JP2022088979A - 全固体電池 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022088979000001
【課題】本開示は、内部抵抗の増加を抑制しつつ、発熱量を低減可能な全固体電池を提供することを主目的とする。
【解決手段】本開示においては、負極活物質層および負極集電体を有する全固体電池であって、上記負極活物質層は、充電による全体膨張率が14%以上である負極活物質を含有し、上記負極集電体は、上記負極活物質層側の表面上に、酸化物活物質を含有するコート層を有し、上記負極活物質層の厚さに対する上記コート層の厚さの割合が、3%以上13%以下であり、上記コート層の厚さに対する、上記負極集電体の上記コート層側の表面における表面粗さ(Rz)の割合が、30%以上80%以下である、全固体電池を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本開示は、全固体電池に関する。
全固体電池は、正極活物質層および負極活物質層の間に固体電解質層を有する電池であり、可燃性の有機溶媒を含む電解液を有する液系電池に比べて、安全装置の簡素化が図りやすいという利点を有する。
容量特性が良好な負極活物質として、Si系活物質が知られている。特許文献1には、負極活物質として、SiおよびSi合金からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料を含む硫化物全固体電池用負極が開示されている。
また、全固体電池に関する技術ではないものの、特許文献2には、集電体と、チタン酸リチウムを含む第1層と、炭素材料を含む第2層とを有し、第1層の厚みTと、第2層の厚みTとの比T/Tが、0.15以上0.55以下である非水電解質二次電池用負極が開示されている。同様に、特許文献3には、シート状の負極集電体と、負極合剤層と、LTO層とを有する負極を備える非水電解質二次電池が開示されている。
また、特許文献4には、正極活物質層では正極集電体に近い正極活物質の濃度が固体電解質層に近い正極活物質の濃度よりも高く、負極活物質層では負極集電体に近い負極活物質の濃度が固体電解質層に近い負極活物質の濃度よりも高い全固体電極が開示されている。
特開2018-142431号公報 特開2014-199714号公報 特開2013-214460号公報 特開2015-225855号公報
Si系活物質のような容量特性が良好な活物質は、充放電による体積変化が大きい傾向にある。また、このような活物質は、容量特性が良好である反面、例えば短絡が生じたときに発熱量が高くなりやすい。また、発熱量の低減のみに着目すると、内部抵抗が増加しやすく、所望の電池性能が維持できない可能性がある。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、内部抵抗の増加を抑制しつつ、発熱量を低減可能な全固体電池を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本開示においては、負極活物質層および負極集電体を有する全固体電池であって、上記負極活物質層は、充電による全体膨張率が14%以上である負極活物質を含有し、上記負極集電体は、上記負極活物質層側の表面上に、酸化物活物質を含有するコート層を有し、上記負極活物質層の厚さに対する上記コート層の厚さの割合が、3%以上13%以下であり、上記コート層の厚さに対する、上記負極集電体の上記コート層側の表面における表面粗さ(Rz)の割合が、30%以上80%以下である、全固体電池を提供する。
本開示によれば、負極集電体および負極活物質層の間にコート層を配置し、負極活物質層の厚さに対するコート層の厚さを所定の範囲とし、さらに、コート層の厚さに対する負極集電体の表面粗さを所定の範囲とすることで、内部抵抗の増加を抑制しつつ、発熱量を低減可能な全固体電池とすることができる。
本開示における全固体電池は、内部抵抗の増加を抑制しつつ、発熱量を低減できるという効果を奏する。
本開示における全固体電池を例示する概略断面図である。 本開示における負極を例示する概略断面図である。 参考例1~5および比較例1~3で得られた評価用セルに対する釘刺し試験の結果である。 参考例1~5および比較例1~3で得られた評価用セルに対する内部抵抗評価の結果である。 実施例1、2および比較例4~6で得られた評価用セルに対する釘刺し試験の結果である。
以下、本開示における全固体電池について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、部材の断面を示すハッチングを適宜省略している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
図1は、本開示における全固体電池を例示する概略断面図である。図1に示す全固体電池10は、正極活物質層1および正極集電体2を有する正極Cと、負極活物質層3および負極集電体4を有する負極Aと、正極活物質層1および負極活物質層3の間に配置された固体電解質層5と、を有する。負極活物質層3は、充電による全体膨張率が大きい負極活物質を含有する。また、負極集電体4は、負極活物質層3側の表面上に、酸化物活物質を含有するコート層6を有する。本開示においては、負極活物質層3の厚さTに対するコート層6の厚さTの割合が所定の範囲である。また、図2に示すように、コート層6の厚さTに対する、負極集電体4のコート層6側の表面における表面粗さRの割合が所定の範囲である。
本開示によれば、負極集電体および負極活物質層の間にコート層を配置し、負極活物質層の厚さに対するコート層の厚さを所定の範囲とし、さらに、コート層の厚さに対する負極集電体の表面粗さを所定の範囲とすることで、内部抵抗の増加を抑制しつつ、発熱量を低減可能な全固体電池とすることができる。上述したように、Si系活物質のような容量特性が良好な活物質は、充放電による体積変化が大きい傾向にある。また、このような活物質は、容量特性が良好である反面、例えば短絡が生じたときに発熱量が高くなりやすい。本開示では、負極集電体および負極活物質層の間に、酸化物活物質を含有するコート層を配置する。酸化物活物質は、Liが挿入されると電子伝導性が発現し、挿入されたLiが脱離すると絶縁性が発現する。そのため、酸化物活物質の電子伝導性を利用して電子伝導パスを形成することで内部抵抗の増加を抑制できる。一方、例えば短絡が生じると、酸化物活物質からLiが脱離するため、その絶縁化(シャットダウン機能)を利用して電子伝導パスを遮断することで、発熱量を低減することができる。また、コート層の厚さに対する負極集電体の表面粗さを所定の範囲とすることで、発熱量をより低減できる。
1.負極
本開示における負極は、負極活物質層および負極集電体を有する。また、負極集電体は、負極活物質層側の表面上に、酸化物活物質を含有するコート層を有する。
(1)負極活物質層
負極活物質層は、負極活物質を少なくとも含有し、さらに、固体電解質、導電材およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。
負極活物質層は、充電による全体膨張率が14%以上である負極活物質を含有する。ここで、一般的な負極活物質として知られているグラファイトは、充電による全体膨張率が13.2%である(Simon Schweidler et al., “Volume Changes of Graphite Anodes Revisited: A Combined Operando X-ray Diffraction and In Situ Pressure Analysis Study”, J. Phys. Chem. C 2018, 122, 16, 8829-8835)。すなわち、本開示における負極活物質は、充電による全体積膨張率がグラファイトより大きい活物質である。充電による全体積膨張率は、Simon Schweidler et al.に記載されているように、space-group-independent evaluationにより求めることができる。負極活物質は、充電による全体膨張率が100%以上であってもよく、200%以上であってもよい。
負極活物質の一例としては、例えばSi系活物質が挙げられる。Si系活物質は、Si元素を含有する活物質である。Si系活物質は、例えば、Si単体、Si合金、Si酸化物を挙げることができる。Si合金は、Si元素を主成分として含有することが好ましい。また、負極活物質の他の例としては、例えばSn系活物質が挙げられる。Sn系活物質は、Sn元素を含有する活物質である。Sn系活物質は、例えば、Sn単体、Sn合金、Sn酸化物を挙げることができる。Sn合金は、Sn元素を主成分として含有することが好ましい。
負極活物質の形状としては、例えば、粒子状が挙げられる。負極活物質の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、例えば10nm以上であり、100nm以上であってもよい。一方、負極活物質の平均粒径(D50)は、例えば50μm以下であり、20μm以下であってもよい。平均粒径(D50)は、例えば、レーザー回折式粒度分布計、走査型電子顕微鏡(SEM)による測定から算出できる。
負極活物質層における負極活物質の割合は、例えば20重量%以上、40重量%以上であってもよく。60重量%以上であってもよい。一方、負極活物質の上記割合は、例えば80重量%以下である。
負極活物質層は、固体電解質を含有していてもよい。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、窒化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質等の無機固体電解質が挙げられる。
硫化物固体電解質としては、例えば、Li元素、X元素(Xは、P、As、Sb、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga、Inの少なくとも一種である)、および、S元素を含有する固体電解質が挙げられる。また、硫化物固体電解質は、O元素およびハロゲン元素の少なくとも一方をさらに含有していてもよい。ハロゲン元素としては、例えば、F元素、Cl元素、Br元素、I元素が挙げられる。硫化物固体電解質は、ガラス(非晶質)であってもよく、ガラスセラミックスであってもよい。硫化物固体電解質としては、例えば、LiS-P、LiI-LiS-P、LiI-LiBr-LiS-P、LiS-SiS、LiS-GeS、LiS-P-GeSが挙げられる。
負極活物質層は、導電材を含有していてもよい。導電材としては、例えば、炭素材料、金属粒子、導電性ポリマーが挙げられる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)等の粒子状炭素材料、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等の繊維状炭素材料が挙げられる。
負極活物質層は、バインダーを含有していてもよい。バインダーとしては、例えば、フッ化物系バインダー、ポリイミド系バインダー、ゴム系バインダーが挙げられる。
(2)負極集電体
負極集電体は、負極活物質層の集電を行う層である。負極集電体としては、例えば、金属集電体が挙げられる。金属集電体としては、例えば、Cu、Ni等の金属を有する集電体が挙げられる。金属集電体は、上記金属の単体であってもよく、上記金属の合金であってもよい。負極集電体の形状としては、例えば、箔状が挙げられる。
(3)コート層
コート層は、負極集電体の負極活物質層側の表面に配置される層である。さらに、コート層は酸化物活物質を含有する。酸化物活物質は、通常、Liが挿入された状態で電子伝導性を有し、挿入されたLiが脱離した状態で絶縁性を有する。Liが挿入された状態における酸化物活物質の電子伝導度(25℃)は、例えば8.0×10-1S/cm以上である。一方、挿入されたLiが脱離した状態における酸化物活物質の電子伝導度(25℃)は、例えば2.1×10-6S/cm以下である。
酸化物活物質は、金属元素および酸素元素を少なくとも含有する。また、酸化物活物質は、層状構造およびスピネル構造の少なくとも一方を有することが好ましい。酸化物活物質の一例としては、チタン酸リチウムが挙げられる。チタン酸リチウムは、Li、TiおよびOを含有する化合物であり、例えば、LiTi12、LiTiO、LiTiO、LiTiが挙げられる。酸化物活物質の他の例としては、ニオブチタン系酸化物が挙げられる。ニオブチタン系酸化物は、Ti、NbおよびOを含有する化合物であり、例えば、TiNb、TiNb1029が挙げられる。コート層は、酸化物活物質を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。また、酸化物活物質は、負極活物質よりも、Li挿入脱離電位が高いことが好ましい。
酸化物活物質の形状としては、例えば、粒子状が挙げられる。酸化物活物質の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、例えば10nm以上であり、100nm以上であってもよい。一方、酸化物活物質の平均粒径(D50)は、例えば50μm以下であり、20μm以下であってもよい。コート層における酸化物活物質の割合は、例えば50重量%以上であり、70重量%以上であってもよく、90重量%以上であってもよい。
本開示において、コート層の厚さをTとし、負極活物質層の厚さをTとする。なお、TおよびTの単位はμmとする。Tに対するTの割合(T/T)は、通常、3%以上であり、5%以上であってもよい。T/Tが小さすぎると、発熱量の低減効果が得られにくい。一方、Tに対するTの割合(T/T)は、通常、13%以下であり、10%以下であってもよい。T/Tが大きすぎると、内部抵抗が増加しやすい。
は、例えば2μm以上であり、3μm以上であり、4μm以上であってもよい。一方、Tは、例えば15μm以下であり、10μm以下であってもよい。Tは、例えば20μm以上であり、40μm以上であってもよい。一方、Tは、例えば200μm以下であり、150μm以下であってもよい。
コート層は、バインダーを含有することが好ましい。バインダーを添加することで、コート層の接着性が向上し、負極活物質層および負極集電体の密着性が向上する。バインダーについては、上述した負極活物質層におけるバインダーと同様のものを用いることができる。コート層におけるバインダーの含有量は、例えば1重量%以上10重量%以下である。
また、図2に示すように、コート層6の厚さをTとし、負極集電体4のコート層6側の表面における表面粗さ(Rz)をRとする。なお、TおよびRの単位はμmとする。また、表面粗さRzは、十点平均粗さを意味し、例えば、触針式表面粗さ測定機により求めることができる。Tに対するRの割合(R/T)は、通常、30%以上であり、40%以上であってもよい。一方、Tに対するRの割合(R/T)は、通常、80%以下である。
負極集電体の表面粗さ(Rz)は、例えば2μm以上であり、4μm以上であってもよく、6μm以上であってもよい。一方、負極集電体の表面粗さ(Rz)は、例えば9μm以下である。
2.正極
本開示における正極は、正極活物質層および正極集電体を有する。正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層である。また、正極活物質層は、必要に応じて、導電材、固体電解質およびバインダーの少なくとも一つを含有していてもよい。
正極活物質としては、例えば、酸化物活物質が挙げられる。酸化物活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等の岩塩層状型活物質、LiMn、LiTi12、Li(Ni0.5Mn1.5)O等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO等のオリビン型活物質が挙げられる。
酸化物活物質の表面には、Liイオン伝導性酸化物を含有する保護層が形成されていてもよい。酸化物活物質と、固体電解質との反応を抑制できるからである。Liイオン伝導性酸化物としては、例えば、LiNbOが挙げられる。保護層の厚さは、例えば、1nm以上30nm以下である。また、正極活物質として、例えばLiSを用いることもできる。
正極活物質の形状としては、例えば、粒子状が挙げられる。正極活物質の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、例えば10nm以上であり、100nm以上であってもよい。一方、正極活物質の平均粒径(D50)は、例えば50μm以下であり、20μm以下であってもよい。
正極活物質層に用いられる導電材、固体電解質およびバインダーについては、上記「1.負極」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。正極活物質層の厚さは、例えば、0.1μm以上、1000μm以下である。また、正極集電体の材料としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボンが挙げられる。
3.固体電解質層
本開示における固体電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に配置され、少なくとも固体電解質を含有する層である。固体電解質層は、固体電解質として硫化物固体電解質を含有することが好ましい。また、固体電解質層はバインダーを含有していてもよい。固体電解質層に用いられる固体電解質およびバインダーについては、上記「1.負極」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。固体電解質層の厚さは、例えば、0.1μm以上、1000μm以下である。
4.全固体電池
本開示における全固体電池は、正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層を有する発電単位を少なくとも1つ有し、2以上有していてもよい。全固体電池が複数の発電単位を有する場合、それらは、並列接続されていてもよく、直列接続されていてもよい。本開示における全固体電池は、正極、固体電解質層および負極を収納する外装体を備える。外装体の種類は特に限定されないが、例えば、ラミネート外装体が挙げられる。
本開示における全固体電池は、正極、固体電解質層および負極に対して、厚さ方向に沿って拘束圧を付与する拘束治具を有していてもよい。拘束圧を付与することで、良好なイオン伝導パスおよび電子伝導パスが形成される。拘束圧は、例えば0.1MPa以上であり、1MPa以上であってもよく、5MPa以上であってもよい。一方、拘束圧は、例えば100MPa以下であり、50MPa以下であってもよく、20MPa以下であってもよい。
本開示における全固体電池は、典型的には全固体リチウムイオン二次電池である。全固体電池の用途は、特に限定されないが、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド自動車または電気自動車の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における全固体電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
[比較例1]
(負極の作製)
負極活物質(Si粒子、平均粒径2.5μm)、硫化物固体電解質(10LiI-15LiBr-75(0.75LiS-0.25P)、平均粒径0.5μm)、導電材(VGCF)およびバインダー(SBR)を準備した。これらを、重量比で、負極活物質:硫化物固体電解質:導電材:バインダー=52.7:40.9:4.2:2.1となるように秤量し、分散媒(ジイソブチルケトン)に添加した。得られた混合物を、超音波ホモジナイザー(UH-50、株式会社エスエムテー製)で分散させることにより、負極スラリーを得た。得られた負極スラリーを、負極集電体(Ni箔)上に塗工し、100℃30分間の条件で乾燥させた。その後、1cmの大きさに打ち抜くことにより、負極活物質層および負極集電体を有する負極を得た。負極活物質層の厚さは、80μmであった。
(正極の作製)
正極活物質(LiNbOでコートしたLiNi1/3Co1/3Mn1/3)、硫化物固体電解質(10LiI-15LiBr-75(0.75LiS-0.25P))、導電材(VGCF)およびバインダー(PVdF)を準備した。これらを、重量比で、正極活物質:硫化物固体電解質:導電材:バインダー=84.7:13.4:1.3:0.6となるように秤量し、分散媒(ヘプタン)に添加した。得られた混合物を、超音波ホモジナイザー(UH-50、株式会社エスエムテー製)で分散させることにより、正極スラリーを得た。得られた正極スラリーを、正極集電体(Al箔)上に塗工し、100℃30分間の条件で乾燥させた。その後、1cmの大きさに打ち抜くことにより、正極活物質層および正極集電体を有する正極を得た。正極活物質層の厚さは、80μmであった。
(固体電解質層の作製)
内径断面積1cmの筒状セラミックスに、硫化物固体電解質(10LiI-15LiBr-75(0.75LiS-0.25P))を入れ、4ton/cmでプレスすることにより、固体電解質層(厚さ15μm)を得た。
(評価用セルの作製)
固体電解質層の一方の面に正極を配置し、1ton/cm(約98MPa)でプレスした。次に、固体電解質層の他方の面に負極を配置し、4ton/cm(約392MPa)でプレスした。これにより、評価用セルを得た。
[比較例2]
LTO粒子(LiTi12、平均粒径0.7μm)と、バインダー(SBR)とを準備した。これらを、重量比で、LTO粒子:バインダー=95:5となるように秤量し、分散媒(ジイソブチルケトン)に添加した。得られた混合物を、超音波ホモジナイザー(UH-50、株式会社エスエムテー製)で分散させることにより、コート層用スラリーを得た。得られたコート層用スラリーを負極集電体(Ni箔)上に塗工し、100℃30分間の条件で乾燥させた。これにより、コート層(厚さ20μm)を有する負極集電体を得た。負極活物質層の厚さT(80μm)に対するコート層の厚さT(20μm)の割合T/Tは、25%であった。得られた負極集電体(コート層を有する負極集電体)を用い、正極容量を調整したこと以外は、比較例1と同様にして評価用セルを得た。正極容量は、初回充電時にコート層内のLTOにもLiが挿入されるため、その容量分だけ大きく調整した。
[参考例1~5、比較例3]
/Tの値を、表1に記載した値に変更したこと以外は、比較例2と同様にして評価用セルを得た。
[評価]
(釘刺し試験)
参考例1~5および比較例1~3で得られた評価用セルに対して充電を行い、釘刺し試験を行った。充電条件は、定電流充電(電流値1/3C、充電終止電圧4.35V)および定電圧充電(電圧値4.35V、電流値40A)とした。また、定電圧充電中に、評価用セルの側面から直径1.0mmの鉄釘を0.1mm/secの速度で0.8mmの深さまで突き刺して内部短絡を発生させた。評価用セルの電圧降下と、電源からの流れ込み電流とを測定し、そこから算出される発熱量を算出した。また、発熱量と、流れ込み時間(5秒間)とを乗じて、積算発熱量を算出した。なお、流れ込み時間は、厳密は、短絡電流に依存する時間であるが、通常は5秒間以内に流れ込みが終了するため、5秒間で固定した。その結果を図3および表1に示す。なお、積算発熱量は、比較例1を1.00とした場合の相対値である。
図3および表1に示すように、参考例1~5および比較例2、3は、比較例1に比べて、積算発熱量が低減していることが確認された。特に、参考例2~5および比較例2、3は、参考例1に比べて、積算発熱量が顕著に低減していた。これは、コート層に含まれるLTOのシャットダウン機能が効果的に働いたためであると推測される。
(充放電試験および内部抵抗評価)
参考例1~5および比較例1~3で得られた評価用セルに対して充放電試験を行った。具体的には、評価用セルを、5MPaの拘束圧で定寸拘束し、0.461mAで4.35Vまで定電流-定電圧(CC-CV)充電した。その後、0.461mAで3.0VまでCC-CV放電を行った。
評価用セルを再度充電し、評価用セルのOCVを3.7Vに調整し、その後17.2mAで10秒間放電した時の電圧を測定した。OCVからの電圧変化から内部抵抗を求めた。その結果を図4および表1に示す。なお、内部抵抗は、比較例1を1.00とした場合の相対値である。
図4および表1に示すように、参考例1~5は、比較例1と内部抵抗が同等であることが確認された。一方、比較例2、3は、比較例1に比べて、内部抵抗が大きくなった。
Figure 2022088979000002
[実施例1、2、比較例4~6]
負極集電体の表面粗さ(コート層が形成される面の表面粗さ)を、表2に記載した値に変更したこと以外は、参考例5と同様にして評価用セルを得た。なお、参考例5は、実施例2に該当する。
(釘刺し試験)
実施例1、2および比較例4~6で得られた評価用セルに対して充電を行い、釘刺し試験を行った。試験条件は、上述した通りである。その結果を図5および表2に示す。なお、積算発熱量は、比較例4を1.00とした場合の相対値である。
Figure 2022088979000003
図5および表2に示すように、実施例1、2は、比較例4~6に比べ、積算発熱量が低減していることが確認された。特に、R/Tが30%以上になると、積算発熱量が大幅に低減し、R/Tが80%になるまで、積算発熱量の低減が維持された。
1 …正極活物質層
2 …正極集電体
3 …負極活物質層
4 …負極集電体
5 …固体電解質層
6 …コート層
10 …全固体電池

Claims (1)

  1. 負極活物質層および負極集電体を有する全固体電池であって、
    前記負極活物質層は、充電による全体膨張率が14%以上である負極活物質を含有し、
    前記負極集電体は、前記負極活物質層側の表面上に、酸化物活物質を含有するコート層を有し、
    前記負極活物質層の厚さに対する前記コート層の厚さの割合が、3%以上13%以下であり、
    前記コート層の厚さに対する、前記負極集電体の前記コート層側の表面における表面粗さ(Rz)の割合が、30%以上80%以下である、全固体電池。
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