JP2022091675A - ペン入力装置用カバー部材、及びペン入力装置 - Google Patents

ペン入力装置用カバー部材、及びペン入力装置 Download PDF

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Naoki Fujita
沢泉 木下
Takumi Kinoshita
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Abstract

【課題】入力ペンによるペン入力装置への入力操作において、優れた書き味を実現することができる入力装置用カバー部材、及びペン入力装置を提供する。【解決手段】カバー部材の主面に、200gfの荷重を与えたElastomer製の摩擦子を、室温下、移動距離50mm、移動速度50mm/sの条件下で100回往復運動させた際の99回目の動作時における動摩擦係数μk(Elastomer)が、0.15~0.6の範囲にあり、当該カバー部材の主面に、200gfの荷重を与えたPOM製の摩擦子を、室温下、移動距離50mm、移動速度50mm/sの条件下で100回往復運動させた際の99回目の動作時における動摩擦係数μk(POM)が、0.15~0.6の範囲にあり、動摩擦係数の比(μk(Elastomer)/μk(POM))が1.0~3.0の範囲にある。【選択図】図2

Description

本発明は、ペン入力装置用カバー部材、及びペン入力装置に関する。
従来より、入力ペンを用いて、ユーザーが文字及び図形等の入力操作を画面上にて手書きで行うことができるペン入力装置が知られている。
このようなペン入力装置においては、液晶ディスプレイ等によるディスプレイ装置の前面側に、ガラス基板等で構成された透明なカバー部材が配置されており、当該カバー部材の表面において入力ペンを接触及び移動させることで、様々な入力操作を行うことが可能となっている。
ここで、ペン入力装置のカバー部材としてガラス基板を用いた場合、ガラス基板の表面は、一般的に凹凸が小さく滑らかに形成されているため、カバー部材(ガラス基板)の表面に入力ペンを接触させて移動させた際に、当該入力ペンのペン先が滑ってしまい、書き心地が悪いという問題が生じていた。
そこで、このような問題点を改善し、ペン入力装置における入力ペンの書き味を向上させるための技術が、例えば特許文献1及び特許文献2によって開示されている。
即ち、特許文献1においては、ペン入力装置における入力ペンの書き味を高めるための技術として、基材とその表面に設けられる樹脂層(防眩層)とにより構成され、当該樹脂層(防眩層)が、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなり、表面に凹凸を有することを特徴とするペン入力装置用表面材(カバー部材)が開示されている。
なお、上記凹凸の平均間隔は、5~500μmとなっている。
また、特許文献2においては、エッチングによってガラス表面に微小な凹凸をつけることにより、摩擦力を増加させて書き味を向上させることを特徴とするカバーガラス(カバー部材)が開示されている。
特開2009-151476号公報
国際公開第2015/072297号
しかしながら、前記特許文献1における、ペン入力装置用表面材(カバー部材)の表面に形成される樹脂層(防眩層)においては、カバー部材の表面に入力ペンを接触させて移動させた際に、当該入力ペンのペン先が引掛りすぎて逆に滑り難くなり、良い書き味を得ることが困難であった。
また、前記特許文献2におけるカバーガラス(カバー部材)のように、一様に微小な凹凸を施した場合、当該微小な凹凸による引掛りが連続的に生じ、摩擦力が大きくなり過ぎることから、結果的にスムーズなペンの操作が失われ、書き味が悪くなる傾向があった。
本発明は、以上に示した現状の問題点に鑑みてなされたものであり、入力ペンによるペン入力装置への入力操作において、優れた書き味を実現することができる入力装置用カバー部材、及びペン入力装置を提供するものである。
上記課題を解決する本発明のペン入力装置用カバー部材、及びペン入力装置は、以下の特徴を有する。
即ち、本発明に係るペン入力装置用カバー部材は、ペン入力装置におけるディスプレイ装置の前面側に配置されるペン入力装置用カバー部材であって、当該カバー部材の主面に、200gfの荷重を与えたElastomer製の摩擦子を、室温下、移動距離50mm、移動速度50mm/sの条件下で100回往復運動させた際の99回目の動作時における動摩擦係数μk(Elastomer)が、0.15~0.6の範囲にあり、当該カバー部材の主面に、200gfの荷重を与えたPOM製の摩擦子を、室温下、移動距離50mm、移動速度50mm/sの条件下で100回往復運動させた際の99回目の動作時における動摩擦係数μk(POM)が、0.15~0.6の範囲にあり、動摩擦係数の比(μk(Elastomer)/μk(POM))が1.0~3.0の範囲にあることを特徴とする。
このような構成を有することにより、本発明に係るペン入力装置用カバー部材によれば、入力ペンのペン先が、例えばElastomer製またはPOM製のいずれの場合であっても対応可能であり、入力ペンによるペン入力装置への入力操作において、優れた書き味を実現することができる。
また、本発明に係るペン入力装置用カバー部材において、前記カバー部材は、少なくとも一方の主面に凹凸形状を有し、前記凹凸形状は、高域フィルタλcのカットオフ値λc1を、粗さ曲線要素の平均長さの5倍の値とし、且つ低域フィルタλsのカットオフ値λs1を27μmとした場合、最大高さ粗さRzaが3~2000nm、且つ粗さ曲線要素の平均長さRSmaが100~5000μmであり、高域フィルタλcのカットオフ値λc2を14μmとし、且つ低域フィルタλsのカットオフ値λs2を0.35μmとした場合、算術平均高さSaが0.5~50nm、最大高さ粗さRzbが10~100nm、且つ粗さ曲線要素の平均長さRSmbが0.01~10μmであることが好ましい。
このような構成を有することにより、本発明に係るペン入力装置用カバー部材によれば、入力ペンによるペン入力装置への入力操作において、カバー部材に対してペン先が過剰に滑り難くなることがなく、且つ過剰に滑り易くなることもなく、入力ペンによる書き味を優れたものとすることができる。
また、本発明に係るペン入力装置用カバー部材において、前記カバー部材は、少なくとも一方の主面に凹凸形状を有し、前記凹凸形状は、高域フィルタλcのカットオフ値λc2を14μmとし、且つ低域フィルタλsのカットオフ値λs2を0.35μmとした場合、粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqが2以上であることが好ましい。
このような構成を有することにより、本発明に係るペン入力装置用カバー部材によれば、入力ペンによるペン入力装置への入力操作において、当該入力ペンのペン先に対する引掛りが増えて摩擦力が増加することとなり、文字や図形等の書き始めにかけて、ペン先に力を付加させ易く、また書き終わりにかけて、入力ペンの操作を停止させ易くなることから、入力ペンの操作性を向上させることができる。
また、本発明に係るペン入力装置用カバー部材は、前記カバー部材の主面に、200gfの荷重を与えたフェルト製摩擦子を、室温下、移動距離50mm、移動速度50mm/sの条件下で100回往復運動させた際の99回目の動作時における動摩擦係数μk(Felt)が、0.15~0.4の範囲にあることが好ましい。
このような構成を有することにより、本発明に係るペン入力装置用カバー部材によれば、入力ペンのペン先が、例えばフェルト製であっても対応可能であり、入力ペンによるペン入力装置への入力操作において、優れた書き味を実現することができる。
そして、本発明に係るペン入力装置は、上述した何れかのペン入力装置用カバー部材、ディスプレイ装置、及びペン入力を検出する検出回路を備えることを特徴とする。
また、本発明に係るペン入力装置は、前記ペン入力装置用カバー部材の主面に接触しながら移動することにより、ペン入力装置に対するペン入力を行う入力ペンを備えることを特徴とする。
このような構成を有することにより、本発明に係るペン入力装置によれば、入力ペンによるペン入力装置への入力操作において、優れた書き味を実現することができる。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明に係るペン入力装置用カバー部材、及びペン入力装置によれば、入力ペンによるペン入力装置への入力操作において、優れた書き味を実現することができる。
ペン入力装置の構成を示した概略側面断面図である。 カバー部材の主面における測定断面曲線を示した図であって、うねり成分の凹凸、及び微小凹凸を示した図である。 高域フィルタλc、及び低域フィルタλsのカットオフ値を説明するための図であって、波長と振幅伝達率との関係を示したグラフである。 カバー部材の主面における動摩擦係数μkを測定するための、摩擦係数測定装置の構成を示した図であって、(a)はその側面図であり、(b)はその正面図である。 一定荷重を印可したペン先を一定速度で100回往復移動させた際の、時間tと摩擦係数μの関係を示した図である。 図5に示した往復移動において、99回目の往復運動における時間tと摩擦係数μの関係を拡大して示した図である。 うねり成分の凹凸、及び微小凹凸の双方からなる凹凸形状が形成されたカバー部材の主面に、ペン先を接触させる様子を示した図である。 微小凹凸のみからなる凹凸形状が形成されたカバー部材の主面に、ペン先を接触させる様子を示した図である。
次に、本発明に係るペン入力装置用カバー部材、及びペン入力装置を具現化する実施形態について、図1乃至図8を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、図4(a)及び図4(b)中に示した各矢印の方向によって、摩擦係数測定装置101の上下方向、前後方向、及び左右方向を各々規定して記述する。
[ペン入力装置10の全体構成]
先ず、ペン入力装置10の全体構成について、図1を用いて説明する。
ペン入力装置10は、本発明に係るペン入力装置用カバー部材を備えたペン入力装置の一実施形態である。
ペン入力装置10は、映像を表示するディスプレイ装置の一例であるディスプレイ素子30、ディスプレイ素子30の正面側に配置されるカバー部材としてのガラス基板20、ディスプレイ素子30の背面側に配置されるデジタイザ回路40、及び入力ペン50などを備える。
また、ガラス基板20は、本発明に係るペン入力装置用カバー部材の一例であり、デジタイザ回路40は、本発明に係るペン入力を検出する検出回路の一例である。
なお、上記の記載において、ディスプレイ素子30の「正面側」とは、映像が表示される側を意味し、ディスプレイ素子30の「背面側」とは、映像が表示される側の反対側を意味する。
本実施形態においては、例えば、ディスプレイ素子30の「正面側」は、図1中における紙面上方側となり、ディスプレイ素子30の「背面側」は、図1中における紙面下方側となる。
ペン入力装置10は、ガラス基板20の主面20a(ガラス基板20に対してディスプレイ素子30側とは反対側の面)に対して、入力ペン50を接触させた状態で移動させることにより、文字及び図形などのペン入力(入力操作)を行うことが可能な構成となっている。
ペン入力装置10の例示としては、例えばタブレット端末が挙げられる。
ここで、上記タブレット端末は、表示機能、及びペン入力機能の双方を備えたペン入力用表示装置を広く意味し、タブレットPC、モバイルPC、スマートフォン、及びゲーム機などの機器を含むものである。
ガラス基板20は、少なくとも一方の主面(本実施形態においては、上記の主面20a)に凹凸形状が形成された、透明なガラス板により形成されている。
また、ガラス基板20は、凹凸形状が形成された主面20aが、入力ペン50が接触する側の面となるように配置されている。
ここで、ガラス基板20としては、例えばアルミノシリケートガラス、またはホウケイ酸ガラスなどからなるガラス板を用いることができる。
また、アルカリ含有アルミノシリケートガラスからなるガラス板によって、ガラス基板20が構成される場合、当該ガラス基板20は、表面に化学強化層を有していても良い。
なお、ガラス基板20の詳細については後述する。
デジタイザ回路40は、入力ペン50による入力操作を検出する、検出センサを備えている。
また、入力ペン50は、鉛筆やボールペンなどの筆記具に似た形状の入力器具であり、ガラス基板20と接触する摩擦子の一例であるペン先51を有し、当該ペン先51が、Elastomer、Polyacetal樹脂(POM)などの合成樹脂材、またはFeltなどで構成されている。
入力ペン50において、上記の部材からなるペン先51であれば、微細な凹凸形状に対しても引掛り易い。
従って、入力ペン50のペン先51を、凹凸形状が形成されたガラス基板20の主面20aに接触させて移動させた場合、特に優れた書き味を実現することができる。
なお、本実施形態においては、ペン入力装置用カバー部材としてガラス基板20を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、合成樹脂により形成され、少なくとも一方の主面に凹凸形状が形成された樹脂基板を、ペン入力装置用カバー部材として用いることも可能である。
この場合、当該樹脂基板の凹凸形状は、例えば、樹脂基板の主面にウェットブラスト等のブラスト加工を施したり、或いは、樹脂基板の主面にエンボス加工を施したりすることにより形成することが可能である。
また、凹凸形状が表面に形成された樹脂層を、ガラス基板の少なくとも一方の主面に積層させたものを、ペン入力装置用カバー部材として用いることも可能である。
この場合、当該カバー部材は、凹凸形状が表面に形成された樹脂シートを、ガラス基板の主面に貼り付けることにより構成することができる。
なお、上記樹脂シートの凹凸形状は、例えば、樹脂シートの表面にエンボス加工を施したり、或いは、粉粒体を混入させた合成樹脂をシート状に形成したりすることにより、形成することができる。
また、上記樹脂層は、合成樹脂をガラス基板の主面にスプレーにて吹き付けて形成することも可能である。
但し、ペン入力装置用カバー部材としてガラス基板20を用いた場合は、上述した樹脂基板や、ガラス基板の主面に樹脂層を形成したものなどを用いた場合に比べて、表面(特に、入力ペン50のペン先51と接触する主面)の硬度が高くなるため、表面に傷が付き難い点で有利である。
[ガラス基板20の構成]
次に、ガラス基板20の構成について、図1乃至図3を用いて詳細に説明する。
前述したように、ガラス基板20は、本発明に係るペン入力装置用カバー部材の一実施形態である。
図1において、ガラス基板20の主面20aには、凹凸形状が形成されている。
ガラス基板20は、上記凹凸形状が形成された主面20a上に、200gfの荷重を与えたElastomer製の摩擦子を、室温下、移動距離50mm、移動速度50mm/sの条件下で100往復運動させた際の99回目の動作時における動摩擦係数μk(Elastomer)が、0.15~0.6の範囲にあり、また、上記凹凸形状が形成された主面20a上に、200gfの荷重を与えたPOM製の摩擦子を、室温下、移動距離50mm、移動速度50mm/sの条件下で100往復運動させた際の99回目の動作時における動摩擦係数μk(POM)が、0.15~0.6の範囲にあるとともに、これら動摩擦係数の比(μk(Elastomer)/μk(POM))が1.0~3.0の範囲にあるように構成されている。
なお、ガラス基板20は、さらに、上記凹凸形状が形成された主面20a上に、200gfの荷重を与えたフェルト製の摩擦子を、室温下、移動距離50mm、移動速度50mm/sの条件下で100往復運動させた際の99回目の動作時における動摩擦係数μk(Felt)が、0.15~0.4の範囲にあるように構成されているのが好ましい。
ここで、上記の動摩擦係数μk(μk(Elastomer)、μk(POM)及びμk(Felt))は、99回目の往復運動における、動き出し5mm後から停止する5mm前までの値の平均値である。
本実施形態においては、Elastomer製、またはPOM製の何れのペン先51を用いた場合であっても、動摩擦係数μk(Elastomer)及びμk(POM)の上限値が0.6に設定されているが、当該上限値は、0.58に設定されるのが好ましく、0.55に設定されるのがさらに好ましい。
また、本実施形態においては、Elastomer製、またはPOM製の何れのペン先51を用いた場合であっても、動摩擦係数μk(Elastomer)及びμk(POM)の下限値が0.15に設定されているが、当該下限値は、0.18に設定されるのが好ましく、0.2に設定されるのがさらに好ましい。
動摩擦係数μk(Elastomer)及びμk(POM)の上限値及び下限値を、上記の範囲に設定するのは、以下の理由による。
即ち、少なくとも動摩擦係数μk(Elastomer)及びμk(POM)が0.6を超える場合、摩擦力が高くなり過ぎて、ガラス基板20の主面20aに対してペン先51が滑り難くなり、書き味が低下する。
また、少なくとも動摩擦係数μk(Elastomer)及びμk(POM)が0.15に満たない場合、摩擦力が低くなり過ぎて、ガラス基板20の主面20aに対してペン先51が極端に滑り易くなり、書き味が低下する。
一方、本実施形態においては、動摩擦係数の比(μk(Elastomer)/μk(POM))が1.0~3.0の範囲に設定されているが、当該比は、1.1~2.9の範囲に設定されるのが好ましく、1.2~2.8の範囲に設定されるのがより好ましく、1.3~2.7の範囲に設定されるのがさらに好ましい。
上記の動摩擦係数の比(μk(Elastomer)/μk(POM))の範囲は、ガラス基板20の主面20aに形成された凹凸形状によって得られるものであり、Elastomer製、またはPOM製の何れのペン先51であっても、良い書き味が得られている指標となる。
なお、Elastomer製のペン先51と、POM製のペン先51とでは、上記凹凸形状に対して互いに異なる摩擦挙動となるが、これについての詳細は後述する。
図2に示すように、ガラス基板20の主面20aに形成される凹凸形状は、うねり成分の凹凸、及び微小凹凸からなる大小2種類の凹凸により構成されている。
うねり成分の凹凸は、最大高さ粗さRzaが3~2000nmであり、且つ粗さ曲線要素の平均長さRSmaが100~5000μmである。
また、微小凹凸は、算術平均高さSaが0.5~50nmであり、最大高さ粗さRzbが10~100nmであり、且つ粗さ曲線要素の平均長さRSmbが0.01~10μmであるとともに、粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqが2以上である。
ここで、本願における最大高さ粗さ(Rza及びRzb)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSma及びRSmb)及び粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqは、JISB0601 2013に準拠し、算術平均高さSaは、ISO 25178に準拠する。
うねり成分の凹凸の最大高さ粗さRzaは、微小凹凸の算術平均高さSaに比べて、大きな値となることが好ましい(Rza>Sa)。
また、うねり成分の凹凸の最大高さ粗さRzaは、微小凹凸の算術平均高さSaに対して、1.1~500倍の値となることがより好ましい(Rza=Sa×(1.1~500))。
ここで、うねり成分の凹凸において、最大高さ粗さRzaは、当該うねり成分の凹凸における最も高い山の高さと、最も深い谷の深さとの和である。
また、うねり成分の凹凸の粗さ曲線要素の平均長さRSmaは、所定の基準長さにおける当該凹凸の各周期長さXaの平均である(RSma=(Xa+Xa+・・・+Xa)/n)。
一方、微小凹凸において、算術平均高さSaは、所定の面における凹凸の山の高さZa、及び谷の深さZbの絶対値の平均である(Sa=((|Za|+|Za|+・・・+|Za|)+(|Zb|+|Zb|+・・・+|Zb|))/2n)。
また、微小凹凸の最大高さ粗さRzbは、所定の基準長さにおける当該微小凹凸の最も高い山の高さRpと、最も深い谷の深さRvとの和である(Rzb=Rp+Rv)。
また、微小凹凸の粗さ曲線要素の平均長さRSmbは、所定の基準長さにおける当該微小凹凸の各周期長さXbの平均である(RSmb=(Xb+Xb+・・・+Xb)/n)。
さらに、微小凹凸の粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqは、基準長さにおける局部傾斜dz/dxの二乗平均平方根である。
そして、図2及び図3に示すように、上述したうねり成分の凹凸における最大高さ粗さRza及び粗さ曲線要素の平均長さRSmaの値は、主面20aの測定断面曲線から長波長成分を遮断するための高域フィルタλcのカットオフ値λc1を、粗さ曲線要素の平均長さの5倍の値に設定し、且つ主面20aの測定断面曲線から短波長成分を遮断するための低域フィルタλsのカットオフ値λs1を、27μmに設定した場合に得られる粗さ曲線から評価される値である。
つまり、ガラス基板20の主面20aに形成される凹凸形状は、高域フィルタλcのカットオフ値λc1を、粗さ曲線要素の平均長さの5倍の値とし、且つ低域フィルタλsのカットオフ値λs1を27μmとした場合、最大高さ粗さRzaが3~2000nm、且つ粗さ曲線要素の平均長さRSmaが100~5000μmのうねり成分として発現する。
また、上述した微小凹凸における算術平均高さSa、最大高さ粗さRzb、粗さ曲線要素の平均長さRSmb、及び粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqの値は、主面20aの測定断面曲線から長波長成分を遮断するための高域フィルタλcのカットオフ値λc2を14μmに設定し、且つ主面20aの測定断面曲線から短波長成分を遮断するための低域フィルタλsのカットオフ値λs2を、0.35μmとした場合に得られる粗さ曲線から評価される値である。
つまり、ガラス基板20の主面20aに形成される凹凸形状は、高域フィルタλcのカットオフ値λc2を14μmとし、且つ低域フィルタλsのカットオフ値λs2を0.35μmとした場合、算術平均高さSaが0.5~50nm、最大高さ粗さRzbが10~100nm、且つ粗さ曲線要素の平均長さRSmbが0.01~10μmの微小凹凸として発現するとともに、粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqが2以上である微小凹凸として発現する。
このように、ガラス基板20の主面20aに形成される凹凸形状は、うねり成分の凹凸、及び微小凹凸により構成され、連続的に繋がる微小凹凸が波状に起伏することにより、うねり成分の凹凸の形状が形成される。
本実施形態におけるペン入力装置10(図1を参照)においては、ガラス基板20の主面20aにおける、うねり成分の凹凸の形状、及び微小凹凸の形状が、それぞれ上述した条件の範囲内にて形成されていることにより、ディスプレイ素子30(同じく、図1を参照)の視認性を保持しつつ、入力ペン50の書き味を向上させることが可能となっている。
また、このようなうねり成分の凹凸、及び微小凹凸を上述した条件の範囲内で構成された凹凸形状とすることにより、当該凹凸形状による散乱光の干渉によって、スパークリングと呼ばれるギラつきが発生するのを、抑制することができる。
さらに、本実施形態においては、ガラス基板20の主面20aに樹脂層が形成されておらず、当該主面20aに対して直接的に凹凸形状が形成されているため、耐傷性が高く、傷が付き難いことから、ディスプレイ素子30の視認性を低下させることがない。
ところで、うねり成分の凹凸は、ガラス基板20の主面20aと、入力ペン50のペン先51との接触に影響する。
即ち、ペン先51は、ガラス基板20の主面20aに対して、主に、うねり成分の凹凸における凸部と接触し、当該凹凸の凹部とは接触し難い。
つまり、うねり成分の凹凸が、上述した条件の範囲内にて形成されていることにより、ガラス基板20の主面20aと、入力ペン50のペン先51との接触面積の低減を図ることができる。
よって、入力ペン50のペン先51を、凹凸形状が形成されたガラス基板20の主面20aに接触させて移動させた場合、当該ペン先51と主面20aとの間に発生する摩擦力は、適度に増加及び減少を繰り返すこととなる。
従って、ガラス基板20の主面20aと、入力ペン50のペン先51との間において、摩擦力の過度な増加、または過度な減少を防止することができ、入力ペン50による書き味を、優れたものにすることができる。
ここで、上述したように、本実施形態においては、うねり成分の凹凸における、最大高さ粗さRza(図2を参照)の上限値が2000nmに設定されているが、当該上限値は、1000nmに設定されるのが好ましく、500nmに設定されるのがより好ましく、200nmに設定されるのがさらに好ましい。
また、本実施形態においては、上記最大高さ粗さRzaの下限値が3nmに設定されているが、当該下限値は、4nmに設定されるのが好ましく、5nmに設定されるのがさらに好ましい。
さらに、上述したように、本実施形態においては、うねり成分の凹凸における、粗さ曲線要素の平均長さRSmaの上限値が5000μmに設定されているが、当該上限値は、4000μmに設定されるのが好ましく、3000μmに設定されるのがより好ましく、2000μmに設定されるのがさらに好ましい。
うねり成分の凹凸において、最大高さ粗さRzaの上限値及び下限値を、上記の範囲に設定するのは、以下の理由による。
即ち、うねり成分の凹凸において、最大高さ粗さRzaの上限値が少なくとも2000nmを超える場合、光の散乱が大きくなり過ぎて、ガラス基板20の表面(主面20a)が白濁することに加え、摩擦子であるペン先51がうねり成分の凹凸に嵌まり込み易くなり、掘り起こしの効果によって摩擦力が過度に増加し、書き味が低下する。
また、うねり成分の凹凸において、最大高さ粗さRzaの下限値が少なくとも3nmに満たない場合、上述したような、ガラス基板20の主面20aと、入力ペン50のペン先51との接触面積の低減による効果が十分に得られず、書き味が低下する。
微小凹凸は、ガラス基板20の主面20aと、入力ペン50のペン先51との間の摩擦力に寄与する。
また、上記摩擦力の寄与は、ペン先51の材質によって変化する。
具体的には、低弾性率の材料であるElastomer製のペン先51の場合、ガラス基板20の主面20aが平らであればあるほど、凝着力による大きな摩擦力が生じ、ガラス基板20の主面20aに対して、ペン先51が滑り難くなる。
そこで、ガラス基板20の主面20aに微小凹凸を付与することにより、当該主面20aと、入力ペン50のペン先51との接触面積の低減を図ることができ、ガラス基板20の主面20aに対して、ペン先51を適度に滑り易くすることができる。
一方、POMのような硬い材質からなるペン先51の場合、ガラス基板20の主面20aが平らであればあるほど、摩擦力が低下し、ガラス基板20の主面20aに対して、ペン先51が滑り易くなる。
そこで、ガラス基板20の主面20aに微小凹凸を付与することにより、当該主面20aに対して、入力ペン50のペン先51が引掛り易くなり、摩擦力が増加し、ガラス基板20の主面20aに対して、ペン先51を適度に滑り難くすることができる。
なお、Feltのような材質からなるペン先51の場合、上述したPOM製のペン先51に似た挙動を示し、ガラス基板20の主面20aに微小凹凸を付与することにより、当該主面20aに対して、入力ペン50のペン先51が引掛り易くなり、摩擦力が増加し、ガラス基板20の主面20aに対して、ペン先51を適度に滑り難くすることができる。
このように、ガラス基板20の主面20aに微小凹凸を付与することにより、様々な材質(Elastomer、POM、及びFelt)からなる入力ペン50のペン先51に対して、当該ペン先51が主面20a上で滑ることを適度に抑制し、または主面20a上での当該ペン先51の滑り難さを適度に低下させることができ、入力ペン50による書き味を、優れたものにすることができる。
ここで、上述したように、本実施形態においては、微小凹凸の算術平均高さSaの上限値が50nmに設定されているが、当該上限値は、40nmに設定されるのが好ましく、30nmに設定されるのがさらに好ましい。
また、上述したように、本実施形態においては、微小凹凸の最大高さ粗さRzbの上限値が100nmに設定されているが、当該上限値は、90nmに設定されるのが好ましく、80nmに設定されるのがさらに好ましい。
さらに、上述したように、本実施形態においては、微小凹凸の粗さ曲線要素の平均長さRSmbの上限値が10μmに設定されているが、当該上限値は、8μmに設定されるのが好ましく、5μmに設定されるのがさらに好ましい。
また、微小凹凸の粗さ曲線要素の平均長さRSmbの下限値が0.01μmに設定されているが、当該下限値は、0.1μmに設定されるのが好ましく、0.5μmに設定されるのがさらに好ましい。
微小凹凸の粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqは、ガラス基板20の主面20aと、入力ペン50のペン先51との引掛りに寄与する因子である。
粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqは、微小凹凸における局所的な傾斜角の大きさを評価するための指標であり、凹凸形状の険しさ(起伏の度合い、表面の粗さ)を表す。
具体的には、粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqの値が大きければ、微小凹凸の局所的な傾斜角が大きくなり、低弾性率の材料であるElastomer製のペン先51の場合には、ガラス基板20の主面20aとの接触面積の低減を図ることができ、摩擦力が低下し、当該主面20aに対して、ペン先51を適度に滑り易くすることができる。
また、POMのような硬い材質からなるペン先51の場合には、ガラス基板20の主面20aに対して、当該ペン先51が引掛り易くなり、摩擦力が増加し、当該主面20aに対して、ペン先51を適度に滑り難くすることができる。
このようなことから、上述したように、本実施形態においては、粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqの下限値が2に設定されているが、当該下限値は、3に設定されるのが好ましく、4に設定されるのがより好ましく、5に設定されるのがさらに好ましい。
一方、粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqの値が大き過ぎると、微小凹凸の形状が局所的に鋭利になり過ぎて、摩擦子であるペン先51に食い込み易くなり、過大な摩擦力が生じることから、書き味が低下する。
従って、粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqの上限値は、40に設定されるのが好ましく、35に設定されるのがより好ましく、30に設定されるのがさらに好ましい。
また、ガラス基板20の主面20aは、上述のElastomer、POMなどの合成樹脂材、及びFeltや、Feltと合成樹脂材の複合材料など、凹凸に対して摩擦力を調整可能な材質によって構成されているペン先51に対して、書き味が特に優れたものとなっている。
図1において、ガラス基板20は、当該ガラス基板20を介してディスプレイ素子30の映像を見たときの、映像の視認性の観点から、透明性に関する指標で曇度を表すヘイズが、可視光の波長域(380nm~780nm)において10%未満となることが好ましい。
ガラス基板20のヘイズを10%未満とすることで、ガラス基板20の透明度を保持することができ、ディスプレイ素子30の視認性を保持することができる。
また、ガラス基板20の主面20aには、入力ペン50が接触する側の反射率を低下させるための反射防止膜、または指紋の付着を防止し、撥水性、撥油性を付与するための防汚膜を形成することができる。
上記の反射防止膜は、ガラス基板20をペン入力装置10のカバー部材として使用する場合には、少なくともガラス基板20の表側(入力ペン50が接触する側)の主面20aに有する。
また、ガラス基板20とディスプレイ素子30との間に隙間がある場合には、ガラス基板20の裏側(ディスプレイ素子30側)の主面20bにも反射防止膜を有することが好ましい。
反射防止膜としては、例えばガラス基板20よりも屈折率が低い低屈折率膜、または相対的に屈折率が低い低屈折率膜と相対的に屈折率が高い高屈折率膜とが交互に積層された誘電体多層膜が用いられる。
反射防止膜は、スパッタリング法、またはCVD法などにより形成することができる。
ガラス基板20の主面20aに反射防止膜を有する場合、当該反射防止膜の表面の凹凸が、上述の表面粗さ(うねり成分の凹凸の最大高さ粗さRza及び粗さ曲線要素の平均長さRSma、並びに微小凹凸の算術平均高さSa、最大高さ粗さRzb、粗さ曲線要素の平均長さRSmb、及び粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔq)の範囲となるように、ガラス基板20の主面20aの凹凸形状が形成される。
また、ガラス基板20の主面20aに反射防止膜を有する場合、反射防止膜を有するガラス基板20のヘイズが、上述の範囲となるように、ガラス基板20の主面20aの凹凸形状が形成される。
なお、反射防止膜を形成した後において、うねり成分の凹凸の粗さ曲線要素の平均長さRSma、並びに微小凹凸の粗さ曲線要素の平均長さRSmb及び算術平均高さSaを測定する場合は、10nmのAu膜を形成し、その後これらの値を測定する。
上記の防汚膜は、ガラス基板20をペン入力装置10のカバー部材として使用する場合には、ガラス基板20の表側(入力ペン50が接触する側)の主面20aに有する。
また、防汚膜は、主鎖中にケイ素を含む含フッ素重合体を含むことが好ましい。
含フッ素重合体としては、例えば、主鎖中に、-Si-O-Si-ユニットを有し、且つ、フッ素を含む撥水性の官能基を側鎖に有する重合体を用いることができる。
含フッ素重合体は、例えばシラノールを脱水縮合することにより合成することができる。
なお、ガラス基板20の表側の主面20aに反射防止膜と防汚膜とを有する場合には、ガラス基板20の主面20a上に反射防止膜を形成し、反射防止膜上に防汚膜が形成される。
ガラス基板20の主面20aに防汚膜を有する場合、またはガラス基板20の主面20aに反射防止膜と防汚膜とを有する場合、防汚膜の表面の凹凸が、上述の表面粗さ(うねり成分の凹凸の最大高さ粗さRza及び粗さ曲線要素の平均長さRSma、並びに微小凹凸の算術平均高さSa、最大高さ粗さRzb、粗さ曲線要素の平均長さRSmb、及び粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔq)の範囲となるように、ガラス基板20の主面20aの凹凸形状が形成される。
また、ガラス基板20の主面20aに防汚膜を有する場合、またはガラス基板20の主面20aに反射防止膜と防汚膜とを有する場合、防汚膜を形成した後のガラス基板20のヘイズ、または反射防止膜と防汚膜とを形成した後のガラス基板20のヘイズが、上述の範囲となるように、ガラス基板20の主面20aの凹凸形状が形成される。
[ガラス基板20の製造方法]
次に、ガラス基板20の製造方法について、図1を用いて説明する。
ガラス基板20の少なくとも一方の主面20aに形成される凹凸は、当該主面20aにウェットブラスト処理、化学エッチング処理、及びシリカコーティング処理などの処理方法を、少なくとも1種類以上組み合わせることにより形成される。
ウェットブラスト処理は、アルミナなどの個体粒子にて構成される砥粒と、水などの液体とを均一に攪拌してスラリーとしたものを、圧縮エアを用いて噴射ノズルからガラスからなるワークに対して高速で噴射することにより、当該ワークに微細な凹凸を形成する処理である。
また、スラリーを噴射するノズルとして、スラリーの噴射口の面積をワークの面積に対して小さく絞った丸ノズルを用い、この丸ノズルをワークに対して相対運動させることにより、様々な表面形状を形成させることができる。
ウェットブラスト処理においては、高速に噴射されたスラリーがワークに衝突した際に、スラリー内の砥粒がワークの表面を削ったり、叩いたり、こすったりすることにより、ワークの表面に微細な凹凸が形成されることとなる。
この場合、ワークに噴射された砥粒や、砥粒により削られたワークの破片は、ワークに噴射された液体によって洗い流されるため、ワークに残留する粒子が少なくなる。
また、ノズルをワークに対して任意に走査させて、ワークの表面に部分的にスラリーを噴射することにより、微小凹凸に加え、うねり成分の凹凸を作ることができる。
ガラス基板20は、うねり成分の凹凸、及び微小凹凸からなる凹凸形状が表面に形成されたワークを、所望の大きさや形状に切断等して調製することにより得られる。
ウェットブラスト処理によってワークの主面に形成される、微小凹凸の表面粗さ(算術平均高さSa、最大高さ粗さRzb、粗さ曲線要素の平均長さRSmb、及び粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔq)は、主にスラリーに含まれる砥粒の粒度分布と、スラリーをワークに噴射する際の噴射圧力とにより調整可能である。
また、うねり成分の凹凸の最大高さ粗さRza及び粗さ曲線要素の平均長さRSmaは、スラリーを噴射するノズルのサイズ、送りピッチ幅、送り速度、噴射圧、及び砥粒サイズにより調整可能である。
ウェットブラスト処理においては、スラリーをワークに噴射した場合、液体が砥粒をワークまで運ぶため、乾式ブラスト処理に比べて微細な砥粒を使用することができるとともに、砥粒がワークに衝突する際の衝撃が小さくなり、精密な加工を行うことが可能である。
このように、ワークに対してウェットブラスト処理を施すことで、ガラス基板20の主面20aに、適度なうねり成分の凹凸と、微小凹凸とを形成し易く、ガラス基板20の透明度を損なうことなく、入力ペン50の書き味を優れたものとすることが可能となる。
なお、乾式ブラスト処理においては、噴射された砥粒がワークに衝突した際の摩擦によって、ワークに加工熱が発生するが、ウェットブラスト処理においては、処理中は液体がワークの表面を常に冷却しているため、ワークがブラスト処理により加熱されることがない。
また、乾式ブラスト処理を施すことにより、ガラス基板20の主面20aに凹凸形状を形成することも可能であるが、乾式ブラスト処理では、砥粒がガラス基板20の主面20aに衝突する際の衝撃が大き過ぎて、凹凸形状が形成された主面20aの表面粗さが大きくなり易く、ガラス基板20の透明度が損なわれ易い。
なお、化学エッチング処理は、ガラス基板20の主面20aを、フッ化水素(HF)ガス、またはフッ化水素酸によって化学エッチングする処理である。
また、シリカコーティング処理は、ガラス基板20の主面20aに、シリカ前駆体等のマトリックス前駆体、及びマトリックス前駆体を溶解する液状媒体を含むコーティング剤を、ガラス基板20の主面20aに塗布し、加熱する処理である。
次に、大小2種類の凹凸(うねり成分の凹凸、及び微小凹凸)からなる凹凸形状が一方の主面20aに形成された、ガラス基板20の実施例について、図4乃至図8を用いて説明する。
なお、ガラス基板20の構成については、以下に示すものに限定されるものではない。
[試料の作製]
本実施例においては、ガラス基板20の実施例として試料1~19を各々作製し、これらの実施例に対する比較例として、試料20~24を各々作製した。
なお、これらの試料1~24に用いたガラス基板20としては、厚さが0.55mmのアルカリ含有アルミノシリケートガラスを使用した。
実施例となる試料1~19のガラス基板20に対しては、ウェットブラスト処理を施すことにより、一方の主面20aに、うねり成分の凹凸、及び微小凹凸からなる凹凸形状を形成した。
具体的には、試料1~19の各々のガラス基板20を略垂直姿勢の状態で配置し、粒度が♯8000のアルミナからなる砥粒3wt%と、水と、分散剤とを均一に攪拌してスラリーを調製し、各ガラス基板20の一方の主面20aの全体に対して、0.5~10mm/sの速度にて丸ノズルを移動させながら走査させ、処理圧力0.23MPaのエアを用いて、当該丸ノズルから調製したスラリーを噴射するウェットブラストを施した。
なお、各々のガラス基板20を略垂直姿勢の状態で配置したのは、主面20aの全体に噴き付けられたスラリーが、局所的に留まるのを防ぐためである。
ここで、ウェットブラストを施す丸ノズルは、スラリーの噴射口の断面積を、各ガラス基板20の主面20aの面積に対して小さく絞り、当該主面20aに対して、スラリーを部分的に噴射するノズルである。
うねり成分の凹凸における粗さ曲線要素の平均長さRSmaは、丸ノズルの走査距離を変えることで可変させた。
また、うねり成分の凹凸における最大高さ粗さRzaは、丸ノズルの走査速度を変えることで可変させた。
さらに、微小凹凸における算術平均高さSaは、丸ノズルの走査速度を変更することで可変させた。
なお、上記の砥粒としては、多角形状を有する砥粒を用いた。
具体的には、試料1~19において、うねり成分の凹凸における粗さ曲線要素の平均長さRSmaは、丸ノズルの走査距離を500~1500μmと可変させることで、サンプルを作製した。
また、うねり成分の凹凸における最大高さ粗さRzaは、丸ノズルの走査速度を0.5~10mm/sと可変させることでサンプルを作製した。
なお、丸ノズルの走査速度を遅くすると、うねり成分の凹凸における最大高さ粗さRzaは大きくなり、丸ノズルの走査速度を速くすると、うねり成分の凹凸における最大高さ粗さRzaは最大高さが小さくなる。
比較例となる試料20のガラス基板20に対しては、一方の主面20aに処理を施していない。
つまり、試料20のガラス基板20は、未処理である。
比較例となる試料21のガラス基板20に対しては、一方の主面20aにSiO成分を含む液体を噴射することにより塗布し、塗布したSiO成分を含む液体を乾燥させることにより、当該主面20aにSiOコーティング膜を形成した。
つまり、試料21のガラス基板20には、SiOコーティングを施した。
比較例となる試料22~24のガラス基板20に対しては、5wt%濃度に調整したフッ酸溶液(25℃)中に、各ガラス基板20をそれぞれ所定時間(試料22:1000秒、試料23:2000秒、試料23:3000秒)だけ浸漬することにより作製した。
つまり、試料22~24のガラス基板20には、フッ酸エッチングを施した。
[表面粗さの測定]
先ず始めに、試料1~24のガラス基板20における主面20aの表面粗さを測定した。
表面粗さの測定は、試料1~19についてはウェットブラスト処理を施した主面20aに対して行い、試料20、22~24については一方の主面20aに対して行い、試料21についてはSiOコーティングを施した主面に対して行った。
測定した表面粗さのパラメータは、うねり成分の凹凸に関しては、最大高さ粗さRza、及び粗さ曲線要素の平均長さRSmaであり、微小凹凸に関しては、算術平均高さSa、最大高さ粗さRzb、粗さ曲線要素の平均長さRsmb、及び粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqであり、表面粗さの測定は、白色干渉顕微鏡を用いて行った。
用いた白色干渉顕微鏡は、Zygo社製の白色干渉顕微鏡(製品名:New View 7300)である。
うねり成分の凹凸の測定条件は、対物レンズ2.5倍、ズームレンズ0.5倍を使用し、測定エリア5664×4248μmの領域に対して、カメラ画素数が640×480、積算回数1回となるように実施した。
また、うねり成分の凹凸における最大高さ粗さRza、及び粗さ曲線要素の平均長さRSmaを測定する際の、高域フィルタλcのカットオフ値λc1は、当該粗さ曲線要素の平均長さRSmaの間隔の5倍に設定し、低域フィルタλsのカットオフ値λs1は、27μmに設定した。
一方、微小凹凸の測定条件は、対物レンズ50倍、ズームレンズ2倍を使用し、測定エリア74×55μmの領域に対して、カメラ画素数が640×480、積算回数10回となるように実施した。
また、微小凹凸の算術平均高さSa、最大高さ粗さRzb、粗さ曲線要素の平均長さRSmb、及び粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqを測定する際の、高域フィルタλcのカットオフ値λc2は、14μmに設定し、低域フィルタλsのカットオフ値λs2は0.35μmに設定した。
[表面粗さの測定結果]
試料1~24について行った、表面粗さの測定結果について説明する。
表1及び表2に測定結果を示す。
Figure 2022091675000002
Figure 2022091675000003
表1に示すように、うねり成分の凹凸における粗さ曲線要素の平均長さRSmaは、実施例である試料1~19については、500~1500μmの範囲内の数値であった。
また、うねり成分の凹凸における最大高さ粗さRzaは、実施例である試料1~19については、3~158nmの範囲内の数値であった。
これに対して、比較例である試料20~24において、未処理の試料20、SiOコーティングを施した試料21、及び、フッ酸エッチングを施した試料22~24については、うねり成分の凹凸自体が形成されていなかった。
一方、表2に示すように、微小凹凸における算術平均高さSaは、実施例である試料1~19については、1.83~7.11nmの範囲内の数値であった。
これに対して、比較例である試料20~24において、未処理の試料20の算術平均高さSaは0.12nmと小さく、SiOコーティングを施した試料21の算術平均高さSaは78.5nmと大きく、フッ酸エッチングを施した試料22~24の算術平均高さSaは0.22~0.25nmの範囲内の数値となり、小さかった。
また、微小凹凸における最大高さ粗さRzbは、実施例である試料1~19については、15.8~54.7nmの範囲内の数値であった。
これに対して、比較例である試料20~24において、未処理の試料20の最大高さ粗さRzbは0.8nmと小さく、SiOコーティングを施した試料21の最大高さ粗さRzbは468.8nmと大きく、フッ酸エッチングを施した試料22~24の最大高さ粗さRzbは1.5~1.7nmの範囲内の数値となり、小さかった。
また、微小凹凸における粗さ曲線要素の平均長さRsmbは、実施例である試料1~19については、2.0~4.3μmの範囲内の数値であった。
これに対して、比較例である試料20~24において、未処理の試料20の粗さ曲線要素の平均長さRsmbは1.0μmと小さく、SiOコーティングを施した試料21の粗さ曲線要素の平均長さRsmbは10.8μmと大きく、フッ酸エッチングを施した試料22~24の粗さ曲線要素の平均長さRsmbは1.5~1.9nmの範囲内の数値となり、小さかった。
さらに、微小凹凸における粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqは、実施例である試料1~19については、6.5~24.4の範囲内の数値であった。
これに対して、比較例である試料20~24において、未処理の試料20の粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqは0.9と小さく、SiOコーティングを施した試料21の粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqは43.2と大きく、フッ酸エッチングを施した試料22~24の粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqは1.0~1.1の範囲内の数値となり、小さかった。
[動摩擦係数μkの測定]
次に、試料1~24のガラス基板20における主面20aの動摩擦係数μkを測定し、各々のガラス基板20の視認性及び書き味を評価した。
ここで、動摩擦係数μkの測定については、以下に示す摩擦係数測定装置101を新たに構築し、当該摩擦係数測定装置101を用いて実施した。
即ち、図4(a)に示すように、摩擦係数測定装置101は、測定対象であるガラス基板20を水平姿勢の状態で保持しつつ、当該ガラス基板20とともに前後方向に往復移動可能に設けられる可動式定盤部110、及び摩擦子であるペン先51を、ガラス基板20の上面(主面20a)に当接させた状態で保持するペン先保持部120などを備える。
可動式定盤部110は、水平状に設けられる第一定盤111、第一定盤111の直上において当該第一定盤111と平行に配置される第二定盤112、これらの第一定盤111及び第二定盤112の間に介装される六軸力覚センサ113、第一定盤111の移動方向を規制するリニアガイド114、及び第一定盤111を前後方向に往復移動させる一軸アクチュエータ機構115などにより構成される。
そして、第二定盤112の上面にガラス基板20を載置して固定し、一軸アクチュエータ機構115によって第一定盤111を可動させることにより、当該ガラス基板20は、前後方向に繰り返し往復移動される。
また、上記の往復移動に伴い、ガラス基板20と、当該ガラス基板20の上面(主面20a)に当接されたペン先51との間に発生した摩擦力は、六軸力覚センサ113によって検知される。
なお、六軸力覚センサ113については、レプトリノ社製の六軸力覚センサ(製品名:FFS080YA501)を用いることとした。
また、一軸アクチュエータ機構115については、サーボモータ115aと連結するTHK社製のLMガイドアクチュエータ(製品名:SKR26-2-110)を用いることとした。
ペン先保持部120は、可動式定盤部110によるガラス基板20の往復移動の方向、即ち前後方向に延出する支持部材121、支持部材121の延長方向中央部において当該支持部材121を上下方向に回動可能に軸支する軸受122、支持部材121の前端部に設けられるペン先取付け治具123、支持部材121の後端部に設けられるバランスウエイト124、及びペン先取付け治具123の直上に設けられる負荷ウエイト125などにより構成される。
ペン先取付け治具123は、支持部材121の前端部において下方に延出するようにして設けられ、左右方向に見て、ガラス基板20の上面(主面20a)に対して直交し、且つ図4(b)に示すように、前後方向(即ち、可動式定盤部110によるガラス基板20の往復移動の方向)に見て、ガラス基板20の上面(主面20a)との傾斜角度θが60°となるように、傾斜した状態にて支持されている。
そして、軸受122を支点とする、支持部材121の前端部(ペン先取付け治具123)及び後端部の各々のモーメントが釣り合うように、バランスウエイト124の重量は設定されている。
換言すると、負荷ウエイト125が未だ設けられていない状態において、支持部材121は、バランスウエイト124によって水平姿勢に保持された状態となっており、ペン先取付け治具123の下端部に装着されるペン先51は、ガラス基板20の上面(主面20a)に対して、略押圧することなく接することが可能となっている。
負荷ウエイト125は、ペン先取付け治具123の下端部に装着されるペン先51の直上に設けられ、自身の全荷重がペン先51の先端部(下端部)に作用するように配置されている。
以上のような構成からなる動摩擦係数測定装置101を用いて、試料1~24のガラス基板20における主面20aの動摩擦係数μkを測定した。
具体的には、摩擦子であるペン先51として、Elastomer製のペン先を有するワコム社製の替え芯(製品名「ACK-20004:エラストマー芯」、ペン先の直径:1.4mm)、POM製のペン先を有するワコム社製の替え芯(製品名「ACK-20001:標準ポリアセタール芯」、ペン先の直径:1.4mm)、及びFelt製のペン先を有するワコム社製の替え芯(製品名「ACK-20003:ハードフェルト芯」、ペン先の直径:1.4mm)をそれぞれ用いることとし、凹凸形状が形成された主面20aを上面として、ガラス基板20を第二定盤112に固定した後、各ペン先51を、試料面(ガラス基板の主面20a)に対して60°傾斜し、且つ上記往復移動の方向に対して90°直立した状態となるようにして、ペン先取付け治具123に装着した。
次に、200gfの負荷ウエイト125を取付け、ペン先51に当該荷重を負荷させた。
そして、一軸アクチュエータ機構115を可動させ、ガラス基板20の往復移動を行うとともに、六軸力覚センサ113によって、当該往復移動によって発生する摩擦力の動摩擦係数μkを測定した。
なお、ガラス基板20の往復移動における諸条件として、移動速度は50mm/sに設定し、移動距離は50mmに設定し、且つ往復回数は100回に設定することとした。
また、図5に示すように、動摩擦係数μkの測定値については、摩擦係数の値が比較的安定する99往復目の値を採用することとした。
さらに、図6に示すように、動摩擦係数μkの測定値については、往方向(または復方向)に移動を開始した直後のガラス基板20の移動距離が、5mmに到達するまでの間の測定値、及び往方向(または復方向)に移動中のガラス基板20が、停止位置の手間5mmに到達してから停止するまでの間の測定値を除いた値の平均値を採用することとした。
つまり、動摩擦係数μkの測定値については、ガラス基板20の動き出し5mm後から停止する5mm前までの値の平均値を採用することとした。
なお、試料1~24のガラス基板20は、傷がつかないように軽く擦り洗いをした後、純水による超音波洗浄5分を3回、エタノールによる超音波洗浄30秒を1回行い、十分に乾かせた。その後、汚れが付かないように容器内で1週間保管したものを測定用試料として用いた。
[動摩擦係数μkの測定結果]
試料1~24について行った、動摩擦係数μkの測定結果について説明する。
表3に測定結果を示す。
Figure 2022091675000004
表3に示すように、実施例である試料1~19については、それぞれ、Elastomer製のペン先51である場合の動摩擦係数μk(Elastomer)が、0.38~0.60の範囲内の数値であり、POM製のペン先51である場合の動摩擦係数μk(POM)が、0.21~0.31の範囲内の数値であり、Felt製のペン先51である場合の動摩擦係数μk(Felt)が、0.17~0.31の範囲内の数値であった。
これに対して、比較例である試料20~24において、未処理の試料20については、Elastomer製のペン先51である場合の動摩擦係数μk(Elastomer)が、0.94であり、POM製のペン先51である場合の動摩擦係数μk(POM)が、0.09であり、Felt製のペン先51である場合の動摩擦係数μk(Felt)が、0.19であった。
また、SiOコーティングを施した試料21については、Elastomer製のペン先51である場合の動摩擦係数μk(Elastomer)が、0.60であり、POM製のペン先51である場合の動摩擦係数μk(POM)が、0.18であり、Felt製のペン先51である場合の動摩擦係数μk(Felt)が、0.29であった。
さらに、フッ酸エッチングを施した試料22~24については、Elastomer製のペン先51である場合の動摩擦係数μk(Elastomer)が、1.10~1.18の範囲内の数値であり、POM製のペン先51である場合の動摩擦係数μk(POM)が、0.36~0.38の範囲内の数値であり、Felt製のペン先51である場合の動摩擦係数μk(Felt)が、0.30~0.32の範囲内の数値であった。
また、Elastomer製のペン先51と、POM製のペン先51との動摩擦係数の比(μk(Elastomer)/μk(POM))は、実施例である試料1~19については、1.3~2.8の範囲内の数値であった。
これに対して、比較例である試料20~24において、未処理の試料20の上記動摩擦係数の比は10.2とかなり大きく、SiOコーティングを施した試料21の上記動摩擦係数の比は3.4と大きく、フッ酸エッチングを施した試料22~24の上記動摩擦係数の比は3.0~3.2の範囲内の数値となり大きかった。
[視認性の評価]
次に、試料1~24について、ペン入力装置10におけるディスプレイ素子30の正面側に、試料1~24からなるそれぞれのガラス基板20を載置した場合の、ディスプレイ素子30に表示される映像の視認性について、評価を行った。
評価方法としては、ディスプレイ素子30に表示される映像に滲みが見られるか否かを、以下に示す3段階で評価を行った。
◎:鮮明な映像が見え、像に滲みが見られない、○:映像が十分に視認できるが、僅かに像の滲みが見られる、×:映像が不鮮明であり、且つ像の滲みが目立つ。
[視認性の評価結果]
試料1~24について行った、視認性の評価結果について説明する。
上記の表3に評価結果を示す。
表3に示すように、映像の視認性は、実施例である試料1~19については、全て◎となった。
これに対して、比較例である試料20~24において、未処理の試料20については◎となり、SiOコーティングを施した試料21については×となり、フッ酸エッチングを施した試料22~24については、◎となった。
[書き味の官能評価]
次に、試料1~24について、入力ペン50を用いてガラス基板20に「あ」の文字の入力を行った際の書き味を、官能試験により評価した。
評価方法としては、Elastomer製のペン先51を有するワコム社製の替え芯(製品名「ACK-20004:エラストマー芯」、ペン先の直径:1.4mm)、POM製のペン先51を有するワコム社製の替え芯(製品名「ACK-20001:標準ポリアセタール芯」、ペン先の直径:1.4mm)、及びFelt製のペン先51を有するワコム社製の替え芯(製品名「ACK-20003:ハードフェルト芯」、ペン先の直径:1.4mm)を、3Dプリンターで作製した治具にそれぞれはめ込み、三菱鉛筆製のボールペン(製品名:JETSTREAM)の筐体に取付けたものを入力ペン50として使用し、ガラス基板20上での書き味を、「書き心地」と「滑り易さ」の2つの観点で20代~50代の男女の合計12人に対して評価してもらった。
評価の判定については、それぞれ7段階、「非常に書き心地が良い:7点」から「非常に書き心地が悪い:1点」と、「非常に滑り難い:7点」から「非常に滑り易い:1点」で採点してもらい、その平均点で評価した。
なお、書き心地は点数が高いほど良いということを表すが、滑り易さは点数が高いほど良いというわけではなく、点数が高いほど滑り難く感じているということを表す。
[書き味の評価結果]
試料1~24について行った、書き味の評価結果について説明する。
表4に評価結果を示す。
Figure 2022091675000005
表4に示すように、Elastomer製のペン先51を有する入力ペン50について書き味は、実施例である試料1~19については3.7以上と高かった。
これに対して、比較例である試料20~24において、未処理の試料20は3.5、SiOコーティングを施した試料21は2.5、フッ酸エッチングを施した試料22~24は1.5~1.9の範囲内の数値と低かった。
また、その時の滑り難さについては、実施例である試料1~19は3.0~4.9の範囲内の数値であるのに対して、比較例である試料20~24において、未処理の試料20は5.8、SiOコーティングを施した試料21は5.9、フッ酸エッチングを施した試料22~24は、6.5~6.8の範囲内の数値と、非常に滑り難く感じる結果となった。
また、POM製のペン先51を有する入力ペン50について書き味は、実施例である試料1~19については3.8以上と高かった。
これに対して、比較例である試料20~24において、未処理の試料20は3.5、SiOコーティングを施した試料21は4.2、フッ酸エッチングを施した試料22~24は3.6~3.7の範囲内の数値と低かった。
また、その時の滑り難さについては、実施例である試料1~19は3.0~4.6の範囲内の数値であるのに対して、比較例である試料20~24において、未処理の試料20は1.5、SiOコーティングを施した試料21は3.8、フッ酸エッチングを施した試料22~24は2.4~2.7の範囲内の数値と比較的滑り易く感じる結果となった。
さらに、Felt製のペン先51を有する入力ペン50について書き味は、実施例である試料1~19については4.2以上と高かった。
これに対して、比較例である試料20~24において、未処理の試料20は3.7、SiOコーティングを施した試料21は4.2、フッ酸エッチングを施した試料22~24は3.5~3.7の範囲内の数値と比較的低かった。
また、その時の滑り難さについては、実施例である試料1~19は2.8~4.6の範囲内の数値であるのに対して、比較例である試料20~24において、未処理の試料20は3.3、SiOコーティングを施した試料21は4.3、フッ酸エッチングを施した試料22~24は5.1~5.4の範囲内の数値と、比較的滑り難く感じる結果となった。
[各試料の総合評価]
以上の結果から、表1乃至表4、及び図7に示すように、実施例である試料1~19については、入力ペン50のペン先51が接する主面20aに形成された、適切なうねり成分の凹凸と微小凹凸とからなる凹凸形状によって、ペン先51がガラス基板20の主面20a上で滑ることが抑制されるとともに、ペン先51と主面20aとの間の摩擦力の適度な上昇と低下が組み合わさることによって、書き味が良好であり、且つ視認性も◎といったような良好な評価結果が得られた。
一方、未処理の比較例である試料20については、入力ペン50が接する主面20aの凹凸が小さく、POM製のペン先51やFelt製のペン先51の場合は滑り易く、Elastomer製のペン先51の場合は非常に滑り難くなるために書き味が悪かった。
また、図8に示すように、SiOコーティングを施した比較例である試料21や、フッ酸エッチングを施した比較例である試料22~24については、うねり成分の凹凸がないため、ペン先51が滑り難過ぎてひっかかりが生じ、書き味が悪かった。
10 ペン入力装置
20 ガラス基板(ペン入力装置用カバー部材)
20a 主面
30 ディスプレイ素子(ディスプレイ装置)
40 デジタイザ回路(検出回路)
50 入力ペン50
51 ペン先(摩擦子)
RΔq 微小凹凸の粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜
RSma うねり成分の凹凸の粗さ曲線要素の平均長さ
RSmb 微小凹凸の粗さ曲線要素の平均長さ
Rza うねり成分の凹凸の最大高さ粗さ
Rzb 微小凹凸の最大高さ粗さ
Sa 微小凹凸の算術平均高さ
μk 動摩擦係数
μk(Elastomer) Elastomer製のペン先の動摩擦係数
μk(POM) POM製のペン先の動摩擦係数
μk(Felt) フェルト製のペン先の動摩擦係数
λc 高域フィルタ
λc1 高域フィルタのカットオフ値
λc2 高域フィルタのカットオフ値
λs 低域フィルタ
λs1 低域フィルタのカットオフ値
λs2 低域フィルタのカットオフ値

Claims (6)

  1. ペン入力装置におけるディスプレイ装置の前面側に配置されるペン入力装置用カバー部材であって、
    当該カバー部材の主面に、200gfの荷重を与えたElastomer製の摩擦子を、室温下、移動距離50mm、移動速度50mm/sの条件下で100回往復運動させた際の99回目の動作時における動摩擦係数μk(Elastomer)が、0.15~0.6の範囲にあり、
    当該カバー部材の主面に、200gfの荷重を与えたPOM製の摩擦子を、室温下、移動距離50mm、移動速度50mm/sの条件下で100回往復運動させた際の99回目の動作時における動摩擦係数μk(POM)が、0.15~0.6の範囲にあり、
    動摩擦係数の比(μk(Elastomer)/μk(POM))が1.0~3.0の範囲にある、
    ことを特徴とするペン入力装置用カバー部材。
  2. 前記カバー部材は、
    少なくとも一方の主面に凹凸形状を有し、
    前記凹凸形状は、
    高域フィルタλcのカットオフ値λc1を、粗さ曲線要素の平均長さの5倍の値とし、且つ低域フィルタλsのカットオフ値λs1を27μmとした場合、
    最大高さ粗さRzaが3~2000nm、且つ粗さ曲線要素の平均長さRSmaが100~5000μmであり、
    高域フィルタλcのカットオフ値λc2を14μmとし、且つ低域フィルタλsのカットオフ値λs2を0.35μmとした場合、
    算術平均高さSaが0.5~50nm、最大高さ粗さRzbが10~100nm、且つ粗さ曲線要素の平均長さRSmbが0.01~10μmである、
    ことを特徴とする、請求項1に記載のペン入力装置用カバー部材。
  3. 前記カバー部材は、
    少なくとも一方の主面に凹凸形状を有し、
    前記凹凸形状は、
    高域フィルタλcのカットオフ値λc2を14μmとし、且つ低域フィルタλsのカットオフ値λs2を0.35μmとした場合、
    粗さ曲線要素の二乗平均平方根傾斜RΔqが2以上である、
    ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のペン入力装置用カバー部材。
  4. 前記カバー部材において、
    前記カバー部材の主面に、200gfの荷重を与えたフェルト製の摩擦子を、室温下、移動距離50mm、移動速度50mm/sの条件下で100回往復運動させた際の99回目の動作時における動摩擦係数μk(Felt)が、0.15~0.4の範囲にある、
    ことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載のペン入力装置用カバー部材。
  5. 請求項1~請求項4の何れか一項に記載のペン入力装置用カバー部材、ディスプレイ装置、及びペン入力を検出する検出回路を備える、
    ことを特徴とするペン入力装置。
  6. 前記ペン入力装置用カバー部材の主面に接触しながら移動することにより、ペン入力装置に対するペン入力を行う入力ペンを備える、
    ことを特徴とする、請求項5に記載のペン入力装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2024009887A1 (ja) * 2022-07-08 2024-01-11 日本電気硝子株式会社 触感呈示デバイス用トップパネル、触感呈示デバイス、及び触感呈示デバイス用トップパネルの製造方法

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