JP2022098154A - 金属インサート成形体およびシートベルト取り付け用アンカー - Google Patents

金属インサート成形体およびシートベルト取り付け用アンカー Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、着色顔料を含んでいても優れた耐熱割れ性を発揮することができるポリアセタール樹脂組成物を含む金属インサート成形体およびシートベルト取り付け用アンカーを提供することを目的とする。【解決手段】メルトフローレートが1.0~5.0g/10分のポリアセタール樹脂100質量部に対し、ヒドラジド化合物0.01~5質量部、ポリエチレングリコール0.01~1質量部、および着色顔料を含むポリアセタール樹脂組成物を含むことを特徴とする、金属インサート成形体。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアセタール樹脂組成物を含む金属インサート成形体およびシートベルト取り付け用アンカーに関する。
ポリアセタール樹脂は、機械的強度および剛性が高く、耐油性および耐有機溶剤性に優れ、広い温度範囲でバランスがとれた樹脂であり、且つその加工性が容易である。したがって、ポリアセタール樹脂は、代表的エンジニアリングプラスチックスとして、OA機器、デジタル家電、自動車部品およびその他工業部品などに多く用いられている。
しかしながら、ポリアセタール樹脂が自動車の内装部品および機構部品(以下「自動車内装・機構部品」とも記す。)に使用される場合、自動車車室内でホルムアルデヒドが発生する。最近では、自動車メーカーおよび自動車部品供給メーカーの自主規制で、自動車車室内でのホルムアルデヒド発生の抑制を要求されることが多くなっている。
このホルムアルデヒド発生の抑制という要求に応えるため、ホルムアルデヒドの発生を低減する方法として、ポリアセタール樹脂に、グアナミン化合物およびヒドラジド化合物を添加する方法(例えば、特許文献1および5参照。)、カルボン酸ヒドラジド化合物を添加する方法(例えば、特許文献2、3および4参照。)、ヒドラジド化合物を添加する方法(例えば、特許文献6および7参照。)、芳香族ジヒドラジドおよび脂肪族ヒドラジド化合物を添加する方法(例えば、特許文献8参照。)が検討されている。
特開2008-7676号公報 特開平4-345648号公報 特開平10-298401号公報 特開2007-91973号公報 特開2007-51205号公報 特開2006-306944号公報 特開2006-45489号公報 特開2005-325225号公報
自動車車室内で使用されるポリアセタール樹脂、例えば、自動車内装・機構部品に使用されるポリアセタール樹脂は、意匠性を必要とする場合、顔料等で着色して使用するため、高い成形品外観の均一性を要求されることが多い。
ポリアセタール樹脂に顔料で着色を行うと、顔料の影響でポリアセタール樹脂が分解し、ホルムアルデヒド発生量が増加するだけでなく、耐衝撃性も低下する。
特に、金属インサートポリアセタール樹脂成形体では、ポリアセタール樹脂と金属との収縮率の違いやポリアセタール樹脂の結晶化の進行による収縮により、常にポリアセタール樹脂に歪がかかった状態となり、高温環境下でウェルド部や薄肉部にクラックが入り、耐衝撃性の低下を招くことがある。
そこで、本発明は、着色顔料を含んでいても優れた耐熱割れ性を発揮することができるポリアセタール樹脂組成物を含む金属インサート成形体およびシートベルト取り付け用アンカーを提供することを目的とする。
本発明者らは、上述の課題を解決するために、特定のメルトフローレートを有するポリアセタール樹脂、特定の割合のヒドラジド化合物とポリエチレングリコール、および着色顔料を含むポリアセタール樹脂組成物を含む金属インサート成形体が、上記の問題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
メルトフローレートが1.0~5.0g/10分のポリアセタール樹脂100質量部に対し、ヒドラジド化合物0.01~5質量部、ポリエチレングリコール0.01~1質量部、および着色顔料を含むポリアセタール樹脂組成物を含むことを特徴とする、金属インサート成形体。
[2]
ウェルド部を有する、[1]に記載の金属インサート成形体。
[3]
前記ポリエチレングリコールの数平均分子量が5,000以上25,000以下である、[1]又は[2]に記載の金属インサート成形体。
[4]
前記着色顔料が無機系顔料である、[1]~[3]のいずれかに記載の金属インサート成形体。
[5]
前記着色顔料がカーボンブラックである、[1]~[4]のいずれかに記載の金属インサート成形体。
[6]
前記ポリアセタール樹脂組成物が、前記ポリアセタール樹脂100質量部に対し、ヒンダードアミン系安定剤0.01~5質量部および/または紫外線吸収剤0.01~5質量部を更に含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の金属インサート成形体。
[7]
前記ポリアセタール樹脂組成物の、サンプリングバッグ法におけるホルムアルデヒド発生量が5000μg/m以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の金属インサート成形体。
[8]
前記ポリアセタール樹脂がホモポリマーである、[1]~[7]のいずれかに記載の金属インサート成形体。
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載の金属インサート成形体を含むことを特徴とする、シートベルト取り付け用アンカー。
[10]
インサートされている金属がその表面全体を前記ポリアセタール樹脂組成物で覆われている、[9]に記載のシートベルト取り付け用アンカー。
本発明によれば、着色顔料を含んでいても優れた耐熱割れ性を発揮することができるポリアセタール樹脂組成物を含む金属インサート成形体およびシートベルト取り付け用アンカーを提供することができる。
実施例で製造した金属インサート成形体の模式図である。(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は下部側面図、(d)は(a)に示す線分A―A’に沿う面により切断したときの断面図を示す。 実施例で用いた重合機の周辺略図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。また、本発明は、下記の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<金属インサート成形体>
本実施形態の金属インサート成形体は、メルトフローレートが1.0~5.0g/10分のポリアセタール樹脂100質量部、ヒドラジド化合物0.01~5質量部、ポリエチレングリコール0.01~1質量部、および着色顔料を含むポリアセタール樹脂組成物を含む。
本実施形態の金属インサート成形体は、ウェルド部を有していてもよい。なお、ウェルド部とは、金属インサート成形体が成形される際に、金型のキャビティー内で複数の樹脂流が合流して、樹脂流同士の界面に形成される溶接部を指す。
また、本実施形態の金属インサート成形体は、インサートされている金属の表面全体がポリアセタール樹脂組成物で覆われていることが好ましい。但し、インサート金属の表面全体のうち、成形時にインサート金属を固定するための穴など、成形時にポリアセタール樹脂組成物で覆うことができない部分は除く。
本実施形態の金属インサート成形体は、優れた耐熱割れ性を有するため、自動車用シートベルト向けのシートベルト取り付け用アンカーや、シートベルトタングなどの安全部品等に好適に用いることができる。
以下、本実施形態の金属インサート成形体を構成する各成分について説明する。
≪ポリアセタール樹脂組成物≫
[ポリアセタール樹脂]
本実施形態に用いるポリアセタール樹脂としては、従来知られているものであれば特に限定されず、例えば、ポリアセタールホモポリマーおよびポリアセタールコポリマーが挙げられる。
前記ポリアセタールホモポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒドの単量体、またはその3量体(トリオキサン)および4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られるものである。したがって、ポリアセタールホモポリマーは、実質的にオキシメチレン単位だけからなる。
ポリアセタールコポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒドの単量体、またはその3量体(トリオキサン)および4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3-ジオキソランおよび1,4-ブタンジオールホルマールからなる群より選ばれる1種または2種以上のコモノマーである、グリコール若しくはジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテルまたは環状ホルマールとを共重合させて得られるポリアセタールコポリマーが挙げられる。さらに、ポリアセタールコポリマーとして、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド単量体または上記ホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー;ホルムアルデヒド単量体または上記ホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーも挙げられる。
また、ポリアセタール樹脂は、両末端若しくは片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えば、ポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体または上記ホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマー;同じく、両末端若しくは片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体または上記ホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテルまたは環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーも、ポリアセタール樹脂の例として挙げられる。
上記ポリアセタール樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
上述のとおり、ポリアセタール樹脂として、ポリアセタールホモポリマー、ポリアセタールコポリマーのいずれも用いることが可能である。
本実施形態に用いるポリアセタール樹脂は、耐熱割れ性の観点から、ポリアセタールホモポリマーであることが好ましい。
上記ポリアセタール樹脂がトリオキサンと1,3-ジオキソラン等のコモノマーとのポリアセタールコポリマーである場合、一般的には、トリオキサン1molに対してコモノマーの共重合割合が0.001~0.6molの範囲であれば、ポリアセタール樹脂の熱安定性が良好となるので好ましい。当該コモノマーの共重合割合は0.001~0.2molであるとより好ましく、0.0013~0.1molであると更に好ましい。
前記ポリアセタールコポリマーを共重合により得る際に用いられる重合触媒としては、特に限定されないが、ルイス酸、プロトン酸およびそのエステルまたは無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。
前記ルイス酸としては、特に限定されないが、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素およびアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモンおよびその錯化合物または塩が挙げられる。
また、前記プロトン酸、そのエステルまたは無水物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸-3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。
これらのカチオン活性触媒の中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;および酸素原子または硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましい。そのようなカチオン活性触媒として、例えば、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ-n-ブチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ-n-ブチルエーテラートが重合収率向上の観点から好適である。
また、上記ポリアセタールコポリマーを得る際には、カチオン活性触媒に加えて、メチラール等の重合連鎖剤(連鎖移動剤)を適宜用いてもよい。
本実施形態に用いるポリアセタール樹脂は、メチラールを連鎖移動剤として用いて得られるポリアセタールコポリマーであることが好ましい。メチラールを連鎖移動剤として用いる場合、含有水分量が100質量ppm以下で含有メタノール量が1質量%以下のメチラール、より好ましくは、含有水分量が50質量ppm以下で含有メタノール量が0.7質量%以下のメチラールが好ましい。
ポリアセタールコポリマーの重合方法としては、特に限定されないが、従来公知の方法、例えば、米国特許第3027352号明細書、米国特許第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、独国特許発明第1495228号明細書、独国特許発明第1720358号明細書、独国特許発明第3018898号明細書、特開昭58-98322号公報、特開平7-70267号公報に記載の方法が挙げられる。特公昭55-42085号公報には、洗浄・除去を行う必要のない触媒失活剤として三価のリン化合物が提案されているが、さらに高い熱安定性のポリアセタールコポリマーを得るためには不安定末端の除去が必要となる。
上記重合よって得られるポリアセタールコポリマーは、末端の安定化処理を行うことが望ましい。末端の安定化処理の方法としては、例えば、末端のヒドロキシル基をエステル化、エーテル化、ウレタン化等する方法、又は末端の不安定部分を加水分解によって安定化する方法等が挙げられる。
末端の安定化処理を行ったポリアセタールコポリマーは、例えば、ホルムアルデヒド及び/又はトリオキサンと、環状エーテル及び/又は環状ホルマールとの共重合によって得られるポリアセタールコポリマーを、重合直後に分子末端の安定化処理する工程、その後に溶融状態で水若しくはアルコール又はそれらの混合物を注入、混練する工程、並びに注入された上記水等の水酸基含有化合物の蒸気及び遊離のホルムアルデヒドを解放する脱揮工程、を施すことのできる異方向回転非かみ合型2軸スクリュー押出機に連続的に供給して処理すること等により得られる。また、上記の水若しくはアルコール、又はそれらの混合物を注入、混練する際に、pH調製剤としてトリエチルアミン等の塩基性物質を添加することが好ましい。
不安定末端部除去処理を行うことで、窒素雰囲気下、200℃で50分間加熱したときのホルムアルデヒド発生量が、ポリアセタール樹脂の量に対して100質量ppm以下のポリアセタール樹脂を得ることができる。
本実施形態において、ポリアセタール樹脂のメルトフローレートは、1.0~5.0g/10分であり、1.5~3.5g/10分であることが好ましく、2.0~3.0g/10分であることがより好ましい。ポリアセタール樹脂のメルトフローレートが前記範囲内であると、ポリアセタール樹脂組成物は成形性と耐久性とのバランスが良好となる。
メルトフローレートが前記範囲内のポリアセタール樹脂を得る方法としては、例えば、適切にポリマー重合度を制御する方法などが挙げられる。
なお、本実施形態において、ポリアセタール樹脂のメルトフローレートは、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、ポリアセタール樹脂の含有量は、ポリアセタール樹脂組成物100質量%に対して、90~99.8質量%であることが好ましく、96~99質量%であることがより好ましい。
[ヒドラジド化合物]
本実施形態に用いるヒドラジド化合物は、窒素原子間の単結合を有するヒドラジン構造(N-N)を有する化合物であれば特に限定されず、例えばヒドラジン;ヒドラジン水和物;コハク酸モノヒドラジド、グルタル酸モノヒドラジド、アジピン酸モノヒドラジド、ピメリン酸モノヒドラジド、スペリン酸モノヒドラジド、アゼライン酸モノヒドラジド、セバシン酸モノヒドラジド等のカルボン酸モノヒドラジド;蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド等の飽和脂肪族カルボン酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフタレンジカルボジヒドラジド等の芳香族カルボン酸ジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド;トリマー酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、ベンゼントリカルボン酸トリヒドラジド、ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド等のトリヒドラジド;ピロメリット酸テトラヒドラジド、ナフトエ酸テトラヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8-ナフトエ酸テトラヒドラジド等のテトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジンまたはヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラート)と反応させてなるポリヒドラジド等のポリヒドラジド;炭酸ジヒドラジド;ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートおよびそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N-ジメチルヒドラジン等のN,N-置換ヒドラジンおよび/または上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド;上記ポリイソシアネート化合物とポリエーテルポリオール類またはポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に、上記のいずれかのジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド;上記多官能セミカルバジドと上記水系多官能セミカルバジドとの混合物;ビスアセチルジヒドラゾン等が挙げられる。
中でも、カルボン酸ヒドラジドであることが好ましく、飽和脂肪族カルボン酸ヒドラジドであることがより好ましい。飽和脂肪族カルボン酸ヒドラジドの具体例としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸モノヒドラジド、グルタル酸モノヒドラジド、アジピン酸モノヒドラジド、ピメリン酸モノヒドラジド、スペリン酸モノヒドラジド、アゼライン酸モノヒドラジド、セバシン酸モノヒドラジド等のカルボン酸モノヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド等のカルボン酸ジヒドラジドが挙げられる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、ヒドラジド化合物の含有量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.01~5質量部であり、0.05~1質量部であることが好ましく、0.05~0.5質量部であることがより好ましく、0.05~0.2質量部であることがさらに好ましい。ヒドラジド化合物の含有量が前記範囲内であると、ポリアセタール樹脂組成物は着色性と機械物性等の諸特性とのバランスが良好となる。
[ポリエチレングリコール]
本実施形態において、ポリエチレングリコールは、ポリアセタール樹脂および着色顔料を含むポリアセタール樹脂組成物の、耐熱割れ性を向上させるために利用する。当該効果は、ポリエチレングリコールの数平均分子量が5,000以上25,000以下である場合により発揮される。また、当該効果は、ポリアセタール樹脂のメルトフローレートが1.0~5.0g/10分である場合により一層発揮される。
また、本実施形態において、ポリエチレングリコールは、樹脂の応力緩和剤として作用する。その結果、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物から得られる成形品(例えば、自動車部品)の自動車車室内を想定した高温環境下におけるクラック発生を抑制するのに有効である。
本実施形態に用いるポリエチレングリコールの数平均分子量は、5,000以上25,000以下が好ましく、5,000以上20,000以下であることがより好ましく、10,000以上20,000以下であることがさらに好ましい。ポリエチレングリコールの数平均分子量が前記範囲内であると、金属インサート成形体の自動車車室内を想定した高温環境下におけるクラック発生を抑制することができる。
なお、本実施形態において、ポリエチレングリコールの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、ポリエチレングリコールの含有量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.01~1質量部であり、0.05~1質量部であることが好ましく、0.05~0.2質量部であることがより好ましい。ポリエチレングリコールの含有量が前記範囲内であると、金属インサート成形体の自動車車室内を想定した高温環境下におけるクラック発生を抑制することができる。
[着色顔料]
本実施形態に用いる着色顔料としては、特に限定されないが、例えば、無機系顔料、有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料が挙げられる。中でも、無機系顔料および/または有機系顔料が好ましい。
無機系顔料とは、樹脂の着色用として一般的に使用されている無機系顔料をいう。無機系顔料の具体例としては、特に限定されないが、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、りん酸塩、酢酸塩、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラックが挙げられる。
有機系顔料としては、特に限定されないが、例えば、縮合アゾ系、キノン系、フタロシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ペリレン系、ジオキサジン系の顔料が挙げられる。
これらの着色顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、着色顔料の含有量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、より好ましくは0.01~2質量部であり、更に好ましくは0.05~1質量部であり、特に好ましくは0.05~0.5質量部である。
[ヒンダードアミン系安定剤/紫外線吸収剤]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、ヒンダードアミン系安定剤0.01~5質量部および/または紫外線吸収剤0.01~5質量部を更に含むことが好ましい。
〈ヒンダードアミン系安定剤〉
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.01~5質量部のヒンダードアミン系安定剤を含有することが好ましい。
ヒンダードアミン系安定剤としては、特に限定されないが、例えば、立体障害性基を有するピペリジン誘導体が挙げられる。立体障害性基を有するピペリジン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、エステル基含有ピペリジン誘導体、エーテル基含有ピペリジン誘導体及びアミド基含有ピペリジン誘導体が挙げられる。本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上記特定量のヒンダードアミン系安定剤を含むことにより、特に、流動性、成形体の耐衝撃性などの機械的特性、及び耐候性(光安定性)に優れたものとなる。
エステル基含有ピペリジン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族アシルオキシピペリジン、芳香族アシルオキシピペリジン、脂肪族ジ又はトリカルボン酸-ビス又はトリスピペリジルエステル、及び芳香族ジ、トリ又はテトラカルボン酸-ビス、トリス又はテトラキスピペリジルエステルが挙げられる。
脂肪族アシルオキシピペリジンの具体例としては、特に限定されないが、例えば、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどのC2-20脂肪族アシルオキシ-テトラメチルピペリジンが挙げられる。
芳香族アシルオキシピペリジンの具体例としては、特に限定されないが、例えば、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどのC7-11芳香族アシルオキシテトラメチルピペリジンが挙げられる。
脂肪族ジ又はトリカルボン酸-ビス又はトリスピペリジルエステルの具体例としては、特に限定されないが、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)オギザレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)マロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アジペート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アジペート、ビス(1-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルセパケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステルなどのC2-20脂肪族ジカルボン酸-ビスピペリジルエステルが挙げられる。
芳香族ジ、トリ又はテトラカルボン酸-ビス、トリス又はテトラキスピペリジルエステルの具体例としては、特に限定されないが、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)テレフタレート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレートが挙げられる。
なお、本明細書において、「Ca-b」は炭素数がa~b(a、bは整数を示す。)であることを意味し、例えば「C2-20」は炭素数が2~20であることを意味する。
エーテル基含有ピペリジン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、C1-10アルコキシピペリジン、C5-8シクロアルキルオキシピペリジン、C6-10アリールオキシピペリジン、C6-10アリール-C1-4アルキルオキシピペリジン、及びアルキレンジオキシビスピペリジンが挙げられる。
C1-10アルコキシピペリジンの具体例としては、特に限定されないが、例えば、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどのC1-6アルコキシ-テトラメチルピペリジンが挙げられる。
C5-8シクロアルキルオキシピペリジンの具体例としては、特に限定されないが、例えば、4-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンが挙げられる。
C6-10アリールオキシピペリジンの具体例としては、特に限定されないが、例えば、4-フェノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンが挙げられる。
C6-10アリール-C1-4アルキルオキシピペリジンの具体例としては、特に限定されないが、例えば、4-ベンジルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンが挙げられる。
アルキレンジオキシビスピペリジンの具体例としては、特に限定されないが、例えば、1,2-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)エタンなどのC1-10アルキレンジオキシビスピペリジンが挙げられる。
アミド基含有ピペリジン誘導体としては、特に限定されないが、例えば、4-(フェニルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどのカルバモイルオキシピペリジン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレン-1,6-ジカルバメートなどのカルバモイルオキシ置換アルキレンジオキシ-ビスピペリジンが挙げられる。
また、ヒンダードアミン系安定剤として、特に限定されないが、例えば、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、並びに、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)-ジエタノールとの縮合物などの高分子量のピペリジン誘導体重縮合物を用いることもできる。
その他にも、ヒンダードアミン系安定剤として、特に限定されないが、例えば、N,N’,N’’,N’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、1-[2-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-4-{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒロドキシフェニル)プロピオニルオキシ}-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、及び、過酸化処理した4-ブチルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンとの反応生成物、シクロヘキサンとの反応生成物、N,N’-エタン-1,2-ジイルビス(1,3-プロパンジアミン)との反応生成物が挙げられる。
ヒンダードアミン系安定剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、ヒンダードアミン系安定剤の含有量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部であり、より好ましくは0.1~2質量部、更に好ましくは0.1~1.5質量部である。ヒンダードアミン系安定剤の含有量を上記範囲に調整することで、ポリアセタール樹脂組成物から得られる成形品(例えば、自動車部品)は、更に優れた外観を保持することが可能となる。
〈紫外線吸収剤〉
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.01~5質量部の紫外線吸収剤を含有することが好ましい。上記特定量の紫外線吸収剤を含有することにより、そのポリアセタール樹脂組成物から得られる成形品(例えば、自動車部品)は、耐候性(光安定性)が向上する。
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、及びヒドロキシフェニル-1,3,5-トリアジン系化合物が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジイソアミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのヒドロキシル基とアルキル基(好ましくはC1-6アルキル基)置換アリール基とを有するベンゾトリアゾール類;2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどのヒドロキシル基とアラルキル基又はアリール基置換アリール基とを有するベンゾトリアゾール類;2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのヒドロキシル基とアルコキシ基(好ましくはC1-12アルコキシ基)置換アリール基とを有するベンゾトリアゾール類が挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物としては、上記の中でも、ヒドロキシル基とC3-6アルキル基置換C6-10アリール基(特にフェニル基)とを有するベンゾトリアゾール類、並びに、ヒドロキシル基とC6-10アリール-C1-6アルキル基(特にフェニルC1-4アルキル基)置換アリール基とを有するベンゾトリアゾール類が好ましい。
ベンゾフェノン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、複数のヒドロキシル基を有するベンゾフェノン類;ヒドロキシル基とアルコキシ基(好ましくはC1-16アルコキシ基)とを有するベンゾフェノン類が挙げられる。
複数のヒドロキシル基を有するベンゾフェノン類の具体例としては、特に限定されないが、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンなどのジ、トリ又はテトラヒドロキシベンゾフェノン;2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノンなどのヒドロキシル基とヒドロキシル基置換アリール又はアラルキル基とを有するベンゾフェノン類が挙げられる。
また、ヒドロキシル基とアルコキシ基とを有するベンゾフェノン類の具体例としては、特に限定されないが、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノンが挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、上記の中でも、ヒドロキシル基とヒドロキシル基置換C6-10アリール基又はC6-10アリール-C1-4アルキル基とを有するベンゾフェノン類、特に、ヒドロキシル基とヒドロキシル基置換フェニルC1-2アルキル基とを有するベンゾフェノン類が好ましい。
シュウ酸アニリド系化合物としては、特に限定されないが、例えば、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-5-t-ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-フェニル)シュウ酸ジアミドが挙げられる。
ヒドロキシフェニル-1,3,5-トリアジン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、紫外線吸収剤の含有量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部であり、より好ましくは0.1~2質量部であり、更に好ましくは0.1~1.5質量部である。
上記の中でも、ヒンダードアミン系安定剤としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサビス[5,5’]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物が特に好ましく、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物がより好ましく、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾールが特に好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系安定剤とを両方とも含有することが好ましい。この場合、ヒンダードアミン系安定剤と紫外線吸収剤との割合は、前者/後者(質量比)で10/90~80/20が好ましく、より好ましくは10/90~70/30、更に好ましくは20/80~60/40の範囲である。
[その他の添加剤]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、更に適当な公知の添加剤を必要に応じて配合することができる。具体的には、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体又は化合物、蟻酸捕捉剤、離型剤、無機充填剤、結晶核剤、導電材、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
なお、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、各添加剤の配合量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001~0.8質量部、より好ましくは0.01~0.7質量部である。
[酸化防止剤]
酸化防止剤としては、ヒンダートフェノール系酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3’-メチル-5’-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-テトラデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、1,4-ブタンジオール-ビス-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが挙げられる。上記の中でも好ましい酸化防止剤は、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。これらの酸化防止剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体又は化合物]
ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体又は化合物は、ホルムアルデヒドと反応可能な窒素原子を分子内に有する重合体又は化合物(単量体)である。その具体例としては、特に限定されないが、例えば、ナイロン4-6、ナイロン6、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン6-12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、及びこれらの重合体、例えば、ナイロン6/6-6/6-10、ナイロン6/6-12が挙げられる。
また、ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体又は化合物として、特に限定されないが、例えば、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。より具体的には、特に限定されないが、例えば、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られるポリ-β-アラニン共重合体が挙げられる。
さらに、ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体又は化合物として、特に限定されないが、例えば、アミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、尿素、尿素誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物が挙げられる。
アミド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドが挙げられる。
アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、2,4-ジアミノ-sym-トリアジン、2,4,6-トリアミノ-sym-トリアジン、N-ブチルメラミン、N-フェニルメラミン、N,N-ジフェニルメラミン、N,N-ジアリルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4-ジアミノ-6-フェニル-sym-トリアジン)、アセトグアナミン(2,4-ジアミノ-6-メチル-sym-トリアジン)、2,4-ジアミノ-6-ブチル-sym-トリアジンが挙げられる。
アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、N-メチロールメラミン、N,N’-ジメチロールメラミン、N,N’,N”-トリメチロールメラミンが挙げられる。
アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。
尿素誘導体としては、特に限定されないが、例えば、N-置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物が挙げられる。N-置換尿素の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アリール置換尿素が挙げられる。尿素縮合体の具体例としては、特に限定されないが、例えば、尿素とホルムアルデヒドとの縮合体が挙げられる。ヒダントイン化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ヒダントイン、5,5-ジメチルヒダントイン、5,5-ジフェニルヒダントインが挙げられる。ウレイド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アラントインが挙げられる。
イミダゾール化合物の具体例としては、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール等が挙げられる。
イミド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドが挙げられる。
これらのホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体又は化合物は、1種を単独で
用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[蟻酸捕捉剤]
蟻酸捕捉剤は蟻酸を効率的に中和し得るものであり、特に限定されないが、例えば、上記のアミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、例えば、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。
また、蟻酸捕捉剤として、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシドが挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウムなどの金属の水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。
上記カルボン酸塩のカルボン酸としては、10~36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水素原子が水酸基で置換されていてもよい。
飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸塩の具体的な例としては、特に限定されないが、例えば、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸-パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸-ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸-ステアリン酸)カルシウムが挙げられる。これらの中でも好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、珪酸マグネシウムが挙げられる。
[離型剤]
離型剤としては、アルコール、脂肪酸及びそれらの脂肪酸エステルが好ましく用いられるが、特に好ましい離型剤としては、エチレングリコールジステアレートが挙げられる。
[無機充填剤]
無機充填剤としては、繊維状、粉粒子状、板状及び中空状の無機充填剤が挙げられる。繊維状無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮などの金属繊維等の無機質繊維が挙げられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類も繊維状無機充填剤として例示される。
粉粒子状無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイトのような珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナのような金属酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような金属硫酸塩、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末が挙げられる。
板状無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔が挙げられる。中空状無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーンが挙げられる。これらの無機充填剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの無機充填剤は表面処理を施されていても施されていなくてもよいが、成形表面の平滑性、機械的特性の観点から表面処理を施されたものが好ましい場合がある。無機充填剤の表面処理に用いられる表面処理剤としては従来公知のものが使用可能である。表面処理剤としては、特に限定されないが、例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤が挙げられる。より具体的には、表面処理剤として、特に限定されないが、例えば、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n-ブチルジルコネートが挙げられる。
なお、無機充填剤に加えて/代えて、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状物質が用いられてもよい。
[結晶核剤]
結晶核剤としては、特に限定されないが、例えば、窒化ホウ素、タルク等が挙げられる。
[導電剤]
導電剤としては、特に限定されないが、例えば、導電性カーボンブラック、金属粉末又は繊維が挙げられる。
[熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマー]
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーネート樹脂、未硬化のエポキシ樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂の変性物も熱可塑性樹脂に含まれる。
熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが挙げられる。
≪ポリアセタール樹脂組成物の製造方法≫
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されず、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法として一般的に知られている方法を用いることができる。例えば、上記ポリアセタール樹脂、ヒドラジド化合物、ポリエチレングリコールおよび着色顔料、さらに必要に応じてヒンダードアミン系安定剤、紫外線吸収剤等の他の添加剤をヘンシェルミキサー、タンブラー、V字型ブレンダーなどで予め混合して、1軸または多軸混錬押出機等を用いて溶融混錬する製造方法などが挙げられる。ポリアセタール樹脂組成物を溶融混錬する際の押出機として、減圧装置を備えた2軸混練押出機を用いる方法が好ましい。
また、上記各成分を予め混合することなく、定量フィーダーなどで各成分を単独または数種類ずつまとめて押出機に連続供給することにより、押出機内にて原料組成物を得て、その原料組成物からポリアセタール樹脂組成物を製造することも可能である。
また、予め上記各成分からなる高濃度マスターバッチを作製しておき、押出溶融混練時または射出成形時に更に上記ポリアセタール樹脂で希釈することによりポリアセタール樹脂組成物を得ることもできる。
本実施形態の金属インサート成形体に含まれるポリアセタール樹脂組成物は、サンプリングバッグ法により測定されるホルムアルデヒド発生量が5000μg/m以下であることが好ましく、3000μg/m以下であることがより好ましい。
なお、上記ホルムアルデヒド発生量は、具体的には、後述する実施例に記載のサンプリングバッグ法により測定される値である。
≪金属インサート成形体の製造方法≫
本実施形態の金属インサート成形体(例えば、自動車部品)を製造する方法は、特に限定されず、公知のインサート成形方法を用いることができる。
本実施形態の金属インサート成形体(例えば、自動車部品)の製造方法において、特に、意匠面にシボ加工が施された部品、リブが配置された部品、肉厚が不均一である部品などを製造する場合であっても、上述のポリアセタール樹脂組成物を用いているので、耐モールドデポジット性に優れ、連続成形した後のホルムアルデヒド発生量が少ない。さらには、得られる金属インサート成形体(例えば、自動車部品)は、紫外線照射時におけるホルムアルデヒド発生量の抑制に優れる。
以下、実施例および比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施列および比較例に対して用いた各種物性の測定および評価方法は次のとおりである。
(1)メルトフローレート(MFR)
ASTM-D1238に準じて、190℃、荷重2169gの条件下でポリアセタール樹脂のメルトフローレート(g/10分)を測定した。
(2)ホルムアルデヒド発生量(サンプリングバッグ法)
実施例および比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物のペレットを、射出成形機(東芝機械社製、商品名「IS-100GN」)を用いて、シリンダー温度220℃、射出時間15秒、冷却時間20秒、金型温度77℃の条件で成形して平板の試験片(縦130mm×横110mm×厚み3mm)を作製し、下記のサンプリングバッグ法により、試験片から発生するホルムアルデヒド量を求めた。
但し、後述のポリアセタール樹脂(P1)にて上記成形条件でフルショットになるように射出圧力を調整し、後述のポリアセタール樹脂(P2)および(P3)のように、原料のポリアセタール樹脂のメルトフローレートがポリアセタール樹脂(P1)と異なる場合は、成形体の質量が同等になるように、射出圧力を調整した。
上記成形した試験片は、23℃、湿度50%で管理された部屋で24時間放置し、その後、ポリエチレン袋に入れた後、アルミ袋内に収納しシールして保存した。
バッグサンプリングバッグ法では、上記の方法で作製した試験片を規定されたサイズ(縦100mm×横50mm×厚み3mm)に切削したもの4枚を10Lの容量のサンプリングバッグに入れて封入し、脱気後、5Lの窒素を入れた。65℃で2時間加熱した後、サンプリングバッグ内の窒素を500mL/minで3L抜き取り、発生したホルムアルデヒドをDNPH(2、4-ジニトロフェニルヒドラジン)捕集管に吸着させた。その後、DNPH捕集管からDNPHとホルムアルデヒドとの反応物をアセトニトリルで溶媒抽出し、HPLC(高速液体クロマトグラフ)でDNPHとホルムアルデヒドとの反応物の標準物質を用いた検量線から発生したホルムアルデヒド量を求め、サンプリングバッグ容量で除することにより試験片から放出されるホルムアルデヒド発生量(μg/m)を算出した。
(3)高温環境下でのクラック発生の有無
ギアオーブン(商品名「GPH-202」、エスペック(株)製)を用いて、条件1:120℃環境下に168時間、または条件2:90℃環境下720時間の条件で、実施例および比較例の金属インサート成形体を加熱した。加熱後に成形体表面を目視で観察し、クラックの発生有無を確認した。
クラックの発生有無を以下の評価基準で評価した。
[評価基準]
◎(優れる):クラックの発生無し
○(良好):クラックの最も広い幅が1mm未満の微細なクラック発生
×(不良):クラックの最も広い幅が1mm以上のクラック発生
(4)金型汚染防止性
金属インサート成形体の金型汚染防止性の評価は、成形体の製造工程で金型へのモールドデポジット(MD)の生成状態により行った。
[評価基準]
◎(優れる):500ショット後の金型へのMDが金型キャビティー内に確認されない、若しくはMDが金型キャビティー内の表面積の5%未満を占める場合で、水にて容易に除去が可能な場合
○(良好):500ショット後の金型へのMDがキャビティー内の表面積の5%以上に確認されたが、水にて容易に除去が可能な場合
×(不良):500ショット後の金型へのMDがキャビティー内に確認され、水での除去が不可能な場合
実施例および比較例で使用した各原料は以下のとおりである。
〔金属部材(1)〕
金属部材(1)はステンレス鋼(SUS304)製である3mm厚平板をプレス成形にて製作した。また、金属部材(1)の端面のバリやシャープエッジは除去した。
〔ポリアセタール樹脂組成物の原料成分〕
実施例および比較例において、ポリアセタール樹脂組成物の原料成分には下記の成分を用いた。
〈ポリアセタール樹脂〉
〈〈ポリアセタール樹脂P1~P3(ホモポリマー)〉〉
図2に示すような撹拌機を付帯したジャケット付き5Lタンク重合機を用い、ポリアセタールホモポリマーを製造した。
図2において、(a)は撹拌翼付帯撹拌用モータ、(b)はジャケット付反応器、(c)はスラリー循環ポンプ、(1)はホルムアルデヒドガスの供給、(2)は連鎖移動剤および重合溶媒の供給、(3)は重合触媒の供給、(4)はスラリー採取を表す。
ジャケット付反応器(b)にn-ヘキサンを2L満たし、循環ラインを設けた。ラインの長さは6φ×2.5mとし、スラリー循環ポンプ(c)により20L/hrで循環させた。
反応器(b)の中に脱水したホルムアルデヒドガス200g/hrを(1)に示すように直接供給した。重合触媒(ジメチルジステアリルアンモニウムアセテート)は(3)に示すように反応器直前の循環ラインに供給し、連鎖移動剤(無水酢酸)は次工程に抜いていくスラリー分を補うためのヘキサンに添加して(2)に示すように循環ラインに連続的にフィードしながら、58℃で重合を行い、粗ポリマーを含む重合スラリーを得た。添加する重合触媒と連鎖移動剤の量は、所望するポリアセタール樹脂のメルトフローレート(MFR)に応じて調整した。
得られたスラリーをヘキサンと無水酢酸との1対1混合物中で140℃×2時間反応させ、分子末端をアセチル化することにより安定化を行った。反応後のポリマーを濾取、2mmHg以下に減圧し、80℃に設定した減圧乾燥機で3時間かけて乾燥を行い、ポリアセタール樹脂P1~P3のパウダーを得た。
得られたポリアセタール樹脂P1~P3のメルトフローレートを、上述の測定方法により測定したところ、それぞれP1は2.0g/10分、P2は4.0g/10分、P3は6.0g/10分であった。
また、得られたポリアセタール樹脂P1~P3の融点は、いずれも175℃であった。
〈〈ポリアセタール樹脂P4(コポリマー)〉〉
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)の温度を80℃に調整した。
該重合機に、モノマーとしてトリオキサンを4kg/時間、コモノマーとして1,3-ジオキソランを128.3g/時間(トリオキサン1molに対して、3.9mol%)、連鎖移動剤としてメチラールを690mg/時間(トリオキサン1molに対して0.20×10-3mol)を連続的に添加した。
更に前記重合機に、重合触媒として三フッ化ホウ素ジ-n-ブチルエーテラートを153.4mg/時間(トリオキサン1molに対して1.5×10-5mol)連続的に添加した。こうして、連続式で重合反応を行った。重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入して、重合触媒を失活させた。得られたポリアセタールコポリマーを、遠心分離機を用いてろ過し、乾燥させた。乾燥後のポリアセタールコポリマーを、ベント付きの2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中で溶融状態となっているポリアセタールコポリマーに、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して0.5質量部の水を添加し、押出機の条件を温度200℃、滞留時間7分として、ポリアセタールコポリマーの不安定末端部分(-(OCH-OH)の分解除去を行った。
不安定末端部分が分解除去されたポリアセタールコポリマーは、ベント真空度20Torrの条件下で脱揮し、押出機のダイス部よりストランドとして押し出し、ペレット化した。こうしてペレット化したポリアセタール樹脂P4を得た。
得られたポリアセタール樹脂P4のメルトフローレートを、上述の測定方法により測定したところ、2.0g/10分であった。
また、ポリアセタール樹脂P4について、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、商品名「DSC7」)を用いて200℃まで速度320℃/分で昇温し、200℃で2分間保持した後に、速度10℃/分で100℃まで降温し、その後、昇温速度2.5℃/分で測定した融点は165℃であった。
〈ヒドラジド化合物〉
・セバシン酸ジヒドラジド(株式会社日本ファインケム製)
〈ポリエチレングリコール〉
・数平均分子量が6,000のポリエチレングリコール(三洋化成工業株式会社製、製品名:マクロゴール)
なお、本実施例において、ポリエチレングリコールの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
〈着色顔料〉
・アセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、製品名:デンカブラック)
〈ヒンダードアミン系安定剤〉
・ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(BASFジャパン株式会社製、製品名:チヌビン770)
〈紫外線吸収剤〉
・2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール(BASFジャパン株式会社製、製品名:チヌビン234)
[実施例1~4]
表1に示した組成で、ポリアセタール樹脂、ヒドラジド化合物、ポリエチレングリコール、着色顔料、およびその他の添加剤をヘンシェルミキサーにて1分間混合し、原料組成物を得た。得られた原料組成物を、200℃に設定したベント付きスクリュー型二軸押出機(プラスチック工業(株)社製BT-30、L/D=44)にてスクリュー回転数100rpm、24アンペアで溶融混錬することによりポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。なお、原料投入からペレット採取まで、できるだけ酸素の混入を避けて操作を行った。
得られたペレットの測定・評価結果を表1に示す。
また、実施例1、3、4で得られたポリアセタール樹脂組成物のメルトフローレートを、上述のとおりASTM-D1238に準じて測定したところ、190℃、2169gの条件下で2.0g/10分であった。また、同様に実施例2で得られたポリアセタール樹脂組成物のメルトフローレートを測定したところ、4.0g/10分であった。
[比較例1]
表1に示すとおり、原料としてポリアセタール樹脂P3を使用したこと以外は実施例1と同様にして、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたペレットの測定・評価結果を表1に示す。
また、比較例1で得られたポリアセタール樹脂組成物のメルトフローレートを、上述のとおりASTM-D1238に準じて測定したところ、190℃、2169gの条件下で6.0g/10分であった。
[比較例2]
表1に示すとおり、原料としてポリエチレングリコールを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたペレットの測定・評価結果を表1に示す。
また、比較例2で得られたポリアセタール樹脂組成物のメルトフローレートを、上述のとおりASTM-D1238に準じて測定したところ、190℃、2169gの条件下で2.0g/10分であった。
[比較例3]
表1に示すとおり、原料のポリエチレングリコールの配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたペレットの測定・評価結果を表1に示す。
また、比較例3で得られたポリアセタール樹脂組成物のメルトフローレートを、上述のとおりASTM-D1238に準じて測定したところ、190℃、2169gの条件下で2.0g/10分であった。
〔金属インサート成形体の製造〕
上述のようにして製造した金属部材(1)と、実施例および比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物とを、射出成形機(日本製鋼所(株)製J110AD)を用いて、シリンダー温度をポリアセタール樹脂の融点に対して25℃高い温度に設定し、金型温度80℃、冷却時間30秒として、図1に示す金属インサート成形体を製造した。
金属インサート成形体について、それぞれ図1(a)は正面図、図1(b)は側面図、図1(c)は下部側面図、図1(d)は図1(a)に示す線分A-A’における断面図を示す。なお、図1(a)~(c)における破線は、インサートされた金属部材(1)を示す。
金属インサート成形体の製造に用いる型には、図1(c)中の中心Gに対応する部分に、φ3mmのゲートを設けた。
金属インサート成形体の製造の際には、上記ポリアセタール樹脂組成物を十分に充填し、バリが出ていないことを確認しながら行った。
Figure 2022098154000001
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、上述のとおり、着色顔料を含む組成であっても、熱によるエージング割れを抑制することが可能であり、製品の安全性、信頼性の向上につなげることが可能である。
そのため、本発明の金属インサート成形体は、例えば、自動車用シートベルト向けのシートベルト取り付け用アンカーや、シートベルトタングなどの安全部品においてその効果を最大限に発揮する。
G:中心(ゲート対応位置)
(a):撹拌翼付帯撹拌用モータ
(b):ジャケット付反応器
(c):スラリー循環ポンプ
(1):ホルムアルデヒドガスの供給
(2):連鎖移動剤および重合溶媒の供給
(3):重合触媒の供給
(4):スラリー採取

Claims (10)

  1. メルトフローレートが1.0~5.0g/10分のポリアセタール樹脂100質量部に対し、ヒドラジド化合物0.01~5質量部、ポリエチレングリコール0.01~1質量部、および着色顔料を含むポリアセタール樹脂組成物を含むことを特徴とする、金属インサート成形体。
  2. ウェルド部を有する、請求項1に記載の金属インサート成形体。
  3. 前記ポリエチレングリコールの数平均分子量が5,000以上25,000以下である、請求項1又は2に記載の金属インサート成形体。
  4. 前記着色顔料が無機系顔料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属インサート成形体。
  5. 前記着色顔料がカーボンブラックである、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属インサート成形体。
  6. 前記ポリアセタール樹脂組成物が、前記ポリアセタール樹脂100質量部に対し、ヒンダードアミン系安定剤0.01~5質量部および/または紫外線吸収剤0.01~5質量部を更に含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属インサート成形体。
  7. 前記ポリアセタール樹脂組成物の、サンプリングバッグ法におけるホルムアルデヒド発生量が5000μg/m以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属インサート成形体。
  8. 前記ポリアセタール樹脂がホモポリマーである、請求項1~7のいずれか一項に記載の金属インサート成形体。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載の金属インサート成形体を含むことを特徴とする、シートベルト取り付け用アンカー。
  10. インサートされている金属がその表面全体を前記ポリアセタール樹脂組成物で覆われている、請求項9に記載のシートベルト取り付け用アンカー。
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