JP2022086968A - エレクトロクロミック素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた繰返し耐久性及び良好な色彩を有するエレクトロクロミック素子の提供。【解決手段】第1の電極と、前記第1の電極に対し間隔をおいて対向する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる電解質層と、を有するエレクトロクロミック素子であって、前記第1の電極上に、下記一般式(1)で示されるエレクトロクロミック化合物を含む層を有するエレクトロクロミック素子である。[一般式1]TIFF2022086968000163.tif3945【選択図】なし

Description

本発明は、エレクトロクロミック素子に関する。
エレクトロクロミズムを引き起こすエレクトロクロミック材料(エレクトロクロミック化合物)の発色又は消色(以下、「発消色」と称することがある)を用いたエレクトロクロミック素子は、電子ペーパー、遮光手段等の表示装置の有力な候補として、研究開発が行われている。
前記エレクトロクロミック素子は、一対の電極間に電解質層とエレクトロクロミック層と含んでいる。エレクトロクロミック素子では、順電圧又は逆電圧を印加することにより、エレクトロクロミック化合物の発消色が行われる。
前記エレクトロクロミック素子は、原理的に無色の状態と、カラー発色状態とを可逆的に変化させることができる。前記エレクトロクロミック素子は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)等の発色層を積層することによって様々な色を発色できるため、多色カラー表示が可能な素子として期待されている。そこで、エレクトロクロミック素子を透明な表示デバイス及び多色カラー表示が可能なデバイスに用いるためには、エレクトロクロミック化合物は、消色状態において無色透明の状態を有する材料により構成されていることが必要である。
CMYの三原色に関するエレクトロクロミック化合物としては、赤色発色及びマゼンタ発色材料が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし、これらの提案のエレクトロクロミック化合物及びそれを用いたエレクトロクロミック素子では、繰り返し動作などの安定性については言及されているものの、その演色性は十分とは言い難いものであった。
また、マゼンタ、シアン又は緑色の再現性が良好な下記一般式(1)で表される化合物、又は前記一般式(1)で表される化合物の硬化物を含むエレクトロクロミック素子が提案されている(例えば、特許文献3及び4参照)。
Figure 2022086968000001
(一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基であり、Aは、一般式(1-1)~(1-4)
Figure 2022086968000002
Figure 2022086968000003
Figure 2022086968000004
Figure 2022086968000005
(一般式(1-1)~(1-4)中、R14、R16、R18又はR20は、窒素原子と結合する単結合であり、R15、R17、R19又はR21は、窒素原子と結合する単結合であり、R30、R32、R34又はR36は、窒素原子と結合する単結合であり、R31、R33、R35又はR37は、窒素原子と結合する単結合であり、R42、R43、R44又はR45は、窒素原子と結合する単結合であり、窒素原子と結合する単結合以外のR~R52は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基であり、X、Xは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は一般式(1-5)
Figure 2022086968000006
(一般式(1-5)中、R53、R54は、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基であり、R53とR54が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)で表される基であり、X、Xは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子であり、Xは、酸素原子又は硫黄原子である。)
本発明は、優れた繰返し耐久性及び良好な色彩を有するエレクトロクロミック素子を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明のエレクトロクロミック素子は、第1の電極と、前記第1の電極に対し間隔をおいて対向する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる電解質層と、を有するエレクトロクロミック素子であって、前記第1の電極上に、下記一般式(1)で示されるエレクトロクロミック化合物を含む層を有する。
[一般式1]
Figure 2022086968000007
[一般式2]
Figure 2022086968000008
ただし、前記一般式(1)中、RからR22は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、前記一般式(2)で示される基、及びアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基のいずれかであり、
、R、及びR15の少なくとも1つは上記一般式(2)で示される基であり、前記一般式(2)で示される基が複数存在する場合は、R16からR22はそれぞれ同じであってもよく異なってもよい。
からR14のうち、少なくとも1つは隣り合うベンゼン環上の置換基と互いに結合あるいは炭素原子、珪素原子、酸素原子、硫黄原子、及びセレン原子のいずれかを挿入して環状構造を形成してもよい。
本発明によると、優れた繰返し耐久性及び良好な色彩を有するエレクトロクロミック素子を提供することができる。
図1は、第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子の構成の一例を示す図である。 図2は、第2の実施形態に係るエレクトロクロミック素子の構成の一例を示す概略図である。 図3は、実施例6のエレクトロクロミック化合物の中性状態の紫外可視吸収スペクトルを示す図である。 図4は、実施例6のエレクトロクロミック化合物の中性状態の蛍光スペクトルを示す図である。 図5は、実施例6のエレクトロクロミック化合物のサイクリックボルタンメトリー測定の結果を示す図である。 図6は、実施例2-1のエレクトロクロミック素子の発色時における紫外可視吸収スペクトルを示す図である。 図7は、実施例2-1、2-2、及び2-3のエレクトロクロミック素子の発色時における紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
(エレクトロクロミック素子)
本発明のエレクトロクロミック素子は、第1の電極と、前記第1の電極に対し間隔をおいて対向する第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる電解質層と、を有するエレクトロクロミック素子であって、前記第1の電極上に、下記一般式(1)で示されるエレクトロクロミック化合物を含む層を有する。
[一般式1]
Figure 2022086968000009
[一般式2]
Figure 2022086968000010
ただし、前記一般式(1)中、RからR22は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、前記一般式(2)で示される基、及びアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基のいずれかであり、
、R、及びR15の少なくとも1つは上記一般式(2)で示される基であり、前記一般式(2)で示される基が複数存在する場合は、R16からR22はそれぞれ同じであってもよく異なってもよい。
からR14のうち、少なくとも1つは隣り合うベンゼン環上の置換基と互いに結合あるいは炭素原子、珪素原子、酸素原子、硫黄原子、及びセレン原子のいずれかを挿入して環状構造を形成してもよい。
本発明者らは、重合性官能基を含んでいてもよいジアリールアミノスチルベン骨格の特定の構造について着目し、エレクロトロクロミック現象により良好な赤及びマゼンタに発色する材料について鋭意検討を重ねた結果、上記一般式(1)で表されるエレクトロクロミック化合物を見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明者らは、前記ジアリールアミノスチルベン骨格は、トリフェニルアミンにビニルベンゼンが結合した共役系を有するが、これらが概ね赤からマゼンタを呈することを見出した。また、スチルベンのα位に更にフェニル基を置換した構造も同様の傾向が見られた。更には、中心のトリフェニルアミン骨格のフェニル基間を直接つなぐあるいは何らかの原子を挿入することで好適に赤からマゼンタ領域の色彩を制御できることも見出した。
本発明において、赤及びマゼンタとは、例えば、CIE Lab座標系又はCIE LCh座標系の色相hを基準に取るとJapan colorを基に、赤は32°±30°、好ましくは32°±20°より好ましくは32°±10°を意味する。マゼンタは355°±30°付近、好ましくは355°±20°付近、より好ましくは355°±10°を意味する。
従来技術である特許文献3及び4(特開2020-140053号公報及び特開2020-138925号公報)には、上記一般式(1-1)においてセレン(Se)を含む環状構造を有している点、及び本発明におけるR、R、及びR15の少なくとも1つは上記一般式(2)で示される基を有していない点で構造が明確に相違する。また、従来技術では、Japan colorのマゼンタの再現性が充分ではなく、良好な赤及びマゼンタ発色が得られないという課題がある。
(エレクトロクロミック化合物)
本発明のエレクトロクロミック化合物は、上記一般式(1)で表され、ジアリールアミンに対して、スチリル基が置換されたジアリールアミノスチルベン骨格を有する。
前記エレクトロクロミック化合物は、ジアリールアミノスチルベン骨格を構成する窒素原子が、2つのフェニル基により置換されたジフェニルアミノスチルベン骨格を有することが好ましく、ラジカル重合性化合物であることがより好ましい。
上記一般式(1)において、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
上記一般式(1)において、前記アルキル基としては、例えば、原料の入手性の点から、直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数1~30のアルキル基が好ましい。環状の炭素数1~30のアルキル基の中でも、環状の炭素数1~18のアルキル基がより好ましい。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2-ブチルオクチル基、オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などが挙げられる。
上記一般式(1)において、前記アルケニル基としては、例えば、原料の入手性の点から、直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数1~30のアルケニル基が好ましい。環状の炭素数1~30のアルケニル基の中でも、環状の炭素数1~18のアルケニル基がより好ましい。
前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、メチルビニル基、cis及びtransのスチリル基、アルファフェニルスチリル基(ジベンゾエテニル基)などに加えて、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2-ブチルオクチル基、オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などから水素を2つ取りさり、二重結合としたものが挙げられる。例えば、下記構造式に示す置換基が挙げられる。
Figure 2022086968000011
二重結合部位の熱的及び化学的安定性を考慮すると、下記構造式で示すアルケニル基が好ましい。
Figure 2022086968000012
上記一般式(1)において、前記アルキニル基としては、例えば、原料の入手性の点から、直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数1~30のアルキニル基が好ましい。環状の炭素数1~30のアルキニル基の中でも、環状の炭素数1~18のアルキニル基がより好ましい。
前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、メチルビニル基、スチリル基、アルファフェニルスチリル基(ジベンゾエテニル基)などに加えて、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2-ブチルオクチル基、オクタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などから水素を4つ取りさり、三重結合としたものが挙げられる。例えば、エテニル基、フェニルエテニル基などが挙げられる。
上記一般式(1)において、前記アルコキシ基は、指定された数の炭素原子を有する、-O(アルキル)基を示す。前記アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~6のアルコキシ基が挙げられる。
前記炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、1-メチルプロポキシ基、2-メチルプロポキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、1-メチルブトキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、1-エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、4-メチルペンチルオキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、3,3-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、1-エチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、1-エチル-2-メチルプロポキシ基などが挙げられる。
上記一般式(1)において、前記アリール基としては、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、p-クロロフェニル基、p-フルオロフェニル基、p-トリフルオロフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、ベンゾピレニル基、クリセニル基、トリフェニレン基などが挙げられる。
上記一般式(1)において、前記ヘテロアリール基としては、例えば、炭素数2~12のヘテロアリールが好ましい。
炭素数2以上のヘテロアリール基の構成元素としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、珪素原子又はセレン原子が挙げられる。これらの中でも、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選択されるいずれか1種を含んでいることが好ましい。
炭素数2以上のヘテロアリール基としては、例えば、単環系ヘテロアリール基又は多環系ヘテロアリール基が挙げられる。
単環系ヘテロアリール基としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、テトラジン、チオフェン環、フラン環、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール、オキサジアゾール環、トリアジン環、テトラゾール環又はトリアゾール環が挙げられる。
多環系ヘテロアリール基としては、例えば、キノリン基、イソキノリン基、キナリゾン基、フタラジン基、インドール基、ベンゾチオフェン基、ベンゾフラン基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチオジアゾール基、アクリジン基、アクリダン基(9,10-ジヒドロアクリジン)、フェノキサジン基、フェノチアジン基、カルバゾール基、9-フェニルカルバゾール基、9-エチルカルバゾール基、ベンゾジチオフェン基、ベンゾジフラン基、ジベンゾフラン基又はジベンゾチオフェン基が挙げられる。
多環系ヘテロアリール基は、アリール基及びヘテロアリール基が共有結合を介して結合されている基、アリール基及びヘテロアリール基が互いに縮環している基でもよい。アリール基及びヘテロアリール基が共有結合を介して結合されている基か、アリール基及びヘテロアリール基が互いに縮環している基としては、例えば、ビフェニル基、ターフェニル基、1-フェニルナフタレン基又は2-フェニルナフタレン基が挙げられる。
上記一般式(1)において、前記アリールオキシ基及びヘテロアリールオキシ基は、指定された数の炭素原子を有する、-O(アリール又はヘテロアリール)基を示す。
前記アミノ基としては、無置換のアミノ基の他に窒素原子上をアルキル基やアリール基、ヘテロアリール基で置換したものが挙げられ、例えば、ジエチルアミノ基、エチルフェニルアミノ基、4-ジエチルアミノフェニル基、トリフェニルアミン基、ジフェニルアミノ基、環状アミノ基として、ピペラジン基、ピペリジン基、モルホリル基などが挙げられる。
前記単環、多環系ヘテロアリール、及びアミノ基は、いずれの場合においても、酸化発色エレクトロクロミック材料としては、主骨格以外に酸化されやすいサイトが増え、予期せぬ色調の変化を伴うため、電子豊富な含窒素環でないことが好ましい。また、一方で、主骨格が酸化されにくくなるほどのアクセプター性の強い電子欠乏性の含窒素環でないことも同様に好ましい。前者としては、例えば、カルバゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリダン、ジエチルアミノ基、エチルフェニルアミノ基、4-ジエチルアミノフェニル基、トリフェニルアミン基、ジフェニルアミノ基、環状アミノ基として、ピペラジン基、ピペリジン基、モルホリル基などが挙げられる。後者としては、例えば、ピリジン、ピリミジン、チアゾール、オキサゾール、ベンゾイミダゾール、キノリン、アクリジンなどが挙げられる。
上記一般式(1)における前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリール基又はアミノ基は、置換基により置換されていてもよい。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
上記一般式(1)において、前記重合性官能基としては、炭素-炭素2重結合を有し、重合可能な基であればいずれであってもよい。前記重合性官能基としては、例えば、下記に示す、1-置換エチレン官能基、1,1-置換エチレン官能基などが挙げられる。
(1)1-置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(i)で表される官能基が挙げられる。
Figure 2022086968000013
上記一般式(i)において、Xは、アリーレン基、アルケニレン基、-CO-基、-COO-基、-CON(R100)-基(ただし、R100は、水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基を表す。)、及びS-基のいずれかを表す。前記アリーレン基又はアルケニレン基は、置換基を有してもよい。
前記アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。なお、フェニレン基は、置換基を有してもよい。
前記アルケニレン基としては、例えば、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基などが挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
上記一般式(i)で表される重合性官能基としては、例えば、ビニル基、スチリル基、2-メチル-1,3-ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基などが挙げられる。
(2)1,1-置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(ii)で表される官能基が挙げられる。
Figure 2022086968000014
ただし、前記一般式(ii)中、Yは、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基又は-COOR101基[ただし、R101は、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又はCONR102103(ただし、R102又はR103は、水素原子、アルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、互いに同一又は異なっていてもよい。)]を表す。これらの基は、いずれも置換基を有していてもよい。
また、Xは、上記一般式(i)のXと同一の置換基又はアルキレン基を表す。ただし、Y及びXの少なくともいずれか一方が、オキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、又は芳香族環である。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基又はエトキシ基に加えて、エチレングリコール単位又はプロピレングリコールが縮合した、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
上記一般式(ii)で表される重合性官能基としては、例えば、α-塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α-シアノエチレン基、α-シアノアクリロイルオキシ基、α-シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基などが挙げられる。
上記一般式(i)又は上記一般式(ii)中のX、X、及びYについての置換基に更に置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基又はエチル基等のアルキル基;メトキシ基又はエトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;フェニル基又はナフチル基等のアリール基;ベンジル基又はフェネチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
上記一般式(i)又は上記一般式(ii)で表される官能基の中でも、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、及びメタクリロイルオキシ基のいずれかを含むものが好ましく、合成の観点から、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を含むものがより好ましく、重合速度及び重合完了率の観点から、アクリロイルオキシ基を含むものが特に好ましい。
上記一般式(1)において、前記重合性官能基としては、酸化還元に対する耐性が高い点から、例えば、炭素数1以上のアルキル基又はアルコキシ基、炭素数6以上のアリール基又はフェノキシ基;構成炭素数7以上の、アルキル基又はアルコキシ基で置換されたアリール基等の末端に置換されていることが好ましく、アルキル基又はアルコキシ基の末端に置換されていることがより好ましく、ベンジル位の水素が存在しないアルコキシ基が特に好ましい。
前記アルキル基及びアルコキシ基の炭素数は3以上であることが好ましい。
前記RからR22の少なくとも1つが、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基であることが好ましい。
前記重合性官能基は、本発明のエレクトロクロミック化合物の主骨格に少なくとも炭素数2以上のアルキル基を介して結合することが好ましい。
前記R、R、及びR15が、いずれもハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、前記一般式(2)で示される基、及びアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基のいずれかであることが好ましい。
これは、トリフェニルアミン又はベンジジンの窒素原子に置換したベンゼン環のパラ位について水素原子のままでは、酸化還元時に多量化を起こし、電気的、光学的な特性が変化するために、アルキル基又はアルコキシ基の置換を行ったほうが、より電気的、光学的な安定性が得られると言われているためである。
前記R、R、及びR15における前記一般式(2)で示される基が2つ以下であることが好ましい。前記R、R、及びR15が水素原子ではないことが好ましい。前記一般式(2)で示される基がパラ位に置換されることで共役系が拡張され、化合物の吸収波長が長波長化し、可視域まで伸びることでエレクトロミック化合物として用いる場合、中性状態の着色が起こるためである。このため、2つまでとし、より好ましくは1つまでである。
上記一般式(1)において、トリフェニルアミンの窒素原子に結合したベンゼン環の窒素原子から見たオルト位であるR~R14のうち、2箇所で結合して環状構造を形成していることが好ましい。即ち、下記一般式(3)で示される構造であり、X及びXはそれぞれ独立して、直接結合(即ち、カルバゾール骨格を形成している)している形態、置換又は無置換の炭素原子、置換又は無置換の珪素原子、酸素原子、硫黄原子、及びセレン原子のいずれかである。
炭素原子及び珪素原子の場合は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などで置換されていてもよい。アルキル基、アルコキシ基、アリール基は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
好ましくは、直接結合している形態、置換された炭素原子、置換された珪素原子のいずれかである。酸素原子、硫黄原子の場合、ドナー性が高いため、化合物の中性状態の吸収端が可視域にきて着色が見られることが多いためである。特に2以上の複数の酸素、硫黄原子で架橋する場合は、共役系の発達による着色に特に留意する必要がある。また、セレン原子については酸素、硫黄原子と比べてもその毒性、合成の難易度から用途によっては好ましくない場合も存在するため、除外される場合もありえる。
[一般式(3)]
Figure 2022086968000015
ここで、上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、以下に示す例示化合物が挙げられる。本発明に係るエレクトロクロミック化合物は、これらに限定されるものではない。なお、以下に示す例示化合物において、「MeO-」はメトキシ基、「t-Bu」はターシャリーブチル基を表す。
<例示化合物1>
Figure 2022086968000016
<例示化合物2>
Figure 2022086968000017
<例示化合物3>
Figure 2022086968000018
<例示化合物4>
Figure 2022086968000019
<例示化合物5>
Figure 2022086968000020
<例示化合物6>
Figure 2022086968000021
<例示化合物7>
Figure 2022086968000022
<例示化合物8>
Figure 2022086968000023
<例示化合物9>
Figure 2022086968000024
<例示化合物10>
Figure 2022086968000025
<例示化合物11>
Figure 2022086968000026
<例示化合物M1>
Figure 2022086968000027
<例示化合物M2>
Figure 2022086968000028
<例示化合物M3>
Figure 2022086968000029
<例示化合物M4>
Figure 2022086968000030
<例示化合物M5>
Figure 2022086968000031
<例示化合物M6>
Figure 2022086968000032
<例示化合物M7>
Figure 2022086968000033
<例示化合物M8>
Figure 2022086968000034
<例示化合物M9>
Figure 2022086968000035
<例示化合物M10>
Figure 2022086968000036
<例示化合物M11>
Figure 2022086968000037
<例示化合物M12>
Figure 2022086968000038
<例示化合物M13>
Figure 2022086968000039
<例示化合物M14>
Figure 2022086968000040
<例示化合物M15>
Figure 2022086968000041
<例示化合物M16>
Figure 2022086968000042
<例示化合物M17>
Figure 2022086968000043
<例示化合物M18>
Figure 2022086968000044
<例示化合物M19>
Figure 2022086968000045
<例示化合物M20>
Figure 2022086968000046
<例示化合物M21>
Figure 2022086968000047
<例示化合物M22>
Figure 2022086968000048
<例示化合物M23>
Figure 2022086968000049
<例示化合物M24>
Figure 2022086968000050
<例示化合物M25>
Figure 2022086968000051
<例示化合物M26>
Figure 2022086968000052
<例示化合物M27>
Figure 2022086968000053
<例示化合物M28>
Figure 2022086968000054
<例示化合物M29>
Figure 2022086968000055
<例示化合物M30>
Figure 2022086968000056
<例示化合物M31>
Figure 2022086968000057
<例示化合物M32>
Figure 2022086968000058
<例示化合物M33>
Figure 2022086968000059
<例示化合物M34>
Figure 2022086968000060
<例示化合物M35>
Figure 2022086968000061
<例示化合物M36>
Figure 2022086968000062
<例示化合物M37>
Figure 2022086968000063
<例示化合物M38>
Figure 2022086968000064
<例示化合物M39>
Figure 2022086968000065
<例示化合物M40>
Figure 2022086968000066
<例示化合物M41>
Figure 2022086968000067
<例示化合物M42>
Figure 2022086968000068
<例示化合物M43>
Figure 2022086968000069
<例示化合物M44>
Figure 2022086968000070
<例示化合物M45>
Figure 2022086968000071
<例示化合物M46>
Figure 2022086968000072
<例示化合物M47>
Figure 2022086968000073
<例示化合物M48>
Figure 2022086968000074
<例示化合物M49>
Figure 2022086968000075
<例示化合物M50>
Figure 2022086968000076
<例示化合物M51>
Figure 2022086968000077
<例示化合物M52>
Figure 2022086968000078
<例示化合物M53>
Figure 2022086968000079
<例示化合物M54>
Figure 2022086968000080
<例示化合物M55>
Figure 2022086968000081
<例示化合物M56>
Figure 2022086968000082
<例示化合物M57>
Figure 2022086968000083
<例示化合物M58>
Figure 2022086968000084
<例示化合物M59>
Figure 2022086968000085
<例示化合物M60>
Figure 2022086968000086
<例示化合物M61>
Figure 2022086968000087
<例示化合物M62>
Figure 2022086968000088
<例示化合物M63>
Figure 2022086968000089
<例示化合物M64>
Figure 2022086968000090
<例示化合物M65>
Figure 2022086968000091
<例示化合物M66>
Figure 2022086968000092
<例示化合物M67>
Figure 2022086968000093
<例示化合物M68>
Figure 2022086968000094
<例示化合物M69>
Figure 2022086968000095
<例示化合物M70>
Figure 2022086968000096
<例示化合物M71>
Figure 2022086968000097
<例示化合物M72>
Figure 2022086968000098
<例示化合物M73>
Figure 2022086968000099
<例示化合物M74>
Figure 2022086968000100
<例示化合物M75>
Figure 2022086968000101
<例示化合物M76>
Figure 2022086968000102
<例示化合物M77>
Figure 2022086968000103
<例示化合物M78>
Figure 2022086968000104
<例示化合物M79>
Figure 2022086968000105
<例示化合物M80>
Figure 2022086968000106
<例示化合物M81>
Figure 2022086968000107
<例示化合物M82>
Figure 2022086968000108
<例示化合物M83>
Figure 2022086968000109
<例示化合物M84>
Figure 2022086968000110
<例示化合物M85>
Figure 2022086968000111
<例示化合物M86>
Figure 2022086968000112
<例示化合物M87>
Figure 2022086968000113
<エレクトロクロミック組成物>
本発明に用いられるエレクトロクロミック組成物は、本発明のエレクトロクロミック化合物を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
本発明のエレクトロクロミック化合物は、上述したようにジアリールアミノスチルベン骨格を有するラジカル重合性化合物である。そのため、前記エレクトロクロミック化合物は、後述する本発明のエレクトロクロミック素子の第1の電極の表面において酸化還元反応を有するエレクトロクロミック機能を付与するために重要である。
前記エレクトロクロミック組成物は、本発明のエレクトロクロミック化合物以外に他のラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。
<他のラジカル重合性化合物>
他のラジカル重合性化合物は、本発明のエレクトロクロミック化合物とは異なり、少なくとも1つのラジカル重合性官能基を有する化合物であり、トリフェニルアミン骨格又はベンジジン骨格を有する化合物を複数用いることもできる。
他のラジカル重合性化合物としては、例えば、1官能のラジカル重合性化合物、2官能のラジカル重合性化合物、3官能以上のラジカル重合性化合物、機能性モノマー又はラジカル重合性オリゴマーなどが挙げられる。これらの中でも、2官能以上のラジカル重合性化合物が特に好ましい。他のラジカル重合性化合物におけるラジカル重合性官能基としては、本発明のエレクトロクロミック化合物におけるラジカル重合性官能基と同様であり、これらの中でも、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
1官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート又はスチレンモノマーが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
2官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート又はネオペンチルグリコールジアクリレートが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート又は2,2,5,5-テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、上記において、EO変性はエチレンオキシ変性を指し、PO変性はプロピレンオキシ変性を指す。
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルメタクリレート又は2-パーフルオロイソノニルエチルアクリレート等のフッ素原子を置換したもの;特公平5-60503号公報、特公平6-45770号公報に記載のシロキサン繰り返し単位が20~70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル又はジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチル等のポリシロキサン基を有するビニルモノマー;アクリレート又はメタクリレートが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー又はポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
前記エレクトロクロミック化合物及び他のラジカル重合性化合物は重合反応により共重合することができる。少なくともいずれか一方がラジカル重合性官能基を2つ以上有していることが、重合物又は架橋物を形成する点から好ましい。重合物又は架橋物は、その機械的強度に加えて、各種有機溶媒や電解質等に溶解することがなく、多層構造を形成する上で層間のマイグレーションが少ないという点で好ましい。
前記エレクトロクロミック化合物の含有量は、エレクトロクロミック組成物の全量に対して、10質量%以上100質量%以下が好ましく、30質量%以上90質量%以下がより好ましい。前記含有量が10質量%以上であると、後述するエレクトロクロミック素子における第1のエレクトロクロミック層のエレクトロクロミック機能が充分に発現でき、加電圧による繰り返しの使用で耐久性が良好であり、発色感度が良好である。含有量が100質量%以下であれば、第1のエレクトロクロミック層のエレクトロクロミック機能は発現でき、厚みに対する発色感度も十分高い。なお、含有量が100質量%であると、エレクトロクロミック化合物と電荷の授受に必要であるイオン性液体との相溶性が低くなる場合があるため、加電圧による繰り返しの使用で耐久性の低下等による電気的特性が劣化する可能性がある。エレクトロクロミック化合物が使用されるプロセスによって要求される電気的特性が異なるが、発色感度と繰返し耐久性の両特性のバランスを考慮すると、含有量は、30質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
前記エレクトロクロミック組成物は、フィラー及び重合開始剤を含有することが好ましい。
-フィラー-
フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。
前記無機フィラーとしては、例えば、銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属粉末;酸化珪素(シリカ)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)又は錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物;フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性、安定性及び表面処理の容易性等の点から、金属酸化物が好ましく、シリカ、アルミナ及びアンチモンをドープした酸化錫(ATO)が特に好ましい。
前記有機フィラーとしては、例えば、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリオレフィン、シリコーン若しくはポリテトラフルオロエチレン等の樹脂、脂肪酸等の低分子化合物又はフタロシアニン等の顔料が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性及び不溶性の点から、樹脂が好ましい。フィラーの平均一次粒子径は、1μm以下が好ましく、10nm~1μmがより好ましい。フィラーの平均一次粒子径が、1μm以下であると、粗大粒子が存在せず、得られる膜の表面状態が良好であり、表面平滑性に優れている。
前記フィラーの含有量は、ラジカル重合性化合物の全量100質量部に対して、固形分濃度で、0.3質量部以上1.5質量部以下が好ましく、0.6質量部以上0.9質量部以下がより好ましい。前記含有量が、0.3質量部以上であると、フィラー添加効果が充分に得られ、製膜性が良好であり、前記含有量が1.5質量部以下であると、トリアリールアミン化合物の割合が適切であり、作製したエレクトロクロミック素子の良好な電気化学特性が得られる。
-重合開始剤-
前記エレクトロクロミック組成物は、本発明のエレクトロクロミック化合物と他のラジカル重合性化合物との架橋反応を効率よく進行させるため、必要に応じて重合開始剤を含有することが好ましい。重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤等が挙げられるが、重合効率の観点から光重合開始剤が好ましい。
前記熱重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルベルオキサイド、t-ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’-アゾビス-4-シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記光重合開始剤は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-2-モルフォリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、2-ベンゾイルナフタレン、4-ベンゾイルビフェニル、4-ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4-ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
その他の光重合開始剤としては、例えば、エチルアントラキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10-フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物又はイミダゾール系化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、光重合促進効果を有するものを単独又は光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2-ジメチルアミノ)エチル又は4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
前記重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性化合物の全量100質量部に対して、0.5質量部以上40質量部以下が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましい。
<その他の成分>
前記エレクトロクロミック組成物は、必要に応じてその他の成分を含有してもよい。前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶媒、可塑剤、レベリング剤、増感剤、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤などが挙げられる。
前記エレクトロクロミック組成物は、架橋剤を含み、本発明のエレクトロクロミック化合物を重合した共重合物(例えば、線状(linear)構造の線状共重合体等)でもよい。また、前記エレクトロクロミック組成物は、本発明のエレクトロクロミック化合物を架橋して、分岐構造又は三次元の網状構造を有する架橋物でもよい。架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、単官能(メタ)アクリレート、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能(メタ)アクリレート、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、イソシアネート基を複数有するポリイソシアネートが特に好ましい。
前記エレクトロクロミック組成物は、本発明のエレクトロクロミック化合物を含んでいるため、エレクトロクロミック素子の要求物性に適応することができる。エレクトロクロミック素子の要求物性としては、上記の通り、例えば、前記エレクトロクロミック組成物が中性状態で透明であること、溶解性を有すること、エレクトロクロミック層が積層可能であること等である。
(エレクトロクロミック素子)
本発明のエレクトロクロミック素子は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に設けられる電解質層とを有してなり、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
前記エレクトロクロミック素子は、第1の電極上に、上述の本発明で用いられるエレクトロクロミック組成物を含むエレクトロクロミック層を有するか、又は電解質層に、上述の本発明で用いられるエレクトロクロミック組成物を含んでいる。
前記エレクトロクロミック組成物は、優れた光耐久性及び繰返し耐久性を有し、エレクトロクロミック素子の要求物性を満たすことができる。そこで、前記エレクトロクロミック素子は、上述の前記エレクトロクロミック組成物をエレクトロクロミック素子の最適な構成条件、構成位置で適用する。これにより、本発明のエレクトロクロミック素子は、従来のエレクトロクロミック素子技術をよりも優れた効果、特に、優れた繰返し耐久性及び光耐久性を有することができる。
以下、本実施形態では、本発明のエレクトロクロミック素子が、上述の本発明に用いられるエレクトロクロミック組成物を含むエレクトロクロミック層を第1の電極上に有する場合を、第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子と称する。本発明のエレクトロクロミック素子が、上述の本発明に用いられるエレクトロクロミック組成物を電解質層に含んでいる場合を、第2の実施形態に係るエレクトロクロミック素子と称する。以下、それぞれの実施形態に係るエレクトロクロミック素子について説明する。
[第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子]
第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子について説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。また、層構造等の説明の便宜上、下記に示す例においては第1の支持体を下に配置した図と共に説明がなされるが、実施形態は、必ずしもこの配置で、製造又は使用等がなされるわけではない。また、以下の説明において、第1の支持体の厚み方向の一方を上又は上方といい、支持体の厚み方向の他方を下又は下方という場合がある。
図1は、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子の構成の一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aは、第1の支持体11と、表示電極(第1の電極)12と、第1のエレクトロクロミック層13と、電解質層14Aと、第2のエレクトロクロミック層15と、対向電極(第2の電極)16と、第2の支持体17とを有する。これらの部材は、第1の支持体11側からこの順に積層して構成される。
第1の支持体11はその上面に表示電極12を設け、第1のエレクトロクロミック層13は表示電極12上に設けられている。一方、第2の支持体17は、その下面に対向電極16を設け、第2のエレクトロクロミック層15は、対向電極16の下面に設けられている。表示電極12と対向電極16とは、所定の間隔を有するように対向して設けられており、電解質層14Aは、両電極(表示電極12と対向電極16)間に設けられている。
本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aでは、第1のエレクトロクロミック層13が表示電極12の表面で酸化還元反応により発消色し、第2のエレクトロクロミック層15が対向電極16の表面で酸化還元反応により発消色する。
以下、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aを構成するそれぞれの部材について説明する。
<第1のエレクトロクロミック層>
第1のエレクトロクロミック層は、上述の本発明に用いられるエレクトロクロミック組成物を含んでいる。なお、本実施形態においては、前記エレクトロクロミック組成物は、後述する第2のエレクトロクロミック組成物と区別するため、第1のエレクトロクロミック組成物と称する。
本実施形態では、前記第1のエレクトロクロミック組成物は、上述の通り、本発明のエレクトロクロミック化合物と、他のラジカル重合性化合物とを含むことが、第1のエレクトロクロミック組成物の重合体の溶解性及び耐久性の点から好ましい。
前記第1のエレクトロクロミック層は、第1の電極上に一層積層されているが、これに限定されず、複数積層されていてもよい。
前記第1のエレクトロクロミック層は第1の電極上の全面に積層されているが、これに限定されず、第1の電極上の一部に積層されていてもよい。
前記第1のエレクトロクロミック層は、後述するエレクトロクロミック素子の製造方法により形成することができる。前記第1のエレクトロクロミック層の平均厚みは、0.1μm以上30μm以下が好ましく、0.4μm以上10μm以下がより好ましい。
<第1の電極及び第2の電極>
第1の電極及び第2の電極の材料としては、導電性を有する透明材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第1の電極及び第2の電極の材料としては、例えば、スズをドープした酸化インジウム(以下、「ITO」と称する)、フッ素をドープした酸化スズ(以下、「FTO」と称する)、アンチモンをドープした酸化スズ(以下、「ATO」と称する)、酸化亜鉛等の無機材料が挙げられる。これらの中でも、InSnO、GaZnO、SnO、In及びZnOが好ましい。
更に、透明性を有するカーボンナノチューブ、Au、Ag、Pt又はCu等の高導電性の非透過性材料等を微細なネットワーク状に形成して、透明度を保持したまま、導電性を改善した電極を用いてもよい。
前記第1の電極及び第2の電極の各々の厚みは、第1のエレクトロクロミック層又は第2のエレクトロクロミック層の酸化還元反応に必要な電気抵抗値が得られるように調整される。第1の電極及び第2の電極の材料としてITOを用いた場合、第1の電極及び第2の電極の各々の厚みは、例えば、50nm以上500nm以下が好ましい。
前記第1の電極及び第2の電極の各々の作製方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等を用いることができる。第1の電極及び第2の電極の各々の材料が塗布形成できるものであれば特に制限はなく、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法又はインクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
<電解質層>
電解質層は、第1の電極と第2の電極との間に充填された電解質により形成される。電解質は、例えば、第1の電極と第2の電極との間に設けられた複数の注入孔を有する封止材から挿入され、第1の電極と第2の電極との間に充填される。
前記電解質としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類又はアルカリ類の支持塩を用いることができる。具体的には、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiCFCOO、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO又はMg(BFなどが挙げられる。
前記電解質の材料としては、イオン性液体を用いることもできる。これらの中でも、有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造を有しているため、好ましい。有機のイオン性液体の分子構造として、カチオン成分としては、例えば、N,N-ジメチルイミダゾール塩、N,N-メチルエチルイミダゾール塩、N,N-メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体;N,N-ジメチルピリジニウム塩、N,N-メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体;トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩が挙げられる。また、アニオン成分としては、大気中での安定性を考慮して、フッ素を含んだ化合物を用いることが好ましく、例えば、BF 、CFSO 、PF 、(CFSO又はテトラシアノボロンアニオン(B(CN) )が挙げられる。
前記電解質の材料としては、カチオン成分とアニオン成分とを任意に組み合わせたイオン性液体を用いることが好ましい。前記イオン性液体は、光重合性モノマー、オリゴマー及び液晶材料のいずれかに直接溶解させてもよい。なお、溶解性が悪い場合は、少量の溶媒に溶解させて、該溶液を光重合性モノマー、オリゴマー及び液晶材料のいずれかと混合して用いればよい。溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2-ジメトキシエタン、1,2-エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類又はこれらの混合溶媒が挙げられる。
前記電解質は低粘性の液体である必要はなく、ゲル状や高分子架橋型、液晶分散型等の様々な形態をとることが可能である。電解質はゲル状、固体状に形成することで、素子強度向上、信頼性向上等の利点が得られる。固体化手法としては、電解質と溶媒をポリマー樹脂中に保持することが好ましい。これにより、高いイオン伝導度と固体強度が得られるためである。更に、ポリマー樹脂としては光硬化可能な樹脂が好ましい。熱重合や溶剤を蒸発させることにより薄膜化する方法に比べて、低温かつ短時間でエレクトロクロミック素子を製造できるためである。
電解質からなる電解質層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100nm以上10μm以下であることが好ましい。
<第2のエレクトロクロミック層>
第2のエレクトロクロミック層は、第2の電極の下面に一層積層されているが、これに限定されず、複数積層されていてもよい。また、第2のエレクトロクロミック層は第2の電極の下面の全面に積層されているが、これに限定されず、第2の電極の下面の一部に積層されていてもよい。
前記第2のエレクトロクロミック層は、下記一般式(I)で表される化合物(ビオロゲン化合物)で表わされる第2のエレクトロクロミック化合物を含むことができる。前記第2のエレクトロクロミック層は、下記一般式(I)で表されるビオロゲン化合物を導電性ナノ構造体又は半導体性ナノ構造体(導電性乃至半導体性ナノ構造体)に含むエレクトロクロミック複合体を含む。下記一般式(I)で表されるビオロゲン化合物は、導電性乃至半導体性ナノ構造体に結合又は吸着可能である。エレクトロクロミック複合体は、エレクトロクロミック素子に用いられたとき、主に青色を発光し、更に画像のメモリー性、即ち、発色画像保持性に優れるものとなる。
Figure 2022086968000114
また、第2のエレクトロクロミック層は、上記一般式(I)で表されるビオロゲン化合物以外に、特開2017-111434号公報に記載の下記一般式(II)で示されるようなホスホン酸化合物又は直鎖アルキルホスホン酸等を単独若しくはビオロゲン化合物と共吸着させて用いてもよい。
Figure 2022086968000115
-ビオロゲン化合物-
上記一般式(I)で表されるビオロゲン化合物について説明する。
上記一般式(I)中、R、Rは、各々水素原子、炭素原子数14までのアリール基、ヘテロアリール基、炭素原子数10までの分岐アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又は水酸基に対して結合することができる官能基を表す。n、mは、それぞれ0又は1~10の整数を表す。Xは、荷電を中和するイオンを表す。
より好ましい形態としては、R又はRのいずれかが、水酸基に対して結合することができる官能基である。これにより、透明電極(例えば、ITO)等への吸着、固定化が可能となる。また、透明電極上に金属酸化物による担持粒子を設けた場合にも、同様に、透明電極への吸着、固定化が可能となるため、有利である。更に好ましい形態としては、R及びRの両方が、水酸基に対して結合することができる官能基である。
水酸基に対して結合することができる官能基としては、例えば、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、スルホニル基、シリル基又はシラノール基が挙げられる。これらの中でも、合成の簡便さ、透明電極上に金属酸化物による担持粒子を設けた場合の担持粒子への吸着性及び化合物の安定性の点から、ホスホン酸基、リン酸基及びカルボキシル基が好ましく、ホスホン酸基がより好ましい。
前記ホスホン酸基としては、例えば、メチルホスホン酸基、エチルホスホン酸基、プロピルホスホン酸基、ヘキシルホスホン酸基、オクチルホスホン酸基、デシルホスホン酸基、ドデシルホスホン酸基、オクタデシルホスホン酸基、ベンジルホスホン酸基、フェニルエチルホスホン酸基、フェニルプロピルホスホン酸基、ビフェニルホスホン酸基などが挙げられる。
前記リン酸基としては、例えば、メチルリン酸基、エチルリン酸基、プロピルリン酸基、ヘキシルリン酸基、オクチルリン酸基、デシルリン酸基、ドデシルリン酸基、オクタデシルリン酸基、ベンジルリン酸基、フェニルエチルリン酸基、フェニルプロピルリン酸基、ビフェニルリン酸基などが挙げられる。
前記カルボキシル基としては、例えば、メチルカルボン酸基、エチルカルボン酸基、プロピルカルボン酸基、ヘキシルカルボン酸基、オクチルカルボン酸基、デシルカルボン酸基、ドデシルカルボン酸基、オクタデシルカルボン酸基、ベンジルカルボン酸基、フェニルエチルカルボン酸基、フェニルプロピルカルボン酸基、ビフェニルカルボン酸基、4-プロピルフェニルカルボン酸基、4-プロピルビフェニルカルボン酸基などが挙げられる。
前記スルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、デシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基、オクタデシルスルホニル基、ベンジルスルホニル基、フェニルエチルスルホニル基、フェニルプロピルスルホニル基、ビフェニルスルホニル基などが挙げられる。
前記シリル基としては、例えば、メチルシリル基、エチルシリル基、プロピルシリル基、ヘキシルシリル基、オクチルシリル基、デシルシリル基、ドデシルシリル基、オクタデシルシリル基、ベンジルシリル基、フェニルエチルシリル基、フェニルプロピルシリル基。ビフェニルシリル基などが挙げられる。
前記シラノール基としては、例えば、メチルシラノール基、エチルシラノール基、プロピルシラノール基、ヘキシルシラノール基、オクチルシラノール基、デシルシラノール基、ドデシルシラノール基、オクタデシルシラノール基、ベンジルシラノール基、フェニルエチルシラノール基、フェニルプロピルシラノール基、ビフェニルシラノール基などが挙げられる。
上記一般式(I)中の、荷電を中和するイオンXは、それぞれ1価のアニオンを表し、カチオン部と安定に対を成すものであれば、特に限定されるものではない。荷電を中和するイオンXとしては、例えば、Brイオン(Br)、Clイオン(Cl)、Iイオン(I)、OTf(トリフラート)イオン(OTf)、ClOイオン(ClO )、PFイオン(PF )、BFイオン(BF )などが挙げられる。
前記ビオロゲン化合物は、一定長のアルキル鎖を有した対称系であることが好ましい。このとき、上記一般式(I)において、m及びnは、いずれも4~10であることが好ましく、mとnが等しい整数であることが好ましい。
ここで、上記ビオロゲン化合物の具体的な例示化合物としては、以下に示すものが挙げられるが、ビオロゲン化合物はこれらに限定されるものではない。
<例示化合物A>
Figure 2022086968000116
<例示化合物B>
Figure 2022086968000117
<例示化合物C>
Figure 2022086968000118
<例示化合物D>
Figure 2022086968000119
<例示化合物E>
Figure 2022086968000120
<例示化合物F>
Figure 2022086968000121
<例示化合物G>
Figure 2022086968000122
<例示化合物H>
Figure 2022086968000123
<例示化合物I>
Figure 2022086968000124
<例示化合物J>
Figure 2022086968000125
<例示化合物K>
Figure 2022086968000126
<導電性乃至半導体性ナノ構造体>
導電性乃至半導体性ナノ構造体について説明する。
導電性乃至半導体性ナノ構造体は、透明であることが好ましい。
上記一般式(I)中のR~Rで選択される少なくとも一つが水酸基に対して結合することができる官能基であり、ビオロゲン化合物の導電性乃至半導体性ナノ構造体への結合又は吸着構造には、ホスホン酸基、スルホン酸基、リン酸基又はカルボキシル基等が用いられる。この場合、第2のエレクトロクロミック化合物は、容易にナノ構造体と複合化し、発色画像保持性に優れるエレクトロクロミック複合体となる。
前記ホスホン酸基、スルホン酸基、リン酸基及びカルボキシル基としては、ビオロゲン化合物中に複数有していてもよい。また、ビオロゲン化合物が、シリル基、シラノール基等を有するとき、シロキサン結合を介してナノ構造体と結合されてその結合は強固なものとなり、安定なエレクトロクロミック複合体を得ることができる。なお、シロキサン結合とは、珪素原子及び酸素原子を介した化学結合をいう。
また、エレクトロクロミック複合体は、ビオロゲン化合物とナノ構造体がシロキサン結合を介して結合した構造をしていればよく、その結合方法及び形態については特に制限されない。
導電性乃至半導体性ナノ構造体とは、ナノ粒子又はナノポーラス構造体等のナノスケールの凹凸を有する構造体をいう。導電性乃至半導体性ナノ構造体を構成する材料としては、透明性及び導電性の点から、金属酸化物が好適に挙げられる。
前記金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、酸化インジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム又はアルミノシリケートを主成分とするものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、電気伝導性等の電気的特性、光学的性質等の物理的特性の点から、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化インジウム及び酸化タングステンが好ましく、酸化チタンがより好ましい。金属酸化物又は金属酸化物の混合物が用いられたとき、発消色の応答速度に優れる。
前記金属酸化物の形状としては、平均一次粒子径が30nm以下の金属酸化物微粒子であることが好ましい。平均一次粒子径が小さいほど、金属酸化物に対する光の透過率が向上し、エレクトロクロミック複合体における単位体積当たりの表面積(以下、「比表面積」という。)を大きくすることができる。大きな比表面積を有することで、より効率的に、第2のエレクトロクロミック化合物が導電性乃至半導体性ナノ構造体に担持され、発消色の表示コントラスト比に優れた多色カラー表示することができる。
前記エレクトロクロミック複合体の比表面積は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、100m/g以上であることが好ましい。
なお、金属酸化物微粒子の平均一次粒子径は、金属酸化物微粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)にて任意に100個観察し、その投影面積を求め、得られた面積の円相当径を計算して粒径を求め、その平均値を平均一次粒子径とする。
前記第2のエレクトロクロミック層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などが挙げられる。また、第2のエレクトロクロミック層の材料が塗布形成できるものであれば、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法又はインクジェットプリント法等の各種印刷法を用いることができる。
前記第2のエレクトロクロミック層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2μm以上5.0μm以下が好ましい。前記平均厚みが、0.2μm以上であると、高い発色濃度が得られる。一方、前記平均厚みが、5.0μm以下であれば、製造コストの増大が抑えられると共に、着色による視認性の低下を抑制することができる。前記第2のエレクトロクロミック層は、真空製膜により形成することも可能であるが、生産性の点から、粒子分散ペーストとして塗布形成することが好ましい。
<第1の支持体及び第2の支持体>
前記第1の支持体及び第2の支持体は、第1の電極、第1のエレクトロクロミック層、第2の電極、第2のエレクトロクロミック層等を支持する機能を有する。支持体としては、各層を支持できる透明材料であれば、周知の有機材料や無機材料をそのまま用いることができる。
前記支持体としては、例えば、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、フロートガラス又はソーダ石灰ガラス等のガラス基板を用いることができる。また、支持体としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン系樹脂又はポリイミド系樹脂等の樹脂基板を用いてもよい。また、支持体の表面に、水蒸気バリア性、ガスバリア性、紫外線耐性及び視認性を高めるために、透明絶縁層、UVカット層又は反射防止層等がコーティングされていてもよい。
前記支持体の平面形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長方形であっても円形であってもよい。支持体は、複数の重ね合わせでもよく、例えば、2枚のガラス基板でエレクトロクロミック素子を挟持する構造にすることで、水蒸気バリア性及びガスバリア性を高めることが可能である。
<その他の部材>
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、絶縁性多孔質層、劣化防止層、保護層などが挙げられる。
-絶縁性多孔質層-
絶縁性多孔質層は、第1の電極と第2の電極とが電気的に絶縁されるように隔離すると共に、電解質を保持する機能を有する。絶縁性多孔質層の材料としては、多孔質であれば特に制限はなく、絶縁性及び耐久性が高く成膜性に優れた有機材料、無機材料又はそれらの複合体を用いることが好ましい。
前記絶縁性多孔質層の形成方法としては、例えば、焼結法(高分子微粒子や無機粒子を、バインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る)、発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等が挙げられる。
-劣化防止層-
劣化防止層の役割は、第1のエレクトロクロミック層及び第2のエレクトロクロミック層と逆の化学反応をし、電荷のバランスをとって第1の電極や第2の電極が不可逆的な酸化還元反応により腐食や劣化することを抑制することである。なお、逆反応とは、劣化防止層が酸化還元する場合に加え、キャパシタとして作用することも含む。
前記劣化防止層の材料としては、第1の電極及び第2の電極の不可逆的な酸化還元反応による腐食を防止する役割を担う材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記劣化防止層の材料としては、例えば、酸化アンチモン錫や酸化ニッケル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫又はそれらを複数含む導電性若しくは半導体性金属酸化物を用いることができる。劣化防止層は、電解質の注入を阻害しない程度の多孔質薄膜から構成することができる。例えば、酸化アンチモン錫、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫等の導電性又は半導体性金属酸化物微粒子を、例えば、アクリル系、アルキド系、イソシアネート系、ウレタン系、エポキシ系、フェノール系等のバインダにより第2の電極に固定化することで、電解質の浸透性と、劣化防止層としての機能を満たす、好適な多孔質薄膜を得ることができる。
-保護層-
保護層は、外的応力及び洗浄工程の薬品からエレクトロクロミック素子を守ること、電解質の漏洩を防ぐこと、大気中の水分、酸素等のエレクトロクロミック素子が安定的に動作するために不要なものの侵入を防ぐためなどの目的で設けられる。
前記保護層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外線硬化型又は熱硬化型の樹脂を用いることができ、具体的には、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
前記保護層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上200μm以下が好ましい。
<第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子の製造方法>
第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子の製造方法の一例について説明する。
まず、第1の支持体11上に表示電極12を形成する。その後、実施形態に係るエレクトロクロミック化合物及び他のラジカル重合性化合物を含む第1のエレクトロクロミック組成物を含有する塗布液(電解質液)を表示電極12上に塗布する。これにより、第1の支持体11上に、順次、表示電極12、第1のエレクトロクロミック層13が形成された第1の積層体を作製する。
前記エレクトロクロミック化合物及び他のラジカル重合性化合物については、第1実施形態のエレクトロクロミック素子で説明したものと同様のものを用いることができる。
前記塗布液は、必要に応じて溶媒により希釈して塗布する。前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、溶媒による希釈率は、第1のエレクトロクロミック組成物の溶解性、塗工法又は第1エレクトロクロミック層の厚み等により変わり、適宜選択することができる。
前記塗布は、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法又はリングコート法等により行うことができる。
また、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子の製造方法では、塗布した第1のエレクトロクロミック組成物に対し、外部からエネルギーを与えて重合・架橋する工程(重合・架橋工程)を含んでもよい。
重合・架橋工程では、第1の電極上に第1のエレクトロクロミック組成物を塗布後、外部からエネルギーを与え、硬化させて、第1のエレクトロクロミック層を形成する。外部エネルギーとしては、例えば、熱、光、放射線等が挙げられる。熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素等の気体、蒸気又は各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い、塗工表面側、又は支持体側から加熱することによって行われる。
加熱温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃~170℃が好ましい。光のエネルギーとしては、主に紫外光(UV)に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプ等のUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。UVの照射光量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mW/cm~15,000mW/cmが好ましい。
次に、第2の支持体17上に対向電極16を形成する。その後、第2のエレクトロクロミック組成物及び導電性乃至半導体性ナノ構造体を含むエレクトロクロミック複合体を含有する塗布液を対向電極16上に塗布する。これにより、第2の支持体17上に、順次、対向電極16、第2のエレクトロクロミック層15が形成された第2の積層体を作製する。
エレクトロクロミック複合体に含まれる第2のエレクトロクロミック組成物及び導電性乃至半導体性ナノ構造体は、第1実施形態のエレクトロクロミック素子で説明したものと同様のものを用いることができる。
次に、第1の積層体と第2の積層体との間に電解質液を塗布し、第1の積層体と第2の積層体とを電解質層14Aを介して設ける。これにより、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aが製造される。電解質層14Aを構成する電解質が光や熱によって硬化可能である場合、第1の積層体と第2の積層体とを電解質を介して貼り合せた後に硬化させる。
なお、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子の製造方法では、更に必要に応じて、その他の工程を含んでもよい。
その他の工程として、例えば、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aが絶縁性多孔質層を含む場合、絶縁性多孔質層を第1のエレクトロクロミック層13上に形成する工程が含まれていてもよい。また、絶縁性多孔質層は、第2のエレクトロクロミック層15の下面上に形成されてもよいし、電解質層14Aを構成する電解質と混合されてもよい。
その他、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aは、劣化防止層や保護層を含む場合、これらの層を本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10A内に形成する工程が含まれていてもよい。
<第2の実施形態に係るエレクトロクロミック素子>
第2の実施形態に係るエレクトロクロミック素子について説明する。本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Bは、上述の図1に示す第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aの第1のエレクトロクロミック層13及び第2のエレクトロクロミック層15を設けていないものである。そして、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Bは、第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aの電解質層14Aに代えて、本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物を含んだ電解質層を用いたものである。
図2は、第2の実施形態に係るエレクトロクロミック素子の構成の一例を示す図である。図2に示すように、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Bは、第1の支持体11と、表示電極12と、電解質層14Bと、対向電極16と、第2の支持体17とを有する。これらの部材は、第1の支持体11側からこの順に積層して構成される。電解質層14Bは、本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物と電解質と含んで構成されている。本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Bを構成するそれぞれの部材は、第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aと同様であるため、詳細な説明は省略する。
<第2の実施形態に係るエレクトロクロミック素子の製造方法>
第2の実施形態に係るエレクトロクロミック素子の製造方法の一例について説明する。本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Bの製造方法は、上述の図1に示す第1の実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Aの第1のエレクトロクロミック層13及び第2のエレクトロクロミック層15を設ける工程を含んでいない。そして、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Bの製造方法は、電解質層14Aに代えて、本実施形態に係るエレクトロクロミック組成物を含んだ電解質層14Bを形成する工程を含む。
即ち、第1の支持体11上に表示電極12を形成する。第2の支持体17上に対向電極16を形成する。
次に、実施形態に係るエレクトロクロミック組成物及び電解質を含む電解質液を準備する。その後、表示電極12と対向電極16との間に電解質液を塗布し、表示電極12と対向電極16とを電解質層14Bを介して設ける。これにより、本実施形態に係るエレクトロクロミック素子10Bが製造される。
<用途>
本発明のエレクトロクロミック素子は、光耐久性及び繰返し耐久性に優れているので、例えば、エレクトロクロミックディスプレイ、株価の表示板等の大型表示板、防眩ミラー又は調光ガラス等の調光素子に好適に使用することができる。また、本発明のエレクトロクロミック素子は、例えば、タッチパネル式キースイッチ等の低電圧駆動素子、光スイッチ、光メモリー、電子ペーパー又は電子アルバム等に好適に使用することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例において、反応の追跡はTLC(Merck社製、Silicagel60 F254)を用いて行った。
また、化合物の同定は、以下のNMR及び質量分析を用いて行った。
NMRはFT-NMR(日本電子(JEOL)株式会社製、ECX-500、周波数:H NMR、500MHz、13C NMR、126Hz、溶媒:CDCl(関東化学株式会社製又はメルク社製)及びCDCl(メルク社製)、TMS内部標準)によって行った。ケミカルシフト(カップリング、J値、プロトン数)の順に記載し、カップリングの略称は下記のとおりである。「s」:singlet、「d」:doublet、「t」:triplet、「q」:quartet、「dd」:doublet-doublet、「td」:triplet-doublet
質量分析(MS)はMS(Waters社製、LCT-Premier、大気圧固体試料分析プローブ(ASAP)モード)及び高分解能MS(HRMS、Thermo-scientific社製、LTQ-XL Orbitrap、ESIモード)により行った。
IR測定は、フーリエ変換赤外分光分析装置(Perkin elmer社製、Spectrum3、試料をダイヤモンドセル(住友電気工業株式会社製)に挟んで測定)を用いて行い、主要な吸収を波数(cm-1)で記載した。
融点(m.p.)測定は、融点測定装置(Yanaco機器開発研究所製、MP-J3)を用いて行った。
(実施例1)
(合成例1)
-エレクトロクロミック化合物1の合成-
以下のスキームにしたがって、エレクトロクロミック化合物1の合成を行った。
Figure 2022086968000127
-化合物1-1の合成-
4つ口フラスコに3,6-ジ-tert-ブチルカルバゾール(5.30g、19.0mmol)、メチル-2-ヨードベンゾエート(東京化成工業株式会社製、4.98g、19.0mmol)、銅(メルク社製、408mg、6.42mmol)、ヨウ化銅(関東化学株式会社製、310mg、1.62mmol)、炭酸カリウム(関東化学株式会社製、微粉末、3.8g、27.5mmol)を入れ、アルゴンガスで置換した後、アルゴンガスで脱気したオルトジクロロベンゼン(関東化学株式会社製、30mL)を加えて、アルゴン気流下、3時間還流させた。室温に戻し、セライト濾過し、濾上物をクロロホルムで洗浄した。合わせた有機層を濃縮し、無色の固体を得た。これをエタノールから再結晶し、無色の結晶として化合物1-1を得た(収量7.34g、収率93.6%)。
以下に化合物1のスペクトルデータを示し、その構造に矛盾がないことが確認できた。
H NMR(500MHz,CDCl,δ):8.12(dd,J=2.0Hz,J=0.5Hz,2H),8.07(dd,J=8.3Hz,J=2.0Hz,1H),7.72(td,J=8.0Hz,J=1.5Hz,1H),7.55(t,J=7.5Hz,2H),7.41(dd,J=8.5Hz,J=2.0Hz,2H),7.06(dd,J=9.0Hz,J=0.5Hz,2H),3.22(s,3H,-COO-CH),1.45(s,18H).
13C NMR(126MHz、CDCl,δ):166.82(C=O),142.70,140.11,137.57,133.29,131.90,129.99,129.96,127.92,123.69,123.37,116.33,108.77,52.20(-OCH),34.81(C-CH),32.13(-CH).
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IR(neat):cm-1 2962,2903,2868,1720,1598,1580,1492,1475,1456,1393,1365,1327,1294,1251,1191,1169,1127,1097,1085,1075,1046,969,876,811,796,767,741,715,615,598,418.
m.p.:137.5℃
<化合物1-2の合成>
4つ口フラスコをアルゴン置換し、ヨウ化メチルマグネシウム(東京化成株式会社製、2M in EtO、15mL、30mmol)を加えて、氷浴で0℃まで冷却した。そこへ、化合物1(3.10g、7.50mmol)を脱水トルエン(関東化学株式会社製、20mL)に溶解させた物を10分間かけて滴下した。これをアルゴン気流下、3時間還流した。室温に戻し、内容物を氷に注いだ。飽和塩化アンモニウム水溶液と酢酸エチルを加えて、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。ろ液を濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、無色の固体として化合物1-2を得た(収量2.90g、収率93.5%)。
以下に化合物1-2のスペクトルデータを示し、その構造に矛盾がないことが確認できた。
H NMR(500MHz,CDCl,δ):8.11(dd,J=1.5Hz,J=0.5Hz,2H),7.89(dd,J=8.0Hz,J=1.5Hz,1H),7.51(td,J=8.0Hz,J=1.5Hz,1H),7.39(dd,J=8.5Hz,J=2.0Hz,2H),7.34(td,J=8.0Hz,J=1.5Hz,1H),6.91(dd,J=7.3Hz,J=1.5Hz,1H),6.87(dd,J=8.5Hz,J=0.5Hz,2H),2.16(s,1H,-OH),1.44(s,24H,C-CH and -CH).
13C NMR(126MHz,CDCl,δ):148.50,142.92,142.27,135.79,131.98,129.25,128.84,127.44,123.82,116.26,110.69,34.82,32.12,31.67).
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IR (neat):cm-1 3352,2961,2904,2866,1488,1475,1364,1326,1293,1261,1230,1164,1071,878,811,764,651,625.
m.p.:124℃
<化合物1-3の合成>
ナスフラスコに、化合物1-2(1.46g)、85%リン酸(関東化学株式会社製、20mL)を入れ、100℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、内容物を水酸化ナトリウム水溶液で中和した。酢酸エチルを加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。ろ液を濃縮し、無色のアモルファスを得た。これをフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/トルエン)で精製し、無色の固体として化合物1-3を得た(収量362mg、収率26%)。
以下に化合物1-3のスペクトルデータを示し、その構造に矛盾がないことが確認できた。
H NMR(500MHz,CDCl,δ):8.12(d,J=1.5Hz,1H),8.05(dd,J=8.0Hz,J=1.5Hz,2H),7.89(d,J=2.0Hz,1H),7.61(dd,J=8.0Hz,J=1.5Hz,1H),7.57(dd,J=8.5Hz,J=2.0Hz,1H),7.50(d,J=1.0Hz,1H),7.33(td,J=7.3Hz,J=1.5Hz,1H),7.13(td,J=7.5Hz,J=1.5Hz,1H),1.73(s,6H,-C-CH),1.48(s,18H,-C-(CH).
13C NMR(126MHz,CDCl,δ):145.50,143.68,136.67,136.36,134.34,128.67,127.36,127.08,126.33,123.85,122.78,121.74,119.18,117.19,113.74,113.61,113.09,37.03,35.25,34.80,32.77,32.24,32.00.
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IR(neat):cm-1 2962,2869,1604,1580,1498,1472,1456,1411,1392,1364,1341,1321,1299,1283,1248,1235,1201,1108,1063,866,750,666,645,598.
m.p.:163℃
<化合物1-4の合成>
ナスフラスコに化合物3(257mg、0.65mmol)、脱水ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、6.5mL)を入れ、氷浴で0℃に冷却した。N-ブロモスクシンイミド(121mg、0.683mmol)を小分けにして加え、遮光下1時間撹拌した後、室温に戻して18時間撹拌した。チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機層をチオ硫酸ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。ろ液を濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル,ヘキサン/トルエン)で精製し、無色の固体として化合物1-4を得た(収量230mg、収率72%)。
以下に化合物1-4のスペクトルデータを示し、その構造に矛盾がないことが確認できた。
H NMR(500MHz,CDCl,δ):8.12(d,J=2.0Hz,1H),7.95(dd,J=8.5Hz,1H),7.90(d,J=1.5Hz,1H),7.89(dd,J=8.5Hz,1H),7.68(d,J=2.0Hz,1H),7.56(dd,J=8.5Hz,J=2.0Hz,1H),7.48(td,J=1.5Hz,1H),7.42(dd,J=8.5Hz,J=2.5Hz,1H),1.71(s,6H),1.48(s,18H).
13C NMR(126MHz,CDCl,δ):145.80,144.02,136.53,136.34,135.36,134.11,130.25,129.78,127.92,126.33,123.91,121.78,119.10,117.22,115.03,113.76,112.88,37.19,35.15,34.71,32.52,32.07,31.84.
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IR(neat):cm-1 3037,2963,2868,1595,1573,1494,1456,1406,1390,1363,1321,1297,1281,1250,1236,1202,1137,1113,1093,1061,1027,966,939,878,868,797,746,670,642,599,461.
m.p.:173℃
<エレクトロクロミック化合物1の合成>
窒素導入管及び還流管を備えた3つ口フラスコに、化合物1-4(145mg、0.31mmol)、酢酸パラジウム(東京化成工業株式会社製、14.1mg、20mol% to halide)、トリ(オルトトリル)ホスフィン(関東化学株式会社製、78.0mg、40mol% to halide)を入れ、アルゴンガスで置換した。
脱水トリエチルアミン(関東化学株式会社製、3mL)、脱水トルエン(関東化学株式会社製、3mL)、4-メチルスチレン(東京化成工業株式会社製、52μL、0.397mmol)を入れ、アルゴンガスでバブリングを行った後、11時間還流させた。内容物をセライト濾過し、濾上物を酢酸エチルで洗浄した。ろ液を濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/トルエン)で精製し、無色の固体として化合物1を得た(収量89mg、収率57%)。
以下に化合物1のスペクトルデータを示し、その構造に矛盾がないことが確認できた。
H NMR(500MHz,CDCl,δ):8.13(d,J=1.5Hz,1H),8.04(dd,J=9.0Hz,1H),8.01(d,J=8.5Hz,1H),7.90(d,J=1.5Hz,1H),7.71(d,J=2.0Hz,1H),7.58(dd,J=9.0Hz,J=2.0Hz,1H),7.52(d,J=1.5Hz,1H),7.50(dd,J=8.5Hz,J=2.0Hz,1H),7.45(d,J=8.5Hz,2H),7.18(d,J=7.5Hz,1H),7.11 and 7.07(ABquartet,J=16.3Hz,2H),2.37(s,3H,Ar-CH),1.78(s,6H),1.48(s,18H).
13C NMR(126MHz,CDCl,δ):145.53,143.72,137.17,134.81,131.91,129.38,128.50,127.39,126.85,126.24,125.71,124.89,123.80,121.69,119.18,117.11,113.90,113.56,112.93,36.97,35.14,34.69,32.86,32.09,31.87,21.25.
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IR(neat):cm-1 3026,2961,2869,1603,1557,1512,1489,1456,1408,1362,1341,1320,1277,1247,1203,1112,961,890,868,853,807,730,671,659,642,595,584,508,487,452,425.
m.p.:227℃
(実施例2)
-合成例2:エレクトロクロミック化合物2の合成-
-エレクトロクロミック化合物2の合成-
化合物1と同様にして、4-メチルスチレンの代わりに、4-メトキシスチレンを用いた以外は、化合物1と同様にして合成した。無色の固体として化合物2を得た(収量130mg、収率59%)。
以下に化合物2のスペクトルデータを示し、その構造に矛盾がないことが確認できた。
H NMR(500MHz,CDCl,δ):8.13(d,J=1.7Hz,1H),8.04(dd,J=8.7Hz,1H),8.01(d,J=8.6Hz,1H),7.90(d,J=1.6Hz,1H),7.70(d,J=2.0Hz,1H),7.58(dd,J=8.8Hz,J=2.0Hz,1H),7.51(d,J=1.7Hz,1H),7.49(d,J=8.5Hz,3H),7.05 and 7.03(ABquartet,J=16.3Hz,2H),6.95-6.88(m,2H),3.84(s,3H,Ar-OCH),1.78(s,6H),1.48(s,18H).
13C NMR(126MHz,CDCl,δ):159.10,145.51,143.69,136.41,134.47,130.44,127.51,126.49,126.35,126.21,125.56,124.74,123.79,121.68,119.18,117.11,14.14,113.91,113.56,112.92,55.33,36.98,36.98,35.15,34.70,32.86,32.10,31.87.
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HRMS(ESI) m/z:[M] calculated for C3841NO:527.3188;found. 527.3182.
IR(neat):cm-1 2961,2905,2868,1608,1512,1497,1456,1408,1362,1339,1321,1279,1252,1203,1177,1031,963,868,825,808,525,453,432,422,413.
m.p.:198℃
(実施例3)
<合成例3:エレクトロクロミック化合物3の合成>
-エレクトロクロミック化合物3の合成-
3つ口フラスコに、化合物1-4(145mg、0.31mmol)、トリエチルアミン(2mL)、ジオキサン(関東化学株式会社製、3mL)、スチレン(東京化成工業株式会社製、1.8eq、0.55mmol、63μL)を入れ、溶液をアルゴンガスで5分間バブリングした後、トリスベンジリデンジパラジウム・クロロホルム付加体(Aldrich社製、2mol%、6.3mg)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(6.8mol%、6mg)を加えて、8時間還流させた。内容物をセライト濾過し、濾上物を酢酸エチルで洗浄した。ろ液を濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/トルエン)で精製し、無色の固体として化合物3を得た(収量103mg、収率68%)。
以下に化合物3のスペクトルデータを示し、その構造に矛盾がないことが確認できた。
H NMR(500MHz,CDCl,δ):8.16(d,J=1.7Hz,1H),8.06(d,J=8.7Hz,1H),8.04(d,J=8.6Hz,1H),7.93(d,J=1.7Hz,1H),7.78(d,J=2.0Hz,1H),7.61(dd,J=8.8Hz,J=2.1Hz,1H),7.57-7.54(m,4H),7.38(m,2H),7.26(m,1H),7.19 and 7.13(ABquartet,J=16.3Hz,2H),1.78(s,6H),1.481 and 1.479(s,18H).
13C NMR(126MHz,CDCl,δ):146.127,144.324,138.048,136.789,136.036,134.977,134.462,132.201,129.111,128.968,128.615,127.747,127.203,126.669,126.574,126.326,125.496,124.323,122.100,119.782,117.579,114.355,114.069,113.344,37.352,35.473,35.015,33.136,32.230,32.001.
MS(ASAP) m/z:[M] calculated for C3739N:497.3083;found. 497.3445.
HRMS(ESI) m/z:[M] calculated for C3739N:497.3083;found. 497.3075.
IR(neat):cm-1 2962,2905,2868,1596,1499,1456,1408,1393,1364,1338,1322,1281,1264,1247,1203,1114,963,868,811,805,754,740,693.
m.p.:223.5℃
(実施例4)
<合成例4:エレクトロクロミック化合物4の合成>
以下のスキームにしたがって、エレクトロクロミック化合物4の合成を行った。
Figure 2022086968000128
<化合物4-1の合成>
実施例3において、スチレンの代わりに、1-(4-クロロブチル)-4-ビニルベンゼンを当量用いた以外は、実施例3と同様にして、合成を行い無色の固体として化合物4-1を得た(100mg、収率55%)。
以下に化合物4-1の質量分析結果を示し、高分解能質量分析の誤差が4ppm以下であることからその構造に矛盾がないことが確認できた。
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HRMS(ESI) m/z:[M] calculated for C4044ClN:573.3162;found. 573.3140
<化合物4の合成>
4つ口フラスコに、化合物4-1(100mg、0.17mmol)、アクリル酸(TCI社製、115mg、1.6mmol)、炭酸カリウム(関東化学株式会社製、微粉末、3.7g、25.2mmol)、脱水ジメチルホルムアミド(5mL)、及び2,6-ジtert-ブチルクレゾール(0.1mg)を入れ、85℃で8.5時間加熱した。溶液を室温まで冷却し、水と酢酸エチルを加えて、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで4回抽出し、合わせた有機層を水で3回、続けて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤を濾別し、ろ液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル)で精製し、溶出液に2,6-ジtert-ブチルクレゾール(0.1mg)を加えて、減圧濃縮し、淡黄色のアモルファス状固体としてエレクトロミック化合物4を得た(収量91mg、収率85%)。
以下に化合物4の質量分析結果を示し、高分解能質量分析の誤差が4ppm以下であることからその構造に矛盾がないことが確認できた。
MS(ASAP) m/z:[M] calculated for C4347NO:609.3607;found. 609.348
HRMS(ESI) m/z:[M] calculated for C4347NO:609.3607;found. 609.3592
(実施例5)
<合成例5:エレクトロクロミック化合物5の合成>
以下のスキームにしたがって、エレクトロクロミック化合物5の合成を行った。
Figure 2022086968000129
実施例4において、1-(4-クロロブチル)-4-ビニルベンゼンの代わりに、1-(3-クロロプロポキシ)-4-ビニルベンゼンを用いた以外は、実施例4と同様にして、合成を行い無色の固体として化合物5-1を得、続いて淡黄色のアモルファス状固体として化合物5を得た(収量91mg、収率85%)。
以下に化合物5の質量分析結果を示し、高分解能質量分析の誤差が4ppm以下であることからその構造に矛盾がないことが確認できた。
MS(ASAP) m/z:[M] calculated for C4347NO:625.36;found. 625.37
HRMS(ESI) m/z:[M] calculated for C4347NO:625.3556;found. 625.3540
(実施例6)
-化合物の分光電気化学物性測定(吸収、蛍光スペクトル、サイクリックボルタンメトリーの測定)-
実施例1~3で合成したエレクトロクロミック化合物1~3をシクロヘキサン中に、10-5Mに溶解させた。
可視紫外分光光度計(UH4150 UV/VIS/IR spectrophotometer、Hitachi high-tech science社製)を用いて、200nm~800nmの範囲を測定した。
同様のサンプルを用いて、蛍光分光光度計(Shimadzu RF-5000 spectrofluorometer、株式会社島津製作所製)、励起波長330nmで蛍光スペクトルの測定を行った。
更に、積分球を備えた絶対蛍光量子収率測定装置(C9920-02、励起波長 Xe lamp(λmax=330nm)、浜松ホトニクス株式会社製)と多チャンネルスペクトロメーター(Hamamatsu PMA-11、浜松ホトニクス株式会社製)を用いて絶対蛍光量子収率の測定を行った。その結果を吸収及び蛍光スペクトルとして図3及び図4に示した。また、吸収ピーク波長と、モル吸光係数、絶対蛍光量子収率を表1に示した。測定はいずれも室温25℃で行った。
続けて、0.1M過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)ジクロロメタン溶液中にエレクトロクロミック化合物1~3を10-3Mの濃度でサンプルを溶解させて、作用極(プラチナディスク電極、BAS社製)、対極(プラチナワイヤー)、参照電極(Ag/Ag電極、0.1MのTBAP及び0.01MのKNOアセトニトリル水溶液)の3電極系で、ALS-660C(BAS社製)を用いて、掃引速度50mV/sでサイクリックボルタンメトリー測定(3サイクル)を行った結果を図5に示す。同条件のフェロセンの酸化還元電位の1/2を基準(Fc/Fc)として、補正した。フェロセン基準で0~0.6V付近でいずれも繰り返し安定なレドックス挙動を示した。その際の酸化還元の半波電位であるE1/2oxはエレクトロクロミック化合物1~3のそれぞれについて0.45、0.40、0.48V(Vs Fc/Fc)であった。
また、上記CV測定の作用極をITO電極(面積2.0cm)に置き換えた以外は、同様にして、300nm~900nmの吸光度変化をUSB-4000(オーシャンオプティクス社製)でモニタリングしながら、定電流測定を行い、ピーク波長における発色効率を求めた。その結果、発色効率は、吸光度変化を印加した電流量で除したもので示される。結果を表2に示した。
次に、下記構造式で示す比較化合物6-1~6-3について、本発明のエレクトロクロミック化合物1~3と同様にして、発色効率及び吸収ピーク波長を測定した。結果を表2に示した。
<比較化合物6-1>
Figure 2022086968000130
<比較化合物6-2>
Figure 2022086968000131
ただし、Meはメチル基を表す。
<比較化合物6-3>
Figure 2022086968000132
Figure 2022086968000133
図3及び表1の結果より、本発明のエレクトロクロミック化合物1~3は中性状態では可視域にほとんど吸収を有することなく、素子として用いた場合の高い透明性が期待できる。加えて、図3及び図4より蛍光スペクトルにおけるストークスシフトが非常に小さく、励起状態における構造変化が少ないことが期待できる。その結果、80%近い蛍光量子収率を示している。
Figure 2022086968000134
表2の結果から、本発明のエレクトロクロミック化合物1~3は従来公知の1電子酸化する比較化合物6-2のトリフェニルアミンと比べて高い発色効率を示した。また、2電子酸化還元しうる比較化合物6-1及び比較化合物6-3(エチルビオロゲン価塩素酸塩)と比べても同等の発色効率を示した。
(実施例1-1)
<第1のエレクトロクロミック素子の作製>
実施例1-1のエレクトロクロミック素子の作製例を、以下に示す。
-第1の電極上への第1のエレクトロクロミック層の形成-
第1の電極上に第1のエレクトロクロミック層を形成するために、以下に示す組成の第1のエレクトロクロミック組成物を調製した。
[組成]
・アクリロイルオキシ基を有するエレクトロクロミック化合物1-1(上記例示化合物1):50質量部
・IRGACURE184(BASFジャパン株式会社製):5質量部
・ジアクリロイルオキシ基を有するポリエチレングリコール(「PEG400DA」、日本化薬株式会社製):50質量部
・メチルエチルケトン:900質量部
次に、得られた第1のエレクトロクロミック組成物を、第1の電極としてのITOガラス基板(40mm×40mm、厚み0.7mm、ITO膜厚:約100nm)上にスピンコート法により塗布した。得られた塗布膜をUV照射装置(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE)により10mWで60秒間照射した後、60℃で10分間アニール処理を行うことにより、平均厚み400μmの架橋した第1のエレクトロクロミック層を形成した。
-第2の電極上への劣化防止層の形成-
次に、第2の電極としてのITOガラス基板(40mm×40mm、厚み0.7mm、ITO膜厚:約100nm)上に、劣化防止層として酸化チタンナノ粒子分散液(商品名:SP210、昭和タイタニウム株式会社製、平均粒子径:約20nm)をスピンコート法により塗布した。その後、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、厚み1.0μmの酸化チタン粒子膜からなるナノ構造半導体材料を形成した。
-第2の電極上への第2のエレクトロクロミック層の形成-
第2の電極上に第2のエレクトロクロミック層を形成するために、以下に示す組成の第2のエレクトロクロミック組成物を調製した。
[組成]
・水酸基と結合可能な官能基を有するエレクトロクロミック化合物1-2(上記例示化合物A):20質量部
・テトラフルオロプロパノール:980質量部
得られた第2のエレクトロクロミック組成物を、第2の電極に形成された酸化チタン粒子膜からなるナノ構造半導体材料上に、スピンコート法により塗布して吸着させた。その後、更に未吸着の化合物をメタノールで洗浄することにより、第2のエレクトロクロミック層を形成した。
-電解質液の充填-
以下に示す組成の電解質液を調製した。
[組成]
・IRGACURE184(BASFジャパン株式会社製):5質量部
・PEG400DA(日本化薬株式会社製):100質量部
・1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(メルク社製):50質量部
得られた電解質液をマイクロピペットで30mg測り取り、劣化防止層及び第2のエレクトロクロミック層を有する第2電極としてのITOガラス基板に対して滴下した。その上に、電極の引き出し部分があるように、架橋した第1のエレクトロクロミック層を有する第1の電極としてのITOガラス基板を貼り合せ、貼り合せ素子を作製した。得られた貼り合せ素子をUV照射装置(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE)により、10mWで60秒間、UV(波長250nm)を照射した。以上により、実施例1-1のエレクトロクロミック素子を作製した。
<発消色駆動>
作製した実施例1-1のエレクトロクロミック素子の発消色を確認した。第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、+2.0Vの電圧を5秒間印加させた。その結果、第1の電極層と第2の電極層の重なった部分に、第1のエレクトロクロミック層のエレクトロクロミック化合物1に由来する発色が確認された。また、第2のエレクトロクロミック層のエレクトロクロミック化合物2に由来する発色が確認された。次いで、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、-0.5Vの電圧を5秒間印加させたところ、第1の電極層と第2の電極層の重なった部分が消色し、透明になったことが確認できた。
本実施例のエレクトロクロミック素子の発色時における紫外可視吸収スペクトルを図3に示す。図3の吸収スペクトルは、本実施例のエレクトロクロミック素子のエレクトロクロミック化合物1-1の発色時の紫外可視吸収スペクトルからエレクトロクロミック化合物1-2の発色時の紫外可視吸収スペクトル及びエレクトロクロミック化合物1-1及びエレクトロクロミック化合物1-2の消色時のスペクトルを減じた紫外可視吸収スペクトルである。即ち、図3の吸収スペクトルは、エレクトロクロミック化合物1-1(例示化合物1)の発色時の紫外可視吸収スペクトルのみを示す。なお、図3では、波長が380nm~780nmの範囲の吸収スペクトルを示す。図3に示すように、エレクトロクロミック化合物1-1(例示化合物1)は目視でマゼンタに発色していることを確認した。
(実施例1-2~1-11)
実施例1-1において、エレクトロクロミック化合物1-1として用いた、上記例示化合物1を、上記の例示化合物2~11に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、実施例1-2~1-11のエレクトロクロミック素子を作製した。
なお、実施例1-2~1-11のエレクトロクロミック素子も、実施例1-1のエレクトロクロミック素子と同様の紫外可視吸収スペクトルが得られることが確認された。図4に実施例1-2におけるエレクトロミック化合物2の発色時の可視紫外吸収スペクトルも示した。エレクトロミック化合物2も例示化合物1と同様にマゼンタに発色することがわかった。
(比較例1-1~1-6)
実施例1-1において、エレクトロクロミック化合物1-1として用いた例示化合物1を、以下に示す比較化合物1~6に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、比較例1-1~1-6のエレクトロクロミック素子を作製した。
なお、比較例1-1~1-6のエレクトロクロミック素子も、実施例1-1のエレクトロクロミック素子と同様の紫外可視吸収スペクトルが得られることが確認された。
<比較化合物1>
Figure 2022086968000135
<比較化合物2>
Figure 2022086968000136
<比較化合物3>
Figure 2022086968000137
<比較化合物4>
Figure 2022086968000138
<比較化合物5>
Figure 2022086968000139
<比較化合物6>
Figure 2022086968000140
それぞれの実施例1-1~1-11及び比較例1-1~1-6で用いたエレクトロクロミック化合物の種類と適用位置について表3に示した。
<評価>
作製したそれぞれのエレクトロクロミック素子を用いて、以下のようにして、繰返し試験、及び色彩試験を行った。結果を表3に示した。
[試験1-1:繰返し耐久性試験]
作製したそれぞれの実施例及び比較例のエレクトロクロミック素子について、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、2.0Vの電圧を5秒間印加させた後、-0.5Vの電圧を5秒間印加させる発消色駆動操作を1回とした。この発消色駆動操作を500回繰り返した。そのときの可視領域(380nm~780nm)の吸収極大をλmaxとした。その時の吸光度変化をUSB4000(オーシャンインサイト社製)で測定し、下記基準で評価した。
[評価基準]
○:λmaxの吸光度が初期状態に比べて95%以上である場合
△:λmaxの吸光度が初期状態に比べて90%以上95%未満である場合
×:λmaxの吸光度が初期状態に比べて90%未満である場合
[試験1-2:色彩試験]
作製したそれぞれの実施例及び比較例のエレクトロクロミック素子について、上記試験1-1を終了後、改めて+2.0Vの電圧を印加させた後の色彩を目視で確認し、下記の基準で評価した。
[評価基準]
○:色彩の変化が見られない場合
×:色彩の変化が見られる場合
Figure 2022086968000141
表3の結果から、実施例1-1~1-11のエレクトロクロミック素子は、マゼンタから赤系の発色を示し、繰返し耐久性及び繰り返し後の色彩の変化の無さが確認された。
これに対して、比較例1-1~1-6のエレクトロクロミック素子は、色彩がマゼンタ系ではなかったり、繰り返し耐久性及び繰り返し後の色彩の変化の無さの全てを満たすことがないことが確認された。
したがって、第1の形態に係るエレクトロクロミック組成物は、従来材料と比べて、良好な赤及びマゼンタ系の色彩を示すエレクトロクロミック素子の提供に寄与していることがわかった。
(実施例2-1)
<第2のエレクトロクロミック素子の作製>
実施例2-1のエレクトロクロミック素子の作製例を、以下に示す。
-第一の電極上へのスペーサーの形成-
第1の電極としてのITOガラス基板(40mm×40mm、厚み0.7mm、ITO膜厚:約100nm)上にギャップ制御粒子(粒径80μm、商品名ミクロパールGS、積水化学株式会社製)のイソプロパノール溶液を塗布し、80℃で3分間乾燥させた。
-第2の電極上への劣化防止層の形成-
次に、第2の電極としてのITOガラス基板(40mm×40mm、厚み0.7mm、ITO膜厚:約100nm)上に、劣化防止層として酸化チタンナノ粒子分散液(商品名:SP210、昭和タイタニウム株式会社製、平均粒子径:約20nm)をスピンコート法により塗布した。その後、120℃で15分間アニール処理を行うことによって、厚み1.0μmの酸化チタン粒子膜からなるナノ構造半導体材料を形成した。
-基板の貼り合せ-
第1の電極としてのITO基板と第2の電極としてのITO基板を電極取り出し部位として5mmずらして電極面を対向させて貼り合わせた。その後、二箇所の注入孔を除いて端面に封止材(TB3050B、スリーボンド社製)を塗布し、得られた貼り合せ素子をUV照射装置(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE)により10mWで60秒間、UV(波長250nm)を照射した。
-電解質液の充填-
以下に示す組成の電解質液を調製した。
[組成]
・エレクトロクロミック化合物2(上記例示化合物M1):50質量部
・1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビスフルオロスルフォニルイミド(EMIM-FSI)(メルク社製):100質量部
・N-メチルピロリドン(NMP):600質量部
得られた電解質液をマイクロピペットで30mg測り取り、セルの注入孔より注入した。注入孔を封止材で塞ぎ、同様にUV照射装置(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE)により10mWで60秒間、UV(波長250nm)を照射した。以上により、図6に示される実施例2-1のエレクトロクロミック素子を作製した。
<発消色駆動>
作製した実施例2-1のエレクトロクロミック素子の発消色を、実施例1-1のエレクトロクロミック素子と同様にして確認した。その結果、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、2Vの電圧を5秒間印加させた時は、第1の電極と第2の電極との重なった部分に、エレクトロクロミック層のエレクトロクロミック化合物2(例示化合物M1)に由来する発色(マゼンタ)が確認された。また、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、-2Vの電圧を5秒間印加させた時は、第1の電極と第2の電極との重なった部分が消色し、透明になったことが確認できた。
(実施例2-2~2-86)
実施例2-1において、エレクトロクロミック化合物2として用いた例示化合物M1を、上記例示化合物M2~M86のいずれかに変更した以外は、実施例2-1と同様にして、実施例2-2~2-86のエレクトロクロミック素子を作製した。
図7に、実施例2-1、2-2、及び2-3におけるエレクトロミック化合物2(例示化合物M1、M2、M3)を用いた素子の発色時の吸収スペクトルを示す。また、吸収スペクトルを規格化し、380nm~780nm又は400nm~780nmの範囲の吸収スペクトルを透過率へと変換し、更に標準光源(D65光源)の分光分布と等色関数(x,y,z)から三刺激値(X,Y,Z)を求め、計算値からCIE Lの各値を求めた。これを基に、CIE LbをLh色空間に変換し、表5にその結果(a,b,h)を示した。ここでh=arctan(b/a)である。ジャパンカラーの各基準値は、ジャパンカラースタンダードのコート紙をLCDパネル評価装置 LCD5200(大塚電子株式会社製)を用いて、D65光源を用いて測色して上記の方法でLを算出した。なお、ジャパンカラーの規格ではD50光源による測色が定められており、D65を用いた際には少し値が変化することが分かっているので両方を記載した。
なお、特開2020-140053号公報(特許文献3)の実施例2-1に記載の化合物の値についても併記した。
(比較例2-1~2-6)
実施例2-1において、エレクトロクロミック化合物1として用いた例示化合物M1を、以下に示す比較化合物m1~m6に変更した以外は、実施例2-1と同様にして、比較例2-1~2-6のエレクトロクロミック素子を作製した。
なお、比較例2-1~2-6のエレクトロクロミック素子も、実施例2-1のエレクトロクロミック素子と同様、エレクトロクロミック化合物2に由来する発色が得られることが確認された。
<比較化合物m1>
Figure 2022086968000142
<比較化合物m2>
Figure 2022086968000143
<比較化合物m3>
Figure 2022086968000144
<比較化合物m4>
Figure 2022086968000145
<比較化合物m5>
Figure 2022086968000146
<比較化合物m6>
Figure 2022086968000147
<評価>
作製したそれぞれのエレクトロクロミック素子を用いて、連続発色試験、及び色彩試験を行った。結果を表4-1及び表4-2に示した。
[試験2-1:繰返し耐久性試験]
作製したそれぞれの実施例及び比較例のエレクトロクロミック素子について、第1の電極の引き出し部分と第2の電極の引き出し部分との間に、2.0Vの電圧を5秒間印加させた後、-0.5Vの電圧を5秒間印加させる発消色駆動操作を1回とした。この発消色駆動操作を500回繰り返した。そのときの可視領域(380nm~780nm)の吸収極大をλmaxとした。その時の吸光度変化をUSB4000(オーシャンインサイト社製)で測定し、下記基準で評価した。
[評価基準]
○:λmaxの吸光度が初期状態に比べて95%以上である場合
△:λmaxの吸光度が初期状態に比べて90%以上95%未満である場合
×:λmaxの吸光度が初期状態に比べて90%未満である場合
[試験2-2:色彩試験]
作製したそれぞれの実施例及び比較例のエレクトロクロミック素子について、試験2-1を終了後、改めて+2.0Vの電圧を印加させた後の色彩を目視で確認し、下記の基準で評価した。
[評価基準]
○:色彩の変化が見られない場合
×:色彩の変化が見られる場合
Figure 2022086968000148
Figure 2022086968000149
Figure 2022086968000150
表4-1及び表4-2の結果から、実施例2-1~2-86のエレクトロクロミック素子は、マゼンタから赤系の発色を示し、繰返し耐久性及び繰り返し後の色彩の変化の無さが確認された。
これに対して、比較例2-1~2-6のエレクトロクロミック素子は、色彩がマゼンタ系ではなかったり、繰り返し耐久性及び繰り返し後の色彩の変化の無さの全てを満たすことがないことが確認された。
更に、表5に記載のマゼンタの基準値と特開2020-140053号公報(特許文献3)に記載の化合物とを比べると、従来よりもJapan colorのマゼンタの再現性が高いもの(例示化合物M1)が得られていることがわかる。ここで、色は「光源色」と「物体色」に分けられるが、有機ELディスプレイのような自発光型ではなく、物体に吸収された残りの光が観測されるエレクトロクロミック素子などにおいては、「物体色」の標準色で規定する方が好ましい。Japan colorは日本におけるオフセット印刷の印刷色の標準であり、この表現が近いと言えるためである。
したがって、第2の形態に係るエレクトロクロミック化合物は、従来材料と比べて、良好な赤及びマゼンタ系の色彩を示すエレクトロクロミック素子の提供に寄与しているといえる。
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 第1の電極と、
前記第1の電極に対し間隔をおいて対向する第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる電解質層と、
を有するエレクトロクロミック素子であって、
前記第1の電極上に、下記一般式(1)で示されるエレクトロクロミック化合物を含む層を有することを特徴とするエレクトロクロミック素子である。
[一般式1]
Figure 2022086968000151
[一般式2]
Figure 2022086968000152
ただし、前記一般式(1)中、RからR22は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、前記一般式(2)で示される基、及びアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基のいずれかであり、
、R、及びR15の少なくとも1つは上記一般式(2)で示される基であり、前記一般式(2)で示される基が複数存在する場合は、R16からR22はそれぞれ同じであってもよく異なってもよい。
からR14のうち、少なくとも1つは隣り合うベンゼン環上の置換基と互いに結合あるいは炭素原子、珪素原子、酸素原子、硫黄原子、及びセレン原子のいずれかを挿入して環状構造を形成してもよい。
<2> 第1の電極と、
前記第1の電極に対して間隔をおいて対向する第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる電解質層と、
を有するエレクトロクロミック素子であって、
前記電解質層が、下記一般式(1)で示されるエレクトロクロミック化合物を含むことを特徴とするエレクトロクロミック素子である。
[一般式1]
Figure 2022086968000153
[一般式2]
Figure 2022086968000154
ただし、前記一般式(1)中、RからR22は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、前記一般式(2)で示される基、及びアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基のいずれかであり、
、R、及びR15の少なくとも1つは上記一般式(2)で示される基であり、前記一般式(2)で示される基が複数存在する場合は、R16からR22はそれぞれ同じであってもよく異なってもよい。
からR14のうち、少なくとも1つは隣り合うベンゼン環上の置換基と互いに結合あるいは炭素原子、珪素原子、酸素原子、硫黄原子、及びセレン原子のいずれかを挿入して環状構造を形成してもよい。
<3> 前記R、R、及びR15が、いずれもハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、前記一般式(2)で示される基、及びアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基のいずれかである、前記<1>から<2>のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
<4> 前記R、R、及びR15における前記一般式(2)で示される基が2つ以下である、前記<1>から<3>のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
<5> 前記RからR14のうち、2箇所で結合して環状構造を形成している、前記<1>から<4>のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
<6> 前記環状構造が直接結合しているか、及び炭素原子又は珪素原子を介しているかのいずれかである、前記<1>から<5>のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
<7> 前記RからR22の少なくとも1つが、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基である、前記<1>から<6>のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子である。
<8> 下記一般式(1)で示されることを特徴とするエレクトロクロミック化合物である。
[一般式1]
Figure 2022086968000155
[一般式2]
Figure 2022086968000156
ただし、前記一般式(1)中、RからR22は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、前記一般式(2)で示される基、及びアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基のいずれかであり、
、R、及びR15の少なくとも1つは上記一般式(2)で示される基であり、前記一般式(2)で示される基が複数存在する場合は、R16からR22はそれぞれ同じであってもよく異なってもよい。
からR14のうち、少なくとも1つは隣り合うベンゼン環上の置換基と互いに結合あるいは炭素原子、珪素原子、酸素原子、硫黄原子、及びセレン原子のいずれかを挿入して環状構造を形成してもよい。
<9> 前記R、R、及びR15が、いずれもハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、前記一般式(2)で示される基、及びアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基のいずれかである、前記<8>に記載のエレクトロクロミック化合物である。
<10> 前記R、R、及びR15における前記一般式(2)で示される基が2つ以下である、前記<8>から<9>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物である。
<11> 前記R、R、及びR15が水素原子ではない、前記<8>から<10>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物である。
<12> 前記RからR14のうち、2箇所で結合して環状構造を形成している、前記<8>から<11>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物である。
<13> 前記環状構造が直接結合しているか、及び炭素原子又は珪素原子を介しているかのいずれかである、前記<8>から<12>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物である。
<14> 前記RからR22の少なくとも1つが、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基である、前記<8>から<13>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物である。
<15> 前記<8>から<14>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物を含むことを特徴とするエレクトロクロミック組成物である。
<16> 他のラジカル重合性化合物を更に含む、前記<15>に記載のエレクトロクロミック組成物である。
<17> 前記エレクトロクロミック組成物に含まれる重合性官能基が、重合又は架橋されている、前記<15>から<16>のいずれかに記載のエレクトロクロミック組成物である。
<18> 第1の電極と、
前記第1の電極に対して間隔をおいて対向する第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる電解質層と、
を有するエレクトロクロミック素子であって、
前記第1の電極上に、前記<15>から<17>のいずれかに記載のエレクトロクロミック組成物を含む層を有することを特徴とするエレクトロクロミック素子である。
<19> 第1の電極と、
前記第1の電極に対して間隔をおいて対向する第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる電解質層と、
を有するエレクトロクロミック素子であって、
前記電解質層は、前記<15>から<17>のいずれかに記載のエレクトロクロミック組成物を含むことを特徴とするエレクトロクロミック素子である。
前記<1>から<7>及び<18>から<19>のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子、前記<8>から<14>のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物、及び前記<15>から<17>のいずれかに記載のエレクトロクロミック組成物によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
10A、10B エレクトロクロミック素子
11 第1の支持体
12 表示電極(第1の電極)
13 第1のエレクトロクロミック層
14A、14B 電解質層
15 第2のエレクトロクロミック層
16 対向電極(第2の電極)
17 第2の支持体
特許第6613663号公報 特開2017-008025号公報 特開2020-140053号公報 特開2020-138925号公報

Claims (19)

  1. 第1の電極と、
    前記第1の電極に対し間隔をおいて対向する第2の電極と、
    前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる電解質層と、
    を有するエレクトロクロミック素子であって、
    前記第1の電極上に、下記一般式(1)で示されるエレクトロクロミック化合物を含む層を有することを特徴とするエレクトロクロミック素子。
    [一般式1]
    Figure 2022086968000157
    [一般式2]
    Figure 2022086968000158
    ただし、前記一般式(1)中、RからR22は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、前記一般式(2)で示される基、及びアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基のいずれかであり、
    、R、及びR15の少なくとも1つは上記一般式(2)で示される基であり、前記一般式(2)で示される基が複数存在する場合は、R16からR22はそれぞれ同じであってもよく異なってもよい。
    からR14のうち、少なくとも1つは隣り合うベンゼン環上の置換基と互いに結合あるいは炭素原子、珪素原子、酸素原子、硫黄原子、及びセレン原子のいずれかを挿入して環状構造を形成してもよい。
  2. 第1の電極と、
    前記第1の電極に対して間隔をおいて対向する第2の電極と、
    前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる電解質層と、
    を有するエレクトロクロミック素子であって、
    前記電解質層が、下記一般式(1)で示されるエレクトロクロミック化合物を含むことを特徴とするエレクトロクロミック素子。
    [一般式1]
    Figure 2022086968000159
    [一般式2]
    Figure 2022086968000160
    ただし、前記一般式(1)中、RからR22は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、前記一般式(2)で示される基、及びアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基のいずれかであり、
    、R、及びR15の少なくとも1つは上記一般式(2)で示される基であり、前記一般式(2)で示される基が複数存在する場合は、R16からR22はそれぞれ同じであってもよく異なってもよい。
    からR14のうち、少なくとも1つは隣り合うベンゼン環上の置換基と互いに結合あるいは炭素原子、珪素原子、酸素原子、硫黄原子、及びセレン原子のいずれかを挿入して環状構造を形成してもよい。
  3. 前記R、R、及びR15が、いずれもハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、前記一般式(2)で示される基、及びアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基のいずれかである、請求項1から2のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  4. 前記R、R、及びR15における前記一般式(2)で示される基が2つ以下である、請求項1から3のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  5. 前記RからR14のうち、2箇所で結合して環状構造を形成している、請求項1から4のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  6. 前記環状構造が直接結合しているか、及び炭素原子又は珪素原子を介しているかのいずれかである、請求項1から5のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  7. 前記RからR22の少なくとも1つが、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基である、請求項1から6のいずれかに記載のエレクトロクロミック素子。
  8. 下記一般式(1)で示されることを特徴とするエレクトロクロミック化合物。
    [一般式1]
    Figure 2022086968000161
    [一般式2]
    Figure 2022086968000162
    ただし、前記一般式(1)中、RからR22は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、前記一般式(2)で示される基、及びアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基のいずれかであり、
    、R、及びR15の少なくとも1つは上記一般式(2)で示される基であり、前記一般式(2)で示される基が複数存在する場合は、R16からR22はそれぞれ同じであってもよく異なってもよい。
    からR14のうち、少なくとも1つは隣り合うベンゼン環上の置換基と互いに結合あるいは炭素原子、珪素原子、酸素原子、硫黄原子、及びセレン原子のいずれかを挿入して環状構造を形成してもよい。
  9. 前記R、R、及びR15が、いずれもハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、前記一般式(2)で示される基、及びアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基のいずれかである、請求項8に記載のエレクトロクロミック化合物。
  10. 前記R、R、及びR15における前記一般式(2)で示される基が2つ以下である、請求項8から9のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物。
  11. 前記R、R、及びR15が水素原子ではない、請求項8から10のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物。
  12. 前記RからR14のうち、2箇所で結合して環状構造を形成している、請求項8から11のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物。
  13. 前記環状構造が直接結合しているか、及び炭素原子又は珪素原子を介しているかのいずれかである、請求項8から12のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物。
  14. 前記RからR22の少なくとも1つが、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を含む重合性官能基である、請求項8から13のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物。
  15. 請求項8から14のいずれかに記載のエレクトロクロミック化合物を含むことを特徴とするエレクトロクロミック組成物。
  16. 他のラジカル重合性化合物を更に含む、請求項15に記載のエレクトロクロミック組成物。
  17. 前記エレクトロクロミック組成物に含まれる重合性官能基が、重合又は架橋されている、請求項15から16のいずれかに記載のエレクトロクロミック組成物。
  18. 第1の電極と、
    前記第1の電極に対して間隔をおいて対向する第2の電極と、
    前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる電解質層と、
    を有するエレクトロクロミック素子であって、
    前記第1の電極上に、請求項15から17のいずれかに記載のエレクトロクロミック組成物を含む層を有することを特徴とするエレクトロクロミック素子。
  19. 第1の電極と、
    前記第1の電極に対して間隔をおいて対向する第2の電極と、
    前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる電解質層と、
    を有するエレクトロクロミック素子であって、
    前記電解質層は、請求項15から17のいずれかに記載のエレクトロクロミック組成物を含むことを特徴とするエレクトロクロミック素子。

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