JP2022088258A - 正極、二次電池、及びそれらの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】イオン伝導性が良好で正極活物質の配置の自由度が担保された正極、ならびに、二次電池を提供する。【解決手段】複数の活物質粒子22を備える二次電池用100の正極30であって、活物質粒子22がコバルト酸リチウムを含み、活物質粒子22は2θ法によるX線回折角が19.2~19.7度において回折角ピークを呈する。【選択図】図1

Description

本発明は、正極、二次電池、及びそれらの製造方法に関する。
一般に、二次電池は、電極(正極や負極)及び電解質で構成され、電極間で電解質を介したイオンの移動が生じることで、充電や放電を行う。このような二次電池は、携帯電話などの小型機器から電気自動車などの大型機器まで、幅広い用途で使用されている。そのため、二次電池の性能のさらなる向上が求められている。二次電池の充放電特性を高めるためには、一般的に電極中の活物質と電解質との界面を大きくすることが重要である。ここで、活物質とは、電気を生じさせる反応に関与する物質のことである。
充放電特性を高めるために、具体策として細かい突出部を有した活物質を固体二次電池の正極とする手法が知られている。特許文献1は、コバルトを含むメッキ層とリチウムを含む活物質原料とを接触させて加熱するフラックス法により、比表面積が1.1~2に増大したコバルト酸リチウムのパターンを集電体上に設ける技術を開示している。
特開2015-220080号公報
特許文献1の方法により得られた突出部を有するコバルト酸リチウムは、正極活物質からの突出部が必ずしも十分発達していない場合があった。また、特許文献1の方法により得られた突出部を有するコバルト酸リチウムは、電解質材料の層厚方向の配置の自由度が低いという問題があった。本願は、正極活物質と電解質の間のイオン移動の障壁が低減されイオン伝導性が良好で正極活物質の配置の自由度が担保された正極、ならびに、かかる正極を備える二次電池を提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係る正極は、コバルト酸リチウムを含む活物質粒子を備える二次電池に適用される正極であって、前記活物質粒子は2θ法によるX線回折角が19.2~19.7度において回折角ピークを呈することを特徴とする。
また、本発明の実施形態に係る正極は、コバルト酸リチウムを含む活物質粒子を備える二次電池に適用される正極であって、前記活物質粒子の結晶子のサイズが10nm以上50nm以下の領域を有することを特徴とする正極。
また、本発明の実施形態に係る正極の製造方法は、コバルト酸リチウムを含む活物質粒子を所定の面に沿って並べる配置工程と、前記活物質粒子に含まれるコバルトの少なくとも一部を還元させる第1の加熱工程と、前記還元されたコバルトを酸化させる第2の加熱工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、正極活物質と電解質の間のイオン移動の障壁が低減されイオン伝導性が良好で正極活物質の配置の自由度が担保された正極、ならびに、かかる正極を備える二次電池を提供することが可能となる。
第1の実施形態に係る二次電池の概略断面図(a)、正極の概略断面図(b)と活物質粒子のX線回折プロファイル(c)と参考形態のX線回折プロファイル(d)である。 第1の実施形態に係る正極の断面と上面のSEM像(a)、(b)、正極活物質の外観を示すSEM像と断面SEM像(c)、断面TEM像(d)である。 第1の実施形態に係る活物質粒子の粒子部と突出部の境界領域(a)と、突出部(b)に対応する断面TEM像である。 第1の実施形態に係る正極の製造の順序を示すフローチャート(a)、温度プロファイルの例(b)、活物質粒子の変性の推定メカニズムを示すもの(c)である。 第1の実施形態に係る樹脂(a)と積層体(b)の熱重量示差熱分析の結果と、熱重量分析に基づく熱分解温度を説明する図である。 第1の実施形態に係る積層体の第1の加熱温度の違いによる活物質粒子の断面SEM像300°C(a)400°C(b)500°Cを示すものである。 第1の実施形態に係る積層体の第1と第2の加熱工程の前後の積層体(a)(c)と正極(b)(d)の断面SEM像である。 第2の実施形態に係る二次電池の製造方法を示すフローチャート(a)と変形例を示す図(b)、(c)である。 第3の実施形態(a)と参考形態(b)(c)に係る推定される工程毎の雰囲気の変化を示すものである。 第4の実施形態(a)とその変形形態(b)に係る正極の概略断面図である。 実施例1に係る二次電池成形プロセスの模式図である。 実施例1に係る活物質粒子、電解質粒子のパターニング方法を示す模式図である。 実施例1の活物質粒子と正極内電解質(第一粒子)の配列パターンA,Bを示すSEM画像である。 実施例1の(a)サンプルの模式図 (b)脱脂前後のサンプルのSEM画像である。 実施例1のPET基材のTG-DTA測定結果である。 実施例1の参考例の脱脂条件に対応するサンプルのSEM画像である。 実施例1に係る試作した二次電池の活物質粒子LCOの配列パターンA,Bを対比するSEM画像(a)と対応する充放電測定結果(b)である。 実施例1に係る試作した二次電池の活物質粒子LCOの配列パターンA,Bを対比するインピーダンス測定結果である。 実施例1の正極活物質層の正極活物質粒子と正極内電解質粒子の配列パターン(a)と正極活物質層を備えた二次電池の充放電測定結果(b)である。
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。これらの実施形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対配置などは、この発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
(第1の実施形態)
<正極の構造、活物質粒子の構造>
第1の実施形態に係る活物質粒子22を有する正極30について図1(a)~(c)の各図を用いて説明する。図1は、第1の実施形態に係る二次電池100の概略断面図(a)、正極30の概略断面図(b)と活物質粒子のX線回折プロファイル(c)である。
図1(a)は、本実施形態の正極30が適用される二次電池100の概略断面図である。二次電池100は、正極活物質層20と接する正極集電体層10の側とは反対側の面において、電解質層40を備えている。二次電池100は、電解質層40が正極活物質層20と接している側とは反対側において、負極70を備えている。負極70は、電解質層40の正極活物質層20と接している面とは反対面において負極活物質層50を備えている。負極70は、負極活物質層50が電解質層40と接している面とは反対面において、負極集電体層60を備えている。二次電池100は、積層方向200において、負極70、電解質層40、正極30を備えていると換言される。
本実施形態の正極30は、図1(b)に示す通り、正極集電体層10と、活物質粒子22と正極内電解質24を含む正極活物質層20と、を有している。本願明細書においては、電解質層40と活物質イオンの授受が行われる構造を正極と称するため、図1(a)の正極30から正極集電体層10を除いた正極活物質層20を、正極20と称する場合がある。また、本実施形態の正極活物質層20は、正極内電解質24を含むため、複合正極活物質層20と換言される場合がある。
集電体層10は、不図示の外部回路、活物質層との間で電子伝導を行う導体である。集電体層10は、SUS、アルミ二ウム等の金属の自立膜、金属箔、樹脂ベースとの積層形態が採用される。
正極活物質層20は、サブレイヤーとして正極活物質層20a、20b、20cを備えている。正極活物質層20a、20b、20cは、活物質粒子22、正極内電解質24が焼結される前の層厚方向200における積層する単位で区別されている。正極活物質層20a、20b、20cは、活物質粒子22と正極内電解質24の体積分率、不図示の導電助剤、空隙率(ポロシティ)等において、層厚方向の分布を有する場合がある。層厚方向200は、各層を積層する積層方向と平行か、逆平行であるため、積層方向200と換言する場合がある。
本実施形態の活物質粒子22は、LiCoO(コバルト酸リチウム:以下LCOと略す場合がある。)を含み、正極内電解質24は、LiBO(ホウ酸リチウム:以下LBOと略す場合がある)を含む。活物質粒子22と正極内電解質24のそれぞれの粒度の調整は、分級により可能である。本実施形態の活物質粒子22(LCO)と、正極内電解質24(LBO)は平均粒径が互いに異なり、活物質粒子22の平均粒径が正極内電解質24の平均粒径より2~3倍ほど大きい。本願明細書においては、正極活物質層20に含まれる活物質Liを含む粒子を活物質粒子22と称する。活物質粒子22は、活物質Liを受容可能な負極活物質層50が負極活物質粒子を含む場合に、負極活物質粒子と峻別する意図から正極活物質粒子と換言する場合がある。活物質粒子22は、粒状については言及せずに、単に正極活物質と換言する場合もある。
本発明者らの検討の結果、活物質粒子と電解質との間の活物質イオンの授受に係る障壁が高いことにより制限されていた二次電池の充放電と特性について、所定の活物質粒子を準安定系のコバルト酸リチウムとすることで改善する知見を得た。すわなち、本発明者等は、活物質イオンの伝導性を高めるためには、活物質粒子の結晶構造が安定系のコバルト酸リチウムと異なる準安定系のコバルト酸リチウムとすることが好ましいという知見を得た。
図1(c)は、本実施形態の二次電池100に含まれる正極30を分解し、正極30をX線回折法(以降、XRD法と称する場合がある)で測定した2θ法のX線回折角プロファイルである。得られたX線回折角プロファイルからは、図1(c)に示すように、X線回折角が18度から20度において18.9度以上19.1度以下と19.2度以上19.7度以下に回折角ピークを有する双峰型の回折角ピークを呈することが読み取れる。一方で、安定系のコバルト酸リチウムは18.9度から19.1度に回折角ピークを1つ有する単峰型の回折角ピークを呈することが知られている。
回折角18.9度以上19.1度以下に認められる活物質粒子22の低角側の回折角ピークは、詳細には19.01度と19.03度の回折角ピークが重なったものだが、簡単のために最も強度の高い19.03度を低角側の回折角ピークとして代表させている。活物質粒子22の19.03度の回折角ピークに対応する半値幅は、0.22度であった。
また、回折角19.2度以上19.7度以下に認められる活物質粒子22の高角側の回折角ピークは、複数の回折角ピークが重なったものであるが、簡単のために最も強度の高い19.25度を高角側の回折角ピークとして代表させている。活物質粒子22の高角側の回折角ピークは、詳細には19.25度、19.41度、19.43度、19.53度、19.61度の複数の回折角ピークが重なったものである。活物質粒子22の19.25度の回折角ピークに対応する半値幅は、0.54度であった。
活物質粒子22の回折角ピーク19.03度と19.25度に対応する結晶構造の結晶子サイズφgcは、式(1)のシュラーの式より、それぞれ、36.6nmと14.9nmであった。
シェラーの式:τ=Kλ/(βcosθ) 式(1)
なお、式(1)におけるパラメータは、τ:結晶子のサイズ、K:形状因子(0.9)、λ:X線波長、β:回折角ピークの半値幅、θ:ブラッグ角である。
参考形態として、商材として販売されているコバルト酸リチウの回折角2θが18-20度付近を含むXRDプロファイルを図1(d)に示す。参考形態の安定系のLCOを含む活物質粒子21は、後述する第1の加熱工程、第2の加熱工程を経ていないバージンの商材である。(日本化学工業株式会社製、登録商標セルシード CELLSEED)。安定系のLCOを含む活物質粒子21は、シングルのピークが19度よりやや低角側の18.9度にピークを有していることが読み取れる。活物質粒子21の回折角ピーク18.95度に対応する結晶構造の結晶子サイズφgcは、上記の式(1)のシュラーの式より、89.6nmであった。なお、X線回折角が18度から20度における回折角2θ=19°付近に認められる回折角ピークは、コバルト酸リチウムの結晶の(003)面に対応する。
本実施形態の活物質粒子22は、安定系のコバルト酸リチウムを含む活物質粒子21には認められない、19.2度以上19.7度以下において、固有のブロードな高角側回折角ピークを有している。本実施形態の活物質粒子22は、2θ法によるX線回折角が19.2度以上19.7度以下において複数の回折角ピークを呈すると換言される。また、本実施形態の活物質粒子22は、2θ法によるX線回折角が19.2度以上19.7度以下の高角側の回折角ピークと、18.9度以上19.1度以下の低角側の回折角ピークと、を有していると換言される。
本実施形態の正極30が含まれる活物質粒子22は、安定系のコバルト酸リチウムに比べて高角側にスプリットした複数の固有のピーク(19.25度、19.41度、19.43度、19.53度、19.61度)を有する。かかる複数の回折角ピークからは、本実施形態の活物質粒子22は、格子間隔、結晶子サイズに分布を有する複数の結晶構造が混在していると読み取られる。また、かかる複数の回折角ピークからは、本実施形態の活物質粒子22は、安定系の活物質粒子21に比べて、格子間隔、結晶子サイズがともに小さい複数の結晶構造が混在していることが読み取られる。また、かかる複数の回折角ピークからは、活物質粒子22は、安定系の活物質粒子21に比べて、格子間隔、結晶子サイズがともに小さい複数の結晶構造を有していることが読み取られる。活物質粒子22において、安定系の活物質粒子21に比べて、格子間隔、結晶子サイズがともに小さい複数の結晶構造が、活物質粒子22に混在していると換言される。
従って、本実施形態の正極30に含まれる活物質粒子22の結晶子サイズは、安定系の活物質粒子21に比べて微細化されていることが判る。活物質粒子22の結晶子サイズは、回折角19.2度以上19.7度以下の回折角ピークの分布を考慮すると、10nm以上50nm以下を有していると考えられる。
なお、正極に含まれる活物質粒子の結晶構造をX線回折法で解析する場合、その試料の準備は、本実施形態のように正極30の自立形態だけでなく、二次電池100を分解し正極30を粉砕して採集した活物質粒子22の粉体を試料とする場合がある。さらには、二次電池に含まれる他の構成要素が正極の結晶構造に対応するX線回折ピークをマスクしない範囲において、他の構成要素を含んだ形態の試料を、X線回折用の試料として準備することが可能である。
次に、本実施形態の活物質粒子22の結晶構造の格子定数について説明する。19.3度における活物質粒子22に固有の回折角ピークの角度2θと、一般式(2)のブラッグの式より格子定数cを見積もり、1.38nm(19.3度)を得た。安定系のコバルト酸リチウムを含む活物質粒子21の格子定数が1.40nm(19.0度)であることを考慮すると、本実施形態の活物質粒子22の面間隔は、安定系の活物質粒子21の面間隔より僅かに狭いことが見て取れる。
ブラッグの式:c=λ(h+k+l)/(4sinθ) 式(2)
なお、式(2)において、λはX線波長、h、k、lは結晶面のミラー指数(整数)、θはブラッグ角、である。
次に、図2(a)~(d)、図3(a)、(b)に示す顕微鏡像を用いて、本実施形態の正極30に含まれる活物質粒子22の微視的な構造について説明する。
図2(a)(b)は、それぞれ、第1の実施形態に係る正極活物質層20の断面(a)と上面のSEM像(b)を示すものである。図2(c)(d)は、それぞれ、第1の実施形態に係る活物質粒子22の外観を示すSEM像(c)と断面TEM像(d)である。
図2(a)の正極活物質層20は、図1(a)(b)の正極活物質層20に対応している。正極活物質層20は、図2(a)、(b)に示すように、コバルト酸リチウムLCOを含む活物質粒子22と、ホウ酸リチウムLBOを含む正極内電解質24と、が層厚方向と層方向とに混在して含まれている。図2(a)(b)において、試料からの二次電子、反射電子の強度に対応する画素値が相対的に高く明るい領域が活物質粒子22に対応し、画素値が相対的に低く暗い領域が正極内電解質24に対応する。
活物質粒子22は、図2(c)、(d)に示すように、粒子部22bと、粒子部22bの外表面において複数方向に放射状に突出する突出部22pと、を有している。また、活物質粒子22は、図2(d)に示すように、粒子部22b内部が、コア部22cと、複数の層状間隙20g、複数のシェル部22s、放射状間隙20r、を有するコアシェルライクな、不連続なテクスチャを呈している。粒子部22bは、粒子の内部と外部の双方において比表面積が増大し多孔質化されている点で、後述する加熱処理を経ない安定系のコバルト酸リチウムを含む活物質粒子21がプレーンな断面構造と相違する。TEM像は、100~150μmの範囲のスライス厚の試料を、加速電圧300kVで取得した。
本実施形態に係る活物質粒子22は、比表面積が増大した表面を有し複数方向に突出した突出部22pを有するため、活物質粒子22と電解質との接触確率が増大し、活物質粒子22と電解質との間の活物質イオンの授受がなされやすくなると考えられる。
図3は、第1の実施形態に係る活物質粒子の粒子部と突出部の境界領域(a)と、突出部(b)に対応する断面TEM像(格子像)である。なお、本願明細書において、TEM像、SEM像は、断りの無い限り、走査型の透過電子顕微鏡で撮影された像、走査型の反射電子顕微鏡で撮影された像である。断面TEM像は、100~150μmの範囲のスライス厚の試料を、加速電圧200kVまたは300kVで取得した。スライス試料は、FIB加工が可能な、イオンミリング装置(ライカ製)を用いて作製した。
図3(a)の低倍像は、図3(b)の高倍像の位置を明示するものである。図3(a)は、破線の左下側に粒子部22bが、粒子部22bから複数の突出部22pが突出している態様が見て取れる。図3(b)に含まれる突出部22pの拡大像から、突出部22pの結晶構造のc軸配列に対応する縞模様が観察された。観察された縞模様は、突出部22pが突出する軸方向に対して複数の結晶子が分布していることが判った。かかる複数の結晶子のサイズは、1nm以上20nm以下の範囲で分散していた。複数の結晶子のうち、図3(c)の左側の白枠に認められる結晶子の縞間隔は0.47nmであった。結晶子のサイズは、突出部22pの固有の方向に配列する縞模様のパターンの領域を特定することで決定した結晶子は、単結晶ドメインと換言する場合がある。
一方、後述する第1の加熱工程、第2の加熱工程を経ていないバージンの商材である活物質粒子21のTEM像の縞模様から得られた結晶子のサイズは、90~100nmと、活物質粒子22と比較し大きかった。このように結晶性に関する活物質粒子22と活物質粒子21との対比において、X線回折角XRDと断面TEM像の結果は整合していることが確認された。
活物質粒子中のLiイオンの拡散係数は、コバルト酸リチウムの結晶子の小ささ、結晶子の配向の分布、活物質粒子の有効反応面積に対応する比表面積、に依存すると考えられる。
図2(d)、図3(a)のように、放射状の突出部を有し多孔質化された活物質粒子22は、活物質粒子22の周囲の要素と間で、Liイオンを授受する有効反応面積が大きく効率的に授受する効果が得られると考えられる。一方、安定系の活物質粒子21は、図7(c)のような、緻密な粒子断面と滑らかな表面とを有している。本実施形態の活物質粒子22は、このような固有のモフォロジー的な特徴を有することで、活物質粒子の高い輸送性(易動度)を発現するものと考えられる。
また、図1(c)、図3(b)に示すように、活物質粒子22は、安定系の活物質粒子21に比べて、結晶子サイズが微細化され、分散した配向を有す点で相違する。活物質粒子の内部において、Liイオンは、結晶子に沿って輸送されると考えられる、また、活物質粒子の内部において、Liイオンの拡散長は、結晶子サイズが小さいほど大きくなることが知られている。従って、本実施形態の活物質粒子22は、周辺の要素との間で授受するLiイオンを、活物質粒子内部で効率的に中心部に輸送する効果が、安定系の活物質粒子21に比べて高いものと考えられる。本実施形態の活物質粒子22を含む正極30は、二次電池100に適用することにより充放電特性の改善が得られるものと考えられる。
<正極の製造工程、活物質粒子の推定される変性メカニズム>
次に、本実施形態の正極30の製造方法と、活物質粒子22が変性するメカニズムについて、図4~図7の各図を用いて説明する。
図4は、第1の実施形態に係る正極の製造の順序を示すフローチャート(a)、温度プロファイルの例(b)、活物質粒子の変性の推定メカニズムを示すもの(c)である。
本実施形態に係る正極30の製造方法S4000を、図4(a)を用いて説明する。正極30の製造方法S4000は、基材に活物資粒子を配置する構成S300、加熱炉の炉内に基材と活物質粒子の正極前駆体を配置する工程S320、第1の加熱工程S340、第2の加熱工程S360、および、降温工程S380、を少なくとも有する。
(基材に活物資粒子を配置する構成S300)
本工程は、所定の面に沿って、正極30を構成する活物質22の前駆体となる活物質粒子21を基材25の上に配置する工程である。活物質粒子21は、安定系の商材であるコバルト酸リチウムの粒子材料を採用することでき、正極30が備える活物質粒子22の前駆体に該当する。本工程により、層方向(層面方向)の活物質粒子21の配置を調整することができる。活物質粒子21の層と基材25とが積層された積層体は、積層体28、正極前駆体28と、換言する場合がある。正極活物質層20が、図1(b)のように正極内電解質24を備える場合は、活物質粒子21と正極内電解質24の混合比、または、配列パターンを調整することが本工程で可能となる。
また、本工程S300において、正極前駆体28を、図7(a)のように、積層することが可能である。図7(a)では、正極集電体層10の上に、正極前駆体28を6層、積層している。
基材25は、活物質粒子21が載置される面S25を少なくとも一方に有する樹脂材料が採用される。基材25は活物質粒子21を支持する支持体であり、積層体28は、この工程S300以降第1の加熱工程S340の途中までは、正極前駆体28に該当する。
本工程は、室温RT(15~25°C)、大気雰囲気下で行われる。パターニング装置やクリーンベンチを用いる場合は、特定の温度域、不活性ガスでパージされた不活性雰囲気下で行われる場合もある。吸着水の影響を軽減したい場合は、50°C以上の雰囲気としたり、基材25を載置するステージを加熱としたりする場合がある。
基材25は、シート状、バルク状の形態の少なくともいずれか、とすることができる。後述する第1の加熱工程における樹脂の熱分解性の観点からは、シート状が採用される。シート状の基材25は、フラットな形態、メッシュ形態、エンボス形態、厚さ分布を有する形態、等が採用され得る。基材25の基材厚は、ハンドリング性、支持する粒子の平均粒径、第1の加熱工程の加熱時間等により調整されるが、1μm~10mmとすることができる。
本実施形態の正極30では、基材25にPET樹脂を採用した例を用いて説明する。配置工程S300では、基材25の載置面S25に活物質粒子21、導電助剤、固体電解質24、を所定のパターンで配置する方法は、インクジェット法、砂絵法、マスクCVD法、等の公知のパターニング方法、堆積方法を採用することができる。
基材25は、第1の加熱工程で、固形分が0となる材料から選ばれる。すなわち、第1の加熱工程の雰囲気、加熱プロファイルに応じた、熱分解温度、燃焼温度等の変態点温度を有するものが選択される。基材25を、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂とした場合は、後述する図5(a)(b)に示すように、温度域毎に特定の等価原子量を有するガスを放出しながら熱分解される。図5(a)(b)に示されるPET樹脂を基材25とした場合は、基材25は酸素含有雰囲気下の加熱温度が450℃以上の温度で燃焼し固形分が0とすることができる。
基材25は、加熱準備工程S320、第1の加熱工程で基材25の固形分が消失するまでは、活物質粒子21の支持体として機能する。一方で、基材25は、第1の加熱工程S340において、安定系の活物質粒子21を還元する還元性ガスを供給するガス供給源であり、第1の加熱工程から第2の加熱工程に移行する条件を与える雰囲気の調整材料でもあるという点で、複数の役割を担っている。
(炉内に基材と活物質粒子の正極前駆体を配置する工程S320)
本工程は、基材25と安定系の活物質粒子21とを加熱炉内に配置する工程である。基材25と活物質粒子21は、積層体28として、一体に、不図示の加熱炉に載置される。
加熱炉は、バッチ式、連続式、枚葉式、等が採用可能であるが、基材25と活物質粒子21とが加熱される空間を所定の雰囲気とするために、基材25と活物質粒子21とが載置される被加熱領域がある程度覆うケーシングがなされた形態となる。加熱炉は、少なくとも、基材25と活物質粒子21とが、加熱される空間の雰囲気を所定の雰囲気とするために、基材25と活物質粒子21とが載置される被加熱領域のガスコンダクタンスが制限されている形態が採用されると換言される。これにより、積層体28を加熱する工程で、雰囲気のガスよりも軽いガスを効率的に活物質粒子22と接触させたい場合は、加熱炉の上方中心にカバーするケーシングが有効である。
加熱炉は、完全に密閉したものでない、バッチ式、連続式の態様で、加熱工程における炉内の気圧(全圧)は、周囲と等圧の関係にあるとみなされる。加熱炉は、安全の為、弱陰圧(0.8―0.95気圧)に排気された部屋、ワークベンチ等に載置される場合がある。加熱炉の周辺が大気である場合は、加熱工程において、炉内は、大気圧~大気圧の弱陰圧に維持され、所定の温度域までは安定で不活性な窒素Nが雰囲気を構成していると考えられる。
本工程は、配置工程S300と同様に、室温RT(15~25°C)、大気雰囲気下で行うことができる。パターニング装置やクリーンベンチを用いる場合は、特定の温度域、不活性ガスでパージされた不活性雰囲気下で行われる場合もある。吸着水の影響を軽減したい場合は、50°C以上の雰囲気としたり、基材25を載置するステージを加熱したりする場合がある。
第1の実施形態においては、配置工程S300、加熱準備工程S320は、ともに、室温20℃、大気雰囲気下で行われた態様を示す。このため、配置工程S300、加熱準備工程S320において、基材25と活物質粒子21は、窒素、酸素、二酸化炭素を含む大気雰囲気で行われている。
(第1の加熱工程S340)
本工程は、正極前駆体28を、基材25が熱分解し固形分が0となるまで加熱する工程である。この工程において、正極前駆体28に含まれる、基材25は、還元性ガスを放出し放出したガスを活物質粒子21と接触させる工程を含んでいる。第1の加熱工程S340は、基材25が含む樹脂の熱分解により放出された還元性のガスを含む還元性雰囲気の下で活物質粒子21を加熱する工程を含むと換言される。また、第1の加熱工程S340は、加熱炉の内部の雰囲気が、基材25が含有する樹脂に由来する還元性のガスが減少し、酸素を含む酸化性のガス分圧が還元性のガス分圧を上回る酸化性雰囲気となるまで行われると換言される。本実施形態の第1の加熱工程S340は、酸素Oを含む酸素含有雰囲気の下で開始されている。本実施形態の第1の加熱工程S340における加熱温度は、300°C以上690°C以下で行うことができる。
第1の加熱工程S340おいて、活物質粒子21は、基材25由来の一酸化炭素COにより熱還元反応を受け、コバルトCoが還元されるとともに、粒子内の微小組織が多孔質化されると、本願発明者等は推定している。
(第2の加熱工程S360)
また、第2の加熱工程S360において、還元された活物質粒子21rは、供給が絶たれた一酸化炭素に代わり雰囲気中の酸素によりコバルトが酸化されてLCOに戻るものの、安定系のLCOとは異なる微細構造、結晶構造を持つと発明者等は推定している。第2の加熱工程S360における加熱温度は、400°C以上690°C以下で行うことができる。
それらの根拠を、図5(a)、(b)、図6(a)~(c)、図7(a)~(c)を用いて説明する。
図5(a)(b)は示差熱分析の結果である。図5(a)は、基材25に採用されるシート状のPET樹脂の示差熱分析DTAプロファイルである。図中、実線が等価原子量28のDTA曲線(左軸)、破線が等価原子量32のDTA曲線(右軸)、点線が等価原子量44のDTA曲線(右軸)である。等価原子量28は、窒素Nと一酸化炭素COが含まれるが、室温から520℃まで増加し520℃以上で減少するDTA曲線のプロファイルとPET樹脂の組成、分析環境、からは、窒素ガスは考えられず、実線のプロファイルは、一酸化炭素COと考えられる。破線、点線のプロファイルは、それぞれ、同様の理由で、酸素O、二酸化炭素COと考えられる。
図5(a)からは、PET樹脂は、室温からの加熱により徐々に熱分解され、520℃付近をピークとして一酸化炭素COを放出することが読み取れる。また、酸素と二酸化炭素は定性的には増減が逆の傾向を示すことから、一酸化炭素COの一部、または、PET樹脂を構成する炭素の一部は、雰囲気の酸素を消費して二酸化炭素COとなることが読み取れる。二酸化炭素COは、590℃付近をピークとして、一酸化炭素COより高温側で主に増大し始める。
一方、基材25採用されるPET樹脂の熱分解温度は、図5(c)に示す熱重量分析TGプロファイルの固形分50%減少温度で規定され約400℃であった。
従って、基材25を燃焼するまで行う第1の加熱工程S340では、基材25から、還元性の一酸化炭素COガスが放出され、放出された一酸化炭素COガスを安定系の活物質粒子21に接触させる工程が含まれているとみなせる。
次に、図5(b)は、図5(a)に対応するシート状のPET樹脂と複数の安定系の活物質粒子21を含む層とを積層した積層体28の示差熱分析DTAプロファイルである。
図5(b)からは、520℃以下の温度域では昇温によりPET樹脂単体であれば増加する一酸化炭素COが350℃以上で減少し始めることから、350℃以上でPET樹脂由来の一酸化炭素の一部がLCOの熱還元反応に消費されていると推定される。すなわち、図5(b)からは、350℃以上では安定系のコバルト酸リチウムが一酸化炭素COにより熱分解されていると推定される。また、PET樹脂がLCOを含む活物質粒子21と共に焼成されると、放出された一酸化炭素COの少なくとも一部は、350℃以上では直ちにLCOの熱還元反応に消費され、510℃以上では周辺の酸素により直接酸化され二酸化炭素COになると推定される。すなわち、第1の加熱工程S340において、樹脂25由来の一酸化炭素COの少なくとも一部は、350℃以上では直ちにLCOの熱還元反応に消費され、510℃以上では、二酸化炭素COの生成に消費されるものと推定される。
本発明者等は、積層体28(正極前駆体28)の大気雰囲気下での加熱温度依存性を調べた。大気雰囲気下で、加熱温度を300℃、400℃、500℃で1時間焼成した後の焼成後の積層体28の断面SEM像を、図6(a)(b)(c)に示す。図6(a)(b)(c)の図中、画素値が明るく略丸い粒子状の領域が活物質粒子21または活物質粒子22に該当する領域である。図6(a)(b)のSEM試料では、活物質粒子21同士の焼結が不十分のため、活物質粒子21の周囲を試料作成用のモールド樹脂で固めている。すなわち、図6(a)(b)の活物質粒子21の周囲で連続に延在している樹脂は、観察上は無視して良い。一方、図6(c)の試料に含まれる複数の活物質粒子22は焼結され一体化されているので、モールド樹脂は図中に存在しない。
図6(a)のように、300℃加熱条件を経た活物質粒子21は、安定系のLCO(後述する図7(c))の断面と同じ、一様な活物質粒子21の断面を呈している。図6(b)の400℃加熱条件を経た活物質粒子は、図6(a)よりも多孔質化された断面を有していることは見て取れるが、突出部の成長は有意には認められない。
一方で、図6(c)の500℃加熱条件を経た活物質粒子22は、多孔質な粒内の構造と、粒子部から突出する複数方向に突出する突出部が見て取れる。
得られた加熱温度を変えたSEM試料と同じ加熱温度水準のXRDの試料で結晶構造を同定したところ、400℃の試料のみ、酸化コバルト(CoO/Co)が検出された。300℃、500℃の試料からは、コバルト酸リチウムLiCOの結晶構造が同定されていた。このため、400℃の加熱では、Coは、II価、II2/3価の酸化数を有しており、コバルト酸リチウムLiCOにおけるCOの酸化するIII価に対して還元されていた。また、500℃の加熱温度を経た試料は、コバルト酸リチウムLiCOは、一旦、還元された酸化コバルト(CoO/Co)が、再酸化されたものであることが判った。
再酸化は、PET樹脂の燃焼により絶たれた還元性の一酸化炭素CO供給にかわり、焼成雰囲気に存在し500℃の高温で活性な酸素が担っているものと推定された。かかる再酸化工程は、第1の加熱工程S340の還元反応の後で行われる、第2の加熱工程S360に対応する。
すなわち、図7(c)に対応する500℃の加熱条件は、前半に第1の加熱工程S340、続く、後半に第2の加熱工程S360を経たものであると見なされる。
一方で、図7(c)の500℃焼成条件を経た試料と同等の試料を700℃で10分加熱したところ、その試料の断面SEM像(不図示)は、活物質粒子の粒内は、図7(a)のような、均質な構造を呈し安定系のLCOのモフォロジーを呈していた。700℃の加熱工程により、突出部22p、層状間隙2g等を含む多孔質構造も焼失していたことから、700℃以上では酸化反応、溶融反応が進み過ぎ、微細構造も特有の結晶構造もない安定系のLCOとなったと考えられる。
従って、第1の加熱工程で還元した活物質粒子21rを再酸化する第2の加熱工程は、加熱温度を690℃以下とすることで、安定系のLCOにまで酸化と溶融が進行しないようにする。
以上のように、基材25に含まれる樹脂は、第1の加熱工程では、活物質粒子21を還元するガス供給源となっており、第1の加熱工程から第2の加熱工程に代わる雰囲気の変化を与える雰囲気調整材としても機能している。
図5~図7の分析結果に基づいて、本願発明者等が描く工程毎の描像を図4(b)(c)に示す。図4(a)~(c)は、各工程S300~S380に対応する推定メカニズムを示すものである。
配置工程S300、加熱準備工程S340の段階では、積層体28(正極前駆体28)には有意な構造上の変化がない。
第1の加熱工程S340において、積層体28は500℃に加熱される。第1の加熱工程S340の初期において、基材25は一酸化炭素COを放出し、後半は二酸化炭素COを放出しながら熱分解される。放出された一酸化炭素COは、活物質粒子21中のコバルトをII価からIII価に還元し、LCOの少なくとも一部を酸化コバルト(CoO/Co)に変性させ、粒内が多孔質化された微細構造を有する還元活物質粒子21rに変性させる。雰囲気中に存在している酸素Oより一酸化炭素COが活物質粒子21に近接しており、基材25から放出された一酸化炭素COは、第1の加熱工程S340の初期において、加熱雰囲気の活性ガスとして支配し、LCOの変性に消費される。第1の加熱工程S340の後期において、徐々に基材25の熱分解が進行し、一酸化炭素COの供給が絶たれ、不活性な二酸化炭素COの供給に置き換わっていくと、第1の加熱工程S340の雰囲気は、還元性から不活性にシフトする。
さらに、第2の加熱工程S340において、完全に二酸化炭素COの供給も絶たれるまで、基材25に含まれる樹脂の燃焼が終了すると、酸素Oの消費が無くなるため、高温で活性な酸素Oが、活物質粒子21を再酸化する。すなわち、第2の加熱工程S360の雰囲気は、高温下の酸素Oが支配するようになり、不活性から酸化性にシフトする。
第2の加熱工程S360において、活物質粒子中の少なくとも一部のコバルトCoの酸化数は、II価またはII2/3価からIII価へと変化する。第2の加熱工程S360において、酸化反応が粒内において完全には進行しないため、第1の加熱工程で形成される層状間隙22g、第2の加熱工程の前半で形成されたる突出部22pが、降温工程S380を経ても残ると考えられる。完全な酸化反応が進行しないとは、不完全な酸化反応が進行する、や、局所的な酸化反応が進行すると換言される場合がある。
なお、第1の加熱工程S340の昇温レートの水準だけを変え、それ以外の工程は第1の実施形態と共通の条件としたところ、昇温レートが10°C/分以下では、第1の実施形態の活物質粒子22と共通する微細構造と結晶構造を有する活物質粒子が得られた。昇温レートが10°C/分を超えると、得られた活物質粒子に、第1の実施形態の活物質粒子22と共通する微細構造と結晶構造は認められなかった。かかる昇温レートの依存性は、第1の加熱工程において、基材25から一酸化炭素COが発生する300℃以上500℃以下の温度域に積層体28が20分以上、滞在していることが必要なものと考える。昇温レートが10°C/分を超え、300℃~500℃の温度域における積層体28の滞在時間が20分未満であると、PET樹脂が急速に完全燃焼し加熱工程の初期から不活性な二酸化炭素COが供給され一酸化炭素COの供給が不足したと推定される。また、第2の加熱工程S360は、400℃以上690℃以下で、10分以上、90分以下で行うことができる。
(降温工程S380)
本工程では、還元後に再酸化した活物質粒子22の温度を降下させ、変性した活物質粒子22同士が固化し焼結した正極活物質層20とする工程である。配置工程S300で図7(a)のような断面をていしていた積層体28は、本工程S380を経て、図7(b)のような断面を呈し、積層体28のマクロな構造が維持されている。局所的な酸化反応である第2の加熱工程S360後、図4(c)のように、S340~S360で形成された活物質粒子の微細な構造は、本工程S360で残留する。
<第2の実施形態>
本実施形態は、第1の実施形態に係る正極30を用いて、図1(a)のような二次電池100(固体電池100)を作成する方法を示すものである。図8(a)~(c)を用いて、二次電池100の製造方法を説明する。
図8(a)は、第2の実施形態に係る二次電池の製造方法S8000を示すフローチャートである。
本実施形態の二次電池の製造方法8000は、正極集電体層を配置する工程S800、正極の製造方法S4000、電解質層を配置する工程S820、負極を配置する工程S840および負極集電体層を配置する工程S860を備え、各工程をこの順で行う。
本実施形態の変形例として、正極集電体層10、正極活物質層20、電解質層40、負極活物質層50、負極集電体層60のうち、隣接する少なくともいずれか2つの要素を、基材25を介して積層した複合前駆体を形成することができる。かかる変形例においても、複合前駆体を、第1の実施形態で記載された正極の製造方法に準じて複数の要素が積層された二次電池100を作成することができる。すなわち、第2の実施形態の二次電池100の製造方法S8000の変形例として、工程S800~S860の各工程を、第1の実施形態の正極の製造方法S4000を準用して行う形態が、第2の実施形態の変形例とし本願発明に含まれる。
図8(b)は、第2の実施形態の変形例に係る二次電池の製造方法S8100を示すフローチャートである。本変形例では、図11-1~11-2のように、固体電解質40の前駆体となる複数の電解質粒子が基材上に配置された積層体と、正極活物質層20の前駆体となる活物質粒子と正極内電解質とが基材上に配置された積層体と、を積層した複合積層体を準備する。第2の実施形態と本変形例との相違は、正極集電体層10、正極活物質層20、電解質層40を積層する順序が逆である点で相違する。すなわち、二次電池100を構成する要素と、隣接する他の要素とを積層する工程の順序は、他の要素が損傷し長い範囲で、交換可能であるし、同時に行うことが可能である。
図8(c)は、第2の実施形態の他の変形例に係る二次電池の製造方法S8200を示すフローチャートである。本変形例に記載の二次電池の製造方法S8200は、電解質層40と積層する前に、正極30、負極70のそれぞれの作成を、先行して並行に行う点で、第2の実施形態のS8000、その変形例S8100と相違する。
(負極)
負極の製造方法は、公知の手法が適用可能である。本願の第4の実施形態の変形例のように、負極の作成に第1の実施形態の正極30の製造方法を準用してもよい。正極30と同様に負極活物質を含む粒子で成形されてもよいし、金属LiやIn-Li等の金属を膜として成形してもよい。
(電解質)
電解質としては、固体電解質、液体電解質などが挙げられる。固体電解質を用いる固体電池の場合は、電解質を正極と同様の製造方法で作製されても構わないし、既知の方法で作製されてもよい。既知の方法としては、負極と同様に塗工プロセス、粉体加圧プロセスや真空プロセス等が挙げられるが、特に限定されない。また、電解質は単独で作製されても構わないし、正極や負極との二者の積層体、または正極と負極との三者の積層体として一括で作製されても構わない。なお、電極とは異なる製造方法で作製される液体電解質やポリマー電解質を用いる場合は、その製造方法は特に限定されない。
[固体電解質]
固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、錯体水素化物系固体電解質などが挙げられる。酸化物系固体電解質は、Li1.5Al0.5Ge1.5(POやLi1.3Al0.3Ti1.7(POなどのナシコン型化合物、Li6.25LaZrAl0.2512などのガーネット型化合物が挙げられる。また、酸化物系固体電解質は、Li0.33Li0.55TiOなどのペロブスカイト型化合物、が挙げられる。また、酸化物系固体電解質は、Li14Zn(GeOなどのリシコン型化合物、LiPOやLiSiO、LiBOなどの酸化合物が挙げられる。硫化物系固体電解質の具体例としては、LiS-SiS、LiI-LiS-SiS、LiI-LiS-P、LiI-LiS-P、LiI-LiPO-P、LiS-P等が挙げられる。また、固体電解質は、結晶質であっても非晶質であってもよく、ガラスセラミックスであっても構わない。なお、LiS-Pなどの記載は、LiS及びPを含む原料を用いて成る硫化物系固体電解質を意味する。
[液体電解質]
液体電解質としては、例えば、非水系電解液が挙げられる。非水系電解液は、非水溶媒にリチウム塩を1モル程度溶解させた液体である。非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどが挙げられる。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClOなどが挙げられる。また、水溶媒を用いた水系電解液でもよい。
[負極活物質]
負極活物質としては、例えば、金属、金属繊維、炭素材料、酸化物、窒化物、珪素、珪素化合物、錫、錫化合物、各種合金材料などが挙げられる。なかでも、容量密度の観点から、金属、酸化物、炭素材料、珪素、珪素化合物、錫、錫化合物などが好ましい。金属としては、例えば、金属LiやIn-Li、酸化物としては、例えば、LiTi12(LTO:チタン酸リチウム)などが挙げられる。炭素材料としては、例えば、各種天然黒鉛(グラファイト)、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、各種人造黒鉛、非晶質炭素などが挙げられる。珪素化合物としては、例えば、珪素含有合金、珪素含有無機化合物、珪素含有有機化合物、固溶体などが挙げられる。錫化合物としては、例えば、SnO(0<b<2)、SnO、SnSiO、NiSn、MgSnなどが挙げられる。また、上記負極材料は、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などのグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。導電助剤は、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属繊維などの導電性繊維、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末、酸化亜鉛などの導電性ウィスカー、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、フェニレン誘電体などの有機導電性材料などが挙げられる。
(正極のセル化の他の態様)
二次電池の組立、すなわち正極のセル化は、ラミネートセル型、コインセル型、加圧セル型等の既知のセル化手法を採用することができる。代表的なラミネートセル型を例に説明する。
・ラミネートセルの組立
全固体電池やポリマー電池を例に、ラミネートセルの組立について説明する。前記製造方法により作製された正極、および電解質、負極を積層し、正極集電体と負極集電体間に配置する。前記集電体は、引き出し用の電極タブが端部で溶接されている。前記集電体、正極、電解質、負極が積層された積層体をAlラミネートフィルムにセットし、前記積層体を前記Alラミネートフィルムで包み、真空包装機で真空引きしながら密封する。このとき、前記電極タブがラミネートフィルム外に引き出されるが、タブとAlラミネートフィルムが熱圧着により接着されるため、密封が維持される。密封後に、必要であれば、等方圧加圧装置等による加圧をしても構わない。電解質は、固体電解質やポリマー電解質が挙げられるが、両者を用いて積層しても構わない。Alラミネートフィルム内には前記積層体以外にも、強度や成形等の目的で弾性材料や樹脂材料を積層しても構わない。また、前記積層体が複数積層されたバイポーラ-型(直列/並列)でも構わない。なお、液体電解質を用いる従来リチウムイオン電池の場合は、前記電解質の代わりにポリエチレン製のセパレータを積層する。真空包装機による密封の前に液体電解質を注入し、密封する。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態と参考形態に係る各正極の製造方法を図9(a)(b)(c)を用いて説明する。
図9(a)は、第3の実施形態に係る正極の製造方法の推定される雰囲気の変化を、工程毎に示すものです。同様にして、図9(b)、(c)は、本願の実施形態1のような正極の構造が得られなかった2つの変形形態の製造方法における推定される雰囲気の変化を、工程毎に示すものです。図9(a)~(c)の図中、図4(b)と同様に、推定される雰囲気は、加熱工程の温度と志差熱分析の結果とに基づいて反応性のガスの主成分を推定し、酸化性、不活性(中性)、還元性の反応性のガスの性状で表現しています。不活性域を示す帯域の中心線から離れていればいるほど、高い反応性があることを示しています。
第3の実施形態に係る正極の製造方法は、第2の加熱工程S360の加熱温度を680℃、としたことが、第1の実施形態に係る正極の製造方法(同500℃)と相違する。第2の加熱工程S360の加熱温度を680℃として場合においても、第2の加熱工程S360における再酸化は一様に均質には進行しない程度に進行する。本実施形態においても、第1の実施形態の加熱構成S340と同等か短い第2の加熱工程の加熱時間を設定することで、図5(a)~(c)に基づいて推定される反応性のガス成分は、第1の実施形態の各工程と同等なものとなる。第3の実施形態によっても、第1の実施形態の活物質粒子22と同様な、微細構造と結晶構造を有する正極30が得られる。
図9(b)に示す参考形態は、第1の加熱工程S340の代わりに、加熱温度が250℃である第3の加熱工程S940を行っている点が、第1の実施形態の正極30の製造方法と相違する。第3の加熱工程S940は、加熱温度がPET樹脂に対して不足しているため基材25の熱分解が進行せず一酸化炭素COが十分に生成されないため、その雰囲気は、250℃、酸素が反応性のガスとなりやや酸化性となっていると推定される。図9(b)に示す参考形態に係る正極の製造方法は、第3の加熱工程S940に続く第2の加熱工程S360が実質的には第1の実施形態の第1の加熱工程S340となっている。図9(b)に示す参考形態に係る正極の製造方法は、第1の加熱工程S340の後の第2の加熱工程S360が無い点で、第1の実施形態の正極30の製造方法第と相違すると換言される。
従って、図9(b)に示す参考形態に係る正極の製造方法を経た積層体28は、第2の加熱工程S360に対応する再酸化反応を受けていないため、図6(b)の400℃の加熱温度の加熱を経験した活物質粒子21rと同等の断面プロファイルを呈していた。また、従って、図9(b)に示す参考形態に係る正極の製造方法を経た積層体28は、第2の加熱工程S360に対応する再酸化工程を経ていないため、図6(b)に対応する活物質粒子21rと同等の結晶構造(XRDプロファイル)を呈していた。すなわち、本参考形態の正極の製造方法によって、第1の実施形態で作成される正極3は得られなかった。
図9(c)に示す参考形態は、第2の加熱工程S360の代わりに、加熱温度が700℃0℃である第4の加熱工程S960を行っている点が、第1の実施形態の正極30の製造方法と相違する。加熱時間において、第4の加熱工程S960と第2の加熱工程S360は同一である。第4の加熱工程S960は加熱温度が還元された活物質粒子21rを十分に(一様に)酸化するため、降温工程S380を経て得られた活物質粒子は、出発原料であった安定系の活物質粒子21の断面プロファイルを呈していた。第4の加熱工程S960は、加熱温度が還元された活物質粒子21rを十分に(一様に)酸化するため、降温工程S380を経て得られた活物質粒子は、第1の実施形態の活物質粒子22の特徴を呈していなかった。すなわち、本参考形態の正極の製造方法によって、第1の実施形態で作成される正極3は得られなかった。
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態とその変形形態に係る正極の積層構成について、図10(a)を用いて説明する。図10は、第4の実施形態(a)とその変形形態(b)に係る正極の概略断面図である。
図10(a)に示す、正極30は、正極内電解質24を用いずに、コバルト酸リチウムを含む複数の活物質粒子22により正極活物質層20を構成している点で、第1の実施形態の正極30と相違している。本実施形態の正極30は、正極30の製造方法S4000の配置工程S300で、正極内電解質24の前駆体を用いず、安定系の活物質粒子21のみを配置し、他の工程は第1の実施形態と共通とすることで得られた。
図10(b)に示す変形形態の正極30は、活物質粒子22と層内電解質24を層内で所定のパターンで配置した点と、正極活物質層20a~20bの層間でパターンの位相を合わせている点で、第1の実施形態の正極30と相違している。正極活物質層20a~20bの各層内のパターンは、活物質粒子22が円形の孤立島となるようにデルタ配列で繰り返すパターンとし、活物質粒子22の島間を連続に層内電解質24の粒子が埋めている。
本実施形態の正極30は、正極30の製造方法S4000の配置工程S300で、正極内電解質24の前駆体粒子と安定系の活物質粒子21とパターニングし、他の工程は第1の実施形態と共通とすることで得られた。
本実施例における全固体電池については、正極活物質としてコバルト酸リチウム(日本化学工業製 セルシードC-5H)、負極活物質としてIn-Li箔(ニラコ製)を用いた。また、本実施例における全固体電池については、正極合材用の固体電解質としてホウ酸リチウム(豊島製作所製)、電解質用の固体電解質としてLi1.5Al0.5Ge1.5(PO(豊島製作所製)を用いた。なお、電解質は、一軸加圧装置によりペレット成形し、電気炉で大気焼結(850℃/12時間)して、厚み260μmの電解質シートShを作製し使用した。前記電解質シートShの室温におけるイオン導電率は2.5×10-4S/cmであった。以下、コバルト酸リチウムをLCO、ホウ酸リチウムをLBO、Li1.5Al0.5Ge1.5(POをLAGPと略して記載する。
液体電解質を用いた従来リチウムイオン電池については、正極活物質としてコバルト酸リチウム(日本化学工業製 セルシードC-5H)、負極活物質として金属Li箔(自社成形)を用い、セパレータはポリエチレン製セパレータを用いた。また、液体電解質を用いた従来リチウムイオン電池については、電解液は1mol/L LiPF EC:DEC=1:1(vol%)を用いた。二次電池はラミネートセル型で組み、ラミネートフィルムとしてAlラミネートフィルム(大日本印刷製)、正極集電体としてAl箔(ニラコ製)、負極集電体としてCu箔(ニラコ製)、正極タブとしてシーラント付きAlタブ(宝泉製)を使用した。また、二次電池はラミネートセル型で組み、負極タブとしてシーラント付きCuNiタブ(宝泉製)を用いた。
<全固体電池の成形プロセス>
図11を用いて、本実施例に係る二次電池(全固体電池)の成形プロセスを説明する。
図11に示す本実施例に係る二次電池(全固体電池)の成形プロセスは、以下の工程S1、S2、S3を少なくとも有している。
S1 基材上に粒子(活物質/固体電解質等)を単層でパターニング配置する
S2 単層粒子が配置された基材を積層する
S3 脱脂による基材の消失と積層体を加圧する
ここで基材とは、粒子を面内で単層且つ緻密に配置することを目的とした仮の基板であり、後工程における熱処理で除去される材料を選択することができる。なお、図11は、正極と電解質の一体成形を例としているが、負極や集電体も含めた一体成形、集電体上の正極・負極成形、或いは他プロセスにより作製された電解質シート上の正極・負極成形等に用いることができる。本成形プロセスはサイズや形状の制御が可能であり、電極や電解質の厚みについても、原理的には、基材の積層枚数に応じて粒子1個分から制御することができる。
本実施例の成形プロセスにより作製される二次電池について説明する。
工程S1において、正極または負極は、使用する活物質や固体電解質の粒径に応じて、基材上のパターンや積層位置を調整することにより、正極または負極が有する活物質粒子と固体電解質が接触するように配置する。また、図11のような層内パターンと積層パターンを有する場合、層内(面内)において固体電解質の粒子が網目状のネットワーク構造を有し、それを積層することで、面内および積層方向にイオン伝導パスが形成され易いと考えられる。網目状ネットワークは、ネットワーク状、網目状、と換言される場合がある。基材の積層枚数を調整することで、正極または負極の膜厚が制御される。
一方、電解質層は、シート状の樹脂を含む基材上に固体電解質の粒子が稠密に配置された単層の電解質層の前駆体を用い、これを積層して成形する。電解質層の層厚は粒子1個の平均粒径を単位として層厚の制御が可能であり薄膜化が可能である。発明者等は、20μm程度の固体の電解質層を作成が可能なことを確認している。以上のように、本成形プロセスは、正極・負極のイオン伝導パスの形成および電解質の薄膜化を両立することができる。
<電池の作製プロセス>
本実施例の二次電池を作製したプロセスフローを図12~図16を用いて説明する。
(活物質粒子と活物質粒子のパターニング)
パターニング方法を図12に示す。本実施例の二次電池が有する正極の前駆体のパターニング方法は、以下の3工程SS1~SS3を含む。工程SS1~SS3は、前述の工程S1に対応し、第1の実施形態の配置する工程S300に対応する。
SS1 凹型に第一粒子を充填
SS2 表面に粘着層が塗工された基材に第一粒子を転写
SS3 第一粒子が転写されていない領域に第二粒子を充填
工程SS1~SS3のそれぞれについて図12を用いて説明する。
工程SS1
凹部が複数設けられた凹型は所定のパターンの凹凸構造を有している。凹部は充填する第一粒子(例えば、活物質粒子)が載置可能な開口幅と、第一粒子(活物質粒子)の平均粒径以下の深さとすることができる。凸部は第二粒子(固体電解質)の平均粒径以上の幅としている。凹部の開口幅よりも大きい磁性粒子に第一粒子を帯電により担持させ、凹型上に供給した。凹型直下に配置した磁石を用いて第一粒子を担持した磁性粒子を凹型に摺擦した。このとき、磁性粒子には型に対して鉛直下向きに強い引力がかかり摺擦されるため、微細な凹部に拘束された第一粒子は磁性粒子から外れ、第一粒子が選択的に凹部に充填された。また、かかる工程SS1では凝集した第一粒子を解砕する効果や、粗粉をカットする分級効果も得られる。なお、型の作製は、当社半導体プロセスでマスター型を作製し、インプリント法により検証用の凹型を複製した。
工程SS2
第一粒子(活物質粒子)を充填した凹型に、表面に粘着層を塗工した基材を押し付け剥がすことで、粘着層の付着力により、単層のパターンが維持された状態で第一粒子(活物質粒子)のみを基材に転写した。なお、基材は後工程の脱脂で消失するポリエチレンテレフタラート(PET)の基材を使用した。
工程SS3
第一粒子が転写された基材に対して、工程SS1と同様の摺擦手法により第二粒子(固体電解質)を充填する。第一粒子(活物質粒子)が配置されていない基材上は粘着層が露出し、更には、基材上の第一粒子が凸部となり凹凸構造が形成されている。第一粒子が配置されていない凹部に第二粒子を充填した。図12は説明上、第一粒子と第二粒子の粒径が同程度としているが、第二粒子の粒径を小さくすれば、第一粒子が配置されていない部分に多層の第二粒子を充填することができる。
上記方法により作製したパターンの異なる2種類(パターンAとパターンB)の基材のSEM画像を図13に示す。第一粒子として活物質LiCoO2(日本化学工業製セルシード C-5H 以下LCO)、第二粒子として固体電解質Li3BO3(豊島製作所製 以下LBO)を所望のパターンで緻密にパターニングすることができた。なお、パターンAとパターンBは活物質LCOの密度(mg/cm2)が略同等になるように、型のパターン(凹部の開口幅や周期等)を設計した。
(積層および脱脂)
上記パターニングプロセスにより作製した正極基材を固体電解質シート上に積層した。固体電解質シートは固体電解質Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3(豊島製作所製 以下LAGP)を一軸プレス成形し、焼結(850℃/12時間/大気)して作製した。この電解質シートのイオン導電率(25℃)は2.5×10-4 S/cmであった。サンプルの模式図1を図14(a)に示す。260μm厚の固体電解質シート(Φ11mm)上に正極基材(パターンA/Φ8mm)を6枚積層し、等方圧加圧装置により加圧した。ここで、基材裏面には表面と同様の粘着層が塗工されており、電解質シート上に複数枚の基材を積層固定できた。
次に、積層体を電気炉で脱脂(300,400,500℃/1時間/大気)した。500℃脱脂工程の前後の断面/上面SEM画像を図14(b)に示す。500℃の脱脂により、電解質シート上で6枚のPET基材は消失し、6層の粒子層(膜厚30μm)を含む正極が成形された。このとき、上面SEM画像の通り、基材上のパターンが維持され成形されている。図14(a)のように基材パターンの位置を合わせて積層されてはいないが、パターンAは活物質LCOが固体電解質LBOと面内で十分に接触し、且つLBOが網目状であることにより、面内および積層方向にイオン伝導パスが形成され易いと考えられる。
ここで、基材の重量変化を熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)により確認した(図15)。実線がTG曲線(左軸)、破線がDTA曲線(右軸)である。TG曲線から基材は600℃付近において消失(-100%)している。別途、脱脂条件でTG測定を行った結果、500℃以上で消失することを確認した。各脱脂条件におけるサンプルの断面SEM画像について図16に示す。TGから基材が残留する300℃サンプル(基材の80%程度残留)、400℃サンプル(基材の20%程度残留)は断面SEM画像においても残留した基材を確認できた。一方、500℃脱脂サンプルは、基材が消失し、活物質と固体電解質のみが確認された。
(全固体電池の作成)
全固体電池(二次電池)の作成方法について説明する。基材を消失させた積層体に、負極In箔(ニラコ製 厚さ50μm)と正極・負極用集電体を積層し、Alラミネートフィルム(大日本印刷製)に真空包装し、等方圧加圧装置により加圧してラミネート型電池を作製した。この作成方法は、図8(b)の工程S800、S840、S860に対応する。
<電池特性の評価>
本実施例で作成した二次電池の電池特性を検証した結果について図17~図20を用いて説明する。
(脱脂温度による容量維持率)
容量維持率の評価方法は、正極基材(パターンA/□10cm)のLCO密度から、成形した正極に含まれるコバルト酸リチウムLCOの総質量を求め、充放電装置により、室温(25℃)での各レートにおける容量維持率を測定した。なお、本願明細書において、脱脂は、第1の加熱工程S340を含み、バインダ、樹脂成分を除去する手法を含む。
試作した電池を評価した結果、300℃,400℃脱脂した試作電池は、内部抵抗が非常に高く(測定結果不図示)、レート0.05C相当の定電流充電においても、Cut-Off値(4.2V-2V)を越えて充電できなかった。一方、500℃で脱脂した試作電池は、0.3C相当の定電流充放電が可能であり、容量維持率は97%であった。
(活物質粒子の配列パターンによる電池特性の違い)
2種類の試作電池(パターンAとパターンB、それぞれ3枚積層)を作製(脱脂500℃/1時間/大気)し電池特性を評価した。各試作電池のSEM画像を図17(a)、室温(25℃)における0.3C相当の定電流充放電測定結果を図17(b)に示す。パターンAの試作電池が設定時間(2h)の充電および放電が可能であるのに対し、パターンBの試作電池はCut-Off値(4.2V-2V)を越えてしまい、充放電不可であった。放電後の電池の内部抵抗をインピーダンス装置により測定した結果を図18に示す。パターンAに比べ、パターンBの試作電池の抵抗が高いことが示唆され、これが充放電特性低下の原因と考えられる。内部抵抗の違いについては以下の要因が考えられる。パターンAは活物質LCOが凝集することなく、網目状のネットワーク構造を有した固体電解質と接触するため、多くのLCOにイオン伝導パスが形成され易い。一方、パターンBは活物質LCOが凝集し、周囲の固体電解質と接触できないLCOが存在し、イオン伝導パスが形成され難いと考えられる。
(電池化と活物質層)
正極が備える正極活物質層の正極活物質粒子LCOと正極内電解質粒子LBO配列パターンをライン形状のパターンCとした(図19(a))。パターンCのラインアンドスペースは、LCO/LBOとして10μm/4.3μm(≒7:3)とした。正極活物質層を隣接する層間でライン方向が平行とならないように、すなわち、層間のライン同士が交差するように3層積層した正極を備える二次電池を試作した。かかる二次電池の25℃における0.4C相当の定電流充放電測定を行った。得られた定電流充放電測定の結果を、図19(b)に示す。隣接する正極活物質層の層間において、ラインパターンを交差することにより、正極の層厚方向における、活物質イオン、電子の輸送パスが確立され、低いインピーダンスの正極を得ることができる。
100 二次電池
30 正極
20 正極活物質層
22 活物質粒子
S300 配置工程
S340 第1の加熱工程
S360 第2の加熱工程

Claims (30)

  1. コバルト酸リチウムを含む活物質粒子を備える二次電池に適用される正極であって、前記活物質粒子は2θ法によるX線回折角が19.2度以上19.7度以下において回折角ピークを呈することを特徴とする正極。
  2. 前記X線回折角が19.2度以上19.7度以下において、複数の回折角ピークが認められる請求項1に記載の正極。
  3. 前記X線回折角が18.9度以上19.1度以下において、さらに、回折角ピークが認められる請求項1または2に記載の正極。
  4. コバルト酸リチウムを含む活物質粒子を備える二次電池に適用される正極であって、前記活物質粒子の結晶子のサイズが10nm以上50nm以下の領域を有することを特徴とする正極。
  5. 前記活物質粒子は、粒子部と、前記粒子部から複数方向に突出する突出部と、を有する請求項1から4のいずれか1項に記載の正極。
  6. 前記突出部は、結晶子のサイズが1nm以上20nm以下の領域を有することを特徴とする請求項5に記載の正極。
  7. 前記粒子部は、断面において、不連続なテクスチャを有していることを特徴とする請求項5または6に記載の活物質。
  8. 前記粒子部は、コア部とシェル部と、を有する請求項5から7のいずれか1項に記載の正極。
  9. 前記活物質粒子が並べられた面を有する請求項1から8のいずれか1項に記載の正極。
  10. 請求項9に記載の正極と、
    前記面に接するように配置され前記正極とリチウムイオンの授受を行う電解質層と、
    前記電解質層の前記面と接する側の反対面と接する負極と、を含む二次電池。
  11. コバルト酸リチウムを含む活物質粒子を所定の面に沿って並べる配置工程と、
    前記活物質粒子に含まれるコバルトの少なくとも一部を還元させる第1の加熱工程と、
    前記還元されたコバルトを酸化させる第2の加熱工程と、を有する正極の製造方法。
  12. 前記配置工程は、熱分解により還元性のガスを放出する樹脂を含み前記所定の面を有する基材の前記所定の面に沿って並べる工程を含む請求項11に記載の正極の製造方法。
  13. 前記活物質粒子と前記基材とを、加熱炉の内部に配置する加熱準備工程を有する請求項12に記載の正極の製造方法。
  14. 前記第1の加熱工程は、前記樹脂の熱分解により放出された前記還元性のガスを含む還元性雰囲気の下で前記活物質粒子を加熱する工程を含む請求項12または13に記載の正極の製造方法。
  15. 前記第1の加熱工程は、前記樹脂に由来する前記還元性のガスの放出が終了するまで行われる請求項12から14のいずれか1項に記載の正極の製造方法。
  16. 前記第1の加熱工程は、酸素を含有する雰囲気下で開始されること請求項11から15のいずれか1項に記載の正極の製造方法。
  17. 前記第1の加熱工程は、前記炉の内部の雰囲気が、前記樹脂に由来する前記還元性のガスが減少し、酸素を含む酸化性のガス分圧が前記還元性のガス分圧を上回る酸化性雰囲気となるまで行われる請求項13に記載の正極の製造方法。
  18. 前記第1の加熱工程における前記樹脂に由来する前記還元性のガスの減少は、前記還元性のガスの酸化に伴う消費により生ずる請求項17に記載の正極の製造方法。
  19. 前記第2の加熱工程は、前記酸化性雰囲気の下で前記活物質粒子を加熱する請求項17または18に記載の正極の製造方法。
  20. 前記第1の加熱工程は、前記コバルトの酸化数をIII価からII価に還元する工程を含む請求項11から19のいずれか1項に記載の正極の製造方法。
  21. 前記第2の加熱工程は、前記コバルトの酸化数をII価からIII価に酸化する工程を含む請求項11から20のいずれか1項に記載の正極の製造方法
  22. 前記第2の加熱工程の後に、前記活物質粒子の温度を降下させる降温工程をさらに有する請求項11から21のいずれか1項に記載の正極の製造方法。
  23. 前記第1の加熱工程における加熱温度は、300°C以上690°C以下である請求項11から22のいずれか1項に記載の正極の製造方法。
  24. 前記第2の加熱工程における加熱温度は、400°C以上690°C以下であるである請求項11から23のいずれか1項に記載の正極の製造方法。
  25. 前記第1の加熱工程において、300℃以上500℃以下の加熱時間が20分以上かけて行なわれることを特徴とする請求項11から24のいずれか1項に記載の正極の製造方法。
  26. 前記第2の加熱工程が10分以上かけて行なわれることを特徴とする請求項11から25のいずれか1項に記載の正極の製造方法。
  27. 前記第1の加熱工程と前記第2の加熱工程は、前記活物質粒子の2θ法によるX線回折角が、高角側にシフトするように行われる請求項11から26のいずれか1項に記載の正極の製造方法。
  28. 前記第1の加熱工程と前記第2の加熱工程は、前記活物質粒子の結晶子のサイズが減少するように行われる請求項11から27のいずれか1項に記載の正極の製造方法。
  29. 前記配置工程において、前記活物質粒子と接する様に電解質が前記所定の面の上に配置される請求項11から28のいずれか1項に記載の正極の製造方法。
  30. 請求項11から29のいずれか1項に記載の方法により製造された正極と、
    前記正極との間でリチウムイオンの授受がなされるように電解質層を配置する工程と、
    前記電解質層が配置された側の反対側において前記正極と電子の授受がなされるように集電体層を配置する工程と、を含む二次電池の製造方法。
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