JP2022078359A - アクリルゴム組成物およびゴム架橋物 - Google Patents

アクリルゴム組成物およびゴム架橋物 Download PDF

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Abstract

【課題】高温環境下においても、熱による加熱劣化が有効に防止されたアクリルゴム組成物の提供。【解決手段】アクリルゴムと、下記一般式で表される化合物とを含有するアクリルゴム組成物。TIFF2022078359000018.tif65168(式中、R1~R3は、炭素数1~30の有機基を表す。)【選択図】なし

Description

本発明は、アクリルゴム組成物に係り、熱による加熱劣化が有効に防止されたアクリルゴム組成物および該アクリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物に関する。
石油化学の発展に伴い、有機化合物で構成される重合体はプラスチック、ゴム、繊維、フィルムといった様々な形態で人類の発展に貢献してきた。これらは用途に応じ様々な環境下で用いられることから、想定される環境下での耐久性を各々賦与することで長期間使用できるように改良が施されてきた。たとえば、屋外で用いられるプラスチックには耐紫外線性能を、極寒地でも機能するゴムには耐寒性能を賦与した製品が開発されてきた。
一方、産業の発展に伴い使用量が増大してきた、エンジンに代表される内燃機関は潤滑油を必要とし、かつ多大な熱を発生することから、それに使用される重合体にはオイルや高温への耐性が要求される。特に自動車のエンジン回りの重合体には、オイルや高温に曝されても長時間柔軟性を維持でき、亀裂などの欠陥を生じないといった特性が求められる。こうした要求に応えるべく様々な耐油・耐熱性ゴムが開発されてきたが、中でもアクリルゴムは、ゴム弾性を有し、耐油性、耐熱特性、柔軟性に優れたポリマーとして、自動車のエンジン回りのシール、ガスケット、パッキン、ホースといった部材として幅広く使用されており、要求特性に応じて架橋構造や老化防止剤、配合剤を工夫し耐油性、耐熱性をさらに強化している。たとえば、特許文献1には、耐熱性を向上させる老化防止剤について開示されている。しかしながら、このような老化防止剤だけでは、熱によるポリマーの低分子量化および意図しない架橋反応は抑制できず、そのため、190℃以上におけるさらなる耐熱要求に対応するには不充分であった。
また、特許文献2では、再生ブチルゴムを含むゴム成分に、特定トリアジン化合物を特定量配合することで、環境負荷が低減され、耐スコーチ性、弾性率および破断伸びに優れるゴム組成物を提供する技術が開示されている。しかしながら、特許文献2には、アクリルゴムの加熱劣化を防止することについてはもちろんのこと、再生ブチルゴムの加熱劣化を防止することについても開示がなされていない。
特許第5682575号公報 特開2013-23675号公報
本発明は、上記実状に鑑みてなされ、高温環境下(たとえば、190℃以上の環境下)においても、熱による加熱劣化が有効に防止されたアクリルゴム組成物を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、アクリルゴムに、特定のメラミン化合物を配合してなるアクリルゴム組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、アクリルゴムと、下記一般式(1)で表される化合物とを含有するアクリルゴム組成物が提供される。
Figure 2022078359000001
(上記一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。)
本発明において、前記一般式(1)で表される化合物中のR~Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素環基または置換基を有していてもよい炭素数1~30の芳香族複素環基であることが好ましい。
本発明において、前記一般式(1)で表される化合物中のR~Rは、置換基を有していてもよいフェニル基またはナフチル基であることが好ましい。
本発明において、前記一般式(1)で表される化合物中のR~Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状、または環状の炭素数1~20のアルキル基であることが好ましい。
本発明において、前記アクリルゴム100重量部に対する、前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、0.1~50重量部であることが好ましい。
本発明において、前記アクリルゴム100重量部に対する、前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、1~10重量部であることがより好ましい。
本発明において、前記アクリルゴムが、カルボキシル基含有アクリルゴム、エポキシ基含有アクリルゴム、ハロゲン原子含有アクリルゴム、または、カルボキシル基およびハロゲン原子含有アクリルゴムであることが好ましい。
本発明において、前記アクリルゴムが、エチレン-アクリレートゴム0.1~100重量%を含むものであることが好ましい。
本発明において、前記一般式(1)で表される化合物以外の老化防止剤をさらに含有し、前記アクリルゴム100重量部に対する、前記一般式(1)で表される化合物と前記老化防止剤との合計の含有量が、0.1~50重量部であることが好ましい。
本発明において、前記アクリルゴム100重量部に対し、0.05~20重量部の架橋剤をさらに含有することが好ましい。
また、本発明によれば、上記本発明のアクリルゴム組成物を架橋させてなるゴム架橋物が提供される。
本発明のゴム架橋物は、押出成形品またはシール部材であることが好ましい。
本発明によれば、高温環境下(たとえば、190℃以上の環境下)においても、熱による加熱劣化が有効に防止されたアクリルゴム組成物および該アクリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物を提供することができる。
本発明のアクリルゴム組成物は、アクリルゴムと、後述する一般式(1)で表される化合物とを含有するものである。
<アクリルゴム>
本発明で用いるアクリルゴムは、分子中に、主成分(本発明において、アクリルゴム中の全単量体単位中50重量%以上有するものを言う。)として、(メタ)アクリル酸エステル単量体〔アクリル酸エステル単量体および/またはメタクリル酸エステル単量体の意。以下、(メタ)アクリル酸メチルなど同様。〕単位を含有するものであればよく、特に限定されない。
本発明で用いるアクリルゴムの主成分としての(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、たとえば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体などを挙げることができる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数1~8のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、および(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エチル、および(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数2~8のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、および(メタ)アクリル酸4-メトキシブチルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルが好ましく、アクリル酸2-エトキシエチル、およびアクリル酸2-メトキシエチルが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
本発明で用いるアクリルゴム中における、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、50~100重量%であり、好ましくは50~99.9重量%、より好ましくは60~99.5重量%、さらに好ましくは70~99.5重量%、特に好ましくは70~99重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎると、耐候性、耐熱性、および耐油性が低下するおそれがある。
なお、本発明において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位30~100重量%、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位70~0重量%からなるものとすることが好ましい。
また、本発明で用いるアクリルゴムは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位に加えて、架橋性単量体単位を含有するものであってもよい。
架橋性単量体単位を形成する架橋性単量体としては、特に限定されないが、たとえば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体;エポキシ基を有する単量体;ハロゲン原子を有する単量体;ジエン単量体;などが挙げられる。これらの架橋性単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、特に限定されないが、たとえば、炭素数3~12のα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸、炭素数4~12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸、および炭素数4~12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1~8のアルカノールとのモノエステルなどが挙げられる。
炭素数3~12のα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、クロトン酸、およびケイ皮酸などが挙げられる。
炭素数4~12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸の具体例としては、フマル酸、マレイン酸などのブテンジオン酸;イタコン酸;シトラコン酸;クロロマレイン酸;などが挙げられる。
炭素数4~12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1~8のアルカノールとのモノエステルの具体例としては、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn-ブチルなどのブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキセニルなどの脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn-ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノエステル;などが挙げられる。
これらの中でも、ブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル、または脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステルが好ましく、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノn-ブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘキシルがより好ましく、マレイン酸モノシクロヘキシルがさらに好ましい。これらのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。なお、上記単量体のうち、ジカルボン酸には、無水物として存在しているものも含まれる。
本発明において、架橋性単量体として、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体を用いた場合には、アクリルゴムを、カルボキシル基含有アクリルゴムとすることができる。アクリルゴムを、カルボキシル基含有アクリルゴムとすると、アクリルゴムの耐熱老化性をより向上させることができる。
本発明で用いるアクリルゴムが、カルボキシル基含有アクリルゴムである場合における、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有量は、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~7重量%、さらに好ましくは1~5重量%である。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が上記範囲であることにより、得られるゴム架橋物の強度と伸びとのバランスを、より優れたものとすることができる。また、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が少なすぎると、架橋が不十分となり、得られるゴム架橋物の形状維持が困難になる場合があり、一方、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が多すぎると、得られるゴム架橋物の伸びが低下したり、圧縮永久歪率が増大したりする可能性がある。
また、本発明で用いるアクリルゴムが、カルボキシル基含有アクリルゴムである場合における、カルボキシル基の含有量、すなわち、アクリルゴム100g当たりのカルボキシル基のモル数(ephr)は、好ましくは4×10-4~4×10-1(ephr)、より好ましくは1×10-3~2×10-1(ephr)、さらに好ましくは5×10-3~1×10-1(ephr)である。カルボキシル基の含有量が少なすぎると、架橋が不十分となり、得られるゴム架橋物の機械的特性が不十分となったり、成形品の表面肌が滑らかさに欠けたりするおそれがある。一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の伸びが低下したり、圧縮永久歪率が増大したりする可能性がある。
エポキシ基を有する単量体としては、特に限定されないが、たとえば、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基含有エーテルなどが挙げられる。
エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
エポキシ基含有エーテルの具体例としては、アリルグリシジルエーテルおよびビニルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸グリシジルおよびアリルグリシジルエーテルが好ましい。これらエポキシ基を有する単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
本発明において、架橋性単量体として、エポキシ基を有する単量体を用いた場合には、アクリルゴムを、エポキシ基含有アクリルゴムとすることができる。
本発明で用いるアクリルゴムが、エポキシ基含有アクリルゴムである場合における、エポキシ基を有する単量体単位の含有量は、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~7重量%、さらに好ましくは0.5~5重量%である。エポキシ基を有する単量体単位の含有量が上記範囲であることにより、得られるゴム架橋物の強度と伸びとのバランスを、より優れたものとすることができる。また、エポキシ基を有する単量体単位の含有量が少なすぎると、架橋が不十分となり、得られるゴム架橋物の形状維持が困難になる場合があり、一方、エポキシ基を有する単量体単位の含有量が多すぎると、得られるゴム架橋物の伸びが低下したり、圧縮永久歪率が増大したりする可能性がある。
ハロゲン原子を有する単量体としては、特に限定されないが、たとえば、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、ハロゲン含有不飽和エーテル、ハロゲン含有不飽和ケトン、ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物、ハロゲン含有不飽和アミド、およびハロアセチル基含有不飽和単量体などが挙げられる。
ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルの具体例としては、クロロ酢酸ビニル、2-クロロプロピオン酸ビニル、およびクロロ酢酸アリルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2-ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロプロピル、および(メタ)アクリル酸2,3-ジクロロプロピルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセトキシ)プロピル、および(メタ)アクリル酸3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチル、および(メタ)アクリル酸3-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピルなどが挙げられる。
ハロゲン含有不飽和エーテルの具体例としては、クロロメチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、3-クロロプロピルビニルエーテル、2-クロロエチルアリルエーテル、および3-クロロプロピルアリルエーテルなどが挙げられる。
ハロゲン含有不飽和ケトンの具体例としては、2-クロロエチルビニルケトン、3-クロロプロピルビニルケトン、および2-クロロエチルアリルケトンなどが挙げられる。
ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物の具体例としては、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、o-クロロメチルスチレン、およびp-クロロメチル-α-メチルスチレンなどが挙げられる。
ハロゲン含有不飽和アミドの具体例としては、N-クロロメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
ハロアセチル基含有不飽和単量体の具体例としては、3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p-ビニルベンジルクロロ酢酸エステルなどが挙げられる。
これらの中でも、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、およびハロゲン含有不飽和エーテルが好ましく、クロロ酢酸ビニル、および2-クロロエチルビニルエーテルがより好ましく、クロロ酢酸ビニルがさらに好ましい。これらハロゲン原子を有する単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
本発明において、架橋性単量体として、ハロゲン原子を有する単量体を用いた場合には、アクリルゴムを、ハロゲン原子含有アクリルゴムとすることができる。
本発明で用いるアクリルゴムが、ハロゲン原子含有アクリルゴムである場合における、ハロゲン原子を有する単量体単位の含有量は、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~7重量%、さらに好ましくは0.5~5重量%である。ハロゲン原子を有する単量体単位の含有量が上記範囲であることにより、得られるゴム架橋物の強度と伸びとのバランスを、より優れたものとすることができる。また、ハロゲン原子を有する単量体単位の含有量が少なすぎると、架橋が不十分となり、得られるゴム架橋物の形状維持が困難になる場合があり、一方、ハロゲン原子を有する単量体単位の含有量が多すぎると、得られるゴム架橋物の伸びが低下したり、圧縮永久歪率が増大したりする可能性がある。
また、本発明において、架橋性単量体として、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体およびハロゲン原子を有する単量体を用いることにより、アクリルゴムを、カルボキシル基およびハロゲン原子含有アクリルゴムとすることができる。
本発明で用いるアクリルゴムが、カルボキシル基およびハロゲン原子含有アクリルゴムである場合における、架橋性単量体の具体例としては、上述したカルボキシル基含有アクリルゴムおよびハロゲン原子含有アクリルゴムにおける架橋性単量体と同様なものを挙げられるが、これらのなかでも、メタクリル酸とp-クロロメチルスチレンとを併用することが好ましい。
本発明で用いるアクリルゴムが、カルボキシル基およびハロゲン原子含有アクリルゴムである場合における、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位およびハロゲン原子を有する単量体単位の合計含有量は、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~7重量%、さらに好ましくは0.5~5重量%である。これらα,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位およびハロゲン原子を有する単量体単位の含有量が少なすぎると、架橋が不十分となり、得られるゴム架橋物の形状維持が困難になる場合があり、一方、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位およびハロゲン原子を有する単量体単位の合計含有量が多すぎると、得られるゴム架橋物の伸びが低下したり、圧縮永久歪率が増大したりする可能性がある。
α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位とハロゲン原子を有する単量体単位との含有比は、[α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位:ハロゲン原子を有する単量体単位]の重量比で、[1:1.5~1:10]が好ましく、[1:2~1:8]がより好ましい。
ジエン単量体としては、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体が挙げられる。
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、およびピペリレンなどを挙げることができる。
非共役ジエン単量体の具体例としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、および(メタ)アクリル酸2-ジシクロペンタジエニルエチルなどを挙げることができる。
上述したα,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体、エポキシ基を有する単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ジエン単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
なお、本発明で用いるアクリルゴムが、上述したカルボキシル基含有アクリルゴム、エポキシ基含有アクリルゴム、ハロゲン原子含有アクリルゴム、または、カルボキシル基およびハロゲン原子含有アクリルゴムである場合には、必要に応じて、その他の架橋性単量体単位を有していてもよい。その他の架橋性単量体単位を形成する架橋性単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。本発明で用いるアクリルゴム中における、その他の架橋性単量体単位の含有量は、好ましくは0~9.9重量%、より好ましくは0~6.5重量%、さらに好ましくは0~4.5重量%、特に好ましくは0~4重量%である。(ただし、アクリルゴム中における、全ての架橋性単量体単位の合計量としては、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~7重量%、さらに好ましくは0.5~5重量%、特に好ましくは1~5重量%である。)これら架橋性単量体単位の含有量が多すぎると、得られるゴム架橋物の伸びが低下したり、圧縮永久歪率が増大したりする可能性がある。
また、本発明で用いるアクリルゴムは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、および架橋性単量体単位に加えて、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル単量体や、架橋性単量体と共重合可能なその他の単量体の単位を有していてもよい。
共重合可能なその他の単量体としては、特に限定されないが、たとえば、芳香族ビニル単量体、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、アクリロイルオキシ基を2個以上有する単量体(以下、「多官能アクリル単量体」と言うことがある。)、オレフィン系単量体、およびビニルエーテル化合物などが挙げられる。
芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、およびジビニルベンゼンなどが挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
多官能アクリル単量体の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
オレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、および1-オクテンなどが挙げられる。
ビニルエーテル化合物の具体例としては、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、およびn-ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
これらの中でも、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレンおよび酢酸ビニルが好ましく、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレンおよび酢酸ビニルがより好ましい。
共重合可能なその他の単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
アクリルゴム中における、その他の単量体の単位の含有量は、好ましくは0~50重量%、より好ましくは0~49.9重量%、さらに好ましくは0~39.5重量%、特に好ましくは0~29.5重量%である。
本発明で用いるアクリルゴムは、上記単量体を重合することにより得ることができる。重合反応の形態としては、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、および溶液重合法のいずれも用いることができるが、重合反応の制御の容易性などの点から、従来公知のアクリルゴムの製造法として一般的に用いられている常圧下での乳化重合法によるのが好ましい。
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合は、通常、0~70℃、好ましくは5~50℃の温度範囲で行われる。
本発明で用いるアクリルゴムの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは50,000~5,000,000、より好ましくは100,000~4,000,000、さらに好ましくは150,000~3,500,000である。アクリルゴムの重量平均分子量は、たとえば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによって、ポリスチレン換算の値として測定することができる。
このようにして製造される、本発明で用いるアクリルゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)(ポリマームーニー)は、好ましくは10~80、より好ましくは20~70、さらに好ましくは25~60である。
本発明においては、このように製造されるアクリルゴムを、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
本発明においては、このように製造されるアクリルゴムとして、エチレン-アクリレートゴム0.1~100重量%を含むものを用いてもよい。
アクリルゴムとして、エチレン-アクリレートゴム0.1~100重量%を含むものを用いる場合における、エチレン-アクリレートゴムと、エチレン-アクリレートゴム以外のアクリルゴムとの割合は、通常、「エチレン-アクリレートゴム:エチレン-アクリレートゴム以外のアクリルゴム」=0.1~100重量%:99.9~0重量%、好ましくは10~100重量%:90~0重量%、より好ましくは20~100重量%:80~0重量%である。エチレン-アクリレートゴムの割合が上記範囲内であると、アクリルゴムの加工性、ならびに得られるゴム架橋物の強度などの機械的特性、および耐熱性を優れたものとすることができる。
エチレン-アクリレートゴムとしては、分子中に、主成分としての(メタ)アクリル酸エステル単量体単位50~99.9重量%、エチレン単量体単位0.1~50重量%、および架橋性単量体単位0~10重量%を含有する重合体であることが好ましい。
また、エチレン-アクリレートゴム以外のアクリルゴムとしては、上述した、主成分としての(メタ)アクリル酸エステル単量体単位50~100重量%、および架橋性単量体単位0~10重量%を含有する重合体などを用いることができる。
エチレン-アクリレートゴムの主成分として好適である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体などを挙げることができる。
エチレン-アクリレートゴム中における、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは50~99.9重量%、より好ましくは59.5~99重量%、さらに好ましくは69~98重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐候性、耐熱性、および耐油性が低下するおそれがある。
なお、エチレン-アクリレートゴムにおいては、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位30~100重量%、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位70~0重量%からなるものとすることが好ましい。
本発明で用いるエチレン-アクリレートゴムは、エチレン単量体単位を必須成分とし、エチレン単量体単位の含有量は、好ましくは0.1~50重量%、より好ましくは0.5~40重量%、さらに好ましくは1~30重量%である。エチレン単量体単位の含有量が上記範囲内にあると、得られるゴム架橋物の強度などの機械的特性、耐候性、耐熱性、および耐油性に優れる。
エチレン-アクリレートゴムは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位およびエチレン単量体単位に加えて、架橋性単量体単位を含有していてもよい。なお、架橋性単量体単位としては、上述したものが挙げられる。エチレン-アクリレートゴム中における、架橋性単量体単位の含有量は、好ましくは0~10重量%、より好ましくは0.5~7重量%、さらに好ましくは1~5重量%である。架橋性単量体単位の含有量が多すぎると、得られるゴム架橋物の伸びが低下したり、圧縮永久歪率が増大したりする可能性がある。
なお、上述した架橋性単量体のなかでも、本発明で用いるエチレン-アクリレートゴムを、カルボキシル基を架橋点として持つカルボキシル基含有エチレン-アクリレートゴムとすることができ、これにより、本発明で用いるアクリルゴムの耐熱老化性を向上させることができるという点より、エチレン-アクリレートゴムおよびエチレン-アクリレートゴム以外のアクリルゴムの一部の単量体単位を形成する架橋性単量体として、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体を用いることが好ましい。
また、本発明で用いるエチレン-アクリレートゴムは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、エチレン単量体単位、および架橋性単量体単位に加えて、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル単量体、エチレン、および架橋性単量体と共重合可能なその他の単量体の単位を有していてもよい。共重合可能なその他の単量体としては、上述したものが挙げられる。本発明で用いるエチレン-アクリルゴム中における、その他の単量体の単位の含有量は、好ましくは0~49.9重量%、より好ましくは0~39.5重量%、さらに好ましくは0~29重量%である。
本発明で用いるアクリルゴムを構成するエチレン-アクリレートゴムは、上記単量体を重合することにより得ることができる。重合反応の形態としては、上述したように、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、および溶液重合法のいずれも用いることができ、任意の重合法を選択することができる。
本発明で用いるアクリルゴムが、エチレン-アクリレートゴムとエチレン-アクリレートゴム以外のアクリルゴムとを含む場合には、上述した方法により得られたエチレン-アクリレートゴムとエチレン-アクリレートゴム以外のアクリルゴムとを、公知の方法により混合して、本発明で用いるアクリルゴムを得ることができる。混合の方法は、特に限定されないが、それぞれのアクリルゴムを単離した後に、ドライブレンドを行う方法が好適である。
<一般式(1)で表される化合物>
本発明のアクリルゴム組成物は、上述したアクリルゴムに、下記一般式(1)で表される化合物を配合してなるものである。
Figure 2022078359000002
(上記一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。)
上記一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基であり、好ましくは、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状、もしくは環状の炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい炭素数1~30の芳香族複素環基である。
有機基が、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状、もしくは環状の炭素数1~20のアルキル基である場合には、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1~10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2-クロロフェニル基などの置換基を有していてもよいフェニル基;トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基などの炭素数1~10のハロゲン化アルキル基;ビニル基、アリル基などの置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基;アミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基などの置換基を有していてもよいアミノ基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SOR;-SOR;-O-C(=O)-OR;-NR-C(=O)-R’;-C(=O)-NRR’;-O-C(=O)-NRR’;-NRC(=O)NR’R’’;上記に例示した置換基におけるO原子をS原子に置き換えた置換基;などが挙げられる。ここで、R、R’、およびR’’は、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1~20の有機基を表す。R、R’、およびR’’としては特に限定はされないが、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数6~20のフェニル基が好ましい。
また、有機基が、置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい炭素数1~30の芳香族複素環基である場合には、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1~10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、t-ブチル基などの炭素数1~10のアルキル基;トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基などの炭素数1~10のハロゲン化アルキル基;ビニル基、アリル基などの置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基;アミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基などの置換基を有していてもよいアミノ基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SOR;-SOR;-O-C(=O)-OR;-NR-C(=O)-R’;-C(=O)-NRR’;-O-C(=O)-NRR’;-NRC(=O)NR’R’’;上記に例示した置換基におけるO原子をS原子に置き換えた置換基;などが挙げられる。ここで、R、R’、およびR’’としては、上述のR、R’、およびR’’の説明で挙げたものと同様の基を表す。
なお、上記一般式(1)で表される化合物が、R~Rを構成する有機基として、置換基を有する場合、有機基の炭素数には、該置換基の炭素数を含まないものとする。すなわち、R~Rを構成する有機基は、置換基に含有される炭素原子を除いた炭素原子の数が、1~30の範囲にあればよい。たとえば、R~Rを構成する有機基が、メトキシエチル基である場合には、該有機基の炭素数は2となる。すなわち、この場合においては、メトキシ基は置換基であるため、該有機基の炭素数は、置換基であるメトキシ基の炭素数を除いたものとなる。
上記置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基の中でも、置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい炭素数1~30の芳香族複素環基がより好ましく、置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい炭素数1~30の芳香族複素環基としては、たとえば、下記に示す基が好適に挙げられる。なお、下記に示す基において、下記に示す基中の芳香族炭化水素環または芳香族複素環を構成する炭素原子または窒素原子に結合する水素原子が、上述した置換基で置換されたものであってもよい。
Figure 2022078359000003
特に、本発明においては、一般式(1)で表される化合物としては、高温環境下における、熱による加熱劣化の抑制効果が高いという観点より、R~Rを構成する有機基が、いずれも、置換基を有していてもよいフェニル基またはナフチル基であるものが好ましく、置換基を有していてもよいフェニル基であるものがより好ましく、中でも、下記一般式(2)で表される化合物が特に好適である。
Figure 2022078359000004
(上記一般式(2)中、R~Rは、水素原子または任意の置換基を表す。)
上記一般式(2)で表される化合物は、上記一般式(1)で表される化合物において、R~Rが、いずれも、パラ位に置換基を有していてもよいフェニル基である化合物に該当する。
上記一般式(2)中、R~Rは、水素原子または任意の置換基を表し、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1~10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、t-ブチル基などの炭素数1~10のアルキル基;トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基などの炭素数1~10のハロゲン化アルキル基;ビニル基、アリル基などの置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基;アミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基などの置換基を有していてもよいアミノ基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SOR;-SOR;-O-C(=O)-OR;-NR-C(=O)-R’;-C(=O)-NRR’;-O-C(=O)-NRR’;-NRC(=O)NR’R’’;上記に例示した置換基におけるO原子をS原子に置き換えた置換基;などが挙げられる。ここで、R、R’、およびR’’としては、上述のR、R’、およびR’’の説明で挙げたものと同様の基を表す。
上記一般式(2)で表される化合物の中でも、R~Rが、水素原子、炭素数1~10のアルコキシ基、または炭素数1~10のハロゲン化アルキル基であるものが好ましく、水素原子、メトキシ基、またはトリフルオロメチル基であるものが特に好ましい。
本発明のアクリルゴム組成物中における、上記一般式(1)で表される化合物の含有量は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.1~50重量部であり、より好ましくは1~10重量部である。上記一般式(1)で表される化合物の含有量が上記範囲であれば、190℃以上の温度に加熱した場合における、アクリルゴム組成物の加熱劣化をより適切に防止できる。
<その他の成分>
また、本発明のアクリルゴム組成物は、上記一般式(1)で表される化合物に加えて、上記一般式(1)で表される化合物以外のその他の老化防止剤をさらに含有していてもよい。その他の老化防止剤としては、特に限定されないが、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-secブチルフェノール、2-(1-メチルシクロヘキシル)-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、スチレン化フェノール、アルキル化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(6-α-メチルベンジル-p-クレゾール)、メチレン架橋した多価アルキルフェノール、4,4’-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-(α-メチルシクロヘキシル)-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、アルキル化ビスフェノール、p-クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン等のビス、トリス、またはポリフェノール系老化防止剤;4,4’-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-o-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド等のチオビスフェノール系老化防止剤:などのフェノール系老化防止剤;フェニル-α-ナフチルアミン、オクチレイテッド・ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルフォニルアミド)ジフェニルアミン、p-イソプロポキシ・ジフェニルアミン、ビス(フェニル・イソプロピリデン)-4,4-ジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル・エチレンジアミン、N,N’-ジフェニル・プロピレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニルジアミン,N-シクロへキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、N,N’―ビス(1-メチルへプチル)―p-フェニレンジアミン、N,N-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、4-(α-フェニルエチル)ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α-フェニルエチル)ジフェニルアミン、4,4’-ビス(4-メチルフェニル)スルフォニル)ジフェニルアミン等の芳香族第二級アミン化合物;ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジアルキルジチオカルバミン酸ニッケル;等を用いることができる。
また、その他の老化防止剤としては、上記した各化合物の他、下記一般式(3a)や(3b)で表される化合物を用いることもできる。
Figure 2022078359000005
Figure 2022078359000006
(上記一般式(3a)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。ZおよびZはそれぞれ独立して、化学的な単結合または-SO-を表す。nおよびmはそれぞれ独立して、0または1であり、nおよびmの少なくとも一方は1である。また、上記一般式(3b)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。XおよびXはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OR、-O-C(=O)-R、-C(=O)-OR,-O-C(=O)-OR、NRR’-、-NR-C(=O)-R’、-C(=O)-NRR’、または-O-C(=O)-NRR’を表す。ここで、RおよびR’は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20の有機基を表し、複数個のX及び複数個のXは全てそれぞれ独立して、異なる置換基が可能である。nおよびmはそれぞれ独立して、0または1であり、nおよびmの少なくとも一方は1である。)
上記一般式(3a)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。
およびRを構成する炭素数1~30の有機基としては、特に限定されないが、たとえば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基などの炭素数1~30のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの炭素数3~30のシクロアルキル基;フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラニル基などの炭素数6~30のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基などの炭素数1~30のアルコキシ基;などが挙げられる。
また、上述したRおよびRを構成する有機基は、置換基を有していてもよく、該置換基の位置としては、任意の位置とすることができる。
このような置換基としては、有機基がアルキル基である場合には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1~10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2-クロロフェニル基などの置換基を有していてもよいフェニル基;などが挙げられる。
また、有機基がシクロアルキル基またはアリール基である場合には、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1~10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、t-ブチル基などの炭素数1~10のアルキル基;などが挙げられる。
さらに、有機基がアルコキシ基の場合には、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;などが挙げられる。
また、上記一般式(3a)において、RおよびRを構成する有機基が、置換基を有する場合、有機基の炭素数には、該置換基の炭素数を含まないものとする。
およびRとしては、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数2~20のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基であることが好ましく、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐状の炭素数2~20のアルキル基、もしくは置換基を有していてもよいフェニル基、または置換基を有していてもよいナフチル基であることがより好ましく、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐状の炭素数2~8のアルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基であることがさらに好ましく、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐状の炭素数2~8のアルキル基が特に好ましい。これらの置換基としては、前記有機基が置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基の置換基として例示したのと同じのものが挙げられる。
このようなRおよびRを構成する有機基の好ましい具体例としては、α-メチルベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基、t-ブチル基、フェニル基、または4-メチルフェニル基などが挙げられ、これらの中でも、α,α-ジメチルベンジル基、または4-メチルフェニル基がより好ましく、α,α-ジメチルベンジル基がさらに好ましい。なお、これらは、それぞれ独立したものとすることができる。
また、上記一般式(3a)中、ZおよびZはそれぞれ独立して、化学的な単結合または-SO-であり、化学的な単結合であることが好ましい。
さらに、上記一般式(3a)中、nおよびmはそれぞれ独立して、0または1であり、かつ、nおよびmの少なくとも一方は1である。なお、nおよびmは、いずれも1であることが好ましい。
本発明においては、上記一般式(3a)で表される化合物としては、下記一般式(4)~(6)で表される化合物のいずれかであることが好ましい。
Figure 2022078359000007
(上記一般式(4)~(6)中、R、R、ZおよびZは、上記一般式(3a)と同様である。)
上記一般式(4)~(6)で表される化合物のなかでも、一般式(4)、(6)で表される化合物が好ましく、一般式(6)で表される化合物がより好ましい。
また、上記一般式(4)~(6)中、-Z-R、-Z-Rがそれぞれ独立して、α-メチルベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基、t-ブチル基、フェニルスルホニル基、または4-メチルフェニルスルホニル基であることが好ましく、α,α-ジメチルベンジル基、または4-メチルフェニルスルホニル基であることがより好ましく、α,α-ジメチルベンジル基であることがさらに好ましい。
すなわち、本発明においては、上記一般式(3a)中、RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐状の炭素数2~8のアルキル基、ならびにZおよびZは化学的な単結合であり、nおよびmが1であることが好ましい。
上記一般式(3a)で表される化合物は、公知のフェノチアジン系化合物の製造方法を適用することにより、前駆体となるフェノチアジン系化合物を得て、次いで、得られた化合物を酸化することにより、製造することができる。
具体的には、上記一般式(3a)で表される化合物は、下記一般式(7)で表される化合物(フェノチアジン)を出発原料として、WO2011/093443A1公報に記載の反応方法により、一般式(7)におけるフェノチアジン環の、1位、3位、6位および/または8位に、置換基(-Z-R、-Z-R)を導入すること、およびフェノチアジン環のSを、-SO-にするために酸化すること、により得ることができる。
Figure 2022078359000008
上記一般式(3b)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表し、置換基を有していてもよい炭素数1~30の芳香族基又は環状脂肪族基が好ましい。
炭素数1~30の芳香族基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナンスリル基、アントラニル基などの芳香族炭化水素基や、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジル基、チアゾリル基などの芳香族複素環基が挙げられる。
炭素数1~30の環状脂肪族基としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。なかでも、RおよびRとしては、それぞれ独立して、フェニル基および4-メチルフェニル基が好ましい。
また、上述したRおよびRを構成する有機基は、置換基を有していてもよく、該置換基の位置としては、任意の位置とすることができる。このような置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1~10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、t-ブチル基などの炭素数1~10のアルキル基;などが挙げられる。
また、上記一般式(3b)において、RおよびRを構成する有機基が、置換基を有する場合、有機基の炭素数には、該置換基の炭素数を含まないものとする。
上記一般式(3b)中の、XおよびXはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基などの置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OR、-O-C(=O)-R、-C(=O)-OR、-O-C(=O)-OR、NRR’-、-NR-C(=O)-R’、-C(=O)-NRR’、または-O-C(=O)-NRR’を表す。ここで、RおよびR’は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20の有機基を表し、複数個のX及び複数個のXは全てそれぞれ独立して、異なる置換基が可能である。XおよびXとしては、すべて水素原子が好ましい。
およびXの置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基の置換基としては、RおよびRの置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基の置換基として例示したのと同じのものが挙げられる。
本発明においては、上記一般式(3b)で表される化合物としては、RおよびRが、それぞれ独立して、炭素数1~30の、置換基を有していてもよい芳香族基または環状脂肪族基を表し、XおよびXが、水素原子を表し、nおよびmが、1を表す化合物を選択することが好ましく、下記一般式(3c)で表される化合物であることがさらに好ましい。
Figure 2022078359000009
(上記一般式(3c)中、R、およびRは、上記一般式(3b)と同様である。)
上記一般式(3b)で表される化合物は、公知の製造方法を適用することにより製造することができる。例えば、WO2011/058918A1公報に記載の反応方法を用いて合成することができる。
また、その他の老化防止剤としては、上記した各化合物、および、上記一般式(3a)や(3b)で表される化合物の他、下記一般式(8)で表される化合物を用いることもできる。
Figure 2022078359000010
上記一般式(8)中、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリーレン基を表し、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状イミド構造を有する有機基を表す。
上記一般式(8)中、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数6~18のアリーレン基であり、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基であり、より好ましくは置換基を有していてもよいフェニレン基であり、さらに好ましくは1,4-フェニレン基であり、特に、より優れた老化防止作用を奏するという点より、AおよびAのいずれも、1,4-フェニレン基であることが特に好ましい。なお、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、t-ブチル基等の炭素数1~10のアルキル基;等が挙げられる。
また、上記一般式(8)中、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状イミド構造を有する有機基であり、下記一般式(9)または(10)で表される有機基であることが好ましい。
Figure 2022078359000011
上記一般式(9)中、Dは、置換基を有していてもよい炭素数6~18の環を表し、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数6~10の環を表し、Dは、単環あるいは多環のいずれであってもよい。この場合における、置換基としては、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、-O-R、-O-C(=O)-R、-C(=O)-O-R、-C(=O)-NR(R)、-NR-C(=O)-R、-CN、-SR、-S-(=O)-R、または、-S(=O)-Rなどが挙げられる。なお、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、または炭素数6~12の芳香族基を表す。また、mは0または1を表し、好ましくは0である。
上記一般式(10)中、RおよびR10はそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルケニル基を表し、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基であることがより好ましい。この場合における、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2-クロロフェニル基等の、置換基を有していてもよいフェニル基;等が挙げられる。また、nは0または1を表し、好ましくは0である。
およびAを構成する、上記一般式(9)または(10)で表される有機基の中でも、より優れた老化防止作用を奏するという点より、下記一般式(11)~(16)で表される有機基のいずれかであることが好ましい。
Figure 2022078359000012
上記一般式(11)~(16)中、R11~R16は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、-O-R17、-O-C(=O)-R17、-C(=O)-O-R17、-C(=O)-NR17(R18)、-NR17-C(=O)-R18、-CN、-SR17、-S-(=O)-R17、または、-S(=O)-R17を表し、R17、R18は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、または炭素数6~12の芳香族基を表す。R11~R16は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~30のアルキル基であることが好ましく、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、または炭素数1~10のアルキル基であることが特に好ましい。なお、R11~R16が複数存在する場合、それらは同一であっても、相異なっていてもよい。
上記一般式(11)~(16)で表される有機基の中でも、老化防止作用をより高めることができるという観点より、上記一般式(11)、(12)、(14)または(15)で表される有機基がより好ましく、上記一般式(11)、(12)、または(15)で表される有機基がさらに好ましく、上記一般式(15)で表される有機基が特に好ましい。
上記一般式(8)で表される化合物としては、下記一般式(17)~(20)で表される化合物のいずれかであることが好ましい。
Figure 2022078359000013
上記一般式(17)~(20)中、R19~R30は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、-OR31、-O-C(=O)-R31、-C(=O)-OR31、-C(=O)-NR31(R32)、-NR31-C(=O)-R32、-CN、-SR31、-S-(=O)-R31、または、-S(=O)-R31を表し、R31、R32は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~30のアルケニル基、または炭素数6~12の芳香族基を表す。R19~R30は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~30のアルキル基であることが好ましく、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、または炭素数1~10のアルキル基であることが特に好ましい。また、AおよびAは、上記一般式(8)と同じである。
上記一般式(17)~(20)で表される化合物の中でも、老化防止作用をより高めることができるという観点より、上記一般式(18)で表される化合物が特に好ましい。
上記一般式(8)で表される化合物は、公知の製造方法を適用することにより製造することができる。例えば、WO2018/159459A1公報に記載の反応方法を用いて合成することができる。
また、その他の老化防止剤としては、上記した各化合物、および、上記一般式(3a)、(3b)、(8)で表される化合物の他、下記一般式(21)で表される化合物を用いることもできる。
Figure 2022078359000014
上記一般式(21)中、AおよびAは、それぞれ独立して、炭素数1~30の置換基を有してもよい芳香族基を表す。R33、R35、およびR36は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-OR1a、-O-C(=O)-R1a、-C(=O)-OR1a、-O-C(=O)-OR1a、-NR1b-C(=O)-R1a、-C(=O)-NR1a1c、または-O-C(=O)-NR1a1cを表す。R1aおよびR1cは、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。R1bは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。R1aおよびR1cを構成する炭素数1~30の有機基としては、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR1d-C(=O)-、-C(=O)-NR1d-、-NR1d-、および-C(=O)-からなる群より選ばれる少なくとも1種の連結基が介在するものであってもよいが、-O-または-S-が、それぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。R1dは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
上記一般式(21)中、R34は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-O-C(=O)-R1e、-C(=O)-OR1e、-NR1b-C(=O)-R1e、-C(=O)-NR1e1f、または-O-C(=O)-NR1e1fを表す。R1eおよびR1fは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。R1eおよびR1fを構成する炭素数1~30の有機基は、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR1d-C(=O)-、-C(=O)-NR1d-、-NR1d-、および-C(=O)-からなる群より選ばれる少なくとも1種の連結基が介在するものであってもよいが、-O-または-S-が、それぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。R1bおよびR1dは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
上記一般式(21)で表される化合物の、好ましい態様としては、Aは、炭素数1~30の置換基を有していてもよいフェニレン基であり、Aは、炭素数1~30の置換基を有していてもよいフェニル基であり、R33、R35、およびR36は、水素原子であり、R34は、-O-C(=O)-R1e、-C(=O)-OR1e、-NR1b-C(=O)-R1e、-C(=O)-NR1e1f、または-O-C(=O)-NR1e1fであり、R1bは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、R1eおよびR1fは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基である化合物を選択することができる。
上記一般式(21)で表される化合物の、上述した好ましい態様の中でも、より好ましい態様としては、上記一般式(21)において、R34が、-C(=O)-OR1eであり、R1eは、炭素数1~18の置換基を有していてもよいフェニル基または炭素数1~18の置換基を有していてもよいナフチル基であるジアリールアミン化合物を選択することができる。
上記一般式(21)で表される化合物の、上述したより好ましい態様の中でも、さらに好ましい態様としては、上記一般式(21)において、R34は、-C(=O)-OR1eであり、R1eは、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数4~30の芳香族基であり、R1eを構成する置換基としては、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~20のアラルキル基、炭素数6~30の芳香族基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、-OR、-O-C(=O)-R、-C(=O)-OR、-O-C(=O)-OR、-NR-C(=O)-R、-C(=O)-NR、-O-C(=O)-NR、-SR、-S(=O)-R、または-S(=O)-Rであり、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、またはフェニル基であり、AおよびAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族基であり、AおよびAを構成する置換基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン置換アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基であるジアリールアミン化合物、すなわち、下記一般式(22)で表される、4位にエステル基を有するフタルイミド基含有ジアリールアミン化合物を選択することができる。
Figure 2022078359000015
上記一般式(22)中、R37~R45は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン置換アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基である。
さらに、具体的に、上記一般式(21)で表されるジアリールアミン化合物について説明する。
上記一般式(21)中、R34としては、-C(=O)-OR1eで表されるエステル基であることが、化合物の製造が容易であることから好ましい。ここで、R1eは、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基であり、R1eを構成する炭素数1~30の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、アリールアルキルアリール基、アルコキシ基など多くの脂肪族基や芳香族基が選択できるが、耐熱性の観点から、芳香族基、特に、フェニル基またはナフチル基を選択することが好ましい。
さらに、上記一般式(21)中、R34が、-C(=O)-OR1eであり、かつ、R1eが、置換基を有していてもよい炭素数1~20の芳香族基であると、老化防止剤として使用する場合、より耐熱性向上の効果が得られるため、特に好ましい。R34が、-C(=O)-OR1eであり、かつ、R1eが、炭素数1~18の置換基を有していてもよいフェニル基または炭素数1~18の置換基を有していてもよいナフチル基であるエステル構造であると、さらに優れた耐熱性向上の効果が得られるため、最も好ましい。
上記一般式(21)で表される化合物は、公知の製造方法を適用することにより製造することができる。例えば、特許第5732673号公報に記載の反応方法を用いて合成することができる。
その他の老化防止剤を使用する場合における、本発明のアクリルゴム組成物中における、一般式(1)で表される化合物とその他の老化防止剤との合計の含有量は、アクリルゴム100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部、より好ましくは1~10重量部である。
また、本発明のアクリルゴム組成物中における、その他の老化防止剤の含有量は、アクリルゴム100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部であり、より好ましくは0.3~5重量部であり、さらに好ましくは0.5~2.5重量部である。
また、本発明のアクリルゴム組成物は、さらに架橋剤を含有していてもよい。本発明のアクリルゴム組成物に、架橋剤を含有させることにより、架橋可能なもの(架橋性アクリルゴム組成物)とすることができ、加熱等により架橋反応させることで、ゴム架橋物とすることができる。
架橋剤としては、特に限定されないが、たとえば、ジアミン化合物などの多価アミン化合物、およびその炭酸塩;硫黄;硫黄供与体;トリアジンチオール化合物;有機カルボン酸アンモニウム塩;ジチオカルバミン酸金属塩;多価カルボン酸;四級オニウム塩;イミダゾール化合物;イソシアヌル酸化合物;有機過酸化物;などの従来公知の架橋剤を用いることができ、たとえば、アクリルゴムの架橋性単量体単位の有無や、架橋性単量体単位の種類に応じて適宜選択すればよい。これらの架橋剤は、1種、または2種以上を併せて使用することができる。
多価アミン化合物、およびその炭酸塩としては、特に限定されないが、炭素数4~30の多価アミン化合物、およびその炭酸塩が好ましい。このような多価アミン化合物、およびその炭酸塩の例としては、脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩、ならびに芳香族多価アミン化合物などが挙げられる。一方、グアニジン化合物のように非共役の窒素-炭素二重結合を有するものは含まれない。
脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩としては、特に限定されないが、たとえば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、およびN,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンカーバメートが好ましい。
芳香族多価アミン化合物としては、特に限定されないが、たとえば、4,4’-メチレンジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、および1,3,5-ベンゼントリアミンなどが挙げられる。これらの中でも、2,2’-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンが好ましい。
硫黄供与体としては、たとえば、ジペンタメチレンチウラムヘキササルファイド、トリエチルチウラムジサルファイドなどが挙げられる。
トリアジンチオール化合物としては、たとえば、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール、6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、および6-オクチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールなどが挙げられるが、これらの中でも、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオールが好ましい。
カルボン酸アンモニウム塩としては、たとえば、安息香酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウムなどが挙げられる。
ジチオカルバミン酸金属塩としては、たとえば、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛などが挙げられる。
多価カルボン酸としては、たとえば、テトラデカン二酸などが挙げられる。
四級オニウム塩としては、たとえば、セチルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。
イミダゾール化合物としては、たとえば、2-メチルイミダゾールなどが挙げられる。
イソシアヌル酸化合物としては、たとえば、イソシアヌル酸アンモニウムなどが挙げられる。
本発明のアクリルゴム組成物中に、架橋剤を配合する場合における、その配合量は、アクリルゴム100重量部に対して、好ましくは0.05~20重量部であり、より好ましくは0.1~15重量部、さらに好ましくは0.3~12重量部である。架橋剤の含有量が上記範囲内であると、架橋が十分に行われ、ゴム架橋物とした場合に、得られるゴム架橋物を機械的特性に優れたものとすることができる。
また、本発明のアクリルゴム組成物には、上記各成分以外に、ゴム加工分野において通常使用される配合剤を配合することができる。このような配合剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカなどの補強性充填剤;炭酸カルシウムやクレーなどの非補強性充填材;架橋促進剤;光安定剤;可塑剤;加工助剤;滑剤;粘着剤;潤滑剤;難燃剤;防黴剤;帯電防止剤;着色剤;シランカップリング剤;架橋遅延剤;などが挙げられる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を適宜配合することができる。
<アクリルゴム組成物の調製方法>
本発明のアクリルゴム組成物の調製方法は、特に限定されないが、アクリルゴムと、上記一般式(1)で表される化合物とを、必要に応じて添加される各種配合剤とともに混合する方法が好適である。
混合方法は特に限定されないが、ロール、インターミックス、ニーダ、バンバリーミキサ、スクリューミキサ等の混練機を用いて混練する方法などが挙げられる。また、混合は、溶媒中で行ってもよい。
また、架橋剤を配合する場合には、架橋剤および熱に不安定な架橋助剤などを除いた各成分を、バンバリーミキサ、ブラベンダーミキサ、インターミキサ、ニーダなどの混合機で混練し、ロールなどに移して架橋剤や熱に不安定な架橋助剤などを加えて、二次混練することにより調製できる。
以上のようにして、本発明のアクリルゴム組成物を得ることができる。本発明のアクリルゴム組成物は、アクリルゴムと、上記一般式(1)で表される化合物とを含有するものである。本発明のアクリルゴム組成物によれば、上記一般式(1)で表される化合物を配合することにより、190℃以上の温度にて加熱された際の加熱劣化を有効に抑制できるものである。
また、本発明のアクリルゴム組成物に、架橋剤を配合する場合には、これを架橋することによりゴム架橋物を得ることができる。
ゴム架橋物は、架橋剤を配合したアクリルゴム組成物を成形し、架橋することにより製造される。アクリルゴム組成物の成形および架橋方法としては、特に限定されないが、たとえば、一軸や多軸の押出機を使用して、架橋性ゴム組成物を押し出して成形体とした後、加熱して架橋する方法;射出成形機、押出ブロー成形機、トランスファー成形機、プレス成形機などを使用して金型により成形し、成形と同時に成形時の加熱で架橋する方法;などが挙げられる。これらの方法のうちでも、押出機または射出成形機を用いる方法が好ましく、押出機を用いる方法が特に好ましい。成形と架橋を同時に行うか、あるいは、成形後に架橋するかは特に限定されず、成形方法、加硫方法、成形体の大きさなどに応じて選択すればよい。
アクリルゴム組成物を成形、架橋する際における、成形温度は好ましくは15~220℃、より好ましくは20~200℃である。また、架橋温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃~250℃である。架橋時間は、1分~5時間の範囲で任意に選択すればよい。加熱方法としては、電熱加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、UHF(超高周波)加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に通常用いられる方法を適宜選択すればよい。
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。二次架橋を行う際における、加熱温度は、好ましくは100~220℃、より好ましくは130~210℃であり、加熱時間は、好ましくは30分~10時間、より好ましくは1~5時間である。
このようにして得られるゴム架橋物は、上述した本発明のアクリルゴム組成物を用いて得られるものであることから、上述した本発明のアクリルゴム組成物と同様に、ゴム架橋物を190℃以上に加熱した際の熱による加熱劣化を有効に抑制できるものである。そのため、このようにして得られるゴム架橋物は、その特性を活かして、O-リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、メカニカルシール、ウェルヘッドシール、電気・電子機器用シール、空気圧機器用シールなどの各種シール;シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;各種ベルト;燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジエーターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローラインなどの各種ホース;CVJブーツ、プロペラシャフトブーツ、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツなどの各種ブーツ;クッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材などの減衰材ゴム部品;などとして好適に用いられる。
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
[重量残存率]
アクリルゴム組成物のフィルムを、空気中、190℃にて、336時間加熱することで、加熱後のアクリルゴム組成物のフィルムを得た。加熱前後のアクリルゴム組成物のフィルム重量を測定し、下記式に従って、アクリルゴム組成物のフィルムの重量残存率を算出した。重量残存率が高いものほど、アクリルゴム組成物中のアクリルゴムが加熱され分解することによる低分子量化および揮発が抑制されていると考えられるため、熱による加熱劣化が抑制されたものと判断できる。
重量残存率(%)=(加熱後のフィルム重量)/(加熱前のフィルム重量)×100
[溶解率および膨潤度]
上記重量残存率の測定で用いた加熱後のアクリルゴム組成物のフィルムを、室温下、トルエンに24時間浸漬させ、フィルムを膨潤させた。膨潤したフィルムとトルエンとを分離し、膨潤したフィルムの重量を測定した。
次いで、膨潤したフィルムを35℃の真空乾燥機で15時間乾燥させ、真空乾燥後のフィルム重量を測定した。下記式に従って、アクリルゴム組成物のフィルムの溶解率を算出した。加熱により架橋反応が進行した場合には、架橋反応の進行により、三次元化が進行し、不溶成分化すると考えられることから、溶解率が高いものほど、熱による加熱劣化、具体的には、加熱による架橋反応の進行による硬度の上昇が抑制されたものと判断できる。
溶解率(%)={(加熱後のフィルム重量)-(膨潤後、真空乾燥させたフィルム重量)}/(加熱後のフィルム重量)×100
また、下記式に従って、アクリルゴム組成物のフィルムの膨潤度を算出した。加熱により架橋反応が進行した場合には、架橋反応の進行により、架橋点が増大し、一般に、架橋点の増大に伴い、有機溶媒による膨潤度が低くなることから、膨潤度が高いものほど、熱による加熱劣化、具体的には、加熱による架橋反応の進行による硬度の上昇が抑制されたものと判断できる。
膨潤度(%)=(膨潤フィルム重量)/(膨潤後、真空乾燥させたフィルム重量)×100
[実施例1]
カルボキシル基含有アクリルゴム(製品名「Hytemp AR212HR」、日本ゼオン社製)4gとトリフェニルメラミン(上記一般式(2)中、R、R、R=Hである化合物)118.5mg(カルボキシル基含有アクリルゴム100部に対し3.0部、0.33mmol)とをTHF36gに溶解させた溶液を調製した。この溶液を直径10cmのフッ素樹脂製シャーレに注ぎ、15時間風乾後、30℃の真空乾燥機で4時間真空乾燥することで、アクリルゴム組成物のフィルムを得た。得られたフィルムを、1.5cm角の大きさに切りとり、上記方法に従って、190℃、336時間加熱後の重量残存率、溶解率、および膨潤度の算出を行った。結果を表1に示す。
[実施例2]
トリフェニルメラミン118.5mgの代わりに、トリス(4-メトキシフェニル)メラミン(上記一般式(2)中、R、R、R=OCHである化合物)148mg(カルボキシル基含有アクリルゴム100部に対し3.7部、0.33mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物のフィルムを得た。そして、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
トリス(4-メトキシフェニル)メラミンの使用量を、148mgから296mg(カルボキシル基含有アクリルゴム100部に対し7.4部、0.66mmol)に変更した以外は、実施例2と同様にして、アクリルゴム組成物のフィルムを得た。そして、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
トリフェニルメラミン118.5mgの代わりに、トリス[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メラミン(上記一般式(2)中、R、R、R=CFである化合物)188mg(カルボキシル基含有アクリルゴム100部に対し4.7部、0.33mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物のフィルムを得た。そして、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
トリフェニルメラミンを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物のフィルムを得た。そして、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
トリフェニルメラミン118.5mgの代わりに、オクチル化ジフェニルアミン(製品名「ノクラックAD-F」、大内新興化学工業社製)132mg(カルボキシル基含有アクリルゴム100部に対し3.3部、0.33mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物のフィルムを得た。そして、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
トリフェニルメラミン118.5mgの代わりに、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(製品名「ノクラックCD」、大内新興化学工業社製)136mg(カルボキシル基含有アクリルゴム100部に対し3.4部、0.33mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物のフィルムを得た。そして、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2022078359000016
表1に示すように、アクリルゴムと、一般式(1)で表される化合物とを含有する実施例1~4のアクリルゴム組成物は、190℃336時間加熱後の重量残存率、溶解度、および膨潤度が高いものであり、熱による加熱劣化が適切に抑制されたものであった。また、この結果より、本発明のアクリルゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物も、熱による加熱劣化を適切に抑えることができるものであるということができる。
一方、老化防止剤を配合しなかった比較例1は、190℃336時間加熱後の重量残存率、溶解率、および膨潤度が低く、熱による加熱劣化が顕著になるものであった。
また、一般式(1)で表される化合物以外の老化防止剤を配合した比較例2、3は、190℃336時間加熱後の重量残存率および膨潤度が低く、熱による加熱劣化の抑制効果が不十分であった。なお、比較例2,3においては、溶解率が比較的高い結果となっているが、190℃336時間加熱後の重量残存率が低い結果となっていることや、膨潤度が低い結果となっていることから考えると、加熱による架橋反応が抑制されたことによるというよりも、加熱による分解が促進し、アクリルゴムの低分子量化が起こったことに起因すると考えられる。

Claims (16)

  1. アクリルゴムと、下記一般式(1)で表される化合物とを含有するアクリルゴム組成物。
    Figure 2022078359000017
    (上記一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~30の有機基を表す。)
  2. 前記一般式(1)で表される化合物中のR~Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素環基または置換基を有していてもよい炭素数1~30の芳香族複素環基である請求項1に記載のアクリルゴム組成物。
  3. 前記一般式(1)で表される化合物中のR~Rは、置換基を有していてもよいフェニル基またはナフチル基である請求項2に記載のアクリルゴム組成物。
  4. 前記一般式(1)で表される化合物中のR~Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状、または環状の炭素数1~20のアルキル基である請求項1に記載のアクリルゴム組成物。
  5. 前記アクリルゴム100重量部に対する、前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、0.1~50重量部である請求項1~4のいずれかに記載のアクリルゴム組成物。
  6. 前記アクリルゴム100重量部に対する、前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、1~10重量部である請求項5に記載のアクリルゴム組成物。
  7. 前記アクリルゴムが、カルボキシル基含有アクリルゴムである請求項1~6のいずれかに記載のアクリルゴム組成物。
  8. 前記アクリルゴムが、エポキシ基含有アクリルゴムである請求項1~6のいずれかに記載のアクリルゴム組成物。
  9. 前記アクリルゴムが、ハロゲン原子含有アクリルゴムである請求項1~6のいずれかに記載のアクリルゴム組成物。
  10. 前記アクリルゴムが、カルボキシル基およびハロゲン原子含有アクリルゴムである請求項1~6のいずれかに記載のアクリルゴム組成物。
  11. 前記アクリルゴムが、エチレン-アクリレートゴム0.1~100重量%を含むものである請求項1~10のいずれかに記載のアクリルゴム組成物。
  12. 前記一般式(1)で表される化合物以外の老化防止剤をさらに含有し、前記アクリルゴム100重量部に対する、前記一般式(1)で表される化合物と前記老化防止剤との合計の含有量が、0.1~50重量部である請求項1~11のいずれかに記載のアクリルゴム組成物。
  13. 前記アクリルゴム100重量部に対し、0.05~20重量部の架橋剤をさらに含有する請求項1~12のいずれかに記載のアクリルゴム組成物。
  14. 請求項13に記載のアクリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
  15. 押出成形品である請求項14に記載のゴム架橋物。
  16. シール部材である請求項14に記載のゴム架橋物。
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