決する。【選択図】なし

Description

本発明はローズマリー又はその抽出物を有効成分として含有するオキシトシン関連シグナル活性化剤に関する。
オキシトシンは、愛情ホルモン、信頼ホルモンと呼ばれ、脳下垂体後葉という部位から分泌され、母性行動と社会認知の発現の双方にとって極めて重要であることが報告されている。オキシトシンの作用によって母子や男女間のパートナーが認識しあい、お互いを結びつけていると考えられている(非特許文献1)。オキシトシンは9個のアミノ酸からなるペプチドホルモン(Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly)であり(非特許文献2)、経口投与した場合は、消化管でただちに分解されることや静脈注射時に高血圧、吐き気などの副作用などが報告されており、オキシトシンの摂取による安全性の問題の解決には時間を要する(非特許文献3)。
オキシトシン受容体(OXTR)は、7回膜貫通型ドメインを持つGPCR(Gタンパク質共役型受容体)の一種である。OXTRにはGタンパクとしてGαq/11とGαiが共役し、主にリガンド刺激後のシグナル伝達としてホスホリパーゼCが活性化されて細胞内Ca2+動員系が作動する。OXTRは生殖器官 (子宮、乳腺、卵巣、精巣)、腎臓、脳に幅広く発現がみられる。脳においては皮質領域、嗅覚系、大脳基底核群、辺縁系、視床、視床下部、脳幹、脊髄などに発現がみられる(非特許文献4)。
現代社会は、核家族化、少子高齢化などからもスキンシップが減少しており、オキシトシンが分泌されにくい社会になりつつある。オキシトシン及びオキシトシン受容体に関連するシグナルを活性化することにより、筋肉再生(非特許文献5)、骨形成(非特許文献5)、甘味感受性の修飾(非特許文献6)、腸炎の抑制(非特許文献6)、ストレス緩和(非特許文献6)、摂食行動(非特許文献6)、アルコール摂取の抑制(非特許文献6)、夫婦間のもめ事会話の改善(非特許文献6)、自閉症症状の改善(非特許文献6)、Pair bonding(非特許文献7)、母性行動(非特許文献8)、共感性行動(非特許文献9)、社会認知機能(非特許文献10)、物体認知機能(非特許文献11)、攻撃行動(非特許文献8)、信頼の情勢(非特許文献12)、心の理解の増加(非特許文献13)、間食の減少(非特許文献14)などのオキシトシンの関与する疾患または症状の治療、改善、抑制、または予防が可能である。そのためオキシトシンの産生を促進する為の手段が望まれている。
これまでに、エッセンシャルオイル(ローズオイル)などを配合した吸引薬や皮膚外用剤等が提案されている(特許文献1)。特許文献1には吸引剤や皮膚外用剤としての用途が記載されているものの、手軽に経口摂取可能な組成物や食品としては活用できない。また有機合成されたオキシトシン誘導剤も提案されている(特許文献2)。またこれまで、オキシトシン受容体に対するアゴニストについても開発が行われており(特許文献3、特許文献4、非特許文献15)、これらはペプチド性のアゴニストと非ペプチド性のアゴニストの2つに大別されるが、特許文献3や特許文献4に開示されているようなペプチド性のアゴニストは体内半減期が短いなどの課題がある。非特許文献15に開示されている、非ペプチド性のアゴニストである、LIT-001などは合成されたものであり、安全性に対する懸念から実用化には至っていない。
そこで、天然物由来で安全で手軽に摂取可能なオキシトシンやオキシトシン受容体を活性化する組成物や食品が望まれている。
ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)は地中海沿岸地方原産で、シソ科に属する常緑性低木であり、ロスマリン酸といったフェノール化合物やカルノシン酸、カルノソールといったジテルペン類を含み、水蒸気蒸留法で抽出した精油も、薬として利用される。カルノソール(Carnosol)、カルノシン酸(Carnosic acid)は、ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)やセージ(Salvia officinalis、Salvia sclarea、Salvia pachyphylla)などの西洋ハーブに含まれているフェノール性化合物である(非特許文献16)。
ロスマリン酸(Rosmarinic acid)は、ローズマリー、シソ、レモンバームなどの多くのシソ科植物に含まれるポリフェノール類である。ロスマリン酸、カルノソール、カルノシン酸の3成分が含まれている植物としては、ローズマリーとセージが知られている(非特許文献17)。
ローズマリーやその抽出物、及びそれらに含まれる成分については、抗酸化作用や消臭作用などの効果が知られているが、オキシトシンに関連するシグナルを活性化することは、従来は全く知られておらず、本発明により得られた新知見である。
特開2011-098898号公報 WO 2016/002926 A1 特開2000-95797号公報 特表2016-503044号公報
The Japanese Journal of Animal Psychology, Vol.63, No.1, p47-63 (2013) Physiological Reviews,(米国),2001, Vol.81, No.2, p629-683. Psychoneuroendocrinology, (オランダ), 2011, Vol.36, No.8, p1114-1126. The Journal of Neuroscience(米国), 2009, Vol.29, No.7, p2259-2271. Nature Communications, (イギリス), 2014, Vol.5, p.4082 上田 陽一、「公益財団法人山口内分泌疾患研究振興財団 内分泌に関する最新情報」、平成27年、p1-7. Current Topics in Behavioral Neurosciences, (ドイツ), 2018, Vol.35, p97-117. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, (米国), 2005, Vol.102, No.44, p16096-16101. Psychoneuroendocrinology, (オランダ), 2019, Vol.103, p14-24. Hormones and Behavior, (米国), 2017, Vol.96, p130-136 International Journal of Neuropsychopharmacology, (イギリス), 2017, Vol.20, No.10, p861-866. Nature, (イギリス), 2005, Vol.435, p673-676. Biological Psychiatry, (オランダ), 2007, Vol.61, No.6, p731-733. Diabetes, (米国), 2013, Vol.62, No.10, p3418-3425. Journal of medicinal chemistry, (米国), 2018, Vol.61, No.19, p8670-8692. Journal of Agricultural and Food Chemistry, (米国), 2005, Vol.53, p.7749-7759. Anna Vallverdu-Queralt, Food Chemistry, (米国), 2014, Vol.154, p.299‐307. Journal of Oral Health and Biosciences, (日本), 2017, Vol.29, No.2: p.55‐62.
本発明は、天然物由来成分を有効成分とするオキシトシン関連シグナル活性化剤を提供することを課題とする。またオキシトシン関連シグナル活性化を介した症状又は疾患の治療、改善、抑制、または予防の為の医薬組成物又は食品を提供することを課題とする。
本発明者らは、ローズマリー又はその抽出物がオキシトシン関連シグナル活性化作用を有し、オキシトシン関連シグナル活性化を介した症状又は疾患または症状の治療、改善、抑制、または予防に有効であることを見出した。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]ローズマリー又はその抽出物を有効成分として含有する、オキシトシン関連シグナル活性化剤
[2]ロスマリン酸、カルノソール及びカルノシン酸を有効成分として含有する、[1]に記載のオキシトシン関連シグナル活性化剤。
[3][1]又は[2]に記載のオキシトシン関連シグナル活性化剤を含有する医薬組成物。
[4]オキシトシン関連シグナル活性化を介した症状又は疾患の予防、緩和、または治療のための、[3]に記載の医薬組成物。
[5][1]又は[2]に記載のオキシトシン関連シグナル活性化剤を含む食品。
[6]オキシトシン関連シグナル活性化を介した症状又は疾患の予防、緩和、または治療のための、[5]に記載の食品
本発明によれば、オキシトシン関連シグナルを活性化することにより、パートナー嗜好性の調節、母性行動の促進、共感性行動の促進、コミュニケーション能力の改善、筋肉、骨に関わるロコモティブシンドローム、甘味感受性の修飾、腸炎の抑制、ストレス緩和、摂食行動抑制、アルコール摂取の抑制、認知機能の改善、攻撃行動の抑制などオキシトシン関連シグナル活性化を介した症状又は疾患の予防、緩和、または治療に用いる医薬組成物や食品を提供することが出来る。
本発明のオキシトシン関連シグナル活性化剤は、ローズマリー又はその抽出物を有効成分として含有する。
本発明のオキシトシン関連シグナル活性化剤はオキシトシンに関連するシグナルを活性化する。本発明においてオキシトシンに関連するシグナルを活性化するとは、DNAマイクロアレイによって遺伝子発現が±1.2倍以上変動した全遺伝子の中で、さらなる解析によりオキシトシンに関連するGene Ontology(Cellular components, Biological process, Molecular functionに関する情報)を持つ遺伝子が多く活性化されたことを言う(非特許文献18参照)。
本発明で使用するローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)には、カンファー、ベルベノン、シネオールといったケモタイプがあるが、いずれも使用することができる。ローズマリーの葉は、通常、肉の臭い消しとして供されているもので構わない。
本発明で使用するローズマリーは、その栽培方法や栽培地域も特に限定されるものではない。イタリア産ローズマリー、フランス産ローズマリー、モロッコ産ローズマリー、チュニジア酸ローズマリー、日本産など何れの産地のものでもよく、特に限定されるものではないが、汎用性の面からみて、イタリア産、フランス産ローズマリーが好ましい。
本発明におけるローズマリーは、それ自身を乾燥させた乾燥物、あるいはそれ自身を水蒸気蒸留してエッセンシャルオイルを抽出した後の残渣、その乾燥物、それらの粉砕物でも良く、ローズマリーの部位は特に問わないが、葉が好ましい。またローズマリーの抽出物は超臨界抽出物、水、アルコール、アセトンなどの有機溶媒による粗抽出物、および粗抽出物を液液分配、カラムクロマトグラフィーなどで精製して得られた抽出画分などであってもよい。これらは単独で用いても、組み合わせてもよい。
抽出物は、公知の抽出方法によって得ることができ、例えば抽出方法として、有機溶媒抽出、超臨界流体抽出法、加温加圧抽出法などを挙げることができる。上記抽出方法は、それぞれを単独で用いてもよいし、複数の抽出方法を組合せて用いてもよい。
本発明において、特に好ましい抽出方法は溶媒抽出である。溶媒抽出は一般的な手法を用いて行うことができる。具体的には、まず、未粉砕物、粉砕物または乾燥破砕物に水と有機溶媒とを添加して、室温または加温にて抽出する。抽出溶媒としては、エタノール、メタノール、酢酸エチル、アセトン、水などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの溶媒は単独または2種類以上を混合して用いてもよい。好ましくは、食品等への使用の安全性からエタノールを用いるのが望ましい。添加する溶媒の量は、抽出素材の重量の1~100倍、好ましくは5~50倍、例えば5~10倍量を用いる。
具体的な抽出方法としては、例えば、ローズマリー又はそのエッセンシャルオイル抽出残渣を前記抽出溶媒とを混合し、室温で1~5時間攪拌または抽出溶媒を加温して、1~5時間還流して抽出を行った後、ろ過や遠心分離などにより抽出液から試料残渣を取り除き、減圧または限外ろ過により抽出物を濃縮する方法が挙げられる。また必要に応じて酸若しくはアルカリによる加水分解を行う。さらに、抽出液を乾固、減圧乾燥、凍結乾燥、スプレードライなどの一般的な方法により乾燥させることも出来る。
ローズマリーや抽出されたローズマリー抽出物中には、ロスマリン酸やジテルペン類のカルノソール、カルノシン酸が含まれており、抽出物中の3成分が含まれる比率に特に制限はないが、ロスマリン酸:カルノソール:カルノシン酸=1:0.15~1.12:0.47~2.24(原料あるいは抽出物中の含有質量%は、1.46~10.0質量%:0.76~5.00質量%:1.59~9.64質量%)程度であることが好ましい。
また本発明のオキシトシン関連シグナル活性化剤は、ロスマリン酸、カルノソール及びカルノシン酸を有効成分として含有する。カルノソール(Carnosol)、カルノシン酸(Carnosic acid)は、ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)やセージ(Salvia officinalis、Salvia sclarea、Salvia pachyphylla)などの西洋ハーブに含まれているフェノール性化合物である。ロスマリン酸(Rosmarinic acid)は、ローズマリー、シソ、レモンバームなどの多くのシソ科植物に含まれるポリフェノール類である。ロスマリン酸、カルノソール、カルノシン酸の3成分が含まれている植物としては、ローズマリーとセージが知られている。
ローズマリー又はその抽出物のヒトの有効投与量は、患者の年齢、体重、症状、投与経路、投与スケジュール、製剤形態、素材の活性の強さなどにより、適宜選択、決定されるが、例えば、経口投与の場合、成人1人につき、1日当たり1~1000mg(ロスマリン酸:カルノソール:カルノシン酸、14.6μg~98mg:7.6μg~46mg:15.9μg~96.4mgの範囲)、好ましくは20~500mg(ロスマリン酸:カルノソール:カルノシン酸、0.292mg~49mg:0.152mg~23mg:0.318mg~48.2mgの範囲)の摂取量となるように摂取すればよい。
本発明は上記オキシトシン関連シグナル活性化剤を含有する医薬品組成物に関する。本発明のオキシトシン関連シグナル活性化剤は、助剤とともに任意の形態に製剤化して、経口投与または非経口投与が可能な医薬品とすることができる。例えば、経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。非経口剤としては、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、外用剤(例えば、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤)、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤) が挙げられる。これらの製剤は、当分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられ、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバターを担体として使用できる。
経口剤の態様とする場合は、有効成分に、例えば賦形剤(例えば、乳糖、白糖、デンプン、マンニトール) 、崩壊剤( 例えば、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム) 、結合剤( 例えば、α 化デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース) または滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000)を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングすることにより製造することができる。コーティング剤としては、例えばエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびオイドラギット(ローム社製、ドイツ、メタアクリル酸・アクリル酸共重合物)などを用いることができる。
注射剤の態様とする場合は、有効成分を分散剤(例えば、ツイーン(Tween)80(アトラスパウダー社製、米国)、HCO60(日光ケミカルズ製)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなど)、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、転化糖)などと共に水性溶剤(例えば、蒸留水、生理的食塩水、リンゲル液等)あるいは油性溶剤(例えば、オリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油などの植物油、プロピレングリコール)などに溶解、懸濁あるいは乳化することにより製造することができる。この際、所望により溶解補助剤(例えば、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン)等の添加物を添加してもよい。
外用剤の態様とする場合は、有効成分を固状、半固状または液状の組成物とすることにより製造することができる。例えば、上記固状の組成物は、有効成分をそのまま、あるいは賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、デンプン、微結晶セルロース、白糖)、増粘剤(例えば、天然ガム類、セルロース誘導体、アクリル酸重合体)などを添加、混合して粉状とすることにより製造できる。上記液状の組成物は、注射剤の場合とほとんど同様にして製造できる。半固状の組成物は、水性または油性のゲル剤、あるいは軟骨状のものがよい。また、これらの組成物は、いずれもpH調節剤(例えば、炭酸、リン酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウム)、防腐剤(例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム)などを含んでいてもよい。坐剤は、有効成分を油性または水性の固状、半固状あるいは液状の組成物とすることにより製造できる。該組成物に用いる油性基剤としては、高級脂肪酸のグリセリド〔例えば、カカオ脂、ウイテプゾル類(ダイナマイトノーベル社製)〕、中級脂肪酸〔例えば、ミグリオール類(ダイナマイトノーベル社製)〕、あるいは植物油(例えば、ゴマ油、大豆油、綿実油) が挙げられる。水性基剤としては、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコールが挙げられる。また、水性ゲル基剤としては、天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体が挙げられる。
本発明は上記オキシトシン関連シグナル活性化剤を含有する食品に関する。本発明のオキシトシン関連シグナル活性化剤は、健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養補助食品、栄養機能食品等の保健機能食品、特別用途食品(例えば、病者用食品)、疾病リスク低減表示を付した食品、健康補助食品、サプリメント等として調製されてもよい。サプリメントとして、例えば、一般的なサプリメントの製造に用いられる種々の添加剤とともに錠剤、丸状、カプセル(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)状、粉末状、顆粒状、細粒状、トローチ状、液状(シロップ状、乳状、懸濁状を含む)等の形状とすることができる。また液状、半液体状もしくは固体状にしたもの、ペースト状にしたもの、または、一般の飲食品へ添加したものであってもよい。
配合可能な食品に特に限定はないが、例えば、飯類、餅類、麺類、パン類およびパスタ類等の炭水化物含有飲食品; クッキーやケーキなどの洋菓子類、饅頭や羊羹等の和菓子類、キャンディー類、ガム類、ヨーグルトやプリンなどの冷菓や氷菓などの各種菓子類; ジュース、清涼飲料水、乳飲料、茶飲料、機能性飲料、栄養補助飲料、ノンアルコールビール等の各種飲料; ビール、発泡酒等のアルコール飲料; スープ、味噌汁、お吸い物などの飲食品;卵を用いた加工品、魚介類(イカ、タコ、貝、ウナギなど)や畜肉(レバー等の臓物を含む)の加工品( 珍味類を含む);だし、しょうゆ、みりんその他の調味料;などが挙げられる。
オキシトシンに関連するシグナルの活性を抑制しない限りにおいて、本発明の組成物の他、栄養補助成分などの他の成分を含むことができる。かかる成分には、ビタミン類(例えばビタミンA、ビタミンB群、ビタミンE 、ビタミンC 、ビタミンD 、ビタミンK、ナイアシン、パントテン酸、葉酸等)、カロチノイド(例えばβカロチン、リコピン、フコキサンチン等)、ミネラル類(例えば海藻成分、CCM 、ヘム鉄、鉄塩系、乳清カルシウム、発酵乳酸カルシウム、牛骨カルシウム、珊瑚カルシウム、卵殻カルシウム等)、各種植物体並びにその抽出物、精製物および分画物(例えばオオバコ、クロレラ、スピルリナ、にんにく、いちょう葉、ギムネマ、杜仲の葉、しその葉、ハトムギ、大豆グロブリン、ルチン、緑茶抽出物、テアニン、ポリフェノール類、甘草、ユッカ、大豆サポニン、カフェイン、ホワトルベリーエキス、シャンピニオンエキス、ガルシニア・カンボジアエキス等)、微生物並びにその増殖因子および微生物生産物(例えば乳酸菌、酵母、乳酸菌増殖因子等)、食物繊維およびその酵素分解物(例えばアップルファイバー、コーンファイバー、澱粉由来の食物繊維、難消化性デキストリン、グアガム酵素分解物、サツマイモ繊維、大豆繊維、海藻繊維、きのこ繊維、茶繊維、酸性多糖類、植物粘質物、小麦フスマ等)、動物体並びにその抽出物、精製物、分解物および生産物(例えばローヤルゼリー、プロポリス、牡蠣エキス、キチン、キトサン、タウリン、コラーゲン、ゼラチン等)、各種オリゴ糖(例えばガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖等)、脂質(例えば不飽和脂肪酸(DHA、EPA等)、リン脂質、サラトリム等)、各種蛋白質および蛋白分解物(例えばとうもろこし蛋白、大豆蛋白、TMP(トータルミルクプロテイン)、ラクトアルブミン、カゼイン、ホエー、グルタチオン、大豆ペプチド、卵白ペプチド、グルタミンペプチド等)、脱脂胚芽等の小麦胚芽などが挙げられる。
本発明の医薬組成物又は食品は、オキシトシン関連シグナル活性化剤によってオキシトシン関連シグナルが活性化されることにより、オキシトシン関連シグナル活性化を介した症状又は疾患の予防、緩和、または治療等に使用することができる。そのような症状又は疾患としては、以下に限定されるものではないが例えば、パートナー嗜好性の調節、母性行動の促進、共感性行動の促進、コミュニケーション能力の改善、筋肉、骨に関わるロコモティブシンドローム、甘味感受性の修飾、腸炎の抑制、ストレス緩和、摂食行動抑制、アルコール摂取の抑制、認知機能の改善、攻撃行動の抑制などを挙げることが出来る。
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
[ローズマリー抽出物の製造方法]
水蒸気蒸留等の公知の抽出法によりエッセンシャルオイル成分を除去したローズマリー葉乾燥物を得た。このローズマリー葉乾燥物50gに、80%含水エタノール(v/v)を500ml加えて50℃で攪拌しながら、3時間加熱した後、固液分離により得られた液体部分をエバポレーターで減圧留去して濃縮物(ローズマリー抽出物)を得た。ローズマリー抽出物は、ロスマリン酸を9.8質量%、カルノソールを1.8質量%、カルノシン酸を5.2質量%含んでいた。
[マウスの飼育条件および試料投与]
実験動物には、正常のマウスである雄のICRマウス(日本チャールス・リバー株式会社)に精神的なストレスである尾部懸垂試験を付与するストレスモデル試験を用いて上記のローズマリー抽出物サンプルの抗ストレス効果を評価した。マウスは(1)水投与群(尾部懸垂なし)(ストレスなし)、(2)水投与群(尾部懸垂あり)(ストレス群)、(3)上記方法で製造したローズマリー抽出物10mg/kg体重/日投与群(尾部懸垂あり)、(4)上記方法で製造したローズマリー抽出物100mg/kg体重/日投与群(尾部懸垂あり)の4つの群に分けた。各群のマウスの数は7匹で、個別ケージでの飼育を実施し、通常食および水の摂取が自由に行える環境下で飼育した。
[尾部懸垂試験]
1週間の飼育環境への馴化後、水および上記ローズマリー抽出物の経口投与をゾンデおよびシリンジを用いて実施し、経口投与の1時間後に尾部懸垂試験を実施した。なお、経口投与及び尾部懸垂試験は7日間毎日実施した。尾部懸垂試験の際、マウスの尾にテープを張り付け、テープを尾部懸垂装置のフックに吊り下げ、6分間マウスを逆さ吊りの状態にした。その際、最後の4分間におけるマウスが動かない時間(Immobility time、うつ状態の指標)を測定し、上記ローズマリー抽出物の抗うつ様効果を評価した。
[本発明の組成物による血清及び脳(大脳辺縁系)を用いてストレス度を評価]
上記試験を実施後、各群のマウスから血清及び脳(大脳辺縁系)を採取した。血液採取後、4℃で一晩静置し、1000×g、4℃で30分遠心分離し、その上清を血清とした。また、脳組織100mgに対して、RIPA Buffer(プロテアーゼ阻害剤入り)を1ml添加し、ホモジナイズ後、10000×g、4℃で30分間遠心分離し、上清を用いて、神経伝達物質を測定した。
尾部懸垂試験によるストレスの指標として、血清コルチコステロン(Cayman Chemical Company社)、BDNF(脳由来神経栄養因子)(Biosensis Pty社)、及び脳中のBDNF(脳由来神経栄養因子)(Biosensis Pty社)、ドーパミン(ImmuSmol SAS社)、ノルアドレナリン(ImmuSmol SAS社)、セロトニン(ImmuSmol SAS社)を測定した。脳のタンパク量は、2-D Quant Kit(GE Healthcare社)を用いて定量した。
表1に示すように、水投与群(尾部懸垂なし)と比較して、水投与群(尾部懸垂あり)で、血清コルチコステロン濃度は上昇した。一方で、水投与群(尾部懸垂あり)と比較して、上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日、100mg/kg体重/日で経口投与した群(尾部懸垂あり)で血清コルチコステロン濃度は低下した。
表1
Figure 2022104122000001
表2に示すように、水投与群(尾部懸垂なし)と比較して、水投与群(尾部懸垂あり)で、血清BDNF濃度は低下した。一方で、水投与群(尾部懸垂あり)と比較して、上記方法で製造したローズマリー抽出物を100mg/kg体重/日で経口投与した群(尾部懸垂あり)で血清BDNF濃度は上昇した。
表2
Figure 2022104122000002
表3に示すように、水投与群(尾部懸垂なし)と比較して、水投与群(尾部懸垂あり)で、脳中BDNF濃度は低下した。一方で、水投与群(尾部懸垂あり)と比較して、上記方法で製造したローズマリー抽出物を100mg/kg体重/日で経口投与した群(尾部懸垂あり)で脳中BDNF濃度は上昇した。
表3
Figure 2022104122000003
表4に示すように、水投与群(尾部懸垂なし)と比較して、水投与群(尾部懸垂あり)で、脳中ドーパミン濃度は低下した。一方で、水投与群(尾部懸垂あり)と比較して、上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日、100mg/kg体重/日で経口投与した群(尾部懸垂あり)で脳中ドーパミン濃度は上昇した。
表4
Figure 2022104122000004
表5に示すように、水投与群(尾部懸垂なし)と比較して、水投与群(尾部懸垂あり)で、脳中セロトニン濃度は低下した。一方で、水投与群(尾部懸垂あり)と比較して、上記方法で製造したローズマリー抽出物を100mg/kg体重/日で経口投与した群(尾部懸垂あり)で脳中セロトニン濃度は上昇した。
表5
Figure 2022104122000005
以上の結果から、尾部懸垂試験によって、ストレスの一般的な指標であるコルチコステロンやセロトニンなどが変動していることが示された。また、ロスマリン酸、カルノソール及びカルノシン酸を主要な有効成分として含有するローズマリー又はその抽出物の摂取によって、一般的なストレスを改善することが示された。
[DNAマイクロアレイ法を用いた、脳(大脳辺縁系)組織のオキシトシンに関連するシグナルの活性化の比較]
上記試験を実施後、各群のマウスの脳組織からISOGEN KIT(ニッポンジーン社)を用いてTotal RNAを抽出した。Total RNAはNanoDrop 2000分光光度計(Thermo Scientific社)で定量した。
RNA100ngから、二本鎖cDNA、次いでcRNAをGeneChip WT PLUS Reagent Kit(Life Technologies社)を用いて合成した。また、精製aRNAをGeneChip WT PLUS Reagent Kit(Life Technologies社)で2nd-Cycle ss-cDNAを合成し、精製後、断片化および標識を行った。その後、GeneChip Hybridization, Wash and Stain Kit(Life Technologies社)およびClariom S Assay mouse(Thermo社)を用いて、45℃、60rpm、16時間、GeneChip Hybridization Oven 645(Affymetrix社)中でハイブリダイゼーションした。
ハイブリダイゼーション後、Clariom S Assay mouseをGeneAtlasTM System(Affymetrix社)を用いて洗浄、染色しスキャンした。
データ解析は、Transcription Analysis Console(TAC)ソフトウェア(Thermo社)及びDAVID Bioinformatics Resourcesを用いて行った。
(1)水投与群(尾部懸垂なし)vs.(2)水投与群(尾部懸垂あり)
(2)水投与群(尾部懸垂あり)vs.(3)上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日で経口投与した群(尾部懸垂あり)
(2)水投与群(尾部懸垂あり)vs.(4)上記方法で製造したローズマリー抽出物を100mg/kg体重/日で経口投与した群(尾部懸垂あり)
について、それぞれ比較して、統計的に有意(P値<0.05)、かつ±1.2以上の遺伝子発現の変動があるものを抽出した。
(1)水投与群(尾部懸垂なし)と(2)水投与群(尾部懸垂あり)について、(1)に対して(2)の変動遺伝子数を表6示す。
表6
Figure 2022104122000006
(2)水投与群(尾部懸垂あり)と(3)上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日で経口投与群(尾部懸垂あり)について、(2)に対して(3)の変動遺伝子数を表7に示す。
表7
Figure 2022104122000007
(2)水投与群(尾部懸垂あり)と(4)上記方法で製造したローズマリー抽出物を100mg/kg体重/日で経口投与群(尾部懸垂群あり)について、(2)に対して(4)の変動遺伝子数を表8に示す。
表8
Figure 2022104122000008
(1)水投与群(尾部懸垂なし)と(2)水投与群(尾部懸垂あり)について、(1)に対して(2)の変動したシグナリングパスウェイを表9に示す。
なお、ここで「Oxytocin signaling pathway」はオキシトシンに関連するGene Ontology(Cellular components, Biological process, Molecular functionに関する情報)を持つ遺伝子群である。
表9
Figure 2022104122000009
(2)水投与群(尾部懸垂あり)と(3)上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日で経口投与した群(尾部懸垂あり)について、(2)に対して(3)の変動したシグナリングパスウェイを表10に示す。
表10
Figure 2022104122000010
(2)水投与群(尾部懸垂あり)と(4)上記方法で製造したローズマリー抽出物を100mg/kg体重/日で経口投与した群(尾部懸垂群あり)について、(2)に対して(4)の変動したシグナリングパスウェイを表11に示す。
表11
Figure 2022104122000011
表9に示すように、(1)水投与群(尾部懸垂なし)と(2)水投与群(尾部懸垂あり)を比較して、オキシトシンシグナル経路は低下した。一方、表11に示すように、(2)水投与群(尾部懸垂あり)と比較して、(4)上記方法で製造したローズマリー抽出物を100mg/kg体重/日で経口投与群(尾部懸垂群あり)では、オキシトシンシグナル経路は上昇していた。なお、オキシトシンシグナル経路には、具体的にはアデニル酸シクラーゼ7(Adcy7)、ミオシン軽鎖キナーゼ(Mylk)、活性化T細胞核内因子細胞質カルシニューリン依存性2(Nfatc2)、IVF型ホスホリパーゼA2(Pla2g4f)の4遺伝子が含まれていた。この結果から、本発明の組成物は、オキシトシンの関連シグナルを活性化することが示された。
[Realtime PCRを用いた、脳(大脳辺縁系)組織のオキシトシン及びオキシトシン受容体の遺伝子発現レベルの比較]
上記試験を実施後、各群のマウスの脳組織からISOGEN KIT(ニッポンジーン社)を用いてTotal RNAを抽出した。Total RNAはNanoDrop 2000分光光度計(Thermo Scientific社)で定量した。
RNAサンプルは、SuperScript IV VILO Master mix(Thermo社)で逆転写し、cDNAを得た。以下に示す反応条件でTaqMan Gene Expression Master Mix(Thermo社)と遺伝子特異プライマー(Thermo社)を用いてリアルタイムPCRを以下の通り行った。
(1)50℃で2分間反応、
(2)95℃で10分間反応、
(3)95℃で15秒間反応、
(4)60℃で1分間反応、
(5)(3)~(4)を50回繰り返し測定した。
測定の際、ΔΔCT法により、水投与群(尾部懸垂なし)の遺伝子発現量を100%とした時の相対値で示した。測定した遺伝子は、オキシトシン(OXT)及びオキシトシン受容体(OXTR)である。
表13にオキシトシン及びオキシトシン受容体のmRNA遺伝子発現変動の結果を、水投与群(尾部懸垂なし)の遺伝子発現量を100とした相対値で示す。
表13
Figure 2022104122000012
尾部懸垂によるストレス負荷により、オキシトシン及びオキシトシン受容体のmRNAの発現変動は低下した((1)水投与群(尾部懸垂なし)vs.(2)水投与群(尾部懸垂あり))。その一方、尾部懸垂によるストレスと比較して、尾部懸垂によるストレス下において上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日および100mg/kg体重/日摂取させた群では、オキシトシン及びオキシトシン受容体のmRNAの発現変動は上昇した。((2)水投与群(尾部懸垂あり)vs.(3)上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日で経口投与群(尾部懸垂群あり)、及び、(2)水投与群(尾部懸垂あり)vs.(4)上記方法で製造したローズマリー抽出物を100mg/kg体重/日で経口投与群(尾部懸垂群あり))。この結果から、本発明の組成物は、オキシトシンに関連するシグナルを活性化することが示された。
実施例2
[ローズマリー抽出物の製造方法]
水蒸気蒸留等の公知の抽出法によりエッセンシャルオイル成分を除去したローズマリー葉乾燥物を得た。このローズマリー葉乾燥物50gに、80%含水エタノール(v/v)を500ml加えて50℃で攪拌しながら、3時間加熱した後、固液分離により得られた液体部分をエバポレーターで減圧留去して濃縮物(ローズマリー抽出物)を得た。ローズマリー抽出物は、ロスマリン酸を5.6質量%、カルノソールを4.6質量%、カルノシン酸を5.8質量%含んでいた。
[マウスの飼育条件および試料投与]
実験動物には、正常のマウスである雄のICRマウス(日本チャールス・リバー株式会社)にLipopolysaccharide(LPS)を投与することで精神的なストレスを引き起こし、高架式十字迷路試験を用いて上記のローズマリー抽出物サンプルの抗不安効果を評価した。マウスは(1)水投与群(Lipopolysaccharide(LPS)投与なし)(ストレスなし)、(2)水投与群(LPS投与あり)(ストレス群)、(3)上記方法で製造したローズマリー抽出物10mg/kg体重/日投与群(LPS投与あり)、(4)上記方法で製造したローズマリー抽出物50mg/kg体重/日投与群(LPS投与あり)の4つの群に分けた。各群のマウスの数は6匹で、個別ケージでの飼育を実施し、通常食および水の摂取が自由に行える環境下で飼育した。
[高架式十字迷路試験]
1週間の飼育環境への馴化後、水および上記ローズマリー抽出物の経口投与をゾンデおよびシリンジを用いて7日間毎日実施した。経口投与7日目の投与1時間後にLPS(濃度830μg/kg)を腹腔内投与し、さらに1.5時時間後に高架式十字迷路試験を実施した。高架式十字迷路試験の際、マウスを2つのオープンアームと2つのクローズドアームの間に放し、5分間自由に行動させた。その際、マウスのオープンアームへの進入回数(Open arm entries、不安状態の指標)、滞在時間(Time spent on open arms、不安状態の指標)を測定し、上記ローズマリー抽出物の抗不安効果を評価した。
表14から、水投与群(LPS投与なし)と比較して、水投与群(LPS投与あり)で、オープンアームへの進入回数は減少した。一方で、水投与群(LPS投与あり)と比較して、上記方法で製造したローズマリー抽出物を50mg/kg体重/日で経口投与した群(LPS投与あり)でオープンアームへの進入回数は増加した。
表14
Figure 2022104122000013
表15から、水投与群(LPS投与なし)と比較して、水投与群(LPS投与あり)で、オープンアームでの滞在時間は減少した。一方で、水投与群(LPS投与あり)と比較して、上記方法で製造したローズマリー抽出物を50mg/kg体重/日で経口投与した群(LPS投与あり)でオープンアームでの滞在時間は増加した。
表15
Figure 2022104122000014
[本発明の組成物による血清及び脳(大脳辺縁系)を用いてストレス度を評価]
上記試験を実施後、各群のマウスから血清及び脳(大脳辺縁系)を採取した。血液採取後、4℃で一晩静置し、1000×g、4℃で30分遠心分離し、その上清を血清とした。また、脳組織100mgに対して、RIPA Buffer(プロテアーゼ阻害剤入り)を1ml添加し、ホモジナイズ後、10000×g、4℃で30分間遠心分離し、上清を用いて、神経伝達物質を測定した。
高架式十字迷路試験による不安指標として、血清コルチコステロン(Cayman Chemical Company社)、BDNF(脳由来神経栄養因子)(Biosensis Pty社)、及び脳中のBDNF(脳由来神経栄養因子)(Biosensis Pty社)、ドーパミン(ImmuSmol SAS社)、ノルアドレナリン(ImmuSmol SAS社)を測定した。脳のタンパク量は、2-D Quant Kit(GE Healthcare社)を用いて定量した。
表16に示すように、水投与群(LPS投与なし)と比較して、水投与群(LPS投与あり)で、血清コルチコステロン濃度は上昇した。一方で、水投与群(LPS投与あり)と比較して、上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日、50mg/kg体重/日で経口投与した群(LPS投与あり)で血清コルチコステロン濃度は低下した。
表16
Figure 2022104122000015
表17から、水投与群(LPS投与なし)と比較して、水投与群(LPS投与あり)で、血清BDNF濃度は低下した。一方で、水投与群(LPS投与あり)と比較して、上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日、50mg/kg体重/日で経口投与した群(LPS投与あり)で血清BDNF濃度は上昇した。
表17
Figure 2022104122000016
表18から、水投与群(LPS投与なし)と比較して、水投与群(LPS投与あり)で、脳中BDNF濃度は低下した。一方で、水投与群(LPS投与あり)と比較して、上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日、50mg/kg体重/日で経口投与した群(LPS投与あり)で脳中BDNF濃度は上昇した。
表18
Figure 2022104122000017
表19から、水投与群(LPS投与なし)と比較して、水投与群(LPS投与あり)で、脳中ドーパミン濃度は低下した。一方で、水投与群(LPS投与あり)と比較して、上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日、50mg/kg体重/日で経口投与した群(LPS投与あり)で脳中ドーパミン濃度は上昇した
表19
Figure 2022104122000018
表20から、水投与群(LPS投与なし)と比較して、水投与群(LPS投与あり)で、脳中ノルアドレナリン濃度は低下した。一方で、水投与群(LPS投与あり)と比較して、上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日、50mg/kg体重/日で経口投与した群(LPS投与あり)で脳中ノルアドレナリン濃度は上昇した。
表20
Figure 2022104122000019
以上の結果から、高架式十字迷路試験によって、ストレス(不安)の一般的な指標であるコルチコステロンやドーパミンなどが変動していることが示された。また、ロスマリン酸、カルノソール及びカルノシン酸を主要な有効成分として含有するローズマリー又はその抽出物の摂取によって、一般的なストレスや不安を改善することが示された。
[Realtime PCRを用いた、脳(大脳辺縁系)組織のオキシトシン及びオキシトシン受容体の遺伝子発現レベルの比較]
上記試験を実施後、各群のマウスの脳組織からISOGEN KIT(ニッポンジーン社)を用いてTotal RNAを抽出した。Total RNAはNanoDrop 2000分光光度計(Thermo Scientific社)で定量した。
RNAサンプルは、SuperScript IV VILO Master mix(Thermo社)で逆転写し、cDNAを得た。以下に示す反応条件でTaqMan Gene Expression Master Mix(Thermo社)と遺伝子特異プライマー(Thermo社)を用いてリアルタイムPCRを以下の通り行った。
(1)50℃で2分間反応、
(2)95℃で10分間反応、
(3)95℃で15秒間反応、
(4)60℃で1分間反応、
(5)(3)~(4)を50回繰り返し測定した。
測定の際、ΔΔCT法により、水投与群(LPS投与なし)の遺伝子発現量を100%とした時の相対値で示した。測定した遺伝子は、オキシトシン(OXT)及びオキシトシン受容体(OXTR)である。
表21にオキシトシン及びオキシトシン受容体のmRNA遺伝子発現変動の結果を、水投与群(LPS投与なし)の遺伝子発現量を100とした相対値で示す。
表21
Figure 2022104122000020
LPS投与によるストレス負荷により、オキシトシン及びオキシトシン受容体のmRNAの発現変動は低下した((1)水投与群(LPS投与なし)vs.(2)水投与群(LPS投与あり))。その一方、LPS投与によるストレスと比較して、LPS投与によるストレス下において上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日、50mg/kg体重/日摂取させた群では、オキシトシン及びオキシトシン受容体のmRNAの発現変動は上昇した。((2)水投与群(LPS投与あり)vs.(3)上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日で経口投与群(LPS投与あり)、及び、(2)水投与群(LPS投与あり)vs.(4)上記方法で製造したローズマリー抽出物を50mg/kg体重/日で経口投与群(LPS投与あり))。この結果から、本発明の組成物は、オキシトシンに関連するシグナルを活性化することが示された。
[本発明の組成物による血清及び脳(大脳辺縁系)を用いてオキシトシン濃度を評価]
上記試験を実施後に得た血清及び脳組織(脳組織100mgに対して、RIPA Buffer(プロテアーゼ阻害剤入り)を1ml添加し、ホモジナイズ後、10000×g、4℃で30分間遠心分離した上清)を用いて、オキシトシン濃度(Cayman Chemical Company社)を測定した。脳のタンパク量は、2-D QuantKit(GE Healthcare社)を用いて定量した。
表22に示すように、水投与群(LPS投与なし)と比較して、水投与群(LPS投与あり)で、血清オキシトシン濃度は低下した。一方で、水投与群(LPS投与あり)と比較して、上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日、50mg/kg体重/日で経口投与した群(LPS投与あり)で血清オキシトシン濃度は上昇した。
表22
Figure 2022104122000021

表23に示すように、水投与群(LPS投与なし)と比較して、水投与群(LPS投与あり)で、脳中オキシトシン濃度は低下した。一方で、水投与群(LPS投与あり)と比較して、上記方法で製造したローズマリー抽出物を10mg/kg体重/日、50mg/kg体重/日で経口投与した群(LPS投与あり)で脳中オキシトシン濃度は上昇した。
表23
Figure 2022104122000022

以上の結果から、ロスマリン酸、カルノソール及びカルノシン酸を主要な有効成分として含有するローズマリー又はその抽出物は、オキシトシンに関連するシグナルを活性化することが示された。
本発明は、ローズマリー及びローズマリー抽出物の生理機能として従来知られていない、オキシトシンに関連するシグナルの活性化に関することを明らかにした。当該ローズマリーを含む経口組成物及び医薬は、医薬品、食品、資料など様々な分野や適用可能であり、本発明は産業上きわめて有用である。

Claims (6)

  1. ローズマリー又はその抽出物を有効成分として含有する、オキシトシン関連シグナル活性化剤。
  2. ロスマリン酸、カルノソール及びカルノシン酸を有効成分として含有する、請求項1に記載のオキシトシン関連シグナル活性化剤。
  3. 請求項1又は2に記載のオキシトシン関連シグナル活性化剤を含有する医薬組成物。
  4. オキシトシン関連シグナル活性化を介した症状又は疾患の予防、緩和、または治療のための、請求項3に記載の医薬組成物。
  5. 請求項1又は2に記載のオキシトシン関連シグナル活性化剤を含む食品。
  6. オキシトシン関連シグナル活性化を介した症状又は疾患の予防、緩和、または治療のための、請求項5に記載の食品。
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