JP2022099232A - フッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置 - Google Patents

フッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置 Download PDF

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Abstract

【課題】輝度が高い赤色発光の蛍光体を提供する。【解決手段】Kを含むアルカリ金属と、Siと、Alと、Mnと、Fと、を含む第一の組成を有するフッ化物蛍光体である。第一の組成は、アルカリ金属の総モル数を2とする場合に、SiとAlとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であり、Alのモル数が0を超えて0.1以下であり、Mnのモル数が0を超えて0.2以下であり、Fのモル数が5.9以上6.1以下である。フッ化物蛍光体は、立方晶系の結晶構造を有し、格子定数が0.8138nm以上である。【選択図】図3

Description

本開示は、フッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置に関する。
発光素子と蛍光体とを組み合わせた発光装置が種々開発され、照明、車載照明、ディスプレイ、液晶用バックライト等の幅広い分野で利用されている。例えば、液晶用バックライト用途の発光装置に用いる蛍光体には、色純度が高い、すなわち発光ピークの半値幅が狭いことが求められている。発光ピークの半値幅の狭い赤色発光の蛍光体として、特許文献1には、例えばKSiF:Mnで表される組成を有するフッ化物蛍光体が開示されている。
特開2012-224536号公報
発光装置に用いられる蛍光体には、発光ピークの半値幅が狭いことに加えて、輝度の向上も求められている。例えば特許文献1に開示されているフッ化物蛍光体では、輝度に改善の余地があった。そこで本開示の一態様は、輝度が高い赤色発光の蛍光体を提供することを目的とする。
第一態様は、Kを含むアルカリ金属と、Siと、Alと、Mnと、Fと、を含む第一の組成を有するフッ化物蛍光体である。前記第一の組成は、アルカリ金属の総モル数を2とする場合に、SiとAlとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であり、Alのモル数が0を超えて0.1以下であり、Mnのモル数が0を超えて0.2以下であり、Fのモル数が5.9以上6.1以下である。フッ化物蛍光体は、立方晶系の結晶構造を有し、格子定数が0.8138nm以上である。
第二態様は、第一態様のフッ化物蛍光体を含む第一蛍光体と、380nm以上485nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する発光素子と、を含む発光装置である。
第三態様は、Kを含むアルカリ金属と、Siと、Mnと、Fと、を含む第二の組成を有し、前記第二の組成が、アルカリ金属の総モル数を2とする場合に、SiとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であり、Mnのモル数が0を超えて0.2以下であり、Fのモル数が5.9以上6.1以下である第一のフッ化物粒子を準備することと、Kを含むアルカリ金属と、Alと、Fとを含む第三の組成を有し、前記第三の組成が、Alのモル数を1とする場合に、アルカリ金属の総モル数が2以上3以下であり、Fのモル数が5以上6以下である第二のフッ化物粒子を準備することと、前記第一のフッ化物粒子と前記第二のフッ化物粒子の混合物を不活性ガス雰囲気中で、600℃以上780℃以下の温度範囲で第一の熱処理をして第一熱処理物を得ることと、を含むフッ化物蛍光体の製造方法である。
本開示の一態様によれば、輝度が高い赤色発光の蛍光体を提供することができる。
フッ化物蛍光体の製造方法の工程順序を示すフローチャートである。 フッ化物蛍光体を含む発光装置の一例を示す概略断面図である。 フッ化物蛍光体の赤外吸収スペクトルである。 比較例1に係るフッ化物蛍光体の走査電子顕微鏡(SEM)画像の一例である。 実施例3に係るフッ化物蛍光体のSEM画像の一例である。 実施例3及び参考例に係るフッ化物蛍光体の赤外吸収スペクトルである。 第一及び第二のフッ化物粒子の赤外吸収スペクトルである。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書に記載される数値範囲の上限及び下限は、当該数値を任意に選択して組み合わせることが可能である。本明細書において、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。蛍光体の半値幅は、蛍光体の発光スペクトルにおいて、最大発光強度に対して発光強度が50%となる発光スペクトルの波長幅(半値全幅;FWHM)を意味する。蛍光体のメディアン径は、体積基準のメディアン径であり、体積基準の粒径分布において、小径側からの体積累積50%に対応する粒径を指す。蛍光体の粒度分布は、レーザー回折法により、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、フッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置を例示するものであって、本発明は、以下に示すフッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置に限定されない。
フッ化物蛍光体
フッ化物蛍光体は、カリウム(K)を含むアルカリ金属と、ケイ素(Si)と、アルミニウム(Al)と、マンガン(Mn)と、フッ素(F)とを含む第一の組成を有し、立方晶系の結晶構造を有し、格子定数が0.8138nm以上である。第一の組成は、アルカリ金属の総モル数を2とする場合に、SiとAlとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であり、Alのモル数が0を超えて0.1以下であり、Mnのモル数が0を超えて0.2以下であり、Fのモル数が5.9以上6.1以下である。フッ化物蛍光体が含むMnは4価のMnイオンを含んでいてよい。フッ化物蛍光体は、例えば、後述するフッ化物蛍光体の製造方法で製造することができる。
フッ化物蛍光体は、SiとAlと含み、Alが特定の含有比である組成を有し、格子定数が所定値以上である立方晶系の結晶構造を有することで、より高い輝度を示すことができる。これは例えば、以下のように考えることができる。フッ化物蛍光体の結晶構造を構成するSiの一部がAlに置換されることで、結晶構造中のF欠損が補償され、結晶構造が安定化するためと考えることができる。また、フッ化物蛍光体の結晶構造中のSiの一部がAlに置換されることで、所定値以上の格子定数を示す。さらにフッ化物蛍光体は、Alを結晶構造中に含むため、例えば赤外吸収スペクトルにおいて、Al-F結合に由来するピークを示す。
フッ化物蛍光体の第一の組成は、組成に含まれるアルカリ金属の総モル数2に対して、SiとAlとMnの総モル数の比が、例えば0.9以上1.1以下であってよく、好ましくは0.95以上1.05以下、又は0.97以上1.03以下である。また、アルカリ金属の総モル数2に対するAlのモル数の比は、例えば0を超えて0.1以下であってよく、好ましくは0を超えて0.03以下、0.002以上0.02以下、又は0.003以上0.015以下である。また、アルカリ金属の総モル数2に対するMnのモル数の比は、例えば0を超えて0.2以下であってよく、好ましくは0.005以上0.15以下、0.01以上0.12以下、又は0.015以上0.1以下である。さらに、アルカリ金属の総モル数2に対するFのモル数の比は、例えば5.9以上6.1以下であってよく、好ましくは5.92以上6.05以下、又は5.95以上6.025以下である。第一の組成において、アルカリ金属の総モル数2に対するSiのモル数の比は、例えば0.7以上1.1以下であってよく、好ましくは0.8以上1.03以下0.85以上1.01以下、又は0.92以上0.95未満である。第一の組成において、Siのモル数に対するAlのモル数の比は、例えば0.001以上0.14以下であってよく、好ましくは0.002以上0.04以下、又は0.003以上0.015以下である。
フッ化物蛍光体は、第一の組成として下記式(I)で表される組成を有していてもよい。
[SiAlMn] (I)
式(I)中、Mはアルカリ金属を示し、少なくともKを含んでよい。Mnは4価のMnイオンであってよい。p、q、rおよびsは、0.9≦p+q+r≦1.1、0<q≦0.1、0<r≦0.2、5.9≦s≦6.1を満たしていてよい。好ましくは、0.95≦p+q+r≦1.05又は0.97≦p+q+r≦1.03、0<q≦0.03、0.002≦q≦0.02又は0.003≦q≦0.015、0.005≦r≦0.15、0.01≦r≦0.12又は0.015≦r≦0.1、5.92≦s≦6.05又は5.95≦s≦6.025であってよい。
フッ化物蛍光体並びに後述する第一のフッ化物粒子及び第二のフッ化物粒子の組成におけるアルカリ金属は、少なくともKを含み、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。組成におけるアルカリ金属の総モル数に対するKのモル数の比は、例えば0.90以上であってよく、好ましくは0.95以上、又は0.97以上である。Kのモル数の比の上限は、例えば1又は0.995以下であってよい。第一の組成においては、アルカリ金属の一部がアンモニウムイオン(NH )に置換されていてもよい。アルカリ金属の一部がアンモニウムイオンに置換される場合、組成におけるアルカリ金属の総モル数に対するアンモニウムイオンのモル数の比は、例えば0.10以下であってよく、好ましくは0.05以下、又は0.03以下である。アンモニウムイオンのモル数の比の下限は、例えば0を超えていてよく、好ましくは0.005以上であってよい。
フッ化物蛍光体は、立方晶系の結晶構造を含んでいてもよく、立方晶系の結晶構造に加えて六方晶系等の他の結晶系の結晶構造を含んでいてもよく、実質的に立方晶系の結晶構造のみから構成されていてもよい。ここで「実質的に」とは立方晶系以外の結晶構造の含有率が0.5%未満であることを意味する。フッ化物蛍光体が立方晶系の結晶構造を含む場合、その格子定数は例えば、0.8138nm以上であってよく、好ましくは0.8140nm以上、又は0.8143nm以上であってよい。格子定数の上限は例えば、0.8150nm以下であってよい。フッ化物蛍光体が立方晶系の結晶構造を含むこと、及びその格子定数はフッ化物蛍光体のX線回折パターンを測定することで評価することができる。X線回折パターンは例えば、X線源としてCuKα線(λ=0.15418nm、管電圧40kV、管電流40mA)を用いて測定される。
フッ化物蛍光体は、赤外吸収スペクトルにおいて、例えば、590cm-1以上610cm-1以下の波数範囲に吸収ピークを有してよく、好ましくは593cm-1以上607cm-1以下、又は595cm-1以上605cm-1以下の波数範囲に吸収ピークを有していてよい。所定の波数範囲における吸収ピークは、例えば、立方晶系の結晶構造におけるAl-F結合に由来すると考えられる。赤外吸収スペクトルは例えば、全反射(ATR)法によって測定される。
フッ化物蛍光体は、その粒子表面に凹凸、溝等を有していてもよい。フッ化物蛍光体がその結晶構造中にAlを取り込むことで、結晶構造が変化し、その粒子表面に凹凸、溝等が形成されると考えられる。粒子表面の状態は、例えば、フッ化物蛍光体からなる粉体の安息角を測定することで評価することができる。フッ化物蛍光体からなる粉体の安息角は例えば、60°以下であってよく、好ましくは55°以下、又は50°以下であってよい。安息角の下限は例えば30°以上である。粉体の安息角は、例えば、粉体特性測定器(例えば、A.B.D粉体特性測定器、筒井理化学器械株式会社製)を用いて測定することができる。
また、フッ化物蛍光体の粒子表面の状態は、例えば、フッ化物蛍光体からなる粉体の分散度、嵩密度等を測定することで評価することもできる。所定の分散度または所定の嵩密度を有するフッ化物蛍光体は、フッ化物蛍光体からなる粉体の凝集が抑制されることで、発光装置を製造する際に粉体が取り扱い易くなり、発光装置の製造工程における作業性が向上する。また、発光装置においてフッ化物蛍光体の充填密度を大きくすることができるので、発光装置の光束の向上が期待できる。フッ化物蛍光体からなる粉体の分散度は、例えば、2.0%以上であってよく、好ましくは5.0%以上、15%以上、又は20%以上であってよい。分散度の上限は、例えば75%以下、60%以下、又は50%以下であってよい。粉体の分散度は、例えば、粉体特性測定器(例えば、A.B.D粉体特性測定器、筒井理化学器械株式会社製)を用いて測定することができる。具体的には、ホッパーから分散度用受け皿に試料を落下させ、落下させた試料の重量から受け皿に残った試料の重量を差し引いた値を落下させた試料の重量で除して百分率として分散度が算出される。
フッ化物蛍光体からなる粉体の嵩密度は、例えば、1.00g・cm-3以上であってよく、好ましくは1.05g・cm-3以上、1.10g・cm-3以上、又は1.15g・cm-3以上であってよい。嵩密度の上限は、例えば1.50g・cm-3以下、1.40g・cm-3以下、又は1.30g・cm-3以下であってよい。嵩密度は、例えば、メスシリンダーを用いる通常の測定方法により測定される。以下、嵩密度について具体的に説明する。一般に、粉体の嵩密度は、メスシリンダーに入れた既知重量の粉体試料の体積を測定するか、又はボリュメーターを通して容器内に入れた既知体積の粉体試料の重量を測定するか、若しくは専用の測定用容器を用いることによって求める。
以下、例えば、メスシリンダーを用いる方法について説明する。まず、測定するのに十分な量の試料を準備し、必要に応じて、篩に通す。次に、乾いた一定容量のメスシリンダーに必要量の試料を入れる。ここで、必要に応じて、試料の上面を均す。これらの操作は試料の物性に影響を与えないように静かに行う。そして、体積を最小目盛単位まで読み取り、単位体積当たりの試料の重量を算出することによって嵩密度を求める。この嵩密度は、繰り返し測定することが好ましく、複数回測定し、それら測定値の算術平均値として求められることがより好ましい。
フッ化物蛍光体の体積基準のメディアン径は、例えば、輝度の向上の観点から、10μm以上90μm以下であってよく、好ましくは15μm以上70μm以下、又は20μm以上50μm以下であってよい。フッ化物蛍光体の粒度分布は、例えば、輝度の向上の観点から、単一ピークの粒度分布を示してよく、好ましくは分布幅の狭い単一ピークの粒度分布を示してよい。
フッ化物蛍光体は、例えば、4価のMnで賦活された蛍光体であり、可視光の短波長領域の光を吸収して赤色発光する。励起光は、主に青色領域の光であってよく、励起光のピーク波長は、例えば、380nm以上485nm以下の波長範囲内であってよい。フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長は、例えば、610nm以上650nm以下の波長範囲内であってよい。フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおける半値幅は、例えば、10nm以下であってよい。
フッ化物蛍光体の製造方法
図1は、フッ化物蛍光体の製造方法の工程の一例を示すフローチャートである。フッ化物蛍光体の製造方法は、第一のフッ化物粒子を準備すること(S101)と、第二のフッ化物粒子を準備すること(S102)と、第一の熱処理すること(S103)とを含んでいてよい。第一のフッ化物粒子を準備すること(S101)と、第二のフッ化物粒子を準備すること(S102)とはどちらを先におこなってもよく、同時に行ってもよい。また、フッ化物蛍光体の製造方法は、第一の熱処理すること(S103)の後に、洗浄すること(S104)を含んでいてよく、さらに洗浄すること(S104)の後に、第二の熱処理すること(S105)を含んでいてよい。
フッ化物蛍光体の製造方法は、第一のフッ化物粒子を準備する第一準備工程と、第二のフッ化物粒子を準備する第二準備工程と、第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の混合物を不活性ガス雰囲気中で、600℃以上780℃以下の温度範囲で第一の熱処理をして第一熱処理物を得る第一熱処理工程と、を含む。第一のフッ化物粒子は、Kを含むアルカリ金属と、Siと、Mnと、Fとを含む第二の組成を有する。第二の組成は、アルカリ金属の総モル数を2とする場合に、SiとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であり、Mnのモル数が0を超えて0.2以下であり、Fのモル数が5.9以上6.1以下である。第二のフッ化物粒子は、Kを含むアルカリ金属と、Alと、Fとを含む第三の組成を有する。第三の組成は、Alのモル数を1とする場合に、アルカリ金属の総モル数が2以上3以下であり、Fのモル数が5以上6以下である。
賦活元素となるMnを含む第一のフッ化物粒子と、Alを含む第二のフッ化物粒子との混合物を特定の温度で熱処理することで、第一のフッ化物粒子の組成にAlが導入されて、高い輝度を示すフッ化物蛍光体を製造することができる。これは例えば以下のように考えることができる。第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の混合物を比較的高い温度で熱処理することで、第一のフッ化物粒子に第二のフッ化物粒子が取り込まれ、第一のフッ化物粒子の結晶構造に含まれるSiの一部がAlに置換されることで、フッ化物蛍光体の結晶構造中のF欠損が補償されて結晶構造が安定化され、輝度が向上すると考えられる。
第一準備工程
第一準備工程では、第二の組成を有する第一のフッ化物粒子を準備する。第二の組成は、アルカリ金属の総モル数2に対して、SiとMnの総モル数の比が0.9以上1.1以下であり、Mnのモル数の比が0を超えて0.2以下であり、Fのモル数の比が5.9以上6.1以下であってよい。SiとMnの総モル数の比は、好ましくは0.95以上1.05以下、又は0.97以上1.03以下であってよい。また、Mnのモル数の比は、好ましくは0.005以上0.15以下、0.01以上0.12以下、又は0.015以上0.1以下であってよい。さらにFのモル数の比は、好ましくは5.95以上6.05以下、又は5.97以上6.03以下であってよい。
第一のフッ化物粒子は、第二の組成として下記式(III)で表される組成を有していてよい。
[SiMn] (III)
式(III)中、Mはアルカリ金属を示し、少なくともKを含んでよい。Mnは4価のMnイオンであってよい。b、c及びdは、0.9≦b+c≦1.1、0<c≦0.2、5.9≦d≦6.1を満たしていてよい。好ましくは、0.95≦b+c≦1.05又は0.97≦b+c≦1.03、0.005≦c≦0.15、0.01≦c≦0.12又は0.015≦c≦0.1、5.95≦d≦6.05又は5.97≦d≦6.03であってよい。
第一のフッ化物粒子の体積基準のメディアン径は、例えば、輝度の向上の観点から、10μm以上90μm以下であってよく、好ましくは15μm以上70μm以下、又は20μm以上50μm以下であってよい。第一のフッ化物粒子の粒度分布は、例えば、輝度の向上の観点から、単一ピークの粒度分布を示してよい。好ましくは分布幅の狭い単一ピークの粒度分布を示してよい。具体的には、体積基準の粒径分布において、小径側からの体積累積10%に対応する粒径をD10、体積累積90%に対応する粒径をD90とすると、D10に対するD90の比(D90/D10)が、3.0以下であってよい。
第一のフッ化物粒子は、例えば、4価のMnイオンで賦活された蛍光体であってよく、可視光の短波長領域の光を吸収して赤色に発光してよい。励起光は、主に青色領域の光であってよく、励起光のピーク波長は、例えば、380nm以上485nm以下の波長範囲内であってよい。第一のフッ化物粒子の発光スペクトルにおける発光ピーク波長は、例えば、610nm以上650nm以下の波長範囲内であってよい。第一のフッ化物粒子の発光スペクトルにおける半値幅は、例えば、10nm以下であってよい。
第一のフッ化物粒子は、購入して準備してもよく、以下のような製造方法で製造して準備してもよい。以下ではアルカリ金属がカリウムである場合の製造方法について説明するが、アルカリ金属がカリウム以外のアルカリ金属を含む場合でも同様にして製造することができる。
第一のフッ化物粒子の製造方法は、例えば、カリウムイオン及びフッ化水素を少なくとも含む第一の溶液と、4価のMnイオンを含む第一の錯イオン及びフッ化水素を少なくとも含む第二の溶液と、ケイ素とフッ素イオンを含む第二の錯イオンを少なくとも含む第三の溶液と、を混合する工程を含む。第一の溶液と、第二の溶液と、第三の溶液と、を混合することで、所望の組成を有し、蛍光体として機能するフッ化物粒子を、生産性に優れる簡便な方法で製造することができる。
第一の溶液は、カリウムイオンとフッ化水素とを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第一の溶液は、例えば、カリウムイオンを含む化合物のフッ化水素酸の水溶液として得られる。第一の溶液を構成するカリウムイオンを含む化合物としては、カリウムイオンを含むハロゲン化物、フッ化水素化物、水酸化物、酢酸塩、炭酸塩等の水溶性の化合物が挙げられる。具体的には、KF、KHF、KOH、KCl、KBr、KI、CHCOOK、KCO等の水溶性カリウム塩を挙げることができる。中でも溶液中のフッ化水素濃度を下げることなく溶解することができ、また、溶解熱が小さく安全性が高いことから、KHFが好ましい。第一の溶液を構成するカリウムイオンを含む化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第一の溶液におけるフッ化水素濃度の下限値は、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また、第一の溶液におけるフッ化水素濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。また、第一の溶液におけるカリウムイオン濃度の下限値は、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また、第一の溶液におけるカリウムイオン濃度の上限値は、通常30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。カリウムイオン濃度が5質量%以上であると、第一のフッ化物粒子の収率が向上する傾向がある。
第二の溶液は、4価のMnイオンを含む第一の錯イオンと、フッ化水素とを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第二の溶液は、例えば、4価のマンガン源を含むフッ化水素酸の水溶液として得られる。マンガン源は例えば、4価のMnイオンを含む化合物である。第二の溶液を構成するマンガン源として、具体的には、KMnF、KMnO、KMnCl等を挙げることができる。中でも、結晶格子を歪ませて不安定化させる傾向にある塩素を含まないことと、賦活することのできる酸化数(4価)を維持しながら、MnF錯イオンとしてフッ化水素酸中に安定して存在することができることから、KMnFが好ましい。なお、マンガン源のうち、カリウムイオンを含むものは、第一溶液に含まれるカリウムイオン源を兼ねることができる。第二の溶液を構成するマンガン源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第二の溶液におけるフッ化水素濃度の下限値は、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また、第二の溶液におけるフッ化水素濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。第二の溶液における第一の錯イオン濃度の下限値は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。また、第二の溶液における第一の錯イオン濃度の上限値は、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
第三の溶液は、ケイ素とフッ素イオンとを含む第二の錯イオンを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第三の溶液は、例えば、第二の錯イオン源を含む水溶液として得られる。第二の錯イオン源は、ケイ素とフッ化物イオンを含み、溶液への溶解性に優れる化合物であることが好ましい。第二の錯イオン源として、具体的には、HSiF、NaSiF、(NHSiF、RbSiF、CsSiF等を挙げることができる。これらの中でも、水への溶解度が高く、不純物としてアルカリ金属元素を含まないことにより、HSiFが好ましい。第三の溶液を構成する第二の錯イオン源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第三の溶液における第二の錯イオン濃度の下限値は、通常10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、第三の溶液における第二の錯イオン濃度の上限値は、通常60質量%以下、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
第一の溶液、第二の溶液及び第三の溶液の混合方法として例えば、第一の溶液を撹拌しながら第二の溶液及び第三の溶液を添加して混合してもよく、第三の溶液を撹拌しながら第一の溶液及び第二の溶液を添加して混合してもよい。また、第一の溶液、第二の溶液及び第三の溶液をそれぞれ容器に投入して撹拌混合してもよい。
第一の溶液、第二の溶液及び第三の溶液を混合することにより、第一の錯イオンと、カリウムイオンと、第二の錯イオンとが反応して目的の第一のフッ化物粒子の結晶が析出する。析出した結晶は濾過等により固液分離して回収することができる。また過酸化水素水などの還元剤を加えてもよく、エタノール、イソプロピルアルコール、水、アセトン等の溶媒で洗浄してもよい。さらに乾燥処理を行ってもよい。乾燥処理は、通常50℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、また、通常110℃以下、好ましくは105℃以下、より好ましくは100℃以下で実施すればよい。乾燥時間としては、第一のフッ化物粒子に付着した水分を除去することができれば、特に制限はなく、例えば、10時間程度である。
なお、第一の溶液、第二の溶液及び第三の溶液の混合に際しては、蛍光体原料の仕込み組成と得られる第一のフッ化物粒子の組成とのずれを考慮して、生成物としての第一のフッ化物粒子の組成が目的の組成となるように、第一の溶液、第二の溶液及び第三の溶液の混合割合を適宜調整することが好ましい。
第一のフッ化物粒子の製造方法は、乾燥処理後に解砕、粉砕、分級操作等の処理を組合せて行う整粒工程を含んでいてもよい。整粒工程により所望の粒径の粉末を得ることができる。
第二準備工程
第二準備工程では、第三の組成を有する第二のフッ化物粒子を準備する。第三の組成は、Alのモル数1に対して、アルカリ金属の総モル数の比が1以上3以下であり、Fのモル数の比が4以上6以下であってよい。一態様において、第三の組成は、Alのモル数1に対して、アルカリ金属の総モル数の比が2以上3以下であり、Fのモル数の比が5以上6以下であってよい。
第二のフッ化物粒子は、第三の組成として下記式(IV)で表される組成を有していてよい。
[AlF] (IV)
式(IV)中、Mはアルカリ金属を示し、少なくともKを含んでよい。e及びfは、2≦e≦3、5≦f≦6を満たしていてよい。
第二のフッ化物粒子は、下記式(IVa)又は(IVb)で表される組成を有していてよく、両方の組成を含んでいてもよい。
[AlF] (IVa)
[AlF] (IVb)
第二のフッ化物粒子の比表面積は、例えば、第一のフッ化物粒子との反応性の観点から、0.3m・g-1以上であってよく、好ましくは1m・g-1以上、又は3m・g-1以上であってよい。第二のフッ化物粒子の比表面積の上限は、例えば30m・g-1以下であってよい。比表面積は、例えば、BET法により測定される。
第二のフッ化物粒子は、購入して準備してもよく、公知の製造方法で製造して準備してもよい。
第一熱処理工程
第一熱処理工程は、準備した第一のフッ化物粒子及び第二のフッ化物粒子を混合して混合物を得ることと、得られた混合物を不活性ガス雰囲気中で、600℃以上780℃以下の温度範囲で第一の熱処理をして第一熱処理物を得ることとを含んでいてよい。第一熱処理物は目的とするフッ化物蛍光体を含んでいる。
第一のフッ化物粒子及び第二のフッ化物粒子は、例えば、通常行われる乾式混合によって混合すればよい。乾式混合は、例えば、高速流動混合機等を用いて実施することができる。混合物における第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の割合は、第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の総モル数に対する第二のフッ化物粒子のモル数の比が、例えば0を超えて0.1未満であってよい。好ましくは、0.05未満又は0.03モル未満であってよい。第二のフッ化物粒子のモル数の比の下限は、好ましくは0.003以上又は0.005以上であってよい。
第一熱処理工程における熱処理温度(以下、第一熱処理温度ともいう)は、例えば600℃以上であればよい。熱処理温度は、好ましくは625℃以上、650℃以上、又は675℃以上であってよい。熱処理温度が600℃以上であれば、第一のフッ化物粒子が第二のフッ化物粒子を効率的に取り込むことができ、第一のフッ化物粒子の結晶構造中のSiの一部がAlに置換されて輝度が高いフッ化物蛍光体を得ることができる。また、第一熱処理工程における熱処理温度は、例えば800℃未満であってよい。熱処理温度は、好ましくは780℃以下、770℃以下、760℃以下、又は750℃以下であってよい。熱処理温度が800℃未満であれば、フッ化物粒子の熱分解を効果的に抑制することができる。一態様において第一の熱処理における第一熱処理温度は、650℃以上750℃以下であってよい。
第一熱処理工程における熱処理時間は、例えば、1時間以上40時間以内であってよく、好ましくは2時間以上30時間以内であってよい。熱処理時間が前記範囲であると、第一のフッ化物粒子の結晶構造に含まれるSiのAlへの置換がより効率的に進行して、輝度が高いフッ化物蛍光体が得られる傾向がある。ここで、第一熱処理工程における熱処理時間は、第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の混合物を、第一熱処理温度において保持する時間を意味する。第一熱処理工程における第一熱処理温度までの昇温速度は、例えば、1℃/分以上であってよい。
第一熱処理工程では、不活性ガス雰囲気中で混合物の熱処理を実施してよい。不活性ガス雰囲気は、例えば、アルゴン、ヘリウム等の希ガス、窒素などの不活性ガスを主成分とする雰囲気を意味する。不活性ガス雰囲気中の主成分は、アルゴン、ヘリウム、窒素等から選択される少なくとも1種であればよく、少なくとも窒素を含んでいてよい。不活性ガス雰囲気中の不活性ガス、例えば窒素ガスの濃度は、例えば70体積%以上であってよく、好ましくは80体積%以上、85体積%以上、90体積%以上、又は95体積%以上であってよい。不活性ガスは不可避的不純物として酸素等の活性ガスを含むことがある。第一熱処理工程における雰囲気に含まれる活性ガス濃度は15体積%以下であればよく、好ましくは5体積%未満、1体積%未満、0.3体積%未満、又は0.1体積%未満であってよい。不活性ガス雰囲気は、酸素等の活性ガスを含まなくてもよい。不活性ガス雰囲気中の活性ガス濃度が前記範囲であると、混合物に含まれる4価のMnの酸化を充分に抑制することができる。
第一熱処理工程における熱処理時の圧力は、例えば、大気圧(0.101MPa)であってよい。熱処理時の圧力は、0.101MPaを超えて1MPa以下でもよく、大気圧(0.101MPa)よりも低い圧力の減圧であってもよい。
洗浄工程
フッ化物蛍光体の製造方法は、第一熱処理工程で得られる第一熱処理物を液媒体と接触させる洗浄工程をさらに含んでいてもよい。洗浄工程は、例えば、第一熱処理物を液媒体と接触させることと、液媒体と接触させた第一熱処理物を固液分離することと、を含んでいてよく、必要に応じて固液分離後の第一熱処理物を乾燥処理することをさらに含んでいてもよい。
第一熱処理物を液媒体と接触させることで、例えば、第一熱処理工程で生成した不純物(例えば、フッ化カリウム等のアルカリ金属フッ化物)の少なくとも一部を除去することができる。これにより得られるフッ化物蛍光体の組成変化を抑制することができ、組成変化に起因する輝度の低下を効果的に抑制することができると考えられる。
第一熱処理物と接触させる液媒体としては、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、アセトン等のケトン溶剤、水などが挙げられる。不純物除去の観点から、液媒体は少なくとも水を含んでいてよく、水は、脱イオン水、蒸留水であってよく、精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜等で精製された精製水であってもよい。
液媒体は、過酸化水素等の還元剤を含んでいてもよい。液媒体が還元剤を含むことで、第一の熱処理によってフッ化物蛍光体中の賦活剤である4価のMnイオンが酸化した場合であっても、洗浄液中の還元剤によって還元され、得られるフッ化物蛍光体の発光特性をより高くすることができる。液媒体が還元剤を含む場合、その含有率は例えば、0.01質量%以上5質量%以下であってよく、好ましくは0.05質量%以上1質量%以下であってよい。第一熱処理物との接触に用いる液媒体の量は、第一熱処理物の総質量に対して、例えば2倍以上20倍以下であってよい。
第一熱処理物と液媒体の接触は、第一熱処理物と液媒体とを混合した後、液媒体を除去することで実施してもよく、漏斗等に保持した第一熱処理物に液媒体を通液して実施してもよい。第一熱処理物と液媒体の接触時間は、例えば1時間以上20時間以下であってよい。また第一熱処理物と液媒体の接触温度は、例えば10℃以上50℃以下であってよい。
液媒体と接触させた第一熱処理物には乾燥処理を実施してもよい。乾燥処理における乾燥温度は、例えば50℃以上であってよく、好ましくは55℃以上又は60℃以上であってよく、また例えば110℃以下であってよく、好ましくは105℃以下又は100℃以下であってよい。乾燥時間としては、液媒体との接触によって第一熱処理物に付着した液媒体(例えば、水分)の少なくとも一部を蒸発することができる時間であり、例えば、10時間程度である。
第二熱処理工程
フッ化物蛍光体の製造方法は、液媒体と接触させた後の第一熱処理物を、フッ素含有物質と接触させた状態で、400℃以上の第二熱処理温度で第二の熱処理をして第二熱処理物を得る第二熱処理工程をさらに含んでいてよい。第二熱処理物は目的とするフッ化物蛍光体を含んでいる。
液媒体と接触させた後の第一熱処理物を、フッ素含有化合物と接触させた状態で熱処理することで、フッ化物蛍光体の結晶構造中でフッ素原子が不足している領域にフッ素原子が供給されて、結晶構造の欠陥がより低減されると考えられる。これにより輝度がより向上されると考えられる。またフッ化物蛍光体の耐久性がより向上すると考えられる。
第二熱処理工程で用いられるフッ素含有物質は、常温で固体状態、液体状態又は気体状態のいずれであってもよい。固体状態又は液体状態のフッ素含有物質としては、例えば、NHF等が挙げられる。また、気体状態のフッ素含有物質としては、例えば、F、CHF、CF、NHHF、HF、SiF、KrF、XeF、XeF、NF等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であってよく、好ましくはF及びHFからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
フッ素含有物質が、常温で固体状態又は液体状態のものである場合、液媒体との接触させた後の第一熱処理物とフッ素含有物質と混合することで、これらを接触させた状態とすることができる。第一熱処理物は、例えば、第一熱処理物とフッ素含有物質の合計量100質量%に対して、フッ素原子の質量換算で1質量%以上20質量%以下、好ましくは2質量%以上10質量%以下のフッ素含有物質と混合してよい。
第一熱処理物とフッ素含有物質を混合する際の温度は、例えば、室温(20℃±5℃)から第二熱処理温度よりも低い温度でもよく、第二熱処理温度でもあってもよい。具体的には、20℃以上400℃未満の温度でもよく、400℃以上の温度であってもよい。第一熱処理物と常温で固体状態又は液体状態のフッ素含有物質とを接触させる温度が20℃以上400℃未満の場合は、第一熱処理物とフッ素含有物質とを接触させてから400℃以上の温度で第二の熱処理を行なう。
フッ素含有物質が気体である場合には、フッ素含有物質を含む雰囲気中に第一熱処理物を配置して接触させてもよい。フッ素含有物質を含む雰囲気は、フッ素含有物質に加えて希ガス、窒素等の不活性ガスを含んでいてもよい。この場合、雰囲気中のフッ素含有物質の濃度は、例えば、3体積%以上35体積%以下であってよく、好ましくは5体積%以上又は10体積%以上であってよく、また好ましくは30体積%以下又は25体積%以下であってよい。
第二の熱処理は、第一熱処理物とフッ素含有物質とを接触させた状態で、第二熱処理温度を所定時間に亘って保持することで実施してよい。第二熱処理温度は、例えば400℃以上であってよく、好ましくは400℃より高い温度、425℃以上、450℃以上又は480℃以上であってよい。第二熱処理温度の上限は、例えば600℃未満であってよく、好ましくは580℃以下、550℃以下又は520℃以下であってよい。第二熱処理温度は、第一熱処理温度よりも低い温度であってよい。
第二熱処理温度が前記下限値以上であると、第一熱処理物に充分にフッ素原子が供給され、得られるフッ化物蛍光体の輝度がより向上する傾向がある。また第二熱処理温度が前記上限値以下であると、得られるフッ化物蛍光体の分解がより効果的に抑制され、得られるフッ化物蛍光体の輝度がより向上する傾向がある。
第二の熱処理における熱処理時間、すなわち、第二熱処理温度を保持する時間は、例えば、1時間以上40時間以下であってよく、好ましくは2時間以上又は3時間以上であってよく、また好ましくは30時間以下、10時間以下又は8時間以下であってよい。第二熱処理温度での熱処理時間が前記範囲内であれば、液媒体と接触後の第一熱処理物に、十分にフッ素原子を供給することができる。これによりフッ化物蛍光体の結晶構造がより安定となり、輝度が高いフッ化物蛍光体が得られる傾向がある。
第二熱処理温度での熱処理時間は、第一熱処理温度での熱処理時間と同じであるか、又は第一熱処理温度での熱処理時間よりも長時間であってよい。すなわち、第二熱処理温度での熱処理時間は、第一熱処理温度での熱処理時間の1倍以上の時間であってよい。これにより、液媒体との接触後の第一熱処理物にフッ素原子が十分に供給され、得られるフッ化物蛍光体の輝度をより向上させることができる傾向がある。
第二熱処理工程における圧力は、大気圧(0.101MPa)であってもよく、大気圧を超えて5MPa以下でもよく、大気圧を超えて1MPa以下でもよい。
フッ化物蛍光体の製造方法は、第二熱処理工程後に得られる第二熱処理物に解砕、粉砕、分級操作等の処理を組合せて行う整粒工程を含んでいてもよい。整粒工程により所望の粒径の粉末を得ることができる。
フッ化物蛍光体の製造方法で得られるフッ化物蛍光体の詳細は、既述のフッ化物蛍光体と同様である。すなわち、得られるフッ化物蛍光体は、下記式(I)で表される組成を有していてよい。
[SiAlMn] (I)
式(I)中、Mはアルカリ金属を示し、少なくともKを含んでよい。p、q、rおよびsは、0.9≦p+q+r≦1.1、0<q<0.1、0<r<0.2、5.9≦s≦6.1を満たす。
発光装置
発光装置は、前記フッ化物蛍光体を含む第一蛍光体と、380nm以上485nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する発光素子とを含む。発光装置は、必要に応じてその他の構成部材をさらに含んでいてもよい。
発光装置の一例を図面に基づいて説明する。図2は、本実施形態に係る発光装置の一例を示す概略断面図である。この発光装置は、表面実装型発光装置の一例である。発光装置100は、可視光の短波長側(例えば380nm以上485nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発する発光素子10と、発光素子10を載置する成形体40と、を有する。成形体40は第一のリード20と第二のリード30とを有しており、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂により一体成形されている。成形体40は底面と側面を持つ凹部が形成されており、凹部の底面に発光素子10が載置されている。発光素子10は一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極は第一のリード20及び第二のリード30とワイヤ60を介して電気的に接続されている。発光素子10は蛍光部材50により封止されている。蛍光部材50は、発光素子10からの光を波長変換するフッ化物蛍光体を含む蛍光体70を含有している。蛍光体70は、前記フッ化物蛍光体を含む第一蛍光体と、発光素子10からの励起光によりフッ化物蛍光体とは異なる波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発する第二蛍光体を含んでいてもよい。
蛍光部材は、樹脂と蛍光体を含んでいてよい。蛍光部材を構成する樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂を挙げることができる。蛍光部材は、樹脂及び蛍光体に加えて、光拡散材をさらに含んでいてもよい。光拡散材を含むことで、発光素子からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることができる。光拡散材としては、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等を挙げることができる。
発光素子は、可視光の短波長領域である380nm以上485nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発する。発光素子は、フッ化物蛍光体を励起する励起光源であってよい。発光素子は、380nm以上480nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することが好ましく、410nm以上480nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することがより好ましい。励起光源としての発光素子には、半導体発光素子を用いることが好ましい。励起光源に半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。半導体発光素子としては、例えば、窒化物系半導体を用いた半導体発光素子を用いることができる。発光素子の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅は、例えば、30nm以下であることが好ましい。
発光装置は、フッ化物蛍光体を含む第一蛍光体を含んで構成される。発光装置に含まれるフッ化物蛍光体の詳細については既述の通りである。フッ化物蛍光体は、例えば、励起光源を覆う蛍光部材に含有される。励起光源がフッ化物蛍光体を含有する蛍光部材で覆われた発光装置は、励起光源から発せられた光の一部がフッ化物蛍光体に吸収されて、赤色光として放射される。380nm以上485nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発する励起光源を用いることで、放射される光をより有効に利用することができ、発光装置から出射される光の損失を少なくすることができ、高効率の発光装置を提供することができる。
発光装置は、フッ化物蛍光体を含む第一蛍光体に加えて、フッ化物蛍光体以外の蛍光体を含む第二蛍光体をさらに含むことが好ましい。フッ化物蛍光体以外の蛍光体は、光源からの光を吸収し、フッ化物蛍光体とは異なる波長の光に波長変換するものであればよい。第二蛍光体は、例えば、第一蛍光体と同様に蛍光部材に含有させることができる。
第二蛍光体は、495nm以上590nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有していてよく、好ましくはβサイアロン蛍光体、ハロシリケート蛍光体、シリケート蛍光体、希土類アルミン酸塩蛍光体、ペロブスカイト系蛍光体及び窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。βサイアロン蛍光体は、例えば下記式(IIa)で表される組成を有していてよい。ハロシリケート蛍光体は、例えば下記式(IIb)で表される組成を有していてよい。シリケート蛍光体は、例えば下記式(IIc)で表される組成を有していてよい。希土類アルミン酸塩蛍光体は、下記式(IId)で表される組成を有していてよい。ペロブスカイト系蛍光体は、例えば下記式(IIe)で表される組成を有していてよい。窒化物蛍光体は、例えば下記式(IIf)、(IIg)又は(IIh)で表される組成を有していてよい。
Si6-tAl8-t:Eu (IIa)
(式中、tは、0<t≦4.2を満たす数である。)
(Ca,Sr,Ba)MgSi16(F,Cl,Br):Eu (IIb)
(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu (IIc)
(Y,Lu,Gd,Tb)(Al,Ga)12:Ce (IId)
CsPb(F,Cl,Br,I) (IIe)
(La,Y,Gd)Si11:Ce (IIf)
(Sr,Ca)LiAl:Eu (IIg)
(Ca,Sr)AlSiN:Eu (IIh)
本明細書において、蛍光体の組成を表す式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これらの複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成中に含有することを意味する。また、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
製造例1 第一のフッ化物粒子の製造
KHFを7029g秤量し、このKHFを55質量%のHF水溶液38.5Lに溶解させて、第一の溶液を調製した。またKMnFを1049.7g秤量し、このKMnFを55質量%のHF水溶液12.0Lに溶解させて第二の溶液を調製した。続いてHSiFを40質量%含む水溶液15.5Lを調整し、第三の溶液を調製した。次に第一の溶液を、室温で撹拌しながら、約20時間かけて第二の溶液と第三の溶液3とを滴下した。滴下終了後に35%過酸化水素水400mlを加え、純水で洗浄を行い、得られた沈殿物を固液分離後、エタノール洗浄を行い、90℃で10時間乾燥することで、製造例1の第一のフッ化物粒子を製造した。得られた第一のフッ化物粒子は、K[Si0.949Mn0.051]で表される組成を有していた。
実施例1
製造例1で製造したK[Si0.949Mn0.051]で表される組成を有する第一のフッ化物粒子と、K[AlF]で表される組成を有する第二のフッ化物粒子の総モル数に対する第二のフッ化物粒子と、のモル数の比が0.003になるように、第一のフッ化物粒子2200gと第二のフッ化物粒子7.76gを秤量し、混合して、第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の混合物を調製した。窒素ガス濃度が100体積%である不活性ガス雰囲気中にて、温度を700℃、熱処理時間を5時間として、第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の混合物に第一の熱処理を行って第一熱処理物を得た。得られた第一熱処理物を、過酸化水素を1質量%含む洗浄水で充分に洗浄した。洗浄後の第一熱処理物を、フッ素ガス(F)濃度が20体積%、窒素ガス濃度が80体積%である雰囲気中にて、フッ素ガスと接触させつつ、温度を500℃、熱処理時間を5時間として第二の熱処理を行って、実施例1のフッ化物蛍光体を製造した。なお、第一の熱処理及び第二の熱処理における熱処理時間は、所定の熱処理温度に達してから、加熱を停止するまでに経過した時間である。実施例1のフッ化物蛍光体は、K[Si0.948Al0.002Mn0.0505.998]で表される組成を有していた。
比較例1
製造例1で製造したK[Si0.949Mn0.051]で表される組成を有する第一のフッ化物粒子に、第二のフッ化物粒子を混合せず、第一のフッ化物粒子のみを用いたこと以外は、実施例1と同じ条件でフッ化物蛍光体を製造した。比較例1のフッ化物蛍光体は、K[Si0.950Mn0.050]で表される組成を有していた。
実施例2
第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の総モル数に対する第二のフッ化物粒子のモル数の比が0.006になるように、第二のフッ化物粒子の質量を15.57gに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件でフッ化物蛍光体を製造した。実施例2のフッ化物蛍光体は、K[Si0.946Al0.005Mn0.0495.995]で表される組成を有していた。
実施例3
第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の総モル数に対する第二のフッ化物粒子のモル数の比が0.009になるように、第二のフッ化物粒子の質量を23.43gに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件でフッ化物蛍光体を製造した。実施例3のフッ化物蛍光体は、K[Si0.942Al0.008Mn0.0505.992]で表される組成を有していた。
実施例4
第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の総モル数に対する第二のフッ化物粒子のモル数の比が0.015になるように、第二のフッ化物粒子の質量を39.28gに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件でフッ化物蛍光体を製造した。実施例4のフッ化物蛍光体は、K[Si0.939Al0.014Mn0.0475.986]で表される組成を有していた。
実施例5
第一のフッ化物粒子と第二のフッ化物粒子の総モル数に対する第二のフッ化物粒子のモル数の比が0.021になるように、第二のフッ化物粒子の質量を55.33gに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件でフッ化物蛍光体を製造した。実施例5のフッ化物蛍光体は、K[Si0.933Al0.018Mn0.0495.982]で表される組成を有していた。
<評価>
色度座標
得られた実施例及び比較例の各フッ化物蛍光体について、分光蛍光光度計(製品名:QE-2000、大塚電子株式会社製)を用いて、ピーク波長が450nmである励起光を各フッ化物蛍光体に照射し、室温における各フッ化物蛍光体の発光スペクトルを測定した。実施例及び比較例の各フッ化物蛍光体の発光スペクトルデータから、CIE(国際照明委員会:Commission international de l’eclarirage)1931表色系におけるxy色度座標を求めた。結果を表1に示す。
相対輝度
得られた実施例及び比較例の各フッ化物蛍光体について測定した発光スペクトルのデータから、比較例1のフッ化物蛍光体の輝度を100%として、実施例1から5のフッ化物蛍光体の発光輝度を相対輝度として求めた。結果を表1に示す。
組成
得られた実施例及び比較例の各フッ化物蛍光体について、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)による組成分析を行い、組成に含まれるカリウムを2モルとした場合の各元素のモル含有比を算出した。結果を表1に示す。
安息角
得られた実施例及び比較例のフッ化物蛍光体について、A.B.D粉体特性測定器(製品名:ABD-100型、筒井理化学器械株式会社製)を用いて安息角を測定し、2回の測定の平均値から安息角を求めた。結果を表1に示す。
分散度
得られた実施例及び比較例のフッ化物蛍光体について、A.B.D粉体特性測定器(製品名:ABD-100型、筒井理化学器械株式会社製)を用いて分散度を3回測定し、それらの測定値の算術平均値を分散度とした。結果を表1に示す。
嵩密度
得られた実施例及び比較例のフッ化物蛍光体について、分散度と同様にA.B.D粉体特性測定器(製品名:ABD-100型、筒井理化学器械株式会社製)を用いて嵩密度を3回測定し、それら測定値の算術平均値を嵩密度とした。結果を表1に示す。
格子定数
得られた実施例及び比較例のフッ化物蛍光体について、それぞれSi標準試料と1対1の割合で混合し、試料水平型多目的X線回折装置(製品名:Ultima IV、株式会社リガク製)、X線源:CuKα線(λ=0.15418nm、管電圧40kV、管電流40mA)を用いて、角度:10°から70°、走査幅:0.02°、走査速度:20°/minの測定条件でX線回折パターンを測定した。得られた実施例1から5及び比較例1のフッ化物蛍光体のX線回折パターンから、統合粉末X線解析ソフトウェア(PDXL2)とICDD(International Center for Diffraction Data、国際回折データセンター)のカードデータ(KSiF:01-081-2264、Si:00-027-1402)を用いて格子定数を算出した。結果を表1に示す。
Figure 2022099232000002
表1に示されるように、実施例のフッ化物蛍光体は、比較例のフッ化物蛍光体よりも輝度が高くなっている。これは、実施例のフッ化物蛍光体では、結晶構造中のSiの一部がAlで置換されたことによるF欠損低減の効果と推測される。また、実施例のフッ化物蛍光体ではAl量が多くなると格子定数が大きくなっている。これは結晶構造中のSiがAlで置換されていることが示唆されると考えられる。
赤外分光法:FT-IR評価
得られた実施例及び比較例のフッ化物蛍光体について、フーリエ変換型赤外分光装置(日本分光;FT-IR-6200)を用いて、全反射(ATR)法により赤外吸収スペクトルを測定した。図3に、実施例1から5及び比較例1のフッ化物蛍光体の赤外吸収スペクトルの一部を拡大して示す。また、参考として図7に第一のフッ化物粒子及び第二のフッ化物粒子の赤外吸収スペクトルを示す。
図3に示すように、実施例のフッ化物蛍光体は590cm-1以上610cm-1以下の波数範囲に特徴的な吸収ピークを示した。一方、比較例のフッ化物蛍光体にはそのような吸収ピークは認められなかった。このことは、実施例のフッ化物蛍光体では結晶構造中のSiの一部がAlで置換されていることを示唆すると考えられる。
SEM画像
走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて、フッ化物蛍光体のSEM画像を得た。図4に比較例1のフッ化物蛍光体のSEM画像を示し、図5に実施例3のフッ化物蛍光体のSEM画像を示す。
図4に示す比較例1のフッ化物蛍光体と比較して、図5に示す実施例3のフッ化物蛍光体では、粒子表面に微細な段差ができている。これにより、粒子が凝集しにくくなったために安息角が小さくなったと推測される。このようなフッ化物蛍光体の粒子表面の状態に起因して、実施例のフッ化物蛍光体は、表1に示されるように、比較例のフッ化物蛍光体よりも、分散度および嵩密度が大きくなっており、実施例1から5のフッ化物蛍光体ではAl量が多くなると分散度および嵩密度が大きくなっている。
参考例
特開2010-254933号公報の記載を参照して、以下のようにして参考例のフッ化物蛍光体を製造した。KMnFを4.74g秤量し、40質量%のHSiF水溶液60.8gと、55質量%のHF水溶液190gと、脱イオン水(DIW)30gとの混合溶液に添加して溶解させて溶液1を調製した。一方、KHFを21.42g、KAlFを20.34g秤量し、55質量%のHF水溶液205gに溶解させて溶液2を調製した。この溶液2を室温で撹拌しながら、溶液1を約2分間で滴下した。得られた沈殿物を固液分離後、エタノール洗浄を行い、90℃で10時間乾燥することで、参考例のフッ化物蛍光体を作製した。
得られた参考例のフッ化物蛍光体について、上記と同様にして組成分析をおこない、X線回折パターンと赤外吸収スペクトルを測定した。結果を実施例3のフッ化物蛍光体の分析結果と共に表2及び図6に示す。参考例のフッ化物蛍光体は、K[Si0.947Al0.009Mn0.0445.991]で表される組成を有していた。
Figure 2022099232000003
参考例のフッ化物蛍光体は、格子定数が比較例1のフッ化物蛍光体とほぼ同じであり、特徴的な赤外吸収ピークも認められなかった。これらから、参考例のフッ化物蛍光体では結晶構造中のSiがAlで置換されていないことが示唆された。
実施例10 発光装置の製造
得られた実施例3又は比較例1の各フッ化物蛍光体を第一蛍光体として使用した。また、第二蛍光体として、Si5.81Al0.190.197.81:Euで表される組成を有し、540nm付近に発光ピーク波長を有するβサイアロン蛍光体を使用した。CIE1931表色系における色度座標でxが0.280、yが0.270付近となるように第一蛍光体及び第二蛍光体を配合した蛍光体70と、シリコーン樹脂とを混合して樹脂組成物を得た。次に、図2に示すような凹部を有する成形体40を準備し、凹部の底面に発光ピーク波長が451nmである、窒化ガリウム系化合物半導体を材料とする発光素子10を第一のリード20に配置した後、発光素子10の電極と第一のリード20、第二のリード30とをそれぞれワイヤ60で接続した。さらに、成形体40の凹部に発光素子10を覆うようにシリンジを用いて樹脂組成物を注入し、樹脂組成物を硬化させて蛍光部材を形成して発光装置を製造した。
相対光束
積分球を使用した全光束測定装置を用いて、実施例3又は比較例1のフッ化物蛍光体を用いた発光装置の光束をそれぞれ測定した。比較例1に係るフッ化物蛍光体を用いた発光装置の光束を100%として、実施例3のフッ化物蛍光体を用いた発光装置の光束を相対光束として求めた。結果を表3に示す。
Figure 2022099232000004
表2に示されるように、実施例3のフッ化物蛍光体を用いた発光装置は、比較例1のフッ化物蛍光体を用いた発光装置と比較して、発光輝度の高いフッ化物蛍光体を用いたことで相対光束が改善された。
本開示の製造方法によって得られたフッ化物蛍光体は、特に発光ダイオードを励起光源とする発光装置に用いて、例えば、照明用光源、LEDディスプレイ又は液晶バックライト用途等の光源、信号機、照明式スイッチ、各種センサ、各種インジケータ、及び小型ストロボ等に好適に利用できる。
10:発光素子、20:第一のリード、30:第二のリード、40:成形体、50:蛍光部材、60:ワイヤ、70:蛍光体、100:発光装置。

Claims (25)

  1. Kを含むアルカリ金属と、Siと、Alと、Mnと、Fと、を含む第一の組成を有し、
    前記第一の組成は、アルカリ金属の総モル数を2とする場合に、SiとAlとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であり、Alのモル数が0を超えて0.1以下であり、Mnのモル数が0を超えて0.2以下であり、Fのモル数が5.9以上6.1以下であり、
    立方晶系の結晶構造を有し、格子定数が0.8138nm以上であるフッ化物蛍光体。
  2. 前記第一の組成は、Alのモル数が0を超えて0.03以下である請求項1に記載のフッ化物蛍光体。
  3. 前記格子定数が0.8140nm以上である請求項1又は2に記載のフッ化物蛍光体。
  4. フッ化物蛍光体からなる粉体の安息角が60°以下である請求項1から3のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体。
  5. 赤外吸収スペクトルにおいて、590cm-1以上610cm-1以下の波数範囲に、吸収ピークを有する請求項1から4のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体。
  6. フッ化物蛍光体からなる粉体の分散度が2.0%以上である請求項1から5のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体。
  7. フッ化物蛍光体からなる粉体の嵩密度が1.00g・cm-3以上である請求項1から6のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体。
  8. 下記式(I)で表される組成を有する請求項1から7のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体。
    [SiAlMn] (I)
    (式(I)中、Mはアルカリ金属を示し、少なくともKを含む。p、q、rおよびsは、0.9≦p+q+r≦1.1、0<q≦0.1、0<r≦0.2、5.9≦s≦6.1を満たす。)
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体を含む第一蛍光体と、
    380nm以上485nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する発光素子と、を含む発光装置。
  10. 495nm以上590nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する第二蛍光体をさらに含む請求項9に記載の発光装置。
  11. 前記第二蛍光体が、βサイアロン蛍光体、ハロシリケート蛍光体、シリケート蛍光体、希土類アルミン酸塩蛍光体、ペロブスカイト系蛍光体及び窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種である請求項10に記載の発光装置。
  12. 前記第二蛍光体が、下記式(IIa)から(IIh)のいずれかで表される組成を有する蛍光体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項10又は11に記載の発光装置。
    Si6-tAl8-t:Eu (IIa)
    (式中、tは、0<t≦4.2を満たす数である。)
    (Ca,Sr,Ba)MgSi16(F,Cl,Br):Eu (IIb)
    (Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu (IIc)
    (Y,Lu,Gd,Tb)(Al,Ga)12:Ce (IId)
    CsPb(F,Cl,Br,I) (IIe)
    (La,Y,Gd)Si11:Ce (IIf)
    (Sr,Ca)LiAl:Eu (IIg)
    (Ca,Sr)AlSiN:Eu (IIh)
  13. Kを含むアルカリ金属と、Siと、Mnと、Fと、を含む第二の組成を有し、前記第二の組成が、アルカリ金属の総モル数を2とする場合に、SiとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であり、Mnのモル数が0を超えて0.2以下であり、Fのモル数が5.9以上6.1以下である第一のフッ化物粒子を準備することと、
    Kを含むアルカリ金属と、Alと、Fと、を含む第三の組成を有し、前記第三の組成が、Alのモル数を1とする場合に、アルカリ金属の総モル数が2以上3以下であり、Fのモル数が5以上6以下である第二のフッ化物粒子を準備することと、
    前記第一のフッ化物粒子と前記第二のフッ化物粒子の混合物を不活性ガス雰囲気中で、600℃以上780℃以下の温度で第一の熱処理をして第一熱処理物を得ることと、を含むフッ化物蛍光体の製造方法。
  14. 前記第一の熱処理により得られた第一熱処理物を、液媒体と接触させることをさらに含む請求項13に記載のフッ化物蛍光体の製造方法。
  15. 前記第一熱処理物を、前記液媒体と接触させることにおいて、前記液媒体が水を含む請求項14に記載のフッ化物蛍光体の製造方法。
  16. 前記第一熱処理物を、前記液媒体と接触させることにおいて、前記液媒体が還元剤を含む請求項14又は15に記載のフッ化物蛍光体の製造方法。
  17. 前記第一熱処理物を液媒体と接触させた後、フッ素含有物質と接触させて、400℃以上の温度で第二の熱処理をして第二熱処理物を得ることをさらに含む請求項14から16のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体の製造方法。
  18. 前記第二熱処理物を得ることにおいて、前記フッ素含有物質が、F、CHF、CF、NHHF、HF、SiF、KrF、XeF、XeF及びNFからなる群より選択される少なくとも1種である請求項17に記載のフッ化物蛍光体の製造方法。
  19. 前記第二の熱処理における熱処理時間が、前記第一の熱処理における熱処理時間の1倍以上である請求項17又は18に記載のフッ化物蛍光体の製造方法。
  20. 前記第二の熱処理における温度が、前記第一の熱処理の温度よりも低い請求項17から19のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体の製造方法。
  21. 前記製造方法により得られるフッ化物蛍光体が下記式(I)で表される組成を有する請求項13から20のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体の製造方法。
    [SiAlMn] (I)
    (式(I)中、Mはアルカリ金属を示し、少なくともKを含む。p、q、rおよびsは、0.9≦p+q+r≦1.1、0<q≦0.1、0<r≦0.2、5.9≦s≦6.1を満たす。)
  22. 前記第一のフッ化物粒子を準備することにおいて、前記第一のフッ化物粒子が下記式(III)で表される組成を有する請求項13から21のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体の製造方法。
    [SiMn] (III)
    (式(III)中、Mはアルカリ金属を示し、少なくともKを含む。b、c及びdは、0.9≦b+c≦1.1、0<c≦0.2、5.9≦d≦6.1を満たす。)
  23. 前記第二のフッ化物粒子を準備することにおいて、前記第二のフッ化物粒子が下記式(IV)で表される組成を有する請求項13から22のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体の製造方法。
    [AlF] (IV)
    (式(IV)中、Mはアルカリ金属を示し、少なくともKを含む。e及びfは、2≦e≦3、5≦f≦6を満たす。)
  24. 前記第一の熱処理をして前記第一熱処理物を得ることにおいて、前記不活性ガス雰囲気が窒素を含む、請求項13から23のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体の製造方法。
  25. 前記第一の熱処理を、650℃以上750℃以下の温度範囲内で行う請求項13から24のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体の製造方法。
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