JP2022086825A - エラストマー組成物およびエラストマー組成物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】300℃を超えるような高温下であっても十分なゴム性能を発揮するエラストマー架橋物を提供できる、エラストマー組成物を提供する。【解決手段】フッ素含有エラストマーと、カーボンナノチューブの表面を改質した表面改質カーボンナノチューブと、を含むエラストマー組成物であって、前記表面改質カーボンナノチューブの水懸濁液のpHが9以上であり、かつ、X線光電子分光法で測定される前記表面改質カーボンナノチューブの酸素元素量が2atm%未満である、エラストマー組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、エラストマー組成物およびエラストマー組成物の製造方法に関し、特に、300℃を超えるような高温下であっても十分なゴム性能を発揮するエラストマー架橋物を提供できる、エラストマー組成物およびエラストマー組成物の製造方法に関する。
従来、導電性、熱伝導性、及び強度などの特性に優れる材料として、エラストマーにカーボン材料を配合してなるエラストマー組成物が使用されている。近年では、前記特性の向上効果が高いカーボン材料として、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と略記する場合がある。)が注目されている。
CNTは、一本一本の特性は優れているものの、外径が小さいため、バルク材料として使用する際にファンデルワールス力によってバンドル化し易い(束になり易い)。そのため、エラストマーとCNTとを含有するエラストマー組成物を用いて成形体を作製するに際しては、CNTが凝集したCNT集合体を解繊し、エラストマーであるマトリックス中にCNTを良好に分散させることが求められている。なお、本発明において、カーボンナノチューブ(CNT)には、複数本のカーボンナノチューブが含まれていることを示す。
他方、フッ素含有エラストマーは、耐熱性、耐薬品性、耐候性等に優れた架橋物品を提供できる特性を有しているため、自動車、産業機械、OA機器、電気電子機器等の各種分野で使用されている。例えば、特許文献1には、フッ素含有エラストマーとしてのパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を有する共重合体と、CNTとを含有し、高温下に置かれてもゴム性能の低下を抑えることができる旨開示されている。
特開2019-189702号公報
しかしながら、特許文献1の技術では必ずしも十分ではなく、例えば300℃を超えるような更なる高温下の環境においても、十分なゴム性能を発揮するエラストマー架橋物が求められている。
本発明の目的は、300℃を超えるような高温下であっても十分なゴム性能を発揮するエラストマー架橋物を提供できる、エラストマー組成物およびエラストマー組成物の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、フッ素含有エラストマーと、カーボンナノチューブの表面を改質した表面改質カーボンナノチューブと、を含み、当該表面改質カーボンナノチューブの水懸濁液のpHが所定値以上であり、かつ、当該表面改質カーボンナノチューブの酸素元素量が所定値未満であるエラストマー組成物を用いれば、高温下であっても十分なゴム性能を発揮するエラストマー架橋物を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のエラストマー組成物は、フッ素含有エラストマーと、カーボンナノチューブの表面を改質した表面改質カーボンナノチューブと、を含むエラストマー組成物であって、前記表面改質カーボンナノチューブの水懸濁液のpHが9以上であり、かつ、X線光電子分光法で測定される前記表面改質カーボンナノチューブの酸素元素量が2atm%未満であることを特徴とする。このような構成のエラストマー組成物によれば、高温下であっても十分なゴム性能を発揮するエラストマー架橋物を提供することができる。
ここで、本発明のエラストマー組成物において、前記表面改質カーボンナノチューブは、X線光電子分光法で測定される窒素元素量が3atm%以上であることが好ましい。表面改質カーボンナノチューブの窒素元素量が上記所定値以上であれば、得られるエラストマー架橋物は、更なる高温下の環境においても、十分なゴム性能を発揮することができる。
また、本発明のエラストマー組成物において、前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブを含有することが好ましい。カーボンナノチューブとして単層カーボンナノチューブを用いれば、得られるエラストマー架橋物の成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を向上させることができる。
さらに、本発明のエラストマー組成物において、前記カーボンナノチューブのBET比表面積が600m/g以上であることが好ましい。カーボンナノチューブのBET比表面積が上記所定値以上であれば、得られるエラストマー架橋物の成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を向上させることができる。
また、本発明のエラストマー組成物において、例えば、前記フッ素含有エラストマーは、パーフルオロエラストマー(FFKM)である。
さらに、本発明のエラストマー組成物において、前記表面改質カーボンナノチューブは、前記フッ素含有エラストマー100質量部に対して、0.1~10質量部含まれることが好ましい。表面改質カーボンナノチューブの含有量が上記範囲内であれば、得られるエラストマー架橋物の成形体において、カーボンナノチューブを良好に分散させることができる。
そして、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のエラストマー組成物の製造方法は、供給されたカーボンナノチューブに対して表面改質処理を行って表面改質カーボンナノチューブを得る表面改質工程と、得られた前記表面改質カーボンナノチューブと、フッ素含有エラストマーと、を混合してエラストマー組成物を得る混合工程と、を備え、前記表面改質カーボンナノチューブの水懸濁液のpHが9以上であり、かつ、X線光電子分光法で測定される前記表面改質カーボンナノチューブの酸素元素量が2atm%未満であることを特徴とする。このような構成のエラストマー組成物の製造方法によれば、高温下であっても十分なゴム性能を発揮するエラストマー架橋物を提供することができる。
ここで、本発明のエラストマー組成物の製造方法において、前記表面改質カーボンナノチューブは、X線光電子分光法で測定される窒素元素量が3atm%以上であることが好ましい。表面改質カーボンナノチューブの窒素元素量が上記所定値以上であれば、得られるエラストマー架橋物は、更なる高温下の環境においても、十分なゴム性能を発揮することができる。
また、本発明のエラストマー組成物の製造方法において、前記表面改質工程は、前記カーボンナノチューブを、窒素ガス以外の窒素含有化合物の環境下でプラズマ処理するプラズマ処理ステップを含むことができる。
さらに、本発明のエラストマー組成物の製造方法において、前記表面改質工程は、前記カーボンナノチューブを、不活性ガスで置換した容器内に配置する不活性ガス処理ステップを備えることができる。
また、本発明のエラストマー組成物の製造方法において、前記混合工程は、前記フッ素含有エラストマーを溶剤に溶解させてエラストマー溶液を得る溶解ステップと、前記エラストマー溶液に前記表面改質カーボンナノチューブを分散させてカーボンナノチューブ分散液を得る分散処理ステップと、前記カーボンナノチューブ分散液から前記溶剤を除去して乾燥物を得る乾燥ステップと、を備えることができる。
さらに、本発明のエラストマー組成物の製造方法において、前記混合工程は、前記乾燥ステップの後に、前記乾燥物と架橋剤を混合して架橋性組成物を得る混練ステップをさらに備えることができる。
また、本発明のエラストマー組成物の製造方法において、前記混合工程は、前記混練ステップで得られた架橋性組成物を架橋してエラストマー架橋物を得る架橋ステップをさらに備えることができる。
さらに、本発明のエラストマー組成物の製造方法において、例えば、前記フッ素含有エラストマーは、パーフルオロエラストマー(FFKM)であり、前記溶剤は、フッ素系溶剤であり、前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブを含有する。
本発明のエラストマー組成物およびエラストマー組成物の製造方法によれば、300℃を超えるような高温下であっても十分なゴム性能を発揮するエラストマー架橋物を提供することができる。
(エラストマー組成物)
以下、本発明のエラストマー組成物について詳細に説明する。
本発明のエラストマー組成物は、フッ素含有エラストマーと、カーボンナノチューブの表面を改質した表面改質カーボンナノチューブ(表面改質CNT)と、を含む。
<フッ素含有エラストマー>
フッ素含有エラストマーとしては、特に限定されることなく、既知のフッ素ゴムを用いることができる。具体的には、フッ素含有エラストマーとしては、例えば、フッ化ビニリデン系ゴム(FKM)、四フッ化エチレン-プロピレン系ゴム(FEPM)、パーフルオロエラストマーとしての四フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル系ゴム(FFKM)、テトラフルオロエチレン系ゴム(TFE)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ここで、フッ化ビニリデン系ゴム(FKM)は、フッ化ビニリデンを主成分とし、耐熱性、耐油性、耐薬品性、耐溶剤性、加工性などに優れるフッ素ゴムである。FKMとしては、特に限定されないが、例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとからなる二元共重合体、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとからなる三元共重合体、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンと加硫サイトモノマーとからなる四元共重合体などが挙げられる。市販品としては、例えば、ケマーズ株式会社の「バイトン(登録商標)」、ダイキン工業株式会社の「ダイエル(登録商標)G」などが挙げられる。中でもフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンと加硫サイトモノマーとからなる四元共重合体が好ましい。当該四元共重合体は、例えば、市販品「バイトンGBL-200S」(ケマーズ株式会社製)として入手可能である。なお、本明細書において、「フッ化ビニリデンを主成分」とするとは、フッ化ビニリデン系ゴム中に含まれるフッ化ビニリデン単位が50質量%以上、好ましくは50質量%超、より好ましくは100質量%であることをいう。
四フッ化エチレン-プロピレン系ゴム(FEPM)は、テトラフルオロエチレンとプロピレンとの交互共重合体をベースとし、耐熱性、耐薬品性、耐極性溶剤性、耐スチーム性などに優れるフッ素ゴムである。FEPMとしては、特に限定されないが、例えば、テトラフルオロエチレンとプロピレンとからなる二元共重合体、テトラフルオロエチレンとプロピレンとフッ化ビニリデンとからなる三元共重合体、テトラフルオロエチレンとプロピレンと架橋点モノマーとからなる三元共重合体などが挙げられる。テトラフルオロエチレンとプロピレンとからなる二元共重合体の市販品としては、例えば、AGC株式会社の「アフラス(登録商標)100」及び「アフラス150」が挙げられる。テトラフルオロエチレンとプロピレンとフッ化ビニリデンとからなる三元共重合体の市販品としては、例えば、AGC株式会社の「アフラス200」が挙げられる。テトラフルオロエチレンとプロピレンと架橋点モノマーとからなる三元共重合体の市販品としては、例えば、AGC株式会社の「アフラス300」が挙げられる。
四フッ化エチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル系ゴム(FFKM)は、主鎖炭素(C)-炭素(C)結合を構成する炭素原子に結合している水素原子(H)が完全にフッ素化されているフッ素ゴムであり、耐熱性や耐薬品性、耐プラズマ性に優れ、半導体装置用シール部材として好適に用いることができる。FFKMは、テトラフルオロエチレン(TFE)由来の構成単位と、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)又はパーフルオロアルコキシアルキルビニルエーテル(PAOVE)由来の構成単位とを含む共重合体を挙げることができる。FFKMは、前記2つの構成単位に加えて、架橋部位を有する構成単位をさらに含んでいてもよい。
パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)は、アルキル基の炭素数が1~5のものを用いることができ、例えば、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)等を挙げることができる。
パーフルオロアルコキシアルキルビニルエーテル(PAOVE)は、ビニルエーテル基(CF2=CFO-)に結合する基の炭素数が3~11であることができ、例えば
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCn2n+1
CF2=CFO(CF23OCn2n+1
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mn2n+1、又は
CF2=CFO(CF22OCn2n+1
を挙げることができる。ここで、nは例えば1~5の整数であり、mは例えば1~3の整数である。
FFKMとしては、例えば、AGC株式会社の「アフラス(登録商標)PM1100」及び「アフラスPM3000」及び「アフラスPM4000」、デュポン社の「カルレッツ(登録商標)」シリーズ、ダイキン工業株式会社の「ダイエル(登録商標)」シリーズ、ソルベイ社の「テクノフロン(登録商標)PFR」シリーズ、3M社の「ダイニオン(登録商標)」シリーズが挙げられる。
<カーボンナノチューブ>
表面改質する前の未処理のカーボンナノチューブ(CNT)としては、例えば、後述する第1の態様のもの、第2の態様のものを用いることができる。なお、以下に記載するCNTの各種特性は、表面改質処理の前後で実質的に変化しない。CNTは、1本ずつに解繊された状態となる場合もあるし、複数本のCNTがバンドル状に形成されたカーボンナノチューブ集合体として構成された状態となる場合もある。
<<第1の態様について>>
第1の態様に係るCNTとしては、以下のものを挙げることができる。
CNTの種類としては、特に限定されず、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブが含まれる。また、複数本のCNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブを主として含むことが好ましく、単層カーボンナノチューブを主として含むことがより好ましい。比較的層数の少ないCNT、特に単層CNTを含むことにより、配合量が少量であっても成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)が向上するからである。なお、前述した「主として含む」とは、複数本のカーボンナノチューブの全本数のうち、半数超を含むことをいう。
CNTの平均直径は、1nm以上であることが好ましく、60nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。CNTの平均直径を前記範囲内とすれば、成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を十分に向上させることができる。ここで、本発明において、CNTの「平均直径」は、透過型電子顕微鏡(TEM)画像上で、例えば、20本のCNTについて直径(外径)を測定し、個数平均値を算出することで求めることができる。
CNTとしては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.80未満のCNTを用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超のCNTであることがより好ましく、3σ/Avが0.50超のCNTがさらに好ましい。3σ/Avが前記範囲内であることにより、成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を更に向上できる。なお、CNTの平均直径(Av)及び標準偏差(σ)は、CNTの製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたCNTを複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
CNTとしては、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
CNTは、平均長さが、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、80μm以上であることが更に好ましく、600μm以下であることが好ましく、550μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましい。CNTの平均長さを前記範囲内とすれば、成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を十分に向上させることができる。なお、本発明において、CNTの「平均長さ」は、走査型電子顕微鏡(SEM)画像上で、例えば、20本のCNTについて長さを測定し、個数平均値を算出することで求めることができる。
CNTは、通常、アスペクト比が10超である。なお、CNTのアスペクト比は、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡を用いて、無作為に選択したCNT20本の直径及び長さを測定し、直径と長さとの比(長さ/直径)の平均値を算出することにより求めることができる。
CNTは、BET比表面積が、600m/g以上であることが好ましく、800m/g以上であることがより好ましく、2000m/g以下であることが好ましく、1800m/g以下であることがより好ましく、1600m/g以下であることが更に好ましい。CNTのBET比表面積が600m/g以上であれば、少ない配合量で成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を十分に高めることができる。また、CNTのBET比表面積が2000m/g以下であれば、CNTのバンドル構造体を良好に解繊することができる。なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
CNTは、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。なお、「t-プロット」は、窒素ガス吸着法により測定されたCNTの吸着等温線において、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより得ることができる。すなわち、窒素ガス吸着層の平均厚みtを相対圧P/P0に対してプロットした、既知の標準等温線から、相対圧に対応する窒素ガス吸着層の平均厚みtを求めて前記変換を行うことにより、CNTのt-プロットが得られる(de Boerらによるt-プロット法)。なお、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示すCNTは、開口処理が施されていないCNTであることが好ましい。
ここで、表面に細孔を有する物質では、窒素ガス吸着層の成長は、次の(1)~(3)の過程に分類される。そして、下記の(1)~(3)の過程によって、t-プロットの傾きに変化が生じる。
(1)全表面への窒素分子の単分子吸着層形成過程
(2)多分子吸着層形成とそれに伴う細孔内での毛管凝縮充填過程
(3)細孔が窒素によって満たされた見かけ上の非多孔性表面への多分子吸着層形成過程
上に凸な形状を示すt-プロットは、窒素ガス吸着層の平均厚みtが小さい領域では、原点を通る直線上にプロットが位置するのに対し、tが大きくなると、プロットが当該直線から下にずれた位置となる。かかるt-プロットの形状を有するCNTは、CNTの全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、CNTを構成する炭素ナノ構造体に多数の開口が形成されていることを示している。
なお、CNTのt-プロットの屈曲点は、0.2≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることが好ましく、0.45≦t(nm)≦1.5の範囲にあることがより好ましく、0.55≦t(nm)≦1.0の範囲にあることが更に好ましい。CNTのt-プロットの屈曲点がかかる範囲内にあれば、少ない配合量で成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を高めることができる。なお、「屈曲点の位置」は、前述した(1)の過程の近似直線Aと、前述した(3)の過程の近似直線Bとの交点である。
因みに、CNTの吸着等温線の測定、t-プロットの作成、及び、t-プロットの解析に基づく全比表面積S1と内部比表面積S2との算出は、例えば、市販の測定装置である「BELSORP(登録商標)-mini」(日本ベル(株)製)を用いて行うことができる。
CNTは、ラマン分光法を用いて評価した際に、RadialBreathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層CNTのラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
また、CNTは、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が0.5以上5.0以下であることが好ましく、1.0以上とすることができ、4.0以下としてもよい。G/D比が0.5以上5.0以下であれば、成形体の特性(例えば、導電性、熱伝導性、強度など)を更に向上させることができる。
なお、CNTは、特に限定されることなく、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法(CVD法)などの既知のCNTの合成方法を用いて製造することができる。具体的には、CNTは、例えば、CNT製造用の触媒層を表面に有する基材上に原料化合物及びキャリアガスを供給し、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるCNTを「SGCNT」と称することがある。スーパーグロース法により製造されたCNTは、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTに加え、例えば、非円筒形状の炭素ナノ構造体等の他の炭素ナノ構造体を含んでいてもよい。
<<第2の態様>>
第2の態様に係るCNTとしては、以下のものを挙げることができる。
第2の態様に係るCNTからなるCNT集合体は、以下の(1)~(3)の条件のうち少なくとも1つを満たし、マトリクス(本発明ではフッ素含有エラストマー)への分散性に優れるものである。
・条件(1)カーボンナノチューブ集合体を、バンドル長が10μm以上になるように分散させて得たカーボンナノチューブ分散体について、フーリエ変換赤外分光分析して得たスペクトルにおいて、カーボンナノチューブ分散体のプラズモン共鳴に基づくピークが、波数300cm-1超2000cm-1以下の範囲に、少なくとも1つ存在する。
・条件(2)カーボンナノチューブ集合体について測定した微分細孔容量分布における最大のピークが、細孔径100nm超400nm未満の範囲にある。
・条件(3)カーボンナノチューブ集合体の電子顕微鏡画像の二次元空間周波数スペクトルのピークが、1μm-1以上100μm-1以下の範囲に少なくとも1つ存在する。
前記条件(1)~(3)のうちの少なくとも1つを満たすCNT集合体が分散性に優れる理由は明らかではないが、以下の通りであると推察される。すなわち、前記条件(1)~(3)のうちの少なくとも1つを満たすCNT集合体を構成するCNTは、波状構造を有する。かかる「波状構造」に起因して、CNT集合体を構成する各CNT間における相互作用が抑制され得ると推察される。各CNT間における相互作用が抑制されていれば、CNT集合体に含まれる各CNTが強固にバンドル化すること及び凝集化することが抑制され得る。これにより、CNT集合体を容易に分散させることが可能となり得る。さらに、CNT集合体が容易に分散可能であれば、かかるCNT集合体の二次加工容易性が向上する、という効果が生じる。
-条件(1)-
条件(1)において、波数300cm-1超2000cm-1以下の範囲に、好ましくは波数500cm-1以上2000cm-1以下の範囲に、より好ましくは波数700cm-1以上2000cm-1以下の範囲に、CNTのプラズモン共鳴に基づくピークが存在していれば、かかるCNTは良好な分散性を呈し得る。
なお、フーリエ変換赤外分光分析により得られたスペクトルにおいて、カーボンナノチューブ分散体のプラズモン共鳴に基づく比較的緩やかなピーク以外に、波数840cm-1付近、1300cm-1付近、及び1700cm-1付近に、鋭いピークが確認されることがある。これらの鋭いピークは、「カーボンナノチューブ分散体のプラズモン共鳴に基づくピーク」には該当せず、それぞれが、官能基由来の赤外吸収に対応している。より具体的には、波数840cm-1付近の鋭いピークは、C-H面外変角振動に起因し;波数1300cm-1付近の鋭いピークは、エポキシ三員環伸縮振動に起因し;波数1700cm-1付近の鋭いピークは、C=O伸縮振動に起因する。
ここで、条件(1)において、フーリエ変換赤外分光分析によるスペクトルを取得するにあたり、バンドル長が10μm以上になるように、カーボンナノチューブ集合体を分散させることにより、カーボンナノチューブ分散体を得る必要がある。ここで、例えば、カーボンナノチューブ集合体、水、及び界面活性剤(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を適切な比率で配合して、超音波等により所定時間にわたり撹拌処理することで、水中に、バンドル長が10μm以上であるカーボンナノチューブ分散体が分散されてなる分散液を得ることができる。
カーボンナノチューブ分散体のバンドル長は、湿式画像解析型の粒度測定装置により解析することで、得ることができる。かかる測定装置は、カーボンナノチューブ分散体を撮影して得られた画像から、各分散体の面積を算出して、算出した面積を有する円の直径(以下、ISO円径(ISO area diameter)とも称することがある)を得ることができる。そして、本明細書では、各分散体のバンドル長は、このようにして得られるISO円径の値であるものとして、定義した。
-条件(2)-
カーボンナノチューブ集合体の微分細孔容量分布は、液体窒素の77Kでの吸着等温線から、BJH(Barrett-Joyner-Halenda)法に基づいて求めることができる。なお、BJH法は、細孔がシリンダ状であると仮定して細孔径分布を求める測定法である。カーボンナノチューブ集合体について測定した微分細孔容量分布におけるピークが100nm超の範囲にあるということは、カーボンナノチューブ集合体において、CNT間にある程度の大きさの空隙が存在し、CNTが過度に過密に凝集した状態となっていないことを意味する。なお、上限の400nmは、実施例で用いた測定装置(BELSORP-mini II)における測定限界である。
ここで、分散性を一層高める観点から、CNT集合体の微分細孔容量分布における最大
のピークにおける微分細孔容量の値が、2cm3/g以上であることが好ましい。
-条件(3)-
かかる条件の充足性は、下記の要領で判定することができる。
まず、判定対象であるCNT集合体を、電子顕微鏡(例えば、電解放射走査型電子顕微鏡)を用いて拡大観察(例えば、1万倍)して、1cm四方の視野で電子顕微鏡画像を複数枚(例えば、10枚)取得する。得られた複数枚の電子顕微鏡画像について、高速フーリエ変換(FFT)処理を行い、二次元空間周波数スペクトルを得る。複数枚の電子顕微鏡画像のそれぞれについて得られた二次元空間周波数スペクトルを二値化処理して、最も高周波数側に出るピーク位置の平均値を求める。得られたピーク位置の平均値が1μm-1以上100μm-1以下の範囲内である場合には、条件(3)を満たすとして判定した。ここで、前記の判定において用いる「ピーク」としては、孤立点の抽出処理(即ち、孤立点除去の逆操作)を実施して得られた明確なピークを用いるものとする。従って、孤立点の抽出処理を実施した際に1μm-1以上100μm-1以下の範囲内にて明確なピークが得られない場合には、条件(3)は満たさないものとして判定する。
ここで、分散性を一層高める観点から、二次元空間周波数スペクトルのピークが、2.6μm-1以上100μm-1以下の範囲に存在することが好ましい。
分散性を一層高める観点から、本発明のカーボンナノチューブ集合体は、前記(1)~(3)の条件のうちを少なくとも2つを満たすことが好ましく、(1)~(3)の条件全てを満たすことがより好ましい。
<第2の態様に係るCNT集合体の性状>
第2の態様に係るCNT集合体は、例えば以下の性状を有していることが好ましい。
CNT集合体は、BET法による全比表面積が、好ましくは600m2/g以上、より好ましくは800m2/g以上であり、好ましくは2600m2/g以下、より好ましくは1400m2/g以下である。さらに開口処理したものにあっては、1300m2/g以上であることが好ましい。高い比表面積を有するCNT集合体は、集合体を構成するCNT同士に隙間があり、過度にCNTがバンドル化していない。そのため、個々のCNT同士が緩やかに結合しており、容易に分散させることが可能になる。CNT集合体は、単層CNTを主として、機能を損なわない程度に、2層CNTと多層CNTを含んでもよい。CNTのBET法による全比表面積は、例えば、JIS Z8830に準拠した、BET比表面積測定装置を用いて測定できる。
また、CNT集合体を構成するCNTの平均高さは、10μm以上10cm以下であることが好ましく、100μm以上2cm以下であることがより好ましい。CNT集合体を構成するCNTの平均高さが10μm以上あると、隣接するCNTバンドルとの凝集を防ぎ、容易に分散させることが可能になる。CNT集合体を構成するCNTの平均高さが100μm以上であれば、CNT同士のネットワークを形成し易くなり、電極形成等の導電性または機械強度が必要とされる用途において好適に用いることができる。CNT集合体を構成するCNTの平均高さが10cm以下であると、生成を短時間で行なえるため炭素系不純物の付着を抑制でき比表面積を向上できる。CNT集合体を構成するCNTの平均高さが2cm以下であればより容易に分散させることが可能になる。なお、CNTの平均高さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて無作為に選択したCNT100本の高さを測定して求めることができる。
CNT集合体のタップかさ密度は、0.001g/cm3以上0.2g/cm3以下であることが好ましい。このような密度範囲にあるCNT集合体は、CNT同士の結びつきが過度に強まらないため、分散性に優れており、様々な形状に成形加工することが可能である。CNT集合体のタップかさ密度が0.2g/cm3以下であれば、CNT同士の結びつきが弱くなるので、CNT集合体を溶媒などに撹拌した際に、均質に分散させることが容易になる。また、CNT集合体のタップかさ密度が0.001g/cm3以上であれば、CNT集合体の一体性が向上されハンドリングが容易になる。タップかさ密度とは、粉体状のCNT集合体を容器に充填した後、タッピングまたは振動等により粉体粒子間の空隙を減少させ、密充填させた状態での見かけかさ密度である。
さらに、CNT集合体を構成するCNTの平均外径は、0.5nm以上であることが好ましく、1.0nm以上であることが更に好ましく、15.0nm以下であることが好ましく、10.0nm以下であることがより好ましく、5.0nm以下であることが更に好ましい。CNTの平均外径が1.0nm以上であれば、CNT同士のバンドル化が低減でき、高い比表面積を維持できる。CNTの平均外径が5.0nm以下であれば、多層CNT比率を低減でき、高い比表面積を維持することができる。ここで、CNTの平均外径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて無作為に選択したCNT100本の直径(外径)を測定して求めることができる。CNTの平均直径(Av)及び標準偏差(σ)は、CNTの製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたCNTを複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
CNT集合体のG/D比は1以上50以下であることが好ましい。G/D比が1に満たないCNT集合体は、単層CNTの結晶性が低く、アモルファスカーボンなどの汚れが多い上、多層CNTの含有量が多いことが考えられる。反対にG/D比が50を超えるCNT集合体は直線性が高く、CNTが隙間の少ないバンドルを形成しやすく、比表面積が減少する可能性がある。G/D比とはCNTの品質を評価するのに一般的に用いられている指標である。ラマン分光装置によって測定されるCNTのラマンスペクトルには、Gバンド(1600cm-1付近)とDバンド(1350cm-1付近)と呼ばれる振動モードが観測される。GバンドはCNTの円筒面であるグラファイトの六方格子構造由来の振動モードであり、Dバンドは非晶箇所に由来する振動モードである。よって、GバンドとDバンドのピーク強度比(G/D比)が高いものほど、結晶性(直線性)の高いCNTと評価できる。
高い比表面積を得るため、CNT集合体の純度は極力高いことが望ましい。ここでいう純度とは、炭素純度であり、CNT集合体の質量の何パーセントが炭素で構成されているかを示す値である。高い比表面積を得る上での純度に上限はないが、製造上、99.9999質量%以上のCNT集合体を得ることは困難である。純度が95質量%に満たないと、開口処理されてない状態で、1000m2/gを超える比表面積を得ることが困難となる。さらに、金属不純物を含んで炭素純度が95質量%に満たないと、開口処理において金属不純物が酸素と反応などしてCNTの開口を妨げるため、結果として、比表面積の拡大が困難となる。これらの点から、単層CNTの純度は95質量%以上であることが好ましい。
本CNT集合体は、精製処理を行わなくても、その純度は、通常、98質量%以上、好ましくは99.9質量%以上である。本発明のCNT集合体には不純物が殆ど混入しておらず、CNT本来の諸特性を充分に発揮することができる。CNT集合体の炭素純度は、蛍光X線を用いた元素分析や熱重量測定分析(TGA)等から得ることができる。
第2の態様に係るカーボンナノチューブ集合体は、流動層法、移動層法及び固定層法等の既知の方途に従うCNT合成工程を用いて製造できる。ここで、流動層法とは、CNTを合成するための触媒を担持した粒状の担体(以下、粒状触媒担持体とも称する)を流動化させながら、CNTを合成する合成方法を意味する。また、移動層法及び固定層法とは、触媒を担持した担体(粒子状担体或いは板状担体)を流動させることなく、CNTを合成する合成方法を意味する。
<表面改質CNT>
表面改質CNTは、前記カーボンナノチューブに対して表面処理されてなる表面改質カーボンナノチューブであって、表面改質カーボンナノチューブの水懸濁液のpHが9以上、かつ、X線光電子分光法で測定される表面改質カーボンナノチューブの酸素元素量が2atm%未満である必要がある。さらに、表面改質カーボンナノチューブの水懸濁液のpHは、9.1以上であることが好ましく、9.2以上であってもよく、9.5以上であってもよい。さらに、X線光電子分光法で測定される表面改質カーボンナノチューブの酸素元素量は、1.8atm%以下であることが好ましく、1.0atm%以下であってもよく、0.5atm%以下であってもよく、0.2atm%以下であってもよい。さらにまた、X線光電子分光法で測定される表面改質カーボンナノチューブの窒素元素量が3atm%以上であることが好ましい。表面改質カーボンナノチューブの水懸濁液のpH並びに酸素元素量及び/又は窒素元素量を上記範囲内とすることで、エラストマー架橋物が300℃を超えるような更なる高温下の環境においても、十分なゴム性能を発揮することができる。
なお、本発明において、表面改質カーボンナノチューブの水懸濁液のpH並びに酸素元素量及び窒素元素量は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
(エラストマー組成物の製造方法)
本発明のエラストマー組成物は、以下の方法により得ることができる。
本発明のエラストマー組成物の製造方法は、前記カーボンナノチューブに対して表面処理を行って表面改質カーボンナノチューブを得る表面改質工程と、得られた前記表面改質カーボンナノチューブと、フッ素含有エラストマーと、を混合してエラストマー組成物を得る混合工程と、を備える。
<表面改質工程>
前記表面改質工程は、前記カーボンナノチューブを合成後、不活性ガス下で保管するステップ(不活性ガス処理ステップ)や、前記保管したカーボンナノチューブをプラズマ処理するステップ(プラズマ処理ステップ)を用いることができる。ここで、保管ステップやプラズマ処理ステップ等の表面改質工程を行うことにより、カーボンナノチューブの表面に酸素元素量の付加を低減させながら、窒素元素量を増加させることができる。
<<不活性ガス処理ステップ>>
カーボンナノチューブを合成した直後に、不活性ガスに置換、密封保管すればよく、既知の手法により実施できる。前記不活性ガスは、特に限定されないが、例えば、アルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素などを挙げることができ、この中でも窒素が好ましい。
前記密封保管は、特に限定されないが、カーボンナノチューブを気密に収容できる方法であれば、その材質や構造などは特に限定されない。密封保管する方法としては、例えば、金属層を含むシートにより形成された袋状容器や、金属、ガラス等の容器に保管する方法を用いることができる。前記袋状容器を形成するシートとしては、例えば、金属層と樹脂層とを含む積層フィルムを用いることができる。前記積層フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの樹脂からなる単層または多層の樹脂シートと、この樹脂シートにアルミなどの金属箔をラミネートしたものなどを挙げることができる。この積層フィルムには、補強のために不織布や紙などを積層してもよい。このような積層フィルムとしては、樹脂シートにアルミをラミネートしたアルミラミネートシートを用いることができる。前記容器は、透湿度が10g/m・24時間以下であることが好ましく、1g/m・24時間であることがより好ましい。ここで、気密容器の透湿度は、JIS Z0222、JIS K7129およびJIS Z0208に準拠して測定できる。前記容器内には、カーボンナノチューブを収容した状態で、容器内を真空にしたりしてもよい。
これにより、カーボンナノチューブと酸素等の活性ガスとの接触を妨げることができ、カーボンナノチューブへの炭素以外の元素の付加を抑えることができる。
<<プラズマ処理ステップ>>
前記保管ステップを経て得たカーボンナノチューブのプラズマ処置は、アンモニア、アミノ含有有機化合物(エチレンジアミン)等の窒素ガス以外の窒素含有化合物を含む処理容器内に表面処理対象であるカーボンナノチューブを配置し、グロー放電により生ずるプラズマにカーボンナノチューブを晒すことにより行うことができる。なお、プラズマ発生の放電形式としては、(1)直流電流および低周波放電、(2)ラジオ波放電、(3)マイクロ波放電などを用いることができる。
プラズマ処置の条件は、特に限定されるものではないが、処理強度は、プラズマ照射面の単位面積当たりのエネルギー出力が0.05~2.0W/cmであることが好ましく、ガス圧力は、5~150Paが好ましい。処理時間は、適宜選択すればよいが、通常、1~600分間、好ましくは、10~400分間である。
処理容器は、特に限定されるものではないが、ドラムであってよく、好ましくは回転可能なドラムであり、この中で、カーボンナノチューブが好転または撹拌されることが好ましい。
<混合工程>
前記混合工程は、前記フッ素含有エラストマーを溶剤に溶解させてエラストマー溶液を得る溶解ステップと、このエラストマー溶液に前記表面改質カーボンナノチューブを混合して分散処理することによりカーボンナノチューブ分散液を得る分散処理ステップと、このカーボンナノチューブ分散液から前記溶剤を除去して乾燥物を得る乾燥ステップと、を備える。したがって、得られる前記エラストマー組成物は、フッ素含有エラストマーと、表面改質カーボンナノチューブと、を含み、任意に、後述する架橋剤及び添加剤等を含有する。
<表面改質CNT含有量>
本発明のエラストマー組成物において、表面改質CNTは、フッ素含有エラストマー100質量部に対して、0.1質量部以上含むことが好ましく、1質量部以上含むことがより好ましく、2質量部以上含むことが更に好ましく、3質量部以上含むことが一層好ましい。また、本発明のエラストマー組成物において、表面改質CNTは、フッ素含有エラストマー100質量部に対して、10質量部以下含むことが好ましく、8質量部以下含むことがより好ましく、7質量部以下含むことが更に好ましく、6質量部以下含むこととしてもよい。エラストマー組成物中の表面改質CNTの含有量が前記範囲内であれば、後述するエラストマー組成物で得られる成形体において、フッ素含有エラストマー中にCNTを一層良好に分散できる。
<<溶解ステップ>>
前記溶解ステップは、前記フッ素含有エラストマーを前記溶剤に溶解すればよく、既知の手法により実施できる。前記溶剤としては、フッ素含有エラストマーを溶解可能な溶剤であれば特に限定されない。このような溶剤として、例えば、メチルエチルケトンやアセトンなどのケトン類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、フッ素系溶剤が挙げられ、この中でもフッ素系溶剤が好ましい。
フッ素系溶剤としては、ペルフルオロ炭化水素基を有する溶剤を用いることができる。ペルフルオロ炭化水素基は、鎖式のペルフルオロ炭化水素基であってもよく、環式のペルフルオロ炭化水素基であってもよい。
鎖式のペルフルオロ炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。鎖式のペルフルオロ炭化水素基としては、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルキレン基、ペルフルオロビニルアルキル基、ペルフルオロビニルアルキレン基等が例示される。ペルフルオロ炭化水素基における最も炭素数の多いペルフルオロ炭化水素基の炭素数は、3~7である。前記炭素数が3以上であると、フッ素系溶剤に対するフッ素含有エラストマーの溶解性が優れる。前記炭素数が7以下であると、フッ素系溶剤を入手しやすい。また、前記炭素数が6以下であると、フッ素系溶剤の沸点が低くなる傾向になり、除去しやすい。
フッ素系溶剤の沸点は、50~160℃であることが好ましい。フッ素系溶剤の沸点が50℃以上であると、分散処理を安定して行うことができる。フッ素系溶剤の沸点が160℃以下であると、フッ素系溶剤を除去しやすい。フッ素系溶剤としては、窒素原子を有する含フッ素化合物、ハイドロフルオロカーボン、およびハイドロフルオロエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一つが好ましい。フッ素系溶剤が窒素原子を有する含フッ素化合物、ハイドロフルオロカーボン、およびハイドロフルオロエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一つであると、フッ素系溶剤へのフッ素含有エラストマーの溶解性が優れる傾向にある。なお、溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
窒素原子を有するフッ素系溶剤の具体例としては、3M社製のフロリナート(登録商標)FC-770が例示される。
ハイドロフルオロカーボンの具体例としては、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタンが例示される。1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサンの市販品としてはAGC社製のアサヒクリン(登録商標)AC-2000、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタンの市販品としてはAGC社製のアサヒクリン(登録商標)AC-6000が例示される。
ハイドロフルオロエーテルの具体例としては、3M社製のノベック(登録商標)7300が例示される。
<<分散処理ステップ>>
前記分散処理ステップは、前記エラストマー溶液中にCNTを分散させることができればよく、既知の分散処理を用いることができる。このような分散処理としては、例えば、ずり応力による分散処理、衝突エネルギーによる分散処理、キャビテーション効果が得られる分散処理を挙げることができる。このような分散処理によれば、比較的簡便に分散処理を実施できる。
ずり応力による分散処理に使用し得る装置としては、2本ロールミルや3本ロールミル等が挙げられる。衝突エネルギーによる分散処理に使用し得る装置としては、ビーズミル、ローター/ステーター型分散機等が挙げられる。キャビテーション効果が得られる分散処理に使用し得る装置としては、ジェットミル、超音波分散機等が挙げられる。前記分散処理の条件は、所望のCNT分散液が得られる範囲であれば特に限定されず、例えば上述した装置における通常の分散条件の範囲内で適宜設定できる。
<<乾燥ステップ>>
前記乾燥ステップは、前記カーボンナノチューブ分散液から前記溶剤を除去できればよく、例えば、凝固法、キャスト法、および乾燥法などの既知の方法を用いることができる。
<<混練ステップ>>
本発明のエラストマー組成物の製造方法における混合工程は、前記乾燥ステップの後に、前記乾燥物に架橋剤や任意の添加剤を混合して架橋性組成物を得る混練ステップを備えることができる。すなわち、前記混練ステップは、前記乾燥物と、前記架橋剤と、任意の添加剤とを混練することにより、架橋性組成物を得ることができる。当該混練工程は、例えば、ミキサー、一軸混練機、二軸混練機、ロール、加圧ニーダー、ブラベンダー(登録商標)、押出機などを用いて行うことができる。
前記架橋剤としては、特に限定されないが、前記エラストマー組成物中のフッ素含有エラストマーを架橋可能な既知の架橋剤を用いることができる。このような架橋剤としては、例えば、パーオキサイド系架橋剤、ビスフェノール系架橋剤、ジアミン系架橋剤、トリアジン系架橋剤、オキサゾール系架橋剤、イミダゾール系架橋剤、チアゾール系架橋剤が挙げられる。なお、架橋剤は、1種単独で、又は、2種以上を混合して用いることができる。また、エラストマー組成物中の架橋剤の含有量は、特に限定されず、既知のエラストマー組成物中において通常使用する量とすることができる。
前記添加剤としては、特に限定されることなく、分散剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、発泡剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、軟化剤、粘着付与剤、可塑剤、離型剤、防臭剤、香料などを挙げることができる。より具体的な添加剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、クレー、酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。なお、添加剤は、1種単独で、又は、2種以上を混合して用いることができる。またエラストマー組成物中の添加剤の含有量は、特に限定されず、既知のエラストマー組成物中において通常使用する量とすることができる。例えば、エラストマー組成物中の添加剤の含有量は、フッ素含有エラストマー100質量部当たり5質量部以上40質量部以下とすることができる。
<<架橋ステップ>>
また、本発明のエラストマー組成物の製造方法における混合工程は、前記混練ステップで得られた架橋性組成物を架橋してエラストマー架橋物を得る架橋ステップを備えることができる。前記架橋ステップは、架橋性組成物を加熱することにより架橋反応を行ってエラストマー架橋物を得ることができる。前記架橋ステップは、例えば、架橋性組成物を所望の形状の金型に投入して加熱することで、プレス成形と架橋ステップとを同時に行うことができる。また、架橋性組成物を所望の形状の金型に投入して加熱することで、プレス成形と一次架橋とを同時に行なった後に、得られた一次架橋物をギヤーオーブン等の加熱装置により再度加熱することで二次架橋を行うこともできる。なお、架橋反応の温度および時間等の条件は、適宜設定できる。
<<成形ステップ>>
また、本発明のエラストマー組成物の製造方法における混合工程は、前記エラストマー架橋物の形状を固定化した成形体を得る成形ステップをさらに備えていてもよい。前記成形ステップは、例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、ロール成形などの任意の方法で実施できる。得られた成形体は、表面改質CNTがフッ素含有エラストマー中に良好に分散しており、導電性、熱伝導性、及び強度などの特性に優れる。
<<成形体の用途>>
前記成形体は、例えば、自動車部品、空調機器、制御機器、給水・給湯機器、高温蒸気装置、半導体装置、食品加工処理装置、分析・理化学機器、液体貯蔵装置及び圧力スイッチ装置、ペイント・塗装設備、印刷・塗布設備、OA機器、燃料電池周辺機器並びに、石油掘削分野及び医療分野などの分野で使用される、高温環境下において高い引張強度及び高い伸びが要求される各種部品として好適に用いることができる。 具体的に、前記成形体は、ホース、シール材、ベルト、防振ゴム、ダイヤフラム、中空ゴム成形体、ロール、チューブなどとして用いることができる。
前記ホースとしては、特に限定されず、例えば、燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジエーターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローラインなどの各種ホースが挙げることができる。
前記シール材としては、特に限定されず、例えば、О-リング、パッキン、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、メカニカルシール、ウェルヘッドシール、電気・電子機器用シール、空気圧機器用シールなどの各種シールが挙げることができる。
前記ベルトとしては、特に限定されず、例えば、動力伝達ベルト、搬送ベルトなどの各種ベルトが挙げることができる。
前記防振ゴムとしては、特に限定されず、例えば、自動車用防振ゴムなどの各種防振ゴムが挙げることができる。
前記ダイヤフラムとしては、特に限定されず、例えば、燃料系、排気系、ブレーキ系、駆動系、点火系などの自動車エンジン用ダイヤフラム;ポンプ用ダイヤフラム;バルブ用ダイヤフラム;フィルタープレス用ダイヤフラム;ブロワー用ダイヤフラム;などの各種ダイヤフラムが挙げることができる。
前記中空ゴム成形体としては、特に限定されず、例えば、タイヤ製造用ブラダー、タイヤ加硫用ブラダーなどの各種ブラダー;フレキシブルジョイント、エキスパンションジョイントなどの各種ジョイント;ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンステアリングブーツ、ピンブーツ、ピストンブーツなどの各種ブーツ;プライマーバルブなどの各種バルブ;等が挙げることができる。
前記ロールとしては、特に限定されず、例えば、印刷ロール;塗布ロール;プリンターなどコピー用ロール;等が挙げることができる。
前記チューブとしては、特に限定されず、例えば、分析機器類のチューブ;ポンプ、反応器、撹拌機、混合機類のチューブ;プリンターなどインキ用チューブ;半導体製造装置用ポンプなどのチューブ;燃料電池用チューブ;高腐食ガス性を要求されるチューブ;等が挙げることができる。
前記エラストマー組成物からなるエラストマー架橋物は、硬度が70~90であることが好ましく、特に、330℃下に70時間静置した後でも、硬度変化が±3ポイント以下と小さいことが好ましい。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
本実施例及び比較例において、得られたエラスマー組成物の硬度変化は、それぞれ以下の方法を使用して測定し評価した。
<硬度変化>
実施例および比較例で得られたシート状のエラストマー架橋物を、ダンベル試験片状(JIS3号)に打ち抜き、試験片を作製した。自動ゴム硬度計(高分子計器社製、製品名「自動ゴム硬度計P1-A型」)を用い、JIS K6253-3:2012に準拠して、試験温度23℃、試験湿度50%の条件下で硬度を測定することで、常態の硬度Hを測定した。ダンベル試験片を330℃のオーブン(光洋サーモシステム社製、型式「INH-9CD-S」)で、大気下、70時間、熱処理をし、熱老化後の試験片を作製した。熱老化後の試験片を自動ゴム硬度計(高分子計器社製、製品名「自動ゴム硬度計P1-A型」)を用い、JIS K6253-3:2012に準拠して、試験温度23℃、試験湿度50%の条件下で硬度を測定することで、330℃熱老化後の硬度Hを測定した。そして、下記式に示す通り、330℃熱老化後の硬度Hと、常態の硬度Hとの差分から、硬度変化ΔHを算出した。
ΔH=H-H
(作製例1:表面改質CNT1)
<CNT合成ステップ>
下記の方法により、カーボンナノチューブとしてSGCNTを合成した。
アルミニウムトリ-sec-ブトキシドを2-プロパノールに溶解させて、塗工液Aを調製した。また、酢酸鉄を2-プロパノールに溶解させて、塗工液Bを調製した。基材としてのステンレス鋼基板の表面に、膜厚40nmのアルミナ薄膜を形成した後、そのアルミナ薄膜層上に膜厚2nmの鉄薄膜層を形成し、触媒基材を得た。この触媒基材に対して還元工程、合成工程および冷却工程を連続的に行なうことで、カーボンナノチューブ(CNT)を合成した。還元工程は、触媒基材に対して水素ガスを供給して実施した。合成工程は、還元工程後の触媒基材に対して原料ガス(炭素化合物としてのエチレンガス、キャリアガスとしての窒素ガス、および賦活剤としての水を含む)を供給して実施した。
得られたSGCNTは、G/D比が3.8、平均直径が4nm、BET比表面積が1446cm2/gであり、炭素純度が99.9%であり、ラマン分光光度計での測定において、単層カーボンナノチューブに特長的な100~300cm-1の低波数領域にラジアルブリージングモード(RBM)のピークが観察された。また、本CNTにおける、吸着等温線から得られるt-プロットは、上に凸な形状を有していた。
<窒素処理ステップ(不活性ガス処理ステップ)>
得られたカーボンナノチューブをアルミラミネート袋(エーディーワイ社製、製品名「MBYシリーズ」、透湿度0.1g/m・24hr)に入れた。次いで、ノズルを差し込み、真空脱気、更に弁の操作により窒素を送り込む作業を繰り返し3回行った後に、ノズルを抜いた瞬間に密封することで、窒素置換された密封包装をした。そして、当該密封包装内でカーボンナノチューブを72時間、室温で保管した。
<プラズマ処理ステップ>
次いで、前記窒素置換し密封包装されたカーボンナノチューブについて、ガス導入可能な真空プラズマ装置(株式会社魁半導体製、製品名「YHS-DφS」)を用い、圧力40Pa、パワー200W(単位面積当たりのエネルギー出力:1.28W/cm)、回転速度5rpm、アンモニアガス導入条件下で、6時間処理(アンモニアプラズマ処理)を実施して、表面改質CNT1を得た。
(作製例2:表面改質CNT2)
<窒素処理ステップ>
アンモニアプラズマ処理を実施しなかったこと以外は、作製例1と同様にして、カーボンナノチューブを合成し、合成したカーボンナノチューブを窒素置換された密封包装にて保管して、表面改質CNT2を得た。
(作製例3:表面改質CNT3)
<大気処理ステップ>
作製例1と同様にして合成したカーボンナノチューブを、大気下で塩ビ広口容器に入れ、カーボンナノチューブを室温で保管して、表面改質CNT3を得た。
(作製例4:表面改質CNT4)
<窒素処理ステップ>
作製例1と同様にして、カーボンナノチューブを合成し、合成したカーボンナノチューブを窒素置換された密封包装にて保管した。
<CNT解繊処理ステップ>
次いで、前記窒素置換し密封包装されたカーボンナノチューブについて、高速気流中に原料を分散させながら、衝突力を主体とした力を用いて乾式で粒子表面を改質可能なハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製、製品名「NHS-1-2L」)を用い、最高回転速度8300min-1、ローター周速度100m/s、3分間処理を実施した。
<プラズマ処理ステップ>
次いで、前記CNT解繊処理をしたカーボンナノチューブについて、ガス導入可能な真空プラズマ装置(株式会社魁半導体製、製品名「YHS-DφS」)を用い、圧力40Pa、パワー200W(単位面積当たりのエネルギー出力:1.28W/cm)、回転速度5rpm、窒素ガス導入条件下で、4時間処理を実施して、表面改質CNT4を得た。
(作製例5:表面改質CNT5)
<窒素処理ステップ>
多層カーボンナノチューブ(MWCNT、クムホ社製、商品名「K-nanos 100P」)を、大気下で塩ビ広口容器に入れ、カーボンナノチューブを保管して、表面改質CNT5を得た。
(作製例6:表面改質CNT6)
<窒素処理ステップ>
作製例4と同様にして、カーボンナノチューブを合成し、合成したカーボンナノチューブを窒素置換された密封包装にて保管した。
<CNT解繊処理ステップ>
次いで、作製例4と同様にして、前記窒素置換し密封包装されたカーボンナノチューブについて解繊処理を行った。
<プラズマ処理ステップ>
次いで、前記解繊処理したカーボンナノチューブについて、作製例1と同様にして、アンモニアプラズマ処理を行って、表面改質CNT6を得た。
得られた表面改質CNT1~表面改質CNT6について、後述する表面改質CNTの水懸濁液のpH測定及び、後述するX線光電子分光法で測定される表面改質CNTの酸素元素量(atm%)と窒素元素量(atm%)とをそれぞれ求めた。その結果を表1に示す。
<pH測定>
SUS容器に表面改質CNT0.15g、純水30g、スターラーチップを加え、120℃、500rpmに設定したスターラー付きオイルバスで11分間加熱撹拌した。加熱撹拌後、室温まで冷却した後、得られた表面改質CNTの水懸濁液のpHを、pHメーター(HORIBA社製、製品名「LAQUA」)、及びイオン液体塩橋搭載pH電極(HORIBA社製、製品名「PURE IL 9600-10D」を用いて測定した。
<X線光電子分光法での測定>
表面改質CNTをカーボン両面テープに固定し、試験片とした。X線光電子分光分析(XPS、KRATOS社製、「AXIS ULTRA DLD」)装置を用いて、得られた試験片を分析することにより、表面改質CNTの酸素元素量(atm%)及び窒素元素量(atm%)を求めた。XPSの分析方法および測定条件は以下のとおりである。
<<分析方法>>
ワイドスキャン分析およびナノ―スキャン分析
<<測定条件>>
X線源:AlKαモノクロメータ
X線条件:150W(加速電圧15kV、電流値10mA)
光電子取り込み角度:試料表面と検出器方向の角度θ90°
<<測定条件>>
上記の測定条件により、最初にワイドスキャン分析を行い、試験片に存在する元素を確認し、その後、検出された全元素のナロースキャン分析を行った。次いで、解析アプリケーション(KRATOS社製、「Vision Processing」)を用いて、測定された各元素のピーク面積を積分し、元素別の感度係数で補正後、表面改質CNTの元素比(酸素元素量、窒素元素量)を算出した。
Figure 2022086825000001
(実施例1)
溶剤としての3M社製のノベック(登録商標)7300を1899gに、フッ素含有エラストマーとしてのFFKM(AGC社製、商品名「Aflas PM-1100」)100部(100g)を加え、温度20℃で12時間撹拌してフッ素含有エラストマーを溶解させて、フッ素含有エラストマー溶液を得た(溶解ステップ)。
次に、フッ素含有エラストマー溶液に対し、作製例1で得られた表面改質カーボンナノチューブ1(表面改質CNT1)を2部(2g)加え、撹拌機(PRIMIX社製、ラボ・リューション(登録商標)、撹拌部:ホモディスパー)を用い、温度20℃で30分間撹拌した。更に、ビーズミル(淺田鉄工社製、商品名「ナノミル NM-G1.4L」、分散メディアとしてジルコニアビーズ(分散メディアの平均直径:0.65mm)を用い、表面改質CNTを加えたフッ素含有エラストマー溶液を、温度40℃で3パス分散処理して(分散処理の条件:周速12.5m/s、吐出量74g/分)、カーボンナノチューブ分散液を得た(分散処理ステップ)。
得られた分散液を2000gのメチルエチルケトン(MEK)へ滴下し、凝固させて黒色固体を得た。得られた黒色固体を120℃で12時間減圧乾燥し、フッ素含有エラストマーとSGCNTとの混合物を得た(乾燥ステップ)。
50℃のオープンロールを用い、前記混合物102部と、架橋剤としてのトリアリルイソシアヌレート(日本化成社製、製品名「TAIC(登録商標)」)3部及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(日本油脂社製、商品名「パーヘキサ(登録商標)25B-40」2部とを混練し、架橋性組成物を得た(混練ステップ)。
得られた架橋性組成物を金型に投入し、温度150℃、圧力10MPaで20分間架橋させて、一次加硫後のシート状の架橋物(長さ:150mm、幅:150mm、厚さ:2mm)を得た。次いで、250℃のギヤ―オーブン(東洋精機社製、型式「S60」)で4時間熱処理することで、二次加硫後のシート状のエラストマー架橋物を得た(架橋ステップ)。このエラストマー架橋物について、330℃、70時間熱老化後の硬度変化を求めた。結果を表1に示す。
(実施例2)
フッ素含有エラストマー溶液に対して添加する表面改質CNT1の量を4部(4g)に変更した以外は実施例1と同様にして、シート状のエラストマー架橋物を作製した。同様にして各種測定を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
表面改質CNT1の代わりに表面改質CNT2を用いた以外は実施例1と同様にして、シート状のエラストマー架橋物を作製した。同様にして各種測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
表面改質CNT1の代わりに表面改質CNT3を用いた以外は実施例1と同様にして、シート状のエラストマー架橋物を作製した。同様にして各種測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
表面改質CNT1の代わりに表面改質CNT4を用いた以外は実施例1と同様にして、シート状のエラストマー架橋物を作製した。同様にして各種測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
表面改質CNT1の代わりに表面改質CNT5を用いた以外は実施例1と同様にして、シート状のエラストマー架橋物を作製した。同様にして各種測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
表面改質CNT1の代わりに表面改質CNT6を用いた以外は実施例1と同様にして、シート状のエラストマー架橋物を作製した。同様にして各種測定を行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、水懸濁液の状態で測定されるpHが9以上で、かつ酸素元素量が2atm%未満である表面改質CNTを含有する実施例1~3のエラストマー組成物を用いて形成されたエラストマー架橋物は、これらを満たさない比較例1~4のエラストマー組成物を用いて形成されたエラストマー架橋物と比較し、温度330℃での熱老化後の硬度変化が小さいことが分かる。また、窒素置換した容器に保管したCNTに対してアンモニアプラズマ処理を施した表面改質CNT1を用いた実施例1、2は、窒素置換した容器に保管したCNTとしての表面改質CNT2を用いた実施例3に比べて、エラストマー架橋物の温度330℃での熱老化後の硬度変化がさらに小さいことが分かる。
本発明のエラストマー組成物およびエラストマー組成物の製造方法によれば、300℃を超えるような高温下であっても十分なゴム性能を発揮するエラストマー架橋物を提供することができる。

Claims (14)

  1. フッ素含有エラストマーと、カーボンナノチューブの表面を改質した表面改質カーボンナノチューブと、を含むエラストマー組成物であって、
    前記表面改質カーボンナノチューブの水懸濁液のpHが9以上であり、かつ、X線光電子分光法で測定される前記表面改質カーボンナノチューブの酸素元素量が2atm%未満である、エラストマー組成物。
  2. 請求項1に記載のエラストマー組成物において、
    前記表面改質カーボンナノチューブは、X線光電子分光法で測定される窒素元素量が3atm%以上である、エラストマー組成物。
  3. 請求項1または2に記載のエラストマー組成物において、
    前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブを含有する、エラストマー組成物。
  4. 請求項1~3のいずれかに記載のエラストマー組成物において、
    前記カーボンナノチューブのBET比表面積が600m/g以上である、エラストマー組成物。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載のエラストマー組成物において、
    前記フッ素含有エラストマーは、パーフルオロエラストマー(FFKM)である、エラストマー組成物。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載のエラストマー組成物において、
    前記表面改質カーボンナノチューブは、前記フッ素含有エラストマー100質量部に対して、0.1~10質量部含まれる、エラストマー組成物。
  7. 供給されたカーボンナノチューブに対して表面改質処理を行って表面改質カーボンナノチューブを得る表面改質工程と、
    得られた前記表面改質カーボンナノチューブと、フッ素含有エラストマーと、を混合してエラストマー組成物を得る混合工程と、を備え、
    前記表面改質カーボンナノチューブの水懸濁液のpHが9以上であり、かつ、X線光電子分光法で測定される前記表面改質カーボンナノチューブの酸素元素量が2atm%未満である、エラストマー組成物の製造方法。
  8. 請求項7に記載のエラストマー組成物の製造方法において、
    前記表面改質カーボンナノチューブは、X線光電子分光法で測定される窒素元素量が3atm%以上である、エラストマー組成物の製造方法。
  9. 請求項7または8に記載のエラストマー組成物の製造方法において、
    前記表面改質工程は、前記カーボンナノチューブを、窒素ガス以外の窒素含有化合物の環境下でプラズマ処理するプラズマ処理ステップを含む、エラストマー組成物の製造方法。
  10. 請求項7~9のいずれかに記載のエラストマー組成物の製造方法において、
    前記表面改質工程は、前記カーボンナノチューブを、不活性ガスで置換した容器内に配置する不活性ガス処理ステップを備える、エラストマー組成物の製造方法。
  11. 請求項7~10のいずれかに記載のエラストマー組成物の製造方法において、
    前記混合工程は、前記フッ素含有エラストマーを溶剤に溶解させてエラストマー溶液を得る溶解ステップと、
    前記エラストマー溶液に前記表面改質カーボンナノチューブを分散させてカーボンナノチューブ分散液を得る分散処理ステップと、
    前記カーボンナノチューブ分散液から前記溶剤を除去して乾燥物を得る乾燥ステップと、
    を備える、エラストマー組成物の製造方法。
  12. 請求項11に記載のエラストマー組成物の製造方法において、
    前記混合工程は、前記乾燥ステップの後に、前記乾燥物と架橋剤を混合して架橋性組成物を得る混練ステップをさらに備える、エラストマー組成物の製造方法。
  13. 請求項12に記載のエラストマー組成物の製造方法において、
    前記混合工程は、前記混練ステップで得られた架橋性組成物を架橋してエラストマー架橋物を得る架橋ステップをさらに備える、エラストマー組成物の製造方法。
  14. 請求項7~13のいずれかに記載のエラストマー組成物の製造方法において、
    前記フッ素含有エラストマーは、パーフルオロエラストマー(FFKM)であり、
    前記溶剤は、フッ素系溶剤であり、
    前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブを含有する、エラストマー組成物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2022255472A1 (ja) 2021-06-03 2022-12-08 日本精工株式会社 グリースの劣化検知方法及び潤滑剤の劣化検知方法
CN115716895A (zh) * 2022-11-14 2023-02-28 上海森桓新材料科技有限公司 含氟聚合物的合成方法、含氟橡胶及其制备方法

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