JP2022100375A - 固体電解コンデンサ及びその製造方法 - Google Patents
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本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法の一例は、以下の通りである。すなわち、表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回して、コンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に修復化成を施す(第1の工程)。続いて、このコンデンサ素子に、導電性ポリマーの粒子または粉末を含む分散体を含浸し、導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成する(第2の工程)。その後、このコンデンサ素子を所定の溶媒に浸漬又は接触させ、コンデンサ素子内の空隙部にこの溶媒を充填する(第3の工程)。そして、このコンデンサ素子を外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した後、エージングを行い、固体電解コンデンサを形成する(第4の工程)。
陽極箔と陰極箔からなる電極箔とセパレータを介して巻回したコンデンサ素子を形成し、修復化成を施す。
陽極箔としては、アルミニウム等の弁作用金属からなり、その表面を塩化物水溶液中での電気化学的なエッチング処理により粗面化して多数のエッチングピットを形成している。更にこの陽極箔の表面には、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して誘電体となる酸化皮膜層を形成している。陰極箔としては、陽極箔と同様にアルミニウム等からなり、表面にエッチング処理のみが施されているものを用いる。また、必要に応じて、2V程度の化成処理を施したものや、金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物からなる層を蒸着法により形成した陰極箔を用いても良い。
セパレータとしては、合成繊維を主体とする不織布からなるセパレータや、ガラス繊維からなるセパレータを用いることができる。合成繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維等が好適である。また、天然繊維からなるセパレータを用いてもよい。
陽極箔及び陰極箔には、それぞれの電極を外部に接続するためのリード線が、ステッチや超音波溶接等の公知の手段により接続される。さらに陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回し、コンデンサ素子を形成する。
上記のとおり作製したコンデンサ素子に、修復化成を施す。修復化成の化成液としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液を用いることができるが、なかでも、リン酸二水素アンモニウムを用いることが望ましい。また、浸漬時間は、5~120分が望ましい。
作製したコンデンサ素子に導電性ポリマーの粒子または粉末を含む分散体を含浸し、固体電解質層を形成する。
導電性ポリマーとしては、固体電解コンデンサに適用できるものであればよく、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、またはこれらの誘導体等が挙げられる。これらの中で好ましいのはポリチオフェンであり、さらにポリチオフェンの中でもPEDOTが特に好ましい。また、導電性ポリマーのドーパントとしてはポリスチレンスルホン酸(以下、PSSと記す)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
コンデンサ素子に導電性ポリマーの分散体を含浸し、乾燥することにより、導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成する。コンデンサ素子を導電性ポリマーの分散体に含浸する時間は、コンデンサ素子の大きさによって決まるが、径5mm×長さ3mm程度のコンデンサ素子では5秒以上、径9mm×長さ5mm程度のコンデンサ素子では10秒以上が望ましく、最低でも5秒間は含浸することが必要である。なお、長時間含浸しても特性上の弊害はない。また、コンデンサ素子に導電性ポリマーの分散体を含浸する際、または含浸後に、減圧状態で保持すると、静電容量(以下、Capと記す)が大きくなるため好適である。その理由は、電極箔に形成されたエッチングピットの中に導電性ポリマーの粒子又は粉末が入り込むためであると考えられる。また、導電性ポリマーの分散体の含浸ならびに乾燥は、必要に応じて複数回行ってもよい。
コンデンサ素子内で導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成した後、ポリオキシエチレングリセリン(以下、POEGと記す)及びその誘導体を含む溶媒を充填する。
溶媒の充填方法としては、コンデンサ素子がPOEG及びその誘導体を含む溶媒を適切に保持できる方法であれば特に限定されない。例えば、コンデンサ素子を溶媒に浸漬する方法や、コンデンサ素子に所定量の溶媒を滴下する方法、又は外装ケースに所定量の溶媒を滴下し、そこにコンデンサ素子を挿入する方法等が挙げられる。さらに、溶媒をコンデンサ素子へ充填させるために、必要に応じて減圧工程や加圧工程を行っても良い。
POEG及びその誘導体は、熱安定性が高いため、溶媒に含有することで固体電解コンデンサ使用時の溶媒の抜け量を抑制し、ΔCap、ESR特性が良好となる。溶媒中のPOEG又はその誘導体の添加量は、好ましくは10~60wt%である。溶媒中のPOEGの添加量が10wt%未満では、本発明の効果が得られないため好ましくない。さらに、溶媒中のPOEGの添加量が60wt%よりも多いと、溶媒の粘度が高くなり、コンデンサ素子に充填しにくいため好ましくない。
コンデンサ素子に充填する溶媒として、POEGとともに、その他の溶媒を含有しても良い。その他の溶媒としては、沸点が120℃以上の溶媒を用いることが好ましい。例としては、γ-ブチロラクトン、エチレングリコール、スルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
コンデンサ素子内に充填する溶媒に溶質を添加し、電解液としても良い。電解液としては、上記の溶媒と、有機酸、無機酸ならびに有機酸と無機酸との複合化合物の少なくとも1種のアンモニウム塩、四級アンモニウム塩、四級化アミジニウム塩、アミン塩等の溶質とからなる溶液を挙げることができる。上記有機酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、アジピン酸、安息香酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸、1,6-デカンジカルボン酸、1,7-オクタンジカルボン酸、アゼライン酸等のカルボン酸や、フェノール類が挙げられる。また、無機酸としては、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸エステル、炭酸、ケイ酸等が挙げられる。有機酸と無機酸の複合化合物としては、ボロジサリチル酸、ボロジ蓚酸、ボロジグリコール酸等が挙げられる。
チルアミン、エチルジメチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等が挙げられる。
さらに、溶媒に添加剤を添加することもできる。添加剤としては、ポリオキシエチレングリコール、ホウ酸と多糖類(マンニット、ソルビットなど)との錯化合物、ホウ酸と多価アルコールとの錯化合物、ニトロ化合物(o-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、o-ニトロフェノール、m-ニトロフェノール、p-ニトロフェノールなど)、リン酸エステルなどが挙げられる。
上記のような溶媒をコンデンサ素子に充填する場合、その充填量は、コンデンサ素子内の空隙部に充填できれば任意であるが、コンデンサ素子内の空隙部の3~100%が好ましい。溶媒の充填量が、コンデンサ素子内の空隙部の3%未満であると、本発明の効果が得られないため好ましくない。
空隙部に溶媒を充填したコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着し、加締め加工により封止する。その後、エージングを行い、固体電解コンデンサとした。
上記のように、コンデンサ素子内に導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成した後、このコンデンサ素子を、POEG若しくはその誘導体を含む溶媒に浸漬して、コンデンサ素子内の空隙部にこの溶媒を充填することにより、高温下でのΔCap、ESR特性、溶媒の抜け性が良好な結果となる。
EG:エチレングリコール
GBL:γ-ブチロラクトン
TMS:スルホラン
BSalA:ボロジサリチル酸
TMA:トリメチルアミン
Claims (5)
- 陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、導電性ポリマーの粒子または粉末を含む分散体を含浸させて導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成するとともに、
該固体電解質層が形成されたコンデンサ素子内の空隙部に、常温で液体状態のポリオキシエチレングリセリンを含む溶媒が充填されたことを特徴とする固体電解コンデンサ。 - 前記溶媒として、さらにγ-ブチロラクトンを前記溶媒全体に対して10~90wt%含むことを特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサ。
- 前記溶媒において、前記ポリオキシエチレングリセリンを10wt%~60wt%含有することを特徴とする請求項1又は2記載の固体電解コンデンサ。
- 前記溶媒において、前記ポリオキシエチレングリセリンを80wt%~100wt%含有することを特徴とする請求項1又は2記載の固体電解コンデンサ。
- 陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、導電性ポリマーの粒子または粉末を含む分散体を含浸させて導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成する工程と、
該固体電解質層が形成されたコンデンサ素子内の空隙部に、常温で液体状態のポリオキシエチレングリセリンを含む溶媒を充填する工程と、を有することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
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