JP2022102730A - ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子およびポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体 - Google Patents

ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子およびポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】低い成形圧力で内部融着性に優れたP3HA系発泡成形体を提供し得る、P3HA系発泡粒子および発泡成形体を提供する。【解決手段】ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)およびペンタエリスリトールを含み、ペンタエリスリトールの含有量は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子100重量%に対して0.01重量%~4.50重量%である、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。【選択図】なし

Description

本発明はポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子およびポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体に関する。
石油由来プラスチックは毎年大量に廃棄されており、これらの大量廃棄物による埋立て処分場の不足および環境汚染が深刻な問題として取り上げられている。また近年、マイクロプラスチックが、海洋環境において大きな問題になっている。このため、(a)海、土等の環境中、並びに(b)埋立て処分場およびコンポスト中で、微生物の作用によって分解される生分解性プラスチックが注目されている。生分解性プラスチックは、(a)環境中で利用される農林水産業用資材、並びに(b)使用後の回収および再利用が困難な食品容器、包装材料、衛生用品、ゴミ袋等、への幅広い応用を目指して、開発が進められている。更に生分解性プラスチックから成る発泡体は、包装用緩衝材、農産箱、魚箱、自動車部材、建築材料、土木材料等での使用が期待されている。
前記生分解性プラスチックの中でも、優れた生分解性およびカーボンニュートラルの観点から、植物原料由来のプラスチックとしてポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(以下、「P3HA」と称する場合がある)が注目されている。
上述の生分解性プラスチックを成形体用途に展開することが検討されている。例えば、特許文献1には、生分解性を有するP3HAを用いて得られる発泡粒子、および、該発泡粒子を型内発泡成形して発泡成形体を得る技術が開示されている。また、特許文献2には、P3HAを含み、かつ結晶核剤としてペンタエリスリトールを含む成形体を射出成形によって得る技術が開示されている。
国際公開第2019/146555号 国際公開第2014/020838号
しかしながら、上述のような従来技術は、P3HA系発泡粒子を成形する際の成形圧力、およびP3HA系発泡成形体の内部融着性の観点から、改善の余地がある。
以上のような状況に鑑み、本発明の一実施形態の目的は、低い成形圧力で内部融着性に優れたP3HA系発泡成形体を提供し得る、P3HA系発泡粒子およびP3HA系発泡成形体を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子であって、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)およびペンタエリスリトールを含み、前記ペンタエリスリトールの含有量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子100重量%に対して0.01重量%~4.50重量%である、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
〔2〕DSC比が0.5%~40.0%であるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子であり、ここで、前記DSC比は、以下式(1)で算出され、
DSC比(%)=(高温側融解熱量/全融解熱量)×100・・・(1)、
前記式(1)中、前記高温側融解熱量および前記全融解熱量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子のDSC曲線から得られる熱量である、〔1〕に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
〔3〕ゲル分率が50重量%~80重量%である、〔1〕または〔2〕に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
〔4〕前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子が、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子100重量%に対して、さらに脂肪酸アミド0.01重量%~1.50重量%を含む、〔1〕~〔3〕の何れか1つに記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
〔5〕〔1〕~〔4〕の何れか1つに記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を成形してなる、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体。
〔6〕ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)100重量部と、ペンタエリスリトール0.01重量部~20.00重量部とを含むポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子を発泡させる発泡工程を含み、前記発泡工程は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子を水系分散媒中に分散させる分散工程を含む、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
〔7〕〔1〕~〔4〕の何れか1つに記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を、金型が備える少なくとも2つの型から形成される成形空間内に充填する充填工程、および充填された前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を加熱して、当該ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子同士を融着させる融着工程、を含むポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体の製造方法。
本発明の一実施形態によれば、低い成形圧力で内部融着性に優れたP3HA系発泡成形体を提供し得る、P3HA系発泡粒子およびP3HA系発泡成形体を提供できるという効果を奏する。
P3HA系樹脂粒子のDSC曲線およびそれから測定される融点等を示す図である。 P3HA系発泡粒子のDSC曲線およびそれから測定される高温側の融解熱量等を示す図である。 図3は、本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡成形体100を一方向から見た斜視図である。 図4は、図3のA-A線矢視断面図である。
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
〔1.本発明の技術的思想〕
ペンタエリスリトールはP3HAに対する結晶核剤として作用することが知られている。ペンタエリスリトールは、結晶化効果によって成形体の寸法安定性を向上し得ることから、特許文献2に記載のように、射出成形用のP3HA系樹脂組成物に使用されている。一方で、ペンタエリスリトールは、P3HA系発泡粒子の成形時に、結晶化効果によって当該P3HA系発泡粒子同士の内部融着を阻害する虞がある。それ故、ペンタエリスリトールは、P3HA系発泡成形体の実製品には使用されていなかった。
内部融着性に劣るP3HA系発泡成形体は、耐衝撃性が低く、製造時に不慮の破損が起きやすいなど、生産性に劣るものである。特に、寸法が異なる部位を有するP3HA系発泡成形体を製造するとき、内部融着性に劣ることに起因する耐衝撃性の低さが大きな問題となる場合がある。その結果、内部融着性に劣るP3HA系発泡成形体は、市場流通時に破損しやすいといった問題も有する。
P3HA系発泡成形体の内部融着性を改善する方法として、P3HA系発泡粒子の成形時の成形圧力を高くする方法が知られている。しかしながら、成形圧力を高くすると、経済的な負担も増加する。それ故、低い成形圧力で内部融着性に優れるP3HA系発泡成形体を提供し得るP3HA系発泡粒子が希望されていた。
以上のような状況に鑑み、低い成形圧力で内部融着性に優れたP3HA系発泡成形体を提供し得る、P3HA系発泡粒子を提供することを目的として、本発明者らは、鋭意検討を行った。
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の知見を独自に見出し、本発明を完成するに至った:特定量のペンタエリスリトールを含むP3HA系発泡粒子が、驚くべきことに、低い成形圧力で内部融着性に優れるP3HA系発泡成形体を提供できること。
〔2.ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子〕
本発明の一実施形に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子であって、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)およびペンタエリスリトールを含み、前記ペンタエリスリトールの含有量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子100重量%に対して0.01重量%~4.50重量%である。
本明細書において、「ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)系発泡粒子」を「発泡粒子」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)系発泡粒子」を「本発泡粒子」と称する場合があり、「ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)系発泡成形体」を「発泡成形体」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)系発泡成形体」を「本発泡成形体」と称する場合がある。
本明細書において、X単量体に由来する繰り返し単位を「X単位」と称する場合がある。繰り返し単位は、構成単位ともいえる。
本発泡粒子は、上述の構成を有するため、低い成形圧力で内部融着性に優れた発泡成形体を提供できるという利点を有する。発泡成形体は、発泡粒子を公知の方法により成形することにより製造できる。
本発泡粒子は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂組成物からなるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子である。本明細書において、「ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)系樹脂組成物」を「樹脂組成物」と称する場合があり、「ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)系樹脂粒子」を「樹脂粒子」と称する場合がある。
(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート))
本発明の一実施形態に係るP3HAは、3-ヒドロキシアルカノエート単位を必須の構成単位(モノマー単位)として有する重合体である。本明細書において、「3-ヒドロキシアルカノエート」を「3HA」と称する場合もある。P3HAとしては、具体的には、下記一般式(2)で示される繰り返し単位を含む重合体が好ましい:
[-CHR-CH-CO-O-]・・・(2)。
一般式(2)中、RはC2n+1で表されるアルキル基を示し、nは1~15の整数を示す。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。nとしては、1~10が好ましく、1~8がより好ましい。
P3HAとしては、特に微生物から産生されるP3HAが好ましい。微生物から産生されるP3HAは、3HA単位が、全て(R)-3HAであるポリ[(R)-3HA]である。
P3HAは、3HA単位(特に一般式(2)の繰り返し単位)を、P3HAの全繰り返し単位100モル%中、50モル%以上含むことが好ましく、70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上含むことがさらに好ましい。また、繰り返し単位(モノマー単位)としては、3HA単位のみであってもよいし、3HA単位に加えて、3HA以外の単量体に由来する繰り返し単位(例えば、4-ヒドロキシアルカノエート単位等)を含んでいてもよい。
3HA単位の具体例としては、3-ヒドロキシブチレート単位、3-ヒドロキシバレレート単位および3-ヒドロキシヘキサノエート単位などが挙げられる。3-ヒドロキシブチレートは、融点および引張強度がプロピレンに近い。それ故、本発明の一実施形態に係るP3HAは、3-ヒドロキシブチレート単位を含むことが好ましい。本明細書において、「3-ヒドロキシブチレート」を「3HB」と称する場合もある。
P3HAは、3HB単位(モノマー単位)を、P3HAの全繰り返し単位100モル%中、80モル%以上含むことが好ましく、85モル%以上含むことがより好ましい。P3HAとしては、特に、3HB単位を含み、かつ3HBが全て(R)-3HBである重合体(微生物によって産生された重合体)が好ましい。
P3HAが2種以上の繰り返し単位を含む場合、含有量が最も多い繰り返し単位以外の繰り返し単位の由来となるモノマーをコモノマーと称する。本明細書において、「コモノマーに由来する繰り返し単位」を「コモノマー単位」と称する場合もある。
コモノマーとしては、特に限定されないが、3-ヒドロキシヘキサノエート(以下、3HHと称する場合がある)または4-ヒドロキシブチレート(以下、4HBと称する場合がある)などが好ましい。
P3HAの具体例としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(以下、「P3HB3HV」と称する場合がある。)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(以下、「P3HB3HH」と称する場合がある。)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシノナノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシウンデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(以下、「P3HB4HB」と称する場合がある。)等が挙げられる。特に、加工性および発泡成形体の物性等の観点から、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)またはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましい。本発明の一実施形態において、上述したP3HAとしては、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
P3HAは、3HB単位を必須の繰り返し単位(構成単位)として有し、かつコモノマー単位を有することが好ましい。すなわち、P3HAは、3HB単位とコモノマー単位とを有する共重合体であることが好ましい。P3HAが3HB単位とコモノマー単位とを有する場合について説明する。この場合、P3HAにおける全繰り返し単位100モル%中の3HB単位とコモノマー単位との比率(3HB単位/コモノマー単位)としては、99/1(モル%/モル%)~80/20(モル%/モル%)が好ましく、97/3(モル%/モル%)~80/20(モル%/モル%)がより好ましく、95/5(モル%/モル%)~85/15(モル%/モル%)がさらに好ましい。P3HAの全繰り返し単位100モル%に対するコモノマー単位の比率が1モル%以上であれば、P3HAの溶融混練可能な温度域と熱分解温度域とが十分に離れているため、得られる発泡粒子が加工性に優れるという利点を有する。一方、P3HAの全繰り返し単位100モル%に対するコモノマー単位の比率が20モル%以下であれば、溶融混練時のP3HA系組成物の結晶化が早く、生産性が高い。このような各モノマー単位の比率を有するP3HAは、当業者に公知の方法、例えば国際公開WO2009/145164号に記載の方法に準拠して作製することができる。
なお、P3HA中の各モノマー単位の比率は、当業者に公知の方法、例えば国際公開2013/147139号に記載の方法により求めることができる。
P3HAの融点は、特に限定されないが、110.0℃~165.0℃が好ましく、120.0℃~155.0℃がより好ましい。P3HAの融点が110.0℃以上であれば、得られる発泡成形体の加熱寸法変化の虞がなく、一方、P3HAの融点が165.0℃以下であれば、発泡工程中に加水分解が起こる虞がない。
ここで、P3HAの融点は、示差走査熱量計法(以降、「DSC法」と称する)により測定したものである。具体的な操作手順は以下の通りである:(1)P3HA5mg~6mgを量り取る;(2)P3HAの温度を10.0℃/分の昇温速度で10.0℃から190.0℃まで昇温して、P3HAを融解する;(3)前記(2)の過程で得られるP3HAのDSC曲線の、最も高温の融解ピークの温度をP3HAの融点として求めることができる。
P3HAの重量平均分子量は、特に限定されないが、20万~200万が好ましく、25万~150万がより好ましく、30万~100万がさらに好ましい。P3HAの重量平均分子量が20万以上であれば、得られる発泡粒子の独立気泡率が低くなる虞がない。一方、重量平均分子量が200万以下であれば、P3HA系組成物を溶融混練する時の機械への負荷が低くなり、生産性が良好となる。なお、P3HAの重量平均分子量は、クロロホルム溶液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製作所社製HPLC GPC system)を用い、ポリスチレン換算分子量分布より測定することができる。当該ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるカラムとしては、重量平均分子量を測定するのに適切な公知のカラムを使用すればよい。
本発明の一実施形態において、P3HAの製造方法は特に限定されず、化学合成による製造方法であってもよいし、微生物による製造方法であってもよい。中でも、微生物による製造方法が好ましい。P3HAの微生物による製造方法については、公知の方法を適用できる。
3HBと、その他のヒドロキシアルカノエートとのコポリマー生産菌として、具体的には、P3HB3HVおよびP3HB3HH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が挙げられる。特に、P3HB3HHに関し、P3HA合成酵素群の遺伝子を導入することでP3HB3HHの生産性を向上させたアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821-4830(1997))等がより好ましい。P3HAの製造方法では、アルカリゲネス・ユートロファス AC32株等の微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HB3HHを蓄積させた微生物菌体が好適に用いられる。またコポリマー生産菌に関して、前記以外にも、生産したいP3HAに合わせて、各種P3HA合成関連遺伝子を導入した遺伝子組み換え微生物を用いても良い。また、微生物(菌)の培養条件についても、生産したいP3HAに合わせて、基質の種類を含む様々な培養条件の最適化をすればよい。
本発明の一実施形態において、P3HAを生産する微生物を培養する方法は特に限定されず、例えば、国際公開第WO2019/142717号に記載の方法を使用することができる。
本発泡粒子におけるP3HAの含有量は、特に限定されないが、得られる発泡粒子および発泡成形体が生分解性に優れることから、発泡粒子100重量%に対して、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。
本発泡粒子は、更に、P3HA以外の樹脂成分(「その他の樹脂成分」と称する場合がある)を含んでいてもよい。その他の樹脂成分としては、例えば、(a)ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル、または(b)脂肪族芳香族ポリエステル等が挙げられる。P3HAと共に、これらその他の樹脂成分の1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発泡粒子のその他の樹脂成分の含有量は特に限定されないが、例えば、P3HA100重量部に対して、10重量部~400重量部が好ましく、50重量部~150重量部がより好ましい。
(ペンタエリスリトール)
本発泡粒子は、ペンタエリスリトールを含む。本発泡粒子におけるペンタエリスリトールの含有量は、発泡粒子100重量%に対して、0.01重量%~4.50重量%であり、0.05重量%~4.00重量%であることが好ましく、0.10重量%~2.50重量%であることがより好ましく、0.15重量%~1.50重量%であることがさらに好ましい。発泡粒子のペンタエリスリトールの含有量が発泡粒子100重量%に対して0.01重量%~4.50重量%である場合、低い成形圧力で、内部融着性に優れた発泡成形体を提供することができる。また、特に、発泡粒子のペンタエリスリトールの含有量が発泡粒子100重量%に対して0.01重量%以上である場合、ペンタエリスリトールが所望の効果を発揮できる。発泡粒子のペンタエリスリトールの含有量が発泡粒子100重量%に対して4.50重量%以下である場合、ペンタエリスリトールが発泡粒子の表面に多量に染み出てくる(ブリードしてくる)虞がない。そのため、得られる発泡粒子がべたつくこともなく、ハンドリング性が良好となる。その結果、発泡粒子を使用して発泡成形体を型内発泡成形する際、発泡粒子の金型への充填性が良好となる利点を有する。発泡粒子のペンタエリスリトールの含有量が発泡粒子100重量%に対して4.50重量%以下である場合、発泡粒子を使用して発泡成形体を成形する場合、成形時の発泡粒子同士の融着も良好となり、内部融着性に優れる発泡成形体を得ることができる。
ペンタエリスリトールとは、下記一般式(3)で示される化合物である。
Figure 2022102730000001
ペンタエリスリトールは多価アルコール類の一種であり、融点260.5℃の白色結晶の有機化合物である。ペンタエリスリトールは糖アルコールに分類されるが、天然物由来ではない。ペンタエリスリトールは、アセトアルデヒドとホルムアルデヒドとを塩基性環境下で縮合して合成することができる。
本発明で用いられるペンタエリスリトールとしては市販品を用いることもできる。ペンタエリスリトールの市販品としては、パーストープ社品、三菱ケミカル株式会社品、富士フィルム和光純薬工業株式会社品、シグマ・アルドリッチ社品、東京化成工業株式会社品、メルク社品、広栄化学工業株式会社品(商品名:ペンタリット)および東洋ケミカルズ株式会社品などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
ペンタエリスリトールの市販品の中には不純物として、ペンタエリスリトールが脱水縮合することで生成されるジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールなどのオリゴマーが含まれているものがある。当該オリゴマーはP3HAの結晶化効果を有しないが、ペンタエリスリトールの機能を阻害もしない。従って、本発明の一実施形態で使用するペンタエリスリトールには、前記オリゴマーが含まれていても構わない。
(脂肪酸アミド)
本発泡粒子は、脂肪酸アミドを含むことが好ましい。本発泡粒子が脂肪酸アミドを含む場合、当該発泡粒子は、ペンタエリスリトールの添加効果を阻害することなく、低い成形圧力で、内部融着性により優れた発泡成形体を提供することができる。
脂肪酸アミドとしては、例えば、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、ウリン酸アミド、椰子酸アミド、ステアリン酸アミド、バルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド、ブラシジン酸アミド、アセトアミド、ベンズアミド、プロピオン酸アミド、オレイン酸アミド、リシノール酸アミドおよびその誘導体が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールとの併用効果の観点から、ベヘン酸アミドおよび/またはエルカ酸アミドが好ましい。これら脂肪酸アミドの1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の脂肪酸アミドを混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
本発泡粒子は、発泡粒子100重量%に対して、脂肪酸アミドを0.01重量%~1.50重量%含むことが好ましく、0.02重量%~1.50重量%含むことがより好ましく、0.02重量%~1.00重量%含むことがより好ましく、0.50重量%~1.00重量%含むことがさらに好ましい。本発泡粒子がP3HA系発泡粒子100重量%に対して脂肪酸アミドを、(a)0.01重量%以上含む場合、当該発泡粒子は内部融着性にさらに優れた発泡成形体を提供することができるという利点を有し、(b)1.50重量部以下含む場合、ペンタエリスリトールの効果を阻害する虞がないという利点を有する。
(添加剤)
本発泡粒子は、P3HAを含む樹脂成分に加え、ペンタエリスリトールおよび脂肪酸アミド以外の添加剤(その他の添加剤)をさらに含んでもよい。その他の添加剤としては、例えば、ポリアルキレングリコール、結晶核剤、気泡調整剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、導電剤、断熱剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、無機充填剤、有機充填剤、加水分解抑制剤等を目的に応じて使用できる。その他の添加剤としては、特に生分解性を有する添加剤が好ましい。なお、「結晶核剤」は、「結晶化核剤」と称する場合がある。
本発泡粒子は、ポリアルキレングリコールを含むことが好ましい。本発泡粒子がポリアルキレングリコールを含む場合、当該発泡粒子は、ペンタエリスリトールの添加効果を阻害することなく、低い成形圧力で、内部融着性により優れた発泡成形体を提供することができる。
ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、およびそれらの共重合体等が挙げられる。中でも、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体(PEG-PPG共重合体)がペンタエリスリトールとの併用効果の観点から好ましい。
ポリアルキレングリコールとしては市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、日油株式会社製プロノン#204、#208等、日油株式会社製ユニルーブ70DP-600B、ユニルーブ70DP-950B等、花王株式会社製エマルゲンPP-290、日油株式会社製PEG#300、#600、#1000、#2000、#6000等、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社社製PEG#400、#1000、#1540等が挙げられる。
本発泡粒子は、発泡粒子100重量%に対して、ポリアルキレングリコールを0.01重量%~1.50重量%含むことが好ましく、0.02重量%~1.50重量%含むことがより好ましく、0.02重量%~1.00重量%含むことがより好ましく、0.50重量%~1.00重量%含むことがさらに好ましい。本発泡粒子がP3HA系発泡粒子100重量%に対してポリアルキレングリコールを、(a)0.01重量%以上含む場合、当該発泡粒子は、低い成形圧力で、内部融着性にさらに優れた発泡成形体を提供することができるという利点を有し、(b)1.50重量%以下含む場合、ペンタエリスリトールの効果を阻害するという虞がないという利点を有する。
結晶核剤としては、例えば、オロチン酸、アスパルテーム、シアヌル酸、グリシン、フェニルホスホン酸亜鉛、窒化ホウ素等が挙げられる。これら結晶核剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の結晶核剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。但し、ここで例示した結晶核剤は発泡粒子の融着性を阻害する場合がある。
したがって、本発泡粒子における結晶核剤の含有量は、発泡粒子100重量部に対して、5.0重量%以下が好ましく、3.0重量%以下がより好ましく、1.5重量%以下がさらに好ましい。本発泡粒子は、その他の添加剤としての結晶核剤を含まないことが最も好ましい。
気泡調整剤としては、例えば、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪藻土、クレイ、重曹、アルミナ、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、ベントナイト等が挙げられる。これら気泡調整剤の中でも、P3HAへの分散性に特に優れている点で、タルクが好ましい。また、これら気泡調整剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の気泡調整剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
本発泡粒子における気泡調整剤の含有量は、特に限定されないが、発泡粒子100重量%に対して、0.01重量%~1.00重量%が好ましく、0.03重量%~0.50重量%がより好ましく、0.05重量%~0.30重量%がさらに好ましい。
可塑剤としては、例えば、グリセリンジアセトモノラウレート等のグリセリンエステル系化合物、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル系化合物、セバシン酸ジブチル等のセバシン酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、安息香酸エステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、イソソルバイドエステル系化合物、ポリカプロラクトン系化合物、ベンジルメチルジエチレングリコールアジペート等の二塩基酸エステル系化合物等が挙げられる。これらの中でも、P3HAへの可塑化効果が特に優れている点で、グリセリンエステル系化合物、クエン酸エステル系化合物、セバシン酸エステル系化合物および二塩基酸エステル系化合物が好ましい。これら可塑剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の可塑剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
本発泡粒子における可塑剤の含有量は、特に限定されないが、発泡粒子100重量%に対して、1重量%~20重量%が好ましく、2重量%~15重量%がより好ましく、3重量%~10重量%がさらに好ましい。
本発泡粒子は、イソシアネート基を有する化合物(以下、イソシアネート化合物と称する場合がある。)を含んでもよい。但し、イソシアネート化合物は毒性を持つ場合がある。また、発泡粒子がイソシアネート化合物を含む場合、得られる発泡粒子および発泡成形体が黄色くなる場合がある。
したがって、本発泡粒子におけるイソシアネート化合物の含有量としては、発泡粒子100重量%に対して、3.0重量%未満が好ましく、1.0重量%未満がより好ましく、0.1重量%未満がさらに好ましい。本発泡粒子がイソシアネート化合物を含まないことが最も好ましい。
イソシアネート化合物としては、例えば、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物を用いることができる。イソシアネート化合物の具体的な種類としては芳香族系イソシアネート化合物、脂環族系イソシアネート化合物、脂肪族系イソシアネート化合物等が挙げられる。例えば、(a)芳香族イソシアネート化合物としては、トリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリジン、キシレンおよび/またはトリフェニルメタンを骨格とするイソシアネート化合物が挙げられ、(b)脂環族イソシアネート化合物としてはイソホロンおよび/または水素化ジフェニルメタンを骨格とするイソシアネート化合物が挙げられ、(c)脂肪族イソシアネート化合物としてはヘキサメチレンおよび/またはリジンを骨格とするイソシアネート化合物等が挙げられる。更に、これらイソシアネート化合物を2種類以上組み合わせて得られる混合物も使用可能である。イソシアネート化合物を使用する場合には、汎用性、取扱い性、耐候性等からトリレンおよび/またはジフェニルメタンを骨格とするイソシアネート化合物、特にジフェニルメタンを骨格とするイソシアネート化合物(ポリイソシアネート)を使用することが好ましい。
<ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂組成物およびポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子>
以下、本発明の一実施形における樹脂組成物および樹脂粒子に関する各態様について説明するが、以下に詳説した事項以外は、適宜、<成分>の項の記載を援用する。例えば、発泡粒子に含まれるP3HA、脂肪酸アミド、およびその他の添加剤の、種類および量は、それぞれ、樹脂組成物および樹脂粒子に含まれるP3HA、脂肪酸アミド、およびその他の添加剤の、種類および量といえる。そのため、樹脂組成物および樹脂粒子におけるP3HA、脂肪酸アミド、およびその他の添加剤の、種類および含有量については、上述の<成分>の項の記載が援用される。
樹脂粒子の融点(以下、「Tmp」と称する場合がある)は、特に限定されないが、110.0℃~165.0℃が好ましく、120.0℃~155.0℃がより好ましい。樹脂粒子の融点が110.0℃以上であれば、得られる発泡粒子の成形時の、加熱による寸法の変化を抑制できる。一方、樹脂粒子の融点が165.0℃以下であれば、樹脂粒子の発泡中に、P3HAが加水分解する虞がない。なお、樹脂粒子が含むP3HA以外の成分(例えばペンタエリスリトールなど)は樹脂粒子の融点にほとんど影響を及ぼさない。換言すると、樹脂粒子の融点は、樹脂粒子が含むP3HAの融点とも言える。
ここで、樹脂粒子の融点(Tmp)は、示差走査熱量計法(以降、「DSC法」と称する)により測定したものである。具体的な操作手順は以下の通りである:(1)樹脂粒子5mg~6mgを量り取る;(2)樹脂粒子の温度を10.0℃/分の昇温速度で10.0℃から190.0℃まで昇温して、樹脂粒子を融解する;(3)図1に示すように、前記(2)の過程で得られる樹脂粒子のDSC曲線の、最も高温の融解ピークの温度を樹脂粒子の融点として求めることができる。
図1は、P3HA系樹脂粒子のDSC曲線およびそれから測定される融点等を示す図である。図1に示すDSC曲線は融解ピークを1つ有するため、当該融解ピークの温度が樹脂粒子の融点である。
樹脂粒子の1個当たりの重量は、特に限定されないが、0.3mg~10.0mgが好ましく、0.5mg~5.0mgがより好ましい。樹脂粒子の1個当たりの重量が0.3mg以上であれば、樹脂粒子を高い生産性で安定して製造することができる。一方、樹脂粒子の1個当たりの重量が10.0mg以下であれば、当該樹脂粒子を発泡してなる発泡粒子は、薄肉化された発泡成形体を容易に提供し得る。
樹脂粒子の形状は、特に限定されないが、長さと直径との比率(長さ/直径)が0.5~3.0が好ましく、1.5~2.7がより好ましく、2.0~2.7がさらに好ましい。樹脂粒子の長さ/直径が0.5~3.0であれば、得られる発泡粒子の形状が偏平とならず、球形または略球形となり易い。球形または略球形の発泡粒子は、成形機の金型の成形空間への充填性が良く、表面美麗性が良好な発泡成形体を提供し得る。ここで、樹脂粒子の長さとは、樹脂粒子の製造過程において、樹脂粒子を切断するときに樹脂粒子に現れる(生じる)、2つの切断面間の距離の最大値を意図する。次に、樹脂粒子の長さ方向をx方向としたとき、x方向に垂直な断面(断面x)上に、任意の直線yと、直線yに垂直な直線zとを引く。直線yが断面xで切り取られて得られる線分を線分yとし、直線zが断面xで切り取られて得られる線分を線分zとする。樹脂粒子の直径とは、線分yの長さと線分zの長さとの平均値を意図する。
<物性>
以下、本発泡粒子の物性について説明する。
(DSC比)
本発泡粒子は、後述の示差走査熱量測定で得られるDSC曲線において融解ピークを少なくとも2つ有することが好ましい。当該融解ピークのうち、高温側の融解ピークから求められる融解熱量を「高温側融解熱量」とし、低温側の融解ピークから求められる融解熱量を「低温側融解熱量」とする。また、融解ピークが3つ以上である場合には、最も高温の融解ピークから求められる融解熱量を「高温側融解熱量」し、それ以外の融解ピークから求められる融解熱量を「低温側融解熱量」とする。
本発泡粒子のDSC比は、特に限定されないが、0.5%~40.0%であることが好ましく、0.7%~30.0%であることがより好ましく、1.0%~25.0%であることがさらに好ましく、1.0%~23.0%であることが特に好ましい。発泡粒子のDSC比が0.5%以上である場合、発泡工程において、発泡した発泡粒子同士が合着しないという利点を有する。一方、発泡粒子のDSC比が40%以下である場合、低い成形圧力で内部融着性に優れた発泡成形体が得られる傾向があるという利点を有する。
本明細書において、DSC比とは、本発泡粒子のDSC曲線から算出される、全融解熱量に対する高温側融解熱量の割合、を意図する。本明細書において、DSC比は、以下式(1)で算出され、
DSC比(%)=(高温側融解熱量/全融解熱量)×100・・・(1)、
前記式(1)中、前記高温側融解熱量および前記全融解熱量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子のDSC曲線から得られる熱量である。
本明細書において、DSC曲線は、示差走査熱量計(例えばセイコーインスツルメンツ社製DSC6200型)を用いて得られる。より具体的に、本明細書において、示差走査熱量計(例えばセイコーインスツルメンツ社製DSC6200型)を用いる発泡粒子のDSC比の測定(算出)方法は次の(1)~(6)の通りである:(1)発泡粒子5mg~6mgを量り取る;(2)発泡粒子の温度を10.0℃/分の昇温速度にて10.0℃から190.0℃まで昇温して、発泡粒子を融解する;(3)図2に示すように、前記(2)の過程で得られる発泡粒子のDSC曲線において、融解開始前の温度を表す点と融解終了後の温度を表す点とを直線で結びベースラインを作成する;(4)高温側の融解ピークまたは最も高温の融解ピークと隣の融解ピークとの間の極大点を通る直線を、X軸に対して垂直方向に引く;(5)ベースラインと極大点を通る直線とDSC曲線とに囲まれる高温側の領域から算出される熱量を高温側融解熱量(J/g)とし、ベースラインと極大点を通る直線とDSC曲線とに囲まれる低温側の領域から算出される熱量を低温側融解熱量(J/g)とし、ベースラインとDSC曲線とに囲まれる領域から算出される熱量を全融解熱量(J/g)(=高温側融解熱量+低温側融解熱量)とする;(6)以下の式(1)からDSC比を算出する:
DSC比(%)=(高温側融解熱量/全融解熱量)×100・・・(1)。
図2は、P3HA系発泡粒子のDSC曲線およびそれから測定される高温側の融解熱量等を示す図である。図2に示すDSC曲線は融解ピークを2つ有する。
本発泡粒子の上述のDSC測定における高温側融解ピークまたは最も高温の融解ピークの温度(融点)(以下、「Tmh」と称する場合がある)は、発泡させる前の樹脂粒子の融点(Tmp)よりも高いことが好ましい。Tmhは、(Tmp+3.0)℃以上であることが好ましく、(Tmp+5.0)℃以上であることがより好ましく、(Tmp+7.0)℃以上であることがさらに好ましい。一方、Tmhは、(Tmp+15.0)℃以下であることが好ましく、(Tmp+13.0)℃以下であることがより好ましい。
具体例として、発泡粒子に含まれるP3HAが3HBを必須の構成単位として有する重合体であり、融点145.0℃のP3HB3HHである場合について説明する。この場合、Tmhは150.0℃~160.0℃が好ましく、152.0℃~158.0℃であることがより好ましい。
Tmhを上述した範囲内に制御する方法としては、特に限定されないが、主に発泡温度、発泡圧力、発泡前に容器内で樹脂粒子を発泡温度および発泡圧力で保持する時間等を調整する方法が挙げられる。本明細書において、「発泡前に容器内で樹脂粒子を発泡温度および発泡圧力で保持する時間」を「保持時間」と称する場合がある。
本発泡粒子のDSC比は、発泡粒子に含まれる融点の高い結晶量の目安となる値でもある。すなわち、DSC比が0.5%~40.0%であることは、発泡粒子が融点の高い結晶を比較的多く含むことを示す。また、発泡粒子のDSC比は、樹脂粒子を発泡させる際、および発泡粒子を膨脹させる際の、樹脂粒子および発泡粒子の粘弾性に大きく関与する。すなわち、発泡粒子のDSC比が0.5%~40.0%である場合、樹脂粒子を発泡する際、および発泡粒子を成形する際に、樹脂粒子および発泡粒子が、それぞれ、優れた発泡性および膨脹性を発揮できる。その結果、発泡粒子は、低い成形圧力で内部融着性に優れるとともに圧縮強度等の機械的強度に優れた発泡成形体を得ることができるという利点を有する。
本発泡粒子において、DSC比を所定の範囲に制御する方法としては、発泡時の条件(特に、発泡温度、発泡圧力)、および/または後述する保持時間を調整する方法、並びに、後述する放出工程において発泡粒子を放出する領域(空間)の温度を調整する方法等が挙げられる。調整が容易である点から、DSC比を所定の範囲に制御する方法としては、発泡時の条件、および/または保持時間を調整する方法が好ましい。
例えば、発泡温度を高くするとDSC比は小さくなる傾向があり、逆に発泡温度を低くするとDSC比は大きくなる傾向がある。これは発泡温度によって、融解していない結晶の量が変化するためである。また発泡圧力を高くするとDSC比は小さくなる傾向があり、逆に発泡圧力を低くするとDSC比は大きくなる傾向がある。これは発泡圧力によって、可塑化の度合いが変化し、それによって融解していない結晶の量が変化するためである。
また、保持時間を長くするほどDSC比は大きくなる傾向がある。これは保持時間によって、融解していない結晶の成長量が変化するためである。
(ゲル分率)
本発泡粒子は、後述するように架橋剤を使用して製造されることが好ましい。架橋剤を使用して製造される場合、得られる発泡粒子は架橋構造を有し得る。すなわち、本発泡粒子は、架橋構造を有することが好ましい。本明細書において、発泡粒子の架橋構造は、発泡粒子のゲル分率によって評価される。発泡粒子が架橋構造を有するとは、発泡粒子のゲル分率が、発泡粒子100重量%に対して、1重量%以上であることを意図する。
本発泡粒子のゲル分率は、発泡粒子100重量%に対して、30重量%~80重量%であることが好ましく、50重量%~80重量%であることがより好ましく、60重量%~75重量%であることがさらに好ましい。発泡粒子のゲル分率が、発泡粒子100重量%に対して(a)30重量%以上である場合、発泡成形体を成形するとき、良質の発泡成形体を提供し得る発泡粒子の成形温度幅が広くなり、生産性が向上するという利点を有し、(b)80重量%以下である場合、低い成形圧力で内部融着性に優れる発泡成形体が得られるという利点を有する。
なお、本発明の一実施形態において、発泡粒子のゲル分率とは、該発泡粒子中のP3HAの架橋度を示す指標である。発泡粒子のゲル分率は、架橋剤の種類、および/またはその使用量等により制御し得る。
本明細書において、発泡粒子のゲル分率の測定方法は以下の(1)~(5)の通りである:(1)150mlのフラスコに、1gの発泡粒子と、100mlのクロロホルムとを入れる;(2)大気圧下、62℃で、フラスコ内の混合物を8時間加熱還流する;(3)得られる加熱処理物を100メッシュの金網を備える吸引濾過装置を用いて濾過処理する;(4)金網上の濾過処理物を、80℃のオーブン中で真空条件下にて8時間乾燥し、乾燥物の重量Wg(g)を測定する;(5)以下の式により、ゲル分率を算出する:
ゲル分率(重量%)=Wg/1×100。
(密度)
本発泡粒子の密度(見掛け密度)は、特に限定されないが、0.020g/cm~0.600g/cmであることが好ましく、0.030g/cm~0.300g/cmであることがより好ましく、0.050g/cm~0.100g/cmであることがさらに好ましい。発泡粒子の密度が、(a)0.030g/cm以上である場合、緩衝特性および/または機械的強度に優れる発泡成形体が得られる傾向があるという利点を有し、(b)0.600g/cm以下である場合、軽量性に優れる発泡成形体が得られる傾向があるという利点を有する。1回の発泡だけでは所望の密度の発泡粒子が得られない場合、1回発泡した発泡粒子を、2回目以降の発泡工程に付してもよい。
なお、本明細書において、発泡粒子の密度の測定方法は、以下の(1)~(3)の通りである:(1)エタノールが入ったメスシリンダーを用意し、当該エタノール中に重量Wd(g)の発泡粒子を沈める;(2)エタノールの水位上昇分(水没法)より読みとられる発泡粒子の容積をVd(cm)とする;(3)以下の式により、発泡粒子の密度を算出する;
密度(g/cm)=Wd/Vd。
本発泡粒子の形状は、特に限定されないが、長さと直径との比率(長さ/直径)が1.0~2.0が好ましく、1.0~1.5がより好ましい。発泡粒子の長さ/直径が1.0~2.0であれば、成形機の金型の成形空間への充填性が良く、表面美麗性が良好な発泡成形体が得られるという利点を有する。さらに、発泡粒子の長さ/直径が1.0~1.2に近づくほど、特に1.0に近づくほど、当該発泡粒子から得られる発泡成形体において、発泡粒子間の空隙が小さくなる傾向となり、その結果、緩衝特性および/または機械的強度に優れるという利点を有する。ここで、本発泡粒子の長さとは、発泡粒子において、2点間の直線距離が最も長くなるよう任意の2点を選択した場合の、2点間直線距離となる長さを意図する。次に、発泡粒子の長さ方向をx方向としたとき、x方向に垂直な断面(断面x)上に、任意の直線yと、直線yに垂直な直線zとを引く。直線yが断面xで切り取られて得られる線分を線分yとし、直線zが断面xで切り取られて得られる線分を線分zとする。本発泡粒子の直径とは、線分yの長さと線分zの長さとの平均値を意図する。
〔3.ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法〕 本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)100重量部と、ペンタエリスリトール0.01重量部~20.00重量部とを含むポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子を発泡させる発泡工程を含み、前記発泡工程は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子を水系分散媒中に分散させる分散工程、を含む。
本明細書において、「ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)系発泡粒子の製造方法」を「製造方法」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)系発泡粒子の製造方法」を「本製造方法」と称する場合がある。
本製造方法は、上述の構成を有するため、低い成形圧力で内部融着性に優れた発泡成形体を提供し得る、発泡粒子を提供できるという利点を有する。
本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡粒子の製造方法の具体的態様としては、例えば、樹脂粒子を調整する樹脂粒子調製工程と、当該樹脂粒子を発泡させる発泡工程とを順に含む製造方法が挙げられるが、かかる製造方法に限定されるものではない。
(樹脂粒子調製工程)
本製造方法は、発泡工程の前に、P3HA系樹脂100重量部と、ペンタエリスリトール0.01重量部~20.00重量部とを含むP3HA系樹脂粒子を調製する、樹脂粒子調製工程を含むことが好ましい。樹脂粒子調製工程は、樹脂組成物を発泡に利用しやすい形状に成形する工程ともいえる。樹脂粒子調製工程の態様としては、樹脂粒子を得ることができる限り特に限定されない。
樹脂粒子調製工程は、
(a)P3HA100重量部と、ペンタエリスリトール0.01重量部~20.00重量部とを含む樹脂組成物を溶融混練する溶融混練工程と、
(b)溶融混練された樹脂組成物を発泡に利用しやすい形状に成形する粒子成形工程とを含むことが好ましい。
本発明者らは、本製造方法の後述する分散工程において、驚くべきことに、樹脂粒子中のペンタエリスリトールが溶出する場合があるという知見を独自に得た。分散工程における、樹脂粒子中のペンタエリスリトール溶出量は分散工程の条件や要する時間等により変化し得る。樹脂粒子調製工程では、続く分散工程における樹脂粒子中のペンタエリスリトールの溶出量を考慮して、最終的に得られる発泡粒子に含まれるペンタエリスリトール含有量が所望の値となるように、ペンタエリスリトールの使用量を調整することが好ましい。一方、本製造方法によると、発泡粒子100重量%に対してペンタエリスリトール0.01重量%~4.50重量%を含む発泡粒子を比較的容易に得ることができる。
溶融混練工程の態様としては、溶融混練された樹脂組成物を得ることができる限り、特に限定されない。溶融混練工程の具体例としては、例えば以下(a1)および(a2)の方法が挙げられる:
(a1)P3HA100重量部と、ペンタエリスリトール0.01重量部~20.00重量部と、必要に応じて、脂肪酸アミドおよび/またはその他の添加剤とを混合装置などで混合またはブレンドし、樹脂組成物を調製する。その後、当該樹脂組成物を溶融混練装置に供給し、溶融混練する方法;
(a2)P3HA100重量部と、ペンタエリスリトール0.01重量部~20.00重量部と、必要に応じて、脂肪酸アミドおよび/またはその他の添加剤とを溶融混練装置に供給し、溶融混練装置内で樹脂組成物を調製する(完成させる)とともに、当該樹脂組成物を溶融混練する方法。
前記(a1)の方法において、P3HA100重量部と、ペンタエリスリトール0.01重量部~20.00重量部と、必要に応じて、脂肪酸アミドおよび/またはその他の添加剤とを混合またはブレンド(ドライブレンド)する順序は特に限定されない。前記(a2)の方法において、P3HA100重量部と、ペンタエリスリトール0.01重量部~20.00重量部と、必要に応じて、脂肪酸アミドおよび/またはその他の添加剤とを溶融混練装置に供給する順序は特に限定されない。
前記(a1)の方法において、混合装置としては、特に限定されず、リボンブレンダー、フラッシュブレンダー、タンブラーミキサー、スーパーミキサーなどが挙げられる。
前記(a1)および(a2)の方法において、溶融混練装置としては、特に限定されず、押出機、ニーダー、バンバリミキサー、およびロール等が挙げられる。生産性と利便性優れることから、溶融混練装置としては、押出機が好ましく、2軸押出機がさらに好ましい。
前記(a1)の方法において、混合またはブレンドに使用するペンタエリスリトール、脂肪酸アミドおよびその他の添加剤の使用量が、得られる樹脂粒子におけるペンタエリスリトール、脂肪酸アミド、およびその他の添加剤の含有量となる。また、前記(a2)の方法において、溶融混練装置に供給されるペンタエリスリトール、脂肪酸アミドおよびその他の添加剤の供給量が、得られる樹脂粒子におけるペンタエリスリトール、脂肪酸アミドおよびその他の添加剤の含有量となる。それ故、ペンタエリスリトール、脂肪酸アミド、およびその他の添加剤の前記使用量および前記供給量については、上述の(ペンタエリスリトール)の項、(脂肪酸アミド)の項、および(その他の添加剤)の項の記載が援用される。なお、本製造方法で使用するその他の添加剤の全てを樹脂粒子調製工程で使用する必要はない。換言すれば、本製造方法で使用するその他の添加剤の全てまたは一部(例えば架橋剤および可塑剤等)を、樹脂粒子調製工程で使用することなく、すなわち樹脂粒子に含有させることなく、続く分散工程で分散液中に添加してもよい。
溶融混練工程において、樹脂組成物を溶融混練するときの温度は、P3HAの物性(融点、重量平均分子量等)および使用する添加剤の種類等によるため一概には規定できない。樹脂組成物を溶融混練するときの温度に関して、例えば、ダイスのノズルから吐出される溶融混練された樹脂組成物の温度(以下、組成物温度と称する場合がある。)を150℃~200℃とすることが好ましく、160℃~195℃とすることがより好ましく、170℃~190℃とすることがさらに好ましい。組成物温度が150℃以上である場合、樹脂組成物が溶融混練不足となる虞がない。一方、組成物温度が200℃以下である場合、P3HAが熱分解する虞がない。
粒子成形工程の態様としては、溶融混練された樹脂組成物を所望の形状に成形できる限り、特に限定されない。前記溶融混練装置としてダイスおよび切断装置を備える溶融混練装置を使用することにより、粒子成形工程において、溶融混練された樹脂組成物を所望の形状に容易に成形できる。具体的には、溶融混練された樹脂組成物を、溶融混練装置に備えられたダイスのノズルから吐出し、吐出と同時に、または吐出後に樹脂組成物を切断装置により切断することにより、所望の形状に成形できる。得られる樹脂粒子の形状としては特に限定されないが、発泡に利用しやすいことから、円柱状、楕円柱状、球状、立方体状、直方体状などが好ましい。
粒子成形工程では、ダイスのノズルから吐出される樹脂組成物を冷却してもよい。ダイスのノズルから吐出される樹脂組成物を冷却する場合、樹脂組成物の冷却と同時に、または冷却後に樹脂組成物を切断装置により切断すればよい。
粒子成形工程において、ダイスのノズルから吐出される樹脂組成物を冷却するとき、冷却された樹脂組成物が示す温度(以下、冷却温度と称する場合がある。)は、特に限定されない。冷却温度は、20℃~80℃が好ましく、30℃~70℃がより好ましく、40℃~60℃がさらに好ましい。当該構成によると、溶融混練された樹脂組成物の結晶化が十分に早いため、樹脂粒子の生産性が良好となる利点を有する。
(発泡工程)
本製造方法における発泡工程の態様としては、樹脂粒子を発泡させることができる限り、特に限定されない。本発明の一実施形態において、発泡工程は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子を水系分散媒中に分散させる分散工程を含み得る。分散工程の具体的な態様は特に限定されないが、分散工程は、例えば、樹脂粒子と、水系分散媒と、架橋剤と、発泡剤と、必要に応じて分散剤、架橋助剤、分散助剤、および/または可塑剤とを容器中に分散させる工程である。発泡工程は、分散工程以外の工程として、分散工程に続いて、
(a)容器内温度を一定温度まで昇温し、かつ容器内圧力を一定圧力まで昇圧する昇温-昇圧工程と、
(b)容器内温度および圧力を一定温度かつ一定圧力で保持する保持工程と、
(c)容器の一端を解放し、容器内の分散液を、発泡圧力(すなわち、容器内圧力)よりも低圧の領域(空間)に放出する放出工程と、を含むことが好ましい。
(分散工程)
分散工程は、例えば、水系分散媒中に樹脂粒子と架橋剤と発泡剤と必要に応じて分散剤、架橋助剤、分散助剤、および/または可塑剤とが分散している分散液を調製する工程ともいえる。なお、分散液中で、(a)架橋剤および架橋助剤は樹脂粒子中のP3HAとの反応により消費され、存在していなくてもよく、(b)発泡剤および可塑剤は樹脂粒子中に含浸され、分散された状態で存在していなくてもよい。
容器としては特に限定されないが、後述する発泡温度および発泡圧力に耐えられる容器であることが好ましく、例えば耐圧容器であることが好ましい。
水系分散媒としては、樹脂粒子、架橋剤、発泡剤等を均一に分散できるものであればよく、特に限定されない。水系分散媒としては、例えば、水道水および/または工業用水を用いることもできる。発泡粒子の安定した生産が可能な点から、水系分散媒としては、RO水(逆浸透膜法により精製された水)、蒸留水、脱イオン水(イオン交換樹脂により精製された水)等の純水および超純水等を用いることが好ましい。
水系分散媒の使用量は、特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、100重量部~1000重量部が好ましい。
本製造方法では、架橋剤を使用することが好ましい。架橋剤を使用することにより、得られる発泡粒子中のP3HAは、架橋構造を有するP3HAとなる。すなわち、ゲル分率に優れたP3HA発泡粒子を得ることができる。その結果、(a)発泡成形体を成形するとき、良質の発泡成形体を提供し得る発泡粒子の成形温度幅が広くなり、生産性が向上するとともに、(b)低い成形圧力で内部融着性に優れる発泡成形体が得られるという利点を有する。発泡工程では樹脂粒子中のP3HAの架橋反応も進行するため、発泡工程は架橋工程ともいえる。
架橋剤としては、P3HAを架橋できる限り特に限定されない。架橋剤としては、有機過酸化物が好ましい。換言すれば、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子は有機過酸化物により架橋されたものであることが好ましい。有機過酸化物は、(a)樹脂粒子製造工程で使用してもよく、(b)分散工程で使用してもよく、(c)樹脂粒子製造工程および分散工程で使用してもよい。より具体的に、有機過酸化物をP3HAと反応させるためには、(a)樹脂粒子製造工程において有機過酸化物とP3HAを溶融混練してもよく、(b)分散工程において樹脂粒子と有機過酸化物とを水系分散媒中に分散させてもよく、(c)有機過酸化物とP3HAを溶融混練するとともに、さらに、樹脂粒子と有機過酸化物とを水系分散媒中に分散させてもよい。分散工程において、樹脂粒子製造工程にて製造された樹脂粒子と有機過酸化物とを水系分散媒中に分散させることにより、当該樹脂粒子に有機過酸化物を含浸および反応させることができる。これらの理由から、本発泡粒子の製造方法において、架橋剤としては有機過酸化物が好ましい。なお、架橋剤として有機過酸化物を使用する場合、P3HAの分子鎖同士が直接(架橋剤に由来する構造を介することなく)結合することにより、架橋構造が形成される。
使用するP3HAの種類等によるが、架橋剤として使用する有機過酸化物としては、1時間半減期温度が90℃~160℃の有機過酸化物が好ましく、1時間半減期温度が110℃~160℃の有機過酸化物がより好ましく、110℃~125℃の有機過酸化物がさらに好ましく、114℃~124℃の有機過酸化物が特に好ましい。そのような有機過酸化物として、具体的には、過酸化ベンゾイル(BPO、1時間半減期温度:92℃)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC、1時間半減期温度:121℃)、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(TBIC、1時間半減期温度:118℃)、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TAEC、1時間半減期温度:117℃)、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート(TAIC、1時間半減期温度:115℃)、t-ブチルパーオキシイソブチレート(1時間半減期温度:93℃)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(1時間半減期温度:95℃)、t-ブチルパーオキシイソノナノエート(1時間半減期温度:123℃)、t-ブチルパーオキシアセテート(1時間半減期温度:123℃)、t-ブチルパーオキシジベンゾエート(1時間半減期温度:125℃)、t-アミルパーオキシイソブチレート(1時間半減期温度:93℃)、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(1時間半減期温度:92℃)、t-アミルパーオキシイソノナノエート(1時間半減期温度:114℃)、t-アミルパーオキシアセテート(1時間半減期温度:120℃)、t-アミルパーオキシベンゾエート(1時間半減期温度:122℃)、ジクミルパーオキサイド(1時間半減期温度:137℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(1時間半減期温度:140℃)、ジ-t-ブチルパーオキサイド(1時間半減期温度:149℃)、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(1時間半減期温度:116℃)、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン(1時間半減期温度:127℃)、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン(1時間半減期温度:112℃)、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(1時間半減期温度:114℃)等が挙げられる。1時間半減期温度が90℃以上である有機過酸化物を使用する場合、所望のゲル分率の発泡粒子を得られる傾向があるという利点を有する。一方、1時間半減期温度が160℃以下である有機過酸化物を使用する場合、未反応の架橋剤が最終生成物中に残存する虞がないという利点を有する。
架橋剤の使用量は、特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、0.1重量部~5.0重量部が好ましく、0.3重量部~3.0重量部がより好ましく、0.5重量部~2.5重量部がさらに好ましい。架橋剤の使用量が樹脂粒子100重量部に対して0.1重量部以上である場合、(a)得られる発泡粒子を十分に架橋することができるとともに、(b)得られる発泡粒子の独立気泡率が高くなり、表面美麗性が良好で成形収縮率が小さい発泡成形体を得ることができる。一方、架橋剤の使用量が樹脂粒子100重量部に対して、5.0重量部以下である場合、架橋剤の添加量に応じた効果を得られるため、経済的に無駄が生じる虞がない。架橋剤の使用量は発泡粒子のゲル分率と正の相関関係があり、発泡粒子のゲル分率の値に大きく影響する。そのため、得られる発泡粒子のゲル分率を考慮して架橋剤の使用量を厳密に設定することが望ましい。分散工程で使用する樹脂粒子がすでに架橋剤を含んでいる場合があるが、その場合、樹脂粒子が分散工程前に既に含んでいる架橋剤の量と、分散工程において使用される架橋剤の量との合計量が、上記の範囲を充足することが好ましい。
発泡剤としては、窒素、二酸化炭素、空気等の無機ガス;プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の炭素数3~5の飽和炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、およびメチルエチルエーテル等のエーテル;モノクロルメタン、ジクロロメタン、ジクロロジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素;水等が挙げられる。発泡剤としては、上述した無機ガス、炭素数3~5の飽和炭化水素、エーテル、ハロゲン化炭化水素および水からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上を用いることができる。中でも、環境負荷や発泡力の観点から、発泡剤としては窒素または二酸化炭素を用いることが好ましい。これら発泡剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の発泡剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
発泡剤の使用量は、特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、2重量部~10000重量部が好ましく、5重量部~5000重量部がより好ましく、10重量部~1000重量部がさらに好ましい。発泡剤の使用量が樹脂粒子100重量部に対して2重量部以上である場合、密度の好適な発泡粒子を得ることができる。一方、発泡剤の使用量が樹脂粒子100重量部に対して10000重量部以下である場合、発泡剤の使用量に応じた効果が得られるため、経済的な無駄が生じない。
本製造方法では、分散剤を使用することが好ましい。分散剤を使用することにより、樹脂粒子同士の合着(ブロッキングと称する場合がある。)を抑制でき、安定的に発泡粒子を製造できるという利点を有する。分散剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、クレイ、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の無機物が挙げられる。これら分散剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の分散剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
分散剤の使用量は、特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、0.1重量部~3.0重量部が好ましく、0.5重量部~1.5重量部がより好ましい
本製造方法では、P3HAの架橋効率を向上させるために、架橋助剤を使用してもよい。架橋助剤としては、例えば、分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。架橋助剤としては、当該化合物の中でも、特に、アリルエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ジビニル化合物等が好ましい。これら架橋助剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の架橋助剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
架橋助剤の使用量は特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、0.01重量部~3.00重量部が好ましく、0.03重量部~1.50重量部がより好ましく、0.05重量部~1.00重量部がさらに好ましい。架橋助剤の使用量が樹脂粒子100重量部に対して0.01重量部以上であれば、架橋助剤として十分な効果を発揮する。
分散工程において、樹脂粒子に架橋剤と必要に応じて架橋助剤とを含浸および反応させるとき、P3HAの架橋効率を上げるために、容器内の酸素濃度および分散液中の溶存酸素量を低くすることが好ましい。容器内の酸素濃度および分散液中の溶存酸素量を低くする方法としては、二酸化炭素および窒素等の無機ガスで容器内の気体および分散液中に溶解している気体を置換すること、並びに容器内の気体を真空引きすることが挙げられる。
本製造方法では、樹脂粒子同士の合着抑制効果を向上させるために、分散助剤を使用してもよい。分散助剤としては、例えば、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤が挙げられる。これら分散助剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の分散助剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
分散助剤の使用量は、特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、0.001重量部~0.500重量部が好ましく、0.010重量部~0.200重量部がより好ましい。樹脂粒子同士の合着抑制効果をより向上させるために、前記分散剤と当該分散助剤とは、併用することが好ましい。
本製造方法では、可塑剤を使用してもよい。可塑剤を使用することにより、発泡粒子の密度を小さくしやすい、すなわち発泡粒子の発泡倍率を向上しやすいという利点を有する。
本製造方法で使用する可塑剤、または好適に使用する可塑剤としては、前記〔2.ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子〕の<成分>の(添加剤)の項に記載の可塑剤を挙げることができる。
可塑剤の使用量は特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、0重量部より多く、20重量部以下が好ましく、1重量部~15重量部がより好ましく、1重量部~10重量部がさらに好ましい。分散工程で使用する樹脂粒子が、分散工程前に既に可塑剤を含んでいてもよい。使用する樹脂粒子が分散工程前に既に可塑剤を含んでいる場合、樹脂粒子が分散工程前に既に含んでいる可塑剤の量と、分散工程において使用される可塑剤の量との合計量が、上記の範囲を充足することが好ましい。
(昇温-昇圧工程および保持工程)
昇温-昇圧工程は、分散工程後に実施されることが好ましく、保持工程は、昇温-昇圧工程後に実施されることが好ましい。本明細書において、昇温-昇圧工程および保持工程における(a)一定温度を発泡温度と称する場合があり、(b)一定圧力を発泡圧力と称する場合がある。
発泡温度は、P3HAの種類、発泡剤の種類、所望の発泡粒子の見掛け密度等によって異なるので、一概には規定できない。発泡温度は、得られる発泡粒子の上述のDSC測定における高温側融解ピークまたは最も高温の融解ピークの温度(Tmh)よりも低い温度とすることが好ましく、発泡させる前の樹脂粒子の融点(Tmp)よりも低い温度とすることが好ましい。発泡温度は、例えば、(Tmp-40.0)℃~Tmp℃が好ましく、(Tmp-30.0)℃~(Tmp-10.0)℃がより好ましく、(Tmp-20.0)℃~(Tmp-15.0)℃がさらに好ましく、(Tmp-19.0)℃~(Tmp-16.0)℃が最も好ましい。発泡温度が(Tmp-40.0)℃以上である場合、密度の好適な発泡粒子が得られる傾向がある。一方、発泡温度がTmp℃以下である場合、容器内で樹脂粒子の加水分解が起こる虞がない。発泡温度は得られる発泡粒子のDSC比と相関関係があり、当該DSC比の値に大きく影響する。そのため、得られる発泡粒子のDSC比を考慮して発泡温度を厳密に設定することが望ましい。
昇温-昇圧工程において、所望の発泡温度まで昇温するときの速度(以下、昇温速度と称する場合がある)としては1.0℃/分~3.0℃/分が好ましく、1.5℃/分~3.0℃/分がより好ましい。昇温速度が1.0℃/分以上であれば、生産性に優れる。一方、昇温速度が3.0℃/分以下であれば、昇温時に、樹脂粒子への発泡剤の含浸および架橋剤とP3HAとの反応が不十分となってしまう虞がない。
発泡圧力は、例えば、1.0MPa(ゲージ圧)~10.0MPa(ゲージ圧)が好ましく、2.0MPa(ゲージ圧)~5.0MPa(ゲージ圧)がより好ましく、2.5MPa(ゲージ圧)~4.5MPa(ゲージ圧)がより好ましく、3.0MPa(ゲージ圧)~4.0MPa(ゲージ圧)がさらに好ましく、3.2MPa(ゲージ圧)~3.5MPa(ゲージ圧)がよりさらに好ましく、3.2MPa(ゲージ圧)~3.4MPa(ゲージ圧)が特に好ましい。発泡圧力が1.0MPa(ゲージ圧)以上であれば、密度の好適な発泡粒子を得ることができる。
保持工程において、容器内の分散液を発泡温度および発泡圧力付近で保持する時間は、特に限定されない。「容器内の分散液を発泡温度および発泡圧力付近で保持する時間」は、(DSC比)の項で説明した「保持時間」ともいえる。保持時間は、1分間~60分間が好ましく、5分間~45分間がより好ましい。保持時間が1分間以上であれば、DSC比を所定の範囲に容易に制御でき、また、未反応の架橋剤が残る虞がない。一方、60分間以下であれば、樹脂粒子の含むP3HAの余分な加水分解が起こる虞がない。
(放出工程)
放出工程は、昇温-昇圧工程後、または保持工程後、に実施されることが好ましい。放出工程により、樹脂粒子を発泡させることができ、結果として発泡粒子が得られる。
放出工程において、「発泡圧力よりも低圧の領域」は、「発泡圧力よりも低い圧力下の領域」または「発泡圧力よりも低い圧力下の空間」を意図し、「発泡圧力よりも低圧の雰囲気下」ともいえる。発泡圧力よりも低圧の領域は、発泡圧力よりも低圧であれば特に限定されず、例えば、大気圧下の領域であってもよい。
放出工程において、発泡圧力よりも低圧の領域に分散液を放出するとき、分散液の流量調整、得られる発泡粒子の発泡倍率のバラツキ低減等の目的で、直径1mm~5mmの開口オリフィスを通して分散液を放出することもできる。また、比較的融点の高い樹脂粒子を使用する場合、発泡性を向上させる目的で、前記低圧の領域(空間)を飽和水蒸気で満たしても良い。
上述したように、発泡工程において、樹脂粒子中のペンタエリスリトールが水系分散媒中に溶出する場合がある。発泡工程における樹脂粒子中のペンタエリスリトールの溶出量は、発泡工程の条件や要する時間等により変化するため一概には言えないが、樹脂組成物あるいは樹脂粒子に含まれるペンタエリスリトール量のおおむね0.1%~99%程度である。それ故、発泡工程の所定の条件下におけるペンタエリスリトールの溶出量を事前に調べておき、その結果(溶出量)に基づき、当該条件下で使用する樹脂粒子中のペンタエリスリトール量を調製しておくことが好ましい。これにより、所望のペンタエリスリトール含有量となる発泡粒子を容易に得ることが可能である。
発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量を定量する方法に特に限定はない。発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量は、分析機関等で分析可能である。発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量は、例えば、以下の(1)~(3)の方法によって測定することができる:(1)発泡粒子20mgをクロロホルム0.8ml中に完全に溶解する;(2)前記クロロホルム中に、さらに内部標準として(3-(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム-2,2,3,3-d4)1.6mgを含む重水1.6mlを加えて分液操作を行い、発泡粒子中のペンタエリスリトールを重水層に移行させる;(3)H-NMRによって、(a)1.6mg~9.6mg(1.6mg、5.0mg、7.0mg、9.6mg)のペンタエリスリトール標品と、(b)(2)で抽出した重水層中((3-(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム-2,2,3,3-d4)1.6mgを含む)のペンタエリスリトール量のNMRスペクトルを測定する;(4)ペンタエリスリトール標品の測定結果から得られる検量線に基づき、重水層中のペンタエリスリトール量を定量し、発泡粒子の含むペンタエリスリトール量とする。当該方法を分液法と称する場合もある。
なお、架橋剤を使用した発泡粒子は有機溶媒に完全に溶解しない場合がある。そのため、架橋剤を使用して得られた発泡粒子X中のペンタエリスリトール含有量を算出したい場合、以下のようにする;(1)架橋剤を使用しないこと以外は発泡粒子Xの製造方法と全く同じ条件で発泡粒子を製造し、発泡粒子Yを得る;(2)発泡粒子Yのペンタエリスリトール量を定量する;(3)発泡粒子Y中のペンタエリスリトール含有量を、発泡粒子X中のペンタエリスリトール含有量と見做す。
なお、樹脂粒子中に含まれるペンタエリスリトール以外の成分(例えば、脂肪酸アミドなど)については、分散工程において樹脂粒子から溶出する虞は少ない。そのため、樹脂粒子中に含まれるペンタエリスリトール以外の成分については、P3HA100重量部に対する添加部数あるいは供給部数から算術計算し、得られた結果を発泡粒子中の含有量とすることができる。
本発泡粒子の製造方法としては、上述した本製造方法が最も好ましいが、これに限定されるものではない。例えば、以下(r1)~(r3)に記載の製造方法であっても、本発泡粒子を得ることができる:
(r1)前記(樹脂粒子調整工程)によって得られた樹脂粒子を耐圧容器に入れ、水系分散媒を使用せずに、発泡剤を当該耐圧容器に圧入する。必要に応じて前記耐圧容器を昇温し、保持することで発泡剤を含む樹脂粒子を得る。次いで、前記耐圧容器を減圧し大気圧に戻した後、発泡剤を含む樹脂粒子を、前記耐圧容器内で、または別の耐圧容器に移して、水蒸気等の加熱手段で加熱し、前記発泡剤が含浸された樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得る方法;
(r2)前記(樹脂粒子調整工程)における、前記(溶融混練工程)において、樹脂組成物を溶融混練する際に、溶融混練装置に架橋剤と発泡剤を圧入し、架橋剤と発泡剤とを含む樹脂組成物を調整する。次いで、当該樹脂組成物を溶融混練装置に備えられたダイスのノズルから吐出し、吐出と同時に冷却しつつ樹脂組成物を切断装置により切断することにより、発泡剤を含む樹脂粒子を得る。当該樹脂粒子を耐圧容器に移し、水蒸気等の加熱手段で加熱し、前記樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得る方法;
(r3)前記(樹脂粒子調整工程)における、前記(溶融混練工程)において、樹脂組成物を溶融混練する際に、溶融混練装置に架橋剤と発泡剤を圧入し、架橋剤と発泡剤とを含む樹脂組成物を調整する。次いで、当該樹脂組成物を溶融混練装置に備えられたダイスのノズルから吐出し、吐出と同時に当該樹脂組成物を発泡させつつ切断装置により切断することにより、発泡粒子を得る方法。
前記(r1)において、発泡剤を耐圧容器内に圧入する際の圧力は0.01MPa(ゲージ圧)~10.00MPa(ゲージ圧)が好ましく、0.03MPa(ゲージ圧)~5.00MPa(ゲージ圧)がより好ましい。
前記(r1)および(r2)において、発泡剤を含む樹脂粒子を水蒸気等によって加熱する際の耐圧容器内の温度としては、100℃~150℃が好ましく、105℃~145℃がより好ましい。
前記(r2)および(r3)において、溶融混練装置に架橋剤と発泡剤を圧入する際の圧力は3MPa(ゲージ圧)~30MPa(ゲージ圧)が好ましく、5MPa(ゲージ圧)~15MPa(ゲージ圧)がより好ましい。
前記(r1)~(r3)の製造方法は、水系分散媒を用いないことから、発泡粒子の製造過程において、樹脂粒子の含むペンタエリスリトールが溶出しない。すなわち、樹脂粒子の含むペンタエリスリトール量が、発泡粒子の含むペンタエリスリトール量となると言える。それゆえ、前記(r1)~(r3)の製造方法においては、樹脂粒子の含むペンタエリスリトール量、すなわち、(溶融混練工程)におけるペンタエリスリトールの使用量を、所望の発泡粒子の含むペンタエリスリトール量(例えば、P3HA100重量部に対し0.01重量部~4.50重量部)と同じ量に調整することが好ましい。
(二段発泡工程)
本製造方法において、発泡工程だけでは、所望の見掛け密度の発泡粒子が得られない場合がある。その場合、本製造方法は、発泡工程で得られた発泡粒子をさらに膨張させる二段発泡工程をさらに含んでいてもよい。二段発泡工程としては、発泡工程で得られた発泡粒子をさらに膨張させることにより、発泡工程で得られた発泡粒子の見掛け密度よりもさらに小さい見掛け密度の発泡粒子を得られる限り特に限定されない。二段発泡工程としては、例えば、以下のような態様が挙げられる:(s1)発泡工程で得られた発泡粒子を容器内に供給する;(s2)容器内に空気または二酸化炭素などの無機ガスを供給して容器内圧力を昇圧する;(s3)前記(s2)により、発泡粒子に当該無機ガスを含浸させ、発泡粒子内の圧力(以下、「発泡粒子内圧」と称する場合がある。)を常圧よりも高くする;(s4)その後、当該発泡粒子を水蒸気等で加熱して更に膨張させ、所望の見掛け密度の発泡粒子を得る。二段発泡工程にて得られる発泡粒子を二段発泡粒子と称する場合がある。また、二段発泡工程を行う場合、前記発泡工程を一段発泡工程と称し、一段発泡工程で得られる発泡粒子を一段発泡粒子と称する場合がある。
二段発泡工程における、発泡粒子内圧は、0.15MPa(絶対圧)~0.60MPa(絶対圧)が好ましく、0.30MPa(絶対圧)~0.60MPa(絶対圧)がより好ましい。
二段発泡工程において(前記s2およびs3において)、発泡粒子に当該無機ガスを含浸させるときの、容器内温度としては、10℃~90℃が好ましく、20℃~90℃がより好ましく、40℃~90℃がさらに好ましい。
二段発泡工程において(前記s4において)、発泡粒子を加熱する水蒸気等の圧力(以下、「二段発泡圧力」と称する場合がある。)は、用いる発泡粒子の特性および所望の見掛け密度によって異なり、一概には規定できない。二段発泡圧力は、0.01MPa(ゲージ圧)~0.17MPa(ゲージ圧)が好ましく、0.03MPa(ゲージ圧)~0.11MPa(ゲージ圧)がより好ましい。
二段発泡粒子のDSC比、ゲル分率および見掛け密度としては、それぞれ、発泡粒子のDSC比、ゲル分率および見掛け密度と同じ態様であることが好ましい。すなわち、二段発泡粒子のDSC比、ゲル分率および見掛け密度としては、上述の(DSC比)の項、(ゲル分率)の項および(密度)の項の記載を適宜援用できる。
本発明の別の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法は、次のような構成であってもよい:〔2.ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子〕の項に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法であって、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)100重量部と、ペンタエリスリトール0.01重量部~20.00重量部とを含む、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子を発泡させる発泡工程を含む、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
〔4.P3HA系発泡成形体〕
本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体は、〔2.ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子〕の項に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を成形してなる発泡成形体である。本発泡成形体は、〔2.ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子〕の項に記載の発泡粒子を含む発泡成形体であるともいえる。
本発泡成形体は、上述の構成を有するため、内部融着性に優れるという利点を有する。本明細書において、本発泡成形体の内部融着性は、内部融着率によって評価される。本発泡成形体は、内部融着率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることがよりさらに好ましく、100%であることが最も好ましい。内部融着率が80%以上である発泡成形体は、耐衝撃性に優れるという利点を有する。
本明細書において、内部融着率とは、以下の(1)~(4)の方法によって測定した値である:(1)発泡成形体の任意の一面に対して、カッターで垂直方向に、当該面を有する部位の垂直方向の厚さの1/20~1/5の切り込みを入れる;(2)その後、発泡成形体を切り込みに沿って手で破断する;(3)得られた破断面のうち、前記切り込み部分を除き、かつ前記厚さ方向の中央を含むようにして縦(厚さ方向)5mm~50mm×横10mm~200mmの範囲を目視で観察し、当該範囲内に存在する全発泡粒子、および当該範囲内において粒子界面以外で破断している発泡粒子(すなわち発泡粒子自体が破断している発泡粒子)の数を計測する;(4)以下の式(4)に基づき内部融着率を算出する;
内部融着率(%)=(縦(厚さ方向)5mm~50mm×横10mm~200mmの前記範囲内において粒子界面以外で破断している発泡粒子数/当該範囲内に存在する全発泡粒子数)×100・・・(4)。
本発泡成形体は、X、YおよびZ方向の少なくとも1方向において、寸法(長さ)が異なる部位を有することが好ましい。
後述するように、本発泡成形体の製造では、駆動し得ない固定型と当該固定型に対して駆動可能な移動型とを備えている金型を使用し得る。そのような金型を使用して発泡成形体を製造する場合、移動型の駆動方向を得られる発泡成形体の厚さ方向とする。そのような金型を使用して発泡成形体を製造する場合、得られる発泡成形体は、発泡成形体の厚さ方向に、当該発泡成形体の製造に用いる移動型が発泡成形体に入り込む第一の領域、および発泡成形体が移動型に入り込む第二の領域からなる群から選択される1つ以上の領域を有することが好ましい。
(a)X、YおよびZ方向の少なくとも1方向において、寸法(長さ)が異なる部位を有する発泡成形体、または(b)発泡成形体の厚さ方向に、当該発泡成形体の製造に用いる移動型が発泡成形体に入り込む第一の領域、および発泡成形体が移動型に入り込む第二の領域からなる群から選択される1つ以上の領域を有する発泡成形体は、複雑な形状を有する発泡成形体ともいえる。従来技術で得られる発泡粒子を用いて上述したような複雑な形状を有する発泡成形体を製造する場合、得られる発泡成形体は、発泡成形体の部位によっては内部融着率が低下する場合があった。しかしながら、本発泡粒子を用いて複雑な形状を有する発泡成形体を製造する場合、得られる発泡成形体は、全ての部位において内部融着率が高いという利点を有する。
本発泡成形体の一例を、具体的には上述したような複雑な形状を有する発泡成形体の一例を、図3および図4に示す。図3は、本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡成形体100を一方向から見た斜視図である。図4は、図3のA-A線矢視断面図である。
P3HA系発泡成形体100は、後述するように、駆動し得ない固定型と駆動可能な移動型とを備えた金型によって製造される。P3HA系発泡成形体100のX方向は、移動型の駆動方向である。図4に示すように、P3HA系発泡成形体100は、移動型の駆動方向において、Hの長さを有する底部とHの長さを有する立壁部とを有している。HとHは長さが異なる。すなわち、P3HA系発泡成形体100は、(a)X方向において寸法(長さ)が異なる部位を有しており、(b)移動型の駆動方向において異なる長さの部位を有しており、(c)発泡成形体の厚さ方向に、当該発泡成形体の製造に用いる移動型が発泡成形体に入り込む第一の領域または発泡成形体が移動型に入り込む第二の領域の何れかの領域を有している。
〔5.ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体の製造方法は、〔2.ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子〕の項に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を、金型が備える少なくとも2つの型から形成される成形空間内に充填する充填工程、および充填された前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を加熱して、当該ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子同士を融着させる融着工程、を含む。
本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡成形体の製造方法は、上述の構成を有するため、内部融着性に優れる発泡成形体を提供できるという利点を有する。
本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡成形体の製造方法では、固定型と移動型とを備えている金型を使用することが好ましい。当該金型の移動型は駆動可能な型ともいえ、当該金型の固定型は駆動し得ない型ともいえる。また、固定型および移動型は、当該移動型の駆動方向において異なる長さの部位が形成された成形空間を形成可能であることがより好ましい。
移動型の駆動方向において異なる長さの部位が形成された成形空間を形成可能である固定型および移動型を備える金型を金型Xとする。また金型Xにおける成形空間を成形空間Xとする。成形空間Xにおける移動型の駆動方向において異なる長さの部位は、その他の部位と比較して、(a)充填される発泡粒子の量に差があり、(b)成形時の水蒸気の移動距離に差がある。そのため、従来の発泡粒子と金型Xを用いて発泡成形体を製造するとき、(a)従来の発泡粒子の成形空間Xにおける充填率にばらつきが生じる場合、および(b)充填された発泡粒子への水蒸気の通りが不均一となる場合、がある。その結果、従来の発泡粒子と金型Xを用いて製造された発泡成形体において、発泡成形体の部位によっては内部融着率が低下する場合があった。一方、本発泡粒子と金型Xを用いて製造された本発泡成形体は、発泡成形体の全ての部位において内部融着率が高いという利点を有する。
本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡成形体の製造方法の具体的態様としては、例えば以下(b1)~(b6)を順に含む製造方法(型内発泡成形法)が挙げられるが、かかる製造方法に限定されるものではない:
(b1)駆動し得ない固定型と駆動可能な移動型とから構成される金型を型内発泡成形機に搭載する。ここで、固定型および移動型は、固定型に向かって移動型を駆動させる(当該操作を「型閉じ」と称する場合がある)ときに、移動型の駆動方向において異なる長さの部位が形成された閉鎖空間を、固定型および移動型の内部に形成可能である;
(b2)固定型と移動型とが完全に型閉じされないように、わずかな隙間(例えば、発泡成形体の底部の厚さ方向、または立壁部の高さ方向に10mmの隙間(クラッキングとも称する))が形成されるように、固定型に向かって移動型を駆動させる;
(b3)固定型および移動型の内部に形成された成形空間内に、空気で加圧処理していない発泡粒子を、例えば充填機を通して、充填する;
(b4)固定型と移動型とが完全に型閉じするように移動型を駆動させる(すなわち、完全に型閉じする);
(b5)金型を水蒸気で予熱した後、金型を水蒸気で一方加熱および逆一方加熱し、さらに金型を水蒸気で両面加熱することにより、型内発泡成形を行う;
(b6)型内発泡成形物を金型から取り出し、乾燥(例えば、75℃で乾燥)することで、発泡成形体を得る。
前記(b5)において、「一方加熱および逆一方加熱のときの水蒸気圧力」を「水蒸気圧力A」とし、「両面加熱のときの水蒸気圧力」を「水蒸気圧力B」とする。
前記水蒸気圧Aの圧力としては特に限定されないが、0.01MPa(ゲージ圧)~0.15MPa(ゲージ圧)であることが好ましく、0.02MPa(ゲージ圧)~0.13MPa(ゲージ圧)であることがより好ましく、0.04MPa(ゲージ圧)~0.13MPa(ゲージ圧)であることがさらに好ましい。当該構成によると、内部融着率の高い発泡成形体が得られる傾向があるという利点を有する。特に、前記水蒸気圧力Aを型内発泡成形する際の水蒸気圧力Bの1/2程度の圧力とすることで、過剰な加圧を必要とせず、経済的に有利となり、かつ内部融着率の高い発泡成形体が提供できるため好ましい。
本明細書において、P3HA系発泡成形体の製造方法における水蒸気圧力Bを「成形圧力」とする。本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡成形体の製造方法では、〔2.ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子〕の項に記載の発泡粒子を使用することにより、従来技術よりも低い成形圧力で内部融着性に優れる発泡成形体を提供できる。換言すれば、本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡成形体の製造方法では、従来よりも低い最低成形圧力で内部融着性に優れる発泡成形体を提供できる。
本明細書において、P3HA系発泡成形体の製造方法における最低成形圧力とは、以下の(1)~(3)の方法によって測定した値である:
(1)水蒸気圧力Bを0.10MPa(ゲージ圧)から0.20MPa(ゲージ圧)の間で0.01MPa(ゲージ圧)ずつ変化させ、かつ水蒸気圧力Aを、水蒸気圧力Bの1/2の圧力に各々設定し、それぞれの水蒸気圧力Bにおいて、金型内で発泡粒子を型内発泡成形し、発泡成形体を得る;(2)それぞれの発泡成形体について、内部融着率を測定する;(3)最も高い内部融着率の発泡成形体が得られたときの水蒸気圧力Bのうち最も低い圧力を最低成形圧力とする。内部融着率の測定方法は、上述した通りである。
水蒸気圧力Bは0.15MPa(ゲージ圧)以下が好ましく、0.14MPa(ゲージ圧)以下がより好ましく、0.13MPa(ゲージ圧)以下がさらに好ましい。水蒸気圧力Bが低いほど、経済的な負担が小さくなる。水蒸気圧力Bの下限値は特に限定されないが、0.08MPa(ゲージ圧)以上が好ましく、0.10MPa(ゲージ圧)以上がより好ましい。水蒸気圧力Bの下限値が上述した範囲内である場合、内部融着率が高く、耐衝撃性に優れる発泡成形体が得られる傾向があるという利点を有する。
本発明の一実施形態において、最低成形圧力は小さいほど好ましく、例えば、0.15MPa(ゲージ圧)以下が好ましく、0.14MPa(ゲージ圧)以下がより好ましく、0.13MPa(ゲージ圧)以下がさらに好ましい。最低成形圧力が上述した範囲内である場合、経済的な負担の少ない発泡成形体といえる。
なお、一般的には、水蒸気圧力Aおよび/または水蒸気圧力Bが高いほど、得られる発泡成形体の内部融着率は高くなる傾向があるが、当該圧力が一定の値を超えると、内部融着率は変化しなくなる。水蒸気圧力Aおよび/または水蒸気圧力Bが高いほど、水蒸気を加圧するためのコストが発生する。換言すると、水蒸気圧力Aおよび/または水蒸気圧力Bが低いほど、経済的に有利となる。そのため、発泡成形体を製造するときの水蒸気圧力Aおよび水蒸気圧力Bは、得られる発泡成形体の高い内部融着率と経済性とを両立し得ることから、最も高い内部融着率の発泡成形体が得られる範囲内で、最も低い圧力であることが好ましく、水蒸気圧力Bは最低成形圧力であることが好ましい。また、水蒸気圧力Aおよび/または水蒸気圧力Bが過剰に高い(例えば成形圧力が0.25MPa(ゲージ圧)以上である)場合、発泡成形体の表面のみが優先して融着してしまい、水蒸気が発泡成形体内部まで通らなくなる。その結果、却って内部融着率が低下するばかりでなく、成形後の得られる発泡成形体の変形等が著しく大きくなる場合がある。
前記(b1)~(b6)を含む製造方法により、図3および図4に示すP3HA系発泡成形体100を製造できる。
前記(b1)~(b6)を含む製造方法として、空気で加圧処理していない発泡粒子を金型の成形空間内に充填する方法について説明したが、発泡粒子を金型内に充填するとき、発泡粒子を加圧処理してもよい。本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡成形体の製造方法は、例えば以下(c1)~(c3)の製造方法であってもよい。
(c1)発泡粒子を無機ガスで加圧処理して、当該発泡粒子内に無機ガスを含浸させ、所定の発泡粒子内圧を付与した後、当該発泡粒子を金型に充填し、水蒸気で金型を加熱する方法;
(c2)発泡粒子を金型に充填した後、当該金型内の体積を10%~75%減ずるように圧縮し、その後、金型を水蒸気で加熱する方法;
(c3)発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し、当該発泡粒子の回復力を利用して、金型を水蒸気で加熱する方法。
前記(c1)における無機ガスとしては、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用できる。これらの中でも、空気または二酸化炭素が好ましい。
前記(c1)における発泡粒子内圧は0.10MPa(絶対圧)~0.30MPa(絶対圧)が好ましく、0.15MPa(絶対圧)~0.30MPa(絶対圧)がより好ましい。
前記(c1)において、無機ガスを発泡粒子に含浸させるときの容器内の温度としては、20℃~90℃が好ましく、40℃~80℃がより好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲を限定されるものではない。
〔材料〕
実施例および比較例で使用した物質を以下に示す。
(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート))
P3HA-1:P3HB3HH(発明者が作製、モノマー比率は3HB/3HH=95/5(モル%/モル%)、融点145.0℃)
P3HA-2:P3HB3HH(発明者が作製、モノマー比率は3HB/3HH=89/11(モル%/モル%)、融点132.0℃)
なお、P3HA-1およびP3HA-2は、国際公開WO2009/145164の段落[0064]~[0125]に記載の方法に準拠して作製した。
(ペンタエリスリトール)
ペンタエリスリトール(三菱ケミカル社製ノイライザーP)
(脂肪酸アミド)
ベヘン酸アミド(東京化成工業株式会社製)
エルカ酸アミド(東京化成工業株式会社製)
(気泡調整剤)
タルク(林化成社製タルカンパウダーPKS)
(発泡剤)
二酸化炭素(エア・ウォーター株式会社製)
窒素(エア・ウォーター株式会社製)
(架橋剤)
過酸化ベンゾイル(BPO:日油株式会社製ナイパーBW)
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(TBEC:日油株式会社製パーブチルE)
(架橋助剤)
メタクリル酸メチル(富士フィルム和光純薬株式会社製)
(分散剤)
第三リン酸カルシウム(太平化学産業社製)
(分散助剤)
アルカンスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製ラテムルPS)
カオリン(BASF社製ASP-170)
〔測定方法〕
実施例および比較例において実施した評価方法に関して、以下に説明する。
(樹脂粒子の融点(Tmp)の測定)
樹脂粒子の融点(Tmp)は、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製DSC6200型)を用いて測定した。具体的な操作手順は以下(1)~(3)の通りであった:(1)樹脂粒子5mg~6mgを量り取った;(2)樹脂粒子の温度を10.0℃/分の昇温速度で10.0℃から190.0℃まで昇温して、樹脂粒子を融解した;(3)前記(2)の過程で得られるDSC曲線の、最も高温の融解ピークの温度を樹脂粒子の融点とした。
(発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量の測定)
発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量は、以下の(1)~(3)の方法によって測定した:(1)発泡粒子20mgをクロロホルム0.8ml中に完全に溶解した;(2)前記クロロホルム中に、さらに(3-(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム-2,2,3,3-d4)1.6mgを含む重水1.6mlmlを加えて分液操作を行い、ペンタエリスリトールを重水層に移行させた;(3)H-NMRによって、(a)1.6mg~9.6mg(1.6mg、5.0mg、7.0mg、9.6mg)のペンタエリスリトール標品と、(b)(2)で抽出した重水層((3-(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム-2,2,3,3-d4)1.6mgを含む)中のペンタエリスリトール量のスペクトルを測定し、ペンタエリスリトール標品の測定結果から得られる検量線に基づき、重水層中のペンタエリスリトール量を定量し、発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量を算出した。なお、架橋構造を有する発泡粒子はクロロホルムに完全に溶解しない場合がある。そのため、架橋剤を使用しないこと以外は、各実施例および比較例と同じ条件で製造して得られた発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量を定量し、各実施例および比較例の発泡粒子(すなわち、架橋構造を有する発泡粒子)中のペンタエリスリトール含有量とした。
(発泡粒子のDSC比の測定)
発泡粒子のDSC比の測定(算出)では、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製DSC6200型)を使用した。示差走査熱量計を用いる発泡粒子のDSC比の測定(算出)方法は次の(1)~(6)の通りであった:(1)発泡粒子5mg~6mgを量り取った;(2)発泡粒子の温度を10.0℃/分の昇温速度にて10.0℃から190.0℃まで昇温して、発泡粒子を融解した;(3)前記(2)の過程で得られたDSC曲線において、融解開始前の温度を表す点と融解終了後の温度を表す点とを直線で結びベースラインを作成した;(4)高温側の融解ピークまたは最も高温の融解ピークと隣の融解ピークとの間の極大点を通る直線を、X軸に対して垂直方向に引いた;(5)ベースラインと極大点を通る直線とDSC曲線とに囲まれる高温側の領域から算出される熱量を高温側融解熱量(J/g)とし、ベースラインとDSC曲線とに囲まれる領域から算出される熱量を全融解熱量(J/g)とした;(6)以下の式(1)からDSC比を算出した:
DSC比(%)=(高温側融解熱量/全融解熱量)×100・・・(1)。
(発泡粒子のゲル分率の測定)
発泡粒子のゲル分率の測定方法は以下の(1)~(5)の通りであった:(1)150mlのフラスコに、1gの発泡粒子と、100mlのクロロホルムとを入れた;(2)大気圧下、62℃で、フラスコ内の混合物を8時間加熱還流した;(3)得られた加熱処理物を100メッシュの金網を備える吸引濾過装置を用いて濾過処理した;(4)金網上の濾過処理物を、80℃のオーブン中で真空条件下にて8時間乾燥し、乾燥物の重量Wg(g)を測定した;(5)以下の式により、ゲル分率を算出した:
ゲル分率(重量%)=Wg/1×100。
(発泡粒子の密度の測定)
発泡粒子の密度の測定方法は、以下の(1)~(3)の通りであった:(1)エタノールが入ったメスシリンダーを用意し、当該エタノール中に重量Wd(g)の発泡粒子を沈めた;(2)エタノールの水位上昇分(水没法)より読みとられる発泡粒子の容積をVd(cm)とした;(3)以下の式により、発泡粒子の密度を算出した;
密度(g/cm)=Wd/Vd。
(発泡成形体の内部融着率および最低成形圧力の測定)
以下の説明において、「一方加熱および逆一方加熱のときの水蒸気圧力」を「水蒸気圧力A」とし、「両面加熱のときの水蒸気圧力」を「水蒸気圧力B」とする。発泡成形体の内部融着率および成形圧力の測定は、以下の(1)~(3)の通りであった:(1)水蒸気圧力Bを0.10MPa(ゲージ圧)から0.20MPa(ゲージ圧)の間で0.01MPa(ゲージ圧)ずつ変化させ、かつ水蒸気圧力Aを、水蒸気圧力Bの1/2の圧力に各々設定し、それぞれの水蒸気圧力Bにおいて、金型内で発泡粒子を型内発泡成形し、発泡成形体を得た;(2)それぞれの発泡成形体について、内部融着率を測定した;(3)最も高い内部融着率の発泡成形体が得られたときの水蒸気圧力Bのうち最も低い圧力を最低成形圧力とした。
ここで、内部融着率の測定は、以下の(1)~(4)の通りであった:(1)発泡成形体の長辺立壁部の外側面に対して、カッターで垂直方向(図1X方向)に、厚さ(30mm)の1/15~1/6の切り込みを入れた;(2)その後、発泡成形体を切り込みに沿って手で破断した;(3)得られた破断面のうち、切り込み部分を除き、かつ厚さ方向の中央を含むようにして縦25mm(厚さ方向)×横90mmの範囲を目視で観察し、当該範囲内に存在する全発泡粒子、および当該範囲内において粒子界面以外で破断している発泡粒子(すなわち発泡粒子自体が破断している発泡粒子)の数を計測した;(4)以下の式(4)に基づき内部融着率を算出する;
内部融着率(%)=(縦25mm(厚さ方向)×横90mmの前記範囲内において粒子界面以外で破断している発泡粒子数/当該範囲内に存在する全発泡粒子数)×100・・・(4)。
〔実施例1〕
(樹脂粒子製造工程)
P3HA系組成物の溶融混練には、二軸押出機(東芝機械社製TEM-26SX)を用いた。100重量部のP3HA-1と、ペンタエリスリトール1.00重量部と、タルク0.10重量部とを計量し、ドライブレンドして、P3HA系組成物を調製した。調製したP3HA系組成物を二軸押出機に供給し、当該P3HA系組成物をシリンダー設定温度130℃~160℃にて溶融混練した(溶融混練工程)。押出機の先端に取り付けたダイスのノズルから179℃の溶融混練されたP3HA系組成物を吐出した。吐出されたP3HA系組成物を、50℃の水で水冷後、切断して、1個当たりの重量が3.5mgであり、長さ/直径が2.0の円柱状のP3HA系樹脂粒子を得た(粒子成形工程)。樹脂粒子製造工程で使用した各物質の種類および量を表1の「樹脂配合」欄に示す。
(発泡工程)
前記(樹脂粒子製造工程)で得られたP3HA系樹脂粒子100重量部(2.5Kg)と、純水200重量部と、架橋剤としてBPO2.0重量部と、分散剤として第三リン酸カルシウム1.0重量部と、分散助剤としてアルカンスルホン酸ナトリウム0.05重量部とを、内容積10Lの耐圧容器内に供給した。耐圧容器内の原料を攪拌した。以降、分散液の放出が終わるまで、耐圧容器内の内容物(分散液)を攪拌し続けた。耐圧容器内に窒素を導入して真空引きを行い、耐圧容器内の酸素を除去した。
さらに、耐圧容器内に発泡剤として二酸化炭素を供給し、分散液を調製した(分散工程)。その後、耐圧容器内の温度を129.0℃の発泡温度まで昇温した。さらに、耐圧容器に二酸化炭素を供給して耐圧容器内の圧力を3.3MPa(ゲージ圧)の発泡圧力まで昇圧した(昇温-昇圧工程)。次いで、耐圧容器内の温度および圧力を、それぞれ、発泡温度および発泡圧力付近で30分間保持した(保持工程)。保持工程後、耐圧容器下部のバルブを開き、直径3.6mmの開口オリフィスを通して、前記耐圧容器の分散液を大気圧下に放出し、P3HA系発泡粒子を得た(放出工程)。当該発泡粒子の表面に付着した分散剤等をヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液と水で洗浄した後、発泡粒子を75℃で乾燥した。発泡工程で使用した各物質の種類および量を表1の「発泡処方」欄に示す。得られた発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量、DSC比、ゲル分率、密度を測定した。結果を表1に示す。なお、発泡粒子の長さ/直径は1.0であり、形状は球形または略球形であった。
(P3HA系発泡成形体の製造)
前記(発泡工程)で得られた発泡粒子を用い、以下に記載する方法により、内寸法が長辺400×短辺200×高さ100mmであり、底部および立壁部の厚さが30mmである箱型発泡成形体を製造した。
まず、上記寸法の箱型発泡成形体を得ることのできる固定型と移動型とから構成される金型を型内発泡成形機(DAISEN社製KD-345)に搭載した。そして、固定型と移動型との間に10mmの隙間(底部の厚さ方向および立壁部の高さ方向に10mmのクラッキング)が形成され、かつ内部に成形空間を形成するように、固定型に対して移動型を駆動させた。次いで、空気で加圧処理していない発泡粒子を、充填機(DAISEN社製)を通して金型の成形空間内に充填した。次に、移動型を駆動させ完全に金型を閉じた。金型を、水蒸気で、8秒間一方加熱、5秒間逆一方加熱、および15秒間両面加熱して箱型発泡成形体を得た。得られた箱型発泡成形体を金型から取り出し、75℃で乾燥した。
ここで、(発泡成形体の内部融着率および成形圧力の測定)の項に記載の通り、水蒸気圧力Bを0.01MPa(ゲージ圧)ずつ変化させ、複数の水蒸気圧力Bで発泡成形体を製造し、それら発泡成形体を用いて内部融着率および最低成形圧力を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例2〕
ペンタエリスリトールを0.05重量部としたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例3〕
ペンタエリスリトールを20.00重量部としたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例4〕
発泡温度を130.0℃、発泡圧力を3.5MPa(ゲージ圧)としたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例5〕
発泡温度を129.5℃としたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例6〕
発泡圧力を3.2MPa(ゲージ圧)としたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例7〕
ペンタエリスリトールを2.00重量部とし、発泡温度を128.5℃とし、発泡圧力を3.2MPa(ゲージ圧)としたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例8〕
P3HA系組成物の調製において、P3HA-1等とともに、さらに脂肪酸アミドであるベヘン酸アミド1.00重量部をドライブレンドしたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例9〕
P3HA系組成物の調製において、P3HA-1等とともに、さらに脂肪酸アミドであるベヘン酸アミド0.50重量部およびエルカ酸アミド0.50重量部をドライブレンドしたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
〔実施例10〕
BPOを1.0重量部としたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表2に示す。
〔実施例11〕
分散工程において、P3HA系樹脂粒子等とともに、架橋助剤としてメタクリル酸メチル0.01重量部を耐圧容器に供給したこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表2に示す。
〔実施例12〕
P3HA-1に変えてP3HA-2を100重量部使用し、発泡温度を114.0℃としたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表2に示す。
〔実施例13〕
(a)架橋剤として、BPOに変えてTBECを2.0重量部使用し、(b)P3HA系組成物の調製において、P3HA-1等とともに、さらに脂肪酸アミドであるベヘン酸アミド0.50重量部およびエルカ酸アミド0.50重量部をドライブレンドしたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表2に示す。
〔実施例14〕
分散剤として、第三リン酸カルシウムに変えてカオリンを1.0重量部使用したこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表2に示す。
〔実施例15〕
発泡剤を二酸化炭素から窒素に変更したこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表2に示す。
〔実施例16〕
架橋剤を使用しなかったこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表2に示す。
〔実施例17〕
P3HA系組成物の調製において、P3HA-1等とともに、さらに脂肪酸アミドであるベヘン酸アミド0.10重量部およびエルカ酸アミド0.10重量部をドライブレンドしたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2022102730000002
Figure 2022102730000003
表1、および表2中、「MPa(G)」は、「MPa(ゲージ圧)」を意図する。
〔比較例1〕
P3HA系組成物の調製において、ペンタエリスリトールを使用しなかったこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表3に示す。
〔比較例2〕
ペンタエリスリトールを25.00重量部としたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表3に示す。なお、比較例2の発泡粒子は、樹脂粒子を製造する際の二軸押出機による押出安定性が不良であり、樹脂粒子の1個当たりの重量、および長さ/直径が大きくばらつき、得られる発泡粒子の大きさおよび形状も大きくばらついていた。また、発泡粒子表面がべたついて発泡粒子同士がくっついたものが多くみられた。それらの結果、比較例2の発泡粒子は、型内発泡成形する際の金型充填性が不良であった。
〔比較例3〕
P3HA系組成物の調製において、ペンタエリスリトールを使用せず、P3HA-1等とともに、さらに脂肪酸アミドであるベヘン酸アミド1.00重量部をドライブレンドしたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表3に示す。
〔比較例4〕
(a)P3HA-1をP3HA-2に変更し、(b)P3HA系組成物の調製において、ペンタエリスリトールを使用せず、(c)発泡温度を114.0℃としたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表3に示す。
Figure 2022102730000004
表3中、「MPa(G)」は、「MPa(ゲージ圧)」を意図する。 〔まとめ〕
実施例2~17、比較例1、3、および4において製造した発泡粒子の長さ/直径は1.0であり、形状は球形または略球形であった。
表1~表3より、以下のことが明らかにわかる:
(1)実施例1~17の発泡成形体は、本発明の一実施形態の範囲の量のペンタエリスリトールを含む発泡粒子を成形してなる発泡成形体である;
(2)実施例1~17の発泡成形体は、発泡成形体の製造時の最低成形圧力が低く、内部融着率が高い(内部融着性が良好である);
(3)実施例1~17と、比較例1、3、4との比較より、ペンタエリスリトールを使用しない場合、得られる発泡成形体の内部融着率が大きく劣る;
(4)実施例1~17と、比較例2との比較より、ペンタエリスリトールを使用したとしても、使用量が本発明の範囲を超えて多い場合、(a)樹脂粒子の造粒が不安定となる結果発泡粒子の大きさおよび形状が大きくばらつくとともに、(b)発泡粒子同士がくっついたものが多く、(c)型内発泡成形時の金型充填性が不良となる結果、(d)内部融着率が低い(内部融着性が不良な)発泡成形体が得られる。
本発明の一実施形態によると、低い成形圧力で内部融着性に優れたP3HA系発泡成形体を提供し得る、P3HA系発泡粒子および発泡成形体を提供することができる。内部融着性に優れたP3HA系発泡成形体は、生分解性を有し、かつ耐衝撃性に優れている。そのため、本発明の一実施形態は、包装用緩衝材、農産箱、魚箱、自動車部材、建築材料および土木材料等の分野で好適に利用することができる。

Claims (7)

  1. ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子であって、
    ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)およびペンタエリスリトールを含み、
    前記ペンタエリスリトールの含有量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子100重量%に対して0.01重量%~4.50重量%である、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
  2. DSC比が0.5%~40.0%であるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子であり、
    ここで、前記DSC比は、以下式(1)で算出され、
    DSC比(%)=(高温側融解熱量/全融解熱量)×100・・・(1)、
    前記式(1)中、前記高温側融解熱量および前記全融解熱量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子のDSC曲線から得られる熱量である、請求項1に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
  3. ゲル分率が50重量%~80重量%である、請求項1または2に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
  4. 前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子が、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子100重量%に対して、さらに脂肪酸アミド0.01重量%~1.50重量%を含む、請求項1~3の何れか1項に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
  5. 請求項1~4の何れか1項に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を成形してなる、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体。
  6. ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)100重量部と、ペンタエリスリトール0.01重量部~20.00重量部とを含むポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子を発泡させる発泡工程を含み、
    前記発泡工程は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子を水系分散媒中に分散させる分散工程を含む、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
  7. 請求項1~4の何れか1項に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を、金型が備える少なくとも2つの型から形成される成形空間内に充填する充填工程、および
    充填された前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を加熱して、当該ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子同士を融着させる融着工程、
    を含むポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体の製造方法。
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WO2024090332A1 (ja) * 2022-10-24 2024-05-02 株式会社カネカ 脂肪族ポリエステル系発泡粒子の製造方法

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