JP2022091628A - 硫化物系固体電解質及び蓄電素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】イオン伝導性に優れる硫化物系固体電解質、及び蓄電素子を提供する。【解決手段】本発明の一側面は、空間群F-43mに帰属可能な結晶構造を有し、リチウム、リン、硫黄、塩素及びフッ素を含有する硫化物系固体電解質である。好ましくは、上記塩素及び上記フッ素の合計含有量に対する上記フッ素の含有量の比が、モル比で0.075以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、硫化物系固体電解質及び蓄電素子に関する。
リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度の高さから、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。上記リチウムイオン二次電池は、一般的には、セパレータで電気的に隔離された一対の電極と、この電極間に介在する非水電解質とを有し、両電極間でリチウムイオンの受け渡しを行うことで充放電するよう構成される。また、リチウムイオン二次電池以外の蓄電素子として、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタも広く普及している。
近年、非水電解質二次電池の安全性の向上を目的として、非水電解質として有機溶媒等の液体の電解質に代えて硫化物系固体電解質等を使用する蓄電素子が提案されている(特許文献1参照)。このような硫化物系固体電解質は、酸化物系硫化物系固体電解質と比較すると、導電率が高く、成形性に富むという特性を有する。
特開2000-340257号公報
しかしながら、ハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」ともいう。)やハイブリッド式の産業機械(重機、建機等)に用いられる蓄電素子においては、さらにイオン伝導性を向上させた硫化物系固体電解質材料が望まれている。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、イオン伝導性に優れる硫化物系固体電解質を提供することを目的とする。
本発明の一側面は、空間群F-43mに帰属可能な結晶構造を有し、リチウム、リン、硫黄、塩素及びフッ素を含有する硫化物系固体電解質である。
本発明の一側面に係る硫化物系固体電解質によれば、イオン伝導性に優れる硫化物系固体電解質を提供することができる。
図1は、本発明の蓄電素子の一実施形態である全固体電池の模式的断面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る蓄電素子を複数個集合して構成した蓄電装置を示す概略図である。 図3は、実施例1から実施例3及び比較例1の硫化物系固体電解質におけるイオン伝導度の温度依存性を示すグラフである。
本発明の一側面に係る硫化物系固体電解質は、空間群F-43mに帰属可能な結晶構造を有し、リチウム、リン、硫黄、塩素及びフッ素を含有する。
当該硫化物系固体電解質は、空間群F-43mに帰属可能な結晶構造を有し、リチウム、リン、硫黄、塩素及びフッ素を含有することでイオン伝導性に優れる。この理由については定かでは無いが、以下の理由が推測される。当該硫化物系固体電解質は、空間群F-43mに帰属可能な結晶構造を有し、リチウム、リン、硫黄、ハロゲンである塩素を含有するArgyrodite型硫化物系固体電解質であり、塩素イオンの一部がフッ素イオンに置換された構造を有すると考えられる。このように、塩素イオンの一部が、この塩素イオンよりイオン半径の小さいフッ素イオンと置換されることで、リチウムイオンの拡散パスが拡大する。また、ハロゲンイオンとして塩素イオン及びフッ素イオンのように比較的イオン半径の小さいイオンを含むことで、結晶格子が小さくなるために結晶構造が安定しやすくなると考えられる。その結果、当該硫化物系固体電解質はリチウムイオン伝導度が向上すると推測される。
当該硫化物系固体電解質においては、上記塩素及び上記フッ素の合計含有量に対する上記フッ素の含有量の比がモル比で0.075以下であることが好ましい。上記フッ素の含有量の比がモル比で0.075以下であることで、当該硫化物系固体電解質のイオン伝導性をより高めることができる。
当該硫化物系固体電解質がCuKα線を用いるエックス線回折測定において、第1回折ピーク及び第2回折ピークを有し、上記第1回折ピークが2θ=15.45°±0.05°の範囲に存在し、上記第2回折ピークが2θ=17.85°±0.05°の範囲に存在することが好ましい。当該硫化物系固体電解質のエックス線回折測定における第1回折ピーク及び第2回折ピークの位置が上記範囲であることで、当該硫化物系固体電解質のイオン伝導性をより高めることができる。
本発明の他の一側面に係る蓄電素子は、当該硫化物系固体電解質を含有する。
本発明の他の一側面に係る蓄電素子は当該硫化物系固体電解質を含有するので、イオン伝導性に優れ、高率充放電性能などの充放電性能に優れる。
以下、本発明に係る硫化物系固体電解質及び蓄電素子の実施形態について詳説する。
<硫化物系固体電解質>
本発明の一態様に係る硫化物系固体電解質は、空間群F-43mに帰属可能な結晶構造を有し、リチウム、リン、硫黄、塩素及びフッ素を含有する硫化物系固体電解質である。当該硫化物系固体電解質は、立方晶であり、Argyrodite型の結晶構造を有する。当該硫化物系固体電解質は、Argyrodite型硫化物系固体電解質における塩素イオンの一部が、この塩素イオンよりイオン半径の小さいフッ素イオンと置換されることで、リチウムイオンの拡散パスが拡大する。従って、当該硫化物系固体電解質はイオン伝導性に優れる。当該硫化物系固体電解質は、優れたイオン伝導性を必要とする任意の用途に用いることができる。中でも、当該硫化物系固体電解質は、リチウムイオン蓄電素子に用いられることが好ましい。
当該硫化物系固体電解質においては、上記塩素及び上記フッ素の合計含有量に対する上記フッ素の含有量の比の上限としては、モル比で0.075であることが好ましい。上記フッ素の含有量の比の下限としては、モル比で0超が好ましく、0.025がより好ましい。上記フッ素の含有量の比が上記上限以下又は上記下限以上であることで、イオン伝導度の高い結晶相が析出しやすくなり、イオン伝導性をより高めることができる。
当該硫化物系固体電解質としては、例えばLiPSCl1-x(xは、0.025以上0.075以下の数である。)が挙げられる。
当該硫化物系固体電解質は、CuKα線を用いるエックス線回折測定において、空間群F-43mに帰属可能な回折パターンを有する。当該硫化物系固体電解質は、エックス線回折測定において、第1回折ピーク及び第2回折ピークを有することが好ましい。また、CuKα線を用いるエックス線回折測定において、上記第1回折ピークが2θ=15.45°±0.05°の範囲に存在し、上記第2回折ピークが2θ=17.85°±0.05°の範囲に存在することが好ましい。当該硫化物系固体電解質のCuKα線を用いるエックス線回折測定における第1回折ピーク及び第2回折ピークの位置が上記範囲であることで、イオン伝導性をより高めることができる。
上記CuKα線を用いるエックス線回折測定は、以下の手順により行う。気密性のエックス線回折測定用試料ホルダーに、露点-50℃以下のアルゴン雰囲気下で、測定に供する固体電解質粉末を充填する。エックス線回折装置(Rigaku社の「MiniFlex II」)を用いて、粉末エックス線回折測定を行う。線源はCuKα線、管電圧は30kV、管電流は15mAとし、回折エックス線は厚み30μmのKβフィルターを通し高速一次元検出器(型番:D/teX Ultra 2)にて検出する。サンプリング幅は0.01°、スキャンスピードは5°/min、発散スリット幅は0.625°、受光スリット幅は13mm(OPEN)、散乱スリット幅は8mmとする。
上記第2回折ピークに対する上記第1回折ピークの強度比の上限としては、2.11が好ましい。一方、上記第1回折ピークの強度比の下限としては、1.00が好ましく1.40がより好ましく、1.70がさらに好ましい。上記第2回折ピークに対する上記第1回折ピークの強度比が上記上限以下又は上記下限以上であることで、当該硫化物系固体電解質はリチウムイオン伝導度が向上する。この理由については定かでは無いが、以下の理由が推測される。塩素イオンの一部がフッ素イオンに置換されている空間群F-43mに帰属可能な結晶構造においては、フッ素イオンの含有量(置換量)と第2回折ピークに対する第1回折ピークの強度比に明確な相関性はないが、塩素イオンがフッ素イオンで置換されていない硫化物固体電解質の上記ピークの強度比2.12よりも小さい値となる。また、当該硫化物系固体電解質は含有する塩素イオンの一部がフッ素イオンで置換されているが、同じハロゲンイオンである臭素イオンの一部がフッ素イオンで置換された組成やヨウ素イオンの一部がフッ素イオンで置換された組成を有する場合とは結晶配向性が異なり、第2回折ピークに対する第1回折ピークの強度比が1より大きくなる。従って、上記ピークの強度比が上記上限以下又は上記下限以上であることで、塩素イオンが適度な範囲でフッ素イオンに置換されている組成となっており、その結果、当該硫化物系固体電解質はリチウムイオン伝導度が向上すると考えられる。
当該硫化物系固体電解質の25℃におけるイオン伝導度の下限としては、2.19×10-3S/cmが好ましく、2.26×10-3S/cmがより好ましく、2.63×10-3S/cmがさらに好ましい。当該硫化物系固体電解質の25℃におけるイオン伝導度が上記値以上であることで、蓄電素子の高率充放電性能などの充放電性能を向上できる。
なお、当該硫化物系固体電解質のイオン伝導度は、以下の方法で交流インピーダンスを測定して求める。露点-50℃以下のアルゴン雰囲気下で、内径10mmの粉体成型器に試料粉末を120mg投入した後に、油圧プレスを用いて50MPa以下で一軸加圧成形する。圧力解放後に、試料の上面に集電体としてSUS(Steel Use Stainless)316L粉末を120mg投入した後に、再度油圧プレスを用いて50MPa以下で一軸加圧成形する。次に、試料の下面に集電体としてSUS316L粉末を120mg投入した後に、360MPa、5min一軸加圧成形することによりイオン伝導度測定用ペレットを得る。このイオン伝導度測定用ペレットを宝泉社製HSセル内に挿入して、所定温度下で交流インピーダンス測定を行う。測定条件は、印加電圧振幅20mV、周波数範囲1MHzから100mHzとする。
当該硫化物系固体電解質の形状は特に限定されず、通常、粒状、塊状等である。当該硫化物系固体電解質が粒状である場合、その平均粒径の下限としては例えば0.5μmであり、0.7μmが好ましく、1μmがより好ましい。一方、この上限としては例えば10μmであり、7μmが好ましく、3μmがより好ましい。当該硫化物系固体電解質の平均粒径が上記下限以上又は上限以下であることで、蓄電素子に用いた場合に良好なイオン伝導性が発揮されることなどにより、放電容量をより大きくすることができる。なお、「平均粒径」とは、JIS-Z-8825(2013年)に準拠し、粒子を溶媒で希釈した希釈液に対しレーザ回折・散乱法により測定した粒径分布に基づき、JIS-Z-8819-2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値(メジアン径)を意味する。以下、平均粒径について同様である。硫化物系固体電解質の平均粒径は、具体的には以下の方法による測定値とする。測定装置としてレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA製の「Partica LA-960」)を用いて測定する。分散媒に超脱水ヘプタンを用い、測定対象試料の粒子が分散媒中に分散する分散液を測定セルに充填する。この測定セルにレーザ光を照射し、測定試料から散乱光分布を得る。そして、散乱光分布から得られる累積度50%(D50)にあたる粒子径を平均粒径とする。
当該硫化物系固体電解質によれば、イオン伝導性に優れる。当該硫化物系固体電解質は、リチウムイオン二次電池等の蓄電素子、特にリチウムイオン蓄電素子の電解質として好適に用いることができる。中でも、全固体電池の電解質として特に好適に用いることができる。なお、当該硫化物系固体電解質は、蓄電素子における正極層、隔離層、負極層等のいずれにも用いることができる。
<蓄電素子>
本発明の蓄電素子の一実施形態として、以下、全固体電池を具体例に挙げて説明する。図1に示す蓄電素子10は、全固体電池であり、正極層1と負極層2とが隔離層3を介して配置された二次電池である。正極層1は、正極基材4及び正極活物質層5を有し、正極基材4が正極層1の最外層となる。負極層2は、負極基材7及び負極活物質層6を有し、負極基材7が負極層2の最外層となる。図1に示す蓄電素子10においては、負極基材7上に、負極活物質層6、隔離層3、正極活物質層5及び正極基材4がこの順で積層されている。
蓄電素子10は、正極層1、負極層2及び隔離層3の少なくとも1つに、本発明の一実施形態に係る硫化物系固体電解質を含有する。より具体的には、正極活物質層5、負極活物質層6及び隔離層3の少なくとも1つに、本発明の一実施形態に係る硫化物系固体電解質が含有されている。蓄電素子10は、イオン伝導性に優れる当該硫化物系固体電解質を含有するので、イオン伝導性に優れ、高率充放電性能などの充放電性能に優れる。
蓄電素子10は、本発明の一実施形態に係る硫化物系固体電解質以外のその他の硫化物系固体電解質を併せて用いるようにしてもよい。その他の硫化物系固体電解質としては、当該硫化物系固体電解質以外の硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、ドライポリマー電解質、ゲルポリマー電解質、疑似固体電解質等を挙げることができ、硫化物系固体電解質が好ましい。また、蓄電素子10における1つの層中に異なる複数種の硫化物系固体電解質が含有されていてもよく、層毎に異なる硫化物系固体電解質が含有されていてもよい。
硫化物系固体電解質としては、例えばLiS-P、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-P-LiN、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z2n(ただし、m、nは正の数、Zは、Ge、Zn、Gaのいずれかである。)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(但し、x、yは正の数、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれかである。)、Li10GeP12等を挙げることができる。
[正極層]
正極層1は、正極基材4と、この正極基材4の表面に直接又は中間層を介して積層される正極活物質層5とを備える。
(正極基材)
正極基材4は、導電性を有する。「導電性」を有するか否かは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が107Ω・cmを閾値として判定する。正極基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ、及びコストの観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。正極基材としては、箔、蒸着膜、メッシュ、多孔質材料等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、正極基材としてはアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H-4000(2014年)又はJIS-H4160(2006年)に規定されるA1085、A3003、A1N30等が例示できる。
正極基材4の平均厚さは、3μm以上50μm以下が好ましく、5μm以上40μm以下がより好ましく、8μm以上30μm以下がさらに好ましく、10μm以上25μm以下が特に好ましい。正極基材4の平均厚さを上記の範囲とすることで、正極基材4の強度を高めつつ、蓄電素子10の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
中間層は、正極基材4と正極活物質層5との間に配される層である。中間層は、炭素粒子等の導電剤を含むことで正極基材と正極活物質層との接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば、バインダ及び導電剤を含む。
(正極活物質層)
正極活物質層5は、正極活物質を含む。正極活物質層5は、正極活物質と硫化物系固体電解質とを含む混合物又は複合体を含有してもよい。正極活物質層5は、必要に応じて、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
正極活物質としては、公知の正極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。正極活物質としては、例えば、α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、ポリアニオン化合物、カルコゲン化合物、硫黄等が挙げられる。α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、例えば、Li[LiNi(1-x)]O(0≦x<0.5)、Li[LiNiγCo(1-x-γ)]O(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LiCo(1-x)]O(0≦x<0.5)、Li[LiNiγMn(1-x-γ)]O(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LiNiγMnβCo(1-x-γ-β)]O(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1)、Li[LiNiγCoβAl(1-x-γ-β)]O(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1)等が挙げられる。スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、LiMn、LiNiγMn(2-γ)等が挙げられる。ポリアニオン化合物として、LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO,Li(PO、LiMnSiO、LiCoPOF等が挙げられる。カルコゲン化合物として、二硫化チタン、二硫化モリブデン、二酸化モリブデン等が挙げられる。これらの材料中の原子又はポリアニオンは、他の元素からなる原子又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。これらの材料は表面が他の材料で被覆されていてもよい。正極活物質層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
正極活物質は、通常、粒子(粉体)である。正極活物質の平均粒径は、例えば、0.1μm以上20μm以下とすることが好ましい。正極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、正極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。正極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、正極活物質層5の電子伝導性が向上する。なお、正極活物質と他の材料との複合体を用いる場合、該複合体の平均粒径を正極活物質の平均粒径とする。
粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法として、例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミル又は篩等を用いる方法が挙げられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、篩や風力分級機等が、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
正極活物質層5における正極活物質の含有量は、50質量%以上99質量%以下が好ましく、70質量%以上98質量%以下がより好ましく、80質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。正極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、正極活物質層5の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
正極活物質層5が硫化物系固体電解質を含有する場合、硫化物系固体電解質の含有量としては、1質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい場合もある。硫化物系固体電解質の含有量を上記範囲とすることで、当該蓄電素子10の電気容量を高めることができる。正極活物質層5に本発明の一実施形態に係る硫化物系固体電解質を用いる場合、正極活物質層5中の全硫化物系固体電解質に対する本発明の一実施形態に係る硫化物系固体電解質の含有量としては、50質量%以上が好ましく、70質量以上%がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%であることがよりさらに好ましい。
上記正極活物質と硫化物系固体電解質等との混合物は、正極活物質及び硫化物系固体電解質等をメカニカルミリング法等で混合することにより作製される混合物である。例えば、正極活物質と硫化物系固体電解質等との混合物は、粒子状の正極活物質及び粒子状の硫化物系固体電解質等を混合して得ることができる。上記正極活物質と硫化物系固体電解質等との複合体としては、正極活物質及び硫化物系固体電解質等の間で化学的又は物理的な結合を有する複合体、正極活物質と硫化物系固体電解質等とを物理的に複合化させた複合体等が挙げられる。上記複合体は、一粒子内に正極活物質及び硫化物系固体電解質等が存在しているものであり、例えば、正極活物質及び硫化物系固体電解質等が凝集状態を形成しているもの、正極活物質の表面の少なくとも一部に硫化物系固体電解質等含有皮膜が形成されているものなどが挙げられる。
導電剤は、導電性を有する材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、例えば、炭素質材料、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。炭素質材料としては、黒鉛、非黒鉛質炭素、グラフェン系炭素等が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、カーボンナノファイバー、ピッチ系炭素繊維、カーボンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。グラフェン系炭素としては、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。導電剤としては、これらの材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの材料を複合化して用いてもよい。例えば、カーボンブラックとCNTとを複合化した材料を用いてもよい。これらの中でも、電子伝導性及び塗工性の観点よりカーボンブラックが好ましく、中でもアセチレンブラックが好ましい。
正極活物質層5における導電剤の含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。導電剤の含有量を上記の範囲とすることで、蓄電素子10のエネルギー密度を高めることができる。
バインダとしては、例えば、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子等が挙げられる。
正極活物質層5におけるバインダの含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。バインダの含有量を上記の範囲とすることで、正極活物質を安定して保持することができる。
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。増粘剤がリチウム等と反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させてもよい。
フィラーは、特に限定されない。フィラーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、二酸化ケイ素、アルミナ、二酸化チタン、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の無機酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、炭酸カルシウム等の炭酸塩、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性のイオン結晶、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。
正極活物質層5は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Nb、W等の遷移金属元素を正極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
正極活物質層5の平均厚さとしては、30μm以上1,000μm以下が好ましく、60μm以上500μm以下がより好ましい。正極活物質層5の平均厚さを上記下限以上とすることで、高いエネルギー密度を有する蓄電素子10を得ることができる。正極活物質層5の平均厚さを上記上限以下とすることで、蓄電素子10の小型化を図ることなどができる。正極活物質層5の平均厚さは、任意の5ヶ所で測定した厚さの平均値とする。後述する負極活物質層6及び隔離層3の平均厚さも同様である。
[負極層]
負極層2は、負極基材7と、当該負極基材7に直接又は中間層を介して配される負極活物質層6とを有する。中間層の構成は特に限定されず、例えば正極層1で例示した構成から選択することができる。
(負極基材)
負極基材7は、導電性を有する。負極基材7の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼、アルミニウム等の金属又はこれらの合金、炭素質材料等が用いられる。これらの中でも銅又は銅合金が好ましい。負極基材7としては、箔、蒸着膜、メッシュ、多孔質材料等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、負極基材としては銅箔又は銅合金箔が好ましい。銅箔の例としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
負極基材7の平均厚さは、2μm以上35μm以下が好ましく、3μm以上30μm以下がより好ましく、4μm以上25μm以下がさらに好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。負極基材7の平均厚さを上記の範囲とすることで、負極基材7の強度を高めつつ、蓄電素子10の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
(負極活物質層)
負極活物質層6は、負極活物質を含む。負極活物質層6は、負極活物質と硫化物系固体電解質とを含む混合物又は複合体を含有してもよい。負極活物質層6は、必要に応じて導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分は、上記正極で例示した材料から選択できる。
負極活物質層6は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba、等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を負極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
負極活物質としては、公知の負極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。負極活物質としては、例えば、金属Li;Si、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Ti酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;LiTi12、LiTiO2、TiNb等のチタン含有酸化物;ポリリン酸化合物;炭化ケイ素;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。これらの材料の中でも、黒鉛及び非黒鉛質炭素が好ましい。負極活物質層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
「黒鉛」とは、充放電前又は放電状態において、エックス線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.33nm以上0.34nm未満の炭素材料をいう。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。安定した物性の材料を入手できるという観点で、人造黒鉛が好ましい。
「非黒鉛質炭素」とは、充放電前又は放電状態においてエックス線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.34nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。非黒鉛質炭素としては、難黒鉛化性炭素や、易黒鉛化性炭素が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、例えば、樹脂由来の材料、石油ピッチまたは石油ピッチ由来の材料、石油コークスまたは石油コークス由来の材料、植物由来の材料、アルコール由来の材料等が挙げられる。
ここで、「放電状態」とは、負極活物質である炭素材料から、充放電に伴い吸蔵放出可能なリチウムイオンが十分に放出されるように放電された状態を意味する。例えば、負極活物質として炭素材料を含む負極を作用極として、金属Liを対極として用いた単極電池において、開回路電圧が0.7V以上である状態である。
「難黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.36nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。
「易黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.34nm以上0.36nm未満の炭素材料をいう。
負極活物質は、通常、粒子(粉体)である。負極活物質の平均粒径は、例えば、1nm以上100μm以下とすることができる。負極活物質が炭素材料、チタン含有酸化物又はポリリン酸化合物である場合、その平均粒径は、1μm以上100μm以下であってもよい。負極活物質が、Si、Sn、Si酸化物、又は、Sn酸化物等である場合、その平均粒径は、1nm以上1μm以下であってもよい。負極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、負極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。負極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、活物質層の電子伝導性が向上する。粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法及び粉級方法は、例えば、上記正極で例示した方法から選択できる。負極活物質が金属Li等の金属である場合、負極活物質は、箔状であってもよい。
負極活物質層6における負極活物質の含有量は、60質量%以上99質量%以下が好ましく、90質量%以上98質量%以下がより好ましい。負極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、負極活物質層6の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
負極活物質層6が硫化物系固体電解質を含有する場合、硫化物系固体電解質の含有量としては、1質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい場合もある。硫化物系固体電解質の含有量を上記範囲とすることで、当該蓄電素子10の電気容量を大きくすることができる。負極活物質層6に本発明の一実施形態に係る硫化物系固体電解質を用いる場合、負極活物質層6中の全硫化物系固体電解質に対する本発明の一実施形態に係る硫化物系固体電解質の含有量としては、50質量%以上が好ましく、70質量以上%がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%であることがよりさらに好ましい。
上記負極活物質と硫化物系固体電解質との混合物又は複合体は、上述した正極活物質と硫化物系固体電解質との混合物又は複合体において、正極活物質を負極活物質に置き換えたものとすることができる。
負極活物質層6の平均厚さとしては、30μm以上1,000μm以下が好ましく、60μm以上500μm以下がより好ましい。負極活物質層6の平均厚さを上記下限以上とすることで、高いエネルギー密度を有する蓄電素子10を得ることができる。負極活物質層6の平均厚さを上記上限以下とすることで、蓄電素子10の小型化を図ることなどができる。
[隔離層]
隔離層3は、固体電解質を含有する。隔離層3に含有される固体電解質としては、上述した本発明の一実施形態に係る硫化物系固体電解質以外にも、正極活物質層5で例示した各種固体電解質を用いることができ、中でも、硫化物系固体電解質を用いることが好ましい。隔離層3における固体電解質の含有量としては、70質量%以上が好ましく、90質量以上%がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%であることがよりさらに好ましいこともある。また、隔離層3に本発明の一実施形態に係る硫化物系固体電解質を用いる場合、隔離層3中の全固体電解質に占める本発明の一実施形態に係る硫化物系固体電解質の含有量としては、50質量%以上が好ましく、70質量以上%がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%であることがよりさらに好ましい。
隔離層3には、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分が含有されていてもよい。バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分は、正極活物質層5で例示した材料から選択できる。
隔離層3の平均厚さとしては、1μm以上50μm以下が好ましく、3μm以上20μm以下がより好ましい。隔離層3の平均厚さを上記下限以上とすることで、正極層1と負極層2とを確実性高く絶縁することが可能となる。隔離層3の平均厚さを上記上限以下とすることで、蓄電素子10のエネルギー密度を高めることが可能となる。
本実施形態の蓄電素子の形状については特に限定されるものではなく、例えば、円筒型電池、角型電池、扁平型電池、コイン型電池、ボタン型電池等が挙げられる。
[蓄電装置の構成]
本実施形態の蓄電素子は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器用電源、又は電力貯蔵用電源等に、複数の蓄電素子1を集合して構成した蓄電装置として搭載することができる。この場合、蓄電装置に含まれる少なくとも一つの蓄電素子に対して、本発明の技術が適用されていればよい。
図2に、電気的に接続された二以上の蓄電素子10が集合した蓄電ユニット20をさらに集合した蓄電装置30の一例を示す。蓄電装置30は、二以上の蓄電素子10を電気的に接続するバスバ(図示せず)、二以上の蓄電ユニット20を電気的に接続するバスバ(図示せず)等を備えていてもよい。蓄電ユニット20又は蓄電装置30は、一以上の蓄電素子の状態を監視する状態監視装置(図示せず)を備えていてもよい。
[硫化物系固体電解質の製造方法]
本発明の一実施形態に係る硫化物系固体電解質の製造方法は特に限定されないが、以下の方法が好ましい。すなわち、本発明の一実施形態に係る硫化物系固体電解質の製造方法は、リチウム、リン、硫黄、塩素及びフッ素を含有する組成物を準備すること(準備工程)と、上記組成物を反応させて中間体を得ること(反応工程)と、上記中間体を加熱すること(加熱工程)とを備えることが好ましい。
(準備工程)
本工程では、リチウム、リン、硫黄、塩素及びフッ素を含有する組成物が準備される。上記組成物は、通常、リチウム、リン、硫黄、塩素及びフッ素のうちの少なくとも1種の元素を含む2種以上の化合物等の混合物である。上記組成物(混合物)中に、リチウム、リン、硫黄、塩素及びフッ素の各元素が含まれていればよい。1種の化合物の中にリチウム、リン、硫黄、塩素及びフッ素のうちの2種以上の元素が含まれていてもよい。例えばリチウム及び硫黄を含む化合物として後述するLiSが挙げられ、リン及び硫黄を含む化合物として後述するPが挙げられ、リチウム及び塩素を含む化合物として後述するLiClが挙げられる。
リチウムを含む化合物等としては、例えばLiS、金属リチウム等が挙げられる。その他、後述するLiCl等であってもよい。これらの中でも、LiSが好ましい。リチウムを含む化合物等は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
リンを含む化合物等としては、例えばP等が挙げられる。リンを含む化合物等は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
硫黄を含む化合物等としては、例えばLiS、P5、単体硫黄等が挙げられる。これらの中でも、LiS及びPが好ましい。硫黄を含む化合物等は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
塩素を含む化合物としては、例えばLiClが挙げられる。塩素を含む化合物等は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
フッ素を含む化合物としては、例えばLiFが挙げられる。塩素を含む化合物等は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
例えば、上記組成物は、LiS、P、LiCl及びLiFの混合物が好ましい。
上記組成物における各元素(リチウム、リン、硫黄、塩素及びフッ素)の具体的含有量及び好適含有量は、上述した本発明の一実施形態に係る硫化物系固体電解質における各元素(リチウム、リン、硫黄、塩素及びフッ素)の好適含有量と同様である。
(反応工程)
本工程では、リチウム、リン、硫黄、塩素及びフッ素を含有する組成物に対して、例えばメカニカルミリングを行うことで上記組成物を反応させ、中間体を得る。なお、中間体を得る手段はこれに限定されず、他の方法で得てもよい。例えば、メカニカルミリングに代えて、溶融急冷法等をおこなってもよい。
メカニカルミリングは、乾式及び湿式のいずれであってもよいが、原料の化合物をより均一に混合できるため、湿式であると好ましい。メカニカルミリングとしては、例えば容器駆動型ミル、媒体撹拌ミル、高速回転粉砕機等によるミリング、ローラーミル、ジェットミル等が挙げられる。容器駆動型ミルとしては、例えば回転ミル、振動ミル、遊星ミル等が挙げられる。媒体撹拌ミルとしては、例えばアトライター、ビーズミル等が挙げられる。高速回転粉砕機によるミリングとしては、例えばハンマーミル、ピンミル等が挙げられる。これらの中でも、容器駆動型ミルが好ましく、特に遊星ミルが好ましい。
反応工程で得る中間体は、結晶構造を有していてもよいが、いわゆる硫化物ガラスであることが好ましい。「硫化物ガラス」とは、アモルファス構造を含む硫化物系固体電解質を意味する。中間体が硫化物ガラスであると、LiS等の安定性の低い結晶相が少なく、各元素が高分散した硫化物系固体電解質を得ることができる。
(加熱工程)
本工程では、中間体を加熱(熱処理)する。これにより、中間体の少なくとも一部が結晶化し、目的物である硫化物系固体電解質が得られる。加熱(熱処理)は、減圧雰囲気下で行ってもよく、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。上記加熱の温度範囲としては、例えば160℃以上260℃未満が好ましく、180℃以上255℃以下がより好ましく、200℃以上250℃以下がさらに好ましく、220℃以上がよりさらに好ましい場合もある。加熱温度を上記範囲とすることで、十分に結晶化が進行し、イオン伝導性がより高い硫化物系固体電解質が得られる。
[蓄電素子の製造方法]
本発明の一実施形態に係る蓄電素子の製造方法は、正極層、隔離層及び負極層の少なくとも1つの作製に、本発明の一実施形態に係る硫化物系固体電解質を用いること以外は、通常公知の方法により行うことができる。当該製造方法は、具体的には、例えば(1)正極合剤を用意すること、(2)隔離層用材料を用意すること、(3)負極合剤を用意すること、及び(4)正極層、隔離層及び負極層を積層することを備える。以下、各工程について詳説する。
(1)正極合剤用意工程
本工程では、通常、正極層(正極活物質層)を形成するための正極合剤が作製される。正極合剤の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、正極合剤の材料のメカニカルミリング法による処理、正極活物質の圧縮成形、正極活物質のターゲット材料を用いたスパッタリング等が挙げられる。正極合剤が、正極活物質と硫化物系固体電解質とを含む混合物又は複合体を含有する場合、本工程は、例えばメカニカルミリング法等を用いて正極活物質と硫化物系固体電解質とを混合し、正極活物質と硫化物系固体電解質との混合物又は複合体を作製することを含むことができる。
(2)隔離層用材料用意工程
本工程では、通常、隔離層を形成するための隔離層用材料が作製される。蓄電素子がリチウムイオン蓄電素子である場合、隔離層用材料は、硫化物系固体電解質とすることができる。隔離層用材料としての硫化物系固体電解質は、従来公知の方法で作製することができる。例えば、所定の材料をメカニカルミリング法により処理して得ることができる。溶融急冷法により所定の材料を溶融温度以上に加熱して所定の比率で両者を溶融混合し、急冷することにより隔離層用材料を作製してもよい。その他の隔離層用材料の合成方法としては、例えば減圧封入して焼成する固相法、溶解析出などの液相法、気相法(PLD)、メカニカルミリング後にアルゴン雰囲気下で焼成することなどが挙げられる。なお、隔離層用材料が当該硫化物系固体電解質である場合は、隔離層用材料の作製は、当該硫化物系固体電解質の製造方法が用いられる。
(3)負極合剤用意工程
本工程では、通常、負極層(負極活物質層)を形成するための負極合剤が作製される。負極合剤の具体的作製方法は、正極合剤と同様である。負極合剤が、負極活物質と硫化物系固体電解質とを含む混合物又は複合体を含有する場合、本工程は、例えばメカニカルミリング法等を用いて負極活物質と硫化物系固体電解質とを混合し、負極活物質と硫化物系固体電解質との混合物又は複合体を作製することを含むことができる。
(積層工程)
本工程では、例えば、正極基材及び正極活物質層を有する正極層、隔離層、並びに負極基材及び負極活物質層を有する負極層が積層される。本工程では、正極層、隔離層及び負極層をこの順に順次形成してもよいし、この逆であってもよく、各層の形成の順序は特に問わない。上記正極層は、例えば正極基材及び正極合剤を加圧成型することにより形成され、上記隔離層は、隔離層用材料を加圧成型することにより形成され、上記負極層は、負極基材及び負極合剤を加圧成型することにより形成される。正極基材、正極合剤、隔離層材料、負極合剤及び負極基材を一度に加圧成型することにより、正極層、隔離層及び負極層が積層されてもよい。正極層及び負極層をそれぞれ予め成形し、隔離層と加圧成型して積層してもよい。
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。例えば、本発明に係る蓄電素子については、例えば中間層や接着層のように、正極層、隔離層及び負極層以外のその他の層を備えていてもよい。また、本発明に係る蓄電素子は、各層のうちの1つ又は複数に液体を含むものであってもよい。本発明に係る蓄電素子は、二次電池である蓄電素子の他、キャパシタ等であってもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1から実施例3及び比較例1から比較例8]
以下の処理により、実施例1から実施例3及び比較例1から比較例8の硫化物系固体電解質(LiPSHa1-x、Haは、Cl、Br及びIである。)を合成した。
(準備工程)
露点-50℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内でLiS(99.98%、Aldrich)及びP(99%、Aldrich)、並びにLiCl、LiBr又はLiIのいすれか、もしくはこれらとLiFとの組み合わせを乳鉢で混合し、リチウム、リン、硫黄、並びに塩素、臭素又はヨウ素のいずれか、もしくはさらにフッ素を含む組成物を準備した。
(反応工程)
上記組成物を、直径4mmのジルコニアボールが160g入った密閉式の80mLジルコニアポットに投入した。遊星ボールミル(FRITSCH社製、型番Premium line P-7)によって公転回転数370rpmで1時間のメカニカルミリング処理を行った後2分休止を1サイクルとして、上記を25サイクル行い、中間体を得た。
(加熱工程)
上記中間体をアルゴン雰囲気下、500℃で4時間加熱(熱処理)して、表1に示す組成の実施例1から実施例3及び比較例1から比較例8の硫化物系固体電解質を得た。
[評価]
(1)エックス線回折分析
実施例1から実施例3及び比較例1から比較例8の硫化物系固体電解質について、上述の方法にてCuKα線を用いるエックス線回折測定を行った。表1に、実施例及び比較例の第1回折ピーク及び第2回折ピークの位置(2θ)、並びに第2回折ピークに対する上記第1回折ピークの強度比を示す。なお、「-」は、回折ピークが観察されなかったことを示す。
(2)イオン伝導度(σ)
実施例1から実施例3及び比較例1から比較例8の硫化物系固体電解質層120mgの両面に、SUS粉層120mgを積層したペレットを作製した。このペレットを用いて、Bio-Logic社製「VMP-300」を用いて上述の方法で-30℃、-20℃、-10℃、0℃、25℃及び50℃における交流インピーダンスを測定し、各実施例及び比較例の硫化物系固体電解質のイオン伝導度を求めた。表1に、実施例及び比較例の各温度におけるイオン伝導度を示す。また、図3に、実施例1から実施例3及び比較例1の硫化物系固体電解質のイオン伝導度と絶対温度の逆数との関係、及びその直線の傾きから求められる活性化エネルギーを示す。
Figure 2022091628000001
表1に示されるように、リチウム、リン、硫黄、塩素及びフッ素を含有する実施例1から実施例3の硫化物系固体電解質は、各温度におけるイオン伝導度が良好であった。一方、比較例1から比較例8の硫化物系固体電解質は、実施例1から実施例3と比較して上記イオン伝導度が低いことがわかる。
また、活性化エネルギーは、当該硫化物固体電解質のイオン伝導度の温度依存性の大小を表しており、例えば、活性化エネルギーが小さいと、低温でのイオン伝導度と高温でのイオン伝導度の差が小さいことを表す。図3に示されるように、実施例1から実施例3の硫化物固体電解質は、イオン伝導度の温度依存性が小さくなるため、活性化エネルギーは小さくなる。すなわち、当該硫化物固体電解質のフッ素の含有量(フッ素の置換量)を調整することで、イオン伝導度の温度依存性が小さくなり、活性化エネルギーが小さくなる結果、低温でのイオン伝導性が良好になる傾向があることがわかる。
以上の結果から、当該硫化物系固体電解質は、イオン伝導性に優れることが示された。従って、当該硫化物系固体電解質は、全固体電池等の蓄電素子用の硫化物系固体電解質として好適に用いられる。
1 正極層
2 負極層
3 隔離層
4 正極基材
5 正極活物質層
6 負極活物質層
7 負極基材
10 蓄電素子(全固体電池)
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (4)

  1. 空間群F-43mに帰属可能な結晶構造を有し、
    リチウム、リン、硫黄、塩素及びフッ素を含有する硫化物系固体電解質。
  2. 上記塩素及び上記フッ素の合計含有量に対する上記フッ素の含有量の比がモル比で0.075以下である請求項1に記載の硫化物系固体電解質。
  3. CuKα線を用いるエックス線回折測定において、第1回折ピーク及び第2回折ピークを有し、
    上記第1回折ピークが2θ=15.45°±0.05°の範囲に存在し、
    上記第2回折ピークが2θ=17.85°±0.05°の範囲に存在する請求項1又は請求項2に記載の硫化物系固体電解質。
  4. 請求項1、請求項2又は請求項3に記載の硫化物系固体電解質を含有する蓄電素子。
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