JP2022103804A - タイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】転がり抵抗を増加させることなく、旋回時のウェット性能の向上を達成できるタイヤ2の提供。【解決手段】このタイヤ2のトレッド4は、タイヤ2の外面の一部を構成するキャップ層38と、径方向において、キャップ層38の内側に位置する中間層40と、径方向において中間層40の内側に位置するベース層42とを備える。中間層40の30℃での損失正接はキャップ層38の30℃での損失正接よりも低く、ベース層42の30℃での損失正接は中間層40の30℃での損失正接よりも低い。軸方向において、キャップ層38の外端PCはベース層42の外端PBの外側に位置する。径方向において、キャップ層38の外端PCの位置はベース層42の外端PBの位置と一致する、又は、キャップ層38の外端PCはベース層42の外端PBの内側に位置する。【選択図】図4

Description

本発明は、タイヤに関する。
低発熱性のゴムをトレッドに使用すると、低い転がり抵抗を有するタイヤが得られる。低発熱性のゴムのグリップ力は、高いグリップ力を発揮できる発熱性のゴムに比べて劣る。このため、低発熱性のゴムをトレッドに使用すると、例えば、濡れた路面での制動性能(以下、ウェット性能とも称される。)が低下する。転がり抵抗とウェット性能とをバランスよく整えるのは難しい。転がり抵抗の低減と、ウェット性能の向上とを目指し、様々な検討が行われている(例えば、下記の特許文献1)。
特開2018-2008号公報
車両の高速化に伴い、直進時のウェット性能の向上だけでなく、旋回時のウェット性能の向上がタイヤには求められている。ウェット性能の向上のために、高いグリップ力を発揮できるゴムをトレッドに適用することが検討される。高いグリップ力を発揮できるゴムは発熱しやすいため、タイヤの転がり抵抗が増加してしまう。転がり抵抗を増加させることなく、旋回時のウェット性能を向上できる技術の確立が求められている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、転がり抵抗を増加させることなく、旋回時のウェット性能の向上を達成できるタイヤの提供を目的とする。
本発明の一態様に係るタイヤは、路面と接地するトレッドを備える。前記タイヤの外面は、トレッド面と、前記トレッド面の端に連なる一対のサイド面とを備える。前記タイヤの子午線断面において、前記トレッド面の輪郭は、異なる半径を有する円弧からなる複数の曲線輪郭線を含む。前記タイヤの外面の輪郭は、前記トレッド面の端の部分に、前記トレッド面の輪郭に含まれる複数の曲線輪郭線のうち、最小の半径を有する円弧からなり、前記サイド面に繋がる曲線輪郭線で構成される曲線部と、前記曲線部の軸方向内側に位置し前記曲線部に接する内側隣接輪郭線と、前記曲線部の軸方向外側に位置し前記曲線部に接する外側隣接輪郭線とを含む。前記内側隣接輪郭線と前記曲線部との接点における前記曲線部の接線と、前記外側隣接輪郭線と前記曲線部との接点における前記曲線部の接線との交点を通り、径方向に延びる直線と、前記タイヤの外面との交点が、トレッド基準端である。赤道面から前記トレッド基準端までの軸方向距離がトレッド半幅である。前記トレッドは、前記タイヤの外面の一部を構成するキャップ層と、径方向において、前記キャップ層の内側に位置する中間層と、径方向において前記中間層の内側に位置するベース層とを備える。前記中間層の30℃での損失正接が前記キャップ層の30℃での損失正接よりも低く、前記ベース層の30℃での損失正接が前記中間層の30℃での損失正接よりも低い。軸方向において、前記キャップ層の外端は前記ベース層の外端の外側に位置する。径方向において、前記キャップ層の外端の位置は前記ベース層の外端の位置と一致する、又は、前記キャップ層の外端は前記ベース層の外端の内側に位置する。
好ましくは、このタイヤでは、軸方向において、前記中間層の外端は前記ベース層の外端の外側に位置する。径方向において、前記中間層の外端の位置は前記ベース層の外端の位置と一致する、又は、前記中間層の外端は前記ベース層の外端の内側に位置する。
好ましくは、このタイヤでは、軸方向において、前記ベース層の外端の位置は前記トレッド基準端の位置と一致する、又は、前記ベース層の外端は前記トレッド基準端の内側に位置する。
好ましくは、このタイヤでは、前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を正規内圧に調整し、正規荷重の70%の荷重を縦荷重として前記タイヤに負荷して、平面からなる路面に前記タイヤを接触させて得られる接地面が基準接地面であり、前記基準接地面の接地幅の半分が接地半幅である。前記タイヤの外面のうち、前記キャップ層で構成される部分がキャップ面である。軸方向において、前記キャップ面の外端は前記トレッド基準端の外側に位置する。前記タイヤの子午線断面において、前記タイヤの外面に沿って計測される、前記トレッド基準端から前記キャップ面の外端までの長さと、前記トレッド半幅との合計の、前記接地半幅に対する比は、1.15以上1.20以下である。
好ましくは、このタイヤでは、前記トレッド基準端において、前記キャップ層の厚さの、前記トレッドの厚さに対する比率は、15%以上35%以下である。
好ましくは、このタイヤでは、前記キャップ面の外端において、前記キャップ層の厚さの、前記トレッドの厚さに対する比率は、15%以上35%以下である。
好ましくは、このタイヤは、前記キャップ層のLAT摩耗指数と、前記中間層のLAT摩耗指数との差は、-10以上10以下である。
本発明によれば、転がり抵抗を増加させることなく、旋回時のウェット性能の向上を達成できるタイヤが得られる。
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。 図2は、基準接地面の接地幅を説明するイメージ図である。 図3は、図1のタイヤのショルダー部分の輪郭を示す拡大断面図である。 図4は、図1のタイヤの一部を示す拡大断面図である。 図5は、トレッドの構成の変形例を示す拡大断面図である。 図6は、図4のタイヤの一部を示す拡大断面図である。 図7は、比較例1のタイヤの一部を示す拡大断面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
本開示においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけない状態は、正規状態と称される。
本開示においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できないタイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面において、左右のビード間の距離を、正規リムに組んだ状態のタイヤにおけるビード間の距離に一致させて、測定される。
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
本開示において、架橋ゴムとは、ゴム組成物を加圧及び加熱して得られるゴム組成物の成形体である。ゴム組成物は、バンバリーミキサー等の混錬機において、基材ゴム及び薬品を混合することにより得られる未架橋状態のゴムである。架橋ゴムは加硫ゴムとも称され、ゴム組成物は未加硫ゴムとも称される。
基材ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)及びブチルゴム(IIR)が例示される。薬品としては、カーボンブラックやシリカのような補強剤、アロマチックオイル等のような可塑剤、酸化亜鉛等のような充填剤、ステアリン酸のような滑剤、老化防止剤、加工助剤、硫黄及び加硫促進剤が例示される。基材ゴム及び薬品の選定、選定した薬品の含有量等は、ゴム組成物が適用される、トレッド、サイドウォール等の各要素の仕様に応じて、適宜決められる。
本開示において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の温度30℃での損失正接(tanδとも称される。)は、JIS K6394の規定に準拠し、粘弾性スペクトロメータ((株)岩本製作所製の「VES」)を用いて下記の条件にて測定される。
初期歪み=10%
動歪み=2%
周波数=10Hz
変形モード=引張
この測定では、試験片はタイヤからサンプリングされる。タイヤから試験片をサンプリングできない場合には、測定対象の要素の形成に用いられるゴム組成物を170℃の温度で12分間加圧及び加熱して得られる、シート状の架橋ゴム(以下、ゴムシートとも称される。)から試験片がサンプリングされる。
本開示において、LAT摩耗指数は、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の耐摩耗性を評価する指数である。LAT摩耗指数が大きいほど、評価対象の要素は耐摩耗性に優れる。
LAT摩耗指数は、摩擦試験機、例えば、LAT100(VMI社製)等のLAT試験機(Laboratory Abration and Skid Teste)を用いて測定される。この測定では、測定対象の要素の形成に用いられるゴム組成物を、試験片のための金型内で、170℃で20分間、加硫成形して、試験片が準備される。この試験片を用い、荷重50N、速度20km/h、スリップアングル5°の条件で、この試験片の容積損失量(評価対象の容積損失量)が測定される。基準となるゴム組成物の容積損失量(基準容積損失量)も、同様にして測定される。評価対象の容積損失量と基準容積損失量とを用いて、次式により、評価対象要素のLAT摩耗指数が得られる。
LAT摩耗指数=(基準容積損失量/評価対象の容積損失量)×100
LAT摩耗指数は、基準容積損失量を100とした指数で表された、評価対象の容積損失量である。基準となるゴム組成物に、特に制限はない。例えば、トレッドの構成要素のLAT摩耗指数を得る場合、キャップ層及びベース層の2層で構成された従来トレッドのキャップ層のためのゴム組成物が、基準となるゴム組成物として用いられる。
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。このタイヤ2は、乗用車用タイヤである。図1には、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、タイヤ2の断面(以下、子午線断面とも称される。)の一部が示される。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
図1において、一点鎖線ELはタイヤ2の赤道面である。このタイヤ2は、その外面に刻まれる、トレッドパターンや、模様や文字等の装飾を除いて、赤道面に対して対称である。
図1において、タイヤ2はリムRに組まれている。リムRは正規リムである。タイヤ2の内部には空気が充填され、タイヤ2の内圧が調整される。リムRに組まれたタイヤ2は、タイヤ-リム組立体とも称される。タイヤ-リム組立体は、リムRと、このリムRに組まれたタイヤ2とを備える。
図1において、符号PWで示される位置はタイヤ2の軸方向外端である。模様や文字等の装飾が外面にある場合、外端PWは、装飾がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて特定される。
図1において、符号WAで示される長さはタイヤ2の最大幅、すなわち断面幅(JATMA等参照)である。タイヤ2の断面幅WAは、一方の外端PWから他方の外端PWまでの軸方向距離である。外端PWは、このタイヤ2が最大幅を示す位置(以下、最大幅位置)である。断面幅WAは正規状態のタイヤ2において測定される。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、一対のクッション18、一対のチェーファー20及びインナーライナー22を備える。
トレッド4は、その外面において路面と接地する。トレッド4には溝24が刻まれる。これにより、トレッドパターンが構成される。
このタイヤ2では、周方向に連続して延びる少なくとも3本の周方向溝26がトレッド4に刻まれる。これにより、軸方向に並列した少なくとも4本の陸部28がこのトレッド4に構成される。図1に示されたタイヤ2では、3本の周方向溝26をトレッド4に刻むことで、4本の陸部28が構成される。周方向溝26は、トレッドパターンを構成する溝24の一部をなす。
図1において、符号PEで示される位置はこのタイヤ2の赤道である。赤道PEは、トレッド4の外面と赤道面との交点である。図1に示されるように、赤道面上に溝24がある場合、赤道PEは、溝24がないと仮定して得られる、トレッド4の仮想外面に基づいて特定される。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、径方向においてトレッド4の内側に位置する。サイドウォール6は、トレッド4の端からクリンチ8に向かってカーカス12に沿って延びる。サイドウォール6は耐カット性を考慮した架橋ゴムからなる。
それぞれのクリンチ8は、径方向においてサイドウォール6の内側に位置する。クリンチ8はリムRと接触する。クリンチ8は耐摩耗性を考慮した架橋ゴムからなる。
それぞれのビード10は、軸方向においてクリンチ8の内側に位置する。ビード10は、コア30と、エイペックス32とを備える。図示されないが、コア30はスチール製のワイヤを含む。
エイペックス32は、径方向においてコア30の外側に位置する。エイペックス32は外向きに先細りである。エイペックス32は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス12は、一方のビード10と他方のビード10との間を架け渡す。このカーカス12はラジアル構造を有する。
カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ34を含む。軽量化の観点から、このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ34で構成される。
カーカスプライ34は、プライ本体34aと、一対の折り返し部34bとを含む。プライ本体34aは、一方のコア30と他方のコア30との間を架け渡す。それぞれの折り返し部34bは、プライ本体34aに連なりそれぞれのコア30で軸方向内側から外側に向かって折り返される。このタイヤ2では、折り返し部34bの端は、径方向において、最大幅位置PWの外側に位置する。
図示されないが、カーカスプライ34は並列した多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは、赤道面と交差する。カーカスコードは有機繊維からなるコードである。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
ベルト14は、径方向においてトレッド4の内側に位置する。ベルト14は、径方向において外側からカーカス12に積層される。図1において、符号WRで示される長さはベルト14の軸方向幅である。軸方向幅WRはベルト14の一方の端から他方の端までの軸方向距離である。このタイヤ2では、ベルト14の軸方向幅WRは、断面幅WAの65%以上85%以下である。
ベルト14は、径方向に積層された少なくとも2つの層36で構成される。このタイヤ2のベルト14は、径方向に積層された2つの層36からなる。2つの層36のうち、内側に位置する層36が内側層36aであり、外側に位置する層36が外側層36bである。図1に示されるように、内側層36aは外側層36bよりも幅広い。外側層36bの端から内側層36aの端までの長さは3mm以上10mm以下である。
図示されないが、内側層36a及び外側層36bはそれぞれ、並列した多数のベルトコードを含む。これらベルトコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードの材質はスチールである。
バンド16は、径方向において、トレッド4とベルト14との間に位置する。バンド16は、トレッド4の内側においてベルト14に積層される。
図示されないが、バンド16は、らせん状に巻かれたバンドコードを含む。バンドコードは実質的に周方向に延びる。詳細には、バンドコードが周方向に対してなす角度は、5°以下である。バンド16はジョイントレス構造を有する。このタイヤ2では、有機繊維からなるコードがバンドコードとして用いられる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
このタイヤ2のバンド16は、赤道PEを挟んで両端が相対するフルバンドからなる。バンド16はベルト14よりも幅広い。ベルト14の端からバンド16の端までの長さは3mm以上10mm以下である。バンド16はベルト14全体を覆う。このバンド16が、軸方向において離間して配置され、フルバンドの端及びベルト14の端を覆う、一対のエッジバンドを含んでもよい。このバンド16が、一対のエッジバンドのみで構成されてもよい。
それぞれのクッション18は、軸方向において離間して配置される。クッション18は、ベルト14及びバンド16の端と、カーカス12のプライ本体34aとの間に位置する。クッション18は低い剛性を有する架橋ゴムからなる。
それぞれのチェーファー20は、ビード10の径方向内側に位置する。チェーファー20はリムRと接触する。このタイヤ2のチェーファー20は布とこの布に含浸したゴムとからなる。
インナーライナー22はカーカス12の内側に位置する。インナーライナー22は、タイヤ2の内面を構成する。インナーライナー22は、気体透過係数が低い架橋ゴムからなる。インナーライナー22は、タイヤ2の内圧を保持する。
図1において、符号PHで示される位置はトレッド4の外面上の位置である。位置PHは、タイヤ2の、路面との接地面の、軸方向外端に対応する。
位置PHを特定するための接地面は、例えば、接地面形状測定装置(図示されず)を用いて得られる。この接地面は、この装置において、正規状態のタイヤ2のキャンバー角を0°とした状態で、正規荷重の70%の荷重を縦荷重としてこのタイヤ2に負荷して、平面からなる路面にこのタイヤ2を接触させて得られる。このタイヤ2では、このようにして得られる接地面が基準接地面であり、この基準接地面の軸方向外端に対応する、トレッド4の外面上の位置が、前述の位置PHである。このタイヤ2では、この位置PHが基準接地端である。
図2には、基準接地面のイメージが示される。図2において、上下方向はタイヤ2の周方向に相当し、左右方向はタイヤ2の軸方向に相当する。図2の紙面に対して垂直な方向はこのタイヤ2の径方向に相当する。
図2において、符号CWで示される長さは、基準接地面の接地幅である。接地幅CWは一方の基準接地端PHから他方の基準接地端PHまでの軸方向距離である。接地幅CWは、基準接地面の最大幅で表される。本開示において、接地幅CWの半分は接地半幅HCWとも称される。
図3は、図1に示されたタイヤ2の一部を示す。図3において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図3の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
図3には、子午線断面における、タイヤ2のショルダー部分の輪郭が示される。図3に示される輪郭は、正規状態のタイヤ2の外面形状を変位センサーで計測することで得られる。
子午線断面において、タイヤ2の外面(以下、タイヤ外面TS)の輪郭は、直線又は円弧からなる複数の輪郭線をつないで構成される。本開示において、直線又は円弧からなる輪郭線は単に輪郭線と称される。直線からなる輪郭線は直線輪郭線と称され、円弧からなる輪郭線は曲線輪郭線と称される。
タイヤ外面TSは、トレッド面Tと、トレッド面Tの端に連なる一対のサイド面Sとを備える。子午線断面において、トレッド面Tの輪郭には、異なる半径を有する複数の曲線輪郭線が含まれる。このタイヤ2では、トレッド面Tの輪郭に含まれる複数の曲線輪郭線のうち、最小の半径を有する曲線輪郭線が、トレッド面Tの端の部分に位置し、サイド面Sに繋がる。子午線断面において、タイヤ外面TSの輪郭は、トレッド面Tの端の部分に、トレッド面Tの輪郭に含まれる複数の曲線輪郭線のうち、最小の半径を有する円弧からなり、サイド面Sに繋がる曲線輪郭線である曲線部を含む。図3には、この曲線部が符号RSで示される。
タイヤ外面TSの輪郭において、曲線部RSは、その軸方向内側に隣接する輪郭線(以下、内側隣接輪郭線NT)と接点CTにおいて接する。この曲線部RSは、その軸方向外側に隣接するサイド面Sの輪郭を構成する輪郭線(以下、外側隣接輪郭線NS)と接点CSにおいて接する。このタイヤ外面TSの輪郭は、曲線部RSの軸方向内側に位置しこの曲線部RSに接する内側隣接輪郭線NTと、曲線部RSの軸方向外側に位置しこの曲線部RSに接する外側隣接輪郭線NSとを含む。
図3において、実線LTは、内側隣接輪郭線NTと曲線部RSとの接点CTにおける、曲線部RSの接線である。実線LSは、外側隣接輪郭線NSと曲線部RSとの接点CSにおける、曲線部RSの接線である。符号PTで示される位置は、接線LTと接線LSとの交点である。このタイヤ2では、この交点PTが仮想トレッド端である。符号Peで示される位置は、仮想トレッド端PTを通り、径方向に延びる直線と、タイヤ外面TSとの交点である。この交点Peがトレッド基準端である。
図1において、両矢印WTで示される長さはトレッド4の幅である。このトレッド4の幅は、一方のトレッド基準端Peから他方のトレッド基準端Peまでの軸方向距離である。このタイヤ2では、トレッド4の幅WTの、断面幅WAに対する比率(WT/WA)は70%以上90%以下である。
トレッド4のうち、一方のトレッド基準端Peから他方のトレッド基準端Peまでの部分が、タイヤ2の一般的な走行条件において、路面との接地が予定されている領域(以下、通常接地領域とも称される。)である。トレッド4の部分(以下、トレッド部とも称される。)の効果的な補強の観点から、前述のベルト14及びバンド16はこの通常接地領域に配置される。図1に示されるように、バンド16の端の位置は、軸方向において、トレッド基準端Peの位置とほぼ一致する。このタイヤ2では、バンド16はトレッド4の幅WTと同等の軸方向幅を有する。具体的には、トレッド4の幅WTと、バンド16の軸方向幅との差は-10mm以上10mm以下である。
図1において、両矢印WHで示される長さは、基準接地面の軸方向幅である。軸方向幅WHは、一方の基準接地端PHから他方の基準接地端PHまでの軸方向距離である。
このタイヤ2では、トレッド基準端Peは、軸方向において、基準接地端PHの外側に位置する。言い換えれば、基準接地面の軸方向幅WHはトレッド4の幅WTよりも狭い。具体的には、軸方向幅WHの、トレッド4の幅WTに対する比率(WH/WT)は70%以上90%以下である。
前述したように、このタイヤ2のトレッド4には3本の周方向溝26が刻まれる。このタイヤ2では、3本の周方向溝26の配置、溝深さ及び溝幅に特に制限はない。タイヤの周方向溝の配置、溝深さ及び溝幅として一般的な配置、溝深さ及び溝幅がこのトレッド4に適用される。
このタイヤ2では、3本の周方向溝26のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝26はショルダー周方向溝26sである。ショルダー周方向溝26sの内側に位置する周方向溝26はミドル周方向溝26mである。
前述したように、このタイヤ2のトレッド4には4本の陸部28が構成される。4本の陸部28のうち、赤道面側に位置する陸部28がミドル陸部28mであり、ミドル陸部28mの外側に位置する陸部28がショルダー陸部28sである。
ショルダー陸部28sには、基準接地端PHが含まれる。左右のミドル陸部28mの間は、ミドル周方向溝26mである。このタイヤ2では、ミドル周方向溝26mは赤道面上に位置する。このミドル周方向溝26mは、センター周方向溝とも称される。
図4は、図1に示されたタイヤ2の一部を示す。図4には、タイヤ2のトレッド部が示される。図4において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図4の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。図4において、符号HWTで示される長さは、赤道面からトレッド基準端Peまでの軸方向距離である。この軸方向距離HWTは、前述の、トレッド4の幅WTの半分であり、トレッド半幅とも称される。
このタイヤ2のトレッド4は、キャップ層38、中間層40及びベース層42を備える。キャップ層38はタイヤ外面TSの一部を構成する。中間層40は、径方向において、キャップ層38の内側に位置する。ベース層42は、径方向において、中間層40の内側に位置する。図4に示されるように、キャップ層38が中間層40に積層され、中間層40がベース層42に積層される。後述するトレッド基準端Pe付近を除いて、キャップ層38、中間層40及びベース層42はほぼ一様な厚さを有するように構成される。
図4において、符号PCで示される位置はキャップ層38の外端である。符号WCで示される長さはキャップ層38の軸方向幅である。軸方向幅WCは一方の外端PCから他方の外端PCまでの軸方向距離である。符号PMで示される位置は中間層40の外端である。符号WMで示される長さは中間層40の軸方向幅である。軸方向幅WMは一方の外端PMから他方の外端PMまでの軸方向距離である。符号PBで示される位置はベース層42の外端である。符号WBで示される長さはベース層42の軸方向幅である。軸方向幅WBは一方の外端PBから他方の外端PBまでの軸方向距離である。
前述したように、キャップ層38はタイヤ外面TSの一部を構成する。タイヤ外面TSのうち、キャップ層38で構成される部分はキャップ面44である。符号PFで示される位置は、キャップ面44の外端である。このタイヤ2では、キャップ面44の外端PFは、軸方向において、トレッド基準端Peの外側に位置する。キャップ層38の外端PCは、径方向において、キャップ面44の外端PFの内側に位置する。キャップ層38の外端PCは、タイヤ外面TS上に位置していない。キャップ層38の外端PCがタイヤ外面TS上に位置する場合は、このキャップ層38の外端PCはキャップ面44の外端PFでもある。
図4において、符号PSで示される位置は、タイヤ外面TSにおける、トレッド4の外端である。このタイヤ2では、キャップ面44の外端PFはトレッド4の外端PSに一致する。このタイヤ2では、キャップ層38の内側に位置する中間層40はタイヤ外面TSに露出していない。
このタイヤ2では、キャップ層38の外端PCの位置は、径方向において、中間層40の外端PMの位置と一致する。このキャップ層38の外端PCの位置は、軸方向において、中間層40の外端PMの位置と一致する。このタイヤ2では、キャップ層38の外端PCの位置は、タイヤ2の性能への影響を考慮の上、キャップ面44の外端PFと中間層40の外端PMとの間で適宜調整される。
このタイヤ2では、中間層40の外端PMは、軸方向において、ベルト14の端の外側に位置する。バンド16の端は、中間層40の外端PMとベルト14の端との間に位置する。このタイヤ2では、中間層40は、ベルト14及びバンド16の端を覆う。特に、ベルト14の端での損傷の発生を防止する観点から、ベルト14の端から中間層40の外端PMまでの長さは10mm以上が好ましく、15mm以下が好ましい。
このタイヤ2では、ベース層42はバンド16に積層される。ベース層42は、バンド16と、このバンド16の内側に位置するベルト14とによって補強される。効果的な補強の観点から、このタイヤ2では、ベース層42の軸方向幅WBは、バンドの軸方向幅と同等であるか、バンドの軸方向幅よりも狭いのが好ましい。
このタイヤ2では、キャップ層38、中間層40及びベース層42はそれぞれ、異なる発熱性を有する架橋ゴムからなる。このタイヤ2では、キャップ層38が最も発熱しやすく、ベース層42が最も発熱しにくい。中間層40は、キャップ層38の発熱性とベース層42の発熱性との間の発熱性を有する。このタイヤ2では、中間層40の30℃での損失正接LTmはキャップ層38の30℃での損失正接LTcよりも低い。ベース層42の30℃での損失正接LTbは中間層40の30℃での損失正接LTmよりも低い。
ベース層42の30℃での損失正接LTbは、好ましくは0.11以下である。ベース層42が転がり抵抗の低減に効果的に寄与するからである。この観点から、損失正接LTbは0.10以下がより好ましく、0.09以下がさらに好ましい。ベース層42の損失正接LTbは小さいほど好ましいので、好ましい下限は設定されない。
中間層40の30℃での損失正接Ltmは、好ましくは0.15以下である。中間層40が転がり抵抗の低減に効果的に寄与するからである。この観点から、損失正接Ltmは0.14以下がより好ましく、0.13以下がさらに好ましい。中間層40の30℃での損失正接Ltmは、好ましくは0.11以上である。中間層40が必要な剛性を確保でき、ウェット性能の向上に効果的に貢献できるからである。この観点から、損失正接LTmは0.12以上がより好ましい。
キャップ層38の30℃での損失正接LTcは、好ましくは0.15以上である。キャップ層38がウェット性能の向上に貢献できるからである。この観点から、損失正接LTcは0.16以上がより好ましく、0.17以上がさらに好ましい。キャップ層38は路面に接地する。ウェット性能の向上の観点では、損失正接LTcは高いほど好ましい。しかし高い損失正接LTcは、発熱を招く。熱を帯びたキャップ層38が中間層40の温度を想定以上に高めることが懸念される。トレッド4全体の温度状態を安定に保ち、低い転がり抵抗が維持できる観点から、キャップ層38の30℃での損失正接LTcは0.30以下が好ましく、0.28以下がより好ましく、0.27以下がさらに好ましい。
このタイヤ2では、軸方向において、キャップ層38の外端PCがベース層42の外端PBの外側に位置する。そして、径方向において、キャップ層38の外端PCの位置がベース層42の外端PBの位置と一致する、又は、キャップ層38の外端PCがベース層42の外端PBの内側に位置する。このタイヤ2では、径方向において外側からキャップ層38がベース層42を囲うように、このキャップ層38は配置される。
タイヤ外面TSのうち、路面との接地が予定される部分はトレッド4で構成される。このタイヤ2では、路面との接地が予定される部分がキャップ層38で構成される。言い換えれば、路面との接地が予定される部分の端が前述のキャップ面44の端PFである。このタイヤ2では、旋回時においてもキャップ層38が路面と接地する。このタイヤ2では、旋回時のウェット性能が向上する。
このタイヤ2では、直進時だけでなく旋回時においてもキャップ層38が路面と接地する。キャップ層38に高いグリップ力を有するゴムが用いられるので、このタイヤ2は、キャップ層38の内側に位置する中間層40を、発熱しやすいグリップ力を重視したゴムではなく、グリップ力をわずかに犠牲にして、低発熱性を考慮したゴムで構成できる。このタイヤ2では、トレッド4の外側部分が発熱しやすいキャップ層38で構成されているにもかかわらず、このキャップ層38の内側に位置する中間層40が転がり抵抗の低減に貢献する。このタイヤ2は、転がり抵抗を増加させることなく、旋回時のウェット性能の向上を達成できる。
このタイヤ2では、軸方向において、中間層40の外端PMはベース層42の外端PBの外側に位置する。径方向において、中間層40の外端PMはベース層42の外端PBの内側に位置する。図示されないが、中間層40の外端PMの位置が、径方向において、ベース層42の外端PBの位置と一致していてもよい。
このタイヤ2では、径方向において外側から中間層40がベース層42を囲うように、この中間層40は配置される。前述したように、径方向において外側からキャップ層38が中間層40を囲うように、このキャップ層38は配置される。言い換えれば、キャップ層38が中間層40を外側から覆い、中間層40がベース層42を外側から覆う。このタイヤ2では、走行時に活発に動くトレッド4の端の部分において、中間層40がキャップ層38とベース層42との間に効果的に配置される。キャップ層38よりも発熱しにくい中間層40が転がり抵抗の低減に効果的に貢献する。中間層40にはグリップ力が考慮されているので、キャップ層38が摩耗しても、旋回時においても必要なウェット性能が確保される。転がり抵抗の低減と、ウェット性能の確保との観点から、このタイヤ2では、軸方向において、中間層40の外端PMがベース層42の外端PBの外側に位置し、径方向において、中間層40の外端PMの位置がベース層42の外端PBの位置と一致する、又は、中間層40の外端PMがベース層42の外端PBの内側に位置するのが好ましい。
大きな慣性力が発生する旋回走行(以下、過酷旋回走行とも称される。)では、車両のロールによりトレッド基準端Peよりも外側部分が路面と接地し、この外側部分が摩耗する。このため、過酷旋回走行では、この外側部分の摩耗により、ベース層42が露出することが懸念される。ベース層42が露出すると、このベース層42を起点としたトレッド4の剥離が発生する恐れがある。このため、タイヤには、旋回時のウェット性能の向上だけでなく、過酷旋回時の耐久性の向上も求められている。
図4に示されるように、このタイヤ2では、軸方向において、ベース層42の外端PBの位置はトレッド基準端Peの位置と一致する。このタイヤ2では、図5に示されるように、このベース層42の外端PBがトレッド基準端Peの内側に位置してもよい。
このタイヤ2では、トレッド4の端の部分において、タイヤ外面TSから離れた位置にベース層42が配置される。これにより、過酷旋回走行において、トレッド基準端Peよりも外側部分が摩耗しても、ベース層42の露出が防止される。このタイヤ2では、過酷旋回時の耐久性が向上する。この観点から、このタイヤ2では、軸方向において、ベース層42の外端PBの位置がトレッド基準端Peの位置と一致する、又は、ベース層42の外端PBがトレッド基準端Peの内側に位置するのが好ましい。
前述したように、このタイヤ2では、キャップ層38とベース層42との間に中間層40が位置する。中間層40は、ベース層42よりも発熱しやすいが、キャップ層38よりも発熱しにくい。このタイヤ2は、転がり抵抗の低減を図りながら、過酷旋回時の耐久性の向上も図ることができる。
図5において、符号αで示される長さはトレッド基準端Peからベース層42の外端PBまでの軸方向距離である。この軸方向距離αは、ベース層42の外端PBがトレッド基準端Peの外側に位置する場合が正の数で表され、ベース層42の外端PBがトレッド基準端Peの内側に位置する場合が負の数で表される。
このタイヤ2では、ベース層42の外端PBが軸方向においてトレッド基準端Peの内側に位置する場合、転がり抵抗の低減の観点から、軸方向距離αの、トレッド半幅HWTに対する比率(α/HWT)は-10.0%以上が好ましく、-6.0%以上がより好ましい。過酷旋回時の耐久性向上の観点から、この比率(α/HWT)は3.0%以下が好ましく、0.0%以下がより好ましい。
図4において、符号βで示される長さは、トレッド基準端Peからキャップ面44の外端PFまでの長さである。この長さFは、このタイヤ2の子午線断面において、タイヤ外面TSに沿って計測される。
このタイヤ2では、トレッド基準端Peからキャップ面44の外端PFまでの長さβと、トレッド半幅HWTとの合計(β+HWT)の、接地半幅HCWに対する比((β+HWT)/HCW)は、好ましくは、1.15以上1.20以下である。
比((β+HWT)/HCW)が1.15以上に設定されることにより、旋回時に路面と接地する部分がキャップ層38で構成される。このタイヤ2では、旋回時のウェット性能が向上する。この観点から、この比((β+HWT)/HCW)は1.16以上がより好ましい。
比((β+HWT)/HCW)が1.20以下に設定されることにより、トレッド4の端の部分に含まれるキャップ層38のボリュームが適切に維持される。このタイヤ2では、キャップ層38による転がり抵抗への影響が抑制される。この観点から、この比((β+HWT)/HCW)は1.19以下がより好ましい。
図6は、図4に示されたタイヤ2の一部を示す。図6には、タイヤ2のショルダー部分が示される。図6において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図6の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
図6において、実線Leはトレッド基準端Peを通る、タイヤ外面TSの法線である。両矢印Xで示される長さは、法線Leに沿って計測されるトレッド4の厚さである。この厚さXは、トレッド基準端Peでのトレッド4の厚さである。両矢印xで示される長さは、法線Leに沿って計測されるキャップ層38の厚さである。この厚さxは、トレッド基準端Peでのキャップ層38の厚さである。
このタイヤ2では、トレッド基準端Peにおいて、キャップ層38の厚さxの、トレッドの厚さXに対する比率(x/X)は、好ましくは、15%以上35%以下である。
比率(x/X)が15%以上に設定されることにより、トレッド基準端Peにおけるキャップ層38に必要な厚さが確保される。このタイヤ2では、キャップ層38が旋回時のウェット性能の向上に効果的に貢献する。この観点から、この比率(x/X)は20%以上がより好ましい。
比率(x/X)が35%以下に設定されることにより、トレッド基準端Peにおけるキャップ層38が適切な厚さで維持される。このタイヤ2では、キャップ層38による転がり抵抗への影響が効果的に抑制される。この観点から、この比率(x/X)は30%以下がより好ましい。
図6において、実線LFはキャップ面44の外端PFを通る、タイヤ外面TSの法線である。両矢印Yで示される長さは、法線LFに沿って計測されるトレッド4の厚さである。この厚さYは、キャップ面44の外端PFでのトレッド4の厚さである。両矢印yで示される長さは、法線LFに沿って計測されるキャップ層38の厚さである。この厚さyは、キャップ面44の外端PFでのキャップ層38の厚さである。
このタイヤ2では、キャップ面44の外端PFにおいて、キャップ層38の厚さyの、トレッドの厚さYに対する比率(y/Y)は、好ましくは、15%以上35%以下である。
比率(y/Y)が15%以上に設定されることにより、キャップ面44の外端PFにおけるキャップ層38に必要な厚さが確保される。このタイヤ2では、キャップ層38が旋回時のウェット性能の向上に効果的に貢献する。この観点から、この比率(y/Y)は20%以上がより好ましい。
比率(y/Y)が35%以下に設定されることにより、キャップ面44の外端PFにおけるキャップ層38が適切な厚さで維持される。このタイヤ2では、キャップ層38による転がり抵抗への影響が効果的に抑制される。この観点から、この比率(y/Y)は30%以下がより好ましい。
このタイヤ2では、トレッド4のうち、キャップ層38及び中間層40からなる部分が、キャップ層及びベース層からなる従来タイヤのトレッドのキャップ層に相当する。トレッド4がウェット性能の向上と転がり抵抗の低減とに効果的に貢献できる観点から、30℃でのキャップ層38の損失正接LTcの、30℃での中間層40の損失正接LTmに対する比率(Ltc/Ltm)は110%以上250%以下が好ましい。この比率(Ltc/Ltm)は、130%以上がより好ましく、150%以上がさらに好ましい。この比率(Ltc/Ltm)は240%以下がより好ましく、230%以下がさらに好ましい。
このタイヤ2では、キャップ層38の耐摩耗性と中間層40の耐摩耗性とに乖離があると、過酷旋回時において、両者の摩耗量に違いが生じることが懸念される。この場合、キャップ層38と中間層40との境界付近に段差が生じ、この段差を起点とする損傷が発生する恐れがある。過酷旋回時における耐久性の向上の観点から、キャップ層のLAT摩耗指数と中間層のLAT摩耗指数とは同程度であるのが好ましい。具体的には、キャップ層のLAT摩耗指数と中間層のLAT摩耗指数と差は、-10以上10以下であるのが好ましい。
以上説明したように、本発明によれば、転がり抵抗を増加させることなく、旋回時のウェット性能の向上を達成できるタイヤが得られる。
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた乗用車用の空気入りタイヤ(タイヤサイズ=205/55R16)を得た。トレッド半幅HWTは89mmであり、接地半幅HCWは80mmであった。
キャップ層、中間層及びベース層を備え、図4に示された構成を有するトレッドが使用された。キャップ層の30℃での損失正接LTcは0.27であった。中間層の30℃での損失正接LTmは0.12であった。ベース層の30℃での損失正接LTbは0.10であった。
この実施例1では、トレッド基準端Peからベース層の外端PBまでの軸方向距離αの、トレッド半幅HWTに対する比率(α/HWT)は0.0%であった。トレッド基準端Peからキャップ面の外端PCまでの長さβと、トレッド半幅HWTとの合計(β+HWT)の、接地半幅HCWに対する比((β+HWT)/HCW)は1.18であった。トレッド基準端Peにおいて、キャップ層の厚さxの、トレッドの厚さXに対する比率(x/X)は20%であった。キャップ面の外端PFにおいて、キャップ層の厚さyの、トレッドの厚さYに対する比率(y/Y)は20%であった。キャップ層のLAT摩耗指数と中間層のLAT摩耗指数との差(LATc-LATm)は0であった。
[比較例1]
トレッドの構成を図7に示される通りとし、比率(α/HWT)、比((β+HWT)/HCW)、比率(x/X)及び比率(y/Y)を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。比較例1のトレッドの構成は従来の構成である。
[実施例2-3]
比率(α/HWT)を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-3のタイヤを得た。
[実施例4]
比((β+HWT)/HCW)を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例4のタイヤを得た。
[実施例5-6]
比率(x/X)及び比率(y/Y)を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5-6のタイヤを得た。
[実施例7]
グリップ力を向上させたゴム組成物でキャップ層を構成し、差(LATc-LATm)を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例7のタイヤを得た。実施例7のキャップ層の30℃での損失正接LTcは0.30であった。
[転がり抵抗係数(RRC)]
転がり抵抗試験機を用い、試作タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数(RRC)を測定した。その結果が下記の表1に指数で示されている。数値が大きいほど、タイヤの転がり抵抗は低い。
リム:16×6.5J
内圧:250kPa
縦荷重:4.82kN
[過酷旋回時の耐久性(DRY)]
試作タイヤをリム(サイズ=16×7J)に組み、空気を充填してタイヤの内圧を250kPaに調整した。タイヤを試験車両(乗用車)に装着した。ドライ路面のサークル状のテストコースで試験車両をアンダーステア状態で旋回走行させた。走行速度は100km/hに設定された。30周走行後、タイヤのバットレス部の摩耗状況を確認し、亀裂の数及び長さに基づいて評価した。この結果が下記の表1-2に示されている。数値が大きいほど、過酷旋回時の耐久性に優れる。この評価では、指数が100以上であることが合格基準に設定された。
[旋回時のウェット性能(WET)]
試作タイヤをリム(サイズ=16×7J)に組み、空気を充填してタイヤの内圧を250kPaに調整した。タイヤを試験車両(乗用車)に装着した。ウェット路面(水膜厚=1.4mm)のテストコースで試験車両を走行させて、ラップタイムを計測した。その結果が下記の表1-2に指数で示されている。数値が大きいほど、旋回時のウェット性能に優れる。この評価では、指数が100以上であることが合格基準に設定された。
Figure 2022103804000002
Figure 2022103804000003
表1-2に示されるように、実施例では、転がり抵抗を増加させることなく、旋回時のウェット性能の向上を達成できることが確認されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明された、転がり抵抗を増加させることなく、旋回時のウェット性能の向上を達成できる技術は種々のタイヤにも適用されうる。
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
12・・・カーカス
14・・・ベルト
16・・・バンド
26、26s、26m・・・周方向溝
28、28s、28m・・・陸部
34、34a、34b・・・カーカスプライ
36、36a、36b・・・層
38・・・キャップ層
40・・・中間層
42・・・ベース層
44・・・キャップ面

Claims (7)

  1. 路面と接地するトレッドを備えるタイヤであって、
    前記タイヤの外面が、トレッド面と、前記トレッド面の端に連なる一対のサイド面とを備え、
    前記タイヤの子午線断面において、前記トレッド面の輪郭が、異なる半径を有する円弧からなる複数の曲線輪郭線を含み、
    前記タイヤの外面の輪郭が、前記トレッド面の端の部分に、前記トレッド面の輪郭に含まれる複数の曲線輪郭線のうち、最小の半径を有する円弧からなり、前記サイド面に繋がる曲線輪郭線で構成される曲線部と、前記曲線部の軸方向内側に位置し前記曲線部に接する内側隣接輪郭線と、前記曲線部の軸方向外側に位置し前記曲線部に接する外側隣接輪郭線とを含み、
    前記内側隣接輪郭線と前記曲線部との接点における前記曲線部の接線と、前記外側隣接輪郭線と前記曲線部との接点における前記曲線部の接線との交点を通り、径方向に延びる直線と、前記タイヤの外面との交点が、トレッド基準端であり、
    赤道面から前記トレッド基準端までの軸方向距離がトレッド半幅であり、
    前記トレッドが、前記タイヤの外面の一部を構成するキャップ層と、径方向において、前記キャップ層の内側に位置する中間層と、径方向において前記中間層の内側に位置するベース層とを備え、
    前記中間層の30℃での損失正接が前記キャップ層の30℃での損失正接よりも低く、前記ベース層の30℃での損失正接が前記中間層の30℃での損失正接よりも低く、
    軸方向において、前記キャップ層の外端が前記ベース層の外端の外側に位置し、
    径方向において、前記キャップ層の外端の位置が前記ベース層の外端の位置と一致する、又は、前記キャップ層の外端が前記ベース層の外端の内側に位置する、
    タイヤ。
  2. 軸方向において、前記中間層の外端が前記ベース層の外端の外側に位置し、
    径方向において、前記中間層の外端の位置が前記ベース層の外端の位置と一致する、又は、前記中間層の外端が前記ベース層の外端の内側に位置する、
    請求項1に記載のタイヤ。
  3. 軸方向において、前記ベース層の外端の位置が前記トレッド基準端の位置と一致する、又は、前記ベース層の外端が前記トレッド基準端の内側に位置する、
    請求項1又は2に記載のタイヤ。
  4. 前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を正規内圧に調整し、正規荷重の70%の荷重を縦荷重として前記タイヤに負荷して、平面からなる路面に前記タイヤを接触させて得られる接地面が基準接地面であり、
    前記基準接地面の接地幅の半分が接地半幅であり、
    前記タイヤの外面のうち、前記キャップ層で構成される部分がキャップ面であり、
    軸方向において、前記キャップ面の外端が前記トレッド基準端の外側に位置し、
    前記タイヤの子午線断面において、前記タイヤの外面に沿って計測される、前記トレッド基準端から前記キャップ面の外端までの長さと、前記トレッド半幅との合計の、前記接地半幅に対する比が、1.15以上1.20以下である、
    請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ。
  5. 前記トレッド基準端において、前記キャップ層の厚さの、前記トレッドの厚さに対する比率が、15%以上35%以下である、
    請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ。
  6. 前記キャップ面の外端において、前記キャップ層の厚さの、前記トレッドの厚さに対する比率が、15%以上35%以下である、
    請求項5に記載のタイヤ。
  7. 前記キャップ層のLAT摩耗指数と、前記中間層のLAT摩耗指数との差が、-10以上10以下である、
    請求項1から6のいずれか一項に記載のタイヤ。

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