JP2022103143A - 有機el素子用封止剤、封止膜、有機el素子及び有機el素子の製造方法 - Google Patents

有機el素子用封止剤、封止膜、有機el素子及び有機el素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】インクジェット法により容易に塗布することができ、得られる封止膜の硬化収縮が小さく、基材との密着性に優れ、さらにアウトガス発生が少ない封止膜を形成することができる有機EL素子用封止剤を提供すること。【解決手段】1分子中に2個以上の重合性二重結合を有する多分枝ポリマー(A)を含む有機EL素子用封止剤とする。【選択図】なし

Description

本発明は、有機EL素子用封止剤、封止膜、有機EL素子及び有機EL素子の製造方法に関する。
有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」ともいう)素子は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された積層体構造を有する。この有機発光材料層に対し一方の電極から電子が注入されるとともに他方の電極から正孔が注入されることにより、有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して発光する。このように有機EL素子は自己発光を行うことから、バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、薄型化が可能であり、しかも直流低電圧駆動が可能であるという利点を有している。
有機発光材料層の封止構造として従来、有機EL素子の有機発光材料層と電極とを、CVD法により形成した樹脂膜と、窒化珪素膜との積層膜により封止する方法が提案されている。ここで樹脂膜は、窒化珪素膜の内部応力による有機層や電極への圧迫を防止する役割を有する。有機発光材料層内への水分の浸入を防止するための方法として、特許文献1には、無機材料膜と樹脂膜とを交互に蒸着する方法が開示されている。特許文献2や特許文献3には、無機材料膜上に樹脂膜を形成する方法が開示されている。
樹脂膜を形成する方法としては、インクジェット法を用いて基材上に液状の硬化性樹脂組成物を塗布した後、該硬化性樹脂組成物を硬化させる方法がある。このようなインクジェット法による塗布方法を用いれば、高速かつ均一に樹脂膜を形成することができる。インクジェット法による樹脂膜の形成方法について、特許文献4には、エポキシ化合物などのカチオン重合性化合物とカチオン重合開始剤を含む塗膜に、熱あるいは光、電子線などの活性エネルギー線を照射することによって硬化させて樹脂膜を形成する方法が開示されている。
特表2005-522891号公報 特開2001-307873号公報 特開2008-149710号公報 特開2016-058273号公報
従来の有機EL素子用封止剤としての硬化性組成物は、硬化性は比較的良好である一方、硬化による膜の収縮が大きいために封止膜と基材との剥がれが生じやすく、例えば、剥がれた部分から水分等が浸入し、発光素子の劣化を引き起こすことがあった。また、封止膜と基材との密着性向上のために密着助剤を使用する場合が多いが、この密着助剤がアウトガスとなり、素子の信頼性を損なうことがある。このような背景から、硬化収縮が小さく、基材との密着性に優れ、さらにアウトガス発生の少ない有機EL素子用封止剤の開発が求められている。
本発明は、インクジェット法により容易に塗布することができ、得られる封止膜の硬化収縮が小さく、基材との密着性に優れ、さらにアウトガス発生が少ない封止膜を形成することができる有機EL素子用封止剤を提供することを一つの目的とする、また、本発明は、硬化収縮が小さく、基材との密着性に優れ、さらにアウトガス発生が少ない封止膜、並びに当該封止膜を有する有機EL素子及びその製造方法を提供することを他の一つの目的とする。
上記課題を解決するためになされた1の発明は、1分子中に2個以上の重合性二重結合を有する多分枝ポリマー(A)を有する、有機EL素子用封止剤である。
上記有機EL素子用封止剤は、(A)1分子中に2個以上の重合性二重結合を有する多分枝ポリマー、(B)式(1)で示される化合物、及び、(C)ラジカル重合開始剤、を含んでいてもよい。
Figure 2022103143000001
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。Yは単結合、*-COO-、*-CONH-、*-CH-O-又は-O-を示す。Xは炭素数5から20の1価の炭化水素基を示す。)
上記有機EL素子用封止剤は、E型粘度計によって25℃、100rpmの条件で測定される粘度が10~30mPa・sであってもよい。
上記課題を解決するためになされた別の発明は、(A)ハイパーブランチ型(メタ)アクリレートポリマー、(B)4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート及び3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物、及び、(C)オキシムエステル系ラジカル重合開始剤及びアシルホスフィンオキサイド系ラジカル重合開始剤の少なくとも一方のラジカル重合開始剤、を含む、有機EL素子用封止剤である。
上記課題を解決するためになされた別の発明は、本発明の有機EL素子用封止剤により形成された封止膜である。また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、本発明の封止膜を有する有機EL素子である。
上記課題を解決するためになされた別の発明は、発光層が形成された基材の形成面に、本発明の有機EL素子用封止剤を塗布して硬化することにより前記発光層を封止する工程を含む、有機EL素子の製造方法である。
本発明の有機EL素子用封止剤によれば、インクジェット法により容易に塗布することができ、得られる膜の硬化収縮を抑制でき、しかも、基材との密着性に優れ、かつアウトガス発生が少ない硬化膜を形成することができる。このため、得られる硬化膜は有機EL素子の封止膜として好適である。また、本発明の有機EL素子用封止剤を用いることにより、硬化収縮が抑制され、基材との密着性に優れ、かつアウトガス発生が少ない封止膜を備える有機EL素子を得ることができる。
以下、実施態様に関連する事項について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。「構造単位」とは、主鎖構造を主として構成する単位であって、少なくとも主鎖構造中に2個以上含まれる単位をいう。
本明細書において、「炭化水素基」は、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。なお、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有する環構造は、炭化水素構造からなる置換基を有していてもよい。「環状炭化水素基」は、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」を包含する意味である。「(メタ)アクリロイル基」は、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」を包含する意味である。本明細書では、オキシラニル基及びオキセタニル基を包含して「エポキシ基」ともいう。
本発明の有機EL素子用封止剤は、1分子中に2個以上の重合性二重結合を有する多分枝ポリマー(以下、「多分枝ポリマー(A)」又は単に「多分枝ポリマー」若しくは「多分岐ポリマー」ともいう)を含む。本発明の有機EL素子用封止剤に含まれる各成分等について以下に詳説する。なお、各成分については、特に言及しない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)1分子中に2個以上の重合性二重結合を有する多分枝ポリマーについて
多分岐ポリマーは、1分子中に複数の分岐鎖を有するポリマーであって、デンドロン(樹枝状)やデンドリマー(樹木状)に代表される、数多くの枝分かれ構造を持つポリマーである。多分岐ポリマーは、直鎖状ポリマーに比べ流体力学半径が小さいことから、溶解性が大きく向上する、粘度が大きく低下する、ガラス転移温度が大きく変化する等の特徴を有している。
多分岐ポリマーの合成法は特に限定されない。例えば、デンドリマーの合成法により多分岐ポリマーを製造することができる。デンドリマーの合成法は、ABx型モノマー(A及びBは、互いに異なる官能基a及びbを有する有機基であり、官能基a及びbは、互いに化学的に縮合反応や、付加反応を起こすことができるものである。xは2以上の整数である。)を段階的に反応させる方法である。
多分岐ポリマーは、イニマーを用いる製造方法で合成されるポリマーであることが好ましい。イニマーを用いる製造方法によれば、分子量分布が広く分子構造の制御が困難な点はあるが、工業的に低コストで製造できるメリットがある。さらに、イニマーを用いる合成方法では、同一分子内に重合性官能基及び重合開始基を有するモノマーを用いるため、末端に重合性二重結合を有する多分岐ポリマーを得ることが可能となる。
本発明において、多分岐ポリマーは中でも、ハイパーブランチ型ポリマーが好ましく、ハイパーブランチ型(メタ)アクリレートポリマーが特に好ましい。ハイパーブランチ型(メタ)アクリレートポリマーの分岐は樹状の規則的な分岐を有するデンドリチック(メタ)アクリレートポリマーと異なり、不規則な分岐を有する。
更に説明すると、ハイパーブランチ型ポリマーは、ABx型モノマーの一段階重合により得られる多分岐高分子であり、放射状ではなく所定の一方向又は二以上の方向に多重に分岐した分岐構造を有するポリマーである。ハイパーブランチ型(メタ)アクリレートポリマーは、分岐鎖の末端の一部又は全部に(メタ)アクリロイル基を有するポリマーであり、重合性二重結合を含む官能基として(メタ)アクリロイル基を1分子中に2個以上有している。
本実施形態の有機EL素子用封止剤に含まれるハイパーブランチ型(メタ)アクリレートポリマーは、1分子中に6個以上の重合性二重結合(すなわち、1分子中に6個以上の(メタ)アクリロイル基)を有することが好ましい。このようなハイパーブランチ型(メタ)アクリレートポリマーであると、得られる封止膜の耐溶剤性が高く、基材に対する密着性も向上する点で好ましい。
1分子中に6個以上の(メタ)アクリロイル基を有するハイパーブランチ型(メタ)アクリレートポリマーの具体例としては、CN2303、CN2304、CN2302(いずれも商品名;アルケマ(サートマー)社製)が挙げられる。これらのうち、CN2304、CN2302は1分子中に10個以上の(メタ)アクリロイル基を有するハイパーブランチ型ポリマーである。
多分岐ポリマーは、数平均分子量が1000~10000であることが好ましく、1000~7000であることがより好ましい。また、多分岐ポリマーにつき、E型粘度計を用いて25℃で測定される粘度は、例えば10~5000mPa・sであり、好ましくは10~1000mPa・sであり、より好ましくは10~300mPa・sである。
本発明の有機EL素子用封止剤は、有機EL素子用封止剤の総量に対して、多分枝ポリマー(A)を5~30質量%の範囲で含有することが好ましく、7~30質量%の範囲で含有することがより好ましく、7~25質量%の範囲で含有することがさらに好ましく、2~25質量%の範囲で含有することがよりさらに好ましく、さらに、10~20質量%の範囲で含有することが好ましい。このような範囲で多分枝ポリマーを含有することで、有機EL素子用封止剤の粘度を適切な範囲内とすることができ、インクジェット塗布性を良好にすることができる。また、有機EL素子用封止剤により形成される封止膜の硬化収縮が低減され、有機溶剤に対する耐性が向上するとともに基材に対する密着性も向上する。
・任意成分について
本発明の有機EL素子用封止剤は、多分枝ポリマー(A)とともに、多分枝ポリマー(A)以外の成分(以下、「任意成分」ともいう)をさらに含んでいてもよい。任意成分としては、式(1)で示される化合物(以下、「化合物(B)」ともいう)、及びラジカル重合開始剤(C)が挙げられる。
Figure 2022103143000002
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。Yは単結合、*-COO-、*-CONH-、*-CH-O-又は-O-を示す。Xは炭素数5から20の1価の炭化水素基を示す。)
有機EL素子用封止剤により形成される封止膜の硬化収縮の低減及び基材に対する密着性の改善効果を十分に得る観点から、本発明の有機EL素子用封止剤は、中でも、多分枝ポリマー(A)と、化合物(B)と、ラジカル重合開始剤(C)とを含む硬化性組成物であることが好ましい。以下、化合物(B)及びラジカル重合開始剤(C)について詳説する。
(B)式(1)で示される化合物について
化合物(B)は、重合性二重結合と、疎水性の高い構造である炭素数5から20の炭化水素基とを有する。化合物(B)は比較的蒸気圧が高い化合物であるため、揮発しにくく、有機EL素子製造工程においてアウトガスの原因になりにくい。また、常温、常圧の状態において液体で存在するため、有機EL素子用封止剤中で他成分を溶解させる希釈溶剤としても機能する。さらに、有機EL素子用封止剤の粘度をインクジェット塗布に好適な範囲に調整することも可能である。
式(1)において、Xで示される炭素数5~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数5~20の鎖状炭化水素基、炭素数5~20の脂環式炭化水素基、炭素数5~20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
炭素数5~20の鎖状炭化水素基としては、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基;ヘキシニル基、オクチニル基、デシニル基、オクタデシニル基等のアルキニル基等が挙げられる。
炭素数5~20の脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の1価の単環の脂環式飽和炭化水素基;シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基等の1価の単環の脂環式不飽和炭化水素基;ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の1価の多環の脂環式飽和炭化水素基;ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基、テトラシクロドデセニル基等の1価の多環の脂環式不飽和炭化水素基等が挙げられる。
炭素数5~20の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
上記の1価の単環の脂環式飽和炭化水素基、単環の脂環式不飽和炭化水素基、多環の脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基が置換基を有している場合、置換基としては、炭素数1から12のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。Xで示される炭素数5~20の1価の炭化水素基において、環上には1以上5以下の複数の置換基があってもよい。
Xは、これらのうち、脂環式構造を有する炭化水素基であることが、封止膜の硬化収縮を低減する効果を高くできる点において好ましい。有機EL素子用封止剤の粘度をインクジェット塗布に好適な範囲に調整しやすい点で、Xは中でも、脂環式構造を有する炭素数5~15の1価の炭化水素基であることが好ましく、単環の脂環式構造を有する炭素数5~15の1価の飽和炭化水素基であることがより好ましい。
化合物(B)の具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、エチルアダマンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアダマンチル(メタ)アクリレート、N-シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-シクロオクチル(メタ)アクリルアミド、N-ノルボルニル(メタ)アクリルアミド、N-イソボルニル(メタ)アクリルアミド、N-アダマンチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロオクチルビニルエーテル、ノルボルニルビニルエーテル、イソボルニルビニルエーテル、アダマンチルビニルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、シクロオクチルアリルエーテル、ヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、スチレン、式(1-a)で示される化合物、式(1-b)で示される化合物、式(1-c)で示される化合物等が挙げられる。
Figure 2022103143000003
(式(1-a)、(1-b)、(1-c)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1から12のアルキル基を示す。)
、Rは、それぞれ独立に、炭素数1から12のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ヘキシル基などを示す。
化合物(B)としては、中でも、式(1-a)で示される化合物、式(1-b)で示される化合物、及び式(1-c)で示される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。特に、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート及び3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも一種が、封止膜のアウトガス低減と硬化収縮の低減とを高いレベルで両立できる点において、本実施形態の有機EL素子用封止剤に好適に用いられる。
本発明の有機EL素子用封止剤は、有機EL素子用封止剤の総量に対して、化合物(B)を70~90質量%の範囲で含有することが好ましい。このような範囲で化合物(B)を含有することで、有機EL素子用封止剤により形成される封止膜の硬化収縮を十分に低減でき、また得られる封止膜からのアウトガスを十分に低減できる。このような観点から、化合物(B)の含有量は、有機EL素子用封止剤の総量に対して、72質量%以上が好ましく、75質量%以上が更に好ましい。また、化合物(B)の含有量は、有機EL素子用封止剤の総量に対して、88質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
(C)ラジカル重合開始剤について
ラジカル重合開始剤は、光照射によりラジカル重合を開始するものであれば特に限定されない。例えば、オキシムエステル化合物、アセトフェノン化合物、ビイミダゾール化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物などを挙げることができる。
オキシムエステル化合物の具体例としては、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-アセテート、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)又はエタノン-1-〔9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)を好ましいものとして挙げることができる。市販品としては、TRONLY社製「TR-PBG345」、BASFジャパン社製 IRGACURE(登録商標)OXE01、IRGACURE(登録商標)OXE02等が挙げられる。これらオキシムエステル化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
アセトフェノン化合物としては、例えばα-アミノケトン化合物、α-ヒドロキシケトン化合物及びその他のアセトフェノン化合物を挙げることができる。
これらの具体例としては、α-アミノケトン化合物として、例えば2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。
α-ヒドロキシケトン化合物としては、α-アミノケトン化合物が好ましく、特に2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン又は2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オンが好ましい。
ビイミダゾール化合物の具体例としては、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール又は2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールが好ましく、特に2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールが好ましい。
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド等が挙げられる。市販品としては、アシルホスフィンオキサイド系ラジカル重合開始剤(BASF社製「LucirinTPO」)を好適に使用することができる。
本発明の有機EL素子用封止剤は、有機EL素子用封止剤の総量に対して、ラジカル重合開始剤を0.1~10質量%の範囲で含有することが好ましい。このような範囲でラジカル重合開始剤を含有することで、有機EL素子用封止剤により形成される封止膜の硬化性を向上せることができる。こうした観点から、ラジカル重合開始剤の含有量は、有機EL素子用封止剤の総量に対して、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。また、ラジカル重合開始剤の含有量は、膜の硬化収縮を抑制する観点から、有機EL素子用封止剤の総量に対して、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
・粘度について
本発明の有機EL素子用封止剤は、E型粘度計によって25℃、100rpmの条件で測定される粘度が2~40mPa・sの範囲であることが好ましい。この範囲であると、インクジェット塗布性が良好な有機EL素子用封止剤とすることができる。本発明の有機EL素子用封止剤において、E型粘度計によって25℃、100rpmの条件で測定される粘度は、十分な膜厚を確保する観点から、5mPa・s以上がより好ましく、9mPa・s以上が更に好ましく、10mPa・s以上がより更に好ましい。また、インクジェット塗布性を良好にする観点から、上記粘度は、30mPa・s以下がより好ましく、25mPa・s以下が更に好ましい。なお、有機EL素子用封止剤の粘度は、JIS K2283に準拠して測定された値である。
・有機溶剤について
本発明の有機EL素子用封止剤は、必要に応じて有機溶剤を含有することができるが、有機溶剤(ただし、化合物(B)を除く。)を含有しないか、有機溶剤を含有する場合には少量であることが好ましい。具体的には、本発明の有機EL素子用封止剤における有機溶剤(ただし、化合物(B)を除く。)の含有量は、0質量%以上3質量%以下であることが好ましく、そのときの有機EL素子用封止剤の粘度(すなわち、有機溶剤(ただし、化合物(B)を除く。)を含有しない場合の有機EL素子用封止剤の粘度)が2~40mPa・sであることが好ましい。なお、本発明の有機EL素子用封止剤が有機溶剤を含有する場合、有機溶剤としては、例えば、ケトン溶剤、酢酸エステル溶剤、カルビトール溶剤、エーテル溶剤、芳香族炭化水素溶剤、含窒素溶剤が挙げられる。
・その他の任意成分について
本発明の有機EL素子用封止剤は、化合物(B)及びラジカル重合開始剤(C)以外の任意成分として、添加剤を含有してもよい。添加剤としては従来公知の成分が挙げられ、例えば、酸化防止剤、増感剤、シランカップリング剤、熱硬化剤、硬化遅延剤、揮発性化合物、界面活性剤、レベリング剤、イオン交換樹脂、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤が挙げられる。
本発明の有機EL素子用封止剤において、ラジカル又は過酸化物による化合物の結合の解裂を防止するために、酸化防止剤を含有することができる。このような化合物として、ヒンダードフェノール構造を有する化合物及びヒンダードアミン構造を有する化合物等のラジカル捕捉剤、及びアルキルホスファイト構造を有する化合物及びチオエーテル構造を有する化合物等の過酸化物分解剤等が挙げられる。
上記酸化防止剤を含有することにより、露光時又は加熱時に発生したラジカルの捕捉や、あるいは酸化によって生成した過酸化物の分解が可能となるため、このラジカルや過酸化物による重合体分子の結合の解裂を防止することができる。その結果、当該組成物から得られる封止膜は、優れた耐光性及び耐熱性を発揮することができる。また、当該組成物は、酸化防止剤として上記特定構造を有するラジカル捕捉剤又は過酸化物分解剤を用いているため、これらを添加しても、当該組成物の放射線感度を高いレベルに保ちつつ、当該組成物から得られる封止膜の透過性の低下を防ぐことができる。
本発明の有機EL素子用封止剤が酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の含有量は、多分枝ポリマー(A)及び化合物(B)を含む重合性化合物100質量部に対して、0.1~10質量部であることが3好ましい。酸化防止剤の含有量が上記範囲内にあることによって、有機EL素子用封止剤の放射線感度を保ちつつ、有機EL素子用封止剤から得られた封止膜の透過性をさらに向上させることができる。
また、本発明の有機EL素子用封止剤は、保存安定性の観点から、エポキシ硬化系、アクリル硬化系に関わらず酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤が系中に微量発生するラジカルを捕捉することで、光開始剤の分解を抑制し、エポキシやアクリルの重合反応を抑制することが考えられる。
本発明の有機EL素子用封止剤は、アウトガス発生の弊害にならない程度で、揮発性化合物(ただし、化合物(B)を除く。)を含有していてもよい。揮発性化合物は、有機EL素子用封止剤の濡れ広がり性を向上させることができる。揮発性化合物の20℃における蒸気圧は、通常0.1~20kPaであり、好ましくは0.1~15kPa、より好ましくは0.1~10kPa、さらに好ましくは0.2~10kPaである。蒸気圧は静止法を用いて測定することができる。このような態様であると、有機EL素子用封止剤を塗布後、揮発性化合物を速やかに蒸発除去することができ、したがって封止膜中での揮発性化合物の残留量を低減できる。また、薄膜形成が可能である。例えば、インクジェット装置を用いて有機EL素子用封止剤を吐出後に揮発性化合物を蒸発除去することができ、封止層等の封止膜をさらに薄膜化することが可能である。蒸気圧が上記範囲の上限を超えると、濡れ広がり性が不足し、塗布性が低下したり、インクジェットヘッドからの吐出安定性が低下したりする等の傾向にある。
揮発性化合物は、好ましくは、重合性基を有する化合物、多分枝ポリマー(A)と反応する基を有する化合物、化合物(B)と反応する基を有する化合物、多分枝ポリマー(A)と反応する基及び重合性基を有する化合物、化合物(B)と反応する基を有する化合物及び重合性基を有する化合物である。重合性基は、多分枝ポリマー(A)又は化合物(B)と反応する基でもあることが好ましく、具体的には、多分枝ポリマー(A)又は化合物(B)が有する重合性基と重合反応可能な基であることが好ましい。
この様な態様であると、一定量の揮発性化合物が塗膜中に残留する場合でも、硬化時に成分(A)又は成分(B)と揮発性化合物とが反応し、あるいは揮発性化合物同士が反応し、揮発性化合物が封止膜の骨格の一部として取り込まれる。このため、揮発性化合物が封止膜からアウトガスとして放出されることを低減することができる。例えば、有機EL素子の封止層において良好な性能が得られ、有機EL素子の信頼性に悪影響を与えることを抑制できる。揮発性化合物は、カチオン重合やラジカル重合等の重合反応により多分枝ポリマー(A)又は化合物(B)とともに共重合体を形成することが好ましい。
例えば、本発明の有機EL素子用封止剤をインクジェット塗布用として用いると、インクジェットヘッドから吐出された有機EL素子用封止剤が対象基材上に着弾して濡れ広がると同時に揮発性化合物が揮発する。また、基材上から揮発できなかった揮発性化合物は、封止膜形成時に多分枝ポリマー(A)又は化合物(B)と反応したり、あるいは揮発性化合物同士で反応したりすることでアウトガス化が防止される。
揮発性化合物につき、E型粘度計を用いて25℃、100rpmの条件で測定した粘度は、好ましくは10mPa・s以下、より好ましくは0.5~10mPa・s、さらに好ましくは0.5~5mPa・sである。このような態様であれば、塗布性が良好である。
揮発性化合物において重合性基としては、例えば、重合性二重結合を含む基(炭素-炭素重合性二重結合等)が挙げられ、具体的には(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。揮発性化合物において多分枝ポリマー(A)又は化合物(B)と反応する基であって重合性基以外の基としては、例えばチオール基、環状エーテル基(エポキシ基、オキセタニル基等)が挙げられる。
揮発性化合物がエポキシ化合物又はオキセタン化合物である場合の具体例としては、例えば、シクロヘキセンオキサイド、1-メチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等が挙げられ;オキセタン化合物としては、例えば、2,2-ジメチルオキセタン、3,3-ジメチルオキセタン、3,3-ジエチルオキセタン、プロピルメチルオキセタン、プロピルエチルオキセタン、ブチルメチルオキセタン、2-エチルヘキシルオキセタン、3-エチル-3-[(ビニロキシ)メチル]-オキセタン等が挙げられる。
揮発性化合物が(メタ)アクリロイル基含有化合物である場合の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸C2~4アルキルエステル等が挙げられる。
なお、複数種の官能基を有する化合物については、例えば(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する化合物を例にとると、(メタ)アクリロイル基含有化合物及びエポキシ化合物のいずれにも分類する。
本発明の有機EL素子用封止剤が揮発性化合物を含む場合、揮発性化合物(ただし、化合物(B)を除く。)の含有量は、有機EL素子用封止剤の総量に対して、例えば0.1~30質量%とすることができ、好ましくは1~10質量%である。このような態様であれば、薄膜塗布時の濡れ広がり性に優れる。揮発性化合物の含有量が上記範囲を下回ると、膜ムラが大きくなる傾向にあり、揮発性化合物の含有量が上記範囲を上回ると、塗布性が低下する傾向にある。
本発明の有機EL素子用封止剤の塗膜形成性をより向上させるために、本発明の有機EL素子用封止剤は界面活性剤を含むことが好ましい。このような界面活性剤としては、例えばフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びその他の界面活性剤が挙げられる。
本発明の有機EL素子用封止剤が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、有機EL素子用封止剤の総量に対して、0.01~2質量%であることが好ましい。界面活性剤の使用量が上記範囲である場合、塗布膜ムラを低減することができる。界面活性剤の含有量は、有機EL素子用封止剤の総量に対して、より好ましくは0.05~1質量%である。
・有機EL素子用封止剤の製造方法について
本発明の有機EL素子用封止剤は、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、上記各成分を混合することにより製造することができる。
・有機EL素子用封止剤及び封止膜の物性について
本発明の有機EL素子用封止剤は、(1)対象基材上での濡れ広がり性が良好であり、したがって薄膜塗布時の膜ムラを抑制でき、(2)硬化後のアウトガス発生量が少なく、また、(3)硬化後の対象基材に対する密着性に優れている。また、本発明の有機EL素子用封止剤は、(4)大気中での紫外線硬化性等の硬化性を担保しつつ、常温でインクジェット吐出可能である。
一実施態様において、本発明の有機EL素子用封止剤より形成された封止膜につき、波長380~800nmにおける光の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上である。このような態様であると、例えば多分枝ポリマー(A)を含む硬化性組成物を有機EL素子封止材料として用いた場合に、良好な光学特性を有する有機EL装置を得ることができる。
一実施態様において、本発明の有機EL素子用封止剤より形成された厚さ10μmの封止膜の透湿度は、好ましくは200g/m・24hr未満である。封止膜の透湿度の下限値は低いほどよい。封止膜の透湿度は、例えば10g/m・24hr以上であってもよい。このような態様であると、例えば多分枝ポリマー(A)を含む硬化性組成物を有機EL素子封止材料として用いた場合に、有機発光層に水分が到達することに起因してダークスポットが発生することを抑制できる。アウトガスの発生を抑制することによってもダークスポットが発生することを抑制することができる。
多分枝ポリマー(A)を含む本発明の有機EL素子用封止剤は、有機EL素子用素子の有機発光層を保護する封止構造を形成する材料として用いることができる。有機EL素子とは、有機発光層を含む積層構造を備えた電子デバイスであり、有機EL、有機トランジスタ、有機薄膜太陽電池等の総称として用いる。
・封止膜の製造方法について
本発明の封止膜は、本発明の有機EL素子用封止剤により形成される。その製造方法は特に限定されないが、例えば、本発明の有機EL素子用封止剤を基材表面に塗布し、硬化させることにより得ることができる。
本発明の有機EL素子用封止剤は、例えば、スピンコーター、ロールコーター、スプレーコーター、バーコーター、ディスペンサー、インクジェット装置を用いて、対象基材上に塗布することができる。塗布の態様としては、対象基材全面でも一部でもよく、形成箇所に応じて適宜変更すればよい。本発明の有機EL素子用封止剤は、インクジェット塗布用組成物として特に好適である。インクジェット法は、所望する箇所にインクを着弾することができるためパターン形成の自由度が高く、低コストであり、また薄膜の有機層を形成することができる。
本発明では、対象基材上に有機EL素子用封止剤を塗布した後、有機EL素子用封止剤に任意に含まれる揮発性化合物を除去する工程を行わなくとも、封止膜からのアウトガスの発生は少ないが、必要に応じて揮発性化合物を除去する工程を行ってもよい。揮発性化合物を除去する工程は、例えば、対象基材上の有機EL素子用封止剤を加熱する工程である。この加熱の工程において、加熱の実施温度は、好ましくは20~200℃、より好ましくは20~150℃、さらに好ましくは20~100℃である。加熱の実施時間は、好ましくは10秒~60分間、より好ましくは10秒~10分間、さらに好ましくは10秒~3分間である。また、減圧下にて1秒~30分間保持することによって、揮発性化合物を除去する工程を行ってもよい。
有機EL素子用封止剤が光硬化型材料である場合、硬化のための光照射には、例えば紫外光及び可視光が用いられ、波長300~450nmの紫外光又は可視光がより好ましい。照射量は、好ましくは100~2000mJ/cm、より好ましくは500~1500mJ/cmである。
光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置が挙げられる。これらの光源は、有機EL素子用封止剤に任意に含まれるラジカル重合開始剤(C)の吸収波長に合わせて適宜選択する。
また、光硬化型の有機EL素子用封止剤の硬化を促進させるため、すなわち、重合性化合物である多分枝ポリマー(A)の重合を促進させるため、光照射と同時に又は光照射後に加熱を行ってもよい。また、熱硬化型の有機EL素子用封止剤は、加熱により硬化させる。例えば、加熱により硬化を行う場合の加熱温度としては、好ましくは60~200℃、より好ましくは80~150℃である。加熱時間としては、好ましくは1~120分間、より好ましくは1~60分間である。
本発明の有機EL素子用封止剤は、そのまま有機EL素子用素子の封止材料として用いることができ、有機EL素子の封止材料として特に好ましく用いることができる。
本発明の有機EL素子用封止剤より形成される封止膜の厚さは、好ましくは1~50μm、より好ましくは1~20μm、さらに好ましくは1~15μmである。例えばフレキシブル性が求められる用途において、封止膜の薄膜化を達成することができる。
本発明の有機EL素子用封止剤は、シート状に加工して用いてもよい。封止用シートは、本発明の有機EL素子用封止剤からなる封止用層を有する。封止用層の厚さは、通常は1~50μm、好ましくは1~20μmである。封止用層は支持体上に形成することができる。支持体としては、例えば、樹脂製フィルム、金属箔、これらの積層フィルムが挙げられる。
・有機EL素子及びその製造方法について
本発明の有機EL素子は、本発明の有機EL素子用封止剤より形成された封止膜(硬化層又は有機封止層)によって封止された素子を有する。すなわち、本発明の有機EL素子は、有機EL素子用素子と、本発明の有機EL素子用封止剤より形成され、有機EL素子用素子を封止している封止膜(硬化層又は有機封止層)とを有する。有機EL素子用素子は、有機EL素子であることが好ましい。
有機EL素子用素子を封止する封止構造は、本発明の有機EL素子用封止剤より形成された有機封止層と、無機封止層とを有する有機無機封止層であってもよく、例えば、2つの無機封止層の間に有機封止層を有する有機無機封止層であってもよい。本発明の有機EL素子用封止剤より形成された有機封止層は、上層及び下層の無機封止層に対する密着性に優れている。有機封止層の厚さは、封止膜の厚さとして上述したとおりである。無機封止層としては、例えば、特開2010-160906号公報、特開2016-012433号公報、特開2016-143605号等に記載された層、具体的には窒化シリコン層や酸窒化シリコン層が挙げられ、厚さは例えば10~500nmである。
例えば、有機EL素子用素子が形成された基材(以下「素子基材」ともいう)の素子形成面に、有機EL素子用素子を封止するように本発明の有機EL素子用封止剤を塗布して硬化することにより有機EL素子用素子を封止してもよい。
また、素子基材と有機EL素子用素子が形成されていない基材(以下「非素子基材」ともいう)とを貼り合わせた際に有機EL素子用素子を封止できるように、非素子基材上に本発明の有機EL素子用封止剤を塗布し、素子基材と非素子基材とを貼り合わせることにより、有機EL素子用封止剤によって有機EL素子用素子を封止してもよい。
有機EL素子用封止剤は、対象基材の全面に塗布してもよく、対象基材の一部に塗布してもよい。有機EL素子用封止剤よりなる封止部の形状としては、有機発光層を含む素子を外気から保護しうる形状であれば特に限定されず、有機EL素子用素子を完全に被覆する形状であってもよく、有機EL素子用素子の周辺部に閉じたパターンを形成してもよい。
有機EL素子用封止剤の硬化は、その可使時間を考慮して、素子基材及び非素子基材の貼合せ工程の前に行ってもよいし、当該貼合せ工程の後に行ってもよい。貼合せ工程は、例えば、減圧雰囲気下で行うことが好ましい。
有機EL素子用封止剤の塗布方法及び硬化方法は上記したとおりであるが、本発明ではインクジェット法により有機EL素子用封止剤を基材に塗布することが特に好ましい。
有機EL素子としては、例えば、有機EL、有機トランジスタ、有機薄膜太陽電池が挙げられる。有機EL素子の用途としては、例えば、有機EL照明装置、有機EL表示装置が挙げられる。
以下、一実施態様である有機EL装置について説明する。有機EL装置は、例えば、基材と、基材に設けられた有機EL素子と、本発明の有機EL素子用封止剤より形成され、有機EL素子の有機発光層を封止している硬化層と、封止用基材とを有する。
有機EL装置は、ボトムエミッション構造又はトップエミッション構造とすることができ、各構成材料の材質は、前記構造に応じて適宜選択することができる。
基材としてはガラス基材及び樹脂基材等が挙げられる。基材の構成材料としては、例えば、無アルカリガラス等のガラス;ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン等の樹脂が挙げられる。
有機EL素子は、その構造の詳細な説明は省略するが、発光材料を含む有機発光層が互いに対向する一対の電極の間に挟持されてなる構造であればよい。すなわち、有機EL素子は、有機発光層が互いに対向する陽極と陰極との間に挟持されてなる構造であればよく、例えば、陽極/有機発光層/陰極を有する公知の構造をとることができる。
有機発光層は、有機材料である発光材料、すなわち、有機発光材料を含有する。有機発光層に含まれる有機発光材料は、低分子有機発光材料であっても高分子有機発光材料であってもよい。例えば、Alq3(トリス(8-キノリノラト)アルミニウム)、BeBq3(ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリネート)ベリリウム)等の基材母体にキナクリドンやクマリンをドープした材料を用いることができる。高分子有機発光材料としては、例えば、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリフェニレン及びその誘導体、ポリパラフェニレンエチレン及びその誘導体、ポリ3-ヘキシルチオフェン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等を選択して用いることができる。
有機EL素子の陽極及び陰極は、それぞれ導電性の材料からなる。陽極の材料としては、例えば、Al、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)、酸化スズ等が選択される。陰極の材料としては、例えば、ITO、IZO及び酸化スズ等を選択することができる。また、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)及びこれらの1種又は2種以上を含む合金等を選択することも可能である。
なお、陽極と有機発光層との間に、正孔注入層及び/又は正孔輸送層が配置されていてもよい。陽極と有機発光層との間に、正孔注入層及び正孔輸送層が配置される場合、陽極上に正孔注入層が配置され、正孔注入層上に正孔輸送層が配置され、そして正孔輸送層上に有機発光層が配置される。また、陽極から有機発光層へ効率的に正孔を輸送できる限り、正孔注入層及び正孔輸送層は省略されてもよい。また、陰極と有機発光層との間に、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(LiO)、酸化バリウム(BaO)等からなる電子注入層が配置されていてもよい。
有機EL素子は、有機発光層が封止層により封止されている。封止用基材としては、上述した基材が挙げられる。
以上の有機EL装置は、封止層により有機EL素子が封止されていることで、素子内に水分が浸入することを抑制できる。このため、有機EL装置は、水分に起因する不都合、具体的にはダークスポットの発生や、輝度及び発光効率等の発光特性の低下を抑制することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の記載において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
1.有機EL素子用封止剤の調製
(実施例1)有機EL素子用封止剤の配合例
(A)成分の多分枝ポリマーとして(A-1)ハイパーブランチ型アクリレート(アルケマ社製「CN-2302」)を20質量部、(B)成分として(B-1)4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(TBCHA)(KJケミカルズ(株)製)を77質量部、(C)成分のラジカル重合開始剤として(C-1)オキシムエステル系ラジカル重合開始剤(TRONLY社製「TR-PBG345」を3質量部、(D)成分の界面活性剤としてシリコーン系界面活性剤(信越化学工業(株)製「KP-323」)を0.5質量部混合し、ホモディスパー型撹拌混合機(プライミクス社製、「ホモディスパーL型」)を用い、撹拌速度3000rpmで均一に撹拌混合して、有機EL素子用封止剤を作製した。
(実施例2から実施例12、比較例1から比較例4)
実施例2から実施例12、比較例1から比較例4の有機EL素子用封止剤について、配合組成を表1、2に記載のとおり変更した以外は実施例1と同様にした配合した。なお、表1、2中、「-」は添加しなかったことを示す。
以下に、実施例及び比較例における有機EL素子用封止剤の調製で用いた各成分を示す。
(A)成分 多分枝ポリマー
A-1 :ハイパーブランチ型アクリレート(アルケマ社製「CN-2302」)
A-2 :ハイパーブランチ型アクリレート(アルケマ社製「CN-2303」)
A-3 :ハイパーブランチ型アクリレート(アルケマ社製「CN-2304」)
(B)成分 式(1)で示される化合物
B-1 :4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(TBCHA) (KJケミカルズ(株)製)
Figure 2022103143000004
B-2 :シクロヘキシルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
Figure 2022103143000005
B-3 :シクロヘキシルメタアクリレート(三菱瓦斯化学(株)製)
Figure 2022103143000006
B-4 :3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
Figure 2022103143000007
(C)成分 ラジカル重合開始剤
C-1 :オキシムエステル系ラジカル重合開始剤(TRONLY社製「TR-PBG345」
C-2 :オキシムエステル系ラジカル重合開始剤(IRGACURE(登録商標)OXE02)
C-3 :アシルホスフィンオキサイド系ラジカル重合開始剤(BASF社製「LucirinTPO」)
(D)成分 界面活性剤
D-1 :シリコーン系界面活性剤(信越化学工業(株)製「KP-323」)
比較例で用いた多官能アクリレート化合物
c1 :ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセル・オルネクス社製「DPHA」)
c2 :ネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬(株)社製「KAYARADNPGDA」)
Figure 2022103143000008
Figure 2022103143000009
2.評価
実施例1から実施例12、比較例1から比較例4の有機EL素子用封止剤について、以下に示す評価を実施した。
<インクジェット塗布性及び粘度の評価>
(1)粘度の測定
JIS K2283に準拠して、E型粘度計(東機産業社製「TVE22L」)を用いて、実施例及び比較例で得られた有機EL素子用封止剤(硬化性組成物液)の25℃、100rpmでの粘度を測定した。比較例2は粘度が高すぎ、インクジェット塗布ができなかった。そのため、評価用基板を作製できなかった。
(2)インクジェット塗布
低酸素、低水分に窒素フローしたグローブボックス内にて、紫外線照射装置付きピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから、有機EL素子用封止剤の吐出を行い、下記の判断基準で評価した。
○:有機EL素子用封止剤をヘッドから吐出可能であり、目視において全てのノズルからインクジェット吐出可能であった。
△:有機EL素子用封止剤をヘッドから吐出可能であるが、目視において一部のノズルからインクジェット吐出ができなかった。
×:有機EL素子用封止剤をヘッドから吐出の初期段階で吐出不可能であった。
<硬化性の評価>
低酸素、低水分に窒素フローした、グローブボックス内にて有機EL素子用封止剤をガラス基板上に塗布することで塗膜を形成し、波長395nmのUV-LEDで照度1000mW/cm、積算光量1000mJ/cmで光照射を行い、硬化性を評価した。
○:光照射で硬化かつタック無し
×:光照射で未硬化、又は硬化したがタック有り
<密着性の評価>
低酸素、低水分に窒素フローした、グローブボックス内にてガラス基板上にSiNxを膜厚100nmで成膜した評価基板に対して、50μm×50μmピッチで、ピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから、有機EL素子用封止剤のインクジェット吐出を行い、10cm角の塗布膜を作製した。さらに5分後に、波長395nmのUV-LEDで照度1000mW/cm、積算光量1000mJ/cmで光照射を行い、塗布膜を硬化させた。その際、硬化膜の膜厚が8μmとなる様にインクジェットヘッドに印加する電圧を変化させ、吐出されるインクドット1滴の量を調整した。得られた硬化膜に対して以下の基準でクロスカット評価を行った。
(1)試験面にカッターナイフを用いて、素地に達する11本の切り傷をつけ100個の碁盤目を作る。カッターガイドを使用切り傷の間隔は2mmにした。
(2)碁盤目部分にセロハンテープを強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、碁盤目の状態を標準図と比較して評価した。
○ :目視にて100/100が試験面に残る。
△ :目視にて99/100~1/100が試験面に残る。
× :目視にて0/100と試験面が残らない。
なお、基準における「Q/100」の表記は、100個の基盤目のうちQ個が試験面に残ったことを表す。
<密着力の評価>
密着性評価と同じ手法にてガラス基板上にSiNxを膜厚100nmで成膜した評価基板に対して以下の手順で密着力を測定し、以下の基準で密着力を評価した。
(1)取っ手となるPETフィルムを硬化膜の右端の外に配置する。
(2)硬化膜の右端から5mmの箇所に切り込みを入れる。
(3)24mm幅のセロハンテープを硬化膜と取っ手フィルムに貼りつける。
(4)カッターにて硬化膜ごとセロハンテープの幅を20mmにカットする。
(5)基板を固定し、引張試験機にて180°にフィルムを引っ張って密着力を測定する。
180°ピール強度が3.0N/15mm以上あれば、密着力が良好と判断できる。
<表面張力の評価>
有機EL素子用封止剤の表面張力値を、協和界面科学株式会社製表面張力計DY-700を用いてWilhelmy法にて測定した。表面張力が25mN/m以下であれば、濡れ性が良好と判断できる。
<封止膜の硬化収縮率の評価>
封止膜の硬化収縮率をJIS K7112に準拠して密度法にて測定した。硬化前の有機EL素子用封止剤の液密度ρをアントンパール社製振動式液密度計DMA4500Mにより測定した。有機EL素子用封止剤の硬化後の固体密度(ρ)を水中置換法により下記式から算出した。測定温度(23℃)における水の密度は表3から求めた。W:水中の試料の質量、W:空気中の試料の質量、ρ:測定温度における水の密度を示す。
Figure 2022103143000010
次いで、上記式より求めた固体密度(ρ)を用いて、下記式より硬化収縮率を算出した。
硬化収縮率=(ρ-ρ)/ρ×100
硬化収縮率が10%以下の場合、硬化収縮が小さく良好であると判断できる。
Figure 2022103143000011
<アウトガス量の評価>
低酸素、低水分に窒素フローした、グローブボックス内にて、シリコン基板上に50μm×50μmピッチで、ピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから、有機EL素子用封止剤のインクジェット吐出を行い、10cm角の塗布膜を作製した。さらに5分後に、波長395nmのUV-LEDで照度1000mW/cm、積算光量1000mJ/cmで塗布膜に照射し硬化させた。その際、硬化膜の膜厚が8μmとなる様にインクジェットヘッドに印加する電圧を変化させ、吐出されるインクドット1滴の量を調整した。硬化膜が形成された基板を1cm×5cm角に切り出し、アウトガス測定基板を作製した。
得られた測定基板を日本分析工業製 加熱脱着装置+島津製作所製 ガスクロマトグラフ質量分析計にセットし、発生するガス量を測定した。ガス量は検量用オクタデカンにより定量し、アウトガス量として測定した。以下に示す評価基準でアウトガス量を評価した。アウトガス量が1%以下の場合に良好とした。
○ :アウトガス量が1%以下
× :アウトガス量が1%よりも多い
<全光線透過率の評価>
低酸素、低水分に窒素フローしたグローブボックス内にて、ガラス基板上に50μm×50μmピッチで、ピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから、有機EL素子用封止剤のインクジェット吐出を行い、10cm角の塗布膜を作製した。さらに5分後に、波長395nmのUV-LEDで照度1000mW/cm、積算光量1000mJ/cmで照射し、塗布膜を硬化させた。その際、硬化膜の膜厚が8μmとなる様にインクジェットヘッドに印加する電圧を変化させ、吐出されるインクドット1滴の量を調整した。
得られた硬化膜に対して垂直に、波長380~780nmにおける全光線透過率(%)の平均値を、カラーヘーズメーター(スガ試験機(株)製)を用いて、JIS K7105に準拠して光線透過率を測定した。以下の評価基準で評価し、光線透過率が95%以上の場合に良好とした。
○ :光線透過率が95%以上
× :光線透過率が95%未満
<有機EL素子の作製>
アレイ状にITO透明電極が形成されたガラス基材(日本電気硝子社製「OA-10」)と、前記ITO透明電極の一部のみが露出したコンタクトホールを有する、膜厚3μmの平坦化層とを有するアレイ基材を複数用意した。
Alターゲットを用いてDCスパッタ法により、平坦化層上に膜厚100nmのAl膜を形成した。ITOターゲットを用いてDCマグネトロンリアクティブスパッタリング法により、Al膜上に膜厚20nmのITO膜を形成した。この様にしてAl膜とITO膜とからなる陽極層を形成した基材を用いた。
感光材料(JSR製「オプトマーNN803」)を用いて陽極層上に塗膜を形成し、i線(波長365nm)照射、現像、流水洗浄、風乾及び加熱処理を含む一連の処理を行い、陽極層の一部を開口領域として持つ画素規定層を形成した。
陽極及び画素規定層が形成された基材を真空成膜室へ移動し、成膜室を1E-4Paまで排気した後、上記基材上に、所定のパターンの蒸着マスクを用いて、正孔注入性を有する酸化モリブデン(MoOx)を抵抗加熱蒸着法により成膜速度0.004~0.005nm/secの条件で成膜し、膜厚1nmの正孔注入層を形成した。
正孔注入層上に、所定のパターンの蒸着マスクを用いて、正孔輸送性を有する4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(α-NPD)を抵抗加熱蒸着法により正孔注入層と同様の排気条件で成膜し、膜厚35nmの正孔輸送層を形成した。成膜速度は、0.2~0.3nm/secの条件であった。
正孔輸送層上に、所定のパターンの蒸着マスクを用いて、緑色の発光材料としてアルキレート錯体であるトリス(8-キノリノラト)アルミニウムを抵抗加熱蒸着法により正孔輸送層と同様の成膜条件で成膜し、膜厚35nmの発光層を形成した。成膜速度は、0.5nm/sec以下の条件であった。
発光層上に、フッ化リチウムを抵抗加熱蒸着法により正孔注入層と同様の排気条件で成膜し、膜厚0.8nmの電子注入層を形成した。成膜速度は、0.004nm/sec以下の条件であった。
続いて、電子注入層上に、マグネシウム及びAgを抵抗加熱蒸着法により正孔注入層と同様の排気条件で同時に成膜し、膜厚5nmの第1陰極層を形成した。成膜速度は、0.5nm/sec以下の条件であった。
続いて、別の成膜室(スパッタ室)に上記基材を移送し、第1陰極層上に、ITOターゲットを用いてRFスパッタリング法により、膜厚100nmの第2陰極層を形成した。以上のようにして、評価用有機EL素子を得た。
<有機EL素子の薄膜封止>
得られた評価用有機EL素子に対して、以下の手順にて薄膜封止層を形成した。成膜室(スパッタ室)に評価用有機EL素子を移送し、陰極層上に、SiNxターゲットを用いてRFスパッタリング法により、膜厚100nmの無機封止層(SiNx膜)を形成した。続いて、評価用有機EL素子をN置換されたグローブボックス中に移送し、ピエゾ方式インクジェットプリンタによって、実施例1から実施例12、比較例2、比較例4、比較例5に記載の有機EL素子用封止剤を用いて、所定のパターンに吐出した。続いて、窒素気流下で、波長395nmのUV-LEDで照度1000mW/cm、積算光量1500mJ/cmで照射し、塗布膜を硬化し、膜厚約8μmの封止膜を形成した。
上記で得られた封止膜が形成された基板を、成膜室(スパッタ室)に移送し、封止膜上に、SiNxターゲットを用いてRFスパッタリング法により、膜厚100nmの無機封止層(SiNx膜)を形成した。以上のようにして、薄膜封止構造を有する有機EL素子を得た。
<有機EL素子の信頼性>
上記で得られたそれぞれの有機EL素子について、85℃85%湿熱条件下で100h保管した後、順方向電流を10mA/cmで通電し、発光外観(ダークスポット)を観察した。下記基準に基づき、有機EL素子の信頼性を評価した。
○ :ダークスポットが観察されない。
× :ダークスポットが1箇所以上観察される。
実施例1から実施例12及び比較例1から比較例4の各評価結果を表4、5に示す。
Figure 2022103143000012
Figure 2022103143000013
表4、5の結果から、多分枝ポリマー(A)を含む実施例1から実施例12の有機EL素子用封止剤は、インクジェット塗布性が良好で、硬化収縮が小さく密着性に優れ、アウトガスの発生が少ない封止膜が得られることが分かった。このような封止膜を有する有機EL素子は信頼性も高いことが分かった。一方、多分枝ポリマー(A)を含まず、多官能アクリレート化合物(c1)、(c2)を含む比較例3、4の有機EL素子用封止剤により形成された封止膜は、硬化収縮が大きく密着性に劣り、アウトガス発生も多くなることが示された。また、多分枝ポリマー(A)及び多官能アクリレート化合物(c1)、(c2)のいずれも含まない比較例1の有機EL素子用封止剤は、アウトガス量が多く、有機EL素子の信頼性も低いことが示された。

Claims (14)

  1. 1分子中に2個以上の重合性二重結合を有する多分枝ポリマー(A)を含む、有機EL素子用封止剤。
  2. (A)1分子中に2個以上の重合性二重結合を有する多分枝ポリマー、
    (B)式(1)で示される化合物、及び、
    (C)ラジカル重合開始剤
    を含む、請求項1に記載の有機EL素子用封止剤。
    Figure 2022103143000014
    (式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。Yは単結合、*-COO-、*-CONH-、*-CH-O-又は-O-を示す。Xは炭素数5から20の1価の炭化水素基を示す。)
  3. 有機EL素子用封止剤の総量に対し、多分枝ポリマー(A)を5~30質量%、化合物(B)を70~90質量%、ラジカル重合開始剤(C)を0.1~10質量%含有する、請求項2に記載の有機EL素子用封止剤。
  4. 化合物(B)の式(1)中のXが、脂環式構造を有する炭化水素基である、請求項2又は請求項3に記載の有機EL素子用封止剤。
  5. 化合物(B)が、式(1-a)で示される化合物、式(1-b)で示される化合物、及び式(1-c)で示される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の有機EL素子用封止剤。
    Figure 2022103143000015
    (式(1-a)、(1-b)、(1-c)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1から12のアルキル基を示す。)
  6. 有機溶剤(ただし、化合物(B)を除く。)の含有量が、3質量%以下である、請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の有機EL素子用封止剤。
  7. E型粘度計によって25℃、100rpmの条件で測定される粘度が2~40mPa・sである、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機EL素子用封止剤。
  8. 多分枝ポリマー(A)が、ハイパーブランチ型(メタ)アクリレートポリマーである、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の有機EL素子用封止剤。
  9. 前記ハイパーブランチ型(メタ)アクリレートポリマーが、1分子中に6個以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリマーである、請求項8に記載の有機EL素子用封止剤。
  10. インクジェット塗布用の組成物である、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の有機EL素子用封止剤。
  11. (A)ハイパーブランチ型(メタ)アクリレートポリマー、
    (B)4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート及び3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物、及び、
    (C)オキシムエステル系ラジカル重合開始剤及びアシルホスフィンオキサイド系ラジカル重合開始剤の少なくとも一方のラジカル重合開始剤
    を含む、有機EL素子用封止剤。
  12. 請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の有機EL素子用封止剤により形成された封止膜。
  13. 請求項12の封止膜を有する有機EL素子。
  14. 発光層が形成された基材の形成面に、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の有機EL素子用封止剤を塗布して硬化することにより前記発光層を封止する工程を含む、有機EL素子の製造方法。
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